(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164356
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】樹脂成形品の射出成形方法及び射出成形金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20221020BHJP
B29C 33/44 20060101ALI20221020BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/44
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069795
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000109680
【氏名又は名称】デック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】近兼 裕也
(72)【発明者】
【氏名】大内 正広
(72)【発明者】
【氏名】畠山 一樹
(72)【発明者】
【氏名】後岡 賢悟
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AD08
4F202AD18
4F202AD24
4F202AH18
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB17
4F202CK18
4F202CQ03
4F202CQ07
4F206AD03
4F206AD08
4F206AD18
4F206AD24
4F206AH18
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB17
4F206JM04
4F206JN14
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品におけるインサート部材の位置精度を高める。
【解決手段】可動型103に、可動型側第2成形面103bで突出するブロック進出位置に進出可能なスライドブロック107と、柱状部111aを有し、可動型側第2成形面103bで突出するピン進出位置に進出可能な位置決めピン111とを設け、スライドブロック107をブロック進出位置に進出させてスライドブロック107をインサート部材15に位置決めピン111の後退方向から当接させ、位置決めピン111をピン進出位置に進出させて位置決めピン111の柱状部111aをインサート部材15の位置決め孔20に嵌合させ、かつ固定型101及び可動型103を型締めした準備状態で、キャビティC内への樹脂の射出を開始する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成形型(103)及び第2成形型(101)とインサート部材(15)との間に形成されるキャビティ(C)内へ樹脂(R)を射出充填することにより、上記インサート部材(15)がインサートされた樹脂成形品(3,25)を成形する射出成形方法であって、
上記第1成形型(103)及び上記第2成形型(101)のうちの一方の成形型(103)には、当該一方の成形型(103)の成形面(103a,103b,103d)で突出するブロック進出位置と、当該ブロック進出位置よりも反突出方向に後退するブロック後退位置とに進退可能なスライドブロック(107)が設けられ、
上記第1成形型(103)には、柱状部(111a)を有し、当該第1成形型(103)の成形面(103a,103b,103d)で突出するピン進出位置と、当該ピン進出位置よりも反突出方向に後退するピン後退位置とに進退可能な位置決めピン(111)が設けられ、
上記インサート部材(15)には、位置決め孔(20)が形成され、
上記スライドブロック(107)を上記ブロック進出位置に進出させて当該スライドブロック(107)を上記インサート部材(15)に上記位置決めピン(111)の進出方向又は後退方向から当接させ、上記位置決めピン(111)を上記ピン進出位置に進出させて上記位置決めピン(111)の柱状部(111a)を上記インサート部材(15)の位置決め孔(20)に嵌合させ、かつ上記第1成形型(103)及び上記第2成形型(101)を型締めした準備状態で、上記キャビティ(C)内への樹脂(R)の射出を開始し、
その後、上記キャビティ(C)内への樹脂(R)の射出を終了するまでに、上記位置決めピン(111)を上記ピン後退位置に後退させて上記位置決めピン(111)の柱状部(111a)全体を上記インサート部材(15)の位置決め孔(20)から離脱させるとともに、上記スライドブロック(107)を上記ブロック後退位置に後退させて上記インサート部材(15)から離間させ、上記位置決めピン及び上記スライドブロック(107)の後退により形成される空間部(S1,S2)にも上記樹脂(R)を充填することを特徴とする樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂成形品の射出成形方法において、
上記一方の成形型は、上記第1成形型(103)であり、
上記スライドブロック(107)には、ピン挿通孔(107b)が当該スライドブロック(107)の進退方向に貫通形成され、
上記位置決めピン(111)は、上記スライドブロック(107)のピン挿通孔(107b)に挿通され、
上記スライドブロック(107)及び上記位置決めピン(111)は、共通の進出方向及び共通の後退方向に進退可能であり、
上記第1成形型(103)には、上記位置決めピン(111)を上記共通の後退方向に付勢するピン付勢手段(113)と、上記スライドブロック(107)を上記共通の後退方向に付勢するブロック付勢手段(109)と、上記位置決めピン(111)及び上記スライドブロック(107)に上記共通の後退方向から当接するカム部材(115)とがさらに設けられ、
