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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164409
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/26 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
H03F1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069880
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】巽 泰三
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AC41
5J500AC54
5J500AC92
5J500AF17
5J500AH09
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AK09
5J500AK29
5J500AM13
5J500AS01
5J500AT01
5J500LV07
5J500RU03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高周波信号を増幅する増幅回路を備える半導体装置において、外部端子によらずに、安定したNF特性が得られるようにする。
【解決手段】半導体装置において、LNA回路120は、高周波信号が入力される入力端子Rx_inと、高周波信号が増幅された信号が出力される出力端子Rx_outと、第1の電源端子VSSと、第1のトランジスタQ1と、第2のトランジスタQ2と、第2の電源端子Vccと、第1の抵抗素子R501と、を含む。第1のトランジスタのゲート端子とドレイン端子は、第1の抵抗素子を介して接続され、高周波信号の周波数帯域よりも低い低周波数領域にて、第1の抵抗素子のインピーダンスは、第1のトランジスタのゲート端子とドレイン端子間の寄生容量のインピーダンスより低く、第1の抵抗素子のインピーダンスは、第1のトランジスタのゲート端子とソース端子間の寄生容量のインピーダンスより低い。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号が入力される入力端子と、
前記高周波信号が増幅された信号が出力される出力端子と、
第1の電源端子と、
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
第2の電源端子と、
第1の抵抗素子と、
を備え、
前記第1のトランジスタのゲート端子は、前記入力端子と接続され、
前記第1のトランジスタのソース端子は、前記第1の電源端子と接続され、
前記第1のトランジスタのドレイン端子は、前記第2の電源端子と直流的に接続され、また、
前記第1のトランジスタのドレイン端子は、前記出力端子と接続され、
前記第1のトランジスタのゲート端子とドレイン端子は、前記第1の抵抗素子を介して接続され、
前記第2のトランジスタのソース端子は、前記第1の電源端子と接続され、
前記第2のトランジスタのゲート端子とドレイン端子とは第1のノードにて短絡され、前記第1のノードと前記第1のトランジスタのゲート端子とは直流的に接続され、
前記高周波信号の周波数帯域よりも低い低周波数領域にて、
前記第1の抵抗素子のインピーダンスは、前記第1のトランジスタの前記ゲート端子と前記ドレイン端子間の寄生容量のインピーダンスより低く、
前記第1の抵抗素子のインピーダンスは、前記第1のトランジスタの前記ゲート端子と前記ソース端子間の寄生容量のインピーダンスより低い
半導体装置。
【請求項2】
前記高周波信号の周波数帯域にて、
前記第1の抵抗素子のインピーダンスは、前記第1のトランジスタの前記ゲート端子と前記ドレイン端子間の寄生容量のインピーダンスより低い
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2のトランジスタのソース端子と前記第1の電源端子との間に接続される第2の抵抗素子をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとが、同一の半導体基板に形成される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ端子等から入力された高周波信号を増幅するLNA(Low Noise Amplifier)等の増幅回路を備えた半導体装置が広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、無線通信用の増幅回路において、カレントミラー回路を利用して、適切なバイアス信号を増幅回路に供給する構成が開示されている。
【0004】
LNAは、入力信号を増幅して、出力信号として後段の回路に出力する増幅回路である。ここで、LNAの重要な特性として、入力信号と出力信号のSNR(Signal to Noise Ratio)の比を示すNF(Noise Figure)特性、及び発振に対する余裕度を示すK値(K-Factor)がある。所望のNF特性を満たすためには、LNAに適切なバイアス電流を流す必要があるが、バイアス電流は、温度のばらつき、製造ばらつき等の影響を受けるため、従来の半導体装置では、外部端子を用いてバイアス電流を制御していた。
【0005】
