(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164420
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】切替装置
(51)【国際特許分類】
E06B 9/322 20060101AFI20221020BHJP
E06B 9/80 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
E06B9/322
E06B9/80 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069900
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000134958
【氏名又は名称】株式会社ニチベイ
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大治
【テーマコード(参考)】
2E042
2E043
【Fターム(参考)】
2E042CA03
2E042CB04
2E042CB06
2E043AA01
2E043AA02
2E043BB15
2E043BC02
2E043BE15
(57)【要約】
【課題】遮蔽装置の開閉に係る動作を行う作動機構を遮蔽材の状態に応じて切替えて動作させることができる技術を提供する。
【解決手段】遮蔽材を開閉させる遮蔽装置に設けられる切替装置6であって、遮蔽材を昇降させる駆動軸の回転が入力されるギア軸62と、ギア軸62の回転に応じてギア軸62の軸方向に移動する移動部65と、駆動軸の回転力を遮蔽材の昇降または開閉に係る動作を行う作動機構67に伝達するか、または、作動機構67に発生される力を駆動軸に伝達する伝達部66と、移動部65の移動に応じて、伝達部66による伝達がなされる伝達状態と、伝達が解除される非伝達状態とを切り替える切替部64とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽材を開閉させる遮蔽装置に設けられる切替装置であって、
前記遮蔽材を昇降させる駆動軸の回転が入力されるギア軸と、
前記ギア軸の回転に応じて該ギア軸の軸方向に移動する移動部と、
前記駆動軸の回転力を前記遮蔽材の昇降または開閉に係る動作を行う作動機構に伝達するか、または、該作動機構に発生される力を前記駆動軸に伝達する伝達部と、
前記移動部の移動に応じて、前記伝達部による伝達がなされる伝達状態と、該伝達が解除される非伝達状態とを切り替える切替部と
を備える切替装置。
【請求項2】
前記作動機構は、該作動機構を動作させるための従動ギアを有し、
前記伝達部は、前記ギア軸に噛み合うとともに、前記切替装置が伝達状態にある場合に前記従動ギアと噛み合う中間ギアを有することを特徴とする請求項1に記載の切替装置。
【請求項3】
前記切替部は、軸方向に直交する直交方向に移動可能に設けられるとともに、前記移動部を案内する案内部が形成され、該案内部は、前記軸方向に沿って前記移動部を案内する非伝達領域と、該非伝達領域に対して前記直交方向における一方側に異なる位置において前記軸方向に沿って前記移動部を案内する伝達領域とを含み、
前記伝達部は、前記直交方向における逆方側に前記切替部が移動された場合、前記中間ギアと前記従動ギアとを噛み合わせることを特徴とする請求項2に記載の切替装置。
【請求項4】
前記移動部は、前記ギア軸と噛み合うスライドギアと、該スライドギアにより押動されて前記案内部に沿って前記軸方向に移動するスライダとを有することを特徴とする請求項3に記載の切替装置。
【請求項5】
前記スライドギアを回転可能に軸支する支持軸を更に備え、
