(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164403
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】圃場管理システム
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A01G25/00 501A
A01G25/00 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069873
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 一浩
(72)【発明者】
【氏名】藤本 好宏
(72)【発明者】
【氏名】森田 仁
(72)【発明者】
【氏名】陳 巨壹
(72)【発明者】
【氏名】武内 利樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅司
(72)【発明者】
【氏名】山森 直毅
(57)【要約】
【課題】圃場の所定現象の状態の検出精度を向上させ、圃場を適切に管理する。
【解決手段】圃場管理システム7は、圃場に吹く風の状態を検出する風検出部50dと、圃場の風以外の所定現象の状態として水位を検出する水位検出部3hと、風検出部50dの検出結果に基づいて、水位検出部3hの検出結果を補正する補正部3hと、を備える。さらに、圃場に設置された水管理装置1であって、水位検出部3hにより検出された後に補正部3hにより補正された圃場の水位に基づいて、圃場に対して水を供給する給水動作又は圃場から水を排出する排水動作を実行する水管理装置1を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に吹く風の状態を検出する第1検出部と、
前記圃場の風以外の所定現象の状態を検出する第2検出部と、
前記第1検出部の検出結果に基づいて、前記第2検出部の検出結果を補正する補正部と、を備えた圃場管理システム。
【請求項2】
前記圃場に設置された水管理装置であって、前記補正部により補正された後の前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記圃場に対して水を供給する給水動作又は前記圃場から水を排出する排水動作を実行する水管理装置を備えた請求項1に記載の圃場管理システム。
【請求項3】
前記第1検出部は、前記圃場の前記風の風向又は風速を検出し、
前記第2検出部は、前記圃場の水位を検出し、
前記補正部は、前記第1検出部により検出された前記風向又は風速に基づいて、前記第2検出部により検出された前記水位を補正する請求項1又は2に記載の圃場管理システム。
【請求項4】
前記第2検出部は、前記圃場に1か所以上設定された所定位置の水位を検出し、
前記補正部は、前記第2検出部により検出された前記所定位置の水位を、当該所定位置と前記第1検出部により検出された前記風向又は風速とに基づいて補正し、
前記補正部により補正された後の水位に基づいて前記圃場の水位を決定する決定部を備えた請求項3に記載の圃場管理システム。
【請求項5】
前記圃場の周辺を移動することで、前記第2検出部による所定手順での前記水位検出を可能にする移動体を備えた請求項1~4のいずれか1項に記載の圃場管理システム。
【請求項6】
前記移動体は、前記圃場の上空を飛行可能な飛行体から成り、
前記飛行体又は前記圃場に設けられて当該圃場を監視する監視部を備え、
前記第2検出部は、前記監視部の監視結果に基づいて、前記圃場に1か所以上設定された前記所定位置の水位を検出する請求項5に記載の圃場管理システム。
【請求項7】
前記移動体は、前記圃場の上空を飛行可能な飛行体から成り、
前記第2検出部は、前記飛行体又は前記圃場に設けられて当該圃場に1か所以上設定された前記所定位置の水位を検出する請求項5に記載の圃場管理システム。
【請求項8】
前記飛行体が前記圃場の上空を飛行することにより、前記第2検出部が前記所定手順で検出可能な第1水位と、前記飛行体が前記圃場の上空を飛行しなくても、前記第2検出部が別の所定手順で検出可能な第2水位のうち、少なくとも一方の水位、或いは前記第1水位と前記第2水位とに基づいて決定された水位を、前記補正部が補正する請求項6又は7に記載の圃場管理システム。
【請求項9】
前記第2検出部により検出された後に前記補正部により補正された前記水位に基づいて、前記第2検出部による前記水位の検出頻度又は検出位置を変更し、当該変更に応じて前記飛行体の飛行を制限可能な変更部を備えた請求項6~8のいずれか1項に記載の圃場管理システム。
【請求項10】
前記補正部は、前記飛行体の飛行状態に応じた所定の水位補正値に基づいて、前記第2検出部により検出された前記水位を補正する請求項6~9のいずれか1項に記載の圃場管理システム。
【請求項11】
前記第1検出部は、前記飛行体に設けられ、
前記補正部は、前記飛行体の飛行状態に応じた所定の風補正値に基づいて、前記第1検出部により検出された前記風の風向又は風速を補正する請求項6~10のいずれか1項に記載の圃場管理システム。
【請求項12】
前記圃場に設置された水管理装置及び前記飛行体と通信可能な支援装置を備え、
前記支援装置は、前記第2検出部により検出された後に前記補正部により補正された前記水位に基づいて、前記水管理装置に給水指令又は排水指令を送信し、
前記水管理装置は、前記支援装置から受信した前記給水指令又は前記排水指令に基づいて、前記圃場に対して給水又は排水を行う請求項6~11のいずれか1項に記載の圃場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の状態を管理する圃場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の水位及びその他現象の状態を検出し、当該検出結果に基づいて圃場の水門を開閉する圃場管理システムとして、特許文献1及び特許文献2に記載されたシステムが知られている。
特許文献1に記載された水位管理システムは、飛行体から圃場及び圃場に設置された水位計測用指標を撮影し、その画像を解析して圃場の水位を計測し、当該水位と基準水位とを比較して、当該比較結果に基づいて圃場の水門に開閉指示信号を送信する。また、圃場に設置したセンサにより、温湿度、地温、及び地中水分などの所定現象の状態を検出し、当該検出結果と、気候、圃場の地形情報、又は作物(水稲)に関する情報などに基づいて、上記アプリケーションで基準水位が決定される。
【0003】
特許文献2に記載された水位管理システムは、圃場にデータ収集装置、メモリ付き水位板、及び各種のセンサ類を設置する。そして、データ収集装置のカメラユニットで圃場と水位板を撮像し、その画像を本体ユニットで解析して、圃場の水位を算出する。本体ユニットは、算出した水位が所定値になるように、圃場の水門を駆動するアクチュエータに制御指令を出力して、圃場の水門を開閉する。また、本体ユニットは、算出した水位と、センサ類により検出された圃場の温湿度などの所定現象の検出結果を外部端末に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6555781号公報
【特許文献2】特開2009-236638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圃場の水位などの所定現象の状態は、圃場に吹く風の影響を受けて変動するため、飛行体により撮像された画像又は圃場に設置された地上センサの出力信号から、所定現象の状態を精度良く検出できないことがある。特に、圃場に吹く風により、圃場の水面に波が生じたり、風上側と風下側で水面に高低差が生じたりするため、圃場の水位が飛行体又は地上センサにより精度良く検出されないことが多々ある。また、圃場の所定現象の状態の検出結果の精度が低いと、圃場を適切に管理することができず、圃場に対する給排水などの農作業も適切に行えない。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、圃場の所定現象の状態の検出精度を向上させ、圃場を適切に管理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の一態様にかかる圃場管理システムは、圃場に吹く風の状態を検出する第1検出部と、前記圃場の風以外の所定現象の状態を検出する第2検出部と、前記第1検出部の検出結果に基づいて、前記第2検出部の検出結果を補正する補正部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記圃場管理システムは、前記圃場に設置された水管理装置であって、前記第2検出部により検出された後に前記補正部により補正された結果に基づいて、前記圃場に対して水を供給する給水動作又は前記圃場から水を排出する排水動作を実行する水管理装置を備える。
また、本発明の一態様では、前記第1検出部は、前記圃場の前記風の風向又は風速を検出し、前記第2検出部は、前記圃場の水位を検出し、前記補正部は、前記第1検出部により検出された前記風向又は風速に基づいて、前記第2検出部により検出された前記水位を補正する。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記第2検出部は、前記圃場に1か所以上設定された所定位置の水位を検出し、前記補正部は、前記第2検出部により検出された前記所定位置の水位を、当該所定位置と前記第1検出部により検出された前記風向又は風速とに基づいて補正し、前記圃場管理システムは、前記第1検出部により補正された後の水位に基づいて前記圃場の水位を決定する決定部を備える。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記圃場管理システムは、前記圃場の周辺を移動することで、前記第2検出部による所定手順での前記水位検出を可能にする移動体を備える。
また、本発明の一態様では、前記移動体は、前記圃場の上空を飛行可能な飛行体から成り、前記圃場管理システムは、前記飛行体又は前記圃場に設けられて当該圃場を監視する監視部を備え、前記第2検出部は、前記監視部の監視結果に基づいて、前記圃場に1か所以上設定された所定位置の水位を検出する。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記移動体は、前記圃場の上空を飛行可能な飛行体から成り、前記第2検出部は、前記飛行体又は前記圃場に設けられて当該圃場に1か所以上設定された所定位置の水位を検出する。
また、本発明の一態様では、前記飛行体が前記圃場の上空を飛行することにより、前記第2検出部が前記所定手順で検出可能な第1水位と、前記飛行体が前記圃場の上空を飛行しなくても、前記第2検出部が別の所定手順で検出可能な第2水位のうち、少なくとも一方の水位、或いは前記第1水位と前記第2水位とに基づいて決定された水位を、前記補正部が補正する。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記圃場管理システムは、前記第2検出部により検出された後に前記補正部により補正された前記水位に基づいて、前記第2検出部による前記水位の検出頻度又は検出位置を変更し、当該変更に応じて前記飛行体の飛行を制限可能な変更部を備える。
また、本発明の一態様では、前記補正部は、前記飛行体の飛行状態に応じた所定の水位補正値に基づいて、前記第2検出部により検出された前記水位を補正する。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記第1検出部は、前記飛行体に設けられ、前記補正部は、前記飛行体の飛行状態に応じた所定の風補正値に基づいて、前記第1検出部により検出された前記風の風向又は風速を補正する。
さらに、本発明の一態様では、前記圃場管理システムは、前記圃場に設置された水管理装置及び前記飛行体と通信可能な支援装置を備え、前記支援装置は、前記第2検出部により検出された後に前記補正部により補正された前記水位に基づいて、前記水管理装置に給水指令又は排水指令を送信し、前記水管理装置は、前記支援装置から受信した前記給水指令又は前記排水指令に基づいて、前記圃場に対して給水又は排水を行う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圃場の所定現象の状態の検出精度を向上させ、圃場を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図7】第1実施形態の圃場管理システムの電気的構成図である。
【
図8A】第1実施形態の支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8B】第1実施形態の支援装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】第1実施形態のマルチコプタの動作を示すフローチャートである。
【
図10A】第1実施形態の水管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図10B】第1実施形態の水管理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図11A】圃場の水位指標部材とマルチコプタを示す図である。
【
図11B】圃場の水位指標部材と水管理装置を示す図である。
【
図13A】マルチコプタの高度と第2水位補正値の関係を示す図である。
【
図13B】マルチコプタのロータ回転数と第3水位補正値の関係を示す図である。
【
図15】第2実施形態の圃場管理システムの電気的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<圃場管理システムの構成>
図1は、圃場管理システム7の概略構成図である。
圃場管理システム7は、水管理装置1、マルチコプタ2、支援装置3、端末装置4、及び中継局5を備えている。
図1では、便宜上、水管理装置1、マルチコプタ2、支援装置3、端末装置4、及び中継局5を1台ずつ示しているが、これらは圃場管理システム7に適宜数(1台以上)設けられている。
【0017】
図2は、複数の圃場H1~H5の平面図である。
図2に示す複数の圃場H1~H5は、所定の地域に所定の間隔で設けられている。圃場H1~H5の畔には、水管理装置1が設置されている。圃場H1~H5の外形(広さを含む。)などが考慮されて、水管理装置1は必要に応じて適宜数設置される。以下、便宜上、圃場H1~H5及び他の圃場を、単に圃場Hと言う。
【0018】
図1において、マルチコプタ2は、無人の自律型飛行体、いわゆるドローンである。マルチコプタ2は、圃場Hの上空を飛行可能な飛行体及び移動体の一例である。
支援装置3は、管理センタ(図示省略)に設置されたサーバ又はパーソナルコンピュータなどから成る。支援装置3は、圃場管理システム7の管理者によって操作可能である。端末装置4は、圃場Hで農作業を行う作業者により携帯されるスマートフォン若しくはタブレット機、又は農作業者の自宅などに設置されたパーソナルコンピュータなどから成る。端末装置4は作業者により使用される。
【0019】
中継局5は、水管理装置1と支援装置3との無線通信を中継する通信ユニットである。中継局5は、水管理装置1からの様々な情報を支援装置3に送信したり、支援装置3からの様々な情報を水管理装置1に送信したりする。つまり、水管理装置1と支援装置3は、中継局5を介して相互に無線で通信を行う。
マルチコプタ2と支援装置3は、インターネット、携帯電話通信網、又はその他のデータ通信網等の通信網6を介して相互に無線で通信を行う。また、マルチコプタ2と支援装置3とは、不揮発性メモリカード又はUSBメモリなどの記憶媒体30(後述の
図7など)を介して、情報を付与したり取得したりすることも可能である。端末装置4と支援装置3は、通信網6を介して相互に無線で通信を行う。
【0020】
他の例として、支援装置3とマルチコプタ2との通信、又は支援装置3と端末装置4との通信を、中継局5により中継してもよいし、或いは有線で行ってもよい。また、水管理装置1、マルチコプタ2、支援装置3、及び端末装置4のうちのいずれか2つが、中継局5や通信網6を介さずに、直接相互に無線で通信してもよい。
【0021】
<圃場の給排水構成>
図3は、圃場Hと水管理装置1の側面図である。
圃場Hは、例えば水稲から成る作物Uを作付けした水田である。
図3に示す圃場Hには、水Wが張られている。水管理装置1は、圃場Hの給水側(
図3で左側)と排水側(
図3で右側)とにそれぞれ設置されている。給水側に設置された水管理装置1(F)は、パイプライン100の分岐管100bの先端部に、開閉弁100cを介して接続されている。開閉弁100cは、分岐管100bの先端部に装着されている。分岐管100bの根元部は、パイプライン100の供給管100aに接続されている。即ち、分岐管100bは、供給管100aから分岐して、圃場H1に向かって延びている。供給管100aには、用水路(図示省略)を流れる用水が導入される。
圃場Hの排水側に設置された水管理装置1(D)は、排水桝122に設けられた落水部123の上端部に接続されている。排水桝122には、排水管121の先端部が接続されている。排水管121の根元部は、排水路120に接続されている。
【0022】
<給水側の水管理装置の構造>
図4は、給水側の水管理装置1(F)の内部を示す図である。
給水側の水管理装置1(F)の収容体11は、垂直方向に長く延びる立体構造を有している。収容体11は、筒状に形成されていて、水管理装置1(F)の筐体を構成している。また、収容体11は、開閉弁100cの上方に設置されている。
開閉弁100cの本体101は、筒状に形成されていて、内部に用水が通過可能になっている。この本体101の内部には、弁体102と弁軸103と軸受部104とが設けられている。弁軸103の下端部は、弁体102に連結されている。軸受部104は、本体101の上端部の内側に嵌合されている。軸受部104の上部は、本体101から上方に突出している。本体101の周面には、当該本体101を径方向に貫通する貫通孔105が形成されている。貫通孔105は、用水が圃場Hに向かって流出する供給口である。
【0023】
弁軸103は、軸受部104に対して回転自在に支持されている。弁軸103の外周には雌ねじが形成され、軸受部104の内周には雄ねじが形成されている。弁軸103が軸心周りに回転しながら垂直方向に移動することによって、弁体102が垂直方向に移動して、貫通孔105を開閉させ、用水が圃場Hに対して給水されたり、当該給水が停止されたりする。つまり、弁体102は、用水の給水を調整する機構(調整機構)である。なお、上記開閉弁100cは一例であり、上述した構成に限定されない。
