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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164391
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/18 20180101AFI20221020BHJP
【FI】
G01N23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069854
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直也
(72)【発明者】
【氏名】野田 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】成田 幹
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001JA09
2G001JA14
2G001KA05
2G001LA01
2G001PA07
2G001PA11
2G001SA16
(57)【要約】
【課題】被検査物とX線検出器との間の伝熱を低減し、X線検出器の寿命が短くなることを抑制できるX線検査装置を提供する。
【解決手段】循環して移動する搬送ベルト7を備えた搬送手段により搬送される被検査物にX線を照射するX線発生器と、搬送ベルト7の下面10よりも下側に配置されて被検査物を透過したX線を検出するX線検出器と、を備えたX線検査装置1であって、搬送ベルト7の下面10とX線検出器の上面11との間に所定の空間Sを有し、空間S内にエアを流入させる導入口と、空間S内のエアを吐出する吐出口32とを有する受台6を備えた。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環して移動する搬送ベルト(7)を備えた搬送手段(5)により搬送される被検査物(4)にX線を照射するX線発生器(2)と、前記搬送ベルトの下面(10)よりも下側に配置されて前記被検査物を透過したX線を検出するX線検出器(3)と、を備えたX線検査装置(1)であって、
前記搬送ベルトの下面と前記X線検出器の上面との間に所定の空間(S)を有し、空間内にエアを流入させる導入口(26)と、前記空間内のエアを吐出する吐出口(32)とを有する受台(6)を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線検査装置であって、
前記導入口が、前記受台背面における搬送方向の少なくとも片方に設けられ、
前記吐出口が、前記受台正面における前記X線検出器と重なる中央部に設けられたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のX線検査装置であって、
前記受台を支持するとともに、前記導入口から供給された前記エアを、前記吐出口に導く導風板(31)を備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のX線検査装置であって、
前記X線検出器が、ラインセンサ(36)であり、複数の前記導風板が前記ラインセンサの長手方向に沿って前記ラインセンサからオフセットされて平行に配置されたことを特徴とするX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば生肉,魚,加工食品,医薬などの各品種の被検査物中(表面も含む)の異物(金属,骨,ガラス,石,合成樹脂材等)を検出するためにX線異物検出装置が用いられている。例えば、特許文献1に開示されるX線異物検出装置は、筐体が、製品が通過する製品領域を挟んで配置された上部筐体と下部筐体とを有する。上部筐体内にはX線発生器があり、下部筐体内にはX線検出器がある。下部筐体の上面(製品領域の底面)には、搬送ベルトを水平に案内する搬送台が設置される。X線による検査時には、搬送ベルトは搬送台に沿って製品領域内で製品(被検査物)を水平方向に安定して搬送できる。