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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164601
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】紫外線硬化性組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20221020BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20221020BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20221020BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C08F290/06
C08F2/50
C08G18/64 015
C08G18/67
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022064898
(22)【出願日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2021069499
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 真友子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 渉
(72)【発明者】
【氏名】児島 俊貴
【テーマコード(参考)】
4J011
4J034
4J127
【Fターム(参考)】
4J011AA05
4J011AC04
4J011QA06
4J011QA13
4J011QA14
4J011QB24
4J011SA84
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA02
4J034GA62
4J034GA75
4J034LA23
4J034LA33
4J034QB11
4J034RA07
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB021
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC121
4J127BC131
4J127BD411
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127CB153
4J127CB161
4J127CB282
4J127CB284
4J127CB344
4J127CC013
4J127CC023
4J127CC091
4J127CC111
4J127CC132
4J127CC291
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA41
(57)【要約】
【課題】低粘度であり、かつ高耐熱性、低アウトガス性及び耐折り曲げ性に優れる塗膜を形成することが出来る紫外線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】N-置換(メタ)アクリルアミド(A)と、
下記一般式(1)で示される2官能(メタ)アクリレート(B)と、
ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)と、
アシルフォスフィンオキサイド化合物を含有する光重合開始剤(D)とを含有する紫外線硬化性組成物。
CH2=CXCO-O-(R-O)n-COCX=CH2 (1)
[一般式(1)中、nは2以上15以下の整数、Rは炭素数2以上6以下のアルキレン基(ただし1分子中にRが複数ある場合、Rは各々独立に炭素数2以上6以下のアルキレン基)、Xは各々独立に水素原子又はメチル基である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-置換(メタ)アクリルアミド(A)と、
下記一般式(1)で示される2官能(メタ)アクリレート(B)と、
ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)と、
アシルフォスフィンオキサイド化合物を含有する光重合開始剤(D)とを含有する紫外線硬化性組成物。
CH2=CXCO-O-(R-O)n-COCX=CH2 (1)
[一般式(1)中、nは2以上15以下の整数、Rは炭素数2以上6以下のアルキレン基(ただし1分子中にRが複数ある場合、Rは各々独立に炭素数2以上6以下のアルキレン基)、Xは各々独立に水素原子又はメチル基である。]
【請求項2】
前記N-置換(メタ)アクリルアミド(A)が、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項3】
前記2官能(メタ)アクリレート(B)が、一般式(1)中、nが7以上15以下の整数である、請求項1又は2に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項4】
炭素数8~18の直鎖又は分岐アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート(E1)を更に含有する、請求項1又は2に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項5】
紫外線硬化性組成物の重量に基づいて、前記N-置換(メタ)アクリルアミド(A)の含有量は、20重量%~60重量%であり、前記2官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、5重量%~60重量%であり、前記ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)の含有量は、1重量%~20重量%であり、前記光重合開始剤(D)の含有量は、2重量%~15重量%である請求項1又は2に記載の紫外線硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の紫外線硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性組成物及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL発光装置は、照明、ディスプレイなどに適用されており、今後の普及が期待されている。
