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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164344
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
F02M25/08 311D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069774
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA20
3G144GA12
3G144GA13
(57)【要約】
【課題】燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、キャニスタの通気抵抗を抑制する技術を提供する。
【解決手段】エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタは、吸着材と、流入ポートと、大気ポートと、流出ポートと、複数の調整部と、連結部と、を備える。複数の調整部は、1又は複数の室のうちの少なくとも1つである対象室に、吸着材と共に配された棒状の部材である。連結部は、複数の調整部を連結する。また、連結部は、複数の調整部の端部から距離を空けた位置に設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、
前記1又は複数の室の各々に配される、燃料蒸気を吸着する吸着材と、
前記車両の燃料タンクから、前記1又は複数の室に前記燃料蒸気を流入させる流入ポートと、
前記車両の外部から、前記1又は複数の室に大気を流入させる大気ポートと、
前記大気ポートから流入した前記大気により、前記吸着材に吸着した前記燃料蒸気を前記エンジンに向けて流出させる流出ポートと、
前記1又は複数の室のうちの少なくとも1つである対象室に、前記吸着材と共に配された棒状の複数の調整部と、
前記複数の調整部を連結する連結部と、
を備え、
前記連結部は、前記複数の調整部の端部から距離を空けた位置に設けられる、キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャニスタであって、
前記複数の調整部は、同一又は略同一方向に直線状に延びる、キャニスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のキャニスタであって、
前記複数の調整部と前記連結部とは一体に形成される、キャニスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記連結部は、前記大気及び前記燃料蒸気の流れ方向に関して、前記複数の調整部の略中央に形成される、キャニスタ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記連結部は、前記大気及び前記燃料蒸気の流れ方向に関して、複数の位置に分散して配置される、キャニスタ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記複数の調整部と前記連結部とを、前記複数の調整部の前記大気及び前記燃料蒸気の流れ方向と直交する平面に投影したときの図形は、点対称である、キャニスタ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のキャニスタであって、
前記連結部は、前記大気及び前記燃料蒸気の流れ方向に関して、前記複数の調整部に対して斜めに配置される、キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭等の吸着材が配されたキャニスタが知られている。特許文献1には、キャニスタの所定の室に設けられた調整部材が開示されている。調整部材は、細長い複数の棒状部と結合部とを有している。結合部は、複数の棒状部の一端に設けられ、複数の棒状部を一体の部材として結合させる。各棒状部の付近では、流入した燃料蒸気、及び、パージエアが流れ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6591955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャニスタの室に充填された吸着材の広さ方向(つまり、ガス流れ方向と直交する方向)に関して、ガス流速の一様度が高いほど、燃料蒸気の吸着性能が高くなる。なぜならば、流速の大きい箇所に配置された吸着材は、早期に多くの燃料蒸気を吸着することとなるため、早期に吸着可能量が小さくなる。そのため、他の位置に配置された吸着材の吸着可能量に余裕があっても、その流速の大きい箇所では燃料蒸気が吸着されずに破過してしまうためである。ここで、ガス流速の一様度は、ガス流れ方向と直交する方向の断面において調整部材の占める割合が大きいほど低くなる。特許文献1のキャニスタでは、通気抵抗は十分に低下されている。しかしながら、燃料蒸気の破過をより低減することが望まれる。