清掃時には、搬送手段と搬送台を筐体から外せば、底面である下部筐体の上面を露出させて清掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-244114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、X線異物検出装置(X線検査装置とも称す)は、煮沸殺菌後のアルミ包材など高温の被検査物を検査する場合がある。高温の被検査物からの熱が搬送ベルトを通過して下方に配置されるX線検出器に伝わると、特に熱に脆弱なX線検出器は、センサ寿命が短くなる虞がある。従来のX線検査装置のように、搬送ベルトとX線検出器との間に搬送台が設置され、嵩上げされることにより、熱を伝わりにくくしても、搬送台における空間内の空気も温度上昇することから、センサ部分に熱の伝わることが懸念される。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、被検査物とX線検出器との間の伝熱を低減し、X線検出器の寿命が短くなることを抑制できるX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のX線検査装置1は、循環して移動する搬送ベルト7を備えた搬送手段5により搬送される被検査物4にX線を照射するX線発生器2と、前記搬送ベルト7の下面10よりも下側に配置されて前記被検査物4を透過したX線を検出するX線検出器3と、を備えたX線検査装置1であって、
前記搬送ベルト7の下面10と前記X線検出器3の上面11との間に所定の空間Sを有し、該空間S内にエアを流入させる導入口26と、前記空間S内のエアを吐出する吐出口32とを有する受台6を備えたことを特徴とする。
【0007】
このX線検査装置1では、搬送領域の搬送ベルト7に被検査物4が載置され、被検査物4とX線検出器3との間に温度差があると、その温度勾配により、例えば高温の被検査物4から搬送ベルト7、受台6を通過して熱がX線検出器3へ移動する。被検査物4から受台6に伝わった熱は、空間S内を経てX線検出器3の上面11に伝わるが、その殆どが、空間S内を流動するエアに伝わった後、吐出口32より排気されるエアにより搬送されて吐出口32より受台6の外部へと排熱される。このため、被検査物4からX線検出器3の上面11に伝わる熱は、大幅に低減されることになる。その結果、X線検査装置1では、被検査物4とX線検出器3との間の伝熱が低減され、X線検出器3の寿命が短くなることを抑制できる。
【0008】
本発明の請求項2記載のX線検査装置1は、請求項1に記載のX線検査装置1であって、
前記導入口26が、前記受台背面における搬送方向の少なくとも片方に設けられ、
前記吐出口32が、前記受台正面における前記X線検出器3と重なる中央部に設けられたことを特徴とする。
【0009】
このX線検査装置1では、導入口26が、受台背面における搬送方向の少なくとも片方に設けられる。導入口26は、受台背面における搬送方向の両側に設けられればさらによい。一方、吐出口32は、受台正面におけるX線検出器3と重なる中央部に設けられる。導入口26から受台6の空間S内に流入したエアは、搬送方向の少なくとも片方から中央部に向けて流れ、最終的に、中央部に設けられた吐出口32から受台6の外部へ排気される。吐出口32は、X線検出器3と重なる位置に設けられることで、吐出口32から排気されるエアを必ずX線検出器3のセンサ部分に近接させて通過させることができる。これにより、センサ部分にエアが滞留し、センサ部分が被検査物4からの熱の影響を受けやすくなることがない。
【0010】
本発明の請求項3記載のX線検査装置1は、請求項1または2に記載のX線検査装置1であって、
前記受台6を支持するとともに、前記導入口26から供給された前記エアを、前記吐出口32に導く導風板31を備えたことを特徴とする。
【0011】
このX線検査装置1では、導風板31によって導入口26から流入したエアが空間S内を淀みなく流れるように整流され、空間S内で滞留することなく吐出口32から排気される。これにより、導入口26から供給したエアを、エネルギー損失無く効率よく吐出口32へ導くことができる。また、導風板31は、被検査物4の荷重を支持し、受台6の撓みを防ぐことができる。そして、受台6は、導風板31が設けられて天板27が撓みにくくなることにより、ベルト上面(搬送面)の被検査物4と、X線検出器3との距離に変動が生じにくくなる。
【0012】
