(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164368
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】抗菌繊維材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/153 20120101AFI20221020BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20221020BHJP
D01F 1/10 20060101ALI20221020BHJP
D01F 6/46 20060101ALI20221020BHJP
A47L 13/17 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
D04H3/153
D04H3/007
D01F1/10
D01F6/46 B
A47L13/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069809
(22)【出願日】2021-04-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】坪井 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓未
【テーマコード(参考)】
3B074
4L035
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA08
3B074AB01
3B074AC03
3B074CC01
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB79
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4L035FF05
4L035JJ04
4L047AA14
4L047AA28
4L047AA29
4L047AB03
4L047AB08
4L047CC03
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】抗菌性と高い吸油性を発揮する抗菌繊維材料を提供する。
【解決手段】5~50μmの平均繊維径を有する繊維Aと、0.3~2μmの平均繊維径を有する繊維Bと、が混在されてなる繊維と、抗菌剤と、を含有する、抗菌繊維材料を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5~50μmの平均繊維径を有する繊維Aと、
0.3~2μmの平均繊維径を有する繊維Bと、が混在されてなる繊維と、
抗菌剤と、を含有する、抗菌繊維材料。
【請求項2】
菌が、細菌およびカビの少なくともいずれかである請求項1に記載の抗菌繊維材料。
【請求項3】
前記抗菌剤が、無機系抗菌剤である、請求項1または2に記載の抗菌繊維材料。
【請求項4】
前記無機系抗菌剤が、銀、銅、亜鉛、およびそれらの金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載の抗菌繊維材料。
【請求項5】
前記抗菌剤の含有量が、前記繊維100質量%に対して、0.1~20質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗菌繊維材料。
【請求項6】
綿状、シート状、または不織布状である、請求項1~5のいずれか1項に記載の抗菌繊維材料。
【請求項7】
吸油性物品である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗菌繊維材料。
【請求項8】
吸油度が20以上である、請求項7に記載の抗菌繊維材料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗菌繊維材料の製造方法であって、
メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が200g/10min以上である熱可塑性樹脂と抗菌剤の混合物を、メルトブロー法によって紡糸する工程を含む、抗菌繊維材料の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系熱可塑性樹脂である、請求項9に記載の抗菌繊維材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌繊維材料およびその製造方法に関する。より詳しくは、高い吸油性を有する抗菌繊維材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料、電気、自動車、医療、建材等の種々の分野で繊維材料が利用されている。特に、繊維径の小さい繊維材料を用いた製品は、表面積が大きいこと、空間率が高いこと、孔径が小さいこと、通気性が高いこと、且つ流体透過速度が速いことなどの特徴を有する。
【0003】
このような特徴を考慮して、繊維部材に、抗菌剤を混入した、抗菌機能を備えたナノファイバー部材を水槽浄化等のフィルタ分野へ利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般家庭のキッチンシンクや飲食店の油水分離槽などの水回りにおいて使用される吸油材等の製品にも、衛生上の観点から抗菌性が求められる場合があり、抗菌機能を備えた繊維材料は、当該製品への利用が期待される。
【0006】
吸油材は、油分が下水道に流出することを防止する目的で使用されるため、高い吸油性が求められる。
