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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164418
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】座のクッション材及び椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20221020BHJP
   A47C 7/18 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A47C27/15 Z
A47C7/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069895
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】松下 寛也
(72)【発明者】
【氏名】海藤 まさき
(72)【発明者】
【氏名】森 珠実
【テーマコード(参考)】
3B084
3B096
【Fターム(参考)】
3B084CA04
3B096AB07
(57)【要約】
【課題】前寄りに着座した際の底づき感を抑制して、起立動作がしやすい座のクッション材及び椅子を提供する。
【解決手段】座のクッション材60は、前側領域60Aと前側領域60Aよりも後方の後側領域60Bと、を備え、前側領域60Aの少なくとも一部及び後側領域60Bの少なくとも一部が支持部材42に支持された座のクッション材60であって、前側領域60Aにおける後側領域60Bに隣接する前側領域60Aの後部62の硬度は、後側領域60Bの硬度よりも高く、前側領域60Aにおける支持部材42に支持された部分の厚さh1,h2は、後側領域60Bの支持部材42で支持された部分の厚さh3よりも薄い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側領域と前記前側領域の後側に隣接して配置された後側領域と、を備え、前記前側領域の少なくとも一部及び前記後側領域の少なくとも一部が支持部材に支持された座のクッション材であって、
前記前側領域における前記後側領域に隣接する前記前側領域の後部の硬度は、前記後側領域の硬度よりも高く、
前記前側領域における前記支持部材に支持された部分の厚さは、前記後側領域の前記支持部材で支持された部分の厚さよりも薄い座のクッション材。
【請求項2】
前記前側領域と前記後側領域との境界面は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜している請求項1に記載の座のクッション材。
【請求項3】
前記前側領域は、
前部領域と、
前記前部領域よりも後側に隣接して配置され、前記前側領域の後部を含む中間領域と、を備え、
前記前部領域の硬度は、前記中間領域の硬度よりも低い請求項1または2に記載の座のクッション材。
【請求項4】
前記前部領域の少なくとも一部及び前記中間領域の少なくとも一部は前記支持部材に支持され、
前記前部領域における前記支持部材に支持された部分の厚さは、前記中間領域における前記支持部材に支持された部分の厚さよりも薄い請求項3に記載の座のクッション材。
【請求項5】
前記前部領域と前記中間領域との境界面は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜している請求項3または4に記載の座のクッション材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の座のクッション材と、
前記座のクッション材を下方から支持する支持部材と、を備えた椅子。
【請求項7】
前記支持部材の下面は、前方に向かうにしたがって次第に上方に向かって傾斜している請求項6に記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座のクッション材及び椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記の特許文献1に記載の椅子が知られている。特許文献1に記載の車両用の椅子の座では、座の後側の部分が、イオン化ゲル部材で構成されている。衝突予知センサからの信号に基づいて制御部が衝突を予知すると、制御部と電気的に接続された電圧コントロールユニットによってイオン化ゲル部材に電圧が印加される。これによって、座の後側の部分が、前側の部分よりも軟化される。座の後側の部分が軟化されて着座者の臀部が沈み込むとともに、後側の部分より硬質で且つ後側の部分より厚い座の前側の部分によって着座者の前方への移動が規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-156292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の椅子の座では、後側の部分が柔らかくて薄いため、着座時に臀部が座の支持部材の硬さを感じてしまうような底づき感があるという問題点がある。さらに、例えば病院の待合ロビーや空港の出発ロビー等のように、着座時間が比較的短い場合には、頻繁に立ち上がることになる。特に高齢者等の脚力の劣る人は、立ち上がる際に、膝下を後方に移動させて臀部を前方にすり寄らせて立ち上がるという動作を行う場合があるが、座の前側の部分の厚さが厚いと、膝下を後方に移動させづらいとともに臀部を前方にすり寄らせづらいため、立ち上がりにくいという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、前寄りに着座した際の底づき感を抑制して、起立動作がしやすい座のクッション材及び椅子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る座のクッション材は、前側領域と前記前側領域の後側に隣接して配置された後側領域と、を備え、前記前側領域の少なくとも一部及び前記後側領域の少なくとも一部が支持部材に支持された座のクッション材であって、前記前側領域における前記後側領域に隣接する前記前側領域の後部の硬度は、前記後側領域の硬度よりも高く、前記前側領域における前記支持部材に支持された部分の厚さは、前記後側領域の前記支持部材で支持された部分の厚さよりも薄い。
