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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164326
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221020BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20221020BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20221020BHJP
【FI】
B60H1/00 101Q
F24F11/64
F24F110:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069747
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光年
【テーマコード(参考)】
3L211
3L260
【Fターム(参考)】
3L211BA02
3L211BA03
3L211EA04
3L211EA12
3L211FA24
3L211FA26
3L211FB09
3L211FB16
3L211GA09
3L260BA03
3L260BA04
3L260BA25
3L260CA04
3L260CA12
3L260DA03
3L260EA02
3L260EA22
(57)【要約】
【課題】車室内の空調状態をユーザにとって快適にすることを短時間で実現することを可能にする。
【解決手段】エアコンECU30は、ステップS140、140a、140bにおいて、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、ユーザが実際に感じる温熱感を正解値としてユーザに申告させることをユーザに対して促す。エアコンECU30は、ステップS150、150a、150bにおいて、ユーザが申告した正解値を受け付ける。エアコンECU30は、S160、160a、160bにおいて、ユーザから申告される正解値に車室内の空調状態を合わせるように室内空調ユニット10を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内を空調する空調ユニット(10)を制御する制御部(S160、S160a、S160b)と、
ユーザが感じると推定される温熱感である温熱感推定値が正しいか否かを前記ユーザに問いかけ、前記ユーザが実際に感じる温熱感を正解値として前記ユーザに申告させることを前記ユーザに対して促す申告促進部(S140、140a、140b)と、
前記ユーザが申告した前記正解値を受け付ける正解値受付部(S150、150a、150b)と、を備え、
前記制御部は、前記正解値に前記室内の空調状態を合わせるように前記空調ユニットを制御する空調装置。
【請求項2】
前記申告促進部は、前記空調ユニットが前記室内の空調を開始するとき、前記温熱感推定値が正しいか否かを前記ユーザに問いかけ、前記正解値を前記ユーザに申告させることを前記ユーザに対して促し、
前記申告促進部は、前記空調ユニットの前記空調状態が定常状態であるとき、前記温熱感推定値が正しいか否かを前記ユーザに問いかけ、前記正解値を前記ユーザに申告させることを前記ユーザに対して促す請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記室内の空気温度を検出する温度検出部(32)の出力信号に基づいて、前記室内の空気温度が単位時間当たりに閾値以上変化したか否かを判定する温度判定部(S151)と、
前記室内の空気温度が単位時間当たりに閾値以上変化したと前記温度判定部が判定したとき、前記ユーザが申告した正解値を受け付けることを拒否する受付拒否部(S153)と、
前記室内の空気温度における単位時間当たりの変化量が閾値未満であると前記温度判定部が判定したとき、前記正解値受付部は、前記ユーザが申告した正解値を受け付ける受付部(S152)と、
を備える請求項1または2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記空調ユニットは、自動車に搭載されており、
前記申告促進部は、前記自動車がトンネルの通過時にも、前記温熱感推定値が正しいか否かを前記ユーザに問いかけ、前記正解値を前記ユーザに申告させることを前記ユーザに対して促す請求項1ないし3のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項5】
前記申告促進部は、前記自動車の速度が単位時間あたり閾値以上変化したときにも、前記温熱感推定値が正しいか否かを前記ユーザに問いかけ、前記正解値を前記ユーザに申告させることを前記ユーザに対して促す請求項4に記載の空調装置。
【請求項6】
前記正解値受付部は、前記ユーザが申告した正解値を音声入力によって受け付ける請求項1ないし5のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記空調ユニットの目標作業量(TA0)に前記空調ユニットの作業量を近づけるように前記空調ユニットを制御し、
前記正解値受付部が前記正解値を受け付けた場合に、前記制御部は、前記正解値に基づいて補正した補正後の目標作業量を求め、この求めた補正後の目標作業量に基づいて前記空調ユニットの制御に実際に用いる前記目標作業量の実値を求め、前記目標作業量の実値に前記空調ユニットの作業量を近づけるように前記空調ユニットを制御し、
前記制御部によって補正される前の前記目標作業量をTAOMとし、前記補正後の目標作業量をTAOGとし、零以上で、かつ1未満である係数をKaとし、前記TAOMが前記TAOG以上の値である場合において、
前記制御部は、
【数1】
【数2】
を満たすTAORを前記目標作業量の実値とし、
零以上で、かつ1未満である係数をKbとし、前記TAOMが前記TAOG未満の値である場合において、前記制御部は、
【数3】
【数4】
を満たすTAORを前記目標作業量の実値とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項8】
記録部(30b)と、
前記記録部にデータを記録する記録制御部(S170、S170a、S170b)と、を備え、
前記制御部は、前記空調ユニットの目標作業量(TA0)に前記空調ユニットの作業量を近づけるように前記空調ユニットを制御し、
前記正解値受付部が前記正解値を受け付けた場合に、前記制御部は、前記正解値に基づいて前記目標作業量を補正した補正後の目標作業量を求め、この求めた補正後の目標作業量に基づいて前記空調ユニットを制御し、
前記制御部は、前記データとしての前記補正後の目標作業量と前記正解値とを対応づけてユーザ毎に前記記録部に記録させる請求項1ないし7のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項9】
前記ユーザの熱画像を取得する熱画像取得部(42)と、
前記温熱感推定値を求めるための温熱感推定データが記録されている記録部(30b)と、
前記記録部に記録されている前記温熱感推定データと前記熱画像取得部で取得される熱画像とに基づいて前記温熱感推定値を求める推定値算出部(S130)と、
