IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016450
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】僧帽弁反転プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220114BHJP
   A61F 2/95 20130101ALI20220114BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/95
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021175130
(22)【出願日】2021-10-27
(62)【分割の表示】P 2018540783の分割
【原出願日】2017-02-02
(31)【優先権主張番号】62/291,347
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラシンスキ, ランドール
(57)【要約】
【課題】弁輪を寸法変更するためのシステム、装置及び方法を提供する。
【解決手段】弁輪を寸法変更するためのシステム、装置及び方法が記載される。インプラントは、僧帽弁の近くに送達され、管状体と複数の穿孔用螺旋アンカーとを含み、近位直径及び遠位直径を有する。僧帽弁に近接する組織は、対応する回転ドライバで複数のアンカーを回転させることにより係合される。管状体は、遠位直径よりも小さい近位直径を有する第1の構造構成から、遠位直径よりも大きい近位直径を有する第2の構造構成に変化できる。
【選択図】図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁輪の寸法を減少させるために心臓内にインプラントを送達するための送達システムであって、
前記送達システムの1つ以上の内腔を通って延びるように構成された複数の回転可能なドライバと、
前記送達システムの1つ以上の内腔を通って移動することによって心臓内に送達するように構成された前記インプラントとを含み、
前記インプラントは、
近位直径及び遠位直径を画定するフレームを有し、近位直径が遠位直径よりも小さい第1の構造構成と、近位直径が遠位直径よりも大きい第2の構造構成とになる管状体と、
前記フレームにおける遠位直径に近接する位置に接続され、複数の回転可能な前記ドライバによって回転されて前記フレームに対して遠位方向に前進するとともに前記心臓弁輪
を突き刺すように構成された複数の螺旋アンカーとを含むことを特徴とする送達システム。
【請求項2】
前記インプラントは、前記フレームにおける遠位直径に近接する位置に形成された一連の遠位頂部を有し、
前記遠位頂部の各々の一連の孔は、対応する前記螺旋アンカーによる遠位頂点の回転係合のための対応する前記螺旋アンカーが通って受け入れられるような寸法及び間隔である、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記複数の回転可能なドライバ及び前記インプラントは、前記インプラントの心臓への経カテーテル送達のために構成されている、請求項1に記載の送達システム。
【請求項4】
前記送達システムの1つ以上の内腔を含む送達カテーテルをさらに含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項5】
前記送達カテーテルの遠位端は、大腿静脈の開口部、前記大腿静脈、前記心臓の右心房、及び前記心臓の中隔を通って左心房に入るように構成されている、請求項4に記載の送達システム。
【請求項6】
前記インプラントの反対側の心臓弁の側に位置し、前記インプラントと結合するように構成された位置リングをさらに備える、請求項1に記載の送達システム。
【請求項7】
前記インプラントとは分離され、且つ、前記インプラントの位置決めを助けるために、前記インプラントとは反対側の前記心臓弁の側に位置するように構成された位置リングをさらに備える、請求項1に記載の送達システム。
【請求項8】
前記位置リングは、前記インプラントが配置され、且つ、前記複数の螺旋アンカーが前記心臓弁輪を突き刺した後に前記心臓から取り除かれるように構成されている、請求項7に記載の送達システム。
【請求項9】
僧帽弁輪に対する前記インプラントの位置を視覚化するために、心臓内エコーカテーテルを受け入れるように構成された1つの内腔を備える、請求項1に記載の送達システム。
【請求項10】
前記心臓内エコーカテーテルをさらに備える、請求項9に記載の送達システム。
【請求項11】
前記インプラントが、前記フレームの近位端に接続され、且つ、前記フレームの前記近位直径を増大させるために拡張するように構成された管状の拡張可能部材をさらに含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項12】
前記管状の拡張可能部材が前記フレームと一体である、請求項11に記載の送達システム。
【請求項13】
心臓弁輪の寸法を減少させるためのインプラントであって、
近位直径及び遠位直径を画定するフレームを有し、近位直径が遠位直径よりも小さい第1の構造構成と、近位直径が遠位直径よりも大きい第2の構造構成とになる管状体と、
前記フレームにおける遠位直径に近接する位置に接続され、複数の回転可能なドライバによって前記フレームの下側頂部の一連の孔を通過して回転されて前記フレームに対して遠位方向に前進するとともに前記心臓弁輪を突き刺すように構成された複数の螺旋アンカーとを含むことを特徴とするインプラント。
【請求項14】
前記フレームの近位端に近接する管状の拡張可能部材をさらに備え、
前記拡張可能部材に力が加えられると、前記拡張可能部材は拡張するとともに前記フレームの近位端と係合して当該フレームを第1の構造構成から第2の構造構成に反転させる、請求項13に記載のインプラント。
【請求項15】
前記管状の拡張可能部材は、前記フレームの近位端と一体である、請求項14に記載のインプラント。
【請求項16】
前記管状の拡張可能部材が、前記フレームの近位直径に近接する前記フレームの内部に配置されたステント状部材である、請求項14に記載のインプラント。
【請求項17】
前記インプラントは、送達システムによる心臓への前記インプラントの経カテーテル送達のための送達構成のために収縮するように構成される、請求項13に記載のインプラント。
【請求項18】
前記フレームの近位端に連結された管状の拡張可能部材をさらに備え、
前記管状の拡張可能部材は、経カテーテル送達のために前記管状の拡張可能部材を収縮させることにより、前記フレームの近位直径が非拘束状態に対して減少して前記フレームの遠位直径を非拘束状態に対して増加させ、その結果、前記フレームの近位及び遠位直径が送達される際にほぼ同じになるよう構成されている、請求項17に記載のインプラント。
【請求項19】
前記フレームの遠位端に近接する前記フレームの遠位端を形成する前記フレームの傾斜セグメントと、
対応する前記螺旋アンカーによる遠位頂点の回転係合のための対応する螺旋アンカーが通って受け入れられるように寸法及び間隔が決められている前記遠位頂点の各々の一連の孔とをさらに含む、請求項13に記載のインプラント。
【請求項20】
前記管状体は、前記近位直径に近接する前記管状体に拡張力を加えることによって、前記第1の構造構成から前記第2の構造構成に変化するように構成される、請求項13に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2015年3月12日に出願された米国特許出願第14/427,909号の継続出願であり、2012年9月14日に出願された米国仮出願第61/700,989号に対する優先権を主張する。上記の参照された出願の全ての目的のためにその全体が本明細書に明示的に援用され、本明細書の一部を形成する。
【0002】
本発明は、一般的な心臓治療の装置及び技術に関し、特に、僧帽弁逆流等の僧帽弁欠陥の修復のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
僧帽弁は、心臓の両側に血液を送る4つの心臓弁のうちの1つである。僧帽弁自体は、2つの弁尖、すなわち前尖及び後尖からなり、これらの弁尖は、心臓の圧送による弁尖にかかる圧力に反応して開閉するという受動的なものである。
【0004】
僧帽弁に関して発生しうる問題の中には、僧帽弁の弁尖が適切に閉じなくなって僧帽弁の漏出を引き起こす僧帽弁逆流症(MR)がある。重度の僧帽弁逆流症は、未治療のまま放置すると心機能に悪影響を及ぼし、患者のQOL及び寿命を損なう重大な問題となる。
【0005】
現在、僧帽弁逆流症は多くの指標により診断され、そのメカニズムは、経食道心エコー検査又は色素注入による蛍光透視法によって正確に視覚化され得る。僧帽弁逆流症を直す最も一般的で広く受け入れられている現在の技術は、患者の心臓を停止させ、且つ、患者が本質的な危険性を有する高度に侵襲性の手順である心肺バイパス中において開胸することにより僧帽弁を修復するものである。
【発明の概要】
【0006】
一構成では、僧帽弁の近くにインプラントを挿入する方法が記載され、そのインプラントは、管状体と複数の穿刺部材とを含み、管状体は、上部(すなわち近位)直径及び下部(すなわち遠位)直径を含む。この方法は、また、複数の穿刺部材によって僧帽弁に近接する組織に係合し、且つ、管状体における上部直径に近い部位への拡張力を利用して上部直径が下部直径よりも小さい第1構造構成から上部直径が下部直径よりも大きい第2構造構成に変化することを含む。