NF特性の値は、値が低いほど出力信号に含まれるノイズ成分が低いことを示しており、回路の特性としては好ましい。また、K値は、値が低いほど回路動作が不安定で、回路が発振する可能性が高く、値が大きいほど回路動作が安定していることを示しており、回路の特性としては好ましい。一般的には、K値が1.0を超えると整合回路によらずに発振しないことを示すと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第10158327号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような、外部端子は、実装面積を削減するための妨げとなる。
そこで、本開示は、高周波信号を増幅する増幅回路を備える半導体装置において、外部端子によらずに、安定したNF特性が得られるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る半導体装置は、高周波信号が入力される入力端子と、前記高周波信号が増幅された信号が出力される出力端子と、第1の電源端子と、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第2の電源端子と、第1の抵抗素子と、を備え、前記第1のトランジスタのゲート端子は、前記入力端子と接続され、前記第1のトランジスタのソース端子は、前記第1の電源端子と接続され、前記第1のトランジスタのドレイン端子は、前記第2の電源端子と直流的に接続され、また、前記第1のトランジスタのドレイン端子は、前記出力端子と接続され、前記第1のトランジスタのゲート端子とドレイン端子は、前記第1の抵抗素子を介して接続され、前記第2のトランジスタのソース端子は、前記第1の電源端子と接続され、前記第2のトランジスタのゲート端子とドレイン端子とは第1のノードにて短絡され、前記第1のノードと前記第1のトランジスタのゲート端子とは直流的に接続され、前記高周波信号の周波数帯域よりも低い低周波数領域にて、前記第1の抵抗素子のインピーダンスは、前記第1のトランジスタの前記ゲート端子と前記ドレイン端子間の寄生容量のインピーダンスより低く、前記第1の抵抗素子のインピーダンスは、前記第1のトランジスタの前記ゲート端子と前記ソース端子間の寄生容量のインピーダンスより低い。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、高周波信号を増幅する増幅回路を備える半導体装置において、外部端子によらずに、安定したNF特性が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る半導体装置のブロック図の一例を示す図である。
図2図2は、FETのNF特性とVgsとの関係について説明するための図である。
図3図3は、FETの製造ばらつきによる影響について説明するための図である。
図4図4は、カレントミラー回路を適用したLNA回路の回路構成の例を示す図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態に係るLNA回路の回路構成の例を示す図(1)である。
図5B図5Bは、第1の実施形態に係るLNA回路の回路構成の例を示す図(2)である。
図6図6は、抵抗素子を付加していないFETアンプAの回路の例を示す図である。
図7図7は、抵抗素子を付加していないFETアンプAの等価回路を示す図である。
図8図8は、FETアンプのK値の周波数特性の例を示す図である。
図9図9は、抵抗素子を付加したFETアンプBの回路の例を示す図である。
図10図10は、抵抗素子を付加したFETアンプBの等価回路を示す図(1)である。
図11図11は、抵抗素子を付加したFETアンプBの等価回路を示す図(2)である。
図12図12は、第1の実施形態に係るLNA回路のNF特性のシミュレーション結果の例を示す図である。
図13図13は、第1の実施形態に係るLNA回路のK値のシミュレーション結果の例を示す図である。
図14図14は、第2の実施形態に係るLNA回路の回路構成の例を示す図である。
図15図15は、従来の半導体装置のブロック図の例を示す図である。
図16図16は、従来のLNA回路の回路構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
初めに、本開示の実施形態の概要について説明する。
【0012】
<本開示の実施形態の概要>
(1)本開示の実施形態に係る半導体装置は、高周波信号が入力される入力端子と、前記高周波信号が増幅された信号が出力される出力端子と、第1の電源端子と、第1のトランジスタと、第2のトランジスタと、第2の電源端子と、第1の抵抗素子と、を備え、前記第1のトランジスタのゲート端子は、前記入力端子と接続され、前記第1のトランジスタのソース端子は、前記第1の電源端子と接続され、前記第1のトランジスタのドレイン端子は、前記第2の電源端子と直流的に接続され、また、前記第1のトランジスタのドレイン端子は、前記出力端子と接続され、前記第1のトランジスタのゲート端子とドレイン端子は、前記第1の抵抗素子を介して接続され、前記第2のトランジスタのソース端子は、前記第1の電源端子と接続され、前記第2のトランジスタのゲート端子とドレイン端子とは第1のノードにて短絡され、前記第1のノードと前記第1のトランジスタのゲート端子とは直流的に接続され、前記高周波信号の周波数帯域よりも低い低周波数領域にて、前記第1の抵抗素子のインピーダンスは、前記第1のトランジスタの前記ゲート端子と前記ドレイン端子間の寄生容量のインピーダンスより低く、前記第1の抵抗素子のインピーダンスは、前記第1のトランジスタの前記ゲート端子と前記ソース端子間の寄生容量のインピーダンスより低い。
【0013】
