(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164237
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】テトラヒドロほう酸塩の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 6/21 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
C01B6/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069604
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 康孝
(72)【発明者】
【氏名】長坂 政彦
(72)【発明者】
【氏名】内山 晃臣
(57)【要約】
【課題】テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末を適切に分離できる製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】
製造方法は、メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉を無極性液体中に分散させるステップと、混合粉を分散させた無極性液体を比重に基づいてテトラヒドロほう酸塩の粉末と無極性液体と金属酸化物の粉末とに分離させるステップとを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉から前記テトラヒドロほう酸塩の粉末を分離するテトラヒドロほう酸塩の製造方法であって、
前記混合粉を無極性液体中に分散させるステップと、
前記混合粉を分散させた前記無極性液体を、比重に基づいて前記テトラヒドロほう酸塩の粉末と前記無極性液体と前記金属酸化物の粉末とに分離させるステップと、
を含む、テトラヒドロほう酸塩の製造方法。
【請求項2】
前記無極性液体の比重は、前記テトラヒドロほう酸塩の比重と前記金属酸化物の比重との中間である、請求項1に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
【請求項3】
前記分散させるステップは前記混合粉を粉砕するステップを含む、請求項1又は2に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
【請求項4】
前記テトラヒドロほう酸塩は水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム及び水素化ほう素カリウムのうち少なくとも1つを含み、前記金属酸化物は酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのうち少なくとも1つを含む、請求項1~3の何れか一項に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
【請求項5】
前記無極性液体は、鎖状アルカン、環状アルカン、ハロゲン化炭化水素及び芳香族炭化水素のうち少なくとも1つを含む、請求項1~4の何れか一項に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
【請求項6】
前記分散させるステップでは、ホモジナイザー又は撹拌ミルを用いて前記混合粉を前記無極性液体中に分散させる、請求項1~5の何れか一項に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
【請求項7】
前記分離させるステップでは、遠心分離機により比重分離を行う、請求項1~6の何れか一項に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
【請求項8】
メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉から前記テトラヒドロほう酸塩の粉末を分離するテトラヒドロほう酸塩の製造装置であって、
前記混合粉を無極性液体中に分散させる分散部と、
前記混合粉を分散させた前記無極性液体を前記分散部から搬送する搬送部と、
前記混合粉を分散させた前記無極性液体を、比重に基づいて前記テトラヒドロほう酸塩の粉末と前記無極性液体と前記金属酸化物の粉末とに分離する分離部と、
を備える、テトラヒドロほう酸塩の製造装置。
【請求項9】
前記分散部は、ホモジナイザー又は撹拌ミルである、請求項8に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造装置。
【請求項10】
