(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164329
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ロボット制御装置及びロボット制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20221020BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/4155 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069751
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】小谷 明弘
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB03
3C269CC01
3C269CC09
3C269EF02
3C269EF25
3C269MN02
3C269MN08
3C269MN26
3C269QB17
3C707BS12
3C707LS06
3C707MT05
(57)【要約】
【課題】一連の命令を記述する教示プログラムを命令単位でキューイングしながらロボットの駆動制御を行う際に、ロボットをより円滑に駆動可能なロボット制御装置及びロボット制御プログラムを提供する。
【解決手段】ロボット制御装置14は、一連の命令を記述する教示プログラムPの実行規則に従って、教示プログラムPを命令単位でキューイングしながら命令順に実行することでロボット12のプレイバック制御を行うプレイバック実行部38(実行部)と、プレイバック実行部38によるプレイバック制御の実行中に、プロセッサ22又はメモリ24の使用状態に応じて実行規則を更新する実行規則更新部36(更新部)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及びメモリを用いてロボットの駆動制御を行うロボット制御装置であって、
一連の命令を記述する教示プログラムの実行規則に従って、前記教示プログラムを命令単位でキューイングしながら命令順に実行することで前記ロボットのプレイバック制御を行う実行部と、
前記実行部による前記プレイバック制御の実行中に、前記プロセッサ又は前記メモリの使用状態に応じて前記実行規則を更新する更新部と、
を備えるロボット制御装置。
【請求項2】
前記使用状態の測定結果を示す測定値を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記測定値を用いて該測定値の測定時点よりも後の使用状態を予測し、該使用状態の予測結果を示す予測値を算出する予測部と、
をさらに備え、
前記更新部は、前記予測部による予測を通じて算出された前記予測値を用いて前記実行規則を更新する、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記予測値は、前記プロセッサ又は前記メモリの使用率が高くなるにつれて値が大きくなるように定義され、
前記更新部は、前記予測値が第一閾値を上回っている間、該第一閾値を上回っていない場合と比べて、前記プロセッサ又は前記メモリへの負荷が低くなるように前記実行規則を更新する、
請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記予測値は、前記プロセッサ又は前記メモリの使用率が高くなるにつれて値が大きくなるように定義され、
前記更新部は、前記予測値が第二閾値を下回っている間、該第二閾値を下回っていない場合と比べて、前記プレイバック制御の所要時間が短くなるように前記実行規則を更新する、
請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記実行規則は、キューイング可能な最大命令数、命令間の小休止の長さ又は頻度、及び、命令の実行形式の種類のうちの少なくとも一つの実行パラメータにより定められる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
プロセッサ及びメモリを用いてロボットの駆動制御を行うコンピュータを、
一連の命令を記述する教示プログラムの実行規則に従って、前記教示プログラムを命令単位でキューイングしながら命令順に実行することで前記ロボットのプレイバック制御を行う実行部、
前記実行部による前記プレイバック制御の実行中に、前記プロセッサ又は前記メモリの使用状態に応じて前記実行規則を更新する更新部、