上記の構成により、高周波信号を増幅する増幅回路を備える半導体装置において、外部端子によらずに、安定したNF特性が得られるようになる。例えば、本開示に係る半導体装置によれば、前記第2のトランジスタのゲート幅に対する前記第1のトランジスタのゲート幅の比と、第1の抵抗の抵抗値とにより、第1のトランジスタに流れる第2の電流を、外部端子によらずに決定することができる。また、本実施形態に係る半導体装置は、例えば、製造ばらつき等により、トランジスタの閾値電圧Vthが変動した場合でも、第2の電流の電流値の変動を抑制することができるので、安定したNF(Noise Figure)特性を得ることができる。さらに、本実施形態に係る半導体装置は、第1の抵抗素子により負帰還がかかるため、増幅回路の発振に対する安定度(K値)を向上させることができる。
【0014】
(2)前記高周波信号の周波数帯域にて、前記第1の抵抗素子のインピーダンスは、前記第1のトランジスタの前記ゲート端子と前記ドレイン端子間の寄生容量のインピーダンスより低い。
【0015】
(3)好ましくは、前記半導体装置は、前記第2のトランジスタのソース端子と前記第1の電源端子との間に接続される第2の抵抗素子をさらに備える。
【0016】
半導体装置は、例えば、FETの最小レイアウトの制限等により、第2のトランジスタのゲート幅に対する第1のトランジスタのゲート幅の比が、第1の電流対する第2の電流の比より小さくなってしまう場合がある。このような場合、半導体装置は、第2の抵抗素子の抵抗値を利用して、カレントミラー回路の機能を維持することができる。
【0017】
(4)好ましくは、前記半導体装置は、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとが、同一の半導体基板に形成される。半導体装置は、各回路を同一の半導体基板上に形成する、MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circit)で構成することにより、実装面積を小型化することができる。
【0018】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示に係る半導体装置の実施形態について、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、同一の要素または対応する要素には同一の符号を付し、それらについては説明を省略する場合がある。
【0019】
<従来の半導体装置の構成>
本開示に係る半導体装置100の構成について説明する前に、従来の半導体装置の構成の概要ついて説明する。
【0020】
図15は、従来の半導体装置のブロック図の例を示す図である。半導体装置1は、無線通信装置において、フロントエンド用の回路として用いられ、例えば、SW(Switch)回路10、LNA(Low Noise Amplifier)回路20、及びPA(Power Amplifier)回路30等を有する。
【0021】
SW回路10は、無線通信装置の制御部等から出力される制御電圧Vc1、及びVc2の電圧レベルに応じて、半導体装置1のRF_in/out端子を、LNA回路20、又はPA回路30に、選択的に接続するスイッチである。
【0022】
LNA回路20は、入力端子Rx_in102に入力された受信信号を増幅して、出力端子であるRx_out端子103から、後段の回路に出力する増幅回路である。図15の例では、LNA回路20に流すバイアス電流を外部から変更できるように、外部端子Vbias_1、Vbaias_2が設けられている。
【0023】
PA回路30は、前段の回路から、入力端子であるTx_in端子104に入力される送信信号を増幅して、SW回路10に出力する増幅回路である。図15の例では、PA回路30に流すバイアス電流を外部から調整できるように、外部端子PA_bias1、PA_bias2が設けられている。
【0024】
Vcc端子は、SW回路10、LNA回路20、及びPA回路30等に接続され、各回路に電源電圧を供給する。Vss端子は、SW回路10、LNA回路20、及びPA回路30等に接続され、各回路をグランド電位(回路グランド)に接続する。
【0025】
(従来のLNA回路の構成)
図16は、従来のLNA回路の回路構成の例を示している。図16に示すLNA回路20は、トランジスタTr1で構成される増幅回路と、トランジスタTr2で構成される増幅回路との2段構成になっている。
【0026】
トランジスタTr1、Tr2は、例えば、GaAs(ガリウムヒ素) FET(Field Effect Transistor)、又はGaN(窒化ガリウム) FET等のFETである。トランジスタTr1、Tr2のソース端子は、それぞれ、インダクタ素子L1、L2を介して、グランド電位の電源端子であるVssに接続されている。また、トランジスタTr1、Tr2のドレイン端子は、それぞれ、高周波用のチョークコイルRFC1、RFC2を介して、ドレイン電圧を印加するための電源端子であるVccに接続されている。さらに、トランジスタTr1、Tr2のゲート端子は、それぞれ、高周波用のチョークコイルRFC2、RFC4を介して、ゲート電圧を印加するための外部端子であるVbias_1、Vbias_2に接続されている。
【0027】
整合回路M1~M4は、各増幅回路の入力インピーダンス、又は出力インピーダンスを整合するマッチング回路であり、例えば、遅延線路、インダクタ素子などのパッシブ素子によって構成される。上記の構成により、トランジスタTr1、Tr2は、それぞれ、ゲート端子に入力される入力電力を増幅して、ドレイン端子から出力するソース接地型のFETアンプを構成している。
【0028】