よって、高い吸油性を有する抗菌繊維材料の開発の要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、5~50μmの平均繊維径を有する繊維Aと、0.3~2μmの平均繊維径を有する繊維Bが混在された繊維は、繊維同士の隙間がより密となって、毛細管力が向上し、その結果、高い吸油性を発現しうることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0008】
[1]5~50μmの平均繊維径を有する繊維Aと、0.3~2μmの平均繊維径を有する繊維Bと、が混在されてなる繊維と、抗菌剤と、を含有する、抗菌繊維材料。
[2]菌が、細菌およびカビの少なくともいずれかである[1]に記載の抗菌繊維材料。
[3]前記抗菌剤が、無機系抗菌剤である、[1]または[2]に記載の抗菌繊維材料。
[4]前記無機系抗菌剤が、銀、銅、亜鉛、およびそれらの金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[3]に記載の抗菌繊維材料。
[5]前記抗菌剤の含有量が、前記繊維100質量%に対して、0.1~20質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の抗菌繊維材料。
[6]綿状、シート状、または不織布状である、[1]~[5]のいずれかに記載の抗菌繊維材料。
[7]吸油性物品である、[1]~[6]のいずれかに記載の抗菌繊維材料。
[8]吸油度が20以上である、[7]に記載の抗菌繊維材料。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の抗菌繊維材料の製造方法であって、メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が200g/10min以上である熱可塑性樹脂と抗菌剤の混合物を、メルトブロー法によって紡糸する工程を含む、抗菌繊維材料の製造方法。
[10]前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系熱可塑性樹脂である、[9]に記載の抗菌繊維材料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗菌繊維材料は、抗菌性を有しつつ、高い吸油性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、参考例1で製造した繊維材料の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施する好ましい形態の一例について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0012】
[抗菌繊維材料]
本発明の抗菌繊維材料は、5~50μmの平均繊維径を有する繊維Aと、0.3~2μmの平均繊維径を有する繊維Bと、が混在されてなる繊維と、抗菌剤と、を含有する。
5~50μmの平均繊維径を有する繊維Aと、0.3~2μmの平均繊維径を有する繊維Bと、が混在された繊維は、繊維同士の隙間がより密となる。したがって、毛細管力が向上し、その結果、高い吸油性を発揮する。本明細書中において、「混在」とは、
図1に示すように、繊維が複雑に絡み合った状態をいう。
また、抗菌繊維材料は、抗菌剤を含有するので、抗菌性を有する。
【0013】
繊維Aと繊維Bは、同一の繊維ではあるが、平均繊維径によって区別される繊維である。
平均繊維径は、次のように測定する。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて繊維の画像を測定する。繊維が30~150本程度観測できる1枚の画像から、太い繊維または細い繊維を10本選出して各繊維径を測定する。各繊維径の測定を3枚の画像に対して行い、合計30本の繊維径から、平均繊維径を算出する。太い繊維の平均繊維径は繊維Aの平均繊維径に該当し、細い繊維の平均繊維径は繊維Bの平均繊維径に該当する。
なお、太い繊維の繊維径を測定する画像の倍率は300倍とし、細い繊維の繊維径を測定する画像の倍率は、1500倍とする。
【0014】
繊維Aは、5~50μmの平均繊維径を有する繊維である。繊維Aの平均繊維径は、8~20μmがより好ましい。繊維Aの平均繊維径が5μm未満であると、繊維のコシが少なくなり、吸油した際に自重で油が流出してしまい、吸油量が少なくなる。繊維Aの平均繊維径が50μm超であると、繊維Bが存在したとしても、繊維の隙間が疎になり、毛細管力が劣って、吸油性に劣る。
【0015】
繊維Bは、0.3~2μmの平均繊維径を有する繊維である。繊維Bの平均繊維径は、0.5~1.5μmがより好ましい。繊維Bの平均繊維径が0.3μm未満であると、繊維Aが存在したとしても、繊維の隙間が疎になり、毛細管力が劣って、吸油性に劣る。繊維Bの平均繊維径が2μm超であると、同様に繊維の隙間が疎になり、毛細管力が劣って、吸油量が少なくなる。
【0016】
繊維Aと繊維Bを含む繊維の製造方法については、後述する。
【0017】
抗菌繊維材料の対象とする菌は、細菌およびカビの少なくともいずれかであることが好ましい。細菌としては、例えば、エンテロバクター属菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、サルモネラ菌、腸球菌、カンピロバクター、ヘリコバクター・シネジ菌、ピロリ菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌、炭疽菌、トレポネーマ属菌、ボツリヌス菌、肺炎桿菌が挙げられる。カビとしては、例えば、クロカビ、アオカビ、コウジカビ、ススカビ、ツチアオカビ、黒色酵母、アカカビ、白癬菌が挙げられる。