前記スライドギアは、回転されることにより前記支持軸の軸方向に移動することを特徴とする請求項4に記載の切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、遮蔽材を開閉する遮蔽装置の切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遮蔽装置における遮蔽材の動作を制動する技術として、遮蔽材を昇降させる駆動軸の回転速度を所定速度以下に制限する制動装置が知られている(特許文献1参照)。この制動装置によれば、遮蔽材が自重により下降する際に、遮蔽装置の最下端にあるウェイトバーやボトムレールなどの部材が勢いよく床面に衝突することを防止することができる。しかしながら、この技術によれば、駆動軸の回転が常時制動されるため、遮蔽材が所望の位置まで自重により下降しない事態が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遮蔽装置の開閉に係る動作を行う作動機構を遮蔽材の状態に応じて切替えて動作させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様は、遮蔽材を開閉させる遮蔽装置に設けられる切替装置であって、前記遮蔽材を昇降させる駆動軸の回転が入力されるギア軸と、前記ギア軸の回転に応じて該ギア軸の軸方向に移動する移動部と、前記駆動軸の回転力を前記遮蔽材の昇降または開閉に係る動作を行う作動機構に伝達するか、または、該作動機構に発生される力を前記駆動軸に伝達する伝達部と、前記移動部の移動に応じて、前記伝達部による伝達がなされる伝達状態と、該伝達が解除される非伝達状態とを切り替える切替部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、遮蔽装置の開閉に係る動作を行う作動機構を遮蔽材の状態に応じて切替えて動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る遮蔽装置の構成を示す正面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る遮蔽装置の構成を示す概略平面透視図である。
【
図3】ボトムレールが上昇された遮蔽装置を示す正面図である。
【
図4】第1駆動軸が回転される遮蔽装置を示す概略平面透視図である。
【
図6】ブレーキ装置の内部構成を示す斜視図である。
【
図7】ブレーキ装置の内部構成を示す右側面図である。
【
図10】非伝達状態にあるブレーキ装置を示す左側面図である。
【
図11】伝達状態にあるブレーキ装置を示す左側面図である。
【
図12】第1ブレーキのみが作動する状態における遮蔽装置を示す正面図である。
【
図13】非伝達状態におけるブレーキ装置を示す斜視図である。
【
図15】第1ブレーキ及びブレーキ装置が作動する状態における遮蔽装置を示す正面図である。
【
図16】伝達状態におけるブレーキ装置を示す斜視図である。
【
図18】第2の実施形態に係る遮蔽装置の構成を示す概略図である。
【
図19】第2の実施形態に係るブレーキ装置の構成を示す概略平面図である。
【
図20】ボトムレールが下端位置にある遮蔽装置を示す概略側面図である。
【
図21】スラットが回転される遮蔽装置を示す概略側面図である。
【
図22】スラットが上昇される遮蔽装置を示す概略側面図である。
【
図23】ボトムレールが上限位置にある遮蔽装置を示す概略側面図である。
【
図24】下降操作がなされた遮蔽装置を示す概略側面図である。
【
図25】ボトムレールが自重により下降する遮蔽装置を示す概略側面図である。
【
図26】スラットが連動回転される遮蔽装置を示す概略側面図である。
【
図27】スラットが全閉されるとともにボトムレールが下端位置にある遮蔽装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態においては、遮蔽材として、昇降可能な2種のスクリーンを備えるプリーツスクリーンに本発明を適用した遮蔽装置を例にとり説明を行う。なお、本実施形態においては、遮蔽装置が設けられた際の室内側の面を正面、室外側の面を背面、正面と背面とからなる方向を前後方向、遮蔽装置の長手方向を左右方向と称して以後説明を行う。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0009】
<第1の実施形態>
(全体構成)
第1の実施形態に係る遮蔽装置の全体構成について説明する。
図1、
図2は、それぞれ、本実施形態に係る遮蔽装置の構成を示す正面図、概略平面透視図である。なお、
