(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164572
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】発進中に車両のドライブトレインの内燃機関を動作させるための方法及び車両
(51)【国際特許分類】
F02D 29/02 20060101AFI20221020BHJP
B60W 20/10 20160101ALI20221020BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
F02D29/02 321B
B60W20/10 ZHV
F01N3/20 K
F01N3/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022042607
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】10 2021 109 520.4
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヴィリング
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ マルティニー
【テーマコード(参考)】
3D202
3G091
3G093
【Fターム(参考)】
3D202BB08
3D202BB09
3D202BB11
3D202CC03
3D202CC47
3D202DD22
3G091AA02
3G091AB01
3G091BA03
3G091CA03
3G091CB09
3G093AA01
3G093BA20
3G093BA21
3G093CA03
3G093DB01
3G093EB01
(57)【要約】
【課題】 発進中に車両のドライブトレインの内燃機関を動作させるための方法及び車両を提供する。
【解決手段】 本発明は、発進中に車両のドライブトレインの内燃機関を動作させるための方法及び車両に関する。車両は、内燃機関の排気ガスを浄化するための排気ガス後処理システムを有する。内燃機関の始動動作後、ドライブトレインは、第1の動作状態で動作される。第1の動作状態では、内燃機関は、アイドリング状態で動作され、排気ガス後処理システムは、内燃機関によって加熱され、及び発進禁止は、有効である。第1の動作状態で有効な発進禁止は、内燃機関を用いた発進を防止する。排気ガス後処理システムの所定の状態に達した後、ドライブトレインは、第2の動作状態で動作される。発進禁止は、第2の動作状態では無効である。それにより、内燃機関を用いた発進は、第2の動作状態において可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進中に車両のドライブトレインの内燃機関を動作させるための方法であって、前記車両は、前記内燃機関の排気ガスを浄化するための排気ガス後処理システムを有し、前記内燃機関の始動動作後、前記ドライブトレインは、第1の動作状態で動作され、前記第1の動作状態では、前記内燃機関は、アイドリング状態で動作され、前記排気ガス後処理システムは、前記内燃機関によって加熱され、及び発進禁止は、有効であり、前記第1の動作状態で有効な前記発進禁止は、前記内燃機関を用いた発進を防止し、前記排気ガス後処理システムの所定の状態に達した後、前記ドライブトレインは、第2の動作状態で動作され、前記発進禁止は、前記第2の動作状態では無効であり、それにより、前記内燃機関を用いた発進は、前記第2の動作状態において可能である、方法。
【請求項2】
前記排気ガス後処理システムは、電気的に加熱可能であり、特に電気的に加熱可能な触媒コンバータを有し、前記排気ガス後処理システムは、前記内燃機関の始動前に電気的に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記内燃機関は、前記排気ガス後処理システムのさらなる所定の状態に達した後にのみ始動され得る、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の動作状態では、運転者によって要求され得る前記内燃機関の最大動力は、前記内燃機関の可能な最大動力未満の値に制限される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記運転者によって要求され得る前記最大動力は、前記排気ガス後処理システムの状態に依存し、特に、前記内燃機関の前記可能な最大動力は、前記排気ガス後処理システムのさらなる所定の状態に達した後、前記運転者によって要求され得る、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記排気ガス後処理システムの前記状態は、前記排気ガス後処理システムの温度に基づいて決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記車両は、電気モータを有し、前記電気モータを用いた発進は、前記排気ガス後処理システムの前記状態に関係なく可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ドライブトレインは、前記内燃機関の他にさらなる駆動アセンブリを有さない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
