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特開2022-164565時計可動体を製造するための方法および方法を実施することにより得られる時計可動体
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  • 特開-時計可動体を製造するための方法および方法を実施することにより得られる時計可動体 図1
  • 特開-時計可動体を製造するための方法および方法を実施することにより得られる時計可動体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164565
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】時計可動体を製造するための方法および方法を実施することにより得られる時計可動体
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/14 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
G04B15/14 B
G04B15/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022031472
(22)【出願日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】21168779.3
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ・ニクー
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ロデル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】詳細には微小機械構成要素を、詳細には時計可動体を製造するための方法を提供すること。
【解決手段】本発明による時計可動体10を製造するための方法は、
-周縁部が時計可動体10の幾何形状の輪郭を画定する幾何学的形状に従って、少なくともニッケルを含む第1の材料で第1の薄層11を堆積させるステップと、
-第1の薄層11の面を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層11の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料で中間層12を堆積させるステップと、
-中間層12の面を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層11の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、第1の材料で第2の薄層13を堆積させるステップと
を連続して備え、
第1の薄層11および第2の薄層13は、中間層12よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計ディスク(10)を製造するための方法であって、
-周縁部が前記時計ディスク(10)の幾何形状の輪郭を画定する幾何学的形状に従って、少なくともニッケルを含む第1の材料で第1の薄層(11)を堆積させるステップ(101)と、
-前記第1の薄層(11)の面を覆うように、かつ周縁部が前記第1の薄層(11)の前記幾何学的形状の前記周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料で中間層(12)を堆積させるステップ(102)と、
-前記中間層(12)の面を覆うように、かつ周縁部が前記第1の薄層(11)の前記幾何学的形状の前記周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、前記第1の材料で第2の薄層(13)を堆積させるステップ(103)と
を連続して備え、
-前記第1の薄層(11)および前記第2の薄層(13)は、前記中間層(12)よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
それぞれ、別の時計構成要素と接触することが意図される時計ディスク(10)の少なくとも1つの摩擦面(15)に接触している少なくとも1つの界面(14)で、第1の薄層(11)の上に中間層(12)を重ね合わせ、中間層(12)の上に第2の薄層(13)を重ね合わせる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の薄層(11)を堆積させる前記ステップ(101)、前記中間層(12)を堆積させる前記ステップ(102)、および前記第2の薄層(13)を堆積させる前記ステップ(103)をLIGAにより実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の材料は、ニッケルおよびリンだけから構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の材料のリンの重量割合は、1%~15%の間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の材料は、NiP12から作られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の材料は、純ニッケルだけ、またはニッケルおよびリンだけを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