【0007】
別の構成では、上部直径及び下部直径を含む管状体を備えたインプラントが記載され、管状体は、上部直径が下部直径よりも小さい第1構造構成と上部直径が下部直径よりも大きい第2構造構成とを有し、前記管状体は、当該管状体における上部直径に近い部位に拡張力を加えることによって第1構造構成から第2構造構成に変化するよう構成されている。前記インプラントは、また、僧帽弁に近接する組織に係合するために、管状体で、且つ、下部直径に近接する部位に繋がる複数の穿刺部材を含む。
【0008】
別の構成では、ガイドワイヤ、ガイドワイヤを覆うシース、シースを通過させるとともにガイドワイヤに沿って移動させることにより身体に送達するためのインプラントを含むシステムが記載される。インプラントは、上部直径と下部直径とを含む管状体を備え、管状体は、上部直径が下部直径よりも小さい第1の構造構成と、上部直径が下部直径よりも大きい第2の構造構成とを有し、管状体は、当該管状体における上部直径に近接する部位に拡張力を加えることによって、第1の構造構成から第2の構造構成に変化するよう構成されている。また、インプラントは、僧帽弁に近接する組織を突き刺すように管状体の下部直径に近接する部位に接続される複数のカカリを含む。
【0009】
別の構成では、心臓弁輪の寸法を減少させるために心臓内にインプラントを送達するための送達システムが記載されている。その送達システムは、複数の回転可能なドライバと、インプラントとを備える。複数の回転可能なドライバは、送達システムの1つ以上の内腔を通って延びるように構成される。インプラントは、送達システムの1つ以上の内腔を通って移動することによって心臓内に送達されるよう構成される。インプラントは、管状体と、複数の螺旋アンカーとを含む。管状体は、近位直径と遠位直径とを画定するフレームを備える。その管状体は、近位直径が遠位直径よりも小さい第1の構造構成と、近位直径が遠位直径よりも大きい第2の構造構成とを有する。複数の螺旋アンカーは、フレームの遠位直径に近接する管状体に接続される。複数の螺旋アンカーは、当該複数の螺旋アンカーをフレームに対して遠位に前進させ、且つ、心臓弁輪を突き刺すために回転可能なドライバによって回転されるよう構成される。
【0010】
送達システムのいくつかの実施形態では、インプラントは、一連の遠位頂部及び一連の孔をさらに含むことができる。一連の遠位頂部は、遠位直径に近接するフレームによって形成されてもよい。一連の孔は、遠位頂部のそれぞれにあってもよいし、対応する螺旋アンカーによる遠位頂部の回転係合のために、対応する螺旋アンカーがそこを通って受け入れられるような寸法及び間隔を有していてもよい。複数の回転可能なドライバ及びインプラントは、心臓へのインプラントの経カテーテル送達のために構成されてもよい。送達システムは、送達システムの1つ又は複数の内腔を含む送達カテーテルをさらに備え得る。送達カテーテルの遠位端は、大腿静脈の開口部を介して大腿静脈を通って心臓の右心房を通過するとともに、心臓の中隔を通って左心房に進むように構成され得る。送達システムは、インプラントの反対側の心臓弁側に配置され、インプラントと結合するように構成された位置リングをさらに含むことができる。位置リングは、インプラントとは別個であってもよく、インプラントの位置決めを助けるために、インプラントの反対側の心臓弁側に配置されるように構成されてもよい。位置リングは、インプラントが配置され、複数の螺旋アンカーが心臓弁輪を突き刺した後に心臓から取り除かれるように構成されてもよい。送達システムは、僧帽弁輪に対するインプラントの位置を視覚化するための、心臓内エコーカテーテルを受容するように構成された1つの内腔を備えることができる。送達システムは、心臓内エコーカテーテルをさらに備えていてもよい。インプラントは、フレームの近位端に連結され、且つ、フレームの近位直径を増大させるために拡張するよう構成された管状の拡張可能部材をさらに含むことができる。管状の拡張可能部材は、フレームと一体であってもよい。
【0011】
別の構成では、心臓弁輪の寸法を減少させるためのインプラントが記載される。インプラントは、管状体と、複数の螺旋アンカーとを含む。管状体は、近位直径及び遠位直径を画定するフレームを備える。管状体は、近位直径が遠位直径よりも小さい第1の構造構成と、近位直径が遠位直径よりも大きい第2の構造構成とを有する。複数の螺旋アンカーは、管状体におけるフレームの遠位直径に近接する位置に接続される。複数の螺旋アンカーの各々は、フレームに対して遠位に前進して心臓弁輪を突き刺すように複数の回転可能なドライバによってフレームの下部頂点の一連の穴を通して回転されるよう構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、インプラントは、フレームの近位端に近接する管状の拡張可能部材をさらに備え、力が拡張可能部材に加えられた際、拡張可能部材が拡張し、且つ、フレームの近位端に係合して構造構成を第1の構造構成から第2の構造構成に変更する。環状の拡張可能部材は、フレームの近位端と一体であってもよい。拡張可能な管状部材は、フレームの近位直径に近接するフレームの内部に配置されたステント状部材であってもよい。インプラントは、送達システムによって心臓へのインプラントの経カテーテル送達用の送達形態に収縮するように構成することができる。インプラントは、フレームの近位端に連結された管状の拡張可能部材をさらに備え、経カテーテル送達のために環状の拡張
可能部材を収縮させると、前記フレームの近位直径が非拘束状態に比べて減少し、これは、フレームの近位直径及び遠位直径が送達される際にほぼ同じとなるようにフレームの遠位直径を非拘束状態に対して増加させる。インプラントは、遠位直径に近接するフレームの遠位頂点を形成するフレームの傾斜セグメントをさらに含むことができ、遠位頂点の各々の一連の孔は、対応する螺旋アンカーによる遠位頂部の回転係合用の対応する螺旋アンカーが通って受け入れられるような寸法及び間隔であってもよい。管状体は、管状体における近位直径に近接する位置に拡張力を加えることによって、第1の構造構成から第2の
構造構成に変化するように構成されてもよい。
【0013】
本開示及びその特徴及び利点のより完全な理解のために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本開示によるインプラントの例示的な実施形態を示す。
図1B】本開示によるインプラントの例示的な実施形態を示す。
図1C】本開示によるインプラントの例示的な実施形態を示す。
図1D】本開示によるインプラントの例示的な実施形態を示す。
図1E】本開示によるインプラントの例示的な実施形態を示す。
図1F】本開示によるインプラントの例示的な実施形態を示す。
図2A】本開示によるインプラントの代替実施形態例を示す。
図2B】本開示によるインプラントの代替実施形態例を示す。
図2C】本開示によるインプラントの代替実施形態例を示す。
図2D】本開示によるインプラントの代替実施形態例を示す。
図3A】本開示によるインプラントのさらなる代替実施形態例を示す。
図3B】本開示によるインプラントのさらなる代替実施形態例を示す。
図4A】本開示によるインプラントの追加の例示的実施形態を示す。
図4B】本開示によるインプラントの追加の例示的実施形態を示す。
図5】本開示によるインプラントの送達経路の例を示す。
図6】振動を利用する本開示の例示的な実施形態を示す。
図7】振動を利用する本開示の代替の例示的な実施形態を示す。
図8】振動を利用する本開示のさらなる例示的実施形態を示す。
図9A】インプラントを弁輪に固定するための回転可能な螺旋アンカーを有するインプラントの他の実施形態の斜視図である。
図9B】インプラントを弁輪に固定するための回転可能な螺旋アンカーを有するインプラントの他の実施形態の斜視図である。
図10】拡張可能な管状要素を有し、螺旋アンカーを用いて弁輪に固定されるように構成されたインプラントの別の実施形態の斜視図である。
図11】拡張可能な管状要素を有し、螺旋アンカーを用いて弁輪に固定されるように構成されたインプラントの別の実施形態の斜視図である。
図12】拡張可能な管状要素を有し、螺旋アンカーを用いて弁輪に固定されるように構成されたインプラントの別の実施形態の斜視図である。
図13図10~12のインプラントの実施形態を送達するように示された送達システムの一実施形態の斜視図である。
図14図9Aのインプラントを送達するように示された送達システムの実施形態の斜視図である。
図15A図9Aのインプラントを送達するための経カテーテル送達システムの実施形態の連続図であり、インプラントの送達、位置決め、及び、固定のための方法の実施形態を示す。
図15B図9Aのインプラントを送達するための経カテーテル送達システムの実施形態の連続図であり、インプラントの送達、位置決め、及び、固定のための方法の実施形態を示す。
図15C図9Aのインプラントを送達するための経カテーテル送達システムの実施形態の連続図であり、インプラントの送達、位置決め、及び、固定のための方法の実施形態を示す。
