(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164494
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ヒータ、及びウエハ加熱装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20221020BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H05B3/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070030
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】北林 桂児
(72)【発明者】
【氏名】先田 成伸
(72)【発明者】
【氏名】木村 功一
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP09
3K092QA03
3K092QA05
3K092QB43
3K092RF03
3K092RF11
3K092RF19
3K092RF27
3K092VV22
(57)【要約】
【課題】基材の第一の面における最外周の温度を均一にし易いヒータを提供する。
【解決手段】ウエハを加熱するヒータであって、絶縁シートで構成されている円形状の基材と、前記基材の内部に設けられている複数の発熱回路と、を備え、前記基材の第一の面は、径方向に複数の加熱エリアに区分けされ、前記複数の加熱エリアは、前記第一の面の最外周に位置する円環状のアウターエリアを有し、前記基材における前記アウターエリアに対応する箇所には、少なくとも1つの前記発熱回路が設けられ、前記アウターエリアに対応する前記発熱回路の第一端子及び第二端子の少なくとも一部は、前記基材における前記ウエハの重複領域の外側に設けられている、ヒータ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを加熱するヒータであって、
絶縁シートで構成されている円形状の基材と、
前記基材の内部に設けられている複数の発熱回路と、を備え、
前記基材の第一の面は、径方向に複数の加熱エリアに区分けされ、
前記複数の加熱エリアは、前記第一の面の最外周に位置する円環状のアウターエリアを有し、
前記基材における前記アウターエリアに対応する箇所には、少なくとも1つの前記発熱回路が設けられ、
前記アウターエリアに対応する前記発熱回路の第一端子及び第二端子の少なくとも一部は、前記基材における前記ウエハの重複領域の外側に設けられている、
ヒータ。
【請求項2】
前記アウターエリアは、周方向に扇状の複数のアウターゾーンに区分けされ、
前記基材における前記複数のアウターゾーンの各々に対応する箇所には1つの前記発熱回路が設けられ、
前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記発熱回路の第一端子及び第二端子の少なくとも一部は前記重複領域の外側に設けられている、請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記第一端子及び前記第二端子の全部が、前記重複領域の外側に設けられている、請求項2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記発熱回路は、前記第一端子と前記第二端子とをつないでいる回路部を有し、
前記回路部は、
前記重複領域の内側に設けられている内側回路部と、
前記重複領域の外側に設けられている外側回路部と、を有する、請求項2又は請求項3に記載のヒータ。
【請求項5】
前記基材における前記アウターエリアに対応する箇所には、少なくとも1つの穴部が設けられ、
前記穴部は、温度センサを設けるための穴であり、
前記穴部の少なくとも一部は、前記基材における前記ウエハの重複領域の外側に設けられている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
前記アウターエリアは、周方向に扇状の複数のアウターゾーンに区分けされ、
前記基材における前記複数のアウターゾーンの各々に対応する箇所には、1つの前記穴部が設けられ、
前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記穴部の少なくとも一部は、前記重複領域の外側に設けられている、請求項5に記載のヒータ。
【請求項7】
