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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164492
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】無線路側機、車載通信機、及び車両
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20221020BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20221020BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20221020BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20221020BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070023
(22)【出願日】2021-04-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】小西 友明
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】交通通信システムにおいて適切な合流支援を行うことを可能とする。
【解決手段】無線路側機は、路車間通信を行う無線通信部と、本線車線を走行する本線車両及び合流車線を走行する合流車両が検知された場合、検知された車両ごとの位置・速度情報を含む合流支援メッセージを生成する制御部と、を備える。前記無線通信部は、前記本線車両及び前記合流車両に対して前記合流支援メッセージをブロードキャストする。前記制御部は、前記検知された車両ごとに当該車両が前記合流車両であるか否かを示す合流車両フラグをさらに含む前記合流支援メッセージを生成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路車間通信を行う無線通信部と、
本線車線を走行する本線車両及び合流車線を走行する合流車両が検知された場合、検知された車両ごとの位置・速度情報を含む合流支援メッセージを生成する制御部と、を備え、
前記無線通信部は、前記本線車両及び前記合流車両に対して前記合流支援メッセージをブロードキャストし、
前記制御部は、前記検知された車両ごとに当該車両が前記合流車両であるか否かを示す合流車両フラグをさらに含む前記合流支援メッセージを生成する
無線路側機。
【請求項2】
前記制御部は、前記本線車両を指定した運転制御指示を含まずに前記合流車両フラグを含む前記合流支援メッセージを生成する
請求項1に記載の無線路側機。
【請求項3】
前記制御部は、前記合流車両を指定した運転制御指示をさらに含む前記合流支援メッセージを生成し、
前記運転制御指示は、目標加速度、目標速度、及び目標位置のうち少なくとも1つを含む
請求項1又は2に記載の無線路側機。
【請求項4】
無線路側機との路車間通信を行う車載通信機であって、
前記無線路側機により検知された車両ごとの位置・速度情報と、前記検知された車両ごとに当該車両が合流車線を走行する合流車両であるか否かを示す合流車両フラグとを含む合流支援メッセージを前記無線路側機から受信する無線通信部と、
前記車載通信機を有する車両が本線車線を走行している場合、前記合流支援メッセージに含まれる前記合流車両フラグに基づいて、前記合流車両に対応する前記位置・速度情報を前記合流支援メッセージから抽出する制御部と、を備える
車載通信機。
【請求項5】
無線路側機との路車間通信を行う車載通信機と、
自車両の運転を制御する運転制御部と、を有する車両であって、
前記車載通信機は、
前記無線路側機により検知された車両ごとの位置・速度情報と、前記検知された車両ごとに当該車両が合流車線を走行する合流車両であるか否かを示す合流車両フラグとを含む合流支援メッセージを前記無線路側機から受信する無線通信部と、
自車両が本線車線を走行している場合、前記合流支援メッセージに含まれる前記合流車両フラグに基づいて、前記合流車両に対応する前記位置・速度情報を前記合流支援メッセージから抽出する制御部と、を備え、
前記運転制御部は、前記合流支援メッセージから抽出された前記位置・速度情報に基づいて、前記合流車両による前記本線車線への合流を支援するように前記運転を制御する
車両。
【請求項6】
前記合流支援メッセージは、前記合流車両を指定した運転制御指示をさらに含み、
前記運転制御指示は、目標加速度、目標速度、及び目標位置のうち少なくとも1つを含み、
前記制御部は、自車両が前記合流車線を走行している場合、前記合流支援メッセージに含まれる前記運転制御指示を前記合流支援メッセージから抽出し、
前記運転制御部は、前記合流支援メッセージから抽出された前記運転制御指示に基づいて前記運転を制御する
