(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164426
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】舗装路面の研削装置、および舗装路面の補修方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/12 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
E01C23/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069911
(22)【出願日】2021-04-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1) 試験日 令和2年6月19日 試験場所 新潟県新潟市中央区太右エ門新田地内 試験を行った者 ヒートロック工業株式会社 (2) 資料提出日 令和2年11月6日 資料提出先 一般財団法人 国土技術研究センター 資料を提出した者 ヒートロック工業株式会社 (3) 施工日 令和3年3月18日~20日 施工場所 新潟県新潟市中央区竜が島、および新潟県新潟市中央区上所の2箇所 施工を行った者 日瀝道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592061854
【氏名又は名称】ヒートロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】岡村 修
(72)【発明者】
【氏名】三浦 隆雄
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA03
2D053BA01
2D053DA03
2D053DA05
(57)【要約】
【課題】コンクリート等の構造物と接して敷設されている舗装路面を適切に研削できる舗装路面の研削装置を提供する。
【解決手段】車両(2)と、一方の端部が車両(2)の側方から突き出されている水平回転軸(11)と、この水平回転軸(11)に設けられている研削体(12)とから構成する。研削体(12)は複数個の研削片(19)が設けられ回転するとき全体として円柱状になり、この円柱の側面で舗装路面を切削するようになっている。本発明においては、この研削体(12)について、円柱の底面に相当する端部において車両(2)から最遠部に位置する研削片(19)より外方に突出した部分が設けられないように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面を走行する車両と、該車両に水平に設けられて一方の端部が前記車両の側部から突き出ている水平回転軸と、前記水平回転軸を駆動するモータまたはエンジンと、前記水平回転軸の前記一方の端部に設けられて前記水平回転軸と一体的に回転する研削体とからなり、
前記研削体は、複数個の研削片が設けられ、前記研削体が回転するとき前記複数個の研削片が描く軌跡が円柱状になり該円柱の側面で舗装路面を切削するようになっており、前記円柱の底面に相当する端部において前記車両から最遠部に位置する前記研削片より外方に突出した部分が設けられていないことを特徴とする、舗装路面の研削装置。
【請求項2】
前記研削片は、ダイヤモンド粒子を含んだ金属材料から焼結によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の舗装路面の研削装置。
【請求項3】
コンクリート、または石材からなる構造物と接して敷設されている舗装路面において、前記構造物の近傍における舗装路面を補修する補修方法であって、
前記補修方法は、舗装路面の表面を研削する研削手段により前記構造物近傍の舗装路面を前記構造物から一定の幅でかつ一定の深さで研削する研削工程と、
前記研削工程により形成された溝に舗装材を充填する充填工程と、からなる舗装路面の補修方法。
【請求項4】
前記構造物はコンクリート製の縁石ブロックであり、前記舗装材はアスファルトと骨材とからなる、請求項3に記載の舗装路面の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化した舗装路面の補修に際して舗装路面の表面を研削する舗装路面の研削装置、および舗装路面の補修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
劣化した舗装路面を補修する場合、劣化した舗装路面の表面を除去して、新しい舗装材により舗装する必要がある。例えば、劣化した舗装路面の表面を除去する装置として、複数本のカッタビットが設けられた回転体を備えた路面切削装置が周知である。回転体を回転してカッタビットにより舗装路面を打撃して表面を破砕し、劣化した舗装材を除去することができる。このとき舗装路面を削る際に打撃的に破砕するので舗装路面を若干痛めることがあり、新しい舗装材との接着力に問題が生じることもある。
【0003】
これに対して本出願人は、特許文献1、2等に示されているように、舗装路面を研磨するようにして表面を研削する舗装路面の研削装置を提案している。これら文献に記載の舗装路面研削装置は、回転体に複数個の研削片が設けられている。これらの研削片はダイヤモンド粒子を含んだ金属が焼結されたものである。回転体を回転すると複数個の研削片が描く軌跡が円柱状になる。この円柱の側面によって舗装路面を研磨する。すなわち研削する。従って、舗装路面は滑らかに削り取られる。舗装路面を痛めることがなく、新しい舗装材が強く接着することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-186793号公報