【0024】
収容体11の内部には、アクチュエータ10等が備わっている。アクチュエータ10は、圃場Hに供給する給水(用水の給水)及び圃場Hから排出する排水のいずれかを行う弁体102の開閉動作を行う。アクチュエータ10は、電動モータ10aと、電動モータ10aの駆動により回転する回転軸10bとを有している。
電動モータ10aのモータ軸12には、当該モータ軸12の回転に伴って回転するギア14が取付けられている。ギア14には、ギア15が噛み合っている。ギア15の内面側には、キー溝(符号省略)が形成されている。当該キー溝には、回転軸10bに設けられた凸状の摺動部17が嵌め込まれている。ギア15は、軸受16に回転自在に支持され、且つ回転軸10bを垂直方向に移動自在に支持している。なお、ギア15と回転軸10bとはスプラインによって連結してもよく、上述した構成に限定されない。
【0025】
回転軸10bの下端部は、弁軸103の上端部と連結している。例えば、回転軸10bの下端部には、カップリング部18が形成されている。カップリング部18には、弁軸103の上端部に形成されたカップリング部19が連結されている。
上記アクチュエータ10によれば、電動モータ10aを回転駆動させることで、ギア14、15及び回転軸10bを回転させて、回転軸10bを垂直方向に移動させることができる。そして、回転軸10bの回転と垂直移動に伴って、弁軸103を回転させながら垂直方向に移動させて、弁体102を開閉動作(貫通孔105の開放及び閉塞)させることができる。
【0026】
収容体11は、複数の筒体11a、11b、11cを有している。筒体11a、11b、11cのそれぞれは垂直方向に並べられていて互いに連結されている。具体的には、筒体11aの下端は、開閉弁100cの本体101に取付けられた取付台115に、ボルト等の締結具によって取付けられている。筒体11aは、取付台115に取付けられた状態で上方に延びるように起立している。
【0027】
筒体11aの上には、筒体11bが連結されている。筒体11aの上端と筒体11bの下端との間には、筒状の連結部材25が設けられている。連結部材25は、周壁部25aと、周壁部25aから径外方向に突出したフランジ部25bと、周壁部25aの上端側に設けられた支持壁25cとを有している。筒体11aの上端をフランジ部25bに近接させ、筒体11bの下端をフランジ部25bに近接させる。また、筒体11aの上端及び周壁部25aをボルト等の締結具で締結し、筒体11bの下端及び周壁部25aをボルト等の締結具で締結する。これにより、筒体11aの上端と筒体11bとが一体化されている。
【0028】
支持壁25cには、回転軸10bが貫通する貫通孔(符号省略)が形成されている。軸受16等が取り付けられた構造体27を支持壁25cに取付けることにより、電動モータ10a、回転軸10b、及びギア15が支持壁25cにより支持されている。即ち、筒体11a、11bによって、アクチュエータ10を収容する第1筒体が構成されている。
筒体11bは、下壁部31と、上壁部32と、これら壁部31、32の間に設けられた中間壁33を有している。中間壁33は、径外方向に突出した突出壁34を有している。突出壁34は、円形に構築されている。突出壁34の内側には、操作盤43が設けられている。操作盤43は、中間壁33の外周面に取り付けられている。上壁部32の内径を中間壁33の内径より大きくすることで、上壁部32と中間壁33の連結部分には、段部35が形成されている。段部35は、筒体11bの径内方向に突出して、筒体11cの下端部を支持している。即ち、筒体11bの上壁部32と段部35とは、筒体11cの下部を上方から差し込む差し込み部となっている。
【0029】
筒体11cは、筒体11bの内部に上方から嵌め込まれて、筒体11bと段部35によって支持されている。筒体11cの下端部には、載置板37が取り付けられている。載置板37は、段部35によって下方から支持されている。筒体11cの上端は、天板39によって閉鎖されている。筒体11cの上部には、ブラケット38を介してソーラパネル40が取り付けられている。
【0030】
筒体11cの内部には、検出装置50、制御装置60、通信装置70、監視カメラ80、及び電源装置41が備わっている。監視カメラ80で圃場Hを撮像することができるように、筒体11cの周面には窓部153が設けられている。窓部153は、筒体11cの周面に形成された貫通孔153aと、当該貫通孔153aを覆う透明カバー153bとから構成されている。透明カバー153bは光を透過可能である。
【0031】
<排水(落水)側の水管理装置の構造>
図5は、排水側の水管理装置1(D)の内部を示す図である。
排水側の水管理装置1(D)の筐体も、収容体11により構成されている。排水側の水管理装置1(D)の収容体11は、落水部123の上部に設置されている。
落水部123は、仕切弁125と移動機構126とを備えている。移動機構126は、仕切部125を垂直方向に移動させる。仕切弁125は、垂直方向に移動することで、圃場Hの水を排水管121に向かって落水させない状態(閉鎖状態)と、落水させる状態(開放状態)とに位置変更可能である。
【0032】
移動機構126は、台座127、案内棒128、移動筒130、第1軸129、及び第2軸132を有している。台座127は、落水部123の上端に取り付けられている。台座127の下面には、複数の案内棒128の上端が固定されている。各案内棒128は下方に延びて、移動筒130のフランジ部(符号省略)を貫通している。移動筒130は、案内棒128に沿って上下方向に移動可能になっている。第1軸129は、台座127に形成された貫通孔に挿入されている。
【0033】
排水側の水管理装置1(D)の収容体11の筒体11a、11bの内部にも、アクチュエータ10等が備わっている。第1軸129の上端は、カップリング等によりアクチュエータ10の回転軸10bに連結されている。排水側の水管理装置1(D)の回転軸10bを回転及び垂直移動させる構成と構造は、
図4に示した排水側の水管理装置1(D)の回転軸10bを回転及び垂直移動させる構成と構造と同様であるため、説明を省略する(
図5では符号も省略)。
【0034】
第2軸132は、第1軸129の下端に連結されている。また、第2軸132は移動筒130を貫通している。第2軸132の外周には雄ねじが形成され、移動筒130の内周には雌ねじが形成されている。アクチュエータ10の電動モータ10aを回転駆動させて、回転軸10bを回転及び垂直移動させることによって、第1軸129及び第2軸132を回転させながら垂直方向に移動させて、移動筒130を垂直方向に移動させることができる。
【0035】
仕切弁125は、移動筒130に取付けられたブラケット131等に装着されている。仕切弁125は筒状に形成されている。移動筒130の垂直方向への移動に伴って、仕切部125の高さが変わる構造になっている。仕切弁125の上端が圃場Hの水面より高いときは、仕切弁125は落水をさせない閉鎖状態となる。仕切弁125の上端が圃場Hの水面より低いときは、仕切弁125は落水をさせる開放状態となる。アクチュエータ10を作動させて、移動筒130を垂直移動させることによって、仕切弁125を開閉動作(落水と落水停止)させることができる。つまり、仕切弁125は、排水を調整する機構(調整機構)である。
【0036】
排水側の水管理装置1(D)の筒体11cの内部にも、検出装置50、制御装置60、通信装置70、監視カメラ80、及び電源装置41が備わっている(
図5)。また、筒体11cの周面には窓部153が設けられている。
上述したように、水管理装置1は、圃場Hに供給する給水及び圃場Hから排出する排水のいずれかを開閉動作によって行う弁体(弁体102又は仕切弁125)を含んだ開閉機構を有している。
【0037】
<飛行体の構造>
図6は、マルチコプタ2を側方から見た外観図である。
マルチコプタ2は、機体20a、アーム20b、回転翼20c、スキッド20f、撮像装置28、及び測位装置22を有している。アーム20bは、機体20aの周面に周方向に所定の間隔で複数設けられている。各アーム20bは、機体20aの周面から側方に突出している。
回転翼20cは各アーム20bに設けられ、ロータ(電動モータ)20dとブレード(プロペラ)20eとを含んでいる(符号省略)。ロータ20dは、機体20aの内部に設けられた蓄電池の電力によって回転駆動する。ブレード20eは、ロータ20dの駆動力によって回転する。各回転翼20cのブレード20eが回転することで、揚力が発生して、マルチコプタ2が上空に浮上する。また、各回転翼20cのブレード20eの回転数を異ならせることで、マルチコプタ2のホバリングと様々な方向への移動(上昇、下降、前進、後進、及び左右への旋回など)が可能になる。
【0038】
スキッド(ランディングギア)20fは、機体20aの下面に所定の間隔で複数設けられている。各スキッド20fは、機体20aの下面から斜め下方に向かって突出している。スキッド20fは地面に接して、機体20aを支持する。
撮像装置28は、スキッド20f同士の間に位置するように、機体20aの下面に取り付けられている。撮像装置28は、例えばCCDカメラ、CMOSカメラ、又は赤外線カメラなどから構成されている。マルチコプタ2を圃場Hの上空で飛行させているときに、撮像装置28によって圃場Hを空撮することができる。
【0039】
測位装置22は、機体20aの上面に取り付けられている。測位装置22は、衛星測位システムによって自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する。即ち、測位装置22は、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信した信号に基づいてマルチコプタ2の位置(緯度、経度)を検出する。測位装置22は、マルチコプタ2の位置を検出する位置検出部である。他の例として、測位装置22は、測位衛星からの信号を受信可能な基準局より受信した補正信号等に基づいて補正した位置を、マルチコプタ2の位置として検出してもよい。
【0040】
<第1実施形態の電気的構成>
図7は、第1実施形態の圃場管理システム7の電気的構成図である。
<水管理装置の電気的構成>
図7に示すように、水管理装置1は、制御装置60、アクチュエータ10、通信装置70、検出装置50、監視カメラ80、電源装置41、及びソーラパネル40を備えている。制御装置60は、CPUとメモリなどから構成されている。制御装置60には、揮発性のメモリと不揮発性のメモリから成る記憶部60aが設けられている。制御装置60は水管理装置1の各部の動作を制御する。
【0041】
アクチュエータ10は、前述した電動モータ10aと、当該電動モータ10aを駆動するためのモータ駆動回路(図示省略)を有している。制御装置60は、モータ駆動回路により電動モータ10aの駆動を制御して、前述した弁体102、125を開閉動作させて、圃場Hに対して給水又は排水を行う。
通信装置70は、中継局5と通信網6とを介して支援装置3と通信するための通信モジュールであって、支援装置3に対して様々な情報を無線で送受信可能である。また、通信装置70は、通信網6を介してマルチコプタ2又は端末装置4に対しても通信可能である。さらに、通信装置70は、例えば通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標)Low Energy)、LPWA(Low Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)などの方式に従って無線通信を行うことも可能である。
【0042】
検出装置50は、圃場Hの所定現象の状態を検出する複数の検出部50a~50dを有している。そのうち、気温検出部50aは気温センサから構成されていて、圃場Hの気温を検出する。湿度検出部50bは湿度センサから構成されていて、圃場Hの湿度を検出する。日射検出部50cは日射センサから構成されていて、圃場Hの日射量を検出する。風検出部50dは風向風速計から構成されていて、圃場Hに吹く風の状態として風向と風速を検出する。
【0043】
検出部センサ50a~50dの検出子は、前述した水管理装置1の収容部11の外部(圃場H)に設けられている。また、検出部センサ50a~50dの検出子の出力信号に基づいて、検出値(気温、湿度、及び風向・風速)を演算する演算回路は、水管理装置1の収容部11の内部に設けられていてもよい。制御装置60は、各検出部センサ50a~50dで検出された画像のデータを記憶部60aに記憶させる。
【0044】
なお、水管理装置1は、気温検出部50a、湿度検出部50b、日射検出部50c、及び風検出部50dの全てを備えている必要はなく、適宜、組み合わせが可能である。また、例えば圃場Hの水位、水温、土壌温度、土壌水分、風量等のその他の所定現象を検出するセンサから成る検出部を、検出装置50に設けてもよい。
監視カメラ80は、CCDカメラ、CMOSカメラ、又は赤外線カメラなどから構成されている。監視カメラ80は、撮像部80aと画像処理部80bとを有している。撮像部80aは、圃場Hの水面、作物U(
図3)、及びこれらの周辺を撮像する。画像処理部80bは、撮像部80aにより撮像された画像のデータを処理する。制御装置60は、監視カメラ80で撮像された画像のデータを記憶部60aに記憶させる。監視カメラ80は、地上で圃場Hを撮像する地上の撮像装置であり、且つ当該撮像動作を行うことによって圃場Hを監視する地上の監視部である。
【0045】
図2及び
図3に示したように、圃場Hに複数の水管理装置1を設置した場合、各水管理装置1に備わる監視カメラ80は、圃場Hの全体を撮像してもよいし、又は圃場Hの所定範囲(一部)を撮像してもよい。また、各水管理装置1に備わる監視カメラ80の撮像範囲を完全に異ならせてもよいし、又は一部重複させてもよい。さらに、各水管理装置1に監視カメラ80を複数設けてもよい。
【0046】
また、圃場Hのより広い範囲を監視カメラ80で撮像(監視)するため、監視カメラ80の向きを変える機構と当該機構を駆動する電動モータを水管理装置1に備えてもよい。また、監視カメラ80の撮像範囲を照明するライト等の光源を水管理装置1に備えてもよい。
電源装置41は、水管理装置1の電源である蓄電池41aを有している。蓄電池41aは、例えばリチウムイオンバッテリから構成されている。電源装置41は、蓄電池41aの電力を水管理装置1の各部に供給する。また、電源装置41は、ソーラパネル40により発電した電力を蓄電池41aに蓄電する。さらに、電源装置41は、ソーラパネル40による発電量を検出する。なお、蓄電池41aは、放電と充電が可能な二次電池であるが、これに代えて、1次電池を水管理装置1に電源として設けてもよい。
【0047】
制御装置60は、支援装置3から送信された水管理装置1の各部を制御するための制御指令を、通信装置70により受信する。また、制御装置60は、当該制御指令、検出装置50から出力される各検出部50a~50dの検出値(気温、湿度、日射量、風向・風速)、又は監視カメラ80が撮像した画像データに基づいて、アクチュエータ10の電動モータ10aを駆動して、前述の弁体102、125の開閉動作を制御し、圃場Hに対して給水や排水を行う。
【0048】
また、制御装置60は、検出部50a~50dの検出値、監視カメラ80の画像データ、及び電源装置41が検出したソーラパネル40による発電量などのような、圃場Hの監視結果を、通信装置70により支援装置3へ送信する。さらに、制御装置60は、水管理装置1の各部の動作状態を示す動作情報を、通信装置70により支援装置3へ送信する。他にも、水管理装置1の各部の故障状況を示す故障情報を、制御装置60が支援装3に送信してもよい。
【0049】
<飛行体の電気的構成>
マルチコプタ2は、制御装置21、回転翼20c、測位装置22、通信装置23、インタフェイス26、電源装置24、及び撮像装置28を備えている。制御装置21は、CPUとメモリなどから構成されている。制御装置21はマルチコプタ2の各部の動作を制御する。制御装置60には、揮発性のメモリと不揮発性のメモリから成る記憶部21aが設けられている。
【0050】
回転翼20cは、ロータ(電動モータ)20dと、当該ロータ20dを駆動するための駆動回路(図示省略)を有している。制御装置21は、当該駆動回路によりロータ20dの回転駆動を制御して、回転翼20cのブレード20eを回転させたり、ブレード20eの回転を停止させたり、ロータ20d及びブレード20eの回転数を変更したりする。これにより、マルチコプタ2が飛行したり、飛行停止したり、飛行しながら移動したりする。
【0051】
通信装置23は、通信網6を介して支援装置3と通信するための通信モジュールであって、支援装置3に対して様々な情報を無線で送受信可能である。また、通信装置23は、通信網6を介して水管理装置1又は端末装置4とも通信可能である。さらに、通信装置23は、IEEE802.11シリーズのWi-Fi(登録商標)、BLE、LPWA、LPWANなどの無線通信方式に従って無線通信を行うことも可能である。
【0052】
インタフェイス26は、機体20aに設けられたスロット(図示省略)に挿入された携帯型の記憶媒体(不揮発性メモリカード又はUSBメモリなど)30に対してデータを読み書きするための通信回路又は通信用ICから成る。記憶媒体30は、機体2のスロットに対して抜き差し可能である。マルチコプタ2は通信装置23だけでなく、インタフェイス26と記憶媒体30によっても、支援装置3に対して情報及びデータをやり取り可能である。
【0053】
電源装置24は、マルチコプタ2の電源である蓄電池24aを有している。蓄電池24aは、例えばリチウムイオンバッテリから構成されている。電源装置24は、蓄電池24aの電力をマルチコプタ2の各部に供給する。蓄電池24aは、放電と充電が可能な二次電池であるが、これに代えて、1次電池をマルチコプタ2に電源として設けてもよい。
撮像装置28は、CCDカメラ、CMOSカメラ、又は赤外線カメラなどから構成されている。撮像装置28は、撮像部28aと画像処理部28bとを有している。撮像部28aは、圃場H及び圃場Hの周辺を撮像(監視)する。画像処理部28bは、撮像部28aにより撮像された画像(静止画)のデータを処理する。撮像装置28は、マルチコプタ2の飛行中に上空から圃場Hを監視する上空の監視部である。なお、撮像部28aの向きを変える機構と当該機構を駆動する電動モータを、マルチコプタ2に備えてもよい。また、撮像部28aの撮像範囲を照明する光源を、マルチコプタ2に備えてもよい。
【0054】