【0007】
このように構成された座のクッション材では、前側領域における支持部材に支持された部分の厚さは、後側領域の支持部材で支持された部分の厚さよりも薄い。この構成によって、硬度の高い前側領域の後部と硬度の低い後側領域とが隣接して配置されることによって、前側領域と後側領域との境界部分が明確になる。言い換えれば、着座時に後側領域に位置する臀部は、前側領域と後側領域との境界部分の後方に包み込まれるような状態になる。よって、着座時には臀部が前方にずれにくく、安定的な状態で着座することになる。起立する際には、大腿部に対して脛部(膝下の部分)を後方に曲げやすい。足を接地させた状態で、脛部を曲げて、臀部を前方に押し出しやすく、その後起立することができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
その一方で、前側領域における支持部材に支持された部分の厚さを薄くすると、前寄りに着座した際に底づき感を感じやすくなる。このため、前側領域の後部の硬度を、後側領域の硬度よりも高くしている。この構成によって、前側領域の後部は後側領域よりも硬質であるため、前寄りに着座した際に前側領域の後部に着座者の臀部が当たって支持部材の硬さを感じるような底づき感が抑制される。
【0008】
また、本発明に係る座のクッション材では、前記前側領域と前記後側領域との境界面は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜していてもよい。
【0009】
このように構成された座のクッション材では、前側領域と後側領域との境界面は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜している。この構成によって、着座者の臀部から入力される荷重が後側領域に作用した状態において、その荷重によって前側領域の後部が後方に向けて倒れ込みやすくなる。よって、前側領域の後部から後側領域の前部へ至る部位に段差等が生じずに滑らかに形状変化するため、着座者が起立する際に、臀部を前方にスライドさせやすい。
また、例えば境界面が鉛直面に沿っていると、境界面の前後の領域が直立状態を維持しようとする。前側領域の後部は後側領域よりも硬く、着座者は境界面よりも前方の硬さを明確に感じてしまう。上記の座のクッション材では、境界面が前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜しているため、着座者が前側領域の後部の感触を感じにくくなり、着座感が良好になる。
【0010】
また、本発明に係る座のクッション材では、前記前側領域は、前部領域と、前記前部領域よりも後側に隣接して配置され、前記前側領域の後部を含む中間領域と、を備え、前記前部領域の硬度は、前記中間領域の硬度よりも低くてもよい。
【0011】
このように構成された座のクッション材では、前部領域の硬度は、中間領域の硬度よりも低い。この構成によって、中間領域よりも軟質な前部領域によって着座者の大腿部の前側の裏が支持され、着座者は起立する際には、大きな荷重をかけずに大腿部の前側を下方に沈み込ませて脛部を後方に曲げることができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
【0012】
また、本発明に係る座のクッション材では、前記前部領域の少なくとも一部及び前記中間領域の少なくとも一部は前記支持部材に支持され、前記前部領域における前記支持部材に支持された部分の厚さは、前記中間領域における前記支持部材に支持された部分の厚さよりも薄くてもよい。
【0013】
このように構成された座のクッション材では、前部領域における支持部材に支持された部分の厚さは、中間領域における支持部材に支持された部分の厚さよりも薄い。この構成によって、中間領域よりも薄い前部領域によって着座者の大腿部の前側の裏が支持され、着座者は起立する際には、大腿部の前側を下方に大きく移動させることなく脛部を後方に曲げることができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
【0014】
また、本発明に係る座のクッション材では、前記前部領域と前記中間領域との境界面は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜していてもよい。
【0015】
このように構成された座のクッション材では、前部領域と中間領域との境界面は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜している。この構成によって、着座者の大腿部から入力される荷重が作用した状態において、その荷重によって前部領域の後部が後方に向けて倒れ込みやすくなる。よって、前部領域の後部から中間領域の前部へ至る部位に段差等が生じずに滑らかに形状変化するため、着座者が起立する際に、大腿部を前方にスライドさせやすい。
【0016】
また、本発明に係る椅子は、上記のいずれか一に記載の座のクッション材と、前記座のクッション材を下方から支持する支持部材と、を備える。
【0017】
このように構成された椅子では、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
また、前側領域の後部は後側領域よりも硬質であるため、前寄りに着座した際に前側領域の後部に着座者の臀部が当たって支持部材の硬さを感じるような底づき感が抑制される。
【0018】
また、本発明に係る椅子では、前記支持部材の下面は、前方に向かうにしたがって次第に上方に向かって傾斜していてもよい。
【0019】
