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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164425
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】撮像装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/359 20110101AFI20221020BHJP
   H04N 5/374 20110101ALI20221020BHJP
【FI】
H04N5/359
H04N5/359 800
H04N5/374
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069909
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】柴田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】小田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 祐喜
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX11
5C024CY17
5C024CY27
5C024GX03
5C024GX16
5C024GX18
5C024GY39
5C024GY41
5C024HX35
5C024HX40
(57)【要約】

【課題】回路規模を増大させることなく、イメージセンサによる過光量の受光を高精度に検知する。
【解決手段】撮像装置は、光電変換素子と、前記光電変換素子で光電変換された信号を信号線に出力する第1トランジスタと、を有する画素部と、前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを検知する過光量検知回路と、を備える。前記過光量検知回路は、前記信号線と基準電位ノードとの間に直列に接続される第2トランジスタ及びキャパシタと、電源電圧の電圧レベルの変動、前記信号線の寄生抵抗、及び前記第1トランジスタの閾値電圧のばらつきの少なくとも一つを考慮に入れて前記第2トランジスタのゲート電圧を調整するダミー回路と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と、前記光電変換素子で光電変換された信号を信号線に出力する第1トランジスタと、を有する画素部と、
前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを検知する過光量検知回路と、を備え、
前記過光量検知回路は、
前記信号線と基準電位ノードとの間に直列に接続される第2トランジスタ及びキャパシタと、
電源電圧の電圧レベルの変動、前記信号線の寄生抵抗、及び前記第1トランジスタの閾値電圧のばらつきの少なくとも一つを考慮に入れて前記第2トランジスタのゲート電圧を調整するダミー回路と、を有する、撮像装置。
【請求項2】
前記ダミー回路は、
前記第1トランジスタに対応する第1のダミートランジスタと、前記第1のダミートランジスタに接続されるダミー信号線と、を有するダミー画素部と、
前記ダミー信号線の電位に応じて前記第2トランジスタのゲート電圧を制御する第2のダミートランジスタと、を有する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記信号線の寄生抵抗と前記ダミー信号線の寄生容量とが等しくなるように、前記第2トランジスタのゲート電圧が制御される、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第2のダミートランジスタ及び前記第2トランジスタは、カレントミラー回路を構成する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1のダミートランジスタは、前記第1トランジスタと同一のサイズ、同一の導電型及び同一の電気特性を有し、
前記第2のダミートランジスタは、前記第2トランジスタと同一のサイズ、同一の導電型及び同一の電気特性を有する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
互いに交差する第1方向及び第2方向に配置される複数の前記画素部を有する画素アレイ部を備え、
前記ダミー画素部は、前記画素アレイ部内の前記第1方向に配置される2以上の前記画素部に対応づけて設けられ、
前記第2のダミートランジスタは、前記第1方向に配置される前記2以上の画素部に対応する2以上の前記第2トランジスタのそれぞれに対して別個に設けられる、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記ダミー画素部は、前記第2方向の同一行、かつ前記第1方向に配置される前記2以上の第2トランジスタに対応づけて設けられ、
前記第2のダミートランジスタは、前記第2方向の同一行、かつ前記第1方向に配置される前記2以上の第2トランジスタのそれぞれに対して別個に設けられる、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第2のダミートランジスタは、対応する前記第2トランジスタの近傍に配置される、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記ダミー画素部は、前記画素アレイ部における前記第1方向の一端側に配置される、請求項6に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記画素アレイ部は、有効画素領域と、前記有効画素領域の前記第1方向の両側に配置される2つの無効画素領域とを有し、
前記ダミー画素部は、前記2つの無効画素領域の一方に配置される、請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記ダミー信号線と前記第2のダミートランジスタとの間に接続されるボルテージフォロワ回路を備える、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記画素部は、前記第1トランジスタと前記信号線との間に接続され、前記第1トランジスタで増幅した信号を前記信号線に出力するか否かを切り替える第3トランジスタを有し、
前記ダミー回路は、前記第3トランジスタに対応する第3のダミートランジスタを有し、
前記第3のダミートランジスタは、前記第1のダミートランジスタと前記ダミー信号線との間に接続される、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記信号線の電位に応じた電圧信号と、時間に応じて電圧レベルが変化するランプ波信号との電位差を検出する差動増幅器を備え、
前記第1のダミートランジスタは、前記差動増幅器のオフセット電圧を調整する期間内にオンする、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された電荷を蓄積するフローティングディフュージョンと、前記フローティングディフュージョンに保持された電荷をリセットする第4トランジスタと、を有し、
前記差動増幅器のオフセット電圧を検出する第1期間の後に、前記フローティングディフュージョンの電荷をリセットした状態での前記信号線の電位に応じた電圧信号と前記ランプ波信号との電位差を前記差動増幅器にて検出する第2期間が設けられ、
前記過光量検知回路は、前記第2期間に、前記第2トランジスタ及び前記キャパシタの接続ノードから、前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを示す信号を出力する、請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記第1期間内に、前記第1のダミートランジスタのゲートに太陽黒点検知レベルを規定する任意の電位を供給するダミー制御回路を備える、請求項14に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記ダミー制御回路は、電源電圧の電圧レベルの変動に影響されないように前記ゲートの信号を生成するLDO(Low DropOut)回路を有する、請求項15に記載の撮像装置。
【請求項17】
前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された電子に応じた信号を前記信号線に出力し、
前記第2トランジスタ及び前記第2のダミートランジスタはいずれも、N型のMOSトランジスタである、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項18】
前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された正孔に応じた信号を前記信号線に出力し、
前記第2トランジスタ及び前記第2のダミートランジスタはいずれも、P型のMOSトランジスタである、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記第2トランジスタ及び前記キャパシタの接続ノードから、前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを示す信号が出力される、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項20】
光電変換された撮像信号を出力する撮像装置と、
前記撮像信号に対する信号処理を行う信号処理部と、を備える電子機器であって、
前記撮像装置は、
光電変換素子と、前記光電変換素子で光電変換された信号を信号線に出力する第1トランジスタと、を有する画素部と、
前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを検知する過光量検知回路と、を備え、
前記過光量検知回路は、
前記信号線と基準電位ノードとの間に直列に接続される第2トランジスタ及びキャパシタと、
電源電圧の電圧レベルの変動、前記信号線の寄生抵抗、及び前記第1トランジスタの閾値電圧のばらつきの少なくとも一つを考慮に入れて前記第2トランジスタのゲート電圧を調整するダミー回路と、を有する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサは、例えば、太陽光等の非常に高い輝度の光が入射された場合に、本来であれば白となる画素を黒と誤判定し、撮像画像中に太陽黒点と呼ばれる異常出力を生じさせることがある。
【0003】
このため、各撮像画素から光電変換された信号電荷を読み出す垂直信号線の電位と所定の閾値とを比較して過光量の受光を検知する比較回路を備えたイメージセンサがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-283557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、比較回路によって過光量の受光を検知するイメージセンサは、行列状に配列される撮像画素のカラム毎に比較回路を設ける必要がある。また、異常検出の為には比較精度が必要となる。規模が大きい比較回路が必要となるため、回路規模が増大する。
【0006】
そこで、本開示では、回路規模を増大させることなく、イメージセンサによる過光量の受光を高精度に検知することができる撮像装置及び電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、光電変換素子と、前記光電変換素子で光電変換された信号を信号線に出力する第1トランジスタと、を有する画素部と、
前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを検知する過光量検知回路と、を備え、
前記過光量検知回路は、
前記信号線と基準電位ノードとの間に直列に接続される第2トランジスタ及びキャパシタと、
電源電圧の電圧レベルの変動、前記信号線の寄生抵抗、及び前記第1トランジスタの閾値電圧のばらつきの少なくとも一つを考慮に入れて前記第2トランジスタのゲート電圧を調整するダミー回路と、を有する、撮像装置が提供される。
【0008】
前記ダミー回路は、
前記第1トランジスタに対応する第1のダミートランジスタと、前記第1のダミートランジスタに接続されるダミー信号線と、を有するダミー画素部と、
