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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164352
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】糸継処理装置及び給糸装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 69/06 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
B65H69/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069790
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】利山 裕介
(57)【要約】
【課題】糸品質の維持と動作精度の向上との両立を図りつつ、糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作の自動化を実現することができる、糸継処理装置及び給糸装置を提供する。
【解決手段】
糸継処理装置9Aは、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を糸継機構64にセットする第一セット動作前に、サクションノズル614に第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によってクリップ29に第一給糸パッケージP11の糸Yが係止させる第一糸掛動作と、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を糸継機構64にセットする第二セット動作前に、サクションノズル614に第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によってクリップ29に第二給糸パッケージP12の糸Yが係止させる第二糸掛動作との少なくとも一方の動作を含む糸掛処理を実行するように、サクションノズル614及びアーム部612を制御する。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸スタンドに装着された第一給糸パッケージの糸端と第二給糸パッケージの糸端とを接続すると共に、接続された糸が前記給糸スタンドに設けられた少なくとも一つの係止部に係止された状態とするための糸継処理装置であって、
糸を吸引することによって前記糸を保持する吸引保持部と、
前記吸引保持部を移動させる移動部と、
前記第一給糸パッケージの糸端と前記第二給糸パッケージの糸端とを接続する接続部と、
前記吸引保持部、前記移動部、及び前記接続部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一給糸パッケージの糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる第一セット動作と、
前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二給糸パッケージの糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる第二セット動作と、
前記第一セット動作及び前記第二セット動作の後に、前記接続部によって前記第一給糸パッケージの糸端と前記第二給糸パッケージの糸端とを接続させる接続動作と、
を含む糸継処理を実行するように、前記吸引保持部、前記移動部及び前記接続部を制御すると共に、
前記第一セット動作の前に、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの糸端を保持させ、前記移動部によって前記係止部に前記第一給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる第一糸掛動作と、
前記第二セット動作の前に、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの糸端を保持させ、前記移動部によって前記係止部に前記第二給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる第二糸掛動作と、
の少なくとも一方の動作を含む糸掛処理を実行するように、前記吸引保持部及び前記移動部を制御する、糸継処理装置。
【請求項2】
前記係止部は、第一係止部と第二係止部とを含んでおり、
前記第一糸掛動作は、前記第一係止部に前記第一給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二糸掛動作は、前記第二係止部に前記第二給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作である、
請求項1記載の糸継処理装置。
【請求項3】
前記第一係止部は、第一内層側用係止部と第一外層側用係止部とを含み、
前記第二係止部は、第二内層側用係止部と第二外層側用係止部とを含んでおり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第一糸掛動作は、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一内層側用係止部に前記第一給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第二糸掛動作は、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二外層側用係止部に前記第二給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第一セット動作は、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一給糸パッケージの内層側の糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第二セット動作は、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二給糸パッケージの外層側の糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記接続動作は、前記第一給糸パッケージの内層側の糸端と前記第二給糸パッケージの外層側の糸端とを接続させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第一糸掛動作は、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一外層側用係止部に前記第一給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第二糸掛動作は、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二内層側用係止部に前記第二給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第一セット動作は、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一給糸パッケージの外層側の糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第二セット動作は、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二給糸パッケージの内層側の糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記接続動作は、前記第一給糸パッケージの外層側の糸端と前記第二給糸パッケージの内層側の糸端とを接続させる動作である、請求項2記載の糸継処理装置。
【請求項4】
第一給糸パッケージが装着される第一装着部と、第二給糸パッケージが装着される第二装着部と、糸が係止される係止部と、を有する給糸スタンドと、
前記第一装着部に装着された前記第一給糸パッケージの糸端と、前記第二装着部に装着された前記第二給糸パッケージの糸端とを接続すると共に、接続された糸が前記係止部に係止された状態とするための糸継処理装置と、を備えた給糸装置であって、
前記係止部は、
前記第一給糸パッケージから引き出された糸を係止させるための少なくとも一つの第一係止部と、
前記第二給糸パッケージから引き出された糸を係止させるための少なくとも一つの第二係止部と、を含み、
前記糸継処理装置は、
糸を吸引することによって前記糸を保持する吸引保持部と、
前記吸引保持部を移動させる移動部と、
前記第一給糸パッケージの糸端と前記第二給糸パッケージの糸端とを接続する接続部と、
前記接続部、前記吸引保持部及び前記移動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一給糸パッケージの糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる第一セット動作と、
前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二給糸パッケージの糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる第二セット動作と、
前記第一セット動作及び前記第二セット動作の後に、前記接続部によって前記第一給糸パッケージの糸端と前記第二給糸パッケージの糸端とを接続させる接続動作と、
を含む糸継処理を実行するように、前記吸引保持部、前記移動部及び前記接続部を制御すると共に、
前記第一セット動作の前に、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一係止部に前記第一給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる第一糸掛動作と、
前記第二セット動作の前に、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二係止部に前記第二給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる第二糸掛動作と、
の少なくとも一方の動作を含む糸掛処理を実行するように、前記吸引保持部及び前記移動部を制御する、給糸装置。
【請求項5】
前記第一係止部は、前記第一装着部と前記第二装着部との間の中央よりも前記第一装着部側に配置され、
前記第二係止部は、前記第一装着部と前記第二装着部との間の中央よりも前記第二装着部側に配置されている、請求項4記載の給糸装置。
【請求項6】
前記第一係止部は、第一内層側用係止部と第一外層側用係止部とを含み、
前記第二係止部は、第二内層側用係止部と第二外層側用係止部とを含んでおり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第一糸掛動作は、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一内層側用係止部に前記第一給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第二糸掛動作は、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二外層側用係止部に前記第二給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第一セット動作は、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一給糸パッケージの内層側の糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第二セット動作は、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二給糸パッケージの外層側の糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記接続動作は、前記第一給糸パッケージの内層側の糸端と前記第二給糸パッケージの外層側の糸端とを接続させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第一糸掛動作は、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一外層側用係止部に前記第一給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第二糸掛動作は、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二内層側用係止部に前記第二給糸パッケージの糸が係止されるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第一セット動作は、前記吸引保持部によって前記第一給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第一給糸パッケージの外層側の糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記第二セット動作は、前記吸引保持部によって前記第二給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、前記移動部によって前記第二給糸パッケージの内層側の糸端が前記接続部にセットされるように前記吸引保持部を移動させる動作であり、