このように構成された椅子では、支持部材の下面は、前方に向かうにしたがって次第に上方に向かって傾斜している。この構成によって、支持部材の前側の下方には椅子の設置面との間に鉛直方向に大きな空間が形成され、この空間には着座者の脛部が位置する。よって、着座者の脛部が位置する空間を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る座のクッション材及び椅子によれば、前寄りに着座した際の底づき感を抑制して、起立動作がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る椅子を斜め前方から見た斜視図である。
図2図1に示す椅子の支持構造体を示す斜視図である。
図3図1に示す椅子の断面図である。
図4図1に示す椅子の支持部材を下方から見た図である。
図5図1に示す椅子の座の一部の断面図である。
図6図1に示す椅子の座のクッション材の平面図である。
図7】本発明の一実施形態の変形例1に係る椅子の座の一部の断面図である。
図8】本発明の一実施形態の変形例2に係る椅子の座の一部の断面図である。
図9】本発明の一実施形態の変形例3に係る椅子の座のクッション材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1から図6を参照して、本発明の一実施形態に係る椅子について説明する。
なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中央」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また、以下の説明において、前後上下左右等の向きは、特に記載がなければ、水平な床面上に設置した状態の椅子に、正規姿勢で着座した着座者の正面側を「前」、その逆側を「後」とし、上下左右も着座者から見た向きと同一とする。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の椅子ユニット10は、病院等の待合室や空港のロビー等で用いられる。椅子ユニット10は、1つの支持構造体20に複数の椅子40が左右方向Xに並んで取り付けられた、いわゆる連結椅子である。
【0024】
椅子ユニット10は、支持構造体20と、椅子40と、を備えている。支持構造体20は、床面に設置される。支持構造体20は、椅子40を支持する。図2に示すように、支持構造体20は、支持杆21と、脚22と、支持ブラケット23と、を有している。
【0025】
支持杆21は、左右方向Xに延びる。本実施形態では、支持杆21は、床面に対して平行であり、左右方向Xに直線状に延びる。支持杆21は、複数の椅子40と着座者の荷重とを支えるため、剛性が高い金属材料によって形成されている。
【0026】
脚22は、床面に設置される。脚22は、左右方向Xに間隔をあけて複数設けられている。脚22は、椅子40に対して左右方向Xにずらされて配置されている。脚22は、椅子40の直下に配置されていない。本実施形態では、脚22は、2つ設けられているが、3つ以上設けられていてもよく、3つ以上設けられている場合は、脚22が椅子40の直下に配置される場合もある。2つの脚22は、支持杆21の両端部にそれぞれ取り付けられている。2つの脚22は、同一の構造とされているため、以下では、1つの脚22のみを代表して説明する。
【0027】
脚22は、連結部28と、前方接地杆29と、後方接地杆30と、を有している。連結部28は、支持杆21の左右方向Xの端部に連結されている。前方接地杆29は、連結部28から下方且つ前方に直線状に延びている。後方接地杆30は、連結部28から下方且つ後方に直線状に延びている。前方接地杆29及び後方接地杆30は、下方に向かうに従い前後方向Yで互いに離間する方向に延びている。前方接地杆29及び後方接地杆30の各下端は、床面に接地している。
【0028】
支持ブラケット23は、支持杆21に固定されている。支持ブラケット23は、支持杆21の上面21uに設けられている。支持ブラケット23は、椅子40を支持する。支持ブラケット23は、椅子40と同数(図示の例では3つ)設けられている。複数の支持ブラケット23は、同一の構造とされているため、以下では、1つの支持ブラケット23のみを代表して説明する。
【0029】
支持ブラケット23は、左右方向Xに対称の形状をなす2つのブラケット31,32を有している。2つのブラケット31,32は、左側の第1ブラケット31と、右側の第2ブラケット32と、である。第1ブラケット31及び第2ブラケット32は、左右方向Xに間隔をあけて配置されている。第1ブラケット31及び第2ブラケット32は、互いに左右方向Xに対称の形状である。これらの各ブラケット31,32は、鋼板を曲げ加工することで形成される。
【0030】
第1ブラケット31は、第1側板31aと、第1上板31bと、を有している。第1側板31aは、表裏面が左右方向Xを向く板である。第1側板31aは、上下方向Zよりも前後方向Yに長い。第1側板31aには、下方に向けて開口する切り欠き33が設けられている。切り欠き33は、第1側板31aにおいて前後方向Yの中央よりも後側に配置されている。切り欠き33には、支持杆21が嵌め込まれる。切り欠き33の周縁は、支持杆21に溶接されているが、ボルト等により支持杆21に固着されていてもよい。
【0031】
第1上板31bは、表裏面が上下方向Zを向く板である。第1上板31bは、左右方向Xよりも前後方向Yに長い矩形状である。第1上板31bにおける左右方向Xの両側縁のうち、第2ブラケット32側(右側)の側縁が、第1側板31aの上縁に、屈曲部を介して連なっている。第1上板31bは、第1側板31aの上縁から左右方向Xに沿って、第2ブラケット32の反対側(左側)に延びている。
【0032】
第1上板31bには、貫通孔34が設けられている。貫通孔34は、第1上板31bを上下方向Zに貫通する。貫通孔34は、前後方向Yに間隔をあけて2つ設けられている。
2つの貫通孔34は、切り欠き33を前後方向Yに挟む位置に設けられている。
【0033】