前記申告促進部は、前記推定値算出部で求められた前記温熱感推定値が正しいか否かを前記ユーザに問いかけ、前記正解値を前記ユーザに申告させることを前記ユーザに対して促す請求項1ないし7のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項10】
前記ユーザを撮像するカメラ(40)と、
前記記録部に前記温熱感推定データが記録されていない前記ユーザの場合には、前記カメラで撮像された画像から前記ユーザの特徴データを抽出する特徴抽出部(S113)と、
前記温熱感推定データを選択するデータ選択部(S114)と、を備え、
前記記録部には、前記温熱感推定データおよび前記ユーザの特徴データが前記ユーザ毎に記録されており、
前記データ選択部は、前記ユーザ毎の前記温熱感推定データのうち、前記特徴抽出部で抽出された前記特徴データに近い前記特徴データを有する前記ユーザの前記温熱感推定データを選択し、
前記熱画像取得部は、前記記録部に前記温熱感推定データが記録されていない前記ユーザの熱画像を取得し、
前記推定値算出部は、前記データ選択部で選択された前記温熱感推定データと前記熱画像取得部で取得される熱画像とに基づいて前記温熱感推定値を求め、
前記申告促進部は、前記推定値算出部で求められた前記温熱感推定値が正しいか否かを前記ユーザに問いかける請求項9に記載の空調装置。
【請求項11】
前記正解値受付部で受け付けた前記正解値に基づいて、前記ユーザが実際に感じる温熱感に合わせるように前記温熱感推定データを更新する更新部(S170、S170a、S170b)を備える請求項9または10に記載の空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調装置では、ユーザの温熱感推定値をユーザに提示して、温熱感の正解値をユーザに申告させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この空調装置は、温熱感推定値をユーザに提示する。そして、空調装置は、温熱感推定値が誤っているとユーザが判断したとき、ユーザから申告された温熱感の正解値に基づいて室内の空調を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-153780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の空調装置では、ユーザから温熱感の正解値が申告されれば、この申告された温熱感の正解値に基づいてユーザの温熱感に合わせた室内空調を行うことができる。
【0006】
しかし、ユーザの温熱感の正解値と温熱感推定値との間の乖離が大きくてもユーザが正解値の申告を行わない限り、ユーザの温熱感に合わせた室内空調を行うことができない。このため、室内の空調状態をユーザにとって快適にすることができない。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、室内の空調状態をユーザにとって快適にすることを短時間で実現することを可能にする空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空調装置において、室内を空調する空調ユニット(10)を制御する制御部(S160、S160a、S160b)と、
ユーザが感じると推定される温熱感である温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、ユーザが実際に感じる温熱感を正解値としてユーザに申告させることをユーザに対して促す申告促進部(S140、140a、140b)と、
ユーザが申告した正解値を受け付ける正解値受付部(S150、150a、150b)と、を備え、
制御部は、正解値に室内の空調状態を合わせるように空調ユニットを制御する。
【0009】
請求項1に記載の発明では、申告促進部がユーザに正解値を申告させることをユーザに対して促すため、ユーザが正解値を申告する可能性を高めることができる。このため、制御部が正解値に室内の空調状態を合わせるように空調ユニットを制御することを短時間で実現することが可能になる。
【0010】
以上により、室内の空調状態をユーザにとって快適にすることを短時間で実現することを可能にする空調装置を提供することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における車両用空調装置の室内空調ユニットにおける機械的構成および電気的構成を示す図である。
図2図1の演算処理部における空調制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図3図2の空調制御処理のうち正解値の受け付け処理の詳細を示すフローチャートである。
図4図2の空調制御処理で用いられる温熱感推定値レベル・温熱感・問いかけフレーズが1対1対1で特定されるように構成されている図表である。
図5図2の空調制御処理で用いられる温熱感レベルと温熱感の回答フレーズとが1対1で特定されるように構成されている図表である。
図6図2の空調制御処理で用いられる空気温度の設定温度を補正するためのデータであり、車室内の空気温度の設定温度の補正量と温熱感レベル差との関係を示す図である。
図7図2の空調制御処理で用いられる補正前のデータベースの構成を示す図であり、推定放熱量と温熱感推定値レベルとが1対1で特定される温熱感推定データ、およびユーザ識別データ等を示す図である。
図8図2の空調制御処理で用いられる補正後のデータベースの構成を示す図であり、ユーザから申告された温熱感の正解値によって補正されて温熱感推定値レベルがランクダウンした温熱感推定データの説明を補助するための図である。
図9図2の空調制御処理で用いられる補正後のデータベースの構成を示す図であり、ユーザから申告された温熱感の正解値によって補正されて温熱感推定値レベルがランクアップした温熱感推定データの説明を補助するための図である。
図10図2の空調制御処理にてユーザへの問いかけるタイミングの説明を補助するための図であり、室内空調ユニットが空調を開始してから経過した時間、車室内空気温度、およびユーザへの問いかけるタイミングを示す図である。
図11】第2実施形態の演算処理部におけるユーザ識別処理の詳細を示すフローチャートである。
図12】第2実施形態の演算処理部で用いられるデータベースの構成を示す図であり、データベースを構成するユーザの上半身のアスペクト比、ユーザの頭部のアスペクト比を示す図である。
図13】第3実施形態の演算処理部における設定温度の補正/空調制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0014】
(第1実施形態)
図1に本発明の車両用空調装置の第1実施形態を示す。本実施形態の車両用空調装置は、室内空調ユニット10を備える。室内空調ユニット10は、車室内のうち車両進行方向前側においてインストメントパネルの下側に配置されている。
【0015】
室内空調ユニット10は、空調ケーシング11、羽根車12、冷却用熱交換器13、加熱用熱交換器14、エアミックスドア15、内外気切換ドア16a、吹出口切換ドア16b、16cを備える。