【0005】
本開示の一局面は、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、キャニスタの通気抵抗を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、エンジンを有する車両に搭載され、1又は複数の室を有するキャニスタであって、吸着材と、流入ポートと、大気ポートと、流出ポートと、複数の調整部と、連結部と、を備える。吸着材は、1又は複数の室の各々に配され、燃料蒸気を吸着する。流入ポートは、車両の燃料タンクから、1又は複数の室に燃料蒸気を流入させる。大気ポートは、車両の外部から、1又は複数の室に大気を流入させる。流出ポートは、大気ポートから流入した大気により、吸着材に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させる。複数の調整部は、1又は複数の室のうちの少なくとも1つである対象室に、吸着材と共に配された棒状の部材である。連結部は、複数の調整部を連結する。また、連結部は、複数の調整部の端部から距離を空けた位置に設けられる。
【0007】
このような構成によれば、複数の調整部の端部には、連結部が存在しない。よって、複数の調整部の端部付近では、大気及び燃料蒸気の流れに偏りが生じにくくなる。室の端部近傍における流れの偏りを低減することで、室の中央部の流れの偏りが大きい場合と比較して、燃料の破過が抑制される。したがって、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、キャニスタの通気抵抗を抑制することができる。
【0008】
上述したキャニスタにおいて、複数の調整部は、同一又は略同一方向に直線状に延びてもよい。このような構成によれば、大気及び燃料蒸気の流れを同一方向に促すことができる。したがって、キャニスタの通気抵抗を抑制することができる。
【0009】
上述したキャニスタにおいて、複数の調整部と連結部とは一体に形成されてもよい。このような構成によれば、複数の調整部と連結部とを強固に接続することができる。
上述したキャニスタにおいて、連結部は、大気及び燃料蒸気の流れ方向に関して、複数の調整部の略中央に形成されてもよい。このような構成によれば、大気及び燃料蒸気の流れの偏りを良好に抑制することができる。
【0010】
上述したキャニスタにおいて、連結部は、大気及び燃料蒸気の流れ方向に関して、複数の位置に分散して配置されてもよい。このような構成によれば、吸着材を室に充填する際、連結部に吸着材が引っかかることが抑制されるため、吸着材をスムーズに充填することができる。
【0011】
上述したキャニスタにおいて、複数の調整部と連結部とを、複数の調整部の大気及び燃料蒸気の流れ方向と直交する平面に投影したときの図形は、点対称であってもよい。このような構成によれば、キャニスタに調整部と連結部とを組み付けるときに、上述した流れ方向に沿う軸を中心として180°回転させて組み付けても、調整部の位置は同じ位置になる。したがって、複数の調整部と連結部とを回転して組み付けたとしても燃料蒸気の流れの変化が小さいので、そのような組み付けが許容される結果、組み付け作業を容易にすることができる。
【0012】
上述したキャニスタにおいて、連結部は、大気及び燃料蒸気の流れ方向に関して、複数の調整部に対して斜めに配置されてもよい。このような構成によれば、吸着材を室に充填する際、連結部に吸着材が引っかかることが抑制されるため、吸着材をスムーズに充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のキャニスタを側方から見た断面図である。
図2図2Aは、第1実施形態の調整部材の斜視図である。図2Bは、調整部材におけるIIB-IIB断面図である。
図3図3A,3Bは、第1実施形態の調整部材の斜視図である。
図4図4A~4Fは、調整部材における棒状部の斜視図である。図4Gは、ペレットの斜視図である。
図5】調整部材を射出成形するときの模式図である。
図6】調整部材を一方向側にのみ長くして形成したときの模式図である。
図7】第2実施形態のキャニスタを側方から見た断面図である。
図8図8Aは、第2実施形態の調整部材の斜視図である。図8Bは、調整部材におけるVIIIB-VIIIB断面図である。図8Cは、調整部材におけるVIIIC-VIIIC断面図である。
図9図9A,9Bは、第2実施形態の調整部材の斜視図である。
図10】第3実施形態の調整部材の図である。図10Aは正面図である。図10Bは側面図である。図10Cは斜視図である。図10DはXD-XD断面図である。
