(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164604
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】電気圧着フェルール、フェルール取り付けのための方法、および電気接続デバイスを組み付けるための方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/20 20060101AFI20221020BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H01R4/20
H01R43/048 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022065517
(22)【出願日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】10 2021 109 486.0
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク クリングラー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シュトレロヴ
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E063CB13
5E063CC06
5E063XA02
5E085BB01
5E085BB12
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD16
5E085EE02
5E085FF01
5E085HH06
5E085HH34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】圧着直径補償手段を有する圧着フェルールを提供する。
【解決手段】電気マルチコアケーブルの電気接続デバイス用電気圧着フェルール20、特にhf圧着フェルールであって、圧着フェルールの第1の周方向フランク210を第2の周方向フランク220に一体に接続する周方向中心部200を備え、主にまたは実質的に円形の圧着断面をマルチコアケーブルの非円形または円形の内部断面に実装するために、圧着フェルール自体が、圧着フェルールを実質的に非円形の内部断面に圧着するための少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222を有する、または、圧着フェルールを実質的に円形の内部断面に圧着するための少なくとも1つの圧着直径補償手段を有している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは自動車分野のための、電気マルチコアケーブル(5)の電気接続デバイス(1)用電気圧着フェルール(20)、特にhf圧着フェルール(20)であって、前記圧着フェルール(20)の第1の周方向フランク(210)を第2の周方向フランク(220)に一体に接続する周方向中心部(200)を備えた電気圧着フェルール(20)において、
主にまたは実質的に円形の圧着断面を前記マルチコアケーブル(5)の非円形または円形の内部断面(50)に形成するために、前記圧着フェルール(20)自体が、
前記圧着フェルール(20)を前記実質的に非円形の内部断面(50)に圧着するための少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)を有する、または、前記圧着フェルール(20)を前記実質的に円形の内部断面(50)に圧着するための少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)を有していたことがある(213、223)
ことを特徴とする、電気圧着フェルール(20)。
【請求項2】
前記圧着フェルール(20)が、厳密にまたは少なくとも2つの圧着直径補償手段(212、222)を有し、または有していたことがあり(213、223)、
圧着直径補償手段(212、222)が、周方向フランク(210、220)および/または前記周方向中心部(200)に設けられる、または設けられたことがあり(213、223)、
前記圧着フェルール(20)が、その周方向フランク(210、220)ごとに厳密に1つの圧着直径補償手段(212、222)を有し、または有していたことがあり(213、223)、かつ/または、
前記圧着フェルール(20)が、その周方向中心部(200)において圧着直径補償手段(212、222)を有しない、または有していたことがない(213、223)
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気圧着フェルール(20)。
【請求項3】
それぞれの前記圧着直径補償手段(212、222)が、
前記圧着フェルール(20)に一体に設けられる、または設けられたことがあり(213、223)、
前記圧着フェルール(20)の径方向内方へと突出する突出部(212、222)として形成される、または形成されたことがあり(213、223)、
前記圧着フェルール(20)から径方向外方に突出する突出部(212、222)として形成される、または形成されていたことがあり(213、223)、かつ/または、
前記圧着フェルール(20)におけるビード(212、222)、リブ、型打ち部、折り目またはへこみとして形成される、または形成されたことがある(213、223)
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の電気圧着フェルール(20)。
【請求項4】
ビード(212、222)としての前記圧着直径補償手段(212、222)が、
実質的に前記圧着フェルール(20)の長手方向(Lr)に延びる長手方向ビード(212、222)として形成される、または形成されたことがあり(213、223)、
長手方向の両端部が前記長手方向(Lr)において前記圧着フェルール(20)の内側にあるように設けられる、または設けられたことがあり(213、223)、かつ/または、
周方向の両端部が前記圧着フェルール(20)の周方向(Ur)において前記圧着フェルール(20)の内側にあるように設けられる、または設けられたことがある(213、223)
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気圧着フェルール(20)。
【請求項5】
前記長手方向(Lr)に延在する前記圧着フェルール(20)の自由縁部は、実質的に前記長手方向(Lr)のみにおいて長さが実質的に自由であり、
前記周方向(Ur)において互いに対向して位置する前記圧着フェルール(20)の前記自由縁部が、相補的に形成され、前記圧着フェルール(20)の圧着状態において実質的に形状嵌めによって互いに対向して位置し、かつ/または、
前記圧着フェルール(20)の圧着状態において、周方向フランク(210/220)の周方向歯部が、前記周方向(Ur)において第1の前記周方向フランク(210/220)に対向して位置する前記周方向フランク(210/220)の2つの周方向歯部の間に係合する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気圧着フェルール(20)。
【請求項6】
電気圧着フェルール(20)、特にhf圧着フェルール(20)を、マルチコアケーブル(5)の電気的に剥き出しの内部断面(50)にフェルール取り付けするための方法であって、
前記方法の供給工程において、少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)を有する圧着フェルール(20)が、前記圧着フェルール(20)を前記内部断面(50)に圧着するために提供され、