本発明の請求項4記載のX線検査装置1は、請求項1~3のいずれか1つに記載のX線検査装置1であって、
前記X線検出器3が、ラインセンサ36であり、複数の前記導風板31が前記ラインセンサ36の長手方向に沿って前記ラインセンサ36からオフセットされて平行に配置されたことを特徴とする。
【0013】
このX線検査装置1では、X線検出器3のセンサ部分が、直線状のラインセンサ36となる。ラインセンサ36は、搬送領域の搬送方向中央部において、搬送方向と直交方向が長手方向となって配置される。導風板31は、このラインセンサ36の長手方向に沿って、ラインセンサ36からオフセットされて平行に配置される。つまり、導風板31は、ラインセンサ36と重なる上方には位置しないようにして設けられる。従って、複数の導風板31が設けられれば、少なくとも一対の導風板31の間に、ラインセンサ36が平行に位置することになる。これにより、ラインセンサ36の上方には、一対の導風板31に挟まれ、直近の下流が吐出口32となった直線状の吐出流路が形成される。直線状の吐出流路に流入したエアは、滞留無く円滑に吐出口32へ流れて排気が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載のX線検査装置によれば、被検査物とX線検出器との間の伝熱を低減し、例えば高温の被検査物からX線検出器へ伝わる熱を低減させることができ、X線検出器の寿命が短くなることを抑制できる。
【0015】
本発明に係る請求項2記載のX線検査装置によれば、X線検出器のセンサ部分となる中央部付近からエアが確実に通過して流出し、X線検出器への熱の伝達をより軽減できる。
【0016】
本発明に係る請求項3記載のX線検査装置によれば、エアを整流して吐出口へ導けるので、受台の空間内におけるエアの搬送効率低下を抑制できる。また、被検査物の荷重を導風板が支持するので、受台の変形を抑制して、被検査物とX線検出器との距離を高精度に維持でき、検査精度の低下も抑制できる。
【0017】
本発明に係る請求項4記載のX線検査装置によれば、少なくとも一対の導風板が、センサ部分を挟んで平行に配置され、センサ近傍のエアを滞留なく確実に吐出口に導いて排気できるとともに、導風板がセンサ部分の邪魔になることもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係るX線検査装置の一例を示す斜視図である。
図2図1に示したX線検査装置の要部側面図である。
図3図1に示したX線検査装置の要部正面断面図である。
図4】搬送手段の分解斜視図である。
図5】受台が外された下部フレームの斜視図である。
図6】受台の分解斜視図である。
図7】受台空間内のエアの流れを説明するための模式図である。
図8】変形例に係る受台空間内のエアの流れを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。なお、本実施形態において、前後左右の方向は、各図に示した矢印の方向に従う。
図1は、実施の形態に係るX線検査装置1の一例を示す斜視図である。
本実施形態に係るX線検査装置1は、主に、X線を発生するX線発生器2と、X線発生器2からのX線を受けるX線検出器3(図3参照)と、X線発生器2とX線検出器3との間で被検査物4を搬送する搬送手段としての搬送部5と、受台6(図2参照)と、を有する。
【0020】
X線発生器2は、循環して移動する搬送ベルト7を備えた搬送部5により搬送される被検査物4にX線を照射する。X線発生器2は、X線を発生するX線管(図示略)の周囲を、遮蔽板にて覆うことにより、X線の漏洩を防ぐように構成されている。遮蔽板は、鉛等の遮蔽材が内貼りされてなる。X線発生器2は、X線検査装置1の本体をなす筐体8の上部に配置され、下方に向けてX線を照射させる。X線は、X線管から下方に広がる略円錐状に照射し、その後、X線発生器2の底部に形成された長穴、受台6に形成された長穴、及びX線発生器2を支持する筐体8の下部フレーム9に設けられた長穴を介して、下方に広がる面状となって照射する。また、X線発生器2では、X線を発生した際に生じる熱を冷却フィン(図示略)にて放熱している。
【0021】