の材料は、9%以下のリンの重量割合を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の材料は、6%~9%の間のリンの重量割合を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の材料は、1%~6%の間のリンの重量割合を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の材料は、0%~1%の間のリンの重量割合を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の材料はホウ素を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の材料は、ニッケルおよびホウ素だけから構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の材料の厚さは、0.2μm~10μmの間である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の薄層(11)、前記中間層(12)、および前記第2の薄層(13)により形成された組立体に1時間~8時間の間、100℃~500℃の間の温度で熱処理を適用する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
脱進機歯車またはアンクルである脱進機ディスクの製造に適用されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
形成された前記時計ディスク(10)が、前記第1の薄層(11)を通した漸進的増加、前記中間層(12)を通して安定した状態、および第2の薄層(13)を通した減少により画定されるリンの濃度勾配を、前記第1の薄層(11)、前記中間層(12)、および前記第2の薄層(13)の配向および堆積成長方向で含むように前記第1の薄層(11)、前記中間層(12)、および前記第2の薄層(13)を堆積させる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実施することにより製造される時計ディスク(10)であって、第1の薄層(11)と第2の薄層(13)の間に置かれた中間層(12)を備え、前記第1の薄層(11)および前記第2の薄層(13)は、少なくともニッケルを含む第1の材料から作られ、前記中間層(12)は、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料から作られ、前記第1の薄層(11)および前記第2の薄層(13)は、前記中間層(12)よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない時計ディスク(10)。
【請求項19】
脱進機歯車またはアンクルを形成する、請求項18に記載の時計ディスク(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小機械構成要素の分野に属し、より正確には時計ディスクの分野に、詳細には少なくとも1つの脱進機歯車、および2つのうち少なくとも一方が非磁性の性質からなる少なくとも1組のアンクルを含む脱進機機構の分野に属する。
【0002】
本発明は、詳細には微小機械構成要素を、詳細には時計ディスクを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術のアンクルを伴う時計脱進機機構は、一般にニッケルめっきを施した鋼から作られた脱進機歯車を備える。これらの脱進機歯車は、磁界に感応する。
【0004】
磁界に対するこの感応性に起因する欠点を克服するために、脱進機歯車は、詳細には(リソグラフィ、電気めっき、成形を意味するドイツ語の「Rontgenlithographie、Galvanoformung、Abformung」に由来する)「LIGA」法により実施されたニッケル-リン(NiP12)などの非磁性の挙動を有する材料を用いて開発されてきた。
【0005】
しかしながら、そのような材料を使用することにより、そのような材料が、詳細には振幅、停止、または経年劣化に関する規則性の観点から性能劣化につながる可能性がある限り、ある種の気候条件で感応性があるようになる可能性がある。
【0006】
この性能劣化は、摩擦トルクを作り出すように互いに協働する、2つの拮抗する構成要素が類似のLIGA材料から作られるときにさらに大きくなる。
【0007】
詳細には、脱進機歯車およびアンクルの経年劣化を制限するために、アンクルの、詳細にはアンクルフォークのどんな汚染も防止すること、および脱進機歯車およびアンクルの接触表面上で、詳細にはアンクルのルビーから作られた送り爪と脱進機歯車の歯面の間の接点上で潤滑剤が存在することを確実にすることが極めて重要である。
【0008】
主要な問題は、脱進機歯車の板に及ぼすエピラメ(epilame)効果が失われることであり、それにより、歯車の歯面とルビーから作られた送り爪の間の接点で油の拡散および潤滑剤の損失を生じさせる。
【0009】
アンクルの送り爪と脱進機歯車の間の接点で潤滑油を安定させることにより、振幅の一貫性を保証できるようにしなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、通常の時計潤滑剤を保持するという技術的問題を、より詳細にはLIGA NiP12から作られた構成要素または類似の非強磁性の構成要素に及ぼす、詳細にはアンクルおよびスイスレバー脱進機歯車に及ぼすエピラメ効果をすべての気候条件で保証するという技術的問題を解決することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、