図15D図9Aのインプラントを送達するための経カテーテル送達システムの実施形態の連続図であり、インプラントの送達、位置決め、及び、固定のための方法の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、管状体と、僧帽弁逆流に苦しむ僧帽弁を再形成するための穿刺部材とを含むインプラントに関する。インプラントは、2つ以上の構造構成を含む。第1の構造構成では、上側の、すなわち近位の直径(僧帽弁から離れる)が、下側の、すなわち遠位の直径(僧帽弁の近傍)よりも小さくなり得る。この第1の構造構成では、インプラントの穿刺部材が、僧帽弁の近くの組織、例えば僧帽弁輪に係合することができる。次いで、インプラントは、第1の構造構成から、上部直径の寸法が下部直径よりも大きい第2の構造構成に変形することができる。これは、上部直径を拡張させる拡張力によって引き起こされ、すると下部直径が収縮する。より下部の直径が収縮すると、僧帽弁に近接する組織に係合する突刺部材が僧帽弁をより小さな直径に収縮させ得る。これにより、弁尖が適切に閉鎖され、僧帽弁逆流に対処することができる。
【0016】
図1A~Fは、インプラントの一実施形態を示す。例えば、図1Aに示すように、いくつかの実施形態では、僧帽弁の修復は、左心室を介した僧帽弁への経皮的アクセスのためのカテーテルが構成され得るカテーテルシステム及びカテーテル法によって達成され得る。左心室へのアクセスは、修復カテーテル140のアクセス用の拡張器具及びシース150を挿入するために切開が行われ得る心臓の頂点を介して行うことができる。シース150は、約6フレンチ~約30フレンチであり、閉鎖デバイスはこのアクセスカテーテル140の入口部分と組み合わせて使用され得る。
【0017】
本開示の一実施形態では、カテーテル140は、システムを所定の位置に案内し得る伸長可能なガイドワイヤアセンブリ160を含むことができる。ガイドワイヤ160は、直径が0.01インチ~0.038インチであり、直径が0.035インチであってもよい。カテーテル140又はシース150は、心臓の頂点を介してアクセスさせる場合、約20~30センチメートルの長さであってもよい。
【0018】
図1Bに示すように、アクセスが達成されると、送達システムは、僧帽弁輪の直径を減少させるために、インプラント110と共にガイドワイヤ160に沿ってシース150を通して導入され得る。カテーテル140は、僧帽弁を寸法変更して僧帽弁の断面積を減少させるか、又は、後尖を限定された位置まで戻すか、又は、僧帽弁の逆流を減少させるためにインプラント110を送達することができる。
【0019】
インプラント110は、放射状に拡張可能な管状体を形成するために、管の部分を選択的に切り取るようにレーザ切断や或いはその他の手段にて材料の一部がステント構造と同様に除去された管状体を含むことができる。インプラント110は、折り畳まれた構造構成にて導入されてもよい。この折り畳まれた構造構成は、インプラント110がシース150内に嵌め込まれ、開心術よりもむしろ経皮的処置を可能にする。図1Bに示すように、インプラント110が一旦左心房に到達すると、インプラント110は、より大きな第1の構造構成に拡張されて、僧帽弁近傍の組織、例えば僧帽弁輪に係合する。一実施形態では、インプラント110は、直径が約25から約35ミリメートルであり、高さが約10から約30ミリメートルであり、そして、壁の厚みが0.005インチから約0.04インチである。インプラント110は、ステンレス鋼、MP35N合金、ニチノール又は他の移植可能な材料のような金属材料で構成することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、インプラント110は、一方の端部が他方の端部よりも直径が大きく、概して円錐台形状に見えるように先細にされてもよい。端部の直径は、より小さい端部では約25ミリメートルであり、より大きい端部では約35ミリメートルであり得る。インプラント110は、非円形であってもよく、インプラントの一部は、楕円形であってもよく、または、平坦な半径方向部分を含んでもよい。この平坦部分は、大動脈弁の方に向けられ、円形部分は、後尖に向かって配置され得る。インプラント110の説明
を容易にするために、上部及び下部が描写され得る。下部は、僧帽弁170に近接するインプラント110の端部を指し、上部は、左心房においてインプラント110の端部を指し得る。
【0021】
インプラント110は、僧帽弁170の近くの組織、例えば僧帽弁輪に係合するために、僧帽弁170に近接するインプラント110下部に穿刺部材115を含み得る。穿刺部材115は、カカリ、又は釣り針のカカリのようなフック、又は一度突き刺した組織からの引き抜きに抵抗するその他の特徴を含み得る。穿刺部材115、穿刺部材115のカカリ又はフック、又はそれらの任意の組み合わせは、組織に係合するために組織に突き刺すことができる。穿刺部材115は、穿刺部材115ごとに単一のカエリ又はフック、又は複数のカエリ又はフックを含み得る。穿刺部材115は、直に露出されるか、又は送達のために覆われてもよい。それらは1~50の数であり得、長さは約4~20ミリメートルの長さを有し得る。それらは、インプラント110における管状体の壁と同じ厚さの壁を有してもよいし、力学的整合性を採るためにいずれかの方向において厚みが増加又は減少又はテーパ状に異なっていてもよい。
【0022】
インプラント110の穿刺部材115は、インプラント110と一体的であってもよいし、第2の構成要素としてインプラント110に接着、溶接されてもよいし、補助部品としてインプラント110に取り付けられてもよい。また、穿刺部材115は、インプラント110にレーザ切断を施すことにより設けるようにしてもよい。カカリ又はフックは、穿刺部材115からの破損又は分離に対する耐疲労性を有していてもよい。例えば、カカリ又はフックは、穿刺部材115との接続部分に強度や厚みを追加してもよい。また、カカリやフックは、心臓に対する動きを許容する一方、カカリやフックが穿刺部材115から分離する方向ではないようにヒンジ付き取付具によって取り付けられていてもよい。
【0023】
穿刺部材115のカカリ又はフックは、そのカカリ又はフックが曲げや露出のために熱で活性化されるか、或いは、曲げや露出のために外力によって機械的に形成され得る能動的又は受動的な手段であってもよい。例えば、各カカリ又はフックは、チューブに覆われてもよく、このチューブを取り外すことにより、カカリ又はフックが、例えば、身体の熱や或いは何等かの他の活性化因子によって活性化され、その結果、カカリ又はフックが周囲の組織と係合するように露出するようにしてもよい。受動的な構成では、カカリ又はフックは本質的に静的であり、常に露出しているか、或いは、覆いが取り除かれるとすぐに露出される。カカリ又はフックは、送達及び位置決め中において露出が制限され、一度位置決めが確定されると露出されるようであっても良い。露出は、個々のカカリとして、或いは、カカリの倍数として成し遂げられてもよい。いくつかの実施形態では、カバーは、一時的なカバーのみである。
【0024】
図1Bに示すように、いくつかの実施形態では、インプラント110は、僧帽弁のヒンジ部分が左心室に出会うとともに左心房が僧帽弁170に出会う位置である僧帽弁170の弁輪に配置されてもよい。この位置にインプラント110を配置することは、位置リング120を使用することで容易に行うことができる。例えば、位置リング120は、僧帽弁170の下の左心室内に配置することができる。位置リング120を送達するためのカテーテルは、シース150を通って同じアクセスポイントを介して左心室に配置することができる。いくつかの実施形態では、カテーテル130は、大動脈を通って延び、位置リング120を送達及び/又は取り除くことができる。図示されたカテーテル130は、大動脈及び大動脈弁を通って延びて左心室に入ってもよい。いくつかの実施形態では、位置リング120は、頂部入口点から、或いは、前述したように大腿骨入口を通る大動脈内入口から送達及び/又は取り除かれ得る。いくつかの実施形態では、位置リング120は、位置リング120の位置を確認するために蛍光透視法又はエコーガイダンスを介して見ることが可能な金属リング又はコイル状部分を含み得る。これは、僧帽弁輪に対して位置決めされるインプラント110にとっての正しい位置の確認を可能にする。位置リングの使用に加えて、インプラント110を取り付けるための所望の位置を決定するための他の方
法は、エコーガイダンス、CT、蛍光透視法、MRI、及び僧帽弁のヒンジ部分を強調するためのその他の撮像技術を含み得る。
【0025】
図1Cに示すように、拡張された第1の構造構成では、適切に位置決めがなされると、インプラント110は、穿刺部材115を僧帽弁輪に突き刺し及び/又は係合させるための下向きの力「A」を加えることができる。この力は、送達システム自体で加えられてもよいし、穿刺部材115を僧帽弁170に近い組織に係合させるために導入され得る第2カテーテルによって加えられてもよい。
【0026】
