(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164314
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】スロットレス型の光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
G02B6/44 376
G02B6/44 366
G02B6/44 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069730
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乗杉 優司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX06
2H201BB06
2H201BB08
2H201BB12
2H201BB22
2H201BB25
2H201BB33
2H201BB65
2H201BB72
2H201BB75
2H201DD06
2H201DD12
2H201DD13
2H201DD14
2H201KK02
2H201KK08
2H201KK17
2H201KK34C
2H201KK72
2H201MM15
2H201MM18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】許容張力を確保しつつ可撓性を高めることができるスロットレス型の光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】スロットレス型の光ファイバケーブル1は、複数の光ファイバ心線21と、複数のテンションメンバ3と、を備えている。複数のテンションメンバは、光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面において光ファイバケーブルの中心に配置されており、光ファイバケーブルの長手方向に沿って互いに撚り合わされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線と、
複数のテンションメンバと、
を備えており、
前記複数のテンションメンバは、光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面において前記光ファイバケーブルの中心に配置されており、前記光ファイバケーブルの長手方向に沿って互いに撚り合わされている、スロットレス型の光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記テンションメンバのヤング率は、30000MPa以上70000MPa以下である、請求項1に記載のスロットレス型の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記テンションメンバは、繊維強化プラスチックである、請求項2に記載のスロットレス型の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記複数のテンションメンバは、2本以上7本以下のテンションメンバから構成されており、
前記テンションメンバの外径は、1.5mm以上3.2mm以下である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスロットレス型の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記テンションメンバの撚りピッチは、100mm以上300mm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスロットレス型の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記複数の光ファイバ心線は、長手方向に直交する方向に並列に配置された状態で、一部または全ての前記光ファイバ心線間において、隣接する光ファイバ心線間が連結された状態の連結部と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない状態の非連結部とが、前記光ファイバ心線の長手方向に間欠的に設けられている光ファイバリボンを複数形成しており、
前記複数の光ファイバリボンは、互いに撚り合わされている、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスロットレス型の光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スロットレス型の光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ケーブルコアの中央に配置された1本のテンションメンバを備えるスロットレス型の光ファイバケーブルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/174004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバケーブルの許容張力を確保するためには、テンションメンバの外径を大きくすることが考えられる。しかしながら、テンションメンバの外径を大きくするとテンションメンバの最小曲げ径が大きくなり、光ファイバケーブルの可撓性が低下する。
