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特開2022-164500活断層を利用したエネルギー供給システム及び活断層を利用したエネルギー供給方法
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  • 特開-活断層を利用したエネルギー供給システム及び活断層を利用したエネルギー供給方法 図1
  • 特開-活断層を利用したエネルギー供給システム及び活断層を利用したエネルギー供給方法 図2
  • 特開-活断層を利用したエネルギー供給システム及び活断層を利用したエネルギー供給方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164500
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】活断層を利用したエネルギー供給システム及び活断層を利用したエネルギー供給方法
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/08 20060101AFI20221020BHJP
   G01V 1/00 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
F03G7/08 Z
G01V1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070039
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】521072515
【氏名又は名称】森 力
(74)【代理人】
【識別番号】100174171
【弁理士】
【氏名又は名称】原 慶多
(72)【発明者】
【氏名】森 力
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
(57)【要約】
【課題】地震による大きな被害を与えてきた活断層のエネルギーを利用することで、増大する地球規模のエネルギー問題を解決する。
【解決手段】エネルギー吸収装置1は、活断層のエネルギーを吸収する。吸収されたエネルギーは、エネルギー増幅装置2に送られて増幅される。増幅されたエネルギーは、エネルギー備蓄装置3に送られて備蓄される。エネルギー備蓄装置3は、エネルギーを制御する機能を有し、安全性を担保することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活断層を利用したエネルギー供給システムであって、
活断層からエネルギーを吸収するエネルギー吸収装置と、
吸収したエネルギーを増幅するエネルギー増幅装置と、
増幅したエネルギーを備蓄するエネルギー備蓄装置と、
を備える活断層を利用したエネルギー供給システム。
【請求項2】
前記エネルギー吸収装置がプレート間の摩擦エネルギーを吸収する、
請求項1に記載の活断層を利用したエネルギー供給システム。
【請求項3】
前記エネルギー吸収装置が地震発生時に地震エネルギーを吸収する、
請求項1に記載の活断層を利用したエネルギー供給システム。
【請求項4】
前記エネルギー増幅装置が海の水圧によりエネルギーを増幅する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の活断層を利用したエネルギー供給システム。
【請求項5】
活断層を利用したエネルギー供給方法であって、
活断層からエネルギーを吸収するステップと、
吸収したエネルギーを増幅するステップと、
増幅したエネルギーを備蓄するステップと、
を含む活断層を利用したエネルギー供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活断層を利用したエネルギー供給システム及び活断層を利用したエネルギー供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震大国である日本は、活断層が多く存在し、これまで頻繁に発生する巨大地震に悩まされてきた。
【0003】
一方で、エネルギー面では、世界において、石炭火力発電、液化天然ガス火力発電、及び、石油火力発電で、発電電力量の60%以上を占めており(非特許文献1)、地球温暖化や脱炭素化に関する問題が生じている。さらに、近年は、中国やインドを中心とした新興国におけるエネルギー消費量が増大しており、石炭、液化天然ガス及び石油等の枯渇が心配されている。
【0004】
また、長年、原子力発電も利用されてきたが、東日本大震災による被害を受けたように、安全性においての問題が残っている。これらの問題を解決するための新たなエネルギー源として地熱発電や風力発電等の再生可能エネルギーが取り上げられている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】公益財団法人 自然エネルギー財団ホームページ 「統計|国際エネルギー」(https://www.renewable-ei.org/statistics/international/ 2021年4月2日閲覧)
