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特開2022-164366光スプリッター、光部品および検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164366
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】光スプリッター、光部品および検出装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20221020BHJP
   G02B 6/28 20060101ALI20221020BHJP
   G02B 6/30 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G02B6/125 311
G02B6/125 301
G02B6/28 T
G02B6/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069807
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 信介
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
【Fターム(参考)】
2H137AA14
2H137AB09
2H137AC02
2H137AC12
2H137BA06
2H137BA15
2H137BA46
2H137BA55
2H137BB02
2H137BB12
2H137BC51
2H137CA12A
2H137CA12B
2H137CA33
2H137CC01
2H137DA12
2H137DA13
2H137DA14
2H137DB04
2H137EA02
2H137FA03
2H137FA06
2H147AA02
2H147BA09
2H147BA11
2H147BA12
2H147BD01
2H147BD02
2H147BD20
2H147BE12
2H147BE13
2H147CA05
2H147CA13
2H147CB01
2H147CB03
2H147CC02
2H147CC12
2H147CD02
2H147DA02
2H147DA19
2H147EA16A
2H147EA16B
2H147EA16C
2H147EA17A
2H147EA17B
2H147EA17C
2H147EA18A
2H147EA18B
2H147EA19A
2H147EA19B
2H147EA20A
2H147EA20B
2H147EA25B
2H147FC08
2H147GA10
2H147GA12
2H147GA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】分岐型導光路間の損失バラつきが抑えられ、かつ、製造が容易な光スプリッター、および、光スプリッターを備える光部品および検出装置を提供する。
【解決手段】光スプリッター1は、分岐前コア部121、第1分岐後コア部122、第2分岐後コア部123、および、分岐前コア部を第1分岐後コア部と第2分岐後コア部とに分岐する分岐部124、を有する分岐型導光路120を複数備え、分岐型導光路同士が同一平面内で交差しており、隣り合う分岐型導光路の分岐比が、互いに等しい。そして、分岐前コア部に光を反射する構造体PRが接続されるように用いられる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐前コア部、第1分岐後コア部、第2分岐後コア部、および、前記分岐前コア部を前記第1分岐後コア部と前記第2分岐後コア部とに分岐する分岐部、を有する分岐型導光路を複数備え、
前記分岐型導光路同士が同一平面内で交差しており、
隣り合う前記分岐型導光路の分岐比が、互いに等しく、
前記第1分岐後コア部に入射された光が、前記分岐前コア部から外部に出射し、外部で反射した後、前記分岐前コア部に入射され、前記第2分岐後コア部から外部に出射するように用いられることを特徴とする光スプリッター。
【請求項2】
前記分岐前コア部、前記第1分岐後コア部および前記第2分岐後コア部にそれぞれ対応して設けられているコネクターを備える請求項1に記載の光スプリッター。
【請求項3】
前記第1分岐後コア部と前記第2分岐後コア部との距離は、前記第1分岐後コア部と前記第2分岐後コア部との分岐点から100μmまでの間における拡大率が0超0.05以下の範囲内になるように拡大している請求項1または2に記載の光スプリッター。
【請求項4】
前記分岐型導光路は、クロソイド曲線に沿って湾曲している部位を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光スプリッター。
【請求項5】
前記分岐型導光路同士の交差部に、前記分岐型導光路の光路を横切るように設けられ、前記分岐型導光路よりも屈折率が低い低屈折率部を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光スプリッター。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光スプリッターと、
前記分岐前コア部から外部に出射した光を、前記分岐前コア部に向けて反射させる、複数の光反射構造体と、
を備えることを特徴とする光部品。
【請求項7】
前記光反射構造体は、
被着体に取り付けられるシート状の光導波路と、
前記光導波路を伝搬する光を反射する光反射部と、
前記光導波路と光学的に接続されている光ファイバーと、
を備える請求項6に記載の光部品。
【請求項8】
請求項6または7に記載の光部品と、
前記第1分岐後コア部に向けて光を射出する発光素子と、
前記第2分岐後コア部から出射した光を受光する受光素子と、
前記受光素子で受光した光の強度を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スプリッター、光部品および検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導波路を含む複数の光スプリッターを備え、少なくとも一部の導波路が平面上で互いに交差している交差スプリッターが開示されている。この交差スプリッターでは、光スプリッターが含む導波路同士が交差している数の差に応じて、光スプリッターの分岐比が異なっている。
【0003】
このような構成により、光スプリッターごとの損失バラつきを少なく抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/167010号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光スプリッターにおいて、損失バラつきを少なく抑えるためには、分岐比の合計を100%としたとき、0.1%という高い精度で分岐比を異ならせる必要がある。このような精度で分岐比を異ならせることは、製造難易度が極めて高い。また、製造効率を追求した場合には、損失バラつきを十分に小さく抑えることができない。
【0006】
本発明の目的は、第1分岐後コア部から入射した光を分岐前コア部から出射させ、外部で反射後、再び分岐前コア部に入射させた光を第2分岐後コア部から出射させるように用いられる光スプリッターであって、分岐型導光路間の損失バラつきが抑えられており、かつ、製造が容易な光スプリッターを提供することにある。また、本発明の目的は、前記光スプリッターを備える光部品および検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(8)の本発明により達成される。
(1) 分岐前コア部、第1分岐後コア部、第2分岐後コア部、および、前記分岐前コア部を前記第1分岐後コア部と前記第2分岐後コア部とに分岐する分岐部、を有する分岐型導光路を複数備え、
前記分岐型導光路同士が同一平面内で交差しており、
隣り合う前記分岐型導光路の分岐比が、互いに等しく、
前記第1分岐後コア部に入射された光が、前記分岐前コア部から外部に出射し、外部で反射した後、前記分岐前コア部に入射され、前記第2分岐後コア部から外部に出射するように用いられることを特徴とする光スプリッター。
【0008】
(2) 前記分岐前コア部、前記第1分岐後コア部および前記第2分岐後コア部にそれぞれ対応して設けられているコネクターを備える上記(1)に記載の光スプリッター。
【0009】
(3) 前記第1分岐後コア部と前記第2分岐後コア部との距離は、前記第1分岐後コア部と前記第2分岐後コア部との分岐点から100μmまでの間における拡大率が0超0.05以下の範囲内になるように拡大している上記(1)または(2)に記載の光スプリッター。
【0010】
(4) 前記分岐型導光路は、クロソイド曲線に沿って湾曲している部位を含む上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光スプリッター。