前記第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの前記接続動作は、前記第一給糸パッケージの外層側の糸端と前記第二給糸パッケージの内層側の糸端とを接続させる動作である、請求項4又は5記載の給糸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、糸継処理装置及び給糸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸パッケージから供給された複数の合繊糸に仮撚加工を施し、加工後の合繊糸を巻取装置において巻き取って巻取パッケージを形成する仮撚加工機が知られている。例えば、特許文献1には、複数の給糸パッケージを保持する給糸スタンドと、給糸パッケージから供給された糸に仮撚加工を施す加撚装置と、を有している仮撚加工機が開示されている。このような給糸スタンドでは、一のペッグに支持される給糸パッケージの合繊糸と、他のペッグに支持される給糸パッケージの合繊糸とを繋ぐ糸継処理(テール継ぎ処理)が行われている。これにより、一の給糸パッケージの合繊糸が無くなったとしても、他の給糸パッケージから合繊糸が供給されるようになるため、加撚装置に合繊糸を連続的に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7-68010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記糸継処理では、二つの給糸パッケージのそれぞれから糸が引き出されて、これらの糸がスプライサを用いて接続される。この接続完了時点において、給糸パッケージ間を繋ぐ糸部分は、相当弛んだ状態になっている。仮にこのままの状態で一方の給糸パッケージが空になると、パッケージ間で弛んでいた糸部分が加工部側へ送り出されるときに、当該糸部分の一部に局所的な負荷がかかったり、当該糸部分が周辺部品に接触したりすることで、糸の損傷や糸切れが生じ得る。このような不具合を回避するため、作業者は、スプライサによる糸接続後に、給糸スタンドの所定位置に設けられた係止部にパッケージ間の糸部分を係止させ、この係止状態で当該糸部分を引っ張る方向に一方又は両方の給糸パッケージを回すことで、弛みを解消している。
【0005】
このような一連の動作、すなわち、2つの給糸パッケージからそれぞれ糸を引き出してスプライサまで案内してセットし、これらの糸同士をスプライサによって接続させる糸継処理及び接続された糸を上述の係止部に係止させる糸掛処理を含む一連の動作を自動化することが検討されている。しかしながら、係止部に確実に係止させるように糸を緻密に動かすためには、保持部において糸が動かないように強く把持する必要があるが、この場合、把持された糸部分が傷ついてしまう。一方、例えばフックに糸を引っ掛けて保持する等、糸を傷つけないような態様で保持する場合には糸に不規則な弛みがあるので糸端を緻密に移動させることが難しくなり、係止部への糸掛けを失敗しやすくなる。
【0006】
そこで、本発明の一側面の目的は、糸品質の維持と動作精度の向上との両立を図りつつ、糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作の自動化を実現することができる、糸継処理装置及び給糸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る糸継処理装置は、給糸スタンドに装着された第一給糸パッケージの糸端と第二給糸パッケージの糸端とを接続すると共に、接続された糸が給糸スタンドに設けられた少なくとも一つの係止部に係止された状態とするための糸継処理装置であって、糸を吸引することによって糸を保持する吸引保持部と、吸引保持部を移動させる移動部と、第一給糸パッケージの糸端と第二給糸パッケージの糸端とを接続する接続部と、吸引保持部、移動部、及び接続部を制御する制御部と、を備え、制御部は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの糸端を保持させ、移動部によって第一給糸パッケージの糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる第一セット動作と、吸引保持部によって第二給糸パッケージの糸端を保持させ、移動部によって第二給糸パッケージの糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる第二セット動作と、第一セット動作及び第二セット動作の後に、接続部によって第一給糸パッケージの糸端と第二給糸パッケージの糸端とを接続させる接続動作と、を含む糸継処理を実行するように、吸引保持部、移動部及び接続部を制御すると共に、第一セット動作の前に、吸引保持部によって第一給糸パッケージの糸端を保持させ、移動部によって係止部に第一給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる第一糸掛動作と、第二セット動作の前に、吸引保持部によって第二給糸パッケージの糸端を保持させ、移動部によって係止部に第二給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる第二糸掛動作と、の少なくとも一方の動作を含む糸掛処理を実行するように、吸引保持部及び移動部を制御する。
【0008】
ここでいう第一給糸パッケージの糸端及び第二給糸パッケージの糸端は、糸の先端だけでなく当該先端を基点として所定の長さを有する糸部分を意味する。また、給糸スタンドは、糸加工装置の給糸部に設けられており、複数の給糸パッケージを支持している。給糸パッケージには、糸加工装置の加工部に供給される糸が巻かれている。この構成の糸継処理装置では、作業者による従来の作業順序とは異なり、糸の接続が行われる前に係止部への糸掛けが行われる。そして、吸引保持部によって保持される状態の第一給糸パッケージ及び第二給糸パッケージのそれぞれの糸は、常に吸引方向に吸引力が作用しているので、給糸パッケージから吸引保持部に亘る糸部分には張力が作用する。移動部は、ピンと張った状態の糸端を移動させることができるので、不規則に弛んだ糸の糸端を移動させる場合と比べて、緻密に糸を移動させることができるので高精度に係止部に糸掛けできる。また、糸の保持が吸引によって行われるため、把持する場合のような糸の損傷が生じない。なお、第一給糸パッケージの糸端と第二給糸パッケージの糸端とが接続された糸を吸引保持する場合には、糸の一部が折れ曲がった状態で吸引保持部に吸引されるので糸が傷つくところ、この構成では、第一給糸パッケージ及び第二給糸パッケージのそれぞれの糸端を吸引保持するので、上記のような折れ曲がりが発生することもない。したがって、吸引保持部によって糸が保持されたとしても糸が傷つくことはない。これらの結果、糸品質の維持と動作精度の向上との両立を図りつつ、糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作の自動化を実現することができる。
【0009】
本発明の一側面に係る糸継処理装置では、係止部は、第一係止部と第二係止部とを含んでおり、第一糸掛動作は、第一係止部に第一給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二糸掛動作は、第二係止部に第二給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であってもよい。
【0010】
この構成の糸継処理装置では、第一給糸パッケージの糸が掛けられる第一係止部と、第二給糸パッケージの糸が掛けられる第二係止部とが給糸スタンドに設けられる場合にも、上記と同様の効果が得られる。特に、第一給糸パッケージの糸を第一係止部に係止させると共に、第二給糸パッケージの糸を第二係止部に係止させる場合には、より安定した係止状態を得ることができる。
【0011】
本発明の一側面に係る糸継処理装置では、第一係止部は、第一内層側用係止部と第一外層側用係止部とを含み、第二係止部は、第二内層側用係止部と第二外層側用係止部とを含んでおり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第一糸掛動作は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、移動部によって第一内層側用係止部に第一給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第二糸掛動作は、吸引保持部によって第二給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、移動部によって第二外層側用係止部に第二給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第一セット動作は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、移動部によって第一給糸パッケージの内層側の糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる動作であり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第二セット動作は、吸引保持部によって第二給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、移動部によって第二給糸パッケージの外層側の糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる動作であり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの接続動作は、第一給糸パッケージの内層側の糸端と第二給糸パッケージの外層側の糸端とを接続させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第一糸掛動作は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、移動部によって第一外層側用係止部に第一給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第二糸掛動作は、吸引保持部によって第二給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、移動部によって第二内層側用係止部に第二給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第一セット動作は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、移動部によって第一給糸パッケージの外層側の糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第二セット動作は、吸引保持部によって第二給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、移動部によって第二給糸パッケージの内層側の糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの接続動作は、第一給糸パッケージの外層側の糸端と第二給糸パッケージの内層側の糸端とを接続させる動作であってもよい。
【0012】
この構成の糸継処理装置では、給糸スタンドにおいて、第一給糸パッケージの内層側の糸、第一給糸パッケージの外層側の糸、第二給糸パッケージの内層側の糸及び第二給糸パッケージの外層側の糸のそれぞれに対応して係止部が設けられる場合にも、上記と同様の効果が得られる。特に、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときに、第一給糸パッケージの糸を第一内層側用係止部に係止させると共に、第二給糸パッケージの糸を第二外層側用係止部に係止させる場合、及び、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときに、第一給糸パッケージの糸を第一外層側用係止部に係止させると共に、第二給糸パッケージの糸を第二内層側用係止部に係止させる場合には、各係止部での係止状態の安定性を更に高めることができる。
【0013】
本発明の一側面に係る給糸装置は、第一給糸パッケージが装着される第一装着部と、第二給糸パッケージが装着される第二装着部と、糸が係止される係止部と、を有する給糸スタンドと、第一装着部に装着された第一給糸パッケージの糸端と、第二装着部に装着された第二給糸パッケージの糸端とを接続すると共に、接続された糸が係止部に係止された状態とするための糸継処理装置と、を備えた給糸装置であって、係止部は、第一給糸パッケージから引き出された糸を係止させるための少なくとも一つの第一係止部と、第二給糸パッケージから引き出された糸を係止させるための少なくとも一つの第二係止部と、を含み、糸継処理装置は、糸を吸引することによって糸を保持する吸引保持部と、吸引保持部を移動させる移動部と、第一給糸パッケージの糸端と第二給糸パッケージの糸端とを接続する接続部と、接続部、吸引保持部及び移動部を制御する制御部と、を備え、制御部は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの糸端を保持させ、移動部によって第一給糸パッケージの糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる第一セット動作と、吸引保持部によって第二給糸パッケージの糸端を保持させ、移動部によって第二給糸パッケージの糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる第二セット動作と、第一セット動作及び第二セット動作の後に、接続部によって第一給糸パッケージの糸端と第二給糸パッケージの糸端とを接続させる接続動作と、を含む糸継処理を実行するように、吸引保持部、移動部及び接続部を制御すると共に、第一セット動作の前に、吸引保持部によって第一給糸パッケージの糸端を保持させ、移動部によって第一係止部に第一給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる第一糸掛動作と、第二セット動作の前に、吸引保持部によって第二給糸パッケージの糸端を保持させ、移動部によって第二係止部に第二給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる第二糸掛動作と、の少なくとも一方の動作を含む糸掛処理を実行するように、吸引保持部及び移動部を制御する。