前記供給工程に続いて、前記圧着フェルール(20)が、前記マルチコアケーブル(5)の電気的に剥き出しな実質的に非円形の内部断面(50)に圧着される、または、
前記少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)が、前記圧着フェルール(20)から除去され(213、223)、前記圧着フェルール(20)が、前記マルチコアケーブル(5)の電気的に剥き出しな実質的に円形の内部断面(50)に圧着される
ことを特徴とする、方法。
【請求項7】
フェルール取り付けのための準備工程において、少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)が前記圧着フェルール(20)に設けられ、
前記少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)は、前記圧着フェルール(20)の材料層(200、210、220)に、好ましくは内部に塑性的に形成される、または好ましくは内部にせり出して塑性的に形成されることを特徴とする、請求項6に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項8】
前記方法は、前記方法によって、元々は同じ前記圧着フェルール(20)を前記非円形の内部断面(50)にも前記円形の内部断面(50)にも圧着することが可能であるように設計されることを特徴とする、請求項6または7に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項9】
フェルール取り付け時に利用可能なマルチコアケーブル(5)に応じて、現在圧着されるべき圧着フェルール(20)が、前記電気的に剥き出しな実質的に非円形または実質的に円形の内部断面(50)のいずれかに圧着されることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項10】
実質的に非円形の内部断面(50)に圧着されるべき圧着フェルール(20)が、圧着直径補償手段(212、222)とともに、前記内部断面(50)のより小さいまたは最小の直径に配置されることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項11】
前記圧着フェルール(20)からの前記少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)の除去が、
前記圧着フェルール(20)の材料層(200、210、220)の平坦状態または事前屈曲状態において行われ、
前記圧着フェルール(20)の前記材料層(200、210、220)を平坦化することによって行われ、かつ/または、
前記少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)を前記圧着フェルール(20)から押し出すことによって行われる
ことを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項12】
前記圧着フェルール(20)が前記マルチコアケーブル(5)のケーブルシールド(54/55)に圧着され、
前記圧着フェルール(20)が前記内部断面(50)に圧着された後に、前記ケーブルシールド(54/55)が前記圧着フェルール(20)に折り重ねられ、かつ/または、
前記圧着フェルール(20)が請求項1から11のいずれか一項に従って形成される、または形成された
ことを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項13】
電気接続デバイス(1)、特にhf接続デバイス(1)を電気マルチコアケーブル(5)に組み付けるための方法であって、
前記方法の第1の工程(I)において、請求項6から12のいずれか一項に記載のフェルール取り付けのための方法によって、前記圧着フェルール(20)が前記マルチコアケーブル(5)のケーブルシールド(54、55)に圧着され、
前記第1の工程(I)に続く前記方法の第2の工程(II)において、内部端子(10)が前記マルチコアケーブル(5)の内部導体(51、52)に装着され、
前記第2の工程(II)に続く前記方法の第3の工程(III)において、シールドコンタクトスリーブ(30)が前記圧着フェルール(20)、または前記ケーブルシールド(55)および前記マルチコアケーブル(5)の保護被覆(56)に圧着される
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
電気接続デバイス(1)、特に、好ましくは車両分野のためのhf接続デバイス(1)であって、
前記接続デバイス(1)が、内部電気端子(10)と、圧着フェルール(20)と、電気シールドコンタクトスリーブ(30)とを備え、前記圧着フェルール(20)は、請求項1から13のいずれか一項に従って形成されていることを特徴とする、
電気接続デバイス(1)。
【請求項15】
電気接続デバイス(1)を有する電気エンティティ、特に、好ましくは車両分野のためのhfエンティティであって、
前記接続デバイス(1)が、請求項14に従って形成され、かつ/または、
前記接続デバイス(1)が、請求項13に記載の組み付け方法によって電気マルチコアケーブル(5)に取り付けられる
ことを特徴とする、電気エンティティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは自動車分野のための、電気マルチコアケーブルの電気接続デバイス用の電気圧着フェルールに関する。本発明はさらに、マルチコアケーブルの電気的に剥き出しの内部断面に電気圧着フェルールをフェルール取り付けするための方法、および電気マルチコアケーブルに電気接続デバイスを組み付けるための方法に関する。加えて、本発明は、各場合において好ましくは車両分野のための電気接続デバイスおよび電気エンティティ(electrical entity)に関する。
【背景技術】
【0002】
電気分野(エレクトロニクス、電気工学、電気学、電気エネルギー技術等)において、広範な電流、電圧、周波数および/またはデータレートを有する電流、電圧、信号および/またはデータを伝送するように機能する多数の電気コネクタ手段、すなわちコネクタデバイス、ソケット、ピンおよび/またはハイブリッドコネクタ等(以下では(電気)コネクタと(相手側コネクタとも)称する)が知られている。
低い、中程度の、または高い電圧および/または電流の領域において、特に車両分野において、そのようなコネクタは、機械的応力のかかる、温暖な、場合によっては高温の、汚染された、湿潤な、および/または化学的反応性の高い環境において比較的長期間にわたって不使用であった後、恒久的に、反復的に、かつ/または短時間で、電力、信号、および/またはデータを確実に伝送する必要がある。広範な用途に起因して、多数の特別に設計されたコネクタが知られている。
【0003】
そのようなコネクタ、および、当てはまる場合はそれに付随するハウジング(例えばコネクタ手段またはコネクタデバイスの場合)、またはより上位のハウジング(例えばコネクタデバイスの場合)は、電線、ケーブル、ケーブルハーネス等(以下では組み立て済み(電気)ケーブルと(電気エンティティとも)称する)に、または、(電力)電気的、電子光学的または電子的な構成要素または対応する集合体等(電気エンティティ)のハウジング、リードフレーム、プリント回路基板等のような電気デバイスまたは手段に、取り付けられる場合がある。
【0004】