図1においてはボトムレールが下端位置まで下降された状態にある遮蔽装置が示されており、そのヘッドボックスのみ内部が示されている。
【0010】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る遮蔽装置1は、ヘッドボックス2と、第1移動部材としてのボトムレール31と、紐状またはテープ状に形成された2本の昇降コード32と、第1遮蔽材としてのスクリーン33と、第2移動部材としての中間バー41と、紐状またはテープ状に形成された2本の調光コード42と、第2遮蔽材としてのスクリーン43と、操作ユニット5とを備える。
【0011】
ヘッドボックス2は、内部に収容空間を画成する略直方体状に形成され、複数のブラケット21を介して不図示の窓枠等に固定される。ヘッドボックス2内には、第1駆動軸201Aと、2つの第1巻取ドラム202Aと、第1ストッパ203Aと、第1ブレーキ204Aと、第2駆動軸201Bと、2つの第2巻取ドラム202Bと、第2ストッパ203Bと、第2ブレーキ204Bと、連動ギア205と、ブレーキ装置6とが収容される。
【0012】
第1駆動軸201A、2つの第1巻取ドラム202A、第1ストッパ203A、及び第1ブレーキ204Aは、ボトムレール31を昇降する第1駆動系を構成する。また、第2駆動軸201B、2つの第2巻取ドラム202B、第2ストッパ203B、及び第2ブレーキ204Bは、中間バー41を昇降する第2駆動系を構成する。連動ギア205は、所定の条件下において第1駆動系に第2駆動系を連動させるように構成される。本実施形態において、第1駆動系は後方側に配され、第2駆動系は前方側に配され、第1駆動系と第2駆動系とが前後方向に互いに位置を異ならせて並設される。なお、例えば、第1駆動系と第2駆動系とを上下方向に位置を異ならせるように並設しても良く、第1駆動系と第2駆動系の配列を前後方向あるいは上下方向に逆にしても良い。
【0013】
第1駆動軸201A、第2駆動軸201Bは、それぞれ、左右方向に延在する角柱状の部材であり、ヘッドボックス2内において軸心方向を左右方向に向けて回転可能に軸支される。ここで、第1駆動軸201Aの軸心は、第2駆動軸201Bの軸心と上下方向において同位置且つ後方に位置し、軸心の位置が前後方向に異なっている。
【0014】
2つの第1巻取ドラム202Aは、それぞれ、第1駆動軸201Aと一体回転するように第1駆動軸201Aに貫通され、2つの昇降コード32のうち対応する昇降コード32の一端が巻取及び巻解き可能に連結される。2つの第2巻取ドラム202Bは、それぞれ、第2駆動軸201Bと一体回転するように第2駆動軸201Bに貫通され、2つの調光コード42のうち対応する調光コード42の一端が巻取及び巻解き可能に連結される。
【0015】
第1ストッパ203Aは、第1駆動軸201Aの巻解き方向の回転を規制する。第2ストッパ203Bは、第2駆動軸201Bの巻解き方向の回転を規制する。また、第1ストッパ203A、第2ストッパ203Bは、それぞれ、第1駆動軸201A、第2駆動軸201Bの回転を規制する状態と許容する状態とに切替可能に構成される。
【0016】
第1ブレーキ204Aは、第1駆動軸201Aの巻解き方向の回転速度を減速させる。第2ブレーキ204Bは、第2駆動軸201Bの巻解き方向の回転速度を減速させる。第1ブレーキ204A、第2ブレーキ204Bは、それぞれ、第1駆動軸201A、第2駆動軸201Bの回転速度を減速させることで、ボトムレール31、中間バー41が下端位置まで下降した際に生じる衝撃力を緩和する。
【0017】
ボトムレール31は、2本の昇降コード32の他端が接続され、遮蔽装置1において最下端に位置するようにヘッドボックス2から吊り下げ支持されており、左右方向に長尺に形成された部材である。中間バー41は、2本の調光コード42の他端が接続され、上下方向においてヘッドボックス2とボトムレール31との間に位置するようにヘッドボックス2から吊り下げ支持されており、左右方向に長尺に形成された部材である。
【0018】
