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特開2022-164252支点取付具及び支点取付具の取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164252
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】支点取付具及び支点取付具の取付方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20221020BHJP
   A62B 35/00 20060101ALI20221020BHJP
   F16B 45/02 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E04G21/32 D
A62B35/00 J
F16B45/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069633
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】岩井 健二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 充
(72)【発明者】
【氏名】海老塚 勝徳
【テーマコード(参考)】
2E184
3J038
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184LA16
3J038AA01
3J038BA02
3J038BB02
3J038BC02
(57)【要約】
【課題】給湯器等の機器が設置された建物の躯体に、躯体の損傷を伴うことなく、墜落制止用器具を接続可能な支点を設け、当該機器のメンテナンス、取替等の作業を安全に行うことを可能にする。
【解決手段】支点取付具10は、墜落制止用器具を接続可能な支点20と、機器18の取付部21(下部)を躯体壁面16に固定するための既設のスタッドボルト22(下部固定部材)を利用して躯体壁面16に固定される下部第1取付部31、及び機器18の取付部21(下部)が固定される下部第2取付部32を備え、支点20が設けられた下部取付具30と、機器18の取付部26(上部)を躯体壁面16に固定するための既設のスタッドボルト28(上部固定部材)を利用して躯体壁面16に固定される上部第1取付部41、及び機器18の取付部26(上部)が固定される上部第2取付部42を備え、前記支点が設けられた上部取付具40と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体壁面に設置された機器と前記躯体壁面との間に後付けされる支点取付具であって、
墜落制止用器具を接続可能な支点と、
前記機器の下部を前記躯体壁面に固定するための既設の下部固定部材を利用して前記躯体壁面に固定される下部第1取付部、及び前記機器の下部が固定される下部第2取付部を備え、前記支点が設けられた下部取付具と、
前記機器の上部を前記躯体壁面に固定するための既設の上部固定部材を利用して前記躯体壁面に固定される上部第1取付部、及び前記機器の上部が固定される上部第2取付部を備え、前記支点が設けられた上部取付具と、
を有する支点取付具。
【請求項2】
前記下部取付具は、前記支点及び前記下部第1取付部を有し下方から前記下部第1取付部に工具を差込み可能な第1部材と、前記下部第2取付部を有し前記第1部材に取り付けられる第2部材とを備える請求項1に記載の支点取付具。
【請求項3】
建物の躯体壁面に設置された機器と前記躯体壁面との間に支点取付具を後付けする支点取付具の取付方法であって、
墜落制止用器具を接続可能な支点と、
前記機器の下部を前記躯体壁面に固定するための既設の下部固定部材を利用して前記躯体壁面に固定される下部第1取付部、及び前記機器の下部が固定される下部第2取付部を備え、前記支点が設けられた下部取付具と、
前記機器の上部を前記躯体壁面に固定するための既設の上部固定部材を利用して前記躯体壁面に固定される上部第1取付部、及び前記機器の上部が固定される上部第2取付部を備え、前記支点が設けられた上部取付具と、を有する支点取付具を用い、
前記機器の下部を前記躯体壁面から取り外し、前記躯体壁面に残る前記下部固定部材を利用して前記下部取付具を前記躯体壁面に固定し、該下部取付具に前記機器の下部を再固定する第1工程と、
前記機器の上部を前記躯体壁面から取り外し、前記躯体壁面に残る前記上部固定部材を利用して前記上部取付具を前記躯体壁面に固定し、該上部取付具に前記機器の上部を再固定する第2工程と、
を有する支点取付具の取付方法。
【請求項4】
前記下部取付具が、前記支点及び前記下部第1取付部を有し下方から前記下部第1取付部に工具を差込み可能な第1部材と、前記下部第2取付部を有し前記第1部材に取り付けられる第2部材とを備え、
