IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特開2022-164245三軸織物製品及び三軸織物製品又はルーバー材の製造方法
<>
  • 特開-三軸織物製品及び三軸織物製品又はルーバー材の製造方法 図1
  • 特開-三軸織物製品及び三軸織物製品又はルーバー材の製造方法 図2
  • 特開-三軸織物製品及び三軸織物製品又はルーバー材の製造方法 図3
  • 特開-三軸織物製品及び三軸織物製品又はルーバー材の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164245
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】三軸織物製品及び三軸織物製品又はルーバー材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 25/00 20060101AFI20221020BHJP
   E06B 9/26 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
D03D25/00
E06B9/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069620
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】木下 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良介
(72)【発明者】
【氏名】守田 洋一
【テーマコード(参考)】
2E043
4L048
【Fターム(参考)】
2E043AA01
4L048BA16
4L048BB04
(57)【要約】
【課題】本発明は、例えば建物の外部からの目線や日光、風雨などを一定に遮ることができる三軸織物製品及びその製造方法に関し、三軸織物製品は、軽量で、安全性及び施工性が高く、並びに機能性付与が容易なものである。
【解決手段】三軸織物から成るシート体20を筒状に形成した三軸織物製品10であって、シート体20は、空隙部21の面積割合が5%以上50%以下である。所定の糸条幅Wを有し、折り曲げ可能な樹脂製の糸状材30~32を3本使用し、3本の糸状材30~32を所定の角度θで編んだ三軸織物から成るシート体20と、断面が四角形で、シート体20の全長以上の長尺の型材40とを使用し、シート体20を型材40の外面に巻き付けながら、全体が筒状になるように三軸織物製品を形成する第1工程と、三軸織物製品10から型材40を抜き取る第2工程とを含んでも良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三軸織物から成るシート体を筒状に形成した三軸織物製品であって、
前記シート体は、空隙部の面積割合が5%以上50%以下である、ことを特徴とする三軸織物製品。
【請求項2】
前記シート体は、全体が筒状になるように、幅方向の両端部同士を固着している、ことを特徴とする請求項1に記載の三軸織物製品。
【請求項3】
前記両端部同士を、接着剤で固着してなることを特徴とする請求項2に記載の三軸織物製品。
【請求項4】
前記両端部同士を、熱溶着で固着してなることを特徴とする請求項2に記載の三軸織物製品。
【請求項5】
前記両端部同士を、2本のフラットバーで挟み込みボルトで固着してなることを特徴とする請求項2に記載の三軸織物製品。
【請求項6】
前記シート体の筒内の中空部に、吸音材を収納している、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の三軸織物製品。
【請求項7】
前記シート体の筒内の中空部に、消臭剤若しくは芳香剤を収納している、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の三軸織物製品。
【請求項8】
前記シート体の筒内の中空部に、発光体を収納している、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の三軸織物製品。
【請求項9】
前記シート体の筒内の中空部に、調湿材を収納している、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の三軸織物製品。
【請求項10】
所定の糸条幅を有し、折り曲げ可能な樹脂製の糸状材を3本使用し、3本の糸状材を所定の角度で編んだ三軸織物から成るシート体と、断面が四角形で、前記シート体の全長以上の長尺の型材とを使用し、
前記シート体を前記型材の外面に巻き付けながら、全体が筒状になるように三軸織物製品を形成する第1工程と、