マルチコプタ2の飛行中に、撮像装置28は、上空から圃場Hなどの断片画像(空撮画像)を数十枚~数百枚撮像する。制御装置21は、撮像装置28により撮像された複数枚の空撮画像(画像処理部23bにより画像処理された後の画像データ)を、記憶部21aに記憶させる。また、制御装置21は、記憶部21aに記憶された空撮画像を、通信装置23により支援装置3に送信させる。又は、制御装置21は、記憶部21aに記憶された空撮画像を、インタフェイス26により記憶媒体30に転送して、当該記憶媒体30に記憶(保存)させる。記憶媒体30に記憶された空撮画像は、支援装置3に取り込まれる。
【0055】
測位装置22は、受信機22aと慣性計測装置22bとを有している。受信機22aは、測位衛星から送信された信号を受信する。測位装置22は、受信機22aにより受信した信号に基づいて、マルチコプタ2の位置(測位情報)を検出する。制御装置21は、撮像装置28により空撮された画像データに、当該画像データの撮像時に測位装置22により検出されたマルチコプタ2の位置を関連付けて、記憶部21gに記憶させる。
慣性計測装置22bは、ジャイロセンサ又は加速度センサなどから成り、マルチコプタ2の姿勢又は加速度などを検出する。測位装置22は、受信機22aにより受信した信号に基づいて検出したマルチコプタ2の位置を、慣性計測装置22bの検出結果に基づいて補正してもよい。
【0056】
制御装置21は、マルチコプタ2が飛行するための飛行ルートと飛行スケジュールを含んだ飛行計画を、通信装置23又は記憶媒体23bにより支援装置3から取得して、記憶部21aに記憶させる。また、制御装置21は、記憶部21aに記憶された飛行計画、測位装置22により検出されたマルチコプタ2の位置、及び慣性計測装置22bの検出結果などに基づいて、回転翼20cのロータ20dの回転駆動を制御し、マルチコプタ2を飛行させて、撮像装置28により圃場Hを空撮する。また、制御装置21は、撮像装置28により空撮された後に記憶部21aに記憶された空撮画像を、通信装置23により支援装置3に送信する。さらに、制御装置21は、マルチコプタ2の飛行結果(飛行の実行の有無と、飛行した場合は日時、飛行ルート、及び飛行状態なども含む。)を記憶部21aに記憶させ、当該飛行結果を通信装置23により支援装置3に送信する。
【0057】
他の例として、制御装置21が、記憶部21aに記憶されたマルチコプタ2の空撮画像又は飛行結果を、インタフェイス26により記憶媒体30に転送して、当該記憶媒体30に記憶させてもよい。そして、記憶媒体30が支援装置3に接続された後、支援装置3が、記憶媒体30に記憶されたマルチコプタ2の空撮画像又は飛行結果を読み出してもよい。
【0058】
<支援装置の電気的構成>
支援装置3は、制御部3a、記憶部3b、通信部3c、及びインタフェイス3dを備えている。制御部3aは、CPUとメモリなどから成り、支援装置3の各部の動作を制御する。制御部3aには、取得部3e、計画作成部3f、水位検出部3g、補正部3h、決定部3i、及び推定部3jが設けられている。これら各部3e~3jは、本実施形態では予め制御部3aに記憶されたソフトウェアプログラムから成るが、ハードウェアで構成されていてもよい。
【0059】
記憶部3bは、メモリとハードディスなどから成る。記憶部3bには、予め登録された圃場H、水管理装置1、マルチコプタ2、及び端末装置4に関する情報が記憶されている。そのうち、圃場Hに関する情報には、圃場管理システム7で管理する圃場Hの識別情報、地図情報、及び外形などが含まれる。水管理装置1に関する情報には、水管理装置1の識別情報、仕様、及び位置情報などが含まれている。マルチコプタ2に関する情報には、マルチコプタ2の識別情報及び仕様などが含まれている。端末装置4に関する情報には、端末装置4の識別情報及びアドレスなどが含まれている。また、圃場Hの識別情報と、当該圃場Hに設置された水管理装置1の識別情報とは、関連付けられて記憶部3bに記憶されている。さらに、記憶部3bの所定の記憶領域には、所定のデータを格納するデータベース(図示省略)が設けられている。
【0060】
通信部3cは、通信網6を介した通信と、Wi-Fi(登録商標)、BLE、LPWA、LPWANなどの通信規格による無線通信とを行うことが可能な通信回路から成る。制御部3aは、通信部3cにより水管理装置1、マルチコプタ2、及び端末装置4と通信する。インタフェイス3dは、マルチコプタ2のインタフェイス26と同様の機能を有している。
【0061】
制御部3aの取得部3eは、圃場Hの状態を示す圃場情報を取得する。詳しくは、例えば取得部3eは、圃場Hの外形、大気、給排水、又は作物Uなどの状態を示す圃場情報を、通信部3cにより通信網6を介して外部装置(他のサーバなど)又はクラウド上から取得する。また、取得部3eは、水管理装置1の動作状態(少なくとも給排水動作の状態とソータパネル40による発電量を含む。)と監視結果(監視カメラ80の画像データ)を、通信部3cにより水管理装置1から取得する。また、取得部3eは、検出装置50の検出結果を、通信部3cにより水管理装置1から取得する。さらに、取得部3eは、マルチコプタ2の飛行結果と監視結果(撮像装置28の画像データ)を、通信部3c又は記憶媒体30とインタフェイス3dによりマルチコプタ2から取得する。
【0062】
取得部3eが取得した上記情報は、記憶部3bに記憶される。取得部3eは、記憶部3bから適宜必要な情報を抽出(取得)することもある。即ち、取得部3eが取得する圃場情報には、記憶部3bに記憶された水管理装置1の動作状態と監視結果、又はマルチコプタ2の飛行結果と監視結果が含まれることがある。
計画作成部3fは、取得部3eにより取得された情報に基づいて、圃場Hを管理するための圃場管理計画を作成したり、当該圃場管理計画を変更したりする。計画作成部3fが作成又は変更した圃場管理計画は、記憶部3bに記憶される。なお、圃場管理計画には、圃場Hで作物Uを栽培するための栽培計画、圃場Hで行う農作業の作業計画、水管理装置1が実行する水管理計画、マルチコプタ2が実行する飛行計画、及び圃場Hの水位を検出する水位検出計画などが含まれる。
【0063】
水管理計画には、水管理装置1が圃場Hに対して行う給排水動作の実行計画だけでなく、検出装置50と監視カメラ80による圃場Hの監視計画も含まれる。飛行計画には、マルチコプタ2の飛行ルートと飛行スケジュールだけでなく、撮像装置28による空撮計画(監視計画)も含まれる。水位検出計画には、圃場Hの水位の検出頻度、検出位置、又は検出手順などが含まれる。計画作成部3fは、水位検出計画を変更する変更部である。
【0064】
具体的には、例えば計画作成部3fは、記憶部3bのデータベースに記憶された水管理装置1とマルチコプタ2の監視結果(圃場Hの画像データと圃場Hの所定現象の検出値)を解析して、圃場Hの状況、作物Uの生育状況、又は異物の有無などの所定の管理事項を部分的又は総合的に判断し、当該判断結果をデータベースに記憶させる。そして、計画作成部3fは、当該判断結果、データベースに記憶された水管理装置1の動作情報、マルチコプタ2の飛行結果、水管理装置1とマルチコプタ2の監視結果、及びその他の圃場情報などに基づいて、圃場管理計画を作成又は変更し、当該圃場管理計画を記憶部3bのデータベースに記憶させる。取得部3eが取得する圃場情報には、記憶部3bのデータベースに記憶された圃場管理計画が含まれることがある。
【0065】
制御部3aは、記憶部3bに記憶された圃場管理計画に基づいて、水管理装置1の各部の動作を制御するための制御指令を、通信部3cにより水管理装置1に送信する。水管理装置1は、支援装置3から送信された制御指令を通信装置70により受信し、当該制御指令に基づいて、アクチュエータ10を駆動して圃場Hに対して給排水を行ったり、検出装置50の各検出部50a~50dにより所定現象を検出したり、監視カメラ80により圃場Hを監視したりする。
【0066】
また、制御部3aは、記憶部3bに記憶された圃場管理計画に含まれる水管理計画を、通信部3cにより水管理装置1に送信する。水管理装置1は、支援装置3から送信された水管理計画を通信装置70により受信し、当該水管理計画に基づいて、アクチュエータ10を駆動して圃場Hに対して給排水を行ったり、検出装置50により所定現象を検出したり、監視カメラ80により圃場Hを監視したりする。
【0067】
また、制御部3aは、記憶部3bに記憶された圃場管理計画に含まれる飛行計画を、通信部3c又はインタフェイス3dと記憶媒体30によりマルチコプタ2に付与する。マルチコプタ2は、通信装置23又はインタフェイス26と記憶媒体30により支援装置3から飛行計画を取得し、当該飛行計画に基づいて、回転翼20cを駆動して圃場Hの上空を飛行したり、撮像装置28により圃場Hを空撮したりする。
【0068】
水位検出部3gは、マルチコプタ2の撮像装置28で空撮された画像データ又は水管理装置1の監視カメラ80で撮像された画像データに基づいて、圃場Hの水位を検出する。補正部3hは、水位検出部3gの検出結果、即ち水位検出部3gにより検出された水位を補正する。決定部3iは、補正部3hにより補正された後の水位に基づいて、圃場Hの水位を決定する。制御部3aは、水位検出部3gにより検出された水位、補正部3hにより補正された水位、決定部3iにより決定された水位、及び当該水位の検出位置を示す位置情報を関連付けて、水位情報として記憶部3bに記憶させる。推定部3jは、水位検出部3gにより検出された圃場Hの1か所以上の所定位置の水位と、記憶部3bに記憶された水位情報とに基づいて、他の1か所以上の所定位置の水位を推定する。
【0069】
<端末装置の電気的構成>
端末装置4は、制御部4a、記憶部4b、通信部4c、表示部4d、及び操作部4eを備えている。制御部4aは、端末装置4の各部の動作を制御する。記憶部4bはメモリなどから構成されている。記憶部4bには、水管理装置1とマルチコプタ2の状態と監視結果、並びに圃場管理計画を確認するための圃場管理アプリケーションプログラム(略して「圃場管理アプリ」)が記憶されている。
【0070】
通信部4cは、支援装置3の通信部3cと同様の機能を有している。 制御部4aは、通信部4cにより支援装置3と通信を行う。また、制御部4aは、通信部4cによりマルチコプタ2及び水管理装置1とも通信可能である。
表示部4dは、液晶又は有機ELなどのディスプレイとスピーカから成る。操作部4eは、マウス、キーボード、タッチパッド、及びマイクから成る。なお、本実施形態では、表示部4cと操作部4dとを別々に設けているが、これらに代えて、表示部兼操作部となるタッチパネルを備えた端末装置4もある。
【0071】
記憶部4bに記憶された圃場管理アプリに基づく画像又は音声などの表示は、表示部4dにより出力される。また、圃場管理アプリに対する所定の入力は、操作部4eにより行える。
端末装置4は、支援装置3の記憶部3bのデータベースに記憶された水管理装置1の動作情報、マルチコプタ2の飛行結果、水管理装置1とマルチコプタ2の監視結果、及び圃場管理計画を、支援装置3から取得し、これらを表示部4dに表示させる。具体的には、例えば端末装置4において、上述した圃場管理アプリを起動して、操作部4eで所定の操作を行うことにより、制御部4aが、水管理装置1の動作情報と監視結果、マルチコプタ2の飛行結果と監視結果、又は圃場管理計画を要求する要求信号を、通信部4cにより支援装置3に送信する。支援装置3では、端末装置4から送信された要求信号を通信部3cにより受信すると、制御部3aが当該要求信号に基づいて、水管理装置1の動作情報と監視結果、マルチコプタ2の飛行結果と監視結果、又は圃場管理計画をデータベースから読み出して、当該情報を通信部3cにより端末装置4に送信する。
【0072】
端末装置4では、支援装置3から送信された水管理装置1の動作情報と監視結果、マルチコプタ2の飛行結果と監視結果、又は圃場管理計画を通信部4cにより受信すると、制御部4aが、当該情報を表示部4dにより表示させる。これにより、端末装置4を使用している作業者は、水管理装置1の動作情報と監視結果、マルチコプタ2の飛行結果と監視結果、又は圃場管理計画を認識することが可能となる。
【0073】
<第1実施形態の圃場管理システムの動作>
図8A~
図10Bは、第1実施形態の圃場管理システム7の各部の動作を示す図である。詳しくは、
図8A及び
図8Bは、支援装置3の動作を示すフローチャートである。
図9は、マルチコプタ2の動作を示すフローチャートである。
図10A及び
図10Bは、水管理装置1の動作を示すフローチャートである。
【0074】
支援装置3では、まず制御部3aが記憶部3bの記憶内容を参照し、圃場管理計画が記憶部3bに記憶されているか否かを確認する。圃場管理計画が記憶部3bに記憶されていない場合(
図8AのS1:NO)、取得部3eが、記憶部3b及び外部装置から圃場情報を取得して、記憶部3bに記憶させる(S2)。このとき、取得部3eが取得する圃場情報には、圃場Hの外形、大気、給排水、若しくは作物Uなどの状態を示す情報、水管理装置1の動作情報、マルチコプタ2の飛行結果、及び水管理装置1とマルチコプタ2の監視結果が含まれている。
【0075】
次に、計画作成部3fが、取得部3eにより取得された圃場情報に基づいて圃場管理計画を作成し、当該圃場管理計画を記憶部3bに記憶させる(S3)。次に、制御部3aが、記憶部3bに記憶された圃場管理計画のうち、水管理計画と飛行計画を読み出して、水管理計画を通信部3cにより水管理装置1に送信し(S4)、飛行計画を通信部3cによりマルチコプタ2に送信する(S5)。このとき、制御部3aは、自身が属する支援装置3の識別情報と送信先の水管理装置1の識別情報を付帯させた状態で、水管理計画を送信する。また、制御部3aは、自身が属する支援装置3の識別情報と送信先のマルチコプタ2の識別情報を付帯させた状態で、飛行計画を送信する。なお、前述したように、インタフェイス3d、26と記憶媒体30を介して、支援装置3からマルチコプタ2に飛行計画を付与してもよい。
【0076】
水管理装置1では、当該水管理装置1の識別情報が付帯された水管理計画が通信装置70により受信されると(
図10AのS61:YES)、制御装置60が、記憶部60aの記憶内容を参照し、水管理計画が記憶部60aに既に記憶されているか否かを確認する。水管理計画が記憶部60aに記憶されていない場合(S62:NO)、制御装置60は、受信された水管理計画を記憶部60aに記憶させる(S63)。水管理計画が記憶部60aに既に記憶されている場合(S62:YES)、制御装置60は、記憶部60aに既に記憶されている水管理計画に対して、受信された水管理計画を上書きすることにより、水管理計画を更新する(S64)。
【0077】
次に、制御装置60は、記憶部60aに記憶されている水管理計画を実行する。具体的には、制御装置60は、記憶部60aの所定の記憶領域に設けられたカレンダ(日時管理領域)を参照し、水管理計画で示された圃場Hの所定現象(気温、湿度、日射量、風)の検出タイミングになると(S66:YES)、当該所定現象を検出装置50の対応する検出部50a~50dにより検出して、当該検出結果を記憶部60aに記憶させる(S67)。また、制御装置60は、水管理計画で示された撮像タイミングになると(S68:YES)、監視カメラ80により圃場Hを撮像して、当該撮像した画像データを記憶部60aに記憶させる(S69)。
【0078】
また、給水側の水管理装置1では、水管理計画で示された給水調整タイミングになると(S70:YES)、制御装置60が、アクチュエータ10により弁体102を動作させて、圃場Hに対する給水を調整し、当該動作を実行したことを示す動作情報を記憶部60aに記憶させる(S71)。詳しくは、例えば制御装置60は、アクチュエータ10により弁体102を開方向又は閉方向に動作させて、弁体102の開度を水管理計画で示された開度に一致させる。これにより、圃場Hへの給水量が調整される。なおこのとき、給水量が0(ゼロ)、即ち圃場Hへの給水が停止されることもある。
【0079】
また、排水側の水管理装置1では、水管理計画で示された排水調整タイミングになると(
図10BのS72:YES)、制御装置60が、アクチュエータ10により仕切弁125を動作させて、圃場Hに対する排水を調整し、当該動作を実行したことを示す動作情報を記憶部60aに記憶させる(S73)。詳しくは、例えば制御装置60は、アクチュエータ10により仕切弁125を開方向又は閉方向に動作させて、仕切弁125の開度を水管理計画で示された開度に一致させる。これにより、圃場Hからの排水量が調整される。なおこのとき、排水量が0(ゼロ)、即ち圃場Hからの排水が停止されることもある。
【0080】
また、制御装置60は、水管理計画で示されたその他の動作タイミングになると(S74:YES)、その他の動作を実行し、当該動作情報を記憶部60aに記憶させる(S75)。なお、その他の動作には、例えば電源装置41がソーラパネル40による発電量を検出する動作、又は制御装置60が所定手順に従って水管理装置1の各部の故障診断をする動作などが含まれる。
【0081】
さらに、制御装置60は、水管理計画で示された情報送信タイミングになると(S76:YES)、記憶部60aに記憶された水管理装置1の各部の動作情報、検出装置50の検出結果、及び監視カメラ80の監視結果(画像データ)を、通信装置70により支援装置3に送信する(S77)。このとき、制御装置60は、自身が属する水管理装置1の識別情報と送信先の支援装置3の識別情報を付帯させた状態で、上記動作情報、検出結果、及び監視結果を送信する。
【0082】
また、制御装置60は、自身が属する水管理装置1の識別情報が付帯された水管理計画が受信されなくても(
図10AのS61:NO)、記憶部21aに水管理計画が既に記憶されていれば(S65:YES)、上述したように当該水管理計画を実行する(S66~S77)。
マルチコプタ2では、当該マルチコプタ2の識別情報が付帯された飛行計画が通信装置23により受信されると(
図9のS41:YES)、制御装置21が、記憶部21aの記憶内容を参照し、飛行計画が記憶部21aに既に記憶されているか否かを確認する。飛行計画が記憶部21aに既に記憶されていない場合(S42:NO)、制御装置21は、受信された飛行計画を記憶部21aに記憶させる(S43)。飛行計画が記憶部21aに既に記憶されている場合(S42:YES)、制御装置21は、記憶部21aに既に記憶されている飛行計画に対して、受信された飛行計画を上書きすることにより、飛行計画を更新する(S44)。
【0083】