前記第1工程において、前記躯体壁面に前記第1部材を固定し、前記第1部材に前記第2部材を固定し、前記第2部材に前記機器の下部を再固定する請求項3に記載の支点取付具の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支点取付具及び支点取付具の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車の安全装置において、作業台に設けられた係止体におけるロープのフック係止部材に、作業者に結合されたロープのフックを係止させることが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-324927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルコニーに設置された給湯器が高所に設置されている場合もしくは有効な高さの柵がない場合において、メンテナンスや機器取替を行う作業員は脚立や作業台を使用して作業を行う。墜落の恐れがある場合、防護措置の一つとして命綱(安全帯、墜落制止用器具)を取り付けて作業を行う場合が有る。その際には給湯器の周囲に有効な命綱の取り付け場所が必要だが、命綱の取り付け場所である丸環が設置されていない場合が多い。その場合は後付けで丸環を設置することを検討するが、一般には躯体にアンカーボルトを打ち込む必要が有ることより躯体の損傷などの恐れが有り、建物所有者から拒否され実施できない。
【0005】
本発明は、給湯器等の機器が設置された建物の躯体に、躯体の損傷を伴うことなく、墜落制止用器具を接続可能な支点を設け、当該機器のメンテナンス、取替等の作業を安全に行うことを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る支点取付具は、建物の躯体壁面に設置された機器と前記躯体壁面との間に後付けされる支点取付具であって、墜落制止用器具を接続可能な支点と、前記機器の下部を前記躯体壁面に固定するための既設の下部固定部材を利用して前記躯体壁面に固定される下部第1取付部、及び前記機器の下部が固定される下部第2取付部を備え、前記支点が設けられた下部取付具と、前記機器の上部を前記躯体壁面に固定するための既設の上部固定部材を利用して前記躯体壁面に固定される上部第1取付部、及び前記機器の上部が固定される上部第2取付部を備え、前記支点が設けられた上部取付具と、を有する。
【0007】
この支点取付具は、建物の躯体壁面に設置された給湯器等の機器と躯体壁面との間に後付けされる。支点取付具は、下部取付具及び上部取付具を有している。下部取付具は、下部第1取付部において、既設の下部固定部材を利用して躯体壁面に固定される。機器の下部は、下部取付具における下部第2取付部に固定される。上部取付具は、上部第1取付部において、既設の上部固定部材を利用して躯体壁面に固定される。機器の上部は、上部取付具における上部第2取付部に固定される。このように、上部取付具は、機器の上部と躯体壁面との間に固定される。また、下部取付具は、機器の下部と躯体壁面との間に固定される。下部取付具及び上部取付具には、墜落制止用器具を接続可能な支点がそれぞれ設けられているので、給湯器等の機器が設置された建物の躯体に、躯体の損傷を伴うことなく、墜落制止用器具を接続可能な支点を設けることができる。また、支点に墜落制止用器具を接続することで、機器のメンテナンス、取替等の作業を安全に行うことができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る支点取付具において、前記下部取付具が、前記支点及び前記下部第1取付部を有し下方から前記下部第1取付部に工具を差込み可能な第1部材と、前記下部第2取付部を有し前記第1部材に取り付けられる第2部材とを備える。
【0009】
この支点取付具では、下部取付具が、第1部材及び第2部材を備えている。第1部材は、下部第1取付部において、既設の下部固定部材を利用して躯体壁面に固定される。第1部材は機器の下部と躯体壁面との間に配置されるので、第1部材と機器の下部の間から下部第1取付部に工具を差し込むことが難しい。しかしながら、第1部材においては、下方から下部第1取付部に工具を差込み可能であるので、第1部材の取付け作業を容易に行うことができる。第2部材は、下部第2取付部を有し、第1部材に取り付けられるので、第2部材を第1部材に取り付けた後、機器の下部を下部第2取付部に固定できる。
【0010】