スクリーン33は、上端が中間バー41の下面に連結されるとともに下端がボトムレール31の上面に連結され、上下方向に折りたたみ可能なプリーツ状に形成され、2本の昇降コード32が部分的に上下方向に挿通される遮蔽部材である。スクリーン43は、上端がヘッドボックス2の下面に連結されるとともに下端が中間バー41の上面に連結され、上下方向に折りたたみ可能なプリーツ状に形成され、2本の調光コード42が部分的に上下方向に挿通される遮蔽部材である。
【0019】
操作ユニット5は、例えばボールチェーンとして構成される無端状の操作コード51を有し、ユーザの操作コード51に対する昇降操作に応じて、ボトムレール31、中間バー41を昇降させるように、第1駆動軸201A、第2駆動軸201Bを回転させる。
【0020】
(ブレーキ装置の構成)
ブレーキ装置の構成について説明する。
図3は、ボトムレールが上昇された遮蔽装置を示す正面図である。
図4は、第1駆動軸が回転される遮蔽装置を示す概略平面透視図である。
図5は、ブレーキ装置の外観を示す斜視図である。
図6、
図7は、それぞれ、ブレーキ装置の内部構成を示す斜視図、右側面図である。
図8、
図9は、それぞれ、移動部、伝達部の構成を示す斜視図である。
図10、
図11は、それぞれ、非伝達状態、伝達状態にあるブレーキ装置を示す左側面図である。
【0021】
図3に示すように、ボトムレール31が上昇された状態において、操作ユニット5の操作コード51が所定距離だけ牽引された後に手放されると、第1ストッパ203Aによる第1駆動軸201Aに対する回転規制が解除され、
図1に示すようにボトムレール31が自重により下端位置まで下降する。ブレーキ装置6は、
図4に示すように、第1駆動軸201Aに接続され、ボトムレール31が下端位置に達する前に第1駆動軸201Aの回転速度を減速させる。第1ブレーキ204Aが第1駆動軸201Aの巻解き方向の回転を常時減速するのに対して、ブレーキ装置6は、ボトムレール31の位置、具体的には第1駆動軸201Aの回転量に応じて減速を行う。なお、ここでいう回転量は、ボトムレール31を基準位置から現在位置まで下降させるのに要した第1駆動軸201Aの回転量を意味する。即ち、基準位置における第1駆動軸201Aの回転量はゼロである。また、基準位置は上限位置であってもよいし、予め定められた位置であってもよい。
【0022】
図5~
図7に示すように、ブレーキ装置6は、収容部材60、入力ギア61、ギア軸62、支持軸63、切替部64、移動部65、伝達部66、ブレーキ67を備える。収容部材60は、全体として略直方体状に形成され、収容空間を画成するとともにヘッドボックス2内における一端部(
図1~
図4中左側)に固定可能に形成された部材である。収容部材60の収容空間には、入力ギア61、ギア軸62、支持軸63、切替部64、移動部65、伝達部66、ブレーキ67が収容される。
【0023】
入力ギア61は、左右方向を向く軸周りに回転するように軸支されるギアである。また、入力ギア61は、一体回転可能に第1駆動軸201Aと接続されて第1駆動軸201Aの回転力が入力される。ギア軸62は、入力ギア61の前方側に位置付けられ、その軸方向が左右方向を向くように収容部材60に回転可能に軸支され、左右方向略全域に延在する歯形が形成された部材である。また、ギア軸62は、左右方向内方側において入力ギア61と噛み合うように設けられる。
【0024】
支持軸63は、ギア軸62の前方側に位置付けられ、軸部630と、突出部631とを有する。軸部630は、左右方向に延在してその軸方向が左右方向を向き、外周壁にねじ溝が形成される部材である。突出部631は、軸部630の左右方向外方(
図6中左上側)において径方向に延在する壁部から左右方向内方(
図6中右下側)に突出するように形成される。
【0025】
切替部64は、全体として、前後方向及び左右方向に延在する略板状に形成され、前後方向にのみ移動可能に収容部材60に設けられた部材である。切替部64には、案内部641が形成されるとともに、案内部641の後方に軸受部642(
