(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164578
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電極活物質、電極及びその製造方法、二次電池、並びに化合物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/60 20060101AFI20221020BHJP
H01M 4/1399 20100101ALI20221020BHJP
H01M 4/137 20100101ALI20221020BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20221020BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20221020BHJP
H01M 10/054 20100101ALN20221020BHJP
【FI】
H01M4/60
H01M4/1399
H01M4/137
H01M10/0566
H01M10/052
H01M10/054
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046962
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2021070028
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 彩
(72)【発明者】
【氏名】御崎 洋二
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ14
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL12
5H029AL13
5H029AL15
5H029AM02
5H029AM07
5H029CJ16
5H029HJ02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA21
5H050CA26
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB19
5H050GA18
5H050HA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規な有機電極活物質、それを用いた電極及びその製造方法、それらを用いた二次電池、並びにそれらに用いることができる化合物を提供する。
【解決手段】下記式(1)等のいずれかで表される化合物又はそれらの塩を含む、電極活物質。
(式(1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。R
aは、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。R
b及びR
cは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、R
b及びR
cの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。R
1とR
2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R
3とR
4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される化合物又はそれらの塩を含む、電極活物質。
【化1】
(式(1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
aは、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、R
b及びR
cの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。
R
1とR
2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
3とR
4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化2】
(式(2)中、
R
5~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
5とR
6は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
7とR
8は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化3】
(式(3)中、
R
9又はR
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
11は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
9とR
10は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
Xは、ヘテロ原子である。
nは、0~4の整数である。)
【請求項2】
前記アルキル基は、ビニル基である、請求項1に記載の電極活物質。
【請求項3】
前記アリール基は、炭素数5~14の芳香族炭化水素基である、請求項1に記載の電極活物質。
【請求項4】
前記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラシル、又はインデニルから選択される、請求項3に記載の電極活物質。
【請求項5】
前記ヘテロアリール基は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個以上有する、5員環芳香族ヘテロシクリル基又は6員環芳香族ヘテロシクリル基である、請求項1に記載の電極活物質。
【請求項6】
前記5員環芳香族ヘテロシクリル基は、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、又はチアジアゾール基から選択される、請求項5に記載の電極活物質。
【請求項7】
6員環芳香族ヘテロシクリル基は、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、又はピリダジニルから選択される、請求項5に記載の電極活物質。
【請求項8】
前記化合物が、少なくとも1つ以上の-Ra-N(Rb)Rcを含む、請求項1に記載の電極活物質。
【請求項9】
前記-Ra-N(Rb)Rcは、フェニルアミノフェニル基、フェニルアルキルアミノフェニル基、又はジフェニルアミノフェニル基から選択される、請求項8に記載の電極活物質。
【請求項10】
R1とR2がともに1つの環構造を形成する場合、R3とR4がともに1つの環構造を形成する場合、R5とR6がともに1つの環構造を形成する場合、R7とR8がともに1つの環構造を形成する場合、又は、R9とR10がともに1つの環構造を形成する場合、前記環構造は、p-ベンゾキノン構造である、請求項1に記載の電極活物質。
【請求項11】
前記電極活物質は、正極活物質として用いられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の電極活物質。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電極活物質を含む、電極。
【請求項13】
前記電極は、正極である、請求項12に記載の電極。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の電極、前記電極の対極、及び電解液を含む、二次電池。
【請求項15】
下記式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される化合物又はそれらの塩。
【化4】
(式(1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
aは、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、R
b及びR
cの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。
R
1とR
2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
3とR
4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化5】
(式(2)中、
R
5~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
5とR
6は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
7とR
