IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鈴茂器工株式会社の特許一覧

特開2022-164321板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法
<>
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図1
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図2
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図3
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図4
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図5
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図6
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図7
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図8
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図9
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図10
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図11
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図12
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図13
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図14
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図15
  • 特開-板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164321
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/48 20060101AFI20221020BHJP
   B65H 1/14 20060101ALI20221020BHJP
   B65H 3/12 20060101ALI20221020BHJP
   B65H 3/08 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B65H3/48 320A
B65H1/14 322B
B65H3/12 310A
B65H3/08 310A
B65H3/08 348A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069740
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】591094262
【氏名又は名称】鈴茂器工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】田代 光男
(72)【発明者】
【氏名】杉▲崎▼ 健
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA20
3F343FB00
3F343FC01
3F343FC17
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC04
3F343GD01
3F343HA17
3F343HA33
3F343HD07
3F343HD16
3F343JB03
3F343JB05
3F343JB16
3F343JB19
3F343JB20
3F343JD28
3F343JD34
3F343KB03
3F343KB04
3F343KB05
3F343LA04
3F343LA14
3F343LB08
3F343LC02
3F343LC08
3F343LD07
3F343LD10
3F343MA03
3F343MA13
3F343MA23
3F343MB04
3F343MB12
3F343MB13
3F343MB14
3F343MC05
3F343MC13
3F343MC19
(57)【要約】
【課題】板海苔積層体から1枚の板海苔を確実に且つ損傷なく取り出す。
【解決手段】積層された複数枚の板海苔で構成される板海苔積層体NTを搭載するトレイ7と、第1の筐体1と捌きブロア5とで構成され、板海苔積層体NTの側面上部に向けて側方からエアを噴出して板海苔を1枚毎に分離して浮上させるエア噴出部ASと、第2の筐体2と吸着ブロア6とで構成され、エアにより浮上した最上部の板海苔Nの上面を吸着する板海苔吸着部NAと、板海苔吸着部NAに吸着された板海苔Nを側方へ取り出す取出部8とを有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数枚の板海苔で構成される板海苔積層体を搭載するトレイと、
前記板海苔積層体の側面上部に向けて側方からエアを噴出して前記板海苔を1枚毎に分離して浮上させるエア噴出部と、
エアにより浮上した最上部の前記板海苔の上面を吸着する板海苔吸着部と、
前記板海苔吸着部に吸着された前記板海苔を側方へ取り出す取出部と、
を有することを特徴とする板海苔分離装置。
【請求項2】
前記エア噴出部は、
前記板海苔積層体の側面上部に向けた噴出孔を備えた第1の噴出部材と、
前記第1の噴出部材内に取り込んだエアを前記噴出孔から噴出させる第1の送風機とを備え、
前記板海苔吸着部は、
前記板海苔積層体の上方に位置する吸着孔が形成された第1の吸着部材と、
前記吸着孔から前記第1の吸着部材内にエアを取り込む第2の送風機とを備える、
ことを特徴とする請求項1記載の板海苔分離装置。
【請求項3】
前記板海苔吸着部による前記板海苔の吸着の有無を検出する検出手段が設置され、
前記検出手段により前記板海苔の吸着が検出されていないときには、前記第1の送風機および前記第2の送風機が駆動され、
前記検出手段により前記板海苔の吸着が検出されたときには、前記第1の送風機は停止または出力を落として駆動されるとともに、前記第2の送風機は出力を落として駆動される、
ことを特徴とする請求項2記載の板海苔分離装置。
【請求項4】
前記検出手段は、
前記板海苔吸着部に吸着された前記板海苔の接触によって第1の位置から第2の位置へと変位する機械式センサである、
ことを特徴とする請求項3記載の板海苔分離装置。
【請求項5】
前記検出手段は、
前記板海苔吸着部に吸着された前記板海苔の有無を非接触で検出する光電センサまたは超音波センサである、
ことを特徴とする請求項3記載の板海苔分離装置。
【請求項6】
前記トレイを昇降する昇降機構をさらに有する、
ことを特徴とする請求項2~5の何れか一項に記載の板海苔分離装置。
【請求項7】
前記昇降機構は、
前記トレイの両側に固定されて水平方向に延びたアームと、
前記アームを上下方向に案内するガイド孔と、
装置後方に向かって上方に傾斜して前記アームと係合するトレイ昇降ブロックが両端に取り付けられたトレイ駆動板と、
前記トレイ駆動板を前後にスライド移動させるトレイ昇降駆動部とを備える、
ことを特徴とする請求項6記載の板海苔分離装置。
【請求項8】
前記昇降機構は、
所定時間にわたって前記板海苔吸着部に前記板海苔が吸着されなかったことを前記検出手段が検出したときには、前記板海苔吸着部に前記板海苔が吸着されたことを前記検出手段が検出する高さまで前記トレイを上昇させる、
ことを特徴とする請求項6または7記載の板海苔分離装置。
【請求項9】
前記昇降機構が前記トレイを上端位置まで上昇させても前記板海苔吸着部に前記板海苔が吸着されたことを前記検出手段が検出しない場合には、
前記昇降機構は、前記トレイを下端に移動させ、
前記第1の送風機および前記第2の送風機は停止する、
ことを特徴とする請求項8記載の板海苔分離装置。
