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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164483
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】帯締め結束方法および帯締め結束具
(51)【国際特許分類】
   A41F 19/00 20060101AFI20221020BHJP
   A44B 11/04 20060101ALI20221020BHJP
   A44B 11/25 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A41F19/00 114
A44B11/04
A44B11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069999
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】521166331
【氏名又は名称】長 みらい
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】長 みらい
【テーマコード(参考)】
3B090
【Fターム(参考)】
3B090AD10
3B090BB04
3B090BB07
(57)【要約】
【課題】経験や技術が未熟な者であっても一人で帯締めの結束を可能であり、帯締めの緊締状態を安定して長時間保つことが可能であり、仮に緊締状態が解けて弛緩した場合であっても即座に緊締し直すことができる帯締め結束方法および同方法に用いる帯締め結束具を提供する。
【解決手段】帯締め結束方法は、隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成してなる中央挿通間隙部に左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通して左右二本の帯締めを前方に引き出すと共に、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体で形成した左右間隙部に前側から後側に向かって左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通して両方の帯締め端部を同時に左右横方向に引張って帯締め端部を互いに緊締することとした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成してなる中央挿通間隙部に左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通して左右二本の帯締めを前方に引き出すと共に、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体で形成した左右間隙部に前側から後側に向かって左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通して両方の帯締め端部を同時に左右横方向に引張って帯締め端部を互いに緊締することを特徴とする帯締め結束方法。
【請求項2】
請求項1に記載の帯締め結束方法に用いられる帯締め結束具であり、隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成することにより左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通可能に構成した中央挿通間隙部と、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体により形成し左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通可能に構成した左右間隙部とによって構成することにより正面視波型線体に形成したことを特徴とする帯締め結束具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯締めの結束方法および帯締め結束具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯締めは、着物の帯を固定したり帯周りを華やかに装飾するために使用されている。
【0003】
ところが、今般の着物離れの影響もあり、帯締めを一人で緊締する作業は着物を着用する機会が少ない人にとって容易なものではなかった。特に、着付けの経験や技術が未熟な者にとっては、慣れない着付け作業と着物を着用した時の動きにくさとが相俟って、一人で帯締めを早く且つ確実に緊締することが困難であった。
【0004】
そのため、かかる欠点を克服すべく着物の着用者が一人で簡単に取り付けられる帯締めの結束方法や、その方法に用いられる結束具が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、帯締めの両端で互いに雌雄嵌合部を備え、同雌雄嵌合部のいずれか一方で帯締め長さを調節する長さ調節部を備えた帯締め結束具が開示されている。