図7参照)が形成される。案内部641は、左右方向に延びるとともに上下方向に貫通するスリットとして形成され、左右方向内方に位置する非伝達領域R1と、非伝達領域R1に対して左右方向外方に位置する伝達領域R2と、左右方向において非伝達領域R1と伝達領域R2との間に位置する移行領域R3とを有する。非伝達領域R1は、所定距離だけ左右方向に直線状に延びるスリットである。伝達領域R2は、非伝達領域R1より前方に位置し、所定距離だけ左右方向に略直線状に延びるスリットである。移行領域R3は、非伝達領域R1と伝達領域R2とを接続するスリットである。
【0026】
移動部65は、
図8に示すように、スライドギア651とスライダ652とを有する。スライドギア651は、支持軸63の軸部630により挿通されて軸支されるとともにギア軸62と噛み合うように形成されるギアであり、係合溝651a、挿通孔651b、突出部651cが形成される。スライダ652は、スライドギア651により押動されることにより切替部64の案内部641に沿って移動するように形成された部材であり、被係合部652a、被案内部652bが形成される。
【0027】
係合溝651aは、スライドギア651の全周に亘って径内側に凹むように形成された溝である。スライドギア651が支持軸63に軸支されるとともにスライダ652が切替部64に取り付けられた状態において、係合溝651a内にスライダ652の被係合部652aが位置付けられる。被係合部652aは、係合溝651aに対応した略U字状に形成され、これによって、スライドギア651の回転を阻害することなく、係合溝651aにより左右方向に係合される際の当接面積を大きくすることができる。
【0028】
挿通孔651bは、支持軸63の軸部630が挿通可能に形成された孔であり、これによって、スライドギア651は支持軸63により回転可能に軸支される。挿通孔651bによって形成されるスライドギア651の内周壁には、軸部630の外周壁に形成されたねじ溝と螺合するねじ山が形成される。これによって、スライドギア651は、
図6に示すように、回転されることによって、左右方向に移動することとなる。
図7に示すように、入力ギア61がギア軸62と噛み合い、ギア軸62がスライドギア651と噛み合うため、ギア軸62は入力ギア61と逆方向に回転し、スライドギア651は入力ギア61と同方向に回転する。本実施形態において、第1駆動軸201Aが巻解き方向に回転される場合、スライドギア651は、右側側面から見て時計回りに回転され、左右方向外方に移動する。
【0029】
被案内部652bは、スライダ652の下端部に形成され、スリットとして形成された案内部641に挿通可能に且つ案内部641に沿って摺動可能に形成される。スライドギア651が左右方向に移動されると、係合溝651aに係合された被係合部652aを介してスライダ652がスライドギア651に押動されるとともに、スライダ652が切替部64の案内部641に沿って左右方向に移動する。
【0030】
突出部651cは、スライドギア651の左右方向外方の側面において左右方向外方に突出するように形成される。スライドギア651が左右方向外方に移動され、支持軸63の左右方向外方端部に達した際、突出部651cと支持軸63の突出部631とがスライドギア651の回転方向に係合し、スライドギア651の回転、及び左右方向外方への更なる移動が防止される。
【0031】
伝達部66は、
図9に示すように、環状部660、第1腕部661、第2腕部662、中間ギア663を有する。環状部660は、環状に形成され、ギア軸62の左右方向外方端部に形成された円筒状の部分が挿通されることによって、左右方向を向く軸周りに回転可能にギア軸62に軸支される。第1腕部661は、環状部660の下方に位置する切替部64と連結可能に環状部660から径方向に延在する部材であり、左右方向内方に延在する連結軸661aが先端部に設けられる。第2腕部662は、第1腕部661の後方に位置するとともに、環状部660の中心を頂点として第1腕部661と所定の角度を成すように環状部660から径方向に延在する部材であり、左右方向内方に延在する支持軸662aが先端部に設けられる。
【0032】