【請求項10】
前記第1の噴出部材の前記板海苔積層体を挟んだ反対側には、前記第1の噴出部材の前記噴出孔から噴出したエアを排出するエア排出部が形成されている、
ことを特徴とする請求項2~9の何れか一項に記載の板海苔分離装置。
【請求項11】
前記第1の噴出部材は、
前記トレイの側方に配置されて側面に前記噴出孔が形成された第1の筐体であり、
前記第1の吸着部材は、
前記トレイの上方に配置されて底面に前記吸着孔が形成された第2の筐体である、
ことを特徴とする請求項2~10の何れか一項に記載の板海苔分離装置。
【請求項12】
前記エア噴出部は、
前記板海苔積層体の側面上部に向けた噴出孔を備えた第2の噴出部材であり、
前記板海苔吸着部は、
前記第2の噴出部材と連通して設けられ、前記板海苔積層体の上方に位置する吸着孔が形成された第2の吸着部材であり、
前記第2の噴出部材と前記第2の吸着部材との間には、前記吸着孔からエアを取り込んで前記噴出孔から噴出させる送風機が配置されている、
ことを特徴とする請求項1記載の板海苔分離装置。
【請求項13】
前記第2の噴出部材には、前記トレイの前記板海苔搭載面の高さ位置に噴出孔がさらに形成されている、
ことを特徴とする請求項12記載の板海苔分離装置。
【請求項14】
前記第2の噴出部材の前記板海苔積層体を挟んだ反対側は、前記第2の噴出部材の前記噴出孔から噴出したエアの側方への流出を遮断する遮断壁が設置されている、
ことを特徴とする請求項12または13記載の板海苔分離装置。
【請求項15】
前記第2の噴出部材は、
前記トレイの側方に配置されて前記トレイに面した側面部に前記噴出孔が形成された第3の筐体であり、
前記第2の吸着部材は、
前記トレイの上方に配置されて下面に前記吸着孔が形成された第4の筐体である、
ことを特徴とする請求項12~14の何れか一項に記載の板海苔分離装置。
【請求項16】
前記取出部は、吸着された前記板海苔の側方に開口して形成されている、
ことを特徴とする請求項1~15の何れか一項に記載の板海苔分離装置。
【請求項17】
請求項1~16の何れか一項に記載の前記板海苔分離装置と、
前記板海苔を用いた米飯食品を製造する食品製造装置と、
前記板海苔吸着部に吸着された前記板海苔を前記板海苔分離装置から取り出して前記食品製造装置に搬送する前記板海苔搬送装置と、
を有することを特徴とする食品製造システム。
【請求項18】
前記板海苔搬送装置は、
前記板海苔吸着部に吸着された状態で前記板海苔を保持するとともに周回可能になった無端状の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトが周回して側方へ取り出された前記板海苔を上下から挟んで前記板海苔分離装置から前記食品製造装置へ搬送する一対の搬送ローラとからなる、
ことを特徴とする請求項17記載の食品製造システム。
【請求項19】
前記板海苔搬送装置は、
前記取出部から進入して吸着力の解除された前記板海苔吸着部から落下した前記板海苔を受け取り、その後前記取出部から退出して当該板海苔を前記食品製造装置へ送る搬送トレイと、
前記搬送トレイを駆動するトレイ駆動部とからなる、
ことを特徴とする請求項17記載の食品製造システム。
【請求項20】
積層された複数枚の前記板海苔で構成される前記板海苔積層体の側面上部に向けて側方からエアを噴出して前記板海苔を1枚毎に分離して浮上させ、
エアにより浮上した最上部の前記板海苔の上面を吸着する、
を有することを特徴とする板海苔分離方法。
【請求項21】
最上部の前記板海苔の上面を吸着したならば、前記板海苔積層体の側面上部へのエアの噴出を停止または低下させるとともに、前記板海苔に対する吸着力を低下させる、
ことを特徴とする請求項20記載の板海苔分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板海苔分離装置、食品製造システムおよび板海苔分離方法に関し、特に積層された複数枚の板海苔で構成される板海苔積層体から1枚を取り出す技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば海苔巻きや海苔で包まれたおむすび等のような米飯食品を製造する装置において板海苔を用いる場合、積層された複数枚の板海苔で構成される板海苔積層体を板海苔分離装置のトレイにストックしておいて、当該板海苔積層体から1枚ずつ板海苔を取り出して次工程に搬送している。
【0003】
このような板海苔分離装置としては、例えば特許文献1~3に記載されたものが知られている。特許文献1(特開2012-188286号公報)や特許文献2(特開2020-110053号公報)には、ストックされた板海苔積層体の下部に板海苔を吸着して取り出すための機構を設けておき、当該板海苔積層体の最下部に位置する板海苔を吸着した状態で取り出す技術が開示されている。また、特許文献3(特開昭55-029996号公報)には、板海苔積層体の最上部に位置する板海苔を、先端が傾斜した吸引ノズルで吸引して屈曲した状態で取り出す技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-188286号公報
【特許文献2】特開2020-110053号公報
【特許文献3】特開昭55-029996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1~3に記載の技術では、次のような問題が生じることが考えられる。
【0006】
すなわち、特許文献1,2に記載の技術では、板海苔の表面がざらついていることに加えて、板海苔積層体の最下部付近では板海苔が板海苔積層体自体の重量で押さえ付けられているために板海苔同士がくっついてしまい、複数枚の板海苔が同時に吸着されて取り出されることがある。また、同様の理由から、板海苔積層体の最下部の板海苔だけを取り出しづらかったり、無理に取り出そうとすると破れたりちぎれたりして板海苔が損傷することがある。
【0007】
また、特許文献3に記載の技術では、最上部の板海苔を吸引ノズルの先端に沿って強制的に屈曲させて吸引しているために、板海苔の屈曲部にストレスがかかって、やはり板海苔が損傷することがある。
【0008】
ここで、スーパーマーケットの厨房等で海苔巻きや海苔で包まれたおむすび等を製造する場合には、袋に入った複数枚の板海苔を1枚ずつ取り出しているが、調理用手袋を着用した状態では板海苔を1枚だけ摘まんで取り出すことが困難な場合があるのみならず、前述と同様に、板海苔が損傷することがある。
【0009】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、板海苔積層体から1枚の板海苔を確実に且つ損傷なく取り出すことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の板海苔分離装置は、積層された複数枚の板海苔で構成される板海苔積層体を搭載するトレイと、前記板海苔積層体の側面上部に向けて側方からエアを噴出して前記板海苔を1枚毎に分離して浮上させるエア噴出部と、エアにより浮上した最上部の前記板海苔の上面を吸着する板海苔吸着部と、前記板海苔吸着部に吸着された前記板海苔を側方へ取り出す取出部と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項1記載の発明において、前記エア噴出部は、前記板海苔積層体の側面上部に向けた噴出孔を備えた第1の噴出部材と、前記第1の噴出部材内に取り込んだエアを前記噴出孔から噴出させる第1の送風機とを備え、前記板海苔吸着部は、前記板海苔積層体の上方に位置する吸着孔が形成された第1の吸着部材と、前記吸着孔から前記第1の吸着部材内にエアを取り込む第2の送風機とを備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項2記載の発明において、前記板海苔吸着部による前記板海苔の吸着の有無を検出する検出手段が設置され、前記検出手段により前記板海苔の吸着が検出されていないときには、前記第1の送風機および前記第2の送風機が駆動され、前記検出手段により前記板海苔の吸着が検出されたときには、前記第1の送風機は停止または出力を落として駆動されるとともに、前記第2の送風機は出力を落として駆動される、