として機能させるロボット制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置及びロボット制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ティーチングプレイバック方式によりロボットの駆動制御を行うロボット制御装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。このティーチングプレイバック方式の駆動制御は、作業者がロボットを直接動かしながら一連の動作を教示し、複数の命令を記述する教示プログラムを生成する「教示モード」と、この教示プログラムを命令順に実行してロボットに一連の動作を再現させる「再生モード」と、から構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-114601号公報
【特許文献2】特開2016-016474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の制御装置は、一連の命令を記述する教示プログラムを命令単位でキューイングしながら命令順に実行することで、ティーチングプレイバック方式の駆動制御を行う。ところが、制御装置が用いるプロセッサやメモリの使用状態によっては、ロボットの動作が円滑に行われない場合がある。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、一連の命令を記述する教示プログラムを命令単位でキューイングしながらロボットの駆動制御を行う際に、ロボットをより円滑に駆動可能なロボット制御装置及びロボット制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様におけるロボット制御装置は、プロセッサ及びメモリを用いてロボットの駆動制御を行う装置であって、一連の命令を記述する教示プログラムの実行規則に従って、前記教示プログラムを命令単位でキューイングしながら命令順に実行することで前記ロボットのプレイバック制御を行う実行部と、前記実行部による前記プレイバック制御の実行中に、前記プロセッサ又は前記メモリの使用状態に応じて前記実行規則を更新する更新部と、を備える。
【0007】
本発明の第二態様におけるロボット制御装置は、前記使用状態の測定結果を示す測定値を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記測定値を用いて該測定値の測定時点よりも後の使用状態を予測し、該使用状態の予測結果を示す予測値を算出する予測部と、をさらに備え、前記更新部は、前記予測部による予測を通じて算出された前記予測値を用いて前記実行規則を更新する。
【0008】
本発明の第三態様におけるロボット制御装置では、前記予測値は、前記プロセッサ又は前記メモリの使用率が高くなるにつれて値が大きくなるように定義され、前記更新部は、前記予測値が第一閾値を上回っている間、該第一閾値を上回っていない場合と比べて、前記プロセッサ又は前記メモリへの負荷が低くなるように前記実行規則を更新する。
【0009】
本発明の第四態様におけるロボット制御装置では、前記予測値は、前記プロセッサ又は前記メモリの使用率が高くなるにつれて値が大きくなるように定義され、前記更新部は、前記予測値が第二閾値を下回っている間、該第二閾値を下回っていない場合と比べて、前記プレイバック制御の所要時間が短くなるように前記実行規則を更新する。
【0010】
本発明の第五態様におけるロボット制御装置では、前記実行規則は、キューイング可能な最大命令数、命令間の小休止の長さ又は頻度、及び、命令の実行形式の種類のうちの少なくとも一つの実行パラメータにより定められる。
【0011】
本発明の第六態様におけるロボット制御プログラムは、プロセッサ及びメモリを用いてロボットの駆動制御を行うコンピュータを、一連の命令を記述する教示プログラムの実行規則に従って、前記教示プログラムを命令単位でキューイングしながら命令順に実行して前記ロボットのプレイバック制御を行う実行部、前記実行部による前記プレイバック制御の実行中に、前記プロセッサ又は前記メモリの使用状態に応じて前記実行規則を逐次的に更新する更新部、として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一連の命令を記述する教示プログラムを命令単位でキューイングしながらロボットの駆動制御を行う際に、ロボットをより円滑に駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態におけるロボット制御装置が組み込まれたロボットシステムの全体構成図である。
【
図2】
図1に示すプロセッサの機能ブロック図である。
【
図3】
図2のプレイバック実行部による動作の一例を示すタイムチャートである。
【
図4】実行規則の更新制御の一例を示すフローチャートである。
【
図5】プロセッサ使用率の予測結果の一例を示す図である。
【
図6】実行パラメータの更新規則の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0015】
[ロボットシステム10の構成]