コネクタ(ハウジングあり/なし)がケーブル、線またはケーブルハーネスに配置される場合、これはフライング(プラグ)コネクタまたはプラグ、ソケットまたはカップリングとも称され、電気的、電子光学的または電子的な構成要素、集合体等に配置される場合、これはコネクタデバイス、例えば(内蔵/搭載)コネクタ、(内蔵/搭載)プラグまたは(内蔵/搭載)ソケットなどとも称される。そのようなデバイスのコネクタはさらに、(プラグ)レセプタクル、ピンヘッダ、ピンストリップまたはヘッダとも称されることが多い。
電力工学(好ましくは三相高圧送電による、配電網における高圧電流の生成、変換、貯蔵および移送)の文脈では、それらの比較的複雑な構造に起因して、ケーブルフィッティング(cable fittings)という用語が用いられる。
【0005】
そのようなコネクタは、適切な送電を確実に行う必要があり、互いに対応する部分的に相補的なコネクタ(コネクタおよび相手側コネクタ)は通常、コネクタを相手側コネクタにまたは相手側コネクタをコネクタに恒久的かつ概して解除可能にロックおよび/または固定するためのロックデバイスおよび/または固定デバイスを有する。例えば実際の電気コンタクト手段(端子、通常は物質的に単体としてまたは一体的に形成される、例えば(圧着)コンタクト要素等)または電気コンタクトデバイス(端子、通常は単体としていくつかのまたは2つの部品から、または物質的に単体として形成される、例えば(圧着)コンタクトデバイス)を備えるまたは少なくとも有するコネクタ用の電気接続デバイスがさらに、そこに堅固に保持される必要がある。
【0006】
接続デバイスは、それ自体がいくつかの部品から形成されていてよい。ここで、接続デバイスは、例えば2つ以上の電気端子を備えまたは有していてよい。これは、例えば、1つまたは2つの内部電気端子(オスおよび/またはメス)および1つの外部端子(シールドコンタクトスリーブ)を備えまたは有し得る同軸または二軸またはツイストペアの接続デバイスの場合に当てはまる。さらに、フェルール(支持スリーブ)が、接続デバイスにおける外部端子内に設けられる場合がある。(事前)組み立て済み電気ケーブルの場合、そのような接続デバイスは、コネクタ(上記参照)として、すなわちハウジングなしで、例えばフライング方式で提供される場合がある。
【0007】
電気コネクタおよびその接続デバイスを改良するため、特に小型化によりそれらをより頑健にし、より効果的に設計し、より低コストで製造するための取り組みが、継続的に行われている。ここで、従来の接続デバイス(ここでの定義:伝送周波数が約3MHz未満のもの)とは大幅に異なるhf接続デバイス(hf:高周波数、ここでの定義:伝送周波数が3MHz超~300MHz超およびGHz範囲(約150GHz)に及ぶもの)に規則を当てはめる。これは、電気の波動特性が特にhf技術において明白なためである。電気hfプラグ接続部の場合、シグナルインテグリティの維持がますます大きな障害となることが判明しつつある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えばツイストペアケーブル、二軸ケーブル等のようなマルチコアケーブルにおけるシールドをますます卵形(長円形、oval)に近づけていくことが、ケーブル製造者の注目すべき傾向となっている。これは、マルチコアケーブルのシールドを以前のように追加のフィラーの周囲ではなくマルチコアケーブルの内部導体の周囲に直接配置する製造者がますます多くなってきているためである。しかしながら、マルチコアケーブルの絶縁被覆は、実質的に円形のままである。そのようなマルチコアケーブルの圧着接続デバイス用の従来の圧着フェルールは、もっぱら実質的に円形のシールドへの圧着に適するように設計される。したがって、本発明の目的は、改善された接続デバイスを規定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、電気圧着フェルール、特にhf圧着フェルールによって、電気圧着フェルール、特にhf圧着フェルールをフェルール取り付けするための方法により、電気接続デバイス、特にhf接続デバイスを組み付けるための方法により、電気接続デバイス、特にhf接続デバイスによって、および、電気エンティティ、特にhfエンティティによって実現される。本発明の有利な発展形、追加の特徴、および/または利点が、従属請求項および以下の説明において見出され得る。
【0010】
本発明に係る圧着フェルールは、圧着フェルールの第1の周方向フランクを第2の周方向フランクに一体に接続する周方向中心部を備え、主にまたは実質的に円形の圧着断面(外形)をマルチコアケーブルの非円形または円形の内部断面に形成するために、圧着フェルール自体が、
圧着フェルールを実質的に非円形の内部断面に圧着するための少なくとも1つの圧着直径補償手段を有する、または、圧着フェルールを実質的に円形の内部断面に圧着するための少なくとも1つの圧着直径補償手段を有していたことがある。この場合、内部断面は、ケーブルシールド、特に外部ケーブルシールドにより、またはケーブルシールドの直下に位置するマルチコアケーブルの層により形成される、マルチコアケーブルの内部断面であることが好ましい。
【0011】
圧着直径補償手段はさらに、それを用いてマルチコアケーブルの内部断面の単なる弾性変形が可能であるまたは可能であったものとして定義される。圧着直径補償手段は、特に、それを用いて、マルチコアケーブルの内部断面を塑性変形させることが可能、貫通することが可能(切開することが可能、裂開することが可能、穿孔することが可能等)等であるまたはそうであったように形成されない。圧着フェルールは、好ましくは、特に厚さが一定の、金属(シート)または金属被覆された材料層からなる。
【0012】
マルチコアケーブルの非円形の内部断面は、円形の内部断面に対して、例えばマルチコアケーブルの楕円形または卵形の内部断面を意味するものと理解されるように意図される。2つの場合のうちの1つ目は、マルチコアケーブルの非円形の内部断面の比較的小さい半径または直径を補償して、圧着フェルールの主にまたは実質的に円形の外部断面を形成することに関する。2つ目の場合は、マルチコアケーブルの円形の内部断面の全ての半径または直径の補償を省くことに関し、圧着フェルールの主にまたは実質的に円形の外部断面が同様に形成される。
【0013】
圧着フェルールは、厳密にまたは少なくとも2つの圧着直径補償手段を有していてよく、または有していたことがあってよい。圧着直径補償手段がさらに、周方向フランクおよび/または周方向中心部に設けられてよく、または設けられたことがあってよい。さらに、圧着フェルールは、その周方向フランクごとに厳密に1つの圧着直径補償手段を有していてよく、または有していたことがあってよい。加えて、圧着フェルールは、その周方向中心部において圧着直径補償手段を有していなくてよく、または有していたことがなくてよい。
【0014】
それぞれの圧着直径補償手段は、圧着フェルールに一体に設けられてよく、または設けられたことがあってよい。それぞれの圧着直径補償手段はさらに、圧着フェルールの径方向内方へと突出する突出部として形成されてよく、または形成されたことがあってよい。そのような場合、シールドコンタクトスリーブが、マルチコアケーブルの主にまたは実質的に円形の周面に圧着されてよい。ここで、マルチコアケーブルの外部導体が、圧着フェルールに折り重ねられてよい。
【0015】
それぞれの圧着直径補償手段は、圧着フェルールから径方向外方に突出する突出部として形成されてよく、または形成されていたことがあってよい。ここで、マルチコアケーブルの外部導体が、圧着フェルールに折り重ねられないことが好適である。それぞれの圧着直径補償手段はさらに、圧着フェルールにおけるビード(bead)、リブ、型打ち部、折り目またはへこみとして形成されてよく、または形成されたことがあってよい。例えばへこみなどの複数または多数の個々の比較的小さいデバイスから単一の圧着直径補償手段を組み立てる、またはこれらを再び円形の内部断面に平坦化することも可能である。