上記カム部材(115)の上記位置決めピン(111)及び上記スライドブロック(107)との当接面には、第1面部(115a)と、当該第1面部(115a)よりも上記共通の後退方向に位置する第2面部(115b)とが、上記ピン挿通孔(107b)の貫通方向と略直交する直交方向の一方側から順に互いに離間して形成され、上記第2面部(115b)には、上記直交方向に延びる溝部(115c)が形成され、上記第1面部(115a)と上記第2面部(115b)及び上記溝部(115c)の底面との間には、上記直交方向の他方に向かって上記共通の後退方向に傾斜する傾斜面部(115d)が形成され、
上記カム部材(115)は、上記第1面部(115a)を上記位置決めピン(111)及び上記スライドブロック(107)に当接させ、上記位置決めピン(111)を上記ピン付勢手段の付勢力(113)に抗して上記ピン進出位置に進出させるとともに、上記スライドブロック(107)を上記ブロック付勢手段(109)の付勢力に抗して上記ブロック進出位置に進出させる第1スライド位置と、上記溝部(115c)の底面を上記位置決めピン(111)に当接させ、上記位置決めピン(111)を上記ピン後退位置に後退させるとともに、上記第2面部(115b)の溝部(115c)非形成領域を上記スライドブロック(107)に当接させ、上記スライドブロック(107)を上記ブロック後退位置に後退させる第2スライド位置とにスライド可能であり、
上記準備状態では、上記カム部材(115)を上記第1スライド位置に配置し、
上記キャビティ(C)内への樹脂(R)の射出を開始してから終了するまでに、上記カム部材(115)を上記第1スライド位置から上記第2スライド位置にスライドさせることを特徴とする樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂成形品の射出成形方法において、
当該位置決めピン(111)の突出側端部には、突出方向に向かって徐々に細くなる先細り部(111b)が上記柱状部(111a)と連続して形成されていることを特徴とする樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂成形品の射出成形方法において、
上記準備状態で、上記位置決めピン(111)の先細り部(111b)と、上記第2成形型(101)の成形面(101a,101b,101c)とが間隔(D)を空けていることを特徴とする樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の樹脂成形品の射出成形方法において、
上記位置決めピン(111)は、上記ピン後退位置で上記先細り部(111b)全体を上記第1成形型(103)の成形面(103a,103b,103d)において突出させることを特徴とする樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂成形品の射出成形方法において、
上記樹脂成形品(3)には、凹部(10)が形成され、
上記樹脂成形品(3)の離型前に、上記位置決めピン(111)を、上記樹脂成形品(3)の凹部(10)に係合することで上記樹脂成形品(3)の離型を妨げる位置から、上記第1成形型(103)の成形面(103a,103b,103d)において突出しない非突出位置に後退させることにより、上記樹脂成形品(3)を離型できるようにすることを特徴とする樹脂成形品の射出成形方法。
【請求項7】
第1成形型(103)及び第2成形型(101)を備え、上記第1成形型(103)及び上記第2成形型(101)とインサート部材(15)との間に形成されるキャビティ(C)内へ樹脂(R)を射出充填することにより、上記インサート部材(15)がインサートされた樹脂成形品(3,25)を成形する射出成形金型であって、
上記第1成形型(103)及び上記第2成形型(101)のうちの一方の成形型(103)には、当該一方の成形型(103)の成形面(103a,103b,103d)で突出するブロック進出位置と、当該ブロック進出位置よりも反突出方向に後退するブロック後退位置とに進退可能なスライドブロック(107)が設けられ、
上記第1成形型(103)には、柱状部(111a)を有し、当該第1成形型(103)の成形面で突出するピン進出位置と、当該ピン進出位置よりも反突出方向に後退するピン後退位置とに進退可能な位置決めピン(111)が設けられていることを特徴とする射出成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1成形型及び第2成形型とインサート部材との間に形成されるキャビティ内へ樹脂を射出充填することにより、上記インサート部材がインサートされた樹脂成形品を成形する射出成形方法及び射出成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1成形型及び第2成形型とインサート部材との間に形成されるキャビティ内へ樹脂を射出充填することにより、上記インサート部材がインサートされた樹脂成形品を成形する射出成形方法が開示されている。