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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164606
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】多孔質ポリアミドイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065715
(22)【出願日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2021069337
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森北 達弥
(72)【発明者】
【氏名】吉野 文子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 健太
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗紀
(72)【発明者】
【氏名】越後 良彰
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AF20Y
4F071AF40Y
4F071AH12
4F071BB02
4F071BC01
(57)【要約】
【課題】ミリ波等のアンテナ用フィルムとして有用な、低い誘電正接と高い比引張弾性率とが確保された多孔質ポリアミドイミド(PAI)フィルムの提供。
【解決手段】以下を特徴とする多孔質PAIフィルム。
1)誘電正接(Df)が0.0050以下である。
2)比引張弾性率が1000m/sec以上である。
このフィルムは、例えば、基材上に、PAIと溶媒とを含む溶液を塗布して塗膜を形成した後、100℃以上、300℃以下の温度で乾燥して、基材上に多孔質PAI被膜を形成させ、しかる後、基材から多孔質PAI被膜を剥離するという「乾式相分離法」を用い、この条件設定を選ぶことにより、本発明の多孔質PAIフィルムを得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を特徴とする多孔質ポリアミドイミド(PAI)フィルム。
1)10GHzでの誘電正接(Df)が0.0050以下である。
2)比引張弾性率が1000m/sec以上である。
【請求項2】
請求項1記載の多孔質PAIフィルムを用いたミリ波アンテナ用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質の低誘電性ポリアミドイミド(PAI)フィルムに関する。特に、本発明は、ミリ波等のアンテナ用フィルムとして有用な、低誘電性の多孔質PAIフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波等、周波数が1GHz~300GHzの高周波は、波長が短くなることによって、一度に大量のデータを送ることが可能となる。このためミリ波等の高周波は、近距離無線通信用途や自動車などの車載レーダーなどに活用されることが期待されている。
ミリ波アンテナを高利得化してミリ波の通信距離をできるだけ長くするためには、基板材料の誘電正接(Df)を低下させることが有効である。
一方、一般に、アンテナ等に用いる基板材料として、ポリイミド系フィルムが、耐熱性、寸法安定性、力学的特性等の観点から、広く用いられている。
その中で、ポリアミドイミド(PAI)フィルムは、ポリアミック酸を経由して製造させる通常のポリイミドフィルムとは異なり、フィルム化の際、300℃以上の高温を必要としないので、プロセスコスト的な観点から、有利な材料である。
そこで、このPAIフィルムの誘電特性を改善する方法が種々提案されている。
その中で、このフィルムを多孔化して、誘電特性を改善する、すなわち、Dfを低下させる方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、「ガラス転移温度が200℃以上、対数粘度が0.5dl/g以上のポリアミドイミド樹脂からなり、周波数1GHzで測定したときの誘電正接が0.02以下で膜厚が5~200μm」の多孔質PAI膜(フィルム)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-154028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の実施例で実際に得られた多孔質PAI膜(フィルム)のDfは、0.006~0.007程度であり、しかも、このDfは、測定周波数が1GHzでの数値であった。
測定周波数が増加するにつれDfは漸増する傾向になることを踏まえると、このDfは充分に低いとはいえず、より低減する必要があった。
また、多孔質フィルムにおいて、Dfを低減するために、気孔率を増加させることが有効であることは、既に知られていることではあるが、多孔質PAIフィルムにおいて、気孔率を増加させ、これにより低Df化を図ろうとすると、力学的特性、特に、フィルムの比引張弾性率が低下してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために鋭意研究した結果、多孔質PAIフィルムにおいて、その特性を特定のものとすることにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