【0016】
空調ケーシング11には、羽根車12によって生じる空気流が車室内に向けて流通する空気流路が形成されている。空調ケーシング11には、車室外から外気を導入する外気導入口11a、および車室内から内気を導入する内気導入口11bが設けられている。空調ケーシング11には、車室内に開口されているデフロスタ吹出口11c、フェイス吹出口11d、およびフット吹出口11eが設けられている。
【0017】
内外気切換ドア16aは、外気導入口11a、および内気導入口11bのうち少なくとも一方を開閉する。羽根車12は、空調ケーシング11内に配置されている。羽根車12は、ブロワモータ12aによって回転されて、外気導入口11a、或いは内気導入口11bから導入した空気を吹き出す。
【0018】
冷却用熱交換器13は、コンプレッサ20、放熱器21、減圧器22とともに、冷媒を循環させる冷凍サイクルを構成する。冷却用熱交換器13は、空調ケーシング11内において、羽根車12に対して空気流れ下流側に配置されている。冷却用熱交換器13は、羽根車12から吹き出される空気を冷媒によって冷却する。
【0019】
加熱用熱交換器14は、空調ケーシング11内において、冷却用熱交換器13に対して空気流れ下流側に配置されている。加熱用熱交換器14は、走行用エンジンの冷却水によって冷却用熱交換器13を通過した空気を加熱する。
【0020】
空調ケーシング11内には、羽根車12から吹き出される空気流を加熱用熱交換器14をバイパスして流通させるバイパス流路17が設けられている。エアミックスドア15は、回転可能に支持されて、その回転によって、冷却用熱交換器13から吹き出される風量のうち加熱用熱交換器14を通過する風量とバイパス流路17を通過する風量との比率を調整する。
【0021】
このことにより、空調ケーシング11のデフロスタ吹出口11c、フェイス吹出口11d、およびフット吹出口11eから車室内に吹き出される空気温度を調整する。デフロスタ吹出口11c、フェイス吹出口11dは、吹出口切換ドア16bによって開閉される。フット吹出口11eは、吹出口切換ドア16cによって開閉される。
【0022】
本実施形態の車両用空調装置の電気的構成について図1を参照して説明する。
【0023】
本実施形態の車両用空調装置は、エアコンECU30を備える。エアコンECU30は、演算処理部30aおよび記録部30bを備える電子制御装置である。演算処理部30aは、マイクロコンピュータによって構成されている。記録部30bは、ROM、RAM、フラッシュメモリ等によって構成されている。
【0024】
演算処理部30aは、図2図3のコンピュータプログラムにしたがって、空調制御処理を実行する際に、温度センサ31、32、35、設定部34等からの出力信号に基づいて、ブロワモータ12a、サーボモータ36、37、38、コンプレッサ20を制御する。
【0025】
演算処理部30aは、空調制御処理を実行する際に、イグニッションスイッチIG、カメラ40、熱画像素子42等からの出力信号に基づいて表示パネル41を制御する。
【0026】
ROMには、空調制御処理を実行するためのコンピュータプログラム、温熱感推定値レベル・温熱感・問いかけフレーズの対応表、回答表、および空気温度の設定温度Tsetの補正用のグラフHgが記憶されている。
【0027】
対応表には、図4に示すように、温熱感推定値レベル・温熱感・問いかけフレーズが1対1対1で特定されるように構成されている。詳細には、以下の通りである。
【0028】
温熱感推定値レベル「-5」のとき、温熱感が「非常に寒い」であり、問いかけフレーズが「今の温度は非常に寒いですか?」である。温熱感推定値レベル「-4」のとき、温熱感が「寒い」であり、問いかけフレーズが「今の温度は寒いですか?」である。温熱感推定値レベル「-3」のとき、温熱感が「やや寒い」であり、問いかけフレーズが「今の温度は温やや寒いですか?」である。
【0029】
温熱感推定値レベル-2のとき、温熱感が「涼しい」であり、問いかけフレーズが「今の温度は涼しいですか?」である。温熱感推定値レベル-1のとき、温熱感が「やや涼しい」であり、問いかけフレーズが「今の温度はやや涼しいですか?」である。温熱感推定値レベル0のとき、温熱感が「どちらでもない」であり、問いかけフレーズが「今の温度はどちらでもないですか?」である。
【0030】
温熱感推定値レベル1のとき、温熱感が「やや温かい」であり、問いかけフレーズが「今の温度はやや温かいですか?」である。温熱感推定値レベル2のとき、温熱感が「温かい」であり、問いかけフレーズが「今の温度は温かいですか?」である。温熱感推定値レベル3のとき、温熱感が「やや暑い」であり、問いかけフレーズが「今の温度はやや暑いですか?」である。
【0031】
温熱感推定値レベル4のとき、温熱感が「暑い」であり、問いかけフレーズが「今の温度は暑いですか?」である。温熱感推定値レベル5のとき、温熱感が「非常に暑い」であり、問いかけフレーズが「今の温度は非常に暑いですか?」である。
【0032】
図5の回答表は、温熱感レベル-5~5に対応する温熱感の回答フレーズである「非常に寒い」「寒い」「やや寒い」「涼しい」「やや涼しい」「どちらでもない」「やや温かい」「温かい」「やや暑い」「暑い」「非常に暑い」を備える。
【0033】
回答表は、次のように、ユーザから申告される温熱感を示す回答フレーズと温熱感レベルとが1対1で特定されるように構成されている。
【0034】
温熱感レベル-5の回答フレーズが「非常に寒い」であり、温熱感レベル-4の回答フレーズが「寒い」であり、温熱感レベル-3の回答フレーズが「やや寒い」である。温熱感レベル-2の回答フレーズが「涼しい」であり、温熱感レベル-1の回答フレーズが「やや涼しい」であり、温熱感レベル-0の回答フレーズが「どちらでもない」である。
【0035】
温熱感レベル1の回答フレーズが「やや温かい」であり、温熱感レベル2の回答フレーズが「温かい」であり、温熱感レベル3の回答フレーズが「やや暑い」である。温熱感レベル4の回答フレーズが「暑い」であり、温熱感レベル5の回答フレーズが「非常に暑い」である。
【0036】
空気温度の設定温度Tsetの補正用のグラフHgは、図6に示すように、空気温度の設定温度Tsetの補正量とユーザの温熱感レベル差との関係を示すグラフHgである。空気温度の設定温度TsetのグラフHgは、設定温度Tsetを温熱感レベル差によって補正するために用いられる。
【0037】
フラッシュメモリには、空調制御処理に用いるデータベースがユーザ毎に記録されている。データベースは、図7に示すように、ユーザ識別データ、温熱感推定データ等を備えている。
【0038】
ユーザ識別データは、ユーザを識別するのに用いられる。本実施形態では、ユーザ識別データとしては、例えば、顔認証データが用いられている。温熱感推定データは、ユーザからその周囲へ放熱されると推定される熱量である推定放熱量と温熱感推定値レベルとの対応関係を示すデータである。
【0039】
図7の温熱感推定データでは、推定放熱量がA以上でかつB未満であるときに温熱感推定値レベル5となり、推定放熱量がB以上でかつC未満であるときに温熱感推定値レベル4となり、推定放熱量がC以上でかつD未満であるときに温熱感推定値レベル3となる。