この射出成形方法では、第1成形型に支持部材を当該第1成形型の成形面から突出可能に設け、当該支持部材にインサート部材を載置した状態で、上記キャビティ内への樹脂の射出を開始するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、上記キャビティ内への樹脂の射出の開始時に、支持部材の突出方向と直交する方向へのインサート部材の移動が規制されないので、樹脂の射出圧によりインサート部材が支持部材の突出方向と直交する方向に動き、樹脂成形品におけるインサート部材の位置精度の悪化を招く虞がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂成形品におけるインサート部材の位置精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、第1成形型に設けた位置決めピンをインサート部材の位置決め孔に挿入できるようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1~第6の発明は、第1成形型及び第2成形型とインサート部材との間に形成されるキャビティ内へ樹脂を射出充填することにより、上記インサート部材がインサートされた樹脂成形品を成形する射出成形方法を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記第1成形型及び上記第2成形型のうちの一方の成形型には、当該一方の成形型の成形面で突出するブロック進出位置と、当該ブロック進出位置よりも反突出方向に後退するブロック後退位置とに進退可能なスライドブロックが設けられ、上記第1成形型には、柱状部を有し、当該第1成形型の成形面で突出するピン進出位置と、当該ピン進出位置よりも反突出方向に後退するピン後退位置とに進退可能な位置決めピンが設けられ、上記インサート部材には、位置決め孔が形成され、上記スライドブロックを上記ブロック進出位置に進出させて当該スライドブロックを上記インサート部材に上記位置決めピンの進出方向又は後退方向から当接させ、上記位置決めピンを上記ピン進出位置に進出させて上記位置決めピンの柱状部を上記インサート部材の位置決め孔に嵌合させ、かつ上記第1成形型及び上記第2成形型を型締めした準備状態で、上記キャビティ内への樹脂の射出を開始し、その後、上記キャビティ内への樹脂の射出を終了するまでに、上記位置決めピンを上記ピン後退位置に後退させて上記位置決めピンの柱状部全体を上記インサート部材の位置決め孔から離脱させるとともに、上記スライドブロックを上記ブロック後退位置に後退させて上記インサート部材から離間させ、上記位置決めピン及び上記スライドブロックの後退により形成される空間部にも上記樹脂を充填することを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に係る樹脂成形品の射出成形方法において、上記一方の成形型は、上記第1成形型であり、上記スライドブロックには、ピン挿通孔が当該スライドブロックの進退方向に貫通形成され、上記位置決めピンは、上記スライドブロックのピン挿通孔に挿通され、上記スライドブロック及び上記位置決めピンは、共通の進出方向及び共通の後退方向に進退可能であり、上記第1成形型には、上記位置決めピンを上記共通の後退方向に付勢するピン付勢手段と、上記スライドブロックを上記共通の後退方向に付勢するブロック付勢手段と、上記位置決めピン及び上記スライドブロックに上記共通の後退方向から当接するカム部材とがさらに設けられ、上記カム部材の上記位置決めピン及び上記スライドブロックとの当接面には、第1面部と、当該第1面部よりも上記共通の後退方向に位置する第2面部とが、上記ピン挿通孔の貫通方向と略直交する直交方向の一方側から順に互いに離間して形成され、上記第2面部には、上記直交方向に延びる溝部が形成され、上記第1面部と上記第2面部及び上記溝部の底面との間には、上記直交方向の他方に向かって上記共通の後退方向に傾斜する傾斜面部が形成され、上記カム部材は、上記第1面部を上記位置決めピン及び上記スライドブロックに当接させ、上記位置決めピンを上記ピン付勢手段の付勢力に抗して上記ピン進出位置に進出させるとともに、上記スライドブロックを上記ブロック付勢手段の付勢力に抗して上記ブロック進出位置に進出させる第1スライド位置と、上記溝部の底面を上記位置決めピンに当接させ、上記位置決めピンを上記ピン後退位置に後退させるとともに、上記第2面部の溝部非形成領域を上記スライドブロックに当接させ、上記スライドブロックを上記ブロック後退位置に後退させる第2スライド位置とにスライド可能であり、上記準備状態では、上記カム部材を上記第1スライド位置に配置し、上記キャビティ内への樹脂の射出を開始してから終了するまでに、上記カム部材を上記第1スライド位置から上記第2スライド位置にスライドさせることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る樹脂成形品の射出成形方法において、当該位置決めピンの突出側端部には、突出方向に向かって徐々に細くなる先細り部が上記柱状部と連続して形成されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第3の発明に係る樹脂成形品の射出成形方法において、上記準備状態で、上記位置決めピンの先細り部と、上記第2成形型の成形面とが間隔を空けていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第3又は第4の発明に係る樹脂成形品の射出成形方法において、上記位置決めピンは、上記ピン後退位置で上記先細り部全体を上記第1成形型の成形面において突出させることを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第1~第5の発明のいずれか1つに係る樹脂成形品の射出成形方法において、上記樹脂成形品には、凹部が形成され、上記樹脂成形品の離型前に、上記位置決めピンを、上記樹脂成形品の凹部に係合することで上記樹脂成形品の離型を妨げる位置から、上記第1成形型の成形面において突出しない非突出位置に後退させることにより、上記樹脂成形品を離型できるようにすることを特徴とする。
【0014】