図1Dに示すように、インプラント110を弁輪に固定した後、インプラント110の相対位置を特定するために、位置リング120を使用し得る。例えば、位置リング120は、位置リング120及びインプラント110の位置を確認するために蛍光透視法又はエコーガイダンスを介して見ることができる金属リング又はコイル状部分を含み得る。インプラント110の許容範囲における配置を確認した後、又は後述するようにインプラント110を反転させた後、位置リング120を取り除くことができる。したがって、位置リング120は一時的なものであってもよい。したがって、位置リング120は、インプラント110から離れていてもよく、インプラント110の位置決めを助けるために、インプラント110の反対側の心臓弁側に配置されるように構成されてもよい。位置リング120は、インプラント110が配置されるとともに、複数の螺旋アンカーが心臓弁輪を突き刺した後に心臓から取り除かれるように構成されてもよい。位置リング120は、例えば図1A図1Fに示される送達システム、カテーテル130などの挿入されている送達システムと同様の送達システムによって除去されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、位置リング120は、インプラント110のアンカーとしても機能し得る。このような実施形態では、僧帽弁170の上の(すなわち、僧帽弁170の左心房側の)インプラント110は、僧帽弁170の下の位置リング120(すなわち、僧帽弁170の左心室側)に取り付けることができる。例えば、穿刺部材115のカカリ又はフックは、位置リング120に係合し得る。これは、通し縫合糸やカカリ手段によって位置リング120をインプラント110に巻き付けるかクリッピングすることにより達成され得る。また、磁力が位置リング120及びインプラント110を一時的に、又は、恒久的に共に保持するようにしてもよい。あるいは、カカリ又はフックは、左心室の僧帽弁170の下側の分け隔てられた別のインプラントに取り付けられてもよい。これは、ワイヤ、糸、又は組織中途部を通して取り付けるための機械的手段を介してインプラント110を固定するためのワイヤ、リング、又はT字アンカーであってもよい。便宜上、僧帽弁170の下のこのインプラントは、僧帽弁170に近接してインプラント110を配置するのに使用されないとしても、位置リング120と呼ぶことができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、位置リング120の形状は、直径が約0.010インチ~約0.090インチである円形断面であり、僧帽弁輪を取り囲むことができる。その形状は、鞍型よりも大きい僧帽弁170の多平面形状を収容するために、非円形、楕円形、1軸又は多軸に偏ったものであってもよい。また、位置リング120の配置においてより堅い曲がりに対応するために、異なる区間で剛性を変化させるようにしてもよい。位置リング120及び/又は送達カテーテルは、配置を容易にするために、僧帽弁170の下方の領域を進むように操縦可能であってもよい。プッシュプルワイヤを利用してカテーテル又は位置リング120の部分を圧縮又は装填し、カテーテル又は位置リング120を予測して曲げて方向付けることにより、ユーザは、僧帽弁170への経路及びその付近の困難な解剖学的特徴部分にアクセスすることができる。
【0029】
図1Eに示すように、穿刺部材115が僧帽弁170の近くの組織、例えば僧帽弁輪に係合した後、拡張力「B」をインプラント110の上部に適用し得る。インプラント110に拡張力「B」を加えることにより、インプラント110の下部に反応性低減力「C」を生じさせることもできる。反応性低減力「C」の減少により下部の直径が減少すると、僧帽弁170の直径は、インプラント110が僧帽弁170の周りの組織に付着するために減少する。例えば、僧帽弁170を所望の大きさに再形成するのに十分な減少力「C」が発生すると、僧帽弁170の寸法変化が維持された最終位置にインプラント110を残すことができる。これは、第2の構造構成とすることができる。
【0030】
図1Fに示すように、いくつかの実施形態では、穿刺部材115は、僧帽弁170に近接して組織に係合するが、位置リング120には係合しない。このような実施形態では、穿刺部材115のカカリ又はフックは、インプラント110を僧帽弁170に近接した組織に取り付けた状態に保つのに十分な方法にて、僧帽弁170に近接する組織と係合するか、噛合うか、及び/又は組織からの離脱に抵抗することができる。さらに、結合、係合及び/又は抵抗は、拡張力「B」及び反応性低減力「C」が適用されるときに僧帽弁170の表面積を減少させるのに十分であり得る。そのような実施形態では、位置リング120は、インプラント110を僧帽弁170に近接する正の位置に配置することを容易にするために使用されてもよいし、使用されなくてもよい。いくつかの実施形態においては、説明したように、位置リング120がインプラント110と結合しないが、インプラント110の位置決めを容易にするために、例えば位置リング120を一時的に位置決めすることなどに使用し得る。インプラント110の正の位置は、インプラント110が僧帽弁170の機能を損なうことなく僧帽弁170に近接して組織に係合することができる位置であり、さらに、インプラント110に拡張力”B”と反応性低減力”C”とが印加されるときに僧帽弁170の表面積を減少させることができる。
【0031】
図2A~2Dは、本開示によるインプラント110の一例を示す。図2Aに示されるように、インプラント110は、金属製であり、直径の変化を可能にするために、メッシュ、ケージ、又は一連の反復単位を形成するように切り取られていてもよい。例えば、インプラント110は、反復する正方形、ダイヤモンド、六角形、又はインプラント110の直径の変化を可能にする任意の他の形状の管状体を含むことができる。図2Aに示すような第1の構造構成では、インプラント110は、僧帽弁170に向かって最初に方向付けられる大きい直径の部分(下部直径220を有する下部)を有し、小さい直径は、左心房(上部直径210を有する上部)に方向付けられ得る。上部は、左心房の自由空間にあってもよく、この第1の構造構成において拡張される準備ができているより小さな直径を有している。
【0032】
インプラント110の構造は、約0.005インチ~約0.050インチの壁厚及び約0.010インチ~約0.070インチの支柱厚さ及び約1.00インチの拡張直径を有する所定の直径まで拡張されたテーパレーザ切断管を含むことができる。インプラントが先細になっている場合、大きな直径は直径約35ミリメートルであってもよく、小さな直径は直径約25ミリメートルであってもよい。第1の構造構成では、下部(すなわち、より大きい直径の部分)が僧帽弁輪に係合するとともに弁輪減少中にインプラント110を適所に保持し、永続的インプラントとして残す穿刺部材115を有し得る。
【0033】
図2Bに示すように、下向きの力「A」をインプラント110に加えることができる。いくつかの実施形態では、穿刺部材115A~115Hは、1つずつ組織に係合するように駆動されてもよい。例えば、穿刺部材115Aの上のインプラント110の上部を押すことによって、直線的な力が、穿刺部材115Aのカカリ又はフックを組織の中へと動かすようにしてもよく、それ故に、力が穿刺部材115Aに伝達し、穿刺部材115Aを組織内に押し込む。次いで、力を適用する送達システム又はカテーテルを回転させるとともに、別の穿刺部材115、例えば隣接する穿刺部材115Bと係合させるために再び作動させることができる。穿刺部材115Bが組織に係合した後、これは、すべての穿刺部材115が組織と係合されるまで繰り返され得る。あるいは、いくつかの実施形態では、力「A」は、一度に1つの穿刺部材115だけ係合するのではなく、複数の穿刺部材115を同時に係合するのに十分であり得る。いくつかの実施形態では、穿刺部材115の全てを一度に係合させることができる。
【0034】
図2Cに示すように、インプラント110は、上部直径210が下部直径220より小さい第1の構造構成になり得る。拡張力「B」がインプラント110の上部に加えられてもよい。上部直径210が増大するように拡張力「B」が加えられると、生成される反発的な反作用力「C」のために下部直径220が減少し得る。インプラント110の管状体の壁は、インプラント110の上部が曲がる(例えば、拡張される)と、インプラント110の下部が曲がる(例えば収縮する)ような撓みビームとして働くことができる。これにより、この第1の構造構成から第2の構造構成への変化が容易になる。下部直径220は、僧帽弁輪に係合する穿刺部材115に近接していてもよい。したがって、下部直径220が小さくなるにつれて、僧帽弁170の直径が小さくなる。拡張力「B」は、風船拡張、機械的拡張、又はその他の手段を介して適用されて上部直径210を増加させ、したがって、下部直径220を減少させる。これは、インプラント110の寸法を軸200の周りで効果的に反転させることができ、逆さ軸又は反射軸と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、軸200におけるインプラント110の直径は、第1の構造構成時、構造構成間の移行時、及び第2の構造構成時においてほぼ均一に維持することができる。図2Dに示されるように、拡張力「B」の適用、すなわち反応性低減力「C」は、より大きな寸法を有する上部直径210及びより短い寸法を有する下部直径220を有するインプラント110をもたらし得る。これは、カカリ係合僧帽弁170を順に小さな環状断面積に減少させ、僧帽弁逆流を軽減させる。図2Bに示された構造構成は、僧帽弁170の輪の断面積が縮小されたインプラント110の第2の構造構成であり得る。さらに、この第2の構造構成は、僧帽弁170の寸法変化を維持し得る最終的な構造構成であり得る。
【0035】