請求項5に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線路側機、車載通信機、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通事故の危険を回避可能な技術として高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)が注目されている。このような背景下において、非特許文献1には、路側に設けられる基地局である無線路側機と、車両に設けられる移動局である車載通信機(「車載機」とも呼ばれる)とを有する交通通信システムの標準規格について規定されている。
【0003】
このような交通通信システムのユースケースとして、例えば、高速道路における本線車線と合流車線(「合流レーン」とも呼ばれる)との合流部の路側に設けられた無線路側機が、路側センサを用いて車両を検知すると、合流車線を走行する合流車両による本線車線への合流を支援するための路車間メッセージ(以下、「合流支援メッセージ」と呼ぶ)をブロードキャストする方法が検討されている。合流支援メッセージは、検知された各車両の位置・速度情報等を含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ARIB STD-T109 1.3版 「700MHz帯高度道路交通システム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなユースケースにおいて、本線車線を走行する本線車両が、無線路側機からの合流支援メッセージに基づいて、本線車線への合流車両の合流を支援するように運転制御を行う場合を想定する。
【0006】
この場合、本線車両は、合流支援メッセージに含まれる位置・速度情報等から、合流支援メッセージ中のどの位置・速度情報等が合流車両のものであるかを判断する必要がある。このような判断に時間を要すると、合流支援メッセージに基づく運転制御を開始するまでに遅延が生じる懸念があり、適切な合流支援を行うことが難しいという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、交通通信システムにおいて適切な合流支援を行うことを可能とする無線路側機、車載通信機、及び車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る無線路側機は、路車間通信を行う無線通信部と、本線車線を走行する本線車両及び合流車線を走行する合流車両が検知された場合、検知された車両ごとの位置・速度情報を含む合流支援メッセージを生成する制御部と、を備える。前記無線通信部は、前記本線車両及び前記合流車両に対して前記合流支援メッセージをブロードキャストする。前記制御部は、前記検知された車両ごとに当該車両が前記合流車両であるか否かを示す合流車両フラグをさらに含む前記合流支援メッセージを生成する。
【0009】
第2の態様に係る車載通信機は、無線路側機との路車間通信を行う車載通信機であって、前記無線路側機により検知された車両ごとの位置・速度情報と、前記検知された車両ごとに当該車両が合流車線を走行する合流車両であるか否かを示す合流車両フラグとを含む合流支援メッセージを前記無線路側機から受信する無線通信部と、前記車載通信機を有する車両が本線車線を走行している場合、前記合流支援メッセージに含まれる前記合流車両フラグに基づいて、前記合流車両に対応する前記位置・速度情報を前記合流支援メッセージから抽出する制御部と、を備える。
【0010】
第3の態様に係る車両は、無線路側機との路車間通信を行う車載通信機と、自車両の運転を制御する運転制御部と、を有する。前記車載通信機は、前記無線路側機により検知された車両ごとの位置・速度情報と、前記検知された車両ごとに当該車両が合流車線を走行する合流車両であるか否かを示す合流車両フラグとを含む合流支援メッセージを前記無線路側機から受信する無線通信部と、自車両が本線車線を走行している場合、前記合流支援メッセージに含まれる前記合流車両フラグに基づいて、前記合流車両に対応する前記位置・速度情報を前記合流支援メッセージから抽出する制御部と、を備える。前記運転制御部は、前記合流支援メッセージから抽出された前記位置・速度情報に基づいて、前記合流車両による前記本線車線への合流を支援するように前記運転を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、交通通信システムにおいて適切な合流支援を行うことを可能とする無線路側機、車載通信機、及び車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る交通通信システムの構成例を示す図である。
図2】路車間通信期間の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る無線路側機の構成例を示す図である。
図4】実施形態に係る車両の構成例を示す図である。
図5】実施形態に係る交通通信システムの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態に係る交通通信システムについて図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0014】