ブレーキ67は、本実施形態において遠心ブレーキとして構成され、本体部670と従動ギア671とを有する。本体部670は、内部に空間を画成する部材であり、この空間には、遠心力によりブレーキシューが本体部670の内壁に摺接するように構成されるとともに左右方向を向く軸周りに回転する回転体(不図示)が収容される。従動ギア671は、本体部670内の回転体と一体回転可能に接続され、中間ギア663と噛み合うように構成される。なお、ブレーキ67は、回転力を減速させる制動力を発生させるものであれば良く、他種の減速装置であっても良い。この種の減速装置としては、例えば、粘性の高いオイルの抵抗力により制動力を発生させるオイルブレーキが挙げられる。
【0033】
中間ギア663は、支持軸662aに回転可能に軸支されるとともに、ギア軸62、ブレーキ67の従動ギア671に噛み合うように形成され、ギア軸62と常時噛み合うように設けられる。伝達部66は、連結軸661aが回転可能に切替部64の軸受部642に嵌合されて切替部64と連結され、これによって、切替部64の前後方向の移動に応じて伝達部66が回転される。
【0034】
第2腕部662は、
図10に示すように、切替部64が前方に位置する場合に中間ギア663と従動ギア671が離間し、
図11に示すように、切替部64が後方に移動された場合に中間ギア663が上方に移動されて従動ギア671と噛み合うように設けられる。中間ギア663と従動ギア671とが噛み合うことによって、中間ギア663、ギア軸62、入力ギア61を介して、第1駆動軸201Aがブレーキ67によって減速される。
【0035】
ギア軸62、支持軸63、移動部65のスライドギア651によれば、規制機構が構成される。この規制機構は、支持軸63の軸部630におけるスライドギア651の移動範囲を制限して第1駆動軸201Aの回転範囲を制限し、これによって、第1駆動軸201Aにより昇降されるボトムレール31及びスクリーン33の昇降範囲を制限することができる。本実施形態においては、規制機構によってボトムレール31の下端位置が設定される。
【0036】
また、切替部64、移動部65のスライダ652、伝達部66によれば、切替機構が構成される。この切替機構は、切替部64の案内部641における他の部分とは前後方向に位置がずらされた領域に移動部65のスライダ652が案内された場合に移動部65を前後方向に移動させ、伝達状態と非伝達状態とにブレーキ装置6を切り替える。ブレーキ装置6が伝達状態にある場合、伝達部66の中間ギア663がブレーキ67の従動ギア671と噛み合うことによって、ブレーキ67の制動力が第1駆動軸201Aに伝達される。一方、ブレーキ装置6が非伝達状態にある場合、第1駆動軸201Aに対するブレーキ67の制動力の伝達は解除される。本実施形態においては、規制機構により設定されるボトムレール31の下端位置に対応する範囲(伝達領域R2)において、ブレーキ装置6が伝達状態となるように設定される。
【0037】
(ブレーキ装置の動作)
ブレーキ装置に動作について説明する。
図12、
図15は、それぞれ、第1ブレーキのみが作動する状態、第1ブレーキ及びブレーキ装置が作動する状態における遮蔽装置を示す正面図である。
図13、
図16は、それぞれ、非伝達状態、伝達状態におけるブレーキ装置を示す斜視図である。
図14は、
図12のA-A線断面図である。
図17は、
図15のB-B線断面図である。
【0038】
図12に示すように、遮蔽装置1において、ボトムレール31が自重により下降されており、且つ下端位置から比較的離間した位置にある場合、
図13に示すように、移動部65のスライダ652が切替部64の案内部641における非伝達領域R1内に位置する。この際、
図14に示すように、ブレーキ装置6は、中間ギア663と従動ギア671とが離間して第1駆動軸201Aがブレーキ67と接続されない非伝達状態となる。非伝達状態において、遮蔽装置1における第1駆動軸201Aの回転は、第1ブレーキ204Aのみにより減速される。
【0039】
一方、
図15に示すように、遮蔽装置1において、ボトムレール31が自重により下降されており、且つ下端位置から比較的近接した位置にある場合、
図16に示すように、スライダ652が案内部641における移行領域R3を超えて伝達領域R2内まで移動する。この際、
図17に示すように、ブレーキ装置6は、中間ギア663と従動ギア671とが噛み合い第1駆動軸201Aがブレーキ67に接続される伝達状態となる。伝達状態において、遮蔽装置1における第1駆動軸201Aの回転は、ブレーキ装置6によって更に減速される。