前記三軸織物製品から前記型材を抜き取る第2工程とを含む、ことを特徴とする三軸織物製品の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の三軸織物製品が、建築物のルーバー材であることを特徴とする三軸織物製のルーバー材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建物の外部からの目線や日光、風雨などを一定に遮ることができる三軸織物製品及び三軸織物製品又はルーバー材の製造方法に関し、軽量で、安全性及び施工性が高く、並びに機能性付与が容易なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維強化プラスチック(FRP)等の繊維強化複合材料を成型面へ適合し得る三軸織物が知られている(特許文献1の段落[0008]及び図1参照)。
また、従来、音響空間における音響障害を防止し、音響空間の音響を聴き心地の良い音響に調音する音響構造体が知られている(特許文献2の段落[0001]及び図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2932321号公報
【特許文献2】特許第5761136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来の三軸織物(特許文献1)及び音響構造体(特許文献2)は、建物のルーバー材に用いられるものでない。
本発明者は、三軸織物を用いた建物のルーバー材を考えた。三軸織物を用いることで、一般的な木材やアルミ製のルーバー材に比較し、三軸織物を中空な筒状とすることで、軽量なルーバー材を目指した。例えば、軽量化により、震災等で落下しても重大な損失が起こりにくく、安全性が高く、施工を容易性にできる。
一方、中空な筒状とし、三軸織物を使用することで、等方向性、連続した規則性のある空隙部を形成でき、機能性付与が容易なルーバー材を目指した。例えば、三軸織物の特性を生かし、中空な筒状内に、吸音材を収納することで、吸音効果を得ることができる。
そこで、本発明は、三軸織物を中空な筒状とすることで、軽量で、安全性及び施工性が高く、並びに機能性付与が容易な三軸織物製品を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様に係る三軸織物製品は、三軸織物から成るシート体を筒状に形成した三軸織物製品であって、前記シート体は、空隙部の面積割合が5%以上50%以下であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る三軸織物製品は、前記シート体が、全体が筒状になるように、幅方向の両端部同士を固着している、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る三軸織物製品は、前記両端部同士を、接着剤で固着してなることを特徴とする。
本発明の一態様に係る三軸織物製品は、前記両端部同士を、熱溶着で固着してなることを特徴とする。
本発明の一態様に係る三軸織物製品は、前記両端部同士を、2本のフラットバーで挟み込みボルトで固着してなることを特徴とする。
【0006】
本発明の一態様に係る三軸織物製品は、前記シート体の筒内の中空部に、吸音材を収納している、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る三軸織物製品は、前記シート体の筒内の中空部に、消臭剤若しくは芳香剤を収納している、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る三軸織物製品は、前記シート体の筒内の中空部に、発光体を収納している、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る三軸織物製品は、前記シート体の筒内の中空部に、調湿材を収納している、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る三軸織物製品の製造方法は、所定の糸条幅を有し、折り曲げ可能な樹脂製の糸状材を3本使用し、3本の糸状材を所定の角度で編んだ三軸織物から成るシート体と、断面が四角形で、前記シート体の全長以上の長尺の型材とを使用し、前記シート体を前記型材の外面に巻き付けながら、全体が筒状になるように三軸織物製品を形成する第1工程と、前記三軸織物製品から前記型材を抜き取る第2工程とを含む、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る三軸織物製のルーバー材の製造方法は、三軸織物製品が、建築物のルーバー材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係る三軸織物製品によれば、軽量で、安全性及び施工性が高く、並びに機能性付与が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る三軸織物製品の一部の平面図である。