有機EL発光装置においては、例えば支持基板上に有機EL素子が配置され、この有機EL素子がパッシベーション層とよばれる無機質層で覆われ、さらにパッシベーション層が有機樹脂からなる封止材で覆われている。
有機EL発光装置における封止材を、インクジェット法で作製することが提案されている。例えば特許文献1には、75~95wt.%のポリエチレングリコールジメタクリレートモノマー等と、4~10wt.%のペンタエリスリトールテトラアクリレート等と、22℃で約14から約18cpsの範囲内の粘度及び22℃で約35から約39ダイン/cmの範囲内の表面張力を有する1~15wt.%の展着改質剤とを含むインク組成物を用い、インクジェット法で封止材を作製することが、開示されている。
【0003】
前記の通り、有機EL発光装置はディスプレイに使用されているが、近年フレキシブルディスプレイやフォルダブルディスプレイへの適用が求められている。特にフォルダブルディスプレイに適用するためには、繰り返し曲げるという特性から耐折り曲げ性が必要であるが、特許文献1に記載の組成物は耐折り曲げ性が不十分であり、前記ディスプレイへの適用を考えた際に問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-531049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、低粘度であり、かつ高耐熱性、低アウトガス性及び耐折り曲げ性に優れる塗膜を形成することが出来る紫外線硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、N-置換(メタ)アクリルアミド(A)と、
下記一般式(1)で示される2官能(メタ)アクリレート(B)と、
ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)と、
アシルフォスフィンオキサイド化合物を含有する光重合開始剤(D)とを含有する紫外線硬化性組成物;該紫外線硬化性組成物を硬化させてなる硬化物である。
CH2=CXCO-O-(R-O)n-COCX=CH2 (1)
[nは2以上15以下の整数、Rは炭素数2以上6以下のアルキレン基(ただし1分子中にRが複数ある場合、Rは各々独立に炭素数2以上6以下のアルキレン基)、Xは各々独立に水素原子又はメチル基である。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の紫外線硬化性組成物は、低粘度であり、かつ高耐熱性、低アウトガス性及び耐折り曲げ性に優れる塗膜を形成することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、N-置換(メタ)アクリルアミド(A)と、
下記一般式(1)で示される2官能(メタ)アクリレート(B)と、
ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)と、
アシルフォスフィンオキサイド化合物を含有する光重合開始剤(D)とを含有する紫外線硬化性組成物である。
CH2=CXCO-O-(R-O)n-COCX=CH2 (1)
[nは2以上15以下の整数、Rは炭素数2以上6以下のアルキレン基(ただし1分子中にRが複数ある場合、Rは各々独立に炭素数2以上6以下のアルキレン基)、Xは各々独立に水素原子又はメチル基である。]
【0009】
本発明において「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。本発明において「(メタ)アクリル」とは、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0010】
本発明において、N-置換(メタ)アクリルアミド(A)とは、(メタ)アクリルアミドが有するアミノ基の水素原子のうち1個又は2個を炭化水素基等の置換基で置換したものを意味し、N-置換(メタ)アクリルアミドとしては、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-アルコキシアルキル-N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0011】
N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドのN-アルコキシアルキル基の炭素数は、紫外線硬化性組成物の粘度の観点から好ましくは2~10である。
【0012】
N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヘプチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-tert-オクチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジドデシル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジオクタデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドの2つのアルキル基の炭素数は、紫外線硬化性組成物の粘度の観点から好ましくはそれぞれ独立に1~10である。
【0013】
N-アルコキシアルキル-N-アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N-n-ブトキシメチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル-N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル-N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル-N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN-ブチル-N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