【0014】
この構成の給糸装置では、作業者による従来の作業順序とは異なり、糸の接続が行われる前に糸掛けが行われる。そして、吸引保持部によって保持される状態の第一給糸パッケージ及び第二給糸パッケージのそれぞれの糸は、常に吸引方向に吸引力が作用しているので、給糸パッケージから吸引保持部に亘る糸部分には張力が作用する。移動部は、ピンと張った状態の糸端を移動させることができるので、不規則に弛んだ糸の糸端を移動させる場合と比べて、緻密に糸を移動させることができるので高精度に係止部に糸掛けできる。また、糸の保持が吸引によって行われるため、把持する場合のような糸の損傷が生じない。なお、第一給糸パッケージの糸端と第二給糸パッケージの糸端とが接続された糸を吸引する場合には、糸の一部が折れ曲がった状態で吸引保持部に吸引されるので糸が傷つくところ、この構成では、第一給糸パッケージ及び第二給糸パッケージのそれぞれの糸端を吸引するので、上記のような折れ曲がりが発生することもない。したがって、吸引保持部によって糸が保持されたとしても糸が傷つくことはない。
【0015】
更にこの構成の給糸装置では、給糸スタンドにおいて、第一給糸パッケージに対応して設けられる第一係止部と、第二給糸パッケージに対応して設けられる第二係止部とが設けられている。これにより、第一給糸パッケージの糸掛けと第二給糸パッケージの糸掛けとに兼用される係止部に比べて、より適切な位置及び向きに第一係止部及び第二係止部を設けることができる。この結果、糸掛けがし易くなると共に糸掛けされた糸を外れにくくすることができる。
【0016】
更にこの構成の給糸装置では、糸継動作後に弛み除去のために給糸パッケージを回転させる場合に係止部にかかる負担を、第一係止部及び第二係止部のそれぞれに分散させることができる。そのため、第一係止部及び第二係止部のそれぞれから糸が外れることをより効果的に抑制できる。更に、仮に、第一係止部及び第二係止部の一方から糸が外れたとしても、第一係止部及び第二係止部の他方に糸が係止されていることにより、給糸パッケージ間を繋ぐ糸の係止状態を維持できる。
【0017】
以上に説明したように、この構成の給糸装置では、糸品質の維持と動作精度の向上との両立を図りつつ、糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作の自動化を実現することができる。
【0018】
本発明の一側面に係る給糸装置では、第一係止部は、第一装着部と第二装着部との間の中央よりも第一装着部側に配置され、第二係止部は、第一装着部と第二装着部との間の中央よりも第二装着部側に配置されていてもよい。
【0019】
この構成では、第一給糸パッケージから引き出された糸が第一給糸パッケージ近傍に配置される第一係止部に係止され、第二給糸パッケージから引き出された糸が第二給糸パッケージ近傍に配置される第二係止部に係止される。これにより、第一係止部及び第二係止部に、より高精度でより安定的な糸掛けを実現できる。
【0020】
本発明の一側面に係る給糸装置では、第一係止部は、第一内層側用係止部と第一外層側用係止部とを含み、第二係止部は、第二内層側用係止部と第二外層側用係止部とを含んでおり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第一糸掛動作は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、移動部によって第一内層側用係止部に第一給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第二糸掛動作は、吸引保持部によって第二給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、移動部によって第二外層側用係止部に第二給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第一セット動作は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、移動部によって第一給糸パッケージの内層側の糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる動作であり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第二セット動作は、吸引保持部によって第二給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、移動部によって第二給糸パッケージの外層側の糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる動作であり、第一給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの接続動作は、第一給糸パッケージの内層側の糸端と第二給糸パッケージの外層側の糸端とを接続させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第一糸掛動作は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、移動部によって第一外層側用係止部に第一給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第二糸掛動作は、吸引保持部によって第二給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、移動部によって第二内層側用係止部に第二給糸パッケージの糸が係止されるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第一セット動作は、吸引保持部によって第一給糸パッケージの外層側の糸端を保持させ、移動部によって第一給糸パッケージの外層側の糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの第二セット動作は、吸引保持部によって第二給糸パッケージの内層側の糸端を保持させ、移動部によって第二給糸パッケージの内層側の糸端が接続部にセットされるように吸引保持部を移動させる動作であり、第二給糸パッケージの外層側から糸が解舒されているときの接続動作は、第一給糸パッケージの外層側の糸端と第二給糸パッケージの内層側の糸端とを接続させる動作であってもよい。
【0021】
この構成の給糸装置の給糸スタンドには、第一給糸パッケージの内層側の糸、第一給糸パッケージの外層側の糸、第二給糸パッケージの内層側の糸及び第二給糸パッケージの外層側の糸のそれぞれに対応して係止部が設けられている。これにより、より適切な位置及び向きに各係止部を設けることができる。この結果、各係止部における糸掛けの精度と安定性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一側面によれば、糸品質の維持と動作精度の向上との両立を図りつつ、糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作の自動化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一実施形態に係る仮撚加工機及びパッケージ交換装置の構成を示す図である。
図2図2は、アダプタが取り付けられた給糸パッケージを示す斜視図である。
図3図3は、クリールスタンドを示す斜視図である。
図4図4は、クリップを示す正面図である。
図5図5は、ペッグを示す斜視図である。
図6図6は、パッケージ交換装置を示す斜視図である。
図7図7は、交換ユニットの概略構成を示す図である。
図8図8は、糸継装置を示す斜視図である。
図9図9は、糸継装置を示す斜視図である。
図10図10は、糸継装置を示す斜視図である。
図11図11は、糸継処理装置を含むパッケージ交換装置の機能構成を示すブロック図である。
図12図12は、糸継処理装置における糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作を示すフローチャートである。
図13図13(A)及び図13(B)は、図12の一連の動作を示す斜視図である。
図14図14(A)及び図14(B)は、図12の一連の動作を示す斜視図である。
図15図15(A)及び図15(B)は、図12の一連の動作を示す斜視図である。
図16図16は、変形例1に係るクリップが配置されたクリールスタンドの一部を示した斜視図である。
図17図17は、変形例1に係る糸継処理装置における糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作を示すフローチャートである。
図18図18(A)及び図18(B)は、図17の一連の動作を示す斜視図である。
図19図19(A)及び図19(B)は、図17の一連の動作を示す斜視図である。
図20図20は、変形例2に係るクリップが配置されたクリールスタンドの一部を示した斜視図である。
図21図21は、変形例2に係る糸継処理装置における糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作を示すフローチャートである。
図22図22(A)及び図22(B)は、変形例2に係る糸継処理装置によって糸継ぎされた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
一実施形態の給糸装置100は、図1に示されるように、クリールスタンド(給糸スタンド)20と糸継処理装置9Aとを備えている。クリールスタンド20は、仮撚加工機1に設けられている。一実施形態の糸継処理装置9Aは、パッケージ交換装置9に搭載されている。糸継処理装置9Aは、後段にて詳述する糸継装置60と制御部94とを含んで構成されている(図1及び図11参照)。以下の説明において、図中に示す「Z方向」は鉛直方向(上下方向)であり、「X方向」は水平方向であり、「Y方向」は「X方向」に直交する水平方向であり、X方向及びZ方向の両方に直交する方向でもある。
【0026】
図1に示される仮撚加工機1は、複数の給糸パッケージP1から供給される糸(合繊糸)Yに加工を施し、巻取パッケージP2を製造する。糸Yは、例えば、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性の合成繊維からなる合繊糸である。給糸パッケージP1は、給糸ボビンB1に半延伸糸(POY:Partially Oriented Yarn)が巻き取られて形成される。巻取パッケージP2は、巻取ボビンB2に延伸加工糸(DTY:Draw Textured Yarn)が巻き取られて形成される。すなわち、仮撚加工機1は、半延伸糸である糸Yに加工を施して延伸加工糸を生成する。
【0027】
図2に示されるように、給糸パッケージP1には、アダプタ8が取り付けられている。アダプタ8は、糸Yを保持する。アダプタ8は、取付部81と、第一保持部82と、第二保持部83と、を有している。取付部81は、給糸パッケージP1の給糸ボビンB1に同期回転可能に取り付けられている。取付部81は、円筒状に形成されている。取付部81は、給糸パッケージP1の側面から突出している給糸ボビンB1の端部に装着される。
【0028】
第一保持部82は、給糸パッケージP1の外層側(口糸側)の糸Yの糸端(以下、外層側の糸Yの糸端を第一糸端Y1とも称する。)を保持する。第一保持部82は、取付部81に設けられている。第一保持部82は、第一アーム821と、第一把持具822と、第一糸ガイド823と、を有している。第一アーム821は、基端側が取付部81の側面に固定されており、取付部81の径方向に沿って延在している。第一把持具822は、第一糸端Y1を把持する。第一把持具822は、第一アーム821の先端側に設けられている。第一糸ガイド823は、第一アーム821に設けられている。
【0029】
第二保持部83は、給糸パッケージP1の内層側(尻糸側)の糸Yの糸端(以下、内層側の糸Yの糸端を第二糸端Y2とも称する。)を保持する。第二保持部83は、取付部81に設けられている。第二保持部83は、第二アーム831と、第二把持具832と、第二糸ガイド833と、を有している。第二アーム831は、基端側が取付部81の側面に固定されており、取付部81の径方向に沿って延在している。第二アーム831は、第一アーム821と同一直線状に位置するように配置されている。第二把持具832は、第二糸端Y2を把持する。第二把持具832は、第二アーム831の先端側に設けられている。第二糸ガイド833は、第二アーム831に設けられている。なお、ここでいう第一糸端Y1及び第二糸端Y2は、糸Yの先端だけでなく当該先端を基点として所定の長さを有する糸部分を意味する。
【0030】
アダプタ8では、給糸パッケージP1の第一糸端Y1を、第一保持部82の第一糸ガイド823を介して第一把持具822で把持すると共に、給糸パッケージP1の内層側から引き出された第二糸端Y2を、第一保持部82の第一糸ガイド823及び第二保持部83の第二糸ガイド833を介して第二把持具832で把持する。アダプタ8は、例えば、作業者によって、給糸パッケージP1に装着される。給糸ボビンB1には、アダプタ8が取り付けられる端部とは反対側の端部に、ボビンキャップ(図示省略)が取り付けられていてもよい。
【0031】
図1に示されるように、仮撚加工機1は、給糸部2と、加工部3と、巻取部4と、主機台5と、巻取台6と、支持フレーム7と、を備えている。後述する給糸部2、加工部3及び巻取部4が有する各構成は、給糸部2から加工部3を通って巻取部4に至る糸道が配置される糸Yの走行面(図1の紙面)と直交するY方向(機台長手方向)において、複数配列されている。
【0032】
給糸部2は、加工部3に糸Yを供給する。給糸部2は、複数の給糸パッケージP1を保持するクリールスタンド20を備えている。図1及び図3に示されるように、クリールスタンド20は、クリール基台部21と、第一支柱22と、第二支柱23と、仕切板24と、ペッグ(第一装着部・第二装着部)25と、クリップ(係止部)29と、を備えている。クリール基台部21は、床面等に設置され、第一支柱22及び第二支柱23を支持する。第一支柱22及び第二支柱23は、クリール基台部21に立設されている。
【0033】