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項3記載の発明において、前記検出手段は、前記板海苔吸着部に吸着された前記板海苔によって第1の位置から第2の位置へと変位する機械式センサである、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項3記載の発明において、前記検出手段は、前記板海苔吸着部に吸着された前記板海苔の有無を非接触で検出する光電センサまたは超音波センサである、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項2~5の何れか一項に記載の発明において、前記トレイを昇降する昇降機構をさらに有する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項6記載の発明において、前記昇降機構は、前記トレイの両側に固定されて水平方向に延びたアームと、前記アームを上下方向に案内するガイド孔と、装置後方に向かって上方に傾斜して前記アームと係合するトレイ昇降ブロックが両端に取り付けられたトレイ駆動板と、前記トレイ駆動板を前後にスライド移動させるトレイ昇降駆動部とを備える、ことを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項6または7記載の発明において、前記昇降機構は、所定時間にわたって前記板海苔吸着部に前記板海苔が吸着されなかったことを前記検出手段が検出したときには、前記板海苔吸着部に前記板海苔が吸着されたことを前記検出手段が検出する高さまで前記トレイを上昇させる、ことを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項8記載の発明において、前記昇降機構が前記トレイを上端位置まで上昇させても前記板海苔吸着部に前記板海苔が吸着されたことを前記検出手段が検出しない場合には、前記昇降機構は、前記トレイを下端に移動させ、前記第1の送風機および前記第2の送風機は停止する、ことを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項2~9の何れか一項に記載の発明において、前記第1の噴出部材の前記板海苔積層体を挟んだ反対側には、前記第1の噴出部材の前記噴出孔から噴出したエアを排出するエア排出部が形成されている、ことを特徴とする。
【0020】
請求項11に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項2~10の何れか一項に記載の発明において、前記第1の噴出部材は、前記トレイの側方に配置されて側面に前記噴出孔が形成された第1の筐体であり、前記第1の吸着部材は、前記トレイの上方に配置されて底面に前記吸着孔が形成された第2の筐体である、ことを特徴とする。
【0021】
請求項12に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項1記載の発明において、前記エア噴出部は、前記板海苔積層体の側面上部に向けた噴出孔を備えた第2の噴出部材であり、前記板海苔吸着部は、前記第2の噴出部材と連通して設けられ、前記板海苔積層体の上方に位置する吸着孔が形成された第2の吸着部材であり、前記第2の噴出部材と前記第2の吸着部材との間には、前記吸着孔からエアを取り込んで前記噴出孔から噴出させる送風機が配置されている、ことを特徴とする。
【0022】
請求項13に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項12記載の発明において、前記第2の噴出部材には、前記トレイの前記板海苔搭載面の高さ位置に噴出孔がさらに形成されている、ことを特徴とする。
【0023】
請求項14に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項12または13記載の発明において、前記第2の噴出部材の前記板海苔積層体を挟んだ反対側は、前記第2の噴出部材の前記噴出孔から噴出したエアの側方への流出を遮断する遮断壁が設置されている、ことを特徴とする。
【0024】
請求項15に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項12~14の何れか一項に記載の発明において、前記第2の噴出部材は、前記トレイの側方に配置されて前記トレイに面した側面部に前記噴出孔が形成された第3の筐体であり、前記第2の吸着部材は、前記トレイの上方に配置されて下面に前記吸着孔が形成された第4の筐体である、ことを特徴とする。
【0025】
請求項16に記載の本発明の板海苔分離装置は、上記請求項1~15の何れか一項に記載の発明において、前記取出部は、吸着された前記板海苔の側方に開口して形成されている、ことを特徴とする。
【0026】
上記課題を解決するため、請求項17に記載の本発明の食品製造システムは、請求項1~16の何れか一項に記載の前記板海苔分離装置と、前記板海苔を用いた米飯食品を製造する食品製造装置と、前記板海苔吸着部に吸着された前記板海苔を前記板海苔分離装置から取り出して前記食品製造装置に搬送する前記板海苔搬送装置と、を有することを特徴とする。
【0027】
請求項18に記載の本発明の食品製造システムは、上記請求項17記載の発明において、前記板海苔搬送装置は、前記板海苔吸着部に吸着された状態で前記板海苔を保持するとともに周回可能になった無端状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトが周回して側方へ取り出された前記板海苔を上下から挟んで前記板海苔分離装置から前記食品製造装置へ搬送する一対の搬送ローラとからなる、ことを特徴とする。
【0028】
請求項19に記載の本発明の食品製造システムは、上記請求項17記載の発明において、前記板海苔搬送装置は、前記取出部から進入して吸着力の解除された前記板海苔吸着部から落下した前記板海苔を受け取り、その後前記取出部から退出して当該板海苔を前記食品製造装置へ送る搬送トレイと、前記搬送トレイを駆動するトレイ駆動部とからなる、ことを特徴とする。
【0029】
上記課題を解決するため、請求項20に記載の本発明の板海苔分離方法は、積層された複数枚の前記板海苔で構成される前記板海苔積層体の側面上部に向けて側方からエアを噴出して前記板海苔を1枚毎に分離して浮上させ、エアにより浮上した最上部の前記板海苔の上面を吸着する、を有することを特徴とする。
【0030】
請求項21に記載の本発明の板海苔分離方法は、上記請求項20記載の発明において、最上部の前記板海苔の上面を吸着したならば、前記板海苔積層体の側面上部へのエアの噴出を停止または低下させるとともに、前記板海苔に対する吸着力を低下させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、トレイに板海苔積層体を搭載し、エア噴出部によって当該板海苔積層体の側面上部に向けて側方からエアを噴出して板海苔を1枚毎に分離して浮上させ、板海苔吸着部によってエアにより浮上した最上部の板海苔の上面を吸着し、吸着された板海苔を取出部から側方へ取り出すようにしている。したがって、板海苔積層体から1枚の板海苔を確実に且つ損傷なく取り出すことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態1における板海苔分離装置の外観を示す斜視図である。
図2図1の板海苔分離装置の内部を透かして示す斜視図である。
図3図1の板海苔分離装置に設けられたトレイの昇降機構をトレイの下端位置において一部を透かして示す斜視図である。
図4図1の板海苔分離装置に設けられたトレイの昇降機構をトレイの下端位置において一部を透かして示す側面側斜視図である。
図5図1の板海苔分離装置に設けられたトレイの昇降機構をトレイの上端位置において一部を透かして示す斜視図である。
図6図1の板海苔分離装置に設けられたトレイの昇降機構をトレイの上端位置において一部を透かして示す側面側斜視図である。
図7】(a)は本発明の実施の形態1の板海苔分離装置において板海苔積層体がトレイに搭載されたときのエアの流れを概念的に示す側面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の平面図である。