【0006】
かかる帯締め結束具の結束方法によれば、着用者が帯締めを着用する際には、予め着用者の胴囲長さに適合するよう長さ調節部を介して調節された帯締めの長手方向の略中央部に装飾部を配置しておき、同装飾部を着用者の腹部側中央に位置付け、背中側で帯締め両端部の雌雄嵌合部を介して帯締めを連結することにより、誰でもワンタッチで短時間の帯締めの緊締作業を行うことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-120970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の帯締めの結束方法や結束具では、時間の経過に伴い、帯締めが調整部から緩み緊締状態が解けてしまう虞があった。
【0009】
すなわち、従来の帯締め結束具の調節部は、帯板の長手に隣接して帯締めを挿通するための2つの挿通部を形成することにより、2つの同挿通部の間に線状の帯折返部を設けた、いわゆる調節バックルで構成している。
【0010】
かかる構成の調節部は、帯締めの一端を一方の挿通部に挿通し、次いで帯折返部で折り返し、さらにその折り返された一端を他方の挿通部に挿通することにより、帯締めを重合密着させて帯締めの端部を掛止し、帯締め長さ調節するように構成している。
【0011】
このように緊締され環状となった帯締めには、着用者の複雑な動作に伴い、常時引張応力が働く。すなわち、上記従来の帯締め結束具では、調節部を帯締めの一端を折り重ねて掛止するように構成したものであるため、着用時の引張応力は同調節部による帯締めの掛止部分に偏寄集中することとなる。
【0012】
このため、帯締めの掛止部分が不用意に滑動してしまい、結果、予め設定された胴囲長さより帯締め長さが長くなってしまい、帯締めが緊締状態から不用意な弛緩状態となってしまう虞があった。
【0013】
また、一旦弛緩状態となった帯締めを着用者の胴囲長さに再度適合するよう調整するには、雌雄嵌合部の連結を分離させて帯締めを取り外し、調整部を介して帯締めの長さを調整する必要があった。
【0014】
かかる帯締めの調整作業は、特に着付けの経験や技術が未熟な着用者にとって、慣れない帯締めの調整作業と着物着用時の動きにくさとが相俟って一人では困難なものであった。
【0015】
このように、従来の帯締めの結束方法や結束具では帯締めの緊締状態を安定して長時間保つものではなかった。また、弛緩してしまった帯締めを容易に締め直すことができないという問題点をも有していた。
【0016】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、着物の着用者が一人で簡便に帯締めを緊締することができ、帯締めの緊締状態が不用意に解けて弛緩した場合であっても即座に緊締し直すことができる帯締め結束方法および帯締め結束具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成してなる中央挿通間隙部に左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通して左右二本の帯締めを前方に引き出すと共に、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体で形成した左右間隙部に前側から後側に向かって左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通して両方の帯締め端部を同時に左右横方向に引張って帯締め端部を互いに緊締することを特徴とする帯締め結束方法に関する。
【0018】
また、同帯締め結束方法に用いられる帯締め結束具であり、隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成することにより左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通可能に構成した中央挿通間隙部と、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体により形成し左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通可能に構成した左右間隙部とによって構成することにより正面視波型線体に形成したことを特徴とする帯締め結束具にも関する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成してなる中央挿通間隙部に左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通して左右二本の帯締めを前方に引き出すと共に、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体で形成した左右間隙部に前側から後側に向かって左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通して両方の帯締め端部を同時に左右横方向に引張って帯締め端部を互いに緊締することとしため、帯締めの長さ調節と緊締とを連続して行えるため、帯締めの緊締作業を確実かつ容易に実施できる効果がある。