第7の発明は、第1成形型及び第2成形型を備え、上記第1成形型及び上記第2成形型とインサート部材との間に形成されるキャビティ内へ樹脂を射出充填することにより、上記インサート部材がインサートされた樹脂成形品を成形する射出成形金型であって、上記第1成形型及び上記第2成形型のうちの一方の成形型には、当該一方の成形型の成形面で突出するブロック進出位置と、当該ブロック進出位置よりも反突出方向に後退するブロック後退位置とに進退可能なスライドブロックが設けられ、上記第1成形型には、柱状部を有し、当該第1成形型の成形面で突出するピン進出位置と、当該ピン進出位置よりも反突出方向に後退するピン後退位置とに進退可能な位置決めピンが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、キャビティ内への樹脂の射出の開始時に、樹脂の射出圧によってインサート部材が位置決めピンの進退方向と直交する方向に移動するのを位置決めピンが規制するので、樹脂成形品におけるインサート部材の位置精度を高められる。
【0016】
また、キャビティ内への樹脂の射出の開始時に、スライドブロックをインサート部材に位置決めピンの進出方向又は後退方向から当接させることで、インサート部材を位置決めピンの進退方向に位置決めできる。
【0017】
また、キャビティ内への樹脂の射出を終了するまでに、位置決めピンを後退させて柱状部全体をインサート部材の位置決め孔から離脱させ、位置決めピンの後退により形成される空間部にも樹脂を充填するので、インサート部材の位置決め孔を樹脂で被覆できる。
【0018】
また、キャビティ内への樹脂の射出を終了するまでに、スライドブロックを後退させてインサート部材から離間させ、スライドブロックの後退により形成される空間部にも樹脂を充填するので、インサート部材における準備状態でのスライドブロックとの当接箇所を樹脂で被覆できる。
【0019】
第2の発明によれば、位置決めピン及びスライドブロックを、カム部材のスライド動作によって進退させるので、油圧システムによって進退させる場合に比べ、第1成形型を小型化するとともに設備コストを削減できる。
【0020】
第3の発明によれば、位置決めピンの突出側端面を、インサート部材の位置決め孔の開口と同じ大きさ及び形状の平坦面にした場合に比べ、位置決めピンをインサート部材の位置決め孔に容易に挿入できる。
【0021】
第4の発明によれば、第2成形型の成形面が、位置決めピンの先細り部によって傷つけられないので、第2成形型の成形面に凹凸を設け、当該凹凸によって樹脂成形面の表面にシボ模様を形成すること等が可能になる。したがって、樹脂成形品のデザインの自由度を高められる。
【0022】
第5の発明によれば、ピン後退位置で位置決めピンの先細り部を第1成形型の成形面よりも後退させた場合に比べ、樹脂成形品の位置決めピン対応箇所に突起が形成されず、樹脂の使用量を削減して材料コストを抑えることができる。
【0023】
第6の発明によれば、キャビティ内への樹脂の射出の終了時における位置決めピンの位置を、樹脂成形品の離型を妨げる位置に設定できるので、樹脂成形品の形状の自由度を高められる。
【0024】
第7の発明によれば、位置決めピンの柱状部を嵌合させる位置決め孔をインサート部材に形成した場合に、スライドブロックを上記ブロック進出位置に進出させて当該スライドブロックをインサート部材に位置決めピンの進出方向又は後退方向から当接させ、位置決めピンを上記ピン進出位置に進出させて位置決めピンの柱状部をインサート部材の位置決め孔に嵌合させた準備状態で、キャビティ内への樹脂の射出を開始し、その後、キャビティ内への樹脂の射出を終了するまでに、位置決めピンをピン後退位置に後退させて位置決めピンの柱状部全体をインサート部材の位置決め孔から離脱させるとともに、スライドブロックをブロック後退位置に後退させてインサート部材から離間させ、位置決めピン及びスライドブロックの後退により形成される空間部にも樹脂を充填することができる。したがって、樹脂成形品におけるインサート部材の位置精度を高められる。また、インサート部材の位置決め孔と、インサート部材における準備状態でのスライドブロックとの当接箇所を樹脂で被覆できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態1に係る射出成形方法により射出成形された樹脂成形品としてのインナパネルを備えた車両用バックドアの分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る射出成形方法において、準備状態を示す成形工程図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る射出成形方法において、キャビティ内に樹脂を射出充填した状態を示す成形工程図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係る射出成形方法において、インナパネルを可動型から離型する直前の状態を示す成形工程図である。
【
図7】1対のスライドブロック、1対の位置決めピン、及び1対のカム部材の斜視図である。
【
図12】実施形態2に係るカム部材の斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態3に係る射出成形方法により射出成形された樹脂成形品としての板状部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0027】
(実施形態1)
図1は、ハッチバック車の車体後端に設けられたドア開口を開閉する上下開閉式の車両用バックドア1を示す。
【0028】
バックドア1は、車内側に位置する樹脂成形品としてのインナパネル3と、車外側に位置する樹脂製のアウタパネル5と、図示しない窓パネルとを備える。
【0029】
インナパネル3は、アウタパネル5と対向する略板状の板部7を有する。板部7の上半部分には、車幅方向に延びる略矩形状の窓用の開口9が形成されている。インナパネル3の板部7の外周側の端縁には、アウタパネル5側に立ち上がる外側周壁部11が全周に亘って環状に設けられている。車幅方向両側の外側周壁部11の内周側の面における上端寄りの箇所、及び上下方向略中央の箇所には、
図2に示すように、反解放側に向けて徐々に幅狭となる円錐状の1対の凹部10が外側周壁部11の立ち上がり方向に間隔を空けて形成されている。板部7の開口9側の端縁には、アウタパネル5側に立ち上がる開口側周壁部13が全周に亘って環状に設けられている。