図11】変形例の調整部材の図である。図11Aは正面図である。図11Bは側面図である。図11Cは斜視図である。図11DはXID-XID断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
[キャニスタの構成について]
図1に示す第1実施形態のキャニスタ1は、エンジンを有する車両に搭載される。以後、キャニスタ1が搭載された車両を、自車両と記載する。キャニスタ1は、合成樹脂製の容器10を有する。容器10は、第1室20と、第2室30と、第3室40と、を備える。各室は、内部空間を有する。各室の内部空間には、燃料蒸気を吸着するための吸着材が配される。吸着材は、粉状又は粒状の複数の物体の集合体である。複数の物体とは、例えば、活性炭であっても良いし、活性炭から生成された物体であっても良い。また、複数の物体とは、例えば、燃料蒸気を吸着できるものであれば、活性炭以外の物質であっても良い。
【0015】
容器10の一端には、流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられている。流入ポート11及び流出ポート12は、第1室20の内部空間と容器10の外部とを繋ぐ。また、大気ポート13は、第3室40の内部空間と容器10の外部とを繋ぐ。
【0016】
流入ポート11は、自車両の燃料タンクに接続される。燃料タンクには、自車両のエンジンに供給される燃料が蓄積されている。該燃料から生じた燃料蒸気は、流入ポート11を介してキャニスタ1の内部に流入し、各室に配された吸着材に吸着する。これにより、キャニスタ1の内部に燃料が蓄積される。
【0017】
また、流出ポート12は、自車両のエンジンの吸気管に接続されている。流出ポート12は、大気ポート13から流入した大気により、吸着材60に吸着した燃料蒸気をエンジンに向けて流出させる。また、大気ポート13は、自車両の外部に繋がっている。そして、エンジンの吸気負圧により、大気ポート13を介して大気(以後、パージエア)がキャニスタ1の内部に流入する。パージエアの流入により、吸着材に吸着した燃料が脱離する。脱離した燃料は、パージエアと共に流出ポート12から吸気管に向けて流出する。これにより、活性炭に吸着していた燃料が除去され、活性炭が再生される。このようにして活性炭を再生することは、パージと呼ばれている。
【0018】
次に、キャニスタ1の構成について詳しく説明する。以後、キャニスタ1の容器10における流入ポート11、流出ポート12、及び、大気ポート13が設けられた側を、ポート側と記載する。また、容器10は、ポート側の反対側に開口を有している。該開口は、蓋部材14により閉鎖されている。以後、ポート側の反対側(換言すれば、蓋部材14が設けられた側)を、蓋側と記載する。
【0019】
第1室20及びその内部空間は、一例として、略直方体形状、又は、円柱状である。該内部空間は、ポート側の端部が、流入ポート11及び流出ポート12に繋がっている。また、該内部空間のポート側の端部と蓋側の端部とには、それぞれ、フィルタ21,22が配されている。これらのフィルタ21,22の間は、吸着材60が配されている。
【0020】
また、第1室20の内部空間は、蓋側の端部が連通路15に繋がっている。連通路15は、蓋部材14に沿って延び、第1室20の内部空間と第2室30の内部空間とを繋ぐ。そして、第1室20の蓋側のフィルタ22と連通路15との間には、透過性を有する多孔板23が配されている。また、多孔板23と蓋部材14との間には、コイルばね16が配されている。コイルばね16は、多孔板23をポート側に向けて押し付けている。このため、キャニスタ1の内部では、流体は、連通路15を介して、第1室20の内部空間と第2室30の内部空間とを往来できる。
【0021】
また、第2室30及び第3室40は、第1室20に隣接して配され、蓋側からポート側に延びる細長い形状を有する。また、第2室30及び第3室40は、端部が隣接した状態で、蓋側からポート側に並ぶ。第2室30の内部空間と第3室40の内部空間とは、板状の仕切り部材18により隔てられている。仕切り部材18は、透過性を有している。仕切り部材18は、例えば、多孔板及び/又はフィルタ等を含んでいても良い。このため、キャニスタ1の内部では、流体は、仕切り部材18を通過して、第2室30の内部空間と第3室40の内部空間とを往来できる。
【0022】
また、第2室30の蓋側の端部、及び、第3室40のポート側の端部には、それぞれ、フィルタ31,41が配されている。そして、これらの室の内部空間におけるフィルタ31,41と仕切り部材18との間には、吸着材60が配されている。
【0023】
また、第2室30の蓋側に配されたフィルタ31と連通路15との間には、透過性を有する多孔板32が配されている。そして、多孔板32と蓋部材14との間には、コイルばね17が配されている。コイルばね17は、多孔板32をポート側に向けて押し付けている。