内燃機関を有するドライブトレインを有する車両、特に請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実施するための車両であって、前記内燃機関の排気ガスを浄化するための排気ガス後処理システムを有し、制御デバイスをさらに有し、前記制御デバイスは、前記内燃機関の始動動作後、前記ドライブトレインが第1の動作状態で動作されるように構成され、前記第1の動作状態では、前記内燃機関は、アイドリング状態で動作され、前記排気ガス後処理システムは、前記内燃機関によって加熱され、及び発進禁止は、有効であり、前記第1の動作状態で有効な前記発進禁止は、前記内燃機関を用いた前記車両の発進を防止し、前記制御デバイスは、前記排気ガス後処理システムの所定の状態に達した後、前記ドライブトレインが第2の動作状態で動作されるように構成され、前記発進禁止は、前記第2の動作状態では無効であり、それにより、前記内燃機関を用いた発進は、前記第2の動作状態において可能である、車両。
【請求項10】
前記ドライブトレインの前記動作状態、及び/又は前記発進禁止の状態、及び/又は要求され得る前記最大動力を表示するための表示手段を有する、請求項9に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発進中に車両のドライブトレインの内燃機関を動作させるための方法及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特に自動車の将来のガス排出量要件への適合の観点から、高い排気ガス排出量が生じる自動車の動作状態、特に自動車の動作状態、特に内燃機関の動作状態を回避する必要がある。特に排気ガス後処理システムの加熱段階(すなわち排気ガス後処理システムがその完全な効果を依然として発揮することができない段階)中、高いガス排出量、いわゆるコールドエミッションが発生する。コールドエミッションのレベルは、顧客の運転スタイル及び排気ガス後処理システムの加熱能力に大きく依存する。そのようなコールドエミッションは、特に、自動車の内燃機関の初期始動後の自動車の最初の発進中に発生する。なぜなら、比較的長期間にわたって自動車が停止した後のこの最初の発進又は最初の始動動作中、排気ガス後処理システムは、排気ガス後処理システムの実際の動作温度又は動作温度窓よりも低い温度にあるためである。排気ガス後処理システムは、動作温度においてのみ、その完全な又は少なくとも許容できる効果を発揮する。したがって、排気ガス後処理システムの動作温度未満では、有害な汚染物質を比較的多く含む排気ガスが排気ガスシステムから出る。
【0003】
(特許文献1)では、内燃機関及び触媒コンバータを有するハイブリッド車両が開示されている。前記文献には、ハイブリッド車両を動作させるための方法が記載されている。ここでは、内燃機関が冷えているときに行われる初期始動動作中、ハイブリッド車両の少なくとも電気的発進が行われる。発進動作前、発進動作中又は発進動作後に内燃機関が始動されて燃焼モードで動作される。燃焼モードは、電気機械の電気的動作とは別であり、触媒コンバータを加熱する役割を果たす。
【0004】
さらに、(特許文献2)には、ハイブリッド車両のドライブトレインを制御するための方法が記載されている。ここでは、内燃機関が冷えているときに行われるハイブリッドドライブの初期始動動作中、ハイブリッド車両の少なくとも電気的発進が行われる。発進動作前、発進動作中又は発進動作後に内燃機関が始動されて燃焼モードで動作される。燃焼モードは、電気機械の電気的動作とは別であり、触媒コンバータを加熱する役割を果たす。
【0005】