前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記穴部の全部が、前記重複領域の外側に設けられている、請求項6に記載のヒータ。
【請求項8】
ウエハが載置される上面を有する保持台と、
前記保持台を加熱するヒータと、を備え、
前記ヒータは、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のヒータである、
ウエハ加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒータ、及びウエハ加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コータ/デベロッパ装置に用いられるウエハ加熱用ヒータユニットが開示されている。ウエハ加熱用ヒータユニットは、発熱モジュールを有する。
【0003】
発熱モジュールは、絶縁シートと複数の発熱回路とを有する。複数の発熱回路は、絶縁シートの内部に設けられている。複数の発熱回路によって、絶縁シートの表面は複数の加熱ゾーンに区分けされている。
【0004】
複数の加熱ゾーンは、絶縁シートの表面の中央から径方向の外側に向かって順に、複数の中央部扇状加熱ゾーンと複数の中間部扇状加熱ゾーンと複数の周縁部扇状加熱ゾーンとを含む。複数の中央部扇状加熱ゾーンは、絶縁シートの表面の中央において、周方向に並んでいる。複数の中間部扇状加熱ゾーンは、複数の中央部扇状加熱ゾーンよりも外周側において、周方向に並んでいる。複数の周縁部扇状加熱ゾーンは、絶縁シートの表面の最外周において、周方向に並んでいる。
【0005】
発熱モジュールでは、各加熱ゾーンごとに温度を独立して制御するために、各加熱ゾーンごとに1個の発熱回路が設けられている。また、発熱モジュールでは、各発熱回路の温度を測定するために、各加熱ゾーンごとに1個の温度センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各発熱回路の第一端子及び第二端子の各々には、発熱回路に電力を供給する電極が接続される。通常、いずれの加熱ゾーンにおいても、第一端子、第二端子、及び温度センサが設けられる箇所は、絶縁シートにおけるウエハの重複領域の内側である。重複領域とは、次のように規定される。絶縁シートと同心状に配置されているウエハの外周面で構成される筒状の面を、絶縁シートの表面に垂直な方向に延長する。その際、延長された筒状の面が絶縁シートの表面に対して交差するように延長する。絶縁シートの表面において、延長した筒状の面に囲まれる領域を重複領域とする。
【0008】
各加熱ゾーンにおいて、第一端子及び第二端子は、発熱回路における第一端子及び第二端子を除く部分に比較して発熱密度が低い。また、温度センサが設けられる部分は、発熱回路を設けることができない。そのため、第一端子、第二端子、及び温度センサが設けられる部分は、局所的なクールスポットになり易い。
【0009】
上述した複数の中央部扇状加熱ゾーンと複数の中間部扇状加熱ゾーンとは、絶縁シートの表面の中央側に位置するため、周縁部扇状加熱ゾーンに比較して放熱され難い。即ち、複数の周縁部扇状加熱ゾーンは、絶縁シートの表面の外周縁に位置するため、複数の中央部扇状加熱ゾーンと複数の中間部扇状加熱ゾーンに比較して放熱され易い。周縁部扇状加熱ゾーンでは、複数の中央部扇状加熱ゾーンと複数の中間部扇状加熱ゾーンに比較して、クールスポットによる影響が大きくなり易い。周縁部扇状加熱ゾーンが位置する絶縁シートの表面の外周縁側は、絶縁シートの表面の中央側に比較して表面積が大きいため、放熱の影響により温度の低下が生じ易い。周縁部扇状加熱ゾーンは、ウエハ加熱用ヒータユニットが搭載されるチャンバーに向かい合っていることから、放熱の影響により温度の低下が生じ易い。よって、周縁部扇状加熱ゾーンの温度分布が不均一になり易い。
【0010】
本開示は、基材の第一の面における最外周の温度を均一にし易いヒータを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記ヒータを備えるウエハ加熱装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のヒータは、ウエハを加熱するヒータであって、絶縁シートで構成されている円形状の基材と、前記基材の内部に設けられている複数の発熱回路と、を備え、前記基材の第一の面は、径方向に複数の加熱エリアに区分けされ、前記複数の加熱エリアは、前記第一の面の最外周に位置する円環状のアウターエリアを有し、前記基材における前記アウターエリアに対応する箇所には、少なくとも1つの前記発熱回路が設けられ、前記アウターエリアに対応する前記発熱回路の第一端子及び第二端子の少なくとも一部は、前記基材における前記ウエハの重複領域の外側に設けられている。