【0005】
本開示は、許容張力を確保しつつ可撓性を高めることができるスロットレス型の光ファイバケーブルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のスロットレス型の光ファイバケーブルは、
複数の光ファイバ心線と、
複数のテンションメンバと、
を備えており、
前記複数のテンションメンバは、光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面において前記光ファイバケーブルの中心に配置されており、前記光ファイバケーブルの長手方向に沿って互いに撚り合わされている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、許容張力を確保しつつ可撓性を高めることができるスロットレス型の光ファイバケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るスロットレス型の光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面図である。
【
図2】
図2は、光ファイバユニットの長手方向の側面図であって、樹脂膜の一部を剥いだ状態を示す図である。
【
図3】
図3は、光ファイバリボンの構造の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、複数のテンションメンバが撚り合わされた状態を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の実施の形態の説明)
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のスロットレス型の光ファイバケーブルは、
複数の光ファイバ心線と、
複数のテンションメンバと、
を備えており、
前記複数のテンションメンバは、光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面において前記光ファイバケーブルの中心に配置されており、前記光ファイバケーブルの長手方向に沿って互いに撚り合わされている。
【0010】
このような構成によれば、光ファイバケーブルの中心にテンションメンバが配置されているので、光ファイバケーブルの曲げ異方性(曲げやすい方向の偏り)を抑制できる。さらに、複数のテンションメンバが撚り合わされているので、各テンションメンバの外径の増大を抑制しつつ、光ファイバケーブルの許容張力を確保できる。各テンションメンバの外径の増大を抑制できるので、撚り合わされたテンションメンバの集合体の最小曲げ径の増大を抑制できる。結果として、許容張力を確保しつつ可撓性を高めることができる光ファイバケーブルを提供できる。
【0011】
(2)前記テンションメンバのヤング率は、30000MPa以上70000MPa以下でもよい。
【0012】
このような構成によれば、適度な許容張力を確保できる。
【0013】
(3)前記テンションメンバは、繊維強化プラスチック(FRP)でもよい。
【0014】
例えばガラスFRPのヤング率は40000MPaであり、アラミドFRPのヤング率は62000MPaである。したがって、テンションメンバとしてこのようなFRPを用いることにより、適度な許容張力を確保できる。
【0015】
(4)前記複数のテンションメンバは、2本以上7本以下のテンションメンバから構成されており、
前記テンションメンバの外径は、1.5mm以上3.2mm以下でもよい。
【0016】
テンションメンバの数が7本よりも増えると、複数のテンションメンバは3層以上の撚り構造に形成されるので、取り回しが難しくなる。上記のような構成によれば、テンションメンバの本数が2本以上7本以下であるので、複数のテンションメンバを2層の撚り構造に形成でき、取り扱いが容易である。さらに、テンションメンバの外径は1.5mm以上3.2mm以下であるので、光ファイバケーブルの許容張力を確保しつつ、撚り合わされたテンションメンバの集合体のサイズの増大を抑制できる。
【0017】
(5)前記テンションメンバの撚りピッチは、100mm以上300mm以下でもよい。
【0018】
撚りピッチが100mmより小さいと、撚り構造を起因とする歪が大きくなり、撚り合わされたテンションメンバの集合体の最小曲げ径が大きくなる。他方、撚りピッチが300mmよりも大きいと、撚り合わされたテンションメンバの集合体の取り扱いが難しくなる。上記のような構成によれば、撚りピッチが100mm以上300mm以下であるので、撚り合わされたテンションメンバの集合体の取り扱いが容易であり且つ最小曲げ径の増大を抑制できる。
【0019】
(6)前記複数の光ファイバ心線は、長手方向に直交する方向に並列に配置された状態で、一部または全ての前記光ファイバ心線間において、隣接する光ファイバ心線間が連結された状態の連結部と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない状態の非連結部とが、前記光ファイバ心線の長手方向に間欠的に設けられている光ファイバリボンを複数形成しており、
前記複数の光ファイバリボンは、互いに撚り合わされてもよい。
【0020】