(交通通信システムの構成)
まず、一実施形態に係る交通通信システムの構成について説明する。以下において、非特許文献1の標準規格に基づく無線通信を行う交通通信システムについて主として説明するが、この標準規格に限定されるものではなく、例えば3GPP(Third Generation Partnership Project)のV2X(Vehicle to Everything)規格に基づく無線通信を行ってもよい。
【0015】
図1は、一実施形態に係る交通通信システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、交通通信システム1は、道路を走行する複数の車両100と、道路付近に設けられる複数の無線路側機200とを有する。
【0016】
図1において、複数の車両100として車両100A及び100Bを例示し、複数の無線路側機200として無線路側機200A及び200Bを例示している。なお、車両100としては普通自動車や軽自動車等の自動車を例示しているが、道路を通行する車両であればよく、例えば自動二輪車(オートバイ)等であってもよい。車両100は、自動運転車両であってもよい。
【0017】
各車両100には、車載通信機150が設けられている。車載通信機150は、車両100に固定的に設けられる据置型の通信機であってもよいし、車両100にケーブルを介して一時的に接続される可搬型の通信機であってもよい。
【0018】
各無線路側機200は、道路付近に設置されている。図1に示す例おいて、無線路側機200Aは、交通信号灯器300又はその支柱に設置されており、交通信号灯器300と連携して動作する。無線路側機200Bは、支柱に設置されている。各無線路側機200は、通信回線を介してサーバ装置400に接続されている。サーバ装置400は、中央装置と呼ばれることもある。サーバ装置400は、無線路側機200が受信する情報に基づいて各種の交通情報を収集し、道路交通を管理する。
【0019】
このような交通通信システム1においては、無線路側機200と車載通信機150との間で路車間通信を行い、車載通信機150間で車車間通信を行う。一実施形態において、車載通信機150は、700MHz帯の搬送波周波数(周波数帯)を時分割で無線路側機200と共用する。
【0020】
例えば、路車間通信により、無線路側機200から送信される路車間メッセージを車載通信機150が受信し、車載通信機150から送信される車両情報メッセージを無線路側機200が受信する。また、車車間通信により、1つの車載通信機150から送信される車両情報メッセージを他の車載通信機150が受信する。路車間通信及び車車間通信により、周辺車両の状態、交通情報、歩行者の有無等を認識し、交通事故の危険を回避するための支援を行うことができる。また、無線路側機200が受信する車両情報メッセージを交通流の円滑化等に用いることができる。
【0021】
路車間メッセージは、道路に関する情報を含むメッセージである。路車間メッセージは、例えば、UTMS(Universal Traffic Management System)協会発行の「ITS無線路側機 通信アプリケーション共通規格」や「5.8GHz帯/700MHz帯無線式DSSS用 通信アプリケーション(光・電波実験)規格」に基づく所定フォーマットを有する。
【0022】
車両情報メッセージは、車両100に関する情報を含むメッセージである。車両情報メッセージは、例えば、ITS Connect推進協議会発行の「ITS Connectシステム 車車間通信メッセージ仕様」に基づく所定フォーマットを有する。
【0023】
さらに、交通通信システム1において、無線路側機200間で路路間通信を行ってもよい。路路間通信により、1つの無線路側機200から送信される路路間メッセージを他の無線路側機200が受信する。
【0024】
路車間通信、車車間通信、及び路路間通信のそれぞれには、ブロードキャストによる無線通信が用いられてもよい。例えば、送信される無線信号(通信パケット)について、宛先アドレス(宛先MACアドレス)としてブロードキャストアドレスのみが規定されていてもよい。
【0025】
(路車間通信期間)
次に、一実施形態に係る交通通信システム1における路車間通信期間について説明する。図2は、路車間通信期間の一例を示す図である。
【0026】
図2に示すように、無線路側機200は、100ms周期(「制御周期」と呼ばれる)での通信を基本とする。100msの制御周期内において16μsを制御単位時間(「ユニット」と呼ばれる)としており、制御周期は6250ユニットで構成される。1制御周期中に設定可能な路車間通信期間の数の最大値は「16」であり、制御周期の先頭から390ユニット(6240μs)間隔で路車間通信期間を配置する。設定可能な1路車間通信期間長の最大値は、189ユニット(3024μs)である。
【0027】