図8】(a)は本発明の実施の形態1の板海苔分離装置において高さが低くなった板海苔積層体がトレイに搭載されたときのエアの流れを概念的に示す側面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の平面図である。
図9】(a)~(k)は実施の形態1の板海苔分離装置の動作を連続的に示す説明図である。
図10】板海苔分離装置から食品製造装置に板海苔を搬送するための板海苔搬送装置の一例を示す説明図であり、(a)は板海苔の搬送を開始前の状態を、(b)は板海苔の搬送を実行中の状態を示している。
図11】板海苔分離装置から食品製造装置に板海苔を搬送するための板海苔搬送装置の他の一例を示す説明図であり、(a)は板海苔の搬送を開始前の状態を、(b)は板海苔の搬送準備が完了した状態を、(c)は板海苔の搬送を実行中の状態を示している。
図12】本発明の実施の形態2における板海苔分離装置の外観を示す斜視図である。
図13図12の板海苔分離装置の内部を透かして示す斜視図である。
図14】(a)は本発明の実施の形態2の板海苔分離装置において板海苔積層体がトレイに搭載されたときのエアの流れを概念的に示す側面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の平面図である。
図15】(a)は本発明の実施の形態2の板海苔分離装置において高さが低くなった板海苔積層体がトレイに搭載されたときのエアの流れを概念的に示す側面図、(b)は(a)の背面図、(c)は(a)の平面図である。
図16】(a)~(j)は実施の形態2の板海苔分離装置の動作を連続的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0034】
(実施の形態1)
【0035】
図1は本発明の実施の形態1における板海苔分離装置の外観を示す斜視図、図2図1の板海苔分離装置の内部を透かして示す斜視図である。
【0036】
図1において、本実施の形態の板海苔分離装置Mの外観は、前面板P1を兼用した第1の筐体(第1の噴出部材)1と、上面板P2を兼用した第2の筐体(第1の吸着部材)2と、上面板P2の両側に取り付けられた側面板P3aと、装置背後に取り付けられた背面板P4とからなる。なお、第2の筐体2は、相対的に大きな容積を有する主筐体部2aと、相対的に小さな容積を有するとともに主筐体部2aの前面において間隔を開けて左右に分離配置されて主筐体部2aと連通した副筐体部2bとで形成されている。なお、側面板P3aは底板P3bを兼用した1枚のパネルの両側を上方に垂直に折り曲げて形成されている(図3図5参照)。
【0037】
さて、図2に示すように、第1の筐体1は、上端が第2の筐体2を形成する副筐体部2bの先端と間隔を開けて配置されており、さらに上端中央部には、分離配置された2つの副筐体部2bで形成された隙間と同じ間隔の凹部1aが形成されている。また、第1の筐体1には、第1の筐体1内にエアを取り込むための捌きブロア(第1の送風機)5が接続されている。また、第2の筐体2の主筐体部2aには、装置外にエアを排出するための吸着ブロア(第2の送風機)6が内蔵されている。
【0038】
第1の筐体1、第2の筐体2、左右の側面板P3aおよび背面板P4で囲まれた板海苔分離装置Mの内部にはトレイ7が昇降可能に設けられており、当該トレイ7の上方は所定高さの空間(内部空間)になっている。したがって、背面板P4を取り外して、積層された複数枚の板海苔で構成される板海苔積層体NT(図7図11)をトレイ7に搭載し、再び背面板P4を取り付けることで、板海苔積層体NTが板海苔分離装置M内にセットされる。なおトレイ7の昇降機構については後述する。
【0039】
図2において、トレイ7の側方に配置された第1の筐体1の内側の側面の上半部分には、捌きブロア5によって第1の筐体1内に取り込んだエアを板海苔分離装置Mの内部空間の上部、すなわち板海苔積層体NTの側面上部に向けて側方(本実施の形態では、前面側方)から噴出するための複数の噴出孔1sが上下に長く形成されている。したがって、側方からのエアの噴出により、板海苔積層体NTの上部に位置する板海苔は1枚毎に分離して浮上する。そして、このような第1の筐体1と捌きブロア5とでエア噴出部ASが構成される。
【0040】
なお、本願において、板海苔積層体NTの側面上部に向けてエアを噴出するとは、板海苔積層体NTの側面上部にだけ限定的にエアを噴出するという意味ではない。つまり、板海苔積層体NTの側面上部にエアを噴出していれば足り、側面上部以外の部分(つまり、側面中央部や側面下部)については、エアを噴出してもよいし噴出しなくてもよい。
【0041】
さて、第2の筐体2の底面(つまり、主筐体部2aの底面と副筐体部2bの底面)には、吸着ブロア6によって板海苔分離装置Mの内部空間のエアを取り込むための複数の吸着孔2sが装置前後方向に長く形成されている。また、吸着孔2sから第2の筐体2に取り込まれたエアは、吸着ブロア6により装置外に排出される。そして、トレイ7に搭載された板海苔積層体NTの上方に第2の筐体2が位置している。したがって、前述のエア噴出部ASによって1枚毎に分離して浮上した板海苔積層体NTの板海苔の内の最上部の板海苔Nは、その上面が第2の筐体2に形成された吸着孔2sに吸着される。そして、このような第2の筐体2と吸着ブロア6とで板海苔吸着部NAが構成されている。
【0042】
ここで、前述のように、第1の筐体1の上端と第2の筐体2を形成する副筐体部2bの先端とは間隔を開けて設置されており、ここが板海苔吸着部NAに吸着された板海苔Nを側方へ取り出す取出部8となっている。すなわち、取出部8は、吸着孔2sに吸着された板海苔Nの側方に開口して形成されている。
【0043】
また、分離配置された2つの副筐体部2bで形成された隙間と同じ間隔の凹部1aが第1の筐体1の上端中央部に形成されていることから、この部分における板海苔N(つまり、吸着された板海苔N)の露出領域が前後および上下に広くなっている。これにより、作業者あるいは板海苔搬送装置NC(後述する)による板海苔Nの取り出しが容易になっている。
【0044】
さて、第2の筐体2の底面近傍には、板海苔吸着部NAによる板海苔Nの吸着の有無を検出するための揺動型の機械式センサ(検出手段)9が設置されている。この機械式センサ9は、板海苔Nが吸着されていないときには吸着面(板海苔Nの吸着面)よりも下方の第1の位置となっており、板海苔Nが吸着されると、当該板海苔Nの接触によって揺動して吸着面よりも上方の第2の位置へと変位する。
【0045】
また、機械式センサ9により板海苔Nの吸着が検出されていないときには(つまり、機械式センサ9が第1の位置となっているときには)、前述した捌きブロア5および吸着ブロア6が駆動され、噴出孔1sによる側方からのエアで板海苔積層体NTの上部に位置する板海苔が1枚毎に分離して浮上し、浮上した最上部の板海苔Nが吸着孔2sに吸着される。そして、機械式センサ9により板海苔Nの吸着が検出されたならば(つまり、機械式センサ9が第2の位置になったならば)、捌きブロア5が停止して噴出孔1sからのエアの噴出がストップすることで、浮上していた最上部以外の板海苔が降下して積層状態に戻り、吸着された板海苔Nとの間に空間が形成される。また、吸着ブロア6は出力を落として駆動され、これによって、板海苔Nの吸着は維持されつつも、当該板海苔Nを側方へ取り出す際の抵抗となる程の吸着力とはならないために、板海苔Nを損傷することなくスムーズに取り出すことが可能になる。
【0046】
なお、本実施の形態では、機械式センサ9により板海苔Nの吸着が検出されたならば、捌きブロア5は停止するようになっているが、板海苔が浮上出来ない程度の風力となるように出力を落として駆動されるようにしてもよい。また、機械式センサ9は揺動型に限定されるものではなく、例えば吸着された板海苔Nで突き上げられるようになった上下動型などでもよい。
【0047】