-周縁部が時計ディスクの幾何形状の輪郭を画定する幾何学的形状に従って、少なくともニッケルを含む第1の材料で第1の薄層を堆積させるステップと、
-第1の薄層の面を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料で中間層を堆積させるステップと、
-中間層の面を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形態を有するように、第1の材料で第2の薄層を堆積させるステップと
を連続的に備える、時計ディスクを製造するための方法に関する。
【0012】
第1の薄層および第2の薄層は、中間層よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない。
【0013】
具体的な実施形態では、本発明は、単体で取り上げる、または技術的に可能な組合せすべてによる、以下の特徴の1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0014】
具体的な実施形態では、それぞれ、別の時計構成要素と接触することが意図される時計ディスクの少なくとも1つの摩擦面と接触している少なくとも1つの界面で、第1の薄層の上に中間層を重ね合わせ、中間層の上に第2の薄層を重ね合わせる。
【0015】
具体的な実施形態では、第1の薄層、中間層、および第2の薄層を堆積させるステップをLIGAにより実施する。
【0016】
具体的な実施形態では、第2の材料は、ニッケルおよびリンだけから構成される。
【0017】
具体的な実施形態では、第2の材料のリンの重量割合は、1%~15%の間である。
【0018】
具体的な実施形態では、第2の材料は、NiP12から作られる。
【0019】
具体的な実施形態では、第1の材料は、純ニッケルだけを、またはニッケルおよびリンだけを含む。
【0020】
具体的な実施形態では、第1の材料は、9%以下のリンの重量割合を備える。
【0021】
具体的な実施形態では、第1の材料は、6%~9%の間のリンの重量割合を備える。
【0022】
具体的な実施形態では、第1の材料は、1%~6%の間のリンの重量割合を備える。
【0023】
具体的な実施形態では、第1の材料は、0%~1%の間のリンの重量割合を備える。
【0024】
具体的な実施形態では、第1の材料はホウ素を備える。
【0025】
ホウ素は、第1の層および第2の層がよりよい摩擦特性および硬度特性を有することができるようにする。
【0026】
具体的な実施形態では、第1の材料は、ニッケルおよびホウ素だけから構成される。
【0027】
具体的な実施形態では、第1の材料の厚さは、0.2μm~10μmの間である。
【0028】
具体的な実施形態では、第1の薄層、中間層、および第2の薄層により形成された組立体に1時間~8時間の間、100℃~500℃の間の温度で熱処理を適用する。
【0029】
具体的な実施形態では、方法は、脱進機歯車またはアンクルである脱進機ディスクの製造に適用される。
【0030】
具体的な実施形態では、形成された時計ディスクが、第1の薄層を通した漸進的増加、中間層を通して安定した状態、および第2の薄層を通した減少により画定されるリン濃度の勾配を、第1の薄層、中間層、および第2の薄層の配向および堆積成長方向で含むように、第1の薄層、中間層、および第2の薄層を堆積させる。
【0031】
別の目的によれば、本発明は、第1の薄層と第2の薄層の間に置かれた中間層を備える、上記で記述する方法を実施することにより製造された時計ディスクに関し、前記薄層は、少なくともニッケルを含む第1の材料から作られ、中間層は、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料から作られ、第1の薄層および第2の薄層は、中間層よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない。
【0032】
具体的な実施形態では、時計ディスクは、脱進機歯車またはアンクルを形成する。
【0033】
本発明の他の特徴および有利な点は、添付図面を参照して、決して限定的でない例として示す以下の詳細な記述を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による時計ディスクを製造するための方法を実施することにより得られる時計ディスクの横断面図を概略的に示す。
図2】本発明による時計ディスクを製造するための方法のステップを例示する流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面は縮尺どおりではないことに留意されたい。
【0036】
本発明は、詳細にはステップを図2の流れ図により示す、時計ディスク10を製造するための方法に関する。
【0037】
製造方法は、
-周縁部が時計ディスク10の幾何形状の輪郭を画定する幾何学的形状に従って、少なくともニッケルを含む第1の材料で第1の薄層11または基板を堆積させるステップ101であって、前記第1の薄層11の厚さは5μm未満であるステップ101と、
-前記第1の薄層11の面を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料で中間層12を堆積させるステップ102と、