【0011】
(5) 前記分岐型導光路同士の交差部に、前記分岐型導光路の光路を横切るように設けられ、前記分岐型導光路よりも屈折率が低い低屈折率部を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光スプリッター。
【0012】
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光スプリッターと、
前記分岐前コア部から外部に出射した光を、前記分岐前コア部に向けて反射させる、複数の光反射構造体と、
を備えることを特徴とする光部品。
【0013】
(7) 前記光反射構造体は、
被着体に取り付けられるシート状の光導波路と、
前記光導波路を伝搬する光を反射する光反射部と、
前記光導波路と光学的に接続されている光ファイバーと、
を備える上記(6)に記載の光部品。
【0014】
(8) 上記(6)または(7)に記載の光部品と、
前記第1分岐後コア部に向けて光を射出する発光素子と、
前記第2分岐後コア部から出射した光を受光する受光素子と、
前記受光素子で受光した光の強度を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする検出装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1分岐後コア部から入射した光を分岐前コア部から出射させ、外部で反射後、再び分岐前コア部に入射させた光を第2分岐後コア部から出射させるように用いられる光スプリッターであって、光が交差部を通過する回数を分岐型導光路間で揃えることにより、分岐型導光路間の損失バラつきが抑えられ、かつ、分岐部の構造が簡単であるため、製造が容易な光スプリッターが得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記光スプリッターを備える光部品および検出装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係るセンシングシステムの概略を示す平面図である。
図2図1に示すセンシングシステムの断面図である。
図3図1に示すセンシングシステムが備えるセンサープローブの1つを示す斜視図である。
図4図3に示すセンシングシステムの動作を説明する平面図である。
図5図3に示すセンシングシステムの動作を説明する平面図である。
図6図5の断面図である。
図7図1に示すセンシングシステムおよびセンシングシステムが備える光スプリッターを示す平面図である。
図8図7のA部拡大図である。
図9図8のB部拡大図である。
図10図7のC部拡大図である。
図11図7に示す光スプリッターが備える本体部の部分拡大斜視図である。
図12図2の部分拡大図である。
図13図2に示す光導波路の部分拡大斜視図である。
図14図2に示す筐体と光導波路および光ファイバーとを分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の光スプリッター、光部品および検出装置について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
1.センシングシステム
まず、実施形態に係るセンシングシステムについて説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係るセンシングシステムの概略を示す平面図である。図2は、図1に示すセンシングシステムの断面図である。図3は、図1に示すセンシングシステムが備えるセンサープローブの1つを示す斜視図である。図4および図5は、それぞれ、図3に示すセンシングシステムの動作を説明する平面図である。図6は、図5の断面図である。
【0021】
なお、各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定し、矢印で示している。また、矢印の先端側を「プラス側」といい、基端側を「マイナス側」という。さらに、Z軸を表す矢印の先端側を「上」といい、基端側を「下」という。
【0022】
1.1.システムの概要
図1に示すセンシングシステム1000は、複数のセンサープローブPRおよび光スプリッター1を有する光部品100と、発光素子102と、受光素子104と、制御部108と、を備える。
【0023】
センサープローブPRは、図2ないし図4に示すように、光導波路10と、光ファイバー3と、筐体4と、を備える。光ファイバー3の先端と光導波路10とは、光学的に接続されている。筐体4は、光ファイバー3の先端部および光導波路10を覆っている。
【0024】
センサープローブPRは、図2および図3に示すように、被着体9に取り付けられた状態で使用される。「取り付ける」とは、センサープローブPRのうち、少なくとも光導波路10が、被着体9に密着している状態をいう。密着とは、外力を受けて被着体9に押し付けられている状態や、接着力により被着体9に接着している状態等を指す。
【0025】
本実施形態では、図2に示すように、センサープローブPRが被着体接着層2を介して被着体9に接着されている。これにより、被着体9の機械的または熱的な変化を、センサープローブPRを介して検出するセンシングシステム1000を実現する。具体的には、このセンシングシステム1000では、被着体9にセンサープローブPRを取り付けた状態で、図4に示すように、センサープローブPRに入射光L1を連続的または断続的に入射する。入射光L1は、センサープローブPRの内部で反射し、出射光L2として入射光L1と同じ経路を戻る。センシングシステム1000では、この戻り光である出射光L2の強度をモニターする。
【0026】
入射光L1を入射している状態で、被着体9の表面に機械的または熱的な変化、例えば図5に示す亀裂91が発生すると、センサープローブPRの一部が破断し、破断面8が生じる。そうすると、破断面8で入射光L1が反射し、図5および図6に示す漏れ光L3が発生する。この漏れ光L3が発生すると、破断面8が生じる前に比べて、出射光L2の強度が低下する。センシングシステム1000では、このような出射光L2の強度変化を検出することにより、破断面8の発生を検出する。これにより、センシングシステム1000では、亀裂91の発生、すなわち被着体9における異常の発生を推定することができる。なお、被着体9の表面の機械的な変化は、亀裂91に限定されず、伸びや段差、せん断等であってもよい。また、被着体9の熱的な変化とは、例えば、発熱、吸熱である。
【0027】
図1に示すセンシングシステム1000は、上記のようなセンサープローブPRを、複数備えている。複数のセンサープローブPRを被着体9の様々な位置に取り付けることで、被着体9の広い範囲で異常の有無を監視することができる。本実施形態に係るセンシングシステム1000は、一例として、8つのセンサープローブPRを備えている。
【0028】
光スプリッター1は、発光素子102と複数のセンサープローブPRとの間を一括して接続する機能を有する。この機能により、発光素子102から射出された入射光L1を複数のセンサープローブPRに入射するための接続作業を、光スプリッター1を介して容易に行うことができる。
【0029】
また、光スプリッター1は、複数のセンサープローブPRから戻ってきた出射光L2を、2つに分配し、一方を受光素子104に導く機能を有する。この機能により、複数のセンサープローブPRから戻ってきた出射光L2を受光素子104に受光させるための接続作業を、光スプリッター1を介して容易に行うことができる。
【0030】
したがって、光スプリッター1によれば、1つの部材で、上記2つの機能を実現することができる。
【0031】
ここで、仮に、光スプリッター1を設けない場合には、1つの入出力ポートで、1つのセンサープローブPRに対する入射光L1の射出と、戻ってきた出射光L2の受光と、を担う装置が必要になる。このような装置では、戻ってきた出射光L2を受光素子に導くための光路、例えば光サーキュレーターを装置の内部に設けておく必要がある。このような光路を備えた装置は、高価であり、小型化が困難であるため可搬性も乏しい。
【0032】
これに対し、光スプリッター1を用い、戻ってきた出射光L2を2つに分配すれば、一方を受光素子104に導くことができる。特に、平面上で分岐型導光路同士を交差させて形成された交差スプリッターは、低コスト化、構造の簡素化および小型化を容易に図ることができるので、センシングシステム1000に用いる光スプリッター1として有用である。分岐型導光路とは、1本のコア部を2本のコア部に分岐する分岐部を備えた導光路である。
【0033】
ところで、一般に、交差スプリッターでは、分岐型導光路同士が同一平面内で交差しているため、必然的に、多数の交差部が形成される。そして、分岐型導光路を光が伝搬するとき、隣り合う分岐型導光路同士では、光が交差部を通過する回数が異なる。そうすると、隣り合う分岐型導光路同士で、光が交差部を通過する際に生じる伝搬損失(交差損失)が異なる。その結果、この交差損失が、受光素子で検出される光の強度に影響を及ぼし、光の強度を正しく検出することができない。
