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特開2022-164600室内匍匐害虫防除剤および室内匍匐害虫防除方法
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  • 特開-室内匍匐害虫防除剤および室内匍匐害虫防除方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164600
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】室内匍匐害虫防除剤および室内匍匐害虫防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 53/06 20060101AFI20221020BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20221020BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20221020BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A01N53/06 110
A01P7/04
A01P7/02
A01M1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064629
(22)【出願日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2021069434
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 太洋
(72)【発明者】
【氏名】猪口 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】引土 知幸
(72)【発明者】
【氏名】川尻 由美
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA17
2B121CC02
2B121CC25
2B121EA03
4H011AC02
4H011AC04
4H011BB15
4H011DA02
4H011DA13
4H011DB05
4H011DC05
4H011DC06
4H011DE16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】室内匍匐害虫に対する優れた防除効果を有し、特にノックダウン効果とフラッシング効果に優れる室内匍匐害虫防除剤と室内匍匐害虫防除方法を提供する。
【解決手段】メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分として含有する、室内匍匐害虫防除剤、及び前記室内匍匐害虫防除剤を室内匍匐害虫又は室内匍匐害虫の生息場所に施用する、室内匍匐害虫防除方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分として含有する、室内匍匐害虫防除剤。
【請求項2】
メトフルトリン及び/又はトランスフルトリンを有効成分として含有する、室内匍匐害虫防除剤。
【請求項3】
防除がノックダウン効果に依拠する、請求項1又は2に記載の室内匍匐害虫防除剤。
【請求項4】
防除が致死効果に依拠する、請求項1又は2に記載の室内匍匐害虫防除剤。
【請求項5】
防除がフラッシング効果に依拠する、請求項1又は2に記載の室内匍匐害虫防除剤。
【請求項6】
請求項3に記載の室内匍匐害虫防除剤を室内匍匐害虫又は室内匍匐害虫の生息場所に施用する、室内匍匐害虫防除方法。
【請求項7】
請求項4に記載の室内匍匐害虫防除剤を室内匍匐害虫又は室内匍匐害虫の生息場所に施用する、室内匍匐害虫防除方法。
【請求項8】
請求項5に記載の室内匍匐害虫防除剤を室内匍匐害虫又は室内匍匐害虫の生息場所に施用する、室内匍匐害虫防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内匍匐害虫防除剤および室内匍匐害虫防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴキブリ等の室内匍匐害虫の防除剤の有効成分として、様々な化合物が知られている。しかし、施用方法や施用場面によっては、より優れたフラッシング効果、ノックダウン効果や致死効果等の防除効果を有する室内匍匐害虫防除剤および防除方法等が必要とされる場合がある。一方、メトフルトリン、プロフルトリンやトランスフルトリンが蚊やハエ等の飛翔害虫に対して殺虫活性(致死活性)を示すことは知られている(例えば、特許文献1や2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3728967号公報
【特許文献2】特許2647411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、室内匍匐害虫に対する優れた防除効果を有し、特にノックダウン効果に優れる室内匍匐害虫防除剤と室内匍匐害虫防除方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上を含有する組成物が、室内匍匐害虫に対する優れた防除効果を有し、特にノックダウン効果とフラッシング効果に優れることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下に関する。