前記ダミー信号線の電位に応じて前記第2トランジスタのゲート電圧を制御する第2のダミートランジスタと、を有してもよい。
【0009】
前記信号線の寄生抵抗と前記ダミー信号線の寄生容量とが等しくなるように、前記第2トランジスタのゲート電圧が制御されてもよい。
【0010】
前記第2のダミートランジスタ及び前記第2トランジスタは、カレントミラー回路を構成してもよい。
【0011】
前記第1のダミートランジスタは、前記第1トランジスタと同一のサイズ、同一の導電型及び同一の電気特性を有し、
前記第2のダミートランジスタは、前記第2トランジスタと同一のサイズ、同一の導電型及び同一の電気特性を有してもよい。
【0012】
互いに交差する第1方向及び第2方向に配置される複数の前記画素部を有する画素アレイ部を備え、
前記ダミー画素部は、前記画素アレイ部内の前記第1方向に配置される2以上の前記画素部に対応づけて設けられ、
前記第2のダミートランジスタは、前記第1方向に配置される前記2以上の画素部に対応する2以上の前記第2トランジスタのそれぞれに対して別個に設けられてもよい。
【0013】
前記ダミー画素部は、前記第2方向の同一行、かつ前記第1方向に配置される前記2以上の第2トランジスタに対応づけて設けられ、
前記第2のダミートランジスタは、前記第2方向の同一行、かつ前記第1方向に配置される前記2以上の第2トランジスタのそれぞれに対して別個に設けられてもよい。
【0014】
前記第2のダミートランジスタは、対応する前記第2トランジスタの近傍に配置されてもよい。
【0015】
前記ダミー画素部は、前記画素アレイ部における前記第1方向の一端側に配置されてもよい。
【0016】
前記画素アレイ部は、有効画素領域と、前記有効画素領域の前記第1方向の両側に配置される2つの無効画素領域とを有し、
前記ダミー画素部は、前記2つの無効画素領域の一方に配置されてもよい。
【0017】
前記ダミー信号線と前記第2のダミートランジスタとの間に接続されるボルテージフォロワ回路を備えてもよい。
【0018】
前記画素部は、前記第1トランジスタと前記信号線との間に接続され、前記第1トランジスタで増幅した信号を前記信号線に出力するか否かを切り替える第3トランジスタを有し、
前記ダミー回路は、前記第3トランジスタに対応する第3のダミートランジスタを有し、
前記第3のダミートランジスタは、前記第1のダミートランジスタと前記ダミー信号線との間に接続されてもよい。
【0019】
前記信号線の電位に応じた電圧信号と、時間に応じて電圧レベルが変化するランプ波信号との電位差を検出する差動増幅器を備え、
前記第1のダミートランジスタは、前記差動増幅器のオフセット電圧を調整する期間内にオンしてもよい。
【0020】
前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された電荷を蓄積するフローティングディフュージョンと、前記フローティングディフュージョンに保持された電荷をリセットする第4トランジスタと、を有し、
前記差動増幅器のオフセット電圧を検出する第1期間の後に、前記フローティングディフュージョンの電荷をリセットした状態での前記信号線の電位に応じた電圧信号と前記ランプ波信号との電位差を前記差動増幅器にて検出する第2期間が設けられ、
前記過光量検知回路は、前記第2期間に、前記第2トランジスタ及び前記キャパシタの接続ノードから、前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを示す信号を出力してもよい。
【0021】
前期第1期間内に、前期第1のダミートランジスタのゲートに太陽黒点検知レベルを規定する任意の電圧を供給するダミー制御回路を備えても良い。
【0022】
前記ダミー制御回路は、電源電圧の電圧レベルの変動に影響されないように前記ゲートの信号を生成するLDO(Low DropOut)回路を有してもよい。
【0023】
前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された電子に応じた信号を前記信号線に出力し、
前記第2トランジスタ及び前記第2のダミートランジスタはいずれも、N型のMOSトランジスタであってもよい。
【0024】
前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された正孔に応じた信号を前記信号線に出力し、
前記第2トランジスタ及び前記第2のダミートランジスタはいずれも、P型のMOSトランジスタであってもよい。
【0025】
前記第2トランジスタ及び前記キャパシタの接続ノードから、前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを示す信号が出力されてもよい。
【0026】
本開示によれば、光電変換された撮像信号を出力する撮像装置と、
前記撮像信号に対する信号処理を行う信号処理部と、を備える電子機器であって、
前記撮像装置は、
光電変換素子と、前記光電変換素子で光電変換された信号を信号線に出力する第1トランジスタと、を有する画素部と、
前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを検知する過光量検知回路と、を備え、
前記過光量検知回路は、
前記信号線と基準電位ノードとの間に直列に接続される第2トランジスタ及びキャパシタと、
電源電圧の電圧レベルの変動、前記信号線の寄生抵抗、及び前記第1トランジスタの閾値電圧のばらつきの少なくとも一つを考慮に入れて前記第2トランジスタのゲート電圧を調整するダミー回路と、を有する、電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態による撮像装置の概略構成を示すブロック図。
図2】本開示に係る撮像部の回路構成の一例を示す説明図。
図3】本開示に係るAD変換回路の動作説明図。
図4】本開示に係るコンパレータの回路構成の一例を示す説明図。
図5】本開示に係る画素部の過光量受光時における状態の説明図。
図6】本開示に係る課題となるVSL波形の説明図。
図7】本開示の対比例に係る太陽黒点対策回路の一例を示す図。
図8】本開示の対比例に係る太陽黒点対策回路の動作タイミングと出力波形とを示す説明図。
図9】本開示の対比例に係るクランプ回路を動作させた場合の電流とVSL波形の変化を示す説明図。
図10】本開示の対比例に係る太陽黒点対策回路の他の一例を示す図。
図11】本開示に係る過光量検知回路の一例を示す図。
図12】本開示に係る過光量検知回路を動作させた場合の電流とVSL波形の変化を示す説明図。
図13】本開示に係るホールセンサによる過光量の受光を検知する過光量検知回路の一例を示す図。
図14】第1改善例に係る過光量検知回路の回路図。
図15】ダミー制御回路の内部構成の一例を示す回路図。
図16】第2改善例に係る過光量検知回路の回路図。
図17図14及び図16のダミー画素部の配置場所の一例を示す図。
図18】本開示に係る過光量検知回路が適用される受光素子の概略構成を表す平面模式図。
図19図14のB-B'線に沿った断面構成を表す模式図。
図20】本開示に係る過光量検知回路が適用される画素構造を示す断面図。
図21】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図。
図22】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、撮像装置及び電子機器の実施形態について説明する。以下では、撮像装置及び電子機器の主要な構成部分を中心に説明するが、撮像装置及び電子機器には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0029】
図1は一実施形態による撮像装置100の概略構成を示すブロック図である。本明細書では、撮像装置100をイメージセンサ100と呼ぶこともある。図1の撮像装置100は、過光量検知回路1と、画素アレイ部2と、行走査回路3と、AD変換部4と、列走査回路5と、バッファアンプ6と、タイミング制御回路7と、参照信号生成回路8と、とを備えている。
【0030】
画素アレイ部2は、ロウ方向(第1方向)とカラム方向(第2方向)に配置された複数の画素部10を有する。画素部10は、後述するように、光電変換素子と、光電変換素子で光電変換された撮像信号を垂直信号線VSLに出力する増幅トランジスタ(第1トランジスタ)AMPとを有する。以下では、光電変換素子としてフォトダイオードを用いる例を主に説明する。
【0031】
行走査回路3は、ロウ方向に配置された複数の行選択線を順繰りに駆動する。一本の行選択線には、ロウ方向に配置される複数の画素部10が接続されている。駆動された行選択線に接続された複数の画素部10で光電変換された信号は、それぞれ対応する複数の垂直信号線VSLを介してAD変換部4に入力される。
【0032】
AD変換部4は、複数の垂直信号線VSLの電圧信号をランプ波信号と比較する複数のコンパレータ(差動増幅器)22と、コンパレータ22の出力信号に応じてカウントアップ又はカウントダウンするカウンタ23とを有する。カウンタ23のカウント値は、光電変換された撮像信号のデジタル信号である。
【0033】
列走査回路5は、複数のカウンタ23のカウント値を順繰りにデータ出力線に供給する制御を行う。データ出力線上の信号は、バッファアンプ6を介して出力される。
【0034】
タイミング制御回路7は、AD変換部4、列走査回路5、及び参照信号生成回路8の動作タイミングを制御する。
【0035】
参照信号生成回路8は、ランプ波信号を参照信号として生成する。ランプ波信号とは、時間に応じて電圧レベルが線形に変化する信号である。
【0036】
過光量検知回路1は、画素部10内のフォトダイオードPDが過光量の光を受光したことを検知する。過光量の光とは、周囲の光量よりも著しく光量が多い光であり、例えば太陽光である。過光量検知回路1の内部構成は、後述する。過光量検知回路1は、過光量の光を受光したことが検知されると、例えばコンパレータ22の出力を強制的に特定の信号レベルに設定するなどの処理を行う。
【0037】
図2は画素部10の内部構成の一例を示す回路図である。図2の画素部10は、フォトダイオードPDと、転送トランジスタTGと、リセットトランジスタRSTと、増幅トランジスタAMPと、選択トランジスタSELとを有する。転送トランジスタTGのソースはフォトダイオードPDのカソードに接続されている。転送トランジスタTGのドレインと、リセットトランジスタRSTのソースと、増幅トランジスタAMPのゲートとは、フローティングディフュージョンに接続されている。リセットトランジスタRSTのドレインと増幅トランジスタAMPのドレインは電源電圧ノードに接続されている。増幅トランジスタAMPのソースは選択トランジスタSELのドレインに接続されている。選択トランジスタSELソースは垂直信号線VSLに接続されている。
【0038】
転送トランジスタTGのゲートに入力される転送信号と、リセットトランジスタRSTのゲートに入力されるリセット信号と、選択トランジスタSELのゲートに入力される選択信号とは、行走査回路3から供給される。図1の行選択線は、より詳細には、転送信号を供給する配線と、リセット信号を供給する配線と、選択信号を供給する配線とに分かれている。
【0039】
フォトダイオードPDは、光電変換により、入射光の光量に応じた信号電荷を蓄積する。リセットトランジスタRSTがオンすると、フローティングディフュージョンに保持された電荷がリセットされる。その後、リセットトランジスタRSTをオフすると、リセットトランジスタRSTのチャージインジェクションや汲み上げ電荷等の影響により、フローティングディフュージョンにはある程度の電荷が残存する。この電荷は増幅トランジスタAMPで増幅され、選択トランジスタSELをオンすることで、垂直信号線VSLに供給される。フローティングディフュージョンの残存電荷に応じた電圧を検出する処理をP相と呼ぶ。
【0040】
次に、転送トランジスタTGをオンすると、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷がフローティングディフュージョンに転送される。この信号電荷は増幅トランジスタAMPで増幅され、選択トランジスタSELをオンすることで、垂直信号線VSLに供給される。信号電荷に応じた電圧を検出する処理をD相と呼ぶ。
【0041】
[AD変換回路の動作]