第一支柱22は、Z方向(鉛直方向)に沿って延在している。第一支柱22は、Y方向に等間隔に配列されている。第一支柱22は、クリールスタンド20におけるX方向の一方側F1に配置されている。X方向の一方側F1は、後段にて詳述する加工部3が配置される側であり、仮撚加工を施す加工部3に糸Yを送り出す側である。
【0034】
第二支柱23は、Z方向に沿って延在している。第二支柱23は、Y方向に二本一組で配置されており、複数の組の第二支柱23,23が、Y方向に配列されている。第二支柱23は、クリールスタンド20におけるX方向の他方側F2に配置されている。X方向の他方側F2は、後段にて詳述するパッケージ交換装置9が走行する側であり、糸継作業を実施する作業者が作業する側である。複数の第一支柱22からなる第一支柱22群と複数の第二支柱23からなる第二支柱23群とは、X方向に対向して配列されている。
【0035】
仕切板24は、第一支柱22と第二支柱23とに跨がるように設けられている。仕切板24は、板状部材であり、Z方向において、所定の間隔をあけて配置されている。仕切板24は、ペッグ25からの給糸パッケージP1の落下を防止する。
【0036】
ペッグ25は、給糸パッケージP1を支持する。ペッグ25は、第二支柱23に設けられている。ペッグ25は、第二支柱23のZ方向において、所定の間隔をあけて複数(例えば、4個)配置されている。ペッグ25は、Z方向において二枚の仕切板24の間に配置されている。また、ペッグ25は、二本一組で配置される第二支柱23,23に対応して二個一組で配置されており、複数の組(一対)のペッグ25,25が、Y方向に配列されている。
【0037】
この構成のペッグ25では、一対の一方のペッグ(第一ペッグ)25に支持される給糸パッケージP1の糸Yと、一対の他方のペッグ(第二ペッグ)25に支持されている給糸パッケージP1の糸Yとを繋ぐことができる。具体的には、一対の一方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の第一糸端Y1と、一対の他方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の第二糸端Y2とを繋ぐか、又は、一対の一方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の第二糸端Y2と、一対の他方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の第一糸端Y1とを繋ぐ。これにより、一対のペッグ25,25にそれぞれ支持される二個の給糸パッケージP1,P1から一本の糸Yが供給される。すなわち、加工部3に連続的に糸Yを供給することができる。
【0038】
クリップ29は、Y方向において上記一対のペッグ25,25の間に配置されている。本実施形態では、上記一対のペッグ25,25の中央部に配置されている。図4に示されるように、クリップ29は、一対の皿板291,292と、一対の皿板291,292を仕切板24側に付勢する弾性部材293と、軸部294と、を有している。一対の皿板291,292は、軸部294の延在方向に所定範囲内で移動可能に設けられており、弾性部材293によって仕切板24側に付勢されている。糸Yは、一対の皿板291,292の間に配置されると、一対の皿板291,292に挟持され、糸Yが係止される構成となっている。なお、弾性部材293の弾性力は、作業者が糸Yを引っ張ると一対の皿板291,292による係止が外れるように適宜選択又は調整される。
【0039】
図5に示されるように、ペッグ25は、給糸パッケージ支持部251と、ペッグ本体部252と、第一回動機構253と、本体支持部254と、第二回動機構255と、を有している。
【0040】
給糸パッケージ支持部251は、給糸パッケージP1を支持する。給糸パッケージ支持部251は、パッケージ支持部材251A,251Bを有している。パッケージ支持部材251A,251Bは、棒状部材である。パッケージ支持部材251A,251Bは、ペッグ本体部252に回転可能に支持されている。パッケージ支持部材251A,251Bは、一方向に沿って延在していると共に互いに平行となるように、所定の間隔をあけて配置されている。ペッグ25は、パッケージ支持部材251A,251Bによって、給糸パッケージP1を二点で支持する。
【0041】
パッケージ支持部材251Aの延在方向の一端部には、被覆部251Dが設けられている。パッケージ支持部材251Bの延在方向の一端部には、被覆部251Eが設けられている。被覆部251D,251Eは、例えば、摩擦係数が大きいゴム(樹脂)等で形成されている。被覆部251D,251Eは、巻取パッケージP2の給糸ボビンB1の内周面と接触(当接)する。パッケージ支持部材251Aの一端とパッケージ支持部材251Bの一端とは、連結部材251Fによって連結されている。
【0042】
ペッグ本体部252は、パッケージ支持部材251A及びパッケージ支持部材251Bをその回転軸回りに回転可能に支持している。ペッグ本体部252は、規制部材252Aが設けられている。規制部材252Aは、例えば、円盤状に形成されている。規制部材252Aは、ペッグ本体部252の一側面に配置されている。規制部材252Aは、パッケージ支持部材251A及びパッケージ支持部材251Bを挿通させて取り付けられている。規制部材252Aは、給糸パッケージP1の端面と対向し、パッケージ支持部材251A及びパッケージ支持部材251Bの延在方向における給糸パッケージP1の移動を規制する。ペッグ本体部252には、挿通穴252Bが形成されている。挿通穴252Bには、クリールスタンド20の第二支柱23(図3参照)が挿通される。
【0043】
第一回動機構253は、従動プーリ253Aと、駆動プーリ253Bと、動力伝達ベルト253Cと、第一ホイール253Dと、を有している。従動プーリ253Aは、パッケージ支持部材251Aの他端に設けられている。駆動プーリ253Bは、パッケージ支持部材251Bの他端に設けられている。動力伝達ベルト253Cは、従動プーリ253A及び駆動プーリ253Bに掛け渡されている。第一ホイール253Dは、駆動プーリ253B(パッケージ支持部材251B)に設けられている。本実施形態では、第一ホイール253Dは、ゼネバ機構を構成するゼネバホイールである。第一ホイール253Dは、後述する糸継装置60の第一糸継ドライバ621又は第二糸継ドライバ631の回転駆動によって回転する。
【0044】
本体支持部254は、筒状に形成されている。本体支持部254の一端はペッグ本体部252に接続されており、本体支持部254とペッグ本体部252とは、一体的に形成されている。本体支持部254の中空部は、ペッグ本体部252の挿通穴252Bと連通している。本体支持部254には、クリールスタンド20の第二支柱23(図3参照)が内挿されている。
【0045】
第二回動機構255は、ゼネバ機構を構成するゼネバホイールである。第二回動機構255は、本体支持部254の他端に接続されており、第二回動機構255と本体支持部254とは、一体的に形成されている。第二回動機構255は、後述する回動装置932の回動ドライバ932Aの駆動によって回転する。ペッグ本体部252は、第二回動機構255の回転に伴って回転する。これにより、パッケージ支持部材251A,251Bが回動する。
【0046】
加工部3は、給糸部2から供給された糸Yに対して仮撚加工を施す。図1に示されるように、加工部3は、撚止ガイド31と、第一加熱装置32と、冷却装置33と、仮撚装置34と、第二加熱装置35と、フィードローラ36(フィードローラ361~363)と、を備えている。撚止ガイド31、第一加熱装置32、冷却装置33、仮撚装置34、第二加熱装置35及びフィードローラ36(フィードローラ361~363)のそれぞれは、給糸部2から供給されるそれぞれの糸Yに対して個別に設けられており、Y方向に一列に配列されている。
【0047】
撚止ガイド31は、後述する仮撚装置34で糸Yに付与された撚りが、撚止ガイド31よりも糸走行方向上流側に伝播することを防止する。第一加熱装置32は、給糸部2からフィードローラ361を介して送られてきた糸Yを加熱する。冷却装置33は、第一加熱装置32で加熱された糸Yを冷却する。仮撚装置34は、糸Yを撚る。第二加熱装置35は、仮撚装置34からフィードローラ362を介して送られてきた糸Yを加熱する。
【0048】
クリールスタンド20と撚止ガイド31との間にはフィードローラ361が設けられ、仮撚装置34と第二加熱装置35との間にはフィードローラ362が設けられ、第二加熱装置35と巻取装置41との間にはフィードローラ363が設けられている。各フィードローラ36(フィードローラ361~363)は、駆動ローラ及び従動ローラを含んで構成されている。各フィードローラ36のそれぞれも、Y方向に一列に配列されている。
【0049】
フィードローラ362による糸Yの搬送速度は、フィードローラ361よる糸Yの搬送速度よりも速く、糸Yは、フィードローラ361とフィードローラ362との間で延伸される。フィードローラ363による糸Yの搬送速度は、フィードローラ362による糸Yの搬送速度よりも遅く、糸Yは、フィードローラ362とフィードローラ363との間で弛緩される。
【0050】
以上のように構成された加工部3では、フィードローラ361とフィードローラ362との間で延伸された糸Yが、仮撚装置34で撚られる。仮撚装置34により形成される撚りは、撚止ガイド31までは伝播するが、撚止ガイド31よりも糸走行方向上流側には伝播しない。延伸されつつ撚りが付与された糸Yは、第一加熱装置32で加熱されて熱固定された後、冷却装置33で冷却される。仮撚装置34から下流では糸Yは解撚されるが、上記の熱固定によって各フィラメントが仮撚りされた状態で維持される。
【0051】
糸Yは、フィードローラ362とフィードローラ363との間で弛緩されながら、第二加熱装置35で熱固定される。最後に、フィードローラ363から送られた糸Yは、巻取部4の巻取装置41によって巻き取られ、巻取パッケージP2が形成される。
【0052】
巻取部4は、巻取装置41、パッケージストッカ42及び玉揚装置(図示省略)等を備えている。巻取装置41は、加工部3で仮撚加工が施された糸Yを巻き取って巻取パッケージP2を形成する。パッケージストッカ42は、巻取装置41によって形成された巻取パッケージP2を貯留する。玉揚装置は、巻取装置41によって形成された巻取パッケージP2を取り外し、その巻取パッケージP2をパッケージストッカ42に移すと共に、巻取装置41に空の巻取ボビンB2の取り付け等を行う。
【0053】
パッケージ交換装置9は、ペッグ25から給糸ボビンB1を回収すると共に、ペッグ25に給糸パッケージP1を取り付ける。図6に示されるように、パッケージ交換装置9は、レール98に沿って走行する。レール98は、床に敷設されており、Y方向に沿って延在している。すなわち、パッケージ交換装置9は、Y方向に沿って走行可能に設けられている。パッケージ交換装置9は、走行ユニット90と、昇降ユニット91と、保持ユニット92と、交換ユニット93と、糸継装置60と、各ユニット90,91,92,93及び糸継装置60の動作を制御する制御部94(図11参照)と、を備えている。
【0054】
走行ユニット90は、レール98を走行する車輪及び駆動機構等が設けられている。走行ユニット90は、昇降ユニット91、保持ユニット92及び交換ユニット93を支持する。昇降ユニット91は、作業者を搭乗させて昇降する。昇降ユニット91は、メンテナンス等の際に使用される。昇降ユニット91は、作業者が搭乗する作業台911と、作業台911をZ方向に移動可能に支持するガイド部912と、作業台を駆動する駆動機構(図示省略)と、を備える。
【0055】
保持ユニット92は、複数(例えば、4個)の給糸パッケージP1を保持する。保持ユニット92は、パッケージ補給装置(図示省略)から給糸パッケージP1の供給を受けて給糸パッケージP1を一時的に保管すると共に、交換ユニット93に給糸パッケージP1を供給する。保持ユニット92は、略90°の範囲で回動可能に設けられている。より詳細には、保持ユニット92は、パッケージ補給装置から給糸パッケージP1の供給を受ける補給位置と、交換ユニット93に給糸パッケージP1を供給する供給位置(図6に示す位置)との間で回動可能に設けられている。
【0056】
交換ユニット93は、ペッグ25において給糸ボビンB1と給糸パッケージP1との交換を行う。具体的には、交換ユニット93は、ペッグ25から給糸ボビンB1(図1参照)を回収すると共に、ペッグ25に給糸パッケージP1を取り付ける。交換ユニット93は、保持ユニット92と隣接して設けられている。図7に示されるように、交換ユニット93は、基台931と、回動装置932と、回収装置933と、供給装置934と、回転台936と、を備えている。なお、図6では、回動装置932、回収装置933、供給装置934、回転台936及び後段にて詳述する糸継装置60の記載は省略する。
【0057】
基台931は、回動装置932と、回収装置933、供給装置934及び糸継装置60を支持する回転台936と、を支持している。基台931は、Z方向に沿って昇降自在に設けられている。回動装置932は、基台931に固定されている。回動装置932は、クリールスタンド20のペッグ25を回動させる。回動装置932は、回動ドライバ932Aと、回動アーム932Bと、を有している。
【0058】
回動ドライバ932Aは、ペッグ25の第二回動機構255(図5参照)を回転させる。回動ドライバ932Aは、ゼネバ機構を構成するゼネバドライバである。回動ドライバ932Aは、モータ(図示省略)の回転駆動によって回転する。回動アーム932Bは、回動ドライバ932Aを支持している。回動アーム932Bは、水平方向において揺動可能に設けられている。回動アーム932Bは、例えば、モータ又はエアシリンダ(図示省略)によって駆動される。回動装置932は、クリールスタンド20において二個一組で設けられる一方のペッグ25及び他方のペッグ25にそれぞれ対応するように設けられている。
【0059】
