(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164302
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/48 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
H04B1/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069713
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】来嶋 信芳
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011BA01
5K011DA21
5K011GA04
5K011KA12
5K011KA13
(57)【要約】
【課題】キャリアコントロール方式による増幅装置の不要輻射を抑制する技術を提供する。
【解決手段】入力信号を増幅する増幅回路と、前記入力信号の振幅を制限する振幅制限回路と、前記増幅回路を介した経路と前記振幅制限回路を介した経路との接続を切り替える切り替え回路と、前記入力信号を検出し、前記入力信号を検出した場合に前記切り替え回路に対して、前記振幅制限回路を介した経路から前記増幅回路を介した経路に接続を切り替えるよう制御する切り替え制御回路と、を備える
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅する増幅回路と、
前記入力信号の振幅を制限する振幅制限回路と、
前記増幅回路を介した経路と前記振幅制限回路を介した経路との接続を切り替える切り替え回路と、
前記入力信号を検出し、前記入力信号を検出した場合に前記切り替え回路に対して、前記振幅制限回路を介した経路から前記増幅回路を介した経路に接続を切り替えるよう制御する切り替え制御回路と、
を備える増幅装置。
【請求項2】
前記増幅回路の増幅度の制御を行う増幅制御回路を備え、
前記切り替え回路が前記振幅制限回路の経路と前記増幅回路の経路との接続を切り替える際の、前記経路のいずれにも接続しない無接続期間において、
前記増幅制御回路は、前記増幅回路を、
前記無接続期間内の第1所定時間から前記増幅回路の増幅を開始するように設定し、
さらに前記増幅回路の増幅度を時間経過と共に増加させる制御を行う、
請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
前記入力信号を、前記増幅回路または前記振幅制限回路を介さず出力する迂回回路と、
前記迂回回路を介した経路と、前記増幅回路または前記振幅制限回路を介した経路と、の接続を切り替える第2切り替え回路と、
前記増幅回路または振幅制限回路の出力側の切り替え回路と、前記迂回回路の出力側の第2切り替え回路との経路に、入力信号の高調波にあたる周波数を抑制するフィルタと、
前記第2切り替え回路を、前記迂回回路を介した経路と、前記増幅回路または前記振幅制限回路を介した経路と、のいずれかの経路に接続する制御を行う第2切り替え制御回路とを備え、
前記第2切り替え制御回路が、前記迂回回路を介した経路への接続する制御を行うと共に、前記切り替え制御回路に前記入力信号を検出する動作を停止させる制御を行う
請求項2に記載の増幅回路。
【請求項4】
前記振幅制限回路は、振幅の制限を解除する振幅制限解除回路を備え、
前記振幅制限解除回路に振幅の制限を解除させる振幅制限解除信号を出力すると共に前記切り替え制御回路に前記入力信号を検出する動作を停止させる制御を行う制御回路を備える、
請求項2に記載の増幅装置。
【請求項5】
前記振幅制限回路は、
前記振幅制限回路内で信号を伝達する伝送回路と、
前記伝送回路に伝送される信号の振幅を制限する振幅制限素子と、
を備え、
前記振幅制限解除回路は、前記伝送回路と前記振幅制限素子との接続を解放することにより振幅の制限を解除する、
