(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164263
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】センサー用光導波路およびセンシングシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/122 20060101AFI20221020BHJP
G01D 5/26 20060101ALI20221020BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G02B6/122
G01D5/26 J
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069647
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 信介
(72)【発明者】
【氏名】河口 竜巳
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠
【テーマコード(参考)】
2F103
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2F103CA06
2F103CA07
2F103EB02
2F103EB06
2F103EC07
2F103EC08
2H137AA14
2H137AB11
2H137BA02
2H137BA55
2H137BB02
2H137BC32
2H147AA02
2H147AB04
2H147BA09
2H147BA11
2H147CA01
2H147CA08
2H147CA17
2H147CB01
2H147CB03
2H147EA16A
2H147EA16B
(57)【要約】
【課題】被着体の機械的変化を検出するセンシングシステムであって、センシング結果の確認が容易なセンシングシステム、および、かかるセンシングシステムを実現可能なセンサー用光導波路を提供すること。
【解決手段】本発明のセンサー用光導波路は、被着体に取り付けられるセンサー用光導波路であって、入射光を伝搬させ、伝搬させた前記入射光を出射光として出射させるとともに、機械的変化を受けたとき前記入射光を漏れ光として漏出させる光伝搬部を備え、前記出射光の色と前記漏れ光の色とが異なっていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に取り付けられるセンサー用光導波路であって、
入射光を伝搬させ、伝搬させた前記入射光を出射光として出射させるとともに、機械的変化を受けたとき前記入射光を漏れ光として漏出させる光伝搬部を備え、
前記出射光の色と前記漏れ光の色とが異なっていることを特徴とするセンサー用光導波路。
【請求項2】
前記光伝搬部は、
前記入射光が伝搬するコア部と、
前記コア部に設けられ、前記コア部を伝搬させた前記入射光の色を変更し、前記出射光として出射させる第1色変更部と、
を有する請求項1に記載のセンサー用光導波路。
【請求項3】
前記第1色変更部は、波長バンドパスフィルターの機能を有する請求項2に記載のセンサー用光導波路。
【請求項4】
前記第1色変更部は、波長変換の機能を有する請求項2または3に記載のセンサー用光導波路。
【請求項5】
前記第1色変更部は、樹脂硬化体またはシート体である請求項2ないし4のいずれか1項に記載のセンサー用光導波路。
【請求項6】
前記光伝搬部は、
前記入射光が伝搬する長尺状のコア部と、
前記コア部の側方に設けられ、前記コア部から漏出する前記入射光の色を変更し、前記漏れ光として出射させる第2色変更部と、
を有する請求項1に記載のセンサー用光導波路。
【請求項7】
前記第2色変更部は、波長バンドパスフィルターの機能を有する請求項6に記載のセンサー用光導波路。
【請求項8】
前記第2色変更部は、波長変換の機能を有する請求項6または7に記載のセンサー用光導波路。
【請求項9】
前記第2色変更部の弾性率は、前記コア部の弾性率より高い請求項6ないし8のいずれか1項に記載のセンサー用光導波路。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のセンサー用光導波路と、
前記センサー用光導波路に向けて光を射出する発光素子と、
を備えることを特徴とするセンシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー用光導波路およびセンシングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、監視対象物の変位や変形を光により監視する光ファイバーセンサーが開示されている。この光ファイバーセンサーは、一対の連結部材と、各連結部材に設けられた光ファイバー保持部と、光ファイバー保持部で保持された光ファイバーと、光ファイバーに接続された光パルス試験器と、を備えている。
【0003】
この光ファイバーセンサーでは、正常時、フレネル反射光や損失増大は観測されない。しかし、何らかの異常により、連結部材間に相対変位が発生すると、光ファイバー保持部が変形し、光ファイバーに変形や破断が生じる。光ファイバーに変形や破断が生じると、フレネル反射光や損失増大が観測される。このような反射光や損失増大を光パルス試験器によって検出することにより、監視対象物の異常を捉える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光ファイバーセンサーでは、光パルス試験器から試験光を光ファイバーに入射させ、戻り光を光パルス試験器によって観測する。しかしながら、光パルス試験器は、高価かつ大型であるため、設置が容易ではない。また、観測結果を確認するためには、光パルス試験器を監視者の手元に用意する必要があり、監視者の配置が制約される。