【0024】
また、第3室40の内部空間は、ポート側の端部が大気ポート13に繋がっている。また、第3室40及びその内部空間は、幅が一定である細長い空間である。第1実施形態では、第3室40及びその内部空間は、一例として直方体状である。しかし、第3室40及びその内部空間は、他の形状を有していても良い。一例として、第3室40及びその内部空間は、円柱状であっても良い。
【0025】
[調整部材について]
本開示のキャニスタは、当該キャニスタに設けられた1又は複数の室のうちの少なくとも1つが対象室となる。対象室には、吸着材と共に調整部材50が配される。第1実施形態では、一例として、第3室40が対象室となっている。無論、第3室40に替えて、第1室20及び第2室30が、対象室であっても良い。また、第1室20、第2室30及び第3室40のうちの複数が、対象室であっても良い。以下では、第3室40に配された調整部材50について説明する。
【0026】
図1に示すように、第3室40の内部空間(以後、第3空間42)には、吸着材60と共に調整部材50が配される。
図2A,2B,3A,3Bに示すように、調整部材50は、棒状の複数の棒状部51と結合部52とを有する。
【0027】
複数の棒状部51は、直線状、又は、略直線状に延びる。略直線状とは、全体としておおよそ直線状である形態を意味する。例えば、棒状部51の一部又は全部が小さい曲率で曲がっていても良い。別の言い方をすると、複数の棒状部51が一見して直線状であるように見えるものが含まれる。また、複数の棒状部51は、同一方向、又は、略同一方向に延びる。より詳しくは、複数の棒状部51は、第3空間42のポート側から蓋側に向かう方向、又は、該方向と略同一の方向に延びる。換言すれば、複数の棒状部51は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向、又は、該方向と略同一の方向に沿って配置される。すなわち、複数の棒状部51の長手方向が、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向と同一であっても良いし、当該方向に対して小さい角度を有していても良い。
【0028】
また、各棒状部51は、一例として、図2Aのように円柱状となっている。しかし、各棒状部51は、他の形状であっても良い。具体的には、例えば、各棒状部51は多角柱状であっても良い。より詳しくは、各棒状部51は、図4Aのように三角柱状であっても良いし、図4B,4Cのように、底面が正方形又は長方形である四角柱状であっても良い。また、各棒状部51は、例えば、図4Dのように底面が楕円である円柱状であっても良い。また、各棒状部51は、例えば、図4Eのように帯状の形状を有していても良いし、図4Fのように先細りの形状を有していても良い。
【0029】
結合部52は、複数の棒状部51の端部から離れた位置に設けられ、複数の棒状部51を一体の部材として結合させる。本実施形態では、結合部52は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向に関して、複数の棒状部51の略中央に設けられる。これにより、各棒状部51同士の位置及び各棒状部51の向きが固定される。なお、複数の棒状部51の略中央とは、複数の棒状部51のうちの最もポート側に近い端部と、最も蓋側に近い端部との中間の位置近傍のことをいう。
【0030】
また、各棒状部51の周囲の空間(換言れば、側方の空間)は、互いに連通した状態となる。すなわち、各棒状部51は、他の棒状部に対し一定以上の距離を隔てて配されている。このため、第3空間42には、複数の棒状部51により囲まれることにより、第3空間42における他の空間から隔離された状態となる空間が存在しない。
【0031】
また、複数の棒状部51は、第3空間42の側面に接する壁部(以後、側壁)から一定以上の距離を隔てた状態で配される。また、複数の棒状部51は、第3空間42の幅方向の中央、及び、中央周辺を通過する状態で配される。
【0032】
また、複数の棒状部51は、第3空間42のポート側の端面から、蓋側の端面にわたって延びた状態となる。なお、端面とは、第3空間42の端部に接する壁部である。すなわち、複数の棒状部51の一端(換言すれば、結合部52)は、第3空間42のポート側の端面(換言すれば、フィルタ41)に接するか、或いは、端面の付近に位置する。一方、複数の棒状部51の他端は、第3空間42の蓋側の端面(換言すれば、仕切り部材18)に接するか、或いは、端面の付近に位置する。
【0033】
