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▶ 山花 一真の特許一覧

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  • 特開-家具等の転倒防止装置 図1
  • 特開-家具等の転倒防止装置 図2
  • 特開-家具等の転倒防止装置 図3
  • 特開-家具等の転倒防止装置 図4
  • 特開-家具等の転倒防止装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164518
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】家具等の転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A47B97/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021093278
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】521239107
【氏名又は名称】山花 一真
(72)【発明者】
【氏名】山花 一真
(57)【要約】
【課題】家具等の転倒防止装置において、ワイヤーロープの固定金具をボルトや木ネジで固定せず、また、ダンパー等でベース部を家具天板及び天井に押圧することが無く、ワイヤーロープの緊張力だけで、ベースプレートを家具の天板と天井に押圧する転倒防止装置を提供する。
【解決手段】略L字状をした一対の支柱2の長辺部4先端にベースプレート3を固着し、短辺部5に環状部材6を固着し、該環状部材6間に張設具8を設けたワイヤーロープ10を係合させ、前記一方のベースプレート3を家具11の天板面に載置し、他方のベースプレート3を天井12面に当接し、該張設具8により該ワイヤーロープ10を緊張させることで、該ベースプレート3を家具11の天板及び天井12に押圧することができ、地震の際には、ワイヤーロープ10の緊張力により、押圧力が増大し、家具等が転倒するのを防止する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略L字状をした一対の支柱(2)の長辺部(4)先端にベースプレート(3)を固着し、短辺部(5)に環状部材(6)を固着し、該環状部材(6)間に張設具(8)を設けたワイヤーロープ(10)を係合させ、前記一方のベースプレート(3)を家具(11)の天板面に載置し、他方のベースプレート(3)を天井(12)面に当接し、該張設具(8)により該ワイヤーロープ(10)を緊張させて、該ベースプレート(3)を家具(11)の天板及び天井(12)に圧接することを特徴とする家具等の転倒防止装置。
【請求項2】
前記、ベースプレート(3)を弾性部材とし、該ベースプレート(3)を湾曲させていることを特徴とする請求項1に記載の家具等の転倒防止装置。
【請求項3】
前記、環状部材(6)の中心と前記、ベースプレート(3)の中心とを合致させることで、該ベースプレート(3)の家具(11)天板及び天井(12)面にかかる押圧力を均等にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の家具等の転倒防止装置。
【請求項4】
前記、支柱(2)を延伸可能としたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の家具等の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生時に、箪笥、ロッカー、書棚、食器棚等の家具類が転倒することを防止する家具等の転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古代より、日本列島近辺では火山の噴火や地殻変動に起因する地震が数多く発生している。近年、その数はますます増加しており、日本各地で地震による被害が発生している。このため家屋や事務所等においても箪笥や書棚、食器棚、ロッカー等の家具類の転倒による怪我や死亡事故がたびたび報告されている。これらの家具類が地震の際、転倒するのを防止するための各種転倒防止装置が開発されている。
【0003】