次に、板海苔積層体NTが搭載されるトレイ7の昇降機構について、図3図6を用いて説明する。ここで、図3図1の板海苔分離装置に設けられたトレイの昇降機構をトレイの下端位置において一部を透かして示す斜視図、図4図1の板海苔分離装置に設けられたトレイの昇降機構をトレイの下端位置において一部を透かして示す側面側斜視図、図5図1の板海苔分離装置に設けられたトレイの昇降機構をトレイの上端位置において一部を透かして示す斜視図、図6図1の板海苔分離装置に設けられたトレイの昇降機構をトレイの上端位置において一部を透かして示す側面側斜視図である。
【0048】
これらの図面に示すように、トレイ7は、板海苔積層体NTが搭載される板海苔搭載板7aと、板海苔搭載板7aの両側において下方に垂直に屈曲して側面板P3aと対向した2枚の立板7bとからなる。それぞれの立板7bの前後2カ所には、当該立板7bを貫通して水平方向に延びたアーム10が固定されている。また、立板7bの外側に位置するアーム10の外側端と、立板7bの内側に位置するアーム10の内側端には、それぞれトレイガイドベアリング10aが回転自在に取り付けられている。なお、トレイガイドベアリング10aは次に述べるようなトレイ7の昇降をスムーズに行うためのものであるから、必ずしもアーム10に取り付けられていなくてもよい。
【0049】
立板7bと側面板P3aとの間には、下端部が底板P3bに固定された内板11が配置されている。また、側面板P3aには、アーム10の外側端のトレイガイドベアリング10aが嵌まり込み、トレイ7の昇降時に当該トレイガイドベアリング10aを上下方向に案内するためのガイド孔P3aaが、上下に長くなって形成されている。したがって、トレイガイドベアリング10aは、ガイド孔P3aaの上端と下端との間を上下方向に移動可能となっている。さらに、内板11のガイド孔P3aaと対応した位置には、当該トレイガイドベアリング10aが側面板P3aに形成されたガイド孔P3aaを上下動する歳の干渉を回避するための長孔11aが形成されている。そして、図1に示すように、側面板P3aには、当該ガイド孔P3aaおよびトレイガイドベアリング10aを保護するためのカバーP3abが取り付けられている。
【0050】
なお、アーム10の外側端のトレイガイドベアリング10aがガイド孔P3aaを上下動することができるように(つまり、トレイガイドベアリング10aの外周に設けられた円筒状のハウジングが回転しながら上下動することができるように)、当該トレイガイドベアリング10aの直径よりもガイド孔P3aaの幅の方がやや広くなっている。
【0051】
さて、トレイ7を構成する板海苔搭載板7aの下方には、トレイ昇降駆動モータ(トレイ昇降駆動部)12が底板P3bに固定された状態で設置されている。トレイ昇降駆動モータ12の出力軸には円形歯車であるトレイ駆動ギア13が取り付けられている。また、板海苔搭載板7aの下方には、底板P3bの両側に形成された前後に長いスライド孔P3baに嵌め込まれ、前後にスライド移動可能になったトレイ駆動板14が配置されている。このトレイ駆動板14には、平板状の棒に歯切りがされて(歯がつけられて)前述したトレイ駆動ギア13と噛み合うトレイ駆動ラック15が、スライド孔P3baと平行に固定されている。さらに、トレイ駆動板14の両端には、板海苔分離装置Mの後方に向かって上方に傾斜するとともに、アーム10の内側端のトレイガイドベアリング10aが係合する傾斜面16aが形成された略三角形のトレイ昇降ブロック16が固定されている。このトレイ昇降ブロック16は、トレイ7の立板7bに固定されたアーム10に対応して、トレイ駆動板14の両端に2個ずつが縦列配置されている。
【0052】
したがって、トレイ7が、図3および図4に示すように下端位置にある状態(つまり、トレイ駆動板14が後方に位置している状態)において、トレイ昇降駆動モータ12によりトレイ駆動ギア13が回転すると、当該トレイ駆動ギア13と噛み合っているトレイ駆動ラック15が水平方向に動き、当該トレイ駆動ラック15が固定されているトレイ駆動板14が前方へとスライド移動する。すると、トレイ駆動板14の両側に固定されているトレイ昇降ブロック16も前方へとスライド移動する。これにより、トレイ昇降ブロック16の傾斜面16aと係合しているアーム10の内側端のトレイガイドベアリング10aが当該傾斜面16a上を回転しながら上昇する。また、これに伴って、側面板P3aに形成されたガイド孔P3aaと係合しているアーム10の外側端のトレイガイドベアリング10aがガイド孔P3aa内を案内されて上昇する。
【0053】
このようなアーム10両端のトレイガイドベアリング10aの動きにより、アーム10が取り付けられたトレイ7が上昇し、図5および図6に示すように、アーム10の外側端のトレイガイドベアリング10aがガイド孔P3aa内の上端に達したときに、トレイ7が上端位置となる。
【0054】
なお、トレイ7を下端位置(図3および図4に示す位置)に戻すときには、トレイ昇降駆動モータ12をトレイ7の上昇時とは反対方向に回転させる。これによりトレイ駆動板14が後方へとスライド移動し、アーム10の内側端のトレイガイドベアリング10aがトレイ昇降ブロック16の傾斜面16aを下降するとともにアーム10の外側端のトレイガイドベアリング10aがガイド孔P3aa内を下降する。そして、アーム10の外側端のトレイガイドベアリング10aがガイド孔P3aa内の下端に達したときに、トレイ7が下端位置となる。
【0055】
さて、板海苔分離装置Mでは、昇降機構でトレイ7を下端位置にしておいて、複数枚の板海苔で構成される板海苔積層体NTを搭載する。そして、前述した第1の筐体1と捌きブロア5とで構成されるエア噴出部ASから板海苔積層体NTの側面上部に向けてエアを噴出して板海苔を1枚毎に分離して浮上させ、これと同時に、第2の筐体2と吸着ブロア6とで構成される板海苔吸着部NA(の吸着孔2s)で最上部の板海苔Nを吸着する。
【0056】
板海苔積層体NTをトレイ7に搭載したときのエアの流れを図7に示す。ここで、図7(a)は本発明の実施の形態1の板海苔分離装置において板海苔積層体がトレイに搭載されたときのエアの流れを概念的に示す側面図、図7(b)は図7(a)の背面図、図7(c)は図7(a)の平面図である。なお、本実施の形態の板海苔分離装置Mでは、図7(b)、(c)に示すように、第1の筐体1の板海苔積層体NTを挟んだ反対側に位置する背面板P4の両側には、第1の筐体1の噴出孔1sから噴出したエアを排出するエア排出部4sが形成されている。
【0057】
図7に示すように、第1の筐体1の噴出孔1sから板海苔積層体NTの側面上部へと噴出されたエアは板海苔1枚1枚の隙間に入り、板海苔を1枚毎に分離して浮上させる。このとき、第1の筐体1の噴出孔1sから噴出したエアはエア排出部4sから機器外に排出されるため、板海苔が必要以上に大きく浮き上がることがなく、適度な間隔で分離された状態が保たれる。
【0058】
さて、吸着孔2sで吸着された板海苔Nを1枚ずつ取り出していくと、板海苔積層体NTの高さが徐々に低くなって(つまり、板海苔吸着部NAと最上部の板海苔Nとの間隔が広くなって)、最上部の板海苔Nが吸着孔2sで吸着できない状態になる。あるいは、セットした板海苔積層体NTの高さが当初から低かった場合においても、板海苔吸着部NAと最上部の板海苔Nとの間隔が広くなりすぎていると、最上部の板海苔Nが吸着孔2sで吸着できない状態になる。すなわち、板海苔積層体NTの高さが低いと、第1の筐体1の噴出孔1sから噴出したエアが板海苔積層体NTの側面上部に当たらなくなるために、板海苔が浮上しなくなり、そのため、最上部の板海苔Nが吸着孔2sで吸着されなくなる。
【0059】
そこで、本実施の形態の板海苔分離装置Mでは、所定時間(例えば5秒)にわたって板海苔吸着部NAに最上部の板海苔Nが吸着されなかったことを前述の機械式センサ9が検出したときには(つまり、機械式センサ9が5秒間第1の位置のままであったときには)、トレイ昇降駆動モータ12が動作して、板海苔吸着部NAに板海苔Nが吸着されたことを機械式センサ9が検出する高さまでトレイ7を上昇させるようになっている。なお、前述の所定時間は自由に設定でき、本実施の形態での5秒に限定されるものではない。
【0060】
トレイ7に搭載された板海苔積層体NTの高さが低くなったときのエアの流れを図8に示す。ここで、図8(a)は本発明の実施の形態1の板海苔分離装置において高さが低くなった板海苔積層体がトレイに搭載されたときのエアの流れを概念的に示す側面図、図8(b)は図8(a)の背面図、図8(c)は図8(a)の平面図である。