【非特許文献2】経済産業省 資源エネルギー庁ホームページ 「再生可能エネルギー・新エネルギー」(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/saiene/ 2021年3月29日閲覧)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの再生可能エネルギーは、気候に影響を受けたり、コストが高くなるなどの問題点があった。また、発電量が多くないため、エネルギー不足問題の根本的な解決策にはならないという課題もあった。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであって、これまで日本を悩ませ、地震による大きな被害を与えてきた活断層のエネルギーを活用することで、増大する地球規模のエネルギー問題を解決することができるエネルギー供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の活断層を利用したエネルギー供給システムは、活断層からエネルギーを吸収するエネルギー吸収装置と、吸収したエネルギーを増幅するエネルギー増幅装置と、増幅したエネルギーを備蓄するエネルギー備蓄装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地震による大きな被害を与えてきた活断層のエネルギーを活用することで、増大する地球規模のエネルギー問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】海底における活断層付近の動きに関する概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る活断層を利用したエネルギー供給システムに関する概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る活断層を利用したエネルギー供給システムによるエネルギーの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、まず、図1を参照しながら、海底における活断層付近の動きについて説明する。
【0012】
図1は、海底における活断層付近の動きに関する概略図である。図1に示すように、海のプレートは、陸のプレートに潜り込んでいる。
【0013】
図1(a)に示すように、通常、海のプレートは、1年に約数cm~10cmの速度で陸のプレート側に沈み込んでいく。その沈み込みに伴って、陸のプレートの先端側は沈み込み方向に引きずり込まれる。
【0014】
陸のプレートの先端側が引きずり込まれる際には、海のプレートと陸のプレートの境界面には歪みによる大きなエネルギーが発生する。このとき、例えば、境界面に部材等を設けて、陸のプレートの先端側が海のプレートの沈み込み方向と逆方向に動くようにすれば、歪みが生じることなく、かつ、海のプレートと陸のプレートの先端側の逆方向への動きにより、大きな摩擦エネルギーを得ることができる。また、歪みによる大きなエネルギーが蓄積することがないため、巨大地震の発生を防ぐことも可能となる。
【0015】
摩擦による仕事量は、例えば、よく知られているクーロンモデルにおいては、mgs cosθで表され(mは質量、gは重力加速度、sは移動距離、θは傾斜角)、移動距離sが小さい値であったとしても、質量mが膨大な数値であるため、摩擦による仕事量及びそれによって得られるエネルギーは非常に大きなものとなる。
【0016】
図1(b)は地震発生直前の活断層付近の様子である。陸のプレートには歪みによる大きなエネルギーが蓄積されている。図1(c)に示すように、歪められた陸のプレートが反発して元の位置付近に戻る時に、地震が発生する。同時に、地震による大きなエネルギーが放出される。
【0017】
このように、歪みが生じるのを完全に防ぐことができない場合は、最終的に陸のプレートの反発により地震が発生する可能性があるが、その場合でも、上記の通り境界面に部材等を設けることにより、大きな歪みが蓄積する可能性、及び、巨大地震の発生の可能性を低くすることができる。
【0018】
一般に、地震が発生したときのエネルギーの大きさは、対数を用いた式により、マグニチュードという数値で表される。マグニチュードを算出するための考え方や式は、種々存在するが、例えば、気象官署マグニチュード MJは、
MJ=1/2log(AN 2+AE 2)+1.73logΔ-0.83
(AN,AE:D93型等の変位波形出力が可能な地震計で観測された水平動成分(南北動、東西動)記録の最大振幅(単位はμm=10-6m)。基本的に、最大振幅の周期が6秒以下のもののみ使用、Δ:震央距離(km))
という式で表される。
【0019】
マグニチュードが7.0以上の大地震や巨大地震の場合は、核兵器が放出するエネルギーを超えるようなエネルギーを発生させるため、地震発生時にこのエネルギーを吸収し利用することができれば、非常に有用である。
【0020】