【特許文献2】特開2015-214810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで舗装路面には、コンクリート等からなる構造物に接して舗装されている部分もある。例えばコンクリート製の縁石ブロックに接して舗装されている舗装路面がある。このような構造物に接している舗装路面では、構造物との境界の部分の舗装が劣化して構造物との間に隙間が生じる場合がある。隙間には種子が入り込んで雑草が生えるので補修が必要になる。このような構造物に接している舗装路面を補修する場合、構造物近傍の舗装路面を研削して除去し、その後に新しい舗装材を充填して隙間を埋めるようにする。ところで、構造物近傍の舗装路面を研削して除去するとき、構造物を傷めないようにして構造物の近傍の舗装路面を適切に除去しなければならない。しかしながら、特許文献1、2に記載の表面研削装置では構造物の近傍の舗装路面を研削することは困難である。
【0006】
本発明は、コンクリート、または石材からなる構造物と接して敷設されている舗装路面において、構造物を痛めることなく構造物近傍の舗装路面を適切に研削することができる舗装路面の研削装置を提供することを目的としている。さらに構造物に接して敷設されている舗装路面を適切に補修することができる舗装路面の補修方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、路面を走行する車両と、車両に水平に設けられて一方の端部が車両の側部から突き出ている水平回転軸と、水平回転軸を駆動するモータまたはエンジンと、水平回転軸の一方の端部に設けられて水平回転軸と一体的に回転する研削体とからなる舗装路面の研削装置を対象とする。この研削体は複数個の研削片が設けられ、研削体が回転するとき複数個の研削片が描く軌跡が円柱状になり該円柱の側面で舗装路面を切削するようになっている。本発明においては、この研削体について、研削体が回転するとき円柱の底面に相当する端部において車両から最遠部に位置する研削片より外方に突出した部分が設けられないように構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、研削体が回転して円柱状になるとき、円柱の底面に相当する端部において研削片より外方に突出した部分が設けられていない。従って、この円柱の底面を構造物に近づけるようにすれば、構造物を傷つけずに構造物の近傍のギリギリまで舗装路面を研削することができる。従って、構造物に接している舗装路面について容易に補修することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る舗装路面の研削装置を示す斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る舗装路面の研削装置を示す図で、その(A)は研削装置の上面図であり、その(B)は研削体を構成しているドラムの斜視図、その(C)は研削片の斜視図、その(D)は研削体の正面図である。
【
図3】本実施の形態に係る舗装路面の補修方法を説明する図で、その(A)は縁石ブロックとこれに接している舗装されている劣化した歩道を示す正面断面図、その(B)は劣化した歩道と劣化した箇所を研削する本実施の形態に係る舗装路面の研削装置の研削体とを示す正面断面図、その(C)は縁石ブロックと補修された歩道とを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態を説明する。本実施の形態に係る舗装路面の研削装置1は、
図1に示されているように、車両2とこの車両2に搭載されている研削機構3とから構成されている。車両2は比較的小型で、図に示されていないエンジンによって自走するようになっている。ハンドル5を操作して運転するようになっている。車両2には2個の前輪6、6と2個の後輪7とが設けられている。
図1には詳しく示されていないが、車両2のフレームつまりシャーシには、車高を上下する高さ調整機構が設けられ、この高さ調整機構を介して前輪6と後輪7が設けられている。車高を上下させることによって、次に説明する研削機構3を上下させることができ、舗装路面を研削することができるようになっている。
【0011】
研削機構3は、車両2に設けられているエンジン9と、車両2に設けられている水平回転軸11と、水平回転軸11に設けられている研削体12とを備えている。エンジン9には駆動プーリ14が、そして水平回転軸11には従動プーリ15がそれぞれ設けられ、駆動プーリ14と従動プーリ15はVベルト16によって掛け回されている。従って、エンジン9を駆動すると水平回転軸11が回転し、研削体12を回転するようになっている。
【0012】
本実施の形態において、研削体12はその配置、および構造に特徴がある。研削体12が配置されているのは、
図2の(A)に示されているように、車両2の側方になっている。この位置に配置するために、水平回転軸11は一方の端部が車両2の側部から若干突き出ている。この突き出た一方の端部に研削体12が設けられている。このように配置されているので、車両2によって移動しながら研削体12によって舗装路面を研削するとき、車両2の前輪6、6、後輪7、7は研削によって舗装路面に形成される溝に嵌まらずに走行することができる。また、研削体12が車両2の側方に設けられているので、構造物に接して敷設されている舗装路面を研削するとき、研削体12を構造物に可及的に近づけることができる。
【0013】
本実施の形態に係る研削体12は、
図1に示されているように、ドラム18と、このドラム18の表面に設けられている複数個の研削片19、19、…とから構成されている。ドラム18は、
図2の(B)に示されているように、底面部21を備えた所定肉厚の円筒からなる。そして底面部21には、
図2の(B)、(D)に示されているように、軸穴22が開けられている。軸穴22は、水平回転軸11が入れられるための穴になっている。図には示されていないが、水平回転軸11の一方の端部は円柱状の軸の一部が、その両側の側面から一部が切り取られた形状を呈している。このように形成されている水平回転軸11の端部がこの軸穴22に挿入されると、いわゆるキー付き回転軸のように回転力の損失なく回転力が伝達されることになる。