第3の態様に係る支点取付具の取付方法は、建物の躯体壁面に設置された機器と前記躯体壁面との間に支点取付具を後付けする支点取付具の取付方法であって、墜落制止用器具を接続可能な支点と、前記機器の下部を前記躯体壁面に固定するための既設の下部固定部材を利用して前記躯体壁面に固定される下部第1取付部、及び前記機器の下部が固定される下部第2取付部を備え、前記支点が設けられた下部取付具と、前記機器の上部を前記躯体壁面に固定するための既設の上部固定部材を利用して前記躯体壁面に固定される上部第1取付部、及び前記機器の上部が固定される上部第2取付部を備え、前記支点が設けられた上部取付具と、を有する支点取付具を用い、前記機器の下部を前記躯体壁面から取り外し、前記躯体壁面に残る前記下部固定部材を利用して前記下部取付具を前記躯体壁面に固定し、該下部取付具に前記機器の下部を再固定する第1工程と、前記機器の上部を前記躯体壁面から取り外し、前記躯体壁面に残る前記上部固定部材を利用して前記上部取付具を前記躯体壁面に固定し、該上部取付具に前記機器の上部を再固定する第2工程と、を有する。
【0011】
この支点取付具の取付方法では、建物の躯体壁面に設置された機器と躯体壁面との間に支点取付具を後付けする。第1工程において、機器の下部を躯体壁面から取り外し、躯体壁面に残る下部固定部材を利用して下部取付具を躯体壁面に固定し、該下部取付具に機器の下部を再固定する。次に、第2工程において、機器の上部を躯体壁面から取り外し、躯体壁面に残る上部固定部材を利用して上部取付具を躯体壁面に固定し、該上部取付具に機器の上部を再固定する。
【0012】
下部取付具及び上部取付具には、墜落制止用器具を接続可能な支点がそれぞれ設けられているので、機器の近傍に該支点を設けることができる。
【0013】
下部取付具は、上部取付具よりも高さの低い位置に設置されるので、下部取付具の取付け作業を安全に行い易い。機器が高い位置に設置されている場合、先に下部取付具を取り付け、下部取付具の支点に墜落制止用器具を接続する。これにより、上部取付具の取付け作業を行う際の安全を確保できる。
【0014】
第4の態様は、第3の態様に係る支点取付具の取付方法において、前記下部取付具が、前記支点及び前記下部第1取付部を有し下方から前記下部第1取付部に工具を差込み可能な第1部材と、前記下部第2取付部を有し前記第1部材に取り付けられる第2部材とを備え、前記第1工程において、前記躯体壁面に前記第1部材を固定し、前記第1部材に前記第2部材を固定し、前記第2部材に前記機器の下部を再固定する。
【0015】
この支点取付具の取付方法では、下部取付具が、第1部材及び第2部材を備えている。第1工程において、第1部材は、下部第1取付部において、既設の下部固定部材を利用して躯体壁面に固定される。第1部材は機器の下部と躯体壁面との間に配置されるので、第1部材と機器の下部の間から下部第1取付部に工具を差し込むことが難しい。しかしながら、第1部材においては、下方から下部第1取付部に工具を差込み可能であるので、第1部材の取付け作業を容易に行うことができる。下部第2取付部を有する第2部材は、第1工程において第1部材に取り付けられる。第2部材を第1部材に取り付けた後、機器の下部を下部第2取付部に再固定できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、給湯器等の機器が設置された建物の躯体に、躯体の損傷を伴うことなく、墜落制止用器具を接続可能な支点を設け、当該機器のメンテナンス、取替等の作業を安全に行うことを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】躯体壁面に機器が設置された状態を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る支点取付具を示す分解斜視図である。
図3】機器の下部を躯体壁面から取り外す工程を示す断面図である。
図4】(A)下部取付具を躯体壁面に固定する工程を示す断面図である。(B)下部取付具を躯体壁面に固定する工程を示す拡大断面図である。
図5】(A)下部取付具に機器の下部を再固定する工程を示す断面図である。(B)下部取付具に機器の下部を再固定する工程を示す拡大断面図である
図6】下部取付具の支点に墜落制止用器具を接続した状態で、機器の上部を躯体壁面から取り外す工程を示す断面図である。
図7】(A)上部取付具を躯体壁面に固定する工程を示す断面図である。(B)上部取付具を躯体壁面に固定する工程を示す拡大断面図である。
図8】(A)上部取付具に機器の上部を再固定する工程を示す断面図である。(B)上部取付具に機器の上部を再固定する工程を示す拡大断面図である
図9】躯体壁面と機器との間に支点取付具が後付けされた状態を示す断面図である。
図10】下部取付具の変形例を示す拡大断面図である。
図11】躯体壁面に支点取付具を介して機器が取り付けられた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0019】
図1において、建物12における例えばベランダ14に面した躯体壁面16には、給湯器等の機器18が設置されている。機器18の下部には板状の取付部21が設けられている。この取付部21は、下部固定部材の一例としてのスタッドボルト22及びナット24により躯体壁面16に固定されている。また、機器18の上部には板状の取付部26が設けられている。この取付部26は、上部固定部材の一例としてのスタッドボルト28及びナット29により躯体壁面16に固定されている。