【0030】
インナパネル3の上半部の車幅方向両端部には、
図3にも示す鉄製のインサート部材15が一体にインサートされている。インサート部材15は、板面をインナパネル3の板部7の板厚方向に向けた板状の主板部17を有している。主板部17は、開口9の上端縁に沿って延びる第1板部17aと、第1板部17aの車幅方向外側の端部から車幅方向外側に向かって下方に傾斜して延びる第2板部17bと、第2板部17bの下端部(車幅方向外側の端部)から下方に向けて延びる第3板部17cとで平面視略への字状に形成されている。主板部17の第3板部17cの車幅方向外側の端縁には、板面を車幅方向に向けた突出板部19がアウタパネル5側に向けて突設されている。突出板部19の上端部近傍及び下端部近傍には、それぞれ、断面円形状の1対の位置決め孔20が突出板部19の突出方向に間隔を空けて貫通形成されている。各インサート部材15全体が、インナパネル3に埋設され、インサート部材15の位置決め孔20は、板部7の凹部10に対応する箇所に位置している。
【0031】
図4~6は、本発明の実施形態1に係る樹脂成形品の射出成形方法として、上述のように構成されたインナパネル3の射出成形方法を示す。
【0032】
成形に際し、
図4及び
図5に示すような射出成形金型100と、上記インサート部材15とを用意する。射出成形金型100は、第2成形型としての固定型101と、第1成形型としての可動型103とを備えている。
【0033】
固定型101は、インナパネル3の板部7の反アウタパネル5側の面を成形する固定型側第1成形面101aと、外側周壁部11の外周側の面を成形する固定型側第2成形面101bを有している。固定型側第1成形面101aは、略鉛直下方に向いている。一方、固定型側第2成形面101bは、略水平方向に向いている。
【0034】
可動型103は、インナパネル3の板部7のアウタパネル5側の面を成形する可動型側第1成形面103aと、外側周壁部11の内周側の面を成形する可動型側第2成形面103bと、外側周壁部11の端面(アウタパネル5側の端面)を成形する可動型側第3成形面103cとを有している。可動型側第1成形面103a及び可動型側第3成形面103cは、略鉛直上方に向いている。一方、可動型側第2成形面103bは、略水平方向に向いている。
【0035】
可動型103は、可動型本体部105と、4つのスライドブロック107(
図4~
図6中、2つのみを図示する。)と、ブロック付勢手段としての複数の第1バネ109と、4つの位置決めピン111と、ピン付勢手段としての複数の第2バネ113と、4つのカム部材115とを備えている。
【0036】
可動型本体部105は、可動型側第2成形面103bの一部を構成する本体部成形面105aを有している。この本体部成形面105aには、断面円形の4つのブロック嵌合孔105bが貫通形成されている。
【0037】
各スライドブロック107は、円筒状のブロック本体部107aを有している。ブロック本体部107aは、その長手方向を可動型本体部105のブロック嵌合孔105bの貫通方向に向けた状態で、ブロック嵌合孔105bに嵌合している。スライドブロック107は、
図4に示すように可動型側第2成形面103bで突出するブロック進出位置と、
図5及び
図6に示すように当該ブロック進出位置よりも反突出方向に後退するブロック後退位置とに進退可能になっている。スライドブロック107のブロック本体部107aには、断面円形状のピン挿通孔107bがスライドブロック107の進退方向に貫通形成されている。ブロック本体部107aの反突出側端部近傍の外周面には、環状の突条部107cが張出形成され、可動型本体部105にスライドブロック107の後退方向から対向している。
【0038】
第1バネ109は、可動型本体部105と、スライドブロック107の突条部107cとの間に縮装された状態で、スライドブロック107を後退方向に付勢している。
【0039】
各位置決めピン111は、
図4に示すように可動型側第2成形面103bで突出するピン進出位置と、
図5に示すように上記ピン進出位置よりも反突出方向に後退するピン後退位置と、
図6に示すように上記ピン後退位置よりもさらに後退し、可動型側第2成形面103bから突出しない非突出位置とに進退可能になっている。したがって、スライドブロック107及び位置決めピン111は、共通の進出方向及び共通の後退方向に進退可能になっている。位置決めピン111は、円柱形状の柱状部111aを有し、当該柱状部111aは、その長手方向をスライドブロック107のピン挿通孔107bの挿通方向に向けた状態で、ピン挿通孔107bに挿通されている。柱状部111aの突出側には、突出方向に向かって徐々に細くなる先細り部111bが柱状部111aと連続して形成されて位置決めピン111の突出側端部を構成している。位置決めピン111の柱状部111aの反突出側端部寄りの外周面には、環状の張出部111cが張出形成され、スライドブロック107に位置決めピン111の後退方向から対向している。
【0040】
第2バネ113は、スライドブロック107と、位置決めピン111の張出部111cとの間に縮装された状態で、位置決めピン111を後退方向に付勢している。
【0041】
各カム部材115は、