図3A及び図3Bに示すように、インプラント310に拡張力を加える代替の方法は、インプラント310内にリング320を配置することであってもよい。図3Aは、第1の構造構成のインプラント310を示し、図3Bは、第2の構造構成のインプラント310を示す。リング320は、ニチノールなどの形状記憶材料で形成することができる。リング320は、心臓への送達のための送達カテーテルに壊され、インプラント310内又はその周囲に放たれてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の解放可能なロープをリング320に取り付けることができる。解放可能なロープは、リング320を移動させるとともに、リング320が所望の位置に移動した後にロープをリング320から外すために引っ張ることができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、固定リング320を利用することができる。固定リング320を垂直に動かして上側、すなわち近位側の直径330を増加させるために上方部分を拡張させ、それに伴い、下部部分は、係合された組織及び僧帽弁と共に、下側、すなわち遠位の、直径340を縮小させてもよい。例えば、上向きの力「D」がリング320に加えられてもよい。しかしながら、インプラント310の円錐台形状のために、上向きの力「D」は、上部直径330を増加させるように拡張する横方向の力に変換され得る。リング320は、リング320又はインプラント310に組み込まれた締まりばめ又は機械的停止によってインプラント310に固定され、インプラント310を第2の構造構成に維持することができる。いくつかの実施形態では、固定リング320は、より小さな直径を有するとともに最初は上部直径330又はその付近に配置され、したがって、上部直径330を拘束し、図3Aに示すインプラント310の第1の構造構成を生じさせ及び/又は維持する。固定リング320は、下部直径340に方向付けられるように垂直下方に移動することができ、それにより、上部直径330が拡張してその寸法を増加させ、下部直径340を収縮させてその寸法を減少させる。次に、固定リング320は、図3Bに示すインプラント310の第2の構造構成を生じさせ及び/又は維持するために、下部直径340又はその近くに配置され得る。
【0037】
あるいは、固定リングではなく、拡張リング320を使用してもよい。拡張可能なリング320は、インプラント310内に配置されるとともに、例えば、流体や機械の力を利用してカテーテルによって送達及び拡張されてもよく、例えば、流体力又は機械力を用いてリング320を拡張する。リング320は、インプラント310の内径に導入され、操作又は位置決め可能に傾けられていてもよい。あるいは、リング320は、インプラント310内における一定の垂直位置に配置され、例えば、機械又は油圧の力や半径方向の寸法の拡張によって拡張されてもよい。リング320はまた、第2の構造構成又は最終位置に達すると、インプラント310のためのロック機構として働くことができる。リング320の拡張及び/又はロックは、本質的に可逆的であり、したがって上部の拡張を元に戻すことができる。リング320は、例えば、リング320及び/又はインプラント310に組み込まれた締まり嵌め又は機械的停止によって、インプラント310に固定されてもよい。
【0038】
図4A及び図4Bは、僧帽弁170を再形成するためのインプラント410の追加の実施形態を示す。図4Aは、第1の構造構成のインプラント410を示し、図4Bは、第2の構造構成のインプラント410を示す。図4Aに示すように、いくつかの実施形態では、インプラント410は、1つ以上の支持梁420(例えば、支持梁420A及び420B)を含み得る。支持梁420は、拡張力「B」から減少力「C」への変化を容易にすることができる。例えば、支持梁420は、軸450を中心に撓む梁として動作してもよい。したがって、拡張力「B」がインプラント410の上部に加えられると、梁420A及び420Bは、支点又は回転点としての軸450を有するレバーとして作用し、低減力「C」が下部直径440を減少させる。拡張力「B」が上部直径430を増大させ、下部直径440を減少させるために適用されると、インプラント410は、図4Aに示される第1の構造構成から図4Bに示される第2の構造構成に変化することができる。上述したように、これは、僧帽弁170の断面積を減少させることができる。
【0039】
支持梁420A及び420Bは、例えば、インプラント410の管状体の壁のより厚い部分として、又は、管状体の壁の構造の繰り返し単位又は要素の特定の並ぶものとして、インプラント410と一体的に形成されてもよい。あるいは、支持梁420A及び420Bは、インプラント410に追加された追加支持構成であってもよい。例えば、それらは、インプラント410に接着、溶接、又は永久的に固定されてもよい。
【0040】
図5に示すように、510で示すような心臓の頂点を通る僧帽弁170へのアクセスに加えて、僧帽弁170へのアクセスは、530で示すように大腿動脈を介して得られてもよく、又は大動脈弁を介して(例えば、上述したように大動脈弁を通る位置リング120の送達/取外しに関して)得られてもよく、又は静脈系を通した後、520で示すように左心房への経中隔穿刺を介して直接的に行ってもよい。大腿動脈を介して又は経中隔にてアクセスされる際、送達カテーテルは約90~150センチメートルの長さであればよい。カテーテルの端部は、解剖学的変化のための調整を可能にする偏った張力を生成する方向変換ワイヤーを介して方向変換可能であり得る。
【0041】
図6に示すように、穿刺部材115に直接的に振動を加えて、カカリ又はフック及び/又は穿刺部材115が組織を突き刺すことを容易にすることができる。低周波振動、超音波、又は無線周波数エネルギーは、カカリ又はフック及び/又は穿刺部材の通常の穿刺力に比べて、より小さい挿入力を可能にし得る。このエネルギー源をインプラント110に繋げることにより、各カカリ又はフック及び/又は穿刺部材115の先端に小さな振動620を伝達させることができる。あるいは、各カカリ又はフック及び/又は穿刺部材115は、インプラント110周りにおける周波数又はエネルギーの可変パターンを可能にするそれ自身の独立したエネルギー源を有することができる。エネルギー要素の直接的な組織との接触又はインプラント110への結合は利用され得るが、振動620をそれに結合することによって効率が低下する可能性がある。振動の周波数620は、約10~100Hz(サイクル/秒)であってもよく、約20Hzであってもよい。
【0042】
図7及び図8に示すように、穿刺部材115の係合を助けるために、僧帽弁170の周囲又は下側の組織を振動させるために追加のエネルギーを加えてもよい。例えば、図7に示すように、振動パッド710A及び710Bは、穿刺部材115のカカリ又はフックの近くの周囲の組織に振動620を送達し得る。パッド710A及び710Bは、カカリ挿入部位の近くの組織を振動させるために利用され得る。パッド710A及び710Bは、インプラント110から完全に分離していてもよく、同じ送達システムに接続していてもよい。パッド710A及び710Bの直線運動及び半径運動のための別の制御を提供することにより、振動620の正確な供給を提供するための位置を制御することができる。
【0043】
図8に示すように、振動パッド810A及び810Bはまた、僧帽弁700の下側に配置されてもよい。これは、やはり振動620を提供して、穿刺部材115のカカリ又はフックの僧帽弁170に近接する組織との係合を容易にし得る。図7の実施形態と同様に、振動パッド810A及び810Bは、インプラント110から完全に分離されていてもよく、又は同じ送達システムに接続されていてもよい。振動パッド810A及び810Bの直線運動及び半径運動のための別の制御を提供することにより、振動620の正確な供給を提供するための位置を制御することができる。
【0044】
無線周波数(RF)は、電波の周波数に対応する約3kHz~300GHzの範囲の振動速度であり、無線信号を搬送する交流である。RFは通常、機械的振動ではなく電気的振動を指す。以下は、異なる周波数範囲の一般名称の図表である。カカリの穿刺に利用される範囲は、目的が組織の加熱ではなく小さな振動であるため、ELFとHFとの間のどこかにある可能性がある。可能なユーザ範囲の選択は、異なる組織タイプ及び密度を可能にする。
【表1】
【0045】
アンカーによる組織への穿刺を促進させるための振動は、例えば上述した振動パッドによって、振動源から穿刺部位に隣接する組織に送達されてもよい。振動源は、ワイヤ又はチューブのような細長い制御要素の遠位端におけるパッド又は他の振動インターフェースに埋め込まれてもよい。あるいは、振動源は、近位マニホールド内に配置され、カテーテル本体を通って延びる細長いワイヤ又はチューブを通って遠位に振動エネルギーを伝搬させることができる。或いは、振動源は、所望の性能に応じて、インプラントフレームと、又はアンカードライバを介する等、個々のアンカーと直接的に伝播する振動で結合することができる。
【0046】