第2ブラケット32は、第2側板32aと、第2上板32bと、を有している。第2側板32aは、第1側板31aと同様の構成である。第2側板32aには、前記切り欠き33が設けられている。第2上板32bも、第1上板31bと同様の構成である。第2上板32bには、貫通孔34が設けられている。ただし、第2上板32bは、第2側板32aの上縁から左右方向Xに沿って、第1ブラケット31の反対側(右側)に延びている。
【0034】
図1に示すように、椅子40は、左右方向Xに複数並んでいる。図示の例では、椅子40は3つ、左右方向Xに並んでいる。左右方向Xに隣り合う椅子40において、椅子40の左右方向Xの端面(小口面)同士は互いに接触している。3つの椅子40は、同一の構造とされているため、以下では、1つの椅子40のみを代表して説明する。
【0035】
椅子40は、左右方向Xに対称の形状である。椅子40は、座41と、背凭れ71と、を備えている。座41は、支持構造体20に支持されている。座41は、着座者の臀部を支持する。背凭れ42は、着座者の背部を支持する。
【0036】
図3(座表皮69及び背表皮79の図示を省略している)に示すように、座41は、座支持部材(支持部材)42と、座クッション材(座のクッション材)60と、座表皮69(図1参照)と、を有している。座支持部材42としては、例えば、樹脂製の母材をスタンピング成型して得られた成型品などが例示される。
【0037】
図4に示すように、座支持部材42の下面42bには、第1凹部44が設けられている。第1凹部44は、左右方向Xに間隔をあけて2つ設けられている。第1凹部44は、座41の下面42bから上方に窪んでいる。2つの第1凹部44は、座41の下面42bにおける左右方向Xの中央を間に挟んでいる。2つの第1凹部44の底面44bには、支持ブラケット23のブラケット31,32の第1上板31b及び第2上板32bがそれぞれ配置される。
【0038】
第1凹部44は、左右方向Xよりも前後方向Yに長い。第1凹部44の底面44bには、ブラケット31,32の第1上板31b及び第2上板32bが接触(面接触)する。第1凹部44の底面44bには、ねじ穴46が設けられている。ねじ穴46は、前後方向Yに間隔をあけて2つ設けられている。ねじ穴46には、不図示のボルトが嵌め込まれる。ボルトは、第1上板31b及び第2上板32bの貫通孔34を通してねじ穴46に嵌め込まれる。これにより、ボルトの頭部が、座41の下面(第1凹部44の底面44b)との間に、第1上板31b及び第2上板32bを挟み込む。その結果、座41が支持ブラケット23にボルトを介して固定される。
【0039】
2つの第1凹部44の後部どうしを結ぶように第2凹部47が設けられている。第2凹部47は、座支持部材42の下面42bから上方に窪んでいる。第2凹部47は、前後方向Yよりも左右方向Xに長い。第2凹部47の底面47bには、空気孔48が設けられている。空気孔48は、左右方向Xに間隔をあけて3つ設けられている。空気孔48は、座支持部材42を上下方向Zに貫通する孔である。第2凹部43の鉛直上方には、支持杆21が配置されている。
【0040】
座支持部材42の下面42bには、溝部50が設けられている。溝部50は、座支持部材42の下面42bから上方に窪んでいる。溝部50は、2つの第3凹部51と、第4凹部53と、を有している。第3凹部51及び第4凹部53の外側壁には、座支持部材42及び座クッション材60を包み込んだ座表皮69(図1参照)がタッカー等によって固定されている。
【0041】
第3凹部51は、左右方向Xよりも前後方向Yに長い。第3凹部51の底面51bには、空気孔52が設けられている。空気孔52は、前後方向Yに間隔をあけて2つ設けられている。空気孔52は、座支持部材42を上下方向Zに貫通する孔である。後側の空気孔52(「空気孔52a」とする)の鉛直上方には、支持杆21が配置されている。
【0042】
第4凹部53は、前後方向Yよりも左右方向Xに長い。第4凹部53の底面53bには、空気孔54が設けられている。空気孔54は、左右方向Xに間隔をあけて2つ設けられている。空気孔54は、座支持部材42を上下方向Zに貫通する孔である。空気孔54は、第4凹部53の底面53bから第4凹部53の外側壁にわたって形成されていてもよい。
【0043】
着座者の荷重によって、後述する座クッション材60が圧縮変形する際に、座クッション材60の内部の空気が空気孔48,52,54から外部に逃げていくため、座クッション材60が圧縮変形しやすい。
【0044】
図5(座41の左右方向Xの中央の断面図であり、座表皮69の図示を省略している)に示すように、座支持部材42の上面42u及び下面42bは、前方に向かうにしたがって次第に上方に向かって傾斜している。座支持部材42の前部42fと椅子40の設置面との間には、空間s1が形成されている。座支持部材42の下面42bが前方に向かうにしたがって次第に上方に向かって傾斜することによって、空間s1の上下方向Zの高さは、座支持部材42の後部42eの下方に形成される空間s2の上下方向Zの高さが高くなっている。
【0045】
座支持部材42の下面42bには、下方に突出するリブ49が設けられている。リブ49は、左右方向Xに延びている。リブ49は、前後方向Yに間隔をあけて3つ設けられている。リブ49によって、座支持部材42の強度が高められている。
【0046】
座クッション材60は、座支持部材42によって下方から支持されている。座クッション材60としては、例えば、モールドウレタン等が例示される。モールドウレタンを採用することによって、後述する前部領域61と中間領域62とが堅牢に接合されるとともに、中間領域62と後部領域63とが堅牢に接合される。
【0047】
座クッション材60は、前側領域60Aと、後側領域60Bと、を備えている。後側領域60Bは、前側領域60Aの後側に前側領域60Aに隣接配置されている。前側領域60Aは、前部領域61と、中間領域62と、を有している。中間領域62は、前部領域61の後側に前部領域61に隣接配置されている。中間領域62は、前部領域61の上側を覆っている。後側領域60Bは、後部領域63を有している。後部領域63は、中間領域62の後側に中間領域62に隣接配置されている。