【0034】
そこで、従来の交差スプリッターでは、隣り合う分岐型導光路同士で、分岐比をわずかに異ならせている。そして、この分岐比の差が、交差損失の差を相殺するように設定されている。これにより、隣り合う分岐型導光路同士で、光の強度における交差損失の影響を実質的になくすことができる。
【0035】
しかしながら、分岐比をわずかに異ならせるためには、分岐型導光路を非常に高い精度で形成する必要がある。このため、従来の交差スプリッターは、製造難易度が高く、低コスト化を図ることは容易ではなかった。また、交差スプリッターの製造効率を追求した場合には、分岐型導光路の分岐比の精度が低下し、結果として光の強度を検出する精度が低下する。その結果、従来の交差スプリッターをセンシングシステム1000に適用したとしても、被着体9の異常を検出する精度が低下する。
【0036】
そこで、本発明者は、従来の交差スプリッターが抱える課題と、センシングシステム1000用の交差スプリッターに求められる要件と、を比較、検討した。そして、発光素子102および受光素子104と、光が反射するように構成されたセンサープローブPRと、の間に交差スプリッターを配置した場合、交差スプリッターを通過する光が交差部を通過する回数は、隣り合う分岐型導光路同士で等しくなることを見出した。つまり、センサープローブPRは、入射された入射光L1を反射し、出射光L2として同じ経路に戻す機能を有しているため、交差スプリッター内を光が往復することになる。このため、交差スプリッターに対して発光素子102および受光素子104を適切に接続した場合、隣り合う分岐型導光路同士で、光が交差部を通過する回数を揃えることができる。これにより、交差スプリッター内の隣り合う分岐型導光路同士で分岐比を等しくしたとしても、交差損失の差を実質的になくすことができる。その結果、隣り合う分岐型導光路同士で分岐比を等しくした、製造難易度の低い交差スプリッターを用いることが可能になる。そして、そのような交差スプリッターを用いたとしても、センサープローブPRごとの検出感度のバラつきを抑制し、出射光L2の強度を精度よく検出可能なセンシングシステム1000を実現することができることがわかった。
【0037】
以上を踏まえ、本実施形態に係るセンシングシステム1000は、隣り合う分岐型導光路同士で分岐比が等しく、分岐型導光路同士が同一平面内で交差している交差スプリッターを備えている。
【0038】
1.2.光スプリッター
図7は、図1に示すセンシングシステム1000およびセンシングシステム1000が備える光スプリッター1を示す平面図である。
【0039】
なお、各図では、互いに直交する3つの軸として、α軸、β軸およびγ軸を設定し、矢印で示している。また、矢印の先端側を「プラス側」といい、基端側を「マイナス側」という。
【0040】
1.2.1.光スプリッターの概要
図7に示す光スプリッター1は、シート状をなす本体部110と、本体部110に取り付けられたコネクター116、117、118と、を備える。
【0041】
本体部110は、β軸プラス側に突出するように延在する第1突出部111と、β軸マイナス側に突出するように延在する第2突出部112および第3突出部113と、を備える。また、第2突出部112は、第3突出部113よりもα軸プラス側に位置している。
【0042】
本体部110は、複数の分岐型導光路120を備えている。本体部110が備える分岐型導光路120の本数は、特に限定されず、例えば2~200本とされるが、図7に示す光スプリッター1は、一例として、8本の分岐型導光路120を備えている。
【0043】
分岐型導光路120は、1本のコア部が2本のコア部に分岐している形状を有する導光路であって、それぞれ、分岐前コア部121、第1分岐後コア部122、第2分岐後コア部123、および、分岐部124を有する。コア部とは、後述するように、周囲よりも屈折率が高い部位であり、光を閉じ込めて伝搬する機能を有する。
【0044】
分岐前コア部121は、第1突出部111に配置されている。第1分岐後コア部122は、第2突出部112に配置されている。第2分岐後コア部123は、第3突出部113に配置されている。
【0045】
分岐部124は、第1突出部111に配置され、分岐前コア部121を第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123とに分岐する。なお、分岐部124の配置は、第1突出部111に限定されず、本体部110のいずれの位置であってもよい。
【0046】
1.2.2.光スプリッターの機能
図7には、入射光L1および出射光L2を矢印で示している。発光素子102から射出された入射光L1は、第2突出部112の端面に露出している第1分岐後コア部122に入射すると、分岐部124まで伝搬する。このとき、分岐型導光路120の配置によっては、入射光L1が1つ以上の交差部CPを通過する。その後、入射光L1は、分岐部124を通過し、分岐前コア部121からセンサープローブPRに向けて出射する。
【0047】
センサープローブPRに入射した入射光L1は、センサープローブPR内で反射し、出射光L2として光スプリッター1に戻ってくる。出射光L2は、再び分岐前コア部121に入射すると、分岐部124で2つに分配される。2つに分配された出射光L2のうち、一方は、第2分岐後コア部123を伝搬する。このとき、分岐型導光路120の配置によっては、出射光L2が1つ以上の交差部CPを通過する。その後、出射光L2は、第3突出部113の端面に露出している第2分岐後コア部123から受光素子104に向けて出射する。
【0048】
ここで、図7に示す8本の分岐型導光路120のうち、隣り合う2本を、分岐型導光路120a、120bとする。分岐型導光路120aでは、入射光L1が通過する交差部CPの数は0であり、出射光L2が通過する交差部CPの数は7である。一方、分岐型導光路120bでは、入射光L1が通過する交差部CPの数は1であり、出射光L2が通過する交差部CPの数は6である。したがって、発光素子102から出射した光が受光素子104に戻ってくるまでの間に通過する交差部CPの数を比較すると、分岐型導光路120aおよび分岐型導光路120bは、互いに等しい。
【0049】
したがって、センシングシステム1000に組み込まれる光スプリッター1は、上記のような用途に使用されるため、隣り合う分岐型導光路120同士では、分岐部124の分岐比を等しくしてもよい。これにより、分岐比を、最も製造しやすい値、例えば後述するように1:1またはそれに近い値に設定することができるので、光スプリッター1の製造難易度を下げることができる。
【0050】
1.2.3.光スプリッターの分岐部
図8は、図7のA部拡大図である。A部は、8つの分岐部124の近傍である。図8に示す各分岐部124では、分岐前コア部121が第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123の2つに分岐している。
【0051】
図9は、図8のB部拡大図である。B部は、分岐型導光路120a、120bが有する分岐部124の近傍である。
【0052】
図9では、分岐型導光路120aが有する分岐部124の分岐比を、幅W1a:幅W2aで表すことができる。本明細書において「分岐比」とは、分岐前コア部121が分岐部124で第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123に分岐するとき、分配される光の強度比である。そして、この分岐比は、強度比が1:3~3:1の範囲内であれば、分岐点BPの位置における、第1分岐後コア部122の幅W1aと、第2分岐後コア部123の幅W2aと、の比と実質的に同一である。第1分岐後コア部122の幅W1aとは、分岐点BPの位置における、第1分岐後コア部122のα軸に沿う長さである。第2分岐後コア部123の幅W2aとは、分岐点BPの位置における、第2分岐後コア部123のα軸に沿う長さである。
【0053】
同様に、図9では、分岐型導光路120bが有する分岐部124の分岐比を、幅W1b:幅W2bで表すことができる。この分岐比は、強度比が1:3~3:1の範囲内であれば、分岐点BPの位置における、第1分岐後コア部122の幅W1bと、第2分岐後コア部123の幅W2bと、の比と実質的に同一である。第1分岐後コア部122の幅W1bとは、分岐点BPの位置における、第1分岐後コア部122のα軸に沿う長さである。第2分岐後コア部123の幅W2bとは、分岐点BPの位置における、第2分岐後コア部123のα軸に沿う長さである。
【0054】