N-アルコキシアルキル-N-アルキル(メタ)アクリルアミドのN-アルコキシアルキル基の炭素数は、紫外線硬化性組成物の粘度の観点から好ましくは2~10であり、N-アルコキシアルキル-N-アルキル(メタ)アクリルアミドのN-アルキル基の炭素数は、紫外線硬化性組成物の粘度の観点から好ましくは1~10である。
【0014】
N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドのN-ヒドロキシアルキル基の炭素数は、紫外線硬化性組成物の粘度の観点から好ましくは1~10である。
【0015】
(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミドとしては、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルチオモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン及びN-(メタ)アクリロイルピペリジン等が挙げられる。
【0016】
本発明において、これらのN-置換(メタ)アクリルアミド(A)は、1種単独で又は2種以上を併用できる。
これらのうち、硬化性の観点から好ましくはN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリルアミド基の窒素原子が複素環を形成している複素環含有(メタ)アクリルアミドであり、更に好ましくはN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン及びN-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドであり、特に好ましくはN,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-アクリロイルモルホリン及びN-n-ブトキシメチルアクリルアミドである。
【0017】
本発明の紫外線硬化性組成物は、一般式(1)で表される2官能(メタ)アクリレート(B)を含有する。
CH2=CXCO-O-(R-O)n-COCX=CH2 (1)
[一般式(1)中、nは2以上15以下の整数、Rは炭素数2以上6以下のアルキレン基(ただし1分子中にRが複数ある場合、Rは各々独立に炭素数2以上6以下のアルキレン基)、Xは各々独立に水素原子又はメチル基である。]
【0018】
一般式(1)中、Rは炭素数2以上6以下のアルキレン基を表し、具体的にはエチレン基、1,2-プロピレン基、1,3-プロピレン基、1,2-ブチレン基、1,3-ブチレン基、1,4-ブチレン基等が挙げられる。
硬化物の硬度の観点から好ましくは炭素数2~3のアルキレン基であり、更に好ましくはエチレン基及び1,2-プロピレン基である。
nは2以上15以下の整数であり、低アウトガス性及び耐折り曲げ性の観点から好ましくは7以上15以下の整数である。
【0019】
一般式(1)で表される2官能(メタ)アクリレート(B)としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=9)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=14)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=7)ジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコール(n=12)ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、nはアルキレンオキシ基の繰り返し数を意味する。以下同様とする。
これらの2官能(メタ)アクリレート(B)は、1種単独又は2種以上を併用できる。
これらのうち、硬化物の硬度の観点から好ましくは2官能アクリレートであり、更に好ましくはジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(n=9)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(n=14)ジアクリレート及びポリプロピレングリコール(n=7)ジアクリレートポリプロピレングリコール(n=12)ジアクリレートであり、特に好ましくは、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(n=9)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(n=14)ジアクリレート、ポリプロピレングリコール(n=7)ジアクリレート及びポリプロピレングリコール(n=12)ジアクリレートであり、最も好ましくはジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコール(n=7)ジアクリレート及びポリプロピレングリコール(n=12)ジアクリレートである。
【0020】
本発明の紫外線硬化性組成物は、ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)を含有する。
ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)は、ウレタン基を有する(メタ)アクリレートであれば特に制限されず、例えば、ウレタン基及び重合可能な不飽和二重結合をそれぞれ1つ有する、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。このようなウレタン基を有する(メタ)アクリレートを用いることにより、得られる硬化物の密着性及び延伸性がより向上する傾向にある。ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
CH2=CR1-COO-R2-OCONH-R3 ・・・(2)
(式(2)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は置換基を有してもよい2価の炭化水素基を示し、R3は置換基を有してもよい1価の炭化水素基を示す。)
【0021】