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態におけるロボット制御装置14が組み込まれたロボットシステム10の全体構成図である。このロボットシステム10は、具体的には、ロボット12と、ロボット制御装置14と、ティーチングペンダント16と、を含んで構成される。
【0016】
ロボット12は、複数の関節軸(
図1の例では、六軸)を有する垂直関節型ロボットである。ロボット12の手先には、図示しないエンドエフェクタが装着される。ロボット12は、ロボット制御装置14による指令に応じて、複数の関節軸を独立して駆動することで、ワークの把持・移動、溶接、塗装を含む様々な作業を行うことができる。
【0017】
ロボット制御装置14は、ロボット12の制御を司るコンピュータである。ロボット制御装置14には、オペレーティングシステム(OS)や、このOS下で起動可能な複数のアプリケーションがインストールされる。このロボット制御装置14は、具体的には、コネクタ18と、通信I/F20と、プロセッサ22と、メモリ24と、を備える。各構成要素の個数は、
図1の例では一つであるが、二つ以上であってもよい。
【0018】
コネクタ18は、電力ケーブル又は通信ケーブルを介して、ロボット12と電気的に接続するための端子である。これにより、ロボット制御装置14は、ロボット12に向けて電力や制御信号を供給するとともに、ロボット12に設けられる各種センサからの測定信号を取得する。
【0019】
通信I/F20は、外部装置との間で通信を行うためのインターフェースである。これにより、ロボット制御装置14は、例えば、ティーチングペンダント16、図示しない作業端末又は上位装置との間でデータのやり取りを行うことができる。ここで、ティーチングペンダント16は、ロボット12のオンラインティーチングに用いられる入力機器である。その一方、オフラインティーチングの場合には、ティーチングペンダント16の構成が省略され得る。
【0020】
プロセッサ22は、CPU(Central Processing Unit)を含む汎用プロセッサであってもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やGPU(Graphics Processing Unit)を含む専用プロセッサであってもよい。メモリ24は、非一過性であってコンピュータ読み出し可能な記憶媒体であり、プロセッサ22が各構成要素を制御するのに必要なプログラム及びデータを記憶する。
【0021】
<機能ブロック図>
図2は、
図1に示すプロセッサ22の機能ブロック図である。プロセッサ22は、ティーチングプレイバック方式によりロボット12を制御可能に構成される。この場合、プロセッサ22は、教示モード及び再生モードを含む複数の制御モードを切り替えて実行する。ここで、「教示モード」は、実際の又は仮想上のロボット12を動かしながら一連の動作を教示し、複数の命令を記述する教示プログラムPを生成する制御モードである。また、「再生モード」とは、教示プログラムPを命令順に実行してロボット12に一連の動作を再現させる制御モードである。
【0022】
このプロセッサ22は、メモリ24に格納されたロボット制御プログラムを読み出して実行することで、プログラム生成部30、測定値取得部32(取得部)、使用状態予測部34(予測部)、実行規則更新部36(更新部)及びプレイバック実行部38(実行部)として機能する。ここで、プログラム生成部30は「教示モード」の実行に伴って動作する一方、残りの機能部は「再生モード」の実行に伴って動作する。
【0023】
プログラム生成部30は、作業者によるティーチングペンダント16(
図1)の教示操作を受け付けることで、一連の命令を示す教示プログラムPを生成する。教示の手法は、PTP(Point To Point)あるいはCP(Continuous Path)のいずれであってもよい。この教示プログラムPは、プロセッサ22が読み出し可能な状態にてメモリ24に格納される。命令の実行単位(つまり、ブロック単位)は、動作の種類に応じて様々に設定され得る。
【0024】
測定値取得部32は、定期的又は不定期に、ロボット制御装置14が備えるハードウェア資源、より詳しくは、プロセッサ22及びメモリ24のうちの少なくとも一方の使用状態の測定結果を示す測定値を取得する。この使用状態は、使用量の絶対値や相対値のいずれであってもよいし、使用量の時間変化を示す変化量であってもよい。
【0025】
使用量の相対値として、例えば、[1]プロセッサ22の使用率(以下、プロセッサ使用率)、[2]オペレーティングシステムによるメモリ24の使用率(以下、システム側メモリ使用率)、[3]ロボット制御プログラムによるメモリ24の使用率(以下、アプリ側メモリ使用率)などが挙げられる。プロセッサ使用率及びシステム側メモリ使用率はそれぞれ、オペレーティングシステムのAPI(Application Programming Interface)を通じて提供される。一方、アプリ側メモリ使用率は、プレイバック実行部38を通じて提供される。