【0018】
抗菌剤は、無機系抗菌剤および有機系抗菌剤のいずれかを用いてもよく、併用してもよいが、少なくとも無機系抗菌剤を用いることが好ましい。
無機系抗菌剤としては、例えば、銀、銅、亜鉛、水銀、錫、鉛、金、白金、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ジルコニウム、モリブデン、ビスマス、クロム、タリウムなどの金属元素、および該金属元素のイオンが挙げられる。これらの中でも、銀、銅、亜鉛およびそれらの金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0019】
無機系抗菌剤の平均粒子径は、繊維を製造する際の断糸、無機系抗菌剤の脱落、ショット(樹脂の固まり)の発生を防止する観点から、0.1~5μmが好ましく、0.4~1μmがさらに好ましい。
無機系抗菌剤の平均粒子径は、島津製作所製のレーザー回折粒度測定装置で測定した体積平均メディアン径の値である。
【0020】
無機系抗菌剤は、上記の金属または金属イオンを担持体に担持させてもよい。担持体としては、例えば、珪酸塩(ゼオライト、珪酸カルシウム、メタ珪酸マグネシウム等)、シリカゲル、ガラス、リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム等)、金属酸化物(酸化チタン、酸化亜鉛等)、チタン酸塩(チタン酸カリウム塩)、セラミック等が挙げられる。
【0021】
有機系抗菌剤としては、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-フルロジクロロメチルチオフタルイミド、2,3,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、2-(4-チアゾイル)ベンゾイミダゾール、ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、10,10’-オキシビスフェノキサンアシル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルホニル)ピリジン、2-ピリジンチオール-1-オキシド亜鉛、N,N-ジメチル-N’-(フルオロジクロロメチルチオ)-N’-フェニルスルファミド、2-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オンなどのチアゾリン系化合物、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩(アルキル基の炭素数が8から18)などの第四級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0022】
抗菌剤の含有量は、繊維100質量%に対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。抗菌剤の含有量が、0.1質量%未満であると、抗菌性に劣る場合がある。抗菌剤の含有量が、20質量%超であると、抗菌繊維材料を製造する際に、繊維にショット(樹脂の固まり)が発生して、吸油性が劣る場合がある。
【0023】
抗菌繊維材料の形状は、特に限定されるものではなく、製品に応じて適宜設計することができる。抗菌繊維材料の形状としては、例えば、綿状、シート状、または不織布状が挙げられる。
【0024】
抗菌繊維材料は、高い吸油性を発揮することから、吸油性物品として好適に利用することができる。中でも、抗菌繊維材料は、抗菌性を奏することから、一般家庭のキッチンシンクや飲食店の油水分離槽などの水回りにおいて使用される製品として好適に利用し得る。
【0025】
抗菌繊維材料は、下記式により算出される吸油度の値が20以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましい。
吸油度=[(吸油後の抗菌繊維材料の重量)-(初期の抗菌繊維材料の重量)]÷(初期の抗菌繊維材料の重量)
ここで、吸油は、綿状の抗菌繊維材料をサラダ油中に5分間浸漬して行う。
【0026】
[抗菌繊維材料の製造方法]
本発明の抗菌繊維材料の製造方法は、上記の抗菌繊維材料の製造方法であり、メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が200g/10min以上である熱可塑性樹脂と抗菌剤の混合物を、メルトブロー法によって紡糸する工程を含む。
メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が200g/10min以上である熱可塑性樹脂と抗菌剤の混合物をメルトブロー法によって紡糸することで、5~50μmの平均繊維径を有する繊維Aと、0.3~2μmの平均繊維径を有する細繊維Bと、を含む繊維が得られる。熱可塑性樹脂のメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が200g/10min未満であると、繊維の平均繊維径が過度に太くなる。その結果、繊維材料は、吸油量が少なくなり、吸油性に劣るものとなる。
【0027】
メルトブロー法の条件としては、例えば、次の条件を挙げることができる。ノズル孔径が0.1~2.0mmであり、ピッチが1~10mmで配置されたノズルダイを、温度180~400℃に加熱し、1つのノズル孔あたり0.1~5g/分の割合で繊維を吐出する。この吐出した繊維に対して、温度が室温~400℃の空気を作用させる条件が挙げられる。
【0028】