8は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化6】
(式(3)中、
R
9又はR
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
11は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
9とR
10は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
Xは、ヘテロ原子である。
nは、0~4の整数である。)
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項に記載の電極活物質に電圧を印加することで多量化させる工程を含む、電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質等に使用可能な、電圧の印加により多量化が可能な有機電極活物質、それを用いた正極等の電極及びその製造方法、それらを用いた二次電池、並びにそれらに用いることができる電圧の印加により多量化が可能な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー問題やCO2の排出削減を解決する上で電気エネルギーの高効率利用は重要な課題である。また、近年、携帯電話やスマートフォン、無線家庭電気機器、電気自動車等、電池および電源を必要とする多種多様な機器が開発され、それらに使用される二次電池に対する需要も増加している。さらに、電子製品の小型化、軽量化に伴い、高エネルギー密度を示す二次電池が求められ、その中でもリチウムイオン二次電池は特に注目を集めている。(例えば、非特許文献1)。リチウムイオン二次電池には、高容量、高エネルギー密度、高サイクル特性、安全性や信頼性などの特性が求められている。
【0003】
【非特許文献1】Nature,2008,451,652-657.“Building better batteries”M.Armand,J.M.Tarascon
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情に照らし、新規な有機電極活物質、それを用いた電極及びその製造方法、それらを用いた二次電池、並びにそれらに用いることができる化合物を提供すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示す化合物ないし電極活物質の創製に成功し、上記電極活物質等により上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記に掲げる電極活物質等を提供する。
【0007】
[1]
下記式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される化合物又はそれらの塩を含む、電極活物質。
【化1】
(式(1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
aは、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、R
b及びR
cの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。
R
1とR
2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
3とR
4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化2】
(式(2)中、
R
5~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
5とR
6は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
7とR
8は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化3】
(式(3)中、
R
9又はR
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
11は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
9とR
10は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
Xは、ヘテロ原子である。
nは、0~4の整数である。)
【0008】
[2]
上記アルキル基は、ビニル基である、[1]に記載の電極活物質。
【0009】
[3]
上記アリール基は、炭素数5~14の芳香族炭化水素基である、[1]に記載の電極活物質。
【0010】
[4]
上記アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラシル、又はインデニルから選択される、[3]に記載の電極活物質。
【0011】
[5]
上記ヘテロアリール基は、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個以上有する、5員環芳香族ヘテロシクリル基又は6員環芳香族ヘテロシクリル基である、[1]に記載の電極活物質。
【0012】
[6]
上記5員環芳香族ヘテロシクリル基は、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、又はチアジアゾール基から選択される、[5]に記載の電極活物質。
【0013】
[7]
6員環芳香族ヘテロシクリル基は、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、又はピリダジニルから選択される、[5]に記載の電極活物質。
【0014】
[8]
上記化合物が、少なくとも1つ以上の-Ra-N(Rb)Rcを含む、[1]に記載の電極活物質。
【0015】
[9]
上記-Ra-N(Rb)Rcは、フェニルアミノフェニル基、フェニルアルキルアミノフェニル基、又はジフェニルアミノフェニル基から選択される、[8]に記載の電極活物質。
【0016】
[10]
R1とR2がともに1つの環構造を形成する場合、R3とR4がともに1つの環構造を形成する場合、R5とR6がともに1つの環構造を形成する場合、R7とR8がともに1つの環構造を形成する場合、又は、R9とR10がともに1つの環構造を形成する場合、上記環構造は、p-ベンゾキノン構造である、[1]に記載の電極活物質。
【0017】
[11]
上記電極活物質は、正極活物質として用いられる、[1]~[10]のいずれか1項に記載の電極活物質。
【0018】
[12]
[1]~[11]のいずれか1項に記載の電極活物質を含む、電極。
【0019】
[13]
上記電極は、正極である、[12]に記載の電極。
【0020】
[14]
[12]又は[13]に記載の電極、上記電極の対極、及び電解液を含む、二次電池。
【0021】
[15]
下記式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される化合物又はそれらの塩。
【化4】
(式(1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
aは、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、R
b及びR
cの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。
R
1とR
2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
3とR
4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化5】
(式(2)中、
R
5~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
5とR
6は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
7とR
8は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化6】
(式(3)中、
R
9又はR
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
11は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
9とR
10は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子である。
nは、0~4の整数である。)
【0022】
[16]
[1]~[11]のいずれか1項に記載の電極活物質に電圧を印加することで多量化させる工程を含む、電極の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電極活物質を用いることにより、電解液への溶出が生じにくく、高いサイクル特性と高容量及び高エネルギー密度を有する正極などの電極を作成することができる。