【0006】
本発明の目的は、被着体の機械的変化を検出するセンシングシステムであって、センシング結果の確認が容易なセンシングシステム、および、かかるセンシングシステムを実現可能なセンサー用光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(10)の本発明により達成される。
(1) 被着体に取り付けられるセンサー用光導波路であって、
入射光を伝搬させ、伝搬させた前記入射光を出射光として出射させるとともに、機械的変化を受けたとき前記入射光を漏れ光として漏出させる光伝搬部を備え、
前記出射光の色と前記漏れ光の色とが異なっていることを特徴とするセンサー用光導波路。
【0008】
(2) 前記光伝搬部は、
前記入射光が伝搬するコア部と、
前記コア部に設けられ、前記コア部を伝搬させた前記入射光の色を変更し、前記出射光として出射させる第1色変更部と、
を有する上記(1)に記載のセンサー用光導波路。
【0009】
(3) 前記第1色変更部は、波長バンドパスフィルターの機能を有する上記(2)に記載のセンサー用光導波路。
【0010】
(4) 前記第1色変更部は、波長変換の機能を有する上記(2)または(3)に記載のセンサー用光導波路。
【0011】
(5) 前記第1色変更部は、樹脂硬化体またはシート体である上記(2)ないし(4)のいずれかに記載のセンサー用光導波路。
【0012】
(6)前記光伝搬部は、
前記入射光が伝搬する長尺状のコア部と、
前記コア部の側方に設けられ、前記コア部から漏出する前記入射光の色を変更し、前記漏れ光として出射させる第2色変更部と、
を有する上記(1)に記載のセンサー用光導波路。
【0013】
(7) 前記第2色変更部は、波長バンドパスフィルターの機能を有する上記(6)に記載のセンサー用光導波路。
【0014】
(8) 前記第2色変更部は、波長変換の機能を有する上記(6)または(7)に記載のセンサー用光導波路。
【0015】
(9) 前記第2色変更部の弾性率は、前記コア部の弾性率より高い上記(6)ないし(8)のいずれかに記載のセンサー用光導波路。
【0016】
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のセンサー用光導波路と、
前記センサー用光導波路に向けて光を射出する発光素子と、
を備えることを特徴とするセンシングシステム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被着体の機械的変化を検出するセンシングシステムであって、センシング結果の確認が容易なセンシングシステムが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記センシングシステムを実現可能なセンサー用光導波路が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るセンサー用光導波路を用いたセンシングシステムの概略を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すセンシングシステムの断面図である。
【
図3】
図2に示すセンシングシステムの動作を説明する断面図である。
【
図4】
図2に示すセンサー用光導波路の部分拡大斜視図である。
【
図5】
図3に示す第1色変更部とは別の機能を有する第1色変更部を備えたセンシングシステムについて、その動作を説明する断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るセンサー用光導波路を用いたセンシングシステムの動作を説明する断面図である。
【
図7】
図6に示す導光部にミラーを設けたセンシングシステムについて、その動作を説明する断面図である。
【
図8】
図6に示す第2色変更部とは別の機能を有する第2色変更部を備えたセンシングシステムについて、その動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のセンサー用光導波路およびセンシングシステムについて添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
1.第1実施形態
1.1.センシングシステム
まず、第1実施形態に係るセンサー用光導波路1を用いたセンシングシステム100について説明する。
【0022】
図1は、第1実施形態に係るセンサー用光導波路1を用いたセンシングシステム100の概略を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すセンシングシステム100の断面図である。
図3は、
図2に示すセンシングシステム100の動作を説明する断面図である。
【0023】
なお、各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定し、矢印で示している。また、矢印の先端側を「プラス側」といい、基端側を「マイナス側」という。さらに、Z軸を表す矢印の先端側を「上」といい、基端側を「下」という。
【0024】
図1に示すセンシングシステム100は、センサー用光導波路1を備える。
図1に示すセンサー用光導波路1は、導光部10(光伝搬部)と、第1色変更部5と、を有する。
【0025】
センサー用光導波路1は、
図1および
図2に示すように、被着体9に取り付けられた状態で使用される。「取り付ける」とは、センサー用光導波路1のうち、少なくとも導光部10が、被着体9に密着している状態をいう。密着とは、外力を受けて被着体9に押し付けられている状態や、接着力により被着体9に接着している状態等を指す。
【0026】
本実施形態では、