このような構成によれば、連結部と非連結部を有する光ファイバリボンが撚り合わされているので、光ファイバ心線を光ファイバケーブル内に高密度に実装できる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光ファイバケーブルの具体例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
図1から
図4を参照して、本実施形態に係る光ファイバケーブル1の構成について説明する。
【0023】
図1に例示されるように、光ファイバケーブル1は、複数の光ファイバユニット2、複数のテンションメンバ3、および外被4を備えている。複数の光ファイバユニット2は複数のテンションメンバ3の周囲に配置されており、複数の光ファイバユニット2の周囲は外被4により被覆されている。外被4は、例えば、高密度ポリエチレンなどの比較的ヤング率が高い硬質の樹脂により形成される。
【0024】
光ファイバユニット2は、複数の光ファイバリボン21を有している。
図2に例示されるように、複数の光ファイバリボン21は、光ファイバケーブル1の長手方向に沿って、互いに撚り合わされている。撚り合わされた光ファイバリボン21の集合体の周囲は、バンドル材や樹脂膜22により覆われてもよい。
【0025】
図3に例示されるように、光ファイバリボン21は、複数の光ファイバ心線211を有している。光ファイバ心線211は、例えば、コアおよびクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバの周囲を覆う一層または複数の樹脂層とを有する。
【0026】
複数の光ファイバ心線211は、その長手方向に直交する方向に並列に配置される。本例においては、少なくとも一部の隣接する光ファイバ心線211間には、当該隣接する光ファイバ心線211間が連結された状態の連結部212と、当該隣接する光ファイバ心線211間が連結されていない状態の非連結部213とが、光ファイバ心線211の長手方向に間欠的に設けられている。また、本例においては、並列に配置された12本の光ファイバ心線211において、2心毎に連結部212と非連結部213とが光ファイバ心線211の長手方向に間欠的に設けられている。例えば、光ファイバ心線211間に紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等からなる樹脂を塗布することによって連結部212が形成されうる。あるいは、並列に配置された複数の光ファイバ心線211の片面または両面全体に樹脂を塗布し、樹脂の一部を回転刃により切断することにより非連結部213を形成してもよい。
【0027】
光ファイバケーブル1内には、例えば、1000~7000本の光ファイバ心線211が実装されうる。例えば、80本の光ファイバ心線211を有する光ファイバユニット2を13個配置することにより、光ファイバケーブル1内に1040本の光ファイバ心線211を実装できる。例えば、216本の光ファイバ心線211を有する光ファイバユニット2を32個配置することにより、光ファイバケーブル1内に6912本の光ファイバ心線211を実装できる。
【0028】
複数のテンションメンバ3は、
図1に例示されるように、光ファイバケーブル1の長手方向に直交する断面において、光ファイバケーブル1の中心に配置されている。さらに、複数のテンションメンバ3は、
図4に例示されるように、光ファイバケーブル1の長手方向に沿って一方向に撚り合わされている。テンションメンバ3の撚り合わせの方向は、S撚りとZ撚りのいずれであってもよい。本例においては、テンションメンバ3の集合体は、1本のテンションメンバ3の周りに6本のテンションメンバ3が配置された2層の撚り構造を有している。
【0029】
本明細書において用いられる「撚り合わされたテンションメンバ3が光ファイバケーブル1の中心に配置されている」という表現は、撚り合わされたテンションメンバ3の集合体の中心が光ファイバケーブル1の中心と一致する場合に限られず、光ファイバケーブル1において曲げ異方性が無視できる範囲内であれば、光ファイバケーブル1の中心近傍に配置されている場合も含みうる。例えば、撚り合わされたテンションメンバ3の集合体は、光ファイバケーブル1の中心から、撚り合わされたテンションメンバ3の集合体の外接円径)+0.6mmを半径とする円の範囲内に配置されうる。
【0030】
ところで、テンションメンバ3が外被4に埋め込まれて配置される場合や外被4の内側において例えば外被4の内面付近に配置される場合、テンションメンバ3の位置や数に応じて光ファイバケーブルには曲げ異方性が生じる。これに対して、本開示に係る光ファイバケーブル1では、光ファイバケーブル1の中心にテンションメンバ3が配置されているので、光ファイバケーブル1の曲げ異方性を抑制できる。
【0031】
また、光ファイバケーブルの中心に1本のテンションメンバ3が配置される場合、光ファイバケーブルの許容張力を確保するためには、テンションメンバ3の外径を大きくすることが考えられる。しかしながら、テンションメンバ3の外径を大きくすると、テンションメンバ3の最小曲げ径が大きくなり、光ファイバケーブルの可撓性が低下する。これに対して、本開示に係る光ファイバケーブル1では、複数のテンションメンバ3が撚り合わされているので、各テンションメンバ3の外径の増大を抑制しつつ、光ファイバケーブル1の許容張力を確保できる。各テンションメンバ3の外径の増大を抑制できるので、撚り合わされたテンションメンバ3の集合体の最小曲げ径の増大を抑制できる。結果として、光ファイバケーブル1の許容張力を確保しつつ可撓性を高めることができる。