図2】本発明に係る三軸織物製品の製造方法を説明するために概略図であり、同図(a)~(d)に工程を示すものである。
図3】本発明に係る三軸織物製品の端部同士の固着方法を説明するために概略図であり、同図(a)~(c)に異なる固着方法を示すものである。
図4】本発明に係る三軸織物製品に機能を付与した概略図であり、同図(a)は断面図で、(b)は斜視図を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(三軸織物製品10)
図1及び図2中、10は三軸織物製品を示すものであり、三軸織物製品10は、例えば建築物の内外に取り付けられ、外部からの目線や日光、風雨などを一定に遮ることができるため、部屋の間仕切り、日よけ、雨よけ、通風換気などに使用できる。三軸織物製品10は、例えば建築物のルーバー材として使用でき、これに限定されず、例えば部屋の間仕切りとしても使用できる。
三軸織物製品10は、三軸織物から成るシート体20を筒状、例えば角筒形に形成したものである。
なお、筒状として、角筒形を例示したが、限定されず、角筒形は四角形に限定されず、図示しないが、三角形形、五角形以上の多角形でも良いし、円筒形、楕円形でも良い。
【0011】
(三軸織物)
三軸織物は、図1に示すように、折り曲げ可能な樹脂製の糸状材30~32から構成される。
糸状材30~32は、3本使用し、3本の糸状材30~32を所定の織角度、例えば60度でシート状に編んだものである。
3本の糸状材30~32は、(1)軸糸30、(2)右上がりバイアス糸31、(3)左上がりバイアス糸32から成る。
【0012】
(空隙部21)
三軸織物は、3本の糸状材30~32の編み目内に、3本の糸状材30~32で囲まれ、表裏面に貫通した六角形の空隙部21が連続し規則的に形成される。
空隙部21は、3本の糸状材30~32の糸条の幅W、織角度θを調整することで、面積を調整でできる。
例えば、図1に示すように、糸条幅(W)4mm、織角度(θ)60度で構成した時の空隙部21の面積を計算すると、約30%になる。
空隙部21の面積は、後述の機能性付与の材料、図4に示すように、例えば吸音材60の収納を考慮すると、30%を基準に5%~50%の範囲が望ましい。
空隙部21の面積を小さくする場合は、糸条の幅Wを大きくする、若しくは織角度θを小さくすることで可能である。
空隙部21の面積を大きくする場合は、糸状の幅Wを小さくする、若しくは織角度θを大きくすることで可能である。
【0013】
(糸状材30~32の樹脂の材質)
糸状材30~32の樹脂の材質は、例えば、熱可塑性樹脂,熱硬化性樹脂,紫外線硬化性樹脂等を挙げることができる。
糸状材30~32の樹脂の材質としては、ポリエステル(PET)が望ましい。
生糸状態では成型性を持たないため、ラッピング適性がないことより、例えば、伸縮し成型性があり、ラッピング適性がある「ポリエステル繊維」を使用することができる。
【0014】
(熱可塑性樹脂について)
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂,ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂,ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)樹脂,ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂,液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂や、ポリエチレン(PE)樹脂,ポリプロピレン(PP)樹脂,ポリブチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂や、スチレン系樹脂や、ポリオキシメチレン(POM)樹脂,ポリアミド(PA)樹脂,ポリカーボネート(PC)樹脂,ポリメチレンメタクリレート(PMMA)樹脂,ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂,ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂,ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂,変性PPE樹脂,熱可塑性ポリイミド(PI)樹脂,ポリアミドイミド(PAI)樹脂,ポリエーテルイミド(PEI)樹脂,ポリスルホン(PSU)樹脂,変性PSU樹脂,ポリエーテルスルホン(PES)樹脂,ポリケトン(PK)樹脂,ポリエーテルケトン(PEK)樹脂,