図2に示すように、センサー用光導波路1が接着層2を介して被着体9に接着されている。これにより、被着体9の機械的変化を、センサー用光導波路1を介して検出するセンシングシステム100が実現される。具体的には、このセンシングシステム100では、被着体9にセンサー用光導波路1を貼り付けた状態で、
図3に示すように、センサー用光導波路1が有する導光部10に対して入射光L1を連続的または断続的に入射する。入射光L1は、導光部10を伝搬する。そして、センサー用光導波路1を伝搬した入射光L1は、出射端101から出射する。
【0027】
図1および
図2に示す第1色変更部5は、出射端101を覆うように設けられている。第1色変更部5は、出射端101から出射する入射光L1の色を変更する。そして、入射光L1とは異なる色の出射光L2が生成され、第1色変更部5から出射する。したがって、被着体9が通常の状態にあるとき、センシングシステム100では、導光部10に入射光L1を入射すると、第1色変更部5を介して、入射光L1とは異なる色を呈する出射光L2が出射する。センシングシステム100の動作状況を監視する監視者が、この出射光L2の色を視認した場合には、被着体9が通常の状態にあることを認識することができる。したがって、監視者は、少なくとも導光部10に機械的変化を及ぼすような異常が被着体9に発生していないことを、出射光L2の色を介して認識することができる。
【0028】
一方、導光部10に入射光L1を入射している状態で、被着体9の表面に機械的変化、例えば
図3に示す亀裂91が発生した場合について説明する。なお、被着体9の表面の機械的変化は、亀裂91に限定されず、伸びや段差、せん断等であってもよい。被着体9の表面に亀裂91が生じると、その影響がセンサー用光導波路1にも及ぶため、センサー用光導波路1の一部にも機械的変化が生じる。その結果、センサー用光導波路1が有する導光部10には、例えば、
図3に示すような破断面8が生じる。導光部10に生じる機械的変化も、破断面8に限定されず、伸びや縮み、曲げ、ねじれ等であってもよい。
【0029】
導光部10に破断面8が生じると、入射光L1は破断面8で反射する。入射光L1は様々な方向に反射するが、その一部は、
図3に示す漏れ光L3として被着体9とは反対側に漏出する。本実施形態では、漏れ光L3の色と入射光L1の色とが同じであるため、漏れ光L3の色と出射光L2の色とが異なっている。したがって、センシングシステム100の監視者が、この漏れ光L3の色を視認した場合には、被着体9が通常の状態にはないことを認識することができる。
【0030】
センシングシステム100は、
図2に示すように、発光素子71を備える。
発光素子71は、電源72に接続されている。電源72から供給された電力により、発光素子71が入射光L1を出力する。発光素子71としては、例えば、発光ダイオード、電球、半導体レーザー等が挙げられる。
【0031】
電源72には、商用電源の他、一次電池や二次電池のようなバッテリー、太陽電池、各種発電機等が用いられてもよい。バッテリー、太陽電池、発電機等を用いることで、センシングシステム100を設置する場所の自由度を高めることができる。
【0032】
また、
図2に示すセンシングシステム100は、光ファイバー3を備える。
光ファイバー3は、センサー用光導波路1と発光素子71とを光学的に接続している。光ファイバー3としては、例えば、ガラス製光ファイバー、プラスチック製光ファイバー等が挙げられる。なお、光ファイバー3は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。つまり、センサー用光導波路1と発光素子71とが直接接続されていてもよい。
【0033】
なお、発光素子71として、太陽光や室内光等の外光を採光する採光器が用いられてもよい。採光器は、例えば、前述した光ファイバー3に接続された集光レンズを備える。集光レンズは、外光を集光し、光ファイバー3を介してセンサー用光導波路1に外光を入射する。発光素子71として採光器を用いた場合、電源72を省略してもよい。
【0034】
1.2.センサー用光導波路
次に、第1実施形態に係るセンサー用光導波路について説明する。
図4は、
図2に示すセンサー用光導波路1の部分拡大斜視図である。
【0035】
1.2.1.導光部
センサー用光導波路1が有する導光部10は、
図4に示すように、下方から、第1カバー層18、クラッド層11、コア層13、クラッド層12、および第2カバー層19がこの順で積層されてなる積層体を備える。導光部10の各層は、X-Y面と平行に広がっている。コア層13中には、
図4に示すように、Y軸に沿って延在する長尺状のコア部14と、X軸に沿ってコア部14の側面に隣接する側面クラッド部15と、が形成されている。なお、
図1では、第1カバー層18および第2カバー層19の図示を省略している。
【0036】
なお、導光部10の構造は、
図4に示す構造に限定されない。例えば、Y-Z面による導光部10の断面形状は、
図4に示す長方形に限定されず、正方形、平行四辺形のような長方形以外の四角形であってもよいし、三角形、六角形のような多角形であってもよいし、真円、楕円、長円のような円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。ただし、導光部10の断面形状が四角形や多角形であれば、例えば第1カバー層18の下面を取り付け面とした場合、被着体9に対して導光部10を安定的に取り付けることができる。
【0037】
導光部10は、例えば、
図2に示すように、第1カバー層18の下面を接着面109として、被着体9に接着するように用いられる。
図2に示す接着面109と被着体9との間には、接着層2が介在する。これにより、導光部10を被着体9に容易に固定することができる。
【0038】
コア部14は、
図4に示すように、その側面に側面クラッド部15が隣接し、上下面にクラッド層11、12が隣接している。そして、コア部14の屈折率は、側面クラッド部15やクラッド層11、12の屈折率よりも高くなっている。これにより、コア部14に光を閉じ込めて伝搬させることができる。