請求項4に記載の増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅装置に関し、特に無線通信で使用される増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信電力が比較的少ない無線通信機は、外部に送信電力を増幅する増幅装置を備える場合がある。増幅装置は、無線通信機が送信の場合に無線通信機から出力される送信信号を増幅装置内部の増幅回路で増幅してアンテナに伝送し、無線通信機が受信の場合にアンテナで受信した受信信号を増幅回路の迂回回路を介して無線通信機に伝送する必要がある。そのため、無線通信機の送受信に連動して、増幅装置内の経路を切り替える必要がある。
【0003】
信号経路のスイッチング機能を有する電力増幅器を用いて、送信時に求められる送信機の出力レベルが電力増幅器を必要とするレベルの場合と、電力増幅器を必要としないレベルの場合とで経路を切り替えと共に電源回路による電源供給も切り替える技術が開示されている。(特許文献1参照)。しかし、外部に送信電力を増幅する増幅装置を備える場合、無線通信機の送受信に連動して、増幅装置内の経路を切り替えるための制御線を別途必要とする。また、無線通信機の送受信に連動して、増幅装置内の経路を切り替える方式として、増幅装置内に、無線通信機からの送信信号を検出して増幅装置内の経路を切り替えるキャリアコントロールという方式が従来から存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いて増幅装置内の経路を変更する場合、無線信号を伝送する同軸ケーブル以外に無線通信機から増幅装置を制御する制御信号用のケーブルを別途必要とする。また、前記したキャリアコントロール方式では、増幅装置内の経路を変更する場合、無線通信機から増幅装置を制御する制御用信号用のケーブルを必要としないが、無線通信機が送信を開始し、増幅装置の増幅器を介した送信に切り替わるまでの間に、信号の瞬断が生じるため不要輻射を発生してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、キャリアコントロール方式による増幅装置の不要輻射を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の増幅装置は、入力信号を増幅する増幅回路と、前記入力信号の振幅を制限する振幅制限回路と、前記増幅回路を介した経路と前記振幅制限回路を介した経路との接続を切り替える切り替え回路と、前記入力信号を検出し、前記入力信号を検出した場合に前記切り替え回路に対して、前記振幅制限回路を介した経路から前記増幅回路を介した経路に接続を切り替えるよう制御する切り替え制御回路と、を備えること、を特徴とする。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャリアコントロール方式による増幅装置の不要輻射を抑制する技術を提供することすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の増幅装置を接続した無線通信設備の概略図である。
【
図2】キャリアコントロール方式の増幅回路の構成図である。
【
図4】本発明の増幅装置における振幅制限回路の構成図である。
【
図5】本発明の増幅装置の各部の信号のタイムチャートである。
【
図6】本発明の増幅装置の実施形態2の構成図である。
【
図7】本発明の増幅装置の実施形態3の構成図である。
【
図8】本発明の増幅装置の実施形態3における振幅制限回路の構成図である。
【
図9】本発明の増幅装置の実施形態3における振幅制限回路の変形例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について添付図面を参照して説明する。
図1は、増幅装置を接続した無線通信設備の概略図である。無線通信設備100は、無線通信機1と、増幅装置2と、アンテナ3とを備える。
【0012】
無線通信設備100は、無線通信機1の送受信コネクタと増幅装置2のコネクタ(入力端子)が同軸ケーブルで接続され、増幅装置2のコネクタ(出力端子)とアンテナ3のコネクタとが同軸ケーブルで接続されている。また、これ以外に、図示しない電源部を有し、無線通信機1および増幅装置2に必要な電力を供給している。なお、入力端子や出力端子等の入力および出力の表記に関しては、送信信号の向きに対しての定義である。
【0013】
無線通信機1は、無線周波数の電波を送受信して、音声、画像、位置情報等様々な情報の通信を行うトランシーバである。図は携帯型のトランシーバとして記載しているが、車載用のトランシーバ、屋内用のトランシーバであってもよい。
