(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164402
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】回転角度検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
G01D5/245 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069871
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 崇晴
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA04
2F077CC02
2F077NN02
2F077NN17
2F077NN19
2F077PP12
2F077PP14
2F077TT16
(57)【要約】
【課題】故障した回転角センサを除いた正常な回転角センサにより回転電機の出力軸の回転角度を検出可能な回転角度検出装置を得る。
【解決手段】回転電機の出力軸と共に回転可能に保持された8極磁石の磁束を検出する複数の回転角センサ20B1~20B4と、8極磁石80Cの磁束を複数の回転角センサ20B1~20B4の各々が検出した際の各々の出力を比較し、他の複数の回転角センサの出力との差異が所定値以上の回転角センサを異常と判定すると共に、異常と判断した回転角センサ以外の回転角センサの出力に基づいて出力軸の回転角度を算出するマイコン40Bと、を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる磁極が回転体の回転方向に配列されるように前記回転体に保持された永久磁石(80C)の磁束を、前記回転体の回転軸と交差する方向に前記回転体の回転軸から離れた位置で各々検出する複数の磁束検出部(22B1~22B4)と、
前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)の出力に基づいて異常を検出し、異常を示さない磁束検出部(22B1~22B4)の出力に基づいて前記回転軸の回転角を導出する回転角度導出部(40B)と、
を含む回転角度検出装置。
【請求項2】
前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)は、各々少なくとも1つの磁束検出部(22B1~22B4)を含む複数の系統に分かれており、
前記回転角度導出部(40B)は、異常が検出された系統以外の系統に含まれる磁束検出部(22B1~22B4)の出力に基づいて回転角を導出する請求項1に記載の回転角度検出装置。
【請求項3】
前記回転角度導出部(40B)は、前記複数の系統の各系統が複数の磁束検出部(22B1~22B4)を含む場合には、前記複数の系統の各系統に含まれる複数の磁束検出部(22B1~22B4)の出力に基づいて各系統毎に異常を検出するか、または前記複数の系統のいずれかの系統に含まれる磁束検出部(22B1~22B4)の中のいずれかの磁束検出部(22B1~22B4)の出力と前記いずれかの系統以外の他の系統に含まれる磁束検出部(22B1~22B4)の中のいずれかの磁束検出部(22B1~22B4)の出力とに基づいて前記複数の系統各々の異常を検出する請求項2に記載の回転角度検出装置。
【請求項4】
前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)は、前記回転体の回転方向に対する接線方向と平行に配置されている請求項1~3のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項5】
前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)は、前記永久磁石(80C)の磁束の変化に応じて電圧が各々所定の位相差で正弦波状に変化する電気信号を各々出力し、前記回転角度導出部(40B)は、他の磁束検出部(22B1~22B4)が出力した電気信号との位相差と前記所定の位相差との偏差が、所定の閾値偏差以上の電気信号を出力した磁束検出部(22B1~22B4)を異常と判定する請求項1~4のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項6】
前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)は、前記永久磁石(80C)の磁束の変化に応じて電圧が各々所定の振幅差で正弦波状に変化する電気信号を各々出力し、前記回転角度導出部(40B)は、他の磁束検出部(22B1~22B4)が出力した電気信号との振幅差と前記所定の振幅差との偏差が、所定の振幅偏差以上の電気信号を出力した磁束検出部(22B1~22B4)を異常と判定する請求項1~4のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項7】
前記回転角度導出部(40B)は、前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)の各々の出力に基づいて各々算出された回転角度において、他の磁束検出部(22B1~22B4)の出力に基づいて算出された回転角度との差異が所定の閾値角度以上の磁束検出部(22B1~22B4)を異常と判定する請求項1~4のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項8】