無線路側機200には、1制御周期中にある16の路車間通信期間のうち1つ又は複数の路車間通信期間が割り当てられる。無線路側機200は、自身に割り当てられた路車間通信期間を用いて、所定周期で路車間メッセージをブロードキャストする。この所定周期は、例えば制御周期の整数倍である。路車間メッセージは、路車間通信期間に関する情報を含む。具体的には、無線路側機200は、自身の送信情報として送信時刻及び路車間通信期間情報(転送回数・路車間通信期間長)を含む路車間メッセージを周囲の車載通信機150に送信することにより、自身の送信時間を確保する。なお、無線路側機200間では±16μs以下の同期精度を保つこととされている。
【0028】
このような路車間メッセージを受信した車載通信機150は、路車間メッセージに含まれる送信時刻に基づいて時刻同期し、路車間メッセージに含まれる路車間通信期間情報に基づいて自身の送信を停止し、無線路側機200の送信期間以外のタイミングで送信を行う。具体的には、車載通信機150は、無線路側機200に割り当てられた路車間通信期間以外の時間、及び無線路側機200に未割当の路車間通信期間において、CSMA/CA方式により車両情報メッセージをブロードキャストする。
【0029】
(無線路側機の構成)
次に、一実施形態に係る無線路側機200の構成について説明する。図3は、無線路側機200の構成例を示す図である。
【0030】
図3に示すように、無線路側機200は、アンテナ21aと、無線通信部21と、制御部22と、インターフェイス23とを有する。
【0031】
無線通信部21は、アンテナ21aを介して無線通信を行う。アンテナ21aは、無指向性アンテナであってもよいし、指向性を有する指向性アンテナであってもよい。アンテナ21aは、指向性を動的に変更可能なアダプティブアレイアンテナであってもよい。一実施形態において、無線通信部21は、ブロードキャストによる路車間通信を車両100(車載通信機150)と行う。
【0032】
また、無線通信部21の無線通信方式は、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses) STD-T109に準拠した方式であるものとする。但し、無線通信部21の無線通信方式は、3GPPのV2X規格に準拠した方式であってもよいし、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11シリーズ等の無線LAN規格に準拠した方式であってもよい。無線通信部21は、これらの通信規格の全てに対応可能に構成されていてもよい。
【0033】
無線通信部21は、制御部22が出力するベースバンド信号に対して信号処理を施したうえで無線信号に変換し、無線信号をアンテナ21aから送信する送信部21bを有する。また、無線通信部21は、アンテナ21aが受信する無線信号をベースバンド信号に変換したうえで信号処理を施し、信号処理後の信号を制御部22に出力する受信部21cを有する。
【0034】
制御部22は、無線路側機200における各種の機能を制御する。例えば、制御部22は、無線通信部21を制御する。制御部22は、少なくとも1つのメモリと、メモリと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサとを有する。メモリは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含み、プロセッサにおける処理に用いる情報と、プロセッサにより実行されるプログラムとを記憶する。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより各種の処理を行う。
【0035】
制御部22は、路車間メッセージを生成し、路車間メッセージを無線通信部21(送信部21b)に出力する。無線通信部21(送信部21b)は、無線路側機200に割り当てられた路車間通信期間において路車間メッセージをブロードキャストする。
【0036】
インターフェイス23は、有線回線及び/又は無線回線を介してサーバ装置400と接続される。インターフェイス23は、有線回線及び/又は無線回線を介して路側センサ500と接続されてもよい。路側センサ500は、無線路側機200に組み込まれていてもよい。路側センサ500は、画像データを出力する画像センサ(カメラ)、移動体を検出して検出データ(点群データ)を出力するLiDAR(Light Detection and Ranging)センサ、ミリ波センサ、超音波センサ、及び赤外線センサのうち少なくとも1つであってもよい。
【0037】
(車両の構成)
次に、一実施形態に係る車両100の構成について説明する。図4は、車両100の構成例を示す図である。
【0038】
図4に示すように、車両100は、車載通信機150と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機12と、提示部13と、運転制御部14とを有する。車載通信機150は、アンテナ11aと、無線通信部11と、制御部15とを有する。
【0039】
無線通信部11は、アンテナ11aを介して無線通信を行う。一実施形態において、無線通信部11は、ブロードキャストによる路車間通信を無線路側機200と行う。無線通信部11の無線通信方式は、ARIB STD-T109に準拠した方式であるものとする。但し、無線通信部11の無線通信方式は、3GPPのV2X規格に準拠した方式であってもよいし、IEEE802.11シリーズ等の無線LAN規格に準拠した方式であってもよい。無線通信部11は、これらの通信規格の全てに対応可能に構成されていてもよい。