【0040】
このように、本実施形態に係るブレーキ装置6によれば、第1駆動軸201Aの回転量に応じて中間ギア663と従動ギア671との伝達状態を切り替えることによって、ボトムレール31の位置に応じてブレーキ67により第1駆動軸201Aの回転を減速させることができる。即ち、規制機構と切替機構との連携により、ボトムレール31の位置に応じてブレーキ67により第1駆動軸201Aの回転を減速させることができる。
【0041】
なお、本実施形態において、遮蔽材として2つのスクリーン33,43を備える遮蔽装置1に本発明を適用するものとして説明したが、本発明は軸部材の回転により遮蔽材の開閉状態を操作可能な全ての遮蔽装置に適用可能である。
【0042】
また、本実施形態における案内部641のスリット形状を適宜変更することで、ブレーキ67によって第1駆動軸201Aの回転が更に減速されるボトムレール31の位置を任意に決定することができるため、柔軟な装置設計が可能となる。
【0043】
また、本実施形態において、ボトムレール31が所定の位置(下端位置近傍)まで下降すると、ブレーキ67によって第1駆動軸201Aの回転が更に減速されるものとして説明したが、遮蔽装置1とは異なる構成を有する他の遮蔽装置に適用することも可能である。例えば、適用対象とする遮蔽装置がロールスクリーンの場合、スクリーンが巻取パイプに巻き取られてスクリーン端部のウェイトバーが所定の位置(上端位置近傍)まで上昇すると、同様の規制機構と切替機構との連携によりブレーキが作動して巻取パイプの回転が減速されるようにしてもよい。これにより、スクリーンが勢いよく巻き取られてウェイトバーが跳ね上がるのを防止することができる。
【0044】
<第2の実施形態>
(構成)
第2の実施形態に係る遮蔽装置及びクラッチ装置の構成について説明する。
図18は、本実施形態に係る遮蔽装置の構成を示す概略図である。
図19は、本実施形態に係るブレーキ装置の構成を示す概略平面図である。
【0045】
図18に示すように、本実施形態に係る遮蔽装置1Aは、横型ブラインドとして構成される点、ブレーキ装置6に代えてクラッチ装置6Aを備える点において第1の実施形態とは異なる。遮蔽装置1Aは、ヘッドボックス7と、ヘッドボックス7内に設けられる操作ユニット9と、ボトムレール81と、複数のスラット82とを備える。ヘッドボックス7内には、第1駆動軸701及び第2駆動軸702と、第1駆動軸701により回転される2つの昇降ドラム703と、第2駆動軸702により回転される2つの回転ドラム704と、クラッチ装置6Aとが設けられている。
【0046】
操作ユニット9は、ヘッドボックス7内の
図18中右側に設けられており、ヘッドボックス7から垂下する操作コード91、操作棒92を備える。操作ユニット9は、操作コード91が牽引されることにより第1駆動軸701を回転駆動し、操作棒92が軸周りに回転されることにより第2駆動軸702を回転駆動する。操作コード91は、その下端位置を維持するように且つ操作ユニット9内において巻き取られるように構成される。操作ユニット9は、操作コード91が所定距離より大きく牽引されることによって第1駆動軸701を回転駆動する。また、操作ユニット9は、操作コード91が操作されない状態においては、第1駆動軸701の回転を拘束しており、この拘束は、操作コード91が所定距離以下に牽引されることによって解除される。
【0047】
スラット82は、ヘッドボックス7とボトムレール81との間において、上下方向に複数配置されるようラダーコード84により支持されている。ラダーコード84は、一端が回転ドラム704に連結されてヘッドボックス7から垂下すると共に、他端がボトムレール81に連結され、スラット82を挟むようにその前方及び後方に配されてスラット82を個別に支持する。スラット82は、回転ドラム704の回転に応じて前方及び後方のラダーコード84が互いに上下方向に沿って相対移動することにより傾動し、全閉、水平(全開)、または反全閉状態等に回転する。
【0048】