前記分離部は、遠心分離機である、請求項8又は9に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テトラヒドロほう酸塩の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、テトラヒドロほう酸塩の一例である水素化ほう素ナトリウムを製造する方法を開示する。この方法は、メタほう酸ナトリウムの粉末とアルミニウム粒との混合物を水素雰囲気下において粉砕処理する。これにより、水素化ほう素ナトリウムの粉末と酸化アルミニウムの粉末とを含む混合粉が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるメカノケミカル法によって得られる水素化ほう素ナトリウムは粉末であり、粉末の大きさによっては酸化アルミニウムの粉末と凝集するおそれがある。このため、混合粉から水素化ほう素ナトリウムの粉末のみを取り出すことは困難である。本開示は、テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末を適切に分離できるテトラヒドロほう酸塩の製造方法及び製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末を分離するテトラヒドロほう酸塩の製造方法である。当該製造方法は、以下の(1)及び(2)の工程を含む。
(1)混合粉を無極性液体中に分散させるステップ。
(2)混合粉を分散させた無極性液体を、比重に基づいてテトラヒドロほう酸塩の粉末と無極性液体と金属酸化物の粉末とに分離させるステップ。
【0006】
テトラヒドロほう酸塩及び金属酸化物は、無極性液体には溶解しない。このため、分散させるステップでは、例えば混合粉が投入された無極性液体を攪拌させることによって、テトラヒドロほう酸塩の粉末及び金属酸化物の粉末は、無極性液体中に分散する。このとき、粉末間に無極性液体が入り込むため、粉末の凝集も解消される。そして、分離させるステップにおいて、分散したテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とが比重に基づいて分離される。このように、この製造方法によれば、テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末を適切に分離できる。
【0007】
一実施形態においては、無極性液体の比重は、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間であってもよい。この場合、分離させるステップにおいて、例えば重力又は遠心力によって、金属酸化物の粉末及びテトラヒドロほう酸塩の粉末を含む無極性液体が、金属酸化物の粉末、無極性液体、テトラヒドロほう酸塩の粉末の順に分離される。よって、この製造方法によれば、テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末をより適切に分離できる。
【0008】
一実施形態においては、分散させるステップは混合粉を粉砕するステップを含んでもよい。この場合、分散させるステップにおいて、メカノケミカル法により製造された混合粉が粉砕される。このため、粉砕した粒子間により容易に無極性液体が入り込むため、粒子の凝集が一層抑制され、無極性液体中に粒子をより分散させることができる。よって、この製造方法によれば、テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末をより適切に分離できる。
【0009】
一実施形態においては、テトラヒドロほう酸塩は水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム及び水素化ほう素カリウムのうち少なくとも1つを含み、金属酸化物は酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのうち少なくとも1つを含んでもよい。水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム及び水素化ほう素カリウムは重量あたりの水素貯蔵密度が高く、かつ、常温常圧での長期保存に適している。酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムは安価に入手しやすい。この製造方法は、テトラヒドロほう酸塩と金属酸化物とがそれぞれ上記の化合物を含む場合であっても、テトラヒドロほう酸塩を金属酸化物から適切に分離でき、水素利用が容易なテトラヒドロほう酸塩を適切に回収できる。
【0010】
一実施形態においては、無極性液体は、鎖状アルカン、環状アルカン、ハロゲン化炭化水素及び芳香族炭化水素のうち少なくとも1つを含んでもよい。テトラヒドロほう酸塩と金属酸化物とが反応せず、かつ、溶解しない無極性液体を用いて混合粉を分散させることで、分離させるステップにおいてテトラヒドロほう酸塩の損失が抑えられる。
【0011】
一実施形態においては、分散させるステップでは、ホモジナイザー又は撹拌ミルを用いて混合粉を無極性液体中に分散させてもよい。これにより、凝集した混合粉をより適切に分離できる。
【0012】
一実施形態においては、分離させるステップでは、遠心分離機により比重分離を行ってもよい。この場合、沈降分離よりもより早くテトラヒドロほう酸塩の粉体と金属酸化物の粉体と無極性液体とを分離させることができる。