図16に示すLNA回路20では、外部端子Vbias_1、Vbias_2を用いて、外部からトランジスタTr1、Tr2のゲートバイアス電圧を印加している。しかし、実装面積を小型化するためには、外部端子によらずに、例えば、MMIC内の自己バイアス機能により、トランジスタTr1、Tr2のバイアス電流を制御することが望ましい。しかし、従来の技術では、外部端子を用いずに、MMIC内の自己バイアス機能により、温度変化、及び製造ばらつきに対して安定したNF特性を得ることには困難を伴っていた。
【0029】
そこで、本開示では、外部端子によらずに、MMIC内の自己バイアス機能により、安定したNF特性が得られるLNA回路、及びLNA回路を含む半導体装置について開示する。
【0030】
<半導体装置の構成>
図1は、一実施形態に係る半導体装置のブロック図の一例を示す図である。本開示の一実施形態に係る半導体装置100は、例えば、マイクロ波帯(6GHz~90GHz)等の無線通信装置において、フロントエンド用の回路として用いられるMMICである。半導体装置100は、例えば、SW回路110、LNA回路120、及びPA回路130等を有する。ただし、図1に示す半導体装置100の構成は一例である。例えば、半導体装置100は、SW回路110とLNA回路120を有するものであっても良いし、LNA回路120のみを有するもの等であっても良い。
【0031】
SW回路110は、無線通信装置の制御部等から出力される制御電圧Vc1、及びVc2の論理に応じて、半導体装置100のRF_in/out端子101を、LNA回路120、又はPA回路130に選択的に接続する。図1の例では、SW回路110は、RF_in/out端子101をLNA回路120の入力端子Rx_in102に接続している。この場合、RF_in/out端子101は、受信信号を入力する入力端子として機能する。
【0032】
LNA回路120は、LNA回路120の入力端子Rx_in102に入力される受信信号を増幅して、Rx_out端子(出力端子)103から後段の回路に出力する増幅回路である。本開示の一実施形態に係る半導体装置100は、図1に示すように、図15で説明した従来の半導体装置1に設けられていた外部端子Vbias_1、Vbaias_2を有していない。
【0033】
PA回路130は、前段の回路から、Tx_in端子104に入力される送信信号を増幅して、SW回路110に出力する増幅回路である。PA回路130が出力可能な最大電力、及び歪み等の電気的特性は、PA回路130に流すバイアス電流によってそれら特性が変化することが知られている。本開示の一実施形態に係る半導体装置100においても、図1に示すように、PA回路130に流すバイアス電流を外部から調整できるように、外部端子PA_bias1、PA_bias2が設けられている。
【0034】
Vcc端子105は、SW回路10、LNA回路20、及びPA回路30等に接続され、各回路に電源電圧を供給する電源端子(第2の電源端子)である。Vss端子106は、SW回路10、LNA回路20、及びPA回路30等に接続され、各回路をグランド電位(回路グランド)に接続する電源端子(第1の電源端子)である。
【0035】
(LNA回路のNF特性について)
LNA回路120に関する重要な特性として、LNA回路120で発生する雑音の量を示すNF特性、及びLNA回路20の発振に対する余裕度を示すK値(K factor)がある。このうち、NF特性は、LNA回路120を構成するFETに流すバイアス電流によって特性が変化することが知られている。
【0036】
図2は、FETのNF特性とVgsとの関係について説明するための図である。図2に示すグラフにおいて、横軸はソース接地型のFETアンプにおけるFETのソース-ゲート間電圧であるVgsを示している。また、縦軸は、FETのドレイン-ソース間を流れる電流であるIds、及びNF特性の値を示している。図2の実線201で示すように、FETのIdsの値は、Vgsの値が、FETの閾値電圧Vthを超えるあたりから、Vgsの値にほぼ比例して電流値が大きくなる。一方、図2の破線202で示すように、FETのNF特性の値は、Vgsの値がVthを超えるあたりに向かい、Idsの増加に伴ってNF特性の値が小さくなり、Vgsの値がVgs_optを超えるあたりからは、Idsの増加に伴って、NF特性の値が大きくなる。これは、一般的なFETの特性として、Vgsの増加に伴いFETの高周波動作が向上するものの、Vgsの値がある程度大きくなる(=Vgs_opt)と、FETの高周波動作が飽和することから、ゲート雑音係数、及びドレイン雑音係数等のノイズの増加が支配的になることによると考えられる。
【0037】
LNA回路120のNF特性は、無線通信装置の受信感度に大きく影響するため、NF特性の値がより低い値になるように設計することが求められる。具体的には、図2において、NFの値が最小となるバイアス電流Ids_optが流れるように、FETのゲート電圧をVgs_optに設定することが重要になる。しかし、FETは、例えば、製造ばらつき、及び温度依存性等により、閾値電圧Vthが変動する。
【0038】
図3は、FETの製造ばらつきによる影響について説明するための図である。図3は、図2と同様に、横軸がVgs、縦軸がIds、及びNF特性を示している。図3に示すように、FETの製造ばらつきにより、閾値電圧Vthが変動すると、FETのドレイン電流を、NF特性の値が最小となるIds_optに設定するためのゲート電圧Vgs_optが変動する。そのため、ゲート電圧Vgsを一定の値に設定するだけでは、FETの閾値電圧Vthばらつきによって、図3に示すようにNF特性が変動してしまうことになる。従って、LNA回路120は、FETの閾値電圧Vthがばらついても、ドレイン電流Idsの値を、Ids_optに維持する機能を有することが望ましい。
【0039】
特許文献1には、FETの製造ばらつきによるドレイン電流Idsの変動を抑制するために、カレントミラー回路を適用したLNA回路について述べられている。