(特許文献3)及び(特許文献4)により、さらなる先行技術が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第11 2011 104 708B4号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2009 027 642A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2009 027 641A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第103 33 210A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発進又は始動動作中の特に低いガス排出量によって特徴付けられる方法及び車両を提供することである。特に、本発明による方法は、冷間始動動作(すなわち内燃機関が冷えているときの始動動作)中に内燃機関を動作させるための方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、特許請求項1の特徴を有する方法及び特許請求項9の特徴を有する車両によって達成される。
【0009】
本発明による方法は、車両の発進中に車両のドライブトレインの内燃機関を動作させるための方法である。車両は、内燃機関の排気ガスを浄化するための排気ガス後処理システムを有する。内燃機関の始動動作後、ドライブトレインは、第1の動作状態で動作される。第1の動作状態では、内燃機関は、アイドリング状態で動作される。排気ガス後処理システムは、内燃機関、特にその排気ガスによって加熱される。この第1の動作状態では、発進禁止が有効である。第1の動作状態で有効な発進禁止は、内燃機関を用いた発進を防止する。したがって、車両の発進又は自動車の始動動作が不可能である。発進禁止は、特に、発進禁止が有効であるとき、自動車の運転者がギアを入れることができないように構成され得る。
【0010】
排気ガス後処理システムの所定の状態、特に排気ガス後処理システムの所定の動作温度に達した後、ドライブトレインは、第2の動作状態で動作される。発進禁止は、第2の動作状態では無効である。それにより、内燃機関を用いた発進は、第2の動作状態において可能である。
【0011】
したがって、本発明による方法により、内燃機関の始動動作後、まず排気ガス後処理システムが所定の状態、特に所定の温度に達し、それにより排気ガス後処理システムの効率が高められることが保証される。この期間中、内燃機関を用いて車両を発進させることはできない。それにより、高いガス排出量を伴う、車両の発進を目的とした内燃機関での高い動力需要が回避される。
【0012】
第2の動作状態(すなわち排気ガス後処理システムが所要の効率に達した状態)で初めて、内燃機関を用いた始動が可能になる。このようにして、排気ガス後処理システムの効率が低い状態での発進による高いガス排出量が回避される。
【0013】
第1の動作状態では、内燃機関の回転数に車両の運転者が影響を及ぼすことができず、例えばアクセルペダルを踏んでも内燃機関の回転数が上昇しないことが十分に考えられる。
【0014】
排気ガス後処理システムが電気的に加熱可能であり、特に電気的に加熱可能な触媒コンバータを有し、排気ガス後処理システムが内燃機関の始動前に電気的に加熱される場合に特に有利であると考えられる。これには、内燃機関の排気ガスが排気ガス後処理システムに入る前に、排気ガス後処理システムがすでに高い動作温度になっているという利点がある。さらに、排気ガス後処理システムの加熱が加速される。したがってドライブトレインの第2の動作状態により迅速に達する。電気加熱動作中に発生する熱を排気ガス後処理システムに分散させるために、排気ガス後処理システムにキャリアマスフローも導入されることが十分に考えられる。
【0015】
さらに、排気ガス後処理システムの第2の所定の状態に達した後にのみ、内燃機関が始動され得るか又は始動される場合に有利であると考えられる。
【0016】
特に、第2の動作状態では、運転者によって要求され得る内燃機関の最大動力は、内燃機関の可能な最大動力未満の値に制限されることが企図される。これは、特に、発進中の高いガス排出量を回避するために排気ガス後処理システムの所定の状態で十分であるが、排気ガス後処理をさらに暖めることにより、排気ガス後処理システムの効率をより一層高めることができる場合に有利である。運転者によって要求され得る最大動力が内燃機関の可能な最大動力値未満の値に制限されることにより、内燃機関の高い動力出力による高いガス排出量が回避される。第2の動作状態において、運転者によって要求され得る内燃機関の最大動力が時間の経過と共に連続的に増加することが十分に考えられる。
【0017】
運転者によって要求され得る最大動力が排気ガス後処理システムの状態に依存し、特に、内燃機関の可能な最大動力が、排気ガス後処理システムのさらなる所定の状態に達した後、運転者によって要求され得る場合に有利であると考えられる。
【0018】
排気ガス後処理システムの状態が、排気ガス後処理システムの温度に基づいて、特に触媒コンバータの温度に基づいて決定される場合に有利であると考えられる。
【0019】