【0020】
図2において、本実施形態に係る支点取付具10は、建物12の躯体壁面16に設置された機器18と躯体壁面16との間に後付けされるようになっている。建物12は、例えば高層住宅であり、ベランダ14を有している。ベランダ14における躯体壁面16に、給湯器等の機器18が設置されている。支点取付具10は、支点20と、下部取付具30と、上部取付具40とを有している。下部取付具30及び上部取付具40は水平方向に配置され、機器18の幅寸法よりも大きな長さを有している。
【0021】
支点20は、墜落制止用器具44を接続可能な例えば環状部材(アイボルト)であり、下部取付具30の両端部と上部取付具40の両端部にそれぞれ取り付けられている。
【0022】
(下部取付具)
下部取付具30は、下部第1取付部31、及び機器18の下部(取付部21)が固定される下部第2取付部32を備え、支点20が設けられている。また、一例として、下部取付具30は、第1部材51と、第2部材52とを備える分割構造とされている。第1部材51は、支点20及び下部第1取付部31を有し下方から下部第1取付部31に工具を差込み可能とされている。
【0023】
具体的には、下部取付具30の第1部材51は、例えば上下方向に長い断面長方形かつ中空のパイプである。支点20は、例えば第1部材51の前面の長手方向両端部に取り付けられている。第1部材51の長手方向中央部には、前面から底面にわたる切欠き51Aが形成されている。下部第1取付部31は、第1部材51の背面に設けられ、切欠き51Aの部分に露出している。これにより、下方から下部第1取付部31に工具を差込み可能となっている。第1部材51の底面における切欠き51Aの長手方向両側の近傍には、雄ねじ34が下方に突出して設けられている。
【0024】
下部第1取付部31には、複数の貫通孔31Aが、第1部材51の長手方向に並んで形成されている。下部第1取付部31は、機器18の下部(取付部21)を躯体壁面16に固定するための既設のスタッドボルト22及びナット24を利用して、躯体壁面16に固定される。このとき、既設のスタッドボルト22の位置に合う貫通孔31Aが選択される。
【0025】
第2部材52は、下部第2取付部32を有し、第1部材51に取り付けられる、例えばL字断面の板状部材である。第2部材52は、その長手方向において、第1部材51の切欠き51Aよりも長く形成されている。第2部材52の底面の長手方向の両端部には、雄ねじ34が挿通される貫通孔52Aがそれぞれ形成されている。雄ねじ34を貫通孔52Aに挿通し、該雄ねじ34にナット36を締め付けることで、第2部材52が第1部材51に固定される。このとき、第2部材52の両端部が第1部材51の前面及び底面に重ねられ、切欠き51Aを塞ぐようになっている。
【0026】
下部第2取付部32は、第2部材52の前面である。下部第2取付部32には、複数の貫通孔32Aが、第2部材52の長手方向に並んで形成されている。機器18の下部(取付部21)は、貫通孔32Aに螺合するねじ38(図5(B))を用いて、下部第2取付部32に固定されるようになっている。
【0027】
(上部取付具)
上部取付具40は、上部第1取付部41、及び上部第2取付部42を備え、支点20が設けられている。上部第1取付部41は、機器18の上部(取付部26)を躯体壁面16に固定するための既設のスタッドボルト28及びナット29を利用して躯体壁面16に固定される。上部第2取付部42には、機器18の上部(取付部26)が固定される。
【0028】
具体的には、上部取付具40は、例えば上下方向に長い断面長方形かつ中空のパイプである。支点20は、例えば上部取付具40の前面の長手方向両端部に取り付けられている。上部取付具40の前面には、例えば長円形の窓40Aが2箇所形成されている。窓40Aは、工具を差し込むための貫通孔である。上部第1取付部41は、上部取付具40の背面に設けられている。上部第1取付部41における窓40Aの奥には、複数の貫通孔41Aが、上部取付具40の長手方向に並んで形成されている。上部第1取付部41は、機器18の上部(取付部26)を躯体壁面16に固定するための既設のスタッドボルト28及びナット29を利用して、躯体壁面16に固定される。このとき、既設のスタッドボルト28の位置に合う貫通孔41Aが選択される。
【0029】
上部第2取付部42は、上部取付具40の前面である。上部第2取付部42における例えば2箇所の窓40Aの間には、複数の貫通孔42Aが、上部取付具40の長手方向に並んで形成されている。機器18の上部(取付部26)は、貫通孔42Aに螺合するねじ48(図8(B))を用いて、上部第2取付部42に固定されるようになっている。
【0030】
(支点取付具の取付方法)
支点取付具10の取付方法は、建物12の躯体壁面16に設置された機器18と躯体壁面16との間に支点取付具10を後付けする支点取付具10の取付方法であって、第1工程S1と、第2工程S2とを有している。