【0014】
増幅装置2は、無線通信設備100の送信出力を、無線通信機1のみで送信する場合の送信出力より大きい送信出力とするための装置である。詳細には、増幅装置2は、無線通信機1の送信信号を増幅して、アンテナ3へ供給する装置である。さらに、増幅装置2は、アンテナ3から伝送される受信信号を、無線通信機1に伝送する機能を備える。また、増幅装置2は、無線通信機1の送信信号の増幅を行わずアンテナ3に供給する機能を備えてもよい。
【0015】
アンテナ3は、増幅装置2から供給される送信信号を電波として出力する。また、アンテナ3は、受信した電波を受信信号に変換する。
【0016】
増幅装置2に関して、
図2を用いて説明する。
図2は増幅装置2の構成図である。増幅装置2は、増幅回路20と、迂回回路21と、切り替え回路22(221、222)と、切り替え制御回路23とを備える。増幅回路20は、無線通信機1の送信出力信号を増幅し、無線通信機1の送信出力より大きい送信出力とするための増幅器である。例えば、無線通信機1の送信出力を5Wとした場合、増幅回路20は、無線通信機1の送信信号を20Wまで増幅する。
【0017】
迂回回路21は、アンテナ3からの受信信号を無線通信機1に伝送するための経路である。また、迂回回路21は、増幅装置2の増幅回路20による送信信号の増幅を必要としない場合、つまり無線通信装置1の送信出力でアンテナ3から出力する場合に、アンプを迂回する経路としてもよい。
【0018】
切り替え回路22は、入力端子C1に対して、増幅回路20と迂回回路21とを切り替える入力側の切替回路221と、出力端子C2に対して、増幅回路20と迂回回路21とを切り替える出力側の切り替え回路222とを備える。入力側の切り替え回路221は、無線通信機1から出力される送信信号を、増幅回路20に供給するか、迂回回路21に供給するかを切り替える。出力側の切り替え回路222は、増幅回路20により増幅された送信信号をアンテナに供給するか、迂回回路21を経由して伝送された無線通信機1の送信信号をアンテナ3に伝送するかを切り替える。また、入力側切り替え回路221および出力側切り替え回路222は、アンテナ3からの受信信号を無線通信機1に伝送する場合には、無線通信機1とアンテナ3とを迂回回路21を介して接続する。以降切り替え回路22の切り替え先に関して、増幅回路側、または迂回回路側と表記する。
【0019】
切り替え制御部23は、無線通信機10から出力される送信信号を検出して、送信信号が検出された場合に、切り替え回路22を増幅回路側に切り替える。つまり増幅装置2は、キャリアコントロール方式により増幅装置2における送信と受信とを切り替える。「送信信号を検出」と上記したが、信号検出に要する時間の送信信号は搬送波(キャリア)のみで情報を乗せることは意味が無いため、以降「キャリアを検出」と記載する場合もあるが、意味は同じである。また「受信」とは信号を受信している状態であり、信号を受信していない状態は厳密には「待ち受け」(スタンバイ)ではあるが、特に指定なき場合、「受信」と記載する。
【0020】
キャリアコントロール方式は、無線通信機1のキャリアを利用して増幅装置2の経路を迂回回路側から増幅回路側に切り替える。詳細には、キャリアコントロール方式は、無線通信機1から送信されるキャリアの一部を検波して整流し、キャリアのレベルに応じた直流電圧を得る。さらに、キャリアコントロール方式は、得られた直流電圧が所定の値を超えた場合に、切り替え回路21を増幅回路側に切り替える。なお、キャリアコントロール方式は、周知の技術である。
【0021】
キャリアコントロール方式は、増幅装置2内の送信受信に対応する経路や動作を変更する場合、無線通信機1から増幅装置2を制御するための制御信号用のケーブルを必要としないが、以下のような現象が生じる。
【0022】
(1)無線通信機1からの送信信号を検出するまでの時間、送信信号が増幅回路20を迂回する迂回回路21を介してアンテナに供給され、
(2)さらに、無線通信機1からの送信信号が迂回回路21を介してアンテナ3に供給されている途中で、切り替え制御回路23が送信信号を検出することにより切り替え回路22が動作するため、一旦、送信信号の経路が迂回回路21から解放され、