なお、第3室40に配される吸着材60は、予め定められた形状を有する粒状の複数の物体の集合体であっても良い。調整部材50は、吸着材60に取り囲まれている。具体的には、例えば、吸着材60は、複数のペレット61の集合体であっても良い。ペレット61とは、粒状の活性炭である。ペレット61は、粉状の活性炭をバインダと共に混練し、所定の形状に成形することで生成される。なお、図4Gに示すように、第1実施形態では、ペレット61は、一例として円柱状となっている。そして、ペレット61の底面の径は、一例として2mm程度であっても良い。また、ペレット61の2つの底面の間隔(換言すれば、長さ)は、一例として3~5mm程度であっても良い。なお、ペレット61は、他の形状を有していても良い。また、第3室40には、例えば、粉状の活性炭等、ペレット61以外の吸着材が配されても良い。
【0034】
そして、隣り合う複数の棒状部51の間隔は、ペレット61のサイズに基づき定められる。具体的には、該間隔は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。
【0035】
また、各棒状部51の側部と第3空間42の側壁との間の距離の最小値もまた、ペレット61のサイズに基づき定められる。具体的には、該最小値は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。換言すれば、複数の棒状部51のうちの最も外側に位置する1又は複数の棒状部の側面と、第3空間42の側壁との間の距離は、例えば、ペレット61の底面の径、又は、ペレット61の長さのいずれかよりも長くても良い。
【0036】
[1-2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)結合部52は、複数の棒状部51の端部から距離を空けた位置に設けられる。このような構成によれば、複数の棒状部51の端部には、結合部52が存在しない。よって、複数の棒状部51の端部付近では、パージエア及び燃料蒸気の流れに偏りが生じにくくなる。対象室の端部近傍における流れの偏りを低減することで、対象室の中央部の流れの偏りが大きい場合と比較して、燃料の破過が抑制される。したがって、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、キャニスタ1の通気抵抗を抑制することができる。
【0037】
(1b)複数の棒状部51は、同一又は略同一方向に直線上に延びている。このような構成によれば、パージエア及び燃料蒸気の流れを同一方向に促すことができる。したがって、キャニスタ1の通気抵抗を抑制することができる。
【0038】
(1c)複数の棒状部51と結合部52とは一体に形成されている。このような構成によれば、複数の棒状部51と結合部52とを強固に接続することができる。
(1d)結合部52は、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向に関して、複数の棒状部51の略中央に形成される。このような構成によれば、パージエア及び燃料蒸気の流れの偏りを良好に抑制することができる。
【0039】
[1-3.調整部材を射出成形することのメリット]
複数の棒状部51及び結合部52は、一例として、射出成形によって製造することができる。金型に樹脂を射出した後、図5に示すように、複数の棒状部51の長手方向の両側から金型90,91を抜くことで、複数の棒状部51及び結合部52は、一体として形成される。なお射出成形により製造する場合、成形品を金型からスムーズに取り出せるように、棒状部51の先端は、結合部52側の根元(結合部52側)と比較して直径が小さくなる。
【0040】
ここで、棒状部の長さを延ばす方策について検討する。図6に示すように、結合部57が複数の棒状部56の一方の端部に設けられた調整部材55aと、調整部材55aよりも棒状部56を延長させた調整部材55bを例示する。調整部材55bのように棒状部56の長さを延ばした場合、調整部材55aと比較して、射出成形をする際に成形不良が生じやすくなる。例えば調整部材55bでは、複数の棒状部56の結合部57側511の直径が反対側の先端512の直径よりも大きくなることで、板厚差が生じ、いわゆるヒケが生じやすくなる。
【0041】
一方、上述した本実施形態のように、結合部52の両側に棒状部51を設けるように形成すると、複数の棒状部51の結合部52側の直径と反対側の先端の直径との差を大きくしなくても棒状部51全体としての長さを延ばすことが可能となる。よって、棒状部51の長さを長くした調整部材50を、成形不良の発生を抑制しつつ、形成することが可能となる。なお、図5及び図6では、先細りの形状を有する複数の棒状部51を例示したが、各棒状部51は、他の形状であっても良い。
【0042】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
図7図8及び図9に示すように、第2実施形態のキャニスタ1は、調整部材50に替えて、調整部材50とは結合部の形態が異なる調整部材70備える点で、第1実施形態と相違する。なお、第2実施形態のキャニスタ1における他の部分は、第1実施形態と同様の構成を有する。以下では、第2実施形態のキャニスタ1における第1実施形態との相違点について説明する。