【0020】
すなわち、本発明に係る帯締め結束方法では、着用者が帯締めの緊締を行う際には隣接する二本の線体間の中央挿通間隙部に左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通するため、帯締めの結束部分を着付けのしやすい胴囲位置に任意で位置付けて帯周りの整った着付けができる。また、仮に帯締めが弛緩しても、帯締めの長さを調整して緊締し直すことができる。
【0021】
しかも、中央挿通間隙部から前方に引き出した左右二本の帯締めの両端をそれぞれ二本の線体で左右側方向へ折り返し、さらに左右側方に位置する隣接線体で形成した左右間隙部に前側から後側に向かって挿通して左右横方向へ引張ることにより、帯締めの長さを胴囲長さに調節しつつ結び目を確実にかつ簡単にできる帯締め緊締作業を行うことができる効果がある。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の帯締め結束方法に用いられる帯締め結束具であり、隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成することにより左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通可能に構成した中央挿通間隙部と、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体により形成し左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通可能に構成した左右間隙部とによって構成することにより正面視波型線体に形成したことを特徴とする帯締め結束具としたため、単純構造で部材コストを低減化することができ、誰でも簡単に前述の帯締め結束方法を実現できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例1に係る帯締め結束具の使用状態を示す正面図及びその構成を示す斜視図である。
図2】実施例1に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図である。
図3】実施例1に係る帯締め結束具の構成を示す斜視図である。
図4】実施例1に係る帯締め結束方法の手順を示す説明図である。
図5】実施例1に係る帯締め結束方法の手順を占めすブロック図である。
図6】実施例1に係る帯締め結束具の使用状態におけるA―A’線端面図である。
図7】実施例2に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図である。
図8】実施例3に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図である。
図9】実施例4に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図である。
図10】実施例5に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図である。
図11】実施例6に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図である。
図12】実施例7に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図である。
図13】実施例8に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の要旨は、隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成してなる中央挿通間隙部に左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通して左右二本の帯締めを前方に引き出すと共に、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体で形成した左右間隙部に前側から後側に向かって左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通して両方の帯締め端部を同時に左右横方向に引張って帯締め端部を互いに緊締することを特徴とする帯締め結束方法を提供することにある。
【0025】
