(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164460
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/41 20060101AFI20221020BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F16C33/41
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069961
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 滋
(72)【発明者】
【氏名】村田 收
(72)【発明者】
【氏名】大宮 康裕
(72)【発明者】
【氏名】遠山 護
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 範和
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 みちる
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 高晃
(72)【発明者】
【氏名】立石 佳男
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 賢一
(72)【発明者】
【氏名】戸田 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】西村 駒次
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐也
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA25
3J701BA44
3J701BA49
3J701CA14
3J701CA15
3J701CA16
3J701FA32
3J701FA33
3J701XB03
3J701XB18
3J701XB24
3J701XB26
3J701XB31
3J701XB34
(57)【要約】
【課題】高速で回転しても、転動面における油量不足を抑制し、焼き付きや摩耗の発生を抑制できる転がり軸受を提供する。
【解決手段】内周面に外側軌道が形成された外輪21と、外周面に内側軌道が形成された内輪22と、外側軌道と内側軌道との間に配置された複数の転動体23と、転動体23を転動可能に保持する保持器25と、を備えた転がり軸受であって、転動体23が摺接する保持器25の摺接面26には、転動体23の摺動方向に交差する方向に延びる溝27aが形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外側軌道が形成された外輪と、外周面に内側軌道が形成された内輪と、前記外側軌道と前記内側軌道との間に配置された複数の転動体と、前記転動体を転動可能に保持する保持器と、を備えた転がり軸受であって、
前記転動体が摺接する前記保持器の摺接面には、前記転動体の摺動方向に交差する方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の転がり軸受であって、
前記溝は、複数本が互いに平行に並んで形成されていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の転がり軸受であって、
前記溝の幅は、前記保持器の径方向の厚さの0.25倍以下であることを特徴とする転がり軸受。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の転がり軸受であって、
前記摺接面の算術平均粗さは、0.05μm以上10μm以下であることを特徴とする転がり軸受。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の転がり軸受であって、
前記溝は、前記転動体の摺動方向に対して30度以上150度以下の角度で斜めに交わる方向に沿って形成されていることを特徴とする転がり軸受。
【請求項6】
請求項5に記載の転がり軸受であって、
前記溝は、前記転動体の摺動方向に直交する方向に沿って形成されていることを特徴とする転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、転がり軸受の転動体を転動可能に保持する保持器を樹脂組成物で形成し、転動体が摺接する保持器の摺接面にディンプルを散在するように形成して保油性を持たせた玉軸受が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、転動体が摺接する保持器の摺接面にディンプルにより油だまりを設けることによって保油性を向上して、高速回転時の油膜切れを抑制する方策が提示されている。しかしながら、そもそも軸受を高速で回転させることによって、転動体が外輪や内輪の軌道面に転がり接触する転動面へのオイルの流入が極めて少なくなれば、特許文献1に提示されている方策により保持器の摺接面の保油性を向上しても、転動面における油量不足を抑制できなくなる可能性がある。
【0005】