次に、AD変換回路11の構成および動作について説明する。図3はAD変換回路11の内部構成を示す回路図である。AD変換回路には、カラム方向に延びる垂直信号線VSLごとに、コンパレータ22とカウンタ23とが設けられる。各コンパレータ22には、参照信号生成回路8で生成されたランプ波信号が供給される。カウンタ23は、タイミング制御回路7からのクロック信号に同期して、カウントアップ又はカウントダウン動作を行う。
【0042】
コンパレータ22は、対応する垂直信号線VSLの電圧信号とランプ波信号の電圧レベルを比較して、比較結果を示す信号を出力する。P相開始よりランプ波信号は電圧降下を開始する。P相開始時点では、垂直信号線VSL上のP相電位の波形(以下、VSL電位という場合がある)より、ランプ波信号の方が高い電位となるようにランプ波信号が予め設定される。ランプ波信号は時間とともに電圧レベルが線形に低下する信号である。
【0043】
したがって、P相開始からある一定時間は、ランプ波信号の方がVSL電位よりも電位が高く、コンパレータ22の出力値VCOは、ハイレベルになる。その後、ランプ波信号が低下し、VSL電位を下回ると、コンパレータ22の出力値VCOは、ローレベルに遷移する。
【0044】
カウンタ23は、P相開始から、上述した論理反転が起きるまでの時間をカウント値として計測する。AD変換回路11は、この動作により、アナログ信号であるVSL電位の電圧振幅量を、デジタル信号である時間情報に変換する。AD変換回路11は、P相計測後、同様にD相の計測も行う。以上より、AD変換回路11は、コンパレータ22とカウンタ23を用いて、垂直信号線上の電圧信号をデジタル信号に変換する。
【0045】
[コンパレータ22の構成]
次に、コンパレータ22の回路構成および動作について説明する。図4はコンパレータ22の回路構成の一例を示す説明図である。
【0046】
図4に示すように、コンパレータ22は、差動入力段を構成するトランジスタMN1およびトランジスタMN2、カレントミラー回路を構成するトランジスタMP1およびトランジスタMP2、電流源25、オートゼロスイッチAZSW、キャパシタC1、キャパシタC2によって構成される差動増幅回路である。
【0047】
ここで、ランプ波信号とVSL電位との比較精度を高めるためには、ランプ波信号の電位とVSL電位とが等しい状態のときに、コンパレータ22の出力値VCOは0であることが望ましい。
【0048】
しかし、実際には、トランジスタMN1、トランジスタMN2、トランジスタMP1、およびトランジスタMP2の相対バラつきやDC動作点などの影響により、コンパレータ22にはオフセット電圧が生じる。
【0049】
コンパレータ22は、図2に示したように垂直信号線VSL毎、つまりカラム毎に設けられるが、垂直信号線VSL毎のオフセット電圧のばらつきにより、撮像した映像に縦筋などの異常が生じることがある。このため、オフセット電圧は、キャンセルする必要がある。
【0050】
そこで、コンパレータ22では、ランプ波信号が入力される+端子に基準電圧を印加し、VSL電位が入力される-端子にP相電位を印加した状態でオートゼロスイッチAZSWをオンする。
【0051】
これにより、キャパシタC1のトランジスタMN1側の端子には、電源電圧VDDからトランジスタMP1のゲート・ソース間電圧Vgs分降下した電圧が印加され、キャパシタC1の他方の端子には基準電圧が印加される。そして、キャパシタC1は、その両端子間の電位差を保持する。
【0052】
また、トランジスタMN2のゲートには、トランジスタMP2のドレイン電流と、トランジスタMN2のドレイン電流が等しくなるように、負帰還がかかる。
【0053】
トランジスタMN2のゲート電圧は、上記負帰還により、トランジスタMN1のゲート電圧に、差動増幅回路の負帰還でキャンセルされず残存するオフセット電圧が重畳された電位となる。この電位が、キャパシタC2のトランジスタMN2側端子に印加され、他方の端子には、P相電位が印加される。キャパシタC2は、その両端子の電位差を保持する。
【0054】
この状態でオートゼロスイッチAZSWをオフすると、トランジスタMN1のゲートには、ランプ波信号の基準電位からの変動分の電圧がキャパシタC1を介して印加される。一方、垂直信号線VSL側では、P相電位からオフセット電圧を差し引いた電圧がトランジスタMN2のゲートに印加されることで、差動増幅回路のオフセット電圧は相殺される。以上がコンパレータ22のオートゼロ処理(以下、AZ処理)と呼ばれる動作である。
【0055】
また、コンパレータ22は、P相電位でAZ処理を行った後に、D相電位の比較を行う。つまり、コンパレータ22では、P相とD相との差電位がトランジスタMN2のゲートに印加されることで、あわせてP相電位-D相電位であるCDSも行っている。このAZ処理、AD変換、およびCDSの一連の動作が、シングルスロープADCと呼ばれる機能である。
【0056】
[課題]
次に、図5および図6を参照して、撮像装置100の課題となる現象について説明する。図5は、画素部10の断面図と、過光量受光時における画素部10のポテンシャル図である。図6は、画素部10及び信号線の信号波形図である。
【0057】
図6に示すオートゼロ信号がハイレベルの期間は、オートゼロ中の期間(以下、AZ期間と呼ぶ)を示している。選択トランジスタSELがハイレベルの期間は、選択トランジスタSELがオンの期間を示している。リセットトランジスタRSTがハイレベルの期間は、リセットトランジスタRSTがオンの期間を示している。転送トランジスタTGがハイレベルの期間は、転送トランジスタTGがオンの期間を示している。
【0058】
また、図6に太実線で示す信号線VSLは、過光量状態でない高輝度時のVSL電位を示している。破線で示す信号線VSLは、超高輝度の光がPDに照射し、フォトダイオードPDに蓄積することができる最大電荷量であるQsを超える電荷が生じた場合のVSL電位を示している。一点鎖線で示すRampは、ランプ波信号を示している。
【0059】
上述した課題は、過光量状態におけるAZ期間中に生じる。前述したように、AZ期間中に信号線VSL側にP相電位が印加されることでコンパレータ22のオフセット電圧はキャンセルされる。ところが、太陽光などの強烈な超高輝度の光がフォトダイオードPDに入射された場合、P相電位が変動することがある。
【0060】
具体的には、図5に示すように、画素部10の光入射面側には、メタル遮光膜MLが配置されているが、メタル遮光膜MLに設けられる開口部からフォトダイオードPDに光SLが入射する。ここで、図5に示すQsは、フォトダイオードPDに蓄積可能な最大電荷量を示す。Qfdは、フローティングディフュージョンFDに蓄積可能な最大電荷量を示す。
【0061】
図5の下側には、リセット動作が終わった後のP相時のポテンシャルが示されている。フローティングディフュージョンFDには、リセットトランジスタRSTのチャージインジェクションなどで生じる電荷が保持されている。図5では、電荷として電子がフローティングディフュージョンに保持される例を示している。
【0062】
この状態において、フォトダイオードPDへの光照射が強く、光電変換で生じる電荷がQsを超えてしまうと、電荷が転送トランジスタTGの障壁を超え、フローティングディフュージョンFDに漏れ出てしまう。
【0063】
フローティングディフュージョンに保持される電荷のうち、Qfdを超えた分の電荷は、リセットトランジスタRSTを超えて、電源電圧VDD線へ到達後、正孔と再結合して消失する。つまり、Qfdで擦切られるまで、フローティングディフュージョンFDに保持される電荷の量は増加し続ける。
【0064】
この変化が生じた場合の垂直信号線VSLの電位変動を図6に示している。Qsを超えない程度の光量が照射した場合、太実線で示すように、P相電位に変動はないので、その電位で正常にAZ処理が行われる。
【0065】
その後、転送トランジスタTGをオンしてD相に遷移すると、信号電荷がフローティングディフュージョンFDに転送されることで垂直信号線VSLの電位が低下するが、この変化量は図4に示すキャパシタC2を超えてトランジスタMN2のゲートに印加されるので正常にCDSは行われる。
【0066】
しかし、Qsを超える光量が入射した場合、VSL電位イメージの破線で示すように、フローティングディフュージョンFDのリセット終了直後からQsを超えた電荷がフローティングディフュージョンFDに到達する。フローティングディフュージョンFDの電荷量がQfdを超えると、フローティングディフュージョンFDから電荷が漏れ出して、VSL電位が低下する。従って、図6のVSL電位イメージの破線で示すように、P相期間中にVSL電位が低下してしまう。
【0067】
このため、その後のD相期間に転送トランジスタTGをオンして信号電荷を読み出したときには、すでにVSL電位が下がっているため、VSL電位は変化しない。このように、P相からD相に遷移しても、VSL電位は同じである。
【0068】
AZ期間中に光量が著しく高い光が入射されると、コンパレータ22は、電位レベルが低下したP相電位でAZ処理を行ってしまう。
【0069】
上述したように、光量が著しく高い光が入射されると、P相とD相では電位差が生じないため、P相にてランプ波信号の電位レベルが低下し始めてからVSL電位と論理反転するまでの時間と、D相にてランプ波新語の電位レベルが低下し始めてからVSL電位と論理反転するまでの時間とが同じになる。すなわち、光量が著しく高い光が入射される前と後で、入射光の輝度が同じと誤判定される。その結果、太陽光で白となるはずの画素が、黒と誤判定されてしまう。この現象が、太陽黒点と呼ばれるものである。
【0070】
[比較例に係る太陽黒点対策回路]
次に、図7および図8を参照して、太陽黒点の発生を抑制する一比較例に係る太陽黒点対策回路について説明する。図7は、一比較例に係る太陽黒点対策回路の一例を示す図である。図8は、一比較例に係る太陽黒点対策回路の動作タイミングと出力波形とを示す説明図である。
【0071】
なお、ここでは、図7に示す構成要素のうち、図2に示す構成要素と同一の構成要素については、図2に示す符号と同一の符号を付することにより、重複する説明を省略する。図7に示すように、一比較例に係る太陽黒点対策回路は、画素部10毎に設けられるクランプ回路101を備える。
【0072】
クランプ回路101は、PチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ(以下、「PMOSトランジスタ」と記載する)MP3と、NチャネルMOSトランジスタ(以下、「NMOSトランジスタ」と記載する)MN3とを備える。
【0073】
PMOSトランジスタMP3は、ソースが電源に接続され、ドレインがNMOSトランジスタMN3のドレインに接続され、ゲートに所定のゲート電圧XSUNENが印加される。NMOSトランジスタMN3は、ソースが垂直信号線VSLに接続され、ゲートに所定の閾値電圧Vth3が印加される。
【0074】
クランプ回路101は、AZ期間中に、ゲート電圧XSUNENをローレベルにしてPMOSトランジスタMP3をオンする。過光量の受光によりフローティングディフュージョンFDの電荷が増えると、垂直信号線VSLの電位が降下する。
【0075】
そして、垂直信号線VSLの電位が所定の閾値電圧Vth3で規定されるクランプレベルまで降下しない状態では、NMOSトランジスタMN3はオフしている。その後、垂直信号線VSLの電位が所定の閾値電圧Vth3で規定する電位まで降下すると、NMOSトランジスタMN3がオンして動作を開始する。
【0076】
そして、NMOSトランジスタMN3のゲート電圧が増幅トランジスタAMPのゲート電圧よりも十分高くなる電位まで垂直信号線VSLの電位が降下すると、増幅トランジスタAMPはオフする。
【0077】
それ以上、フローティングディフュージョンFDの電荷が増えたとしても、垂直信号線VSLの電位は降下しない。クランプ回路101は、この動作により、垂直信号線VSLの電位を所定の閾値電圧Vth3で規定する電位にクランプする。
【0078】
クランプ回路101は、AZ期間の終了後、ゲート電圧XSUNENをハイレベルにしてPMOSトランジスタMP3をオフにすることにより、NMOSトランジスタMN3をオフする。これにより、増幅トランジスタAMPがオンし、垂直信号線VSLの電位は、図9で示すように下がって、再びフローティングディフュージョンFDの電荷量に応じた電位になる。
【0079】
図4に示すように、AZ期間後のVSL電位の変動に応じて、トランジスタMN2のゲート電圧が変動する。トランジスタMN2のゲート電圧が十分低くなるように図7に示す所定の閾値電圧Vth3が設定され、コンパレータ22の出力値VCOの論理反転が起きないように設定する。