本発明は、以下を特徴とする多孔質PAIフィルムに関するものである。
1)10GHzでのDfが0.0050以下である。
2)比引張弾性率が1000m/sec以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多孔質PAIフィルムは、Dfが0.0050以下という低い数値としたことにより、PAI基板としての良好な誘電特性が確保されている上、比引張弾性率が1000m/secという良好な力学的特性が確保されているので、高周波用の基板として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の多孔質PAIを構成するPAIは、主鎖にイミド結合とアミド結合とを有する高分子の総称であり、通常、トリカルボン酸とジイソシアネートとを縮合反応させることにより得られる。
【0010】
本発明の多孔質PAIフィルムのDfは、10GHzでのDfが0.0050以下であることが必要である。
Dfは0.0045以下であることが好ましく、0.0040以下であることがより好ましい。
ここで、Dfとは、誘電体中の電子が分極する際のエネルギーの指標であり、Dfが小さい程、電磁波のエネルギーが熱に変換されにくくなり、信号の減衰が抑制される。
したがって、Dfを0.0050以下とすることにより、基板材料の誘電損失を低下させることができる。
Dfは、ネットワークアナライザを用いた共振法で、10GHzで測定することにより確認することができる。
【0011】
本発明の多孔質PAIフィルムは、比引張弾性率が1000m/sec以上であることが必要である。
比引張弾性率は、1400m/sec以上とすることが好ましく、1500m/sec以上とすることがより好ましい。
比引張弾性率をこのようにすることにより、高い剛性が得られ、材料破壊をおこしにくくなり、ミリ波アンテナ等の基板材料として用いる際、良好な操作性、信頼性等を確保することができる。
比引張弾性率は、JIS K7161に基づき引張モードで弾性率を測定した後、この弾性率を密度で除した後、この平方根を求めることにより得られる数値である。
【0012】
本発明の多孔質PI系フィルムの厚みに制限はないが、通常、10μm以上、300μm以下程度であり、20μm以上、200μm以下とすることが好ましい。
【0013】
本発明の多孔質PAIフィルムの見掛け密度に制限はないが、見掛け密度は、0.15~0.45g/cmとすることが好ましく、0.20~0.35g/cmとすることがより好ましい。
見掛け密度をこのようにすることにより、多孔質PAIフィルムの気孔率が制御され、本発明の多孔質PAIフィルムのDfおよび比引張弾性を、所定の範囲とすることができる。
【0014】
本発明の多孔質PAIフィルムは、例えば、以下のような方法で得ることができる。
すなわち、基材上に、PAIと溶媒とを含む溶液を塗布して塗膜を形成した後、80℃以上、300℃以下の温度で乾燥して、基材上に多孔質PAI被膜を形成させ、しかる後、基材から多孔質PAI被膜を剥離するという「乾式相分離法」を用い、この条件設定を選ぶことにより、本発明の多孔質PAIフィルムを得ることができる。「乾式相分離法」では、塗膜乾燥の際に、相分離が誘起され、低密度の多孔質PAI構造が形成される。
【0015】
本発明の多孔質PAIフィルムを得るためのPAI溶液は、例えば、以下のような方法で得ることができる。
すなわち、先ず、略等モルのトリメリット酸(TMA)とジイソシアネートとを、含窒素極性溶媒(PAIに対する良溶媒)中、重合反応させることによりPAI溶液を得た後、これにPAIに対する貧溶媒を配合することにより、多孔質PAI被膜形成用の、光学的に均一な多孔質被膜形成用PAI溶液を得ることができる。このPAI溶液には、PAIに対する貧溶媒が配合されているので、この貧溶媒の作用により、塗膜を乾燥した際に塗膜内で相分離が誘起される。
ここで、「PAIに対する良溶媒」とは、25℃でPAIに対する溶解度が1質量%以上である溶媒をいい、「PAIに対する貧溶媒」とは、25℃でPAIに対する溶解度が1質量%未満である溶媒をいう。
【0016】
ジイソシアネートとしては、o-トリジンジイソシアネート(TODI)、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、3,3′-ジフェニルメタンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、得られる多孔質PAIフィルムの高い比引張弾性率を確保する観点から、TODIが好ましい。ここで、TMAとTODIのみからなるホモポリマは、反応溶媒に溶解しにくい傾向があるので、TODIの10~50モル%をMDIおよび/またはTDIに置換することが好ましい。
【0017】
トリレンジイソシアネート(TDI)としては、2,4-TDI、2,6-TDIまたはそれらの混合物を用いることができる。前記混合物としては、例えば、2,4-TDI/2,6-TDI=70~100/0~30のモル比のものを用いることができる。
【0018】
本発明の多孔質PAIフィルムのDfをより低減化する観点から、TMAの0.5~20モル%をダイマ酸(DA)に置換することが好ましい。
ここで、DAとは、植物系油脂を原料とするC18不飽和脂肪酸の二量化によって製造されたC36ジカルボン酸の二塩基酸を主成分とする脂肪酸であり、クローダジャパン社、築野食品工業社等などから市販品として入手することができる。