【0024】
また、本発明の電極は、上記電極活物質を含むことから、電極活物質が電解液に溶出しにくく、高いサイクル特性と高容量及び高エネルギー密度を有する電極となる。
【0025】
また、本発明の二次電池は、上記電極を含むことから、電極活物質が電解液に溶出しにくく、高いサイクル特性と高容量及び高エネルギー密度を有する二次電池となる。
【0026】
また、本発明の化合物は、電解液への溶出が生じにくく、高いサイクル特性と高容量及び高エネルギー密度を有する電極の製造に好適な電極活物質として用いることができ得る。
【0027】
また、本発明の電極の製造方法を用いることにより、上記電極を簡便に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施例1における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例1における充放電特性の測定結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は、実施例1におけるサイクル特性の測定結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例2における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例2における充放電特性の測定結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例2におけるサイクル特性の測定結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例3における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例3における充放電特性の測定結果を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施例3におけるサイクル特性の測定結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施例4における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施例5における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例6における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例6における充放電特性の測定結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施例6におけるサイクル特性の測定結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施例8における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例8における充放電特性の測定結果を示すグラフである。
【
図17】
図17は、実施例8におけるサイクル特性の測定結果を示すグラフである。
【
図18】
図18は、実施例9における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図19】
図19は、実施例9における充放電特性の測定結果を示すグラフである。
【
図20】
図20は、実施例9におけるサイクル特性の測定結果を示すグラフである。
【
図21】
図21は、実施例10における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図22】
図22は、実施例1における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【
図23】
図23は、実施例2における酸化還元特性の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0030】
〔化合物〕
本発明の化合物又はそれらの塩は、下記式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される化合物(以下、それぞれ「化合物(1)」、「化合物(2)」、「化合物(3)」ともいう。)である。
【化7】
(式(1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
aは、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、R
b及びR
cの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。
R
1とR
2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
3とR
4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化8】
(式(2)中、
R
5~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
5とR
6は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
7とR
8は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化9】
(式(3)中、
R
9又はR
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
11は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
9とR
10は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
Xは、ヘテロ原子である。
nは、0~4の整数である。)
【0031】
上記化合物は、適宜、当該構造の一部又は全部が置換された置換体、水和物等の溶媒和物などの誘導体も含む。
【0032】
〔化合物(1)〕
化合物1は、下記式(1)で表される化合物である。
【化10】
(式(1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
aは、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、R
b及びR
cの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。
R
1とR
2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
3とR
4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【0033】
上記式(1)において、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-Ra-N(Rb)Rcである。
【0034】
上記R1~R4で表されるアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基があげられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ビニル基、アリル基等をあげることができる。
【0035】
上記R1~R4で表されるチオアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のチオアルキル基があげられ、例えば、チオメチル基、チオエチル基、チオヘキシル基、エチレンジチオ基等をあげることができる。
【0036】
上記R1~R4で表されるアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基があげられ、例えば、メトキシ基、エトキシキ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、エチレンジオキシ基等をあげることができる。
【0037】
上記R1~R4で表されるアリール基としては、炭素数5~14の芳香族炭化水素基等があげられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラシル、又はインデニル等をあげることができる。好ましくは、フェニル基等をあげることができる。
【0038】
上記R1~R4で表されるヘテロアリール基としては、例えば、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個以上有する、5員環芳香族ヘテロシクリル基又は6員環芳香族ヘテロシクリル基等をあげることができる。