(3)その後、切り替え回路22の切り替え動作が完了して、無線通信機1からの送信信号は、増幅回路20に供給され、増幅回路20により増幅された送信信号をアンテナ3に供給する経路に切り替わることから、アンテナ3に供給される送信信号は、切り替え回路22が迂回回路21から増幅回路20に切り替わる間、送信信号は途切れる。つまり、送信信号は、送信開始の過程で瞬断する。
【0023】
そのため、無線通信機1が送信を開始し、増幅装置2の増幅回路を介した送信に切り替わるまでの間に、送信信号が瞬断し、送信信号の瞬断による不要輻射を発生してしまうという問題があった。
【0024】
前記した不要輻射は、信号の瞬断により生じる不要輻射のため広帯域にわたって生じる。また、アンテナ3に供給される瞬断直前および瞬断直後の電力が大きい程、不要輻射のレベルは大きくなる。よって、送信開始時の不要輻射を抑制するには、瞬断前後においてアンテナ3に供給される電力を低減する必要がある。以下、複数の実施形態により、キャリアコントロール方式による切り替えにおける不要輻射を抑制する技術を説明する。
【0025】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る増幅装置20に関して、
図3を用いて説明する。
図3は、増幅装置20の構成図である。先に
図2で説明した増幅装置20に対して、実施形態1に係る増幅装置2は、迂回回路21を振幅制限回路24とし、さらに、増幅回路20の増幅度を制御する増幅制御回路25を備える。
【0026】
増幅装置2は、キャリアコントロール方式により送信状態と待ち受け状態とを切り替える。無線通信機1からのキャリアを検出して増幅装置2内の経路を増幅回路20により送信信号を増幅して出力する送信経路に切り替える。つまり切り替え制御回路23がキャリアを検出し、切り替え制御回路23が切り替え回路22に対して振幅制限回路24(迂回経路)から増幅回路20(増幅経路)に経路を切り替える経路切り替え信号を出力する。増幅装置20は、この経路切り替え信号の立ち上がりから送信動作に移行する。増幅装置2は、経路切り替え信号の出力の開始の際、増幅制御回路25により増幅回路20の増幅度を制御し、その後、増幅制御回路25により増幅回路20の増幅度を徐々に増加させ、所定時間をかけて通常の増幅度に達するように制御し送信信号を出力する。
【0027】
振幅制限回路24は、増幅回路20の迂回経路であり、入力側切り替え回路221と出力側切り替え回路222間で伝送される信号の振幅を制限する。具体的には、振幅制限回路24は、
図4に示すように伝送経路に伝送される信号の振幅を制限する振幅制限素子を備える。振幅制限素子は、例えば双方向ダイオードであって、双方向ダイオードを接地電位との間に介在させる。よって、伝送される信号の電圧振幅は、ダイオードの順方向電圧により制限される。振幅制限素子は、2つのダイオードの向きを変えて配置してもよく、特性がそろっているものが望ましい。また、振幅制限回路24は、無線通信機1が受信状態の場合に、アンテナ3で受信した受信信号を、無線通信機1に伝送する。受信信号の電圧振幅は、振幅制限回路24の振幅制限回路24が制限する振幅電圧対して圧倒的に小さいため、振幅制限回路24を介して無線通信機1が受信を行うことに問題は無い。
【0028】
増幅制御回路25は、送信開始から所定時間、増幅回路20の増幅度を制御する。そのため増幅回路20は、所定の信号により増幅度を変更可能なゲインコントロール機能を備える。増幅制御回路25は、増幅回路20に増幅度を変化させるための増幅度制御信号を出力する。
【0029】
本発明の実施形態1に係る増幅装置20が、キャリアコントロール方式による切り替えにおいて不要輻射を抑制する動作を詳細に説明するにあたり、
図5を用いて、増幅装置2における送信動作の開始に際の各信号の変化を説明する。
図5は、無線通信機1の送信開始により出力される送信信号の立ち上がりを基準「t0」としたタイムチャートであり、それぞれ無線通信機1の送信信号の変化、切り替え制御回路23におけるキャリア検出の検波信号の変化、切り替え制御回路23による経路切り替え信号の変化、切り替え回路22の状態変化、増幅制御回路25から主力される増幅度制御信号の変化、増幅装置2から出力される送信信号の変化を示している。