【0013】
本開示の他の側面は、メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末を分離するテトラヒドロほう酸塩の製造装置である。当該製造装置は、分散部、搬送部、及び、分離部を備える。分散部は、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間の比重となる無極性液体中に混合粉を分散させる。搬送部は、混合粉を分散させた無極性液体を分散部から搬送する。分離部は、混合粉を分散させた無極性液体を、比重に基づいてテトラヒドロほう酸塩の粉末と無極性液体と金属酸化物の粉末とに分離する。
【0014】
テトラヒドロほう酸塩及び金属酸化物は、無極性液体には溶解しない。このため、分散部では、例えば混合粉が投入された無極性液体を攪拌させることによって、テトラヒドロほう酸塩の粉末及び金属酸化物の粉末は、無極性液体中に分散する。このとき、粉末間に無極性液体が入り込むため、粉末の凝集も解消される。そして、分離部において、分散したテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とが比重に基づいて分離される。このように、この製造装置によれば、テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末を適切に分離できる。
【0015】
一実施形態においては、分散部は、ホモジナイザー又は撹拌ミルであってもよい。上述したテトラヒドロほう酸塩の製造方法と同様に、分散部は混合粉を無極性液体中により適切に分散させ、分離部において凝集した混合粉をより適切に分離できる。
【0016】
一実施形態においては、分離部は、遠心分離機であってもよい。上述したテトラヒドロほう酸塩の製造方法と同様に、沈降分離よりもより早くテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末と無極性液体とを分離させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末を適切に分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る製造装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】比較例に係る粉体の回折X線強度の測定結果を示すグラフである。
【
図4】比較例に係る粉体の回折X線強度の測定結果を示すグラフである。
【
図5】実施例に係る粉体の回折X線強度の測定結果を示すグラフである。
【
図6】実施例に係る粉体の回折X線強度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0020】
図1は、実施形態に係る製造装置の一例を示すブロック図である。
図1に示される製造装置1は、メカノケミカル法(以下、「MC法」と記載する場合がある)により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉を分離する装置である。
【0021】
テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉(以下、単に「混合粉」と記載する場合がある)は、メカノケミカル装置5においてMC法が適用されることで得られる。テトラヒドロほう酸塩は、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム及び水素化ほう素カリウムのうち少なくとも1つを含む。金属酸化物は、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのうち少なくとも1つを含む。例えば、メタほう酸ナトリウムの粉末、アルミニウム粒及び水素ガスがメカノケミカル装置5に供給され、MC法が適用されることによって水素化ほう素ナトリウムの粉末と酸化アルミニウムの粉末とを含む混合粉が得られる。混合粉の粉末には、粒子間で凝集力が発生する。特に、混合粉に含まれる100μm以下の異種材料からなる粒子同士は、MC法により粒子に加わる外力よりも粒子間力の方が優位となるため、凝集を起こしやすい。
【0022】
製造装置1は、取得部10と、分散部20と、搬送部30と、分離部40と、回収部50と、制御部60とを備える。取得部10は、メカノケミカル装置5から混合粉を取得する。取得部10は、例えば、混合粉を貯留可能なホッパと、メカノケミカル装置5とホッパとを結ぶ配管とを有する。混合粉は、配管を介してメカノケミカル装置5からホッパに送られる。
【0023】
分散部20は、混合粉を無極性液体中に分散させる分散機能を有する。無極性液体とは、水と反応しない液体であり、混合粉を構成するテトラヒドロほう酸塩及び金属酸化物が溶解しない液体である。分散部20は、例えば、ホモジナイザー又は撹拌ミルである。撹拌ミルは、例えば湿式媒体撹拌ミルである。分散部20は、例えば、取得部10に配管を介して接続する。分散部20は、例えば、分散容器と、分散容器内に無極性液体を供給するポンプとを有する。分散部20は、配管を介して取得部10のホッパから送られてきた混合粉を分散容器内に貯留する。