式中、R2で表される2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基;フェニレン基、ナフタレン基等のアリーレン基;キシリレン基等のアラルキレン基が挙げられる。この中でも粘度及び耐折り曲げ性の観点からアルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基がより好ましく、エチレン基がさらに好ましい。R2で表される2価の炭化水素基の炭素数は、粘度及び耐折り曲げ性の観点から好ましくは1~9であり、より好ましくは1~6である。
【0022】
式中、Rで表される1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基が挙げられる。この中でも粘度及び耐折り曲げ性の観点からアルキル基が好ましい。Rで表される一価の炭化水素基の炭素数は、粘度、耐折り曲げ性の観点から好ましくは1~9であり、より好ましくは2~6である。
【0023】
で表される2価の炭化水素基及びRで表される1価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、アゾ基、アジ基、チオール基、スルホ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アシル基及びアルデヒド基が挙げられる。
【0024】
ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)の分子量は、粘度及び耐折り曲げ性の観点から好ましくは500以下であり、更に好ましくは300以下である。
【0025】
ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)の具体例としては、特に制限されないが、例えば、(メチルアミノカルボニル)オキシエチレン(メタ)アクリレート、(エチルアミノカルボニル)オキシエチレン(メタ)アクリレート、(プロピルアミノカルボニル)オキシエチレン(メタ)アクリレート、(ブチルアミノカルボニル)オキシエチレン(メタ)アクリレート、(ペンチルアミノカルボニル)オキシエチレン(メタ)アクリレート、(ヘキシルアミノカルボニル)オキシエチレン(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレート(ETERCURE DR-U250等)が挙げられる。
これらのうち、粘度及び耐折り曲げ性の観点から好ましくは一般式(2)で表される化合物であり、更に好ましくは(ブチルアミノカルボニル)オキシエチレン(メタ)アクリレートであり、特に好ましくは(ブチルアミノカルボニル)オキシエチレンアクリレートである。
【0026】
本発明の紫外線硬化性組成物は、アシルフォスフィンオキサイド化合物を含有する光重合開始剤(D)を含有する。
アシルフォスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。
光重合開始剤(D)は、アシルフォスフィンオキサイド化合物以外の化合物を更に含有してもよく、例えばベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、α-アミノアルキルフェノン化合物及びオキシムエステル化合物等からなる群から選択される少なくとも一種を更に含有してもよい。ベンゾイン化合物は、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。アセトフェノン化合物は、例えばアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。アントラキノン化合物は、例えば2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。ケタール化合物は、例えばアセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。ベンゾフェノン化合物は、例えばベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド及び4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノン等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。α-アミノアルキルフェノン化合物は、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロ-ブタノン-1及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン]等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。オキシムエステル化合物は、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]及びエタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等からなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
これらの光重合開始剤(D)は、1種単独で又は2種以上を併用できる。これらのアシルフォスフィンオキサイド化合物のうち、硬化性の観点から好ましくはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドであり、更に好ましくは2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドである。
【0027】
N-置換(メタ)アクリルアミド(A)の含有量は、前記紫外線硬化性組成物の重量に基づいて硬化性及び低アウトガス性の観点から好ましくは20重量%~60重量%であり、更に好ましくは30重量%~50重量%以下である。
一般式(1)で示される2官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、前記紫外線硬化性組成物の重量に基づいて耐熱性及び耐折り曲げ性の観点から好ましくは5重量%~60重量%であり、更に好ましくは10重量%~50重量%である。
ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)の含有量は、前記紫外線硬化性組成物の重量に基づいて耐折り曲げ性及び耐熱性の観点から好ましくは1重量%~20重量%であり、更に好ましくは1重量%~10重量%である。