また、同帯締め結束方法に用いられる帯締め結束具であり、隣接する二本の線体を一定の間隙を保持して形成することにより左右二本の帯締めを後側から前側に向かって挿通可能に構成した中央挿通間隙部と、中央挿通間隙部の左右側方に位置する隣接線体により形成し左右の帯締めの一端をそれぞれ折返し挿通可能に構成した左右間隙部とによって構成することにより正面視波型線体に形成したことを特徴とする帯締め結束具を提供することにある。
【0026】
以下、この発明の実施例を図面に基づき詳説する。図1は実施例1に係る帯締め結束方法で帯締めを緊締させた状態を示す正面図及び帯締め結束具の構成を示す斜視図、図2は実施例1に係る帯締め結束具の構成を示す背面側斜視図、図3は実施例1に係る帯締め結束具の構成を示す斜視図、図4は実施例1に係る帯締め結束方法の手順を示す説明図、図5は実施例1に係る帯締め結束方法の手順を示すブロック図、図6は実施例1に係る帯締め結束具の使用例におけるA―A’線端面図、図7乃至図13はそれぞれ帯締め結束具の他の実施形態(実施例2乃至実施例8)の構成を示す背面側斜視図である。
【0027】
[実施例1]
【0028】
本実施例に係る帯締め結束具A1は、図1(b)および図2に示すように、隣接する二本の線体11b、11cを一定の間隙を保持して形成することにより左右二本の帯締めOを後側から前側に向かって挿通可能に構成した中央挿通間隙部20Cと、中央挿通間隙部20Cの左右側方に位置する隣接線体11a、11dにより形成し左右の帯締めOの一端OL、ORをそれぞれ折返し挿通可能に構成した左右間隙部20L、20Rと、によって構成することにより正面視波型線体10に形成している。
【0029】
波型線体10は、図1(b)および図2に示すように、内部中空パイプを正面視略W状に折り曲げることにより、左右方向に線体11a、11b、11c、11dをそれぞれ所定間隔を隔てて平行に4つ配置し、それぞれの線体同士の間に帯締めOの挿通部分として機能する間隙部20L、20C、20Rを3つ形成している。
【0030】
なお、波型線体10の正面視形状は、帯締めOの挿通部分として機能する間隙部を少なくとも3つ有したものであれば、連続したサイン波状であってもよいし、櫛歯形状であってもよい。
【0031】
すなわち、波型線体10は、正面視略U字状の波型部12L、12C、12Rを3つ、左右方向へ交互に上下逆にして隣接配置すると共にそれぞれの端部同士を接続することにより、線状に連続一体化した左右対称の略W状形状としている。
【0032】
中央波型部12Cは、左中央側線体11bと、同線体11bに隣り合い平行に配置される直線状の右中央側線体11cと、同線体11b、11cの上端部同士を接続する湾曲円弧状の中央山部14と、により正面視逆U字状に形成している。
【0033】
すなわち、中央挿通間隙部20Cは、中央波型部12Cの下方開放U字状の内側空間部分として胴回りに巻き掛けられた帯締めOの両端部OL、ORを後側(着用者の腹側)から前側(外側)に向かって挿通可能としている。
【0034】
左側波型部12Lは、直線状の左外側線体11aと、左外側線体11aに隣り合い平行に配置される直線状の左中央側線体11bと、同線体11a、11bの下端部同士を接続する湾曲円弧状の左側谷部13Lと、により正面視U字状に形成している。
【0035】
すなわち、左間隙部20Lは、左側波型部12Lの上方開放U字状の内側空間部分として中央挿通間隙部20Cから前方へ引き出されて左中央側線体11bで折り返された帯締めOの一端部OLを前側から後側に向かって挿通可能としている。
【0036】
右側波型部12Rは、右中央側線体11cと、同線体11cに隣り合い平行に配置される直線状の外右側線体11dと、同線体11c、11dの下端同士を接続する湾曲円弧状の右側谷部13Rと、により正面視U字状に形成している。
【0037】
すなわち、右間隙部20Rは、右側波型部12Rの上方開放U字状の内側空間部分として中央挿通間隙部20Cから前方へ引き出されて中央右側線体11cで折り返された帯締めOの他端部ORを前側から外側に向かって挿通可能としている。
【0038】
このように、波型線体10は、各線体11a、11b、11c、11dをそれぞれ左右方向に所定間隔を隔てて平行配置すると共に端部同士を左右方向に順番に左側谷部13L、中央山部14、右側谷部13Rを介して接続することにより正面視U字状の各波型部12L、12C、12Rを構成し、各波型部12L、12C、12RのU字内側部分を3つの各間隙部20L、20C、20Rに形成している。
【0039】
なお、波型線体10の素材は、帯締めOの両端部OL、ORを掛止した場合に波型形状の保形性を担保できる剛性素材であればよく、例えば、金属製や木製等であってもよい。また、波型線体10の各波型部の数は、本実施例では3つであるが、4つ、または5つ以上あってもよい。
【0040】
要するに、波型線体10は、胴囲に巻かれた略環状形態の帯締めOの両端部OL、OR同士を後側から前側へ向かって挿通するための中央挿通間隙部20Cと、同中央挿通間隙部20Cから前方へ引き出されて互いの端部の巻き方向とは逆方向(端部同士の離反方向)へ折り返されたそれぞれの端部OL、ORを前側から後側へ向かって挿通するための左右間隙部20L、20Rとの、少なくとも3つの間隙部を備えていればよい。
