(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164581
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】パワーステアリングシステムのオリフィスにカバーを固定する方法及びそのカバー
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022051707
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】2103919
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲラン ミカエル
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB15
3D333CC25
3D333CD03
3D333CD37
3D333CD38
3D333CE06
(57)【要約】
【課題】従来の欠点の全部又は一部を改善するパワーステアリングシステムのケーシングを提案する。
【解決手段】パワーステアリングシステムのケーシング(1’)は、カバー(60)の少なくとも1つの固定座(2)を含み、固定座(2)はオリフィスを区切り、カバー(60)はオリフィスをシールするように意図され、固定座(2)は、カバー(60)のための支持壁(53)を含み、固定座(2)は、支持壁(53)の外側に配置された少なくとも1つの延長部(54)も含み、延長部(54)は、カバー(60)の上に折り曲げられるように構成された少なくとも1つの変形領域(55)を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーステアリングシステムのケーシング(1')は、カバー(60)を固定するための少なくとも1つの固定座(2)を備え、
前記固定座(2)はオリフィスを区切るように設けられ、
前記カバー(60)は前記オリフィスをシールするように意図され、
前記固定座(2)は、前記カバー(60)のための支持壁(53)を備え、
前記固定座(2)は、前記支持壁(53)の外側に配置された少なくとも1つの延長部(54)も備え、
前記延長部(54)は、前記カバー(60)の上に折り曲げられるように構成された少なくとも1つの変形領域(55)を備える
ことを特徴とするケーシング(1')。
【請求項2】
前記固定座(2)は、前記オリフィスを区切る内面(21')を備え、
前記支持壁(53)は、前記内面(21')に対して実質的に横断する方向に延在する、
請求項1に記載のケーシング(1')。
【請求項3】
前記延長部(54)は、前記内面(21')に実質的に平行な方向に沿って延在する、
請求項2に記載のケーシング(1')。
【請求項4】
前記延長部(54)は、前記支持壁(53)を連続的に囲む
請求項1~3のいずれか1項に記載のケーシング(1')。
【請求項5】
前記延長部(54)が、前記延長部(54)に亘って均等に分布する複数の変形領域(55)を備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載のケーシング(1’)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のケーシング(1')と、
前記カバー(60)上に折り曲げられた少なくとも1つの変形領域(55)によって前記オリフィス上に保持されたカバー(60)と、
を備える組立品。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載のケーシング(1')の固定座(2)上にカバー(60)を固定するための方法であって、
前記カバー(60)は、保持縁部(602)によって少なくとも部分的に囲まれた保護壁(603)を含み、
前記カバー(60)の保持縁部(602)が前記少なくとも1つの支持壁(53)と接触するように前記カバー(60)を前記オリフィス内に挿入する工程を含み、
前記少なくとも1つの変形領域(55)が前記保持縁部(602)上に折り曲げられる変形工程を含む、方法。
【請求項8】
前記変形工程は、機械的材料折り曲げ方法によって実行される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記変形工程の間、前記変形領域(55)は、前記支持壁(53)に実質的に平行な方向に沿って圧力を加えることによって折り曲げられる、