【0040】
推定放熱量がD以上で、かつE未満であるときに温熱感推定値レベル2となり、推定放熱量がE以上で、かつF未満であるときに温熱感推定値レベル1となり、推定放熱量がF以上で、かつG未満であるときに温熱感推定値レベル0となる。
【0041】
推定放熱量がG以上で、かつH未満であるときに温熱感推定値レベル-1となり、推定放熱量がH以上で、かつI未満であるときに温熱感推定値レベル-2となり、推定放熱量がI以上で、かつJ未満であるときに温熱感推定値レベル-3となる。
【0042】
推定放熱量がJ以上で、かつK未満であるときに温熱感推定値レベル-4となり、推定放熱量がK以上で、かつL未満であるときに温熱感推定値レベル-5となる。
【0043】
ここで、推定放熱量A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、Lは、A<B<C<D<E<F<G<H<I<J<K<Lを満たす関係になっている。
【0044】
図1の温度センサ31は、車室外の空気温度TAMを検出する外気温センサである。温度センサ32は、温度検出部として、車室内の空気温度TRを検出する内気温センサである。温度センサ35は、冷却用熱交換器13から吹き出される空気温度を検出する吹き出し温度センサである。設定部34は、ユーザから操作されて車室内の空気温度の設定温度Tsetが設定される。
【0045】
サーボモータ36は、吹出口切換ドア16b、16cを駆動する。サーボモータ37は、内外気切換ドア16aを駆動する。サーボモータ38は、エアミックスドア15を駆動する。マイク39は、ユーザから音声を電気信号に変換して演算処理部30aに出力する。カメラ40は、ユーザを撮像するデジタルカメラである。熱画像素子42は、熱画像取得部として、ユーザおよびその周囲の温度分布を非接触で検出するサーモグラフィである。イグニッションスイッチIGは、走行用エンジンおよび走行用電動機の電源スイッチである。
【0046】
次に、本実施形態の室内空調ユニット10の作動について説明する。
【0047】
演算処理部30aは、図2図3のフローチャートにしたがって、空調制御処理を実行する。図2は、演算処理部30aにおける空調制御処理を示すフローチャートである。図3は、図2中のステップS150の正解値の受付処理の詳細を示すフローチャートである。
【0048】
まず、演算処理部30aは、ステップS100において、ユーザによってイグニッションスイッチIGがオンされたか否かを判定することにより、ユーザが乗車しかたか否かを判定する。
【0049】
このとき、演算処理部30aは、ユーザによってイグニッションスイッチIGがオンされたとき、ユーザが乗車したとして、YESと判定する。これに伴い、エアコンECU30は、ステップS110において、ユーザを識別する。
【0050】
具体的には、演算処理部30aは、カメラ40によってユーザを撮像して、ユーザの画像を示す撮像データをカメラ40から取得し、この撮像データからユーザを識別するための顔認証データを取得する。演算処理部30aは、この取得した顔認証データに合致する顔認証データを有するデータベースを記録部30bから読み出す。
【0051】
すなわち、演算処理部30aは、ユーザ識別データを用いて予め記録部30bに記録されているユーザのデータベースを記録部30bから読み出す。
【0052】
次に、演算処理部30aは、ステップS120において、空調制御処理の実行を開始する。このことにより、室内空調ユニット10による車室内の空調を開始する。
【0053】
まず、演算処理部30aは、温度センサ31で検出される車室外の空気温度TAM、温度センサ32で検出される車室内の空気温度TR、設定部34で設定される車室内の空気温度の設定温度Tsetを次の(数式0)に代入する。このことにより、目標吹き出し温度TAO(すなわち、目標作業量)を求めることができる。
【0054】
TAO=Kset×Tset-Kr×TR-Kam×TAM+C・・・(数式0)
目標吹き出し温度TAOは、車室内の空気温度を設定温度Tsetに維持するために、吹出口11c、11d、11eから吹き出すことが必要となる空気温度である。吹出口11c、11d、11eは、デフロスタ吹出口11c、フェイス吹出口11d、フット吹出口11eを纏めたものである。
【0055】
ここで、Ksetは設定温度の補正係数であり、Krは車室内温度の補正係数であり、Kamは外気温度補正係数であり、Cは補正定数である。
【0056】
これに伴い、演算処理部30aは、ステップS120において、吹出口11c、11d、11eから吹き出される空気温度を目標吹き出し温度TAOに近づけるために、ブロワモータ12a、サーボモータ36、37、38、コンプレッサ20を制御する。
【0057】
吹出口11c、11d、11eから吹き出される空気温度は、室内空調ユニット10の作業量に相当する。
【0058】
次に、演算処理部30aは、ステップS130において、推定値算出部として、ユーザの温熱感推定値を推定する。具体的には、エアコンECU30は、熱画像素子42によってユーザおよびその周囲の温度分布を示す熱画像を取得し、この取得した熱画像からユーザおよびその周囲の間の温度差を求め、この求めた温度差に基づいて、ユーザからその周囲への推定放熱量を求める。
【0059】
このとき、演算処理部30aは、上記ステップS120で読み出したデータベースに含まれる温熱感推定データのうちユーザの推定放熱量に合致する温熱感推定値レベルを求める。これとともに、演算処理部30aは、この求めた温熱感推定値レベルに合致する「問いかけのフレーズ」を求める。
【0060】
次に、演算処理部30aは、ステップS140において、申告促進部として、表示パネル41において上記ステップS130で求めた「問いかけのフレーズ」を表示させる。このことにより、ユーザに対して温熱感推定値が正しいか否かを問いかけることになる。
【0061】
ここで、演算処理部30aは、例えば、ユーザの推定放熱量がB以上で、かつC未満であるときにユーザの温熱感推定値レベルが4であり、推定温熱感が「暑い」であり、問いかけフレーズが「今の温度は暑いですか?」であると判定する。
【0062】
これに伴い、演算処理部30aは、表示パネル41において上記ステップS130で求めた「今の温度は暑いですか?」を表示させる。
【0063】
これに伴い、ユーザの実際に感じる温熱感と表示パネル41に表示される温熱感「暑い」とが不一致である場合には、ユーザが実際に感じる温熱感の正解値を音声で申告することになる。
【0064】
このとき、演算処理部30aは、ステップS150において、正解値受付部として、マイク39を通して音声入力される正解値を受け付ける処理を実行する。
【0065】
ここで、室内空調ユニット10による車室内の空調状態が過度状態で、車室内の空気温度の変化が大きい場合には、演算処理部30aが求める感熱感推定値とユーザが実際に感じる温熱感との間に大きな乖離が生じる。
【0066】
そこで、演算処理部30aは、図3のステップS151において、温度判定部として、温度センサ32の検出温度に基づいて、単位時間当たりの車室内温度の変化量が閾値未満であるか否かを判定する。
【0067】