(1) メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上を有効成分として含有する、室内匍匐害虫防除剤。
(2) メトフルトリン及び/又はトランスフルトリンを有効成分として含有する、室内匍匐害虫防除剤。
(3) 防除がノックダウン効果に依拠する、(1)又は(2)に記載の室内匍匐害虫防除剤。
(4) 防除が致死効果に依拠する、(1)又は(2)に記載の室内匍匐害虫防除剤。
(5) 防除がフラッシング効果に依拠する、(1)又は(2)に記載の室内匍匐害虫防除剤。
(6) 前記室内匍匐害虫は、ゴキブリ及び/又はトコジラミである(1)~(5)のいずれか1に記載の室内匍匐害虫防除剤。
(7)前記室内匍匐害虫は、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリ、クロゴキブリ、トビイロゴキブリ、チャオビゴキブリ、トウヨウゴキブリ、ヤマトゴキブリ、又はコバネゴキブリである、(1)~(6)のいずれか1に記載の室内匍匐害虫防除剤。
(8)(1)~(7)のいずれか1に記載の室内匍匐害虫防除剤を室内匍匐害虫又は室内匍匐害虫の生息場所に施用する、室内匍匐害虫防除方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、室内匍匐害虫を防除することができ、具体的にはゴキブリやトコジラミをフラッシング、ノックダウン又は致死させることができる。そして、その防除効果は、特にノックダウン効果とフラッシング効果に依拠するところが大きく、なかんずく空間処理による防除場面で有用性が高い。これは、ゴキブリやトコジラミに対して速効性が高いとされるイミプロトリンが空間処理には適さないためである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の試験例1および試験例6に記載の[噴霧降下装置]の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
メトフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリンは公知の化合物であり、例えば、特許3728967号公報明細書や特許2647411号公報明細書等に記載の方法で製造できる。
【0010】
メトフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリンには、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、それらの各々や任意の混合物を用いることができる。
【0011】
本発明の室内匍匐害虫防除剤が効力を示す室内匍匐害虫としては、例えば下記のものが挙げられる。なお、本発明では、フラッシング効果、ノックダウン効果や致死効果に依拠する駆除効果を防除効果と呼ぶ。
【0012】
かかる室内匍匐害虫としては、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリ、クロゴキブリ、トビイロゴキブリ、チャオビゴキブリ、トウヨウゴキブリ、ヤマトゴキブリ、コバネゴキブリ等のゴキブリやトコジラミ(ナンキンムシ)、タイワントコジラミ(タイワンナンキンムシ)等のトコジラミ、アシダカグモ、マダラヒメグモ、セアカゴケグモ等のクモ、ヤスデ、トビズムカデ等のムカデ、コクゾウムシ等が挙げられる。
【0013】
本発明の室内匍匐害虫防除剤は、各種製剤として利用することができ、例えば、線香、マット剤、液体蒸散剤等の加熱蒸散剤やファン式薬剤拡散器等に用いる薬剤、油剤、乳剤、エアゾール剤、ポンプスプレー剤、水和剤、フロアブル剤、マイクロカプセル剤、粉剤、粒剤、錠剤、燻煙剤、煙霧剤、自然蒸散剤、シート剤及び毒餌等として使用することができる。これらの製剤とするには、以下のような手段を挙げることができる。
(1) 本発明の有効成分を、固体や液体の担体に混合して、必要に応じて界面活性剤、
酸化防止剤その他の製剤用補助剤を添加、加工して所期の製剤とする方法。
(2)本発明の有効成分を液状とし、所期の基材に含浸、塗布する方法。
(3)本発明の有効成分及び基材を混合した後、所期の形状に成形加工する方法。
製剤形態による違いもあるが、これらの製剤には、有効成分としてメトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上、好ましくはメトフルトリン及び/又はトランスフルトリン、より好ましくはメトフルトリンを含有させればよい。また、有効成分の配合重量は、0.001~99重量%、好ましくは0.005~80重量%となるように含有させればよい。
【0014】
上記の各種製剤とする際には、各種担体を用いることができる。固体担体としては、例えば、粘土類、タルク、セラミック、その他の無機鉱物等の微粉末及び粒状物、フェルト、繊維、布、編物、シート、紙、糸、発泡体、多孔質体及びマルチフィラメント等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0015】