【0080】
図3に示すカウンタ23では、P相カウント中に論理反転が生じない場合、つまり、カウント値の上限までカウントした場合には、当該画素は太陽黒点であると判定し、映像信号を白に変換する。これにより、クランプ回路101は、太陽黒点の発生を抑制することができる。
【0081】
しかしながら、クランプ回路101には、以下に記載する課題がある。第1の課題は、NMOSトランジスタMN3の動作開始タイミングが、増幅トランジスタAMPのゲート電圧、つまりフローティングディフュージョンFDの電位(以下「Vfd」と記載する)と、NMOSトランジスタMN3のゲート電圧である閾値電圧Vth3との差が小さくなる時に生じる。
【0082】
ここで、図9を参照して、クランプ回路101を動作させた場合に、図7に示す回路に流れる電流について説明する。図9は、一比較例に係るクランプ回路101を動作させた場合の電流とVSL電位の変化を示す説明図である。
【0083】
図9には、上記した電位差(Vfd-Vth3)と、図7に示す増幅トランジスタAMPが流す電流I1、NMOSトランジスタMN3が流す電流I2と垂直信号線VSLの電位変動の関係を示している。
【0084】
具体的には、図9における上図に、電位差(Vfd-Vth3)の変化に伴う電流I1の変化を実線によって示しており、電流I2の変化を破線によって示している。また、図9における下図には、電位差(Vfd-Vth3)の変化に伴う垂直信号線VSLの電位変動を示している。
【0085】
ここで、垂直信号線VSLの電位は、下記式(1)で表される。また、式(1)における増幅トランジスタAMPのゲート・ソース間電圧Vgs(AMP)は、下記式(2)で表される。また、図7に示す電流I1,I2,I3の間には、下記式(3)の関係が成り立つ。
【数1】
【数2】
【数3】
【0086】
上記式における電流I1は増幅トランジスタAMPのドレイン電流、W/Lは増幅トランジスタAMPのアスペクト比、μnはキャリアの移動度、Coxは単位面積当たりのゲート容量、Vthは増幅トランジスタAMPの閾値電圧である。
【0087】
図7に示す増幅トランジスタAMPとNMOSトランジスタMN3とは差動回路の構成となり、各ゲートの電位差により、電流I3の分流比が変わる。このため、各ゲートの電位差が小さくなると、NMOSトランジスタMN3が電流I2を流し始め、これに伴って電流I1が減少する(式(3)参照)。
【0088】
増幅トランジスタAMPと電流I3が流れるNMOSトランジスタMN4とでソースフォロアを構成している。このため、電流I1が変動しない状況、つまりゲート・ソース間電圧Vgs(AMP)が変動しない場合においては、フローティングディフュージョンFDの電位Vfdの変動に応じてソース電位も変動することで、その線形性は保たれる。
【0089】
しかし、電流I1が変動してしまうと、その変動量に応じてゲート・ソース間電圧Vgs(AMP)も変化してしまい、フローティングディフュージョンFDの電位Vfdの変動以外の因子が入ってしまうことで、線形性は崩れる(式(1)(2)参照)。
【0090】
このため、ソースフォロアとして使用できる電位は、図9に示すA点よりフローティングディフュージョンFDの電位Vfdが高い範囲だけである。そして、垂直信号線VSLの電位がクランプされる電位は、さらに垂直信号線VSLの電位が降下し、増幅トランジスタAMPがオフとなる図9に示すB点である。つまり、図9に示すA点でクランプしたい垂直信号線VSLの電位降下がB点でしか止まらず、その電位分、垂直信号線VSLの出力D(ダイナミック)レンジが狭くなる(第1の課題)。
【0091】
第1の課題を解消する対策として、例えば、垂直信号線VSLの電圧降下をコンパレータ22と同等の比較回路を使って検知する方法がある。しかし、第1の課題における不感帯(図9に示すA点からB点までの範囲)を減らすためには、コンパレータ22と同等の精度が求められため、回路規模が大きくなる。しかも、垂直信号線VSLの電圧降下を検知する回路はカラムごとに設ける必要があるため、回路規模がさらに増大する問題が生じる(第2の課題)。
【0092】
図7に示すクランプ回路101以外の構成によって垂直信号線VSLの電位をクランプする手法として、PMOSトランジスタのゲートを垂直信号線VSLに接続し、ソースを電源に接続してPMOSトランジスタのゲート・ソース間電圧Vgsでクランプする手法がある。
【0093】
ところが、この手法の場合、クランプレベルの調整はPMOSトランジスタのゲート・ソース間電圧Vgsでしか行えない。この場合、クランプレベルの調整は、PMOSトランジスタMP3のサイズのアスペクト比でしか行うことができないので、調整は困難である(第3の課題)。
【0094】
また、図7では、画素部10が光電変換に生じた電子を検出するエレクトロンセンサである場合を例に挙げて説明したが、画素部10がホールセンサである場合においても問題が生じる。具体的には、図7に示すクランプ回路101は、画素部10がエレクトロンセンサの場合、フローティングディフュージョンFDの電位Vfdの降下に対して、閾値電圧Vth3が上回ることで、クランプ動作になる回路である。
【0095】
これに対して、画素部10がホールセンサの場合、過光量になるとフローティングディフュージョンFDの電位Vfdは上昇していく。このため、クランプ回路101では、NMOSトランジスタMN3によって垂直信号線VSLの電位をクランプすることができない。
【0096】
また、例えば、図10に示す検知回路102のように、NMOSトランジスタMN3をPMOSトランジスタMP3に置き換えることも容易に想定される。しかし、この構成では、増幅トランジスタAMPと、PMOSトランジスタMP3が低インピーダンスでショートする構成となり、図10に太線矢印で示すように電源とグランドとの間に大電流が流れてしまう。したがってホールセンサには一比較例に係るクランプ回路101は用いることができない(第4の課題)。
【0097】
[過光量検知回路]
そこで、上記した第1~第4の課題を解決し、回路規模を増大させず、出力Dレンジを狭めることなく、イメージセンサによる過光量の受光を高精度に検知できる過光量検知回路1を備えた撮像装置100について検討する。
【0098】
図11は過光量検知回路1pの第1例を示す回路図である。なお、ここでは、図11に示す構成要素のうち、図7に示す構成要素と同一の構成要素については、図7に示す符号と同一の符号を付することにより、重複する説明を省略する。
【0099】
図11に示すように、過光量検知回路1pは、NMOSトランジスタMn1とキャパシタCaとを有し、太陽光に代表される過光量の受光によるP相電位の変動を検知する。なお、キャパシタCaは、高インピーダンス素子であれば、抵抗に置換えてもよい。
【0100】
NMOSトランジスタMn1は、ソースがイメージセンサの垂直信号線VSLに接続され、ドレインがキャパシタCaの一方の端子に接続される。キャパシタCaの他方の端子は、電源電圧VDD線に接続される。また、NMOSトランジスタMn1のゲートには、スイッチSW1を介して所定の閾値電圧Vth1が印加される。
【0101】
ここで、過光量検知回路1pの動作について説明する。ここでは、フローティングディフュージョンFDのリセットが終わり、フローティングディフュージョンFDにはP相電位が保持されてAZ期間となった場合の動作を説明する。このとき、過光量検知回路1pでは、キャパシタCaが図示しない回路によって予めディスチャージされ、P点の電位は、電源電圧VDDを保持しているものとする。
【0102】
画素部10のフォトダイオードPDに過光量の光が入射され、光電変換される信号電荷がQsを超えてフローティングディフュージョンFDに到達すると、フローティングディフュージョンFDの電位は降下していく。これに追従して垂直信号線VSLの電位も降下していく。
【0103】
過光量検知回路1p内のキャパシタCaとNMOSトランジスタMn1との接続ノードPは、フローティングディフュージョンFDのリセットが終了した時点では、電源電圧VDDであり、キャパシタCaには電荷は蓄積されていない。
【0104】
その後、垂直信号線VSLの電位がNMOSトランジスタMn1のゲート電圧で規定するスレッショルドレベル(以下:閾値電圧Vth1)以上であれば、NMOSトランジスタMn1はオフであり、キャパシタCaとNMOSトランジスタMn1との接続ノードPは電源電圧である。
【0105】
その後、垂直信号線VSLの電位が閾値電圧Vth1を下回ると、NMOSトランジスタMn1がオンし、キャパシタCaに電流が流れて、電荷が蓄積され始める。これに伴って、キャパシタCaとNMOSトランジスタMn1との接続ノードPの電位は低下する。
【0106】
キャパシタCaの電位は、Q=CV=ITの時定数で一次線形に降下するが、NMOSトランジスタMn1のドレイン・ソース間の電位差がなくなる電位まで降下すると、NMOSトランジスタMn1は3極管動作に入り電流が減少し、最終的に電流は0となる。
【0107】
このように、過光量検知回路1pは、画素部10が過光量の光を受光した場合、垂直信号線VSLの電位が閾値電圧Vth1によって規定される電位まで低下する。
【0108】
このとき、画素部10によって過光量の光が受光されると、キャパシタCaとNMOSトランジスタMn1とを接続する接続点Pの電位がハイレベルからローレベルに遷移する。
【0109】
このため、過光量検知回路1pは、接続点Pの電位を過光量の検知結果として過光量検知端子から後段回路に伝達することで、P相電位が過光量により変動したことを伝え、以後の動作は無視して当該画素の映像信号を白に変換する処理を行わせることができる。
【0110】
また、過光量検知回路1pは、AZ期間後に、スイッチSW1によってNMOSトランジスタMn1のゲート電圧をグランドに接続して検知を終了し、通常動作に戻す。これにより、過光量検知回路1pは、P相電位又はD相電位が垂直信号線VSLを介して供給されるP相期間とD相期間では、NMOSトランジスタMn1をオフさせる。よって、P相電位が変動しない通常動作においては、その信号伝送に影響を与えることはない。
【0111】
[課題の検討]
次に、図12および図13を参照して、上記した第1~第4の課題について検討する。図12は、過光量検知回路1pを動作させた場合の電流とVSL電位の変化を示す説明図である。図13は、ホールセンサによる過光量の受光を検知する過光量検知回路1qの一例を示す図である。図13の画素部10aは、電源電圧ノードと接地ノードの間に直列に接続されるフォトダイオードPD及びキャパシタSNを有する。フォトダイオードPDのアノードが転送トランジスタTGのドレインに接続されている。フォトダイオードPDのカソードは電源電圧ノードに接続されており、フォトダイオードPDは逆バイアス状態である。転送トランジスタTGがオンすると、キャパシタSNに蓄積された電荷(正孔)がフローティングディフュージョンFDに移動するが、キャパシタSNとフローティングディフュージョンFDは並列接続であり、容量分割される。よって、キャパシタSNに蓄積された電荷(正孔)は、キャパシタSNとフローティングディフュージョンFDに分割されて保持される。
【0112】
図12には、電位差(Vfd-Vth1)と、図11に示す増幅トランジスタAMPが流す電流I1、NMOSトランジスタMn1が流す電流I2と垂直信号線VSLの電位変動の関係を示している。
【0113】
具体的には、図12の上側には、電位差(Vfd-Vth1)の変化に伴う電流I1の変化が実線によって示され、電流I2の変化が破線によって示されている。また、図12の下側には、電位差(Vfd-Vth1)の変化に伴う垂直信号線VSLの電位変動が示されている。
【0114】
第1の課題について、図12に示すように、NMOSトランジスタMn1が動作し始めた瞬間の電流だけを使って論理反転を実施し、その後、電流をオフするので、反転における線形性の悪化は生じない。スレッショルドレベルは出力Dレンジの最大値に設定することができ、広出力Dレンジを確保することができる。
【0115】
次に、第2の課題について、過光量検知回路1pは、NMOSトランジスタMn1と、キャパシタCaとによって構成することができ、図7に示すクランプ回路101とほぼ同等な回路素子数でありながら、不感帯が殆んどなく、広レンジで高精度な検知が可能となる。次に、第3の課題について、NMOSトランジスタMn1のゲート電圧の設定で、垂直信号線VSLの電位をクランプするスレッショルドレベルを自由に調整することができる。