図7にも示すように、板面を水平方向に向けた略長方形板状に形成され、その一方の面を位置決めピン111及びスライドブロック107に、位置決めピン111及びスライドブロック107の後退方向から当接させている。カム部材115の位置決めピン111及びスライドブロック107との当接面には、第1面部115aと、当該第1面部115aよりも位置決めピン111及びスライドブロック107の後退方向に位置する第2面部115bとが、カム部材115の長手方向(上記ピン挿通孔107bの貫通方向と略直交する直交方向)の一方側から順に互いに離間して形成されている。第2面部115bには、カム部材115の長手方向(ピン挿通孔107bの貫通方向と略直交する直交方向)に延びる溝部115cが形成されている。第1面部115aと第2面部115b及び溝部115cの底面との間には、カム部材115の長手方向(ピン挿通孔107bの貫通方向と略直交する直交方向)の他方に向かって位置決めピン111及びスライドブロック107の後退方向に傾斜する第1傾斜面部115dが形成されている。また、溝部115cの底面には、第3面部115eと、当該第3面部115eよりも位置決めピン111及びスライドブロック107の後退方向に位置する第4面部115fとが、カム部材115の長手方向(ピン挿通孔107bの貫通方向と略直交する直交方向)の一方側から順に互いに離間して形成されている。第3面部115eと第4面部115fとの間には、第3面部115eから第4面部115fに向かって位置決めピン111及びスライドブロック107の後退方向に傾斜する第2傾斜面部115gが形成されている。
【0042】
各カム部材115は、図示しない駆動装置の駆動によって、
図4に示す第1スライド位置、
図5に示す第2スライド位置、及び
図6に示す第3スライド位置にスライド可能である。
【0043】
カム部材115は、
図4に示すように、第1スライド位置で、第1面部115aを位置決めピン111及びスライドブロック107に当接させ、位置決めピン111を第2バネ113の付勢力に抗して上記ピン進出位置に進出させるとともに、スライドブロック107を第1バネ109の付勢力に抗して上記ブロック進出位置に進出させる。また、カム部材115は、
図5に示すように、第2スライド位置で、溝部115cの底面の第3面部115eを位置決めピン111に当接させ、位置決めピン111を上記ピン後退位置に後退させるとともに、第2面部115bの溝部115c非形成領域をスライドブロック107に当接させ、スライドブロック107を上記ブロック後退位置に後退させる。また、カム部材115は、
図6に示すように、第3スライド位置で、第2面部115bの溝部115c非形成領域をスライドブロック107に当接させたまま、溝部115cの第4面部115fを位置決めピン111に当接させ、位置決めピン111を上記非突出位置に後退させる。
【0044】
そして、可動型103を下降させて射出成形金型100を型開きし、かつカム部材115を第1スライド位置に配置することにより、スライドブロック107を第1バネ109の付勢力に抗して上記ブロック進出位置に進出させ、かつ位置決めピン111を第2バネ113の付勢力に抗して上記ピン進出位置に進出させる。この状態で、
図4に示すように、インサート部材15の位置決め孔20に位置決めピン111を挿入することにより、位置決めピン111の柱状部111aをインサート部材15の位置決め孔20に嵌合させるとともに、インサート部材15の位置決め孔20周りの突出板部19にスライドブロック107のブロック本体部107aの突出側端面を位置決めピン111の後退方向から当接させる。これにより、インサート部材15を可動型103に対して位置決めピン111の進退方向及び位置決めピン111の突出方向と直交する方向に位置決めできる。このとき、位置決めピン111の突出側端部に、突出方向に向かって徐々に細くなる先細り部111bを設けているので、位置決めピン111の突出側端面を、インサート部材15の位置決め孔20の開口と同じ大きさ及び形状の平坦面にした場合に比べ、位置決めピン111をインサート部材15の位置決め孔20に容易に挿入できる。
【0045】
次いで、上述のようにインサート部材15を可動型103に対して位置決めした状態で、可動型103を上昇させて射出成形金型100を型締めすることにより、
図4に示すように、固定型101及び可動型103とインサート部材15との間にキャビティCを形成した準備状態とする。この準備状態で、位置決めピン111の先端、すなわち先細り部111bと、固定型101の固定型側第2成形面101bとは、互いに間隔Dを空けている。そして、この準備状態で、キャビティC内への樹脂Rの射出を開始する。このとき、位置決めピン111の柱状部111aがインサート部材15の位置決め孔20に嵌合した状態で、インサート部材15が位置決めピン111の突出方向と直交する方向に移動するのを規制するので、インナパネル3におけるインサート部材15の位置精度を高められる。
【0046】
その後、キャビティC内への樹脂Rの射出が終了するまでの間に、駆動装置の駆動によってカム部材115を第2スライド位置に向けてスライドさせる。これにより、位置決めピン111及びスライドブロック107は、カム部材115の第1傾斜面部115dに摺接しながら徐々に後退する。カム部材115を第2スライド位置までスライドさせると、位置決めピン111が上記ピン後退位置まで後退するとともに、スライドブロック107が上記ブロック後退位置まで後退する。位置決めピン111は、上記ピン後退位置において、柱状部111a全体をインサート部材15の位置決め孔20から離脱させるとともに、先細り部111b全体を可動型103の可動型側第2成形面103bにおいて突出させる。また、スライドブロック107を上記ブロック後退位置に後退させた状態で、スライドブロック107はインサート部材15から離間し、スライドブロック107のブロック本体部107aの突出側端面が可動型本体部105の本体部成形面105aと面一をなしている。なお、カム部材115を第2スライド位置にスライドさせるタイミングは、位置決めピン111の柱状部111aをインサート部材15の位置決め孔20から離脱させてもインサート部材15が位置決めピン111の突出方向と直交する方向に移動せず、かつスライドブロック107をインサート部材15から離間させてもインサート部材15が位置決めピン111の後退方向に移動しない程度に樹脂RがキャビティC内に射出されているタイミングである。そして、キャビティC内への樹脂Rの射出を引き続き行うことにより、位置決めピン111の後退により形成される空間部S1及びスライドブロック107の後退により形成される空間部S2を含むキャビティC内全体に樹脂Rを射出充填し、キャビティC内への樹脂Rの射出を終了する。
