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  • 特開-非拡散型フォトダイオード 図1A
  • 特開-非拡散型フォトダイオード 図1B
  • 特開-非拡散型フォトダイオード 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164531
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】非拡散型フォトダイオード
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/107 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
H01L31/10 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122150
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】110113829
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】517367504
【氏名又は名称】聯亜光電工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】LandMark Optoelectronics Corporation
【住所又は居所原語表記】No.12, Nanke 9th Rd., Shanhua Dist., Tainan Science-Based Industrial Park, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘 皇緯
(72)【発明者】
【氏名】黄 泓文
(72)【発明者】
【氏名】陳 勇超
(72)【発明者】
【氏名】王 奕翔
【テーマコード(参考)】
5F849
【Fターム(参考)】
5F849AA04
5F849AA07
5F849AB07
5F849BA05
5F849XB18
5F849XB38
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明によれば、基板、緩衝層、光吸収層、中間層、及び増倍/窓層を含む非拡散型フォトダイオードが提供される。
【解決手段】緩衝層12は、基板11に設けられる。光吸収層13は、緩衝層に設けられる。中間層14は、光吸収層に設けられ、第1境界を有するとともにI型半導体層またはグラデーション層である。増倍/窓層15は、中間層に設けられ、第2境界を有し、上面視にて第1境界が第2境界を取り囲み、第1境界と第2境界との間の距離が1ミクロン以上である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられた緩衝層と、
前記緩衝層に設けられた光吸収層と、
前記光吸収層に設けられ、第1境界を有するとともにI型半導体層またはグラデーション層である中間層と、
前記中間層に設けられ、第2境界を有し、上面視にて前記第1境界が前記第2境界を取り囲み、前記第1境界と前記第2境界との間の距離が1ミクロン以上である増倍/窓層と、を含む、
非拡散型フォトダイオード。
【請求項2】
前記第1境界と前記第2境界との間の距離は、1ミクロンから15ミクロンである、
請求項1に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項3】
前記第1境界と前記第2境界との間の距離は、2ミクロンから15ミクロンである、
請求項2に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項4】
前記緩衝層は、N型緩衝層であり、
前記光吸収層は、I型光吸収層であり、
前記増倍/窓層は、P型増倍/窓層である、
請求項1に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項5】
前記N型緩衝層は、材質がN型InPを含む、
請求項4に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項6】
前記I型光吸収層は、材質がI型InGaAsを含む、
請求項4に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項7】
前記P型増倍/窓層は、材質がP型InAlAsを含む、
請求項4に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項8】
前記中間層は、材質がI型InPを含むI型半導体層である、
請求項1に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項9】
前記増倍/窓層に設けられた接触層をさらに含む、
請求項1に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項10】
前記接触層は、材質がP型InGaAsを含むP型接触層である、
請求項9に記載の非拡散型フォトダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトダイオードに関し、特に非拡散型フォトダイオードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信で使用されるアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode)には、光吸収層に加えて、増倍/窓層(multiplication/window layer)が設けられる。通常のフォトダイオードと比べ、アバランシェフォトダイオードは、高感度と高速性に優れる。しかし、アバランシェフォトダイオードは、通常、層状構造にキャリアを拡散させることによって増倍/窓層を生成するため、複数のプロセスが必要になる。
【0003】
そして、後発業者は、非拡散型(non-diffusion type、またはas-grown typeとも称する)フォトダイオードを開発した。当該フォトダイオードの増倍/窓層は、拡散によって生成されておらず、直接的に形成される。しかしながら、当該非拡散型フォトダイオードは、大きな暗電流(例えば、約6.51×10-9A)を発生するため、非拡散型フォトダイオードを各種産業に応用することを妨げる。
【0004】