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂,ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂,ポリアリレート(PAR)樹脂,ポリエーテルニトリル(PEN)樹脂,熱可塑性フェノール系樹脂,フェノキシ樹脂,ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂、更に、ポリスチレン系樹脂,ポリオレフィン系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリアミド系樹脂,ポリブタジエン系樹脂,ポリイソプレン系樹脂,フッ素系樹脂等の熱可塑エラストマーや、これらの共重合体,変性体,2種類以上ブレンドした樹脂等が挙げられる。
【0015】
(熱硬化性樹脂について)
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂(PF),エポキシ樹脂(EP),メラミン樹脂(MF),ユリア樹脂(UF),不飽和ポリエステル樹脂(UP),アルキド樹脂,ポリウレタン(PUR),熱硬化性ポリイミド(PI)等が挙げられる。
(紫外線硬化性樹脂)
上記紫外線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系,エポキシ系等が挙げられる。
【0016】
(本実施例の製造方法)
上記構成を有する三軸織物製品10の製造方法について、図2(a)~(d)を用いて説明する。
三軸織物製品10は、図示しないが、ラッピング機を用いて製造する(以下、「本実施例の製造方法」という。)。
すなわち、本実施例の製造方法は、ラッピングの場合と同様に、三軸織物の巻を、巻き出しから送り出し、型材40に対してコマを用いて巻き付けていく。
通常のラッピング材と同様に、図2(a)に示すように、例えばアルミ製の型材40及びラッピング用シート、すなわち三軸織物製のシート体20を事前に用意する。
型材40は、断面が四角形で、シート体20の全長以上の長尺のものである。型材40として、アルミ製を例示したが、木製でも良い。
つぎに、ラッピング機にて、図2(b)に示すように、シート体20を型材40の外面にあわせて巻き込んでいく。
このとき、三軸織物には、接着剤の塗布は実施しない。
つぎに、シート体20の幅方向に両端部22、23を、図2(c)に示すように、内側に重ねて折り返す。
ラッピング後、図2(d)に示すように、型材40に巻き付けたシート体20の状態になり、型材40は筒形に開口端25(図4(b)参照)から抜く。これにより、型材40の通りの形状をしたシート体20だけが得られる。
すなわち、シート体20は、型材40を抜き取ると、図2(d)に示すように、内部にシート体20で四方が囲まれた角柱形の中空部24が形成される。
【0017】
(従来の製造方法との比較)
従来は、雄雌の型を用いて、三軸織物を成型加工していた(以下、「従来の製造方法」という。)。
従来の製造方法は、次のような問題点がある。
(1)寸法の制限について
従来の製造方法は、形状(=寸法)が雄雌の型に依存するため、大判や長尺が必要な場合、同様の雄雌の型とその型を使用するプレス機とが必要になる。
市場を確認したところ、プレス機の最大は1.2m×2.4mとなっている。
例えば、天井材の用途だと、5m以上の長尺が必要となる場合もあり、成型加工だと対応が難しい。
(2)成型の品質安定性について
従来の製造方法は、大判になればなるほど、プレス圧のバラツキを拾うため、型の再現性が部分的に変わる。
(3)製品展開の長期化について
従来の製造方法は、型は樹脂やアルミ材を切削で行うため、最低でも2ヵ月以上はかかり、多様な形状の製品展開する場合、長期間のリードタイムが必要になる。
【0018】
(本実施例の製造方法の利点)
これに対し、本実施例の製造方法は、従来の製造方法に比較し、次のような利点がある。
(1)寸法の制限について
本実施例の製造方法は、従来の製造方法に比較し、連続性のある成型加工が可能なので、長さ方向の制限はなくなる
(2)成型の品質安定性について
本実施例の製造方法は、従来の製造方法に比較し、ラッピングはコマで圧力をかけていくため、部分的に圧力がかからないという問題は起きない。また、本実施例の製造方法は、セッティングした成型条件通り生産されるため、バラツキは生じない、若しくはバラツキを減少できる。
(3)製品展開の長期化について
従来の製造方法は、形状は例えばアルミの押し出し等の型材に依存する。
本実施例の製造方法も、アルミの押し出し用の型を製作する必要があるが、従来の雄雌型を製作する期間よりも短く、約1か月程度のリードタイムで製作可能となる。
【0019】
(従来のルーバー材との比較)
従来のルーバー材は、主に木材、アルミ等で構成されている。