【0024】
分散部20は、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間の比重となる無極性液体中に混合粉を分散させる。分散部20が分散容器内に貯留された混合粉に対して無極性液体を供給することで、無極性液体が各混合粉の間に入り込み、混合粉同士の凝集を抑制することができる。混合粉に含まれるテトラヒドロほう酸塩と無極性液体とは反応しないため、分散部20は、テトラヒドロほう酸塩の量を減らすことなく混合粉を無極性液体中に分散させることができる。テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とが凝集塊が残存している場合であっても、無極性液体がテトラヒドロほう酸塩と金属酸化物との結合部に入り込むことで、テトラヒドロほう酸塩と金属酸化物とを分散させることができる。分散部20は、例えば、所定の時間撹拌アームを回転させることによって無極性液体が混合粉の間に十分に入り込ませる。
【0025】
無極性液体は、一例として、鎖状アルカン、環状アルカン、ハロゲン化炭化水素及び芳香族炭化水素のうち少なくとも1つを含む。鎖状アルカンとは、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等である。環状アルカンとは、例えば、シクロヘキサン等である。ハロゲン化炭化水素とは、ジブロモメタン、テトラブロモエタン、テトラクロロメタン、クロロホルム等である。芳香族炭化水素とは、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等である。
【0026】
無極性液体は、例えば、上記の化合物のうち少なくとも1つを含み、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間の比重となるように調整される。テトラヒドロほう酸塩の比重は約0.6g/cm3以上約1.2g/cm3以下であり、金属酸化物の比重は約3.6g/cm3以上約4.0g/cm3以下である。上記の無極性液体における中間の比重とは、テトラヒドロほう酸塩の比重より大きく、かつ、金属酸化物の比重より小さくなるように調整された比重を指す。例えば、無極性液体の比重は、1.3g/cm3以上3.5g/cm3以下となるように調整されてもよく、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下となるように調整されてもよい。
【0027】
分散部20は、取得部10から取得した混合粉を粉砕する機能を有していてもよい。混合粉を粉砕するとは、混合粉をほぐしたり、混合粉を細かくして分離させたりすることである。分散部20は、例えば、粉砕媒体であるボールと混合粉とを分散容器内に貯留する。この場合、分散部20は、分散容器内において所定の時間、湿式条件下で撹拌アームを回転させ、撹拌アームにボールを当接させることで運動させ、ボールを混合粉に衝突させることで混合粉を粉砕する。混合粉が粉砕されることで、少なくとも混合粉の平均粒子径が、取得部10においてメカノケミカル装置5から取得されたときの混合粉の平均粒子径より小さくなる。これにより、無極性液体中に混合粉がより一層分散されやすくなる。
【0028】
搬送部30は、混合粉を分散させた無極性液体(以下、単に「分散液体」と記載する場合がある)を分離部40に搬送する。搬送部30は、例えば、分散部20の分散容器と後述の分離部40の分離容器とを接続する配管と、配管内の液体を送るポンプとを有する。分散部20内の分散液体は、ポンプによって配管内を通り、分離部40まで搬送される。
【0029】
分離部40は、搬送部30により搬送された分散液体を比重分離することによりテトラヒドロほう酸塩と無極性液体と金属酸化物とに分離させる。テトラヒドロほう酸塩の粒子径と金属酸化物の粒子径とは略同一の値(例えばオーダーが大きく変わらない値)を取るため、分離部40は、例えば篩い等の粒子径を利用した分離を利用することはできない。このため、分離部40は分散液体に対して比重による分離を行う。
【0030】
分離部40は、例えば遠心分離機であり、分離容器と分離容器内の液体に回転力(遠心力)を加える駆動機構とを有する。分離部40は、搬送部30よって送られてきた分散液体を分離容器内に貯留する。分離容器内の分散液体は、駆動機構によって加えられる遠心力によって遠心沈降し、比重に応じて分離される。このとき、分散部20において供給された無極性液体の比重は、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間の比重であるため、分離容器内において分散液体は3層に分離する。例えば、回転中心から順にテトラヒドロほう酸塩、無極性液体、金属酸化物の層が形成される。
【0031】