【0116】
次に、第4の課題については、フォトダイオードPDがホールセンサの場合、図13に示すように検知素子をPMOSトランジスタMp1にすればよい。具体的には、フォトダイオードPDがホールセンサの場合の過光量検知回路1qは、PMOSトランジスタMp1とキャパシタCbとによって構成される。なお、キャパシタCbは、高インピーダンス素子であれば、抵抗に置換えられてもよい。
【0117】
PMOSトランジスタMp1は、ソースがイメージセンサの垂直信号線VSLに接続され、ドレインがキャパシタCbの一方の端子に接続される。キャパシタCbの他方の端子は、NMOSトランジスタMN4のソースに接続される。また、PMOSトランジスタMp1のゲートには、スイッチSW1を介して所定の閾値電圧Vth1が印加される。これにより、過光量検知回路1qは、フォトダイオードPDがホールセンサの場合、図7に示すクランプ回路101と同様に、広出力Dレンジで高精度な過光量の検知が可能となる。
【0118】
また、過光量検知回路1p,1qは、垂直信号線VSLの電位変動そのものに基づいて過光量の受光を検知する。このため、過光量検知回路1p,1qは、過光量の光を受光したか否かを示す2値の値に対応する信号を過光量の検知結果として後段の回路へ出力することができる。
【0119】
そこで、過光量検知回路1p,1qは、過光量の検結果を示す信号をカウンタ23に出力する。カウンタ23は、過光量検知回路1p,1qから過光量の受光を示す信号が入力される場合に、カウントを停止する。これにより、イメージセンサ100は、過光量の受光が検知された画素を強制的に白にすることで、太陽黒点の発生を防止することができる。
【0120】
また、過光量検知回路1p,1qは、過光量の検知結果を示す信号により、コンパレータ22の比較動作を停止させる。コンパレータ22は、過光量検知回路1p,1qから過光量の受光を示す信号が入力される場合に、垂直信号線VSLの電位と、ランプ波信号との比較を停止する。これにより、イメージセンサ100は、過光量の受光が検知された画素を強制的に白にすることで、太陽黒点の発生を防止することができる。
【0121】
また、イメージセンサ100は、過光量検知回路1p,1qで検知した結果を後段の回路で処理することによって、太陽黒点の発生を防止することが出来る。
【0122】
図11図13の過光量検知回路1p,1qの課題]
図11図13に示す過光量検知回路1p、1qは、電源電圧の変動に対して敏感であり、電源電圧の変動により、過光量の検知精度が低下するおそれがある(第1の課題)。より詳細には、電源電圧が変動すると、図11図13の過光量検知回路1p、1q内の閾値電圧Vth1の電圧レベルが変動するおそれがある。閾値電圧Vth1は、電源電圧から生成されるため、電源電圧が変動すると、閾値電圧Vth1も変動するおそれがある。閾値電圧Vth1が変動すると、垂直信号線VSLの電位をクランプさせる電位レベルが変動する。特に、画素アレイ部2内の画素位置により、閾値電圧Vth1が変動し、画素ごとに過光量の検知精度にばらつきが生じるおそれがある。
【0123】
また、画素アレイ部2内のカラム方向の信号線ごとに寄生抵抗の大きさが異なるため、寄生抵抗の違いにより閾値電圧Vth1が変動し、やはり画素ごとに過光量の検知精度にばらつきが生じるおそれがある(第2の課題)。
【0124】
さらに、画素アレイ部2内の画素部10ごとに増幅トランジスタAMPの閾値電圧が変動するおそれがあり、増幅トランジスタAMPの閾値電圧の変動により垂直信号線VSLの電位が変動し、画素ごとに過光量の検出精度にばらつきが生じるおそれがある(第3の課題)。
【0125】
[過光量検知回路1p,1qの改善例」
図14は第1改善例に係る過光量検知回路1の回路図である。図14の過光量検知回路1は、図11の過光量検知回路1pとは回路構成が異なっている。具体的には、図14の過光量検知回路1は、図11のNMOSトランジスタMn1及びキャパシタCaを備える他に、ダミー回路9を備えている。
【0126】
ダミー回路9は、電源電圧の電圧レベルの変動、信号線VSLの寄生抵抗Rpara、及び増幅トランジスタAMPの閾値電圧のばらつきの少なくとも一つを考慮に入れて、NMOSトランジスタMn1のゲート電圧を調整する。
【0127】
より詳細には、ダミー回路9は、ダミー画素部10Dと、NMOSトランジスタ(第2のダミートランジスタとも呼ぶ)DMn2とを有する。ダミー画素部10Dは、後述するように、画素アレイ部2内の同一行のすべての画素部10に接続されている。第2のダミートランジスタDMn2は、対応する画素部10ごとに設けられている。このように、ダミー画素部10Dは、画素アレイ部2内の第1方向(ロウ方向)に配置される2以上の画素部10(典型的には同一行の全画素部10)に対応づけて設けられる。第2のダミートランジスタDMn2は、各画素部10内のNMOSトランジスタMn1ごとに設けられる。あるいは、第2のダミートランジスタDMn2は、同一行の2以上のNMOSトランジスタMn1に対して1個の割合で設けられてもよい。
【0128】
ダミー画素部10Dは、画素部10内の増幅トランジスタAMPに対応する第1のダミートランジスタDMn1と、第1のダミートランジスタDMn1に接続されるダミー信号線DVSLとを有する。第1のダミートランジスタDMn1は、増幅トランジスタと同一のサイズ、同一の導電型及び同一の電気特性を有する。第2のダミートランジスタDMn2は、対応する第2トランジスタと同一のサイズ、同一の導電型及び同一の電気特性を有する。
【0129】
ダミー画素部10Dは、画素部10内の選択トランジスタSELに対応する第3のダミートランジスタDMn3を有していてもよい。行走査回路3で選択された列の第3のダミートランジスタDMn3がオンに設定され、同じ列の第3のトランジスタSELと第3のダミートランジスタDMn3のオン、オフは同期される。第3のダミートランジスタDMn3は、第1のダミートランジスタDMn1のソースとダミー信号線DVSLとの間に接続されている。
【0130】
ダミー画素部10Dに接続されるダミー信号線DVSLの寄生抵抗Rparaは、画素部10に接続される信号線VSLの寄生抵抗Rparaと同じになる。これにより、信号線VSLの寄生抵抗Rparaを考慮に入れて、NMOSトランジスタMn1のゲート電圧を調整できる。また、ダミー画素部10D内の第1のダミートランジスタDMn1は、画素部10内の増幅トランジスタAMPを模擬したものであり、増幅トランジスタAMPの閾値電圧やゲート-ソース間電圧が変動すると、第1のダミートランジスタDMn1も同様に変動する。同様に、NMOSトランジスタMn1の閾値電圧やドレイン電流が変動すると、第2のダミートランジスタDMn2も同様に変動する。
【0131】
このように、ダミー回路9を設けることで、電源電圧の電圧レベルの変動、信号線VSLの寄生抵抗Rpara、増幅トランジスタAMPの閾値電圧のばらつきなどを相殺することができる。
【0132】
画素アレイ部2には、行(ロウ)方向と列(カラム)方向に多数の画素部10が配置されており、画素部10の場所によって、信号線VSLの寄生抵抗Rparaが異なる。また、画素アレイ部2の全域で画素部10内の増幅トランジスタAMPの電気特性が同一であるとは限らず、製造ばらつきによる電気特性の変動が生じうる。このため、上述したダミー回路9は、画素アレイ部2内の行ごとに設けて、同一行のすべての画素部10を同じダミー回路9に接続するのが望ましい。一方、第2のダミートランジスタDMn2は、個々の画素部10に接続されるNMOSトランジスタMn1ごとに設けるのが望ましい。第2のダミートランジスタDMn2は、NMOSトランジスタMn1を模擬するものであり、NMOSトランジスタMn1の近傍に配置するのが望ましい。近傍に配置することで、第2のダミートランジスタDMn2の電気特性をNMOSトランジスタMn1の電気特性に類似させることができる。
【0133】
図14では、ダミー信号線DVSLと信号線VSL上に寄生抵抗Rparaを図示しているが、この寄生抵抗Rparaは物理的な抵抗素子ではなく、配線抵抗成分などの総称である。上述したように、図14の過光量検知回路1では、画素アレイ部2内の行ごとにダミー回路9を設けるため、同じ行の画素部10に接続される信号線VSLと同程度の寄生抵抗Rparaをダミー信号線DVSLに持たせることができる。
【0134】
ダミー信号線DVSLには、信号線VSLに接続される電流源12と同等の電流を流す電流源12Dが接続されている。また、ダミー信号線DVSLには、ボルテージフォロワ回路13が接続されている。ボルテージフォロワ回路13は、差動増幅器を有し、この差動増幅器の+端子はダミー信号線DVSLに接続され、-端子は差動増幅器の出力ノードに接続されている。差動増幅器の出力ノードは第2のダミートランジスタDMn2のソースに接続されている。
【0135】
ボルテージフォロワ回路13は、ダミー信号線DVSLと信号線VSLとのインピーダンスを分離する機能を有し、ボルテージフォロワ回路13を設けることでノイズ耐性が高くなる。上述したように、ダミー回路9は、画素アレイ部2内の行ごとに設けられ、同一行のすべての画素部10に接続されるため、ダミー信号線DVSLのインピーダンスが高く、ノイズの影響を受けやすくなる。そこで、ボルテージフォロワ回路13を設けることで、ダミー信号線DVSLのノイズが信号線VSLに重畳されなくなる。
【0136】
第2のダミートランジスタDMn2は、NMOSトランジスタであり、そのゲートとドレインは短絡されており、この短絡経路にはNMOSトランジスタMn1のゲートが接続されている。これにより、第2のダミートランジスタDMn2とNMOSトランジスタMn1はカレントミラー回路を構成している。第2のダミートランジスタDMn2のソースと接地ノードの間には、電流源26が接続されている。
【0137】
画素部10に接続された信号線VSLは、図11と同様に、NMOSトランジスタMn1のソースに接続されている。過光量検出時には、信号線VSLの電位が下がり、NMOSトランジスタMn1のゲート-ソース間電圧が大きくなる。このゲート-ソース間電圧がNMOSトランジスタMn1の閾値電圧を超えると、NMOSトランジスタMn1はオンし、NMOSトランジスタMn1のドレイン電圧が下がり、NMOSトランジスタMn1とキャパシタCaとの接続ノードに、バッファ27を介して接続される過電流検出端子がローレベルになる。
【0138】
NMOSトランジスタMn1と第2のダミートランジスタDMn2はカレントミラー回路を構成しているため、NMOSトランジスタMn1のゲート電圧は、ダミー回路9及び第2のダミートランジスタDMn2に応じた電圧値になる。これにより、NMOSトランジスタMn1のゲート電圧は、画素部10内の増幅トランジスタAMPの閾値電圧のばらつきや、信号線VSLの寄生抵抗Rparaや、電源電圧の変動の影響を受けにくくなる。
【0139】
図14の過光量検知回路1は、図8と同様の動作タイミングで動作する。キャパシタCaはスイッチ28によってあらかじめディスチャージされる。AZ期間内に太陽光などの過光量の光がフォトダイオードPDに入射されると、垂直信号線VSLの電位が低下してトランジスタMn1がオンし、キャパシタCaに電流が流れて、電荷が蓄積され始める。これに伴って、キャパシタCaとトランジスタMn1との接続ノードの電位は低下する。そして過光量検知端子TL1がハイレベルからローレベルになり、過光量を検知するとトランジスタMn1はオフになる。過光量検知回路1が動作しない場合にはスイッチ28は閉じ、過光量検知端子TL1がハイレベルを保持し、ダミートランジスタDMn1のゲート信号VSUNの電位が十分低くなる。これにより、過光量検知回路1は、P相電位又はD相電位が垂直信号線VSLを介して供給されるP相期間とD相期間では、トランジスタMn1のゲート電位を十分低くさせる。よって、P相期間あるいはD相期間の通常動作では、その信号伝送に影響を与えることはない。
【0140】
図14のダミー回路9内の第1のダミートランジスタDMn1のゲート信号VSUNは、ダミー制御回路29にて生成される。ダミー制御回路29は、AZ期間内に第1のダミートランジスタDMn1のゲートを任意の電位にするゲート信号VSUNを生成する。より詳細には、ダミー制御回路29は、電源電圧の電圧レベルの変動に影響されないようにゲート信号VSUNを生成する。
【0141】