【0047】
このように、位置決めピン111の後退により形成される空間部S1にも樹脂Rを充填するので、準備状態において位置決めピン111の突出側端部と固定型101の固定型側第2成形面101bとが接近する場合でも、インナパネル3における位置決めピン111対応箇所を厚くできる。したがって、インナパネル3における位置決めピン111対応箇所が薄過ぎることに起因してヒケ、艶ムラ、及び穴開きがインナパネル3に生じるのを抑制できる。
【0048】
また、位置決めピン111を後退させて柱状部111a全体をインサート部材15の位置決め孔20から離脱させ、位置決めピン111の後退により形成される空間部S1にも樹脂Rを充填するので、インサート部材15の位置決め孔20を樹脂Rで被覆できる。
【0049】
また、スライドブロック107を後退させることによりインサート部材15から離間させ、スライドブロック107の後退により形成される空間部S2にも樹脂R2を充填するので、インサート部材15における準備状態でのスライドブロック107との当接箇所を樹脂Rで被覆できる。
【0050】
また、後退位置で位置決めピン111の先細り部111bを可動型103の可動型側第2成形面103bよりも後退させた場合に比べ、空間部S1に充填される樹脂Rにより突起が形成されず、樹脂Rの使用量を削減して材料コストを抑えることができる。
【0051】
このように位置決めピン111をピン後退位置に後退させ、かつスライドブロック107をブロック後退位置に後退させた状態で樹脂Rが固まり、インサート部材15がインサートされたインナパネル3が成形される。このとき、位置決めピン111の先細り部111bが、インナパネル3の凹部10に係合することで、インナパネル3の離型を妨げている。つまり、インナパネル3の凹部10が、可動型103から取り外せない形状のアンダーカット部を構成している。
【0052】
その後、可動型103を下降させて型開きするとともに、
図6に示すように、カム部材115を第2スライド位置から第3スライド位置にスライドさせることにより、位置決めピン111を可動型103の可動型側第2成形面103bから突出しない非突出位置にさらに後退させ、インナパネル3を離型できるようにする。そして、この状態で、インナパネル3を可動型103から上方(
図6中矢印Xで示す方向)に取り出す。
【0053】
このように、インナパネル3の離型前に位置決めピン111を非突出位置に後退させるので、キャビティC内への樹脂Rの射出の終了時における位置決めピン111の位置を、インナパネル3の離型を妨げる位置に設定でき、インナパネル3の形状の自由度を高められる。
【0054】
したがって、本実施形態1によれば、位置決めピン111及びスライドブロック107を、カム部材115のスライド動作によって進退させるので、油圧システムによって進退させる場合に比べ、可動型103を小型化するとともに設備コストを削減できる。
【0055】
また、準備状態で位置決めピン111の先細り部111bが固定型101の固定型側第2成形面101bに当たらず、固定型101の固定型側第2成形面101bが位置決めピン111の先細り部111bによって傷つけられないので、固定型側第2成形面101bに凹凸を設け、当該凹凸によってインナパネル3の表面(反アウタパネル5側の面)にシボ模様を形成することが可能になる。したがって、インナパネル3のデザインの自由度を高められる。
【0056】
(実施形態2)
図8は、実施形態2の
図1相当図である。本実施形態2に係る射出成形方法により射出成形されたインナパネル3では、
図9にも示すように、凹部10が、板部7の上半部の車幅方向両端部にそれぞれ4つずつ板部7の外周縁に沿う方向に互いに間隔を空けて形成されている。
【0057】
また、インサート部材15に突出板部19が形成されていない。インサート部材15の主板部17の外周側端縁には、外周側側壁部21がアウタパネル5側に向けて突設され、主板部17の内周側端縁には、内周側側壁部23がアウタパネル5側に向けて突設されている。各インサート部材15の位置決め孔20が、主板部17の延びる方向に互いに間隔を空けて4つずつ形成されている。
【0058】
また、
図10に示すように、本実施形態2に係る射出成形方法に用いる射出成形金型100では、可動型本体部105の本体部成形面105aが、可動型側第1成形面103aの一部を構成する。各スライドブロック107が、ブロック本体部107aを可動型側第1成形面103aで突出させるブロック進出位置と、
図11に示すように当該ブロック進出位置よりも反突出方向に後退するブロック後退位置とに進退可能になっている。
【0059】
また、各位置決めピン111が、
図10に示すように可動型側第1成形面103aで突出するピン進出位置と、
図11に示すように上記ピン進出位置よりも反突出方向に後退するピン後退位置とに進退可能になっている。
【0060】
さらに、
図12にも示すように、カム部材115に、第4面部115f及び第2傾斜面部115gが形成されていない。カム部材115は、
図10に示す第1スライド位置、
図11に示す第2スライド位置にスライド可能である。
【0061】
本実施形態2では、位置決めピン111をピン後退位置に配置した状態で、位置決めピン111の先細り部111bがインナパネル3の離型を妨げないので、インナパネル3の離型前に、可動型103の可動型側第1成形面103aから突出しない非突出位置に位置決めピン111を後退させない。
【0062】
その他のインナパネル3の射出成形金型100及び射出成形方法は、実施形態1と同様であるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0063】
(実施形態3)
図13及び