本実施形態に係る光スプリッター1では、分岐型導光路120aの分岐比と、分岐型導光路120bの分岐比と、が等しくなっている。換言すれば、光スプリッター1では、隣り合う分岐型導光路120同士の分岐比が等しくなっている。分岐比が等しいとは、分岐型導光路120aにおける、第1分岐後コア部122の強度をP1aとし、第2分岐後コア部123の強度をP2aとするとともに、分岐型導光路120bにおける、第1分岐後コア部122の強度をP1bとし、第2分岐後コア部123の強度をP2bとしたとき、P1a/P2a[%]と、P1b/P2b[%]と、の差が、1.8%以下であることをいう。分岐比を等しくすることにより、光スプリッター1の製造難易度を下げることができる。これにより、光スプリッター1の低コスト化および生産性向上を図ることができる。
【0055】
また、強度比が1:3~3:1の範囲内であれば、幅の比によって上記を置き換えてもよい。すなわち、W1a/W2a[%]と、W1b/W2b[%]と、の差が、1.8%以下であってもよい。
【0056】
なお、光スプリッター1では、隣り合う分岐型導光路120同士の分岐比が等しければよいが、より好ましくは、分岐型導光路120aにおけるP1aとP2aとの比は1:1に近い方が好ましい。同様に、分岐型導光路120bにおけるP1bとP2bとの比も1:1に近い方が好ましい。これにより、幅W1a、幅W2a、幅W1b、幅W2bがそれぞれ狭くなりすぎるのを避けることができるので、製造難易度を特に下げることができる。具体的には、P1a/P2a[%]は、90~110%であるのが好ましく、95~105%であるのがより好ましい。同様に、P1b/P2b[%]も、90~110%であるのが好ましく、95~105%であるのがより好ましい。
【0057】
なお、分岐比を評価するときには、必要に応じて、評価対象の光スプリッター1から分岐部124を切り出した上で評価するようにしてもよい。
【0058】
また、強度比が1:3~3:1の範囲内であれば、幅の比によって上記を置き換えてもよい。すなわち、W1a/W2a[%]は、90~110%であるのが好ましく、95~105%であるのがより好ましい。同様に、W1b/W2b[%]は、90~110%であるのが好ましく、95~105%であるのがより好ましい。
【0059】
また、分岐部124の近傍では、第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123との距離dの変化量が、小さく抑えられている。具体的には、図9に示す分岐点BPからβ軸マイナス側に100μmの範囲では、距離dの拡大率が0超0.05以下の範囲内に抑えられているのが好ましく、0超0.03以下の範囲内に抑えられているのがより好ましい。これにより、分岐損失を特に小さく抑制することができる。
【0060】
距離dの拡大率とは、100μmの長さに対する距離dの比として求められる。したがって、距離dの拡大率が0超0.05以下の範囲内に収まるためには、距離dが0μm超5μm以下であればよい。
【0061】
なお、分岐点BPからβ軸マイナス側に100μmの範囲内では、距離dが単調に拡大していてもよいし、不連続的に拡大していてもよい。
【0062】
1.2.4.光スプリッターの交差部
図10は、図7のC部拡大図である。C部は、光スプリッター1が有する交差部CPの近傍である。図10に示す交差部CPでは、第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123とが同一平面内で交差している。交差部CPでは、第1分岐後コア部122が連続していてもよいが、図10に示すように、低屈折率部126を介して不連続になっていてもよい。同様に、交差部CPでは、第2分岐後コア部123が連続していてもよいが、図10に示すように、低屈折率部126を介して不連続になっていてもよい。連続になっているとは、周囲に比べて屈折率が相対的に高い部位(コア部)が、途切れることなくつながっている状態を指している。したがって、低屈折率部126が設けられていると、屈折率が相対的に高い部位が途切れることになる。
【0063】
また、図10に示す分岐型導光路120は、第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123とが重複する部位に設けられた島状コア部125と、島状コア部125に隣接する位置に設けられた低屈折率部126と、を有している。低屈折率部126は、島状コア部125を取り囲むように配置されている。これにより、低屈折率部126は、第1分岐後コア部122および第2分岐後コア部123の光路を横切るように設けられることになる。その結果、第1分岐後コア部122を伝搬する光は、その進行方向とほぼ平行に設けられる低屈折率部126によって、第2分岐後コア部123へ進入しにくくなる。同様に、第2分岐後コア部123を伝搬する光も、その進行方向とほぼ平行に設けられる低屈折率部126によって、第1分岐後コア部122へ進入しにくくなる。これにより、光が交差部CPを通過するときの伝搬損失(交差損失)を低減させることができる。
【0064】
低屈折率部126と第1分岐後コア部122との屈折率差は、第1分岐後コア部122の屈折率の0.5%以上であるのが好ましく、0.8~5.5%程度であるのがより好ましい。これにより、交差損失をより確実に低減させることができる。
【0065】
第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123との交差角θは、45°以上90°以下であるのが好ましく、60°以上90°以下であるのがより好ましい。これにより、交差損失を特に小さく抑えることができる。なお、交差角θは、第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123との間にできる角のうち、最小のものをいう。
【0066】
1.2.5.光スプリッターの湾曲部
また、分岐型導光路120は、図7に示すように、様々な形状の曲線に沿って湾曲した部位を含んでいる。様々な形状の曲線とは、例えば円弧曲線、クロソイド曲線(緩和曲線)、カテナリー曲線(懸垂曲線)、サイクロイド曲線、放物線等が挙げられる。このうち、分岐型導光路120は、クロソイド曲線に沿って湾曲している部位を含むことが好ましい。
【0067】
このような部位を含むことにより、分岐型導光路120は、曲げ損失を特に小さく抑えることができる。なお、クロソイド曲線は、曲率が曲線長に比例して一様に増大する曲線である。特に、直線の部位と円弧曲線に沿って湾曲した部位との間に、クロソイド曲線に沿って湾曲した部位を配置することで、円弧曲線に沿って湾曲した部位を含んでいても、曲げ損失を抑制することができる。
【0068】
様々な形状の曲線における最小曲げ半径は、屈折率差に応じて適宜設定されるが、3mm以上であるのが好ましく、5mm以上20mm以下であるのがより好ましい。これにより、曲げ損失を抑えつつ、光スプリッター1の小型化を図りやすくなる。また、分岐型導光路120同士で曲げ損失のバラつきを低減させやすくなる。このため、分岐型導光路120同士で伝搬損失のバラつきが特に少ない光スプリッター1を実現することができる。
【0069】
1.2.6.光スプリッターのコネクター
また、前述したように、本実施形態に係る光スプリッター1は、本体部110に取り付けられたコネクター116、117、118を備える。コネクター116は、第1突出部111に取り付けられ、コネクター117は、第2突出部112に取り付けられ、コネクター118は、第3突出部113に取り付けられている。つまり、コネクター116は、分岐前コア部121に対応して設けられ、コネクター117は、第1分岐後コア部122に対応して設けられ、コネクター118は、第2分岐後コア部123に対応して設けられている。
【0070】
コネクター116、117、118を設けることにより、光スプリッター1と他の光学部品との接続作業を容易に行うことができる。
【0071】
コネクター116、117、118としては、例えばMTフェルール等が挙げられる。その他のコネクターとしては、例えば、SC、FC、MU、D、DJ、ST、LC、SCF、SCH、MT、MPO、MT-RJ等の各種規格に沿ったコネクターが挙げられる。
【0072】
なお、β軸方向における光スプリッター1の全長Lβ、すなわち、図7のβ1-β2間の長さは、特に限定されないが、30mm以上300mm以下であるのが好ましく、50mm以上100mm以下であるのがより好ましい。また、α軸方向におけるコネクター117とコネクター118との離間距離Lαは、特に限定されないが、15mm以上100mm以下であるのが好ましく、20mm以上50mm以下であるのがより好ましい。
【0073】
1.2.7.光スプリッターの構造
図11は、図7に示す光スプリッター1が備える本体部110の部分拡大斜視図である。
【0074】
本体部110は、図6および図11に示すように、下方から、第1カバー層18S、クラッド層11S、コア層13S、クラッド層12S、および第2カバー層19Sがこの順で積層されてなるシート体16Sを備える。シート体16Sの各層は、α-β面と平行に広がっている。コア層13S中には、図11に示すように、例えばβ軸に沿って延在する長尺状のコア部14Sと、コア部14Sの側面に隣接する側面クラッド部15Sと、が形成されている。