【0061】
図8に示すように、板海苔積層体NTの高さが低くなった場合には、トレイ7を上昇させ、第1の筐体1の噴出孔1sから噴出したエアが板海苔積層体NTの側面上部に当たるようにする。これにより、エアが板海苔1枚1枚の隙間に入り、板海苔が1枚毎に分離して浮上されて、最上部の板海苔Nが吸着孔2sで吸着される。
【0062】
次に、以上の構成を備えた実施の形態1の板海苔分離装置Mの動作について図9を用いて説明する。ここで、図9(a)~図9(k)は実施の形態1の板海苔分離装置における板海苔の吸着動作を連続的に示す説明図である。
【0063】
先ず、図9(a)に示すように、板海苔積層体NTをトレイ7に搭載して、捌きブロア5と吸着ブロア6との動作を開始する。このとき、機械式センサ9は、板海苔と接触していないために、吸着孔2sによる板海苔の吸着面よりも下方の第1の位置(板海苔を検出していない位置)になっている。
【0064】
そして、図9(b)に示すように、所定時間にわたって機械式センサ9が第1の位置(板海苔を検出していない位置)から第2の位置(板海苔を検出した位置)へと変位しない場合には、つまり、所定時間にわたって第2の筐体2の吸着孔2sに板海苔Nが吸着されなかったときには、前述した昇降機構によってトレイ7が徐々に上昇し、これとともに板海苔積層体NTが上昇してその側面上部に第1の筐体1の噴出孔1sから噴出したエアが当たり、上部の板海苔が浮上するようになる。
【0065】
図9(c)に示すように、トレイ7がさらに上昇すると、浮上した最上部の板海苔Nが第2の筐体2に形成された吸着孔2sに吸い寄せられる。
【0066】
そして、図9(d)に示すように、浮上した最上部の板海苔Nが吸着孔2sに吸着されると、当該板海苔Nの接触によって機械式センサ9が第1の位置から第2の位置へと変位し、これとともに、トレイ7の上昇が停止し、捌きブロア5が停止して板海苔積層体NTへのエア噴出が止まり、さらに吸着ブロア6の出力が低下して板海苔の吸着力が弱くなる。
【0067】
これにより、図9(e)に示すように、吸着されていない板海苔(つまり、最上部以外の板海苔)が降下して吸着された板海苔Nとの間に空間が生じるとともに、前述のように吸着孔2sによる板海苔Nの吸着力が弱くなっているため、吸着された板海苔Nを側方から容易に引き抜くことができる。
【0068】
このようにして板海苔Nが引き抜かれると、図9(f)に示すように、機械式センサ9が再び第1の位置となり、これに伴って、捌きブロア5の動作が再開して板海苔積層体NTの側面上部に第1の筐体1の噴出孔1sから噴出したエアが当たり板海苔が浮上するとともに、吸着ブロア6の出力が上昇する。
【0069】
すると、図9(g)に示すように、浮上した最上部の板海苔Nが第2の筐体2に形成された吸着孔2sに吸い寄せられる。
【0070】
そして、図9(h)に示すように、浮上した最上部の板海苔Nが吸着孔2sに吸着されると、機械式センサ9が第1の位置から第2の位置へと変位し、これとともに、捌きブロア5が停止して板海苔積層体NTへのエア噴出が止まり、さらに吸着ブロア6の出力が低下して板海苔の吸着力が弱くなる。
【0071】
その後、板海苔Nが第2の筐体2に形成された吸着孔2sに吸着されなくなるまで(換言すれば、機械式センサ9が第1の位置から第2の位置へと変位しなくなるまで)、前述した図9(e)~図9(h)の動作を繰り返す。
【0072】
さらに、所定時間にわたって機械式センサ9が第1の位置から第2の位置へと変位しなくなると、図9(b)に戻ってトレイ7を徐々に上昇させ、当該図9(b)~図9(h)の動作を行う。
【0073】
そして、図9(e)~図9(h)の動作を繰り返してから図9(b)~図9(h)の動作を行うという一連の動作を1回あるいは複数回実行すると、図9(i)に示すように、板海苔積層体NTを構成する最後の1枚の板海苔Nが引き抜かれる。なお、この時点では、板海苔分離装置Mは板海苔がトレイ7上からなくなったことは認識していない。
【0074】
さて、図9(i)に示すように板海苔がトレイ7上からなくなると、機械式センサ9は第1の位置のままとなって第2の位置へは変位しないので、図9(j)に示すように、トレイ7が昇降機構によってさらに上昇を続けて上端位置に達する。しかしながら、それでもなお、板海苔吸着部NAを構成する第2の筐体2の吸着孔2sにより板海苔が吸着されたことを機械式センサ9が検出しない(つまり、第2の位置に変位しない)ので、この時点で、板海苔分離装置Mは板海苔がトレイ7上からなくなったことを認識することになる。
【0075】
つまり、トレイ7が上端位置に達し、且つ機械式センサ9が第1の位置になったときに、板海苔分離装置Mは板海苔積層体NTの取り出しが完了したことを認識する。
【0076】
そして、板海苔がトレイ7上からなくなって板海苔積層体NTの取り出しが完了したことを認識したならば、図9(k)に示すように、昇降機構によりトレイ7を下端位置まで移動させるとともに、捌きブロア5および吸着ブロア6を停止させる。つまり、新たな板海苔積層体NTをセットすることのできる状態に戻す。
【0077】
以上説明したように、実施の形態1の板海苔分離装置Mでは、トレイ7に板海苔積層体NTを搭載し、第1の筐体1と捌きブロア5とで構成されるエア噴出部ASによって当該板海苔積層体NTの側面上部に向けて側方からエアを噴出して板海苔を1枚毎に分離して浮上させ、第2の筐体2と吸着ブロア6とで構成される板海苔吸着部NAによってエアにより浮上した最上部の板海苔Nの上面を吸着し、吸着された板海苔Nを取出部8から側方へ取り出すようにしている。したがって、板海苔積層体NTから1枚の板海苔Nを確実に且つ損傷なく取り出すことが可能になる。
【0078】
しかも、実施の形態1の板海苔分離装置Mでは、トレイ7の昇降機構が設けられ、機械式センサ9によって板海苔Nの吸着の有無を検出しながら当該昇降機構や捌きブロア5および吸着ブロア6の動作を制御している。よって、多数枚の板海苔で構成される高さの高い板海苔積層体NTであっても、当該板海苔積層体NTから1枚の板海苔Nを確実に且つ損傷なく取り出すことが可能になる。
【0079】
さて、このような板海苔分離装置Mは、例えばスーパーマーケットの厨房などに設置しておいて、海苔巻きや海苔で包まれたおむすび等を製造する際に積層された複数枚の板海苔から1枚を取り出すための装置として単独で使用することができる。
【0080】
のみならず、板海苔分離装置Mを用いた食品製造システムを構築することができる。すなわち、本実施の形態の板海苔分離装置Mでは、吸着された板海苔Nとその直下の板海苔積層体NTとの間に空間が形成されるため、様々な構造の搬送機構を組み込むことが可能となるからである。そして、板海苔分離装置Mと、板海苔を用いた米飯食品(例えば、海苔巻きや海苔で包まれたおむすび等)を製造する食品製造装置(図示せず)とを設置し、両者の間に、板海苔吸着部NAに吸着された板海苔Nを板海苔分離装置Mから取り出して食品製造装置に搬送する板海苔搬送装置NCを配置すれば、1枚の板海苔Nが自動的に板海苔搬送装置NCによって食品製造装置に搬送することができ、海苔巻きや海苔で包まれたおむすび等を効率的に製造することができる。
【0081】
ここで、板海苔搬送装置NCの一例を図10および図11に示す。図10は板海苔分離装置から食品製造装置に板海苔を搬送するための板海苔搬送装置の一例を示す説明図、図11は板海苔分離装置から食品製造装置に板海苔を搬送するための板海苔搬送装置の他の一例を示す説明図である。
【0082】
図10はベルト搬送方式の板海苔搬送装置NCであり、(a)は板海苔Nの搬送を開始前の状態を、(b)は板海苔Nの搬送を実行中の状態を示している。
【0083】
図示する板海苔搬送装置NCは、第2の筐体2の両側において回転軸が相互に平行になるように設けられた駆動ローラ20a(図示しないモータで回転駆動されるローラ)および従動ローラ20b(駆動ローラ20aに従動して回転するローラ)と、駆動ローラ20aと従動ローラ20bとに架け渡されて周回可能となった無端状の搬送ベルト21を備えている。
【0084】