【0040】
(カレントミラー回路を適用したLNA回路)
図4は、カレントミラー回路を適用したLNA回路の回路構成の例を示す図である。図4に示すLNA回路400において、トランジスタTr1は、ソース接地型のFETアンプを構成しており、入力端子401から入力される信号を増幅して、出力端子402から出力する。トランジスタTr2は、トランジスタTr1とカレントミラー回路を構成するFETであり、ゲート端子及びドレイン端子が、高周波用のチョークコイルRFCを介して、トランジスタTr1のゲート端子に直流的に接続されている。
【0041】
図4において、トランジスタTr2には、式(1)に示すように、Iref端子412から入力されるリファレンス電流Irefと同じドレイン電流Ids2が流れる。
Ids2=Iref ・・・(1)
【0042】
また、トランジスタTr1には、トランジスタTr2のゲート幅に対するトランジスタTr1のゲート幅の比に応じて、トランジスタTr2のドレイン電流Ids2に比例したドレイン電流Ids1が流れる。この関係は、例えば、トランジスタTr1のゲート幅をWg_tr1とし、トランジスタTr2のゲート幅をWg_tr2とすると、次の式(2)で表される。
Wg_tr1/Wg_tr2=Ids1/Ids2 ・・・(2)
【0043】
上記の式(1)、(2)より、リファレンス電流Irefを、Iref端子412に供給することにより、トランジスタTr1のドレイン電流Ids1を、次の式(3)を満たすNF特性の値が最小となるIds_optに設定することができることが判る。
Ids_opt=(Wg_tr1/Wg_tr2)×Iref ・・・(3)
【0044】
なお、式(3)の(Wg_tr1/Wg_tr2)は、分子と分母がそれぞれ製造ばらつきに応じて同じ方向に増減すると想定し、この項は製造ばらつきによらず一定になると仮定する。従って、リファレンス電流Irefの値を一定に維持することができれば、トランジスタTr1のドレイン電流Idsの値を、Ids_optに維持することができる。
【0045】
しかし、この方法では、半導体装置100にIref端子412が外部端子として残る。また、半導体装置100の内部でリファレンス電流Irefを生成するためには、内部回路が増加する。そこで、本開示にかかる半導体装置100は、外部端子によらずに、安定したNF特性が得られるようにするため、以下に示すようなLNA回路を有している。
【0046】
[第1の実施形態]
<LNA回路の構成>
図5Aは、第1の実施形態に係るLNA回路の回路構成の例を示す図(1)である。図5Aに示すLNA回路120は、ソース接地型のFETアンプを構成する第1のトランジスタQ1と、第1のトランジスタQ1とカレントミラー回路を構成する第2のトランジスタQ2とを有する。
【0047】
第1のトランジスタQ1は、例えば、ゲート長60nm~600nm程度、ゲート幅30μm~300μm程度のGaAs FET、又はGaN FET等のFETである。ただし、第1のトランジスタQ1は、上記とは異なる構成のFETであっても良い。第1のトランジスタQ1のゲート端子は、例えば、Rx_in102等の入力端子に接続される。図5A図5Bの例では、第1のトランジスタQ1のゲート端子は、整合回路M501、及び容量素子C501を介して、Rx_in102、又はRF_in/out端子101等の入力端子に接続されている。このように、本開示において、接続されるとは、物理的に接続されている状態に限られず、例えば、他の素子、回路等を介して電気的に接続されている状態を含む。
【0048】
第1のトランジスタQ1のソース端子は、インダクタ素子L501を介して、グランド電位(回路グランド)であるVss端子(第1の電源端子)に接続されている。第1のトランジスタQ1のドレイン端子は、例えば、整合回路M502、及び容量素子C502等を介して、Rx_out端子103等の出力端子に接続されている。また、第1のトランジスタQ1のドレイン端子は、高周波用のチョークコイルRFC501を介して、電源電圧を供給するVcc端子(第2の電源端子)105に直流的に接続されている。さらに、第1のトランジスタQ1のゲート端子とドレイン端子は、第1の抵抗素子R501を介して接続されている。
【0049】
第2のトランジスタQ2は、例えば、第1のトランジスタQ1と同じ半導体基板上に形成され、第1のトランジスタQ1と同じゲート長を持つFETであるが、これに限られない。第2のトランジスタQ2のソース端子は、例えば、Vss端子(第1の電源端子)に接続されている。第2のトランジスタQ2のゲート端子とドレイン端子は短絡され、高周波用のチョークコイルRFC502を介して、第1のトランジスタQ1のゲートに端子に直流的に接続されている。
【0050】
容量素子C501、及びC502は、直流カット用のキャパシタであり、例えば、整合回路M501、又は整合回路M502に含まれていても良い。整合回路M501は、第1のトランジスタQ1で構成されるFETアンプの入力インピーダンスを、Rx_in102等の入力端子の、入力端子側から第1のトランジスタQ1側を見込んだインピーダンスに整合させるマッチング回路である。また、整合回路M502は、第1のトランジスタQ1で構成されるFETアンプの出力インピーダンスを、Rx_out端子103等の出力端子の、第1のトランジスタQ1側から出力端子側を見込んだインピーダンスに整合させるマッチング回路である。整合回路M501、M502は、例えば、遅延線路、インダクタ素子などのパッシブ素子によって構成される。インダクタ素子L501は、第1のトランジスタQ1の利得を設計上で設定するための線路素子等である。
【0051】