【0075】
コア部14Sは、図11に示すように、その側面が、側面クラッド部15Sおよびクラッド層11S、12Sで囲まれている。そして、コア部14Sの屈折率は、側面クラッド部15Sやクラッド層11S、12Sの屈折率よりも高くなっている。これにより、コア部14Sに光を閉じ込めて伝搬させることができる。前述した分岐前コア部121、第1分岐後コア部122、第2分岐後コア部123、分岐部124および島状コア部125は、コア部14Sで構成されている。また、前述した低屈折率部126は、側面クラッド部15Sで構成されている。
【0076】
コア層13Sにおいて、コア部14Sの光路に直交する面内における屈折率分布は、いかなる分布であってもよく、例えば屈折率が不連続的に変化した、いわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化した、いわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。
【0077】
β-γ面によるコア部14Sの断面形状、つまりコア部14Sの横断面形状は、特に限定されないが、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、その他の異形状が挙げられる。
【0078】
コア層13Sの平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア部14Sに必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0079】
コア層13Sの構成材料(主材料)としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられる。なお、樹脂材料には、異なる組成のものを組み合わせた複合材料も用いられる。また、本明細書において「主材料」とは、構成材料の50質量%以上を占める材料のことをいい、好ましくは70質量%以上を占める材料のことをいう。
【0080】
クラッド層11S、12Sの平均厚さは、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、クラッド層11S、12Sに必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0081】
また、クラッド層11S、12Sの主材料は、例えば、前述したコア層13Sの構成材料として挙げた材料から適宜選択して用いられる。
【0082】
なお、クラッド層11S、12Sは、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。このとき、例えばコア層13Sが外気(空気)に曝されていれば、その外気がクラッド層11S、12Sとして機能する。
【0083】
光スプリッター1は、コア層13Sと第1カバー層18Sとの間に設けられているクラッド層11Sと、コア層13Sと第2カバー層19Sとの間に設けられているクラッド層12Sと、を有しているので、コア部14Sとその外部との間で、安定した屈折率差を形成し、維持することができる。このため、コア部14Sの伝搬効率をより高めることができる。なお、クラッド層11S、12Sのいずれか一方または双方は、側面クラッド部15Sと一体になっていてもよい。
【0084】
第1カバー層18Sは、クラッド層11Sの下面に設けられている。第2カバー層19Sは、クラッド層12Sの上面に設けられている。このような第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sを設けることにより、コア層13Sやクラッド層11S、12Sを保護し、外部環境等に起因したコア部14Sの伝搬効率の低下を抑制することができる。
【0085】
第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sの平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。
【0086】
第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sは、互いに同じ構成であっても互いに異なる構成であってもよい。例えば、第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sは、平均厚さが互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sの少なくとも一方は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0087】
第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sの主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0088】
このうち、第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sの主材料は、それぞれポリイミド系樹脂であるのが好ましい。ポリイミド系樹脂は、弾性率が比較的大きく、熱分解温度も高いことから、外力や外部環境に対する十分な耐久性を有している。
【0089】
なお、第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sの構成材料には、必要に応じて、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。このうち、フィラーを添加することにより、第1カバー層18Sおよび第2カバー層19Sの熱膨張係数を調整することができる。
【0090】
1.3.発光素子、受光素子および制御部
図1に示すセンシングシステム1000は、発光素子102と、受光素子104と、制御部108と、を備える。
【0091】
発光素子102は、光スプリッター1に向けて入射光L1を射出する。発光素子102としては、例えば、半導体レーザー、ガスレーザー、発光ダイオード等が挙げられる。
【0092】
受光素子104は、光スプリッター1から出射した出射光L2を受光する。受光素子104は、出射光L2の強度に応じた受光信号を制御部108に向けて出力する。受光素子104としては、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスター等が挙げられる。
【0093】
制御部108は、出射光L2の強度変化を検出し、例えば、判定基準に基づいて被着体9の表面における機械的または熱的な変化の有無を推定する。判定基準は、強度変化と被着体9に生じた事象との関係を、あらかじめ把握して作成される。制御部108は、必要に応じて、この推定結果を出力する。
【0094】
このような制御部108は、例えば、内部バスで互いに接続されたプロセッサー、メモリーおよび外部インターフェース等を備えるデバイスで構成される。制御部108は、メモリーに記憶されているプログラムをプロセッサーで実行することにより動作する。
【0095】
以上のように、本実施形態に係る光スプリッター1は、分岐前コア部121、第1分岐後コア部122、第2分岐後コア部123、および、分岐部124、を有する分岐型導光路120を複数備える。分岐部124は、分岐前コア部121を第1分岐後コア部122と第2分岐後コア部123とに分岐する。また、分岐型導光路120同士は同一平面内で交差している。さらに、隣り合う分岐型導光路120の分岐比は、互いに等しくなっている。そして、光スプリッター1は、第1分岐後コア部122に入射された入射光L1が、分岐前コア部121から外部、すなわちセンサープローブPRに向けて出射し、外部で反射した後、分岐前コア部121に入射され、第2分岐後コア部123から外部に出射するように用いられる。
【0096】
このような目的で用いられた場合、光スプリッター1内を光が往復するため、隣り合う分岐型導光路120同士で、光が交差部CPを通過する回数を揃えることができる。これにより、隣り合う分岐型導光路120間で交差損失のバラつきを抑えることができる。その結果、例えばセンサープローブPRごとの検出感度が異なるといった使い勝手の低下が起きにくいセンシングシステム1000を実現することができる。
【0097】
また、交差損失のバラつきが抑えられているため、隣り合う分岐型導光路120同士で、分岐部124の分岐比を互いに等しくすることができる。これにより、分岐部124の構造が比較的簡単になるため、光スプリッター1の製造難易度を下げることができる。
【0098】