【0014】
このようなドラム18に設けられている研削片19は、
図2の(C)に示されているように、ドラム18に固着するための脚部24と、この脚部24に設けられている研削部25とから構成されている。研削部25は、所定幅で円弧状に形成されており、その頂部において舗装路面を研削するようになっている。研削片19はダイヤモンド粒子を含んだ金属材料から焼結により形成されている。従って、摩耗しにくく長期間に渡って安定して舗装路面を研削することができる。
【0015】
本実施の形態に係る研削体12は、
図1、および
図2の(D)に示されているように、このような研削片19、19、…が複数個、溶接によりドラム18に固着されている。なお、複数個の研削片19、19、…は研削体12を回転するとき、それぞれの研削片19、19、…が描く軌跡が全体として円柱状になるように配置されている。ただし、切削時の摩擦熱による温度上昇を抑制し、そして研削体12の重量を抑制するために、複数個の研削片19、19、…は、ドラム18において互いに間隔を空けて設けられている。
【0016】
このような研削体12は、前記したように水平回転軸11に設けられている。研削体12を水平回転軸11に固定しているのは、
図1に示されているようにナット27である。水平回転軸11の端部には雄ねじが形成されており、ナット27が螺合して研削体12を水平回転軸11に固定している。ところで本実施の形態において、ナット27も、そして雄ねじが形成されている水平回転軸11の端部も、ドラム18内に完全に収納された状態になる。つまり、研削体12が回転するとき、車両2から最遠部に位置する研削片19よりも、側方に突出した部分が存在しないようになっている。これが本実施の形態に係る研削体12の1つの特徴になっている。
【0017】
このような研削体12には、
図1には示されていないが、カバーが設けられ、カバーには粉塵を吸引する吸引装置が設けられている。従って、研削体12によって舗装路面を研削して粉塵が発生しても周囲環境を汚染しない。
【0018】
本実施の形態に係る舗装路面の研削装置1によって舗装路面を補修する補修方法を説明する。
図3の(A)には、縁石ブロック30と、この縁石ブロック30に接して舗装されている歩道側舗装路面31と、同様に縁石ブロック30に接して舗装されている車道側舗装路面32とが示されている。車道側舗装路面32は長期間の風雨にさらされて劣化し、縁石ブロック30との間に隙間35が形成されている。この隙間35に雑草36が生えている。このような車道側舗装路面32を補修する。
【0019】
雑草36を抜く。次いで隙間35が形成されている、車道側舗装路面32を研削手段によって所定幅、所定深さで削り取る研削工程を実施する。具体的には次のようにする。
図1に示されているように、本実施の形態に係る舗装路面の研削装置1においてエンジン9を駆動して水平回転軸11、研削体12を回転させる。そして高さ調整機構により前輪6、6、後輪7、7の高さを調整して車高を低くする。
図3の(B)に示されているように研削体12を車道側舗装路面32に接触させる。つまり研削する。ハンドル5(
図1参照)を操作しながら車両2を走行させ、
図3の(B)に示されているように研削体12によって車道側舗装路面32を研削する。前記したように研削体12は、車両2から最遠部に位置する研削片19、19よりも側方に突出した部分が存在しないようになっている。従って、研削体12を縁石ブロック30に可及的に近づけることができる。これによって縁石ブロック30に接する車道側舗装路面32を所定幅、所定深さで研削することができる。なお、研削によって形成される溝38の幅は、研削体12の幅と略等しい。研削体12の幅は、例えば1~20cm程度とすることができ、より好ましくは3~10cmである。
【0020】
研削によって形成された溝38に、
図3の(C)に示されているように、新しい舗装材39を充填する。舗装路面の補修を完了する。なお、舗装材39には、アスファルトと骨材とからなる混合物を使用することもできるし、コンクリートを使用することもできる。
【0021】
本実施の形態は色々な変形が可能である。例えば、研削体12はエンジン9によって回転駆動するように説明したが、電動モータによって駆動するようにしてもよい。また車両2は、4輪であるように説明したが、3輪であっても、あるいは5輪以上であってもよい。さらには車両2は電動モータで自走するようにしてもよい。
【0022】
図3によって説明した、本実施の形態に係る舗装路面の研削装置1によって舗装路面を補修する補修方法では、補修の対象を車道側舗装路面32としていた。しかしながら、歩道側舗装路面31についても劣化することがあり、同様の補修方法により補修することができる。また、舗装路面が接ししている構造物は縁石ブロック30に限定されない。例えば、構造物としてコンクリート壁、等がある。コンクリート壁に接して舗装されている舗装路面であっても、当然にコンクリート壁近傍の舗装路面を研削し、新しい舗装材で埋め戻して補修できる。なお、研削によって形成された溝38に埋め戻す新しい舗装材39として止水性に優れた舗装材を採用することもできる。そうすると種子だけでなく、水も入りにくくなり、長期間に渡って雑草が生えることを防止できる。
【符号の説明】
【0023】
1 舗装路面の研削装置 2 車両
3 研削機構 5 ハンドル
6 前輪 7 後輪
9 エンジン 11 水平回転軸
12 研削体 14 駆動プーリ
15 従動プーリ 16 Vベルト
18 ドラム 19 研削片
21 底面部 22 軸穴
24 脚部 25 研削部
27 ナット 30 縁石ブロック
31 歩道側舗装路面 32 車道側舗装路面
35 隙間 36 雑草
38 溝 39 舗装材