前記回転角度導出部(40B)は、作動開始時に前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)のいずれかが異常と判定した場合は、回転角の導出を中止し、作動開始後に前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)のいずれかが異常と判定した場合は、異常と判定した磁束検出部(22B1~22B4)以外の磁束検出部(22B1~22B4)の出力に基づいて導出した回転角を出力する請求項1~7のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項9】
前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)の個数が奇数の場合は、前記永久磁石(80C)の法線(88)上に1の磁束検出部(22B1~22B4)を配置し、該法線(88)を中心に他の磁束検出部(22B1~22B4)を対称に配置する請求項1~8のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項10】
前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)の個数が偶数の場合は、前記永久磁石(80C)の法線を中心に前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)を対称に配置する請求項1~8のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項11】
回転軸が中空形状である回転電機の前記回転軸の回転角の導出に用いられる請求項1~10のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【請求項12】
産業用ロボット、並びに自動運転車両の操舵、制動及び機関の制御に係る回転電機の出力軸の回転角度を出力する請求項1~11のいずれか1項に記載の回転角度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の出力軸の回転角度を検出する回転角度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の出力軸の回転角度を検出する回転角度検出装置として磁気エンコーダ装置が知られている。回転角度検出装置は、産業用ロボット及び各種産業用機械等に組み込まれ、産業用ロボット及び各種産業用機械等の制御装置は、回転角度検出装置が検出した回転電機の出力軸の回転角度の情報(現在値)と指令信号(目標値)とを比較して、目標値と現在値との偏差を解消するようなフィードバック制御を行う。
【0003】
磁気エンコーダ装置は、回転電機の回転子等を構成する永久磁石の磁束の変化に対応した電気信号を出力する回転角センサを備えるが、回転角センサに不具合が生じた場合、回転電機の出力軸の回転角度を検出することができなくなる。
【0004】
特許文献1と、特許文献2の各々には、多極磁石の磁束を2系統以上の回転角センサの出力差分で較正する回転角センサの発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-28037号公報
【特許文献2】特開2020-153806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、2系統の回転角センサを有するので、開度検出手段の故障検出は可能だが、どちらの系統の回転角センサが故障しているかまではわからず、故障した回転角センサを除く正常な回転角センサのみ動かすことができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に係る発明は、多極磁石の全周に回転角センサの配置が必要なので、多極磁石の外径ごとに回転角センサを配置する径を変える必要があると共に、回転角センサのいずれかが故障した場合を想定していないという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みて創作されたものであり、故障した回転角センサを除いた正常な回転角センサにより回転電機の出力軸の回転角度を検出可能な回転角度検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る回転電機の制御装置は、複数の異なる磁極が回転体の回転方向に配列されるように前記回転体に保持された永久磁石(80C)の磁束を、前記回転体の回転軸と交差する方向に前記回転体の回転軸から離れた位置で各々検出する複数の磁束検出部(22B1~22B4)と、前記複数の磁束検出部(22B1~22B4)の出力に基づいて異常を検出し、異常を示さない磁束検出部(22B1~22B4)の出力に基づいて前記回転軸の回転角を導出する回転角度導出部(40B)と、を含む。
【0010】
この様に構成することで、故障した回転角センサを除いた正常な回転角センサにより回転電機の出力軸の回転角度を検出可能な回転角度検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は、回転角度検出装置のパッケージの一例を示した概略図であり、(B)は、回転角度検出装置の構成の一例を示した概略図である。
【
図2】(A)は、回転角センサに含まれる磁場検出部の構成を示した概略図であり、(B)は、磁場検出部の出力波形を示した概略図である。