【0016】
ビードとしての圧着直径補償手段は、実質的に圧着フェルールの長手方向に延びる長手方向ビードとして形成されてよく、または形成されたことがあってよい。このビードは、長手方向の両端部が長手方向において圧着フェルールの内側にあるように設けられてよく、または設けられたことがあってよい。このビードはさらに、周方向の両端部が圧着フェルールの周方向において圧着フェルールの内側にあるように設けられてよく、または設けられたことがあってよい。
【0017】
長手方向に延在する圧着フェルールの自由縁部は、実質的に長手方向のみにおいて長さが実質的に自由であってよい。結果として、圧着フェルールのhf特性(シグナルインテグリティ)が向上する。周方向において互いに対向して位置する圧着フェルールの自由縁部は、相補的に形成されてよく、圧着フェルールの圧着状態において実質的に形状嵌め(フォームフィッティング、form-fitting)によって互いに対向して位置していてよい。加えて、圧着フェルールの圧着状態において、周方向フランクの周方向歯部(例えば三角形)は、周方向においてその(第1の前記、the first―said)周方向フランクに対向して位置する周方向フランクの2つの周方向歯部(例えば同様に三角形)の間に係合してよい。
結果として、フェルールが内部断面に圧着されたときに、シールド編組線のより線がより良好に捕捉される。
【0018】
フェルール取り付けのための本発明に係る方法では、方法の供給工程において、少なくとも1つの圧着直径補償手段を有する圧着フェルールが、圧着フェルールを内部断面に圧着するために提供される。供給工程に続いて、圧着フェルールが、マルチコアケーブルの電気的に剥き出しな実質的に非円形の内部断面に圧着される、または、
少なくとも1つの圧着直径補償手段が、圧着フェルールから除去され、圧着フェルールが、マルチコアケーブルの電気的に剥き出しな実質的に円形の内部断面に圧着される。
【0019】
圧着フェルールが内部断面に圧着されると、実質的に圧着フェルール全体が実質的に塑性変形する。圧着状態において、圧着フェルールの2つの周方向フランクは、内部断面において周方向に互いに対向して位置し、周方向フランクの自由周縁部は、互いに係合してよく、一方の周縁部が、他方の周縁部の空間を相補的な形状で占有してよい(上記参照)。
【0020】
フェルール取り付けのための準備工程において、少なくとも1つの圧着直径補償手段が圧着フェルールに設けられてよい(
図10参照)。ここで、少なくとも1つの圧着直径補償手段は、圧着フェルールの材料層に、好ましくは内部に塑性的に形成される、または好ましくは内部にせり出して塑性的に形成されてよい。これは、例えば圧着器具において(直接的に)、または実際の圧着器具の前部に取り付けられた器具において、圧着フェルールが内部断面に圧着される前に行われてよい。
しかしながら、フェルールを取り付けるのに必要な圧着フェルールは、圧着機械または圧着設備に圧着フェルールが例えばリールにおいて供給された時点で、その少なくとも1つの圧着直径補償手段を既に有している場合があるため、準備工程は任意選択的である。
【0021】
方法は、この方法によって、元々は同じ圧着フェルールを非円形の内部断面にも円形の内部断面にも圧着することが可能である(
図9参照)ように設計されてよい。フェルール取り付け時に利用可能なマルチコアケーブルに応じて、現在圧着されるべき圧着フェルールが、電気的に剥き出しな実質的に非円形または実質的に円形の内部断面のいずれかに圧着されてよい。実質的に非円形の内部断面に圧着されるべき圧着フェルールが、圧着直径補償手段とともに、内部断面のより小さいまたは最小の直径に配置される。
【0022】
圧着フェルールからの少なくとも1つの圧着直径補償手段の除去は、圧着フェルールの材料層の平坦状態(
図9参照)または事前屈曲状態において行われてよい。これは、例えば圧着フェルールの材料層を平坦化することによって実行されてよい。すなわち、例えば、圧着直径補償手段が、押圧により圧着フェルールの平面に平坦化される。圧着フェルールからの少なくとも1つの圧着直径補償手段の除去はさらに、圧着直径補償手段を圧着フェルールから押し出すことによって行われてよい。結果として、凹部、特に貫通凹部が圧着フェルールに形成されてよい。
【0023】
圧着フェルールは、マルチコアケーブルのケーブルシールドに圧着されてよい。ケーブルシールドは、圧着フェルールが内部断面に圧着された後に、場合により圧着フェルールに折り重ねられてよい。加えて、圧着フェルールは、本発明に係る圧着フェルールとして形成されてよい。ここまで、
図11も参照のこと。
【0024】
本発明に係る組み付け方法(ケーブル組み付け)では、第1の工程において、フェルール取り付けのための本発明に係る方法によって、圧着フェルールがマルチコアケーブルのケーブルシールドに圧着される(
図11参照)。第1の工程に続く第2の工程において、内部端子が、マルチコアケーブルの内部導体に装着される(
図12参照)。第2の工程に続く方法の第3の工程において、シールドコンタクトスリーブが、圧着フェルール、またはケーブルシールドおよびマルチコアケーブルの保護被覆に圧着される(
図13参照)。
【0025】
第1の工程に関して、マルチコアケーブルがその意図された位置に既にあることが好ましい。第1の工程において、マルチコアケーブルは、その保護被覆から解放された部分によって、圧着フェルールに挿入されてよく、かつ/またはその逆が行われてよい。第1の工程の後、または第2の工程において、ケーブルシールドの自由な長手方向端部が、圧着フェルールの径方向外側に折り重ねられてよい。第2の工程における内部端子の装着は、例えば圧着、(成形)溶接、はんだ付け等のための方法によって行われてよい。
【0026】
本発明に係る接続デバイスは、内部電気端子と、本発明に係る圧着フェルールと、電気シールドコンタクトスリーブとを備える。非円形の内部断面を有するマルチコアケーブルに接続デバイスが取り付けられる場合、取り付けられた圧着フェルールは、その圧着直径補償手段によって、内部断面の比較的小さいまたは最小の直径に乗る。本発明に係るエンティティは、電気接続デバイスを有し、接続デバイスは、本発明に係る接続デバイスとして形成され、かつ/または、接続デバイスは、本発明に係る組み付け方法によってマルチコアケーブルに取り付けられる。
【0027】
ここで、当該エンティティはさらに、例えばエンティティのハウジングに加えて、少なくとも1つの機械的、電気的、電子的、光学的および/または流体的な手段またはデバイスを有していてよい。そのようなエンティティは、例えば手段、デバイス、コネクタ(ツイストペアコネクタ、二軸コネクタ等)、組み立て済みマルチコアケーブル(ツイストペアケーブル、二軸ケーブル等)、アセンブリ、回路基板、構成要素、モジュール、ユニット、器具、機器、設備、システム等として形成されて(も)よい。
【0028】
模式的であって縮尺通りでない添付の図面を参照して、例示的実施形態に基づき、本発明をより以下でより詳細に説明する。各図の説明(下記参照)、参照符号のリスト、特許請求の範囲、および図面の各図において、同一、固有または同様の構成および/または機能を有する部分、要素、構成部品、ユニット、構成要素および/またはパターンは、同じ参照符号で識別されている。本発明の説明(上記参照)において説明されていない、図面に示されていない、および/または決定的でない可能な代替例、本発明の例示的実施形態に関する静的および/または動的な反転、組み合わせ等、またはその構成要素、パターン、ユニット、構成部品、要素もしくは部分が、参照符号のリストおよび/または各図の説明からさらに集められてよい。
【0029】