【0043】
調整部材70は、複数の棒状部71と、結合部72と、を有する。結合部72は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向に関して、複数の位置に分散して配置される。本実施形態では、結合部72は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向に関して、異なる2つの位置に分散して配置される。図8Bに示されるように、長さ方向の第1の位置では、結合部72aが6つの棒状部71を連結している。一方、図8Cに示されるように、長さ方向の第2の位置では、結合部72bが、6つずつ、棒状部71を連結している。そして、2つの棒状部71aは、結合部72a及び結合部72bの両方に繋がっているため、全ての棒状部が繋がる。複数の棒状部71と結合部72とを、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向と直交する平面に投影したときの図形は、点対称である。
【0044】
[2-2.効果]
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。
(2a)結合部72は、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向に関して、複数の位置に分散して配置される。このような構成によれば、流れ方向の同じ位置に結合部が形成される場合よりも、複数の棒状部71と結合部72との間に隙間ができやすい。よって、吸着材を対象室に充填する際、結合部72に吸着材が引っかかることが抑制されるため、吸着材をスムーズに充填することができる。
【0045】
(2b)複数の棒状部71と結合部72を、複数の棒状部71のパージエア及び燃料蒸気の流れ方向と直交する平面に投影したときの図形は、点対称である。このような構成によれば、キャニスタ1に複数の棒状部71と結合部72とを組み付けるときに、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向に沿う軸を中心として180°回転させて組み付けても、複数の棒状部71の位置は同じ位置になる。したがって、複数の棒状部71と結合部72とを回転して組み付けたとしても燃料蒸気の流れの変化が小さいので、そのような組み付けが許容される結果、組み付け作業を容易にすることができる。
【0046】
[3.第3実施形態]
[3-1.第1実施形態との相違点]
図10に示すように、第3実施形態のキャニスタ1は、調整部材50に替えて、調整部材50とは結合部の形態が異なる調整部材80備える点で、第1実施形態と相違する。なお、第3実施形態のキャニスタ1における他の部分は、第1実施形態と同様の構成を有する。以下では、第3実施形態のキャニスタ1における第1実施形態との相違点について説明する。
【0047】
調整部材80は、複数の棒状部81と、結合部82と、を有する。結合部82は、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向に関して、複数の棒状部81に対して斜めに配置される。
【0048】
[3-2.効果]
第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果が得られる。
(3a)結合部82は、パージエア及び燃料蒸気の流れ方向に関して、複数の棒状部81に対して斜めに配置される。このような構成によれば、吸着材60を対象室に充填する際、吸着材60が結合部82の斜面をすべって下方に落ちやすい。よって、結合部82に吸着材60が引っかかることが抑制されるため、吸着材をスムーズに充填することができる。
【0049】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0050】
(4a)第1~第3実施形態のキャニスタ1は、3つの室を有する。しかし、1つの室、2つの室、又は、4つ以上の室を有するキャニスタにおいても、少なくとも1つの室を、調整部材50が配される対象室として構成しても良い。
【0051】
(4b)第1~第3実施形態のキャニスタ1では、複数の棒状部51,71,81は、燃料蒸気及びパージエアの流下方向に沿って延びた状態で、少なくとも1つの対象室に配される。また、複数の棒状部51,71,81は、直線状又は略直線状に延びる。しかしながら、複数の棒状部51,71,81は、例えば、1か所以上で湾曲又は屈曲した状態で、流下方向に延びていても良い。また、複数の棒状部51,71,81は、例えば、流下方向に螺旋状に延びていても良い。また、複数の棒状部51,71,81は、それぞれ、異なる形状を有していても良い。