請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記変形工程の間、前記変形領域(55)は、前記支持壁(53)を実質的に横切る方向に沿って圧力を加えることによって折り曲げられる、
請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワーステアリングシステムのケーシングの分野に関し、より具体的には、ケーシング、組立品、及びケーシング上にカバーを固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、ステアリングコラムを駆動するハンドルを備えたステアリングシステムを含む。前記ステアリングコラムは、車両の長手方向の軸に沿って延在するラックを備えるステアリングケースに接続されている。ラックは、車両の操舵輪を旋回させることを可能にする。
【0003】
また、パワーステアリングシステムは、運転者がハンドルに与えるアシスト力に依存する、アシスト力をラックに与えるアシスト装置を含む。このようにして、運転者がハンドルを旋回させるために必要な力を減少させる。
【0004】
公知のタイプの電動アシスト装置は、
図2に表わすように、ケーシング1に接続された電気モータを含み、ウォームネジを備え、このウォームネジは、ラックのピニオンに連結された軸に固定された歯付歯車を駆動する。
【0005】
そのようなケーシング1は、一般に、内面21を含むアクセスオリフィスを区切る1つ又は複数の固定座2,3を備える。アクセスオリフィスは、ケーシング1の要素の全部又は一部の導入及び組立を可能にするために、前記ケーシング1の外壁5を横切る。
【0006】
これらの固定座2,3は、ケーシング1内への液体又は砂利、ほこりのような異物の侵入を防止するために、しばしば例えばOリングを備えたカバー6によってシールされなければならない。これにより、ケーシング1によって保護された要素の適切な動作を永久的に保証する。
【0007】
次に、特に、ケーシング1の減速歯車の固定座2上に位置するカバー6に着目する。しかしながら、本発明は、パワーステアリングシステムの任意の他のカバーに適用することができる。
【0008】
カバー6が、カバー6上に存在するクリップ61によってケーシング1上に固定される既知の解決策が存在する。前記クリップは、ケーシング1の機械加工溝51に挿入される。より具体的には、オリフィス2の内面21の円周上に溝51が加工される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなカバー6の使用は、溝51内へのクリップ61の適切な挿入を視覚的に確認することができないという欠点を有する。このため、カバー6が正しく挿入されて保持されていることを確認することができない。同様に、クリップ61の破損のような、組立中又は時間の経過に伴う損傷がないことをチェックすることは不可能である。
【0010】
さらに、このようなカバー6は、ケーシング1が製造された後にケーシング1内に作られなければならない溝51と協働する必要がある。したがって、これはケーシング1に対する付加的な作業であり、製造コストの増大につながる。
【0011】
本発明の目的は、カバーを固定するための少なくとも1つの固定座を備え、この固定座がオリフィスを区切り、カバーがオリフィスを封止するように意図され、固定座がカバーのための支持壁を備え、固定座が支持壁の外側に配置された少なくとも1つの延長部も備え、延長部がカバーの上に折り曲げられるように構成された少なくとも1つの変形領域を備えることを特徴とする、パワーステアリングシステムのケーシングを提案することによって、前述の欠点の全部又は一部を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これにより、固定座にカバーを保持することを目的とした要素、すなわち延長部がオリフィスの外側、すなわちオリフィスの内面を完全に滑らかにすることができる。本発明によるケーシングは、カバーの製造と設置との間に何らの機械加工操作を必要としない。変形領域を折り曲げる操作のみ、カバーをケーシングに永久的に固定するようにカバーを取り付けた後に実行する。これは、従来技術のケーシングと比較して、時間及び費用を節約する。
【0013】
このカバーは、延長部の変形領域によって保持されている。
【0014】
本発明による固定手段は、特に簡単で、頑丈で、コンパクトである。
【0015】
本発明は、次の特徴のうちの1つ以上を単独で又は組み合わせて考慮してもよい。
【0016】