本発明の場合、特徴(部分、要素、構成部品、ユニット、構成要素、機能、変数等)は、肯定的構成であってもよく、すなわち存在してもよく、または否定的構成であってもよく、すなわち存在しなくてもよい。本明細書(説明(本発明の説明(上記参照)、各図の説明(下記参照))、参照符号のリスト、特許請求の範囲、図面)において、否定的な特徴は、本発明に従ってそれが存在しないことに意義がない場合、特徴として明示的に説明されていない。すなわち、実際に行われ、先行技術によって構成されない本発明は、前記特徴を省いて成り立つ。
【0030】
本明細書の特徴は、指定される方式および/または態様のみならず、別の方式および/または態様(分離、組み合わせ、置換、追加、独立、省略等)でも用いることができる。特に、説明、参照符号のリスト、特許請求の範囲および/または図面において、参照符号およびそれに割り当てられた特徴に基づいて、特許請求の範囲および/または説明における特徴を置換、追加または省略することが可能であり、その逆も然りである。さらに、特許請求の範囲における特徴は、結果としてより詳細に解釈および/または規定されてよい。
【0031】
説明の特徴は、((最初はほとんど未知の)先行技術に鑑みて)任意選択的な特徴として解釈されてもよく、すなわち、各特徴は、任意選択的な、任意のまたは好適な特徴、すなわち必須でない特徴とみなされてよい。したがって、場合によってはその周辺部を含む特徴を例示的実施形態から分離することが可能であり、そして前記特徴を一般化された発明概念に変形させることが可能である。特徴(否定的特徴)が例示的実施形態に存在しないことは、その特徴が本発明に関して任意選択的であることを示す。
【0032】
さらに、特徴に関する種類用語の場合、その特徴に関する一般的用語も暗示的に理解されてよく(場合によっては亜属へのさらなる階層的分類等)、その結果として、例えば等価効果および/または等価性を考慮して、その特徴の一般化が可能である。
【0033】
単に例示的な図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】未屈曲状態における本発明に係る圧着フェルールを示す。
図1は、
図1~
図6における圧着フェルールの斜視図を示し、ここでは、圧着フェルールは、電気マルチコアケーブルの非円形の内部断面に圧着されるように構成されている。
【
図2】未屈曲状態における本発明に係る圧着フェルールを示す。
図2は、
図1~
図6における圧着フェルールの斜視図を示し、ここでは、圧着フェルールは、電気マルチコアケーブルの円形の内部断面に圧着されるように構成されている。
【
図3】圧着直前の事前屈曲状態における本発明に係る圧着フェルールを示す。
図3は、
図1~
図6における圧着フェルールの斜視図を示し、ここでは、圧着フェルールは、電気マルチコアケーブルの非円形の内部断面に圧着されるように構成されている。
【
図4】圧着直前の事前屈曲状態における本発明に係る圧着フェルールを示す。
図4は、
図1~
図6における圧着フェルールの斜視図を示し、ここでは、圧着フェルールは、電気マルチコアケーブルの円形の内部断面に圧着されるように構成されている。
【
図5】圧着状態における本発明に係る圧着フェルールを示す。
図5は、
図1~
図6における圧着フェルールの斜視図を示し、ここでは、圧着フェルールは、電気マルチコアケーブルの非円形の内部断面に圧着されるように構成されている。
【
図6】圧着状態における本発明に係る圧着フェルールを示す。
図6は、
図1~
図6における圧着フェルールの斜視図を示し、ここでは、圧着フェルールは、電気マルチコアケーブルの円形の内部断面に圧着されるように構成されている。
【
図7】圧着フェルールがその非円形の内部断面に圧着されている領域における、マルチコアケーブルの二次元断面を示す。
【
図8】圧着フェルールがその円形の内部断面に圧着されている領域における、マルチコアケーブルの二次元断面を示す。
【
図9】
図1~
図6における圧着フェルールをマルチコアケーブルの電気的に剥き出しの内部断面にフェルール取り付けするための本発明に係る方法の一実施形態を示す。
【
図10】
図1~
図6における圧着フェルールをマルチコアケーブルの電気的に剥き出しの内部断面にフェルール取り付けするための本発明に係る方法の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、電気マルチコアケーブル5の電気接続デバイス1のための、本発明に係る圧着フェルール20、特にhf圧着フェルール20の別形の1つの実施形態(
図1~
図6)、および、電気圧着フェルール20、特にhf圧着フェルール20をマルチコアケーブル5の電気的に剥き出しの内部断面50にフェルール取り付けするための方法の2つの実施形態(
図9および
図10)の例示的実施形態に基づいて、本発明をより詳細に説明する。この場合、マルチコアケーブル5は、例えばツイストペアケーブル、二軸ケーブル等として形成されてよい。
したがって、接続デバイス1は、例えばツイストペア接続デバイス1、二軸接続デバイス1等のようなマルチコア接続デバイス1として形成されてよく、圧着フェルール20は、例えばツイストペア圧着フェルール20、二軸圧着フェルール20等のようなマルチコア圧着フェルール20として形成されてよい。
【0036】
本発明を好適な例示的実施形態によってさらに詳細に説明および例示するが、本発明は、開示の例示的実施形態によって制限されるものではなく、より基本的な性質のものである。そこから、および/または上記(本発明の説明)から、本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の変形例を導き出すことができる。本発明は、電気エンティティ(上記参照)の場合、一般に電気分野において用いることができる。ここで、地上電力工学が1つの例外となる。図面は、本発明の理解に必要な、本発明の対象の空間的部分のみを示す。コネクタおよび相手側コネクタ、端子および相手側端子等のような呼称は、同義として解釈されるべきである、すなわち相互に交換可能であってよい。
【0037】
図1~
図6は、3つの異なる状態(
図1および
図2、
図3および
図4、ならびに
図5および
図6)における、元々は同一の2つの圧着フェルール20を示す。本場合において、圧着フェルール20は、圧着フェルール20が少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222を有する、または、圧着フェルール20が少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222を有していた、すなわち少なくとも1つの圧着直径補償手段残部(former crimp diameter compensation means)213、223を有するものとして定義される。
【0038】
そのような圧着直径補償手段残部213、223は、例えば圧着フェルール20における圧着直径補償手段212、222の残留物(残分、residual)として特定することができる。これに関して、例えば
図2は、圧着フェルール20を非常に明確に示すが、
図10は、本発明の意義の範囲内において、左端において圧着フェルール20を示していない(但し、ここでは圧着可能ユニットが示されている)。これは、ここでは少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222または少なくとも1つの圧着直径補償手段残部213、223が省略されているためである。
【0039】
単一の圧着フェルール20は、好ましくは実質的に単一の材料層200、210、220(シート)から形成され、好ましくは圧着フェルール20の(第1の)周方向フランク210を圧着フェルール20の(第2の)周方向フランク220に一体に接続する周方向中心部200を備える。周方向中心部の中心は、好ましくは、圧着フェルール20の圧着開口部(