【0026】
使用状態予測部34は、測定値取得部32により取得された測定値を用いて、該測定値の測定時点よりも後の使用状態を予測する。この予想を通じて、プロセッサ22又はメモリ24の使用状態の予測結果を示す予測値が算出される。使用状態予測部34は、直近に取得された一の測定値を用いて予測値を算出してもよいし、過去に取得された測定値を含む測定値セットを用いて予測値を算出してもよい。後者の場合、使用状態予測部34は、測定値セットを用いて、測定値の時間変化を示す曲線(例えば、近似曲線又は補間曲線)を求め、得られた曲線から予測時点における予測値を算出してもよい。
【0027】
実行規則更新部36は、プレイバック実行部38によるプレイバック制御の実行中に、ロボット制御装置14が備えるプロセッサ22又はメモリ24の使用状態に応じて実行規則を更新する。この実行規則は、例えば、[1]キューイング可能な最大命令数、[2]命令間の小休止の長さ又は頻度、[3]命令の実行形式の種類のうちの少なくとも一つの実行パラメータにより定められる。ここで、「小休止」は、二つの命令間に挿入される待ち時間であってもよいし、一連の命令(つまり、命令セット)を繰り返して実行する際、二組の命令セット間に挿入される待ち時間であってもよい。また、「実行形式」は、高負荷向けの形式、低負荷向けの形式などが挙げられる。
【0028】
上記した測定値及び予測値が、プロセッサ22又はメモリ24の使用率が高くなるにつれて大きくなるように定義される場合、実行規則更新部36は、予測値が第一閾値を上回っている間、該第一閾値を上回っていない場合と比べて、プロセッサ22又はメモリ24への負荷が低くなるように実行規則を決定する。つまり、最大命令数がより少なくなり、小休止の時間がより長くなり、小休止の頻度がより高くなり、低負荷向けの実行形式になるように、それぞれの実行パラメータが決定される。
【0029】
あるいは、実行規則更新部36は、予測値が第二閾値(第一閾値よりも小さい値)を下回っている間、該第二閾値を下回っていない場合と比べて、プレイバック制御の所要時間が短くなるように実行規則を決定する。つまり、最大命令数がより多くなり、小休止の時間がより短くなり、小休止の頻度がより低くなり、高負荷向けの実行形式になるように、それぞれの実行パラメータが決定される。
【0030】
プレイバック実行部38は、実行規則更新部36により更新される実行規則に従って、複数の命令を記述する教示プログラムPを命令順に実行することで、ロボット12のプレイバック制御を行う。プレイバック実行部38は、プレイバック制御をそのまま継続する場合に、実行規則の更新を即時に反映させてもよいし、一連の命令が終了した直後に実行規則の更新を反映させてもよい。このプレイバック制御の具体例については後で説明する。
【0031】
[ロボット制御装置14の動作]
この実施形態におけるロボットシステム10は、以上のように構成される。続いて、このロボットシステム10の一部を構成するロボット制御装置14の動作について、
図3~
図6を参照しながら説明する。
【0032】
<プレイバック制御の説明>
図3は、
図2のプレイバック実行部38による動作の一例を示すタイムチャートである。プレイバック実行部38は、複数の命令を読み込んでキューイングしながら所定の順番に従って実行する。ここでは、キューイング可能な最大命令数(以下、「最大キュー数」ともいう)が5に設定される。プレイバック実行部38は、最初の命令C1が実行される直前(時間t<t1)に、五個分の命令C1~C5を実行可能な状態で読み出す。
【0033】
時間t=t1において、プレイバック実行部38は、実行待ち状態の命令C1~C5のうち最先の命令C1を実行する。この命令C1の実行によってキューに空きが発生するので、プレイバック実行部38は、まだキューイングされていない命令群のうち最先の命令C6を読み出す。
【0034】
時刻t=t2において、プレイバック実行部38は、命令C1の終了後、予め設定された長さ及び頻度にて小休止(つまり、待機処理)を行う。これにより、命令C2の実行が一時的に保留される。
【0035】
時刻t=t3において、プレイバック実行部38は、実行待ち状態の命令C2~C6のうち最先の命令C2を実行する。この命令C2の実行によってキューに空きが発生するので、プレイバック実行部38は、まだキューイングされていない命令群のうち最先の命令C7を読み出す。
【0036】
時刻t=t4において、プレイバック実行部38は、命令C2の終了後、実行待ち状態の命令C3~C7のうち最先の命令C3を実行する。以下、プレイバック実行部38は、命令の読み出し及び実行を同期的に又は非同期的に繰り返しながら、すべての命令が終了するまでプレイバック制御を継続する。
【0037】
<実行規則の更新制御>
続いて、実行規則の更新制御について、