熱可塑性樹脂は、メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が200g/10min以上であればよく、例えば、ポリエステルやポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン(PU)などが挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。また、ポリアミドとしてはナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン11(N11)などが挙げられる。ポリオレフィンとしてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などが挙げられる。
熱可塑性樹脂は、オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリオレフィンが好ましい。
【0029】
熱可塑性樹脂のメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)は、200g/10min以上であり、500g/10min以上が好ましく、1000g/10min以上がより好ましい。また、熱可塑性樹脂のメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)の上限は、2000g/10min以下が好ましい。熱可塑性樹脂のメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)の値は、メルトブロー法で紡糸して得られる繊維(繊維Aおよび繊維B)の平均繊維径の値に影響する因子の1つである。
ここで、メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)は、ASTM D1238に準拠して測定した値である。
【0030】
本発明の抗菌繊維材料の製造方法は、熱可塑性樹脂と抗菌剤の混合物をメルトブロー法によって紡糸する工程を含む。抗菌剤は、メルトブローで高温にさらされることから、無機系抗菌剤が好ましく、銀、銅、亜鉛、水銀、錫、鉛、金、白金、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ジルコニウム、モリブデン、ビスマス、クロム、タリウムなどの金属元素、およびそれらの金属イオンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0031】
混合物における抗菌剤の配合量は、熱可塑性樹脂100質量%に対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。抗菌剤の配合量が0.1質量%未満であると、抗菌性に劣る場合がある。抗菌剤の配合量が20質量%超であると、ショット(ポリマーの固まり)が生じて、得られる抗菌繊維材料の吸油量が少なくなり、吸油性に劣る場合がある。
抗菌剤の配合量は、メルトブロー法で紡糸して得られる繊維(繊維Aおよび繊維B)の平均繊維径の値に影響する因子の1つである。
【0032】
抗菌剤は、メルトブロー法により紡糸して得られた抗菌繊維材料に対してさらに添加してもよい。抗菌繊維材料に対してさらに添加する場合、抗菌剤は高温にさらされることがないので、有機系抗菌剤を使用することができる。また、抗菌繊維材料に対してさらに添加する場合、繊維(繊維Aおよび繊維B)の平均繊維径に影響を及ぼさないと考えられるため、目的とする抗菌性を発揮できるよう、添加量を調整しやすいという利点がある。
【実施例0033】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、各種物性値の測定方法は、別途記載がない限り、上記した方法による。また、測定方法の箇所の「繊維材料」とは、抗菌繊維材料と繊維材料の両方を示すものとする。
【0034】
[繊維Aの平均繊維径]:走査型電子顕微鏡(SEM)にて、繊維材料の任意の箇所について 加速電圧:15.0kV、倍率:300倍の条件で繊維の表面を観察した。画像上の太い繊維10本を選出し、繊維径を測定した。測定は、3つの画像について行い、合計30本の繊維径を測定して、繊維Aの平均繊維径を算出した。
【0035】
[繊維Bの平均繊維径]:走査型電子顕微鏡(SEM)にて、繊維材料の任意の箇所について 加速電圧:15.0kV、倍率:1500倍の条件で繊維の表面を観察した。画像上の細い繊維10本を選出し、繊維径を測定した。測定は、3つの画像について行い、合計30本の繊維径を測定して、繊維Bの平均繊維径を算出した。
【0036】
[吸油量(g)]:綿状の繊維材料3.0g(ただし、比較例1は油吸着材3.5g)をサラダ油中に5分間浸漬した後、サラダ油中から取り出して金網上に5分間静置した。その後、吸油後の抗菌繊維材料または油吸着材の重量を測定した。そして、吸油量は下記式により算出した。
吸油量(g)=(吸油後の繊維材料または油吸着材の重量)-(初期の繊維材料または油吸着材の重量)
【0037】
[吸油度]:吸油量と初期の繊維材料または油吸着材の重量から、下記式により算出した。
吸油度=吸油量(g)÷(初期の繊維材料の重量)
【0038】
(参考例1)
メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が、1000~1500g/10minであるポリプロピレン樹脂(密度:0.9cm/cm
3)を、180~400℃の温度で溶融してノズルから押出し、300~400℃の高温のエアーを吹き付けて繊維状に成形するメルトブロー法により、綿状の繊維材料を製造した。製造した繊維材料の繊維Aの平均繊維径、繊維Bの平均繊維径、吸油量および吸油度を表1に記す。また、参考例1で製造した繊維材料の電子顕微鏡写真を