【0052】
また、複数の棒状部51,71,81は、燃料蒸気及びパージエアの流下方向とは異なる方向に沿って延びていても良い。また、複数の棒状部51,71,81の各々が延びる方向は、互いに異なっていても良い。また、複数の棒状部51,71,81の各々は、2種類以上の方向のうちのいずれかに沿って延びていても良い。
【0053】
(4c)第1~第3実施形態では、複数の棒状部51,71,81と結合部52,72,82とが一体に形成される構成を例示した。しかし、複数の棒状部51,71,81と結合部52,72,82とは、一体に形成されていなくても良い。例えば、複数の棒状部51,71,81と結合部52,72,82とは、別々の金型から形成されても良いし、別々の素材で形成されていても良い。
【0054】
(4d)第1~第3実施形態では、複数の棒状部51,71,81が同一の長さである構成を例示した。しかし、各棒状部51,71,81の長さは、異なっていても良い。例えば、図11に示すように、複数の棒状部51,71,81のうち、内側の棒状部が外側の棒状部よりも短くなるように設計されていても良い。
【0055】
(4e)第1実施形態では、結合部52が、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向に関して、複数の棒状部51の略中央に設けられる構成を例示した。しかし、結合部52が設けられる位置はこれに限定されるものではない。例えば、結合部52は、複数の棒状部51の端部と中央との中間部分に設けられても良い。
【0056】
(4f)第2実施形態では、結合部72が、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向に関して、異なる2つの位置に分散して配置される構成を例示した。しかし、結合部72が配置される位置はこれに限定されるものではない。例えば、結合部72は、異なる3つ以上の位置に分散して配置されても良い。
【0057】
(4g)第2実施形態では、複数の棒状部71と結合部72とを、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向と直交する平面に投影したときの図形は、点対称である構成を例示した。しかし、複数の棒状部71と結合部72とを、パージエア及び燃料蒸気が流下する方向と直交する平面に投影したときの図形は、これに限定されるものではない。例えば、当該図形は、点対称でなくても良いし、線対称であっても良い。また、当該図形は、全く対象性がなくても良い。
【0058】
(4h)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0059】
[5.対応関係]
第1~第3実施形態において、複数の棒状部51,71,81が、複数の調整部の一例に相当し、結合部52,72,82が、連結部の一例に相当する。
【符号の説明】
【0060】
1…キャニスタ、10…容器、11…流入ポート、12…流出ポート、13…大気ポート、14…蓋部材、15…連通路、16,17…コイルばね、18…仕切り部材、20…第1室、21,22,31,41…フィルタ、23,32…多孔板、30…第2室、40…第3室、42…第3空間、50,55,70,80…調整部材、51,56,71,71a,81…棒状部、52,57,72,72a,72b,82…結合部、60…吸着材、61…ペレット、90,91…金型、511…結合部側、512…先端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
このような構成によれば、複数の調整部の端部には、連結部が存在しない。よって、複数の調整部の端部付近では、大気及び燃料蒸気の流れに偏りが生じにくくなる。室の端部近傍における流れの偏りを低減することで、室の端部近傍の流れの偏りが大きい場合と比較して、燃料の破過が抑制される。したがって、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、キャニスタの通気抵抗を抑制することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
[1-2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)結合部52は、複数の棒状部51の端部から距離を空けた位置に設けられる。このような構成によれば、複数の棒状部51の端部には、結合部52が存在しない。よって、複数の棒状部51の端部付近では、パージエア及び燃料蒸気の流れに偏りが生じにくくなる。対象室の端部近傍における流れの偏りを低減することで、対象室の端部近傍の流れの偏りが大きい場合と比較して、燃料の破過が抑制される。したがって、燃料の吸着及び脱離を良好に行いつつ、キャニスタ1の通気抵抗を抑制することができる。