さらに、光スプリッター1を用いることで、光サーキュレーターのような特殊な素子を用いる必要がなくなるため、センサープローブPRを接続する装置の低コスト化を図ることができる。そして、発光素子102、受光素子104および制御部108には、それぞれ汎用性が高く小型の素子を適用することができる。このため、センシングシステム1000のさらなる低コスト化および小型化を図ることができる。
【0099】
1.4.センサープローブ
次に、センサープローブPRについて説明する。センサープローブPRは、図2図4および図5に示すように、光導波路10と、光ファイバー3と、筐体4と、を備える。光ファイバー3の先端と光導波路10とは、光学的に接続されている。筐体4は、光ファイバー3の先端部および光導波路10を覆っている。
【0100】
図12は、図2の部分拡大図である。図13は、図2に示す光導波路の部分拡大斜視図である。
【0101】
1.4.1.光ファイバー
センサープローブPRが備える光ファイバー3は、図2に示すように、素線31と、素線31の側面を覆う被覆32と、を備える。
【0102】
このうち、素線31は、図12に示すように、コア部312と、コア部312の側面を覆うクラッド部314と、を備える。素線31としては、例えば、ガラス製光ファイバー、プラスチック製光ファイバー等が挙げられる。
【0103】
また、被覆32は、素線31を覆うことにより、素線31の機械的強度および耐久性を高める。被覆32の構成材料としては、例えば、樹脂材料、ガラス材料、金属材料、繊維強化複合材料等が挙げられる。
【0104】
図2に示す光ファイバー3では、先端部の被覆32が除去され、素線31が露出している。これにより、被覆32で覆われているときよりも素線31を曲げやすくなり、素線31と光導波路10とを容易に近づけることができる。
【0105】
光ファイバー3の一部は筐体4で覆われている。具体的には、素線31が露出している部分は、その全体が筐体4で覆われている。これにより、素線31を保護することができる。また、被覆32の一部も筐体4で覆われている。これにより、素線31が筐体4の縁に擦れて傷つくのを防止することができる。
【0106】
1.4.2.光導波路
センサープローブPRが備える光導波路10は、図6図12および図13に示すように、下方から、第1カバー層18、クラッド層11、コア層13、クラッド層12、および第2カバー層19がこの順で積層されてなるシート体16を備える。シート体16の各層は、X-Y面と平行に広がっている。コア層13中には、図13に示すように、Y軸に沿って延在する長尺状のコア部14と、コア部14の側面に隣接する側面クラッド部15と、が形成されている。
【0107】
光導波路10の外縁の形状は、図4では長方形であるが、この形状は特に限定されず、正方形、六角形のような多角形、真円、楕円、長円のような円形、その他の形状であってもよい。長方形をなす光導波路10のうち、Y軸と直交する2つの端面には、図12に示すように、コア部14の光入出射面141および反射面142が露出している。
【0108】
図12に示す光入出射面141は、光ファイバー3との光結合に供される面であり、入射光L1が入射し、かつ、出射光L2が出射する面である。
【0109】
図12に示す反射面142は、コア部14を伝搬してきた入射光L1を一旦外部に出射させ、外部で反射して戻ってきた光を再び入射させる機能を有する面である。具体的には、反射面142から外部に出射した入射光L1は、筐体4で反射し、再び反射面142からコア部14に入射し、光入出射面141に向かって戻るように伝搬する。
【0110】
光導波路10は、図12に示すように、第1カバー層18の下面を接着面109として、被着体9に接着するように用いられる。接着面109と被着体9との間には、必要に応じて、図12に示す被着体接着層2を介在させてもよい。これにより、光導波路10を被着体9に固定することができる。なお、本実施形態では、光導波路10だけでなく、筐体4や光ファイバー3も、被着体接着層2を介して被着体9に接着されている。
【0111】
以下、光導波路10の各部についてさらに詳述する。
コア部14は、図13に示すように、その側面が、側面クラッド部15およびクラッド層11、12で囲まれている。そして、コア部14の屈折率は、側面クラッド部15やクラッド層11、12の屈折率よりも高くなっている。これにより、コア部14に光を閉じ込めて伝搬させることができる。
【0112】
コア層13において、コア部14の光路に直交する面内における屈折率分布は、いかなる分布であってもよく、例えば屈折率が不連続的に変化した、いわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化した、いわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。
【0113】
Y-Z面によるコア部14の断面形状、つまりコア部14の横断面形状は、特に限定されないが、例えば、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、その他の異形状が挙げられる。
【0114】
コア層13の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア部14に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0115】
コア層13の構成材料(主材料)としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられる。なお、樹脂材料には、異なる組成のものを組み合わせた複合材料も用いられる。また、本明細書において「主材料」とは、構成材料の50質量%以上を占める材料のことをいい、好ましくは70質量%以上を占める材料のことをいう。
【0116】
クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、クラッド層11、12に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0117】
また、クラッド層11、12の主材料は、例えば、前述したコア層13の構成材料として挙げた材料から適宜選択して用いられる。
【0118】
なお、クラッド層11、12は、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。このとき、例えばコア層13が外気(空気)に曝されていれば、その外気がクラッド層11、12として機能する。
【0119】
本実施形態に係るセンサープローブPRは、コア層13と第1カバー層18との間に設けられているクラッド層11と、コア層13と第2カバー層19との間に設けられているクラッド層12と、を有しているので、コア部14とその外部との間で、安定した屈折率差を形成し、維持することができる。このため、コア部14の伝搬効率をより高めることができる。なお、クラッド層11、12のいずれか一方または双方は、側面クラッド部15と一体になっていてもよい。
【0120】
第1カバー層18は、クラッド層11の下面に設けられている。第2カバー層19は、クラッド層12の上面に設けられている。このような第1カバー層18および第2カバー層19を設けることにより、コア層13やクラッド層11、12を保護し、外部環境等に起因したコア部14の伝搬効率の低下を抑制することができる。
【0121】
第1カバー層18および第2カバー層19の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。
【0122】
第1カバー層18および第2カバー層19は、互いに同じ構成であっても互いに異なる構成であってもよい。例えば、第1カバー層18および第2カバー層19は、平均厚さが互いに同じでもよいし、互いに異なっていてもよい。第1カバー層18および第2カバー層19の少なくとも一方は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0123】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0124】
このうち、第1カバー層18および第2カバー層19の主材料は、それぞれポリイミド系樹脂であるのが好ましい。ポリイミド系樹脂は、弾性率が比較的大きく、熱分解温度も高いことから、外力や外部環境に対する十分な耐久性を有している。
【0125】
なお、第1カバー層18および第2カバー層19の構成材料には、必要に応じて、フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、劣化防止剤、帯電防止剤等が添加されていてもよい。このうち、フィラーを添加することにより、第1カバー層18および第2カバー層19の熱膨張係数を調整することができる。
【0126】
1.4.3.筐体
図14は、図2に示す筐体4と光導波路10および光ファイバー3とを分解して示す斜視図である。
【0127】