【0041】
また、本帯締め結束具A1は、波型線体10の両端部に連結し、帯締めOの両端部OL、OR同士の各間隙部での締結部分を覆い隠して帯締めOの装飾的機能を果たすと共に、同帯締めOの両端部OL、OR同士の締結部分に外側から圧接して緊締状態を可及的保持する締結掛止機能を果たす帯締め装飾体30を備えている。
【0042】
帯締め装飾体30は、図1(b)及び図2に示すように、波型線体10の両端部に設けられたパイプ孔15L、15Rにそれぞれ連結対応すると共に帯締めOの両端部OL、OR同士の締結部分に圧接される連結金具31と、連結金具31の帯体Oの圧接側と逆側に配設した装飾用プレート32とにより、波型線体10を介して緊締した帯締めOの両端部OL、OR同士の締結部分を覆い隠すように構成している。
【0043】
連結金具31は、側面視逆U字状且つ正面視上方開放コ字状に折り曲げ成形した折曲線体であって、側面視U字状の左右フック部33L、33Rと、左右フック部33L、33Rの基端同士の間で直線状に伸延する直線連結部34とで構成している。
【0044】
左右フック部33L、33Rはそれぞれ、U字状の一端部を波型線体10のパイプ孔15L、15R内へ挿嵌するための挿嵌部31a、31bとし、U字状の他端部を装飾用プレート32を取り付けるための取り付け部に構成している。
【0045】
直線連結部34は、後述のように波型線体10に帯締め装飾体30を装着した状態で、帯締めOの両端部OL、ORの締結部分を外側から押圧してその緊締状態を可及的保持する押圧保持機能を有する。
【0046】
装飾用プレート32は、金属製の方形板であって、左右フック部33L、33Rの基端同士の間で板面32aを外側に向けて連結金具31に一体に取り付けられており、その裏面に帯締め装飾体30の波型線体10への装着状態で左右中央側線体11b、11cに折り返し巻き掛けられた帯締めOの外側部分に密着当接する当接面部を有する。
【0047】
換言すれば、帯締め装飾体30において左右フック部33L、33Rは装飾用プレート32の裏面から一定方向に突出して形成しており、その突出長さは帯締め装飾体30の波型線体10への装着状態で左右中央側線体11b、11cに折り返し巻き掛けられた帯締めOの厚み以下となるようにしている。
【0048】
かかる装飾用プレート32の表面には、図3に示すように、取り付け手段を介してバリエーションの各装飾具35を取り付けることができる。なお、装飾用プレート32への各装飾具35の取り付け手段は、特に限定されるものではなく、例えば磁性体を介して磁着するものであってもよい。
【0049】
このような構成の帯締め結束具A1を使用して、着用者Hは、隣接する二本の線体11b、11cを一定の間隙を保持して形成してなる中央挿通間隙部20Cに左右二本の帯締めOL、ORを後側から前側に向かって挿通して左右二本の帯締めOL、ORを前方に引き出すと共に、中央挿通間隙部20Cの左右側方に位置する隣接線体(11a及び11b、並びに11c及び11d)で形成した左右間隙部20L、20Rに前側から後側に向かって左右の帯締めの端部OL、ORをそれぞれ折返し挿通して両方の帯締めの端部OL、ORを同時に左右横方向に引張って帯締めOの両端部OL、ORを互いに緊締する帯締め結束方法Sを実行する。具体的な帯締め結束方法Sの手順は次の通りである。
【0050】
(ステップ1)
まず、着用者Hは、図4及び図5に示すように、胴囲に巻いて巻環状形態とした帯締めOの両端部OL、ORの集束部分を腹側に配置する帯締め結束位置の位置決め操作S1を実行する。この操作は、着用者Hが帯締めOの緊締操作を行い易くすると共に最終的に帯締め装飾体30の着付け位置を決定するために行う。
【0051】
(ステップ2)
次いで、隣接する二本の線体11b、11cを一定の間隙を保持して形成してなる中央挿通間隙部20Cに左右二本の帯締めOL、ORを後側から前側に向かって挿通して左右二本の帯締めOL、ORを前方に引き出す中央挿通操作S2を実行する。
【0052】
中央挿通操作S2は、図4(a)に示すように、帯締めOの両端部OL、ORの集束中途部分の上方位置に中央挿通間隙部20Cを配置し、同間隙部20Cの下方開口から中央山部14に突き当たるまで帯締めOの両端部OL、ORを上方向へ向かって挿入して、左右二本の帯締めOL、ORを後側から前側に向かって挿通して左右二本の帯締めOL、ORを前方に引き出した帯締めOを着付け位置で仮止めするために行う。
【0053】
すなわち、中央挿通操作S2によれば、帯締めOの両端部OL、ORは中央波型部12Cにより集束中途部分を左右側から挟持された仮止め状態となる。したがって、中央挿通間隙部20Cの左右幅を帯締めOの厚みの少なくとも略2倍以下とするように中央波型部12Cを形成しておけば、同中央波型部12Cによる帯締め端部の挟持機能を向上することができ、帯締め結束方法Sにおける各操作の実行中に帯締めOが不用意に解けることを回避できる。
【0054】