回収部50は、分離部40において分離容器内で分離されたテトラヒドロほう酸塩の粉末を回収する。回収部50は、分離容器内のテトラヒドロほう酸塩の粉末を汲み取る、または、分離容器内からテトラヒドロほう酸塩の粉末を押し出す機構を有する。
【0032】
制御部60は、製造装置1の各構成と接続される。制御部60は、一例としてPLC(ProgrammableLogic Controller)として構成される。制御部60は、CPU(Central ProcessingUnit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などの主記憶装置、タッチパネルやキーボードなどの入力デバイス、ディスプレイなどの出力デバイス、ハードディスクなどの補助記憶装置などを含む通常のコンピュータシステムとして構成されてもよい。制御部60は、例えば、作業者が操作可能な操作盤が設けられる。制御部60は、取得部10における混合粉の取得、分散部20における混合粉の粉砕及び混合粉の分散、搬送部30における分散液体の搬送、分離部40における分散液体の分離、回収部50におけるテトラヒドロほう酸塩の回収等の製造装置1の各構成の動きを制御する。
【0033】
次に、テトラヒドロほう酸塩の製造方法を説明する。
図2は、実施形態に係る製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2に示される製造方法は、例えば、メカノケミカル装置5においてテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉が得られたときに、作業者の指示に基づいて制御部60によって開始される。
【0034】
まず、製造装置1における取得部10は、取得処理(S11)としてメカノケミカル装置5から混合粉を取得する。取得部10は、配管を介してメカノケミカル装置5から混合粉を取得し、ホッパに貯留する。分散部20は、取得処理(S11)として取得部10のホッパから分散容器内に混合粉を取得する。分散部20が所定の量の混合粉を取得した場合、制御部60は取得処理(S11)を終了させ、次の処理に移行する。
【0035】
続いて、分散部20は、分散処理(S13:分散させるステップの一例)として無極性液体中に混合粉を分散させる。分散部20は、分散容器内に貯留された混合粉に対して無極性液体を供給する。分散部20は、所定の時間撹拌アームを回転させることで無極性液体を混合粉の間に入り込ませる。これにより、テトラヒドロほう酸塩と金属酸化物とを無極性液体中に分散させる。なお、分散処理中において粉砕処理(粉砕するステップの一例)が行われてもよい。この場合、分散部20は、所定の時間、湿式条件下に設定した分散容器内で回転する撹拌アームにボールを当接させることでボールを運動させて混合粉に衝突させることで混合粉を粉砕する。撹拌アームの回転開始から所定の時間が経過したとき、制御部60は分散処理(S13)を終了させ、次の処理に移行する。
【0036】
続いて、搬送部30は、搬送処理(S15)として分散液体を分離部40に搬送する。搬送部30は、分散容器内に貯留された分散液体を、配管を通じて分離部40の分離容器に搬送する。搬送部30が所定の量の分散液体を分離容器内に搬送したとき、制御部60は搬送処理(S15)を終了させ、次の処理に移行する。
【0037】
続いて、分離部40は、分離処理(S17:分離させるステップの一例)として分散液体を比重分離することによりテトラヒドロほう酸塩と無極性液体と金属酸化物とに分離させる。分離部40は、分離液体を遠心分離することで、金属酸化物の粉末、無極性液体、及び、テトラヒドロほう酸塩の粉末を比重に応じた3層に分離する。分離部40が所定の時間遠心分離を行い、回転を終了させた場合、制御部60は分離処理(S17)を終了させ、次の処理に移行する。
【0038】
続いて、回収部50は、回収処理(S19)として分離容器内で3層に分離された分散液体からテトラヒドロほう酸塩を回収する。回収部50は、分離部40から分離容器を取得し、分離容器内のテトラヒドロほう酸塩の粉末を汲み取る、または、分離容器内からテトラヒドロほう酸塩の粉末を押し出すことにより、回収する。回収処理(S19)において所定の量のテトラヒドロほう酸塩が回収された場合、制御部60は回収処理(S19)を終了させ、テトラヒドロほう酸塩の製造方法を終了する。
【0039】
以上のように、製造装置1及び製造方法では、テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末を適切に分離できる。テトラヒドロほう酸塩及び金属酸化物は、無極性液体には溶解しない。このため、分散処理(S13)において、分散部20が、例えば混合粉が投入された無極性液体を攪拌することによって、テトラヒドロほう酸塩の粉末及び金属酸化物の粉末は、無極性液体中に分散する。このとき、粉末間に無極性液体が入り込むため、粉末の凝集も解消される。そして、分離処理(S17)において、分離部40により、分散したテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とが比重に基づいて分離される。