【0030】
無線通信機1が、送信を開始する。無線通信機1送信を開始したことにより無線通信装置1から出力された送信信号が、増幅装置2に入力される。送信信号は、切り替え回路22により振幅制限回路24を介してアンテナ3に伝送される。また、送信信号の一部は、切り替え制御回路23に入力される。
図5に示すように、無線通信機1の送信信号は送信開始の「t0」から徐々にキャリアの振幅レベルが増加する。
【0031】
切り替え制御回路23は、送信信号のキャリアを検波、整流し、キャリアの振幅レベルに応じた直流電圧である検波信号に変換する。
図5の「切り替え制御回路・検波信号」に示す検波信号は、時間経過に伴ってキャリアの振幅レベルの増加するため、その電圧値は上昇する。さらに切り替え制御回路23は、所定の電圧値と、検波信号の電圧値を比較し、検波信号の電圧値が所定の電圧値以上となった場合に、前記した経路切り替え信号を出力する。増幅装置2が送信状態となるまでの時間は短いことが望ましく、また増幅装置2を送信状態とするために必要な無線通信機1の送信出力は低い方が望ましいため、所定の電圧値は、ノイズの影響を受けない程度にまで低く設定することが望ましい。また、所定の電圧値は、後述する振幅制限回路24により振幅レベルが制限されたキャリアの振幅レベルにより生成される検波信号より低く設定される。
【0032】
切り替え制御回路23が、経路切り替え信号が出力されるタイミングを「t1」とする。前記したように、この「t1」のタイミングで増幅装置2は、送信状態への移行を開始する。経路切り替え信号は、切り替え回路22、増幅制御回路25に伝送される。
【0033】
切り替え回路221は、経路切り替え信号によりコネクタC1に伝送されている送信信号を、振幅制限回路24から、増幅回路20に切り替える。また、切り替え回路222は、コネクタC2へ伝送する信号を振幅制限回路24より伝送される信号から、増幅回路より伝送される信号に切り替える。しかしながら切り替え回路22は、経路切り替え信号により瞬時に切り替わることはないため、
図5の「切り替え回路」に「受信」と記載したコネクタC1側と振幅制限回路24側との接続状態(受信状態)の期間T1、「解放」と記載したコネクタC1側が解放され、振幅制限回路24側と増幅回路20側とのいずれの経路にも接続していない解放状態の期間T2、これら2つの期間T1およびT2を経過後、切り替え回路221は、増幅装置20側との接続状態(送信状態)に切り替わる。切り替え回路222も同様にT1、T2の期間を経てコネクタC2側は、増幅回路20側に切り替わる。
【0034】
図5に示すように、「無線通信機・送信信号」のキャリアの振幅レベルが振幅制限回路24の振幅制限素子により振幅制限を開始するタイミングを「t2」とする。また期間T1の終了タイミング(期間T2の開始タイミング)は、「t3」とする。さらに期間T2の終了タイミングは、「t4」とする。以上から無線通信機1から出力された送信信号は、「t0」から「t3」まで切り替え回路22は受信状態であるため、振幅制限回路24を介してアンテナ3に供給される。
図5の「増幅装置・送信信号」は、アンテナ3に供給される電力の振幅レベルの変化であり、コネクタC2から出力される電力の振幅レベルの変化を示している。
図5に示す「増幅装置・送信信号」は、「t3」までは、振幅制限回路24を介して無線通信機1の送信信号が振幅制限されて伝送されるため、無線通信機1の通常の送信出力の振幅レベルより小さくなる。
図5の「A」に振幅制限回路24の振幅制限機能により振幅制限を行わない場合を破線で示す。よって「t3」のタイミングで切り替え回路22が解放状態となる直前までの振幅レベルを低減することができる。
【0035】
経路切り替え信号は、増幅制御回路25にも伝送される。増幅制御回路25は、増幅回路20に、増幅回路20の増幅度(ゲイン)を設定する増幅度制御信号を出力する。
図5に示すように、増幅制御回路25は、経路切り替え信号のタイミング「t1」移行の所定時間から、所定の時間をかけて、増幅回路20のゲインを上昇させる。増幅制御回路25が増幅回路20に設定するゲインの初期値や、時間とゲインとの傾きやカーブといった特性は設計事項ではある。しかし、切り替え回路22が送信状態となる「t4」のタイミングにおいて、増幅制御回路25が増幅回路2に設定するゲインは、ゲインの上昇過程であり、また、「t4」を所定時間経過してからゲインは最大とする必要がある。増幅制御回路25が増幅回路2に設定するゲインは、期間T2内で最小ゲインの状態から増加を開始することが望ましい。