【0048】
前側領域60Aの後部の硬度は、後側領域60Bの硬度よりも高い。本実施形態では、中間領域62の硬度は、後部領域63の硬度よりも高い。
【0049】
前部領域61の硬度は、後部領域63の硬度と同一である。中間領域62の硬度は、前部領域61の硬度及び後部領域63の硬度よりも高い。本実施形態では、前部領域61の硬度及び後部領域63の硬度は、JISK6400-2 D方法で25%硬度11kg程度である。中間領域62の硬度は、JISK6400-2 D方法で25%硬度16kg程度である。なお、前部領域61、中間領域62、後部領域63の硬度は一例であり、中間領域62の硬度が、前部領域61の硬度及び後部領域63の硬度よりも高くなるように適宜設定可能である。
【0050】
以下の座クッション材60の説明において、上面とは上下方向Zの上方を向く面を指し、下面とは上下方向Zの下方を向く面を指し、前面とは前後方向Yの前方を向く面を指し、後面とは前後方向Yの後方を向く面を指す。
【0051】
前部領域61の上面61uは、水平面に沿う水平面部61aを有している。前部領域61の上面61uにおいて、水平面部61aよりも前側の部分(「第1上面部」とする)61hでは、前方に向かうにしたがって次第に下方に傾斜している。水平面部61aよりも後側の部分(「第2上面部」とする)61jでは、前方に向かうにしたがって次第に上方に傾斜している。
【0052】
前部領域61の前端部には、前方を向く前面61fが形成されている。前部領域61の第1上面部61hと前面61fとの境界部分は、緩やかな曲線状に形成されている。
【0053】
前部領域61の前面61fの下端部には、後方に延びる第1下面61cが形成されている。第1下面61cの後端部には、上方に延びる第1後面61dが形成されている。第1後面61dの上端部には、後方に延びる第2下面61eが形成されている。第2下面61eの後端部には、上方に延びる第2後面61gが形成されている。第2後面61gの上端部には、後方に延びる第3下面61kが形成されている。
【0054】
前部領域61の前面61fの下部、第1下面61c、第1後面61d、第2下面61e及び第2後面61gによって形成される領域を下向き突出部61mとする。下向き突出部61mは、前部領域61の前端部から下方に突出している。
【0055】
前部領域61の第2後面61gは、座支持部材42の前端面(前端部且つ前方を向く面)42aに当接している。前部領域61の第2後面61gは座支持部材42の前端面42aの前側に配置されている。前部領域61の第3下面61kは、座支持部材42の上面42uの前部に当接及び支持されている。
【0056】
中間領域62の上面62uは、前方に向かうにしたがって次第に上方に傾斜している。中間領域62の上面62uと前部領域61の第2上面部61jとは、連続している。中間領域62の上面62uと前部領域61の第2上面部61jとの間には、段差は形成されていない。
【0057】
中間領域62と前部領域61との境界面である第一境界面64は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜している。第一境界面64の上端部は、中間領域62の上面62u及び前部領域61の第2上面部61jに接続されている。第一境界面64の下端部は、前部領域61の第3下面61k及び中間領域62の下面62bに接続されている。図6に示すように、座クッション材60の上面60uにおいて、第一境界面64は左右方向Xに沿っている。中間領域62の上面62uと第一境界面64とのなす角度は、側断面視において鈍角である。
【0058】
なお、前部領域61には第3下面61kが形成されていなくてもよい。前部領域61が座支持部材42の上面21uに当接及び支持されず、第一境界面64の下端部が前部領域61の第2後面61gの上端部に接続される構成であってもよい。
【0059】
図5に示すように、中間領域62の下面62bは、座支持部材42の上面42uの前部に当接及び支持されている。
【0060】
後部領域63の上面63uは、前方に向かうにしたがって次第に上方に傾斜している。後部領域63の上面63uと中間領域62の上面62uとは、連続している。後部領域63の上面63uと中間領域62の上面62uとの間には、段差は形成されていない。
【0061】
後部領域63と中間領域62との境界面である第二境界面65は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜している。第二境界面65の上端部は、後部領域63の上面63u及び中間領域62の上面62uに接続されている。第二境界面65の下端部は、後部領域63の下面63b及び中間領域62の下面62bに接続されている。第二境界面65の水平面に対する傾斜角度は、第一境界面64の水平面に対する傾斜角度よりも大きい。図6に示すように、座クッション材60の上面60uにおいて、第二境界面65は左右方向Xの中央が前方に膨らむようになっている。中間領域62の上面62uと第二境界面65とのなす角度は、側断面視において鈍角である。
【0062】
後部領域63の下面63bは、座支持部材42の上面42uの前後方向の中間から後端部にかけて当接及び支持されている。
【0063】
後部領域63の後面63cは、前方に向かうにしたがって次第に上方に向かって傾斜している。後部領域63の後面63cの上端部は、後部領域63の上面63uの後端部に接続されている。後部領域63の後面63cの下端部は、後部領域63の下面63dの後端部に接続されている。
【0064】
座クッション材60の上面60uにおいて、前後方向Yの中央の位置を中央位置Pとする。前部領域61の上面61uの前端部61pから中央位置Pまでの距離を、距離L1とする。後部領域63の上面63uの後端部63pから中央位置Pまでの距離を、距離L1とする。中間領域62の上面62uは、座クッション材60の上面60uの前後方向Yの中央位置Pよりも前方に配置されている。中間領域62の上面62uは、座クッション材60における水平面に沿う部分である前部領域61の水平面部61aよりも後方に位置している。