図5Aに示すLNA回路120において、第1の抵抗素子R501を流れる電流Ir1は、第1のトランジスタQ1のゲート端子の電圧をVg、Vcc端子105の電圧をVcc、第1の抵抗素子R501の抵抗値をR1とすると、次の式(4)で表される。
Ir1=(Vcc-Vg)/R1 ・・・(4)
【0052】
第2のトランジスタQ2には、式(5)に示すように、第1の抵抗素子R501を流れる電流Ir1と同じドレイン電流Id1が流れる。
Id1=Ir1 ・・・(5)
【0053】
第1のトランジスタQ1には、第2のトランジスタQ2のゲート幅に対する第1のトランジスタQ1のゲート幅の比に応じて、第2のトランジスタQ2のドレイン電流Id1に比例したドレイン電流Id2が流れる。この関係は、例えば、第1のトランジスタQ1のゲート幅をWg_Q1とし、第2のトランジスタQ2のゲート幅をWg_Q2とすると、次の式(6)で表される。
Wg_Q1/Wg_Q2=Id2/Id1 ・・・(6)
【0054】
上記の式(5)、(6)より、次の式(7)を満たす電流Ir1が、第1のトランジスタQドレイン電流Id2を、Ids_optに設定することができることが判る。
Ids_opt=(Wg_Q1/Wg_Q2)×Ir1 ・・・(7)
【0055】
さらに式(4)、(7)より、第1の抵抗素子R501を流れるように、第1の抵抗素子の抵抗値R1を設定することにより、次の式(8)が得られる。
Ids_opt=(Wg_Q1/Wg_Q2)×(Vcc-Vg)/R1 ・・(8)
【0056】
なお、式(4)より、第1の抵抗素子R501を流れる電流Ir1の値は、第1の抵抗素子R501の製造ばらつきの影響を受けるが、薄膜金属抵抗素子を用いることにより製造バラツキは±5%と小さいため、電流Ir1への影響は小さい。また、電流Ir1の値は、第1のトランジスタQ1の製造ばらつきの影響を受けるが、閾値電圧Vthのばらつきが、(Vcc-Vg)の値に与える影響としては、Vcc=4V、Vg=±0.15Vとした場合、±4%と小さいため、電流Ir1への影響は小さい。
【0057】
式(8)にも表されているように、第1の実施形態に係るLNA回路120によれば、第1のトランジスタQ1のドレイン電流Id2の値を、第1の抵抗素子R501の抵抗値R1によって変更することができる。従って、第1の抵抗素子R501が、第1のトランジスタQ1によって構成される増幅回路のNF特性がIds_opt(又は所定の値以下)となる抵抗値を有するように設計することにより、LNA回路として好適なNF特性を実現することができる。また、第1の実施形態に係るLNA回路120によれば、例えば、図4のIref端子412、又は図16のVbias_1、Vbias_2等の外部端子が不要になるため、半導体装置100の小型化を実現することができる。
【0058】
なお、低消費電力の半導体装置100では、例えば、第1のトランジスタQ1のゲート幅をWg1とし、第2のトランジスタQ2のゲート幅をWg2とすると、第1のトランジスタQ1のゲート幅のWg1を、最小ルールに近い値に設定することがある。このような場合、FETの最小レイアウトのルールの制限により、式(7)が、式(9)に示すような関係となってしまうことがある。
Ids_opt>(Wg_Q1/Wg_Q2)×Ir1 ・・・(9)
【0059】
このような場合、例えば、図5Bに示すように、第2の抵抗素子R502を付加することにより、第1のトランジスタQ1、及び第2のトランジスタQ2をカレントミラー回路としての機能を維持させることができる。
【0060】
図5Bは、第1の実施形態に係るLNA回路の回路構成の例を示す図である。図5Bに示すLNA回路は、図5Aで説明したLNA回路120の構成に加えて、第2のトランジスタQ2のソース端子とVSS端子の間に、第2の抵抗素子R502を有している。この第2の抵抗素子R502により、FETが持つトータルのソース抵抗値Rs=(真性Rs+寄生Rs)の値を、式(10)を満たすように調整する。これにより、第1のトランジスタQ1、及び第2のトランジスタQ2のカレントミラー回路としての機能をより安定に維持することができる。
(R2+Rs_Q2)/(Rs_Q1)=Id2/Id1 ・・・(10)
ここで、R2は、第2の抵抗素子502の抵抗値、Rs_Q2は、第2のトランジスタQ2に内在するソース抵抗値、Rs_Q1は、第1のトランジスタQ1に内在するソース抵抗値を示す。
【0061】
このように、第1の実施形態に係るLNA回路120、及びLNA回路120を備える半導体装置100によれば、外部端子によらずに、LNA回路120のIdsを、NF特性の値が最小となるIds_optに、安定して設定することができるようになる。
【0062】
さらに、第1の実施形態に係るLNA回路120、及びLNA回路120を備える半導体装置100は、第1の抵抗素子R501が負帰還抵抗の役割をするため、発振の余裕度を示すK値を改善する効果も得られる。
【0063】
(K値の改善効果について)
ここでは、図5A、5Bに示すような第1の実施形態に係るLNA回路120において、第1の抵抗素子R501が帰還抵抗として機能し、K値を改善する効果について説明する。
【0064】
図6は、抵抗素子を付加していないFETアンプAの回路の例を示す図である。図6に示すFETアンプA600は、FETのソース端子がグランド電位のVSSに接地され、Port1から入力される信号を増幅してPort2から出力する、ソース接地型のFETアンプのうち、入出力信号に関係する素子のみを図示している。
【0065】
図7は、抵抗素子を付加していないFETアンプAの等価回路を示す図である。図6に示したFETアンプA600の等価回路は、図7に示すように、トランジスタTr1のゲート端子とドレイン端子間の寄生容量Cgdと、トランジスタTr1のゲート端子とソース端子間の寄生容量Cgsと、相互コンダクタンスGmを持つ電流源により表すことができる。