車両が電気モータを有し、電気モータを用いた発進が排気ガス後処理システムの状態に関係なく可能である場合に特に有利であると考えられる。
【0020】
しかし、ドライブトレインが内燃機関の他にさらなる駆動アセンブリを有さないことも十分に考えられる。したがって、車両は、純粋に燃焼式の車両である。
【0021】
本発明による車両は、本発明による方法及びその方法の1つ又は複数の有利な実施形態を実施するのに特に適している。車両は、内燃機関を有するドライブトレインを有する。車両は、内燃機関の排気ガスを浄化するための排気ガス後処理システムを有し、且つ制御デバイスをさらに有する。制御デバイスは、内燃機関の始動動作後、ドライブトレインが第1の動作状態で動作されるように構成される。第1の動作状態では、内燃機関は、アイドリング状態で動作され、排気ガス後処理システムは、内燃機関によって加熱され、及び発進禁止は、有効である。第1の動作状態で有効な発進禁止は、内燃機関を用いた車両の発進を防止する。制御デバイスは、排気ガス後処理システムの所定の状態に達した後、ドライブトレインが第2の動作状態で動作されるようにさらに構成される。発進禁止は、第2の動作状態では無効である。それにより、内燃機関を用いた発進は、第2の動作状態において可能である。
【0022】
車両の有利な一実施形態では、車両は、ドライブトレインの動作状態、及び/又は発進禁止の状態、及び/又は要求され得る最大動力を表示するための表示手段を有することが企図される。
【0023】
従属請求項は、さらなる有利な実施形態に関する。
【0024】
以下の図では、本発明を例示的実施形態に基づいて説明するが、それに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】様々な形態の発進を比較するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1では、例として、車両の内燃機関の始動動作後の車両の様々な形態の発進に関する様々な動力曲線を示す。参照番号1で示される曲線により、スポーティな発進の場合の動力曲線を示す。曲線2により、ガス排出量に適合した発進の場合の上限を示す。曲線3により、WLTC試験サイクル(国際調和排出ガス・燃費試験法サイクル)に従った発進の場合の動力曲線を示す。参照番号4で示される曲線により、本発明による発進の場合の動力曲線を示す。
【0027】
図1による図において、曲線2よりも上の領域は、高いガス排出量の範囲に対応する。曲線2よりも下の領域は、低いガス排出量の範囲に対応する。したがって、曲線2よりも下の領域での動力曲線は、ガス排出量の面で有利であるとみなされるべきである。
【0028】
スポーティな発進、すなわちエンジン始動動作の直後にすでに非常に高いエンジン動力を必要とする発進の場合、排気ガス後処理システムが依然として所要の温度になっておらず、排気ガス後処理が比較的不十分又は不完全である。その結果、曲線1に従ったスポーティな始動動作の場合、有害な排出物の排出増加が生じる。
【0029】
本発明による方法では、内燃機関の始動動作後、ドライブトレインが第1の動作状態で動作される。この第1の動作状態では、内燃機関は、アイドリング状態で動作されることが企図される。したがって、この第1の動作状態では、排気ガス後処理システムは、内燃機関によって加熱される。アイドリング動作により、少量の排気ガスのみが排気ガス後処理システムに入る。それにより、排気ガス後処理システムで前記排気ガスを適切に処理することができる。この第1の動作状態では、内燃機関を用いた発進が防止されるように発進禁止が有効になっている。
【0030】
図1によるこの例では、ドライブトレインは、エンジン始動後の第1の時間間隔5、すなわち時点0から約6秒の時点まで第1の動作状態で動作される。この後に第2の時間間隔6が続く。この時間間隔6では、ドライブトレインは、第2の動作状態で動作される。第2の動作状態では、発進禁止が無効になる。したがって、第2の動作状態では、すなわちエンジン始動動作後の約6秒の時点から、内燃機関を用いた発進が可能である。
【0031】
さらに、第2の動作状態、すなわち第2の時間間隔6では、運転者によって要求され得る内燃機関の最大動力は、内燃機関の可能な最大動力未満の値に制限される。このようにして、排気ガス後処理システムの効率を高めるために、排気ガス後処理システムのさらなる加熱を行うことができる。運転者によって要求され得る内燃機関の最大動力は、第2の時間間隔6の範囲内で連続的に増加される。
【符号の説明】
【0032】
1 スポーティな発進の場合の動力曲線
2 ガス排出量に適合した発進の場合の上限
3 WLTCに従った発進の場合の動力曲線
4 本発明による発進の場合の動力曲線
5 第1の時間間隔
6 第2の時間間隔