図15はダミー制御回路29の内部構成の一例を示す回路図である。図15のダミー制御回路29は、第1ボルテージフォロワ回路29aと、第1抵抗分圧回路29bと、LDO(Low Drop-Out)回路29cと、第2ボルテージフォロワ回路29dとを有する。
【0142】
第1ボルテージフォロワ回路29aと第2ボルテージフォロワ回路29dは、図14のボルテージフォロワ回路と同様に、出力ノードと-端子とを短絡させる差動増幅器29e、29fを有する。第1ボルテージフォロワ回路29a内の差動増幅器29eの+端子には基準電圧Vrefが印加され、第2ボルテージフォロワ回路29d内の差動増幅器29fの出力ノードから信号VSUNが出力される。信号VSUNは、図14のダミー回路9内の第1のダミートランジスタDMn1のゲートに入力される。信号VSUNは、AZ期間に任意の電位になる信号である。
【0143】
LDO回路29cは、差動増幅器29gと、PMOSトランジスタ29hと、第2抵抗分圧回路29iとを有する。PMOSトランジスタ29hのソースは電源電圧ノードに接続され、PMOSトランジスタ29hのドレインと接地ノードの間には、第2抵抗分圧回路29iが接続されている。差動増幅器29gの+端子には、第1抵抗分圧回路29bで分圧された電圧が入力され、差動増幅器29gの-端子には、第2抵抗分圧回路29iで分圧された電圧が入力される。
【0144】
図15のLDO回路29cは、電源電圧の電圧レベルが変動しても、PMOSトランジスタのドレイン電圧を一定に維持できる。よって、第2ボルテージフォロワ回路29dから出力される信号VSUNの電圧レベルは電源電圧の電圧レベルの変動の影響を受けなくなる。
【0145】
図14の過光量検知回路1は、図11と同様にフォトダイオードで光電変換された電子を読み出す回路であるが、正孔を読み出す回路構成にすることも可能である。
【0146】
図16は第2改善例に係る過光量検知回路1aの回路図であり、フォトダイオードで光電変換された正孔を読み出す回路である。図16の回路では、図14と共通する構成部分には同一の符号を付しており、以下では相違点を中心に説明する。
【0147】
図16の過光量検知回路1aでは、信号線VSLと接地ノードの間に、PMOSトランジスタMp1とキャパシタCbとが直列に接続されている。PMOSトランジスタMp1とキャパシタCbの接続ノードから、バッファ27を介して過光量検知信号が出力される。
【0148】
第2のダミートランジスタDMp2は、PMOSトランジスタであり、ゲートとドレインが短絡されており、この短絡経路にはPMOSトランジスタMp1のゲートが接続されている。これにより、第2のダミートランジスタDMp2とPMOSトランジスタMp1はカレントミラー回路を構成している。
【0149】
このように、図14及び図16の過光量検知回路1,1aでは、画素部10、信号線VSL、及び過光量検知信号を出力するNMOSトランジスタMn1(又はPMOSトランジスタMp1)と同じ構成のダミー画素部10D、ダミー信号線DVSL、及び第2のダミートランジスタDMn2又はDMp2を備えている。このため、電源電圧の電圧レベルの変動、信号線VSLの寄生抵抗Rpara、及び画素部10内の増幅トランジスタAMPの閾値電圧のばらつきを相殺することができ、太陽光等の過光量が入射されたことを精度よく検出して、太陽黒点を防止できる。
【0150】
図17図14及び図16のダミー画素部10Dの配置場所の一例を示す図である。画素アレイ部2は、有効な画素信号を出力する有効画素領域2aと、有効画素領域2aのカラム方向の両側に配置される2つの無効画素列領域2b、2cと、有効画素領域2aの行方向の両側に配置される2つの無効画素行領域2d、2eとを有する。また、画素アレイ部2のカラム方向の片側又は両側には、行走査回路3が設けられている。
【0151】
図14及び図16のダミー画素部10Dは、一方の無効画素列領域2b内に配置される。上述したように、ダミー画素部10Dは、行ごとに設けられ、同一行のカラム方向のすべての画素部10に接続されている。なお、カラム方向の画素部10の数が多い場合には、同一行の2以上の画素部10を単位として、それぞれ別個にダミー画素部10Dを設けて、過光量を検知してもよい。
【0152】
第2のダミートランジスタDMn2は、画素部10ごとに設けられる。第2のダミートランジスタDMn2は、画素部10内のNMOSトランジスタ(又はPMOSトランジスタ)と同じ電気特性を有するため、NMOSトランジスタ(又はPMOSトランジスタ)の近傍に配置するのが望ましい。
【0153】
このように、図14及び図16の過光量検知回路1,1aは、図11図13に示す過光量検知回路1p,1qにおける第1~第3の課題を解決することができる。図14及び図16の過光量検知回路1,1aは、画素部10内の増幅トランジスタAMPと同じ電源電圧で駆動される第1のダミートランジスタDMn1と、画素部10に接続される信号線VSLの寄生抵抗Rparaと同程度の寄生抵抗Rparaを有するダミー信号線DVSLと、信号線VSLに接続されるトランジスタMn1、Mp1と同程度の閾値電圧を有する第2のダミートランジスタDMn2とを有する。そして、第2のダミートランジスタDMn2を用いて、トランジスタMn1、Mp1のゲート電圧を生成する。これにより、信号線VSLの寄生抵抗Rparaの変動と、電源電圧の電圧レベルの変動と、トランジスタMn1、Mp1の閾値電圧の変動との影響を受けることなく、過光量を検知できる。また、AZ期間に第1のダミートランジスタDMn1のゲートに太陽黒点検知レベルを規定する任意の電位を供給する信号VSUNをLDO回路29cを用いて生成するため、電源電圧の電圧レベルの変動を受けなくなる。
【0154】
[過光量検知回路1,1aの適用例]
次に、図18および図19を参照して本開示に係る過光量検知回路1,1aが適用される受光素子について説明する。図18図19は、本開示に係る過光量検知回路1,1aが適用される受光素子110の模式的な構成を表したものである。図18は、受光素子110の平面構成を表し、図19は、図18のB-B’線に沿った断面構成を表している。
【0155】
この受光素子110は、例えばIII-V族半導体などの化合物半導体材料を用いた赤外線センサ等に適用されるものであり、例えば、可視領域(例えば380nm以上780nm未満)~短赤外領域(例えば780nm以上2400nm未満)の波長の光に、光電変換機能を有している。この受光素子110には、例えば2次元配置された複数の受光単位領域P1(画素P1)が設けられている(図19)。
【0156】
受光素子110は、中央部の素子領域R1と、素子領域R1の外側に設けられ、素子領域R1を囲む周辺領域R2とを有している(図18)。受光素子110は、素子領域R1から周辺領域R2にわたって設けられた導電膜15Bを有している。この導電膜15Bは、素子領域R1の中央部に対向する領域に開口を有している。
【0157】
受光素子110は、素子基板30と、回路基板の一例である読出回路基板40とを積層させた積層構造を有する(図19)。素子基板30の一方の面は光入射面(光入射面S1)であり、光入射面S1と反対の面(他方の面)が、読出回路基板40との接合面(接合面S2)である。
【0158】
素子基板30は、読出回路基板40に近い位置から、配線層10W、第1電極31、半導体層10S(第1半導体層)、第2電極15およびパッシベーション膜16をこの順に有している。半導体層10Sの配線層10Wとの対向面および端面(側面)は、絶縁膜17により覆われている。読出回路基板40は、いわゆるROIC(Readout integrate circuit)であり、素子基板30の接合面S2に接する配線層20Wおよび多層配線層22Cと、この配線層20Wおよび多層配線層22Cを間にして素子基板30に対向する半導体基板35とを有している。
【0159】
素子基板30は素子領域R1に半導体層10Sを有している。換言すれば、半導体層10Sが設けられた領域が、受光素子110の素子領域R1である。素子領域R1のうち、導電膜15Bから露出された領域(導電膜15Bの開口に対向する領域)が、受光領域である。素子領域R1のうち、導電膜15Bで覆われた領域は、OPB(Optical Black)領域R1Bである。OPB領域R1Bは、受光領域を囲むように設けられている。OPB領域R1Bは、黒レベルの画素信号を得るために用いられる。素子基板30は、周辺領域R2に、絶縁膜17とともに埋込層18を有している。周辺領域R2には、素子基板30を貫通し、読出回路基板40に達する孔H1,H2が設けられている。受光素子110では、素子基板30の光入射面S1から、パッシベーション膜16、第2電極15および第2コンタクト層14を介して半導体層10Sに光が入射するようになっている。半導体層10Sで光電変換された信号電荷は、第1電極31および配線層10Wを介して移動し、読出回路基板40で読みだされる。以下、各部の構成について説明する。
【0160】
配線層10Wは、素子領域R1および周辺領域R2にわたって設けられ、読出回路基板40との接合面S2を有している。受光素子110では、この素子基板30の接合面S2が素子領域R1および周辺領域R2に設けられ、例えば素子領域R1の接合面S2と周辺領域R2の接合面S2とは、同一平面を構成している。後述するように、受光素子110では、埋込層18を設けることにより周辺領域R2の接合面S2が形成される。
【0161】
配線層10Wは、例えば層間絶縁膜19A,19B中に、コンタクト電極19Eおよびダミー電極19EDを有している。例えば、読出回路基板40側に層間絶縁膜19Bが、第1コンタクト層32側に層間絶縁膜19Aが配置され、これら層間絶縁膜19A,19Bが積層して設けられている。層間絶縁膜19A,19Bは、例えば、無機絶縁材料により構成されている。この無機絶縁材料としては、例えば、窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化ケイ素(SiO2)および酸化ハフニウム(HfO2)等が挙げられる。層間絶縁膜19A,19Bを同一の無機絶縁材料により構成するようにしてもよい。
【0162】
コンタクト電極19Eは、例えば、素子領域R1に設けられている。このコンタクト電極19Eは、第1電極31と読出回路基板40とを電気的に接続するためのものであり、素子領域R1に画素P1毎に設けられている。隣り合うコンタクト電極19Eは、埋込層18および層間絶縁膜19A,19Bにより電気的に分離されている。コンタクト電極19Eは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、接合面S2に露出されている。ダミー電極19EDは、例えば、周辺領域R2に設けられている。このダミー電極19EDは、後述の配線層20Wのダミー電極22EDに接続されている。このダミー電極19EDおよびダミー電極22EDを設けることにより、周辺領域R2の強度を向上させることが可能となる。ダミー電極19EDは、例えば、コンタクト電極19Eと同一工程で形成されている。ダミー電極19EDは、例えば銅(Cu)パッドにより構成されており、接合面S2に露出されている。
【0163】
コンタクト電極19Eと半導体層10Sとの間に設けられた第1電極31は、光電変換層33で発生した信号電荷(正孔または電子、以下便宜上、信号電荷が正孔であるとして説明する。)を読みだすための電圧が供給される電極(アノード)であり、素子領域R1に画素P1毎に設けられている。第1電極31は、絶縁膜17の開口を埋め込むように設けられ、半導体層10S(より具体的には、後述の拡散領域32A)に接している。第1電極31は、例えば、絶縁膜17の開口よりも大きく、第1電極31の一部は、埋込層18に設けられている。即ち、第1電極31の上面(半導体層10S側の面)は、拡散領域32Aに接し、第1電極31の下面および側面の一部は埋込層18に接している。隣り合う第1電極31は、絶縁膜17および埋込層18により電気的に分離されている。
【0164】
第1電極31は、例えば、チタン(Ti),タングステン(W),窒化チタン(TiN),白金(Pt),金(Au),ゲルマニウム(Ge),パラジウム(Pd),亜鉛(Zn),ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)のうちのいずれかの単体、またはそれらのうちの少なくとも1種を含む合金により構成されている。第1電極31は、このような構成材料の単膜であってもよく、あるいは、2種以上を組み合わせた積層膜であってもよい。例えば、第1電極31は、チタンおよびタングステンの積層膜により構成されている。第1電極31の厚みは、例えば数十nm~数百nmである。