【
図3】(A)は、回転する2極磁石の軸方向に回転角センサを実装した場合を示した説明図であり、(B)は、回転する2極磁石の軸方向に回転角センサを実装した場合を示した説明図であり、(C)は、回転角センサの出力波形を示した概略図である。
【
図4】(A)は、回転する10極磁石の外周の接線方向と平行に回転角センサを実装した場合を示した説明図であり、(B)は、回転する10極磁石の磁束密度成分を示した説明図であり、(C)は、回転角センサの出力波形を示した概略図である。
【
図5】(A)は回転角センサが、略円環状を呈する8極磁石の外周の接線方向と平行に配設されると共に、回転角センサ20と回転角センサとの間の中心を8極磁石の法線が通るように実装される回転角度検出装置の一例を示し、(B)は、4個の回転角センサのうち2個の回転角センサを、8極磁石の法線が通る位置から8極磁石の軸方向に対応する方向で各々段違いに配設すると共に、回転角センサの各々に囲まれた領域の中心を8極磁石の法線が通るように実装される回転角度検出装置の一例を示し、(C)は、2個の回転角センサを各々段違いに配設した回転角度検出装置の構成の一例を示した概略図である。
【
図6】(A)は、回転角センサの中心を8極磁石の法線が通り、法線を中心に2個の回転角センサが各々対称に配置されるように実装される回転角度検出装置の構成の一例を示し、(B)は、8極磁石に面した側に2個の回転角センサを、8極磁石に面した側の反対側に1個の回転角センサを各々実装した回転角度検出装置の構成の一例を示した概略図である。
【
図7】回転角センサを4個備えた回転角度検出装置の構成の一例を示したブロック図である。
【
図8】回転角センサを3個備えた回転角度検出装置の構成の一例を示したブロック図である。
【
図9】第1実施形態に係る回転角度検出装置の処理の一例を示したフローチャートである。
【
図10】回転角度検出装置の出力系統の一例を示した説明図である。
【
図11】第2実施形態に係る回転角センサを4個備えた回転角度検出装置の構成の一例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(A)は、回転角度検出装置10Aのパッケージの一例を示した概略図であり、
図1(B)は、回転角度検出装置10Aの構成の一例を示した概略図である。
【0013】
図1(A)、(B)に示したように、回転角度検出装置10Aはパッケージ内に回転角センサ20A1、及び回転角センサ20A2の複数の回転角センサを含む。
【0014】
図2(A)は、回転角センサ20A1、20A2に各々含まれる磁束検出部22A1、22A2の構成を示した概略図であり、
図2(B)は、磁束検出部22A1、22A2の出力波形70、72を示した概略図である。
【0015】
図2(A)に示したように、磁束検出部22A1、22A2は、一例としてMR(磁気抵抗)素子で構成されている。磁束検出部22A1、22A2は、4つの抵抗がブリッジ状に配置されたホイートストンブリッジの一種であり、電圧Vccが印加された状態で、矢印方向の磁束を受けると各々の抵抗の抵抗値が変化する。その結果、磁束検出部22A1は、端子Sin+、Sin-から電圧が正弦波状に変化する出力波形70を有する電気信号を出力し、磁束検出部22A2は、端子Cos+、Cos-から出力波形70とは異なる位相で電圧が変化する出力波形72を有する電気信号を出力する。
【0016】
出力波形70と出力波形72との位相差は、磁束検出部22A1、22A2の実装位置による。
図2(A)に示したように、磁束検出部22A2を、磁束を受ける向きが、磁束検出部22A1とは90度異なる位置に実装すると、出力波形70が正弦波状であれば、出力波形72は余弦波状となる。
【0017】
本実施形態では、磁束検出部22A1、22A2はMR素子を採用したが、ホール素子等の他の磁気検出素子を用いてもよい。
【0018】
図3(A)は、回転する2極磁石80Aの軸方向に回転角センサ20A1を実装した場合を示した説明図であり、
図3(B)は、回転する2極磁石80Aの軸方向に回転角センサ20A2を実装した場合を示した説明図であり、
図3(C)は、回転角センサ20A1、20A2の出力波形70、72を示した概略図である。
【0019】
図3(A)、(B)に示したように、回転する磁石の軸方向に回転角センサ20A1、20A2を実装する場合をon-axisと称する。on-axisでは、一例として、回転角センサ20A1を方向B(X)の磁束82Aで出力波形70が最大振幅となるように、回転角センサ20A2を方向B(Y)の磁束82Bで出力波形72が最大振幅となるように、各々実装する。磁束82Aと磁束82Bとが互いに90度ずれていて、かつ出力波形70が正弦波状であれば、出力波形72は余弦波状となる。
【0020】
回転する2極磁石80Aの軸方向は、回転電機では出力軸の軸線上になる場合がある。しかしながら、ステッピングモータ等の回転電機では、出力軸内には、各種のケーブルを配設する場合があるので、かかる場合には回転角センサ20A1、20A2をon-axisで実装することが困難となる。
【0021】
図4(A)は、回転する10極磁石80Bの外周の回転方向の接線方向と平行に回転角センサ20A1、20A2を実装した場合を示した説明図であり、
図4(B)は、回転する10極磁石80Bの磁束密度成分を示した説明図であり、