図4のフローチャート並びに
図5及び
図6を参照しながら説明する。ここでは、この更新制御が、上記したプレイバック制御の実行中に、当該プレイバック制御とは並列的かつ独立に実行される場合を想定する。これに代えて、プレイバック制御及び更新制御が同期的に実行されてもよい。
【0038】
図4のステップSP10において、実行規則更新部36は、実行規則を定める実行パラメータを初期値(例えば、標準値)に設定する。そうすると、プレイバック実行部48は、それぞれ「標準」の実行パラメータに従ってプレイバック制御を開始する。
【0039】
ステップSP12において、プロセッサ22は、実行パラメータの更新タイミングが到来したか否かを確認する。更新タイミングがまだ到来していない場合(ステップSP12:NO)、当該タイミングが到来するまでステップSP12に留まる。一方、更新タイミングが到来した場合(ステップSP12:YES)、次のステップSP14に進む。
【0040】
ステップSP14において、測定値取得部32は、プロセッサ22又はメモリ24の使用状態を示す測定値(ここでは、「プロセッサ使用率」及び「システム側メモリ使用率」)を取得する。
【0041】
ステップSP16において、使用状態予測部34は、ステップSP14で取得された測定値を用いて、測定時点よりも後の使用状態を予測する。
【0042】
図5は、プロセッサ使用率の予測結果の一例を示す図である。グラフの横軸は時間(単位:s)を示すとともに、グラフの縦軸はプロセッサ使用率(単位:%)を示している。ここでは、プロセッサ使用率の測定値が、サンプリング間隔ΔTおきに逐次的に取得される。例えば、直近3回分の測定値がP1,P2,P3、今回分の測定値がP4、今回分の予測値がP5であると想定する。この場合、P1~P3における測定値の変動が小さく、P4にて上昇の兆候がみられる場合、P5が急激に増加するという予測結果が得られる。
【0043】
図4のステップSP18において、実行規則更新部36は、ステップSP16での予測を通じて算出された予測値を参照し、実行パラメータを更新する必要があるか否かを判定する。更新の必要がある場合(ステップSP18:YES)にはステップSP20に進む一方、更新の必要がない場合(ステップSP18:NO)にはステップSP20の実行をスキップする。
【0044】
ステップSP20において、実行規則更新部36は、算出された予測値に応じて、少なくとも一つの実行パラメータを更新する。そうすると、プレイバック実行部48は、更新された実行パラメータに従ってプレイバック制御を継続する。なお、既にキューイングされている命令はそのまま残してもよいし、一旦削除した後に再度読み込まれてもよい。
【0045】
図6は、実行パラメータの更新規則の一例を示す図である。この更新規則は、使用状態の組み合わせと、実行パラメータの組み合わせとの間の対応関係を示している。ここで、使用状態は、プロセッサ使用率(A)及びメモリ使用率(B)から構成される。プロセッサ使用率は、0≦A≦100のうちいずれかの値を取り得る。メモリ使用率は、「少」、「標準(中)」、「多」のいずれかのクラスに分類される。
【0046】
また、実行パラメータは、(1)最大キュー数、(2)小休止頻度、及び(3)実行形式から構成される。最大キュー数は、「少」、「標準(中)」、「多」のいずれかのクラスに分類される。小休止頻度は、「低」、「標準(中)」、「高」のいずれかのクラスに分類される。実行形式は、「低負荷用」、「標準」、「高負荷用」のいずれかのクラスに分類される。
【0047】
実行規則更新部36は、予測された使用状態が、
図6に示す七通り(No1~No7)の組み合わせのいずれに該当するかを確認し、該当する実行パラメータの組み合わせを特定すればよい。具体的には、「A=95」かつ「B=高」の場合、最大キュー数が「少」、小休止頻度が「高」、実行形式が「高負荷用」にそれぞれ決定される(No3)。あるいは、「A=20」かつ「B=低」の場合、最大キュー数が「多」、小休止頻度が「低」、実行形式が「低負荷用」にそれぞれ決定される(No7)。
【0048】
例えば、80<A≦100の関係を満たしている間(No2~4)、40≦A≦80の場合(No1)と比べて、プロセッサ22又はメモリ24への負荷が低くなるように実行パラメータが更新される。これにより、プロセッサ22又はメモリ24への過大な負荷に伴うプレイバック動作の遅延が生じにくくなる。
【0049】
また、0≦A<40の関係を満たしている間(No5~7)、40≦A≦100の場合(No1)と比べて、プレイバック制御の所要時間が短くなるように実行規則が更新される。これにより、プロセッサ22又はメモリ24への負荷が比較的低い状況下にて、プレイバック動作を速やかに遂行することができる。
【0050】