【0032】
また、連結部212と非連結部213を有する光ファイバリボン21が互いに撚り合わされることにより、光ファイバ心線211を光ファイバケーブル1内に高密度に実装できる。
【0033】
また、テンションメンバ3の集合体は2層の撚り構造を有しているので、テンションメンバ3の集合体の取り回しが容易である。なお、テンションメンバ3の数が7本を超えると、テンションメンバ3の集合体は3層以上の撚り構造に形成されるので、取り回しが難しくなる。従って、テンションメンバ3の集合体は、2本以上7本以下のテンションメンバ3から構成されることが好ましい。この場合、1.5mm以上3.2mm以下の外径を有するテンションメンバ3を使用することにより、光ファイバケーブル1の許容張力を確保しつつ、撚り合わされたテンションメンバ3の集合体のサイズの増大を抑制できる。
【0034】
テンションメンバ3は、ヤング率が30000MPa以上70000MPa以下である部材により形成されうる。例えば、テンションメンバ3は、繊維強化プラスチック(FRP)により形成される。繊維強化プラスチックとしては、アラミドFRP、ガラスFRP、カーボンFRP、ボロンFRPなどが挙げられる。このようにテンションメンバ3をヤング率が30000MPa以上70000MPa以下である部材により形成することにより、適度な許容張力を確保できる。
【0035】
図4に例示されるように、テンションメンバ3の撚りピッチhは、100mm以上300mm以下に設定されうる。撚りピッチが100mmより小さいと、撚り構造を起因とする歪が大きくなり、撚り合わされたテンションメンバの集合体の最小曲げ径が大きくなる。他方、撚りピッチが300mmよりも大きいと、撚り合わされたテンションメンバ3の集合体の取り扱いが難しくなる。テンションメンバ3の撚りピッチを100mm以上300mm以下にすることにより、撚り合わされたテンションメンバ3の集合体の取り扱いが容易であり且つ最小曲げ径の増大を抑制できる。
【0036】
(評価実験)
評価実験1から評価実験3では、所定の外径を有する1本のテンションメンバの許容張力と同じ許容張力を維持するテンションメンバの集合体の最小曲げ径を評価した。
【0037】
(評価実験1)
評価実験1では、外径4mmを有する1本のガラスFRPの許容張力と同じ許容張力を有するガラスFRPの集合体の最小曲げ径を評価した。ガラスFRPのヤング率は40000Mpaである。具体的には、撚り合わせるガラスFRPの外径、本数、撚りピッチの3つのパラメータを変化させて、ガラスFRPの集合体であるサンプルNo.1からNo.12を用意した。また比較例として、1本の外径4mmを有するガラスFRPであるサンプルNo.13を用意した。サンプルNo.1からNo.4では、外径2.3mmのガラスFRPを3本撚り合わせることによりガラスFRPの集合体を形成した。サンプルNo.1の撚りピッチは50mm、サンプルNo.2の撚りピッチは100mm、サンプルNo.3の撚りピッチは200mm、サンプルNo.4の撚りピッチは300mmとした。サンプルNo.5からNo.8では、外径1.8mmのガラスFRPを5本撚り合わせることによりガラスFRPの集合体を形成した。サンプルNo.5の撚りピッチは50mm、サンプルNo.6の撚りピッチは100mm、サンプルNo.7の撚りピッチは200mm、サンプルNo.8の撚りピッチは300mmとした。サンプルNo.9からNo.12では、外径1.5mmのガラスFRPを7本撚り合わせることによりガラスFRPの集合体を形成した。サンプルNo.9の撚りピッチは50mm、サンプルNo.10の撚りピッチは100mm、サンプルNo.11の撚りピッチは200mm、サンプルNo.12の撚りピッチは300mmとした。なお、許容張力上限は、光ファイバケーブルの伸び歪みが0.3%以下となる場合にガラスFRPに印加される張力の上限値として算出とした。破断時歪みは、ヤング率と破断強度から算出した。撚り構造を起因とする歪み(以下、撚歪みと称するε0)は、ε0=[π2*2d2+h2)-h]/h(h:撚りピッチ、d:FRP単体の半径)から算出した。最小曲げ径は、破断時歪みから撚歪みを差し引いた曲げ歪から算出した。具体的には、最小曲げ径Dは、D=(d-εd)/ε(ε:曲げ歪)から算出した。各サンプルにおいて、最小曲げ径の評価結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
サンプルNo.1~No.12のいずれも、サンプルNo.13と同じ許容張力を維持しつつ、最小曲げ径がサンプルNo.13の最小曲げ径よりも小さいことが確認された。すなわち、テンションメンバを撚り合わせることにより、許容張力を確保しつつ良好な最小曲げ径を有することがわかった。
【0040】
(評価実験2)