一実施形態に従って、固定座は、オリフィスを区切る内面を備え、支持壁は、内面に対して実質的に横断方向に延在する。
【0017】
一実施形態によれば、延長部は、内面に実質的に平行な方向に沿って延在する。
【0018】
一実施形態によれば、延長部は、支持壁を連続的に取り囲む。
【0019】
このようにして、固定座は配向されない。
【0020】
少なくとも1つの変形領域は、前記延長部の任意の箇所に形成されていてもよい。したがって、変形領域を変形させるツールに関して、ケーシングの方向、つまり伸長壁の方向は存在しない。
【0021】
一実施形態によれば、前記延長部は、前記延長部に亘って均等に分布する複数の変形領域を含む。
【0022】
したがって、カバーは、いくつかの点で均等に保持される。好ましくは、延長部は、少なくとも2つの変形領域を含む。
【0023】
あるいは、変形領域は、延長部上に連続している。
【0024】
一実施形態によれば、ケーシングはアルミニウムで作られる。
【0025】
したがって、ケーシングは、軽くかつ耐性である。
【0026】
本発明はまた、本発明によるケーシングと、前記カバーの上に折り曲げられた少なくとも1つの変形領域によってオリフィス上に保持されたカバーとを備える組立品に関する。
【0027】
カバーは、支持壁と接触する保持縁部を備える。保持縁部がカバーを連続的に取り囲む場合、カバーは、固定座に関してその配向を考慮することなく位置決めすることができる。したがって、カバーの位置決めが容易になる。
【0028】
本発明はまた、カバーを本発明によるケーシングの固定座に固定する方法に関し、前記カバーは、保持縁部によって少なくとも部分的に囲まれた保護壁を含み、この方法は、カバーの保持縁部が少なくとも1つの支持壁と接触するようにカバーをオリフィスに挿入する工程を含み、この方法は、少なくとも1つの変形領域が保持縁部の上に折り曲げられる変形工程を含む。
【0029】
本発明による方法は、カバーを挿入する工程を含み、その間、カバーは、固定座のオリフィスをシールするようにもたらされる。オリフィスに対してカバーを方向付ける必要はない。したがって、この工程は特に単純である。カバーは、保持縁部が少なくとも1つの支持壁に接触するように、オリフィスに挿入されなければならない。
【0030】
次いで、この方法は、カバーをオリフィス上に永久的に固定することを可能にする変形工程を含む。前記延長部は、変形されるものである少なくとも1つの変形領域を含む。変形前に、変形領域は、カバーの保持縁の厚さよりも厳密に大きいオリフィスに平行な方向の構成要素を有する延長部とは区別されない。
【0031】
これにより、カバーがオリフィスに挿入されると、延長部、したがって、変形領域が、カバーから飛び出たり、突出したりする。
【0032】
その後、保持縁に亘って変形領域を折り返すように延長部の変形領域に圧力を加えることができる。延長部の塑性変形、すなわちケーシングの変形がある。
【0033】
最後に、カバーは、オリフィス内のカバーをブロックする変形領域によって固定座上に保持される。カバーを固定するための材料又は部品の追加はない。固定座のレベルに既に存在する材料のみ、より詳細には延長部のレベルでは、カバーを固定するように変形する。したがって、この方法は経済的である。
【0034】
このような固定方法は、変形領域がオリフィスの外側に配置されているので、カバーが適切に挿入され適所に保持されていることを目視で確認することを可能にする。さらに、ケーシングに特定の溝を必要としない。
【0035】
一実施形態によれば、変形工程は、機械的材料折り曲げ方法によって実行される。
【0036】
このような方法は、圧着、ヘッドフォーミング、スクラッチ、又は材料をアップセットする任意の他の既知方法であってもよい。機械的方法は、材料のいかなる外部加熱も実施せず、したがって、この方法は、燃焼の危険性がないので、非常に安全である。さらに、それは迅速に完了する。最後に、このようにして内部構造を保持する材料の熱変形はない。
【0037】
あるいは、変形工程は、熱的材料折り曲げ方法によって行われる。
【0038】
一実施形態によれば、変形工程の間、変形領域は、支持壁に実質的に平行な方向に沿って圧力をかけることによって、折り曲げられる。
【0039】
保持縁に変形領域を押しつぶすように支持壁に略平行な方向に沿って延長部の変形領域に圧力を加えることができる。
【0040】
一実施形態によれば、変形工程の間、変形領域は、支持壁に対して実質的に横断方向に沿って圧力をかけることによって、折り曲げられる。