図4(C)は、回転角センサ20A1、20A2の出力波形74、76を示した概略図である。off-axisでは、略円環状を呈する10極磁石80Bの外周からギャップΔd外側に設けられたセンサ配置領域84に回転角センサ20A1、20A2を含む回転角度検出装置10Aのパッケージが実装される。その結果、回転角センサ20A1、20A2は、10極磁石80Bの外周の接線に平行な面に各々実装される。
【0022】
図4(A)に示したように、回転する磁石の接線方向と平行に回転角センサ20A1、20A2を実装する場合をoff-axisと称する。
【0023】
off-axisでは、一例として、回転角センサ20A1を10極磁石80Bの法線方向B(R)において、磁束密度波形が理想正弦波に近い状態となる位置に実装する。また、回転角センサ20A2を10極磁石80Bの接線方向B(θ)において、磁束密度波形が理想正弦波に近い状態となる位置に実装する。法線方向B(R)と接線方向B(θ)が互いに90度ずれているのであれば、出力波形74が正弦波状であれば、出力波形76は余弦波状となる。
【0024】
図5(A)、(B)、(C)は、磁気検出する回転角センサが偶数個の場合を示した概略図である。
図5(A)は回転角センサ20B1、20B2、20B3、20B4(以後、「回転角センサ20B1~20B4」と略記)が、略円環状を呈する8極磁石80Cの外周の接線90の方向と平行に、各々の中心部との距離がギャップΔgとなるように配設されると共に、回転角センサ20B2と回転角センサ20B3との間の中心を8極磁石80Cの法線88が通るように実装される回転角度検出装置10Bsの一例を示している。法線88は、
図5(B)、(C)に示したように、8極磁石80Cの軸方向の中心を通り、回転角センサ20B1~20B4は法線88を中心として対称に配置される。そして、法線88が、回転角センサ20B2と回転角センサ20B3との間の中心を通るように回転角度検出装置10Bsを実装することにより、回転角センサ20B1~20B4の各々は、8極磁石80Cの磁束の変化を効率よく検出できる。また、回転角度検出装置10Bsが配設される位置は、8極磁石80Cの外周からギャップΔdの外側である。
【0025】
ギャップΔgは、回転角センサ20B1~20B4の仕様にもよるが、一例として、0.5mm~5mm程度である。ギャップΔgは、後述する他の実装例でも適用されているが、
図5(A)の場合と同様に、一例として、0.5mm~5mm程度である。
【0026】
図5(B)は、回転角センサ20B1、20B3と、回転角センサ20B2、20B4とを、8極磁石80Cの法線88が通る位置から8極磁石80Cの軸方向に対応する方向で各々段違いに配設すると共に、回転角センサ20B1、B2、20B3、20B4の各々に囲まれた領域の中心を8極磁石80Cの法線88が通るように実装される回転角度検出装置10Bpの一例を示している。また、回転角度検出装置10Bpは、回転角センサ20B1の中心部と回転角センサ20B3との中心部の距離、及び回転角センサ20B2の中心部と回転角センサ20B4との中心部の距離が、各々ギャップΔgとなっている。
【0027】
回転角度検出装置10Bs及び回転角度検出装置10Bpは、共に略直方体状のパッケージを有し、当該パッケージは、8極磁石80Cの外周の接線90の方向と平行に実装される。従って、回転角度検出装置10Bsにおいて、回転角センサ20B1と8極磁石80Cとの距離は、回転角センサ20B2と8極磁石80Cとの距離よりも大きくなる。同様に、回転角センサ20B4と8極磁石80Cとの距離は、回転角センサ20B3と8極磁石80Cとの距離よりも大きくなる。従って、回転角センサ20B1、B4に各々到達する8極磁石80Cの磁束の強度は、回転角センサ20B2、20B3に各々到達する8極磁石の磁束の強度よりも低くなる。
【0028】
しかしながら、回転角度検出装置10Bpでは、8極磁石80Cに対する回転角センサ20B1、20B2、20B3、20B4の各々の距離は等しいので、回転角センサ20B1~20B4の各々が検出する8極磁石80Cの磁束の強度は略同等となる。
【0029】
図5(C)は、
図5(B)に示した回転角度検出装置10Bpから回転角センサ20B2、20B3を間引き、回転角度検出装置10Bpの回転角センサ20B1に対応する回転角センサ20A1と、回転角センサ20B4に対応する回転角センサ20A2とを各々配設した回転角度検出装置10Apの構成の一例を示している。
【0030】
回転角度検出装置10Apも、8極磁石80Cに対する回転角センサ20A1、20A2の各々の距離は等しいので、回転角センサ20A1、20A2の各々が検出する8極磁石80Cの磁束の強度は略同等となる。
【0031】
図6(A)、(B)は、磁気検出する回転角センサが奇数個の場合を示した概略図である。
図6(A)は回転角センサ20C1、20C2、20C3が、8極磁石80Cの外周の接線90の方向と平行に、各々の中心部との距離がギャップΔgとなるように配設されると共に、回転角センサ20C2の中心を8極磁石80Cの法線88が通り、法線88を中心に回転角センサ20C1と回転角センサ20C3とが対称に配置されるように実装される回転角度検出装置10Csの構成の一例を示している。
【0032】
図6(B)は、8極磁石80Cに面した側に回転角センサ20C2、20C3を、8極磁石80Cに面した側の反対側に回転角センサ20C1を各々実装した回転角度検出装置10Crの構成の一例を示した概略図である。回転角度検出装置10Crにおいて、法線88は、回転角センサ20C2と回転角センサ20C3との間を通り、回転角センサ20C1の中心を通る。回転角度検出装置10Crは、基板の一方の面に回転角センサ20C2、C3を、基板の他方の面に回転角センサ20C1を、各々実装することにより、回転角度検出装置10Csよりも、パッケージを小型化できる。