【0039】
コア層13において、コア部14の光路に直交する面内における屈折率分布は、いかなる分布であってもよく、例えば屈折率が不連続的に変化した、いわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化した、いわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。
【0040】
Y-Z面によるコア部14の断面形状は、特に限定されないが、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、その他の形状が挙げられる。
【0041】
コア層13の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア部14に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0042】
コア層13の構成材料(主材料)としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられる。なお、樹脂材料には、異なる組成のものを組み合わせた複合材料も用いられる。また、本明細書において「主材料」とは、構成材料の50質量%以上を占める材料のことをいい、好ましくは70質量%以上を占める材料のことをいう。
【0043】
クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、クラッド層11、12に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0044】
また、クラッド層11、12の主材料は、例えば、前述したコア層13の構成材料として挙げた材料から適宜選択して用いられる。
【0045】
なお、クラッド層11、12は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。このとき、例えばコア層13が外気(空気)に曝されていれば、その外気がクラッド層11、12として機能する。
【0046】
本実施形態に係る導光部10は、コア層13と第1カバー層18との間に設けられているクラッド層11と、コア層13と第2カバー層19との間に設けられているクラッド層12と、を有しているので、コア部14とその外部との間で、安定した屈折率差を形成し、維持することができる。このため、コア部14の伝送効率をより高めることができる。なお、クラッド層11、12のいずれか一方または双方は、側面クラッド部15と一体になっていてもよい。
【0047】
第1カバー層18は、クラッド層11の下面に設けられている。第2カバー層19は、クラッド層12の上面に設けられている。このような第1カバー層18および第2カバー層19を設けることにより、コア層13やクラッド層11、12を保護し、外部環境等に起因したコア部14の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0048】
第1カバー層18および第2カバー層19の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。
【0049】
第1カバー層18および第2カバー層19は、互いに同じ構成であっても互いに異なる構成であってもよい。例えば、第1カバー層18および第2カバー層19は、平均厚さが互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。第1カバー層18および第2カバー層19の少なくとも一方は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0050】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0051】
第1カバー層18の弾性率は、コア部14の弾性率より高いことが好ましい。同様に、第2カバー層19の弾性率は、コア部14の弾性率より高いことが好ましい。これにより、コア部14を外力や外部環境から保護することができる。各部の弾性率とは、例えば、各部の主材料のヤング率である。
【0052】
なお、第1カバー層18および第2カバー層19の構成材料には、必要に応じて、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。このうち、フィラーを添加することにより、第1カバー層18および第2カバー層19の熱膨張係数を調整することができる。
【0053】
1.2.2.接着層
図2に示す導光部10と被着体9との間には、接着層2が設けられている。接着層2は、あらかじめ導光部10側に設けられているのが好ましい。すなわち、センサー用光導波路1は、接着面109に設けられた未硬化の接着層2を備えていてもよい。これにより、導光部10を被着体9に貼り付ける作業を効率よく行うことができる。
【0054】
接着層2を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤の他、ポリエステル系、変性オレフィン系の各種ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0055】
未硬化の接着層2は、液状であっても、固形または半固形であってもよく、硬化反応が一部進行している状態であってもよい。また、接着層2を構成する接着剤が硬化性材料を含む場合の硬化原理は、熱硬化であっても、光硬化であってもよい。さらに、未硬化の接着層2は、接着面109全体に設けられていてもよいし、一部のみに設けられていてもよい。硬化後の接着層2の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであるのが好ましく、5~60μmであるのがより好ましい。