図3および
図4参照)または圧着溝穴(
図5および
図6参照)に対向して位置する。圧着フェルール20はさらに、接続デバイス1およびマルチコアケーブル5の軸方向Arとも一致する軸方向Arの長さを有する。
圧着フェルール20はさらに、その状態(下記参照)に応じて、径方向Rrの長さおよび周方向Urの長さを有し、これらの方向Rr、Urはやはり、接続デバイス1およびマルチコアケーブル5のものとも一致する。
【0040】
図1および
図2、
図3および
図4ならびに
図5および
図6はそれぞれ、
図9に示す方法に関する異なる状態の各場合における元々は同一の2つの圧着フェルール20を示す。
図1および
図2は各々、未屈曲状態の圧着フェルール20を示し、
図3および
図4は各々、例えば圧着直前の事前屈曲状態の圧着フェルール20を示し、
図5および
図6は各々、圧着状態(マルチコアケーブル5なし)の圧着フェルール20を示す。ここで、
図1、
図3および
図5の圧着フェルール20は、マルチコアケーブル5の非円形の内部断面50に圧着されるように機能し(
図7参照)、一方で
図2、
図4および
図6の圧着フェルール20は、マルチコアケーブル5の円形の内部断面50に圧着されるように機能する(
図8参照)。
【0041】
本場合において、元々は同一の圧着フェルール20は、マルチコアケーブル5の非円形の内部断面50に圧着されるのに本来適していた圧着フェルール20(
図1、
図3および
図5)が、現在はマルチコアケーブル5の円形の内部断面50に圧着されるのに適したものとなる(
図2、
図4および
図6)ように変化している点で異なる。この場合、対象の圧着フェルール20が、特にマルチコアケーブル5のケーブルシールド54、55に圧着され得る、またはこれに圧着される。この場合、ケーブルシールド54、55は、特にシールドフィルム54および/またはシールド導体55またはシールド導体編組線55を備える。
【0042】
特に、圧着直径補償手段212、222は、圧着フェルールが、その軸方向Arおよび周方向Urにおける必要な長さに加えて、好ましくは径方向Rrにおいて圧着フェルール20の内方に突出するように、圧着フェルール20に形成されまたは設けられる(
図3および
図5)。径方向Rrの外方を向くまたは圧着フェルール20から離れる方向に突出する圧着直径補償手段212、222が、場合により用いられてよい。
【0043】
(例えばマルチコアケーブル5の外形が略円形であるために、かつ/または別の理由で)マルチコアケーブル5の非円形の内部断面50に圧着されるように意図される圧着フェルール20の外形(外部輪郭)が実質的に円形となるまたは実質的に円形であるようにすべく、圧着フェルール20は、少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222を有する。ここで、少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222は、圧着直径補償手段によって、円形の内部断面50とは異なる非円形の内部断面50が、圧着フェルール20の外側において主にまたは実質的に円形の断面(圧着フェルール20の外形)に変化するように、圧着フェルール20に形成されまたは設けられる。
【0044】
圧着直径補償手段212、222の径方向Rrの寸法を決める場合、圧着フェルール20の径方向Rrの厚さを考慮する必要があるのは勿論である。これとは別に、特に実質的に周方向Urの中心のみにおける、圧着直径補償手段212、222の径方向Rrの厚さは、内部断面50の比較的小さい半径と内部断面50の比較的大きい半径との間の距離、特に内部断面50の最小半径(これは、楕円の場合には短軸半径である)とこの内部断面50の最大半径(これは、楕円の場合には長軸半径である)との間の距離の大きさである。
【0045】
選好的に、厳密に2つまたは少なくとも2つの圧着直径補償手段212、222が、圧着フェルール20に形成されまたは設けられる。場合により、2つよりも多くの圧着直径補償手段212、222が用いられてもよい。ここで、圧着直径補償手段212、222は、圧着フェルール20の回転軸としての軸方向Arに関して回転対称に、特に180°の回転対称に設けられる。圧着直径補償手段212、222は、ビード212、222、リブ、型打ち部、折り目、へこみ、等として形成されてよく、または形成されたことがあってよい。圧着直径補償手段212、222に応じて、複数または多数の個々のデバイスを用いることもできることは勿論である。
【0046】
マルチコアケーブル5への電気接続デバイス1の組み付け方法に対する関連または導入に関して、マルチコアケーブル5の内部断面50に本発明に係る圧着フェルール20を取り付ける(フェルール取り付けする)ための少なくとも2つの実施形態(
図9および
図10)の間の区別がつけられてよい。
【0047】
第1に、
図9においてフェルール取り付けに関する第1の実施形態を例として示す。ここで、少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222を有する圧着フェルール20が常に提供され、必要とされる圧着フェルール20のタイプは、圧着方法における各場合において予め設定されるまたは決定される。実質的に非円形の内部断面50のための圧着フェルール(
図9の最上部)または実質的に円形の内部断面50のための圧着フェルール(
図9の最下部)のいずれかが選択される。
【0048】
前者の場合、少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222を有する圧着フェルール20が供給工程において提供され、マルチコアケーブル5の実質的に非円形の内部断面50に圧着される。この内部断面は、例えばマルチコアケーブル5の保護被覆56から剥き出しになっている(すなわち、保護被覆から部分的または完全に剥き出しになっている、例えば保護被覆が引き抜かれまたは取り除かれている)(
図9の最上部左側から(最上部)右側、および
図11)。
【0049】
2つ目の場合、少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222を有する圧着フェルール20が供給工程において提供され、この少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222は次いで、圧着フェルール20から取り除かれる(上記参照、圧着フェルール20はこのとき少なくとも1つの圧着直径補償手段残部213、223を有する)。これに続き、圧着フェルール20は次いで、マルチコアケーブル5の実質的に円形の内部断面50に圧着される。この断面は、例えばマルチコアケーブル5の保護被覆56から剥き出しになっている(
図9の最上部左側から最下部およびそこから(最下部)右側、
図11と同様)。
【0050】
続いては、
図10においてフェルール取り付けに関する第2の実施形態を例として示す。ここで、最初に、圧着フェルール20のブランク(blank)(少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222も、少なくとも1つの圧着直径補償手段残部213、223のいずれも有していない圧着フェルールブランク)が提供される。フェルール取り付けの準備工程において、供給工程の前に、少なくとも1つの圧着直径補償手段212、222が圧着フェルール20に設けられる。これに続いて、圧着フェルール20が、マルチコアケーブル5の電気的に剥き出しな実質的に非円形の内部断面50に圧着される(
図10、
図11)。
【0051】
図11~
図13は、組み立て済みのマルチコアケーブルが得られる、マルチコアケーブル5への接続デバイス1の本発明に係る組み付け方法の一実施形態を示す。