【0033】
図7は、回転角センサを4個備えた回転角度検出装置10B(10Bs、10Bp)の構成の一例を示したブロック図である。回転角度検出装置10Bは、回転角センサ20B1、B2、B3、B4の4系統を備えている。回転角センサ20B1は、回転電機の回転子等を構成する永久磁石の磁束を検出するMR素子等の磁束検出部22B1と、磁束検出部22B1が出力した信号を増幅する増幅部24B1と、を備えている。回転角センサ20B2、B3、B4の各々も、回転角センサ20B1と同様に、磁束検出部22B2、22B3、22B4、及び増幅部24B2、24B3、24B4の各々を備える。
【0034】
回転角センサ20B1を備える系統は、回路基板30B1に実装されたLPF(ローパスフィルタ)32B1により、増幅部24B1で増幅された信号から高周波成分を除去した信号を制御装置であるマイコン40Bに入力する。マイコン40Bでは、AD変換部42B1において、LPF32B1から入力された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、モータ角演算部44B1において、回転電機の出力軸の回転角度を算出する。
【0035】
回転角センサ20B2、20B3、20B4を各々含む系統においても、回路基板30B2、30B3、30B4に各々実装されたLPF32B2、32B3、32B4により、増幅部24B2、24B3、24B4で各々増幅された信号から高周波成分を各々除去した信号を制御装置であるマイコン40Bに入力する。マイコン40Bでは、AD変換部42B2、42B3、42B4の各々において、LPF32B2、32B3、32B4の各々から入力された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、モータ角演算部44B2、44B3、44B4において、回転電機の出力軸の回転角度を各々算出する。
【0036】
そして、マイコン40Bは、故障判定部46B1において、回転角センサ20B1を含む系統のモータ角演算部44B1で算出した回転角度と、回転角センサ20B2を含む系統のモータ角演算部44B2で算出した回転角度との各々を比較する。例えば、故障判定部46B1は、モータ角演算部44B1による算出結果とモータ角演算部44B2による算出結果との差分が、所定の閾値角度以上の場合に、回転角センサ20B1を含む系統、及び回転角センサ20B2を含む系統のいずれかが故障したと判定する。所定の閾値角度は、例えば、正常値の10~20%の値であるが、具体的には、実機を通じた実験によって決定する。
【0037】
同様に、マイコン40Bは、故障判定部46B2において、回転角センサ20B3を含む系統のモータ角演算部44B3で算出した回転角度と、回転角センサ20B4を含む系統のモータ角演算部44B4で算出した回転角度との各々を比較する。例えば、故障判定部46B2は、モータ角演算部44B3による算出結果とモータ角演算部44B4による算出結果との差分が、所定の閾値角度以上の場合に、回転角センサ20B3を含む系統、及び回転角センサ20B4を含む系統のいずれかが故障したと判定する。
【0038】
正常系統判断部48Bは、故障判定部46B1、46B2からの入力に基づいて、正常な系統を判断する。例えば、正常系統判断部48Bは、故障判定部46B1から回転角センサ20B1を含む系統、及び回転角センサ20B2を含む系統のいずれかが故障したとの判定結果が入力されると共に、故障判定部46B2から回転角センサ20B3を含む系統、及び回転角センサ20B4を含む系統は正常であるとの判定結果が入力された場合は、回転角センサ20B3を含む系統、及び回転角センサ20B4を含む系統が正常な系統と判断し、回転角センサ20B3を含む系統、及び回転角センサ20B4を含む系統の各々で算出した回転角度の情報を、プリドライバであるサーボアンプ60に出力する。本実施形態では、正常な回転角センサから複数の回転角度の情報が得られるので、一例として、正常系統判断部48Bは、正常な回転角センサによって検出した回転角度の平均値をサーボアンプ60に出力する。
【0039】
また、正常系統判断部48Bは、故障判定部46B1から回転角センサ20B1を含む系統、及び回転角センサ20B2を含む系統は正常であるとの判定結果が入力されると共に、故障判定部46B2から回転角センサ20B3を含む系統、及び回転角センサ20B4を含む系統のいずれかが故障したとの判定結果が入力された場合は、回転角センサ20B1を含む系統、及び回転角センサ20B2を含む系統が正常な系統と判断し、回転角センサ20B1を含む系統、及び回転角センサ20B2を含む系統の各々で算出した回転角度の情報を、プリドライバであるサーボアンプ60に出力する。
【0040】
上記以外にも、正常系統判断部48Bは、例えば、正常系統判断部48Bは、故障判定部46B1から回転角センサ20B1を含む系統、及び回転角センサ20B2を含む系統のいずれかが故障したとの判定結果が入力されると共に、故障判定部46B2から回転角センサ20B3を含む系統、及び回転角センサ20B4を含む系統は正常であるとの判定結果が入力された場合は、モータ角演算部44B1、44B2、44B3、44B4の各々が算出した4つの回転角度のうち、他の3つの回転角度と所定の閾値角度以上異なる回転角度を算出した系統が故障していると判断し、その他の系統を正常な系統としてもよい。
【0041】