【0056】
なお、接着層2に代えて、または、接着層2と併用して、
図2の導光部10の上方から導光部10を被着体9に押さえつける粘着シートや接着シートを用いるようにしてもよい。
【0057】
1.2.3.第1色変更部
第1色変更部5は、前述したように、導光部10の出射端101に設けられている。第1色変更部5は、出射端101から出射する入射光L1の色を変更する。入射光L1の色とは、監視者が視認する光の色を指し、第1色変更部5は、入射光L1の色を変更し、出射光L2を生成する。
【0058】
監視者が出射光L2の色を視認することができれば、出射端101まで入射光L1が到達していることを直感的に認識することができる。つまり、発光素子71や導光部10が健全であり、被着体9の異常を検出する準備ができていることを、出射光L2の色を通じて直感的に把握することができる。
【0059】
第1色変更部5が光の色を変更する原理としては、例えば、様々な色を含む入射光L1から特定波長の光を選択的に透過させる方法(バンドパス)、入射光L1の波長を異なる波長に変換する方法(波長変換)等が挙げられる。
【0060】
このうち、
図3に示す第1色変更部5は、カラーフィルター51を有する。カラーフィルター51は、波長バンドパスフィルターの機能を有する。このような機能を有するカラーフィルター51は、広い波長域で有意な強度を持つ入射光L1が導光部10に入射したとき、バンドパス特性に応じた特定波長の光を選択的に透過させることができる。これにより、入射光L1とは異なる色の出射光L2を生成することができる。その結果、出射光L2を視認した監視者は、入射光L1とは異なる色を出射光L2から感じ取ることができる。これにより、監視者は、まず、入射光L1が意図せず漏れ出るという不具合が発生していないことや、発光素子71が入射光L1を出力していることを、直感的に認識することができる。
【0061】
一方、前述したように、被着体9の表面に亀裂91が発生した場合には、漏れ光L3が漏出する。
図3に示すセンサー用光導波路1の場合、漏れ光L3の色は、入射光L1の色と同じである。そうすると、漏れ光L3の色は、出射光L2の色と異なる。したがって、被着体9が通常の状態にあるとき、監視者は、出射光L2の色を視認することによってその状態を認識することができ、被着体9に異常が発生した場合、監視者は、出射光L2の色とは異なる漏れ光L3の色を視認することによってその異常の発生を認識することができる。
【0062】
広い波長域で有意な強度を持つ入射光L1としては、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)という光の三原色のうち、2色以上を含む光が用いられる。そして、入射光L1には、好ましくは白色光が用いられる。白色光は、特に広い波長域で有意な強度を持つ。このため、入射光L1として白色光を用いることにより、カラーフィルター51のバンドパス特性に応じた任意の色の出射光L2を生成することができる。これにより、
図3に示す第1色変更部5は、光の色が監視者に与える感情を利用して、誤認識を生じさせにくい出射光L2を生成することができる。例えば、カラーフィルター51が、緑色や青色またはそれらの間の色の光を選択的に透過させるバンドパス特性を有していれば、緑色や青色またはそれらの間の色を呈する出射光L2を生成することができる。このような出射光L2は、被着体9に異常が発生していないことを、監視者に直感的に認識させやすい。
【0063】
なお、赤色の光とは、ピーク波長が610~750nmの範囲内にある光のことをいう。緑色の光とは、ピーク波長が500~560nmの範囲内にある光のことをいう。青色の光とは、ピーク波長が435~480nmの範囲内にある光のことをいう。
【0064】
また、白色光を出力する発光素子71としては、例えば白色発光ダイオード等が挙げられる。また、太陽光や室内光も、通常、白色光である。
【0065】
なお、漏れ光L3の色は、入射光L1の色と同じである必要はなく、例えば、クラッド層12や第2カバー層19が呈する色に応じて、入射光L1の色とは異なる色に変化していてもよい。
【0066】
カラーフィルター51は、カラーレジストの硬化体(着色樹脂硬化体)であってもよいし、カラーレジストのシート体であってもよいし、透明基板とその上に設けられたカラーレジストの塗膜との積層体であってもよい。カラーフィルター51、すなわち第1色変更部5がこのような部材であれば、カラーフィルター51を単体で取り扱うことができる。このため、カラーフィルター51を導光部10に設ける作業を容易に行うことができる。具体的には、カラーフィルター51が樹脂硬化体であれば、硬化前の着色樹脂に導光部10を接触させ、その後、着色樹脂を硬化または固化させることにより、カラーフィルター51を容易に設けることができる。また、カラーフィルター51がシート体や積層体であれば、接着剤や接着シートを用いて、導光部10に簡単に接着することができる。なお、カラーレジストとは、染料や顔料等の色材を含む樹脂材料のことをいう。
【0067】
図5は、
図3に示す第1色変更部5とは別の機能を有する第1色変更部5を備えたセンシングシステム100について、その動作を説明する断面図である。
【0068】
図5に示す第1色変更部5は、カラーフィルター51と、波長変換層52と、を有する。波長変換層52は、カラーフィルター51よりも導光部10側に配置され、波長変換の機能を有する。このような機能を有する波長変換層52は、入射光L1が導光部10に入射したとき、入射光L1の波長を別の波長に変換する。これにより、入射光L1とは異なる色の出射光L2を生成することができる。その結果、出射光L2を視認した監視者は、入射光L1とは異なる色を出射光L2から感じ取ることができる。