液体担体としては、例えば芳香族または脂肪族炭化水素(キシレン、トルエン、アルキルナフタレン、フェニルキシリルエタン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィン、ケロシン、軽油、ヘキサン、シクロヘキサン等 )、ハロゲン化炭化水素(クロロベンゼン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等)、エーテル(ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、ニトリル(アセトニトリル、イソブチロニトリル等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)、酸アミド(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-ピロリドン等)、炭酸アルキリデン(炭酸プロピレン等)、植物油( 大豆油、綿実油等)、植物精油(オレンジ油、ヒソップ油、レモン油等)、及び水が挙げられる。
本発明においては、メトフルトリンを有効成分として含有し、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数2~3の低級アルコールを液体担体とする本発明の室内匍匐害虫防除剤が防除効力の点から好ましい。本発明の室内匍匐害虫防除剤がメトフルトリンを有効成分として含有し、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数2~3の低級アルコールを液体担体とする、油剤、エアゾール剤等の液体製剤が好ましく使用される。
【0016】
エアゾール剤とする際に用いる噴射剤としては、例えば、液化石油ガス、ジメチルエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の液化ガスや、圧縮空気、窒素ガス、炭酸ガス等の圧縮ガス等の1種又は2種以上が挙げられ、液化石油ガスが好ましい。
【0017】
界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類及び糖アルコール誘導体等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0018】
その他の製剤用補助剤としては、例えば、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、BHA(2-tert-ブチル-4-メトキシフェノールと3-tert-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)などの安定化剤、着色剤、香料等を用いることができる。
【0019】
本発明の室内匍匐害虫防除剤を線香製剤とする場合には、線香の基材として、例えば、木粉、粕粉等の植物性粉末、タブ粉、澱粉、カルボキシメチルセルロース等の結合剤等を混合して用いることができる。
【0020】
本発明の室内匍匐害虫防除剤をマット製剤とする場合には、例えば、コットンリンターを板状に固めたもの及びコットンリンターとパルプとの混合物の繊維を板状に固めた基材を用いることができ、加水発熱型燻蒸剤とする場合には、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤等を基材として調製し、酸化カルシウム等の発熱剤を容器に充填したものを用いることができる。
またネット等の基材を用いた自然蒸散剤とする場合には、例えば、パルプ、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフォン、レーヨン、メタアクリル酸樹脂等を用いることができ、毒餌とする場合には、基材としては、例えば、穀物粉、植物油、糖、結晶セルロース等の餌成分、BHT、BHA等の酸化防止剤、デヒドロ酢酸等の保存料、トウガラシ粉末等の誤食防止剤、及び、タマネギ、ピーナッツオイル等の害虫誘引成分を用いることができる。
【0021】
本発明の室内匍匐害虫防除剤には、必要に応じて各種の殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、忌避剤、共力剤を併用してもよい。
【0022】
殺虫剤、殺ダニ剤としては、例えば、テラレスリン、フラメトリン、モンフルオロトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、ヘプタフルトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、シフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、エトフェンプロックス、イミプロトリン、アレスリン、フタルスリン、プラレトリン、レスメトリン、及び天然ピレトリン等のピレスロイド系化合物、シラフルオフェン等のケイ素系化合物、ジクロルボス、及びフェニトロチオン等の有機リン系化合物、プロポクスル等のカーバメート系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド、及びクロチアニジン等のネオニコチノイド系化合物、フィプロニル、インドキサカルブ、並びにメトキサジアゾン等が挙げられる。これらの中でも、ピレスロイド系化合物を併用することが好ましく、難揮散性のピレスロイド系化合物であるフェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、シフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、エトフェンプロックス、レスメトリンを併用することがより好ましい。かかる難揮散性ピレスロイドと本発明で用いるメトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上を組み合わせた場合には、後者化合物の優れたフラッシング効果、ノックダウン効果や致死効果が相乗的に前者ピレスロイドの防除効果を増強しえるものである。例えばフラッシング効果に優れたメトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンの効果により潜む隙間から室内匍匐害虫を追い出させ、その結果、難揮散性ピレスロイドと床面で接触する機会が高まり確実な防除効果が得られる。この防除効果は、使用者が薬剤を処理した際、害虫を隙間に留まらせない為、薬剤の効果を目に見えて実感しやすい利点でもある。