同様に、正常系統判断部48Bは、故障判定部46B1から回転角センサ20B1を含む系統、及び回転角センサ20B2を含む系統は正常であるとの判定結果が入力されると共に、故障判定部46B2から回転角センサ20B3を含む系統、及び回転角センサ20B4を含む系統のいずれかが故障したとの判定結果が入力された場合は、モータ角演算部44B1、44B2、44B3、44B4の各々が算出した4つの回転角度のうち、他の3つの回転角度と所定の閾値角度以上異なる回転角度を算出した系統が故障していると判断し、その他の系統を正常な系統としてもよい。
【0042】
偶数個の回転角センサを備える場合の最小構成は、2個の回転角センサ20A1、20A2を備える回転角度検出装置10A、10Apであるが、かかる構成では、回転角センサ20A1、20A2のいずれかが故障したことを判定できても、正常な回転角センサがどれであるかを判断することが困難である。従って、本実施形態では、原則として、回転角センサを3個以上備えることが好ましい。
【0043】
図8は、回転角センサを3個備えた回転角度検出装置10C(10Cs、10Cr)の構成の一例を示したブロック図である。回転角度検出装置10Cは、回転角センサ20C1、20C2、20C3の3系統を備えている。回転角センサ20C1は、回転電機の回転子等を構成する永久磁石の磁束を検出するMR素子等の磁束検出部22C1と、磁束検出部22C1が出力した信号を増幅する増幅部24C1と、を備えている。回転角センサ20C2、C3の各々も、回転角センサ20C1と同様に、磁束検出部22C2、22C3、及び増幅部24C2、24C3の各々を備える。
【0044】
回転角センサ20C1を備える系統は、回路基板30C1に実装されたLPF32B1により、増幅部24C1で増幅された信号から高周波成分を除去した信号を制御装置であるマイコン40Cに入力する。マイコン40Cでは、AD変換部42C1において、LPF32C1から入力された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、モータ角演算部44C1において、回転電機の出力軸の回転角度を算出する。
【0045】
回転角センサ20C2、20C3を各々含む系統においても、回路基板30C2、30C3に各々実装されたLPF32C2、32C3により、増幅部24C2、24C3で各々増幅された信号から高周波成分を各々除去した信号を制御装置であるマイコン40Cに入力する。マイコン40Cでは、AD変換部42C2、42C3の各々において、LPF32C2、32C3の各々から入力された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、モータ角演算部44C2、44C3において、回転電機の出力軸の回転角度を各々算出する。
【0046】
そして、マイコン40Bは、故障判定部46Cにおいて、回転角センサ20C1を含む系統のモータ角演算部44C1で算出した回転角度と、回転角センサ20C2を含む系統のモータ角演算部44C2で算出した回転角度と、回転角センサ20C3を含む系統のモータ角演算部44C3で算出した回転角度との各々を比較する。例えば、故障判定部46Cは、モータ角演算部44C1、44C2、44C3の各々が算出した3つの回転角度のうち、他の2つの回転角度と所定の閾値以上異なる回転角度を算出した系統が故障していると判定する。
【0047】
正常系統判断部48Cは、故障判定部46Cからの入力に基づいて、正常な系統を判断する。例えば、正常系統判断部48Cは、故障判定部46Cが故障したと判定した系統以外の系統を正常と判断し、当該系統で算出した回転角度の情報を、プリドライバであるサーボアンプ60に出力する。
【0048】
図9は、本実施形態に係る回転角度検出装置10Bの処理の一例を示したフローチャートである。回転角度検出装置10Bは、4個の回転角センサ20B1、B2、B3、B4を備えている。
【0049】
ステップ900では、回転角度検出装置10Bの電源がオンになる。電源オンと共に、回転角センサ20B1~B4は、回転電機の回転子等である8極磁石80Cの磁束の変化を検出し、モータ角演算部44B1、44B2、44B3、44B4による回転角度の算出を行う。本実施形態では、一例として、
図10に示したように、回転角センサ20B1、20B2を含む回路を第1系統、回転角センサ20B3、20B4を含む回路を第2系統と称する。従って、故障判定部46B1は、第1系統の故障の有無を、故障判定部46B2は、第2系統の故障の有無を、各々判定する。
【0050】
ステップ902では、故障判定部46B1、46B2において異常判定がなされたか否かを判定する。
図10に示したように、本実施形態では、前述のように、一例として、故障判定部46B1が第1系統の異常を、故障判定部46B2が第2系統の異常を、各々判定する。そして、正常系統判断部48Bは、故障判定部46B1が第1系統を異常と判定し、故障判定部46B2が第2系統を異常と判定しない場合は、第2系統が正常な系統であると判断する。同様に、正常系統判断部48Bは、故障判定部46B1が第1系統を異常と判定せず、故障判定部46B2が第2系統を異常と判定した場合は、第1系統が正常な系統であると判断する。
【0051】
ステップ902で、異常判定がなされた場合は手順をステップ914に移行し、異常判定がなされなかった場合は手順をステップ904に移行する。
【0052】