【0065】
座表皮69(図1参照)は、座41の外表面を形成する。座表皮69は、座支持部材42及び座クッション材60の外表面を覆っている。座表皮69は、布材、ビニールレザー材、天然レザー材等から形成されている。
【0066】
次に、前部領域61、中間領域62及び後部領域63の厚さについて説明する。ここで、各領域において厚さとは、各領域の下面が座支持部材42に支持されている部分であって、且つ各領域の上面と下面とを結ぶ上下方向Z(鉛直面に沿う方向)の長さのうち最大の長さを言うこととする。なお、前部領域61では、下向き突出部61mを除く部分が座支持部材42に支持されていて、下向き突出部61mよりも後方部分の上下方向Zの長さが厚さになる。
【0067】
前部領域61の厚さを、厚さh1とする。厚さh1は、前部領域61の第1上面部61hと第3下面61kとを結ぶ上下方向Zの長さになる。中間領域62の厚さを、厚さh2とする。後部領域63の厚さを、厚さh3とする。
【0068】
厚さh1は、厚さh2より薄い。厚さh2は、厚さh3より薄い。前側領域60Aにおける座支持部材42に支持された部分の厚さh1,h2は、後側領域60Bの座支持部材42で支持された部分の厚さh3よりも薄いことになる。また、前部領域61における座支持部材42に支持された部分の厚さh1は、中間領域62における座支持部材42に支持された部分の厚さh2よりも薄いことになる。
【0069】
図3に示すように、背凭れ71は、座41の後端部から上方に延びている。背凭れ71は、背支持部材72と、背クッション73と、背表皮79(図1参照)と、を有している。背支持部材72としては、例えば、樹脂製の母材をスタンピング成型して得られた成型品などが例示される。背支持部材72は、座支持部材42と一体に成型されていてもよいし、座支持部材42とは別に成型されて座支持部材42と連結された構成であってもよい。背クッション73は、背支持部材72によって後方から支持されている。背クッション73としては、例えば、モールドウレタン等が例示される。背支持部材72と座支持部材42との接続領域の角部には、背クッション73は配置されていない。これによって、この部分を支点とした背支持部材72の後方への撓みを阻害されない。背表皮79は、背凭れ71の外表面を形成する。背表皮79は、背支持部材72及び背クッション73の外表面を覆っている。背表皮79は、布材、ビニールレザー材、天然レザー材等から形成されている。
【0070】
このように構成された椅子ユニット10では、前側領域60Aにおける座支持部材42に支持された部分の厚さh1,h2は、後側領域60Bの座支持部材42で支持された部分の厚さh3よりも薄い。この構成によって、硬度の高い前側領域60Aの後部(本実施形態では中間領域62)と硬度の低い後側領域60Bとが隣接して配置されることによって、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界部分(本実施形態では第二境界面65)が明確になる。言い換えれば、着座時に後側領域60Bに位置する臀部は、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界部分の後方に包み込まれるような状態になる。よって、着座時には臀部が前方にずれにくく、安定的な状態で着座することになる。起立する際には、大腿部に対して脛部(膝下の部分)を後方に曲げやすい。足を接地させた状態で、脛部を曲げて、臀部を前方に押し出しやすく、その後起立することができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
その一方で、前側領域60Aにおける座支持部材42に支持された部分の厚さh1,h2を薄くすると、前寄りに着座した際に底づき感を感じやすくなる。このため、前側領域60Aの後部の硬度を、後側領域60B(本実施形態では後部領域63)の硬度よりも高くしている。この構成によって、前側領域60Aの後部は後側領域60Bよりも硬質であるため、前寄りに着座した際に前側領域60Aの後部に着座者の臀部が当たって座支持部材42の硬さを感じるような底づき感が抑制される。
また、中間領域62よりも硬度の低い前部領域61が中間領域62の上側を覆っているため、脛部を後方に曲げるときに、抵抗を感じにくい。
また、前側領域60Aの後部よりも軟質な後側領域60Bは着座者の荷重によって沈み込み、着座者の臀部を包み込むように変形する。後側領域60Bよりも硬質な前側領域60Aの後部によって、着座時に着座者の臀部が前方にずれてしまうことが抑制される。
【0071】
また、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界である第二境界面65は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜している。この構成によって、着座者の臀部から入力される荷重が後側領域60Bに作用した状態において、その荷重によって前側領域60Aの後部が後方に向けて倒れ込みやすくなる。よって、前側領域60Aの後部から後側領域60Bの前部へ至る部位に段差等が生じずに滑らかに形状変化するため、着座者が起立する際に、臀部を前方にスライドさせやすい。中間領域62の上面62uと第二境界面65とが側断面視において鈍角をなしているため、前側領域60Aが前方に倒れ込みやすい。
また、例えば前側領域60Aと後側領域60Bとの境界面が鉛直面に沿っていると、境界面の前後の領域が直立状態を維持しようとする。前側領域60Aの後部は後側領域60Bよりも硬く、着座者は境界面よりも前方の硬さを明確に感じてしまう。本実施形態では、第二境界面65が前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜しているため、着座者が前側領域60Aの後部の感触を感じにくくなり、着座感が良好になる。
【0072】