次に、制御装置21は、記憶部21aに記憶されている飛行計画を実行する。具体的には、制御装置21は、記憶部21aの所定の記憶領域に設けられたカレンダを参照し、飛行計画で示された飛行タイミングになると、回転翼20cのローダ20dを回転駆動させて、ブレード20eを回転させることにより、機体20aを離陸させ、マルチコプタ2の飛行を開始する(S46)。そして、制御装置21は、飛行計画で示された飛行ルートに基づいて飛行し、圃場Hの上空に到達すると、撮像装置28で圃場Hを空撮することにより、圃場Hを監視する(S47)。この際、制御装置21は、飛行計画で示された圃場Hの所定位置の上空で、マルチコプタ2をホバリングさせて、撮像装置28により所定位置を空撮する。
【0084】
その後、制御装置21は、飛行計画に基づいて飛行を終了する(S48)。即ち、制御装置21は、飛行計画で示された着陸位置に到達すると、機体20aを着陸させて、回転翼20cのローダ20d及びブレード20eの回転駆動を停止させる。それから、制御装置21は、飛行結果と撮像装置28による監視結果(画像データ)を、通信装置23により支援装置3に送信する(S49)。このとき、制御装置21は、自身が属するマルチコプタ2の識別情報と送信先の支援装置3の識別情報を付帯させた状態で、上記飛行結果と監視結果を送信する。なお、前述したように、インタフェイス26、3dと記憶媒体30を介して、マルチコプタ2から支援装置3に飛行結果と監視結果を付与してもよい。
【0085】
図9の処理S49の後、マルチコプタ2では、処理S41から以降の処理が繰り返し実行される。また、制御装置21は、自身が属するマルチコプタ2の識別情報が付帯された飛行計画が受信されなくても(S41:NO)、記憶部21aに飛行計画が既に記憶されている場合(S45:YES)、上述したように当該飛行計画を実行する(S46~S49)。
【0086】
支援装置3では、当該支援装置3の識別情報が付帯された水管理装置1の動作情報、検出結果、及び監視結果が通信部3cにより受信されると(
図8AのS6:YES)、制御部3aは、それらの情報を付帯された送信元の水管理装置1の識別情報と関連付けて、記憶部3bに記憶させる(S7)。また、支援装置3の識別情報が付帯されたマルチコプタ2の飛行結果と監視結果が通信部3cにより受信されると(S8:YES)、制御部3aは、それらの情報を付帯された送信元のマルチコプタ2の識別情報と関連付けて、記憶部3bに記憶させる(S9)。なお、支援装置3は、記憶媒体30とインタフェイス3dとを介して、マルチコプタ2の飛行結果と監視結果を取得してもよい。
【0087】
次に、水位検出部3gが、記憶部3bに記憶されたマルチコプタ2の監視結果又は水管理装置1の監視結果に基づいて、圃場Hの水位を検出する(S10)。
図11Aは、圃場Hに設けられた水位指標部材63a~63cとマルチコプタ2を示す図である。
図11Aに示すように、圃場H内の所定位置Pa~Pcには、水位指標部材63a~63cが設置されている。水位指標部材63a~63cは、例えば円形の横断面形状を有する棒状部材から成り、周面(側面)の全体に水位を計測するための目盛りが付されている。圃場Hの給水口と排水口(水管理装置1)の近傍では、給水時又は排水時に水面に波などが生じて、水位が変動するため、当該給水口と排水口の近傍以外の位置に、水位指標部材63a~63cを設置するのが好ましい。
【0088】
図11Aに示す例では、マルチコプタ2が、圃場Hの所定位置Pa~Pcの周辺の上空でホバリングした状態で、各水位指標部材63a~63cの目盛りと圃場Hの水面との接点を含むように、各位置Pa~Pcの周辺部分を撮像装置28により空撮する。この際、マルチコプタ2が各位置Pa~Pcの周辺の上空で位置を変えて、異なる角度から撮像装置28により各位置Pa~Pcの周辺部分を複数回空撮してもよい。
【0089】
その後、撮像装置28により空撮された画像データが監視結果としてマルチコプタ2から支援装置3に送信されて、当該画像データが記憶部3bに記憶される。そして、水位検出部3gが、当該画像データを記憶部3bから読み出して、当該画像データを画像解析することにより、所定位置Pa~Pcの水位を検出する。この際、水位検出部3gは、所定位置Pa~Pcのうちの1つの位置につき、1枚以上の画像データに基づいて、当該位置の水位を検出する。また、水位検出部3gは、画像データに関連付けられたマルチコプタ2の空撮位置(高さ、空撮角度など)にも基づいて、各位置Pa~Pcの水位を検出する。
【0090】
さらに、水位検出部3gは、所定位置Pa~Pcのうちの1つの位置の周辺部分を異なる角度で空撮した複数の画像データのそれぞれに基づいて、当該位置の水位を検出してもよい。そして、水位検出部3gが、その複数の画像データ毎に検出した複数の水位検出値の平均値を演算し、当該平均値を上記1つの位置の水位として決定してもよい。
図11Bは、圃場Hに設けられた水位指標部材63a~63cと水管理装置1を示す図である。
図11Bに示す例では、水管理装置1が、圃場H内の各位置Pa~Pcに設置された水位指標部材63a~63cの目盛りと圃場Hの水面との接点を含むように、各位置Pa~Pcの周辺部分を監視カメラ80により撮像する。また、水管理装置1が複数台設置されている圃場Hでは、各水管理装置1に備わる監視カメラ80により、各位置Pa~Pcの周辺部分を撮像してもよい。
【0091】
その後、監視カメラ80により撮像された画像データが監視結果として水管理装置1から支援装置3に送信されて、当該画像データが記憶部3bに記憶される。そして、水位検出部3gが、当該画像データを記憶部3bから読み出して、当該画像データを画像解析することにより、所定位置Pa~Pcの水位を検出する。
この際も、水位検出部3gは、所定位置Pa~Pcのうちの1つの位置につき、1枚以上の画像データに基づいて、当該位置の水位を検出する。また、水位検出部3gは、画像データを撮像した監視カメラ80の設置位置(高さ、撮像角度など)にも基づいて、各位置Pa~Pcの水位を検出する。また、水位検出部3gは、所定位置Pa~Pcのうちの1つの位置の周辺部分を異なる角度で撮像した複数の画像データのそれぞれに基づいて、当該位置の水位を検出してもよい。そして、水位検出部3gは、その複数の画像データ毎に検出された複数の水位検出値の平均値を演算し、当該平均値を上記1つの位置の水位として決定してもよい。
【0092】
また、上述したように、マルチコプタ2の撮像装置28と水管理装置1の監視カメラ80の両方で、圃場H内の水位指標部材63a~63cの目盛りと圃場Hの水面との接点を含むように、各位置Pa~Pcの周辺部分を撮像し、それらの画像データに基づいて、水位検出部3gで各位置Pa~Pcの水位を検出してもよい。またこの場合、マルチコプタ2が圃場Hの上空を飛行することにより、撮像装置28で空撮された画像データに基づいて、水位検出部3gが検出可能な所定位置Pa~Pcの第1水位と、マルチコプタ2が圃場Hの上空を飛行しなくても、監視カメラ80で撮像された画像データに基づいて、水位検出部3gが検出可能な所定位置Pa~Pcの第2水位とを、両方とも水位検出部3gによる水位検出値としてもよい。
【0093】
又は、上記第1水位と上記第2水位とに基づいて、水位検出部3gが所定位置Pa~Pcの水位をそれぞれ決定してもよい。具体的には、例えば水位検出部3gが、各位置Pa~Pcの上記第1水位と上記第2水位との平均値を演算し、当該平均値を各位置Pa~Pcの水位検出値とする。或いは、例えば水位検出部3gが、圃場管理計画で示された現在の圃場Hに対する給水と排水の必要度に応じて、上記第1水位と上記第2水位のうちの多い方或いは少ない方の優先する水位を、各位置Pa~Pcの水位検出値とする。また上記第1水位と上記第2水位のうち、いずれか一方の水位を優先することが圃場管理計画又は水位検出計画で定められていてもよい。
【0094】
なお、圃場H内における水位指標部材63a~63cの設置位置と設置数、並びに水位の検出位置は、圃場Hの外形(広さと形状など)、及び給排水位置などに基づいて適宜設定すればよく、例えば1か所でもよいし、2か所以上でもよい。
次に、取得部3eが、記憶部3bの記憶内容から圃場Hの風情報を抽出する(
図8AのS11)。詳しくは、水位検出部3gが各位置Pa~Pcの水位を検出する際に基づいた画像データの撮像時に、圃場Hに吹いていた風の風向と風速を含む風情報(風検出部50dが検出)を、取得部3eが記憶部3bの記憶内容から抽出する。そして、補正部3hが、水位検出部3gにより検出された圃場Hの各位置Pa~Pcの水位(水位検出値)を、取得部3eにより抽出された圃場Hの風情報に基づいて補正する(S12)。
【0095】
図12は、圃場Hの平面図である。例えば
図12に示すように、圃場Hに東向きの自然風(風速3m/秒)が吹いていることが、取得部3eにより抽出された風情報で示されている場合、まず補正部3hは、所定位置Pa~Pcのうち、最も風上側にある位置Paと最も風下側にある位置Pcとを判断する。そして、補正部3hは、最も風上側にある位置Paの水位検出値Wa(Wa=4.5cm)と、最も風下側にある位置Pcの水位検出値Wc(Wc=5.5cm)との平均値Waveを算出する(Wave=(Wa+Wc)÷2=5.0cm)。
【0096】
次に、補正部3hは、平均値Waveから所定位置Pa、Pcの水位検出値Wa、Wcをそれぞれ減算することにより、所定位置Pa、Pcの第1水位補正値Qa、Qcを求める(Qa=Wave-Wa=+0.5cm、Qc=Wave-Wc=-0.5cm)。
そして、補正部3hは、所定位置Pa、Pcの第1水位補正値Qa、Qcを水位検出値Wa、Wcにそれぞれ加算することにより、所定位置Pa、Pcの水位検出値を補正する(第1水位補正)。これにより、所定位置Pa、Pcの第1水位補正後の水位Wah、Wchは、それぞれ5.0cmとなり、平均値Waveと同値となる(Wah=Wa+Qa=4.5cm+(+0.5cm)=5.0cm=Wave、Wch=Wc+Qc=5.5+(-0.5cm)=0.5cm=Wave)。
【0097】
また、風の影響で、圃場Hの風上側の畔Raから風下側の畔Rbに向かうに連れて水位が上がるため、風上側の畔Raからの距離と水位検出値とが比例関係にある。このため、補正部3hは、所定位置Paから所定位置Pcまでの風向きと平行な距離Dac、所定位置Pcの水位検出値Wcと所定位置Paの水位検出値Waとの差Δca(Δca=Wc-Wa=+1.0cm)、及び所定位置Paから所定位置Pbまでの風向きと平行な距離Dabに基づいて、所定位置Pbの水位検出値Wbの第1水位補正値Qbを求める。
図12の例では、距離Dac、Dabの比が、Dac:Dab=5:1であり、差Δcaが+1.0cmであるため、第1水位補正値Qbは+0.2cmとなる。
【0098】
そして、補正部3hは、所定位置Pbの第1水位補正値Qbを水位検出値Wbに加算することにより、所定位置Pbの水位検出値を補正する(第1水位補正)。これにより、所定位置Pbの補正後の水位Wbhは、4.9cmとなる(Wbh=Wb+Qb=4.7cm+(+0.2cm)=4.9cm)。
なお、他の例として、第1水位補正値Qa、Qcと同様に、平均値Waveから位置Pbの水位検出値Wbを減算することにより、第1水位補正値Qbを求めて、当該第1水位補正値Qbで水位検出値Wbを補正してもよい。この場合、第1水位補正値Qbは、+0.3cmとなり(Qb=Wave-Wb=5.0cm-4.7cm=+0.3cm)、所定位置Pbの第1水位補正後の水位Wbhは、5.0cmとなる(Wbh=Wb+Qb=4.7cm+(+0.3cm)=5.0cm)。
【0099】
補正部3hは、上述したように各所定位置Pa、Pb、Pcの水位検出値Wa、Wb、Wcを補正すると、当該各所定位置Pa、Pb、Pcの第1水位補正後の水位Wah、Wbh、Wchを記憶部3bに記憶させる。この際、補正部3hは、各所定位置Pa、Pb、Pcの第1水位補正後の水位Wah、Wbh、Wchに、対応する各所定位置Pa、Pb、Pcの位置情報(座標など)、第1水位補正前の水位検出値Wa、Wb、Wc、第1水位補正値Qa、Qb、Qc、又は風情報(風向、風速)などを関連付けて、記憶部3bに記憶させる。また、補正部3hは、予め設定された圃場Hの基準位置(
図12の例では位置Pb)については、当該位置情報、第1水位補正後の水位、第1水位補正前の水位検出値、第1水位補正値、及び風情報を関連付けて記憶部3bに記憶させることにより、これらのデータを集積する。
【0100】
次に、決定部3iが、各所定位置Pa~Pcの第1水位補正後の水位Wah、Wbh、Wchに基づいて、圃場Hの各所定位置Pa~Pcの水位と全体水位Woとを決定し、当該決定結果を記憶部3bに記憶させる(
図8AのS13)。この際、例えば決定部3iは、各所定位置Pa~Pcの第1水位補正後の水位Wah、Wbh、Wchを、各所定位置Pa~Pc水位として決定する。また、決定部3iは、各所定位置Pa~Pcの第1水位補正後の水位Wah、Wbh、Wchの平均値を演算して、当該平均値を圃場Hの全体水位Woとして決定する。そして、決定部3iは、決定した圃場Hの各所定位置Pa~Pcの水位Wah、Wbh、Wch及び全体水位Woと、これらを決定する際に用いた各位置Pa~Pcの第1水位補正前の水位検出値Wa、Wb、Wc、第1水位補正値Qa、Qb、Qc、各位置Pa~Pcの位置情報、又は圃場Hの風情報などとを関連付けて、記憶部3bに記憶させる。
【0101】
即ち、圃場Hの各位置Pa~Pcの第1水位補正前の水位検出値Wa、Wb、Wc、第1水位補正値Qa、Qb、Qc、第1水位補正後の水位Wah、Wbh、Wch、全体水位Wo、各所定位置Pa~Pcの位置情報、又は圃場Hの風情報などが、記憶部3bに記憶されて、データベース化される。
また、前述したように、水位検出部3gがマルチコプタ2の撮像装置28の画像データに基づいて検出した所定位置Pa~Pcの第1水位と、水管理装置1の監視カメラ80の画像データに基づいて検出した所定位置Pa~Pcの第2水位の両方を、水位検出値として出力した場合には、補正部3hが、第1水位と第2水位のうちの少なくとも一方を補正すればよい。
【0102】
例えば、補正部3hが、上記所定位置Pa~Pcの第1水位と第2水位の両方を前述した手順で補正したときには、決定部3iが、補正後の第1水位と補正後の第2水位とに基づいて、所定位置Pa~Pcの水位と全体水位Woとを決定すればよい。この際、決定部3iが、補正後の第1水位と補正後の第2水位との平均値又はそのうち優先する水位から、所定位置Pa~Pcの水位と全体水位Woとを決定してもよい。
【0103】
また、例えば補正部3hが、上記所定位置Pa~Pcの第1水位と第2水位のうち、圃場管理計画で示されているいずれか一方の優先する水位を、前述した手順で補正したときには、決定部3iが、当該補正後の水位に基づいて、所定位置Pa~Pcの水位と全体水位Woとを決定すればよい。
一方、水位検出部3gがマルチコプタ2の撮像装置28の画像データに基づいて検出した所定位置Pa~Pcの第1水位と、水管理装置1の監視カメラ80の画像データに基づいて検出した所定位置Pa~Pcの第2水位とに基づいて、所定位置Pa~Pcの水位検出値を決定した場合には、補正部3hが、当該所定位置Pa~Pcの水位検出値を前述した手順で補正すればよい。そして、決定部3iが、補正後の所定位置Pa~Pcの水位検出値に基づいて、所定位置Pa~Pcの水位と全体水位Woとを決定すればよい。
【0104】
圃場Hが無風状態であった場合、即ち風検出部50dにより検出された風速が0m/秒であった場合、例えば補正部3hが、無風状態に対応する所定の補正値(0(ゼロ)でもよい。)を用いて、所定位置Pa~Pcの水位検出値Wa、Wb、Wcを補正してもよい。そして、決定部3iが、当該補正後の所定位置Pa~Pcの水位検出値Wah、Wbh、Wchに基づいて、所定位置Pa~Pcの水位と全体水位Woとを決定して、記憶部3bに記憶させてもよい。
【0105】
或いは、補正部3hが水位検出部3gにより検出された水位検出値Wa、Wb、Wcを補正することなく、決定部3iが当該水位検出値Wa、Wb、Wcを圃場Hの所定位置Pa~Pcの水位として決定して、記憶部3bに記憶させてもよい。また、決定部3iが、水位検出値Wa、Wb、Wcの平均値Waveを演算し、当該平均値Waveを圃場Hの全体水位Woとして決定して、記憶部3bに記憶させてもよい。さらに、決定部3iは、所定位置Pa~Pcの水位検出値Wa、Wb、Wc及び全体水位Woと、所定位置Pa~Pcの位置情報又は風情報とを関連付けて、記憶部3bに記憶させてもよい。
【0106】
上述したように水位検出部3gにより検出された水位検出値を、補正部3hにより風情報に基づいて補正することで、圃場Hに吹いた風によって圃場Hの水が押し流されたり、圃場Hの水面に波が生じたりするなどして、圃場Hの各部で水位が一時的に変動しても、圃場Hの実際の水位、即ち風の影響を受けていないときの水位を検出することができる。
マルチコプタ2が圃場Hの上空を飛行して、撮像装置28により圃場H内の所定位置Pa~Pcの周辺部分を撮像する場合、マルチコプタ2の高度が低かったり、回転翼20cのロータ20d(又はブレード20e)の回転数が大きかったりすると、ブレード20eの回転により生じる旋回風の影響で、所定位置Pa~Pcの周辺部分の水位が一時的に変動することがある。この場合、撮像装置28により空撮した画像データに基づいて、水位検出部3gにより検出した所定位置Pa~Pcの水位が、実際の所定位置Pa~Pcの水位と異なってしまう。
【0107】
具体的には、例えば圃場Hの上空でマルチコプタ2がホバリングしたときの、マルチコプタ2の高度が低いほど、又はロータ20dの回転数が大きいほど、ブレード20eの回転により生じる旋回風の影響で、マルチコプタ2の直下の水面が低下し、当該直下に設置された水位指標部材63a~63cの目盛りと水面との接点も低下する。
この対策として、マルチコプタ2が圃場Hに起こす旋回風に基づいて、補正部3hが水位検出部3gによる水位検出値を補正してもよい。具体的には、例えば、自然風の影響を受けない飛行体用の屋内飛行練習場において、水を入れた大きな水槽を設置する。そして、マルチコプタ2を水槽の上空で飛行させて、マルチコプタ2の高度又はロータ20dの回転数を変えながら、マルチコプタ2をホバリングさせて、水槽の水位の変化を調査する実験を行う。
【0108】
この際、パーソナルコンピュータから成る実験用端末装置で、マルチコプタ2より取得した飛行結果から、マルチコプタ2の高度又はロータ20dの回転数を検出する。また、水位センサにより水槽の水位を検出して、当該検出結果を実験用端末装置に取り込む。ここで用いる水位センサは、公知の接触式又は非接触式の水位計センサから成る。