従来のルーバー形状としては、木材がブロック状、アルミが厚み1mm程度で構成された中空状となっていた。
本実施例の三軸織物製品10は、従来のアルミと同様の厚み1mm程度の中空状である。
【0020】
本実施例の三軸織物製品10の利点)
(1)重量の比較
本実施例の三軸織物製品10は、密度(g/cm)及び10cm(製品形状)での重量は以下の通りである。
従来の木材製:密度0.8g/cm→750g/10cm・ブロック状
従来のアルミ製:密度2.7g/cm→108g/10cm・厚み1mmの中空
本実施例のポリエステル製:密度0.4g/m→15g/10cm・厚み1mmの中空
本実施例のポリエステル製の重量は、同様形状の従来のアルミに比べて70%減となる。
(2)安全面について
本実施例の三軸織物製品10は、製品として長尺使用(1本5m)の場合でも、1kg以下となり、震災等で落下しても重大な損失が起こりにくい。
【0021】
(3)施工性について
従来のルーバー材は、水平面、垂直面に関わらず、施工する場合、重量の問題があり、複数の取付部材を用意し、下地材を含めて設計を必要とする。
本実施例の三軸織物製品10は、軽量であるため、下地の強度や取付部材を、従来に比べて必要としないため、例えば既存の天井壁に粘着剤や接着剤、マグネット等を用いて取り付けられ、施工が容易となる。
(4)機能性付与について
本実施例の三軸織物製品10は、三軸織物の空隙部21を生かしたルーバー形状になるので、例えばフェルト材の吸音材等を組込んで、音性能に特化したり、ビーズ材の消臭剤等を組込んで消臭機能に特化したり、機能性への展開が容易に可能である。
【0022】
(封函作業)
シート体20は、図2(d)に示すように、断面上にみて端部22、23同士が固着されていない、すなわち封函されていない。
端部22、23同士の封函は、以下のパターンで実施可能である。
(1)図3(a)に示すように、オンライン又はオフラインにて端部22、23同士を接着(接着部50)する
この際の接着剤は、固形分が高いウレタン系、ゴム系、PUR系などが望ましい。
これは、硬化対象が空隙部21を要する平面になるため、固形分が低いと接着剤が滞留しにくく、均一に塗布できないためである。
(2)図3(b)に示すように、オンライン又はオフラインにて端部22、23同士を熱溶着(溶着部51)する。
この際の温度条件として、ポリエステル素材(PET系)の軟化点ではなく、Tg(ガラス転移点)が望ましい。
これは、糸条の太さが約10mmと細く、加熱対象が点になるため、軟化点(=熱変形温度)の例えば240℃前後では溶融して溶着できない。ガラス転移点、例えば70℃~100℃程度なら溶着可能であり、例えば150℃程度で溶融した。
(3)図3(c)に示すように、端部22、23同士をジグにて固着する
例えば2本のアルミ製のフラットバーで端部22、23を挟み込み、ボルト(ボルト固定部52)で固着する。
なお、フラットバーとして、アルミ製を例示したが、これに限定されず、例えば樹脂製でも良い。ボルト固定部52は、ボルトをフラットバーにねじ込んで固定しても良いし、ナットを使用して固定しても良い。
【0023】
(機能性付与)
封函後のシート体20は、図4(a)及び(b)に示すように、表面に空隙部21がある「ルーバー材」となる。
空隙部21がある成型品になるため、中空部24に入れる機能材料の機能を維持しつつ部材としての成立が可能となる。
機能性材料、例えば吸音材60は、抜け落ちないように、空隙部21(図1参照)以上の大きさであることが必要である。
なお、シート体20の開口端25は、図4(b)に示すように、開口した状態であるが、機能性材料の抜け落ちを防止するため、例えば内側に折り返して閉じても良いし、或いはキャップ状のものを被せても良い。
【0024】
(1)音について
例えば中空部24に、例えばフェルト材等の多孔質材料からなる吸音材60を入れれば、全体として吸音部材となる。
また、空隙部21(図1参照)の大きさを調整することで、全体として調音部材となる。
(2)臭いについて
中空部24に、図示しないが、消臭剤や芳香剤を入れれば、全体として消臭部材や芳香部材となる。
(3)照明について
中空部24に、図示しないが、例えばLED等の発光体から成る照明を入れると、間接照明部材となる。
(4)湿度について
中空部24に、図示しないが、コルクや珪藻土材料などを入れると、全体として調湿部材となる。
なお、機能性材料は、上記(1)~(4)に限定されず、図示しないが、複数種類の機能性材料を混合して中空部24に入れても良いし、全長方向に複数に区分して、複数種類の機能性材料を交互に入れても良い。
【0025】
(実施の形態の第一の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第一の特徴点は、三軸織物から成るシート体20を筒状に形成した三軸織物製品10であって、シート体20は、空隙部21の面積割合が5%以上50%以下である。