【0031】
図3から図5において、第1工程S1は、ナット24を緩めて機器18の下部(取付部21)を躯体壁面16から取り外し(図3)、躯体壁面16に残るスタッドボルト22と、取り外したナット24を利用して、下部取付具30を躯体壁面16に固定し(図4)、該下部取付具30に機器18の下部(取付部21)を再固定する(図5)工程である。なお、機器18の下部(取付部21)を躯体壁面16から離す際に機器18を傾け易くなるように、機器の上部(取付部26)を固定するナット29を緩めておいてもよい。
【0032】
下部取付具30が、第1部材51と第2部材52を備える分割構造とされている場合、図4に示されるように、まずスタッドボルト22及びナット24を利用して、躯体壁面16に第1部材51を固定する。このとき、第1部材51は機器18の下部(取付部21)と躯体壁面16との間に配置されるが、第1部材51においては、下方から下部第1取付部31に工具を差込み可能であるので、第1部材51の取付け作業、具体的にはナット24の締付け作業を容易に行うことができる。
【0033】
続いて、第1部材51の雄ねじ34を第2部材の貫通孔52Aに通し、雄ねじ34にナット36を締め付けることにより、第1部材51に第2部材52を固定する。そして、第2部材52に機器18の下部(取付部21)を再固定する。第2部材52は下部第2取付部32を有しているので、第2部材52を第1部材51に取り付けた後、ねじ38を用いて機器18の下部(取付部21)を下部第2取付部32に固定できる(図5)。ねじ38は、下部第2取付部32の貫通孔32Aに螺合する。なお、この段階では機器18が傾いているので、ねじ38による下部(取付部21)の固定は仮止めでよい。下部取付具30は、上部取付具40よりも高さの低い位置に設置されるので、下部取付具30の取付け作業を安全に行い易い。
【0034】
図6から図8において、第2工程S2は、ナット29を緩めて機器18の上部(取付部26)を躯体壁面16から取り外し(図6)、躯体壁面16に残るスタッドボルト28と、取り外したナット29を利用して上部取付具40を躯体壁面16に固定し(図7)、該上部取付具40に機器18の上部(取付部26)を再固定する(図8)工程である。上部取付具40の固定の際にナット29を締め付ける工具(図示せず)は、前面の窓40Aから差し込むことができる(図2)。上部取付具40は上部第2取付部42を有しているので、ねじ48を用いて機器18の上部(取付部26)を上部第2取付部42に固定できる(図8)。ねじ48は、上部第2取付部42の貫通孔42Aに螺合する。
【0035】
機器18が高い位置に設置されている場合や、高層階で作業を行う場合等、必要に応じて、下部取付具30の支点20と作業者50とを墜落制止用器具44により連結する。墜落制止用器具44は、例えば安全帯である。これにより、上部取付具40の取付け作業を行う際の安全を確保できる。作業者50が作業台(図示せず)に乗って上部取付具40を取り付ける場合でも、同様に作業者50の安全を確保できる。
【0036】
これにより、図9図10に示されるように、機器18と躯体壁面16との間に支点取付具10の下部取付具30及び上部取付具40を後付けすることができる。下部取付具30及び上部取付具40には、墜落制止用器具44を接続可能な支点20がそれぞれ設けられているので、給湯器等の機器18が設置された建物12の躯体に、躯体の損傷を伴うことなく、墜落制止用器具44を接続可能な支点20を設けることができる。また、支点20に墜落制止用器具44を接続することで、機器18のメンテナンス、取替等の作業を安全に行うことができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0038】
図2において、下部取付具30の第1部材51に切欠き51Aが形成されるものとしたが、下方から工具を差込み可能であればよい。例えば、図11に示されるように、下部取付具30を逆U字状に構成してもよい。このように構成した場合、下部取付具30を図2に示されるような分割構造にしなくてもよい。下部取付具30の下方が開放されているので、工具の差込みが可能となるためである。なお、この例では、下部第2取付部32は、下部取付具30の前面であり、ねじ38を締結するための貫通孔32Aも該前面に形成されている。
【符号の説明】
【0039】
10 支点取付具
12 建物
16 躯体壁面
18 機器
20 支点
21 取付部(機器の下部)
22 スタッドボルト(下部固定部材)
26 取付部(機器の上部)
28 スタッドボルト(上部固定部材)
30 下部取付具
31 下部第1取付部
32 下部第2取付部
40 上部取付具
41 上部第1取付部
42 上部第2取付部
44 墜落制止用器具
51 第1部材
52 第2部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11