そこで、高速で回転する玉軸受の内部の潤滑状態を可視化できる試験機を製作し、従来技術の玉軸受を高速で回転させた場合の玉軸受内部の潤滑状態を観察した。評価試験に用いた玉軸受1は、型式6808に相当する形状で、外輪2のみ石英製とした可視化軸受である。玉軸受1の全体の構成を
図13及び
図14に示す。
図13及び
図14に示すように、玉軸受1は、透明な石英製の外輪2と、鋼材製の内輪3と、転動体である鋼球4と、鋼球4を周方向に間隔を空けて転動可能に保持する保持器5とを備える。
【0006】
保持器5の形状を、
図15、
図16及び
図17に示す。なお、保持器5の形状を明確に示すために、
図16では、保持器5のみの断面と鋼球4を示している。保持器5には、鋼球4を転動可能に保持するポケット6が軸方向一方側に形成されており、ポケット6は片側が開放した形状となっている。そして、保持器5の軸方向他方側の側面7は平坦となっている。なお、保持器の側面7には、軸方向に貫通する油通穴は形成されていない。
【0007】
評価試験に用いた試験機の概略を
図18に示す。水平方向に延びる回転軸8は2つの軸支持軸受9によって回転可能に支持され、モータ10によって回転される。回転軸8は玉軸受1の内輪3の内側に挿入されて固定されており、内輪3は回転軸8と一体となって回転する。玉軸受1の外輪2はハウジング11の内部に固定されている。玉軸受1の上方にはカメラ12が配置され、ハウジング11には玉軸受1の上方に観察用穴13が形成されているため、カメラ12は外輪2の最頂部を上方から撮影することができる。
【0008】
給油ノズル14は外輪2の最頂部と内輪3の間にオイルを供給し、玉軸受1より下方でハウジング11内に貯まったオイルは、オイルポンプ15によって回収されて循環する。オイルには、市販のATF(Automatic Transmission Fluid)であるトヨタオートフルードWSに蛍光剤であるクマリン-6を混入させたものを用いて、蛍光法によって油量分布を観察した。励起光には、波長405nmのLEDフラッシュ照明を用いた。
【0009】
図19は玉軸受1の上面図である。外輪2が透明な石英製であるため、玉軸受1を上方から見ると、内輪3の軌道面3aや鋼球4の位置も確認することができる。
図13の破線で囲まれた領域がカメラ12による観察領域である。観察領域は視野23.6mm×17.7mmである。LEDフラッシュ照明の1回発光あたりの時間を3μsecとして、その発光をカメラ12のフレームノート40fpsに合わせて照射することで、回転している玉軸受1の内部のオイル分布を観察した。玉軸受1への供給油量を100ml/minで一定として、玉軸受1に上方から付与したラジアル荷重も300Nで一定として、軸回転速度を約2000rpmと約20000rpmに変えて観察した。
【0010】
転動面周辺の油量分布の観察結果を模式的に
図20及び
図21に示す。
図20が軸回転速度を約2000rpm(厳密には1910rpm)とした場合の観察結果であり、
図21が軸回転速度を約20000rpm(厳密には20200rpm)とした場合の観察結果である。
図20及び
図21は、鋼球4の位置を実線で、鋼球4の中心線を一点鎖線で、保持器5の位置を二点鎖線で記載している。鋼球4は、
図20及び
図21の右側に向かって公転している。
図20及び
図21には、給油ノズル14も描かれている。
図20及び
図21では、オイルが多く存在する領域ほど濃い灰色で示しており、白い部分にはオイルがほとんど存在していなかったことを示す。
【0011】
図20に示すように、軸回転速度が約2000rpmの低回転条件では、鋼球4の出口側(
図14における鋼球4より左側)の付近を除いて全般的にオイルが充満していた。鋼球4の出口側ではオイルの少ない領域が認められているが、これは鋼球4の公転によって、オイルが排除されていることや、キャビテーションの発生によるものと推察される。
【0012】
図21に示すように、軸回転速度が約20000rpmの高回転条件では、鋼球4及び保持器5の公転軌道部にはオイルが充満しておらず、オイルは公転軌道部の軸方向外側と境界付近に分布していた。これは高速では鋼球4の公転や保持器5の回転によってオイルが排除される速さがオイルの流入速度に対して過度に増大していることや、鋼球4の公転速度の増大に伴い、鋼球4の出口側(
図15における鋼球4より左側)のキャビテーション領域が拡大していることの両者に起因するものと考えられる。なお、鋼球4の入口側(
図15における鋼球4より右側)では、三角状にオイルの多い部分が存在していた。これは保持器5のU字状のポケット6の開口部において、内輪3側からオイルが供給されているものと考えられる。ただし、いずれにしても、低速度条件と比較して、高速度条件では、鋼球4の入口側や、外輪2との転がり面となる鋼球4の頂点部分のオイルが少なくなっており、油量不足が生じているものと判断される。摩擦トルク低減の観点では、転動面の油量が少ないほど良好な傾向であるが、摩耗や焼き付き防止の観点では、過度な油量不足を抑制することが必要となる。
【0013】