演算処理部30aは、ステップS151において、単位時間当たりの車室内温度の変化量が閾値以上であるときには、NOと判定する。これに伴い、演算処理部30aは、ステップS153において、受付拒否部として、マイク39を通して音声入力される正解値の受け付けを拒否して、ステップS180に進む。
【0068】
演算処理部30aは、ステップS151において、単位時間当たりの車室内温度の変化量が閾値未満であるときには、YESと判定する。これに伴い、演算処理部30aは、ステップS152において、受付部として、マイク39を通して音声入力される正解値を受け付ける。
【0069】
次に、演算処理部30aは、図2のステップS160において、制御部として、設定温度Tsetをユーザの温熱感に基づいて補正する。具体的には、演算処理部30aは、ユーザの温熱感レベルから温熱感推定値レベルを引いた温熱感レベル差を求める。
【0070】
これに加えて、演算処理部30aは、図6の設定温度Tsetの補正用のグラフHgにおいて温熱感レベル差に対応する設定温度Tsetの補正量を求める。
【0071】
演算処理部30aは、設定温度Tsetの補正量に補正係数Hkを掛けた補正値の実値を求め、この求めた補正値の実値に設定部34で設定された値を加えた値を補正後の設定温度Tsetを求める。
【0072】
例えば、ユーザが音声で正解値として「温かい」を申告したとき、演算処理部30aは、上記回答表に基づいて、「温かい」に合致するユーザの温熱感レベルが「2」であると判別する。
【0073】
この場合、演算処理部30aは、ユーザの温熱感レベルである「2」から、温熱感推定値「暑い」の温熱感推定値レベルである「4」を引いた温熱感レベル差「-2」を求める。
【0074】
これに加えて、演算処理部30aは、図6の設定温度TsetのグラフHgにおいて温熱感レベル差「-2」に対応する設定温度Tsetの補正量「-2」を求める。
【0075】
さらに、演算処理部30aは、設定温度Tsetの補正量「-2」に補正係数Hk(例えば、1.5)を掛けた補正値の実値「-3」を求める。これに加えて、演算処理部30aは、この求めた補正値の実値「-3」に設定部34で設定された値「28」を加えた値を補正後の設定温度Tset「25」を求める。
【0076】
以上によりユーザから進行される正解値に基づいて補正後の設定温度Tsetが求められる。
【0077】
次に、演算処理部30aは、補正後の設定温度Tsetを上記数式(0)のTsetに代入して補正後の目標吹き出し温度TAOを求める。
【0078】
さらに、演算処理部30aは、吹出口11c、11d、11eから吹き出される空気温度を補正後の目標吹き出し温度TAOに近づけるために、ブロワモータ12a、サーボモータ38、コンプレッサ20を制御する。
【0079】
このことにより、演算処理部30aは、正解値に車室内の空調状態を合わせるように室内空調ユニット10を制御することになる。
【0080】
次に、演算処理部30aは、ステップS170において、記録制御部、更新部として、記録部30bに記録されているデータベースの温熱感推定データをユーザが実際に感じる温熱感に合わせるように更新する。
【0081】
具体的には、演算処理部30aは、記録部30bに記録されているデータベースの温熱感推定データを温熱感レベル差に基づいて更新する。
【0082】
例えば、温熱感レベル差が「-2」である場合に、演算処理部30aは、図7の温熱感推定値レベルを2ランクダウンさせた補正後の温熱感推定データを求める。補正後の温熱感推定データは図8の通りである。
【0083】
推定放熱量がA以上で、かつB未満であるときに温熱感推定値レベル3となり、推定放熱量がB以上で、かつC未満であるときに温熱感推定値レベル2となり、推定放熱量がC以上で、かつD未満であるときに温熱感推定値レベル1となる。
【0084】
推定放熱量がD以上で、かつE未満であるときに温熱感推定値レベル0となり、推定放熱量がE以上で、かつF未満であるときに温熱感推定値レベル-1となり、推定放熱量がF以上で、かつG未満であるときに温熱感推定値レベル-2となる。
【0085】
推定放熱量がG以上で、かつH未満であるときに温熱感推定値レベル-3となり、推定放熱量がH以上で、かつI未満であるときに温熱感推定値レベル-4となり、推定放熱量がI以上で、かつJ未満であるときに温熱感推定値レベル-5となる。
【0086】
また、温熱感レベル差が「2」である場合に、演算処理部30aは、温熱感推定値レベルを2ランクアップさせた補正後の温熱感推定データを求める。補正後の温熱感推定データは図9に示す通りである。
【0087】
推定放熱量がC以上で、かつD未満であるときに温熱感推定値レベル5となり、推定放熱量がD以上で、かつE未満であるときに温熱感推定値レベル4となり、推定放熱量がE以上で、かつF未満であるときに温熱感推定値レベル3となる。
【0088】
推定放熱量がF以上で、かつG未満であるときに温熱感推定値レベル2となり、推定放熱量がG以上で、かつH未満であるときに温熱感推定値レベル1となり、推定放熱量がH以上で、かつI未満であるときに温熱感推定値レベル0となる。
【0089】
推定放熱量がI以上で、かつJ未満であるときに温熱感推定値レベル-1となり、推定放熱量がJ以上で、かつK未満であるときに温熱感推定値レベル-2となり、推定放熱量がK以上で、かつL未満であるときに温熱感推定値レベル-3となる。
【0090】
推定放熱量がL以上で、かつM未満であるときに温熱感推定値レベル-4となり、推定放熱量がM以上で、かつN未満であるときに温熱感推定値レベル-5となる。
【0091】
さらに、演算処理部30aは、ステップS170において、記録制御部、更新部として、記録部30bに記録されているユーザ毎のデータベースにおいて、ユーザから申告された正解値と補正後の目標吹き出し温度TAOとを対応づけて記録する。
【0092】
次に、演算処理部30aは、ステップS180において、上記ステップS120において空調制御処理の実行を開始してから10分経過したか否かを判定する。
【0093】
このとき、演算処理部30aは、上記ステップS120において空調制御処理の実行を開始してから経過した経過時間が10分未満であるとき、ステップS180において、NOと判定する。このため、演算処理部30aは、上記経過時間が10分未満である限り、ステップS180においてNO判定を繰り返す。
【0094】
その後、演算処理部30aは、上記経過時間が10分以上になると、ステップS180においてYESと判定する。
【0095】
次に、演算処理部30aは、ステップS130aにおいて、推定値算出部として、上記ステップS130と同様に、ユーザの温熱感推定値を推定する。
【0096】
次に、演算処理部30aは、ステップS140aにおいて、申告促進部として、上記ステップS140aと同様に、表示パネル41において上記ステップS130aで求めた「問いかけのフレーズ」を表示させる。このことにより、ユーザに対して温熱感推定値が正しいか否かを問いかけることになる。
【0097】
ここで、自動車がトンネルの通過時、或いは自動車の速度が単位時間(例えば1秒)あたり閾値(例えば15km/時間)以上変化したときでも、演算処理部30aは、表示パネル41において上記「問いかけのフレーズ」を表示させる。
【0098】