【0069】
なお、波長変換層52の構成材料によっては、波長変換効率が低い場合がある。このような場合、波長変換層52から出力される光は、波長変換後の光と、波長変換されなかった光と、が混じり合った状態の光、すなわち中間色の光となる。このため、波長変換層52から出力される光を視認した監視者は、その光の色が、波長変換された光の色なのか、それとも、波長変換されなかった光の色なのか、正確に区別することが困難である。波長変換されなかった光の色は、入射光L1の色と同じであり、特に
図5では、漏れ光L3の色と同じである。したがって、監視者は、センサー用光導波路1から出射光L2が出射しているのか、漏れ光L3が漏出しているのか、はっきりと区別することができない。特に、センサー用光導波路1と監視者とが離れている場合、その傾向が顕著である。
【0070】
そこで、
図5に示す第1色変更部5は、波長変換層52で波長変換された光を、さらにカラーフィルター51に入射させるように構成されている。カラーフィルター51では、中間色の光が入射すると、バンドパス特性に応じた特定波長の光を選択的に透過させる。したがって、
図5に示すカラーフィルター51のバンドパス特性を、波長変換後の光の波長に合わせることで、カラーフィルター51は、入射光L1および漏れ光L3とは異なる色の出射光L2を生成することができる。その結果、出射光L2を視認した監視者は、入射光L1および漏れ光L3とは異なる色を出射光L2から感じ取ることができる。
【0071】
波長変換層52の構成材料としては、例えば、蛍光色素を含む樹脂材料、光アップコンバージョン材料、光ダウンコンバージョン材料等が挙げられる。
【0072】
波長変換層52は、これらの材料の硬化体(波長変換樹脂硬化体)であってもよいし、シート体であってもよい。これにより、第1色変更部5を、樹脂硬化体またはシート体にすることができる。その結果、第1色変更部5を容易に設けることができる。
【0073】
なお、波長変換層52における波長変換効率が十分に高い場合には、カラーフィルター51を省略してもよい。
【0074】
以上のように、
図3および
図5に示すセンサー用光導波路1は、被着体9に取り付けられる光導波路であって、光伝搬部である導光部10を備える。導光部10は、入射光L1を伝搬させ、伝搬させた入射光L1を出射光L2として出射させるとともに、機械的変化を受けたとき入射光L1を漏れ光L3として漏出させる。そして、センサー用光導波路1では、出射光L2の色と漏れ光L3の色とが異なっている。
【0075】
このようなセンシングシステム100では、出射光L2の色と漏れ光L3の色とが異なっているため、被着体9に機械的変化(異常)が発生しているか否かというセンシング結果を、出力される光の色を通じて容易に確認することができる。また、このようなセンシングシステム100では、例えば出射光L2や漏れ光L3の強度を検出する検出手段や強度の変化を算出する演算手段等が不要になるとともに、それらの手段の近くに監視者を配置する必要もない。このため、センシングシステム100では、低コスト化、小型化、軽量化および監視者の自由な配置、を容易に図ることができる。そして、
図3および
図5に示すセンサー用光導波路1によれば、このようなセンシングシステム100を実現することができる。
【0076】
また、
図3および
図5に示す導光部10(光伝搬部)は、コア部14と、第1色変更部5と、を有する。コア部14では、入射光L1が伝搬する。第1色変更部5は、コア部14を含む導光部10の出射端101に設けられている。そして、第1色変更部5は、コア部14を伝搬させた入射光L1の色を変更し、出射光L2として出射させる。
【0077】
このような構成によれば、出射光L2の色を入射光L1の色と異ならせることにより、出射光L2の色と漏れ光L3の色とを異ならせている。出射光L2の色として、例えば、監視者に正常を想起させやすい青色や緑色を選択することで、監視者は、被着体9に異常が発生していないことを直感的に認識することができる。これにより、誤認識を生じさせにくいセンシングシステム100を実現することができる。
【0078】
また、センシングシステム100は、センサー用光導波路1と、発光素子71と、を備える。発光素子71は、センサー用光導波路1に向けて光を射出する。
【0079】
このような構成によれば、被着体9の機械的変化に関するセンシング結果の確認が容易なセンシングシステム100を実現することができる。また、センシングシステム100では、例えば出射光L2や漏れ光L3の強度を検出する検出手段や強度の変化を算出する演算手段等を必要としない。さらに、これらの手段の近くに監視者を配置する必要もない。このため、センシングシステム100では、低コスト化、小型化、軽量化および監視者の自由な配置、を容易に図ることができる。
【0080】
なお、センシングシステム100は、必要に応じて、出射光L2の色と漏れ光L3の色を区別しつつ検出する検出器を備えていてもよい。このような検出器によれば、漏れ光L3が発生しているか否かを、機械的に検出することができる。これにより、監視者の負担を軽減するとともに、漏れ光L3をより確実に特定することができる。検出器には、例えば、カメラ機能を備えた、スマートフォンやタブレット端末、パーソナルコンピューター等を用いることができる。
【0081】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るセンサー用光導波路1Aを用いたセンシングシステム100について説明する。
【0082】
図6は、第2実施形態に係るセンサー用光導波路1Aを用いたセンシングシステム100の動作を説明する断面図である。
【0083】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、各図において、第1実施形態と同様の構成については、先に説明したのと同じ符号を付している。