搬送ベルト21は、第2の筐体2に形成された吸着孔2sの直下を通過して周回するように配置されている。また、搬送ベルト21には、板海苔分離装置Mの内部空間のエアが第2の筐体2に形成された吸着孔2sに取り込まれる際に通過する多数のエア通過孔(図示せず)が形成されている。したがって、板海苔Nは、板海苔吸着部NAに吸着された状態で搬送ベルト21に保持されるようになっている(図10(a))。なお、板海苔Nを吸着、保持する際には、搬送ベルト21の周回は停止されている。そして、搬送ベルト21が周回することにより、保持した板海苔Nが取出部8から側方へ取り出される。
【0085】
このようにして取り出された板海苔Nを上下から挟んで食品製造装置へ搬送するための一対の搬送ローラ22が、板海苔Nの取出経路上に配置されている。したがって、図10(b)に示すように、搬送ベルト21が周回して取り出された板海苔Nを一対の搬送ローラ22で挟み込んで回転搬送することで、当該板海苔Nが食品製造装置へと送られることになる。
【0086】
図11はトレイ搬送方式の板海苔搬送装置NCであり、(a)は板海苔Nの搬送を開始前の状態を、(b)は板海苔Nの搬送準備が完了した状態を、(c)は板海苔Nの搬送を実行中の状態を示している。
【0087】
図示する板海苔搬送装置NCは、板海苔Nを板海苔分離装置Mから食品製造装置へ搬送するための搬送トレイ23と、この搬送トレイ23を駆動するトレイ駆動部(図示せず)とで構成されている。
【0088】
この板海苔搬送装置NCでは、板海苔Nが板海苔吸着部NAに吸着されると(図11(a))、トレイ駆動部に駆動された搬送トレイ23は、板海苔分離装置Mの取出部8に進入して板海苔Nの直下へ到達する。すると、吸着ブロア6が停止して板海苔Nの吸着力が解除され、板海苔吸着部NAから落下して搬送トレイ23により受け取られる(図11(b))。その後、図11(c)に示すように、搬送トレイ23が取出部8から退出して板海苔Nを食品製造装置へ搬送する。
【0089】
(実施の形態2)
【0090】
図12は本発明の実施の形態2における板海苔分離装置の外観を示す斜視図、図13図12の板海苔分離装置の内部を透かして示す斜視図である。
【0091】
図12および図13において、本実施の形態の板海苔分離装置Mは、板海苔積層体NT(図14図16)を搭載するトレイ30と、トレイ30の側方に配置されてトレイ30に面した側面部に複数の噴出孔31sが上下に長く形成された第3の筐体(第2の噴出部材)31と、トレイ30の上方に配置されて下面に複数の吸着孔32sが前後に長く形成された第4の筐体(第2の吸着部材)32とを備えている。
【0092】
第3の筐体31は、左右2カ所に設置されている。また、第4の筐体32は、相対的に大きな容積を有する主筐体部32aと、相対的に小さな容積を有するとともに主筐体部32aの前面において間隔を開けて左右に分離配置されて主筐体部32aと連通した副筐体部32bとで形成されている。さらに、本実施の形態のトレイ30は、前述した実施の形態1のトレイ7のように昇降可能にはなっていない。
【0093】
本実施の形態の板海苔分離装置Mには、第3の筐体31と第4の筐体32とを連通するための2つの連通筐体33a,33bが設けられている。連通筐体33aはトレイ30の下方に配置されて第3の筐体31と連通しており、連通筐体33bはトレイ30の側方に配置されて第4の筐体32と連通している。そして、第3の筐体31と第4の筐体32との間(すなわち、第3の筐体31と第4の筐体32とを連通する経路上)には、第4の筐体32に形成された吸着孔32sからエアを取り込んで第3の筐体31に形成された噴出孔31sから噴出させるためのブロア(送風機)34が配置されている。
【0094】
図13に示すように、第3の筐体31に形成された噴出孔31sは、板海苔積層体NTの側面上部に向けて側方(本実施の形態では、前面側方)からエアを噴出するための上部噴出孔(噴出孔)31saと、当該上部噴出孔31saよりも低い位置に形成されて、トレイ30の板海苔搭載面30a(図14図16)の高さ位置に向けて側方からエアを噴出するための下部噴出孔(噴出孔)31sbからなる。但し、下部噴出孔31sbは省略されていてもよい。
【0095】
そして、ブロア34により上部噴出孔31saからエアが噴出(側方からの噴出)することにより、板海苔積層体NTの上部に位置する板海苔は1枚毎に分離して浮上する。また、ブロア34により吸着孔32sからエアが取り込まれることにより、1枚毎に分離して浮上した板海苔積層体NTの板海苔の内の最上部の板海苔Nは、その上面が吸着孔2sに吸着される。
【0096】
よって、本実施の形態においては、噴出孔31sの形成された第3の筐体31がエア噴出部ASを構成しており、吸着孔32sの形成された第4の筐体32が板海苔吸着部NAを構成している。
【0097】
なお、第3の筐体31の下部噴出孔31sbからトレイ30の板海苔搭載面30aの高さ位置に向けて側方からエアが噴出することにより、エアが最下部の板海苔と板海苔搭載面30aとの間に入り込むことから、板海苔積層体NTの高さが低くなったときに(つまり、板海苔積層体NTを構成する板海苔が少なくなって軽くなったときに)板海苔を吹き上げられ、吸着孔32sによって板海苔Nが吸着されやすくなる。
【0098】
第3の筐体31の上端と第4の筐体32を形成する副筐体部32bの先端とは間隔を開けて配置されており、ここが板海苔吸着部NAに吸着された板海苔Nを側方へ取り出す取出部35となっている。すなわち、取出部35は、吸着孔32sに吸着された板海苔Nの側方に開口して形成されている。
【0099】
板海苔積層体NTをトレイ30に搭載したときのエアの流れを図14に示す。ここで、図14(a)は本発明の実施の形態2の板海苔分離装置において板海苔積層体がトレイに搭載されたときのエアの流れを概念的に示す側面図、図14(b)は図14(a)の背面図、図14(c)は図14(a)の平面図である。
【0100】
なお、本実施の形態の板海苔分離装置Mでは、図14(c)に示すように、第3の筐体31の板海苔積層体NTを挟んだ反対側は、第3の筐体31の噴出孔31sから噴出したエアの横方向からの流出を遮断する遮断壁36が設けられている。この遮断壁36は着脱可能になっており、当該遮断壁36を取り外して板海苔積層体NTをトレイ30に搭載するようになっている。
【0101】
図14に示すように、第3の筐体31の上部噴出孔31saから板海苔積層体NTの側面上部へと噴出されたエアは板海苔1枚1枚の隙間に入り、板海苔を1枚毎に分離して浮上させる。これにより、板海苔積層体NTの最上部に位置する板海苔Nは第4の筐体32に形成された吸着孔32sに到達して吸着される。
【0102】
さて、実施の形態2の板海苔分離装置Mにおいても、板海苔積層体NTの高さが低いと(つまり、板海苔積層体NTの高さが徐々に低くなったり、板海苔積層体NTの高さが当初から低いと)、第3の筐体31の上部噴出孔31saから噴出したエアが板海苔積層体NTの側面上部に当たらなくなって板海苔が浮上しなくなり、そのため、最上部の板海苔Nが吸着孔32sで吸着されなくなる。
【0103】
トレイ30に搭載された板海苔積層体NTの高さが低くなったときのエアの流れを図15に示す。ここで、図15(a)は本発明の実施の形態2の板海苔分離装置において高さが低くなった板海苔積層体がトレイに搭載されたときのエアの流れを概念的に示す側面図、図15(b)は図15(a)の背面図、図15(c)は図15(a)の平面図である。
【0104】
前述のように、実施の形態2の板海苔分離装置Mにおいては、第3の筐体31の噴出孔31sから噴出したエアの進行方向には遮断壁36が設置されているので(つまり、実施の形態1で説明したエア排出部4sに相当する箇所は設けられていないので)、エアの排出量よりもエアの供給量の方が上回ることになる。そのため、板海苔積層体NTの板海苔は大きく浮き上がることになり、最上部に位置する板海苔Nは吸着領域すなわち第4の筐体32に形成された吸着孔32sに容易に到達することができる。
【0105】
さらに、板海苔分離装置Mの第3の筐体31には、トレイ30の板海苔搭載面30aの高さ位置に向けて側方からエアを噴出するための下部噴出孔31sbが形成されている。したがって、図15(a)(b)に示すように、当該下部噴出孔31sbから噴出されたエアによって、板海苔の少なくなった板海苔積層体NTが下方から強制的に押し上げられるようになる。これにより、板海苔積層体NTの板海苔は素早く浮き上がり、最上部に位置する板海苔Nは第4の筐体32に形成された吸着孔32sに速やかに到達することができる。