図4のステップSP22において、プロセッサ22は、プレイバック実行部38によるプレイバック動作が終了したか否かを確認する。まだ終了していない場合(ステップSP22:NO)、ステップSP12に戻って、当該動作が終了するまでステップSP12~SP22を順次繰り返す。一方、プレイバック実行部38の動作が終了した場合(ステップSP22:YES)、
図4のフローチャートによる一連の動作が終了する。
【0051】
[ロボット制御装置14による効果]
以上のように、この実施形態におけるロボット制御装置14は、ティーチングプレイバック方式によりロボット12の駆動制御を行う装置であって、一連の命令を記述する教示プログラムPの実行規則に従って、教示プログラムPを命令単位でキューイングしながら命令順に実行することでロボット12のプレイバック制御を行うプレイバック実行部38と、プレイバック実行部38によるプレイバック制御の実行中に、プロセッサ22又はメモリ24の使用状態に応じて実行規則を更新する実行規則更新部36と、を備える。
【0052】
また、この実施形態におけるロボット制御方法及びプログラムによれば、コンピュータとしてのロボット制御装置14が、一連の命令を記述する教示プログラムPの実行規則に従って、教示プログラムPを命令単位でキューイングしながら命令順に実行することでロボット12のプレイバック制御を行う実行ステップと、プレイバック制御の実行中に、プロセッサ22又はメモリ24の使用状態に応じて実行規則を更新する更新ステップ(
図4のSP20)と、を備える。
【0053】
このように、プロセッサ22又はメモリ24の使用状態に応じて実行規則を更新することで、使用状態に適した実行規則(つまり、キューイング規則)を動的に設定しながらプレイバック制御を実行可能となり、一連の命令を記述する教示プログラムPを命令単位でキューイングしながらロボット12の駆動制御を行う際に、ロボット12をより円滑に駆動させることができる。
【0054】
また、ロボット制御装置14は、使用状態の測定結果を示す測定値を取得する測定値取得部32と、測定値取得部32により取得された測定値を用いて該測定値の測定時点よりも後の使用状態を予測し、該使用状態の予測結果を示す予測値を算出する使用状態予測部34と、をさらに備え、実行規則更新部36は、使用状態予測部34による予測を通じて算出された予測値を用いて実行規則を更新してもよい。これにより、測定時点と予測時点の間のタイムラグを考慮した更新が可能となり、その分だけ更新のリアルタイムが高くなる。
【0055】
また、プロセッサ22又はメモリ24の使用率が高くなるにつれて値が大きくなるように定義される予測値に関して、実行規則更新部36は、予測値が第一閾値を上回っている間、該第一閾値を上回っていない場合と比べて、プロセッサ22又はメモリ24への負荷が低くなるように実行規則を更新してもよい。これにより、プロセッサ22又はメモリ24への過大な負荷に伴うプレイバック動作の遅延が生じにくくなる。
【0056】
また、プロセッサ22又はメモリ24の使用率が高くなるにつれて値が大きくなるように定義される予測値に関して、実行規則更新部36は、予測値が第二閾値を下回っている間、該第二閾値を下回っていない場合と比べて、プレイバック制御の所要時間が短くなるように実行規則を更新してもよい。これにより、プロセッサ22又はメモリ24への負荷が比較的低い状況下にて、プレイバック動作を速やかに遂行することができる。
【0057】
また、実行規則は、キューイング可能な最大命令数、命令間の小休止の長さ又は頻度、及び、命令の実行形式の種類のうちの少なくとも一つの実行パラメータにより定められてもよい。
【0058】
[変形例]
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0059】
上記した実施形態では、実行規則更新部36が予測値を用いて実行規則を更新する場合について説明したが、実行規則更新部36の入力値はこれに限られない。例えば、実行規則更新部36は、使用状態予測部34からの予測値及び測定値取得部32からの実測値の両方を用いて実行規則を逐次的に更新してもよい。あるいは、実行規則更新部36は、測定値取得部32からの実測値のみを用いて実行規則を逐次的に更新してもよい。この場合には、使用状態予測部34の構成が不要になる。
【0060】
上記した実施形態では、六軸の垂直多関節ロボットを例に挙げて説明したが、ロボット12の種類はこれに限られない。例えば、ロボット12は、七軸ロボット、水平多関節ロボット(いわゆるスカラロボット)、パラレルリンクロボット、あるいは直交ロボット(いわゆるガントリーロボット)のいずれであってもよい。また、本発明は、産業用ロボットに限られず、ティーチングプレイバック方式により駆動可能な様々な可動装置に適用され得る。
【符号の説明】
【0061】
10…ロボットシステム、12…ロボット、14…ロボット制御装置、22…プロセッサ、24…メモリ、32…測定値取得部(取得部)、34…使用状態予測部(予測部)、36…実行規則更新部(更新部)、38…プレイバック実行部(実行部)