(第一の特徴点の効果)
第一の特徴点によれば、軽量で、安全性及び施工性が高く、並びに機能性付与が容易な三軸織物製品10を提供できる。
また、三軸織物製品10は、例えば建築物のルーバー材として使用することができるが、ルーバー材に限らず、室内の目隠しや間仕切りとしても使用できる。
(実施の形態の第二の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第二の特徴点は、シート体20が、全体が筒状になるように、幅方向の両端部22、23同士を固着している。
(第二の特徴点の効果)
第二の特徴点によれば、筒状に固着することで、三軸織物製品10の形状を長期間にわたって維持できる。
【0026】
(実施の形態の第三の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第三の特徴点は、両端部22、23同士を、接着剤(接着部50)で固着してなる。
(第三の特徴点の効果)
第三の特徴点によれば、接着により簡便に固着できる。
(実施の形態の第四の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第四の特徴点は、両端部22、23同士を、熱溶着(溶着部51)で固着してなる。
(第四の特徴点の効果)
第四の特徴点によれば、熱溶着により簡便に固着できる。
【0027】
(実施の形態の第五の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第五の特徴点は、両端部22、23同士を、2本のフラットバーで挟み込みボルト(ボルト固定部52)で固着してなる。
(第五の特徴点の効果)
第五の特徴点によれば、フラットバーとボルトとにより強固に固着できる。
(実施の形態の第六の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第六の特徴点は、シート体20の筒内の中空部24に、吸音材60を収納している。
(第六の特徴点の効果)
第六の特徴点によれば、吸音機能を持たせることができる。
【0028】
(実施の形態の第七の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第七の特徴点は、シート体20の筒内の中空部24に、消臭剤若しくは芳香剤を収納している。
(第七の特徴点の効果)
第七の特徴点によれば、消臭機能や芳香機能を持たせることができる。
(実施の形態の第八の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第八の特徴点は、シート体20の筒内の中空部24に、発光体を収納している。
(第八の特徴点の効果)
第八の特徴点によれば、直接或いは間接照明機能を持たせることができる。
【0029】
(実施の形態の第九の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第九の特徴点は、シート体20の筒内の中空部24に、調湿材を収納している。
(第九の特徴点の効果)
第九の特徴点によれば、調湿機能を持たせることができる。
(実施の形態の第十の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第十の特徴点は、所定の糸条幅Wを有し、折り曲げ可能な樹脂製の糸状材30~32を3本使用し、3本の糸状材30~32を所定の角度θで編んだ三軸織物から成るシート体20と、断面が四角形で、シート体20の全長以上の長尺の型材40とを使用し、シート体20を型材40の外面に巻き付けながら、全体が筒状になるように三軸織物製品を形成する第1工程と、三軸織物製品10から型材40を抜き取る第2工程とを含む。
(第十の特徴点の効果)
第十の特徴点によれば、従来の雄雌の型を用いて成型加工していた場合と比較し、寸法の自由度の向上、成型の品質安定性の向上、製品展開の長期化を防止できる。
(実施の形態の第十一の特徴点)
実施の形態に係る三軸織物製品10の第十一の特徴点は、三軸織物製品10が、建築物のルーバー材である。
(第十一の特徴点の効果)
第十一の特徴点によれば、一般的な木材やアルミ製のルーバー材に比較し、三軸織物を中空な筒状とすることで、軽量なルーバー材を提供できる。例えば、軽量化により、震災等で落下しても重大な損失が起こりにくく、安全性が高く、施工を容易性にできる。
【符号の説明】
【0030】
10 三軸織物製品
20 シート体
21 空隙部
22 第1端部
23 第2端部
24 中空部
25 開口端
30 軸糸
31 右上がりバイアス糸
32 左上がりバイアス糸
40 型材
50 接着部
51 溶着部
52 ボルト固定部
60 吸音材
θ 織角度
W 幅
図1
図2
図3
図4