【0012】
本開示のウエハ加熱装置は、ウエハが載置される上面を有する保持台と、前記保持台を加熱するヒータと、を備え、前記ヒータは、上記本開示のヒータである。
【発明の効果】
【0013】
本開示のヒータは、基材の第一の面における最外周の温度を均一にし易い。
【0014】
本開示のウエハ加熱装置は、ウエハの全域にわたって温度を均一にし易い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係るウエハ加熱装置の概略を示す縦断面の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るウエハ加熱装置に備わるヒータの概略を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0017】
(1)本開示の一態様に係るヒータは、ウエハを加熱するヒータであって、絶縁シートで構成されている円形状の基材と、前記基材の内部に設けられている複数の発熱回路と、を備え、前記基材の第一の面は、径方向に複数の加熱エリアに区分けされ、前記複数の加熱エリアは、前記第一の面の最外周に位置する円環状のアウターエリアを有し、前記基材における前記アウターエリアに対応する箇所には、少なくとも1つの前記発熱回路が設けられ、前記アウターエリアに対応する前記発熱回路の第一端子及び第二端子の少なくとも一部は、前記基材における前記ウエハの重複領域の外側に設けられている。
【0018】
上記ヒータは、アウターエリアにおいて、クールスポットとなる第一端子及び第二端子の少なくとも一部が基材におけるウエハの重複領域の外側に設けられているため、基材の第一の面における最外周の温度を均一にし易い。
【0019】
(2)上記ヒータの一形態として、前記アウターエリアは、周方向に扇状の複数のアウターゾーンに区分けされ、前記基材における前記複数のアウターゾーンの各々に対応する箇所には1つの前記発熱回路が設けられ、前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記発熱回路の第一端子及び第二端子の少なくとも一部は前記重複領域の外側に設けられているとよい。
【0020】
アウターゾーンの数が多いほど、クールスポットとなる第一端子及び第二端子の数が多くなる。アウターゾーンの数が多いほど、クールスポットが重複領域の内側に設けられていると、基材の最外周の温度を均一にすることが難しくなる。
【0021】
上記ヒータは、アウターエリアにおいて、クールスポットとなる第一端子及び第二端子の数が多い。それにもかかわらず、上記ヒータは、各アウターゾーンにおいて、第一端子及び第二端子の少なくとも一部が重複領域の外側に設けられているため、基材の第一の面における最外周の温度を均一にし易い。
【0022】
(3)上記(2)のヒータの一形態として、前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記第一端子及び前記第二端子の全部が、前記重複領域の外側に設けられているとよい。
【0023】
上記ヒータは、基材の第一の面における最外周の温度をより一層均一にし易い。
【0024】
(4)上記(2)又は上記(3)のヒータの一形態として、前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記発熱回路は、前記第一端子と前記第二端子とをつないでいる回路部を有し、前記回路部は、前記重複領域の内側に設けられている内側回路部と、前記重複領域の外側に設けられている外側回路部と、を有するとよい。
【0025】
上記ヒータは、各アウターゾーンの発熱回路の回路部が外側回路部を有することで、回路部が内側回路部のみで構成されている場合に比較して、各アウターゾーンの外周縁にまでわたって温度を均一に加熱し易い。そのため、上記ヒータは、基材の第一の面における最外周の温度をより一層均一にし易い。内側回路部と外側回路部とは、第一端子と第二端子との間を直列に接続するとよい。
【0026】
(5)上記ヒータの一形態として、前記基材における前記アウターエリアに対応する箇所には、少なくとも1つの穴部が設けられ、前記穴部は、温度センサを設けるための穴であり、前記穴部の少なくとも一部は、前記基材における前記ウエハの重複領域の外側に設けられているとよい。
【0027】