【0039】
上記5員環芳香族ヘテロシクリル基としては、例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、又はチアジアゾール基等をあげることができる。なかでも、
【0040】
上記6員環芳香族ヘテロシクリル基としては、例えば、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、又はピリダジニル等をあげることができる。
【0041】
上記R
1~R
4としての1、4―ジチアフルベニル基としては、以下で表される基である。
【化11】
*は結合箇所である。
【0042】
上記R1~R4で表される-Ra-N(Rb)Rc基におけるRaとしては、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。
【0043】
上記2価のアリール基としては、例えば、炭素数5~14の芳香族炭化水素基の芳香環から水素原子を1つ除いた基等があげられ、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラシレン、又はインデニレン等をあげることができる。好ましくは、フェニレン基等をあげることができる。
【0044】
上記2価のヘテロアリール基としては、例えば、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個以上有する、5員環芳香族ヘテロシクリル基又は6員環芳香族ヘテロシクリル基の芳香環から水素原子を1つ除いた基等をあげることができる。
【0045】
上記5員環芳香族ヘテロシクリレン基の芳香環から水素原子を1つ除いた基としては、例えば、ピロリレン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、フリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、又はチアジアゾール基等の芳香環から水素原子を1つ除いた基等をあげることができる。
【0046】
上記6員環芳香族ヘテロシクリル基の芳香環から水素原子を1つ除いた基としては、例えば、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、又はピリダジニル等の芳香環から水素原子を1つ除いた基等をあげることができる。
【0047】
上記-Ra-N(Rb)Rcとしては、より具体的には、例えば、フェニルアミノフェニル基、フェニルアルキルアミノフェニル基、又はジフェニルアミノフェニル基等をあげることができる。
【0048】
上記式(1)において、少なくとも1つ以上の-Ra-N(Rb)Rcを含むことが好ましい。
【0049】
上記R1~R4で表される-Ra-N(Rb)Rc基におけるRb及びRcとしては、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、Rb及びRcの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。これらの、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基については、それぞれ上述の各基と同様である。
【0050】
上記式(1)において、R1とR2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R1とR2がともに1つの環構造を形成する場合、上記環構造は、例えば、o-ベンゾキノン構造、p-ベンゾキノン構造等があげられ、なかでも、p-ベンゾキノン構造であることが好ましい。
【0051】
上記式(1)において、R3とR4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R3とR4がともに1つの環構造を形成する場合、上記環構造は、例えば、o-ベンゾキノン構造、p-ベンゾキノン構造等があげられ、なかでも、p-ベンゾキノン構造であることが好ましい。
【0052】
上記式(1)において、R1~R4は、少なくとも1つ以上のチエニル基、ピリジニル基、1、4―ジチアフルベニル基、又はジフェニルアミノフェニル基を含むことが好ましい。なかでも、少なくとも1つ以上の1、4―ジチアフルベニル基、又はジフェニルアミノフェニル基を含むことが特に好ましい。
【0053】
上記化合物(1)として、例えば、下記のものをあげることができる。
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0054】
(化合物(2))
化合物(2)は、下記式(2)で表される化合物である。
【化16】
(式(2)中、
R
5~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
5とR
6は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
7とR
8は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【0055】
上記式(2)において、R5~R8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-Ra-N(Rb)Rcである。
【0056】
上記R5~R8で表されるアルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、及び、ヘテロアリール基は、それぞれ上記式(1)における各基と同様である。
【0057】
上記R5~R8で表されるRa
、Rb
、及びRcは、それぞれ上記式(1)における各基と同様である。
【0058】
上記式(2)において、少なくとも1つ以上の-Ra-N(Rb)Rcを含むことが好ましい。
【0059】
上記式(2)において、R5とR6は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R5とR6がともに1つの環構造を形成する場合、上記環構造は、例えば、o-ベンゾキノン構造、p-ベンゾキノン構造等あげられ、なかでも、p-ベンゾキノン構造であることが好ましい。
【0060】
上記式(2)において、R7とR8は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R7とR8がともに1つの環構造を形成する場合、上記環構造は、例えば、o-ベンゾキノン構造、p-ベンゾキノン構造等があげられ、なかでも、p-ベンゾキノン構造であることが好ましい。
【0061】
上記式(2)において、R1~R4は、少なくとも1つ以上のチエニル基、ピリジニル基、1、4―ジチアフルベニル基、又はジフェニルアミノフェニル基を含むことが好ましい。なかでも、少なくとも1つ以上の1、4―ジチアフルベニル基、又はジフェニルアミノフェニル基を含むことが特に好ましい。
【0062】
上記化合物(2)として、例えば、下記のものをあげることができる。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0063】
(化合物(3))
化合物(3)は、下記式(3)で表される化合物である。
【化21】
(式(3)中、
R
9又はR
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
11は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
9とR
10は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
Xは、ヘテロ原子である。
nは、0~4の整数である。)
【0064】
上記式(3)において、R9又はR10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-Ra-N(Rb)Rcである。
【0065】
上記R9又はR10で表されるアルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、及び、ヘテロアリール基は、それぞれ上記式(1)における各基と同様である。
【0066】
上記R9又はR10で表されるRa
、Rb
、及びRcは、それぞれ上記式(1)における各基と同様である。
【0067】
上記式(3)において、R11は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-Ra-N(Rb)Rcである。
【0068】
上記R11で表されるアルキル基、アリール基、及び、ヘテロアリール基は、それぞれ上記式(1)における各基と同様である。
【0069】
上記R11で表されるRa
、Rb
、及びRcは、それぞれ上記式(1)における各基と同様である。
【0070】
上記式(3)において、少なくとも1つ以上の-Ra-N(Rb)Rcを含むことが好ましい。
【0071】