このように、玉軸受1の内部の油量分布観察の結果、高速回転時には、高速回転する鋼球4や保持器5によってオイルがかき分けられると共に、それらの公転軌道部にオイルが流入する量が極めて少ないことが判明した。この場合、短時間の使用では、特許文献1に開示されている方策による保油性の向上で焼き付きや摩耗を抑制できるとしても、長時間にわたる使用条件では、いずれオイルが枯渇するため、焼き付きや摩耗を抑制できなくなるものと考えられる。したがって、高速回転の玉軸受で長時間の使用にわたって焼き付きや摩耗を抑制するには、鋼球4の入口側へのオイル流入を促進する必要があり、特許文献1に開示されているディンプルの付与だけでは対応が困難である。
【0014】
そこで、本発明は、高速で回転しても、転動面における油量不足を抑制し、焼き付きや摩耗の発生を抑制できる玉軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る転がり軸受は、内周面に外側軌道が形成された外輪と、外周面に内側軌道が形成された内輪と、前記外側軌道と前記内側軌道との間に配置された複数の転動体と、前記転動体を転動可能に保持する保持器と、を備えた転がり軸受であって、前記転動体が摺接する前記保持器の摺接面には、前記転動体の摺動方向に交差する方向に延びる溝が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明は、保持器の摺接面に並んで形成された複数本の溝により、堰き止め効果で油圧を発生させて転動体の表面との間に厚い油膜を形成することにより、転動体に付着する油量が多くなり、転動面への供給油量が増加するため、高速で回転しても、転動面における油量不足を抑制し、焼き付きや摩耗の発生を抑制できる転がり軸受を提供することができる。
【0017】
本発明に係る玉軸受の一態様において、前記溝は、複数本が互いに平行に並んで形成されていてもよい。
【0018】
この態様によれば、摺接面に複数本の前記溝が平行に並んで形成されることによって、保持器の摺接面と転動体の表面との間に更に効果的に厚い油膜を形成することができる。
【0019】
本発明に係る玉軸受の一態様において、前記溝の幅は、前記保持器の径方向の厚さの0.25倍以下であってもよい。
【0020】
この態様によれば、溝の幅を適切な値とすることによって、保持器の摺接面と転動体の表面との間に更に効果的に厚い油膜を形成することができる。
【0021】
本発明に係る玉軸受の一態様において、前記摺接面の算術平均粗さは、0.05μm以上10μm以下であってもよい。
【0022】
この態様によれば、摺接面の表面粗さを適切な値とすることによって、保持器の摺接面と転動体の表面との間に更に効果的に厚い油膜を形成することができる。
【0023】
本発明に係る玉軸受の一態様において、前記溝は、前記転動体の摺動方向に対して30度以上150度以下の角度で斜めに交わる方向に沿って形成されていてもよい。
【0024】
この態様によれば、溝が延びる方向を適切な方向とすることによって、保持器の摺接面と転動体の表面との間に更に効果的に厚い油膜を形成することができる。
【0025】
本発明に係る玉軸受の一態様において、前記溝は、前記転動体の摺動方向に直交する方向に沿って形成されていてもよい。
【0026】
この態様によれば、溝を転動体の摺動方向に直行する方向に沿って形成することによって、保持器の摺接面と転動体の表面との間に更に効果的に厚い油膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、高速で回転しても、転動面における油量不足を抑制し、焼き付きや摩耗の発生を抑制できる転がり軸受を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1~第4の実施形態の転がり軸受の側面の一部を拡大して示した図である。
【
図3】保持器の
図1に描かれた領域を径方向外側から見た形状を示す図である。
【
図4】
図3から転動体を削除し保持器のみを示した図である。
【
図5】第1の実施形態の転がり軸受の保持器の
図4におけるE-E線断面図である。
【
図7】第2の実施形態の転がり軸受の保持器の
図4におけるE-E線断面図である。
【
図9】第3の実施形態の転がり軸受の保持器の
図4におけるE-E線断面図である。
【
図11】第4の実施形態の転がり軸受の保持器の
図4におけるE-E線断面図である。
【
図13】内部の潤滑状態を観察する評価試験に用いた玉軸受の側面図である。
【
図15】評価試験に用いた玉軸受の側面の一部を拡大して示した図である。
【
図16】保持器の
図15におけるB-B線断面を示す図である。
【
図18】玉軸受の内部の潤滑状態を観察する評価試験に用いた試験機の概略を示す図である。
【
図19】玉軸受の内部の潤滑状態を観察する評価試験における観察領域を示す図である。
【
図20】軸回転速度を約2000rpmとした場合の転動面周辺の油量分布の観察結果を模式的に示す図である。
【
図21】軸回転速度を約20000rpmとした場合の転動面周辺の油量分布の観察結果を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しながら、第1の実施形態の転がり軸受20について説明する。
図1及び