図14は、本発明の実施形態3に係る射出成形方法により射出成形された長方形板状の樹脂成形品としての板状部材25を示す。この板状部材25の表面(
図13及び
図14中下側の面)は平坦に形成されている。一方、板状部材25の裏面の中央には、反解放側に向けて徐々に幅狭となる四角錐状の凹部10が形成されている。
【0064】
板状部材25には、長方形板状の鉄製のインサート部材15が一体にインサートされている。インサート部材15の中央には、断面正方形状(矩形状)の位置決め孔20が貫通形成されている。
【0065】
図15は、本発明の実施形態3に係る樹脂成形品の射出成形方法における準備状態を示す。
【0066】
固定型101は、板状部材25の表面を成形する固定型側表面用成形面101cと、板状部材25の外周端面のうち表面側の略半分の領域を成形する固定型側端面用成形面101dとを有している。固定型側表面用成形面101cは、略鉛直下方に向いている。一方、固定型側端面用成形面101dは、略水平方向に向いている。
【0067】
可動型103は、板状部材25の裏面を成形する可動型側裏面用成形面103dと、板状部材25の外周端面のうち裏面側の略半分の領域を成形する可動型側端面用成形面103eとを有している。可動型側裏面用成形面103dは、略鉛直上方に向いている。一方、可動型側端面用成形面103eは、略水平方向に向いている。
【0068】
本実施形態3では、可動型本体部105の本体部成形面105aが、可動型側裏面用成形面103dの一部を構成する。可動型103に、スライドブロック107が1つだけ設けられ、当該スライドブロック107は、
図15に示すようにブロック本体部107aを可動型側裏面用成形面103dで突出させるブロック進出位置と、当該ブロック進出位置よりも反突出方向に後退するブロック後退位置とに進退可能になっている。
【0069】
また、可動型103に位置決めピン111も1つだけ設けられ、
図15に示すように可動型側第1成形面103aで突出するピン進出位置と、上記ピン進出位置よりも反突出方向に後退するピン後退位置とに進退可能になっている。
【0070】
また、位置決めピン111の柱状部111aが四角柱状に形成され、先細り部111bが四角錐形状に形成されている。また、スライドブロック107のピン挿通孔107bも断面矩形状に形成されている。
【0071】
また、可動型103にカム部材115も1つだけ設けられる。
【0072】
その他の板状部材25の射出成形金型100及び射出成形方法は、実施形態2と同様であるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0073】
したがって、本実施形態3によれば、インサート部材15の位置決め孔20を断面矩形状とし、位置決めピン111の柱状部111aを四角柱状としたので、準備状態で位置決めピン111が、位置決めピン111を中心としたインサート部材15の回動を規制する。したがって、インナパネル3におけるインサート部材15の位置精度を高められる。
【0074】
なお、上記実施形態1,2では、インサート部材15を鉄で構成したが、アルミニウムや真鍮等、他の金属で構成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態1,2では、位置決めピン111の柱状部111aを円柱形状とし、先細り部111bを円錐形状としたが、柱状部111aを四角柱形状とし、先細り部111bを四角錐形状としてもよい。また、上記実施形態1~3において、柱状部111aの断面を円及び四角以外の形状としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態1~3において、位置決めピン111の先細り部111bを錐体以外の形状としてもよい。例えば、位置決めピン111の先細り部111bを円錐台、角錐台等、截頭錐体の形状としてもよいし、先端に向かって徐々に幅狭となるように湾曲した形状としてもよい。
【0077】
また、上記実施形態1~3では、インサート部材15の位置決め孔20を断面円形状又は断面矩形状としたが、位置決めピン111の柱状部111aと嵌合可能な形状であれば、他の形状としてもよい。
【0078】
また、上記実施形態1~3では、インサート部材15の位置決め孔20を貫通孔としたが、有底の孔としてもよい。
【0079】
また、上記実施形態1~3では、スライドブロック107を可動型103に設けたが、固定型101に設けてもよい。
【0080】
また、上記実施形態1~3では、位置決めピン111を可動型103に設けたが、固定型101に設けてもよい。
【0081】
また、上記実施形態1~3では、準備状態でスライドブロック107をインサート部材15に位置決めピン111の後退方向から当接させたが、進出方向から当接させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、第1成形型及び第2成形型とインサート部材との間に形成されるキャビティ内へ樹脂を射出充填することにより、上記インサート部材がインサートされた樹脂成形品を成形する射出成形方法及び射出成形金型として有用である。
【符号の説明】
【0083】
3 インナパネル(樹脂成形品)
10 凹部
15 インサート部材
20 位置決め孔
25 板状部材(樹脂成形品)
100 射出成形金型
101 固定型(第2成形型)
101b 固定型側第2成形面
101c 固定型側表面用成形面
103 可動型(第1成形型)
103a 可動型側第1成形面
103b 可動型側第2成形面
103d 可動型側裏面用成形面
107 スライドブロック
107b ピン挿通孔
109 第1バネ(ブロック付勢手段)
111 位置決めピン
111a 柱状部
111b 先細り部
113 第2バネ(ピン付勢手段)
115 カム部材
115a 第1面部
115b 第2面部
115c 溝部
115d 第1傾斜面部
C キャビティ
D 間隔
S1,S2 空間部