-中間層12を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層11の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、第1の材料で第2の薄層13を堆積させるステップ103と
を連続して備える。
【0038】
第2の薄層13の厚さは、図1に概略的に示す時計ディスクにより示すように、第1の薄層11の厚さに実質的に等しく、前記厚さの合計は、中間層12の厚さの数分の1である。
【0039】
好ましくは、第1の薄層11の幾何学的形状の周縁部は、脱進機歯車またはアンクルの幾何形状の輪郭を画定し、その結果、本発明による方法を実施することにより得られる時計ディスク10は、脱進機歯車もしくはアンクル、またはアンクルのつめ石になる。
【0040】
好ましくは、第1の薄層11および第2の薄層13、ならびに中間層12をLIGA法に従って、所定の堆積成長方向に従って第1の薄層11の幾何学的形状が伸展する平面に垂直に堆積させる。
【0041】
好ましくは、第1の薄層11および第2の薄層13、ならびに中間層12は、非磁性の性質を有するように構成される。
【0042】
第1の材料および第2の材料は、必ずしも非磁性ではないことに留意されたく、この場合、各層の厚さが小さいことにより、各層の部分に非磁性の性質が与えられる。
【0043】
本発明の実施形態の例では、第1の薄層11および第2の薄層13を直流電気でニッケルから作ることができる。代わりに、第1の薄層11および第2の薄層13を直流電気でニッケル合金から、たとえばNi-FeまたはNi-Wなどから作ることができる。
【0044】
代わりに、第1の薄層11および第2の薄層13の堆積を、化学ニッケル、たとえば純ニッケル、リンが少ないニッケル-リン、たとえばリンの重量が6%~9%の、リンの重量割合が0%~1%の間もしくは1%~6%の間のNiP6-9、またはニッケル-ホウ素(NiB)を適用するための方法に従って化学的に行うことができる。
【0045】
第1の薄層11および第2の薄層13は、有利には中間層12よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない。
【0046】
この特徴によって、本発明は、通常の気候条件でエピラメの安定性を高めて、エピラメの付着を、その結果任意の通常の時計潤滑剤の保持を高めることができるようにする。
【0047】
その結果、本発明は、ムーブメントの性能を大きく改善できるようにする。
【0048】
実際は、エピラメに及ぼすこれらの効果は、表面上のリンの量が低下するときに得られることがさまざまな試験により実証されている。
【0049】
本発明の実施形態の例では、第1の薄層11および第2の薄層13の厚さは、それぞれ10μm未満、詳細には0.2μm~5μmの間、好ましくは0.2μm~2μmの間である。
【0050】
本発明の実施形態の例では、中間層12は、少なくとも100μmからなる。
【0051】
本発明の実施形態の具体的な例では、中間層12は、式NiPxを有するニッケル-リンから作られ、xは重量で1%~15%であり、より詳細には、xは重量で10%~15%であり、10%~15%という範囲は、コーティングの非磁性の性質を保証できるようにする。
【0052】
好ましくは、中間層12は、NiP12から作られる。
【0053】
中間層12は、ニッケルおよびリンだけから構成できる。さらに中間層12は、直流電気で、または化学的に作ることができる。
【0054】
層からなる組立体により形成された時計ディスク10に熱処理を適用することが可能である。
【0055】
より詳細には、熱処理は、第1の薄層11、中間層12、および第2の薄層13により構成された組立体を1時間~8時間の間、100℃~500℃の間の温度に曝すステップを伴う可能性がある。
【0056】
代わりに、または追加で、第1の薄層11の表面および中間層12の表面に化学的処理を適用して、次の層の、すなわち中間層12および第2の薄層13の付着を容易にするように化学的処理の表面状態特性を修正することが可能である。この化学的処理は、詳細には直流電気で行うことができる。
【0057】
本発明による方法をLIGAにより実施する。
【0058】
本発明は、時計ディスク10の正常なエージング条件、振幅の一貫性、および停止のないことを保証できるようにする。
【0059】
図1に示すように、それぞれ、別の時計ディスクまたは時計構成要素と接触することが意図される時計ディスク10の「摩擦面」15と呼ばれる少なくとも1つの接触面に接触している、「界面」14と呼ばれる少なくとも1つの面で、第1の薄層11の上に中間層12を重ね合わせ、中間層12の上に第2の薄層13を重ね合わせる。用語「接触している」は、界面14および摩擦面15が間隔なしに隣接していることを意味する。換言すれば、界面14および摩擦面15は、共通の縁部で交わる。1つまたは複数の摩擦面15はまた、単一自由度に従って時計ディスク10が枢動または誘導するための、時計ディスク10の誘導表面を構成できる。
【0060】
換言すれば、1つまたは複数の摩擦面15は、第1の薄層11および第2の薄層13の直線部分、ならびに中間層12の直線部分に対応する。好ましくは、時計ディスク10は、いくつかの摩擦面15を含む。
【0061】
その結果、摩擦面15は有利には、第1の薄層11および第2の薄層13の厚さの合計がたとえば最大で10分の1だけ中間層12の厚さに対して相対的に小さい限り、大部分は第2の材料から構成される。
【0062】