図2に示すように、転がり軸受20は、外輪21、内輪22、転動体23及び保持器25を備える玉軸受である。外輪21及び内輪22は、円環状の部材である。外輪21の内周面には、球状の転動体23の表面に沿うような形状の外側軌道21aが形成される。内輪22の外周面には、転動体23の表面に沿うような形状の内側軌道22aが形成される。外輪21の外側軌道21a及び内輪22の内側軌道22aは、円環状の転がり軸受20の周方向に沿って所定の間隔で設けられる。転動体23は、外輪21の外側軌道21aと内輪22の内側軌道22aとで形成される空間内に転動可能な状態で保持される。また、保持器25は、外輪21と内輪22との間に配置され、複数の転動体23を周方向に所定の間隔で転動可能に保持する。転がり軸受20は、外輪21と内輪22との間で転動体23が転動することによって、外輪21及び内輪22の中心軸を回転軸として外輪21と内輪22とが相対的に回転可能な構成とされている。
【0030】
図3に、保持器25の
図1に描かれた領域を径方向外側から見た形状を示す。なお、
図3には、保持器25が保持する転動体23も描かれている。
図3に示すように、保持器25には、転動体23を転動可能に保持するポケット24が形成されている。ポケット24の内側が、転動体23が保持器25に摺接する摺接面26となっている。
【0031】
例えば、外輪21を固定した状態で、
図1の矢印A1が示すように内輪22を反時計回りの方向に回転させると、内輪22に摺接する転動体23は矢印A2が示すように時計回りの方向に自転する。この自転は、
図3に1点鎖線で示す直線Lを回転軸とした回転であり、矢印A3に示す方向に回転する。また、外輪21を固定した状態で、
図1の矢印Aとは逆方向(時計回り)に回転させると、転動体23は
図3の直線Lを回転軸として矢印Cとは逆の方向に自転する。その他、内輪22を固定して外輪21を回転させた場合や、外輪21と内輪22を両方とも回転させた場合であっても、転動体23は
図3に示す直線Lを回転軸として自転する。以下の説明に用いる
図5、
図7、
図9及び
図11は、いずれも
図3に示す直線Lを回転軸として矢印A3の方向に転動体23が自転するものとして、転動体23の摺動方向を記載している。
【0032】
図4は、
図3から転動体23を削除し保持器25のみを示した図である。
図5は、
図4におけるE-E線断面図である。
図6は、
図5におけるF-F線断面図である。
図5及び
図6に示すように、ポケット24の摺接面26には、ポケット24に収容される転動体23の自転による摺動方向(図中、矢印A4の方向)に対して交差する方向に延びる複数本の溝27aが並んで形成されている。特に、複数本の溝27aは、摺動方向に対して直交する方向に互いに平行に形成することが好適である。各溝27aの断面形状は、特に限定されるものではなく、三角形、四角形、円形とすることができる。例えば、
図6に示すように、溝27aの断面は三角形とすることができる。1つの溝27aの幅W1は、保持器25の径方向の厚さT1の0.25倍以下とすることが好適である。また、摺接面26の表面粗さ(算術平均粗さ)Ra1は0.05μm以上10μm以下とすることが好適である。
【0033】
このように転動体23を収容するポケット24の摺接面26に複数本の溝27aを形成することによって、ポケット24と転動体23との間に潤滑用のオイルを効果的に留めることができる。特に、転動体23の摺動方向に対して交差する方向に複数本の溝27aを形成することによって、摺動方向に対して溝27aの凸形状と凹形状が交互に連続することとなり、溝27aによるオイルの堰き止め効果によってポケット24と転動体23との間に厚い油膜を形成することができる。したがって、転動体23の転動面に留まる油量が増加し、転がり軸受20が高速で回転しても焼き付きや摩耗の発生を抑制することができる。
【0034】
<第2の実施形態>
次に、図面を参照しながら、第2の実施形態の転がり軸受30について説明する。転がり軸受30は、保持器25の摺接面26に形成された溝27bの本数と断面の形状が異なる点を除いて、第1の実施形態の転がり軸受20と同一の構成を有している。そのため、第1の実施形態の転がり軸受20と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
図7は、第1の実施の形態の転がり軸受20で
図5に示した断面図に対応する断面図である。
図8は、第1の実施の形態の転がり軸受20で
図6に示した断面図に対応する断面図である。
【0036】
図7に示すように、転がり軸受30も、第1の実施形態の転がり軸受20と同様に、保持器25の摺接面26には、転動体23の自転による摺動の摺動方向(矢印A5の方向)に対して交差する方向に延びる複数本の溝27bが並んで形成されている。特に、複数本の溝27bは、摺動方向に対して直交する方向に互いに平行に形成することが好適である。
【0037】
図8に示すように、溝27bの断面は四角形とされている。溝27bの幅W1は、保持器25の径方向の厚さT2の0.25倍以下とすることが好適である。また、保持器25の摺接面26の表面粗さ(算術平均粗さ)Ra2は0.05μm以上10μm以下とすることが好適である。
【0038】
第2の実施形態の転がり軸受30においても、第1の実施の形態における転がり軸受20と同様に、複数本の溝27bを形成することによってポケット24と転動体23との間に潤滑用のオイルを効果的に留めることができる。特に、転動体23の摺動方向に対して交差する方向に複数本の溝27bを形成することによって、摺動方向に対して溝27bの凸形状と凹形状が交互に連続することとなり、溝27bによるオイルの堰き止め効果によってポケット24と転動体23との間に厚い油膜を形成することができる。したがって、転動体23の転動面に留まる油量が増加し、転がり軸受30が高速で回転しても焼き付きや摩耗の発生を抑制することができる。