回動装置932は、ペッグ25に給糸パッケージP1を取り付けるときに、ペッグ25を回動させてペッグ25の向きを変更する。より詳細には、回動装置932は、回動アーム932Bを揺動させて、回動ドライバ932Aをペッグ25の第二回動機構255に係合させる。回動装置932は、回動ドライバ932Aと第二回動機構255とが係合すると、回動ドライバ932Aを一方向に回転させる。ペッグ25は、第二回動機構255が回転すると、本体支持部254が回転する。これにより、ペッグ25が回動し、給糸パッケージ支持部251の先端部が交換ユニット93側を向く。
【0060】
回収装置933は、基台931に回転可能に支持された回転台936に設けられている。回収装置933は、ペッグ25から給糸ボビンB1を回収する。回収装置933は、給糸ボビンB1を支持する給糸ボビン支持部933Aを有している。回収装置933は、ペッグ25に対して給糸ボビンB1を支持しない状態で給糸ボビン支持部933Aを進出させることにより給糸ボビンB1を支持し、ペッグ25に対して給糸ボビンB1を支持した状態で給糸ボビン支持部933Aを後退させることにより、給糸ボビンB1をペッグ25から回収する。
【0061】
供給装置934は、基台931に回転可能に支持された回転台936に設けられている。供給装置934は、ペッグ25に給糸パッケージP1を供給する。供給装置934は、給糸パッケージP1を支持する給糸パッケージ供給部934Aを有している。供給装置934は、ペッグ25に対して給糸パッケージP1を支持した状態で給糸パッケージ供給部934Aを進出することにより給糸パッケージP1をペッグ25に取り付け、ペッグ25に対して給糸パッケージP1を支持しない状態で給糸パッケージ供給部934Aを後退させることにより、給糸パッケージP1をペッグ25に供給する。
【0062】
パッケージ交換装置9は、上述したペッグ25からの給糸ボビンB1の回収及びペッグ25への給糸パッケージP1の取り付けを行う他に、クリールスタンド20の一対のペッグ25,25に装着された一対の給糸パッケージP1,P1の糸端同士を接続する(糸継処理)と共に、接続された糸がクリールスタンド20に設けられた少なくとも一つのクリップ29に係止された状態とする(糸掛処理)。上記糸継処理及び糸掛処理は、糸継処理装置9Aによって実行される。糸継処理装置9Aは、糸継装置60と制御部94とを含んで構成される。
【0063】
糸継装置60は、基台931に回転可能に支持された回転台936に設けられている。糸継装置60は、一方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の第一糸端Y1と、他方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の第二糸端Y2との糸継ぎを行うか、又は、一方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の第二糸端Y2と、他方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1の第一糸端Y1との糸継ぎを行う。以下、一方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1を第一給糸パッケージP11とも称し、他方のペッグ25に支持されている給糸パッケージP1を第二給糸パッケージP12とも称する。図8図9及び図10に示されるように、糸継装置60は、糸掛機構61と、第一回転機構62及び第二回転機構63と、糸継機構64と、を備えている。
【0064】
糸掛機構61は、給糸パッケージP1の糸Yを捕捉し、糸継機構64に糸Yを案内する。糸掛機構61は、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2とを捕捉し、糸継機構64に案内するか、又は、第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2と、第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1とを捕捉し、糸継機構64に案内する。糸掛機構61は、サクションガン611と、アーム部(移動部)612と、フック部615と、を有している。
【0065】
サクションガン611は、糸Yを吸引して捕捉する。サクションガン611は、サクションパイプ613と、サクションノズル(吸引保持部)614と、を有している。サクションノズル614は、サクションパイプ613の先端部に設けられている。サクションノズル614は、糸Yを吸引する。サクションパイプ613には、負圧源(図示省略)が接続されている。これにより、サクションノズル614に吸引流が発生する。サクションパイプ613の基端側は、アーム部612に接続されている。フック部615は、サクションパイプ613の先端部且つサクションノズル614と背向する位置に設けられている。フック部615は、糸継装置60によって交絡された(糸継ぎされた)糸Yを係止して移動させる。アーム部612は、サクションガン611を移動させる。アーム部612は、リンク機構と、複数のモータと、を含んで構成されている。アーム部612は、ブラケット616に支持されている。
【0066】
第一回転機構62は、一方のペッグ25を操作して第一給糸パッケージP11を回転させる。第一回転機構62は、糸掛機構61によって糸Yを糸継機構64に案内するときに、第一給糸パッケージP11を回転させて、第一給糸パッケージP11から糸Yを繰り出させる。第二回転機構63は、他方のペッグ25を操作して第二給糸パッケージP12を回転させる。第二回転機構63は、糸掛機構61によって糸Yを糸継機構64に案内するときに、第二給糸パッケージP12を回転させて、第二給糸パッケージP12から糸Yを繰り出させる。
【0067】
第一回転機構62は、第一糸継ドライバ621と、第一モータ622と、第一アーム部623と、を有している。第一糸継ドライバ621は、第一アーム部623に回転自在に軸支されている。第一糸継ドライバ621には、第一従動プーリ624が設けられている。第一モータ622は、第一アーム部623に固定されている。第一モータ622の出力軸には、第一駆動プーリ625が接続されている。第一モータ622は、第一駆動プーリ625を軸回りに回転駆動する。第一従動プーリ624及び第一駆動プーリ625には、第一動力伝達ベルト626が掛け渡されている。これにより、第一糸継ドライバ621は、第一モータ622の回転駆動により回転する。
【0068】
第二回転機構63は、第二糸継ドライバ631と、第二モータ632と、第二アーム部633と、を有している。第二糸継ドライバ631は、第二アーム部633に回転自在に軸支されている。第二糸継ドライバ631には、第二従動プーリ634が設けられている。第二モータ632は、第二アーム部633に固定されている。第二モータ632の出力軸には、第二駆動プーリ635が接続されている。第二モータ632は、第二駆動プーリ635を軸回りに回転駆動する。第二従動プーリ634及び第二駆動プーリ635には、第二動力伝達ベルト636が掛け渡されている。これにより、第二糸継ドライバ631は、第二モータ632の回転駆動により回転する。
【0069】
糸継機構64は、糸継ぎを行う。糸継機構(接続部)64は、スプライサ66と、第一ガイド機構67と、第二ガイド機構68と、を有している。
【0070】
スプライサ66は、糸継部661と、一対の挟持部662,663と、挟持部662に設けられるカッタ664と、挟持部663に設けられるカッタ665と、を備えている。糸継部661は、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2とを交絡(接続)させるか、又は、第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2と第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1とを交絡(接続)させる。一対の挟持部662,663は、糸継部661を挟む位置に設けられている。一対の挟持部662,663は、糸継部661のチャンバーに挿通される糸Y(第一糸端Y1及び第二糸端Y2:図14(A)参照)を挟持する。カッタ664,665は、糸継部661によって糸継ぎされた糸Yの糸継部分から、例えば、サクションノズル614が吸引保持していた部分を含む余分な部分等を切断する。
【0071】
第一ガイド機構67は、糸Yを係止してガイドする。第一ガイド機構67は、揺動可能に設けられている。第一ガイド機構67には、糸Yの張力を検出するためのポテンショメータ(図示省略)が設けられている。糸継装置60は、ポテンショメータの検出結果に基づいて、第一回転機構62の第一モータ622の動作を制御する。すなわち、糸継装置60は、ポテンショメータの検出結果に基づいて、第一給糸パッケージP11の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第一給糸パッケージP11から糸Yを引き出す。
【0072】
第二ガイド機構68は、糸Yを係止してガイドする。第二ガイド機構68は、揺動可能に設けられている。第二ガイド機構68には、糸Yの張力を検出するためのポテンショメータ(図示省略)が設けられている。糸継装置60は、ポテンショメータの検出結果に基づいて、第二回転機構63の第二モータ632の動作を制御する。すなわち、糸継装置60は、ポテンショメータの検出結果に基づいて、第二給糸パッケージP12の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第二給糸パッケージP12から糸Yを引き出す。
【0073】
図7に示されるように、回転台936は、基台931に回転可能に支持されている。回転台936は、給糸ボビンB1を回収するときに、給糸ボビン支持部933Aが対象となるペッグ25の正面に位置するように回転される。また、回転台936は、給糸パッケージP1を供給するときに、給糸パッケージ供給部934Aが対象となるペッグ25の正面に位置するように回転される。また、回転台936は、糸継装置60による糸Yの糸継処理を行うときに、対象となるペッグ25の正面に位置するように回転される。
【0074】
図11に示されるように、制御部94は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/Oポート及び通信ポート等からなる電子制御ユニットである。ROMには、走行ユニット90、昇降ユニット91、保持ユニット92及び交換ユニット93の各部を制御するためのプログラムが記録されている。また、制御部94における各機能は、CPU及び主記憶部等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPUの制御のもと実行される。
【0075】
制御部94は、第一セット動作と、第二セット動作と、糸継動作(接続動作)と、を含む糸継処理を実行するように、サクションノズル614、アーム部612及びスプライサ66を制御する。更に、制御部94は、第一糸掛動作及び第二糸掛動作の一方の動作を含む糸掛処理を実行するように、サクションノズル614及びアーム部612を制御する。
【0076】
本実施形態において、第二給糸パッケージP12の外層側から糸Yが解舒されているとき(第二給糸パッケージP12の外層側から加工部3に糸Yを供給しているとき)(以下、第一シーンとも称する)の第一セット動作と、第二セット動作と、糸継動作と、第一糸掛動作と、第二糸掛動作とについて説明する。
【0077】
第一シーンでの第一セット動作は、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1がスプライサ66にセットされるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第二セット動作は、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によって第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2がスプライサ66にセットされるようにサクションノズル614を移動させる動作である。糸継動作は、第一セット動作及び第二セット動作の後に、スプライサ66によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2とを接続させる動作である。
【0078】
第一シーンでの第一糸掛動作とは、第一セット動作の前に、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によってクリップ29に第一給糸パッケージP11の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第一シーンでの第二糸掛動作は、第二セット動作の前に、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によってクリップ29に第二給糸パッケージP12の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第一シーンにおいては、第一糸掛動作及び第二糸掛動作のいずれか一方のみが行われる。
【0079】
次に、本実施形態において、第一給糸パッケージP11の外層側から糸Yが解舒されているとき(第一給糸パッケージP11の外層側から加工部3に糸Yを供給しているとき)(以下、第二シーンとも称する)の第一セット動作と、第二セット動作と、糸継動作と、第一糸掛動作と、第二糸掛動作とについて説明する。
【0080】
第二シーンでの第一セット動作は、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によって第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2がスプライサ66にセットされるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第二セット動作は、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によって第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1がスプライサ66にセットされるようにサクションノズル614を移動させる動作である。糸継動作は、第一セット動作及び第二セット動作の後に、スプライサ66によって第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2と第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1とを接続させる動作である。