【0036】
一方、
図5に示すように、「無線通信機・送信出力」は、「t3」の時点で切り替え回路22が解放状態となるので、振幅制限回路24による振幅制限は行われなくなり、無線通信機1本来の送信開始時の振幅レベルに復帰し、無線通信機1に設定されていた送信出力に向かって増加する。
【0037】
「t4」直後の「増幅装置・送信信号」の振幅レベルは、「t4」における無線通信機1の送信出力の振幅レベルを、増幅制御回路25が設定したゲイン設定に基づいて増幅回路20が増幅した振幅レベルとなる。「t4」直後の送信信号の振幅レベルが「t3」直前の送信信号の振幅レベルと同等以下となるように、増幅制御回路25は、増幅回路20に適切なゲインを設定する。
【0038】
先に説明したように、瞬断の前後の送信出力、つまり「t3」直前の送信出力の振幅レベルと、「t4」直後の送信出力の振幅レベルを下げることにより不要輻射を抑制することが出来る。本発明の実施形態1の増幅装置2は、「t3」直前の送信出力の振幅レベルは振幅制限回路24の振幅制限機能(振幅制限回路24)により制限し、「t4」直後の送信出力の振幅レベルは増幅制御回路25の増幅度制御信号により制限することにより、キャリアコントロール方式の送受信の切り替えに伴う瞬断の前後の送信出力を低減し、不要輻射を抑制することが出来る。
【0039】
(実施形態2)
一般的に無線通信は、その通信に必要な最小限の送信出力で送信することが望ましいとされる。そのため、無線通信設備100の形態はそのままで、増幅装置2による送信出力の増加を必要としない場合もある。具体的には、増幅装置2は、増幅装置2による送信出力の増加を必要としない場合、キャリアコントロールによる切り替え動作を止め、無線通信機1からの送信信号を迂回させアンテナ3に供給する必要がある。しかしながら、本発明の実施形態1では、迂回経路に振幅制限機能を有すため、増幅装置2を接続したまま、キャリアコントロールによる切り替え動作を止めても、無線通信機1の送信信号をアンテナ3から出力することができない。
【0040】
本発明の実施形態2に係る増幅装置2Aの構成を
図6に示す。実施形態2に係る増幅装置2Aは、実施形態1の構成に加え、第2切り替え回路32(321、322)、迂回回路31、フィルタ回路30および第2切り替え制御回路33、を備える。第1実施形態における切り替え回路は、第2実施形態においては第1切り替え回路22(221、222)とし、第1実施形態における切り替え制御回路23は、第2実施形態においては第1切り替え回路23とする。
【0041】
第2切り替え制御回路33は、第2切り替え回路32を、迂回回路31を介して無線通信機1とアンテナ3とを接続する経路(迂回経路)を選択するか、増幅回路20または振幅制限回路24のいずれかを介して無線通信機1とアンテナ3とを接続する経路(増幅経路)を選択するかを切り替える。また、第2切り替え制御回路33は、迂回経路を選択する場合に、増幅回路20、第1切り替え回路22、第1切り替え制御回路23、増幅制御回路25への電源の供給を停止してもよい。第2切り替え制御回路33が、迂回経路を選択する場合には迂回選択信号を出力し、増幅経路を選択する場合には増幅選択信号を出力する。
【0042】
第2切り替え回路32は、第2切り替え回路321が入力側(コネクタC1側)に配置され、第2切り替え回路322が出力側(コネクタC2側)に配置される。第2切り替え回路32は、第2切り替え制御回路33から出力される迂回選択信号または増幅選択信号により無線通信機1とアンテナ3とを接続する経路を切り替える。
【0043】
迂回回路31は、第2切り替え制御回路33が迂回選択信号を出力し、第2切り替え回路32が迂回経路を選択した場合に無線通信機1とアンテナ3とを接続する経路となる回路である。迂回回路31は、特に回路部品を必要とはしないが、高周波の送信信号または受信信号が通過するため、伝送ロスの少ない経路とする必要がある。迂回回路31は、必要に応じて、同軸ケーブルといった部品を用いてもよい。
【0044】