なお、TMAの一部は、テトラカルボン酸成分で置換されていてもよい。具体的には、TMAの10モル%以下であれば、ピロメリット酸無水物、3,3′,4,4′-ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3′,4,4′-ビフェニルテトラカルボン酸無水物等で置換されていてもよい。
【0019】
含窒素極性溶媒としては、アミド系溶媒、尿素系溶媒が好ましい。アミド系溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を挙げることができる。尿素系溶媒としては、例えば、テトラメチル尿素、ジメチルエチレン尿素を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、NMP、DMAcが好ましい。
なお、これらの重合溶媒は、その水分率が100ppm以下に脱水されていることが好ましい。
【0020】
PAIに対する貧溶媒としては、エーテル系溶媒が好ましい。エーテル系溶媒としては、トリグライム、テトラグライムが好ましく、これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
貧溶媒の沸点は、良溶媒の沸点よりも5℃以上高いことが好ましく、20℃以上がより好ましく、30℃以上がさらに好ましい。
貧溶媒の配合割合は、全溶媒質量に対し、40質量%以上、90質量%以下とすることが好ましく、40質量%以上、70質量%以下とすることがより好ましい。
PAI溶液におけるPAIの固形分濃度は、5質量%以上、16質量%以下とすることが好ましく、8質量%以上、14質量%以下とすることがより好ましい。
【0021】
前記PAIの重合は、例えば、以下のようにして行うことができる。
すなわち、略等モルのTMAとジイソシアネートとを、含窒素極性溶媒中、100~200℃、好ましくは、120~180℃の温度で重合反応させる。この反応において、モノマーおよび溶媒の添加順序は特に制限はなく、いかなる順序でもよい。
また、TMAと、ジイソシアネート成分とのモル比は、1/1.01~1.05とすることが好ましい。
このように、ジイソシアネート成分をTMAに対し小過剰用いたPAI溶液とすることが好ましい。重合反応に際しては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、トリエチレンジアミン(DABCO)等の塩基性化合物をTMAに対し、0.01~1モル%配合することが好ましい。
このような重合条件とすることにより高粘度のPAI溶液とすることができる。
重合後のPAI溶液(貧溶媒配合前)の溶液粘度としては、PAI濃度を20質量%とした場合の、30℃における溶液粘度として、50Pa・s以上とすることが好ましく、80Pa・s以上とすることがより好ましい。
このような高粘度のPAI溶液とすることにより、得られる多孔質PAIフィルムの低Dfを確保した上で、高い比引張弾性率とすることができる。
【0022】
PAI溶液の基材への塗布は、任意の塗布機を用いて行うことができる。塗布機としては、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター、バーコーター、ドクターブレードコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、バーリバースロールコーター等を挙げることができる。また、多層塗布することも可能であり、その際、各層のPAI溶液の組成は同じであっても異なっていてもよい。
【0023】
基材としては、金属箔(銅、アルミニウム、鉄、銀、パラジウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステンまたはそれらの合金等)、ポリエステル系フィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、芳香族ポリイミド系フィルム、フッ素樹脂系フィルム(ポリテトラフルオロエチレン等)等を挙げることができる。 これらの中で、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはアルミニウム箔が好ましい。これらの基材は、表面が平滑であることが好ましい。
また、表面に耐熱性の離型層が形成された離型用の金属箔またはプラスチックフィルムも好ましく用いることができる。これらの離型用金属箔またはプラスチックフィルムは、市販品を用いることができる。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0025】
多孔質PAIフィルムの見かけ密度、誘電正接、比引張弾性率は、前記した方法により測定した。
【0026】
また、多孔質PAIフィルムに負荷をかけた場合の材料破壊を次のように評価した。得られた多孔質PAIフィルムを幅2cm、長さ5cmに切出し、90°の角度になるまで折り曲げ、割れなかったものを○、割れたものを×とした。
【0027】
<実施例1>
ガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、TMA:1.00モル、TODI:0.82モル、MDI:0.20モル、DABCO:0.0005モルを固形分濃度が20質量%となるように、脱水されたNMP(水分率80ppm)と共に仕込み、攪拌しながら150℃に昇温して5時間反応させることにより、30℃における溶液粘度が152Pa・sで、PAI固形分濃度が20質量%のPAI溶液を得た。なお、乾燥に際しては、このPAI溶液100質量部に、テトラグライム100質量部を加え、固形分濃度が10.0質量%の多孔質被膜形成用PAI溶液を得た。次に、ポリエステルフィルム上に、得られたPAI溶液を塗布し、80℃で10分、160℃で8分乾燥後、塗膜をポリエステルフィルムから剥離した。その後、この塗膜を金枠に挟持し、窒素ガス雰囲気下、徐々に昇温し、最終的に250℃で60分乾燥することにより、厚みが40μmのPAIフィルム(A-1)を得た。
【0028】
<実施例2>
重合後のテトラグライム配合量を120質量部とし、固形分濃度9.1質量%のPAI溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(A-2)を得た。
【0029】
<実施例3>
「TMA:1.00モル」を「TMA:0.94モル、DA:0.06モル」としてPAI溶液を得たこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(A-3)を得た。
【0030】
<実施例4>
「TMA:1.00モル」を「TMA:0.99モル、DA:0.01モル」としてPAI溶液を得たこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(A-4)を得た。
【0031】
<実施例5>
ジイソシアネート成分を、「TODI:0.72モル、TDI:0.30モル」としてPAI溶液を得たこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(A-5)を得た。ここで用いたTDIは、2,4-TDI/2,6-TDI=80/20(モル比)の混合物であった。(以下のTDIも同じ。)
【0032】
<実施例6>
ジイソシアネート成分を、「TODI:0.87モル、MDI:0.15モル」としてPAI溶液を得たのち、重合後のテトラグライム配合量を80質量部とし、固形分濃度11.1質量%のPAI溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(A-6)を得た。
【0033】
<実施例7>
重合後のテトラグライム配合量を55質量部とし、固形分濃度を12.9質量%のPAI溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(A-7)を得た。
【0034】
<実施例8>
ジイソシアネート成分を、「TODI:0.62モル、MDI:0.40モル」としてPAI溶液を得たのち、重合後のテトラグライム配合量を80質量部とし、固形分濃度11.1質量%のPAI溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(A-8)を得た。
【0035】
<実施例9>
「TMA:1.00モル」を「TMA:0.90モル、DA:0.1モル」としてPAI溶液を得たのち、重合後のテトラグライム配合量を80質量部とし、固形分濃度11.1質量%のPAI溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(A-9)を得た。
【0036】
<比較例1>
ジイソシアネート成分を、「MDI:1.02モル」としてPAI溶液を得たこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質PAIフィルム(B-1)を得た。
【0037】
<比較例2>
ジイソシアネート成分を、「TDI:0.41モル、MDI:0.61モル」としてPAI溶液を得たこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質PAIフィルム(B-2)を得た。
【0038】
<比較例3>
重合後のテトラグライム配合量を50質量部とし、PAI固形分濃度13.3質量%のPAI溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(B-3)を得た。
【0039】
<比較例4>
ジイソシアネート成分を、「TODI:0.72モル、TDI:0.30モル」とし、重合後のテトラグライム配合量を50質量部として固形分濃度13.3質量%のPAI溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質PAIフィルム(B-4)を得た。
【0040】
実施例、比較例で得られた多孔質PAIフィルムの評価結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例で示したように、本発明の多孔質PAIフィルムは、Dfが0.0050以下という良好な誘電特性が確保され、かつ、1000m/sec以上という高い比引張弾性率を有し、負荷がかかった場合の材料破壊がないことが判る。
【0043】
これに対して、比較例1,2のフィルムは、比引張弾性率が低かったため、負荷をかけた場合に材料破壊が生じ、また、比較例3,4のフィルムは誘電特性が低く、高周波用の基板として適していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の多孔質PAIフィルムは、良好な誘電特性が確保され、かつ、高い比引張弾性率を有するので、高周波用の基板として好適に用いることができる。