この特徴は、良好な摩擦特性を有する、主にニッケル-リンから構成される表面上で摩擦が行われる限り有利である。
【0063】
第1の薄層11および第2の薄層13はまた、時計ディスク10の端面16を形成する、互いに反対側にある面を有する。
【0064】
本発明による方法の別の有利な点は、従来技術の可能な製造方法と比較してコーティングを堆積させるステップをなくすことができるようにする一体形時計ディスクを得るという事実にある。
【0065】
第1の薄層11、中間層12、および第2の薄層13がそれぞれ単一濃度のリンを有する本発明の実施形態の例について上記で記述してきた。
【0066】
しかしながら、本発明の実施形態の別の例では、形成された時計ディスク10が、たとえば第1の薄層11を通した漸進的増加、中間層12を通して安定した状態、および第2の薄層13を通した漸進的減少により画定されるリン濃度の勾配を、第1の薄層11、中間層12、および第2の薄層13の配向および堆積成長方向で含むように、第1の薄層11、中間層12、および第2の薄層13を堆積させることが可能である。
【0067】
濃度勾配は、本発明の記述で上述するリン濃度値を備える。
【0068】
たとえば、リンの濃度は、第1の薄層11の端面16でのゼロの値から中間層12での、重量で最大値である12%まで変化し、次いで第2の薄層13の端面16でゼロの値に到達するように低減する可能性がある。
【符号の説明】
【0069】
10 時計ディスク
11 第1の薄層
12 中間層
13 第2の薄層
14 界面
15 摩擦面
16 端面
図1
図2
【誤訳訂正書】
【提出日】2022-05-06
【誤訳訂正1】
【訂正対象書類名】明細書
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小機械構成要素の分野に属し、より正確には時計可動体の分野に、詳細には少なくとも1つの脱進機歯車、および2つのうち少なくとも一方が非磁性の性質からなる少なくとも1組のアンクルを含む脱進機機構の分野に属する。
【0002】
本発明は、詳細には微小機械構成要素を、詳細には時計可動体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術のアンクルを伴う時計脱進機機構は、一般にニッケルめっきを施した鋼から作られた脱進機歯車を備える。これらの脱進機歯車は、磁界に感応する。
【0004】
磁界に対するこの感応性に起因する欠点を克服するために、脱進機歯車は、詳細には(リソグラフィ、電気めっき、成形を意味するドイツ語の「Rontgenlithographie、Galvanoformung、Abformung」に由来する)「LIGA」法により実施されたニッケル-リン(NiP12)などの非磁性の挙動を有する材料を用いて開発されてきた。
【0005】
しかしながら、そのような材料を使用することにより、そのような材料が、詳細には振幅、停止、または経年劣化に関する規則性の観点から性能劣化につながる可能性がある限り、ある種の気候条件で感応性があるようになる可能性がある。
【0006】
この性能劣化は、摩擦トルクを作り出すように互いに協働する、2つの拮抗する構成要素が類似のLIGA材料から作られるときにさらに大きくなる。
【0007】
詳細には、脱進機歯車およびアンクルの経年劣化を制限するために、アンクルの、詳細にはアンクルフォークのどんな汚染も防止すること、および脱進機歯車およびアンクルの接触表面上で、詳細にはアンクルのルビーから作られた送り爪と脱進機歯車の歯面の間の接点上で潤滑剤が存在することを確実にすることが極めて重要である。
【0008】
主要な問題は、脱進機歯車の板に及ぼすエピラメ(epilame)効果が失われることであり、それにより、歯車の歯面とルビーから作られた送り爪の間の接点で油の拡散および潤滑剤の損失を生じさせる。
【0009】
アンクルの送り爪と脱進機歯車の間の接点で潤滑油を安定させることにより、振幅の一貫性を保証できるようにしなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、通常の時計潤滑剤を保持するという技術的問題を、より詳細にはLIGA NiP12から作られた構成要素または類似の非強磁性の構成要素に及ぼす、詳細にはアンクルおよびスイスレバー脱進機歯車に及ぼすエピラメ効果をすべての気候条件で保証するという技術的問題を解決することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、
-周縁部が時計可動体の幾何形状の輪郭を画定する幾何学的形状に従って、少なくともニッケルを含む第1の材料で第1の薄層を堆積させるステップと、
-第1の薄層の面を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料で中間層を堆積させるステップと、
-中間層の面を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形態を有するように、第1の材料で第2の薄層を堆積させるステップと
を連続的に備える、時計可動体を製造するための方法に関する。
【0012】
第1の薄層および第2の薄層は、中間層よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない。
【0013】
具体的な実施形態では、本発明は、単体で取り上げる、または技術的に可能な組合せすべてによる、以下の特徴の1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0014】