【0052】
組み付け方法の第1の工程I(
図11の最上部から最下部、矢印)において、最初に、マルチコアケーブル5の保護被覆56の部分的な引き抜きが行われることが好ましく、そのケーブルシールド55(ここではシールド導体編組線55)が露出する。同様に、完全な引き抜き、または部分的もしくは完全な除去を用いることもできるのは勿論である。この後、圧着フェルール20がこの自由な(free、保護被覆56が除去された)長手方向部分に圧着され(フェルール取り付け)、フェルール20は、実質的に好ましくは塑性変形する。
【0053】
フェルール取り付けは、マルチコアケーブル5の内部断面50が実質的に非円形であるか(
図1、
図3、
図5および
図7参照)、または実質的に円形であるか(
図2、
図4、
図6および
図8参照)に応じて行われる(上記参照)。フェルール取り付けに続いて、保護被覆56の、場合によっては部分的にのみ除去された長手方向端部が、完全に除去される。これに続いて、好ましくはケーブルシールド54(シールドフィルム54)なしの、自由な長手方向端部の方向に圧着フェルール20の下から突出するケーブルシールド55の軸方向部分が、圧着フェルール20に折り重ねられる。
【0054】
組み付け方法の第1の工程Iに続く第2の工程II(
図12の最上部から最下部、矢印)において、まず第1に、マルチコアケーブル5の残りの自由な長手方向端部を、内部端子10に装着するために準備する。ここで、マルチコアケーブル5によっては、マルチコアケーブル5の内部導体51、52の誘電体53および/または場合によりそれぞれの電気絶縁体が、圧着フェルール20、またはケーブルシールド54の折り重ねられた部分からわずかに距離を空けて、残りの自由な端部から除去される。特に内部導体51、52の電気絶縁体とは別の誘電体53は、実質的に円形の内部断面50(
図7に加えて
図8を参照)を有するマルチコアケーブル5の場合にのみ存在することが好ましい。
これに続いて、内部端子10(好ましくは2つ)がマルチコアケーブル5(上記参照)に装着される。
【0055】
組み付け方法の第2の工程IIに続く第3の工程III(
図13の最上部から最下部、矢印)において、外部電気圧着端子30、特にシールドコンタクトスリーブ30が、マルチコアケーブル5に圧着され得る。ここで、シールドコンタクトスリーブ30は、圧着フェルール20、またはケーブルシールド54のその折り重ねられた部分に、さらに後部ではマルチコアケーブル5の保護被覆56に圧着される。事前に組み立て済み(
図12の最下部)のマルチコアケーブル5が、最上部が開口しているシールドコンタクトスリーブ30へと上方から移動される、またはその逆が行われ、かつ/または、後部が開口しているシールドコンタクトスリーブ30へと後方から移動される、またはその逆が行われる。
【0056】
高速データケーブル5の場合、例えばマルチコアケーブル5の場合は、非円形(卵形、楕円形等)の内部断面50とする傾向があるので、本発明に係る圧着フェルール20(補償(圧着)フェルール20)は、かなり多くのそのようなデータケーブル5、すなわち非円形および円形の内部断面50を有するデータケーブル5に用いることができ、そうすることで、機械的に頑健で、電気的に高信頼かつ信号安定性の高い(シグナルインテグリティの良好な)ケーブル接続部を形成することができる。さらに、相当する従来の圧着フェルール20(少なくとも1つの圧着直径補償手段なし)を非円形の内部断面50に用いる場合よりも、本発明に係る圧着フェルール20を用いることで、機械的圧着力を非円形の内部断面50により良好に印加/導入することができる。
特に、本発明に係る圧着フェルール20は、例えば同軸ケーブル5などの電磁シールド付きシングルコアケーブル5の内部断面50に圧着することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 (電気)(hf)接続デバイス
2 リール
5 (電気)(hf)マルチコアケーブル
10 (内部、電気)(hf)(圧着)端子、特にピン、タブまたはソケット端子
20 (電気)(hf)圧着フェルール
200 周方向中心部、圧着フェルール20の材料層
210 (第1の)周方向フランク、圧着フェルール20の材料層
212 圧着直径補償手段、特にビード
213 圧着直径補償手段残部、特にビード残部
220 (第2の)周方向フランク、圧着フェルール20の材料層
222 圧着直径補償手段、特にビード
223 圧着直径補償手段残部、特にビード残部
30 (外部、電気)(hf)(圧着)端子、特にシールドコンタクトスリーブ
50 マルチコアケーブル5の非円形または円形の内部断面
51 (第1の)電気的に絶縁された内部導体
52 (第2の)電気的に絶縁された内部導体
53 誘電体(実質的に円形の断面を有するケーブルのみ)
54 ケーブルシールド
55 ケーブルシールド
56 保護被覆
I 組み付け方法の第1の工程
II 組み付け方法の第2の工程
III 組み付け方法の第3の工程
Ar 軸方向
Rr 径方向
Ur 周方向
【手続補正書】
【提出日】2022-05-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは自動車分野のための、電気マルチコアケーブル(5)の電気接続デバイス(1)用電気圧着フェルール(20)、特にhf圧着フェルール(20)であって、前記圧着フェルール(20)の第1の周方向フランク(210)を第2の周方向フランク(220)に一体に接続する周方向中心部(200)を備えた電気圧着フェルール(20)において、
主にまたは実質的に円形の圧着断面を前記マルチコアケーブル(5)の非円形または円形の内部断面(50)に形成するために、前記圧着フェルール(20)自体が、
前記圧着フェルール(20)を前記実質的に非円形の内部断面(50)に圧着するための少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)を有する、または、前記圧着フェルール(20)を前記実質的に円形の内部断面(50)に圧着するための少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)を有していたことがある(213、223)
ことを特徴とする、電気圧着フェルール(20)。
【請求項2】
前記圧着フェルール(20)が、厳密にまたは少なくとも2つの圧着直径補償手段(212、222)を有し、または有していたことがあり(213、223)、
圧着直径補償手段(212、222)が、周方向フランク(210、220)および/または前記周方向中心部(200)に設けられる、または設けられたことがあり(213、223)、
前記圧着フェルール(20)が、その周方向フランク(210、220)ごとに厳密に1つの圧着直径補償手段(212、222)を有し、または有していたことがあり(213、223)、かつ/または、
前記圧着フェルール(20)が、その周方向中心部(200)において圧着直径補償手段(212、222)を有しない、または有していたことがない(213、223)
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気圧着フェルール(20)。
【請求項3】
それぞれの前記圧着直径補償手段(212、222)が、
前記圧着フェルール(20)に一体に設けられる、または設けられたことがあり(213、223)、
前記圧着フェルール(20)の径方向内方へと突出する突出部(212、222)として形成される、または形成されたことがあり(213、223)、
前記圧着フェルール(20)から径方向外方に突出する突出部(212、222)として形成される、または形成されていたことがあり(213、223)、かつ/または、