そこで、既存技術に存在する問題を解決することができる非拡散型フォトダイオードを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、中間層と増倍/窓層との間に特定の境界関係を定義することによって暗電流の発生を低減する非拡散型フォトダイオードを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある態様によれば、基板と、前記基板に設けられた緩衝層と、前記緩衝層に設けられた光吸収層と、前記光吸収層に設けられ、第1境界を有するとともにI型半導体層またはグラデーション層である中間層と、前記中間層に設けられ、第2境界を有し、上面視にて前記第1境界が前記第2境界を取り囲み、前記第1境界と前記第2境界との間の距離が1ミクロン以上である増倍/窓層と、を含む非拡散型フォトダイオードが提供される。
【0007】
本発明の態様では、前記第1境界と前記第2境界との間の距離は、1ミクロンから15ミクロンである。
【0008】
本発明の態様では、前記第1境界と前記第2境界との間の距離は、2ミクロンから15ミクロンである。
【0009】
本発明の態様では、前記緩衝層は、N型緩衝層であり、前記光吸収層は、I型光吸収層であり、前記増倍/窓層は、P型増倍/窓層である。
【0010】
本発明の態様では、前記N型緩衝層は、材質がN型InPを含む。
【0011】
本発明の態様では、前記I型光吸収層は、材質がI型InGaAsを含む。
【0012】
本発明の態様では、前記P型増倍/窓層は、材質がP型InAlAsを含む。
【0013】
本発明の態様では、前記中間層は、材質がI型InPを含むI型半導体層である。
【0014】
本発明の態様では、前記非拡散型フォトダイオードは、増倍/窓層に設けられる接触層をさらに含む。
【0015】
本発明の態様では、前記接触層は、材質がP型InGaAsを含むP型接触層である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオードの概略断面図である。
図1B】本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオードの中間層及び増倍/窓層の概略上面図である。
図2】比較例1の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明及びその他の目的、特徴、利点をより理解しやすくするため、本発明の好適実施例を、添付図面を参照しながら以下のとおりに詳細に説明する。なお、本発明で言及される方向用語、例えば、上、下、頂、底、前、後、左、右、内、外、側面、周囲、中央、水平、横方向、垂直、縦方向、軸方向、半径方向、最上層または最下層などは、あくまでも添付図面の方向を示すものにすぎない。よって、使用される方向性の用語は、本発明を説明理解するために用いられるものであり、本発明を限定するものではない。
【0018】
図1Aは、本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオードの概略断面図である。図1Bは、本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオードの中間層及び増倍/窓層の概略上面図である。また、図1Bは、上面視にて中間層と増倍/窓層との間の関係を示し、その他の構造を省略している。本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオード10は、基板11、緩衝層12、光吸収層13、中間層14、及び増倍/窓層15を含む。前記基板11は、例えば、N型基板であってもよい。ここでは、前記基板11は、材質が既存のフォトダイオードに用いられる既存の基板の材質を用いてもよい。前記基板11は、主に、例えば緩衝層12、光吸収層13、中間層14、増倍/窓層15などの非拡散型フォトダイオード10の各層状構造またはデバイスを搭載するためのものである。
【0019】
本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオード10では、緩衝層12が前記基板11に設けられる。実施例では、前記緩衝層12、例えば、N型緩衝層である。前記N型緩衝層は、材質が例えば、N型InP(例えば、N+型InP)を含む。ここでは、前記緩衝層12は、材質が既存のフォトダイオードに用いられる既存の緩衝層の材質を用いてもよい。
【0020】
本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオード10では、光吸収層13が前記緩衝層12に設けられる。実施例では、前記光吸収層13、例えば、I型光吸収層である。前記I型光吸収層は、材質が例えば、I型InGaAsを含む。ここでは、前記光吸収層13は、材質が既存のフォトダイオードに用いられる既存の光吸収層の材質を用いてもよい。
【0021】
本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオード10では、中間層14が前記光吸収層13に設けられるとともに第1境界14Aを有する。前記中間層14は、I型半導体層またはグラデーション層である(graded refractive index layer、GRIN layer)。実施例では、前記中間層14は、例えば、材質がI型InPを含むI型半導体層である。他の実施例では、前記中間層14は、グラデーション層である。ここでは、前記I型半導体層は、材質が既存のフォトダイオードに用いられる既存のI型半導体層の材質を用いてもよい。ここでは、前記グラデーション層は、材質が既存のフォトダイオードに用いられる既存のグラデーションの材質を用いてもよい。
【0022】
本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオード10では、増倍/窓層15がグラデーション層14に設けられるとともに第2境界15Aを有する。上面視(図1Bに示すように)において、前記第1境界14Aは、前記第2境界15Aを取り囲み、前記第1境界14Aと前記第2境界15Aとの間の距離は、1ミクロン以上である。実施例では、前記増倍/窓層15は、材質が例えば、P型InAlAsを含むP型増倍/窓層である。他の実施例では、第1境界14Aと第2境界15Aとの間の距離は、1ミクロンから15ミクロンである。その他の実施例では、第1境界14Aと第2境界15Aとの間の距離は、2ミクロンから15ミクロンである。
【0023】