【0023】
除菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、パラオキシ安息香酸エステル(エチル、プロピル、ブチル)、IPBC、チオベンダゾール、トリクロサン、p-クロロメタキシレノール(PCMX)等が挙げられる。
【0024】
忌避剤としては、例えば、N-ジエチル-m-トルアミド、イカリジン、IR3535、リモネン、リナロール、シトロネラール、メントール、メントン、ヒノキチオール、ゲラニオール、及び、p-メンタン-3,8ジオール等が挙げられる。
【0025】
共力剤としては、例えば、ピペロニルブトキシド、サイネピリン222、及び、サイネピリン500等が挙げられる。
【0026】
本発明の室内匍匐害虫防除方法は、本発明の室内匍匐害虫防除剤を室内匍匐害虫または室内匍匐害虫の生息場所(浴場、物置、居間、食堂、倉庫、家具隙間等)に施用することにより行われる。また、本発明の室内匍匐害虫防除方法は、メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上とその他の有効成分を別々に室内匍匐害虫または室内匍匐害虫の生息場所に施用することによっても行うことができる。本発明の室内匍匐害虫防除方法により、室内匍匐害虫をフラッシング、ノックダウンや致死等の防除をすることができる。
本発明の室内匍匐害虫防除剤の施用方法としては、具体的には、例えば以下の方法が挙げられ、それぞれの形態、使用場所等に応じて適宜選択できる。
(1) 本発明の室内匍匐害虫防除剤をそのまま室内匍匐害虫または室内匍匐害虫の生息場所に処理する方法。
(2)本発明の室内匍匐害虫防除剤を水等の溶媒で希釈した後に、室内匍匐害虫または室内匍匐害虫の生息場所に散布処理する方法。
(3)本発明の室内匍匐害虫防除剤を室内匍匐害虫の生息場所で常温もしくは加熱して、有効成分を揮散させる方法。
この場合、メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上の施用量、施用濃度はいずれも本発明の室内匍匐害虫防除剤の形態、施用時期、施用場所、施用方法、被害状況等に応じて適宜定めることができる。
【0027】
本発明の室内匍匐害虫防除剤を用いる場合は、その施用量は空間に適用するときは、メトフルトリン、トランスフルトリン、及びプロフルトリンからなる群より選択される1種又は2種以上の量として通常0.0001~1000mg/m3であり、平面に適用するときは0.0001~1000mg/m2である。フラッシング効果を所望する場合、好ましくは0.001~100mg/m3、より好ましくは0.01~50mg/m3、さらに好ましくは0.05~10mg/m3、もっとも好ましくは0.1~1mg/m3の量を施用すればよい。その際、単位処理面積当たりの処理薬量(A)に対する半数追い出し時間であるFT50値(B)を算出したB/A値は、好ましくは0.1~50、より好ましくは0.5~10、さらに好ましくは1~3の値にて優れたフラッシング効果が示される。またノックダウン効果を所望する場合、好ましくは0.01~500mg/m3、より好ましくは0.1~200mg/m3、さらに好ましくは1~100mg/m3、もっとも好ましくは10~70g/m3の量を施用すればよい。その際、単位処理面積当たりの処理薬量(A)に対するKT50値(B)を算出したB/A値は、好ましくは0.01~0.1、より好ましくは0.01~0.05の値にて優れたノックダウン効果が示される。
本発明の室内匍匐害虫防除剤を用いる場合は、空間処理による防除場面で有用性が高い。これは、ゴキブリやトコジラミ等の室内匍匐に対して速効性が高いとされるイミプロトリンが空間処理には適さないためである。線香、マット剤等の加熱蒸散剤はその製剤形態に応じて加熱により有効成分を揮散させて施用する。樹脂製剤、紙製剤、錠剤、不織布製剤、編織物製剤、シート製剤等の非加熱蒸散剤は例えば施用する空間にそのまま放置する、エアゾール剤を空間に噴霧する、及び該製剤に送風することにより使用できる。
本発明の室内匍匐防除剤を施用する空間としては、例えばクローゼット、押入れ、タンス、食器棚、トイレ、浴場、物置、居間、食堂、倉庫、車内、家具、家具隙間等が挙げられる。
【0028】
[製剤例]
以下、本発明の室内匍匐害虫防除剤の製剤例を示すが、本発明はこれら製剤例に限られるものではない。
【0029】
[製剤例1]
メトフルトリン9.0g(30.0w/v%)をエタノールに溶解させ、30mLのエアゾール原液を調製した。得られたエアゾール原液9mLと噴射剤として液化石油ガス21mLとをエアゾール用アルミ缶(50mL缶)に入れ、0.4mL定量バルブ及びボタンをエアゾール用アルミ缶に取り付けて、エアゾール剤を得た。
【0030】
[製剤例2]
トランスフルトリン6.0g(20.0w/v%)をエタノールに溶解させ、30mLのエアゾール原液を調製した。得られたエアゾール原液9mLと噴射剤として液化石油ガス21mLとをエアゾール用アルミ缶(50mL缶)に入れ、0.4mL定量バルブ及びボタンをエアゾール用アルミ缶に取り付けて、エアゾール剤を得た。