上記ヒータは、クールスポットとなる穴部の少なくとも一部も基材におけるウエハの重複領域の外側に設けられているため、基材の第一の面における最外周の温度を均一にし易い。
【0028】
(6)上記(5)のヒータの一形態として、前記アウターエリアは、周方向に扇状の複数のアウターゾーンに区分けされ、前記基材における前記複数のアウターゾーンの各々に対応する箇所には、1つの前記穴部が設けられ、前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記穴部の少なくとも一部は、前記重複領域の外側に設けられているとよい。
【0029】
上記ヒータは、基材の第一の面における最外周の温度をより均一にし易い。
【0030】
(7)上記(6)のヒータの一形態として、前記複数のアウターゾーンの各々に対応する前記穴部の全部が、前記重複領域の外側に設けられているとよい。
【0031】
上記ヒータは、基材の第一の面における最外周の温度をより一層均一にし易い。
【0032】
(8)本開示の一態様に係るウエハ加熱装置は、ウエハが載置される上面を有する保持台と、前記保持台を加熱するヒータと、を備え、前記ヒータは、上記(1)から上記(7)のいずれか1つのヒータである。
【0033】
上記ウエハ加熱装置は、上記ヒータを備えることでウエハの外周側の温度を均一にし易いため、ウエハの全域にわたって温度を均一にし易い。
【0034】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の実施形態の詳細を、以下に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0035】
《実施形態》
〔ウエハ加熱装置〕
図1から
図3を参照して、実施形態のウエハ加熱装置1を説明する。
図1は、ウエハ加熱装置1の縦断面の模式図である。縦断面とは、ウエハ加熱装置1の保持台2とヒータ3との積層方向に沿った平面でウエハ加熱装置1を切断した断面をいう。
図1の保持台2、ヒータ3、支持板6、第一冷却板71、及び第二冷却板72の厚さは、模式的に示されたものであり、必ずしも実際の厚さに対応しているわけではない。この厚さは、上記積層方向に沿った長さをいう。
図2は、ヒータ3の概略を示す平面図である。
図2は、ヒータ3における基材4の第一の面41を、第一の面41に垂直な方向から見た図である。
図3は、
図2に示す破線円で囲んだ領域Aを拡大して示す平面図である。以下の説明は、基材4の第一の面41側を「上」とし、その反対側の第二の面42側を「下」と表現することがある。
【0036】
本形態のウエハ加熱装置1は、
図1に示すように、保持台2とヒータ3とを備える。保持台2は、ウエハ100が載置される上面とヒータ3に接する下面とを有する。ヒータ3は、保持台2を加熱する。本形態のウエハ加熱装置1の特徴の一つは、ヒータ3が特定の構造を有する点にある。本形態のウエハ加熱装置1は、更に、支持板6と冷却ユニット7とを備える。以下、各構成を詳細に説明する。
【0037】
[ヒータ]
ヒータ3は、保持台2を介してウエハ100を加熱する。ウエハ100は、保持台2と同心状に配置されている。本形態のヒータ3は、上下から保持台2と支持板6とに挟まれている。ヒータ3は、基材4と発熱回路5とを備える。
【0038】
(基材)
基材4は、発熱回路5を覆っている。基材4は、絶縁シートで構成されている。基材4の平面形状は、
図2に示すように、円形状である。基材4は、保持台2と同心状に配置されている。基材4の外径は、
図1に示すように、ウエハ100の外径よりも大きい。基材4は、ヒータ3の外形を構成している。基材4の第一の面41は、保持台2に接触している。本形態の基材4の第二の面42は、支持板6に接触している。
【0039】
第一の面41は、径方向に複数の加熱エリアに仮想的に区分けされている。各加熱エリアは、単一の加熱ゾーンで構成されていてもよいし、周方向に複数の加熱ゾーンに区分けされていてもよい。加熱エリアの数、及び各加熱エリアにおける加熱ゾーンの数は、求められる温度分布に応じて適宜選択できる。加熱ゾーンは、独立して温度を制御可能な発熱回路5の単位を含む第一の面41上の仮想的な区画をいう。加熱ゾーンの数は、温度を独立して制御可能な発熱回路5の数に対応している。例えば、ある加熱エリアの加熱ゾーンの数が2個である場合、ある加熱エリアに対応する発熱回路5の数は2個であり、基材4における各加熱ゾーンに対応する箇所には1個の発熱回路5が設けられる。各加熱ゾーンには、
図3に示す発熱回路5の第一端子51及び第二端子52が1つずつ設けられている。第一端子51及び第二端子52には、本形態では