【0041】
これにより、延長部の変形領域が保持縁上で屈曲する。
【0042】
一実施形態によれば、変形後、変形領域は、三角形、円形、正方形から選択される形状を有する。
【0043】
変形後の変形領域の形状は、変形工程を実行するために使用される工具の形状によって異なる。
【0044】
本発明は、非限定的な例として与えられ、添付の概略図を参照してされる、本発明による実施形態に関する以下の説明により、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図2】
図1のカバーを備えるパワーステアリングシステムのケーシングの図である。
【
図3】本発明に係るカバーを挿入する工程を実施した後のステアリングシステムのケーシングの断面図である。
【
図4】本発明のカバーを変形させる工程を実施した後のステアリングシステムのケーシングの斜視図である。
【
図5】
図4によるケーシングの拡大の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
ケーシング1'は、金属製又は剛性プラスチック材料製の外壁5'を備えている。それは、図示されていない歯車機構を収容する。
【0047】
歯車機構は、好ましくは、減速歯車と、ステアリングアシストモータと、ラック又はステアリングコラムなどの移動部材との間の機械的伝達を保証するウォームスクリューとを備える減速ギアである。ステアリングコラムは、車両の操舵輪のヨー方向(操舵角)を変更することができる。
【0048】
ケーシング1'は、ケーシング1'の要素の全部又は一部の導入及び組立を可能にするために、前記ケーシング1'の外壁5'を横切るオリフィスを区切る内面21'を備えるいくつかの固定座2,3,4を備える。固定座2,3,4は、実質的に円形の形状を有する。
【0049】
次に、特に、減速歯車上に配置された固定座2のオリフィスをシールすることを可能にするカバー60に焦点を当てる。
【0050】
ケーシング1′は、カバー60の固定座2を備え、固定座2は、オリフィスを区切る内面21′と、内面21′に対して実質的に横断方向に延びる支持壁53と、内面21′の方向に実質的に沿って延びる延長部54とを備える。支持壁53及び延長部54は、外壁5'の厚さの範囲内に形成されている。内面21'は凹部又は窪みを有していない。それは円筒形である。
【0051】
カバー60は、オリフィス2の直径と実質的に等しい直径を有する実質的に円形の保護壁603を含む。保護壁603は、保護壁603が保持縁部602によって延在する平面内で延在する。保持縁部602は、保護壁603を連続的に取り囲む。
【0052】
保護壁603は、保護壁603を実質的に横切る方向に延びる挿入縁部601によって取り囲まれている。挿入縁部601は、Oリング(図示せず)を受け入れるように意図された凹部604を含む。
【0053】
カバー60をオリフィス2に固定する本発明に係る方法は、
図3に示すように、固定座2のオリフィスにカバー60を挿入する工程を備え、この工程では、挿入縁部601が内面21'に接触するように、また、カバー60の保持縁部602が支持壁53に接触するように、オリフィスにカバー60を導入する。したがって、保護壁603は、オリフィスを完全に覆う。
【0054】
保護壁603に平行な方向に沿ったカバー60の長さは、2つの対向する内面21'の間で測定されたオリフィスの寸法よりも厳密に大きく、延長部54の2つの増大した対向する内面21'の間で測定されたオリフィスの寸法よりも厳密に小さい。換言すれば、保護壁603に平行な方向に沿ったカバー60の長さは、2つの対向する内面21'の間で測定されたオリフィスの寸法よりも厳密に大きく、2つの支持壁53の間で測定されたオリフィスの寸法よりも小さいか等しい。
【0055】
次いで、この方法は、変形工程を含む。この工程の間、延長部54の変形領域55は、保持縁部602に向かう内面21'の方向に沿ってアンビル(鉄床)によって押しつぶされる。変形領域55は、カバーの円周上に均等に分散される。あるいは、変形領域をカバー60の円周上に連続させることもできる。変形領域55は、正方形の形状を有する。
【0056】
図4及び
図5は、本発明による固定方法の完了後のケーシング1'を示す。
【0057】
もちろん、本発明は、添付の図面に記載され、表わされた実施形態に限定されない。特に、様々な要素の構成に関して、又は技術的均等物の置換によって、本発明の保護範囲を伴った逸脱することのない変形例が依然として可能である。
【外国語明細書】