筐体4は、図14に示すように、光導波路10を収容する凹部41と、光ファイバー3の先端部を収容する凹部42と、を有している。凹部41および凹部42は、それぞれ、筐体4の接着面40に開口する。
【0128】
本実施形態では、光導波路10および光ファイバー3の先端部が筐体4で覆われている。具体的には、凹部41に光導波路10が収容され、凹部42に光ファイバー3の先端部が収容されている。以下、光導波路10および光ファイバー3の先端部を「被収容部30」という。
【0129】
凹部41、42が開口している接着面40は、被着体接着層2を介して被着体9に接着される面である。したがって、凹部41、42に被収容部30を収容した状態で、接着面40を被着体9に接着することにより、被収容部30が外部に露出しなくなる。このため、筐体4を用いることにより、被収容部30を例えば異物の接触や外部環境等から効果的に保護することができる。
【0130】
筐体4の構成材料としては、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられる。
【0131】
このうち、金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、鉄基合金、ニッケル基合金、アルミニウム合金、マグネシウム合金、真ちゅう等が挙げられる。
セラミックス材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、シリカ等が挙げられる。
【0132】
樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とするブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0133】
なお、樹脂材料には、剛性等の観点から、特に、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびABS樹脂からなる群から選択される1種が好ましく用いられる。これらは、比較的剛性が高いため、図14に示すような凹部41、42を設けた筐体4の構成材料として有用である。
【0134】
一方、筐体4は、可撓性を有するものであってもよい。この場合、可撓性を有するフィルム状の筐体4を被収容部30に被せることで、図14に示す筐体4と同様の機能を持たせることができる。また、フィルム状の筐体4を用いた場合、被収容部30を被着体9に向けて押し付ける外力を加えて密着させることができるので、被着体接着層2を省略するようにしてもよい。ただし、被着体9の変化を検出する感度や、耐久性の観点から、筐体4は剛性を有することが好ましい。
【0135】
また、図14に示す凹部42は、光ファイバー3の外径に応じて幅が変化している。幅とは、X軸方向の長さのことをいう。図14に示す光ファイバー3は、被覆32を備える部位と、素線31が露出した部位と、に分かれている。このため、図14に示す凹部42は、被覆32の外径に応じた相対的に広い幅を持つ部分と、素線31の外径に応じた相対的に狭い幅を持つ部分と、に分かれている。これにより、凹部42内での光ファイバー3の位置ずれを抑制することができる。その結果、位置ずれに伴って光ファイバー3と光導波路10との接続部に負荷がかかるのを抑制することができる。また、位置ずれに伴う、光導波路10と光ファイバー3との光結合損失の増大を抑制することができる。
なお、筐体4は、必要に応じて設けられればよく、省略されていてもよい。
【0136】
筐体4の厚さ、すなわち筐体4のZ軸方向の長さは、特に限定されないが、少なくとも光ファイバー3の素線31の外径より厚く設定され、図14に示すように光ファイバー3の被覆32を収容する凹部42を備える場合には、被覆32の外径より厚く設定される。
【0137】
したがって、筐体4の厚さは、被覆32の外径の105%以上であるのが好ましく、被覆32の120%以上1000%以下であるのがより好ましく、150%以上500%以下であるのがさらに好ましい。これにより、筐体4は、十分な剛性を有するとともに、必要以上に厚くなってしまうのを防止することができる。
【0138】
1.4.4.光反射部
図12および図14に示す筐体4の凹部41のうち、Y軸に交差する面が、光反射部7を構成している。光導波路10の反射面142から出射した入射光L1は、光反射部7で反射し、出射光L2として再び反射面142から入射する。
【0139】
光反射部7のこのような機能は、筐体4の構成材料が持つ光反射性に基づくものであってもよく、凹部41の内面に設けられた光反射材に基づくものであってもよい。
【0140】
前者の場合、凹部41の内面を研磨することにより、光反射性を高めるようにしてもよい。後者の場合、光反射材としては、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料、シリコン材料、ガラス材料等が挙げられ、これらの複合材料も用いられる。
【0141】
また、反射面142と光反射部7との間は、空洞になっていてもよい。さらに、反射面142に金属膜のような反射部材を設け、その金属膜が上述した筐体4に代わる光反射部を構成していてもよい。
【0142】
1.4.5.接着層
図12に示すように、光導波路10と凹部41との間には、筐体接着層61、62が設けられている。
【0143】
筐体接着層61は、光導波路10の反射面142近傍と凹部41との間を接着する。本実施形態では、一例として、光導波路10の反射面142および上面が、筐体接着層61により、凹部41の内面と接着されている。
【0144】
筐体接着層62は、光導波路10の光入出射面141近傍と凹部41、42との間を接着する。本実施形態では、一例として、光導波路10の光入出射面141、上面および光ファイバー3が、筐体接着層62により、凹部41、42の内面と接着されている。
【0145】
筐体接着層61、62を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤の他、ポリエステル系、変性オレフィン系の各種ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0146】
一方、本実施形態では、光導波路10の上面のうち、反射面142近傍と光入出射面141近傍とを除く部分、すなわち、Y軸方向の中央部143は、接着されていない。この中央部143は、前述した破断面8が発生しやすい部位であるため、中央部143を接着しないことで、破断面8がより発生しやすくなる。その結果、センシングシステム1000の検出感度を高めることができる。
【0147】
ここで、光導波路10のY軸方向の全長をL10とし、光導波路10の上面のうち筐体接着層61で接着されている長さをL61とし、筐体接着層62で接着されている長さをL62とする。
【0148】
L61/L10の比およびL62/L10の比は、特に限定されないが、それぞれ0.4以下であるのが好ましく、0.01~0.35であるのがより好ましく、0.05~0.25であるのがさらに好ましい。これにより、筐体接着層61、62による接着力と、中央部143に十分な長さを確保されることによる検出感度と、を両立させることができる。その結果、検出感度と信頼性とを両立するセンシングシステム1000を実現することができる。
【0149】
なお、中央部143は、筐体接着層61、62のいずれかで接着されていてもよいし、筐体接着層61、62とは別の接着剤で接着されていてもよい。後者の場合、使用する接着剤は、硬化後の弾性率が筐体接着層61、62の硬化後の弾性率より低いこと、例えば90%以下であることが好ましい。これにより、中央部143において破断面8が発生しやすいという特性を確保しつつ、光導波路10と筐体4との一体化を進めることができる。
【0150】
また、本実施形態では、反射面142と光反射部7との間に筐体接着層61が充填されている。さらに、本実施形態では、光入出射面141と光ファイバー3との間に筐体接着層62が充填されている。このため、筐体接着層61、62も光透過性を有することが好ましい。また、筐体接着層62の屈折率は、特に限定されないが、光導波路10のコア部14の屈折率と、光ファイバー3のコア部312の屈折率と、の間であるのが好ましい。これにより、光導波路10と光ファイバー3との光結合効率をより高めることができる。
【0151】
なお、筐体接着層61、62は、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。この場合、例えば、光導波路10、光ファイバー3および筐体4を、個別に、後述する被着体接着層2を介して被着体9に接着することで、これらの部材を相対的に固定すればよい。
【0152】
一方、光導波路10と被着体9との間には、被着体接着層2が設けられている。