実験用端末装置において、上記実験結果から、マルチコプタ2の高度の変化と水槽の水位の変化との相関関係を抽出する。次に、当該相関関係に基づいて、マルチコプタ2の高度に応じた水位の変動値(低下幅)を第2水位補正値として導出する。そして、マルチコプタ2の高度と第2水位補正値との対応関係を示すテーブル、或いはマルチコプタ2の高度に基づいて第2水位補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データを支援装置3の記憶部3bに記憶させる。
【0109】
又は、実験用端末装置で、上記実験結果から、マルチコプタ2のロータ20dの回転数の変化と、水槽の水位の変化との相関関係を抽出する。次に、当該相関関係に基づいて、ロータ20dの回転数に応じた水位の変動値(低下幅)を第3水位補正値として導出する。そして、ロータ20dの回転数と第3水位補正値との対応関係を示すテーブル、或いはロータ20dの回転数に基づいて第3水位補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データを支援装置3の記憶部3bに記憶させる。
【0110】
図13Aは、前述の手順で導出された、マルチコプタ2の高度と第2水位補正値との関係を示す図である。詳しくは、
図13Aに示すグラフ中のラインL1は、ロータ20dの回転数を所定の一定値にして、マルチコプタ2をホバリングさせた場合の、マルチコプタ2の高度と第2水位補正値との相関関係を示している。ラインL1で示すように、マルチコプタ2の高度が高くなるほど(
図13Aの横軸で右に行くほど)、マルチコプタ2と水面との離間距離が長くなって、ブレード20eの旋回風の影響を水面が受け難くなり、水位の変動量が小さくなるので、第2水位補正値は小さくなる(
図13Aの縦軸で下方に行く)。また、マルチコプタ2の高度がある程度高くなると、ブレード20eの旋回風の影響を水面が受けなくなるので、第2水位補正値は一定値(0(ゼロ)又は略0)に収束する。さらに、ロータ20dの回転数が大きくなるほど、ラインL1が縦軸方向と平行に上方へシフトし、第2水位補正値が大きくなる。
【0111】
図13Bは、前述の手順で導出された、マルチコプタ2のロータ20dの回転数と第3水位補正値との関係を示す図である。詳しくは、
図13Bに示すグラフ中のラインL2は、マルチコプタ2の高度を所定の一定値にして、マルチコプタ2をホバリングさせた場合の、ロータ20dの回転数と第3水位補正値との相関関係を示している。ラインL2で示すように、ロータ20dの回転数が大きくなるほど(
図13Bの横軸で右に行くほど)、ブレード20eの旋回風の影響を水面が受けて、水位の変動量が大きくなるので、第3水位補正値は大きくなる(
図13Bの縦軸で上方に行く)。また、マルチコプタ2の高度が低くなるほど、ラインL2が縦軸方向と平行に上方へシフトし、第3水位補正値が大きくなる。
【0112】
図13Aのマルチコプタ2の高度と第2水位補正値との関係を示す演算式(関数)若しくはテーブル、又は
図13Bのマルチコプタ2のロータ20dの回転数と第3水位補正値との関係を示す演算式(関数)若しくはテーブルといった補正データが、支援装置3の記憶部3bに予め記憶される。
圃場管理システム7の運用時には、支援装置3の水位検出部3gが、マルチコプタ2の飛行時に撮像装置28により撮像された画像データに基づいて圃場Hの所定位置の水位を検出する。すると、取得部3eが、記憶部3bに記憶されたマルチコプタ2の飛行結果から、当該画像データの撮像時のマルチコプタ2の高度又はロータ20dの回転数を抽出する。次に、補正部3hが、抽出された上記マルチコプタ2の高度と、記憶部3bに記憶された補正データとに基づいて、第2水位補正値を導出する。そして、補正部3hが、当該第2水位補正値に基づいて、水位検出部3gによる水位検出値を補正(第2水位補正)する。詳しくは、補正部3hは、例えば水位検出部3gによる水位検出値に第2水位補正値を加算することにより、第2水位補正後の水位を求める。
【0113】
又は、補正部3hが、取得部3eにより抽出された上記ロータ20dの回転数と、記憶部3bに記憶された補正データとに基づいて、第3水位補正値を導出する。そして、補正部3hが、当該第3水位補正値に基づいて、水位検出部3gによる水位検出値を補正(第3水位補正)する。詳しくは、補正部3hは、例えば水位検出部3gによる水位検出値に第3水位補正値を加算することにより、第3水位補正後の水位を求める。
【0114】
又は、補正部3hは、上記第3水位補正値に基づいて、第2水位補正後の水位を補正(第4水位補正)する。詳しくは、補正部3hは、例えば第2水位補正後の水位に、第3水位補正値を加算することにより、第4水位補正後の水位を求める。
それから、補正部3hは、上記第2~第4水位補正の少なくとも1つを行った後の水位を、圃場Hの風情報に基づいて補正(第5水位補正)する。そして、制御部3aが、当該第5補正後の水位を圃場Hの所定位置の水位として決定し、当該第5補正後の水位に基づいて、圃場Hの全体水位を決定する。このときの圃場Hの風情報に基づく第5水位補正の手順は、前述した第1水位補正の手順と同様であり、圃場Hの全体水位の推定手順は、前述した全体水位の推定手順と同様である。
【0115】
圃場Hの水位の決定後、制御部3aは、記憶部3bに記憶された圃場Hの水位に基づいて、圃場Hに対する給排水の要否を判断する(
図8BのS14)。この際、例えば制御部3aは、圃場Hの全体水位が所定の給水閾値以下であれば、給水が必要であると判断する。また、制御部3aは、全体水位が所定の排水閾値以上であれば、排水が必要であると判断する。
【0116】
なお、作物Uの生育状況又は時期などに応じて、給水閾値と排水閾値を複数設定して、当該各閾値を圃場管理計画と関連付けて記憶部3bに記憶させておいてもよい。そして、制御部3aが、圃場管理計画に基づいて、記憶部3bから給水閾値と排水閾値を適宜読み出して、上述した給排水の要否判断で用いてもよい。また、圃場Hの全体水位だけでなく、前述した第1~第5水位補正の少なくともいずれかを行った後の所定位置の水位と、給水閾値又は排水閾値とを比較して、当該比較結果から圃場Hに対する給排水の要否を判断してもよい。
【0117】
制御部3aは、圃場Hに対して給水が必要であると判断した場合(S15:YES)、給水指令を通信部3cにより水管理装置1に送信する(S16)。このとき、制御部3aは、送信先の水管理装置1の識別情報を付帯させた状態で、給水指令を送信する。給水指令には、給水動作の実行指示、給水時間、及び弁体102の開度などが含まれている。
また、制御部3aは、圃場Hに対して排水が必要であると判断した場合(S17:YES)、排水指令を通信部3cにより水管理装置1に送信する(S18)。このとき、制御部3aは、送信先の水管理装置1の識別情報を付帯させた状態で、排水指令を送信する。排水指令には、排水動作の実行指示、排水時間、及び仕切弁125の開度などが含まれている。
【0118】
水管理装置1では、当該水管理装置1の識別情報が付帯された給水指令が通信装置70により受信されると(
図10BのS78:YES)、制御装置60が、当該給水指令に基づいてアクチュエータ10により弁体102を開動作させて、圃場Hへの給水を行う(S79)。また、制御装置60は、自身が属する水管理装置1の識別情報が付帯された排水指令が通信装置70により受信されると(S80:YES)、当該排水指令に基づいてアクチュエータ10により仕切弁125を開動作させて、圃場Hからの排水を行う(S81)。
【0119】
そして、制御装置60は、給水動作又は排水動作を実行したことを示す動作情報を記憶部60aに記憶させてから、当該動作情報を通信装置70により支援装置3に送信する(S82)。このとき、制御装置60は、自身が属する水管理装置1の識別情報と、送信先の支援装置3の識別情報とを付帯させた状態で、上記動作情報を送信する。
図10Bの処理S82の後、水管理装置1では、処理S61から以降の処理が繰り返し実行される。また、当該水管理装置1の識別情報が付帯された給水指令及び排水指令が通信装置70により受信されなくても(S78:NO、S80:NO)、処理S61から以降の処理が繰り返し実行される。また、当該水管理装置1の識別情報が付帯された水管理計画が通信装置70により受信されなくても(
図10AのS61:NO)、記憶部61aに水管理計画が既に記憶されている場合(S65:YES)、当該水管理計画が実行させる(S66~S77)。
【0120】
支援装置3では、制御部3aが、圃場Hに対して給水が必要でないと判断した場合(
図8BのS15:NO)、又は圃場Hに対して給水が必要であると判断して(S15:YES)、給水指令若しくは排水指令を水管理装置1に送信した(S16若しくはS18)場合、取得部3eが圃場情報、水位情報、又は圃場管理計画を取得する(S19)。
このとき、取得部3eは、圃場情報として、最新或いは最新から所定回数前までの、圃場Hの外形、大気、給排水、若しくは作物Uなどの状態を示す情報、水管理装置1の動作情報、マルチコプタ2の飛行結果、及び水管理装置1とマルチコプタ2の監視結果を記憶部3bから抽出する。又は、取得部3eは、水位情報として、最新或いは最新から所定回数前までの、水位検出部3gにより検出された圃場Hの水位、補正部3hにより補正された水位、決定部3iにより決定された水位、及び当該水位の検出位置を示す位置情報を記憶部3bから抽出する。
【0121】
次に、計画作成部3fが、取得部3eにより取得された圃場情報、水位情報、又は圃場管理計画に基づいて、水位検出計画の変更の要否を判断する(S20)。この際、計画作成部3fは、上記の圃場情報、水位情報、又は圃場管理計画と、予め記憶部3bに記憶された頻度判定テーブルT1とに基づいて、水位検出計画に含まれる圃場Hの水位の検出頻度、検出位置、又は検出手順などに変更が必要か否かを判断する。
【0122】
図14は、頻度判定テーブルT1を示す図である。頻度判定テーブルT1は、複数の圃場Hの広さ(外形)、複数の圃場Hを含む地域の降雨量(大気状態)、各圃場Hに対する給排水量、及び各圃場Hに設置された水管理装置1のソーラパネル40による発電量と、各圃場Hの水位の検出頻度との関係を示している。
計画作成部3fは、まず頻度判定テーブルT1に従って、圃場Hの水位の検出頻度を設定する。例えば計画作成部3fは、頻度判定テーブルT1により、取得部3eにより取得された圃場情報から、第1圃場H1(
図2)では、面積が中程度であり、過去のある時点から現在までにおいて、給水量が所定の中程度で、降雨量が0(ゼロ)で、ソーラパネル40による発電量が所定の中程度であることを確認する。この場合、計画作成部3fは、第1圃場H1の水位変動が中程度であると判断し、第1圃場H1の水位の検出頻度を中程度の20分毎に設定する。
【0123】
また、計画作成部3fは、頻度判定テーブルT1により、取得部3eにより取得された情報から、第2圃場H2(
図2)では、面積がある程度大きく、過去のある時点から現在までにおいて、給水量がある程度多く、降雨量が0で、ソーラパネル40による発電量が中程度であることを確認する。この場合、計画作成部3fは、第2圃場H2の水位変動が小さいと判断し、第2圃場H2の水位の検出頻度を比較的低い40分毎に設定する。
【0124】
さらに、計画作成部3fは、頻度判定テーブルT1により、取得部3eにより取得された情報から、第4圃場H4(
図2)では、面積がある程度小さく、過去のある時点から現在までにおいて、給水量がある程度少なく、降雨量が0で、ソーラパネル40による発電量がある程度多いことを確認する。この場合、計画作成部3fは、第4圃場H4の水位変動が大きいと判断し、第4圃場H4の水位の検出頻度を比較的高い10分毎に設定する。
【0125】
即ち、
図14に示す例では、圃場Hの広さが広いほど、水位の検出頻度が低く設定される。また、圃場Hへの給水量が多いほど、水位の検出頻度が低く設定される。また、ソーラパネル40による発電量が多いほど、水位の検出頻度が高く設定される。降雨量については、例えば降雨量が少ないほど、水位の検出頻度が高く設定されてもよい。このような圃場情報に基づく水位の検出頻度の設定傾向は、時期に応じて真逆にするなど、適宜変更してもよい。
【0126】
上記以外にも、例えば計画作成部3fが、圃場情報に含まれる圃場Hの大気、給排水、若しくは作物Uの状態に基づいて、圃場Hの水位変動の大きさを判断し、当該判断結果に応じて圃場Hの水位の検出頻度を設定してもよい。また、計画作成部3fが、圃場情報の水管理装置1の検出結果に含まれる圃場Hの気温、湿度、日射量、若しくは風情報、又はこれら所定現象の所定時間における変化量に基づいて、圃場Hの水位変動の大きさを判断し、当該判断結果に応じて圃場Hの水位の検出頻度を設定してもよい。また、計画作成部3fが、水位情報に含まれる圃場Hの水位(決定部3iで決定された水位など)、又は当該水位の変動量に基づいて、圃場Hの水位変動の大きさを判断し、当該判断結果に応じて圃場Hの水位の検出頻度を設定してもよい。さらに、計画作成部3fが、圃場管理計画で示される現在の圃場Hの管理状態又は現在の農作業の作業段階に基づいて、圃場Hの水位変動の大きさを判断し、当該判断結果に応じて圃場Hの水位の検出頻度を設定してもよい。
【0127】
具体的には、例えば計画作成部3fは、圃場Hの全体水位Woの所定時間における変動量(変化)が大きいほど、圃場Hの水位の検出頻度を高く設定する。また、計画作成部3fは、圃場Hに水を張って代掻きを実施する時期などには、圃場Hの水位変動は大きいと判断し、圃場Hの水位の検出頻度を高く設定する。また、計画作成部3fは、圃場Hに水を張らない中干期などには、圃場Hの水位変動は無いと判断し、圃場Hの水位の検出頻度を低く設定したり、又は水位を検出しないように設定したりする。
【0128】
また、計画作成部3fは、雨天時又は強風時(例えば風速5m/秒以上)には、マルチコプタ2を飛行させないように制限し、撮像装置28の画像データに基づく水位の検出を止めて、水管理装置1の監視カメラ80の画像データに基づいて水位を検出するように設定する。またこの場合、監視カメラ80の画像データに基づく水位の検出頻度を高く設定してもよい。
【0129】
また、計画作成部3fは、圃場Hの水位の検出位置を設定する。例えば、水管理装置1が圃場Hに対して給水動作又は排水動作を行っているときと、当該動作を終了してからしばらくの間は、水管理装置1の近傍では、水面に波が生じるなどして、水位が安定しない。このため、計画作成部3fは、水管理装置の給水動作中、排水動作中、又は当該動作のいずれかを終了してからしばらくの間は、水管理装置1の近傍にある所定位置の水位を検出せず、水管理装置1からある程度離間した所定位置の水位を検出するように設定する。
【0130】
また、圃場Hにおける複数の所定位置Pa~Pcの補正前の水位検出値に殆ど差が無ければ、計画作成部3fは、基準位置Pbの水位だけを検出するように設定する。又は、複数の位置Pa~Pcの補正後の水位検出値に殆ど差が無ければ、計画作成部3fは、基準位置Pbの水位だけを検出するように設定する。
また、圃場Hの所定位置Pa~Pcの水位情報(補正前の水位検出値又は補正後の水位など)と、当該水位情報に関連付けられた圃場Hの風情報(風向又は風速)とが、記憶部3bにある程度集積された場合、計画作成部3fは、圃場Hの基準位置Pbの水位だけを、以前の検出頻度より低い検出頻度で検出するように設定する。さらに、圃場情報が略同等である複数の圃場Hがお互いの近くにある場合には(
図2の圃場H1と圃場H3など)、計画作成部3fは、いずれか一方の圃場Hの基準位置Pbの水位を検出し、当該一方の他の位置の水位と、他方の圃場Hの水位とを検出しないように設定する。
【0131】
上記のように水位の検出位置が減少した場合、その後水位検出部3gが基準位置Pbの水位を検出したときに、補正部3hが、風情報と記憶部3bに記憶された水位情報(過去の基準位置Pbの水位検出値、水位補正値、補正後の水位など)に基づいて、当該基準位置Pbの水位検出値を補正する。そして、推定部3j(
図7)が、基準位置Pbの水位検出値と、補正後の水位と、記憶部3bに記憶された水位情報(過去の複数の所定位置Pa~Pcの水位検出値、水位補正値、補正後の水位など)とに基づいて、他の所定位置Pa、Pcの水位と、圃場Hの全体水位Woとを推定する。また、推定部3jが、基準位置Pbの水位検出値と、補正後の基準位置Pbの水位と、記憶部3bに記憶された水位情報と、近くにある他の圃場Hの水位情報とに基づいて、他の圃場Hの所定位置の水位と、他の圃場Hの全体水位とを推定してもよい。
【0132】
圃場Hの基準位置Pbは、予め記憶部3bに記憶されていてもよいし、又は計画作成部3fが圃場情報などに基づいて設定して、圃場管理計画に含めてもよい。計画作成部3fは、水位検出部3gなどで水位を検出する圃場Hの基準位置と、推定部3jにより水位を推定する他の所定位置とを変更可能である。詳しくは、計画作成部3fは、圃場情報、水位情報、又は風情報に基づいて、水位検出部3gなどで水位を検出する圃場Hの基準位置と、推定部3jにより水位を推定する他の所定位置とを変更する。例えば、基準位置の水位変動が異常に大きかったり、水位検出部3gなどでの基準位置の水位検出時若しくは検出結果にエラーが生じたり、圃場Hの給水口又は排水口が基準位置の近傍に変更されたりするなどした場合に、計画作成部3fは、基準位置を他の所定位置に変更する。
【0133】
前述したように水位検出部3gは、撮像装置28の画像データと監視カメラ80の画像データのそれぞれに基づいて、圃場Hの所定位置Pa~Pcの水位を検出可能である。このため、水位検出部3gが撮像装置28の画像データに基づいて検出した基準位置Pbの水位検出値(第1水位)と、監視カメラ80の画像データに基づいて検出した基準位置Pbの水位検出値(第2水位)との差に基づいて、計画作成部3fが、水位を検出する圃場Hの位置と頻度、並びに撮像装置28又は監視カメラ80により撮像する圃場Hの位置と頻度を変更してもよい。
【0134】
例えば、水位検出部3gが撮像装置28の画像データに基づいて検出した基準位置Pbの第1水位と、監視カメラ80の画像データに基づいて検出した基準位置Pbの第2水位との差が、所定の閾値未満であれば、計画作成部3fが、圃場Hの水位を検出する位置と頻度を減少させて、撮像装置28又は監視カメラ80により撮像する圃場Hの位置も減少させる。また、上記第1水位と第2水位との差が所定の閾値以上であれば、計画作成部3fが、圃場Hの水位を検出する位置と頻度を増加させて、撮像装置28又は監視カメラ80により撮像する圃場Hの位置も増加させる。
【0135】