【0081】
第二シーンでの第一糸掛動作とは、第一セット動作の前に、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によってクリップ29に第一給糸パッケージP11の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第二シーンでの第二糸掛動作は、第二セット動作の前に、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によってクリップ29に第二給糸パッケージP12の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第二シーンにおいても、第一糸掛動作及び第二糸掛動作のいずれか一方のみが行われる。
【0082】
以下、図10図15を用いて、糸継処理装置9Aにおける糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作について詳細に説明する。ここでは、第二給糸パッケージP12の外層側から糸Yが解舒されているとき(上記第一シーンのとき)に、糸継装置60によって、一方のペッグ25に支持されている第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と、他方のペッグ25に支持されている第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2との糸継ぎを行う場合を一例に説明する。
【0083】
糸継処理装置9Aは、糸継動作を開始すると、図10に示されるように、第一回転機構62によって一方のペッグ25を操作すると共に、第二回転機構63によって他方のペッグ25を操作し、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1及び第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を捕捉可能な位置までアダプタ8を回転させる(図12のステップS1)。
【0084】
具体的には、制御部94は、第一モータ622を駆動させ、一方のペッグ25の第一ホイール253Dに係合された第一糸継ドライバ621を回転させる。第一糸継ドライバ621が回転すると、第一給糸パッケージP11が回転し、これに伴いアダプタ8が回転する。制御部94は、第二モータ632を駆動させ、他方のペッグ25の第一ホイール253Dに係合された第二糸継ドライバ631を回転させる。第二糸継ドライバ631が回転すると、第二給糸パッケージP12が回転し、これに伴いアダプタ8が回転する。制御部94は、アダプタ8に設けられた検出体(図示省略)を検出するセンサ(図示省略)の検出結果に基づいて、第一モータ622及び第二モータ632を制御して、アダプタ8を所定位置まで回転させる。
【0085】
制御部94は、サクションガン611を起動させる(図12のステップS2)。これにより、サクションガン611は、サクションノズル614において糸Yの吸引保持が可能となる。制御部94は、アーム部612を制御して、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1をサクションノズル614に捕捉(保持)させる(図12のステップS3)。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、図13(A)に示されるように、サクションノズル614をクリップ29にまで移動させて、第一給糸パッケージP11の糸Yをクリップ29に引っ掛ける(係止させる)(図12のステップS4:第一糸掛動作)。より詳細には、第一給糸パッケージP11の糸Yは、クリップ29の一対の皿板291,292に挟持されることによって係止される。
【0086】
次に、制御部94は、第一給糸パッケージP11の糸Yをクリップ29に引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、図13(B)に示されるように、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を保持したサクションノズル614を第一ガイド機構67にまで移動させて、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一ガイド機構67に引っ掛ける。制御部94は、第一ガイド機構67に設けられたポテンショメータの検出結果に基づいて、第一給糸パッケージP11の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第一給糸パッケージP11から糸Yを引き出させる。更に、制御部94は、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一ガイド機構67に引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、サクションノズル614を糸継機構64にまで移動させることによって、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を糸継機構64にセット(案内)する(図12のステップS5:第一セット動作)。
【0087】
次に、制御部94は、サクションノズル614に第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を捕捉(保持)させる(図12のステップS6)。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、図14(A)に示されるように、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を保持したサクションノズル614を糸継機構64にまで移動させて、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を糸継機構64にセット(案内)する(図12のステップS7:第二セット動作)。
【0088】
次に、制御部94は、糸継装置60のスプライサ66を制御して、図14(B)に示されるように、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2とを糸継ぎ(接続)させる。また、制御部94は、糸継装置60のカッタ664,665を制御して、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2との糸継部分から、例えば、サクションノズル614が吸引保持していた部分を含む余分な部分を切断除去する(図12のステップS8:糸継動作(接続動作))。
【0089】
次に、制御部94は、サクションガン611を停止させる(図12のステップS9)。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、フック部615に糸継ぎされた糸を引っ掛け(保持)た後、フック部615を糸継機構64の外にまで移動させる。これにより、図15(A)に示されるように、糸継ぎされた糸Yは、糸継機構64、第一ガイド機構67及び第二ガイド機構68の係止から外れ、糸継装置60の外に出される(図12のステップS10)。
【0090】
次に、制御部94は、第一モータ622及び第二モータ632を制御して、第一糸継ドライバ621及び第二糸継ドライバ631を回転駆動させ、図15(B)に示されるように、第一給糸パッケージP11及び第二給糸パッケージP12を回転させる。これにより、クリップ29に引っ掛けられた状態の糸継ぎされた糸Yの弛みを取ることができる(図12のステップS11)。
【0091】
上記実施形態の糸継処理装置9Aでは、作業者による従来の作業順序とは異なり、糸Yの糸継処理が行われる前にクリップ29への糸掛けが行われる。そして、サクションノズル614によって保持される状態の第一給糸パッケージP11及び第二給糸パッケージP12のそれぞれの糸Y、Yは、常に吸引方向に吸引力が作用しているので、第一給糸パッケージP11及び第二給糸パッケージP12のそれぞれからサクションノズル614に亘る糸Y部分には張力が作用する。アーム部612は、ピンと張った状態の第一糸端Y1(又は第二糸端Y2)を移動させることができるので、不規則に弛んだ糸Yの第一糸端Y1(又は第二糸端Y2)を移動させる場合と比べて、緻密に糸Yを移動させることができるので高精度にクリップ29に糸掛けできる。
【0092】
また、糸Yの保持がサクションノズル614による吸引によって行われるため、糸Yを把持する場合に生じる糸の損傷が生じない。なお、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2とが接続された糸Y、又は、第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1と第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2とが接続された糸Yを吸引する場合には、糸Yの一部が折れ曲がった状態でサクションノズル614に吸引されるので糸Yが傷つくところ、上記実施形態の構成では、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1又は第二糸端Y2、及び第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2又は第一糸端Y1を吸引することで糸Yの保持が行われるので、上記のような折れ曲がりが発生することもない。したがって、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11及び第二給糸パッケージP12の糸Yが保持されたとしても糸Yが傷つくことはない。これらの結果、糸品質の維持と動作精度の向上との両立を図りつつ、糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作の自動化を実現することができる。
【0093】
以上、本発明の一側面の実施形態について説明してきたが、本発明の一側面は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0094】
(変形例1)
上記実施形態のクリールスタンド20では、クリップ29は、図3に示されるように、Y方向において上記一対のペッグ25,25の間に一つだけ配置されている例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、図16に示されるように、クリールスタンド20は、Y方向において一対のペッグ25,25の間に二つのクリップ29A,29Bが配置されてもよい。
【0095】
すなわち、変形例1に係るクリールスタンド20には、一方のペッグ25に支持される第一給糸パッケージP11よりも他方のペッグ25に支持される第二給糸パッケージP12から遠い位置に配置された第一クリップ(係止部・第一係止部)29Aと、一方のペッグ25に支持される第一給糸パッケージP11よりも他方のペッグ25に支持される第二給糸パッケージP12から近い位置に配置された第二クリップ(係止部・第二係止部)29Bと、を含んで構成されている。変形例1に係るクリールスタンド20の第一クリップ29Aは、一対のペッグ25,25の間の中央よりも第一給糸パッケージP11を支持する一方のペッグ25側に配置され、第二クリップ29Bは、一対のペッグ25,25の間の中央よりも第二給糸パッケージP12を支持する他方のペッグ25側に配置されている。
【0096】
変形例1に係る糸継処理装置9Aの制御部94は、第一セット動作と、第二セット動作と、糸継動作(接続動作)と、を含む糸継処理を実行するように、サクションノズル614、アーム部612及びスプライサ66を制御する。上述した第一シーン(第二給糸パッケージP12の外層側から糸Yが解舒されているとき)及び第二シーン(第一給糸パッケージP11の外層側から糸Yが解舒されているとき)での第一セット動作と、第二セット動作と、糸継動作とについては、上記実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。変形例1に係る糸継処理装置9Aでは、上記実施形態と異なり、制御部94は、第一シーン及び第二シーンのそれぞれにおいて、第一糸掛動作及び第二糸掛動作の両方の動作を含む糸掛処理を実行するように、サクションノズル614及びアーム部612を制御する。
【0097】
第一シーンでの第一糸掛動作とは、第一セット動作の前に、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によって第一クリップ29Aに第一給糸パッケージP11の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第一シーンでの第二糸掛動作は、第二セット動作の前に、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によって第二クリップ29Bに第二給糸パッケージP12の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。
【0098】
第二シーンでの第一糸掛動作とは、第一セット動作の前に、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によって第一クリップ29Aに第一給糸パッケージP11の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第二シーンでの第二糸掛動作は、第二セット動作の前に、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によって第二クリップ29Bに第二給糸パッケージP12の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。