フィルタ回路30は、増幅回路20が発生する高調波を抑制する。フィルタ回路30は、例えばローパスフィルタであるが、その特性は、増幅回路20が増幅可能な周波数帯の高調波を抑制するようにカットオフ周波数は設定されている。フィルタ回路30は、増幅経路の増幅回路20の出力側に配置される。詳細には、フィルタ回路30は、切り替え回路222と切り替え回路322との間に配置される。つまりフィルタ回路30は、第2迂回回路の経路には介在しない。そのため、迂回経路は、増幅回路20が増幅可能な周波数帯以外の信号の伝送が可能である。例えば、無線通信機1の送信周波数が増幅回路20により増幅可能な周波数帯以外の周波数帯を備えている場合であって、無線通信機1の送信周波数が増幅回路20により増幅可能な周波数帯以外の周波数帯で通信を行う場合、増幅装置20Aは、第2迂回回路介して通信を行うことができる。無線通信機1が増幅回路20により増幅可能な周波数帯域外の周波数帯域での通信ができない場合は、フィルタ回路30は、第2切り替え回路322とコネクタC2との間に配置されてもよい。
【0045】
フィルタ回路30は、振幅制限回路24が振幅を制限することにより発生する高調波も抑制する。振幅制限回路24は、本来ある振幅を一定の振幅レベル以上とならないよう制限するため、通過する信号を歪ませる。この歪は広帯域にわたって発生するため高調波成分も含まれる。実施形態1の
図4で示した「t2」と「t3」との期間は、振幅制限回路24により無線通信機1からの送信信号の振幅レベルが抑制される期間である。この期間は、振幅レベルは制限されるものの、本来出力されるべきではない広帯域の信号が発生する。よってフィルタ回路30は、振幅制限回路24により発生した広帯域の信号の一部を、アンテナに供給しないように、切り替え回路222と切り替え回路322との間に配置される。
【0046】
本発明の実施形態2に係る増幅装置2Aは、無線通信設備100を使用する従事者が使用するにあたり操作する操作部の構成は図示していないが、電源スイッチや、迂回回路を使用するか増幅回路を使用するかを選択する操作を受け付ける操作部を備えてもよい。増幅装置2Aは、電源スイッチがオフの場合、つまり初期状態は、迂回回路が選択される。第2実施形態における増幅装置2Aは、電源スイッチがオン状態で、迂回回路が選択されると第1切り替え制御回路には入力信号は伝達されないため、キャリアコントロール方式による送受信の切り替えは生じない。しかし、増幅回路20や増幅制御回路25、第1切り替え制御回路23といった回路に電源を供給する意味は無いので、第2制御回路は、迂回回路を選択した場合には、これらの回路への電源の供給を停止してもよい。
【0047】
本発明の実施形態2に係る増幅装置2Aは、以上の構成により、
(1)増幅経路を選択している場合は、実施形態1と同様に、キャリアコントロール方式の送受信の切り替えに伴う瞬断の前後の送信出力を低減し、不要輻射を抑制することが出来る。また、
(2)迂回経路を選択している場合は、増幅回路20、第1切り替え回路22、切り替え制御回路23、増幅制御回路25への電源の供給を停止するため、増幅装置2の消費電力を低減することができる。さらにまた、
(3)無線通信機1が、増幅装置2の送信可能な周波数帯以外の周波数帯の送信および受信が可能な場合には、増幅装置2の送信可能な周波数帯以外の周波数帯の信号を、フィルタ回路30を通過させることなく無線通信機1とアンテナ3とを接続することができる。
【0048】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係る増幅装置2Bの構成を
図7に示す。本発明の実施形態3に係る増幅装置2Bは、実施形態1における振幅制限回路24の振幅制限機能を停止することで、実質的に迂回経路とすることを特徴とする。迂回経路は、増幅装置20により無線通信機1の送信出力の増加を行わない場合に、増幅回路20を介さないで無線通信機1とアンテナ3とを接続する。
【0049】
本発明の実施形態3に係る増幅装置2は、実施形態1の構成に加え、フィルタ回路40および制御回路43、を備える。実施形態3における振幅制限回路44は、実施形態1の振幅制限回路24とは異なる。制御回路43は、振幅制限回路44の振幅制限機能を停止または動作する制御を行う。フィルタ回路40は、実施形態2と同様に、主に増幅回路20の高調波の周波数帯域を抑制するローパスフィルタである。