また、撮像装置28の画像データと監視カメラ80の画像データのいずれかに異常があった場合、又は撮像装置28の画像データに基づく水位検出値と監視カメラ80の画像データに基づく水位検出値のいずれかに異常があった場合、計画作成部3fは、異常があった方の撮像装置による撮像頻度及び撮像位置と、異常があった方の撮像装置の画像データに基づく水位の検出頻度及び検出位置とを、減少させるように設定してもよい。そして、正常な方の撮像装置による撮像頻度及び撮像位置と、正常な方の撮像装置の画像データに基づく水位の検出頻度及び検出位置とを、増加させるように設定してもよい。
【0136】
また、計画作成部3fは、圃場Hに自然風が吹いていない場合、撮像装置28又は監視カメラ80により撮像する圃場Hの撮像位置と撮像頻度を増加させたり、水位を検出する圃場数と検出頻度と検出位置の少なくともいずれかを増加させたりするように設定してもよい。
また、計画作成部3fは、上述した水位の検出頻度及び検出位置の変更に伴い、次のように水位の検出手順を変更してもよい。例えば水位検出部3gは、まずマルチコプタ2の撮像装置28又は水管理装置1の監視カメラ80により撮像された圃場Hの基準位置Pbの周辺の画像データに基づいて、基準位置Pbの水位を検出する。次に、補正部3hが、風検出部50dと取得部3eにより取得された圃場Hの風向・風量と、記憶部3bに記憶された過去の基準位置Pbの水位情報(水位検出値と補正後の水位など)とに基づいて、水位検出部3gにより検出された基準位置Pbの水位を補正する。そして、制御部3aが、補正後の基準位置Pbの水位と、記憶部3bに記憶された過去の補正後の基準位置Pbの水位と、過去の他の位置の水位などに基づいて、他の位置の水位を推定し、基準位置Pbの水位と他の位置の水位を決定する。また、制御部3aが、決定した各所定位置の水位に基づいて、圃場Hの全体水位を決定する。
【0137】
また、例えば補正部3hが、記憶部3bに記憶された圃場Hの所定位置の水位と、圃場Hの風情報とに基づいて、基準位置Pbの水位を補正する補正データと、他の位置の水位を推定する推定データとを作成してもよい。
具体的には、補正部3hが、記憶部3bに記憶された圃場Hの基準位置Pbの過去の水位と、圃場Hの過去の風情報とに基づいて、圃場Hの風向又は風速と基準位置Pbの水位との相関関係を抽出する。また、補正部3hは、当該相関関係に基づいて、圃場Hの風向又は風速に応じた基準位置Pbの水位の変動値(低下幅又は上昇幅)を第6補正値として導出する。そして、補正部3hは、圃場Hの風向又は風速と水位の第6補正値との対応関係を示すテーブル、或いは圃場Hの風向又は風速に基づいて第6補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データを記憶部3bに記憶させる。
【0138】
また、補正部3hは、記憶部3bに記憶された各所定位置の過去の補正後の水位に基づいて、補正後の基準位置Pbの水位と他の位置の水位との相関関係を抽出する。そして、補正部3hは、当該相関関係を示すテーブル或いは演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す推定データを記憶部3bに記憶させる。
この後、補正部3hが、記憶部3bに記憶された上記補正データと、風検出部50dと取得部3eにより取得された圃場Hの風向又は風量に基づいて、水位検出部3gにより検出された基準位置Pbの水位を補正する。そして、制御部3aが、補正後の基準位置Pbの水位と、記憶部3bに記憶された上記推定データに基づいて、他の所定位置の水位を推定し、さらに圃場Hの全体水位を推定する。他の例として、制御部3aが、他の所定位置の水位を推定することなく、補正後の基準位置Pbの水位と、記憶部3bに記憶された各位置の過去の補正後の水位情報とに基づいて、圃場Hの全体水位を推定してもよい。
【0139】
計画作成部3fは、上述したように水位の検出頻度、検出位置、又は検出手順を設定すると、当該設定結果と、記憶部3bに記憶された水位検出計画に含まれる対応事項(水位の検出頻度、検出位置、検出手順、又は水位の検出に関連する動作状態)とを比較する。この際、設定した水位の検出頻度、検出位置、検出手順、又は水位の検出に関連する動作状態などが、水位検出計画の対応事項と異なれば、計画作成部3fは、水位検出計画の変更が必要であると判断する(
図8BのS21:YES)。
【0140】
そして、計画作成部3fは、上述した水位の検出頻度、検出位置、検出手順、又は水位の検出に関連する動作状態などの設定結果に応じて、水位検出計画を変更し、変更後の水位検出計画を記憶部3bに記憶された水位検出計画に上書きして、水位検出計画を更新し、更新後の水位検出計画を通信部3cにより水管理装置1とマルチコプタ2とに送信する(S22)。
【0141】
また、計画作成部3fは、上述した水位検出計画の変更に応じて、マルチコプタ2の飛行計画又は水管理装置1の水管理計画を変更し、当該変更した計画を記憶部3bに記憶された対応する計画に上書きして、飛行計画又は水管理計画を更新し、更新後の計画を通信部3cによりマルチコプタ2又は水管理装置1に送信する(S23)。
詳しくは、例えば、水位を検出しない圃場H若しくは圃場Hの所定位置、又は時間については、マルチコプタ2を飛行させて、撮像装置28で空撮する必要がなく、水管理装置1の監視カメラ80で撮像する必要もない。このため、計画作成部3fは、水位の検出位置又は検出頻度の減少に応じて、マルチコプタ2の飛行ルートを短縮し又は飛行スケジュールを減少させる。これに伴い、撮像装置28による空撮位置と空撮回数も減少する。また、計画作成部3fは、水位の検出位置又は検出頻度の減少に応じて、水管理装置1の監視カメラ80で圃場Hの所定位置を撮像する監視スケジュールを減少させる。これに伴い、検出装置50で圃場Hの風情報などの所定現象を検出する検出スケジュールも減少させてもよい。
【0142】
また、水位を検出する圃場H、又は圃場Hの検出位置若しくは検出頻度が増加した場合には、計画作成部3fは、当該増加に応じてマルチコプタ2の飛行ルートを拡張し又は飛行スケジュールを増加させる。これに伴い、撮像装置28による空撮位置と空撮回数も増加する。また、計画作成部3fは、水位の検出位置又は検出頻度の増加に応じて、水管理装置1の監視カメラ80で圃場Hの所定位置を撮像する監視スケジュールを増加させる。これに伴い、検出装置50で圃場Hの風情報などの所定現象を検出する監視スケジュールも増加させてもよい。
上述したように、飛行計画が変更されることで、マルチコプタ2の飛行が制限される。また、水管理計画が変更されることで、水管理装置1の動作が制限される。
【0143】
さらに、計画作成部3fは、取得部3eにより取得された圃場情報又は水位情報に基づいて、必要に応じて圃場管理計画を変更し、変更後の圃場管理計画を記憶部3bに記憶された圃場管理計画に上書きして、圃場管理計画を更新する(S24)。詳しくは、取得部3eが取得した圃場情報(所定現象の検出結果、水管理装置1の動作情報、マルチコプタ2の飛行結果、若しくは水管理装置1とマルチコプタ2の監視結果)、又は水位情報(圃場Hの水位など)に基づいて、計画作成部3fが圃場管理計画を変更する必要があるか否かを判断する。或いは、計画作成部3fが、圃場管理計画に含まれるその他の計画(水位検出計画と飛行計画と水管理計画以外の計画)を変更する必要があるか否かを判断する。そして、計画作成部3fは、変更する必要があると判断した計画を、圃場情報又は水位情報に基づいて変更及び更新する。
図8Bの処理S21で、計画作成部3fが水位検出計画を変更する必要がないと判断した場合も(S24:NO)、上述したように処理S24が実行される。また、処理S24の後は、
図8Aの処理S1から以降の処理が繰り返し実行される。
【0144】
<第2実施形態の電気的構成>
図15は、第2実施形態の圃場管理システム7の電気的構成図である。
第2実施形態では、風検出部29dと水位検出部29gとを有する検出装置29が、マルチコプタ2に設けられている。また、補正部21hが、マルチコプタ2の制御装置21に設けられている。
図7に示した第1実施形態の風検出部50d、水位検出部3g、及び補正部3hは、第2実施形態では設けられていない。
検出装置29の風検出部29dは、例えば、マルチコプタ2の機体20aの所定位置に取り付けられた風向風速計から成る。マルチコプタ2の飛行時に、風検出部29dは圃場Hの上空の風向と風速を検出する。補正部21hは、マルチコプタ2の制御装置21に予め記憶されたソフトウェアプログラムから成る。補正部21hは、風検出部29dにより検出された上空の風向と風速を、回転翼20cのロータ20dの回転数又はマルチコプタ2の高度に応じた風補正値に基づいて補正することにより、圃場Hに吹く風の風向と風速を検出する。
【0145】
上記風補正値は、予め実施した実験結果に基づいて設定されて、記憶部21aに記憶される。具体的には、例えば、自然風の影響を受けない飛行体用の屋内飛行練習場において、マルチコプタ2を飛行させて、マルチコプタ2の高度或いはロータ20dの回転数を変えながら、マルチコプタ2をホバリングさせて、風検出部29dにより風向及び風速を測定し、且つマルチコプタ2の下方にある所定の地上位置に設置した風向風速計により風向及び風速を測定する実験を行う。この際、マルチコプタ2の高度とロータ20dの回転数のいずれかを変える度に、当該飛行状態と風検出部29dの測定結果と地上の風向風速計の測定結果とを、パーソナルコンピュータから成る実験用端末装置に取り込む。
【0146】
そして、実験用端末装置において、上記実験結果から、ロータ20dの回転数を設定又は変更する毎に、風検出部29dにより検出された上空の旋回風の風向に対する、地上の風向風速計により検出された地上の旋回風の風向の角度差を演算する。次に、ロータ20dの回転数の変化と上記風向の角度差の変化との相関関係を抽出する。次に、当該相関関係に基づいて、ロータ20dの回転数に応じた上記風向の角度差を第1風向補正値として導出する。そして、ロータ20dの回転数と第1風向補正値との対応関係を示すテーブル、或いはロータ20dの回転数に基づいて第1風向補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データを支援装置3の記憶部3bに記憶させる。
【0147】
また、ローダ20dの回転数を設定又は変更する毎に、風検出部29dにより検出された上空の旋回風の風速に対する、地上の風向風速計により検出された地上の旋回風の風速の差を演算する。次に、ロータ20dの回転数の変化と上記風速の差の変化との相関関係を抽出する。次に、当該相関関係に基づいて、ロータ20dの回転数に応じた上記風速の差を第1風速補正値として導出する。そして、ロータ20dの回転数と第1風速補正値との対応関係を示すテーブル、或いはロータ20dの回転数に基づいて第1風速補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データを支援装置3の記憶部3bに記憶させる。
【0148】
又は、マルチコプタ2の高度を設定又は変更する毎に、風検出部29dにより検出された上空の旋回風の風向に対する、地上の風向風速計により検出された地上の旋回風の風向の角度差を演算する。次に、マルチコプタ2の高度の変化と上記風向の角度差の変化との相関関係を抽出する。次に、当該相関関係に基づいて、マルチコプタ2の高度に応じた上記風向の角度差を第2風向補正値として導出する。そして、マルチコプタ2の高度と第2風向補正値との対応関係を示すテーブル、或いはマルチコプタ2の高度に基づいて第2風向補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データを支援装置3の記憶部3bに記憶させる。
【0149】
また、マルチコプタ2の高度を設定又は変更する毎に、風検出部29dにより検出された上空の旋回風の風速に対する、地上の風向風速計により検出された地上の旋回風の風速の差を演算する。次に、マルチコプタ2の高度の変化と上記風速の差の変化との相関関係を抽出する。次に、当該相関関係に基づいて、マルチコプタ2の高度に応じた上記風速の差を第2風速補正値として導出する。そして、マルチコプタ2の高度と第2風速補正値との対応関係を示すテーブル、或いはマルチコプタ2の高度に基づいて第2風速補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データを支援装置3の記憶部3bに記憶させる。
【0150】
上記のような第1風向補正値と第1風速補正値、又は第2風向補正値と第2風速補正値以外に、風検出部29dにより検出された上空の旋回風の風向と風速を示すベクトルと、地上の風向風速計により検出された地上の旋回風の風向と風速を示すベクトルとに基づいて、風補正値となる風補正ベクトルを求めてもよい。
この場合、具体的には、例えば実験用端末装置において、まず前述した実験結果から、ロータ20dの回転数を設定又は変更する毎に、風検出部29dにより検出された上空の旋回風の風向と風速を示す上空旋回風ベクトルを演算する。また、ロータ20dの回転数を設定又は変更する毎に、地上の風向風速計により検出された地上の旋回風の風向と風速を示す地上旋回風ベクトルを演算する。次に、上空旋回風ベクトルと合成することにより、地上旋回風ベクトルとなる第1補正ベクトルを第1風補正値として演算する(上空旋回風ベクトル+第1補正ベクトル=地上旋回風ベクトル)。そして、ロータ20dの回転数と第1風補正値との対応関係を示すテーブル、或いはロータ20dの回転数に基づいて第1風補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データをマルチコプタ2の記憶部21aに記憶させる。
【0151】
又は、マルチコプタ2の高度を設定又は変更する毎に、風検出部29dにより検出された上空の旋回風の風向と風速を示す上空旋回風ベクトルを演算する。また、マルチコプタ2の高度を設定又は変更する毎に、地上の風向風速計により検出された地上の旋回風の風向と風速を示す地上旋回風ベクトルを演算する。次に、上空旋回風ベクトルと合成することにより、地上旋回風ベクトルとなる第2補正ベクトルを第2風補正値として演算する(上空旋回風ベクトル+第2補正ベクトル=地上旋回風ベクトル)。そして、マルチコプタ2の高度と第2風補正値との対応関係を示すテーブル、或いはマルチコプタ2の高度に基づいて第2風補正値を求める演算式を作成し、当該テーブル或いは演算式を示す補正データをマルチコプタ2の記憶部21aに記憶させる。
【0152】
圃場管理システム7の運用時には、マルチコプタ2の飛行時(ホバリング時)に、風検出部29dが圃場Hの上空の風向及び風速を検出し、当該検出時のロータ20dの回転数又はマルチコプタ2の高度を、制御部21又はアクチュエータ22から取得する。そして、補正部21hが、ロータ20dの回転数に応じた風補正値(第1風向補正値と第1風速補正値、或いは第1風補正値)、又はマルチコプタ2の高度に応じた風補正値(第2風向補正値と第2風速補正値、或いは第2風補正値)を記憶部21aから読み出し、当該風補正値で風検出部29dにより検出された風向と風速を示す風検出値を補正することにより、圃場Hに吹く風の風向と風速を検出する。
【0153】
詳しくは、風補正値として、例えば第1風向補正値と第1風速補正値、又は第2風向補正値と第2風速補正値が設定されている場合、補正部21hは、ロータ20dの回転数に応じた第1風向補正値と第1風速補正値、又はマルチコプタ2の高度に応じた第2風向補正値と第2風速補正値を記憶部21aから読み出す。そして、補正部21hは、風検出部29dにより検出された風向と風速に、上記風向補正値(第1風向補正値又は第2風向補正値)と上記風速補正値(第1風速補正値又は第2風速補正値)をそれぞれ加算することにより、圃場Hに吹く風の風向と風速を検出する。
【0154】
或いは、風補正値として、例えば第1風補正値(第1補正ベクトル)又は第2風補正値(第2補正ベクトル)が設定されている場合、補正部21hは、ロータ20dの回転数に応じた第1風補正値、又はマルチコプタ2の高度に応じた第2風補正値を記憶部21aから読み出す。そして、補正部21hは、風検出部29dにより検出された風向と風速を示す上空風検出値(上空風ベクトル)と、上記第1風補正値又は第2風補正値を合成することにより、圃場Hに吹く風の風向と風速(地上風ベクトル)を検出する。
【0155】
それから、補正部21hは、上述のように検出した圃場Hに吹く風の風向と風速を示す風検出値を、当該検出時に基づいたロータ20dの回転数及びマルチコプタ2の高度、並びに当該検出時のマルチコプタ2の位置情報を含む飛行情報と関連付けて記憶部21aに記憶させる。上記以外の第2実施形態の各部の動作は、第1実施形態の各部の動作と同様である。
【0156】
他の例として、マルチコプタ2に風向風速計を搭載せず、ソフトウェアプログラム又はICなどから成る風検出部を、制御装置21に設けてもよい。この場合、制御装置21に設けた風検出部は、圃場Hの上空でのマルチコプタ2のホバリング時に、マルチコプタ2に搭載された慣性計測装置22bにより計測された機体20aの姿勢(傾斜角と傾斜方位)に基づいて、圃場Hの上空に吹く風を検出する。
【0157】
詳しくは、一般に、マルチコプタ2は上空でのホバリング時に、風上に正対するように、機体20aを傾けて定位置を保っている。そして、ホバリング時のマルチコプタ2の機体20aの傾きの大きさ(傾斜角)は、上空に吹く風の風速に依存し、機体20aの傾斜方向は、上空に吹く風の風向に依存する。このため、上記制御装置21に設けた風検出部は、慣性計測装置22bにより計測された機体20aの傾斜方向から、上空の風向を検出する。また、当該風検出部は、慣性計測装置22bにより計測された機体20aの傾斜角を、予め導出されたマルチコプタ2の傾斜角と風速の関係式に当てはめることで、上空の風速を検出する。
【0158】
水位検出部29gは、例えば機体20aの所定位置に取り付けられたレーザレーダなどから成る。この場合、圃場Hの所定位置の水面には、反射部材を設ける。なお、反射部材を水面に浮かぶ浮きに設け、当該浮きにアンカ(錘)を連結して、当該浮きと反射部材の圃場H内での移動を制限するのが好ましい。水位検出部29gの投光部から圃場Hの水面に向かって測定光(レーザ光)を投光し、当該測定光の反射部材での反射光を水位検出部29gの受光部で受光する。水位検出部29gは、測定光を投光してから、反射部材での反射光を受光するまで時間に基づいて、反射部材までの距離を測定する(TOF(Time Of Flight)方式)。そして、水位検出部29gは、反射部材までの距離と、予め記憶された圃場Hの基準面(例えば土壌面)までの距離とに基づいて、圃場Hの所定位置の水位を検出する。
【0159】