【0040】
また、無極性液体の比重は、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間であることから、重力又は遠心力によって金属酸化物の粉末、無極性液体、テトラヒドロほう酸塩の粉末の順に分離する。
【0041】
また、分散処理(S13)は、分散部20による粉砕処理を含む。この場合、分散処理(S13)において、メカノケミカル装置5により製造された混合粉が粉砕される。このため、粉砕した粒子間により容易に無極性液体が入り込むため、粒子の凝集が一層抑制され、無極性液体中に粒子をより分散させることができる。よって、この製造装置1及び製造方法によれば、テトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉からテトラヒドロほう酸塩の粉末をより適切に分離できる。
【0042】
また、テトラヒドロほう酸塩は水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム及び水素化ほう素カリウムのうち少なくとも1つを含み、金属酸化物は酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのうち少なくとも1つを含む。水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム及び水素化ほう素カリウムは重量あたりの水素貯蔵密度が高く、かつ、常温常圧での長期保存に適している。酸化マグネシウム又は酸化アルミニウムは安価に入手しやすい。この製造装置1及び製造方法は、テトラヒドロほう酸塩と金属酸化物とがそれぞれ上記の化合物を含む場合であっても、テトラヒドロほう酸塩を金属酸化物から適切に分離でき、水素利用が容易なテトラヒドロほう酸塩を適切に回収できる。
【0043】
また、無極性液体は、鎖状アルカン、環状アルカン、ハロゲン化炭化水素及び芳香族炭化水素のうち少なくとも1つを含む。分散部20の分散処理(S13)において、テトラヒドロほう酸塩と金属酸化物とが反応せず、かつ、溶解しない無極性液体を用いて混合粉を分散させることで、分離させるステップにおいてテトラヒドロほう酸塩の損失が抑えられる。
【0044】
分散処理(S13)において、分散部20はホモジナイザー又は撹拌ミルであり、混合粉を無極性液体中に分散させる。これにより、凝集した混合粉をより適切に分離できる。
【0045】
分離処理(S17)において、分離部40は遠心分離機であり、遠心分離によって比重分離を行う。この場合、沈降分離よりもより早くテトラヒドロほう酸塩の粉体と金属酸化物の粉体と無極性液体とを分離させることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態は本開示に係る製造装置1及び製造方法の一例を示すものである。本開示に係る製造装置1及び製造方法は、実施形態に係る製造装置1及び製造方法に限られない。例えば、製造装置1は、分散部20、搬送部30及び分離部40のみを備える構成であってもよい。例えば、製造方法は、分散処理(S13)及び分離処理(S17)のみを含む構成であってもよい。
【0047】
製造装置1は、メカノケミカル装置5の一部又は全部の構成を使用して製造方法を実行してもよい。分散部20は、粉砕処理を実行しなくてもよい。分散部20において供給される無極性液体は、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間の比重の液体の他に、テトラヒドロほう酸塩より小さい比重の液体、又は金属酸化物より大きい比重の液体を混合した液体であってもよい。分離部40は、遠心分離機でなくてもよい。分離部40は、例えば、遠心力を加えずに重力によって金属酸化物の粉末、無極性液体、及びテトラヒドロほう酸塩の粉末の3層に分離してもよい。この場合、分離部40は、沈降分離機であってもよい。
【実施例0048】
[水素発生量による製造方法の効果の確認]
実施形態に係る製造方法によって得られた粉末と、メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉とにおいて、水と反応させた場合の水素発生量を比較した検証例について説明する。テトラヒドロほう酸塩は、水素キャリアとして水素を捕捉すると共に水素を放出できる。水素キャリアとは、水素を輸送及び貯蔵可能な物質である。対象の粉末内に含まれるテトラヒドロほう酸塩の割合が大きいほど、対象の粉末と水とが反応することにより発生する水素の量(水素発生量)が大きくなる。このため、水素発生量を比較することによって、実施形態に係る製造方法によって得られた粉末と、メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉とのいずれがより多くのテトラヒドロほう酸塩を含むかを検証できる。
【0049】
(実施例1)