前記圧着フェルール(20)におけるビード(212、222)、リブ、型打ち部、折り目またはへこみとして形成される、または形成されたことがある(213、223)
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気圧着フェルール(20)。
【請求項4】
ビード(212、222)としての前記圧着直径補償手段(212、222)が、
実質的に前記圧着フェルール(20)の長手方向(Lr)に延びる長手方向ビード(212、222)として形成される、または形成されたことがあり(213、223)、
長手方向の両端部が前記長手方向(Lr)において前記圧着フェルール(20)の内側にあるように設けられる、または設けられたことがあり(213、223)、かつ/または、
周方向の両端部が前記圧着フェルール(20)の周方向(Ur)において前記圧着フェルール(20)の内側にあるように設けられる、または設けられたことがある(213、223)
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気圧着フェルール(20)。
【請求項5】
前記圧着フェルール(20)の長手方向(Lr)に延在する前記圧着フェルール(20)の自由縁部は、実質的に前記長手方向(Lr)のみにおいて長さが実質的に自由であり、
前記圧着フェルール(20)の周方向(Ur)において互いに対向して位置する前記圧着フェルール(20)の前記自由縁部が、相補的に形成され、前記圧着フェルール(20)の圧着状態において実質的に形状嵌めによって互いに対向して位置し、かつ/または、
前記圧着フェルール(20)の圧着状態において、周方向フランク(210/220)の周方向歯部が、前記周方向(Ur)において第1の前記周方向フランク(210/220)に対向して位置する前記周方向フランク(210/220)の2つの周方向歯部の間に係合する
ことを特徴とする、請求項1に記載の電気圧着フェルール(20)。
【請求項6】
電気圧着フェルール(20)、特にhf圧着フェルール(20)を、マルチコアケーブル(5)の電気的に剥き出しの内部断面(50)にフェルール取り付けするための方法であって、
前記方法の供給工程において、少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)を有する圧着フェルール(20)が、前記圧着フェルール(20)を前記内部断面(50)に圧着するために提供され、
前記供給工程に続いて、前記圧着フェルール(20)が、前記マルチコアケーブル(5)の電気的に剥き出しな実質的に非円形の内部断面(50)に圧着される、または、
前記少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)が、前記圧着フェルール(20)から除去され(213、223)、前記圧着フェルール(20)が、前記マルチコアケーブル(5)の電気的に剥き出しな実質的に円形の内部断面(50)に圧着される
ことを特徴とする、方法。
【請求項7】
フェルール取り付けのための準備工程において、少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)が前記圧着フェルール(20)に設けられ、
前記少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)は、前記圧着フェルール(20)の材料層(200、210、220)に、好ましくは内部に塑性的に形成される、または好ましくは内部にせり出して塑性的に形成されることを特徴とする、請求項6に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項8】
前記方法は、前記方法によって、元々は同じ前記圧着フェルール(20)を前記非円形の内部断面(50)にも前記円形の内部断面(50)にも圧着することが可能であるように設計されることを特徴とする、請求項6に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項9】
フェルール取り付け時に利用可能なマルチコアケーブル(5)に応じて、現在圧着されるべき圧着フェルール(20)が、前記電気的に剥き出しな実質的に非円形または実質的に円形の内部断面(50)のいずれかに圧着されることを特徴とする、請求項6に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項10】
実質的に非円形の内部断面(50)に圧着されるべき圧着フェルール(20)が、圧着直径補償手段(212、222)とともに、前記内部断面(50)のより小さいまたは最小の直径に配置されることを特徴とする、請求項6に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項11】
前記圧着フェルール(20)からの前記少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)の除去が、
前記圧着フェルール(20)の材料層(200、210、220)の平坦状態または事前屈曲状態において行われ、
前記圧着フェルール(20)の前記材料層(200、210、220)を平坦化することによって行われ、かつ/または、
前記少なくとも1つの圧着直径補償手段(212、222)を前記圧着フェルール(20)から押し出すことによって行われる
ことを特徴とする、請求項6に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項12】
前記圧着フェルール(20)が前記マルチコアケーブル(5)のケーブルシールド(54/55)に圧着され、
前記圧着フェルール(20)が前記内部断面(50)に圧着された後に、前記ケーブルシールド(54/55)が前記圧着フェルール(20)に折り重ねられ、かつ/または、
前記圧着フェルール(20)が請求項1から11のいずれか一項に従って形成される、または形成された
ことを特徴とする、請求項6に記載のフェルール取り付けのための方法。
【請求項13】
電気接続デバイス(1)、特にhf接続デバイス(1)を電気マルチコアケーブル(5)に組み付けるための方法であって、
前記方法の第1の工程(I)において、請求項6に記載のフェルール取り付けのための方法によって、前記圧着フェルール(20)が前記マルチコアケーブル(5)のケーブルシールド(54、55)に圧着され、
前記第1の工程(I)に続く前記方法の第2の工程(II)において、内部端子(10)が前記マルチコアケーブル(5)の内部導体(51、52)に装着され、
前記第2の工程(II)に続く前記方法の第3の工程(III)において、シールドコンタクトスリーブ(30)が前記圧着フェルール(20)、または前記ケーブルシールド(55)および前記マルチコアケーブル(5)の保護被覆(56)に圧着される
ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
電気接続デバイス(1)、特に、好ましくは車両分野のためのhf接続デバイス(1)であって、
前記接続デバイス(1)が、内部電気端子(10)と、圧着フェルール(20)と、電気シールドコンタクトスリーブ(30)とを備え、前記圧着フェルール(20)は、請求項1から11のいずれか一項に従って形成されていることを特徴とする、
電気接続デバイス(1)。
【請求項15】
電気接続デバイス(1)を有する電気エンティティ、特に、好ましくは車両分野のためのhfエンティティであって、
前記接続デバイス(1)が、請求項14に従って形成され、かつ/または、
前記接続デバイス(1)が、請求項13に記載の組み付け方法によって電気マルチコアケーブル(5)に取り付けられる
ことを特徴とする、電気エンティティ。
【外国語明細書】