図1に示す電極95が接続される。
【0040】
第一の面41は、
図2に示すように、少なくともインナーエリア46とアウターエリア48とを有する。インナーエリア46とは、第一の面41の中心を含む領域に位置する円形状の加熱エリアである。アウターエリア48とは、第一の面41の最外周に位置する円環状の加熱エリアである。
【0041】
本形態のアウターエリア48の外周縁は、第一の面41の外周縁上に位置する。本形態のアウターエリア48は、ウエハ100の重複領域410の内側に位置する領域と重複領域410の外側に位置する領域とを含む。即ち、アウターエリア48の内周縁と外周縁との間に重複領域410の外周縁が位置する。
【0042】
重複領域410とは、次のように規定される。基材4と同心状に配置されているウエハ100の外周面で構成される筒状の面を、第一の面41に垂直な方向に延長する。その際、延長された筒状の面が第一の面41に対して交差するように延長する。第一の面41において、延長した筒状の面に囲まれる領域が重複領域410である。
【0043】
本形態とは異なり、アウターエリア48の外周縁は、第一の面41の外周縁よりも内側に位置していてもよい。その上、アウターエリア48の外周縁と重複領域410の外周縁とが一致していてもよい。その場合、アウターエリア48は、ウエハ100の重複領域410の内側に位置する領域を有するものの、重複領域410の外側に位置する領域を有さない。
【0044】
第一の面41は、更に、ミドルエリア47を有していても良い。ミドルエリア47は、インナーエリア46とアウターエリア48との間に位置する円環状の加熱エリアである。ミドルエリア47の数は、単数でも複数でもよい。
【0045】
本形態の第一の面41は、インナーエリア46と、ミドルエリア47と、アウターエリア48とを有する。本形態のミドルエリア47は、第一ミドルエリア471と第二ミドルエリア472とを有する。本形態のインナーエリア46は、1個の円形状のインナーゾーン461で構成されている。本形態の第一ミドルエリア471は、3個の扇状の第一ミドルゾーン471aで構成されている。本形態の第二ミドルエリア472は、3個の扇状の第二ミドルゾーン472aで構成されている。本形態のアウターエリア48は、8個の扇状のアウターゾーン481で構成されている。各アウターゾーン481は、重複領域410の内側に位置する領域と重複領域410の外側に位置する領域とを含む。
【0046】
基材4における各加熱ゾーンに対応する箇所には、本形態では1つの第一穴部43が設けられている。第一穴部43は、
図1に示すように、温度センサ90を設けるための穴である。即ち、第一穴部43の数は、温度センサ90の数に対応している。温度センサ90の数は、本形態では発熱回路5の数、即ち加熱ゾーンの数に対応している。ある加熱エリアが複数の加熱ゾーンに区分けされている場合、基材4における各加熱ゾーンに対応する箇所には1つの第一穴部43が設けられている。ある加熱エリアが複数の加熱ゾーンに区分けされている場合、本形態とは異なり、1つの第一穴部43が設けられている加熱ゾーンと、第一穴部43が設けられていない加熱ゾーンとがあってもよい。
【0047】
温度センサ90は、保持台2の温度を測定する。温度センサ90の種類の一例は、測温抵抗素子又は熱電対である。温度センサ90には、リード線91が接続されている。温度センサ90を設けるための穴とは、第一穴部43の内部に温度センサ90自体が配置される場合と、第一穴部43の内部には温度センサ90が配置されないものの、第一穴部43の内部に温度センサ90のリード線91が配置される場合とを含む。
【0048】
本形態の第一穴部43は、貫通孔である。貫通孔は、基材4の上下方向に沿って設けられている。
【0049】
各アウターゾーン481に対応する第一穴部43の少なくとも一部は、
図2に示すように、重複領域410の外側に設けられている。各アウターゾーン481において、クールスポットとなる第一穴部43の少なくとも一部が重複領域410の外側に設けられているため、第一の面41における最外周の温度を均一にし易い。最外周の温度を均一するためには、本形態のように、各アウターゾーン481に対応する第一穴部43の全部が重複領域410の外側に設けられていることが特に好ましい。
【0050】
基材4の材質の一例は、ポリイミド、シリコン、エポキシ、又はフェノールなどである。
【0051】
(発熱回路)
発熱回路5は、