図2および図12に示す被着体接着層2は、光導波路10を被着体9に貼り付けるとき、双方の間に介在する。被着体接着層2は、被着体9に設けられていてもよいが、あらかじめ光導波路10側に設けられていてもよい。すなわち、光導波路10は、第1カバー層18の下面(接着面109)に設けられた、未硬化の被着体接着層2を備えていてもよい。これにより、センサープローブPRを被着体9に貼り付ける作業を効率よく行うことができる。
【0153】
被着体接着層2を構成する接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤の他、ポリエステル系、変性オレフィン系の各種ホットメルト接着剤等が挙げられる。
【0154】
未硬化の被着体接着層2は、未硬化の状態が液状であっても、固形または半固形であってもよく、硬化反応が一部進行している状態であってもよい。また、被着体接着層2を構成する接着剤が硬化性材料を含む場合の硬化原理は、熱硬化であっても、光硬化であってもよい。さらに、未硬化の被着体接着層2は、第1カバー層18の下面全体に設けられていてもよいし、一部のみに設けられていてもよい。硬化後の被着体接着層2の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであるのが好ましく、5~60μmであるのがより好ましい。
【0155】
また、本実施形態では、光導波路10だけでなく、筐体4や光ファイバー3も、被着体接着層2を介して被着体9に接着されている。これにより、センサープローブPRを被着体9に安定的に固定することができる。したがって、センサープローブPRは、光導波路10の接着面109や筐体4の接着面40に設けられた、未硬化の被着体接着層2を備えていてもよい。
【0156】
このようなセンサープローブPRでは、入射光L1を連続的または断続的に入射させたとき、センサープローブPRの内部で入射光L1を反射し、出射光L2として射出する。このため、被着体9に機械的または熱的な変化が生じたとき、センサープローブPRを備えるセンシングシステム1000では、出射光L2の強度変化に基づいて、その変化を検出することができる。
【0157】
また、センサープローブPRでは、入射光L1および出射光L2を、1本の光導波路10および光ファイバー3を介して伝搬させる。このため、センサープローブPRは、構造が簡単であり、安価に製造可能である。また、センサープローブPRは、往復の光配線を敷設する必要がないため、被着体9に対する敷設作業も容易である。
【0158】
さらに、センサープローブPRでは、光導波路10の長さを変えるだけでセンシング部のサイズを変えることができる。このため、センサープローブPRは、被着体9に応じたセンシング部の最適化を容易に図り得るものとなる。
【0159】
なお、光導波路10は、必要に応じて、機械的強度を部分的に低下させる構造を有していてもよい。このような構造を設けることにより、被着体9に機械的または熱的な変化が発生した場合、その構造を起点として破断面8が発生しやすくなる。つまり、かかる構造は、容易に破壊する易破壊構造であるといえる。このような易破壊構造を設けることにより、センシングシステム1000の検出感度をより高めることができる。
【0160】
以上のような複数のセンサープローブPRと、前述した光スプリッター1と、を少なくとも備えることにより、光部品100が構成されている。すなわち、本実施形態に係る光部品100は、光スプリッター1と、複数のセンサープローブPRと、を備える。センサープローブPRは、光反射構造体の一例であり、光スプリッター1の分岐前コア部121から外部に出射した光(入射光L1)を、分岐前コア部121に向けて反射させる部材である。
【0161】
このような光部品100によれば、例えば、光スプリッター1の第1分岐後コア部122に入射光L1を入射した場合、第2分岐後コア部123から出射光L2を取り出すことができる。これにより、第1分岐後コア部122に発光素子102を接続し、第2分岐後コア部123に受光素子104を接続すれば、比較的簡単にセンシングシステム1000を構築することができる。したがって、光部品100を用いることにより、センシングシステム1000を低コストで実現することができる。
【0162】
また、光スプリッター1は、前述したように、発光素子102、受光素子104および制御部108として、それぞれ汎用性が高い小型の素子を用いることを可能にする。このため、光スプリッター1を備える光部品100によれば、センシングシステム1000のさらなる低コスト化および小型化を図ることができる。
【0163】
また、本実施形態に係る光反射構造体であるセンサープローブPRは、前述したように、光導波路10と、光反射部7と、光ファイバー3と、を備える。光導波路10は、被着体9に取り付けられるシート状の部材である。光反射部7は、光導波路10を伝搬する入射光L1を反射する。光ファイバー3は、光導波路10と光学的に接続されている。
【0164】
このような構成によれば、入射光L1を連続的または断続的に入射させたとき、センサープローブPRの内部で入射光L1を反射し、出射光L2として出射させることができる。このため、被着体9に機械的または熱的な変化が生じたとき、センサープローブPRを備えるセンシングシステム1000では、出射光L2の強度に基づいて、その変化を検出することができる。
【0165】
また、センサープローブPRでは、入射光L1および出射光L2を、1本の光導波路10および光ファイバー3を介して伝搬させる。このため、センサープローブPRは、構造が簡単であり、安価に製造可能であるとともに、被着体9に対する敷設作業も容易である。
【0166】
さらに、光導波路10がセンシング部に相当するため、光導波路10の長さを変えるだけでセンシング部のサイズを変えることができる。このため、センサープローブPRは、被着体9に応じたセンシング部の最適化を容易に図り得るものとなる。
【0167】
また、本実施形態に係る検出装置であるセンシングシステム1000は、光部品100と、発光素子102と、受光素子104と、制御部108(検出部)と、を備えている。発光素子102は、第1分岐後コア部122に向けて入射光L1を射出する。受光素子104は、第2分岐後コア部123から出射した出射光L2を受光する。制御部108は、受光素子104で受光した出射光L2の強度を検出する。
【0168】
このような構成によれば、出射光L2の強度に基づいて、被着体9に生じた機械的または熱的な変化を検出可能なセンシングシステム1000が得られる。また、光部品100を備えることで、センシングシステム1000の低コスト化および小型化を容易に図ることができる。
【0169】
なお、光部品100が備える光反射構造体は、センサープローブPRに限定されず、入射した光を反射する機能を有する構造体であれば、特に限定されない。センサープローブPR以外の光反射構造体として、例えば、光反射部を取り付けた光導波路や光ファイバー等が挙げられる。この場合、検出装置として、光導波路や光ファイバーの伝搬損失等の品質を検査する検査装置を構築することができる。
【0170】
以上、本発明の光スプリッター、光部品および検出装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0171】
例えば、本発明の光スプリッター、光部品および検出装置は、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0172】
1 光スプリッター
2 被着体接着層
3 光ファイバー
4 筐体
7 光反射部
8 破断面
9 被着体
10 光導波路
11 クラッド層
11S クラッド層
12 クラッド層
12S クラッド層
13 コア層
13S コア層
14 コア部
14S コア部
15 側面クラッド部
15S 側面クラッド部
16 シート体
16S シート体
18 第1カバー層
18S 第1カバー層
19 第2カバー層
19S 第2カバー層
30 被収容部
31 素線
32 被覆
40 接着面
41 凹部
42 凹部
61 筐体接着層
62 筐体接着層
91 亀裂
100 光部品
102 発光素子
104 受光素子
108 制御部
109 接着面
110 本体部
111 第1突出部
112 第2突出部
113 第3突出部
116 コネクター
117 コネクター
118 コネクター
120 分岐型導光路
120a 分岐型導光路
120b 分岐型導光路
121 分岐前コア部
122 第1分岐後コア部
123 第2分岐後コア部
124 分岐部
125 島状コア部
126 低屈折率部
141 光入出射面
142 反射面
143 中央部
312 コア部
314 クラッド部
1000 センシングシステム
BP 分岐点
CP 交差部
L1 入射光
L2 出射光
L3 漏れ光
Lα 離間距離
Lβ 全長
PR センサープローブ
d 距離
θ 交差角
L10 全長
L61 長さ
L62 長さ
W1a 幅
W1b 幅
W2a 幅
W2b 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14