図9Aは、別の実施形態であるインプラント910を示す。インプラント910は、他に記載されている場合を除いて、本明細書に記載された他のインプラントと同一又は同様の特徴及び/又は機能を有してもよく、逆も同様であり得る。インプラント910は、フレーム920、穿刺部材又はアンカー930を備え、拡張可能部材940を含み得る。フレーム920は、図9Aに示されているように、自由な状態又は制約されていない状態、又はそうでなければ指定された名目上の状態になっている。フレーム920は、ニッケルチタン合金、すなわちニチノール、又は他の形状記憶合金又は金属で作ることができる。フレーム920は、拡張可能部材940とは異なる材料であってもよい。フレーム920は、中心軸が定義された円周方向に延びる壁を有する管状であってもよい。フレーム920は、図示されるような傾斜セグメント及び/又は他のセグメント、構成などを含むことができる。図示のフレーム920は、例えば、その構造がダイヤモンド格子又は六角形格子のものであってもよいが、正弦曲線形状であってもよい。フレーム920又はその一部は、軸に対して半径方向外側に及び/又は拡張可能部材940に対して傾斜していてもよい。フレーム920は、拡張可能部材940との境界面又はその近傍に位置する枢軸継手の周りを旋回することができる。いくつかの実施形態では、固定取付部がフレーム920と拡張可能部材940との間の継ぎ手部分、例えば、フレーム920と拡張可能部材940との頂部の境界面に1つ又は複数配置される。
【0047】
アンカー930は、金属製螺旋部材であってもよい。アンカー930は、フレーム920の下部、すなわち遠位端に螺合することができる。アンカー930は、フレーム920の遠位端又は遠位頂部に穿孔された一連の孔(図10、11及び12の参照番号1050により明瞭に示される)を通って巻き付けることができる。フレーム920は、遠位直径に近接するフレーム920によって形成された一連の遠位頂点を含むことができる。遠位頂点の各々における一連の孔は、対応する螺旋アンカー930による遠位頂点の回転係合のために対応する螺旋アンカー930がそこを通って受け入れられるような寸法及び間隔を有していてもよい。孔は、例えば図10に関して記載された孔1050と同じであってもよいし、類似していてもよい。アンカー930は、遠位に前進させることができ、いくつかの実施形態では、回転又はコルク抜き型の方法で近位に後退させることができる。アンカー930は、フレーム920に対して遠位に延びてもよい。例えば、アンカー930が回転すると、アンカー930は、フレーム920が留まった状態で遠位方向に移動し得る。いくつかの実施形態では、フレーム920は、アンカー930がフレーム920に対してより遠位に移動している間に遠位に移動し得る。したがって、フレーム920を好適な位置に配置し、フレーム920が軸方向に静止しているか又はほぼ軸方向に静止している間に、アンカー930を遠位側に動かして心臓組織に固定することができる。これは、アンカー930が心臓組織に固定される際、フレーム920の動きがより少ないので、インプラント910の位置決めをより良好に正確にし得る。さらに、アンカー930は、例えば、記載されるように、フレーム920の遠位頂部の一連の孔を通過してフレーム920に係合する。これにより、追加の構造又は特徴を必要とせずに、アンカー930とフレーム920との間の確実な取り付けが可能になる。孔及び各頂点を通るアンカー930の対応受け入れ部の配置は、アンカー930をドライバ952で駆動することによってアンカー930の移動を可能にする際において、アンカー930とフレーム920との軸方向の確実な係合を可能にする。軸方向に固定されるとは、アンカー930に作用する十分な回転力がない場合、アンカー930がフレーム920に対して軸方向に移動しないことを意味し、アンカー930とフレーム920は、ドライバ952からの回転力を取り除いた後に共に回転可能に固定され、それによりフレーム920に対するアンカー930のさらなる軸方向の移動を妨げる。フレーム920の一連の孔の形状及びアンカー930の螺旋形状は、このような利点を可能にする。図9Aにおいて、アンカー930は、遠位に拡張して示されており、これは、例えば、僧帽弁輪に近接する心臓組織に展開した最終段階である。僧帽弁輪は、左心房から左心室への移行領域であり、左心室からの僧帽弁170の弁尖(図5参照)のヒンジ領域の近く及び上にある。
【0048】
インプラント910は、拡張可能な部分又は部材940を含むことができる。拡張可能部材940は、ステント状であってもよい。拡張可能部材940は、中心軸が定義された円周方向に延びる壁を有する管状であってもよい。拡張可能部材940は、図示されるような傾斜セグメント及び/又は他のセグメント、構成などを含むことができる。正弦曲線の形状で示されているが、例えば、拡張可能部材940は、ダイヤモンド格子又は六角形格子の構造であってもよい。拡張可能部材940は、フレーム920とは異なる材料であってもよい。拡張可能部材940は、ステンレス鋼、コバルトクロム、プラチナイリジウム等のような金属合金で作ってもよい。拡張可能部材940は、送達システムへの挿入のために折り畳まれたり、或いは、縮められてもよく、フレーム920を反転させるために塑性変形するように強制的に拡張されてもよい。図9Aに示すように、拡張可能部材940は、例えば、フレーム920の一体化された一枚岩的な部分又は領域と一体であってもよい。いくつかの実施形態では、拡張可能部材940は、接着、溶接、縫合、各構造を圧着する金属バンド、又はその他のフレーム920への固定維持により接続されることによって、フレーム920に固定される。いくつかの実施形態では、拡張可能部材940は、摩擦嵌合、拡張可能部材940に固定されたフレーム920を保持する拡張力など、フレーム920との他の結合相互作用を有することができる。
【0049】
インプラント910は、フレーム920を圧縮又は潰すことにより送達システム(図示せず)の遠位端に装填される。アンカー930は、最初に装填及び送達のために引き込まれる。僧帽弁輪に近接する所望の位置に配置されると、フレーム920が送達システムから前進し、その遠位端がアンカー配置のために目的の心臓組織に当接する。次いで、螺旋アンカーは、その回転によって目的の心臓組織内に前進し、それによりインプラント910を僧帽弁輪の領域内に固定する。その後、インプラント910は、送達システムから完全に放出される。
【0050】
インプラント910が送達システムから完全に放出された後、拡張可能部材940は、拡張風船などによって強制的に拡張され、フレーム920を反転させる。フレーム920の反転により、フレーム920の遠位端の支持するアンカーが先細になるか又は収縮して僧帽弁輪の寸法が縮小し、僧帽弁の逆流が制限される。
【0051】
図9Bは、別の実施形態であるインプラント912を示す。インプラント912は、特記しない限り、インプラント910と同一又は類似の特徴及び/又は機能を有してもよく、その逆であってもよい。インプラント912は、拡張可能部材940と、穿刺部材又はアンカー930とを備える。フレーム922は、中心長手方向軸周りに延びる。フレーム922は、インプラント910におけるフレーム920の幾何学的形状とは幾分反対の自由な、又は制約のない形状を有するように形成される。例えば、下側に図示された、方向付けられた遠位端である端部係合アンカー930は、フレーム922の反対側における上側近位端よりも直径が小さくてもよい。したがって、フレーム922は、中心軸に対して半径方向内側に、及び/又は拡張可能部材940に対して傾斜していてもよい。フレーム922及び拡張可能部材940は、異なる材料で形成されてもよい。フレーム922は、図9Aに関して説明したフレーム920と同様の材料で形成することができる。
【0052】
僧帽弁輪の大きさに影響を及ぼす手順を実行するために、例えば、患者の僧帽弁逆流を治療するために、拡張可能部材940及びフレーム922のより大きな近位端が圧縮され又は縮められ、送達システムの遠位端に装填される(図示せず)。この動作はまた、フレーム920の遠位端又は狭い端部を反転させる。このような反転は、送達システムへの負荷のために抑制されなければならない。
【0053】
僧帽弁輪などの心臓弁輪に近接する所望の位置に配置されると、フレーム922は、送達システムの遠位端から前進させられ、送達システムによってもはや拘束されないので反転するとともに、拡張可能部材940が縮まった構成を維持する。次いで、フレーム922の遠位端又は遠位頂点は、僧帽弁輪に近接する目的の心臓組織と当接する関係にて配置される。次に、螺旋穿刺部材930は、コルクを通って前進するコルク抜きの螺旋ネジに非常に似た方法により、回転前進するとともに目的の心臓組織内に係合する。次いで、拡張可能部材940は、送達システムから放出され、例えば送達システムの一体構成である拡張風船によって強制的に拡張される。ステント状の拡張可能部材940の拡張は、フレーム922をその通常状態又は自由状態に戻し、それにより、その遠位頂部及び螺旋状アンカーの直径が狭くなり、僧帽弁輪の寸法が縮小され、僧帽弁逆流の度合又は程度が制限される。
【0054】
図10、11及び12は、別の実施形態におけるインプラント1010の様々な図である。この実施形態では、インプラント1010は、例えば図9A及び9Bに示すように、一体のインプラントとして形成されていないフレーム1020及び拡張可能部材1040を有する。むしろ、拡張可能部材1040は、フレーム1020内の近位端に近接して配置される。フレーム1020はニチノールのようなニッケルチタン合金から作られているのに対し、拡張可能部材1040はステンレス鋼、コバルトクロム、プラチナイリジウムなどの金属合金でできていることが好ましい。
【0055】