ボトムレール81は、昇降ドラム703に巻取り及び巻解き可能に一端が連結された昇降コード83の他端と連結することにより、遮蔽装置1Aの最下端に位置するように吊り下げ支持されている。昇降コード83が昇降ドラム703により巻取り及び巻解きがなされることでボトムレール81が昇降移動され、これによって複数のスラット82も昇降される。
【0049】
クラッチ装置6Aは、入力ギア61が省略される点、ギア軸62に代えてギア軸62Aを備える点、ブレーキ67に代えてクラッチ68を備える点において、ブレーキ装置6とは異なる。クラッチ68は、本体部680と、従動ギア681とを有する。従動ギア681は、中間ギア663と噛み合い、本体部680に回転力を入力する。本体部680は、第2駆動軸702と接続され、従動ギア681により入力された回転力のうち、一方向の回転力のみを第2駆動軸702に伝達する。
【0050】
本実施形態においては、クラッチ68は、ボトムレール81が降下される際の回転方向の回転力のみを第2駆動軸702に伝達する。また、入力ギア61が省略され、ギア軸62Aが第1駆動軸701と一体回転可能に接続されるため、第1駆動軸701の回転が第2駆動軸702に伝達される際、第1駆動軸701と第2駆動軸702は同一方向に回転される。
【0051】
(動作)
第2の実施形態に係る遮蔽装置の動作について説明する。
図20~
図27は、いずれも遮蔽装置を示す概略側面図であり、それぞれ、ボトムレールが下端位置にある状態、スラットが回転される状態、スラットが上昇される状態、ボトムレールが上限位置にある状態、下降操作がなされた状態、ボトムレールが自重により下降する状態、スラットが連動回転される状態、スラットが全閉されるとともにボトムレールが下端位置にある状態を示す。
【0052】
図20に示すように、スラット82の昇降が停止された状態において、
図21に示すように、操作棒92が操作者により軸周りに回転されると、第2駆動軸702の回転によって回転ドラム704が回転され、スラット82が傾動される。
【0053】
また、
図22に示すように、操作コード91が操作者により所定距離より大きく牽引されると、第1駆動軸701の回転によって昇降ドラム703が回転され、ボトムレール81が上昇される。この牽引動作が複数回行われると、
図23に示すように、ボトムレール81が上端位置まで上昇される。
【0054】
また、
図24に示すように、操作コード91が操作者により所定距離以下だけ牽引されると、第1駆動軸701の拘束が解除され、ボトムレール81が自重によって降下し、
図25に示すように、ボトムレール81が下端近傍に達すると、クラッチ装置6Aにおいて、スライダ652が案内部641における移行領域R3を超えて伝達領域R2内まで移動する。これによって、クラッチ装置6Aは、中間ギア663と従動ギア681とが噛み合い、第1駆動軸701がクラッチ68に接続される伝達状態となる。
【0055】
伝達状態において、遮蔽装置1Aにおける第1駆動軸701の回転は、クラッチ68を介して第2駆動軸702に伝達され、
図26に示すように、昇降ドラム703と回転ドラム704とが連動して回転し、これによって、ボトムレール81が下降するととともにスラット82が傾動され、
図27に示すように、ボトムレール81が下端位置で停止するとともに遮蔽装置1Aが全閉状態となる。
【0056】
このように、切替機構は、ブレーキ67だけでなく、クラッチ68を切替対象とすることができる。即ち、切替機構は、遮蔽材の昇降または回転、即ち遮蔽材の開閉に係る動作を行う作動機構に対する遮蔽材を昇降させる駆動軸への力の伝達、または作動機構による駆動軸への力の伝達を切り替えることができる。また、第1駆動軸701の回転範囲は必ずしも規制される必要がなく、ギア軸62、切替部64、移動部65、伝達部66、スライドギア651の移動範囲を制限しない支持軸63により、伝達状態を切り替える切替装置が構成されても良い。
【0057】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0058】
1 遮蔽装置
6 ブレーキ装置
61 入力ギア
62,62A ギア軸
63 支持軸
64 切替部
65 移動部
66 伝達部
67 ブレーキ
68 クラッチ