実施形態に係る製造方法によって粉末を得た。メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉として、水素化ほう素ナトリウムと酸化マグネシウムとの混合粉10gを用意した。ヘキサンとジブロモメタンとを混合し、水素化ほう素ナトリウムの比重と酸化マグネシウムの比重との中間の比重になるように調整して、無極性液体を得た。分散部20としてビーズミルを使用し、水素化ほう素ナトリウムと酸化マグネシウムとの混合粉10gを無極性液体に分散させながら混合粉砕させた(分散処理(S13))。続いて、分離部40として遠心分離機を使用し、比重に基づいて水素化ほう素ナトリウムの粉末が含まれる液体を分離させた(分離処理(S17))。分離させた液体中の固形分を上側から1/3程度取り出し、乾燥させて粉末を得た。
【0050】
(実施例2)
実施例2においては、混合粉に対して比重が調整されていない無極性液体を使用した。無極性液体は、ヘキサンである。その他の条件は実施例1と同一である。
【0051】
(比較例1)
比較例1においては、混合粉に対して比重が調整されていない無極性液体を使用した。無極性液体は、ヘキサンである。また、分離処理(S17)を実行しなかった。その他の条件は実施例1と同一である。
【0052】
(比較例2)
比較例2においては、混合粉に対して比重が調整されていない無極性液体を使用した。無極性液体は、ヘキサンである。また、分散処理(S13)を実行しなかった。その他の条件は実施例1と同一である。
【0053】
(比較例3)
比較例3に係る粉末は、メカノケミカル法により得られたテトラヒドロほう酸塩の粉末と金属酸化物の粉末とを含む混合粉である。すなわち、比較例3においては、分散処理(S13)及び分離処理(S17)が行われなれていない。
【0054】
(評価結果)
実施例1,2及び比較例1~3において、粉末2gを水と反応させて水素を発生させ、水素量を測定した。結果を表1に示す。表1は、実施例1,2及び比較例1~3の水素発生量に関する結果を示した表である。表1中の調整条件とは、上記の実施例1,2及び比較例1~3に対して行った処理の概要を指す。表1中の水素発生量とは、実施例1,2及び比較例1~3の粉末2gを水と反応させて得られた水素の量(L)である。水素化ほう素ナトリウムと水とが反応すると、水素が放出されて二酸化ほう素ナトリウムが残る。表1中の純度とは、水素化ほう素ナトリウムの粉末2gがすべて水と反応したときの水素発生量の理論値(L)に対する、測定された各水素発生量(L)の割合(%)である。表1中の評価において、純度が70%以上となるサンプルは十分に水素を発生しているとして「○」と表現し、純度が54%以上となるサンプルは概ね水素を発生しているとして「△」と表現し、純度が54%未満となるサンプルは十分に水素を発生していないとして「×」と表現している。なお、テトラヒドロほう酸塩の純度が54%以上であれば、テトラヒドロほう酸塩のエネルギー密度は他の水素キャリアのエネルギー密度と比較して高くなる。
【0055】
【0056】
表1に示されるように、実施例2と比較例1とを比べると、分離処理(S17)を実行した方が、水素発生量が2倍多かった。このため、実施例2の方が、比較例1と比べて粉末の所定の量あたりの水素化ほう素ナトリウムの量が多いことが示唆された。すなわち、分離処理(S17)がテトラヒドロほう酸塩を混合粉から分離する方法として適切な処理であることが確認された。
【0057】
また、実施例2と比較例2とを比べると、分散処理(S13)を実行した方が、水素発生量が2倍多かった。このため、実施例2の方が、比較例2と比べて粉末の所定の量あたりの水素化ほう素ナトリウムの量が多いことが示唆された。すなわち、分散処理(S13)がテトラヒドロほう酸塩を混合粉から分離する方法として適切な処理であることが確認された。
【0058】
また、比較例1,2,3をそれぞれ比べると、水素発生量が変わらなかった。この結果より、混合粉に対して分散処理(S13)又は分離処理(S17)のいずれか一方のみを実行するだけでは、回収処理(S19)において得られる粉末の所定の量あたりの水素化ほう素ナトリウムの量が変わらないことが示唆された。すなわち、分散処理(S13)又は分離処理(S17)のいずれか一方のみを含む方法は、水素化ほう素ナトリウムを混合粉から分離する方法として適切ではないことが示唆された。よって、実施例2と比較例1~3とを比べた結果、分散処理(S13)及び分離処理(S17)を共に実行することで、混合粉からテトラヒドロほう酸塩を適切に分離できることが確認された。
【0059】
また、実施例1の水素発生量及び純度は、実施例2及び比較例1~3の水素発生量及び純度と比べて高い。実施例1と実施例2とを比べると、水素化ほう素ナトリウムの比重と酸化マグネシウムの比重との中間の比重になるように調整された無極性液体を用いる方が、水素発生量が多かった。この結果より、実施例1の方が、実施例2と比べて粉末の所定の量あたりの水素化ほう素ナトリウムの量が多いことが示唆された。すなわち、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間の比重になるように調整された無極性液体を用いる方がテトラヒドロほう酸塩を混合粉から分離する方法としてより適切であることが確認された。