【0031】
[製剤例3]
プロフルトリン6.9g(23.0w/v%)をパラフィン溶剤(ネオチオゾール、三光化学製)に溶解させ、30mLのエアゾール原液を調製した。得られたエアゾール原液12mLと噴射剤として液化石油ガスとジメチルエーテルの混合ガス18mLとをエアゾール用アルミ缶(50mL缶)に入れ、0.4mL定量バルブ及びボタンをエアゾール用アルミ缶に取り付けて、エアゾール剤を得た。
【0032】
[製剤例4]
メトフルトリン0.2g(0.7w/v%)とフェノトリン13.3g(44.3w/v%)をエタノールに溶解させ、30mLのエアゾール原液を調製した。得られたエアゾール原液9mLと噴射剤として液化石油ガス21mLとをエアゾール用アルミ缶(50mL缶)に入れ、0.4mL定量バルブ及びボタンをエアゾール用アルミ缶に取り付けて、エアゾール剤を得た。
【0033】
[製剤例5]
トランスフルトリン0.05gを乳化剤に加えて乳剤とし、防黴剤、着色剤及び温水を加えて乳化液とする。これを、線香の基材(木粉、粕粉等の植物性粉末とタブ粉、及び澱粉を混合したもの)99.95gに加えてよく練り合わせ、成型、乾燥して渦巻状の線香を得た。
【0034】
[製剤例6]
メトフルトリン0.8g、ピペロニルブトキシド0.4g、及び色素に灯油を加えて溶解し、全部で50mLとする。この溶液0.5mLを22mm×35mm、厚さ2.8mmのマット用基材(コットンリンターとパルプとの混合物の繊維)に均一に含浸させて、マット剤を得た。
【0035】
[製剤例7]
トランスフルトリン10gを、燻煙剤の基材(アゾジカルボンアミドに澱粉を混合したもの)90gに加え、これに水を加えてよく練り合わせ、成型、乾燥して燻煙剤の製剤を得た。
【0036】
[製剤例8]
トランスフルトリン150g、BHT0.75g、及び色素に流動パラフィンを加えて溶解し、全部で225gとする。この溶液0.75gを、ポリエステルからなるマルチフィラメントのレース編みによる8.5cm×14cm、厚さ0.6mmのネットに均一に含浸させて、自然蒸散剤を得た。
【0037】
[製剤例9]
トランスフルトリン1gを、毒餌剤の基材99g(例:小麦粉37質量%、コーンスターチ25質量%、濃グリセリン15質量%、カルボキシメチルセルロース1質量%、砂糖10質量%、ごま油1質量%、水10質量%)とよく練り合わせ、成型して毒餌剤を得た。
【0038】
[製剤例10]
メトフルトリン3.3gに、合成含水酸化珪素微粉末5g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5部、ベントナイト30gおよびクレー56.7gを加え、よく撹拌混合し、ついでこれらの混合物に適当量の水を加え、さらに撹拌し、増粒機で製粒し、通風乾燥して、粒剤を得た。
【0039】
[製剤例11]
メトフルトリン5.5g、合成含水酸化珪素微粉末1g、凝集剤としてドリレスB(三共製)1gおよびクレー7gを乳鉢でよく混合した後に、ジュースミキサーで撹拌混合する。得られた混合物にカットクレー85.5gを加えて、充分撹拌混合し、粉剤を得た。
【0040】
[製剤例12]
メトフルトリン11g、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩を半分量含むホワイトカーボン35g及び水54gを混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、粉剤を得た。
【0041】
[製剤例13]
トランスフルトリン0.15gを、ジクロロメタン10gに溶解し、これをイソパラフィン溶剤(アイソパーM、エクソンモービル製)89.85gに混合して、油剤を得た。
【実施例0042】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
<試験例1>ゴキブリに対する防除効果1(ノックダウン効果)
内面に逃亡防止のためのワセリンを塗ったガラスポット(直径15cm、高さ18cm)の底面にろ紙を敷き、チャバネゴキブリ♀成虫10匹を入れ、噴霧降下装置にセットした。(図1の模式図を参照)。各種薬剤をパラフィン系溶剤(ネオチオゾール、三光化学製)で所定濃度に希釈した溶液0.5mLをアトマイザーを用いて、上方のガラス円板中央の小孔から1.5kg/cmの圧力で処理した。上方の小孔を栓で塞ぎ、処理終了後30分間、時間の経過に伴う供試虫のノックダウン虫数を観察し、KT50値を求めた。なお、試験は温度25±2℃、湿度60±20%の環境下において実施した。
【0044】
試験結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
<試験例2>ゴキブリに対する防除効果(ノックダウン効果、致死効果)
20×20cmのガラス板合計8枚(チャバネゴキブリ用、ワモンゴキブリ用)を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に逃亡防止のためにワセリンを塗布した直径約20cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(チャバネゴキブリ:♀成虫5匹、ワモンゴキブリ:幼虫5匹)を放って自由に徘徊させた。部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、製造例1~3の供試エアゾール剤を0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させ、その間、時間経過に伴い仰転した供試昆虫を数え、KT50値を求めた。さらに、噴霧から30分経過後、ガラス板を、供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、餌を与え、更に24時間後に供試昆虫の致死率を求めた。また、比較例1として、メトフルトリン30w/v%をエムペントリン50w/v%に代えて、他は製造例1と同様にして製造したエアゾール剤を用いて同様の試験を行った。