上記式(3)において、R9とR10は、ともに1つの環構造を形成してもよい。R9とR10がともに1つの環構造を形成する場合、上記環構造は、例えば、o-ベンゾキノン構造、p-ベンゾキノン構造等があげられ、なかでも、p-ベンゾキノン構造であることが好ましい。
【0072】
上記式(3)において、Xは、ヘテロ原子である。
【0073】
上記ヘテロ原子は、炭素原子及び水素原子以外の原子であり、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及び、リン原子等をあげることができる。
【0074】
上記式(3)において、nは、0~4の整数である。
【0075】
上記式(3)において、R1~R4は、少なくとも1つ以上のチエニル基、ピリジニル基、1、4―ジチアフルベニル基、又はジフェニルアミノフェニル基を含むことが好ましい。なかでも、少なくとも1つ以上の1、4―ジチアフルベニル基、又はジフェニルアミノフェニル基を含むことが特に好ましい。
【0076】
上記化合物(3)として、例えば、下記のものをあげることができる。
【化22】
【化23】
【化24】
【0077】
〔化合物の塩等〕
また、本発明の化合物の塩とは、上記化合物の一部又は全体が塩の形態となっているものをいう。例えば、上記化合物のアミノ基部分がアンモニウムカチオンとなり、カウンターアニオンとしてハロゲンイオンや有機カチオン、無機カチオン等と形成する塩の形態等をあげることができる。
【0078】
また、本発明において、上記化合物には、分子内の小部分の化学変化によって生成する誘導体も含み、簡易な構造置換体、付加体、水和物などを含み、また類縁体とよばれるものも含む。
【0079】
また、上記化合物の分子量は、例えば、3000以下であり、2000以下であり、1000以下とすることができ得る。
【0080】
〔化合物の製造方法〕
本発明の化合物は、公知の手法を適宜用いて製造することができる。
【0081】
〔電極活物質〕
本発明の電極活物質は、下記式(1)、(2)、(3)のいずれかで表される化合物又はそれらの塩を含む。
【化25】
(式(1)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
aは、2価のアリール基、又は2価のヘテロアリール基である。
R
b及びR
cは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、R
b及びR
cの少なくとも1つは、アリール基、又はヘテロアリール基である。
R
1とR
2は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
3とR
4は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化26】
(式(2)中、
R
5~R
8は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
5とR
6は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
R
7とR
8は、ともに1つの環構造を形成してもよい。)
【化27】
(式(3)中、
R
9又はR
10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
11は、複数存在する場合はそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、1、4―ジチアフルベニル基、又は-R
a-N(R
b)R
cである。
R
a
、R
b
、及びR
cは、式(1)と同様である。
R
9とR
10は、ともに1つの環構造を形成してもよい。
Xは、ヘテロ原子である。
nは、0~4の整数である。)
【0082】
本発明の電極活物質は、この推察以外の作用機序の場合を権利範囲から排除する意図ではないが、充放電時に電池(電極)内部で多量化(ないし化学結合形成)し、電解液への溶出が生じにくくなり、これにより、高いサイクル特性と高容量及び高エネルギー密度を有する正極などの電極を作成することができると推察される。
【0083】
上記式(1)、(2)、(3)における各要素、及び塩については、それぞれ上述の化合物(1)、(2)、(3)における記載と同様である。
【0084】
上記電極活物質は、上記化合物(1)、(2)、(3)を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
上記電極活物質は、適宜、他の電極活物質と組みわせて使用できる。
【0086】
上記電極活物質は、それが含まれる電極の電極活物質総量を100質量部とする場合、上記化合物又は塩の総含有量は、例えば、50~100質量部とすることができ、80~100質量部であってもよい。
【0087】
また、上記電極活物質は、正極活物質として用いられることが好ましい。
【0088】
また、本発明の電極活物質は、電圧を印加することで多量化が可能な電極活物質である。
【0089】
〔電極〕
本発明の電極は、上記電極活物質を含む。
【0090】
本発明の電極は、この推察以外の作用機序の場合を権利範囲から排除する意図ではないが、当該電極に含まれる上記電極活物質が、充放電時に電池(電極)内部で多量化(ないし化学結合形成)し、電解液への溶出が生じにくくなり、これにより、高いサイクル特性と高容量及び高エネルギー密度を有する正極などの電極となっていると推察される。
【0091】
上記電極は、例えば、上記電極が正極である場合、正極集電体と正極活物質層により構成することができる。この場合、上記正極活物質としての電極活物質と、必要に応じて導電材、結着剤等を含有する正極活物質層を、正極集電体の片面又は両面に配置した構成とすることができ得る。
【0092】
上記正極活物質層は、例えば、正極活物質と必要に応じて導電剤及び結着剤を混合してシート状に成形し、金属箔、金属メッシュ等からなる正極集電体に圧着すること等で形成することができ得る。また、上記正極活物質と、必要に応じて導電材及び結着剤とを、例えば、メノウ乳鉢等により混合し、例えば、金属箔、金属メッシュ等からなる正極集電体に圧着して正極活物質層を形成し、必要に応じて公知の加工工程を経て製造することができる。
【0093】
上記導電材としては、例えば、公知のリチウムイオン二次電池と同様に、黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、カーボンナノチューブ(各種の多層又は単層のカーボンナノチューブ)、非晶質炭素材料、繊維状炭素(気相成長炭素繊維、ピッチを紡糸した後に炭化処理して得られる炭素繊維等)等を用いることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0094】
上記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0095】
また、圧着時に電極と装置とのスタッキング抑制のために、有機溶媒を数滴滴下することもできる。上記有機溶媒としては、特に制限はなく、ヘキサン、エタノール等をあげることができる。
【0096】
上記正極活物質層において、例えば、上記正極活物質が5~90質量%(または10~80質量%)、導電材が5~90質量%(または10~80質量%)、結着剤が1~20質量%(または5~15質量%)とすることができる。
【0097】
上記正極活物質層の厚みは、正極集電体の片面あたり、例えば、0.1~0.5mmとすることが好ましい。
【0098】
上記正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金からなる箔、メッシュ、パンチドメタル、エキスパンドメタル等をあげることができる。例えば、厚みが10~200μmのアルミニウムメッシュが好適に用いられる。
【0099】
本発明の電極を負極として用いる場合、後述の負極の欄の負極活物質等の記載を、適宜準じて用いることができる。
【0100】
また、本発明の電極は、電圧を印加することで多量化が可能な電極活物質を含む電極である。
【0101】
〔電極の製造方法〕
本発明の電極の製造方法は、上記電極活物質に電圧を印加することで多量化(ないし化学結合形成)させる工程を含む。
【0102】
本発明の電極の製造方法は、この推察以外の作用機序の場合を権利範囲から排除する意図ではないが、充放電時に電池(電極)内部で多量化(ないし化学結合形成)し、電解液への溶出が生じにくくなり、これにより、高いサイクル特性と高容量及び高エネルギー密度を有する正極などの電極を簡便に得ることができると推察される。
【0103】
上記工程における電圧を印加する手法は、公知の二次電池における電圧の印加する手法を適宜用いることができ得る。
【0104】
〔二次電池〕
本発明の二次電池は、上記電極、上記電極の対極、及び電解液を含む。
【0105】
本発明の二次電池は、上記電極を含むことから、電極活物質が電解液に溶出しにくく、高いサイクル特性と高容量及び高エネルギー密度を有する二次電池となる。