【0084】
前述した第1実施形態では、センサー用光導波路1が第1色変更部5を有する。これに対し、本実施形態では、
図6ないし
図8に示すように、センサー用光導波路1Aが第2色変更部6を有する。
【0085】
図6に示すセンサー用光導波路1Aは、下方からクラッド層11、コア層13およびクラッド層12がこの順で積層されてなる導光部10Aを有する。また、
図6に示すセンサー用光導波路1Aは、クラッド層11の下面に設けられた第1カバー層61と、クラッド層12の上面に設けられた第2カバー層62と、を有する。
【0086】
第1カバー層61は、前述した第1カバー層18と同様の機能に加え、コア部14から漏出する入射光L1の色を変更し、漏れ光L3を生成する機能を有する。
【0087】
第2カバー層62は、前述した第2カバー層19と同様の機能に加え、コア部14から漏出する入射光L1の色を変更し、漏れ光L3を生成する機能を有する。
【0088】
したがって、第1カバー層61および第2カバー層62は、それぞれ第2色変更部6である。
【0089】
図6に示す第1カバー層61(第2色変更部6)は、波長バンドパスフィルターの機能を有する。これにより、広い波長域で有意な強度を持つ入射光L1が導光部10Aに入射し、導光部10Aに発生した破断面8に伴って漏れ光L3が発生するとき、第1カバー層61は、バンドパス特性に応じた特定波長の光を選択的に透過させることができる。その結果、入射光L1とは異なる色の漏れ光L3を生成することができる。これにより、漏れ光L3を視認した監視者は、入射光L1とは異なる色を漏れ光L3から感じ取ることができる。一方、
図6に示すセンサー用光導波路1Aでは、出射光L2の色と入射光L1の色とが同じである。したがって、
図6に示すセンサー用光導波路1Aでは、出射光L2とは異なる色の漏れ光L3を生成することができる。これにより、漏れ光L3を視認した監視者は、出射光L2とは異なる色を漏れ光L3から感じ取ることができる。その結果、監視者は、被着体9に異常が発生していることを認識することができる。
【0090】
広い波長域で有意な強度を持つ入射光L1としては、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)という光の三原色のうち、2色以上を含む光が用いられる。そして、入射光L1には、好ましくは白色光が用いられる。白色光は、特に広い波長域で有意な強度を持つ。このため、入射光L1として白色光を用いることにより、第1カバー層61のバンドパス特性に応じた任意の色の漏れ光L3を生成することができる。これにより、
図6に示す第2色変更部6は、光の色が監視者に与える感情を利用して、誤認識を生じさせにくい漏れ光L3を生成することができる。例えば、第1カバー層61が、黄色や赤色またはそれらの間の色の光を選択的に透過させるバンドパス特性を有していれば、黄色や赤色またはそれらの間の色を呈する漏れ光L3を生成することができる。このような漏れ光L3は、被着体9に異常が発生していることを、監視者に直感的に認識させやすい。なお、黄色の光とは、ピーク波長が560~610nmの範囲内にある光のことをいう。
【0091】
一方、入射光L1には、緑色や青色またはそれらの間の色の光を用いるようにしてもよい。これにより、緑色や青色またはそれらの間の色を呈する出射光L2を生成することができる。このような出射光L2は、被着体9に異常が発生していないことを、監視者に直感的に認識させやすい。
【0092】
なお、第2カバー層62も、上述した第1カバー層61と同様の作用を有する。
また、出射光L2の色は、入射光L1の色と同じである必要はなく、入射光L1と異なる色であってもよい。
【0093】
第1カバー層61(第2色変更部6)および第2カバー層62(第2色変更部6)の弾性率は、それぞれ、コア部14の弾性率より高いことが好ましい。これにより、コア部14を外力や外部環境から保護することができる。各部の弾性率とは、例えば、各部の主材料のヤング率である。また、破断面8が第1カバー層61に及びにくくなり、第1カバー層61の機能が維持される。
【0094】
ヤング率の測定は、例えば、JIS K 7127:1999(ASTM D882)に規定された引張特性の試験方法に準拠して行うことができる。また、測定は、平均厚さ25μmの試験片について25℃で行う。
【0095】
第1カバー層61の弾性率とコア部14の弾性率との差、および、第2カバー層62の弾性率とコア部14の弾性率との差は、それぞれ100MPa以上であるのが好ましく、200MPa以上であるのがより好ましい。
【0096】
また、第1カバー層61の弾性率および第2カバー層62の弾性率は、それぞれ、3000~12000MPa程度であるのが好ましく、4000~11000MPa程度であるのがより好ましい。
【0097】
図7は、
図6に示す導光部10Aにミラー16を設けたセンシングシステム100について、その動作を説明する断面図である。
【0098】
図7に示すセンサー用光導波路1Aは、導光部10Aに設けられた空洞部160を有する。空洞部160は、空洞であるため、その内面のうち、コア層13を横断する面は、導光部10Aを伝搬する入射光L1を反射するミラー16となる。したがって、前述した
図6に示すセンサー用光導波路1Aでは、Y軸マイナス側に向かって出射光L2が放出されるのに対し、
図7に示すセンサー用光導波路1Aでは、Z軸プラス側に向かって出射光L2が放出される。これにより、出射光L2の視認性をより高めることができる。
【0099】
また、
図7に示すセンサー用光導波路1Aでは、第2カバー層62のうち、出射光L2の進行方向と重なる部分に開口部65が設けられている。この開口部65を経て出射光L2が放出されることにより、第2カバー層62によって出射光L2の色が意図せず変化するのを防止することができる。