(ステップ3)
次いで、中央挿通間隙部20Cの左右側方に位置する隣接線体(11a及び11b、並びに11c及び11d)で形成した左右間隙部20L、20Rに前側から後側に向かって左右の帯締めの端部OL、ORをそれぞれ折返し挿通する左右帯締め挿通操作S3を実行する。
【0055】
左右帯締め挿入操作S3は、図4(b)に示すように、中央挿通間隙部20Cを中心に前方へ引張り出された帯締めOの両端部OL、ORを、それぞれが対応する左右中央側線体11b、11cで左右横方向へ折り返した後、外左右側線体11a、11dの裏側に配置すると共に左右側波型部12L、12Rの上方開口から谷部13L、13Rに突き当たるまで降下して左右間隙部20L、20Rに前側から後側へ向かって挿通し、帯締めOを掛止するために行う。
【0056】
すなわち、左右帯締め挿通操作S3によれば帯締めの両端部OL、ORはそれぞれ外左右側線体11a、11dと着用者Hの腹部との間に位置して密着した掛止状態となる。
【0057】
(ステップ4)
次いで、両方の帯締めの端部OL、ORを同時に左右横方向に引張って帯締めOの両端部OL、ORを互いに緊締する帯締め緊締操作S4を実行する。
【0058】
すなわち、帯締め緊締操作S4は、帯締め長さ調整工程S4-1と、余剰となった帯締めOの両端部OL、ORを差し込み収納して緊締する差し込み緊締工程S4-2とからなる。
【0059】
帯締め長さ調整工程S4-1では、図4(b)に示すように、帯締め締付操作S3で左右間隙部20L、20Rに挿通されて外左右側線体11aにより掛止状態にある帯締めOの両端部OL、ORを、それぞれ緊張方向、すなわち巻き方向とは逆方向へ引っ張ることにより巻環状形態の帯締めOを着用者の胴囲長さに適した帯締め長さに縮径調整する。なお、本工程S4-1は、左右帯締め挿通操作S3の前、すなわち中央挿通操作S2を実行した後で行ってもよい。
【0060】
差し込み緊締工程S4-2では、長さ調整され引っ張り出された帯締めOの余剰端部を、巻環状形態の帯締めOの内側に差し込み収納することにより着用者Hの腹部と巻環状形態の帯締めOとの間で挟持して緊締状態する。この工程により、帯締めOの余剰となった両端部OL、ORを腹部表面側に露出させることなく着物の意匠性を確保でき、さらには着用者Hの動作に伴って各線体11a、11b、11c、11dに巻き掛合した帯締めOが外れることがない。
【0061】
(ステップ5)
以上のような各操作S1~S4を実行することにより帯締めOの緊締を行うことができるが、本帯締め結束方法Sではさらに帯締めOの緊締状態を堅実なものにすると共に同締結部分に装飾を施すべく、装飾体取付操作S5を実行する。
【0062】
装飾体取付操作S5は、図1(a)および図4(c)に示すように、帯締めOの両端部OL、ORを締結保持した波型線体10に、帯締め装飾体30を取り付けることで実行される。具体的には、波型線体10の両端部のパイプ孔15L、15Rに、連結金具31の左右フック部33L、33Rにおける挿嵌部31a、31bがそれぞれ挿嵌されることにより、波型線体10への帯締め装飾体30の取り付けがなされる。
【0063】
このような波型線体10への帯締め装飾体30の装着状態で、装飾用プレート32の裏面が、図4(c)に示すように左右中央側線体11b、11cに巻き掛けられた帯締めOの両端部OL、ORを圧接し、帯締めOの両端部OL、ORの緊締状態を保持する。
【0064】
すなわち、左右中央側線体11b、11cに巻き掛けられた帯締めOの両端部OL、ORは、図4(c)に示すように左右中央側線体11b、11cと装飾用プレート32とにより前後から挟持される。
【0065】
また、特に本実施例では、連結金具31の直線連結部34が装飾用プレート32と左右中央側線体11b、11cとの間に介在して帯締め両端部OL、OR表面に食い込み、帯締めOの両端部OL、ORをより強く前後挟持する。
【0066】
さらに、帯締め装飾体30の装飾用プレート32が、波型線体10と帯締めOの両端部OL、ORとの緊締部分を被覆するように正面に配置されるため、他者から同緊締部分を視認できないようにすることができ、最終的に、装飾用プレート32に任意の装飾具35を取り付けことにより意匠的な装飾美観を帯締め結束具A1に生起させる。
【0067】
以上のように、本実施例に係る帯締め結束方法Sによれば、着用者Hは帯締めOの長さを調節しながら結び目を確実にかつ簡単な帯締め作業により行うことができる効果がある。また、着用者Hは任意の位置に帯締め結束具A1を確実に配置することができるため、帯締め周りが整った着付けを可能とする効果がある。
【0068】
[実施例2]
次に、実施例2に係る帯締め結束具A2について説明する。図7は本実施例に係る帯締め結束具A2の構成を示す背面側斜視図である。なお、以下において実施例1と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0069】