【0106】
上記二次電池は、例えば、公知の二次電池と同様に、上記電極の他、その対極及び電解液により構成することができる。
【0107】
本発明の電極を正極として用いる場合の対極としての負極は、公知の負極を適宜用いることができる。
本発明の電極を負極として用いる場合、上述の電極の欄の正極活物質等の記載を、適宜準じて用いることができる。
【0108】
上記対極としての負極としては、公知の二次電池に使用されている負極を適宜用いることができる。
【0109】
上記負極としては、例えば、負極集電体と負極活物質層により構成することができる。この場合、上記負極活物質と、必要に応じて導電材、結着剤等を含有する負極活物質層を、負極集電体の片面又は両面に配置した構成とすることができ得る。
【0110】
上記負極活物質層は、例えば、負極活物質と必要に応じて導電剤及び結着剤を混合してシート状に成形し、金属箔、金属メッシュ等からなる負極集電体に圧着すること等で形成することができ得る。また、上記負極活物質と、必要に応じて導電材及び結着剤とを、例えば、メノウ乳鉢等により混合し、例えば、金属箔、金属メッシュ等からなる負極集電体に圧着して負極活物質層を形成し、必要に応じて公知の加工工程を経て製造することができる。
【0111】
負極活物質としては、特に制限されず、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛等)、難焼結性炭素、ナトリウム金属、カリウム金属、スズやシリコン及びこれらを含む合金、SiO、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、ロジソン酸、アントラルフィン、ピロメリット酸ジイミド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、テレフタル酸のリチウム塩、ポリ(アントラキノニルスルフィド)等をあげることができる。
【0112】
また、例えば、金属ナトリウム二次電池の場合には、ナトリウム金属、ナトリウム合金等を用いることができる。また、例えば、金属カリウム二次電池の場合には、カリウム金属、カリウム合金等を用いることができる。また、例えば、その他ナトリウム又はカリウムイオン二次電池の場合には、ナトリウムイオン又はカリウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料(黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛等)、難焼結性炭素、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、ロジソン酸、アントラルフィン、ピロメリット酸ジイミド、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、テレフタル酸のリチウム塩、ポリ(アントラキノニルスルフィド)等)等を活物質として用いることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0113】
上記負極活物質層は、例えば、負極活物質と必要に応じて導電剤及び結着剤を混合してシート状に成形し、金属箔、金属メッシュ等からなる負極集電体に圧着すること等で形成することができ得る。また、上記負極活物質と、必要に応じて導電材及び結着剤とを、例えば、メノウ乳鉢等により混合し、例えば、金属箔、金属メッシュ等からなる負極集電体に圧着して負極活物質層を形成し、必要に応じて公知の加工工程を経て製造することができる。
【0114】
上記導電材としては、例えば、公知のリチウムイオン二次電池と同様に、黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック等)、カーボンナノチューブ(各種の多層又は単層のカーボンナノチューブ)、非晶質炭素材料、繊維状炭素(気相成長炭素繊維、ピッチを紡糸した後に炭化処理して得られる炭素繊維等)等を用いることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0115】
上記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0116】
また、圧着時に電極と装置とのスタッキング抑制のために、有機溶媒を数滴滴下することもできる。上記有機溶媒としては、特に制限はなく、ヘキサン、エタノール等をあげることができる。
【0117】
上記負極活物質層において、例えば、上記負極活物質が5~90質量%(または10~80質量%)、導電材が5~90質量%(または10~80質量%)、結着剤が1~20質量%(または5~15質量%)とすることができる。
【0118】
上記負極活物質層の厚みは、負極集電体の片面あたり、例えば、0.1~0.5mmとすることが好ましい。
【0119】
負極集電体としては、例えば、リチウム、アルミニウム、ステンレススチール、ニッケル、チタン又はこれらの合金からなる箔、メッシュ、パンチドメタル、エキスパンドメタル等をあげることができる。例えば、厚みが10~200μmのステンレススチールメッシュが好適に用いられる。
【0120】
上記電解液としては、例えば、公知の二次電池に用いられる電解液を適宜用いることができる。
【0121】
電解液中には、例えば、公知の二次電池に用いられる電解質塩が含まれ得る。上記電解質塩としては、例えば、NaPF6、NaBF4、NaClO4、NaN(SO2CF3)2(NaTFSI)、NaN(SO2F)2(NaFSI)、KPF6、KBF4、KClO4、KN(SO2CF3)2(KTFSI)、KN(SO2F)2(KFSI)等をあげることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0122】
電解液中の電解質塩の濃度は特に制限されない。サイクル特性をさらに向上させる観点からは、1.0~100mol/Lとすることができ、1.5~3.0mol/Lとすることができる。
【0123】
上記電解液に用いる溶媒としては、例えば、公知の二次電池に用いられる電解質塩等をあげることができる。上記溶媒として、例えば、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルエーテル、エチルメチルカーボネート、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-バレロラクトン、アセトニトリル、2-メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、アジポニトリル、グルタロニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、亜硝酸エチレン、スルホラン、2-メチルスルホラン、ニトロエタン、ニトロメタン、N-メチルオキサゾリジノン、N-メチルピロリジノン、トリメチルホスフェート等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0124】
上記電解液としては、例えば、適宜、イオン性液体を用いることができる。上記イオン性液体としては、例えば、アンモニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ピラゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、モルホリニウム等のカチオンと、BF4
-、CF3BF3
-、C2F5BF3
-、C3F7BF3
-、C4F9BF3
-、CF3OC2F4BF3
-、CH3COO-、CF3COO-、PF6
-、OTf-(トリフラート)、NO3
-、Br-、Cl-、N(SO2F)2
-(FSI-)、N(SO2CF3)2
-(TFSI-)、N(CN)2
-、C(CN)3
-等のアニオンとからなるイオン液体等をあげることができる
【0125】
また、上記二次電池において、適宜、セパレータを含めることができる。
【0126】
上記した正極と負極は、例えば、上記セパレータを介在させつつ積層した積層電極体や、さらにこれを渦巻状に巻回した巻回電極体の形などで用いられ得る。
【0127】
上記セパレータとしては、例えば、公知の二次電池に用いられるセパレータを適宜用いることができる。例えば、多孔質セパレータ膜や、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ガラス等の1種又は複数を含む微多孔フィルムや不織布、フィルター等をあげることができる。
【0128】
上記二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、又はカリウムイオン二次電池等であることが好ましい。
【0129】