上述のエネルギーを吸収し、利用する本発明の一実施形態について、説明する。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態に係る活断層を利用したエネルギー供給システムに関する概略図である。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る活断層を利用したエネルギー供給システムは、エネルギー吸収装置1、エネルギー増幅装置2、エネルギー備蓄装置3、エネルギー変換装置4及びエネルギー供給装置5を備える。
【0022】
エネルギー吸収装置1は、活断層付近で発生するエネルギーを吸収する。エネルギー吸収装置1は、活断層の境界面付近に設置されるエネルギー吸収部と、当該部材で吸収したエネルギーをエネルギー増幅装置2に伝える伝達部とを含んでいる。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係る活断層を利用したエネルギー供給システムによるエネルギーの流れを示すフローチャートである。エネルギー吸収装置1のエネルギー吸収部は、活断層付近のエネルギーを吸収するが、特に、活断層におけるプレート同士の摩擦による摩擦エネルギーを吸収し、地震発生時には、陸のプレートが反発によって元に戻る時に発生するエネルギーを吸収する(S1)。摩擦エネルギーは、活断層付近では一方のプレートが動くエネルギーとそれを抑えようとする他方のプレートによるエネルギーの乗法で表される。通常、摩擦エネルギーは熱エネルギーとして吸収するが、これに限定されない。
【0024】
また、地震発生時の地震エネルギーは、陸のプレートが反発する際に発生する摩擦エネルギーとして吸収してもよいし、陸のプレートが衝突することによる衝撃エネルギーとして吸収してもよい。また、陸のプレートが跳ね上がる際に、そのエネルギーが伝わって海面が隆起することがあるが、そのエネルギーを吸収するようにしてもよい。エネルギー吸収装置1のうち、エネルギー吸収部材以外のエネルギー吸収装置本体部については、活断層の境界面付近に設置してもよいし、海上あるいは地上に設置してもよい。
【0025】
エネルギー供給装置1が吸収した摩擦エネルギーは、エネルギー増幅装置2に送られる(S2)。エネルギー増幅装置2は、例えば、海の水圧を利用してエネルギー吸収装置1から送られてきたエネルギーを増幅する(S3)。エネルギーを増幅する他の方法としては、特に限定されないが、例えば、太陽エネルギーを利用する方法、地熱エネルギーを利用する方法、風力発電機による風力エネルギーを利用する方法等が挙げられる。増幅されたエネルギーは、エネルギー増幅装置2からエネルギー備蓄装置3に送られる(S4)。なお、エネルギー備蓄装置3から送られてきたエネルギーを増幅することとしてもよい。
【0026】
海の水圧を利用してエネルギーを増幅する場合は、プレート同士の摩擦による摩擦エネルギーが水圧によって質量mの値が増大することを利用することができる。
【0027】
エネルギー備蓄装置3は、エネルギー増幅装置2から送られてきたエネルギーを備蓄する(S4)。エネルギー備蓄装置3は、エネルギー増幅装置2によって増幅された大きなエネルギーを備蓄することができる(S5)。備蓄されたエネルギーは、必要に応じて、エネルギー変換装置4に送られる(S6)。このように、増幅された大きなエネルギーをエネルギー備蓄装置3において一旦備蓄することにより、エネルギーを制御することができ、安全性を担保することが可能となる。
【0028】
また、エネルギー増幅装置2によりエネルギーが増幅される前に、エネルギー備蓄装置3において、エネルギー吸収装置1から直接送られてきたエネルギーを備蓄するようにしてもよい。
【0029】
エネルギー変換装置4は、エネルギー備蓄装置3から送られてきたエネルギーを熱エネルギーに変換する(S7)。このとき、エネルギー変換装置4は、単独であるいはエネルギー備蓄装置3と協働で、エネルギー量を調整しながら変換を行う。変換により生じた熱エネルギーは、エネルギー供給装置5に送られる。
【0030】
エネルギー供給装置5は、エネルギー変換装置4から送られてきた熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。より具体的には、例えば、従来の火力発電と同様、熱エネルギーによって蒸気を発生させてタービンを回転させることにより、電気エネルギーを生み出すことが考えられる(S8)。
【0031】
生じた電気エネルギーは、エネルギー供給装置5により、他所に供給される(S9)。エネルギー供給装置5の設置場所は、特に限定されず、海中や海上であってもよい。また、海中ケーブル等により、エネルギー供給装置から外国にエネルギーを送ることもできる。
【0032】
さらに、近年のIoT(Internet of Things)化やAI(Artificial Intelligence)技術の進歩により、通信の高速・大容量化が必要とされている。そのため、データ処理量の激増に対応するための電力の確保も問題となっている。本発明を利用することにより、今後の世界的な通信の高速・大容量化に対しても、十分な電力を供給することが可能となる。
【0033】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0034】
1 エネルギー吸収装置
2 エネルギー増幅装置
3 エネルギー備蓄装置
4 エネルギー変換装置
5 エネルギー供給装置
図1
図2
図3