【0106】
次に、以上の構成を備えた実施の形態2の板海苔分離装置Mの動作について図16を用いて説明する。ここで、図16(a)~図16(j)は実施の形態2の板海苔分離装置における板海苔の吸着動作を連続的に示す説明図である。
【0107】
先ず、図16(a)に示すように、板海苔積層体NTをトレイ30に搭載して、ブロア34の動作を開始する。すると、図16(b)に示すように、板海苔積層体NTの側面上部に第3の筐体31の上部噴出孔31saから噴出したエアが当たって上部の板海苔が浮上を開始し、図16(c)に示すように、浮上した最上部の板海苔Nが第4の筐体32に形成された吸着孔32sに吸い寄せられる。
【0108】
そして、図16(d)に示すように、浮上した最上部の板海苔Nが吸着孔32sに吸着されると、当該板海苔によって吸着孔32sが塞がれるので、吸着孔32sから流入するエア量が大きく低下する。これにより、吸着孔32sによる板海苔の吸着力が弱くなるとともに、第3の筐体31の噴出孔31sから噴出するエア量も大きく低下する。すると、図16(e)に示すように、吸着されていない板海苔(つまり、最上部以外の板海苔)が降下して吸着された板海苔との間に空間が生じるとともに、前述のように吸着孔32sによる板海苔Nの吸着力が弱くなっているため、吸着された板海苔Nを容易に引き抜くことができる。
【0109】
このようにして板海苔Nが引き抜かれると、図16(f)に示すように、第4の筐体32に形成された吸着孔32sが開放されて流入するエア量が増加することにより、第3の筐体31の噴出孔31sから噴出されるエア量も増加する。これにより、板海苔積層体NTの側面上部に上部噴出孔31saから噴出したエアが当たって再び板海苔が浮上する。これにより、前述した図16(c)に戻って、当該図16(c)~図16(f)の動作を繰り返し実行する。
【0110】
板海苔積層体NTから板海苔Nが引き抜かれて、図16(g)に示すように、板海苔積層体NTを形成する板海苔が少なくなって重量が軽くなると、第3の筐体31の下部噴出孔31sbからトレイ30の板海苔搭載面30aの高さ位置に向けて側方から噴出されるエアによって板海苔が下方から吹き上げられ、吸着孔32sによって板海苔Nが吸着されやすくなる。
【0111】
このようにして第4の筐体32に形成された吸着孔32sで板海苔Nを吸着し、板海苔積層体NTから板海苔Nを1枚また1枚と引き抜き、図16(h)に示すように、最後の1枚の板海苔Nが引き抜かれる。
【0112】
最後の板海苔Nが引き抜かれた後、実施の形態2の板海苔分離装置Mでは、トレイ30上に板海苔がなくなったことを検出する機構が装備されていないため、図16(i)に示すように、ブロア34が動作し続けて第4の筐体32の吸着孔32sにエアが流入し、第3の筐体31の噴出孔31sからエアが噴出される。
【0113】
そして、トレイ30上に板海苔がなくなったことを(つまり、ブロア34が動作しても板海苔Nが吸着されなくなったことを)作業者が認識したならば、図16(j)に示すように、ブロア34を停止させる。
【0114】
このように、実施の形態2の板海苔分離装置Mにおいても、トレイ30に板海苔積層体NTを搭載し、上部噴出孔31saの形成された第3の筐体31であるエア噴出部ASによって当該板海苔積層体NTの側面上部に向けて側方からエアを噴出して板海苔を1枚毎に分離して浮上させ、吸着孔32sの形成された第4の筐体32である板海苔吸着部NAによってエアにより浮上した最上部の板海苔Nの上面を吸着し、吸着された板海苔Nを取出部35から側方へ取り出すようにしている。したがって、板海苔積層体NTから1枚の板海苔Nを確実に且つ損傷なく取り出すことが可能になる。
【0115】
しかも、実施の形態2の板海苔分離装置Mでは、ブロアが1台だけしか用いられておらず、また、トレイ30の昇降機構が装備されておらず、さらに、機械式センサ9などの検出手段によって板海苔Nの吸着の有無を検出しながらブロアや昇降機構の動作を制御することも行っていない。したがって、極めて簡便な構造により、板海苔積層体NTから1枚の板海苔Nを確実に且つ損傷なく取り出すことが可能になる。
【0116】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0117】
たとえば、実施の形態1においては、板海苔吸着部NAによる板海苔Nの吸着の有無を検出するための検出手段として、接触型の機械式センサ9が用いられているが、板海苔吸着部NAに吸着された板海苔Nの有無を非接触で検出する光電センサまたは超音波センサを用いてもよい。非接触式のセンサであれば、吸着された板海苔Nと機械式センサ9との接触がないので、当該板海苔Nの損傷がより確実に防止される。
【0118】
また、トレイ7の昇降機構は、実施の形態1に示す機構に限定されるものではない。例えば、トレイ7の四隅をワイヤで吊した構造としておき、ワイヤの巻き取りと巻き戻し、ワイヤの周回などでトレイを昇降させる昇降機構、あるいは伸縮可能(例えば、ボールねじで伸縮可能)なロッドでトレイ7を下から支持する構造としておき、当該ロッドの伸縮でトレイ7を昇降させる昇降機構など、トレイ7を昇降させることが可能であれば、様々な機構を採用することができる。
【0119】
また、本実施の形態では、板海苔分離装置Mの前面からエアを装置内部空間の上部(つまり、板海苔積層体NTの上部)に噴出しているが、エアの噴出位置は板海苔分離装置Mの前面である必要はなく、例えば側面や背面であってもよい。
【0120】
また、実施の形態1では第1の筐体1が第1の噴出部材となっており、実施の形態2では第3の筐体31が第2の噴出部材となっており、何れの噴出部材も筐体で構成されている。しかしながら、第1の噴出部材や第2の噴出部材は、筐体ではなく先端に噴出口が形成されたノズルでもよい。同様に、実施の形態1では第2の筐体2が第1の吸着部材となっており、実施の形態2では第4の筐体32が第2の吸着部材となっており、何れの吸着部材も筐体で構成されている。しかしながら、第1の吸着部材や第2の吸着部材もまた、筐体ではなく先端に吸着口が形成されたノズルでもよい。
【0121】
そして、実施の形態1において説明した板海苔搬送装置NCは、実施の形態2の板海苔分離装置Mについても適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上の説明では、本発明の板海苔分離装置で分離して取り出された板海苔が海苔巻きや海苔で包まれたおむすびの製造に用いられる場合が示されているが、取り出された板海苔の用途は特に限定されるものではなく、手巻き寿司や磯辺餅など様々である。
【符号の説明】
【0123】
1 第1の筐体(第1の噴出部材)
1a 凹部
1s 噴出孔
2 第2の筐体(第1の吸着部材)
2a 主筐体部
2b 副筐体部
2s 吸着孔
4s エア排出部
5 捌きブロア(第1の送風機)
6 吸着ブロア(第2の送風機)
7 トレイ
7a 板海苔搭載板
7b 立板
8 取出部
9 機械式センサ(検出手段)
10 アーム
10a トレイガイドベアリング
11 内板
11a 長孔
12 トレイ昇降駆動モータ(トレイ昇降駆動部)
13 トレイ駆動ギア
14 トレイ駆動板
15 トレイ駆動ラック
16 トレイ昇降ブロック
16a 傾斜面
20a 駆動ローラ
20b 従動ローラ
21 搬送ベルト
22 搬送ローラ
23 搬送トレイ
30 トレイ
30a 板海苔搭載面
31 第3の筐体(第2の噴出部材)
31s 噴出孔
31sa 上部噴出孔(噴出孔)
31sb 下部噴出孔(噴出孔)
32 第4の筐体(第2の吸着部材)
32a 主筐体部
32b 副筐体部
32s 吸着孔
33a 連通筐体
33b 連通筐体
34 ブロア(送風機)
35 取出部
36 遮断壁
AS エア噴出部
M 板海苔分離装置
N 板海苔
NA 板海苔吸着部
NC 板海苔搬送装置
NT 板海苔積層体
P1 前面板
P2 上面板
P3a 側面板
P3aa ガイド孔
P3ab カバー
P3b 底板
P3ba スライド孔
P4 背面板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16