このため、自動車がトンネルを通過したり、自動車の速度が急速に変化したときでも、演算処理部30aは、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけることになる。
【0099】
次に、演算処理部30aは、ステップS150aにおいて、正解値受付部として、上記ステップS150と同様に、マイク39を通して音声入力される正解値を受け付け、この正解値に合致するユーザの温熱感レベルを上記回答表に基づいて判別する。
【0100】
次に、演算処理部30aは、ステップS160aにおいて、制御部として、上記ステップS160と同様に、設定温度Tsetをユーザの温熱感レベルに基づいて補正した補正後の設定温度Tsetを求める。これに加えて、演算処理部30aは、ステップS160aにおいて、この補正後の設定温度Tsetに基づいて補正後の目標吹き出し温度TAOを求める。
【0101】
演算処理部30aは、吹出口11c、11d、11eから吹き出される空気温度を補正後の目標吹き出し温度TAOに近づけるために、ブロワモータ12a、サーボモータ38、コンプレッサ20を制御する。
【0102】
次に、演算処理部30aは、ステップS170aにおいて、記録制御部、更新部として、上記ステップS170と同様に、記録部30bに記録されているユーザ毎のデータベースの温熱感推定データを温熱感レベル差に基づいて更新する。
【0103】
次に、演算処理部30aは、ステップS180aにおいて、上記ステップS120において室内空調ユニット10による室内空調を開始してから15分経過したか否かを判定することにより、室内空調ユニット10による空調状態が定常状態であるか否かを判定する。
【0104】
このとき、演算処理部30aは、上記ステップS120において空調制御処理の実行を開始してから経過した経過時間が15分未満であるとき、ステップS180aにおいて、室内空調ユニット10による空調状態が過度状態であるとして、NOと判定する。このため、演算処理部30aは、上記経過時間が15分未満である限り、ステップS180aにおいてNO判定を繰り返す。
【0105】
その後、演算処理部30aは、上記経過時間が15分以上になると、室内空調ユニット10による空調状態が定常状態であるとして、ステップS180aにおいてYESと判定する。
【0106】
次に、演算処理部30aは、ステップS130bにおいて、推定値算出部として、上記ステップS130と同様に、ユーザの温熱感推定値を推定する。
【0107】
次に、演算処理部30aは、ステップS140bにおいて、申告促進部として、上記ステップS140aと同様に、表示パネル41において上記ステップS130bで求めた「問いかけのフレーズ」を表示させる。このことにより、ユーザに対して温熱感推定値が正しいか否かを問いかけることになる。
【0108】
次に、演算処理部30aは、ステップS150bにおいて、正解値受付部として、上記ステップS150と同様に、マイク39を通して音声入力される正解値を受け付け、この正解値に合致する温熱感レベルを上記回答表に基づいて判別する。
【0109】
次に、演算処理部30aは、ステップS160bにおいて、制御部として、上記ステップS160と同様に、設定温度Tsetをユーザの温熱感レベルに基づいて補正して補正後の設定温度Tsetを求める。これに加えて、演算処理部30aは、ステップS160bにおいて、この補正後の設定温度Tsetに基づいて補正後の目標吹き出し温度TAOを求める。
【0110】
演算処理部30aは、吹出口11c、11d、11eから吹き出される空気温度を補正後の目標吹き出し温度TAOに近づけるために、ブロワモータ12a、サーボモータ38、コンプレッサ20を制御する。
【0111】
次に、演算処理部30aは、ステップS170bにおいて、記録制御部、更新部として、上記ステップS170と同様に、記録部30bに記録されているデータベースを温熱感レベル差に基づいて更新する。
【0112】
以上説明した本実施形態によれば、演算処理部30aは、ステップS140、140a、140bにおいて、ユーザが感じると推定される温熱感である温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかける。このことにより、ユーザが実際に感じる温熱感を正解値としてユーザに申告させることをユーザに対して促す。
【0113】
演算処理部30aは、ステップS150、150a、150bにおいて、ユーザが申告した正解値を受け付ける。演算処理部30aは、ステップS170、S170a、S170bにおいて、ユーザから申告される正解値に車室内の空調状態を合わせるように室内空調ユニット10を制御する。
【0114】
以上により、演算処理部30aは、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、ユーザが実際に感じる温熱感を正解値としてユーザに申告させることをユーザに対して促す。
【0115】
このため、温熱感推定値が誤っている場合には、ユーザが正解値を申告する可能性を高めることができる。したがって、演算処理部30aは、室内空調ユニット10による車室内の空調開始後に短期間で車室内の空調状態を正解値に合わせるように空調ユニット10を制御することができる。
【0116】
これにより、車室内の空調状態をユーザにとって快適にすることを短時間で実現することを可能にすることができる。
【0117】
以上説明した本実施形態によれば次の(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)の効果を得ることができる。
【0118】
(1)演算処理部30aは、ステップS140において、室内空調ユニット10が車室内空調を開始するとき、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促す。演算処理部30aは、ステップS150において、ステップS140に対応してユーザが申告した正解値を受け付ける。
【0119】
演算処理部30aは、ステップS140aにおいて、空調開始後の10分経過後に、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促す。演算処理部30aは、ステップS150aにおいて、ステップS140に対応してユーザが申告した正解値を受け付ける。
【0120】
演算処理部30aは、ステップS140bにおいて、空調ユニットの空調状態が定常状態であるとき、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促す。演算処理部30aは、ステップS150bにおいて、ステップS140に対応してユーザが申告した正解値を受け付ける。
【0121】
以上により、図10に示すように、演算処理部30aは、3回に亘って、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促し、その都度、ユーザが申告した正解値を受け付ける。
【0122】
このため、正解値をユーザに申告させる可能性をより一層、高めることができるので、演算処理部30aがより一層短期間で車室内の空調状態を正解値に合わせるように空調ユニット10を制御することができる。
【0123】