本実施例の帯締め結束具A2では、帯締め装飾体200を構成する連結金具210の直線連結部34を排している点で、帯締め結束具A1と相違している。すなわち、帯締め装飾体200は、図7に示すように、それぞれ独立した側面視逆U字状の左右フック部220L、220Rを装飾用プレート32の裏面に一定間隔を隔てて付設して構成している。
【0070】
これにより、肉厚幅広の帯締めOであっても、帯締めOの集束部を確実に帯締め結束具A2の左右中央側線体11b、11cと装飾用プレート32とで挟持固定することができる。
【0071】
[実施例3]
次に、実施例3に係る帯締め結束具A3について説明する。図8は本実施例に係る帯締め結束具A3の構成を示す背面側斜視図である。
【0072】
本実施例の帯締め結束具A3では、帯締め装飾体300を構成する連結金具310の直線連結部34の付設位置を中央よりも上部にした点で、帯締め結束具A1と相違している。すなわち、帯締め装飾体300は、図8に示すように、側面視で逆J字状の左右フック部320L、320Rを備えた連結金具310を付設して構成している。
【0073】
これにより、直線連結部34が帯締め両端部OL、ORの上方表面に食い込むため、帯締めOの両端部OL、ORを抜けにくくすることができる。
【0074】
[実施例4]
次に、実施例4に係る帯締め結束具A4について説明する。図9は本実施例に係る帯締め結束具A4の構成を示す背面側斜視図である。
【0075】
本実施例の帯締め結束具A4では、帯締め装飾体400を構成する連結金具410の直線連結部34を排すと共に、左右フック部420L、420Rを側面視逆L字状としている点で帯締め結束具A1と相違している。すなわち、帯締め結束具A4は、図9に示すように。それぞれ独立した側面視逆L字状の左右フック部420L、420Rを装飾用プレート32の裏面に一定の間隔を保持して付設して構成している。
【0076】
これにより、肉厚幅広の帯締めOであっても、帯締めOの集束部を確実に帯締め結束具A4の左右中央側線体11b、11cと装飾用プレート32とで挟持固定することができる。
【0077】
[実施例5]
次に、実施例5に係る帯締め結束具A5について説明する。図10は本実施例に係る帯締め結束具A5の構成を示す背面側斜視図である。
【0078】
本実施例の帯締め結束具A5では、図10に示すように、帯締め装飾体500を構成する連結金具510を上方縁部に位置するように装飾用プレート32に付設し、左右フック部520L、520Rを側面視逆L字状に構成している点で、帯締め結束具A1と相違している。
【0079】
これにより、肉厚幅広の帯締めOであっても、帯締めOの集束部を確実に帯締め結束具A5の左右中央側線体11b、11cと装飾用プレート32とで挟持固定することができる。
【0080】
[実施例6]
次に、実施例6に係る帯締め結束具A6について説明する。図11は本実施例に係る帯締め結束具A6の構成を示す背面側斜視図である。
【0081】
本実施例の帯締め結束具A6では、図11に示すように、帯締め装飾体600を構成する連結金具610を折り曲げ形成し、平面視凸字状かつ側面視逆L字状に構成した点で帯締め結束具A1と相違している。
【0082】
具体的には、連結金具610は、平面視で略凸字状の凸字連結金具630と、凸字連結金具630の左右の両端部を下方に折り曲げて形成した左右フック部620L、620Rとより構成し、凸字連結金具630が波型線体10の左右間隙部20L、20Rの上部に位置して、左右間隙部20L、20Rの上方開放部を閉塞可能に構成している。
【0083】
これにより、肉厚幅広な帯締めOであっても、帯締めOの両端部OL、ORを左右間隙部20L、20Rに前側から後側に向かって挿通して互いに緊締することができる。また、帯締めOの両端部OL、ORが左右間隙部20L、20Rから抜け出すことを防ぐこともできる。
【0084】
また、帯締め結束具A6は、左右間隙部20L、20Rの幅員を広く構成している点でも、帯締め結束具A1と相違している。
【0085】
これにより、帯締め結束方法Sにおける左右帯締め挿通操作S3を容易に行うことができるため、着用者Hは更に簡単に帯締めの結束を行うことができる。
【0086】
[実施例7]
次に、実施例7に係る帯締め結束具A7について説明する。図12は本実施例に係る帯締め結束具A7の構成を示す背面側斜視図である。
【0087】
本実施例の帯締め結束具A7では、図12に示すように、帯締め装飾体700を構成する連結金具710の形状を平面視凸字状かつ側面視逆L字状に構成した点、およびパイプ孔15L、15Rを備えた筒状金具730L、730Rを波型線体10の両端部の左右方向に付設して構成している点で、帯締め結束具A1と相違している。
【0088】
筒状金具730L、730Rを波型線体10の両端部の左右方向に付設したことにより、各線体11a、11b、11c、11dの間隙を可及的に狭く保持して各間隙部20L、20C、20Rを形成することができるため、帯締めOが肉薄幅狭であっても、帯締めOの両端部OL、ORを帯締め結束具A7で確実に緊締することができる。