図1に示すウエハ100を加熱するための熱源となる。発熱回路5は、基材4の内部に設けられている。発熱回路5は、基材4における各加熱エリアに対応する箇所に少なくとも1個設けられている。加熱エリアが複数の加熱ゾーンに区分けされている場合、発熱回路5は、基材4における各加熱ゾーンに対応する箇所に1個ずつ設けられている。各発熱回路5は、温度を独立して制御可能である。各発熱回路5は、第一端子51及び第二端子52を1個ずつ有する。各発熱回路5は、
図3に示すように、第一端子51と第二端子52とをつないでいる回路部55を有する。各発熱回路5における回路部55のパターンのレイアウトは、特に限定されず、加熱する温度や求められる温度分布に応じて適宜選択できる。回路部55のパターンは、例えば、円弧状部と直線部とを組み合わせたパターンが用いられる。
【0052】
各アウターゾーン481に対応する発熱回路5の第一端子51及び第二端子52の少なくとも一部は、
図2に示すように、重複領域410の外側に設けられている。各アウターゾーン481において、第一端子51及び第二端子52の少なくとも一部が重複領域410の外側に設けられているため、第一の面41における最外周の温度を均一にし易い。最外周の温度を均一するためには、各アウターゾーン481に対応する第一端子51の全部及び第二端子52の全部が重複領域410の外側に設けられていることが特に好ましい。第一端子51及び第二端子52には、
図1に示す電極95が接続される。電極95は、発熱回路5に電力を供給する。電極95にはリード線96が接続されている。
【0053】
各アウターゾーン481に対応する発熱回路5の回路部55は、
図3に示すように、内側回路部551に加えて外側回路部552を有することが好ましい。内側回路部551とは、重複領域410の内側に設けられている部分である。外側回路部552とは、重複領域410の外側に設けられている部分である。外側回路部552によって、回路部55が内側回路部551のみで構成されている場合に比較して、各アウターゾーン481の外周縁にまでわたって温度を均一に加熱しやすい。そのため、アウターエリア48の温度を均一にし易い。外側回路部552の両端部の各々に第一端子51及び第二端子52がつながっている。本形態では、外側回路部552の両端部は、最外周に位置している。
【0054】
第一端子51の形状及び第二端子52の形状は、適宜選択でき、例えば、矩形状、円形状、矩形環状、又は円環状などである。本形態では第一端子51の形状及び第二端子52の形状は、互いに同じ矩形状である。第一端子51の下面に電極95が接続されている。本形態と異なり、電極95を介さず、第一端子51とリード線96とが直接接続されていてもよい。
【0055】
本形態では、
図1に示すように、第一端子51の下面が基材4から露出するように基材4に第二穴部44が設けられている。第二穴部44の上方の端部内において、電極95は第一端子51の下面に接続されている。リード線96の一部も第二穴部44の内部に設けられている。電極95とリード線96の配置は、第二端子52も同様である。
【0056】
本形態とは異なり、電極95は、その全部が基材4の内部に設けられていてもよい。その場合、リード線96の一部も基材4の内部に設けられる。或いは、電極95の一部が基材4の内部に設けられ、電極95の残部が基材4の外部に設けられていてもよい。その場合、リード線96の全部が基材4の外部に設けられる。
【0057】
発熱回路5の材質は、ウエハ100を所望の温度に加熱できる材質であれば特に限定されない。発熱回路5の材質は、抵抗加熱に好適な公知の金属が挙げられる。金属の一例は、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、クロム、及びクロム合金からなる群より選択される1種である。ニッケル合金の一例は、ニクロムである。発熱回路5の形状の一例は、箔状である。
【0058】
ヒータ3は、発熱回路5の上下面を基材としての絶縁フィルムで挟んで熱圧着することで作製できる。
【0059】
[保持台]
保持台2は、
図1に示すように、ウエハ100が載置される載置面を上面に備える。保持台2は、円板状に構成されている。保持台2の外径は、ウエハ100の外径よりも大きい。保持台2の下面は、ヒータ3の上面に接している。保持台2は、公知の構成が利用できる。
【0060】
保持台2の下面には、複数の第一凹部21が設けられている。各第一凹部21の底部には、温度センサ90が固定されている。即ち、第一凹部21の数は、温度センサ90の数と同じである。第一凹部21の形成箇所は、第一穴部43に連通する箇所である。底部への温度センサ90の固定には、接着剤が利用できる。
【0061】