具体的な実施形態では、それぞれ、別の時計構成要素と接触することが意図される時計可動体の少なくとも1つの摩擦面と接触している少なくとも1つの界面で、第1の薄層の上に中間層を重ね合わせ、中間層の上に第2の薄層を重ね合わせる。
【0015】
具体的な実施形態では、第1の薄層、中間層、および第2の薄層を堆積させるステップをLIGAにより実施する。
【0016】
具体的な実施形態では、第2の材料は、ニッケルおよびリンだけから構成される。
【0017】
具体的な実施形態では、第2の材料のリンの重量割合は、1%~15%の間である。
【0018】
具体的な実施形態では、第2の材料は、NiP12から作られる。
【0019】
具体的な実施形態では、第1の材料は、純ニッケルだけを、またはニッケルおよびリンだけを含む。
【0020】
具体的な実施形態では、第1の材料は、9%以下のリンの重量割合を備える。
【0021】
具体的な実施形態では、第1の材料は、6%~9%の間のリンの重量割合を備える。
【0022】
具体的な実施形態では、第1の材料は、1%~6%の間のリンの重量割合を備える。
【0023】
具体的な実施形態では、第1の材料は、0%~1%の間のリンの重量割合を備える。
【0024】
具体的な実施形態では、第1の材料はホウ素を備える。
【0025】
ホウ素は、第1の層および第2の層がよりよい摩擦特性および硬度特性を有することができるようにする。
【0026】
具体的な実施形態では、第1の材料は、ニッケルおよびホウ素だけから構成される。
【0027】
具体的な実施形態では、第1の材料の厚さは、0.2μm~10μmの間である。
【0028】
具体的な実施形態では、第1の薄層、中間層、および第2の薄層により形成された組立体に1時間~8時間の間、100℃~500℃の間の温度で熱処理を適用する。
【0029】
具体的な実施形態では、方法は、脱進機歯車またはアンクルである脱進機可動体の製造に適用される。
【0030】
具体的な実施形態では、形成された時計可動体が、第1の薄層を通した漸進的増加、中間層を通して安定した状態、および第2の薄層を通した減少により画定されるリン濃度の勾配を、第1の薄層、中間層、および第2の薄層の配向および堆積成長方向で含むように、第1の薄層、中間層、および第2の薄層を堆積させる。
【0031】
別の目的によれば、本発明は、第1の薄層と第2の薄層の間に置かれた中間層を備える、上記で記述する方法を実施することにより製造された時計可動体に関し、前記薄層は、少なくともニッケルを含む第1の材料から作られ、中間層は、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料から作られ、第1の薄層および第2の薄層は、中間層よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない。
【0032】
具体的な実施形態では、時計可動体は、脱進機歯車またはアンクルを形成する。
【0033】
本発明の他の特徴および有利な点は、添付図面を参照して、決して限定的でない例として示す以下の詳細な記述を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明による時計可動体を製造するための方法を実施することにより得られる時計可動体の横断面図を概略的に示す。
図2】本発明による時計可動体を製造するための方法のステップを例示する流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面は縮尺どおりではないことに留意されたい。
【0036】
本発明は、詳細にはステップを図2の流れ図により示す、時計可動体10を製造するための方法に関する。
【0037】
製造方法は、
-周縁部が時計可動体10の幾何形状の輪郭を画定する幾何学的形状に従って、少なくともニッケルを含む第1の材料で第1の薄層11または基板を堆積させるステップ101であって、前記第1の薄層11の厚さは5μm未満であるステップ101と、
-前記第1の薄層11の面を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料で中間層12を堆積させるステップ102と、
-中間層12を覆うように、かつ周縁部が第1の薄層11の幾何学的形状の周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、第1の材料で第2の薄層13を堆積させるステップ103と
を連続して備える。
【0038】
第2の薄層13の厚さは、図1に概略的に示す時計可動体により示すように、第1の薄層11の厚さに実質的に等しく、前記厚さの合計は、中間層12の厚さの数分の1である。
【0039】
好ましくは、第1の薄層11の幾何学的形状の周縁部は、脱進機歯車またはアンクルの幾何形状の輪郭を画定し、その結果、本発明による方法を実施することにより得られる時計可動体10は、脱進機歯車もしくはアンクル、またはアンクルのつめ石になる。
【0040】
好ましくは、第1の薄層11および第2の薄層13、ならびに中間層12をLIGA法に従って、所定の堆積成長方向に従って第1の薄層11の幾何学的形状が伸展する平面に垂直に堆積させる。
【0041】
好ましくは、第1の薄層11および第2の薄層13、ならびに中間層12は、非磁性の性質を有するように構成される。
【0042】
第1の材料および第2の材料は、必ずしも非磁性ではないことに留意されたく、この場合、各層の厚さが小さいことにより、各層の部分に非磁性の性質が与えられる。
【0043】