ステップ904では、回転電機の出力軸の回転角度を算出する通常動作を行う。そして、ステップ906では、故障判定部46B1、46B2において異常判定がなされたか否かを判定する。ステップ906で、異常判定がなされた場合は手順をステップ920に移行し、異常判定がなされなかった場合は手順をステップ908に移行する。
【0053】
ステップ908では、上位の制御装置から停止指示がなされたか否かが判定される。ステップ908で、停止指示がなされた場合は手順をステップ910に移行し、停止指示がなされなかった場合は手順をステップ904に移行して通常動作を継続する。
【0054】
ステップ910では、サーボアンプ60への回転角度の情報の出力を停止する。そして、ステップ912では、回転角度検出装置10Bの電源をオフにして処理を終了する。
【0055】
前述のステップ902で異常判定がなされた場合は、ステップ914で故障した異常な系統の回路を停止する。そして、ステップ916では、回転角度検出装置10Bの一部の系統に異常が生じたことを上位の制御装置に通知する。さらに、ステップ918では、回転角度検出装置10B及び回転電機を動作させずに停止状態を維持したまま処理を終了する。
【0056】
前述のステップ906で異常判定がなされた場合は、ステップ920で故障した異常な系統の回路を停止する。そして、ステップ922では、回転角度検出装置10Bの一部の系統に異常が生じたことを上位の制御装置に通知する。さらに、ステップ918では、正常回路のみを動作させるバックアップ制御を行い、手順をステップ908に移行させる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る回転角度検出装置は、回転角センサを各々備える複数の系統で各々算出した回転角度を比較し、他の系統で算出した回転角度と所定の閾値以上異なる回転角度を算出した系統が故障していると判定する。その結果、故障した回転角センサを特定できると共に、複数の回転角センサのうち故障した回転角センサを除いた正常な回転角センサにより回転電機の出力軸の回転角度を検出できる。
【0058】
本実施形態に係る回転角度検出装置は、動作中に一部の回転角センサが故障した場合でも、正常な回転角センサを用いたバックアップ制御が可能なので、システムの冗長性が重視される産業用ロボット、並びに自動運転車両の操舵、制動及び機関の制御に係る回転電機の出力軸の回転角度の検出に適している。
【0059】
本実施形態では、回転角度検出装置をoff-axisで実装する場合を主として説明したが、on-axiisで実装してもよい。また、本実施形態では、1の系統、又は1の磁束検出部に異常が生じた場合を説明したが、複数系統が、例えば6系統等のように、4系統を超える十分な数の系統を備えるのであれば、複数の系統の各系統に含まれる磁束検出部の出力に基づいて各系統毎に異常を検出するか、または複数の系統のいずれかの系統に含まれる磁束検出部と前記いずれかの系統以外の他の系統に含まれる磁束検出部の出力とに基づいて複数の系統各々の異常を検出し、異常が検出された系統以外の系統に含まれる磁束検出部の出力に基づいて回転角を導出してもよい。
【0060】
また、複数の系統の各系統は、1つの磁束検出部を含むように構成するか、又は複数の磁束検出部を含むように構成することができる。
【0061】
複数の系統の各系統に1つの磁束検出部を含むように構成した場合には、回転角度導出部は、複数の系統の中のいずれかの系統に含まれる磁束検出部の出力と他の系統に含まれる磁束検出部の出力とを比較して各系統毎に異常を検出する。
【0062】
一方、複数の系統の各系統に複数の磁束検出部を含むように構成した場合には、上記と同様に、いずれかの系統に含まれる複数の磁束検出部の中のいずれかの磁束検出部の出力と、上記のいずれかの系統以外の他の系統に含まれる複数の磁束検出部の中のいずれかの磁束検出部の出力と、を比較して各系統毎に異常を検出するか、又は、複数の系統の各系統に含まれる複数の磁束検出部の中の2つの磁束検出部の出力を比較して各系統毎に異常を検出する。
【0063】
[第2実施形態]
第1実施形態では、回転角センサを各々備える複数の系統で各々算出した回転角度を比較して、故障した回転角センサを特定した。しかしながら、これに限定されない。例えば、回転角度を算出する前の、デジタルデータに変換される前の、複数の回転角センサの各々の出力波形を比較して、故障した回転角センサを特定してもよい。本実施形態において、複数の回転角センサの各々の出力波形は、回転角度検出装置における実装位置に応じた位相差を有するので、予め明らかになっている所定の位相差と異なる位相差を有する波形を出力した回転角センサを故障したと判定し、当該故障した回転角センサを除いた正常な回転角センサを用いて回転角度を算出してもよい。
【0064】
図11は、回転角センサを4個備えた回転角度検出装置10Dの構成の一例を示したブロック図である。
図11に示した回転角度検出装置10Dは、第1実施形態の回転角度検出装置10Bとは、故障判定部46D1、46D2がアナログデータである回転角センサ20B1~20B4の出力波形の位相差に基づいて回転角センサ20B1~20B4の故障を判定し、正常系統判断部48Dは、故障判定部46D1、46D2による判定結果に基づいて異常な系統からの出力を除外して、正常な系統からの出力を採用する点で相違するが、その他の構成は回転角度検出装置10Bと同一なので、同一な構成には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0065】