光重合開始剤(D)の含有量は、前記紫外線硬化性組成物の重量に基づいて硬化性及び粘度の観点から好ましくは2重量%~15重量%であり、より好ましくは2重量%~14重量%であり、更に好ましくは3重量%~13重量%である。
【0028】
本発明の紫外線硬化性組成物は、(A)、(B)及び(C)以外に、単官能(メタ)アクリレート(E)、2官能(メタ)アクリレート(F)、多官能(メタ)アクリレート(G)を更に含有してもよい。
【0029】
単官能(メタ)アクリレート(E)としては、炭素数8~18の直鎖又は分岐アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート(E1)、環式骨格を有する単官能(メタ)アクリレート(E2)が挙げられ、組成物の粘度調整のためにも使用できる。
【0030】
炭素数8~18の直鎖又は分岐アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート(E1)としては、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びイソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸やメチル(メタ)アクリレート等と天然若しくは合成アルコールとの直接エステル化、又はエステル交換反応によって容易に製造することができる。天然アルコールを用いればアルキル基は直鎖のものとなり炭素数は偶数のものとなる。合成アルコールを用いると、例えばドバノール(三菱油化製)を用いるとアルキル基は直鎖と分枝の混合したものとなり、炭素数も奇数、偶数の混合したものとなる。ダイアドール(三菱化学製)を用いるとアルキル基は直鎖と分岐の混合したものとなり、炭素数は奇数のもののみとなる。
前記の炭素数8~18の直鎖又は分岐アルキル基を有する単官能(メタ)アクリレート(E1)の内、硬化物の伸び及び弾性率の観点から、好ましくは炭素数8~18の直鎖又は分岐アルキル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートであり、更に好ましくは炭素数8~16の直鎖又は分岐アルキル基を有する単官能アルキル(メタ)アクリレートであり、特に好ましいのはオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びイソステアリル(メタ)アクリレートである。
前記の(E1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
環式骨格を有する単官能(メタ)アクリレート(E2)としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート等が挙げられる。前記の(E2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記(B)以外の2官能(メタ)アクリレート(F)としては、アルキレンジ(メタ)アクリレート(F1)、(B)以外のポリオキシアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート(F2)等が挙げられ、硬化物のガラス転移温度を上げることができる。
【0033】
アルキレンジ(メタ)アクリレート(F1)としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記の(F1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ポリオキシアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート(F2)としては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート等が挙げられる。前記の(F2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
多官能(メタ)アクリレート(G)としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びこれらのアルキレンオキシド付加物からなる群から選ばれる少なくとも1種の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである3官能又は4官能(メタ)アクリレートであり、硬化物のガラス転移温度を上げることができる。また、前記アルキレンオキシド付加物の付加モル数は1~4の整数である。付加モル数が5以上であると粘度が高くなるという問題がある。グリセリンのアルキレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物及びペンタエリスリトールのアルキレンオキシド付加物のアルキレンオキシドの炭素数は、耐熱性の観点からそれぞれ好ましくは2~3である。アルキレンオキシドは、好ましくはエチレンオキシド又はプロピレンオキシドである。
【0036】
本発明において多官能(メタ)アクリレート(G)としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、付加モル数が1~4のエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、付加モル数が1~4のプロポキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、付加モル数が1~4のエトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、付加モル数が1~4のプロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、付加モル数が1~4のエトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及び付加モル数が1~4のプロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの多官能(メタ)アクリレート(G)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、粘度の観点から好ましくはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及び付加モル数が1~4のエトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートであり、更に好ましくはトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート及び付加モル数が1~4のエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートである。