(2)演算処理部30aは、単位時間当たりの車室内空気温度の変化量が閾値以上であると判定したとき、ユーザが申告した正解値を受け付けることを拒否する。
【0124】
ここで、演算処理部30aが熱画像素子42から出力信号に基づいて温熱感推定値を求めたときからユーザが実際に温熱感を感じるとき迄に、車室内温度が大きく変化すると、誤差が大きい温熱感をユーザが正解値として申告する虞がある。
【0125】
これに対して、本実施形態では、演算処理部30aが単位時間当たりの車室内空気温度の変化量が閾値以上であると判定したとき、ユーザが申告した正解値を受け付けることを拒否する。このため、演算処理部30aが誤差の大きい正解値を受け付けることを未然に防ぐことができる。
(3)本実施形態では、演算処理部30aは、自動車がトンネルの通過時にも、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促す。
【0126】
演算処理部30aは、自動車の速度が単位時間あたり閾値以上変化したときにも、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促す。
【0127】
このため、自動車の走行状態が急変する状態であっても、演算処理部30aは、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促す。したがって、演算処理部30aは、室内空調ユニット10による車室内空調開始後に短期間で車室内の空調状態を正解値に合わせるように空調ユニット10を制御することができる。
(4)演算処理部30aは、ユーザが申告した正解値を音声入力によって受け付ける。このため、ユーザが運転時に操作パネルを操作できない状態で、ユーザが申告した正解値を受け付けることができる。
(5)演算処理部30aは、ユーザから申告される正解値に基づいて目標吹き出し温度TAOを補正して補正後の目標吹き出し温度TAOを求め、この求めた補正後の目標吹き出し温度TAOに基づいて室内空調ユニット10を制御する。演算処理部30aは、目標吹き出し温度TAOと正解値とをユーザ毎に対応づけて記録部30bに記録する。これにより、ユーザ毎の温熱感の変化を知ることができる。
(6)演算処理部30aは、記録部30bに記録されている温熱感推定データと熱画像素子42で取得される熱画像とに基づいて温熱感推定値を求める。このため、エアコンECU30が誤差の小さな温熱感推定値を求めることができる。
(7)演算処理部30aは、正解値に基づいて、ユーザが実際に感じる温熱感に合わせるように温熱感推定データを更新する。このため、高精度な温熱感推定データを求めることができる。
【0128】
(第2実施形態)
上記第1実施形態において、温熱感推定データが記録部30bに登録されてるユーザに対して、温熱感推定値が正しいか否かを問い合わせて正解値を申請させるようにユーザに促す例について説明した。
【0129】
これに代えて、本第2実施形態では、温熱感推定データが記録部30bに登録されていないユーザに対して、温熱感推定値が正しいか否かを問い合わせて正解値を申請させるようにユーザに促す例について説明する。
【0130】
本実施形態の記録部30bに記録されているデータベースには、図7に示すように、ユーザの体格の特徴データが登録されている。ユーザの体格の特徴データとしては、ユーザの上半身のアスペクト比、或いはユーザの頭部のアスペクト比が用いられる。
【0131】
上半身のアスペクトとは、ユーザが座席に着座して車両進行方向前方を向いた状態でユーザの臀部(具体的には、座席の座面)から頭頂部までの最大寸法とユーザの左右方向の最大寸法との比率である。ユーザの頭部のアスペクト比とは、ユーザが座席に着座して車両進行方向前方を向いた状態で頭部の天地方向の最大寸法とユーザの頭部の左右方向の最大寸法との比率である。
【0132】
本実施形態の演算処理部30aは、上記第1実施形態に対して図2中のステップS110のユーザ識別処理が相違する。そこで、以下、本実施形態では、演算処理部30aは、図11を参照してユーザ識別処理について説明する。
【0133】
まず、演算処理部30aは、ステップS111において、カメラ40によってユーザを撮像して撮像データからユーザを識別するための顔認証データを取得する。
【0134】
次に、演算処理部30aは、ステップS112において、この取得された顔認証データに基づいてユーザが記録部30bに登録されているか否かを判定する。
【0135】
撮像データから取得した顔認証データに合致する顔認証データを含むデータベースが記録部30bに記録されているときには、演算処理部30aは、ステップS112にてユーザが記録部30bに登録されているとしてYESと判定してステップS120に進む。
【0136】
この場合、演算処理部30aは、上記第1実施形態と同様に、撮像データから取得した顔認証データに合致するデータベースの温熱感推定データに基づいて、温熱感推定値を求めることになる。
【0137】
一方、演算処理部30aは、ステップS112において、撮像データから取得した顔認証データに合致する顔認証データを含むデータベースが記録部30bに記録されていないときには、ユーザが記録部30bに登録されていないとしてNOと判定する。
【0138】
これに伴い、演算処理部30aは、ステップS113において、特徴抽出部として、上述の如くカメラ40から取得した撮像データから特徴データを求める。
【0139】
さらに、演算処理部30aは、ステップS114において、データ選択部として、記録部30bに記録されているユーザ毎のデータベースのうち、上記ステップS113で求めた特徴データに最も近い特徴データを有するユーザのデータベースを選択する。以下、説明の便宜上、この選択されたデータベースを選択データベースという。
【0140】
この場合、演算処理部30aは、図2のステップS130において、選択データベースの温熱感推定データに基づいて、温熱感推定値を求めることになる。
【0141】
次に、演算処理部30aは、ステップS140において、この求めた温熱感推定値が正しいか否かを問い合わせるために、表示パネル41において上記ステップS130で求めた「問いかけのフレーズ」を表示させる。
【0142】
その後、演算処理部30aは、ステップS150において、マイク39を通して音声入力される正解値を受け付ける。すると、演算処理部30aは、ステップS160において、設定温度Tsetをユーザの温熱感レベルに基づいて補正し、この補正した設定温度Tsetに基づいて補正後の目標吹き出し温度TAOを求める。演算処理部30aは、吹出口11c、11d、11eから吹き出される空気温度を補正後の目標吹き出し温度TAOに近づけるために、ブロワモータ12a、サーボモータ38、コンプレッサ20を制御する。
【0143】
次に、演算処理部30aは、ステップS170において、選択データベースの温熱感推定データを温熱感レベル差に基づいて更新して新規なデータベースを作成して記録部30bに記録する。
【0144】
このとき、演算処理部30aは、図12に示すように、温熱感推定データ以外に、ユーザ識別データ、特徴データ、正解値、および補正後の目標吹き出し温度TAOによって新規なデータベースを構成する。その後、演算処理部30aは、上述と同様に、ステップS180以降を実行する。