主な転倒防止装置として、天井や壁と家具類とをワイヤーロープで係止する方法。あるいは、天井と家具類とをスプリングを内蔵した棒状体で突っ張っておく方法や作動流体や圧縮ガスを封入した伸縮性のあるダンパーで天井と家具類とを押圧状態に保持しておく方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-242955
【特許文献2】登録実用新案第3021329号
【特許文献3】特開2019-216942
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術で、天井や壁と家具類とをワイヤーロープで係止する方法として、天井や壁に金具を固着し、家具類の天板にも金具を固着し、該金具間をワイヤーロープで連結し、該ワイヤーロープを張設して設置する転倒防止装置が採用されている。特許文献1の発明では、断面略コの字形の固定部材を壁面にボルト等で固定し、家具類の天板に木ネジ等で固定具を固定し、該固定部材と固定具間をワイヤーロープで連結し、該ワイヤーロープに設けている張設具を操作して、該ワイヤーロープを緊張するようにした家具類の転倒防止装置が開示されている。
【0006】
特許文献2の発明では、壁面に金具を木ネジ等で締着し、家具類の天板に金具を貼着又は木ネジ等で固着し、該金具間をワイヤーロープで連結し、該ワイヤーロープを張設して固定する家具類の転倒防止装置が開示されている。また、特許文献3の発明では、オイル等の作動流体あるいは圧縮ガスで伸長するダンパーの上下にベース部を回動自在に軸示し、圧縮ベルトでシリンダーとロッドを収縮状態に保持しておき、一方のベース部を家具類の天板に載置した後に、前記圧縮ベルトを緩める、あるいは取り外すことで、他方のベース部を天井に圧接させ、前記作動流体や圧縮ガスの圧力によって該ベース部を家具類の天板および天井に押圧状態を保持しておくようにした転倒防止装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2の技術は、壁面に固定金具をボルト又は木ネジ等で固着し、家具類の天板にも固定金具を木ネジ等で固着するようにしており、これらの金具間をワイヤーロープで連結し、このワイヤーロープを緊張させて家具類が地震の際に転倒するのを防止するようにしたものである。しかし、近年の建物では、防火性を有する石膏ボード等が採用されており、この石膏ボードにボルトや木ネジ等で金具を締着しても固着強度が不足するため、地震発生の際、金具が脱落する恐れがある。
【0008】
そして、最近の家具においては、軽量化のために天板材にベニヤ板等の板厚の薄いものを使用することが多く、金具を木ネジで固定しても、やはり固着強度が不足するため地震発生の際、木ネジが抜けてしまう恐れがある。また、家具の天板に金具を粘着シート等で貼着した場合には、所定の固着強度を保持できるものであるが、長期間経過すれば、粘着シート等が経年劣化により、固着強度が低下する恐れがあるという課題がある。
【0009】
また、特許文献3の技術は、ダンパーのシリンダー内に充填した作動流体あるいは圧縮ガスの圧力により、上下のベース部を家具類の天板と天井に常時押圧しているものである。地震発生の際には、ダンパーのロッドが伸縮することで押圧力を保持して家具類の転倒を防止するようにしたものである。本技術ではベース部をボルトや木ネジで固定しないため、特許文献1や特許文献2のような課題は無いが、シリンダー内の作動流体あるいは圧縮ガスの圧力を保持しておくためにゴム又は樹脂製のパッキン類が内装されている。これらのパッキン類は長期間経過すると経年劣化が進行するため、シール力が低下し、作動流体あるいは圧縮ガスが漏出し、ベース部を押圧する保持圧力が低下し、所定の保持強度が維持できなくなる恐れがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明に係る家具等の転倒防止装置は、略L字状をした一対の支柱の長辺部先端にベースプレートを固着し、短辺部に環状部材を固着し、該環状部材間に張設具を設けたワイヤーロープを係合させ、前記一方のベースプレートを家具の天板面に載置し、他方のベースプレートを天井面に当接し、該張設具により該ワイヤーロープを緊張させて、該ベースプレートを家具の天板及び天井に圧接するようにしたものである。また、前記ベースプレートを弾性部材とし、該ベースプレートを湾曲させている。そして、前記、環状部材の中心と前記、ベースプレートの中心とを合致させることで、該ベースプレートの家具天板及び天井面にかかる押圧力を均等にするようにしている。