【0039】
<第3の実施形態>
次に、図面を参照しながら、第3の実施形態の転がり軸受40について説明する。転がり軸受40は、保持器25の摺接面26に形成された溝27cが延びる方向が異なる点を除いて、第1の実施形態の転がり軸受20と同一の構成を有している。そのため、第1の実施形態の転がり軸受20と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図9は、第1の実施の形態の転がり軸受20で
図5に示した断面図に対応する断面図である。
図10は、第1の実施の形態の転がり軸受20で
図6に示した断面図に対応する断面図である。
【0041】
図9に示すように、保持器25の摺接面26に、転動体23の自転による摺動の摺動方向(矢印A6の方向)に角度θで斜めに交わる方向に延びる複数本の溝27cが並んで形成されている。角度θは、30度以上150度以下とすることが好適である。角度θを90度としたときに、本実施の形態における転がり軸受40は、第1の実施形態の転がり軸受20と同一となる。転がり軸受40では、溝27cの断面は三角形とされている。また、第1の実施の形態と同様に、1つの溝27cの幅W3は、保持器25の径方向の厚さT3の0.25倍以下とすることが好適である。また、摺接面26の表面粗さ(算術平均粗さ)Ra3は0.05μm以上10μm以下とすることが好適である。
【0042】
第3の実施形態の転がり軸受40においても、第1の実施の形態における転がり軸受20と同様に、複数本の溝27cを形成することによってポケット24と転動体23との間に潤滑用のオイルを効果的に留めることができる。特に、転動体23の摺動方向に対して斜めに交差する方向に複数本の溝27cを形成することによって、摺動方向に対して溝27cの凸形状と凹形状が交互に連続することとなり、溝27cによるオイルの堰き止め効果によってポケット24と転動体23との間に厚い油膜を形成することができる。したがって、転動体23の転動面に留まる油量が増加し、転がり軸受40が高速で回転しても焼き付きや摩耗の発生を抑制することができる。
【0043】
<第4の実施形態>
次に、図面を参照しながら、第4の実施形態の転がり軸受50について説明する。転がり軸受50は、保持器25の摺接面26に形成された溝27dが延びる方向が異なる点を除いて、第2の実施形態の転がり軸受30と同一の構成を有している。そのため、第2の実施形態の転がり軸受30と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
図11は、第2の実施の形態の転がり軸受30で
図7に示した断面図に対応する断面図である。
図12は、第2の実施の形態の転がり軸受30で
図8に示した断面図に対応する断面図である。
【0045】
図11に示すように、第4の実施形態の転がり軸受50は、保持器25の摺接面26に、転動体23の自転による摺動の摺動方向(矢印A7の方向)に角度φで斜めに交わる方向に延びる複数本の溝27dが並んで形成されている。角度φは、30度以上150度以下とすることが好適である。角度θを90度としたときに、本実施の形態の転がり軸受50は、第2の実施形態の転がり軸受30と同一となる。溝27dの断面は四角形とされている。溝27dの幅W4は、保持器25の径方向の厚さT4の0.25倍以下とすることが好適である。また、保持器25の摺接面26の表面粗さ(算術平均粗さ)Ra4は0.05μm以上10μm以下とすることが好適である。
【0046】
第4の実施形態の転がり軸受50においても、第2の実施の形態の転がり軸受30と同様に、複数本の溝27dを形成することによってポケット24と転動体23との間に潤滑用のオイルを効果的に留めることができる。特に、転動体23の摺動方向に対して斜めに交差する方向に複数本の溝27dを形成することによって、摺動方向に対して溝27dの凸形状と凹形状が交互に連続することとなり、溝27dによるオイルの堰き止め効果によってポケット24と転動体23との間に厚い油膜を形成することができる。したがって、転動体23の転動面に留まる油量が増加し、転がり軸受50が高速で回転しても焼き付きや摩耗の発生を抑制することができる。
【0047】
<実施形態の補足>
本発明は、上述した形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、本発明の構成は、玉軸受ではなく、ころ軸受に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 玉軸受、2 外輪、3 内輪、3a 軌道面、4 鋼球、5 保持器、6 ポケット、7 側面、8 回転軸、9 軸支持軸受、10 モータ、11 ハウジング、12 カメラ、13 観察用穴、14 給油ノズル、15 オイルポンプ、20,30,40,50 転がり軸受、21 外輪、21a 外側軌道、22 内輪、22a 内側軌道、23 転動体、24 ポケット、25 保持器、26 摺接面、27a,27b,27c,27d 溝。