【0089】
[実施例8]
次に、実施例8に係る帯締め結束具A8について説明する。図13は実施例8に係る帯締め結束具A8の構成を示す背面側斜視図である。
【0090】
本実施例に係る帯締め結束具A8は、帯締めOの両端部OL、ORのそれぞれが挿通するための中央挿通間隙部を二つ形成している点で、実施例1の帯締め結束具A1と相違している。
【0091】
すなわち、中央に位置する隣接する二本の線体11b、11dの間の中央で仕切線体110を配置することにより、同中央挿通間隙部20Cを左中央挿通間隙部230Lと右中央挿通間隙部230Rとに区画形成している。
【0092】
具体的には、帯締め結束具A8は、帯締めOの中央挿通間隙部20Cの左右側方に位置する隣接線体11a、11dのうち少なくも一方の線体のさらに最外側方に隣接線体11eを配置することにより波型線体100を正面視蛇形状に形成し、中央に配置された線体11b又は線体11cのいずれか一方を仕切線体110として機能させて、2つの左右中央挿通間隙部230L、230Rを形成している。
【0093】
したがって、帯締め結束具A8における波型線体100は、5つの線体11a、11b、11c、11d、11eを備え、同線体より構成される正面視略U字状の波形部12L、12C、12C’、12R’を4つ備えている点で、実施例1の帯締め結束具A1と相違しているともいえる。
【0094】
右中央波形部12C’は、帯締め結束具A1における右側波型部12Rと同じ構成要素よりなる。
【0095】
すなわち、右側波型部12C’の下方開放U字状の内側空間部分として胴回りに巻き掛けられた帯締めOの他端部ORを後側から前側に向かって挿通可能としている。
【0096】
右側波型部12R’は、線体11dと、線体11dに隣接するように配置された線体11eと、同線体11d、11eの上端部同士を接続する湾曲円弧上の右側山部250Rと、により正面視逆U字状に形成している。
【0097】
すなわち、帯締め結束具A8における右間隙部260Rは、右側波型部12R’の下方開放U字状の内側空間部分として右中央挿通間隙部230Rから前方へ引き出されて中央右側線体11dで折り返された帯締めOの他端部ORを前側から外側に向かって挿通可能としている。
【0098】
このような帯締め結束具A8を使用して、着用者Hは、帯締め結束方法S’を行う。帯締め結束方法S’は、中央挿通操作S2において、帯締めOL、ORを異なる左右中央挿通間隙部230L、230Rに後側から前側に向かって挿通する点と、左右帯締め挿通操作S3において、帯締めOの他端部ORが右間隙部260Rの下方開口から右側山部250Rに突き当たるまで持ち上げられる点とで、実施例1における帯締め結束方法Sと相違している。
【0099】
すなわち、着用者Hは、中央挿通操作S2において、左右中央挿通間隙部230L、230Rに左右二本の帯締めOL、ORを後側から前側に向かってそれぞれ別個に挿通して左右二本の帯締めOL、ORを前方に引き出す操作を実行する。
【0100】
また、左右帯締め挿通操作S3において、左右中央挿通間隙部230L、230Rを中心に前方へ引張り出された帯締めOの両端部OL、ORを、それぞれが対応する左右中央側線体11b、11dで左右横方向へ折り返す。然る後、帯締めOの他端部ORは、右側波型部12R’の下方開口から右側山部250Rに突き当たるまで持ち上げるようにして右間隙部260Rに前側から後側へ向かって挿通し、帯締めOを掛止する操作を実行する。
【0101】
したがって、帯締め結束具A8を用いた帯締め結束方法S’を実行して帯締めOの両端部OL、ORを緊締すれば、それぞれの帯締めOL、ORが帯締め結束具A8において上下左右対称に位置する左側谷部13Lと右側山部250Rとに食い込んだ状態となる。
【0102】
特に、帯締め結束具A8は、正面視蛇形状に構成した波型線体100より構成されているため、帯締めOの緊締状態において帯締めOL、ORによる引張応力に抗する収縮応力が生起することとなる。これにより、帯締め装飾体30を排しても緊締状態が解けにくい帯締めの結束をすることができる。
【符号の説明】
【0103】
A1 帯締め結束具
H 着用者
O 帯締め
OL 一端部
OR 他端部
S 帯締め結束方法
10 波型線体
11 線体
11a 左外側線体
11b 左中央側線体
11c 右中央側線体
11d 外右側線体
12 波型部
12L 左側波型部
12C 中央波型部
12R 右側波型部
13 谷部
13L 左側谷部
13R 右側谷部
14 中央山部
15 パイプ孔
15L 左側パイプ孔
15R 右側パイプ孔
20 間隙部
20L 左間隙部
20C 中央挿通間隙部
20R 右間隙部
30 帯締め装飾体
31 連結金具
31a、b 挿通部
32 装飾用プレート
32a 装飾具
33 フック部
33L 左フック部
33R 右フック部
34 直線連結部
35 装飾具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13