【0037】
多官能(メタ)アクリレート(G)を用いる場合、多官能(メタ)アクリレート(G)の含有量は、前記紫外線硬化性組成物の重量に基づいて耐熱性及び耐折り曲げ性の観点から、好ましくは1~10重量、更に好ましくは1~5重量%である。
【0038】
本発明の紫外線硬化性組成物は、(A)、(B)及び(C)以外に、下記一般式(3)式で示されるα-(アリルオキシメチル)アクリレート(H)を更に含有してもよい。
【0039】
【化1】
【0040】
式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の有機基を表す。R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。
【0041】
~Rがアルキル基の場合、該アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ネオペンチル基及びヘキシル基等が挙げられる。
【0042】
一般式(3)式で示されるα-(アリルオキシメチル)アクリレート(H)としては、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられ、粘度調整、耐折り曲げ性向上のために使用することができる。
前記の(H)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
一般式(3)で示されるα-(アリルオキシメチル)アクリレート(H)を用いる場合、一般式(3)で示されるα-(アリルオキシメチル)アクリレート(H)の含有量は、前記紫外線硬化性組成物の重量に基づいて、低粘度性、耐折り曲げ性及び耐熱性の観点から、好ましくは5重量%~30重量%であり、更に好ましくは10重量%~30重量%である。
【0044】
本発明の紫外線硬化性組成物は、増感剤(I)を含有してもよい。
増感剤(I)としては、チオキサントン骨格を有する増感剤及びそれ以外の増感剤が挙げられる。
チオキサントン骨格を有する増感剤としては、チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン及びOmnipol TX等が挙げられる。
チオキサントン骨格を有する増感剤以外の増感剤としては、アントラキュアーUVS-581等が挙げられる。
これらの増感剤(I)は、光感度の観点から好ましくは2,4-ジエチルチオキサントン、アントラキュアーUVS-581である。増感剤(I)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0045】
増感剤(I)を用いる場合、増感剤(I)の含有量は、前記紫外線硬化性組成物の重量に基づいて、硬化性及び光感度の観点から、好ましくは0.2重量%~10重量%であり、更に好ましくは0.5重量%~5重量%である。
【0046】
本発明の紫外線硬化性組成物は、レベリング剤(J)を含有することができる。
レベリング剤(J)としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素界面活性剤及びシリコン界面活性剤(BYK-333、TEGO TWIN 4200等)等が挙げられる。これらの内で塗布性の観点からはフッ素界面活性剤及びシリコン界面活性剤が好ましく、相溶性の観点からはオキシアルキル鎖を有する界面活性剤が好ましい。レベリング剤(J)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
レベリング剤(J)を用いる場合、増感剤(I)の含有量は、前記紫外線硬化性組成物の重量に基づいて塗布性の観点から、好ましくは0.01重量%~3重量%であり、更に好ましくは0.05重量%~1重量%である。
【0047】
本発明の紫外線硬化性組成物は、必要に応じて種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤を含有してもよい。具体的には、添加剤は、光安定化剤、表面処理剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、及び保湿剤等からなる群から選択される少なくとも1種を含有できる。添加剤を用いる場合、添加剤の総量の割合は、例えば組成物の全量に対して1.0重量%以下、0.5重量%以下、又は0.4重量%以下である。
【0048】
本発明の紫外線硬化性組成物は、上記の各成分を、ガラスビーカー、缶、プラスチックカップ等の適当な容器中にて、攪拌棒、へら等により撹拌混合すること、又は公知の混合装置(櫂型等の撹拌ばねを備えた混合装置、ディゾルバー、ボールミル及びプラネタリミキサー等)により混合すること等により得ることができる。紫外線硬化性組成物は、室温で液状であることが好ましく、25℃での粘度は、1mPa・s以上40mPa・s以下であることが好ましい。この場合、常温下でキャスティング法、インクジェット法等で塗布して成形することが可能である。この粘度が25mPa・s以下であればより好ましく、20mPa・s以下であれば更に好ましく、15mPa・s以下であれば特に好ましい。この粘度が5mPa・s以上であることも好ましく、8mPa・s以上であればより好ましい。例えばこの粘度が8mPa・s以上25mPa・s以下であることが好ましい。
【0049】
組成物の水分量は、アウトガスを低減する観点から好ましくは100ppm以下であり、更に好ましくは70ppm以下であり、特に好ましくは、50ppm以下である。
【0050】
紫外線硬化性組成物の硬化物を得るには、紫外線硬化性組成物を、公知の方法により基材に塗布した後、紫外線を照射して、硬化させる。本発明における紫外線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。
本発明の紫外線硬化性組成物の硬化に用いる紫外線は、光重合開始剤の選択により調整することができる。