X線検出器3は、搬送ベルト7の下面10よりも下側に配置されて被検査物4を透過したX線を検出する。X線検出器3は、筐体8の下部に配置され、X線発生器2から照射されたX線を受けるように構成されている。このX線検出器3は、筐体一部の金属箱である下部フレーム9に収容される。下部フレーム9は、略平坦に形成された上面11に上記の長穴であるスリット12(図3参照)を有している。スリット12は、上面11の板金に前後方向に延びるように穿設された長穴に、X線を透過させる樹脂材がシリコン材等で防水されて取り付けられてなる。このスリット12は、X線発生器2から照射された面状のX線を通す。すなわち、スリット12が形成された前後方向とは、面状のX線を通し得る方向である。下部フレーム9のスリット12を通ったX線は、下部フレーム9の内方に配置されたX線検出器3のセンサ部分で受ける。X線検出器3では、このX線を光変換し、不図示のX線処理部に出力する。
【0022】
搬送部5は、X線発生器2からX線検出器3に向けて照射された面状のX線に被検査物4を通過させるものである。搬送部5は、主に、ローラユニット13と、搬送ベルト7とからなる。搬送部5を構成するローラユニット13及び搬送ベルト7は、X線検出器3が収容された下部フレーム9に対して取り付けられている。
【0023】
ローラユニット13は、ブラケット14により下部フレーム9に取り付けられる。それぞれのローラユニット13には、回転中心が前後方向に沿うローラ15が回転自在に支持される。これらローラ間には、無端状の搬送ベルト7が掛け回される。搬送部5は、ローラユニット13に設けられたいずれかのローラ15が駆動され、これによって搬送ベルト7が循環して移動する。搬送ベルト7は、環状の周回路を構成する。周回路は、下部フレーム9、一対のローラユニット13を内方に配置して包囲する。搬送ベルト7は、この周回路のうち上側周回部16(図4参照)が被検査物4の搬送領域となる。搬送部5は、搬送ベルト7が循環して移動することにより、上側周回部16に載った被検査物4を左右いずれかに移動する。
【0024】
図2は、図1に示したX線検査装置1の要部側面図である。
搬送ベルト7は、環状の内周面側に、内周方向に連続する一対の平行な凸条17(「桟」とも称す)が形成される。本実施形態では、受台6の前後方向である幅方向の長さ(奥行長さ)が、搬送ベルト7の幅長よりやや短く設定される。つまり、一対の凸条17は、受台6の前後方向外側にはみ出して配置される。
【0025】
受台6には、後方に張り出して、左右方向に延在する連結枠18が設けられる。この連結枠18には、一対の凸条17のうち後側の凸条17が挿入される凹溝19が、搬送ベルト7の移動方向に沿って設けられている。後側の凸条17が凹溝19に挿入された搬送ベルト7は、前側の凸条17が受台6の前壁20に掛かる。
【0026】
搬送ベルト7は、前壁20に前側の凸条17が掛かり、凹溝19に後側の凸条17が挿入されることにより、搬送方向に直交する方向(ベルト幅方向)の移動が抑制され、蛇行が規制される。X線検査装置1は、被検査物4がベルト幅方向に移動する(揺らぐ)ことが規制されることで、被検査物4が真っ直ぐ進み、X線検査精度の低下が抑制される。
【0027】
下部フレーム9の左右側面には、複数の取付ピン21が突出している。受台6には、前後方向に延在する一対の平行な右側壁22と、左側壁23(図6参照)とが設けられている。これら右側壁22と左側壁23とは、後端同士が上記の連結枠18により連結されて平面視コ字状となる。
右側壁22及び左側壁23のそれぞれの後端には、半円形のピン挿入凹部24が形成される。また、右側壁22及び左側壁23のそれぞれの前端には、四分円形のピン係合凹部25が形成される。右側壁22及び左側壁23には、受台6が下部フレーム9の所定の位置に載置されたとき、ピン挿入凹部24とピン係合凹部25とにそれぞれ嵌る取付ピン21が配置されている。受台6は、このようにして下部フレーム9の上に載置されることにより、下部フレーム9の上面11との間に、空間Sを画成する。この空間Sの高さは、10mm程度で確保できる。受台6は、右側壁22と左側壁23の後方に、空間Sにエアを流入させるための導入口26が設けられている。なお、この導入口26の位置は、一例であり、導入口26の位置は受台6の任意の位置に形成されてよい。
【0028】
導入口26には、不図示のエア供給源が接続される。エア供給源は、例えばファンモータ、空圧発生機などとすることができる。