【0040】
無線通信部11は、制御部15が出力するベースバンド信号に対して信号処理を施したうえで無線信号に変換し、無線信号をアンテナ11aから送信する送信部11bを有する。また、無線通信部11は、アンテナ11aが受信する無線信号をベースバンド信号に変換したうえで信号処理を施し、信号処理後の信号を制御部15に出力する受信部11cを有する。
【0041】
無線通信部11は、ARIB STD-T109規格に準拠している場合、キャリアセンスを行って電波の周波数(例えば、700MHz帯)の空き状態を判定する機能を有していてもよい。この場合、無線通信部11は、キャリアセンスの結果に応じて決定されたタイミングで車両情報メッセージを送信してもよい。
【0042】
GNSS受信機12は、GNSS衛星信号に基づいて測位を行い、車両100の現在の地理的な位置(緯度・経度)を示す位置情報を制御部15に出力する。GNSS受信機12は、例えば、GPS、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、IRNSS(Indian Regional Navigational Satellite System)、COMPASS、Galileo、及びQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)のうち少なくとも1つのGNSSの受信機を含んで構成される。
【0043】
提示部13は、制御部15の制御下で、車両100の運転者に対する情報の提示を行う。例えば、提示部13は、情報を表示するディスプレイ及び情報を音声出力するスピーカのうち少なくとも一方を含む。
【0044】
運転制御部14は、車両100の動力源としてのエンジン又はモータ、動力伝達機構、ステアリング機構、及びブレーキ等を制御する。車両100が自動運転車両である場合、運転制御部14は、制御部15と連携して車両100の駆動及びステアリングを制御してもよい。
【0045】
制御部15は、車載通信機150(及び車両100)における各種の機能を制御する。例えば、制御部15は、無線通信部11を制御する。制御部15は、少なくとも1つのメモリと、メモリと電気的に接続された少なくとも1つのプロセッサとを有する。メモリは、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを含み、プロセッサにおける処理に用いる情報と、プロセッサにより実行されるプログラムとを記憶する。プロセッサは、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより各種の処理を行う。
【0046】
制御部15は、無線路側機200から無線通信部11(受信部11c)が受信する路車間メッセージに基づいて提示部13を制御してもよい。このような路車間メッセージは、交通信号灯器300の信号灯色に関する信号情報を含んでもよい。この場合、制御部15は、信号情報を表示するように提示部13を制御する。車両100が自動運転車両である場合、制御部15は、運転制御部14と連携し、信号情報に基づいて車両100の駆動を制御(例えば、減速制御又は加速制御)してもよい。
【0047】
制御部15は、車両情報メッセージを生成し、車両情報メッセージを無線通信部11(送信部11b)に出力する。無線通信部11(送信部11b)は、キャリアセンスの結果に応じて決定されたタイミングで車両情報メッセージをブロードキャストする。車両情報メッセージは、例えば、車両位置情報及び車両速度情報等を含む。
【0048】
(交通通信システムの動作)
次に、一実施形態に係る交通通信システム1の動作について説明する。
【0049】
図5は、一実施形態に係る交通通信システム1の動作を説明するための図である。
【0050】
図5に示すように、2つの本線車線(本線車線A及びB)と1つの合流車線とを有する道路(例えば、高速道路)を想定する。但し、本線車線は2つの場合に限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。合流車線は合流部(合流起点)において本線と合流し、合流部において、車両100が本線車線に合流するために加速する加速車線に切り替わる。
【0051】
本線車線Aには複数の本線車両100a(100a1乃至100a4)が走行しており、本線車線Bには複数の本線車両100b(100b1乃至100b3)が走行している。以下において、本線車両100a及び本線車両100bを区別しないときは単に本線車両100と呼ぶ。合流車線には合流車両100cが走行している。なお、各車両100には、車載通信機150が搭載されているものとする。
【0052】
無線路側機200は、合流部の路側に設けられている。合流部の手前の本線車線の路側には路側センサ500Aが設けられていてもよい。路側センサ500Aは、本線車線を走行する本線車両100(特に、本線車両100a)に関するセンサデータを生成し、生成したセンサデータを無線路側機200に出力する。また、合流部の手前の合流車線の路側には路側センサ500Bが設けられていてもよい。路側センサ500Bは、合流車線を走行する合流車両100cに関するセンサデータを生成し、生成したセンサデータを無線路側機200に出力する。