なお、本発明において、「リチウムイオン二次電池」とは、非水電解液を使用した「非水リチウムイオン二次電池」を意味する。また、本発明において、「ナトリウムイオン二次電池」とは、負極材料として金属ナトリウムを用いた「金属ナトリウム二次電池」も包含する概念であり、非水電解液を使用した「非水ナトリウムイオン二次電池」を意味する。また、本発明において、「カリウムイオン二次電池」とは、負極材料として金属カリウム又を用いた「金属カリウム二次電池」も包含する概念であり、非水電解液を使用した「非水カリウムイオン二次電池」を意味する
【0130】
〔二次電池の製造方法〕
本発明の二次電池は、上記電極、上記電極の対極、及び電解液を備えるよう、公知の手法により適宜製造することができる。
【実施例0131】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0132】
【0133】
特に断らない限り、全ての操作はアルゴン雰囲気下で行い、全ての試薬は商業的供給業者から購入し、さらに精製することなく使用した。
【0134】
内容量30mLの二口ナスフラスコを用い、酢酸パラジウム(EBDTに対して30mol%)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(EBDTに対して90mol%)、炭酸セシウム(EBDTに対して6当量)、1,4-ジオキサン(2ml)存在下、4-ブロモトリフェニルアミン(EBDT末端の水素に対して1.2当量)とEBDT(22.9mg、0.0996mmol)を110℃で72時間加熱還流した。反応終了後、得られた固体を水、メタノール、ヘキサンで洗浄することにより、75%(90.3mg、0.075mmol)の収率で化合物1を得た。
【0135】
Bruker Biospin AVANCE 400又はBruker Biospin AVANCE III 500スペクトロメータ(1Hの場合は400MHz又は500MHz、13Cの場合は100MHz又は126MHz)により、CDCl3、又はC6D6-CS2溶剤を用いて1H及び13CNMRスペクトルを記録した。化学シフトは、内部標準(CDCl3:77.0ppm、C6D6:128.0ppm)として、1H及び13C NMRのためのテトラメチルシラン、又は13C NMRのための溶媒共鳴を基準とした。
【0136】
MSスペクトルは、PEG 1000及び/又はm-ニトロベンジルアルコールをマトリックスとして使用することによって、JMS-700V(日本電子社製)で決定した。
【0137】
融点は、Yanaco MP-500D(ヤナコテクニカルサイエンス社製)を用いて測定した。
【0138】
サイクリックボルタンメトリー(CV)を、ALS/chi 617B電気化学分析器を用いて行った。CVセルは、Pt作用電極、Ptワイヤ対電極、及びAg/AgNO3基準電極から構成された。測定は、支持電解質としての濃度0.1M nBu4N+PF6
-のベンゾニトリル中で、25℃で100mV/s又は50mV/sの走査速度で測定した。すべての酸化還元電位は、Ag/Ag+に対して測定し、対Fc/Fc+に変換した。
【0139】
(電極及び電池の調製)
活物質(10重量%)、導電性添加剤としてのアセチレンブラック(電気化学工業)(80%)、及びバインダーとしてのポリ(テトラフルオロエチレン)(10%)を混合することによって正極を調製した。この複合材料をAlメッシュ集電体上にプレスして電極を形成した。電極当たりの活物質の量は約2mgであった。
【0140】
電解質溶液は、1:5v/vのエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒に溶解した1.0Mのリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を用いた。
【0141】
得られた電解質溶液を含む多孔質セパレータ膜を、正極とLi金属負極で低露点(<-70℃)条件下で挟むことにより、コインセル(R2032)を作製した。
【0142】
得られた電池の印加電流密度は、それぞれ40mA g-1(充電過程)と100mA g-1(放電過程)であった。なお、充放電試験は、電気化学測定装置(ABEシステム、エレクトロフィールド社製)を用いて30℃で行った。
【0143】
(電気特性の測定、評価)
図1は、化合物1における酸化還元特性の測定結果である。
図1に示されるように、電圧が-0.4-0.1Vの範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値に変化は見られなかった。一方、-0.4-0.9の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、ジフェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0144】
また、
図2は、化合物1における充放電特性の測定結果である。
図2に示されるように、化合物1を用いた電池の測定を行ったところ、
図1の測定結果における酸化還元挙動と対応するように2つの電圧プラトーが示された。また、化合物1の理論容量が134mAh/gであるのに対し、
図2の測定結果においては約100%に近い容量が使われていることが認められた。また、繰り返し充放電を繰り返しても2サイクル目以降充放電サイクル特性がほぼ変化がない挙動が認められた。
【0145】
また、
図3は、化合物1におけるサイクル特性の測定結果である。
図3に示されるように、化合物1を用いた電池の測定を行ったところ、100サイクルまで放電容量はほぼ一定の値を示し、高いサイクル特性が認められた。
【0146】
【0147】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)をTTF(テトラチアフルバレン)(21.2mg、0.104mmol)に変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。化合物2を50%の収率で得た。
【0148】
(電極及び電池の調製)
化合物2の電極及び電池の調製は、実施例1と同様に行った。
【0149】
(電気特性の測定、評価)
化合物2の電気特性の測定、評価は、実施例1と同様に行った。
【0150】
図4は、化合物2における酸化還元特性の測定結果である。
図4に示されるように、電圧が-0.2-0.4Vの範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値に変化は見られなかった。一方、-0.6-0.9の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、ジフェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0151】
また、
図5は、化合物2における充放電特性の測定結果である。
図5に示されるように、化合物2を用いた電池の測定を行ったところ、化合物2の理論容量が137mAh/gであるのに対し、
図2の測定結果においては約100%に近い容量が使われていることが認められた。また、繰り返し充放電を繰り返しても2サイクル目以降充放電サイクル特性がほぼ変化がない挙動が認められた。
【0152】
また、
図6は、化合物2におけるサイクル特性の測定結果である。
図6に示されるように、化合物2を用いた電池の測定を行ったところ、100サイクルまで放電容量はほぼ一定の値を示し、高いサイクル特性が認められた。
【0153】
【0154】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)を4-(1,3-ジチオール-2-イリデン)-4H-チオピラン(19.9mg、0.100mmol)に変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。化合物3を74%の収率で得た。
【0155】
(電気特性の測定、評価)
化合物3の電気特性の測定、評価は、実施例1と同様に行った。
【0156】
図7は、化合物3における酸化還元特性の測定結果である。
図7に示されるように、-0.4-0.9の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、ジフェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0157】
また、
図8は、化合物3における充放電特性の測定結果である。また、繰り返し充放電を繰り返しても2サイクル目以降充放電サイクル特性がほぼ変化がない挙動が認められた。
【0158】
また、
図9は、化合物3におけるサイクル特性の測定結果である。
図9に示されるように、化合物3を用いた電池の測定を行ったところ、100サイクルまで放電容量はほぼ一定の値を示し、高いサイクル特性が認められた。
【0159】