【0029】
図3は、図1に示したX線検査装置1の要部正面断面図である。
受台6は、天板27の左右端が、延出部28となって、右側壁22、左側壁23よりも左右方向に延出している。受台6の天板27には、下部フレーム9のスリット12に重なる位置で、X線通過スリット29が形成されている。X線通過スリット29は、搬送ベルト7が摺接するので、受台6における空間S内のエアが大量に漏れることはない。なお、X線通過スリット29は、スリット12と同様に、長穴に、X線を透過させる樹脂材がシリコン材等で防水されて取り付けられてもよい。
【0030】
受台6は、天板下面に導風板31が複数設けられる。本実施形態では、導風板31は、2つ1組で対となり互いに平行とされて下向きコ字状に形成される導風ユニット30を構成し、この導風ユニット30がX線通過スリット29を挟んで左右一対となり天板27に固定される。それぞれの導風ユニット30は、一対の平行な導風板31を有することとなり、つまり、受台6の空間S内には、前後方向に延在して左右方向に離間する平行な4つの導風板31が配置される。導風ユニット30は、導風板31が下部フレーム9の上面11に載置されることにより、導風板31が脚状となって受台6を支持するとともに、空間S内の左右方向を複数に仕切っている。
【0031】
図4は、搬送手段の分解斜視図である。
受台6が取り付けられた下部フレーム9には、下部フレーム9を左右から挟んで一対のローラユニット13が取り付けられる。搬送ベルト7は、これら下部フレーム9、受台6、一対のローラユニット13を包囲するようにして外側に装着される。搬送ベルト7は、外側に装着されることにより、左右一対のローラ15に掛け渡されることになる。受台6は、取付ピン21や、右側壁22及び左側壁23により前後左右の移動が規制されるが、下部フレーム9には固定されていない。すなわち、受台6は、下部フレーム9の上面11に載置されて、搬送ベルト7の上側周回部16により押さえつけられて保持されている。
【0032】
受台6は、搬送ベルト7の下面10に接する天板27の上面11に、エンボス加工が施されていてもよい。受台6は、天板27にエンボス、例えば凸加工部が設けられることにより、搬送ベルト7との接触面を減らすことができる。これにより、搬送部5は、搬送ベルト7の移動・摺動抵抗を低減させることが可能になる。また、受台6は、エンボスを設けて搬送ベルト7との接触面を減らすことにより、被検査物4との間の熱の移動も低減させることができる。
【0033】
図5は、受台6が外された下部フレーム9の斜視図である。
受台6の取り付は、左右両側の右側壁22と左側壁23との後端に形成されているピン挿入凹部24を、左右の取付ピン21に挿入する。ピン挿入凹部24を取付ピン21に挿入した状態で、取付ピン21を中心に受台6を回転させ、右側壁22と左側壁23との前端に形成されたピン係合凹部25を前側の取付ピン21に上方より係合させて受台6の取り付けが完了する。受台6に形成されたX線通過スリット29は、前側が、前壁20を切り欠いた吐出口32となって受台6の空間Sを外部へ開放する。なお、この吐出口32の位置は、一例であり、吐出口32の位置は受台6の任意の位置に形成されてよい。
【0034】
図6は、受台6の分解斜視図である。
受台6は、天板27の前壁20が下向きに折り曲げられ、天板27の後壁33(図2参照)が下向きに折り曲げられている。この天板27の下面側には、コ字状となる一対の右側壁22および左側壁23と、連結枠18とが固定される。天板27の下面側には、さらに一対の導風ユニット30が、X線通過スリット29を挟んで左右に固定される。導風ユニット30は、前後方向に長い矩形板の内側に、同方向に長い矩形穴34が形成された枠部35を有する。導風ユニット30は、この枠部35の一対の長辺部が、下側に折り曲げられて上述の導風板31となる。導風ユニット30は、枠部35の上面が天板27にビスや溶接等によって固定される。
【0035】
図7は、受台空間内のエアの流れを説明するための模式図である。なお、図7では、天板27が省略されている。