【0099】
なお、第一クリップ29A及び第二クリップ29Bを備える構成であっても、第一シーン及び第二シーンのそれぞれにおいて、第一糸掛動作及び第二糸掛動作の一方のみを実行させてもよい。
【0100】
以下、図17図19を用いて、糸継処理装置9Aにおける糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作について詳細に説明する。ここでも、第二給糸パッケージP12の外層側から糸Yが解舒されているとき(上記第一シーンのとき)に、糸継装置60によって、一方のペッグ25に支持されている第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と、他方のペッグ25に支持されている第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2との糸継ぎを行う場合を一例に説明する。
【0101】
上記実施形態と同様に、制御部94は、第一モータ622及び第二モータ632を駆動させ、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1及び第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を捕捉可能な位置まで、アダプタ8(第一給糸パッケージP11及び第二給糸パッケージP12)を回転させる(図17のステップS21)。
【0102】
制御部94は、サクションガン611を起動させる(図17のステップS22)。これにより、サクションガン611は、サクションノズル614において糸Yの吸引保持が可能となる。制御部94は、アーム部612を制御して、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1をサクションノズル614に捕捉(保持)させる(図17のステップS23)。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、図18(A)に示されるように、サクションノズル614を第一クリップ29Aにまで移動させて、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一クリップ29Aに引っ掛ける(図17のステップS24:第一糸掛動作)。
【0103】
次に、制御部94は、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一クリップ29Aに引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、図18(A)に示されるように、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を保持したサクションノズル614を第一ガイド機構67にまで移動させて、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一ガイド機構67に引っ掛ける。制御部94は、第一ガイド機構67に設けられたポテンショメータの検出結果に基づいて、第一給糸パッケージP11の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第一給糸パッケージP11から糸Yを引き出させる。更に、制御部94は、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一ガイド機構67に引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、サクションノズル614を糸継機構64にまで移動させて、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を糸継機構64にセット(案内)する(図17のステップS25:第一セット動作)。
【0104】
次に、制御部94は、サクションノズル614に第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を捕捉(保持)させる(図17のステップS26)。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、図18(B)に示されるように、サクションノズル614を第二クリップ29Bにまで移動させて、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二クリップ29Bに引っ掛ける(図17のステップS27:第二糸掛動作)。
【0105】
次に、制御部94は、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二クリップ29Bに引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、図18(B)に示されるように、第二糸端Y2を保持したサクションノズル614を第二ガイド機構68にまで移動させて、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二ガイド機構68に引っ掛ける。制御部94は、第二ガイド機構68に設けられたポテンショメータの検出結果に基づいて、第二給糸パッケージP12の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第二給糸パッケージP12から糸Yを引き出させる。更に、制御部94は、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二ガイド機構68に引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、サクションノズル614を糸継機構64にまで移動させて、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を糸継機構64にセット(案内)する(図17のステップS28:第二セット動作)。
【0106】
次に、制御部94は、糸継装置60のスプライサ66を制御して第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2とを糸継ぎ(接続)させる。また、制御部94は、糸継装置60のカッタ664,665を制御して、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2との糸継部分から、例えば、サクションノズル614が吸引保持していた部分を含む余分な部分を切断除去する(図17のステップS29:糸継動作(接続動作))。
【0107】
次に、制御部94は、サクションガン611を停止させる(図17のステップS30)。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、フック部615に糸継ぎされた糸を引っ掛け(保持)た後、フック部615を糸継機構64の外にまで移動させる。これにより、図19(A)に示されるように、糸継ぎされた糸Yは、糸継機構64、第一ガイド機構67及び第二ガイド機構68の係止から外れ、糸継装置60の外に出される(図17のステップS31)。
【0108】
次に、制御部94は、第一モータ622及び第二モータ632を制御して、第一糸継ドライバ621及び第二糸継ドライバ631を回転駆動させ、図19(B)に示されるように、第一給糸パッケージP11及び第二給糸パッケージP12を回転させる。これにより、クリップ29に引っ掛けられた状態の糸継ぎされた糸Yの弛みを取ることができる(図17のステップS32)。
【0109】
変形例1に係る糸継処理装置9A及び給糸装置100では、第一糸掛動作及び第二糸掛動作によって第一クリップ29A及び第二クリップ29Bの両方に糸Yが係止されるので、より安定した係止状態を得ることができる。
【0110】
(変形例2)
上記実施形態の更なる変形例として、例えば、図20に示されるように、クリールスタンド20には、Y方向において一対のペッグ25,25の間に四つのクリップ29C,29D,29E,29Fが配置されてもよい。
【0111】
すなわち、変形例2に係るクリールスタンド20は、一方のペッグ25に支持される第一給糸パッケージP11よりも他方のペッグ25に支持される第二給糸パッケージP12から遠い位置に配置されると共に、第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2及び第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1のそれぞれに対応して設けられる一対の第一内層側用クリップ(係止部・第一係止部・第一内層側用係止部)29C及び第一外層側用クリップ(係止部・第一係止部・第一外層側用係止部)29Dと、一方のペッグ25に支持される第一給糸パッケージP11よりも他方のペッグ25に支持される第二給糸パッケージP12から近い位置に配置されると共に、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2及び第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1にそれぞれ対応して設けられる一対の第二内層側用クリップ(係止部・第二係止部・第二内層側用係止部)29E及び第二外層側用クリップ(係止部・第二係止部・第二外層側用係止部)29Fと、を含んで構成されている。
【0112】
本変形例2の第一内層側用クリップ29C、第一外層側用クリップ29D、第二内層側用クリップ29E及び第二外層側用クリップ29Fは、仕切板24にブラケット24Aを介して固定されている。また、第一内層側用クリップ29Cと第一外層側用クリップ29Dとは、互いに向き(一対の皿板291,292の向き)が異なっている。また、第二内層側用クリップ29Eと第二外層側用クリップ29Fとは、互いに向きが異なっている。
【0113】
変形例2に係る糸継処理装置9Aの制御部94は、第一糸掛動作と、第二糸掛動作と、第一セット動作と、第二セット動作と、糸継動作(接続動作)と、を含む糸継処理を実行するように、サクションノズル614、アーム部612及びスプライサ66を制御する。
【0114】
第一シーン(第二給糸パッケージP12の外層側から糸Yが解舒されているとき)での第一糸掛動作は、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によって第一外層側用クリップ29Dに第一給糸パッケージP11の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第一シーンでの第二糸掛動作は、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によって第二内層側用クリップ29Eに第二給糸パッケージP12の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。なお、第一シーンにおいては、第一糸掛動作及び第二糸掛動作の両方が行われる。
【0115】
第一シーンでの第一セット動作は、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によって第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1が糸継機構64にセットされるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第一シーンでの第二セット動作は、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によって第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2が糸継機構64にセットされるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第一シーンでの糸継動作は、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2とを接続させる動作である。
【0116】
第二シーン(第一給糸パッケージP11の外層側から糸Yが解舒されているとき)での第一糸掛動作は、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によって第一内層側用クリップ29Cに第一給糸パッケージP11の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第二シーンでの第二糸掛動作は、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によって第二外層側用クリップ29Fに第二給糸パッケージP12の糸Yが係止されるようにサクションノズル614を移動させる動作である。なお、第二シーンにおいては、第一糸掛動作及び第二糸掛動作の両方が行われる。
【0117】
第二シーンでの第一セット動作は、サクションノズル614によって第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2を保持させ、アーム部612によって第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2が糸継機構64にセットされるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第二シーンでの第二セット動作は、サクションノズル614によって第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1を保持させ、アーム部612によって第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1が糸継機構64にセットされるようにサクションノズル614を移動させる動作である。第二シーンでの糸継動作は、第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2と第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1とを接続させる動作である。