本発明の実施形態の例では、第1の薄層11および第2の薄層13を直流電気でニッケルから作ることができる。代わりに、第1の薄層11および第2の薄層13を直流電気でニッケル合金から、たとえばNi-FeまたはNi-Wなどから作ることができる。
【0044】
代わりに、第1の薄層11および第2の薄層13の堆積を、化学ニッケル、たとえば純ニッケル、リンが少ないニッケル-リン、たとえばリンの重量が6%~9%の、リンの重量割合が0%~1%の間もしくは1%~6%の間のNiP6-9、またはニッケル-ホウ素(NiB)を適用するための方法に従って化学的に行うことができる。
【0045】
第1の薄層11および第2の薄層13は、有利には中間層12よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない。
【0046】
この特徴によって、本発明は、通常の気候条件でエピラメの安定性を高めて、エピラメの付着を、その結果任意の通常の時計潤滑剤の保持を高めることができるようにする。
【0047】
その結果、本発明は、ムーブメントの性能を大きく改善できるようにする。
【0048】
実際は、エピラメに及ぼすこれらの効果は、表面上のリンの量が低下するときに得られることがさまざまな試験により実証されている。
【0049】
本発明の実施形態の例では、第1の薄層11および第2の薄層13の厚さは、それぞれ10μm未満、詳細には0.2μm~5μmの間、好ましくは0.2μm~2μmの間である。
【0050】
本発明の実施形態の例では、中間層12は、少なくとも100μmからなる。
【0051】
本発明の実施形態の具体的な例では、中間層12は、式NiPxを有するニッケル-リンから作られ、xは重量で1%~15%であり、より詳細には、xは重量で10%~15%であり、10%~15%という範囲は、コーティングの非磁性の性質を保証できるようにする。
【0052】
好ましくは、中間層12は、NiP12から作られる。
【0053】
中間層12は、ニッケルおよびリンだけから構成できる。さらに中間層12は、直流電気で、または化学的に作ることができる。
【0054】
層からなる組立体により形成された時計可動体10に熱処理を適用することが可能である。
【0055】
より詳細には、熱処理は、第1の薄層11、中間層12、および第2の薄層13により構成された組立体を1時間~8時間の間、100℃~500℃の間の温度に曝すステップを伴う可能性がある。
【0056】
代わりに、または追加で、第1の薄層11の表面および中間層12の表面に化学的処理を適用して、次の層の、すなわち中間層12および第2の薄層13の付着を容易にするように化学的処理の表面状態特性を修正することが可能である。この化学的処理は、詳細には直流電気で行うことができる。
【0057】
本発明による方法をLIGAにより実施する。
【0058】
本発明は、時計可動体10の正常なエージング条件、振幅の一貫性、および停止のないことを保証できるようにする。
【0059】
図1に示すように、それぞれ、別の時計可動体または時計構成要素と接触することが意図される時計可動体10の「摩擦面」15と呼ばれる少なくとも1つの接触面に接触している、「界面」14と呼ばれる少なくとも1つの面で、第1の薄層11の上に中間層12を重ね合わせ、中間層12の上に第2の薄層13を重ね合わせる。用語「接触している」は、界面14および摩擦面15が間隔なしに隣接していることを意味する。換言すれば、界面14および摩擦面15は、共通の縁部で交わる。1つまたは複数の摩擦面15はまた、単一自由度に従って時計可動体10が枢動または誘導するための、時計可動体10の誘導表面を構成できる。
【0060】
換言すれば、1つまたは複数の摩擦面15は、第1の薄層11および第2の薄層13の直線部分、ならびに中間層12の直線部分に対応する。好ましくは、時計可動体10は、いくつかの摩擦面15を含む。
【0061】
その結果、摩擦面15は有利には、第1の薄層11および第2の薄層13の厚さの合計がたとえば最大で10分の1だけ中間層12の厚さに対して相対的に小さい限り、大部分は第2の材料から構成される。
【0062】
この特徴は、良好な摩擦特性を有する、主にニッケル-リンから構成される表面上で摩擦が行われる限り有利である。
【0063】
第1の薄層11および第2の薄層13はまた、時計可動体10の端面16を形成する、互いに反対側にある面を有する。
【0064】
本発明による方法の別の有利な点は、従来技術の可能な製造方法と比較してコーティングを堆積させるステップをなくすことができるようにする一体形時計可動体を得るという事実にある。
【0065】
第1の薄層11、中間層12、および第2の薄層13がそれぞれ単一濃度のリンを有する本発明の実施形態の例について上記で記述してきた。
【0066】
しかしながら、本発明の実施形態の別の例では、形成された時計可動体10が、たとえば第1の薄層11を通した漸進的増加、中間層12を通して安定した状態、および第2の薄層13を通した漸進的減少により画定されるリン濃度の勾配を、第1の薄層11、中間層12、および第2の薄層13の配向および堆積成長方向で含むように、第1の薄層11、中間層12、および第2の薄層13を堆積させることが可能である。
【0067】
濃度勾配は、本発明の記述で上述するリン濃度値を備える。
【0068】
たとえば、リンの濃度は、第1の薄層11の端面16でのゼロの値から中間層12での、重量で最大値である12%まで変化し、次いで第2の薄層13の端面16でゼロの値に到達するように低減する可能性がある。
【符号の説明】
【0069】
10 時計可動体
11 第1の薄層
12 中間層