また、前部領域61の硬度は、中間領域62の硬度よりも低い。この構成によって、中間領域62よりも軟質な前部領域61によって着座者の大腿部の前側の裏が支持され、着座者は起立する際には、大きな荷重をかけずに大腿部の前側を下方に沈み込ませて脛部を後方に曲げることができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
【0073】
また、前部領域61における座支持部材42に支持された部分の厚さh1は、中間領域62における座支持部材42に支持された部分の厚さh2よりも薄い。この構成によって、中間領域62よりも薄い前部領域61によって着座者の大腿部の前側の裏が支持され、着座者は起立する際には、大腿部の前側を下方に大きく移動させることなく脛部を後方に曲げることができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
【0074】
また、前部領域61と中間領域62との境界面である第一境界面64は、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜している。この構成によって、着座者の大腿部から入力される荷重が作用した状態において、その荷重によって前部領域61の後部が後方に向けて倒れ込みやすくなる。よって、前部領域61の後部から中間領域62の前部へ至る部位に段差等が生じずに滑らかに形状変化するため、着座者が起立する際に、大腿部を前方にスライドさせやすい。中間領域62の上面62uと第一境界面64とが側断面視において鈍角をなしているため、前部領域61が前方に倒れ込みやすい。
【0075】
また、座支持部材42の下面は42d、前方に向かうにしたがって次第に上方に向かって傾斜している。この構成によって、座支持部材42の前部42fの下方には椅子40の設置面との間に鉛直方向に大きな空間s1が形成され、空間s1には着座者の脛部が位置する。よって、着座者の脛部が位置する空間s1を大きく確保することができる。
【0076】
また、座支持部材42の空気孔48,52aは、支持杆21の鉛直上方に配置されている。よって、椅子ユニット10を下方から見上げた際に、座支持部材42の空気孔48,52aが支持杆21で隠れて、視認されることが抑制される。
【0077】
(変形例1)
次に、本発明の変形例1を、主に図7に基づいて説明する。
以下の変形例の構成のうち、実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0078】
図7に示すように、本変形例の椅子ユニット10の座41Xの座クッション材60Xでは、前側領域60Aは、上記に示す実施形態の前部領域61を備えておらず、中間領域62Xを備えている。本実施形態では、上記に示す実施形態の前部領域61の領域と中間領域62の領域とを合わせた部分が、中間領域62Xとされている。中間領域62Xは、第二境界面65よりも前側から座クッション材60Xの前端面60fまでの領域である。中間領域62Xの硬度は、後部領域63の硬度よりも高い。中間領域62Xの厚さh2は、後部領域63の厚さh3より薄い。
【0079】
このように構成された椅子ユニット10では、前側領域60Aにおける座支持部材42に支持された部分の厚さh2は、後側領域60Bの座支持部材42で支持された部分の厚さh3よりも薄い。この構成によって、硬度の高い前側領域60Aの後部(本実施形態では中間領域62X)と硬度の低い後側領域60Bとが隣接して配置されることによって、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界部分(本実施形態では第二境界面65)が明確になる。言い換えれば、着座時に後側領域60Bに位置する臀部は、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界部分の後方に包み込まれるような状態になる。よって、着座時には臀部が前方にずれにくく、安定的な状態で着座することになる。起立する際には、大腿部に対して脛部(膝下の部分)を後方に曲げやすい。足を接地させた状態で、脛部を曲げて、臀部を前方に押し出しやすく、その後起立することができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
その一方で、前側領域60Aにおける座支持部材42に支持された部分の厚さh2を薄くすると、前寄りに着座した際に底づき感を感じやすくなる。このため、前側領域60Aの後部の硬度を、後側領域60B(本実施形態では後部領域63)の硬度よりも高くしている。この構成によって、前側領域60Aの後部は後側領域60Bよりも硬質であるため、前寄りに着座した際に前側領域60Aの後部に着座者の臀部が当たって座支持部材42の硬さを感じるような底づき感が抑制される。
【0080】
(変形例2)
次に、本発明の変形例2を、主に図8に基づいて説明する。
図8に示すように、本変形例の椅子ユニット10の座41Yの座クッション材60Yでは、前部領域61Yが座支持部材42に当接及び直接支持されていない。前側領域60Aの前部領域61Yと中間領域62Yとの境界面64Xの前端部は、座クッション材60の前端面60fの上下方向の中間に接続されている。中間領域62Yの前端部62fは、座クッション材60の前端面60fまでせり出している。中間領域62Yの硬度は、前部領域61Y及び後部領域63の硬度よりも高い。中間領域62Xの厚さh2は、後部領域63の厚さh3より薄い。
【0081】