導風ユニット30は、導風板31の前端が前壁20から離間するとともに、導風板31の後端が後壁33から離間している。これにより、受台6の左右後部の導入口26から流入したエアは、導風板31に沿って流れながら中央部のX線通過スリット29に沿う流れとなり、最終的には吐出口32から受台6の外へ排気される。すなわち、受台6は、搬送ベルト7の下面10とX線検出器3の上面11との間に所定の空間Sを形成し、空間S内にエアを流入させる導入口26と、空間S内のエアを吐出する吐出口32とを備えて構成される。なお、X線検出器3の上面11は、下部フレーム9の上面11とほぼ面一となっている。
【0036】
導入口26は、受台背面における搬送方向の少なくとも片方に設けられる。本実施形態において、導入口26は、受台6の左右後部に2箇所設けられる。吐出口32は、受台正面におけるX線検出器3と重なる中央部に設けられている。導風ユニット30の各導風板31は、受台6を支持するとともに、導入口26から供給されたエアを、吐出口32に導くように働く。
【0037】
また、本実施形態において、X線検出器3は、センサ部分がラインセンサ36となる。上述のスリット12は、このラインセンサ36の長手方向に沿って形成されている。複数の導風板31は、ラインセンサ36の長手方向に沿い、かつラインセンサ36からオフセットされて平行に配置されている。
【0038】
図8は、変形例に係る受台空間内のエアの流れを説明するための模式図である。
なお、図7に示した実施形態に係る受台6は、一例である。図8に示すように、変形例に係る受台37は、複数の導風板38が、X線通過スリット29と直交する方向で平行に配置される。この場合、それぞれの導風板38は、右端が右側壁22から離間し、左端が左側壁23から離間して配置される。また、それぞれの導風板38には、X線通過スリット29と交わる位置に、エアを通すための切欠部39が形成される。この変形例に係る受台37においては、受台37の左右後部の導入口26から流入したエアは、左右から導風板31に沿って中央部へ流れ込み、切欠部39を通ってX線通過スリット29に沿う流れとなり、最終的には吐出口32から受台6の外へ排気されることになる。
【0039】
次に、上記した構成の作用を説明する。
【0040】
本実施形態に係るX線検査装置1では、搬送部5が、循環して移動する無端状の搬送ベルト7を備える。搬送ベルト7は、環状の周回路のうち上側周回部16が被検査物4の搬送領域となる。搬送ベルト7は、この搬送領域における下面10よりも下側に、X線検出器3を配置する。搬送ベルト7の下面10とX線検出器3の上面11との間には、受台6が備えられる。受台6は、搬送領域における搬送ベルト7の下面10が天板27に摺接することで、搬送領域の搬送ベルト7を支える。受台6は、搬送領域の搬送方向に直交する幅方向とほぼ同じ幅を有し、天板27の反対側となる下方が開放された扁平な箱状となる。搬送ベルト7とX線検出器3との間には、この受台6が設けられることにより所定の距離で離間する空間Sが形成される。受台6は、導入口26と、吐出口32とを備える。受台6は、導入口26から流入したエアが、吐出口32より吐出(排気)されることにより、常に新しいエアが空間S内に流入する。
【0041】
X線検査装置1では、搬送領域の搬送ベルト7に被検査物4が載置され、被検査物4とX線検出器3との間に温度差があると、その温度勾配により、例えば高温の被検査物4から搬送ベルト7、受台6を通過して熱がX線検出器3へ移動する。被検査物4から受台6に伝わった熱は、空間S内を経てX線検出器3の上面11に伝わるが、その殆どが、空間S内を流動するエアに伝わった後、吐出口32より排気されるエアにより搬送されて吐出口32より受台6の外部へと排熱される。このため、X線検出器3の上面11には、被検査物4から伝わる熱が大幅に低減されることになる。その結果、X線検査装置1では、被検査物4とX線検出器3との間の伝熱が低減され、X線検出器3の寿命が短くなることを抑制できる。
【0042】