【0165】
半導体層10Sは、例えば、配線層10Wに近い位置から、第1コンタクト層32、光電変換層33および第2コンタクト層34を含んでいる。第1コンタクト層32、光電変換層33および第2コンタクト層34は、互いに同じ平面形状を有し、各々の端面は、平面視で同じ位置に配置されている。
【0166】
第1コンタクト層32は、例えば、全ての画素P1に共通して設けられ、絶縁膜17と光電変換層33との間に配置されている。第1コンタクト層32は、隣り合う画素P1を電気的に分離するためのものであり、第1コンタクト層32には、例えば複数の拡散領域32Aが設けられている。第1コンタクト層32に、光電変換層33を構成する化合物半導体材料のバンドギャップよりも大きなバンドギャップの化合物半導体材料を用いることにより、暗電流を抑えることも可能となる。第1コンタクト層32には、例えばn型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0167】
第1コンタクト層32に設けられた拡散領域32Aは、互いに離間して配置されている。拡散領域32Aは、画素P1毎に配置され、それぞれの拡散領域32Aに第1電極31が接続されている。OPB領域R1Bにも拡散領域32Aが設けられている。拡散領域32Aは、光電変換層33で発生した信号電荷を画素P1毎に読み出すためのものであり、例えば、p型不純物を含んでいる。p型不純物としては、例えばZn(亜鉛)等が挙げられる。このように、拡散領域32Aと、拡散領域32A以外の第1コンタクト層32との間にpn接合界面が形成され、隣り合う画素P1が電気的に分離されるようになっている。拡散領域32Aは、例えば第1コンタクト層32の厚み方向に設けられ、光電変換層33の厚み方向の一部にも設けられている。
【0168】
第1電極31と第2電極15との間、より具体的には、第1コンタクト層32と第2コンタクト層34との間の光電変換層33は、例えば、全ての画素P1に共通して設けられている。この光電変換層33は、所定の波長の光を吸収して、信号電荷を発生させるものであり、例えば、i型のIII-V族半導体などの化合物半導体材料により構成されている。光電変換層33を構成する化合物半導体材料としては、例えば、InGaAs(インジウムガリウム砒素),InAsSb(インジウム砒素アンチモン),InAs(インジウム砒素),InSb(インジムアンチモン)およびHgCdTe(水銀カドミウムテルル)等が挙げられる。Ge(ゲルマニウム)により光電変換層33を構成するようにしてもよい。光電変換層33では、例えば、可視領域から短赤外領域の波長の光の光電変換がなされるようになっている。
【0169】
第2コンタクト層34は、例えば、全ての画素P1に共通して設けられている。この第2コンタクト層34は、光電変換層33と第2電極15との間に設けられ、これらに接している。第2コンタクト層34は、第2電極15から排出される電荷が移動する領域であり、例えば、n型の不純物を含む化合物半導体により構成されている。第2コンタクト層34には、例えば、n型のInP(インジウムリン)を用いることができる。
【0170】
第2電極15は、例えば各画素P1に共通の電極として、第2コンタクト層34上(光入射側)に、第2コンタクト層34に接するように設けられている。第2電極15は、光電変換層33で発生した電荷のうち、信号電荷として用いられない電荷を排出するためのものである(カソード)。例えば、正孔が、信号電荷として第1電極31から読み出される場合には、この第2電極15を通じて例えば電子を排出することができる。第2電極15は、例えば赤外線などの入射光を透過可能な導電膜により構成されている。第2電極15には、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)またはITiO(In2O3-TiO2)等を用いることができる。第2電極15は、例えば、隣り合う画素P1を仕切るように、格子状に設けられていてもよい。この第2電極15には、光透過性の低い導電材料を用いることが可能である。
【0171】
パッシベーション膜16は、第2電極15を光入射面S1側から覆っている。パッシベーション膜16は、反射防止機能を有していてもよい。パッシベーション膜16には、例えば窒化シリコン(SiN),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化ケイ素(SiO2)および酸化タンタル(Ta2O3)等を用いることができる。パッシベーション膜16は、OPB領域R1Bに開口16Hを有している。開口16Hは、例えば、受光領域を囲む額縁状に設けられている(図1q)。開口16Hは、例えば平面視で四角形状または円状の孔であってもよい。このパッシベーション膜16の開口16Hにより、第2電極15に導電膜15Bが電気的に接続されている。
【0172】
絶縁膜17は、第1コンタクト層32と埋込層18との間に設けられるとともに、第1コンタクト層32の端面、光電変換層33の端面、第2コンタクト層34の端面および第2電極15の端面を覆い、周辺領域R2ではパッシベーション膜16に接している。この絶縁膜17は、例えば、酸化シリコン(SiOX)または酸化アルミニウム(Al2O3)等の酸化物を含んで構成されている。複数の膜からなる積層構造により絶縁膜17を構成するようにしてもよい。絶縁膜17は、例えば酸窒化シリコン(SiON),炭素含有酸化シリコン(SiOC),窒化シリコン(SiN)およびシリコンカーバイド(SiC)などのシリコン(Si)系絶縁材料により構成するようにしてもよい。絶縁膜17の厚みは、例えば数十nm~数百nmである。
【0173】
導電膜15Bは、OPB領域R1Bから周辺領域R2の孔H1にわたって設けられている。この導電膜15Bは、OPB領域R1Bに設けられたパッシベーション膜16の開口16Hで第2電極15に接するとともに、孔H1を介して読出回路基板20の配線(後述の配線22CB)に接している。これにより、読出回路基板40から導電膜15Bを介して第2電極15に電圧が供給されるようになっている。導電膜15Bは、このような第2電極15への電圧供給経路として機能するとともに、遮光膜としての機能を有し、OPB領域R1Bを形成する。導電膜15Bは、例えば、タングステン(W),アルミニウム(Al),チタン(Ti),モリブデン(Mo),タンタル(Ta)または銅(Cu)を含む金属材料により構成されている。導電膜15B上にパッシベーション膜が設けられていてもよい。
【0174】
第2コンタクト層34の端部と第2電極15との間に、接着層Bが設けられていてもよい。この接着層Bは、後述するように、受光素子110を形成する際に用いられるものであり、半導体層10Sを仮基板に接合する役割を担っている。接着層Bは、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)または酸化シリコン(SiO2)等により構成されている。接着層Bは、例えば、半導体層10Sの端面よりも拡幅して設けられ、半導体層10Sとともに、埋込層18に覆われている。接着層Bと埋込層18との間には、絶縁膜17が設けられている。
【0175】
過光量検知回路1,1aは、受光素子110に適用される場合に、読出回路基板40に設けられる。これにより、過光量検知回路1,1aは、受光素子110の回路規模を増大させることなく、イメージセンサによる過光量の受光を高精度に検知することができる。
【0176】
図20を参照して本開示に係る過光量検知回路1が適用される画素構造の一例について説明する。図20は、本開示に係る過光量検知回路1,1aが適用される画素構造を示す断面図である。
【0177】
回路基板の一例である半導体基板60の光入射側である上側には、素子基板が設けられる。素子基板には、光電変換部となるN型の半導体薄膜41が、画素アレイ領域の全面に形成されている。N型の半導体薄膜41は、InGaP、InAlP、InGaAs、InAlAs、さらにはカルコパイライト構造の化合物半導体が用いられる。カルコパイライト構造の化合物半導体は、高い光吸収係数と、広い波長域に渡る高い感度が得られる材料であり、光電変換用のN型の半導体薄膜41として好ましく用いられる。このようなカルコパイライト構造の化合物半導体は、Cu、Al、Ga、In、S、Seなど、IV族元素の周囲の元素を用いて構成され、CuGaInS系混晶、CuAlGaInS系混晶、およびCuAlGaInSSe系混晶等が例示される。
【0178】
また、N型の半導体薄膜41の材料には、上述した化合物半導体の他、アモルファスシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、量子ドット光電変換膜、有機光電変換膜などを用いることも可能である。本実施の形態では、N型の半導体薄膜41として、InGaAsの化合物半導体が用いられているものとする。
【0179】
N型の半導体薄膜41の半導体基板60側である下側には、画素電極を構成する高濃度のP型層42が、画素ごとに形成されている。そして、画素ごとに形成された高濃度のP型層42の間には、各画素を分離する画素分離領域としてのN型層43が、例えば、InP等の化合物半導体で形成されている。このN型層43は、画素分離領域としての機能の他、暗電流を防止する役割も有する。
【0180】
一方、N型の半導体薄膜41の光入射側である上側にも、画素分離領域として用いたInP等の化合物半導体を用いて、N型の半導体薄膜41よりも高濃度のN型層44が形成されている。この高濃度のN型層44は、N型の半導体薄膜41で生成された電荷の逆流を防止するバリア層として機能する。高濃度のN型層44の材料には、例えば、InGaAs、InP、InAlAsなどの化合物半導体を用いることができる。
【0181】
バリア層としての高濃度のN型層44の上には、反射防止膜45が形成されている。反射防止膜45の材料には、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2Ta5)、酸化チタン(TiO2)などを用いることができる。
【0182】
高濃度のN型層44または反射防止膜45のいずれか一方は、N型の半導体薄膜41を上下に挟む電極のうちの上側の上部電極としても機能し、上部電極としての高濃度のN型層44または反射防止膜45には、所定の電圧Vaが印加される。
【0183】
反射防止膜45の上には、カラーフィルタ46及びオンチップレンズ47がさらに形成されている。カラーフィルタ46は、R(赤)、G(緑)、またはB(青)のいずれかの光(波長光)を透過させるフィルタであり、例えば、画素アレイ部2において、いわゆるベイヤ配列で配置されている。
【0184】
画素電極を構成する高濃度のP型層42と、画素分離領域としてのN型層43の下側には、パッシベーション層51および絶縁層52が形成されている。そして、接続電極53A及び53Bとバンプ電極54が、パッシベーション層51および絶縁層52を貫通するように形成されている。接続電極53A及び53Bとバンプ電極54は、画素電極を構成する高濃度のP型層42と、電荷を蓄積する容量素子とを電気的に接続する。
【0185】
過光量検知回路1,1aは、図20に示す画素構造に適用される場合、回路基板の一例である半導体基板60に設けられる。これにより、過光量検知回路1,1aは、図20に示す画素構造の回路規模を増大させることなく、イメージセンサによる過光量の受光を高精度に検知することができる。
【0186】
<<応用例>>
本開示に係る過光量検知回路1,1aは、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0187】
図21は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図21に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0188】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図21では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0189】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0190】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0191】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0192】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0193】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0194】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0195】