【0066】
図8は、FETアンプのK値の周波数特性の例を示す図である。図8に示すグラフにおいて、横軸は周波数を示しており、縦軸はFETアンプの安定性の指標であるK値を示している。K値は、次の式(11)によって算出される。
【0067】
【数1】
ここで、S11は、Port1から測定した反射係数、S22は、Port2から測定した反射係数、S21は、Port1からPort2への順方向の電力利得、S12は、Port2からPort1への逆方向の電力利得を示す。
【0068】
前述のように、K値は、値が低いほど不安定で発振する可能性が高いことを示しており、値が大きいほど安定していることを示している。また、K値が1.0を超えると整合回路によらずに発振しないことを示している。
【0069】
図8において、実線のグラフは、図6、7に示すように、抵抗素子を付加していないFETアンプA600のK値の周波数特性を示している。例えば、図7において、Port2からPort1への帰還がCgdによる帰還である場合、低周波数領域ではCgdのインピーダンスが高くなり、Port2とPort1との間の電位が増加する正帰還となるため、K値は周波数が低くなるほど低下し、FETアンプAは不安定になる。
【0070】
図9は、抵抗素子を付加したFETアンプBの回路の例を示す図である。図9示すFETアンプB900は、図6に示したFETアンプA600が有するトランジスタTr1のゲート端子とドレイン端子との間に抵抗素子Rf1を接続した構成を有している。
【0071】
図10は、抵抗素子を付加したFETアンプBの等価回路を示す図である。図9に示したFETアンプB900の等価回路は、図10に示すように、トランジスタTr1のゲート端子とドレイン端子間の寄生容量Cgdと、トランジスタTr1のゲート端子とソース端子間の寄生容量Cgsと、相互コンダクタンスGmを持つ電流源と、抵抗素子Rf1とにより表すことができる。また、Rf1を追加したことにより、図10の式(A)、(B)が満たされるような低周波数領域では、トランジスタTr1の寄生容量Cgd、Cgsによるインピーダンスの値は、抵抗素子Rf1の値に比べ相対的に低くなり、無視することができる。この場合、FETアンプB900の等価回路は、図11に示すようになる。
【0072】
図11は、抵抗素子を付加したFETアンプBの低周波数領域における等価回路を示す図である。この図は、低周波領域(例えば、1GHz以下)におけるFETアンプB900の等価回路を示している。図11に示す等価回路では、抵抗素子Rf1は、FETアンプB900の負帰還を構成している。このとき、FETアンプB900は、低周波数領域におけるCgs、Cgdのインピーダンスの値が、抵抗素子Rf1の値に比べ相対的に無視できる程度の大きさであるため、Port2からPort1への帰還が正帰還となることがない。
【0073】
図8において、破線のグラフは、図9に示すように、抵抗素子を付加したFETアンプB900のK値の周波数特性を示している。上述したように、抵抗素子を付加したFETアンプB900は、低周波数領域ではPort2からPort1への帰還が正帰還となることがないため、Gmの利得による発振の可能性はなくなり、K値は1.0前後の値となる。
【0074】
例えば、Cgs=100fFである場合、周波数1GHzにおいて、図10の式(b)の右辺は3kΩとなる。従って、抵抗素子Rf1の抵抗値が3kΩとより十分に小さい場合、FETアンプBは、低周波数領域で完全に安定する。一方、抵抗素子Rf1の抵抗値が、3kΩに対して十分に小さいとは言えない場合でも、K値は、抵抗素子Rf1がない場合と比べて高い値となるので、FETアンプB900の安定性が向上する。このように、抵抗素子Rf1を付加したFETアンプB900は、低周波数領域で安定度が向上する。
【0075】
なお、抵抗素子Rf1を付加したFETアンプB900は、高周波信号を増幅する周波数帯域(例えば、28GHz等)では、Rf1>>1/(jωCgs)となるため、抵抗素子Rf1による特性変化は無視できる程度となる。
【0076】
<シミュレーション結果>
続いて、第1の実施形態に係るLNA回路120のシミュレーション結果を示す。ここでは、図5Bに示すようなLNA回路120において、トランジスタQ1のゲート長を約150nm、ゲート幅を50μmとし、第1の抵抗素子R501の抵抗値を4.3kΩとした。また、第2のトランジスタQ2のゲート長を約150nm、ゲート幅を30μmとし、第2の抵抗素子R502の値を2Ωとして、シミュレーションを行った。
【0077】
(NF特性)
図12は、第1の実施形態に係るLNA回路のNF特性のシミュレーション結果を示している。図12において、横軸は、FETの閾値電圧Vthのばらつき、つまり製造ばらつきを表しており、縦軸はNF特性の最小値を示している。また、第1の実線1201は、第1の実施形態に係るLNA回路120のTa=25℃における、閾値電圧Vthの変化に対応するNF特性の最小値の変化を示している。第2の実線1202は、第1の実施形態に係るLNA回路120のTa=105℃における、閾値電圧Vthの変化に対応するNF特性の最小値の変化を示している。第3の点線1203は、例えば、LNA回路を、図6に示すように抵抗素子を付加していないFETアンプAの構成とし、固定のVg電圧を印加した場合のTa=25℃における、閾値電圧Vthの変化に対応するNF特性の最小値の変化を示している。第4の点線1204は、例えば、LNA回路を、図6に示すように抵抗素子を付加していないFETアンプAの構成とし、固定のVg電圧を印加した場合のTa=105℃における、閾値電圧Vthの変化に対応するNF特性の最小値の変化を示している。