【0145】
以上説明した本実施形態によれば、記録部30bには、温熱感推定データ、およびユーザの特徴データがユーザ毎に記録されている。記録部30bに温熱感推定データが記録されていないユーザの場合には、演算処理部30aは、カメラ40で撮像された画像データに基づいて特徴データを抽出する。
【0146】
演算処理部30aは、ユーザ毎の温熱感推定データのうち、この抽出した特徴データに近い特徴データを有するユーザの温熱感推定データを選択する。演算処理部30aは、この選択した温熱感推定データに基づいて温熱感推定値を求め、この求めた温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかける。
【0147】
以上により、記録部30bにデータベースが登録されていないユーザであっても、演算処理部30aは、温熱感推定値を求め、この求めた温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけることができる。
【0148】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、ステップS160で求めた補正後の目標吹き出し温度に吹出口11c、11d、11eからの空気温度を近づけるためにブロワモータ12a、サーボモータ38、コンプレッサ20を制御する例について説明した。
【0149】
これに代えて、本第3実施形態では、室内空調ユニット10による車室内の空調状態にオーバーシュートが生じることを抑えるために、補正後の目標吹き出し温度を補正した値を室内空調ユニット10の制御に用いる例について説明する。以下、説明の便宜上、室内空調ユニット10の制御に実際に用いるために補正後の目標吹き出し温度TAOを補正した値を補正後の目標吹き出し温度の実値という。
【0150】
本実施形態の演算処理部30aは、上記第1実施形態に対して図2中のステップS160の設定温度の補正/空調制御処理が相違する。そこで、以下、本実施形態では、演算処理部30aは、図13を参照して設定温度の補正/空調制御処理について説明する。
【0151】
まず、演算処理部30aは、図13のステップS161において、設定温度Tsetをユーザの温熱感レベルに基づいて補正した補正後の設定温度Tsetを求める。
【0152】
次に、演算処理部30aは、ステップS162において、補正後の設定温度Tsetに基づいて補正後の目標吹き出し温度を求める。以下、説明の便宜上、補正後の設定温度Tsetに基づいて補正する前の目標吹き出し温度を補正前の目標吹き出し温度という。補正前の目標吹き出し温度をTAOMとし、補正後の目標吹き出し温度をTAOG、補正後の目標吹き出し温度の実値をTAORとする。
【0153】
次に、演算処理部30aは、ステップS162において、補正前の目標吹き出し温度が補正後の目標吹き出し温度以上であるか否かを判定する。
【0154】
このとき、演算処理部30aは、ステップS163において、補正前の目標吹き出し温度が補正後の目標吹き出し温度以上であるとき、YESと判定する。
【0155】
次に、演算処理部30aは、ステップS164において、次の数式1に補正前の目標吹き出し温度、および補正後の目標吹き出し温度を代入して、補正前の目標吹き出し温度から補正後の目標吹き出し温度TAOを引いた差分値であるΔTAOaを求める。
【0156】
ΔTAOa=TAOM-TAOG・・・・(数式1)
次に、演算処理部30aは、次の数式2に、差分値および補正前の目標吹き出し温度を代入して補正後の目標吹き出し温度の実値を求める。
【0157】
TAOR=TAOM-ΔTAOa×Ka・・・・(数式2)
ここで、Kaは零よりも大きく、かつ1よりも小さい係数である。Kaとしては、0.75が用いられている。
【0158】
このように補正前の目標吹き出し温度が補正後の目標吹き出し温度以上である場合に、補正後の目標吹き出し温度の実値であるTAORを求めることができる。
【0159】
また、演算処理部30aは、ステップS163において、補正前の目標吹き出し温度が補正後の目標吹き出し温度未満であるとき、NOと判定する。
【0160】
次に、演算処理部30aは、ステップS165において、次の数式3に補正前の目標吹き出し温度、および補正後の目標吹き出し温度を代入して、補正後の目標吹き出し温度TAOから補正前の目標吹き出し温度を引いた差分値であるΔTAObを求める。
【0161】
ΔTAOb=TAOG-TAOM・・・・(数式3)
次に、演算処理部30aは、次の数式4に、差分値および補正前の目標吹き出し温度を代入して補正後の目標吹き出し温度の実値を求める。
【0162】
TAOR=TAOM+ΔTAOb×Kb・・・・(数式4)
ここで、Kbは零よりも大きく、かつ1よりも小さい係数である。Kbとしては、0.75が用いられている。
【0163】
このように補正前の目標吹き出し温度が補正後の目標吹き出し温度未満である場合に、補正後の目標吹き出し温度の実値であるTAORを求めることができる。
【0164】
次に、演算処理部30aは、ステップS166において、上記補正後の目標吹き出し温度の実値に吹出口11c、11d、11eからの空気温度を近づけるためにブロワモータ12a、サーボモータ38、コンプレッサ20を制御する。
【0165】
以上説明した本実施形態によれば、空調ケーシング11の吹出口11c、11d、11eから車室内に吹き出される空気温度にオーバーシュートが生じることを未然に抑制することができる。
【0166】
(他の実施形態)
(1)上記第1、第2、第3実施形態では、本発明の空調装置を車両用空調装置とする例について説明したが、これに代えて、本発明の空調装置を家庭用、ビル用などの設置型空調装置にしてもよい。或いは、車両以外の移動体(例えば、飛行機)、農作業機、建設機械等の空調装置を本発明の空調装置としてもよい。
(2)上記第1、第2、第3実施形態では、演算処理部30aは、3回に亘って、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促す例について説明した。
【0167】
しかし、これに代えて、演算処理部30aは、温熱感推定値が正しいか否かをユーザに問いかけ、正解値をユーザに申告させることをユーザに対して促す回数を1回、2回、或いは4回以上としてもよい。
(3)上記第1、第2、第3実施形態では、ユーザ識別データとして顔認証データを用いた例について説明したが、これに代えて、ユーザ識別データとして指紋認証データを用いてもよい。
(4)なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、センサから車両の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、車両の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【符号の説明】
【0168】
30a 演算処理部
30b 記録部
39 マイク
40 カメラ
41 表示パネル
42 熱画像素子
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