【0118】
なお、第一内層側用クリップ29C、第一外層側用クリップ29D、第二内層側用クリップ29E及び第二外層側用クリップ29Fを備える構成であっても、第一シーン及び第二シーンのそれぞれにおいて、第一糸掛動作及び第二糸掛動作の一方のみを実行させてもよい。
【0119】
以下、図21図22を用いて、糸継処理装置9Aにおける糸継処理及び糸掛処理を含む一連の動作について詳細に説明する。ここでも、上記実施形態と同様に、第二給糸パッケージP12の外層側から糸Yが解舒されているとき(上記第一シーンのとき)に、糸継装置60によって、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1と、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2との糸継ぎを行う場合を一例に説明する。
【0120】
上記実施形態と同様に、制御部94は、第一モータ622及び第二モータ632を駆動させ、サクションノズル614が第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1及び第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を捕捉可能な位置まで、アダプタ8(第一給糸パッケージP11及び第二給糸パッケージP12)を回転させる(図21のステップS41)。制御部94は、サクションガン611を起動させる(図21のステップS42)。これにより、サクションガン611は、サクションノズル614において糸Yの吸引保持が可能となる。制御部94は、アーム部612を制御して、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1をサクションノズル614に捕捉(保持)させる(図21のステップS43)。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、図22(A)に示されるように、サクションノズル614を第一外層側用クリップ29Dにまで移動させて、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一外層側用クリップ29Dに引っ掛ける(図21のステップS44:第一糸掛動作)。
【0121】
次に、制御部94は、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一外層側用クリップ29Dに引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を保持したサクションノズル614を第一ガイド機構67まで移動させて、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一ガイド機構67に引っ掛ける。制御部94は、第一ガイド機構67に設けられたポテンショメータの検出結果に基づいて、第一給糸パッケージP11の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第一給糸パッケージP11から糸Yを引き出させる。更に、制御部94は、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一ガイド機構67に引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、サクションノズル614を糸継機構64にまで移動させて、第一給糸パッケージP11の第一糸端Y1を糸継機構64にセット(案内)する(図21のステップS45:第一セット動作)。
【0122】
次に、制御部94は、サクションノズル614に第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を捕捉(保持)させる(図21のステップS46)。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、サクションノズル614を第二内層側用クリップ29Eにまで移動させて、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二内層側用クリップ29Eに引っ掛ける(図21のステップS47:第二糸掛動作)。
【0123】
次に、制御部94は、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二内層側用クリップ29Eに引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を保持したサクションノズル614を第二ガイド機構68にまで移動させて、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二ガイド機構68に引っ掛ける。制御部94は、第二ガイド機構68に設けられたポテンショメータの検出結果に基づいて、第二給糸パッケージP12の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第二給糸パッケージP12から糸Yを引き出させる。更に、制御部94は、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二ガイド機構68に引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、サクションノズル614を糸継機構64にまで移動させて、第二給糸パッケージP12の第二糸端Y2を糸継機構64にセット(案内)する(図21のステップS48:第二セット動作)。なお、その後の処理(図21のステップS49~ステップS52)は、上記実施形態の図12のステップS8~ステップS11と同じであるので、ここでの説明は省略する。
【0124】
なお、第一給糸パッケージP11の外層側から糸Yが解舒されているとき(第一給糸パッケージP11の外層側から加工部3に糸Yを供給しているとき)(第二シーン)には、糸継装置60は、第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1と、第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2との糸継ぎを行う。
【0125】
具体的には、制御部94は、アーム部612を制御して、第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2をサクションノズル614に捕捉(保持)させる。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、図22(B)に示されるように、サクションノズル614を第一内層側用クリップ29Cにまで移動させて、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一内層側用クリップ29Cに引っ掛ける(第一糸掛動作)。
【0126】
次に、制御部94は、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一内層側用クリップ29Cに引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2を保持したサクションノズル614を第一ガイド機構67にまで移動させて、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一ガイド機構67に引っ掛ける。制御部94は、第一ガイド機構67に設けられたポテンショメータの検出結果に基づいて、第一給糸パッケージP11の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第一給糸パッケージP11から糸Yを引き出させる。更に、制御部94は、第一給糸パッケージP11の糸Yを第一ガイド機構67に引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、サクションノズル614を糸継機構64にまで移動させて、第一給糸パッケージP11の第二糸端Y2を糸継機構64にセット(案内)する(第一セット動作)。
【0127】
次に、制御部94は、サクションノズル614に第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1を捕捉(保持)させる。次に、制御部94は、アーム部612を制御して、サクションノズル614を第二外層側用クリップ29Fにまで移動させて、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二外層側用クリップ29Fに引っ掛ける(第二糸掛動作)。
【0128】
次に、制御部94は、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二外層側用クリップ29Fに引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1を保持したサクションノズル614を第二ガイド機構68にまで移動させて、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二ガイド機構68に引っ掛ける。制御部94は、第二ガイド機構68に設けられたポテンショメータの検出結果に基づいて、第二給糸パッケージP12の回転量(繰出量)を調整し、所定の張力で第二給糸パッケージP12から糸Yを引き出させる。更に、制御部94は、第二給糸パッケージP12の糸Yを第二ガイド機構68に引っ掛けた状態で、アーム部612を制御して、サクションノズル614を糸継機構64にまで移動させて、第二給糸パッケージP12の第一糸端Y1を糸継機構64にセット(案内)する(第二セット動作)。以後、糸Yの弛みを取るまでの処理は、上述したとおりなので説明を省略する。
【0129】
変形例2に係る糸継処理装置9A及び給糸装置100では、第一給糸パッケージP11の内層側の糸Y、第一給糸パッケージP11の外層側の糸Y、第二給糸パッケージP12の内層側の糸Y及び第二給糸パッケージP12の外層側の糸Yのそれぞれに対応してクリップ(第一内層側用クリップ29C、第一外層側用クリップ29D、第二内層側用クリップ29E及び第二外層側用クリップ29F)が設けられている。これにより、より適切な位置及び向きに各クリップを設けることができる。この結果、各クリップにおける糸掛けの精度と安定性を更に高めることができる。
【0130】
(その他の変形例)
上記実施形態及び変形例のクリールスタンド20は、クリップ29が一対のペッグ25の中央に配置されている例を挙げて説明したが、クリップ29は一対のペッグ25のどちらか一方に近い位置に配置されてもよい。
【0131】
上記実施形態及び変形例の糸継処理装置9Aでは、一回の糸掛動作で一つの係止部に糸Yが係止される例を挙げて説明したが、一回の糸掛動作で複数の係止部に糸Yが係止されてもよい。
【0132】
上記実施形態及び変形例では、糸Yを各クリップ29,29A~29Fに案内したり、糸Yを糸継機構64に案内したりする糸掛機構61として、サクションノズル614とフック部615とを有するサクションガン611を例に挙げて説明したが、フック部615は設けられなくてもよい。この場合、フック部615を移動させることによって糸継ぎされた糸Yを糸継装置60の外に出す代わりに、糸継装置60が後退することによって糸継ぎされた糸Yを糸継装置60の外に出してもよい。
【0133】
上記実施形態及び変形例では、パッケージ交換装置9の走行ユニット90、昇降ユニット91、保持ユニット92及び交換ユニット93を統括的に制御する制御部94が、糸継装置60を制御する例を挙げて説明したが、これに限定されない。制御部94は、糸継装置60の制御するために専用に設けられてもよい。また、制御部94は、パッケージ交換装置9に設けられなくても、パッケージ交換装置9から離れた位置に、有線又は無線によって通信可能に設けられてもよい。
【0134】
上記実施形態及び変形例の糸継処理装置9Aは、第一回転機構62及び第二回転機構63を備える例を挙げて説明したが、第一回転機構62及び第二回転機構63を備えない糸継装置60を設けてもよい。この場合、例えば、上記実施形態の糸継処理装置9Aにおいて、給糸パッケージP1を回転させる動作(図12のステップS1、ステップS5、ステップS7及びステップS11等)は省略される。上記変形例についても同様に、上記実施形態の糸継処理装置9Aにおいて、給糸パッケージP1を回転させる動作は省略される。
【0135】
上記実施形態及び変形例においては、糸加工装置の一例として仮撚加工機1を例に挙げて説明したが、これに限定されない。すなわち、加工部3の一例として撚糸加工(仮撚加工)を施す装置を例に挙げて説明したが、無撚糸加工(エアージェット加工)を施す装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0136】
1…仮撚加工機、20…クリールスタンド(給糸スタンド)、25…ペッグ(第一装着部・第二装着部)、29…クリップ(係止部)、29A…第一クリップ(係止部・第一係止部)、29B…第二クリップ(係止部・第二係止部・)、29C…第一内層側用クリップ(係止部・第一係止部)、29D…第一外層側用クリップ(係止部・第一係止部)、29E…第二内層側用クリップ(係止部・第二係止部)、29F…第二外層側用クリップ(係止部・第二係止部)、60…糸継装置、611…サクションガン、612…アーム部(移動部)、613…サクションパイプ、614…サクションノズル(吸引保持部)、64…糸継機構(接続部)、66…スプライサ、9…パッケージ交換装置、9A…糸継処理装置、94…制御部、100…給糸装置、P1…給糸パッケージ、P11…第一給糸パッケージ、P12…第二給糸パッケージ、Y…糸。
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11
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