前記の光重合開始剤(D)を用いた場合には200~700nmの波長を有する紫外線の照射で光硬化でき、200~400nmの波長を持つ光(紫外線)の照射により硬化することが好ましい。紫外線を発する光源としては、高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(UV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006)及びLEDが使用できる。なかでも、LEDは、その他の光源と比較して、消費電力とオゾンの発生量が少なく、ランニングコストが低く環境負荷が少ない。
本発明の紫外線硬化性組成物を光硬化するときの紫外線の照射量は、組成物の硬化性及び硬化物の可撓性の観点から好ましくは10~10,000mJ/cm、更に好ましくは20~2,000mJ/cmである。
紫外線の照射時及び/又は照射後に本発明の紫外線硬化性組成物の硬化速度を加速させる目的で、加熱を行ってもよい。加熱温度は、30℃~200℃が好ましく、更に好ましくは35℃~150℃、特に好ましくは40℃~120℃である。
【0051】
本発明の紫外線硬化性組成物を塗布する基材としては、フィルム状、シート状、板状の透明基材を使用できる。当該基材の材料は用途等に応じて適宜選択すればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート樹脂、メチルメタクリレート共重合物などのアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等が挙げられる。また、ガラス基材などの無機基材も同様に用いることが可能である。
【0052】
本発明の紫外線硬化性組成物の基材への塗布方法としては、微細液滴を連続して吐出するインクジェット方式に適用できる。
【0053】
本発明の硬化物としては、前記の基材の上に塗布等した本発明の紫外線硬化性組成物に紫外線を照射して硬化したもの等があげられる。その硬化物は各種コーティング、インキ(UV印刷インキ及びUVインクジェット印刷インキ等)、有機EL等の発光装置における封止材又は塗料用に使用できる。
【実施例0054】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
<実施例1~16及び比較例1~4>
表1の配合部数(重量部)に従い、ガラス製の容器に、N-置換(メタ)アクリルアミド(A)と、下記一般式(1)で示される2官能(メタ)アクリレート(B)と、ウレタン基を有する(メタ)アクリレート(C)と、アシルフォスフィンオキサイド化合物を含有する光重合開始剤(D)と、必要により単官能(メタ)アクリレート(E)と、2官能(メタ)アクリレート(F)と、多官能(メタ)アクリレート(G)と、一般式(3)式で示されるα-(アリルオキシメチル)アクリレート(H)と、増感剤(I)及びレベリング剤(J)とを仕込み、均一になるまで撹拌し、実施例1~16及び比較例1~4の紫外線硬化性組成物を得た。
【0056】
【表1】
【0057】
表1中の記号で表した原料の詳細は以下の通りである。
(A-1):N-アクリロイルモルホリン[ACMO:KJケミカルズ(株)製]
(A-2):N,N-ジメチルアクリルアミド[DMAA:KJケミカルズ(株)製]
(A-3):N,N-ジエチルアクリルアミド[DEAA:KJケミカルズ(株)製]
(A-4):N-n-ブトキシメチルアクリルアミド[NBMA:MCCユニテック(株)製]
(A-5):N-ヒドロキシエチルアクリルアミド[HEAA:KJケミカルズ(株)製]
(A-6):N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド[DMAPAA:KJケミカルズ(株)製]
(B-1):ジプロピレングリコールジアクリレート[NKエステルAPG-100:新中村工業(株)製、一般式(1)中、n=2]
(B-2):トリプロピレングリコールジアクリレート[Etermer EM223:長興材料有限公司 製、一般式(1)中、n=3]
(B-3):ジエチレングリコールジアクリレート[ファンクリルFA-222A:日立化成(株)製、一般式(1)中、n=2]
(B-4):ポリプロピレングリコールジアクリレート[APG-400:新中村化学(株)製、一般式(1)中、n=7]
(B-5):ポリプロピレングリコールジアクリレート[APG-700:新中村化学(株)製、一般式(1)中、n=12]
(B-6):ポリテトラメチレングリコールジアクリレート[A-PTMG-65:新中村化学(株)製、一般式(1)中、n=9]
(C-1):(ブチルアミノカルボニル)オキシエチレンアクリレート[商品名「ビスコート216」、大阪有機(株)製]
(C-2):ウレタンアクリレート[ETERCURE DR-U250:長興材料有限公司 製]
(D-1):イルガキュア819[ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]
(D-2):イルガキュアTPO[(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]
(E1-1):イソデシルアクリレート[商品名「IDAA」、大阪有機化学工業(株)製]
(E1-2):ラウリルアクリレート[商品名「LA」、大阪有機化学工業(株)製]
(E1-3):ステアリルアクリレート[商品名「STA」、大阪有機化学工業(株)製]
(E2-1):イソボルニルアクリレート[ライトアクリレートIB-XA:共栄社化学(株)製]
(E2-2):フェノキシジエチレングリコールアクリレート[A-LEN-10:新中村化学(株)製]
(F1-1):1,9-ノナンジオールジアクリレート[A-NOD-N:新中村化学(株)製]
(F1-2):1,10-デカンジオールジアクリレート[A-DOD-N:新中村化学(株)製]
(G-1):トリメチロールプロパントリアクリレート[A-TMPT:新中村化学(株)製]
(H-1):α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル[商品名「AOMA」、(株)日本触媒製](Rはメチル基、R、R、R、R及びRは水素原子)
(I-1):2,4-ジエチルチオキサントン[カヤキュアDETX-S:日本化薬(株)製]
(I-2):アントラキュアーUVS-581[増感剤:川崎化成(株)製]