【0078】
図12に示すように、第1の実施形態に係るLNA回路120は、固定のVg電圧を印加したLNA回路と比較して、閾値電圧Vthが変動した場合でも、NF特性の最小値の変化が抑制されていることが判る。また、第1の実施形態に係るLNA回路120は、固定のVg電圧を印加したLNA回路と比較して、温度が変化した場合でも、NF特性の最小値の変化が抑制されていることも判る。
【0079】
(K値)
図13は、第1の実施形態に係るLNA回路のK値のシミュレーション結果を示す図である。ここでは、回路動作が最も不安定になるTa=-40℃の厳しい条件で、K値の周波数特性をシミュレーションした。図13において、横軸は、周波数を示しており、縦軸はK値を示している。また、第1の線1301は、第1の実施形態に係るLNA回路120のTa=-40℃における、K値の周波数特性を示している。第2の線1302は、例えば、LNA回路を、図6に示すように抵抗素子を付加していないFETアンプAの構成とし、固定のVg電圧を印加した場合のTa=-40℃における、K値の周波数特性を示している。
【0080】
第2の線1302を見ると、固定のVg電圧を印加したLNA回路は、周波数10MHz~1GHzの範囲でK値が0.5を下回り不安定になっていることが判る。一方、第1の線1301を見ると、第1の実施形態に係るLNA回路120は、周波数1GHz以下の低周波数領域では、K値が1.0を超える値を維持している。また、第1の実施形態に係るLNA回路120は、図13に示す全ての周波数において、K値が0.5以上の値となっている。
【0081】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、半導体装置100に含まれるLNA回路120は、1段のFETアンプにより構成される場合の例について説明したが、LNA回路120は、例えば、図14に示すように2段のFETアンプにより構成されるものであっても良い。
【0082】
図14は、第2の実施形態に係るLNA回路の回路構成の例を示す図である。図14の例では、図5Bで説明した第1の実施形態に係るLNA回路120の後段に、2段目のFETアンプが追加されている。これにより、第1のトランジスタQ1のドレインは、整合回路M502、容量素子C502、及び第2のFETアンプ1501を介して、Rx_out端子103等の出力端子に接続されている。
【0083】
第2のFETアンプ1501は、一例として、図5Bに示した第1の実施形態に係るLNA回路20と同じで良い。図14の例では、第2のFETアンプ1501は、第3のトランジスタQ3と、第3のトランジスタQ3とカレントミラー回路を構成する第4のトランジスタQ4とを有している。また、第2のFETアンプ1501は、第1の実施形態に係るLNA回路20と同様に、抵抗素子R1401、R1402、インダクタ素子L1401、高周波用のチョークコイルRFC1401、1402、及び容量素子C1401等を備えている。
【0084】
ただし、図14に示す第2の実施形態に係るLNA回路120の構成は一例である。例えば、整合回路M1401は、整合回路M502と統合して、1つの整合回路としても良い。また、受信回路のNF特性は、初段のLNA回路のNF特性が支配的なので、第2のFETアンプ1501は、外部端子が不要な他の形式のFETアンプを適用しても良い。
【0085】
図1に示した本開示に係る半導体装置100は、例えば、図5A、5Bに示すような第1の実施形態に係るLNA回路120、又は図14に示すような第2の実施形態に係るLNA回路120を有する。従って、本開示の各実施形態によれば、高周波信号を増幅する増幅回路を備える半導体装置100において、外部端子によらずに、安定した特性が得られるようになる。なお、本開示にかかる半導体装置は、図1に示す半導体装置100の構成に限られず、例えば、図5A、5Bに示すような第1の実施形態に係るLNA回路120、又は図14に示すような第2の実施形態に係るLNA回路120を含む、様々な構成の半導体装置であって良い。
【0086】
以上、本開示の実施形態などについて説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0087】
1、100 半導体装置
101 RF_in/out端子(入力端子の一例)
102 Rx_in(入力端子の一例)
103 Rx_out端子
104 Tx_in端子
105 Vcc端子(第2の電源端子)
106 Vss端子(第1の電源端子)
10、110 SW回路
20、120 LNA回路
30、130 PA回路
201 実線
400 LNA回路
401 入力端子
402 出力端子
412 Iref端子
600 FETアンプA
1201 第1の実線
1202 第2の実線
1203 第3の点線
1204 第4の点線
1301 第1の線
1302 第2の線
C501、C502、C1401 容量素子
Cgd、Cgs 内部容量
Gm 相互コンダクタンス
L501、L1401 インダクタ素子
M1、M2、M3、M4 整合回路
M501、M502、M1401、M1402 整合回路
Q1 第1のトランジスタ
Q2 第2のトランジスタ
Q3 第3のトランジスタ
Q4 第4のトランジスタ
R501 第1の抵抗素子
R502 第2の抵抗素子
R1401 第3の抵抗素子
R1402 第4の抵抗素子
Rf1 抵抗素子
RFC1、RFC2、RFC3、RFC4 チョークコイル
RFC501、RFC502、RFC1401、RFC1402 チョークコイル
Tr1、Tr2 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16