故障判定部46D1が、回転角センサ20B1、20B2を備える第1系統の故障の有無を、故障判定部46D2が、回転角センサ20B3、20B4を備える第2系統緒故障の有無を、各々判定する点は、第1実施形態と同じである。しかしながら、本実施形態では、第1系統において、故障判定部46D1は、LPF32B1が出力した波形とLPF32B2が出力した波形との位相差と、LPF32B1が出力した波形とLPF32B2が出力した波形とにおける所定の位相差と、の偏差が所定の閾値偏差以上の場合に、第1系統の回転角センサ20B1、20B2のいずれかが故障したと判定する。所定の閾値偏差は、一例として、所定の位相差の10~20%の値であるが、具体的には、実機を通じた実験によって決定する。
【0066】
同様に、第2系統において、故障判定部46D2は、LPF32B3が出力した波形とLPF32B4が出力した波形との位相差と、LPF32B3が出力した波形とLPF32B4が出力した波形とにおける所定の位相差と、の偏差が所定の閾値偏差以上の場合に、第2系統の回転角センサ20B3、20B4のいずれかが故障したと判定する。
【0067】
そして、正常系統判断部48Dは、故障判定部46D1、46D2で故障したと判定された系統の出力を除外して、正常な系統で算出された回転角度の情報をサーボアンプ60に出力する。
【0068】
本実施形態では、回転角センサを4個備える場合を説明したが、
図8に示したように、3個の回転角センサ20C1、20C2、20C3を備えていてもよい。かかる場合は、回転角センサ20C1と回転角センサ20C2、回転角センサ20C1と回転角センサ20C3、回転角センサ20C2と回転角センサ20C3、という組み合わせで各々の出力波形を比較する。例えば、回転角センサ20C1の出力波形と回転角センサ20C2の出力波形との位相差と、回転角センサ20C1の出力波形と回転角センサ20C2の出力波形とにおける所定の位相差との偏差が、所定の閾値偏差未満で、かつ、回転角センサ20C1と回転角センサ20C3、及び回転角センサ20C2と回転角センサ20C3の各々の組合せにおいて、出力波形の位相差と所定の位相差との偏差が所定の閾値偏差以上の場合は、回転角センサ20C3を備えた系統が故障したと判定する。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、AD変換部42B1~42B4、及びモータ角演算部44B1~44B4の処理に先行して異常な系統を判定できるので、回転角センサ20B1~20B4を備える回路の異常を迅速に検出できる。また、本実施形態では、1の系統、又は1の磁束検出部に異常が生じた場合を説明したが、複数系統が、例えば6系統等のように、4系統を超える十分な数の系統を備えるのであれば、複数の系統の各系統に含まれる磁束検出部の出力に基づいて各系統毎に異常を検出するか、または複数の系統のいずれかの系統に含まれる磁束検出部と前記いずれかの系統以外の他の系統に含まれる磁束検出部の出力とに基づいて複数の系統各々の異常を検出し、異常が検出された系統以外の系統に含まれる磁束検出部の出力に基づいて回転角を導出してもよい。
【0070】
本実施形態では、磁束検出部を有する回転角センサが各々出力した正弦波状に変化する電気信号の位相差に基づいて回転角センサの異常を判定したが、これに限定されない。例えば、磁束検出部を有する回転角センサが各々出力した電気信号が各々所定の振幅差で正弦波状に変化するのであれば、他の回転角センサが出力した電気信号との振幅差と所定の振幅差との偏差が、所定の振幅偏差以上となる電気信号を出力した回転角センサを異常と判定してもよい。
【0071】
また、本実施形態も、第1実施形態と同様に、複数の系統の各系統は、1つの磁束検出部を含むように構成するか、又は複数の磁束検出部を含むように構成することができる。
【0072】
複数の系統の各系統に1つの磁束検出部を含むように構成した場合には、回転角度導出部は、複数の系統の中のいずれかの系統に含まれる磁束検出部の出力と他の系統に含まれる磁束検出部の出力とを比較して各系統毎に異常を検出する。
【0073】
一方、複数の系統の各系統に複数の磁束検出部を含むように構成した場合には、上記と同様に、いずれかの系統に含まれる複数の磁束検出部の中のいずれかの磁束検出部の出力と、上記のいずれかの系統以外の他の系統に含まれる複数の磁束検出部の中のいずれかの磁束検出部の出力と、を比較して各系統毎に異常を検出するか、又は、複数の系統の各系統に含まれる複数の磁束検出部の中の2つの磁束検出部の出力を比較して各系統毎に異常を検出する。
【0074】
第1実施形態、及び第2実施形態では、マイコンがソフトウェア(プログラム)により、
図9に示したような処理を実行することを想定しているが、マイコン以外の各種のプロセッサが
図9に示したような処理を実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【符号の説明】
【0075】
10B、10Bp、10Bs、10C、10Cr、10Cs、10D 回転角度検出装置、20、20B1、20B2、20B3、20B4、20C1、20C2、20C3 回転角センサ、22B1、22B2、22C1、22C2 磁束検出部、40B、40C マイコン、44B1、44B2、44B3、44B4、44C1、44C2、44C3 モータ角演算部、46B1、46B2、46C、46D1、46D2 故障判定部、48B、48C、48D 正常系統判断部、70、72、74、76 出力波形、80B 10極磁石、80C 8極磁石、82A、82B 磁束、84 センサ配置領域、86 磁束、88 法線、90 接線