本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオード10の少なくとも1つの特徴は、中間層14と増倍/窓層15との間の境界関係にある。当該特徴は、非拡散型フォトダイオードの暗電流の改善に用いられる。具体的には、上面視にて(図1B参照)、前記増倍/窓層15の位置は、前記中間層14の位置と重なるとともに、前記増倍/窓層15の面積は、前記中間層14の面積より小さい(即ち、増倍/窓層15と中間層14の間にメサ(mesa)領域が定義される)。言い換えれば、非拡散型フォトダイオードの上面視(例えば、上から下へ見る場合)において、前記中間層14の面積は、第1境界14Aによって囲まれ、前記増倍/窓層15の面積は、第2境界15Aによって囲まれるため、前記第1境界14Aは、第2境界15Aを取り囲む。一方、前記第1境界14Aと前記第2境界15Aとの間の距離Dは、1ミクロン以上である。一例では、前記距離Dは、前記第1境界14Aにおける任意の点から前記第2境界15Aまでの最小距離である。中間層14と増倍/窓層15との間の境界関係(即ち、距離D)を設定することにより、非拡散型フォトダイオード10の暗電流を改善(または低減)することができる。詳細な試験データについては、後述する。
【0024】
実施例では、前記非拡散型フォトダイオード10は、前記増倍/窓層15に設けられる接触層16をさらに含む。前記接触層16は、材質がInAlAsを含むP型接触層である。
【0025】
さらに、本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオード10は、既存のフォトダイオードに設けられる例えば、反射層、充電層、及び鈍化層18、封止層19、金属接点17などのあらゆる層状構造またはデバイスを含んでもよい。
【0026】
本発明に係る実施例の非拡散型フォトダイオードは、暗電流を確実に改善(または低減)することができることを証明するために、いくつかの実施例及び比較例を以下に列挙する。
【0027】
<実施例1>
N型基板(例えば、N-InP基板)を提供し、前記N型基板に緩衝層(例えば、N+型InP層)、光吸収層(例えば、I型InGaAs層)、中間層(例えば、I型半導体層(例えば、I型InP層)またはグラデーション層)、増倍/窓層(例えば、P型InAlAs層)及び接触層(例えば、P型InAlAs層)を順次形成することにより、実施例1の非拡散型フォトダイオードが形成される。その後、既存の半導体プロセス(例えば、エッチングプロセスなど)によって、上面視にて中間層の第1境界が増倍/窓層の第2境界を取り囲むように処理した。ここでは、第1境界と第2境界との間の距離は、約1ミクロンである。
【0028】
その後、実施例1の暗電流を市販の電流測定器により測定した。フォトダイオードが光に当たっていないとき、暗電流を、逆電圧が-5Vである際のバックグラウンド電流値として定義する。なお、暗電流の単位は、アンペア(A)である。測定結果については、下記表1を参照する。
【0029】
【表1】
【0030】
<実施例2~9>
実施例2~9は、下記の相違点を除き、製造方法が実施例1の製造方法とほぼ一致する。相違点:第1境界と第2境界との間の距離が異なる点で相違する。実施例2~9の測定結果については、上記表1を参照する。
【0031】
<比較例1>
比較例1は、下記の相違点を除き、製造方法が実施例1とほぼ一致する。相違点:第1境界と第2境界が重なる(即ち、第1境界と第2境界との間の距離が0である)点で相違する。比較例1において、エッチングプロセスは、中間層14に留まらず、光吸収層13までに直接行われるため、中間層14の境界は、光吸収層13の境界と重なる(図2参照)。比較例1の測定結果については、上記表1を参照する。
【0032】
表1によれば、比較例1と比べ、実施例1は暗電流を約33.3%減少させ、実施例2~9は暗電流を約99.1%~99.8%減少させることが分かった。これにより、実施例1~9は、暗電流を確実に改善する効果を具備する。また、距離Dが2ミクロン以上である場合、暗電流を大幅に低減させることができる。
【0033】
また、本発明に係る実施例で使用される用語、例えば、基板、緩衝層、光吸収層、I型半導体層、グラデーション層、増倍/窓層、接触層、反射層、充電層または金属接点などについては、フォトダイオード関連分野の定義を参照すればよく、本発明は、これらの説明を省略する。
【0034】
また、図1Bの中間層及び増倍/窓層の形状は、円形に形成されているが、これに限定されない。
【0035】
また、本発明で用いられる「増倍/窓層15」は、「増倍層」または「窓層」と称されてもよい。言い換えれば、本発明で用いられる「増倍/窓層15」を、「増倍層」に置き換えてもよいし、「窓層」に置き換えてもよい。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0037】
10 非拡散型フォトダイオード
11 基板
12 緩衝層
13 光吸収層
14 中間層
14A 第1境界
15 増倍/窓層
15A 第2境界
16 接触層
17 金属接点
18 鈍化層
19 封止層
D 距離
図1A
図1B
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられた緩衝層と、
前記緩衝層に設けられた光吸収層と、
前記光吸収層に設けられ、第1境界を有するとともにI型半導体層またはグラデーション層である中間層と、
前記中間層に設けられ、第2境界を有し、上面視にて前記第1境界が前記第2境界を取り囲み、前記第1境界と前記第2境界との間の距離がミクロンから15ミクロンである増倍/窓層と、を含む、
非拡散型フォトダイオード。
【請求項2】
前記緩衝層は、N型緩衝層であり、
前記光吸収層は、I型光吸収層であり、
前記増倍/窓層は、P型増倍/窓層である、
請求項1に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項3】
前記N型緩衝層は、材質がN型InPを含む、
請求項に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項4】
前記I型光吸収層は、材質がI型InGaAsを含む、
請求項に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項5】
前記P型増倍/窓層は、材質がP型InAlAsを含む、
請求項に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項6】
前記中間層は、材質がI型InPを含むI型半導体層である、
請求項1に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項7】
前記増倍/窓層に設けられた接触層をさらに含む、
請求項1に記載の非拡散型フォトダイオード。
【請求項8】
前記接触層は、材質がP型InGaAsを含むP型接触層である、
請求項に記載の非拡散型フォトダイオード。