また、水位検出部29gをグリーンレーザスキャナなどで構成してもよい。グリーンレーザスキャナは、投光部から測定光として緑色レーザ光を投光する。当該緑色レーザ光は、水面と水面以外の物体で反射するとともに、水を透過して水底で反射する。グリーンレーザスキャナは、測定光を投光してから、当該測定光の水面での反射光を受光部で受光するまでの時間と、当該測定光の水底での反射光を受光部で受光するまでの時間との差に基づいて、水深を検出することが可能である。このようなグリーンレーザスキャナで構成された水位検出部29gは、圃場Hの所定位置の水位を検出する。
【0160】
また、他の例として、第1実施形態の水位検出部3gと同様に、撮像装置28などにより撮像した画像データから圃場Hの水位を検出するソフトウェアプログラムから成る水位検出部を、制御装置21に設けてもよい。
補正部21hは、水位検出部29gにより検出された圃場Hの所定位置の水位を、風検出部29dにより検出された圃場Hの風検出値(風情報)に基づいて補正し、当該補正後の所定位置の水位を記憶部21aに記憶させる。また、補正部21hは、水位を補正する際に用いた関連情報(水位検出値、補正値、風情報、及び位置情報など)を、補正後の水位と関連付けて、水位情報として記憶部21aに記憶させる。制御装置21は、記憶部21aに記憶された水位情報を、通信装置23などにより支援装置3に付与する。
【0161】
この後、支援装置3の決定部3iが、マルチコプタ2から取得した水位情報に含まれる補正後の所定位置の水位に基づいて、所定位置の水位及び圃場Hの全体水位を決定する。また、推定部3jが、他の所定位置の水位を推定する。さらに、支援装置3において、第1実施形態と同様に、圃場Hの水位に基づいて圃場Hに対する給排水の要否が判断され、当該判断結果に応じて水管理装置1が圃場Hに対して給水又は排水を行う。また、支援装置3において、水位検出計画が見直され、必要に応じて水位検出部29gによる水位の検出頻度及び検出位置などが変更され、マルチコプタ2の飛行計画及び圃場管理計画に含まれるその他の計画も変更される。
【0162】
<他の複数の圃場への適用例>
図16は、他の複数の圃場Hの平面図である。
前述した実施形態の圃場管理システム7は、
図16に示すような複数の圃場Hにも適用可能である。
図16に示す複数の圃場Hには、水管理装置1のような、自動で給排水を行う装置(又は自動給水栓)が設けられていない。複数の圃場Hの周辺には、各圃場Hに対して配水するための配水路201~203が設けられている。配水路201~207の上方は開放されていて、配水路201~207における水の流れが上方から視認可能になっている。
図16に矢印で示すように、各配水路201~207には水が流れる。
【0163】
詳しくは、複数の配水路201~207のうち、第1配水路201から第2配水路202及び第5配水路205に水が流れる。第2配水路202から第3配水路203及び第4配水路204に水が流れる。第5配水路205から第6配水路206及び第7配水路207に水が流れる。第2配水路202は、第5配水路205より上流に設けられている。第3配水路203は、第4配水路204より上流に設けられている。第6配水路206は、第7配水路207より上流に設けられている。
【0164】
配水路201~207同士の接続箇所には、手動で開閉させる配水栓211~216が設けられている。配水栓211と配水栓214が開放されることで、水が第1配水路201から第2配水路202と第5配水路205に流れる。そして、配水栓212と配水栓213が開放されることで、水が第2配水路202から第3配水路203と第4配水路204に流れて、上流側の圃場群Ha、Hbに属する各圃場Hに水が供給される。また、配水栓215と配水栓216が開放されることで、水が第5配水路205から第6配水路206と第7配水路207に流れて、下流側の圃場群Hc、Hdに属する各圃場Hに水が供給される。
図16では、矩形状で示す部分が圃場Hであり、便宜上、一部の圃場Hにのみ符号を付している。
【0165】
配水栓212、213、215、216が閉塞されることで、水が配水路202、205から配水路203、204、206、207に流れなくなり、圃場群Ha、Hb、Hc、Hdに属する各圃場Hに水が供給されなくなる。また、配水栓211、214が閉塞されても、圃場群Ha、Hb、Hc、Hdに属する各圃場Hに水が供給されなくなる。
配水路201~207及び圃場群Ha~Hdの上空でマルチコプタ2を飛行させて、撮像装置28により空撮する。そして、撮像装置28の画像データが支援装置3の取得部3eにより取得されると、計画作成部3fが、当該画像データに基づいて水位検出計画を変更する。
【0166】
具体的には、例えば計画作成部3fは、撮像装置28の画像データを画像解析して、各配水路201~207に水が流れているか否かという配水状態を検出する。次に、計画作成部3fは、各配水路201~207の配水状態に基づいて、圃場群Ha、Hb、Hc、Hdに給水されているか否かという給水状態を検出する。
そして、計画作成部3fは、給水されていない圃場群に属する圃場Hの水位の検出頻度を低く(検出周期を長く)設定し、給水されている圃場群に属する圃場Hの水位の検出頻度を高く(検出周期を短く)設定する。この場合、その後計画作成部3fは、各圃場Hにおいて、水位検出部などによる水位検出値(補正前又は補正後の水位)と、当該圃場Hの前回の水位検出値との差(水位変動値)が所定の閾値以上であれば、水位の検出頻度を高く変更する。また、計画作成部3fは、各圃場Hにおいて、水位検出部などによる水位検出値と、当該圃場Hの前回の水位検出値との差が所定の閾値未満であれば、水位の検出頻度を低く変更する。圃場Hの水位の検出は、前述した水位検出部3g、29g、49gの少なくとも一方を用いて行えばよい。
【0167】
また、計画作成部3fは、給水されている圃場群において、最も上流側に位置する圃場Hの水位だけを検出するように、水位の検出位置を設定してもよい。この場合、その後計画作成部3fは、最も上流側に位置する圃場Hの水位検出値と、当該圃場Hの前回の水位検出値との差が所定の閾値以上であれば、同一圃場群に属する他の圃場Hの水位も検出するように、水位の検出位置を変更する。さらにその後、計画作成部3fは、同一圃場群に属する各圃場Hにおいて、水位検出部などによる水位検出値と、当該圃場Hの前回の水位検出値との差が所定の閾値未満であれば、当該圃場Hの水位を検出しないように、水位の検出位置を変更する。
【0168】
上記のような水位検出計画の作成又は変更に伴って、計画作成部3fは、マルチコプタ2の飛行計画(飛行ルート及び飛行スケジュール)を作成又は変更し、マルチコプタ2の飛行を制限する。なお、同一のマルチコプタ2を用いて配水路201~207の監視と圃場Hの監視(水位検出などのため)とを行ってもよいし、又は配水路201~207の監視と圃場Hの監視とを別々のマルチコプタを用いて行ってもよい。
図16に示す例では、配水路の配水状態に基づいて、圃場Hの水位の検出頻度又は検出位置を変更しているが、圃場Hから水が排出される排水路の水が流れる状態に基づいて、計画作成部3fが圃場Hの水位の検出頻度又は検出位置を変更してもよい。
【0169】
<その他の実施形態>
以上の実施形態では、支援装置3又はマルチコプタ2に水位検出部3g、29gを設けたが、
図17に示すように、圃場Hに水位検出部として水位センサ49gを設けてもよい。
図17に示す水位センサ49gは、圃場Hの所定位置に設置され、当該所定位置の水位を検出する。
図17では、水位センサ49gを1つだけ示しているが、水位センサ49gは圃場Hの水位を検出する所定位置の数に応じて、適宜数設置される。
【0170】
図17に示す例では、水位センサ49gは、圃場Hの所定位置の水位検出値を有線又は無線で水管理装置11に送信する。水管理装置1は、水位センサ49gから水位検出値を受信すると、当該水位検出値と、当該水位検出値が検出された位置(予め記憶された水位センサ49gの設置位置)を示す位置情報とを関連付けて、支援装置3又はマルチコプタ2に送信する。支援装置3又はマルチコプタ2では、水管理装置1から受信した水位検出値を、補正部3h、21hが圃場Hの風情報に基づいて補正する。なお、水位検出値を補正する補正部を、水管理装置1に設けてもよい。
【0171】
また、水位センサ49g以外にも、圃場Hの気温、湿度、風状態、又はその他の所定現象を検出する各種センサなどの検出部を有するセンサユニットを、圃場Hの所定位置に設置して、当該センサユニットの各検出部の検出結果を有線又は無線で水管理装置1に送信してもよい。この場合、水管理装置1から検出装置50又は監視カメラ80を省略してもよい。
【0172】
また、水位検出部3g、29gの少なくとも一方と、水位センサ49gとを併用してもよい。この場合、マルチコプタ2を飛行させることにより水位検出部3g、29gが検出可能な圃場Hの第1水位(撮像装置28の画像データに基づく水位検出部3gの水位検出値又は水位検出部29gの水位検出値)と、マルチコプタ2を飛行させなくても水位検出部3g、49gが検出可能な圃場Hの第2水位(監視カメラ80の画像データに基づく水位検出部3gの水位検出値又は水位センサ49gの水位検出値)とを、計画作成部3fが比較してもよい。そして、計画作成部3fが、当該比較結果に基づいて、計画作成部3fが水位の検出頻度又は検出位置などを変更し、さらにマルチコプタ2の飛行計画を変更してもよい。
【0173】
また、他の例として、水位検出部3g、29g、49gのうちの少なくともいずれか2つを用い、そのうち一方の水位検出部の水位検出値を優先値とし、他方の水位検出部の水位検出値をバックアップ値としてもよい。また、マルチコプタ2に水位検出部29gと、撮像装置28により空撮された画像データに基づいて圃場Hの水位を検出する水位検出部とを、両方とも設けてもよい。
【0174】
また、圃場H(水管理装置1)に風検出部50dを設けるとともに、マルチコプタ2に風検出部29dを設け、両方の風検出部50d、29dが検出した風向又は風速などに基づいて、支援装置3の制御部3aが圃場Hの風の状態(風向又は風速)を決定してもよい。そして、補正部3h、21hが、決定された風の状態に基づいて、水位検出部3g、29g、49gにより検出された圃場Hの水位を補正してもよい。
【0175】
また、他の例として、風検出部50d、29dを両方とも用い、そのうち一方の風検出部の風検出値を優先値とし、他の風検出部の風検出値をバックアップ値としてもよい。
また、支援装置3から取得部3e、計画作成部3f、水位検出部3g、補正部3h、決定部3i、推定部3j、又は制御部3aを省略し、これらと同一機能を有する取得部、計画作成部、水位検出部、補正部、決定部、推定部、又は制御部を、水管理装置1若しくはマルチコプタ2に設けてもよい。この場合、マルチコプタ2と水管理装置1とを通信させたり、マルチコプタ2又は水管理装置1で補正後の圃場Hの水位に基づいて、圃場Hの給排水の要否を判断したりして、圃場管理システム7から支援装置3を省略してもよい。
【0176】
また、支援装置3を設けずに、取得部3e、計画作成部3f、水位検出部3g、補正部3h、決定部3i、推定部3j、又は制御部3aと同一機能を有するアプリケーションプログラムをクラウド上に設けてもよい。
また、監視カメラ80の画像データに基づいて水位検出部3gで圃場Hの水位を検出したり、圃場Hに設置された水位センサ49gで圃場Hの水位を検出したりする場合は、圃場管理システム7からマルチコプタ2を省略してもよい。
【0177】
また、マルチコプタ2に代えて、圃場Hの水面、水中、若しくは水底を移動可能な小型のロボット、又は圃場Hの周囲に設けられた複数の水管理装置1若しくは柵に渡って設置されたワイヤロープ若しくはレールに沿って移動可能な機械などの移動体に、水位センサ若しくはレーザスキャナのような水位検出部、又は監視カメラのような監視部などを設けて、圃場Hの所定位置の水位を検出してもよい。この場合、移動体に測位装置などの位置検出部を設けたり、水管理装置1の監視カメラ80で撮像した画像データに基づいて移動体の位置を検出したりすればよい。また、移動体の水位検出部で検出された水位或いは移動体のカメラで撮像した画像データを、水管理装置1又は支援装置3に送信可能な通信部を移動体に設ければよい。
【0178】
また、圃場管理システム7により管理する圃場Hの給水栓又は排水栓を、農作業者が手動で開閉する場合は、支援装置3から農作業が保有する端末装置4に、給水指令又は排水指令を送信すればよい。
また、人工知能(AI)を用いて、圃場Hの風の状態に応じた水位の変動傾向を判断して、圃場Hの水位を検出したりしてもよい。具体的には、例えば、作物Uの生育に要する所定期間に水位検出計画に基づいて、風検出部50d、29dなどにより圃場Hの風向又は風速などを検出し、水位検出部3g、29g、49gと補正部3h、21hなどにより圃場Hの水位(補正前と補正後の水位)を検出し、当該風検出値と水位検出値とを関連付けて支援装置3又はクラウド上に設けたデータベースに記憶させる。そして、支援装置3又はクラウド上に設けた人工知能により、データベースから風検出値と水位検出値を読み出して、深層学習を実行し、圃場Hに吹く風に応じた水位の変動傾向を学習済みモデルとして構築する。その後、制御部3aが、学習済みモデルと、風検出部50d、29dなどで検出された風検出値と、水位検出部3g、29g、49gなどで検出された水位検出値とに基づいて、風の影響を受けていない場合の圃場Hの所定位置の水位又は全体の水位を検出する。
【0179】
また、人工知能を用いて、圃場情報の変化に応じて、圃場Hの水位などの所定現象の検出計画を変更してもよい。具体的には、例えば、作物Uの生育に要する所定期間に水位検出計画に基づいて、支援装置3の取得部3eにより圃場Hの外形、大気、給排水、又は作物Uなどの状態を示す圃場情報を取得し、水位検出部3g、29g、49gなどにより圃場Hの水位(補正前又は補正後の水位)を検出して、当該圃場情報と水位検出値とを関連付けて支援装置3のデータベースに記憶させる。そして、支援装置3に設けた人工知能により、データベースから圃場情報と水位検出値とを読み出して、深層学習を実行し、圃場情報に応じた水位の変動傾向を学習済みモデルとして構築する。その後、制御部3aが、学習済みモデルと、取得部3eにより取得された圃場情報と、水位検出部3g、29g、49gなどで検出された水位検出値とに基づいて、圃場Hの水位の検出頻度又は検出位置などを変更する。
【0180】
さらに、以上の実施形態では、圃場Hに吹く風の状態に基づいて圃場Hの水位を補正した例を示したが、本発明は、圃場の水位以外の気温、湿度、又は水温などのような、風の影響を受けて変動する所定現象の検出結果を、圃場の風向、風速、又は風量などを示す風情報に基づいて補正してもよい。また、圃場Hの水位以外の所定現象の検出頻度、検出位置、又は検出手順などの検出計画を、圃場情報、水位情報、又は風情報などに基づいて変更してもよい。また、本発明は、圃場Hの水管理だけでなく、圃場Hに肥料又は薬剤を散布するなどの他の農作業を行うタイミングを所定現象の検出結果などに基づいて設定して、作物U又は土壌などを管理する場合にも適用可能である。
【0181】
<本実施形態の構成と効果>
本実施形態の圃場管理システム7は、以下の構成を有し、効果を奏する。
<所定現象の検出結果の補正に関して>
本実施形態の圃場管理システム7は、圃場Hに吹く風の状態を検出する第1検出部(風検出部)50d、29dと、圃場Hの風以外の所定現象の状態を検出する第2検出部3g、29g、49g(水位検出部3g、29g、水位センサ49g)と、第1検出部50d、29dの検出結果に基づいて、第2検出部3g、29g、49gの検出結果を補正する補正部3h、21hとを備える。これにより、圃場Hに風が吹いても、圃場Hの所定現象の状態の検出精度を向上させ、当該検出結果に基づいて圃場Hを適切に管理することができる。
【0182】
また、本実施形態の圃場管理システム7は、圃場Hに設置された水管理装置1であって、補正部3h、21hにより補正された後の第2検出部3g、29g、49gの検出結果に基づいて、圃場Hに対して水を供給する給水動作又は前記圃場から水を排出する排水動作を実行する水管理装置1を備える。これにより、風の影響を受けていない圃場Hの所定現象の状態の精度良い検出結果に基づいて、水管理装置1で圃場Hに対して給水又は排水をすることができ、圃場Hの水管理を適切に行うことが可能となる。
【0183】
また、本実施形態では、第1検出部50d、29dは、圃場Hに吹く風の風向又は風速を検出し、第2検出部3g、29g、49gは、圃場Hの水位を検出し、補正部3h、21hは、第1検出部50d、29dにより検出された風向又は風速に基づいて、第2検出部3g、29g、49gにより検出された水位を補正する。これにより、圃場Hに吹く風の風向又は風速の影響を受けずに、圃場Hの水位を精度良く検出することができ、圃場Hを適切に管理することが可能となる。
【0184】
また、本実施形態では、第2検出部3g、29g、49gは、圃場Hに1か所以上設定された所定位置の水位を検出し、補正部3h、21hは、第2検出部により検出された所定位置の水位を、当該所定位置と第1検出部50d、29dにより検出された風向又は風速とに基づいて補正し、圃場管理システム7は、補正部3h、21hにより補正された後の水位に基づいて圃場Hの水位を決定する決定部3iを備える。これにより、圃場Hの水位の検出精度をより向上させて、圃場Hをより適切に管理することができる。
【0185】
また、本実施形態の圃場管理システム7は、圃場Hの周辺を移動することで、第2検出部3g、29gによる所定手順での圃場Hの水位の検出を可能にする移動体(マルチコプタ)2を備える。
上記により、水位センサなどの電気的な水位検出手段を圃場Hに設置しなくても、第2検出部3g、29gと補正部3h、21hにより圃場Hの水位を精度良く検出することができる。加えて、電気的な水位検出手段と、当該水位検出手段に対して電力や信号を入出力するための電気配線とを圃場Hに設置するのにかかるコストを削減することができる。特に、多数の圃場Hを管理する場合には、各圃場Hの周辺に移動体2を移動させることで、第2検出部3g、29gと補正部3h、21hにより各圃場Hの水位を検出することができるので、従来用いていた多数の電気的な水位検出手段とこれの電気配線を省いて、多額のコストを削減し、当該水位検出手段の調整にかかる手間をなくすことが可能となる。さらに、電気的な水位検出手段と電気配線と移動体2とを圃場Hに常時設置しなくても、第2検出部3g、29gと補正部3h、21hにより圃場Hの水位を検出することができるので、圃場Hで農作業を行う際に、水位検出手段と電気配線と移動体2とが邪魔になるのを防ぐことが可能となる。一方、水位センサ49gを圃場Hに設置し、水位センサ49gと第2検出部3g、29gとを併用する場合には、当該検出部3g、29g、49gと補正部3h、21hにより異なる複数の態様で圃場Hの水位を精度良く検出することができる。加えて、一方の検出態様で不具合が生じても、他方の検出態様で圃場Hの水位を確実に検出することができる。