【0160】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)をTTF(テトラチアフルバレン)(20.4mg、0.100mmol)に、4-ブロモトリフェニルアミンをN-メチル-N-フェニル-4-ブロモアニリンに変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。化合物4を74%の収率で得た。
【0161】
(電極及び電池の調製)
化合物4の電極及び電池の調製は、実施例1と同様に行った。
【0162】
(電気特性の測定、評価)
化合物4の電気特性の測定、評価は、実施例1と同様に行った。
【0163】
図10は、化合物4における酸化還元特性の測定結果である。
図10に示されるように、電圧が-0.6-1.5の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、メチルフェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0164】
【0165】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)をTTF(テトラチアフルバレン)(20.4mg、0.100mmol)に、4-ブロモトリフェニルアミンを4-ブロモジフェニルアミンに変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。化合物5を42%の収率で得た。
【0166】
(電極及び電池の調製)
化合物5の電極及び電池の調製は、実施例1と同様に行った。
【0167】
(電気特性の測定、評価)
化合物5の電気特性の測定、評価は、実施例1と同様に行った。
【0168】
図11は、化合物5における酸化還元特性の測定結果である。
図11に示されるように、電圧が-0.6-1.4の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、フェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0169】
【0170】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)をTTF-SiiPr3(イソプロピルシリルテトラチアフルバレン)(24.6mg、0.100mmol)に変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。得られた溶液に過剰量のテトラブチルアンモニウムフルオリドを加えて1時間室温で攪拌し、カラムクロマトグラフィー(充填剤;Al2O3)で精製することにより化合物6を17%の収率で得た。
【0171】
(電極及び電池の調製)
化合物6の電極及び電池の調製は、実施例1と同様に行った。
【0172】
(電気特性の測定、評価)
化合物6の電気特性の測定、評価は、実施例1と同様に行った。
【0173】
図12は、化合物6における酸化還元特性の測定結果である。
図12に示されるように、電圧が-0.36-0.84の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、ジフェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0174】
また、
図13は、化合物6における充放電特性の測定結果である。また、繰り返し充放電を繰り返しても2サイクル目以降充放電サイクル特性がほぼ変化がない挙動が認められた。
【0175】
また、
図14は、化合物6におけるサイクル特性の測定結果である。
図14に示されるように、化合物6を用いた電池の測定を行ったところ、100サイクルまで放電容量はほぼ一定の値を示し、高いサイクル特性が認められた。
【0176】
【0177】
内容量30mLの二口ナスフラスコを用い、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(278mg、0.240mmol)存在下、トリブチル[2-(1,3-ジチオール-2-イリデン)-1,3-ジチオール-4-イル]スタナン(246mg、0.499mmol)と4-ブロモトリフェニルアミン(244mg、0.753mmol)をtoluene(10ml)中で110℃で5時間加熱還流した。得られた反応溶液をカラムクロマトグラフィー(SiO2)で精製することで、38%(81mg、0.189mmol)の収率で化合物7を得た。
【0178】
【0179】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)を2-(1,3-ジチオール-2-イリデン)-1,3-ベンゾジチオール(27.3mg、0.107mmol)に変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。化合物8を59%の収率で得た。
【0180】
(電極及び電池の調製)
化合物8の電極及び電池の調製は、実施例1と同様に行った。
【0181】
(電気特性の測定、評価)
化合物8の電気特性の測定、評価は、実施例1と同様に行った。
【0182】
図15は、化合物8における酸化還元特性の測定結果である。
図15に示されるように、電圧が-0.6-1.4の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、ジフェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0183】
また、
図16は、化合物8における充放電特性の測定結果である。
図16に示されるように、化合物8を用いた電池の測定を行ったところ、化合物8の理論容量が145mAh/gであるのに対し、
図16の測定結果においては約80%に近い容量が使われていることが認められた。また、繰り返し充放電を繰り返しても2サイクル目以降充放電サイクル特性がほぼ変化がない挙動が認められた。
【0184】
また、
図17は、化合物8におけるサイクル特性の測定結果である。
図17に示されるように、化合物8を用いた電池の測定を行ったところ、100サイクルまで放電容量はほぼ一定の値を示し、高いサイクル特性が認められた。
【0185】
【0186】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)を2-(1,3-ジチオール-2-イリデン)-1,3-ベンゾジチオール(25.4mg、0.100mmol)に、4-ブロモトリフェニルアミンをN-メチル-N-フェニル-4-ブロモアニリンに変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。化合物9を23%の収率で得た。
【0187】
(電極及び電池の調製)
化合物9の電極及び電池の調製は、実施例1と同様に行った。
【0188】
(電気特性の測定、評価)
化合物9の電気特性の測定、評価は、実施例1と同様に行った。
【0189】
図18は、化合物9における酸化還元特性の測定結果である。
図18に示されるように、電圧が-0.6-1.4の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、メチルフェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0190】
また、
図19は、化合物9における充放電特性の測定結果である。
【0191】
また、
図20は、化合物9におけるサイクル特性の測定結果である。
図20に示されるように、化合物9を用いた電池の測定を行ったところ、20サイクルから100サイクルまで放電容量はほぼ一定の値を示し、高いサイクル特性が認められた。
【0192】
【0193】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)を4-(1,3-ジチオール-2-イリデン)-4H-チオピラン(19.9mg、0.100mmol)に、4-ブロモトリフェニルアミンをN-メチル-N-フェニル-4-ブロモアニリンに変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。化合物10を37%の収率で得た。
【0194】
(電極及び電池の調製)
化合物10の電極及び電池の調製は、実施例1と同様に行った。
【0195】
(電気特性の測定、評価)
化合物10の電気特性の測定、評価は、実施例1と同様に行った。
【0196】
図21は、化合物10における酸化還元特性の測定結果である。
図21に示されるように、電圧が-0.6-1.4の範囲でマルチスキャンを行ったところ、電流値が継続的に上昇する挙動が認められた。この結果から、電圧の印加により、メチルフェニルアミノフェニル基上で多量化が生じていると推測された。
【0197】
【0198】
EBDT(エタンジイリデン-2,2’-ビス(1,3-ジチオール))(22.9mg、0.0996mmol)を1,3-ジチオール-4-ピラン(17.9mg、0.10mmol)に変えたこと以外、実施例1の場合と同様に行った。化合物11を30%の収率で得た。