【0060】
[組成解析結果]
実施例1,2及び比較例1,3に係る粉末を対象としてXRD(X線回折法:X-rayDiffraction)によって回折角度ごとの回折X線強度を測定した。
図3は、比較例3に係る粉体の回折X線強度の測定結果を示すグラフである。
図4は、比較例1に係る粉体の回折X線強度の測定結果を示すグラフである。
図5は、実施例2に係る粉体の回折X線強度の測定結果を示すグラフである。
図6は、実施例1に係る粉体の回折X線強度の測定結果を示すグラフである。
【0061】
図3~
図6に示される各グラフの横軸は走査軸の角度を示す回折角度(度)であり、各グラフの縦軸は1秒間に検出器が取り込んだ回折X線数を示す強度(CPS)である。以下、回折X線強度を単に強度と記載する場合がある。なお、
図3~
図6において、縦軸のピークの強度の視認性を上げるため各図においてスケールを変更している。また、
図3~
図6に示されるNaBH
4は水素化ほう素ナトリウムのピーク、MgOは酸化マグネシウムのピークを指す。
【0062】
最初に、製造方法実行前の混合粉である比較例3の測定結果を説明する。
図3に示されるように、比較例3の測定結果においては、水素化ほう素ナトリウムのピーク及び酸化マグネシウムのピークが確認された。このように、製造方法実行前の混合粉は、水素化ほう素ナトリウムと酸化マグネシウムとを含むことが確認された。なお、水素化ほう素ナトリウムのピークの強度は酸化マグネシウムのピークの強度より小さかった。
【0063】
次に、それぞれの製造方法を実行した混合粉の測定結果を説明する。
図4に示されるように、比較例1(分散+比重未調整液体)の測定結果においても、水素化ほう素ナトリウムのピーク及び酸化マグネシウムのピークが確認された。このように、比較例1の混合粉は、水素化ほう素ナトリウムと酸化マグネシウムとを含むことが確認された。なお、水素化ほう素ナトリウムのピークの強度は酸化マグネシウムのピークの強度より小さかった。比較例3と比較すると、酸化マグネシウムのピークの強度に対する水素化ほう素ナトリウムのピークの強度の割合は略同一であった。これにより、比較例1に係る製造方法を実行したとしても、製造方法実行前の混合粉と成分及び構造に大きな変化がないことが確認された。
【0064】
図5に示されるように、実施例2(分散+分離+比重未調整液体)の測定結果においても、水素化ほう素ナトリウムのピーク及び酸化マグネシウムのピークが確認された。このように、実施例2の混合粉は、水素化ほう素ナトリウムと酸化マグネシウムとを含むことが確認された。なお、水素化ほう素ナトリウムのピークの強度は酸化マグネシウムのピークの強度より大きかった。比較例3と比較すると、酸化マグネシウムのピークの強度に対する水素化ほう素ナトリウムのピークの強度の割合は大きくなった。このため、実施例2に係る製造方法を実行することで、製造方法実行前の混合粉と比べて、水素化ほう素ナトリウムの純度が上昇することが確認された。
【0065】
そして、
図6に示されるように、実施例1(分散+分離+比重調整液体)の測定結果においても、水素化ほう素ナトリウムのピーク及び酸化マグネシウムのピークが確認された。このように、実施例1の混合粉は、水素化ほう素ナトリウムと酸化マグネシウムとを含むことが確認された。なお、水素化ほう素ナトリウムのピークの強度は酸化マグネシウムのピークの強度より大きかった。比較例3と比較すると、酸化マグネシウムのピークの強度に対する水素化ほう素ナトリウムのピークの強度の割合は大きくなった。さらに、実施例2と比較しても、酸化マグネシウムのピークの強度に対する水素化ほう素ナトリウムのピークの強度の割合は大きくなった。このため、実施例1に係る製造方法を実行することで、製造方法実行前の混合粉及び実施例2の混合粉と比べて、水素化ほう素ナトリウムの純度が上昇することが確認された。
【0066】
以上、酸化マグネシウムのピークの強度に対する水素化ほう素ナトリウムのピークの強度の割合は、実施例1、実施例2、比較例1(比較例3)の順に高かった。すなわち、
図3~
図6の各グラフからも、表1の結果と同様、実施例1、実施例2、比較例1(比較例3)の順に粉末の所定の量あたりの水素化ほう素ナトリウムの量が多く、水素化ほう素ナトリウムの純度が高いことが示唆された。
【0067】
したがって、
図3及び
図4のグラフからも、表1の結果と同様、分散処理(S13)のみを含む方法は、水素化ほう素ナトリウムを混合粉から分離する方法として適切ではないことが確認された。また、
図4及び
図5のグラフからも、表1の結果と同様、分散処理(S13)及び分離処理(S17)を共に実行する方法がテトラヒドロほう酸塩を混合粉から分離する方法として適切であることが確認された。さらに、
図5及び
図6のグラフからも、表1の結果と同様、テトラヒドロほう酸塩の比重と金属酸化物の比重との中間の比重になるように調整された無極性液体を用いる方がテトラヒドロほう酸塩を混合粉から分離する方法としてより適切であることが確認された。