保持材の材質は、金属、セラミックス、又はセラミックス複合材料である。金属の一例は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などである。金属の表面には、めっき層が設けられていてもよい。めっき層の一例は、ニッケルである。セラミックスの一例は、炭化珪素、又は窒化アルミニウムなどである。セラミックス複合材料の一例は、Si-SiC又はAl-SiCなどである。
【0062】
[支持板]
支持板6は、ヒータ3を下方から支持する。支持板6の形状は、円形状である。支持板6の上面は、ヒータ3の下面に接している。支持台は、公知の構成が利用できる。
【0063】
支持板6は、複数の貫通孔を有する。複数の貫通孔は、
図1に示す第一貫通孔61、及び第二貫通孔62を含む。第一貫通孔61には、温度センサ90のリード線91が通されている。第一貫通孔61の数は、温度センサ90の数と同じである。第一貫通孔61は、支持板6の上下方向に沿って設けられている。第一貫通孔61の形成箇所は、第一穴部43に連通する箇所である。第二貫通孔62には、電極95のリード線96が通されている。
図3に示すように第一端子51と第二端子52とが近接している場合、
図1に示す第二貫通孔62の数は、発熱回路5の数と同じでもよいし、電極95の数と同じでもよい。
図3に示すように近接している場合、1つの第二貫通孔62に第一端子51に接続される電極95のリード線96と第二端子52に接続される電極95のリード線96とが通されていてもよい。図示は省略するものの、第一端子51と第二端子52とが離れている場合、第二貫通孔62の数は電極95の数と同じとするとよい。第二貫通孔62は、支持板6の上下方向に沿って設けられている。第二貫通孔62の形成箇所は、第二穴部44に連通する箇所である。
【0064】
支持板6と保持台2とは、機械的に結合されている。機械的な結合には、例えば、図示を省略するネジが利用できる。ネジを用いた支持板6と保時台との固定の仕方は、公知の固定の仕方が利用できるため、説明及び図示を省略する。
【0065】
支持板6は、複数の脚部8によって支持されている。各脚部8は、本形態では後述する第一冷却板71に固定されている。支持板6と各脚部8との固定の仕方、及び、各脚部8と第一冷却板71との固定の仕方は、公知の固定の仕方が利用できるため、説明及び図示を省略する。なお、各脚部8は、第一冷却板71ではなく図示を省略するケースの底部に固定されていてもよい。
【0066】
支持板6の材質は、セラミックス又はセラミックス複合材料である。セラミックスの一例は、保持材の材質で説明したセラミックスと同じである。セラミックス複合材料の一例は、保持材の材質で説明したセラミックス複合材料と同じである。
【0067】
[冷却ユニット]
冷却ユニット7は、支持板6、ヒータ3、及び保持台2を冷却する。冷却ユニット7は、公知の構成が利用できる。冷却ユニット7は、第一冷却板71と第二冷却板72とを有する。
【0068】
(第一冷却板)
第一冷却板71は、第二冷却板72を冷却する。第一冷却板71の内部には、図示を省略する冷媒の流路が設けられている。流路に流れる冷媒によって、第一冷却板71は冷却される。第一冷却板71は、図示を省略するケースの底部などに固定されている。
【0069】
第一冷却板71は、図示を省略する複数の貫通孔を有する。複数の貫通孔には、後述するエアシリンダのロッドが通される孔、及び脚部8が固定される孔が含まれる。複数の貫通孔の詳細な説明は省略する。
【0070】
(第二冷却板)
第二冷却板72は、支持板6、ヒータ3、及び保持台2を冷却する。第二冷却板72は、第一冷却板71と支持板6との間を昇降する。第二冷却板72の昇降は、図示を省略する昇降機構によって行われる。昇降機構の一例は、エアシリンダなどである。エアシリンダは、上下方向に進退されるロッドを備える。第二冷却板72は、第一冷却板71とは異なり、冷媒が流れる流路が設けられていない。第二冷却板72自体は、第一冷却板71と接触することで冷却される。冷却された第二冷却板72は、支持板6と接触することで支持板6を介してヒータ3を冷却する。本形態とは異なり、冷却ユニット7は、第二冷却板72を有していなくてもよい。その場合、第一冷却板71を昇降させるとよい。
【0071】