また、このX線検査装置1では、導入口26が、受台背面における搬送方向の少なくとも片方に設けられる。なお、導入口26は、受台背面における搬送方向の両側に設けられればさらによい。一方、吐出口32は、受台正面におけるX線検出器3と重なる中央部に設けられる。導入口26から受台6の空間S内に流入したエアは、搬送方向の少なくとも片方から中央部に向けて流れ、最終的に、中央部に設けられた吐出口32から受台6の外部へ排気される。吐出口32は、X線検出器3と重なる位置に設けられることで、吐出口32から排気されるエアを必ずX線検出器3のセンサ部分(ラインセンサ36)に近接させて通過させることができる。これにより、ラインセンサ36にエアが滞留し、ラインセンサ36が被検査物4からの熱の影響を受けやすくなることがない。その結果、X線検出器3のセンサ部分となる中央部付近からエアが確実に通過して流出し、X線検出器3への熱の伝達をより軽減できる。
【0043】
また、このX線検査装置1では、受台6の空間S内に導風板31が設けられることにより、導入口26から流入したエアが空間S内を淀みなく流れるように整流され、空間S内で滞留することなく吐出口32から排気される。これにより、導入口26から流入したエアが、例えば受台6の隅部でエネルギー損失を生じさせる渦となって滞留しなくなる。そのため、導入口26から供給したエアを、エネルギー損失無く効率よく吐出口32へ導くことができる。つまり、効率よく伝熱を抑制できる。
【0044】
また、X線検査装置1では、下方が開放されて扁平な箱状となる受台6の空間S内に、導風板31が設けられている。導風板31は、上端で天板27を支え、下端が、X線検出器3を収容した下部フレーム9の上面11に載置される。すなわち、導風板31は、受台6の補強構造ともなる。受台6は、天板27を厚い板材で構成すると重量が増え、扱いにくくなる。このため、清掃などの際の扱いを考慮すると、なるべく薄い板材がよい。受台6は、このような要請から撓みやすくなる天板27を、導風板31により補強することができる。
【0045】
受台6は、導風板31が設けられて天板27が撓みにくくなることにより、ベルト上面(搬送面)の被検査物4と、X線検出器3(ラインセンサ36)との距離に変動が生じにくくなる。そして、受台6は、エアを整流して吐出口32へ導けるので、空間S内におけるエアの搬送効率低下を抑制できる。また、被検査物4の荷重を導風板31が支持するので、受台6の変形を抑制して、被検査物4とX線検出器3との距離を高精度に維持でき、検査精度の低下も抑制できる。
【0046】
さらに、このX線検査装置1では、X線検出器3のセンサ部分が、直線状のラインセンサ36となる。ラインセンサ36は、搬送領域の搬送方向中央部において、搬送方向と直交方向が長手方向となって配置される。導風板31は、このラインセンサ36の長手方向に沿って、ラインセンサ36からオフセットされて平行に配置される。つまり、導風板31は、ラインセンサ36と重なる上方には位置しないようにして設けられる。従って、複数の導風板31が設けられれば、少なくとも一対の導風板31の間に、ラインセンサ36が平行に位置することになる。これにより、ラインセンサ36の上方には、一対の導風板31に挟まれ、直近の下流が吐出口32となった直線状の吐出流路が形成される。直線状の吐出流路に流入したエアは、滞留無く円滑に吐出口32へ流れて排気が可能となる。その結果、少なくとも一対の導風板31が、センサ部分を挟んで平行に配置され、導風板31がセンサ部分の邪魔になることがなく、センサ近傍のエアを滞留なく確実に吐出口32に導いて排気できる。
【0047】
従って、本実施形態に係るX線検査装置1によれば、被検査物4とX線検出器3との間の伝熱を低減し、X線検出器3の寿命が短くなることを抑制できる。
【0048】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0049】
例えば上記の構成例では、被検査物が高温である場合の例を説明したが、被検査物が低温である場合でも同様の効果を得られる。すなわち、被検査物が低温の場合には、本実施形態の構成により伝熱を低減することにより、X線検出器側の熱が被検査物に伝わることで、例えば冷凍食品などの品質低下、変質、劣化などを抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…X線検査装置
2…X線発生器
3…X線検出器
4…被検査物
5…搬送手段(搬送部)
6…受台
7…搬送ベルト
10…下面
11…上面
26…導入口
31…導風板
32…吐出口
36…ラインセンサ
S…空間
図1
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図8