【0047】
試験結果を表2に示す。
【0048】
<試験例3>トコジラミに対する防除効果(致死効果)
20×20cmのガラス板合計4枚を閉めきった容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)の4隅に設置し、各ガラス板の上に逃亡防止のためにワセリンを塗布した直径約10cmのプラスチックリングを置き、各リング内に所定の供試昆虫(トコジラミ:5匹)を放って自由に徘徊させた。部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、製造例1~3、及び比較例1の供試エアゾール剤を0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧から30分間放置して供試昆虫を薬剤に暴露させた後、ガラス板を、供試昆虫を含むリングごと別部屋に移し、さらに24時間後に供試昆虫の致死率を求めた。
【0049】
試験結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
<試験例4>ゴキブリに対する防除効果(チャバネゴキブリに対するフラッシング効果)
容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)に家具を設置して隙間を作り、隙間にチャバネゴキブリ20匹(♂成虫10匹、♀成虫10匹)を潜ませ、馴化させた。部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、製造例4の供試エアゾール剤を0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧直後から60分後まで、経時的に隙間から飛び出してくる(フラッシングしてくる)チャバネゴキブリの数を数え、FT50値を求めた。また、比較例2として、メトフルトリン0.2g(0.7w/v%)とフェノトリン13.3g(44.3w/v%)をフェノトリン13.5g(45.0w/v%)に代えて、他は製造例4と同様にして製造したエアゾール剤を用いて同様の試験を行った。後述の表3において、チャバネゴキブリのFT50値は、30分以下であるときを「A」、30.1~45.0分であるときを「B」、45.1~60.0分であるときを「C」、60.1分以上と推定されるときを「D」で示した。
【0052】
試験結果を表3に示す。
【0053】
<試験例5>ゴキブリに対する防除効果(クロゴキブリに対するフラッシング効果)
容積25mの部屋(6畳の部屋に相当、面積10m)に家具を設置して隙間を作り、隙間にクロゴキブリ10匹(♂成虫5匹、♀成虫5匹)を潜ませ、馴化させた。部屋の中央(床上1.5mの高さ)で、製造例4の供試エアゾール剤を0.4mLずつ、やや斜め上方に方向を変えながら、4ショット噴霧した。噴霧直後から60分後まで、経時的に隙間から飛び出してくる(フラッシングしてくる)クロゴキブリの数を数え、FT50値を求めた。また、比較例2のエアゾール剤を用いて同様の試験を行った。後述の表3において、クロゴキブリのFT50値は、30分以下であるときを「A」、30.1~45.0分であるときを「B」、45.1~60.0分であるときを「C」、60.1分以上と推定されるときを「D」で示した。
【0054】
試験結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
<試験例6> ゴキブリに対する防除効果(チャバネゴキブリに対するフラッシング効果)
噴霧降下装置(図1の模式図を参照)において、内面に逃亡防止のためのワセリンを塗ったガラスポット(直径15cm、高さ18cm)の底面に、チャバネゴキブリ♀成虫5匹を入れた底面4cm×8cmで高さ1cmの直方体であって対向する2つの側面(4cm×1cm)を開口させた濾紙製の箱容器をセットした。各種薬剤をアセトンで所定濃度に希釈した溶液1mLをアトマイザーを用いて、上方のガラス円板中央の小孔から1.5kg/cmの圧力で処理した。上方の小孔を栓で塞ぎ、処理10秒後に円筒とガラスポットの接合面に設けていた仕切りのすべり蓋(図示せず)を抜き取った。10分間、フラッシング効果で容器から追い出された供試虫の数を観察し、半数追い出し時間となるFT50値を求めた。なお、試験は温度25±2℃、湿度60±20%の環境下において実施した。
【0057】
試験結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
試験の結果、メトフルトリンとトランスフルトリンは効果に優れ、特にメトフルトリンは他の薬剤に比べ極めて短時間でフラッシング効果を発揮し、半数追い出し時間であるFT50値が1分以内であり、単位処理面積当たりの処理薬量(A)に対する半数追い出し時間であるFT50値(B)を算出したB/A値は3以下となる顕著な値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の室内匍匐害虫防除剤は、ゴキブリ、トコジラミ等の室内匍匐害虫に対して優れた防除効果を有しており、室内匍匐害虫を防除する上で極めて有用である。

図1