(I-3):Omnipol TX[増感剤:iGM社製]
(J-1):BYK-333[シリコン界面活性剤:ビックケミー・ジャパン(株)製]
(J-2):TEGO TWIN 4200[シリコン界面活性剤:エボニック社製]
【0058】
実施例1~16及び比較例1~4の紫外線硬化性組成物の粘度並びにその硬化物の塗膜硬化性、耐折り曲げ性、低アウトガス性及び耐熱性(ガラス転移温度)を以下の試験法により測定又は評価した結果を表1に示す。
[粘度評価]
紫外線硬化性組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業(株)製 TV-25)を使用し、回転数50rpm、温度25℃の条件で測定した。粘度が25mPa・s以下であると低粘度で好適である。
【0059】
(1)塗膜硬化性評価
実施例1~16及び比較例1~4で得た各紫外線硬化性組成物を、表面処理を施した厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム[東洋紡(株)製コスモシャインA4300]に、アプリケーターを用いて膜厚20μmとなるように塗布した。続いて、LED光源紫外線照射装置[型番「FJ100 150×20 385、phoseon TECHNOLOGY(株)製、照射波長 385nm]を使用して窒素雰囲気下で照射強度200mW/cmにて露光を行なった。露光量は2000mJ/cmであった。
硬化後塗膜の光照射直後の硬化性を、指触することにより、タックの有無で評価した。
<評価基準>
○:タックなし
×:タック有り
【0060】
(2)耐折り曲げ性の評価
<評価用試験片の作製>
実施例1~11及び比較例1~4で得た各紫外線硬化性組成物を、10cm×10cm四方のポリイミド膜上にアプリケーターを用いて膜厚10μmとなるようにそれぞれ塗布した。続いて、LED光源紫外線照射装置[型番「FJ100 150×20 385、phoseon TECHNOLOGY(株)製、照射波長 385nm]を使用して窒素雰囲気下で照射強度200mW/cmにて露光を行なった。露光量は2000mJ/cmであった。耐折り曲げ性評価用の試験片を作製した。
【0061】
<耐折り曲げ性の評価>
得られた硬化物をユアサシステム機器製面状無負荷U字伸縮試験治具DMX-FSを用いて曲率半径2mmで折り曲げ試験実施し、硬化物の塗膜がポリイミド膜から剥がれる、又は塗膜が割れる(いずれかのうちで早い方)までの折り曲げ回数を測定した。
<評価基準>
A:折り曲げ回数10000回以上
B:折り曲げ回数5000回以上10000回未満
C:折り曲げ回数1000回以上5000回未満
D:折り曲げ回数1000回未満
【0062】
(3)耐熱性(硬化物のガラス転移温度)の評価
<試験片の作製>
ガラス板[商品名:GLASS PLATE、アズワン(株)製、タテ200mm×ヨコ200mm×厚さ5mm]上に、PETフィルム[商品名:ルミラーS、東レ(株)製]を貼り付け、アプリケーターを用いて硬化後の膜厚が100μmとなるように紫外線硬化性組成物を塗布した。紫外線照射装置[型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製]により、窒素雰囲気下で紫外線を1000mJ/cm照射し、紫外線硬化性組成物の硬化物で被覆されたPETフィルムを得た。
【0063】
<耐熱性(硬化物のガラス転移温度)の評価>
得られた試験片をカッターで幅5mm、長さ50mmの形状に成型した試験片を用いて、動的粘弾性測定(DMA)装置[型番「Rheogel-E4000」、(株)ユービーエム製]を用いて、DMA法により、引張モード、10HzでTgを測定した。
ガラス転移温度が高いほど、耐熱性に優れる。ガラス転移温度が80℃以上であると耐熱性が良好である。
【0064】
(4)アウトガス評価
<アウトガス評価試験サンプルの作製>
実施例1~11及び比較例1~4で得た各紫外線硬化性組成物を、ガラス板上に膜厚10μmで塗布し、窒素雰囲気下、シーシーエス株式会社製のLED-UV照射器を用いて、ピーク波長395nm、約500mW/cm2の条件で光照射して硬化させた後、容積22mLのヘッドスペース用バイアルに硬化物を約50mg入れ、バイアルを封止した。
<アウトガス評価>
続いてバイアルに封止した硬化物を110℃で30分間加熱してから、バイアル中の気相部分のアウトガスをヘッドスペース法でガスクロマトグラフに導入して分析した。その結果、得られたガスクロマトグラムのピーク面積に基づいて、硬化物から発生したアウトガスの濃度を特定した。
このときの測定条件は以下に示す通りである。
【0065】
装置:(株)島津製作所製「GC-2010 Plus」
カラム:Zebron ZB-5 0.25mm×30m
カラム温度:40~320℃(20℃/min)
オーブン温度:110℃
キャリアガス:ヘリウム
注入口圧力:90KPas
全流量:21.3mL/min
注入量:0.06mL
【0066】
アウトガスの濃度は、すべてのピーク面積の合計を硬化物の重量で除した値を1000で除して算出した。アウトガスは、50nV・s/mg未満であることが好ましく、30nV・s/mg未満であればより好ましい。
<評価基準>
A:30nV・s/mg未満
B:30以上40nV・s/mg未満
C:40以上50nV・s/mg未満
D:50nV・s/mg以上
【0067】
表1の結果より、本発明の実施例1~16の紫外線硬化性組成物は低粘度であり、かつ、その硬化物は塗膜硬化性、耐熱性、低アウトガス性、耐折り曲げ性に優れる塗膜を形成した。
一方、比較例1の紫外線硬化性組成物の硬化物は硬化性及び耐折り曲げ性に劣り、アウトガスが多い。比較例2及び3の紫外線硬化性組成物の硬化物は耐折り曲げ性に劣り、アウトガスが多い。比較例4の紫外線硬化性組成物は粘度が高く、その硬化物は耐折り曲げ性及び耐熱性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の紫外線硬化性組成物は、低粘度かつ紫外線照射による硬化性が良好であり、その硬化物は耐熱性(硬化物のガラス転移温度)及び低アウトガス性、耐折り曲げ性に優れ、高速印刷可能であるため、有機EL等の発光装置における封止材として好適に使用できる。さらに各種コーティング剤、インキ(UV印刷インキ及びUVインクジェット印刷インキ等)又は塗料用の材料としても好適に使用できる。