【0053】
このような動作環境において、無線路側機200(制御部22)は、本線車両100及び合流車両100cが検知された場合、検知された車両ごとの位置・速度情報を含む合流支援メッセージを生成する。合流支援メッセージは、路車間メッセージの一例である。位置・速度情報は、車両位置及び車両速度の少なくとも一方を含む情報である。位置・速度情報は、車両長さの情報をさらに含んでもよい。なお、無線路側機200(制御部22)は、路側センサ500を用いて各車両100を検知することで合流支援メッセージを生成してもよいし、各車両100から送信される車両情報メッセージを用いて各車両100を検知することで合流支援メッセージを生成してもよい。無線路側機200(送信部21b)は、本線車両100及び合流車両100cに対して合流支援メッセージをブロードキャストする。
【0054】
一実施形態において、無線路側機200(制御部22)は、本線車両100を指定した運転制御指示を含まない合流支援メッセージを生成する。すなわち、無線路側機200(送信部21b)は、本線車両100及び合流車両100cの位置・速度情報をブロードキャストし、これを受信した本線車両100(運転制御部14)が自律的に運転を制御して合流支援を行う。
【0055】
合流支援メッセージを受信した本線車両100(運転制御部14)は、合流支援メッセージに含まれる合流車両100cの位置・速度情報に基づいて、合流車両100cによる本線車線への合流を支援するように運転制御を行うことができる。例えば、本線車両100(運転制御部14)は、合流車両100cの位置・速度情報と、予め記憶している地図情報(例えば、ダイナミックマップ)とに基づいて、合流車両100cが合流部に到達する時刻を予測し、合流車両100cが本線車線に合流できるように車間調整(加減速制御)又は走行車線変更を行う。
【0056】
ここで、本線車両100は、合流支援メッセージに含まれる位置・速度情報等から、合流支援メッセージ中のどの位置・速度情報等が合流車両100cのものであるかを判断する必要がある。このような判断に時間を要すると、合流支援メッセージに基づく運転制御を開始するまでに遅延が生じる懸念があり、適切な合流支援を行うことが難しい。特に、合流支援メッセージが多数の車両100の位置・速度情報等を含む場合、合流支援メッセージ中のどの位置・速度情報等が合流車両100cのものであるかを判断するために長時間を要する可能性がある。
【0057】
そのため、一実施形態に係る無線路側機200(制御部22)は、検知された車両100ごとに当該車両100が合流車両100cであるか否かを示す合流車両フラグをさらに含む合流支援メッセージを生成する。無線路側機200(送信部21b)は、本線車両100及び合流車両100cに対して合流支援メッセージをブロードキャストする。
【0058】
一方、本線車両100の車載通信機150(受信部11c)は、無線路側機200により検知された車両100ごとの位置・速度情報と、検知された車両100ごとに当該車両100が合流車両100cであるか否かを示す合流車両フラグとを含む合流支援メッセージを無線路側機200から受信する。本線車両100の車載通信機150(制御部15)は、受信した合流支援メッセージに含まれる合流車両フラグに基づいて、合流車両100cに対応する位置・速度情報を合流支援メッセージから抽出する。
【0059】
これにより、合流支援メッセージを受信した本線車両100(運転制御部14)は、合流支援メッセージに含まれる合流車両100cの位置・速度情報を速やかに取得可能になるため、合流支援メッセージに基づく運転制御を速やかに開始できる。よって、本線車両100が合流支援メッセージに基づいて適切な合流支援を行うことが可能になる。
【0060】
表1に、無線路側機200から各車両100に送信される合流支援メッセージに含まれる情報の一例を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
無線路側機200(制御部22)は、検知車両ごとの「合流車両フラグ」を、例えば、合流車両であれば「1」、合流車両でなければ「0」に設定する。「合流車両フラグ」が1ビットで構成されるため、合流支援メッセージのメッセージサイズの増大を抑制できる。
【0063】
表2に、各車両100から無線路側機200に送信される車両情報メッセージに含まれる情報の一例を示す。
【0064】
【表2】
【0065】
無線路側機200(制御部22)は、合流支援メッセージに含める「合流車両フラグ」を生成する際に、車両情報メッセージに含まれる情報を考慮してもよい。
【0066】
例えば、無線路側機200(制御部22)は、ある車両100から受信した車両情報メッセージが、下記の1)乃至4)の条件のすべて又は一部の条件を満たす場合、当該車両100が合流車両100cであると判断してもよい:
1)当該車両情報メッセージに含まれる「道路番号」が、対象道路(例えば、高速道路)を示す
2)当該車両情報メッセージに含まれる「走行車線」が、合流車線を示す
3)当該車両情報メッセージに含まれる「車両位置」が、合流車線上の位置を示す
4)当該車両情報メッセージに含まれる「目標車線」が、本線車線を示す
【0067】
但し、無線路側機200(制御部22)は、上記の1)乃至3)の条件については、路側センサ500の出力に基づいて判断してもよい。
【0068】
(交通通信システムの動作の変更例)
次に、交通通信システム1の動作の変更例について説明する。上述の実施形態において、各車両100が合流支援メッセージに基づいて自律的に運転を制御する、すなわち、無線路側機200が路側管制を行わない一例について説明した。これに対し、本変更例では、無線路側機200が各車両100の運転制御を合流支援メッセージにより指示する、すなわち、無線路側機200が路側管制を行う一例について説明する。
【0069】
具体的には、本変更例に係る無線路側機200(制御部22)は、本線車両100を指定した運転制御指示及び合流車両100cを指定した運転制御指示を含む合流支援メッセージを生成する。ここで、ある車両100を指定した運転制御指示とは、当該車両100を示すID(車載機ID又は車両ID)と対応付けられた運転制御指示をいい、運転制御指示は、目標加速度、目標速度、及び目標位置のうち少なくとも1つを含む。運転制御指示は、目標車間距離及び目標車線をさらに含んでもよい。
【0070】
表3に、本変更例に係る無線路側機200(送信部21b)から各車両100にブロードキャストされる合流支援メッセージに含まれる情報の一例を示す。
【0071】
【表3】
【0072】
このような合流支援メッセージにより無線路側機200が各車両100の運転制御を指示する、すなわち、無線路側機200が路側管制を行うことにより、各車両100が合流支援メッセージに基づいて適切な運転制御を行うことが可能になり、交通通信システム1において適切な合流支援を行うことができる。
【0073】
例えば、車両100の車載通信機150(制御部15)は、自車両100が合流車線を走行している場合、無線路側機200から受信した合流支援メッセージに含まれる自車両100宛ての運転制御指示を合流支援メッセージから抽出する。そして、当該車両100(運転制御部14)は、合流支援メッセージから抽出された運転制御指示に基づいて自車両100の運転を制御する。
【0074】
(その他の実施形態)
上述の実施形態において、各車両100が合流支援メッセージに基づいて自律的に運転を制御する、すなわち、無線路側機200が路側管制を行わない一例について説明した。また、上述の変更例において、無線路側機200が各車両100の運転制御を合流支援メッセージにより指示する、すなわち、無線路側機200が路側管制を行う一例について説明した。しかしながら、無線路側機200は、本線車両100及び合流車両100cのうち、一方のみに対して路側管制を行い、他方については路側管制を行わないとしてもよい。
【0075】
上述の実施形態において、ARIB STD-T109規格に基づく交通通信システム1について主として説明した。しかしながら、交通通信システム1は、3GPP規格に基づく通信システムであってもよい。3GPP規格に基づく交通通信システム1において、無線路側機200は、合流支援メッセージ(及び通知メッセージ)をシステム情報(SIB:System Information Block)中でブロードキャストしてもよい。システム情報は、ブロードキャストチャネルにより送信される情報である。また、車両100は、車両情報メッセージをユニキャストで無線路側機200に送信してもよい。この車両情報メッセージは、RRC(Radio Resource Control)メッセージであってもよい。
【0076】
上述の実施形態において、サーバ装置400は、無線路側機200の近くに配置されるエッジサーバであってもよい。このようなエッジサーバを無線路側機200の一部とみなしてもよい。エッジサーバは、無線路側機200とインターネットとの間に設けられ、所定範囲に限定されたエリア内の道路を管轄する。エッジサーバは、WAN(Wide Area Network)を介さずに、LAN(Local Area Network)を介して無線路側機200と接続されてもよい。
【0077】
上述した実施形態に係る各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0078】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 :交通通信システム
11 :無線通信部
11a :アンテナ
11b :送信部
11c :受信部
12 :GNSS受信機
13 :提示部
14 :運転制御部
15 :制御部
21 :無線通信部
21a :アンテナ
21b :送信部
21c :受信部
22 :制御部
23 :インターフェイス
100 :車両
150 :車載通信機
200 :無線路側機
300 :交通信号灯器
400 :サーバ装置
500 :路側センサ
図1
図2
図3
図4
図5