図10は、拡張可能部材1040が縮められてフレーム1020内に配置された、自由状態または非拘束状態のフレーム1020を示す。1つ又は複数の孔1050は、フレーム1020の遠位端又は頂部に予め穿孔され、図9A及び9Bのアンカー930のような螺旋アンカー(明瞭化のために図示しない)の間隔が入るように方向付けられている。アンカー930は、例えば、アンカー930を図に方向付けられるような下方である遠位に前進させるように孔1050を通過させて回転させてもよい。いくつかの実施形態では、アンカー930は、アンカー930を反対の近位方向に後退するように孔1050を通過させて反対方向に回転させてもよい。図11は、拘束された構成のフレーム1020及び送達システム(図示せず)の遠位端に装填する準備ができているインプラント1010を示す。図12は、配備された構成のインプラント1010を示す。拡張可能部材1040は、ダイヤモンド状の格子構成を有するように示されているが、正弦又は六角形の形態をとることもできると考えられる。
【0056】
インプラント1010の送達は、図9Aの実施形態と同様に行うことができる。より具体的には、インプラント1010は、図11に示すように、フレーム1020を圧縮又は縮めることによって、送達システム(図示せず)の遠位端に装填される。僧帽弁輪に近接する所望の位置に配置されると、フレーム1020が送達システムから前進し、その遠位端がアンカー配置のために目的の心臓組織に当接する。次いで、螺旋アンカー(図示せず)は、その回転によって、目的の心臓組織内に進められ、それによりインプラント1010を僧帽弁輪の領域内に固定する。その後、インプラント1010は、送達システムから完全に離脱する。
【0057】
インプラント1010が送達システムから完全に離脱した後、拡張可能部材1040は、拡張風船などによって強制的に拡張され、図12に示すようにフレーム1020を反転させる。フレーム1020の反転により、フレーム1020の遠位端の支持するアンカーが先細になるか或いは収縮し、僧帽弁輪の寸法が減少し、僧帽弁の逆流が制限される。
【0058】
図13は、本明細書に記載の様々なインプラントの実施形態の送達に適した、例えばカテーテル又はカテーテル内腔を含む、例示的な操縦可能な送達システム950を示す。図13は、図10~12のインプラント1010の一実施形態を示し、送達システム950は、図9Bのインプラント912及び図9Aのインプラント910を含むがこれに限定されない他のインプラントを送達するために使用することができ、後者はさらに図14に示され、図14において説明される。例えば、図9Bに具体化されたインプラント912に類似の送達システム950を使用することができる。簡潔にするために、また、前述の実施形態の間で拡張可能部材が異なるので、拡張可能部材1040は図13には示されていない。
【0059】
送達システム950は、そこを通って延びる1つ以上の内腔を有するチューブまたはチューブ状構造を含み得る。例えば、送達システム950は、ガイドワイヤ160、カテーテル140、1つ以上のドライバ952、及び心臓内エコーカテーテル960を含むがこれに限定されない送達システム950の対応する特徴をその中に受容するように構成された1つ以上の開口、すなわち内腔を有する細長いチューブ又は送達カテーテルを含み得る。いくつかの実施形態では、送達システム950は、ガイドワイヤ上の送達カテーテルを案内する内腔を有する送達カテーテル、別の内腔又は回転可能なドライバ952を含む内腔、送達カテーテルの遠位端に拘束された送達構成であるインプラント912、及び、カテーテルの遠位端を覆うシースを含む。送達システム950は、大腿静脈を経て左心房に経直腸的にか、或いは、大動脈弓及び大腿動脈を通って上行し、次いで大動脈及び僧帽弁を通過して左心房に移送される。ひとたび僧帽弁輪の上に位置し、目的の心臓組織に近接すると、インプラントはフレーム920、1020を部分的に放出する。フレーム920、1020は今や拘束されておらず、図13に示されているように通常状態又は自由状態に戻ることができる。
【0060】
次に、螺旋穿刺部材930が目的の心臓組織内に回転前進され、インプラントを僧帽弁輪の上の内側心臓壁に固定する。次いで、インプラント及び拡張可能部材940、1040は、送達システム950から離脱する。その時に、フレーム920、1020を反転させるようにステント状の部材940、1040は強制的に拡張される。頂部及び螺旋アンカー930の遠位端は、フレーム920、1020の遠位端部の直径を内向きに狭めてそれに対応する僧帽弁輪の寸法の減少を引き起こす。この僧帽弁輪の寸法の減少は、僧帽弁の弁尖が完全ではないにしても、患者の僧帽弁逆流の重篤度を低下させるようになる。
【0061】
本発明のさらなる実施形態では、心臓内エコーカテーテル960が送達システム950に組み込まれる。カテーテル960は、図示されるように内部にか、或いはインプラント送達システム950と並んで、送達システム950の内腔に含まれ得る。左心房内で且つ僧帽弁輪に近接してカテーテル960を回転させることにより、僧帽弁の弁突に対するインプラントの相対位置を決定することができる。これは、僧帽弁の弁突を穿孔することなく、螺旋アンカー930の僧帽弁輪に近接する目的の心臓組織への正確な位置決めを可能にする。
【0062】
図14は、図9Aのインプラント910を送達するために使用される操縦可能な送達システム950を示す。図13に関して上述した送達システム950の説明は、特に明記しない限り、インプラント910と送達システム950との使用に適用され、その逆も同様である。図14に示すように、インプラント910は、フレーム920及びフレーム920が一体で示された拡張可能部材940を含む。いくつかの実施形態では、インプラント910はフレーム920のみを含むものであってもよい。送達システム950は、上述したように、心臓内エコーカテーテル960を含んでも含まなくてもよい。
【0063】
図14に示すように、複数の回転ドライバ952が、送達カテーテルの内腔及び/又は送達システム950のシースの遠位開口部を通って外向きに延びる。各ドライバ952は、送達システム950の対応する内腔を通って延びることができる。いくつかの実施形態では、ドライバ952のうちの2つ以上が、送達システム950の同じ内腔を通って延びることができる。ガイドワイヤ160のようなガイドワイヤは、送達システム950に組み込まれてもよく、送達システム950の内腔を通って延びてもよい。
【0064】
ドライバ952は、明瞭化のためにその一部のみに符号が付されており、それぞれ対応する回転アンカー930と係合している。ドライバ952は、送達システム950の遠位端を心房に挿入する前に、送達システム950の送達カテーテル内のアンカー930と予め係合させることができる。ドライバ952は、種々の適切な手法でアンカー930と機械的に係合することができる。例えば、ドライバ952は、アンカー930の近位端を取り囲むように構成されたクレビス型継手を有することができる。ドライバ952は、アンカー930の近位端の上方、上面、下方などに延びるとともに、アンカー930に回転を伝達するように回転されてもよい。いくつかの実施形態では、アンカー930は、ドライバ952の回転がアンカー930に伝達されるように、ドライバ952によって係合され
る凹部又は他のツール受容部分を有してもよい。いくつかの実施形態では、ドライバ952は、アンカー930を取り囲むソケット型の取付具を含んでもよい。いくつかの実施形態では、アンカー930は、ドライバ952の対応する外部ネジ部材を受け入れる内部ネジ山付き止まり穴を有してもよい。これらは、ドライバ952が如何にしてアンカー930と係合し得るかの単なる例に過ぎず、他の適切な方法が実施されてもよい。インプラント910が弁輪に固定されるための所定位置にある状態において、本明細書で説明するように、アンカー930を回転させてアンカー930を心臓組織内に進めてインプラント910を心臓組織に固定するために、ドライバ952の近位端を例えば外科医によって回転させることができる。各ドライバ952は、そのいくつかが同時に作動するといったように、同時に作動されてもよく、または順次作動されてもよい。アンカー930は、本明細書で説明されるように、フレームに対して遠位に延びてもよい。
【0065】
図15A図15Dは、インプラント910を送達するための経カテーテル送達システムの実施形態の連続図を示し、本来の弁輪を寸法変更するためのインプラント910の送達、位置決め、及び固定の方法を示す。本明細書に記載の種々の送達システムを使用してもよい。図示されるように、送達システムは、シース150、カテーテル140及びガイドワイヤ160を含み得る。シース150、カテーテル140、ガイドワイヤ160及びインプラント910は、心臓へのインプラント910の経カテーテル送達のために構成されている。インプラント910は、大腿静脈の開口部を通過するカテーテルによる経皮的な送達システムによって送達され得る。インプラント910は、大腿静脈を通過して大静脈内及び右心房内に進められ得る。シース150、カテーテル140及びガイドワイヤ160の遠位端は、大腿静脈の開口を通って延びるように設定され、大腿静脈を通って心臓の右心房に入り、そして心臓の中隔を通り左心房に入る。
【0066】