また、前記支柱を延伸可能としたことも特徴とした転倒防止装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、一対の支柱の先端部に固着したベースプレートを家具類の天板に載置するとともに天井に圧接し、ワイヤーロープに設けている張設具でワイヤーロープを緊張して、該ベースプレートを家具類の天板及び天井に所定の圧力で押圧するようにした家具類の転倒防止装置である。ベースプレートを固定するためにボルトや木ネジを使用しておらず、固着強度が不足するという問題は無い。また、ベースプレートを押圧するための油等の作動流体あるいは圧縮ガス等を使用していないため、経年劣化による押圧力が低下するという問題も無く、長期間に渡り所定の押圧力を維持することが可能であり、地震発生時の横揺れにより、家具等が転倒しようとすると、該ベースプレートが家具等を押圧する力が増大するため、確実に家具類を把持するので、家具類が転倒する恐れが無く、人的被害を防ぐことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る家具等の転倒防止装置の図である。
図2】本発明に係る家具等の転倒防止装置の地震発生時の作動状態を示す図である。
図3】本発明に係る家具等の転倒防止装置のワイヤーロープの詳細図である。
図4図1におけるA-B線での断面矢視図である。
図5】本発明に係る家具等の転倒防止装置の他の実施例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る家具等の転倒防止装置について、図面に基いて詳述する。図1は、家具等の転倒防止装置1の図面であり、該転倒防止装置1は一対の支柱2と1本のワイヤーロープ10で構成されている。該支柱2は略L字状をしており、該支柱2の長辺部4の先端にはベースプレート3を固定しており、短辺部5には環状部材6を固着している。該環状部材6として、アイボルト等を使用するが、その他の楕円形状あるいは、三角形状の部材等を使用しても良いものである。該ワイヤーロープ10の両端部には係止具7を連結しており、中間部には、張設具8を連結している(図3参照)。該係止具7は該環状部材6に容易に脱着自在に係止できるようにしている。又、該張設具8により、該ワイヤーロープ10の長さが容易に調節できるようにしている。
【0014】
次に、家具等の転倒防止装置1の設置方法について、説明する。まず、一方のベースプレート3を家具11等の天板上に載置し、他方のベースプレート3を天井12面に押し当てる。続いて、各支柱2に固着している環状部材6に前記ワイヤーロープ10の両端部に設けている係止具7を連結し、該ワイヤーロープ10に設けている張設具8を操作して、該ワイヤーロープ10を緊張させて各ベースプレート3を家具11等の天板及び天井12面に押圧させて、設置は完了する。
【0015】
該ベースプレート3は弾性部材を使用し、外向きに湾曲させることで、地震発生時に振動を吸収し、家具11等の天板及び天井12面への押圧力を強めるようにしている。弾性部材として、ばね鋼が適当であるが、弾力性があり、且つ強度のある部材であれば、特にこれに限定するものではない。
【0016】
図2は、前記転倒防止装置1が地震発生時に作動する状態を示した図面である。地震発生時には家具11が左右に揺動しようとするが、図2においては右方向への揺れは、壁13によって阻止される。しかし、家具11が移動方向14に示すように左方向への揺れに対して、家具11を把持する力がなければ、家具11は転倒しようとする。この時、該転倒防止装置1が、家具11を把持するので、家具11が転倒しようとする動作を阻止するものである。
【0017】
該転倒防止装置1の作用を具体的に詳述する。通常時には、前記ベースプレート3は、前記ワイヤーロープ10を緊張することで、家具11の天板面と天井12面に圧接しているので、これらを常時押圧した状態を保持している。そして、家具11が地震による移動方向14に揺れて転倒しようとすれば、該家具11の天板に圧接している支柱2及びベースプレート3も家具11と一緒に移動方向14に移動する。この時、該ワイヤーロープ10には、該ワイヤーロープ10を伸長しようとする力が作用するが、ワイヤーロープ全長Cは変位しない。このため、該ワイヤーロープ10を伸長しようとする力が上下のベースプレート3に分散されるため、該ベースプレート3をさらに押圧しようとする力15がかかる。
【0018】