このように構成された椅子ユニット10では、前側領域60Aにおける座支持部材42に支持された部分の厚さh2は、後側領域60Bの座支持部材42で支持された部分の厚さh3よりも薄い。この構成によって、硬度の高い前側領域60Aの後部(本実施形態では中間領域62Y)と硬度の低い後側領域60Bとが隣接して配置されることによって、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界部分(本実施形態では第二境界面65)が明確になる。言い換えれば、着座時に後側領域60Bに位置する臀部は、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界部分の後方に包み込まれるような状態になる。よって、着座時には臀部が前方にずれにくく、安定的な状態で着座することになる。起立する際には、大腿部に対して脛部(膝下の部分)を後方に曲げやすい。足を接地させた状態で、脛部を曲げて、臀部を前方に押し出しやすく、その後起立することができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
その一方で、前側領域60Aにおける座支持部材42に支持された部分の厚さh2を薄くすると、前寄りに着座した際に底づき感を感じやすくなる。このため、前側領域60Aの後部の硬度を、後側領域60B(本実施形態では後部領域63)の硬度よりも高くしている。この構成によって、前側領域60Aの後部は後側領域60Bよりも硬質であるため、前寄りに着座した際に前側領域60Aの後部に着座者の臀部が当たって座支持部材42の硬さを感じるような底づき感が抑制される。
また、中間領域62Yよりも硬度の低い前部領域61Yが中間領域62Yの上側を覆っているため、脛部を後方に曲げるときに、抵抗を感じにくい。
【0082】
(変形例3)
次に、本発明の変形例3を、主に図9に基づいて説明する。
図9に示すように、本変形例の椅子ユニット10の座41Zの座クッション材60Zでは、座支持部材42Zが座クッション材60Zを前後方向Yの略全長にわたって支持している。中間領域62Zの硬度は、前部領域61Z及び後部領域63Zの硬度よりも高い。中間領域62Zの厚さh12は、後部領域63の厚さh13より薄い。前部領域61Zの厚さh11は、中間領域62Zの厚さh12よりも厚く、且つ後部領域63の厚さh13よりも薄い。なお、座支持部材42Zが座クッション材60Zを前後方向Yの略全長にわたって支持していなくても、前部領域61Zの厚さh11が中間領域62Zの厚さh12よりも厚く且つ後部領域63の厚さh13よりも薄ければよい。
【0083】
このように構成された椅子ユニット10では、前側領域60Aにおける座支持部材42Zに支持された部分の厚さh11,h12は、後側領域60Bの座支持部材42Zで支持された部分の厚さh13よりも薄い。この構成によって、硬度の高い前側領域60Aの後部(本実施形態では中間領域62Z)と硬度の低い後側領域60Bとが隣接して配置されることによって、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界部分(本実施形態では第二境界面65)が明確になる。言い換えれば、着座時に後側領域60Bに位置する臀部は、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界部分の後方に包み込まれるような状態になる。よって、着座時には臀部が前方にずれにくく、安定的な状態で着座することになる。起立する際には、大腿部に対して脛部(膝下の部分)を後方に曲げやすい。足を接地させた状態で、脛部を曲げて、臀部を前方に押し出しやすく、その後起立することができる。よって、起立前に足を接地させた状態で脛部を曲げて臀部を前方に押し出しやすいため、起立動作がしやすい。
その一方で、前側領域60Aにおける座支持部材42Zに支持された部分の厚さh11,h12を薄くすると、前寄りに着座した際に底づき感を感じやすくなる。このため、前側領域60Aの後部の硬度を、後側領域60B(本実施形態では後部領域63Z)の硬度よりも高くしている。この構成によって、前側領域60Aの後部は後側領域60Bよりも硬質であるため、前寄りに着座した際に前側領域60Aの後部に着座者の臀部が当たって座支持部材42Zの硬さを感じるような底づき感が抑制される。
また、中間領域62Zよりも硬度の低い前部領域61Zが中間領域62Zの上側を覆っているため、脛部を後方に曲げるときに、抵抗を感じにくい。
【0084】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0085】
例えば、前側領域60Aと後側領域60Bとの境界である第二境界面65が、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜していなくてもよい。前部領域61の硬度が、中間領域62の硬度よりも高くてもよい。前部領域61と中間領域62との境界面である第一境界面64が、前方に向かうにしたがって次第に下方に向かって傾斜していなくてもよい。座支持部材42の下面42dが、前方に向かうにしたがって次第に上方に向かって傾斜していなくてもよい。
【0086】
また、後側領域が、硬度の異なる複数種類の部材から構成されていてもよい。この場合には、前側領域の後部の硬度が、後側領域を構成する最も硬度が高い部材の硬度よりも高ければよい。
【0087】
また、前側領域60A及び後側領域60Bは、それぞれ少なくとも一部が座支持部材42に支持されていればよい。
【0088】
また、座支持部材42の空気孔48,52aは、支持杆21の鉛直上方に配置されていなくてもよい。
【0089】
また、支持構造体20に複数の椅子40が取り付けられた連結椅子でなく、独立した1つの椅子であってもよい。
【0090】
また、脚22が、座41の直下に配置されていてもよい。椅子40が背凭れ42を備えていなくてもよい。
【0091】
また、座クッション材60は、モールドウレタンでなくスラブウレタンからなっていてもよい。
【0092】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 椅子ユニット
40 椅子
42 座支持部材(支持部材)
60 座クッション材(座のクッション材)
60A 前側領域
60B 後側領域
61 前部領域
62 中間領域
63 後部領域
64 第一境界面(境界面)
65 第二境界面(境界面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9