図15Aに示すように、ガイドワイヤ160は、心臓の上部室を隔てる隔壁を通って前進され、シース150及びカテーテル140は、ガイドワイヤ160に沿ったその位置に前進させることができる。カテーテル140の遠位端は、図15Bに示すように、心臓弁輪、例えば僧帽弁輪の上方の位置まで前進させられる。図15Cは、シース150の遠位端から僧帽弁輪の上方及び近傍に排出されたインプラント910を示す。いくつかの実施形態では、僧帽弁輪の組織に挿入するためのアンカー930を適切に配置するために、例えば心臓内エコーカテーテルを用いて一連の画像を撮影することができる。図15C及び図15Dに示すように、アンカー930は、本明細書に記載のドライバ952の如き心臓弁輪へのアンカー930の回転及び遠位への前進のための送達システムの回転ドライバによって回転可能に係合され得る。いくつかの実施形態では、全てのアンカー930が適切に配置されるとともに僧帽弁輪の弁突の上方の僧帽弁輪の組織に固定されていることを確認するために周縁画像を取り込むようにしてもよい。1つ又は複数のアンカー930が適切に配置又は固定されていない場合、ドライバ952は回転方向を逆転させて、アンカーを近位方向に回転後退させることができる。その後、アンカー930は、ドライバ952を取り外す前に、再位置決めと再固定とをすることができる。
【0067】
図15A~15Dに関して、経カテーテル送達の特定の経路が記載されているが、様々な他の送達経路及びアプローチであってもよく、限定されないが、図1A~1Fに示され説明された経路や、尖送達などが挙げられる。さらに、図1A~1Fに関して記載された送達システム及び関連する方法のいずれかの特徴及び/又は機能は、図15A~15Dに関して記載された送達システム及び方法、及びその逆に組み入れられ得る。したがって、例えば、図15A~15Dに関して記載された送達システム及び方法に関して、インプラント910は、本明細書に記載されているように「反転」することができ、説明したように拡張可能か或いは固定されたリング320を利用することができ、位置リング120を弁の下側に挿入することができる。
【0068】
この開示は、当業者が理解するであろう本明細書の例示的な実施形態に対する全ての変更、置換、変形、変更、及び修正を包含する。同様に、適切な場合、添付の特許請求の範囲は、当業者が理解するであろう本明細書の例示的な実施形態に対する全ての変更、置換、変形、改変、及び修正を包含する。さらに、添付の特許請求の範囲における、装置、又はシステム、又は装置の構成、又は特定の機能に適応、配置、実行可能、構成可能、動作可能、運動可能、又は動作するシステムへの言及は、装置、システム、又は構成要素がそのように適合、配置、可能、構成、使用可能、動作可能又は運動可能である限り、その装置、システム、構成要素、それ又はその特定の機能が活性化されたか、起動されたか、又はロック解除されているかどうかに関わらず網羅する。例えば、種々の実施形態は、上述したステップの全て又は一部を実行でき、又はいずれも実行できない。種々の実施形態はまた、様々な順序で記載された機能を実行することができる。
【0069】
本開示は、いくつかの実施形態に関連して上述されているが、当業者は、変更、置換、変化、改変、変態、及び修正を示唆することができ、本開示は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に入るそのような変更、置換、変化、改変、変態、及び修正を包含することが意図される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
【手続補正書】
【提出日】2021-11-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁輪の寸法を減少させるために心臓内にインプラントを送達するための送達システムであって、
前記送達システムの1つ以上の内腔を通って延びるように構成された複数のドライバと、
前記送達システムの1つ以上の内腔から展開されることによって心臓内に送達されるように構成された前記インプラントとを含み、
前記インプラントは、
近位直径及び遠位直径を画定するフレームを有し、近位直径が遠位直径よりも小さい第1の構造構成と、近位直径が遠位直径よりも大きい第2の構造構成とになる管状体と、
前記フレームにおける遠位直径に近接する位置に接続され、且つ前記心臓弁輪を突き刺すように構成された複数のアンカーと
前記フレームの形状に対応する形状を有する管状の拡張可能部材であって、前記フレームの近位端に一体的に連結されて、前記フレームの近位直径が前記管状体の前記第2の構造構成において前記フレームの遠位直径よりも大きくなるように、前記フレームの近位直径を増大させるべく拡張するように構成された前記管状の拡張可能部材と
を含むことを特徴とする送達システム。
【請求項2】
前記複数のアンカーは、螺旋アンカーからなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記インプラントは、前記フレームにおける遠位直径に近接する位置に形成された一連の遠位頂部を有し、
前記遠位頂部の各々の一連の孔は、対応する前記螺旋アンカーによる遠位頂点の回転係合のための対応する前記螺旋アンカーが通って受け入れられるような寸法及び間隔である、請求項に記載の送達システム。
【請求項4】
複数の回転可能なドライバをさらに備え、前記アンカーは、前記複数の回転可能なドライバによって回転可能に構成されており、前記複数の回転可能なドライバ及び前記インプラントは、前記インプラントの心臓への経カテーテル送達のために構成されている、請求項1に記載の送達システム。
【請求項5】
前記送達システムの1つ以上の内腔を含む送達カテーテルをさらに含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項6】
前記送達カテーテルの遠位端は、大腿静脈の開口部、前記大腿静脈、前記心臓の右心房、及び前記心臓の中隔を通って左心房に入るように構成されている、請求項に記載の送達システム。
【請求項7】
前記インプラントの反対側の心臓弁の側に位置し、前記インプラントと結合するように構成された位置リングをさらに備える、請求項1に記載の送達システム。
【請求項8】
前記インプラントとは分離され、且つ、前記インプラントの位置決めを助けるために、前記インプラントとは反対側の前記心臓弁の側に位置するように構成された位置リングをさらに備える、請求項1に記載の送達システム。
【請求項9】
前記位置リングは、前記インプラントが配置され、且つ、前記複数のアンカーが前記心臓弁輪を突き刺した後に前記心臓から取り除かれるように構成されている、請求項に記載の送達システム。
【請求項10】
僧帽弁輪に対する前記インプラントの位置を視覚化するために、心臓内エコーカテーテルを受け入れるように構成された1つの内腔を備える、請求項1に記載の送達システム。
【請求項11】
前記心臓内エコーカテーテルをさらに備える、請求項10に記載の送達システム。
【請求項12】
心臓弁輪の寸法を減少させるためのインプラントであって、
近位直径及び遠位直径を画定するフレームを有し、近位直径が遠位直径よりも小さい第1の構造構成と、近位直径が遠位直径よりも大きい第2の構造構成とになる管状体と、
前記フレームにおける遠位直径に近接する位置に接続され、且つ前記心臓弁輪を突き刺すように構成された複数のアンカーと
前記フレームの近位端に近接する拡張可能部材であって、前記フレームの近位端に連結されて前記フレームの形状に対応する形状を有し、前記フレームの近位直径が前記管状体の前記第2の構造構成において前記フレームの遠位直径よりも大きくなるように、前記フレームの近位直径を増大させるべく拡張するように構成された前記管状の拡張可能部材と、
を含むことを特徴とするインプラント。
【請求項13】
前記複数のアンカーは、螺旋アンカーからなる、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記拡張可能部材に力が加えられると、前記拡張可能部材は拡張するとともに前記フレームの近位端と係合して当該フレームを第1の構造構成から第2の構造構成に反転させる、請求項12に記載のインプラント。
【請求項15】
前記管状の拡張可能部材は、前記フレームの近位端と一体である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項16】
前記管状の拡張可能部材、前記フレームの近位直径に近接する前記フレームの内部に配置されたステント状部材である、請求項12に記載のインプラント。
【請求項17】
前記インプラントは、送達システムによる心臓への前記インプラントの経カテーテル送達のための送達構成のために収縮するように構成される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項18】
前記管状の拡張可能部材は、経カテーテル送達のために前記管状の拡張可能部材を収縮させることにより、前記フレームの近位直径非拘束状態に対して減少させて前記フレームの遠位直径を非拘束状態に対して増加させるため、前記フレームの近位直径及び遠位直径は、送達される際にほぼ同になる、請求項17に記載のインプラント。
【請求項19】
前記フレームの遠位端に近接する前記フレームの遠位端を形成する前記フレームの傾斜セグメントと、
対応する前記螺旋アンカーによる遠位頂点の回転係合のための対応する螺旋アンカーが通って受け入れられるように寸法及び間隔が決められている前記遠位頂点の各々の一連の孔とをさらに含む、請求項12に記載のインプラント。
【請求項20】
前記管状体は、前記近位直径に近接する前記管状体に拡張力を加えることによって、前記第1の構造構成から前記第2の構造構成に変化するように構成される、請求項12に記載のインプラント。
【外国語明細書】