評価実験2では、外径4.5mmを有する1本のアラミドFRPの許容張力と同じ許容張力を有するアラミドFRPの集合体の最小曲げ径を評価した。アラミドFRPのヤング率は62000Mpaである。具体的には、撚り合わせるアラミドFRPの外径、本数、撚りピッチの3つのパラメータを変化させて、アラミドFRPの集合体であるサンプルNo.21からNo.32を用意した。また比較例として、1本の外径4.5mmを有するアラミドFRPであるサンプルNo.33を用意した。サンプルNo.21からNo.24では、外径2.6mmのアラミドFRPを3本撚り合わせることによりアラミドFRPの集合体を形成した。サンプルNo.21の撚りピッチは50mm、サンプルNo.22の撚りピッチは100mm、サンプルNo.23の撚りピッチは200mm、サンプルNo.24の撚りピッチは300mmとした。サンプルNo.25からNo.28では、外径2.0mmのアラミドFRPを5本撚り合わせることによりアラミドFRPの集合体を形成した。サンプルNo.25の撚りピッチは50mm、サンプルNo.26の撚りピッチは100mm、サンプルNo.27の撚りピッチは200mm、サンプルNo.28の撚りピッチは300mmとした。サンプルNo.29からNo.32では、外径1.7mmのアラミドFRPを7本撚り合わせることによりアラミドFRPの集合体を形成した。サンプルNo.29の撚りピッチは50mm、サンプルNo.30の撚りピッチは100mm、サンプルNo.31の撚りピッチは200mm、サンプルNo.32の撚りピッチは300mmとした。各サンプルにおいて、最小曲げ径の評価結果を表2に示す。
【0041】
【0042】
サンプルNo.22~No.32は、サンプルNo.33と同じ許容張力を維持しつつ、最小曲げ径がサンプルNo.33の最小曲げ径よりも小さいことが確認された。一方、サンプルNo.21は、最小曲げ径がサンプルNo.33の最小曲げ径よりも小さいことが確認された。これは、アラミドFRPの外径に対して撚りピッチが小さいために、撚り構造を起因とする歪が大きくなるためである。すなわち、撚りピッチが100mm以上300mm以下となるようにテンションメンバを撚り合わせることにより、許容張力を確保しつつ良好な最小曲げ径を有することがわかった。
【0043】
(評価実験3)
評価実験3では、外径5.5mmを有する1本のガラスFRPの許容張力と同じ許容張力を有するガラスFRPの集合体の最小曲げ径を評価した。具体的には、撚り合わせるガラスFRPの外径、本数、撚りピッチの3つのパラメータを変化させて、ガラスFRPの集合体であるサンプルNo.41からNo.52を用意した。また比較例として、1本の外径5.5mmを有するガラスFRPであるサンプルNo.53を用意した。サンプルNo.41からNo.44では、外径3.2mmのガラスFRPを3本撚り合わせることによりガラスFRPの集合体を形成した。サンプルNo.41の撚りピッチは50mm、サンプルNo.42の撚りピッチは100mm、サンプルNo.43の撚りピッチは200mm、サンプルNo.44の撚りピッチは300mmとした。サンプルNo.45からNo.48では、外径2.5mmのガラスFRPを5本撚り合わせることによりガラスFRPの集合体を形成した。サンプルNo.45の撚りピッチは50mm、サンプルNo.46の撚りピッチは100mm、サンプルNo.47の撚りピッチは200mm、サンプルNo.48の撚りピッチは300mmとした。サンプルNo.49からNo.52では、外径2.1mmのガラスFRPを7本撚り合わせることによりガラスFRPの集合体を形成した。サンプルNo.49の撚りピッチは50mm、サンプルNo.50の撚りピッチは100mm、サンプルNo.51の撚りピッチは200mm、サンプルNo.52の撚りピッチは300mmとした。各サンプルにおいて、最小曲げ径の評価結果を表3に示す。
【0044】
【0045】
サンプルNo.42~No.52は、サンプルNo.53と同じ許容張力を維持しつつ、最小曲げ径がサンプルNo.53の最小曲げ径よりも小さいことが確認された。一方、サンプルNo.41は、最小曲げ径がサンプルNo.53の最小曲げ径よりも小さいことが確認された。これは、ガラスFRPの外径に対して撚りピッチが小さいために、撚り構造を起因とする歪が大きくなるためである。すなわち、撚りピッチが100mm以上300mm以下となるようにテンションメンバを撚り合わせることにより、許容張力を確保しつつ良好な最小曲げ径を有することが分かった。
【0046】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0047】
光ファイバユニット2を構成する光ファイバリボン21の数および光ファイバリボン21を形成する光ファイバ心線211の数は、光ファイバケーブル1に収容される光ファイバ心線211の数に応じて適宜変更可能である。
【0048】
光ファイバユニット2は、光ファイバリボン21の代わりに、複数の単心の光ファイバ心線211を有してもよい。この場合、単心の光ファイバ心線211は複数本撚り合わせることにより集合体を形成してもよく、集合体の周囲はバンドル材や樹脂膜により覆われてもよい。
【0049】
光ファイバケーブル1は、
図1に例示される構造に限定されない。例えば、光ファイバケーブル1は、外被4の周囲がさらに他の外被により覆われた2層シース構造を有しうる。あるいは、光ファイバケーブル1内に配置される複数の光ファイバユニット2は、光ファイバケーブル1の長手方向に沿って撚り合わされてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1: 光ファイバケーブル
2:光ファイバユニット
3:テンションメンバ
4:外被
21:光ファイバリボン
22:樹脂膜
211:光ファイバ心線
212:連結部
213:非連結部
h:撚りピッチ