13 第2の薄層
14 界面
15 摩擦面
16 端面
【誤訳訂正2】
【訂正対象書類名】特許請求の範囲
【訂正対象項目名】全文
【訂正方法】変更
【訂正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計可動体(10)を製造するための方法であって、
-周縁部が前記時計可動体(10)の幾何形状の輪郭を画定する幾何学的形状に従って、少なくともニッケルを含む第1の材料で第1の薄層(11)を堆積させるステップ(101)と、
-前記第1の薄層(11)の面を覆うように、かつ周縁部が前記第1の薄層(11)の前記幾何学的形状の前記周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料で中間層(12)を堆積させるステップ(102)と、
-前記中間層(12)の面を覆うように、かつ周縁部が前記第1の薄層(11)の前記幾何学的形状の前記周縁部に一致する幾何学的形状を有するように、前記第1の材料で第2の薄層(13)を堆積させるステップ(103)と
を連続して備え、
-前記第1の薄層(11)および前記第2の薄層(13)は、前記中間層(12)よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
それぞれ、別の時計構成要素と接触することが意図される時計可動体(10)の少なくとも1つの摩擦面(15)に接触している少なくとも1つの界面(14)で、第1の薄層(11)の上に中間層(12)を重ね合わせ、中間層(12)の上に第2の薄層(13)を重ね合わせる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の薄層(11)を堆積させる前記ステップ(101)、前記中間層(12)を堆積させる前記ステップ(102)、および前記第2の薄層(13)を堆積させる前記ステップ(103)をLIGAにより実施する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の材料は、ニッケルおよびリンだけから構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の材料のリンの重量割合は、1%~15%の間である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の材料は、NiP12から作られる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の材料は、純ニッケルだけ、またはニッケルおよびリンだけを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の材料は、9%以下のリンの重量割合を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の材料は、6%~9%の間のリンの重量割合を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の材料は、1%~6%の間のリンの重量割合を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の材料は、0%~1%の間のリンの重量割合を備える、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の材料はホウ素を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の材料は、ニッケルおよびホウ素だけから構成される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の材料の厚さは、0.2μm~10μmの間である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の薄層(11)、前記中間層(12)、および前記第2の薄層(13)により形成された組立体に1時間~8時間の間、100℃~500℃の間の温度で熱処理を適用する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
脱進機歯車またはアンクルである脱進機可動体の製造に適用されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
形成された前記時計可動体(10)が、前記第1の薄層(11)を通した漸進的増加、前記中間層(12)を通して安定した状態、および第2の薄層(13)を通した減少により画定されるリンの濃度勾配を、前記第1の薄層(11)、前記中間層(12)、および前記第2の薄層(13)の配向および堆積成長方向で含むように前記第1の薄層(11)、前記中間層(12)、および前記第2の薄層(13)を堆積させる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実施することにより製造される時計可動体(10)であって、第1の薄層(11)と第2の薄層(13)の間に置かれた中間層(12)を備え、前記第1の薄層(11)および前記第2の薄層(13)は、少なくともニッケルを含む第1の材料から作られ、前記中間層(12)は、少なくともニッケルおよびリンを含む第2の材料から作られ、前記第1の薄層(11)および前記第2の薄層(13)は、前記中間層(12)よりもリンが少ない、またはリンをまったく含有しない時計可動体(10)。
【請求項19】
脱進機歯車またはアンクルを形成する、請求項18に記載の時計可動体(10)。
【外国語明細書】