【0100】
図8は、
図6に示す第2色変更部6とは別の機能を有する第2色変更部6を備えたセンシングシステム100について、その動作を説明する断面図である。
【0101】
図8に示す第2色変更部6は、導光部10Aの上面に設けられ、カラーフィルター63と、波長変換層64と、を有する。波長変換層64は、カラーフィルター63よりも導光部10A側に配置され、波長変換の機能を有する。これにより、入射光L1が導光部10Aに入射し、導光部10Aに発生した破断面8に伴って漏れ光L3が発生するとき、波長変換層64は、入射光L1の波長を別の波長に変換する。これにより、入射光L1とは異なる色の漏れ光L3を生成することができる。その結果、漏れ光L3を視認した監視者は、出射光L2とは異なる色を漏れ光L3から感じ取ることができる。
【0102】
なお、波長変換層64の構成材料によっては、波長変換効率が低い場合がある。このような場合、波長変換層64から出力される光は、波長変換後の光に、波長変換されなかった光が混じり合った状態の光、すなわち中間色の光となる。このため、中間色の光を視認した監視者は、中間色の光の色が、波長変換された光の色なのか、それとも、波長変換されなかった光の色なのか、正確に区別することが困難である。波長変換されなかった光の色は、入射光L1の色と同じであり、特に
図8では、出射光L2の色と同じである。したがって、監視者は、センサー用光導波路1から出射光L2が出射しているのか、漏れ光L3が漏出しているのか、はっきりと区別することができない。特に、センサー用光導波路1と監視者とが離れている場合、その傾向が顕著である。
【0103】
そこで、
図8に示す第2色変更部6は、波長変換層64で波長変換された光を、さらにカラーフィルター63に入射させるように構成されている。カラーフィルター63では、中間色の光が入射すると、バンドパス特性に応じた特定波長の光を選択的に透過させる。したがって、
図8に示すカラーフィルター63のバンドパス特性を、波長変換後の光の波長に合わせることで、カラーフィルター63は、入射光L1および出射光L2とは異なる色の漏れ光L3を生成することができる。その結果、漏れ光L3を視認した監視者は、入射光L1および出射光L2とは異なる色を漏れ光L3から感じ取ることができる。
【0104】
波長変換層64の構成材料としては、例えば、蛍光色素を含む樹脂材料、光アップコンバージョン材料、光ダウンコンバージョン材料等が挙げられる。
【0105】
図8に示すセンシングシステム100では、入射光L1に、緑色や青色またはそれらの間の色の光を用いるのが好ましい。これにより、緑色や青色またはそれらの間の色を呈する出射光L2を生成することができる。また、これらの色を呈する入射光L1から、波長変換により、黄色または赤色の漏れ光L3を生成するのは、波長変換効率が比較的高い。これにより、被着体9に異常が発生していないことを監視者に直感的に認識させやすい出射光L2と、被着体9に異常が発生していることを監視者に直感的に認識させやすい漏れ光L3の双方を、効率よく得ることができる。
【0106】
波長変換層64は、これらの材料の硬化体(波長変換樹脂硬化体)であってもよいし、シート体であってもよい。これにより、第2色変更部6を、樹脂硬化体またはシート体にすることができる。その結果、第2色変更部6を容易に設けることができる。
【0107】
以上のように、
図6ないし
図8に示すセンサー用光導波路1Aが有する導光部10A(光伝搬部)は、コア部14と、第2色変更部6と、を有する。コア部14は、長尺状をなし、入射光L1を伝搬させる。第2色変更部6は、コア部14の側方、具体的には、導光部10Aの上面および下面に設けられ、コア部14から漏出する入射光L1の色を変更し、漏れ光L3として出射させる。
【0108】
このような構成によれば、漏れ光L3の色を入射光L1の色と異ならせることにより、漏れ光L3の色と出射光L2の色とを異ならせている。漏れ光L3の色として、例えば、監視者に異常を想起させやすい黄色や赤色を選択することで、監視者は、被着体9に異常が発生していることを直感的に認識することができる。これにより、誤認識を生じさせにくいセンシングシステム100を実現することができる。
【0109】
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
以上、本発明のセンサー用光導波路およびセンシングシステムを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
例えば、本発明のセンサー用光導波路およびセンシングシステムは、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【0112】
また、本発明のセンサー用光導波路は、接着層を覆う保護層をさらに有していてもよい。この保護層は、センサー用光導波路を被着体に接着する作業の直前に接着層から剥がされることにより、清浄な接着面を容易に準備することを可能にする。これにより、異物の巻き込みを抑えることができ、より密着性の高い接着を行うことができる。
【符号の説明】
【0113】
1 センサー用光導波路
1A センサー用光導波路
2 接着層
3 光ファイバー
5 第1色変更部
6 第2色変更部
8 破断面
9 被着体
10 導光部
10A 導光部
11 クラッド層
12 クラッド層
13 コア層
14 コア部
15 側面クラッド部
16 ミラー
18 第1カバー層
19 第2カバー層
51 カラーフィルター
52 波長変換層
61 第1カバー層
62 第2カバー層
63 カラーフィルター
64 波長変換層
65 開口部
71 発光素子
72 電源
91 亀裂
100 センシングシステム
101 出射端
109 接着面
160 空洞部
L1 入射光
L2 出射光
L3 漏れ光