図1に示す。
【0039】
(参考例2)
メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が、1500~2000g/10minであるポリプロピレン樹脂(密度:0.9cm/cm3)を用いたこと以外は参考例1と同様にして、綿状の繊維材料を製造した。製造した繊維材料の繊維Aの平均繊維径、繊維Bの平均繊維径、吸油量、および吸油度を表1に記す。
【0040】
(参考例3)
メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が、100g/10minであるポリプロピレン樹脂(密度:0.9cm/cm3)用いたこと以外は参考例1と同様にして、綿状の繊維材料を製造した。製造した繊維材料の繊維A’の平均繊維径、繊維B’の平均繊維径、吸油量および吸油度を表1に記す。
【0041】
【0042】
表1から、メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が200g/10min以上のポリプロピレンを用いて繊維材料を製造すると、平均繊維径が5~50の繊維Aと平均繊維径が0.3~2の繊維Bが混在された繊維材料が製造できることがわかる。また、
図1から、平均繊維径が8.5μmの繊維Aと平均繊維径が0.6μmの繊維Bが混在した繊維材料は、繊維同士の隙間が密となっている。したがって、表1に示すとおり、当該繊維材料の吸油量および吸油度の値は高く、高い吸油性を発揮した(参考例1、2)。
一方で、メルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kg)が200g/10min未満のポリプロピレンを用いて繊維材料を製造すると、平均繊維径が93.2μmの繊維A’と平均繊維径が2.2μmの繊維B’が混在された繊維材料であった。当該繊維材料の吸油量および吸油度の値は低く、吸油性に劣っていた(参考例3)。
【0043】
(実施例1)
原料としてポリプロピレン樹脂(密度:0.9cm/cm3)と銀系抗菌剤(メディアン径:0.48μm)の混合物を用いたこと以外は、参考例1と同様にして綿状の抗菌繊維材料を製造した。製造した抗菌繊維材料の繊維Aの平均繊維径、繊維Bの平均繊維径、吸油量および吸油度を表2に記す。
なお、銀系抗菌剤の配合量は、繊維100質量%に対して、0.5質量%であった。
【0044】
(実施例2~3)
銀系抗菌剤の配合量を表2に記載した量に変更したこと以外は、実施例1と同様にして綿状の抗菌繊維材料を製造した。製造した抗菌繊維材料の繊維Aの平均繊維径、繊維Bの平均繊維径、吸油量および吸油度を表2に記す。
【0045】
(比較例)
市販の油吸着材(商品名「吸いとるんです」、栄和産業製)を用いて、吸油量および吸油度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
表2から、銀系抗菌剤の配合量によらず、平均繊維径が5~50μmの繊維Aと平均繊維径が0.3~2μmの繊維Bが混在された抗菌繊維材料が製造できた。製造した抗菌繊維材料は、市販の油吸着剤と比較して、吸油量および吸油度の値は高く、高い吸油性を発揮するものであった(実施例1~3)。
【0048】
参考例1で製造した繊維材料および実施例1~3で製造した抗菌繊維材料を用いて抗菌試験1を行った。抗菌試験1は、下記のようにして行った。
綿状の繊維材料または抗菌繊維材料を0.5gはかり取った。エンテロバクター属菌、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌の4種類を混合した、49.5mLの菌液に入れて、30℃環境下で24時間攪拌した後の細菌数を測定した。結果を下記表3に示す。
【0049】
【0050】
表3から、抗菌剤を含有する抗菌繊維材料は抗菌性を有することが確認できる。
【0051】
実施例3で製造した抗菌繊維材料を用いて、JIS L 1902:2015(菌液吸収法)に準拠した抗菌試験を行った。試験条件を以下に示す。
試験菌種:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)NBRC 12732
生菌数の測定方法:混釈平板培養法
試験菌液は、界面活性剤(Tween80)0.05%を添加した試験菌液を使用
標準綿布の増殖値:2.9(試験成立条件は、増殖値≧1.0であること)
【0052】
実施例3で製造した抗菌繊維材料のJIS L 1902:2015(菌液吸収法)に準拠した活性値は5.9であった。JIS L 1902:2015では、活性値が2.0以上で「抗菌効果あり」と規定されていることから、実施例3で製造した抗菌繊維材料は抗菌効果が認められる。
【0053】
実施例3で製造した抗菌繊維材料を用いて、JIS L 1921:2015(吸収法)に準拠した抗カビ試験を行った。試験条件を以下に示す。
試験カビ種:クロカビ(Cladosporium sphaerospermum)NBRC 6348
アオカビ(Penicillium citrinum)NBRC 6352
試験胞子懸濁液濃度:クロカビ=2.2×105個/ml
アオカビ=2.2×105個/ml
標準綿布の発育値:クロカビ=2.2(試験成立条件は、発育値≧1.5であること)
アオカビ=2.6(試験成立条件は、発育値≧1.5であること)
【0054】
実施例3で製造した抗菌繊維材料のJIS L 1921:2015(吸収法)に準拠した活性値は、クロカビで3.4、アオカビで2.5であった。JIS L 1921:2015では、活性値が2.0以上で「抗カビ効果あり」と規定されていることから、実施例3で製造した抗菌繊維材料は抗カビ効果が認められる。