第二冷却板72は、複数の貫通孔を有する。複数の貫通孔は、第一貫通孔721、第二貫通孔722、及び第三貫通孔723を含む。第一貫通孔721には、温度センサ90のリード線91が通されている。第一貫通孔721の数は、温度センサ90の数と同じである。第一貫通孔721は、第二冷却板72の上下方向に沿って設けられている。第一貫通孔721の形成箇所は、第二冷却板72の上面と支持板6の下面とを接触させた際、支持板6の第一貫通孔61に連通する箇所である。第二貫通孔722には、電極95のリード線96が通されている。第二貫通孔722の数は、第二貫通孔62の数と同じであってもよいし異なっていてもよい。第二貫通孔722は、第二冷却板72の上下方向に沿って設けられている。第二貫通孔722の形成箇所は、第二冷却板72の上面と支持板6の下面とを接触させた際、支持板6の第二貫通孔62に連通する箇所である。第三貫通孔723には、脚部8が通される。第三貫通孔723の直径は、脚部8の直径よりも大きい。そのため、脚部8の軸方向に沿って第二冷却板72を昇降させられる。第三貫通孔723の数は、脚部8の数と同じである。第三貫通孔723は、第二冷却板72の上下方向に沿って設けられている。
【0072】
第一冷却板71及び第二冷却板72の材質は、熱伝導率の高い金属が挙げられる。金属の一例は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金、又はステンレスなどである。
【0073】
第二冷却板72の上面には、図示を省略するクッション層が設けられていてもよい。本形態とは異なり、冷却ユニット7が第二冷却板72を有していない場合、第一冷却板71の上面には、クッション層が設けられていてもよい。クッション層は、柔軟性、耐熱性、及び熱伝導性に優れる材質が好ましい。クッション層は、例えば、発泡金属、金属メッシュ、グラファイトシート、又は樹脂シートで構成されている。樹脂の一例は、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、又はシリコン樹脂などである。樹脂シートは、カーボンなどのフィラーを含有していてもよい。
【0074】
上記ウエハ加熱装置1は、基材4の第一の面41における最外周の温度を均一にし易いヒータ3を備えるため、ウエハ100をウエハ100の全域にわたって温度を均一にし易い。よって、上記ウエハ加熱装置1は、コータ/デベロッパ装置に好適に用いることができる。
【0075】
《試験例》
試験例では、ヒータに備わる基材のアウターエリアの温度の均一性を調べた。
【0076】
〔試料No.1〕
試料No.1のヒータは、
図1から
図3を参照して説明した実施形態のヒータ3と同様である。即ち、試料No.1のヒータは、各アウターゾーンに対応する発熱回路の第一端子の全部及び第二端子の全部と穴部の全部とがウエハの重複領域の外側に設けられている。
【0077】
〔試料No.101〕
試料No.101のヒータは、各アウターゾーンに対応する発熱回路の第一端子の全部及び第二端子の全部と穴部の全部とが、ウエハの重複領域の内側に設けられている点が試料No.1のヒータと異なる。上記の点を除き、試料No.101のヒータは、試料No.1のヒータと同様とした。
【0078】
〔温度の均一性の評価〕
基材のアウターエリアにおける温度の均一性の評価は、アウターエリアにおける最高温度と最低温度との差を求めることで行った。この評価は、各発熱回路に電力を供給して第一の面の設定温度を150℃として行った。測定にはKLA-Tencor社製の29点ウエハ温度測定システムを用いた。
【0079】
試料No.1のヒータは、アウターエリアにおける最高温度と最低温度との差が0.06℃であった。これに対して、試料No.101のヒータは、アウターエリアにおける最高温度と最低温度との差が0.14℃であった。試料No.1のヒータは、試料No.101のヒータに比較して、アウターエリアの温度をより均一にできることがわかった。
【0080】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 ウエハ加熱装置
2 保持台、21 第一凹部
3 ヒータ
4 基材、41 第一の面、410 重複領域、42 第二の面
43 第一穴部、44 第二穴部
46 インナーエリア、461 インナーゾーン
47 ミドルエリア
471 第一ミドルエリア、471a 第一ミドルゾーン
472 第二ミドルエリア、472a 第二ミドルゾーン
48 アウターエリア、481 アウターゾーン
5 発熱回路、51 第一端子、52 第二端子
55 回路部、551 内側回路部、552 外側回路部
6 支持板、61 第一貫通孔、62 第二貫通孔
7 冷却ユニット、71 第一冷却板、72 第二冷却板
721 第一貫通孔、722 第二貫通孔、723 第三貫通孔
8 脚部
90 温度センサ、91 リード線、95 電極、96 リード線
100 ウエハ
A 領域