【0186】
また、本実施形態では、移動体2は、圃場Hの上空を飛行可能な飛行体(マルチコプタ)2から成り、圃場管理システム7は、飛行体2又は圃場Hに設けられて当該圃場Hを監視する監視部28、80(撮像装置28、監視カメラ80)を備え、第2検出部3gは、監視部28、80の監視結果に基づいて、圃場Hに1か所以上設定された所定位置の水位を検出する。
【0187】
上記により、飛行体2に設けた監視部28の監視結果に基づいて、第2検出部3gと補正部3hにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、飛行体2を圃場Hの上空の任意の位置に飛行させて、圃場Hの所定位置の水位を間接的に精度良く検出することができる。また、圃場Hに設けた監視部80の監視結果に基づいて、第2検出部3gと補正部3hにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、飛行体2を飛行させずに、圃場Hの所定位置の水位を間接的に精度良く検出して、飛行体2及びこれの飛行にかかるコストと手間を削減することができる。また、圃場Hに設置した水管理装置1に監視部80を設けた場合には、水管理装置1の電源装置41から監視部80に電力を容易に供給して、監視部80を保護することができる。さらに、飛行体2と圃場Hに設けた監視部28、80の監視結果に基づいて、第2検出部3gと補正部3hにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、異なる複数の態様で圃場Hの水位を精度良く検出することができる。加えて、一方の検出態様で不具合が生じても、他方の検出態様で圃場Hの水位を確実に検出することができる。
【0188】
また、本実施形態では、移動体2は、圃場Hの上空を飛行可能な飛行体2から成り、第2検出部29g、49gは、飛行体2又は圃場Hに設けられて当該圃場Hに1か所以上設定された所定位置の水位を検出する。
上記により、飛行体2に設けた第2検出部29g(レーザレーダ又はグリーンレーザスキャナ)と補正部21hにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、飛行体2を圃場Hの上空の任意の位置に飛行させて、圃場Hの所定位置の水位を間接的又は直接的に精度良く検出することができる。また、圃場Hの所定位置に設けた第2検出部49g(水位センサ)と補正部3hにより所定位置の水位を検出する場合には、飛行体2を飛行させずに、圃場Hの所定位置の水位を直接的に精度良く検出して、飛行体2及びこれの飛行にかかるコストと手間を削減することができる。さらに、飛行体2と圃場Hにそれぞれ設けた第2検出部29g、49gと補正部21h、3hにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、異なる複数の態様で圃場Hの水位を精度良く検出することができる。加えて、一方の検出態様で不具合が生じても、他方の検出態様で圃場Hの水位を確実に検出することができる。
【0189】
また、本実施形態では、飛行体2が圃場Hの上空を飛行することにより、第2検出部3g、29gが所定手順で検出可能な圃場Hの第1水位と、飛行体2が圃場Hの上空を飛行しなくても、第2検出部3g、49gが別の所定手順で検出可能な圃場Hの第2水位のうち、少なくとも一方の水位、或いは第1水位と第2水位とに基づいて決定された水位を、補正部3h、21hが補正する。これにより、第2検出部3g、29g、49gと補正部3h、21hにより異なる複数の態様で圃場Hの水位を一層精度良く検出することができる。また、一方の検出態様で不具合が生じても、他方の検出態様で圃場Hの水位を確実に検出することができる。
【0190】
また、本実施形態の圃場管理システム7は、第2検出部3g、29g、49gにより検出された後に補正部3h、21hにより補正された圃場Hの水位に基づいて、第2検出部3g、29g、49gによる水位の検出頻度又は検出位置を変更し、当該変更に応じて飛行体2の飛行を制限可能な変更部(計画作成部)3fを備える。これにより、圃場Hの水位を効率良く検出することができるとともに、飛行体2を効率良く飛行させることができる。即ち、圃場Hの水位の無駄な検出と、飛行体2の無駄な飛行とを抑制することができる。
【0191】
また、本実施形態では、補正部3h、21hは、飛行体2の飛行状態に応じた所定の水位補正値に基づいて、第2検出部3g、29g、49gにより検出された水位を補正する。これにより、飛行体2が圃場Hの上空を飛行することによって生じる風(自然風ではなく、マルチコプタ2のブレード20eの回転により生じる旋回風)の影響を受けずに、圃場Hの水位を精度良く検出することができる。
【0192】
また、本実施形態では、第1検出部29dは、飛行体2に設けられ、補正部21hは、飛行体2の飛行状態に応じた所定の風補正値に基づいて、第1検出部29dにより検出された圃場Hの風の風向又は風速を補正する。これにより、飛行体2が圃場Hの上空を飛行することによって生じる風の影響を受けずに、圃場Hに吹く風の風向又は風速を精度良く検出することができる。そして、その風向又は風速の精度の良い検出結果に基づいて、補正部21h、3hが第2検出部29g、3g、49gで検出された水位を補正することで、圃場Hの水位を一層精度良く検出することができる。
【0193】
さらに、本実施形態では、圃場Hに設置された水管理装置1及び飛行体2と通信可能な支援装置3を備え、支援装置3は、第2検出部3g、29g、49gにより検出された後に補正部3h、21hにより補正された水位に基づいて、水管理装置1に給水指令又は排水指令を送信し、水管理装置1は、支援装置3から受信した給水指令又は排水指令に基づいて、圃場Hに対して給水又は排水を行う。これにより、水管理装置1と飛行体2と支援装置3とを連携させて、圃場Hの水位の検出精度を向上させ、圃場Hの水管理を適切に行うことができる。
【0194】
<所定現象の検出計画の変更に関して>
本実施形態の圃場管理システム7は、圃場Hの状態を示す圃場情報を取得する取得部3eと、圃場Hの圃場情報に含まれない所定現象の状態を検出する検出部3g、29g、49g(水位検出部3g、29g、水位センサ49g)と、検出部3g、29g、49gによる所定現象の検出計画を圃場情報に基づいて変更する変更部(計画作成部)3fとを備える。これにより、圃場Hの状態に応じて、圃場の所定現象の検出計画が変更されるので、当該所定現象の状態の検出精度の低下と無駄な検出を抑制して、当該所定現象の状態の検出効率を向上させ、圃場Hを適切に管理することができる。
【0195】
また、本実施形態では、変更部3fは、圃場情報に基づいて検出計画に含まれる所定現象の検出頻度又は検出位置を変更する。これにより、圃場Hの状態に応じて、圃場の所定現象の検出頻度又は検出位置が変更されるので、当該所定現象の状態の検出精度の低下と無駄な検出を抑制して、当該所定現象の状態の検出効率を向上させ、圃場Hを適切に管理することができる。
【0196】
また、本実施形態の圃場管理システム7は、圃場Hに設置された水管理装置1であって、検出部3g、29g、49gの検出結果に基づいて、圃場Hに対して水を供給する給水動作又は圃場Hから水を排出する排水動作を実行する水管理装置1を備える。これにより、精度の低下が抑制されて効率良く検出された圃場Hの所定現象の状態の検出結果に基づいて、水管理装置1で圃場Hに対して給水又は排水をすることができ、圃場Hの水管理を適切に行うことが可能となる。
【0197】
また、本実施形態では、圃場情報には、圃場Hの外形、大気、給排水、又は作物Uの状態を示す情報が含まれている。これにより、圃場Hの外形、大気、給排水、又は作物Uの状態の変化に応じて、圃場の所定現象の検出計画が変更されるので、当該所定現象の状態の検出精度の低下と無駄な検出を抑制して、当該所定現象の状態の検出効率を向上させることができる。
【0198】
また、本実施形態では、検出部3g、29g、49gは、圃場Hの水位を検出し、変更部3fは、圃場情報に基づいて圃場Hの水位変動の傾向と大きさを判断し、当該判断結果に応じて検出計画に含まれる検出部による水位の検出頻度又は検出位置を変更する。これにより、圃場Hの水位変動の傾向と大きさに応じて、圃場の水位の検出頻度又は検出位置が変更されるので、当該水位の検出精度の低下と無駄な検出を抑制して、当該水位の検出効率をより向上させることができる。
また、本実施形態の圃場管理システム7は、圃場Hの周辺を移動することで、検出部3g、29gによる所定手順での圃場Hの水位の検出を可能にする移動体(マルチコプタ)2を備える。
【0199】
上記により、水位センサなどの電気的な水位検出手段を圃場Hに設置しなくても、検出部3g、29gにより圃場Hの水位を検出することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、当該水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。加えて、電気的な水位検出手段と、当該水位検出手段に対して電力や信号を入出力するための電気配線とを圃場Hに設置するのにかかるコストを削減することができる。特に、多数の圃場Hを管理する場合には、各圃場Hの周辺に移動体2を移動させることで、検出部3g、29gにより各圃場Hの水位を検出することができるので、従来用いていた多数の電気的な水位検出手段とこれの電気配線を省いて、多額のコストを削減し、当該水位検出手段の調整にかかる手間をなくすことが可能となる。さらに、電気的な水位検出手段と電気配線と移動体2とを圃場Hに常時設置しなくても、検出部3g、29gにより圃場Hの水位を検出することができるので、圃場Hで農作業を行う際に、水位検出手段と電気配線と移動体2とが邪魔になるのを防ぐことが可能となる。一方、水位センサ49gを圃場Hに設置して、水位センサ49gと検出部3g、29gとを併用する場合には、当該検出部3g、29g、49gにより異なる複数の態様で圃場Hの水位を検出することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、圃場Hの水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。加えて、一方の検出態様で不具合が生じても、他方の検出態様で圃場Hの水位を確実に検出することができる。
【0200】
また、本実施形態では、移動体2は、圃場Hの上空を飛行可能な飛行体(マルチコプタ)2から成り、圃場管理システム7は、飛行体2又は圃場Hに設けられて圃場Hを監視する監視部28、80(撮像装置28、監視カメラ80)を備え、検出部3gは、監視部28、80の監視結果に基づいて、圃場Hに1か所以上設定された所定位置の水位を検出し、変更部3fは、圃場情報と検出部3gの検出結果とに基づいて、検出計画に含まれる検出部3gによる水位の検出頻度又は検出位置を変更する。
【0201】
上記により、飛行体2に設けた監視部28の監視結果に基づいて、検出部3gにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、飛行体2を圃場Hの上空の任意の位置に飛行させて、圃場Hの所定位置の水位を間接的に検出することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、当該水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。また、圃場Hに設けた監視部80の監視結果に基づいて、検出部3gにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、飛行体2を飛行させずに、圃場Hの所定位置の水位を間接的に検出して、飛行体2及びこれの飛行にかかるコストと手間を削減することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、当該水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。また、圃場Hに設置した水管理装置1に監視部80を設けた場合には、水管理装置1の電源装置41から監視部80に電力を容易に供給して、監視部80を保護することができる。さらに、飛行体2と圃場Hにそれぞれ設けた監視部28、80の監視結果に基づいて、検出部3gにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、異なる複数の態様で圃場Hの水位を検出することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、当該水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。加えて、一方の検出態様で不具合が生じても、他方の検出態様で圃場Hの水位を確実に検出することができる。
【0202】
また、本実施形態では、移動体2は、圃場Hの上空を飛行可能な飛行体2から成り、検出部29g、49gは、飛行体2又は圃場Hに設けられて圃場Hに1か所以上設定された所定位置の水位を検出し、変更部3fは、圃場情報と検出部の検出結果とに基づいて、検出計画に含まれる検出部29g、49gによる水位の検出頻度又は検出位置を変更する。
上記により、飛行体2に設けた検出部29g(レーザレーダ又はグリーンレーザスキャナ)により圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、飛行体2を圃場Hの上空の任意の位置に飛行させて、圃場Hの所定位置の水位を間接的又は直接的に検出することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、当該水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。また、圃場Hの所定位置に設けた検出部(水位センサ)49gにより所定位置の水位を検出する場合には、飛行体2を飛行させずに、圃場Hの所定位置の水位を直接的に検出して、飛行体2及びこれの飛行にかかるコストと手間を削減することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、当該水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。さらに、飛行体2と圃場Hにそれぞれ設けた検出部29g、49gにより圃場Hの所定位置の水位を検出する場合には、異なる複数の態様で圃場Hの水位を検出することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、当該水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。加えて、一方の検出態様で不具合が生じても、他方の検出態様で圃場Hの水位を確実に検出することができる。
【0203】
また、本実施形態では、変更部3fは、飛行体2が圃場Hの上空を飛行することにより、検出部3g、29gが検出可能な圃場Hの所定位置の第1水位と、飛行体2が圃場Hの上空を飛行しなくても、検出部3g、49gが検出可能な圃場Hの所定位置の第2水位とに基づいて、水位の検出頻度又は検出位置を変更する。これにより、検出部3g、29g、49gにより異なる複数の態様で圃場Hの水位を検出することができ、当該水位の検出計画を変更部3fにより変更して、当該水位の検出精度と検出効率を向上させることが可能となる。加えて、一方の検出態様で不具合が生じても、他方の検出態様で圃場Hの水位を確実に検出することができる。
【0204】
また、本実施形態では、変更部3fは、水位の検出頻度又は検出位置の変更に応じて、飛行体2の飛行を制限可能である。これにより、圃場Hの水位を精度良く且つ効率良く検出することができるとともに、飛行体2を効率良く飛行させることができる。即ち、圃場Hの水位の無駄な検出と、飛行体2の無駄な飛行とを抑制することができる。
また、本実施形態では、変更部3fは、水位の検出頻度又は検出位置の変更に応じて、飛行体2の飛行スケジュール又は飛行ルートを変更する。これにより、圃場Hの水位を精度良く且つ効率良く検出することができるとともに、飛行体2をより効率良く飛行させることができる。
【0205】
また、本実施形態の圃場管理システム7は、検出部3g、29g、49gにより検出された所定位置の水位を、圃場情報に基づいて補正する補正部3h、21hと、検出部3g、29g、49gにより検出された水位と補正部3h、21hによる補正後の水位と当該水位の検出位置を示す位置情報とを関連付けて記憶する記憶部3bと、検出部3g、29g、49gにより検出された一方の所定位置(基準位置Pb)の水位と記憶部3bに記憶された前記水位と前記位置情報とに基づいて、他方の所定位置(所定位置Pa、Pc)の水位を推定する推定部3jと、を備える。これにより、圃場Hの所定位置の水位を一層精度良く且つ一層効率良く検出することができる。また、検出部3g、29g、49gにより水位を検出する圃場Hの一方の所定位置と、推定部3jにより水位を推定する他方の所定位置とを、変更部3fで変更することで、圃場Hの所定位置の水位をより一層効率良く検出することができる。
【0206】
また、本実施形態の圃場管理システム7は、圃場Hに設置された水管理装置1及び飛行体2と通信可能な支援装置3を備え、支援装置3は、検出部3g、29g、49gにより検出された水位に基づいて、水管理装置1に給水指令又は排水指令を送信し、水管理装置1は、支援装置3から受信した給水指令又は排水指令に基づいて、圃場Hに対して給水又は排水を行う。これにより、水管理装置1と飛行体2と支援装置3とを連携させて、圃場Hの水位の検出精度と検出効率とを向上させ、圃場Hの水管理を適切に行うことができる。
【0207】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0208】
1 水管理装置
2 マルチコプタ(飛行体、移動体)
3 支援装置
3f 計画作成部(変更部)
3g、29g 水位検出部(第2検出部)
3h、21h 補正部
3i 決定部
7 水管理システム
28 撮像装置(監視部)
29d、50d 風検出部(第1検出部)
49g 水位センサ(水位検出部、第2検出部)
80 監視カメラ(監視部)
H、H1~H5 圃場
Pa、Pb、Pc 所定位置