【0050】
本発明の実施形態3に係る増幅装置2の振幅制限回路41の詳細を、
図8を用いて説明する。
図8に示す振幅制限回路44は、伝送回路441、スイッチ442および振幅制限素子443を備える。伝送回路441は、切り替え回路221と切り替え回路222とに接続され、無線通信機1から出力される送信信号(入力信号)をアンテナ3に伝送する経路である。スイッチ442は、制御回路43から出力される制御信号により振幅制限素子443を伝送回路441に接続また解放を行うスイッチである。つまりスイッチ442は、振幅制限回路44の振幅制限を解除する振幅制限解除回路である。振幅制限素子443は、スイッチ442を介して伝送回路441に接続された状態で、伝送回路441に伝送される信号の振幅を所定の振幅レベルに制限する。また、振幅制限素子443は、スイッチ442が解放されると、伝送回路441への接続が解放されるため、伝送回路441に伝送される信号の振幅を制限しない。
【0051】
本発明の実施形態3に係る増幅装置2の制御回路43は、振幅制限回路44内のスイッチ442を制御する信号を出力する。制御回路43は、無線通信機1が増幅装置2を介して通信を行うにあたり、増幅装置2による増幅を行って通信を行う場合は、スイッチ442をオンとする制御を行い、振幅制限回路44の振幅制限機能を動作させる。前記したように、本発明の実施形態3に係る増幅装置2は、振幅制限機能によりキャリアコントロール方式による送信受信の切り替え時の送信信号の瞬断の際に生じる不要輻射を抑制する。
【0052】
また、制御回路43は、無線通信機1が増幅装置2を介して通信を行うにあたり、増幅装置2による増幅を行わず通信を行う場合は、スイッチ442をオフとする制御を行い、振幅制限回路44の振幅制限機能の動作を停止させる。制御回路43が、振幅制限回路44の振幅制限機能をオフにすることにより、振幅制限回路44は、実質的には増幅装置2内の迂回経路となる。
【0053】
本発明の実施形態3に係る増幅装置2の振幅制限回路44の変形例を
図9に示す。スイッチ442は、実施形態3のスイッチが開閉のみであったのに対して、変形例では双方向接点を用い、伝送経路441と振幅制限素子443の経路とを切り替える。実施形態3の振幅制限回路44は、伝送経路441にスイッチ442と振幅制限素子443が接続されている為、伝送経路441を介して伝送する信号の周波数によっては、スイッチ442への接続のパターンの長さやスイッチ442内部の電気長が影響する場合がある。一方、変形例の構成では、スイッチ442への接続のパターンの長さによる影響を受けないことから、無線通信設備100により通信を行う周波数が比較的高い場合、例えば1GHz以上といった場合は、変形例の方が望ましい。
【0054】
本発明の第2実施形態における増幅装置2Aは、電源スイッチがオン状態で、迂回回路が選択されると第1切り替え制御回路には入力信号は伝達されないため、キャリアコントロール方式による送受信の切り替えは生じない。しかし、第3実施形態では、振幅制限回路44の振幅制限機能を解除して実質的に迂回回路としても、入力信号は切り替え制御回路23に入力されるため、キャリアコントロール方式による送受信の切り替えは生じてしまう。そのため、実施形態3の増幅回路2Bの制御回路は、振幅制限回路44の振幅制限機能を解除すると共に、少なくとも切り替え制御回路23のキャリア検出の動作は停止させる制御を行う。また、増幅回路20や増幅制御回路25といった回路に電源を供給する意味は無いので、制御回路は、振幅制限回路44の振幅制限機能を解除した場合には、これらの回路への電源の供給を停止してもよい。
【0055】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 無線通信装置
2 増幅装置
3 アンテナ
100 無線通信設備
20 増幅回路
21 迂回回路
22 切り替え回路(第1切り替え回路)
23 切り替え制御回路(第1切り替え制御回路)
24 振幅制限回路、241 伝送経路、243 振幅制限素子
25 増幅制御回路
30 フィルタ回路
32 第2切り替え回路
33 第2切り替え制御回路
43 制御回路
44 振幅制限回路、 441 伝送回路、442 スイッチ、 443 振幅制限素子