ここで、図22は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0196】
なお、図22には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0197】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0198】
図21に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0199】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0200】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0201】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0202】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0203】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0204】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0205】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0206】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0207】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0208】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0209】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0210】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0211】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図21の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0212】
なお、図21に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0213】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)光電変換素子と、前記光電変換素子で光電変換された信号を信号線に出力する第1トランジスタと、を有する画素部と、
前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを検知する過光量検知回路と、を備え、
前記過光量検知回路は、
前記信号線と基準電位ノードとの間に直列に接続される第2トランジスタ及びキャパシタと、
電源電圧の電圧レベルの変動、前記信号線の寄生抵抗、及び前記第1トランジスタの閾値電圧のばらつきの少なくとも一つを考慮に入れて前記第2トランジスタのゲート電圧を調整するダミー回路と、を有する、撮像装置。
(2)前記ダミー回路は、
前記第1トランジスタに対応する第1のダミートランジスタと、前記第1のダミートランジスタに接続されるダミー信号線と、を有するダミー画素部と、
前記ダミー信号線の電位に応じて前記第2トランジスタのゲート電圧を制御する第2のダミートランジスタと、を有する、(1)に記載の撮像装置。
(3)前記信号線の寄生抵抗と前記ダミー信号線の寄生容量とが等しくなるように、前記第2トランジスタのゲート電圧が制御される、(2)に記載の撮像装置。
(4)前記第2のダミートランジスタ及び前記第2トランジスタは、カレントミラー回路を構成する、(2)又は(3)に記載の撮像装置。
(5)前記第1のダミートランジスタは、前記第1トランジスタと同一のサイズ、同一の導電型及び同一の電気特性を有し、
前記第2のダミートランジスタは、前記第2トランジスタと同一のサイズ、同一の導電型及び同一の電気特性を有する、(2)乃至(4)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(6)互いに交差する第1方向及び第2方向に配置される複数の前記画素部を有する画素アレイ部を備え、
前記ダミー画素部は、前記画素アレイ部内の前記第1方向に配置される2以上の前記画素部に対応づけて設けられ、
前記第2のダミートランジスタは、前記第1方向に配置される前記2以上の画素部に対応する2以上の前記第2トランジスタのそれぞれに対して別個に設けられる、(3)又は(4)に記載の撮像装置。
(7)前記ダミー画素部は、前記第2方向の同一行、かつ前記第1方向に配置される前記2以上の第2トランジスタに対応づけて設けられ、
前記第2のダミートランジスタは、前記第2方向の同一行、かつ前記第1方向に配置される前記2以上の第2トランジスタのそれぞれに対して別個に設けられる、(6)に記載の撮像装置。
(8)前記第2のダミートランジスタは、対応する前記第2トランジスタの近傍に配置される、(6)又は(7)に記載の撮像装置。
(9)前記ダミー画素部は、前記画素アレイ部における前記第1方向の一端側に配置される、(6)乃至(8)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(10)前記画素アレイ部は、有効画素領域と、前記有効画素領域の前記第1方向の両側に配置される2つの無効画素領域とを有し、
前記ダミー画素部は、前記2つの無効画素領域の一方に配置される、(9)に記載の撮像装置。
(11)前記ダミー信号線と前記第2のダミートランジスタとの間に接続されるボルテージフォロワ回路を備える、(2)乃至(10)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(12)前記画素部は、前記第1トランジスタと前記信号線との間に接続され、前記第1トランジスタで増幅した信号を前記信号線に出力するか否かを切り替える第3トランジスタを有し、
前記ダミー回路は、前記第3トランジスタに対応する第3のダミートランジスタを有し、
前記第3のダミートランジスタは、前記第1のダミートランジスタと前記ダミー信号線との間に接続される、(2)乃至(11)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(13)前記信号線の電位に応じた電圧信号と、時間に応じて電圧レベルが変化するランプ波信号との電位差を検出する差動増幅器を備え、
前記第1のダミートランジスタは、前記差動増幅器のオフセット電圧を調整する期間内にオンする、(2)乃至(12)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(14)前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された電荷を蓄積するフローティングディフュージョンと、前記フローティングディフュージョンに保持された電荷をリセットする第4トランジスタと、を有し、
前記差動増幅器のオフセット電圧を検出する第1期間の後に、前記フローティングディフュージョンの電荷をリセットした状態での前記信号線の電位に応じた電圧信号と前記ランプ波信号との電位差を前記差動増幅器にて検出する第2期間が設けられ、
前記過光量検知回路は、前記第2期間に、前記第2トランジスタ及び前記キャパシタの接続ノードから、前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを示す信号を出力する、(13)に記載の撮像装置。
(15)前記第1期間内に、前記第1のダミートランジスタのゲートに太陽電池検知レベルを規定する任意の電位を供給するダミー制御回路を備える、(14)に記載の撮像装置。
(16)前記ダミー制御回路は、電源電圧の電圧レベルの変動に影響されないように前記ゲートの信号を生成するLDO(Low DropOut)回路を有する、(15)に記載の撮像装置。
(17)前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された電子に応じた信号を前記信号線に出力し、
前記第2トランジスタ及び前記第2のダミートランジスタはいずれも、N型のMOSトランジスタである、(2)乃至(16)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(18)前記画素部は、前記光電変換素子で光電変換された正孔に応じた信号を前記信号線に出力し、
前記第2トランジスタ及び前記第2のダミートランジスタはいずれも、P型のMOSトランジスタである、(2)乃至(16)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(19)前記第2トランジスタ及び前記キャパシタの接続ノードから、前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを示す信号が出力される、(1)乃至(18)のいずれか一項に記載の撮像装置。
(20)光電変換された撮像信号を出力する撮像装置と、
前記撮像信号に対する信号処理を行う信号処理部と、を備える電子機器であって、
前記撮像装置は、
光電変換素子と、前記光電変換素子で光電変換された信号を信号線に出力する第1トランジスタと、を有する画素部と、
前記光電変換素子が過光量の光を受光したことを検知する過光量検知回路と、を備え、
前記過光量検知回路は、
前記信号線と基準電位ノードとの間に直列に接続される第2トランジスタ及びキャパシタと、
電源電圧の電圧レベルの変動、前記信号線の寄生抵抗、及び前記第1トランジスタの閾値電圧のばらつきの少なくとも一つを考慮に入れて前記第2トランジスタのゲート電圧を調整するダミー回路と、を有する、電子機器。
【0214】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0215】
1、1a、1p、1q 過光量検知回路、2 画素アレイ部、2a 有効画素領域、2b 無効画素列領域、2c 無効画素列領域、2d 無効画素行領域、2e 無効画素行領域、3 行走査回路、4 AD変換部、5 列走査回路、6 バッファアンプ、7 タイミング制御回路、8 参照信号生成回路、9 ダミー回路、10 画素部、10D ダミー画素部、10S 半導体層、10W 配線層、11 AD変換回路、12 電流源、12D 電流源、13 ボルテージフォロワ回路、14 第2コンタクト層、15 第2電極、15B 導電膜、16 パッシベーション膜、16H 開口、17 絶縁膜、18 埋込層、19A 層間絶縁膜、19B 層間絶縁膜、19E コンタクト電極、19ED ダミー電極、20 読出回路基板、20W 配線層、22 コンパレータ、22C 多層配線層、22CB 配線、22ED ダミー電極、23 カウンタ、25 電流源、26 電流源、27 バッファ、28 スイッチ、29 ダミー制御回路、29a 第1ボルテージフォロワ回路、29b 第1抵抗分圧回路、29c LDO回路、29d 第2ボルテージフォロワ回路、29e 差動増幅器、29f 差動増幅器、29g 差動増幅器、29h PMOSトランジスタ、29i 第2抵抗分圧回路、30 素子基板、31 第1電極、32 第1コンタクト層、32A 拡散領域、33 光電変換層、34 第2コンタクト層、35 半導体基板、40 読出回路基板、41 半導体薄膜、42 P型層、43 N型層、44 N型層、45 反射防止膜、46 カラーフィルタ、47 オンチップレンズ、51 パッシベーション層、52 絶縁層、53A 接続電極、53B 接続電極、54 バンプ電極、60 半導体基板、100 撮像装置、100 イメージセンサ、101 クランプ回路、102 検知回路、110 受光素子
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