そして、該ベースプレート3を湾曲させておくことで、該ベースプレート3は、前記分散された力を、その屈伸作用によって吸収し、前記家具11が地震により、何度も繰り返して移動方向14に揺れて、転倒しようとする動作を、該ベースプレート3は家具11への押圧力を強弱させながら、把持して、より確実に、該家具11の転倒を防止するようにしている。
【0019】
図3は、本発明に係る家具等の転倒防止装置のワイヤーロープ10の詳細図である。該ワイヤーロープ10本体は金属製のものを使用しており、伸長しようとする外力が作用しても、該ワイヤーロープ10は伸長することはない。該ワイヤーロープ10の両端には、係止具7を連結しており、該係止具7はカラビナやスプリングフック等を使用して、前記環状部材6に容易に脱着自在に連結できるようにしている。又、該ワイヤーロープ10の中間部には、張設具8を連結しており、該張設具8を使用することで、該ワイヤーロープ10の長さを容易に調節できるようにしている。該張設具8として、本実施形態では、ターンバックル等を使用しているが、特にこれに限定するものではなく、任意に、該ワイヤーロープ10の長さが調節できるものであれば良い。該張設具8の両端部にはボルト9を螺合しており、該張設具8を回動させれば、該ボルト9が進退して、該ワイヤーロープ10の長さを調節するようにしている。
【0020】
図4は、図1のA-B線での断面矢視図である。前記ベースプレート3の形状はベースプレート幅Xとベースプレート長さYの四角形状をしている。図1の環状部材6の中心の垂線は、該ベースプレート3の中心に合致させている。すなわち、1/2Xと1/2Yの交点の垂直線上に該環状部材6の中心が位置するように構成している。符号Zは前記支柱2の取付位置であり、ベースプレート長さYの中央で、且つ、ベースプレート幅Xの略1/4X~1/3Xの位置に固定している。上述のように、該環状部材6の中心と該ベースプレート3の中心とを合致させることで、地震発生時に前記ワイヤーロープ10を引っ張ろうとする負荷を該ベースプレート3全面に均等に分散させることができ、該ベースプレート3の家具11天板面と天井12面に対する押圧力を均等にかけることができ、転倒しようとする家具11を正確に、且つ、強力に把持することができるものである。なお、本図では、該支柱2には、角パイプを使用しているが、特にこれに限定するものではなく、例えば、丸パイプ、山形鋼、溝形鋼等でも使用できることは勿論のことである。
【0021】
図5は、本発明に係る家具等の転倒防止装置の他の実施形態の図面である。本発明の転倒防止装置1は、前記家具11の天板面と天井12面との空間部に設置するものであり、前記ベースプレート3は前記ワイヤーロープ10の張設具8によって、それぞれの面に圧接するようにしている。しかし、この空間部の高さが高い場合、該張設具8だけでは、前記ベースプレート3を圧接できない事態が生じる恐れがある。この場合、該ワイヤーロープ10を長いものに交換しても良いが、本実施形態のように、前記支柱2を延伸できるようにしてもよいものである。本実施形態の支柱2は、該支柱2を2分割し、延設金具16で連結するようにしている。分割した該支柱2の端部には複数の孔を設けており、該延設金具16にも複数の孔を設けている。該支柱2と延設金具16とは、固着具17により、結合する。該固着具17として、ボルト、ナットが適切であるが、特にこれに限定するものではなく、ピン等を使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の家具等の転倒防止装置は、対象物や天井にボルト又は木ネジ等で固定したり、粘着剤で固定する必要が無く、しかも、確実に対象物の転倒を防止することができる。対象物として、タンス等の家具は勿論、書棚、食器棚、ロッカー等にも使用でき、木製、金属製のものにも使用できる。また、本転倒防止装置は設置や取り外しが容易に行えるため、頻繁に家具等の配置換えを行う際にも、利便性が良く、各種の家具等の転倒防止装置として利用できるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 転倒防止装置
2 支柱
3 ベースプレート
4 長辺部
5 短辺部
6 環状部材
7 係止具
8 張設具
9 ボルト
10 ワイヤーロープ
11 家具
12 天井
13 壁
14 移動方向
15 押圧力
16 延設金具
17 固着具
C ワイヤーロープ全長
X ベースプレート幅
Y ベースプレート長さ
Z 取付位置
図1
図2
図3
図4
図5