(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164609
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体、樹脂組成物、ポリイミド、半導体チップと封止材層との間の犠牲保護層として使用されるポリイミド、及び犠牲保護層含有半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20221020BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C08G73/10
H01L25/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066334
(22)【出願日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】110113613
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】508054404
【氏名又は名称】達興材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イエ クアン リアン
(72)【発明者】
【氏名】リン チー イエン
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA06
4J043PA08
4J043PC065
4J043PC066
4J043PC145
4J043PC146
4J043QB26
4J043QB31
4J043QC02
4J043QC05
4J043RA07
4J043SA06
4J043SA07
4J043SA46
4J043SA54
4J043SA82
4J043SA85
4J043SB03
4J043SB04
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043TB03
4J043UA022
4J043UA041
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB021
4J043UB051
4J043UB152
4J043UB231
4J043UB301
4J043VA021
4J043VA022
4J043WA05
4J043XA16
4J043XB02
4J043YA06
4J043ZA23
4J043ZB47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体デバイスのパッケージング工程に使用でき且つ溶剤で除去できるポリイミドを製造するためのポリイミド前駆体を提供する。
【解決手段】二無水物と、第1と第2のジアミン化合物を含むジアミン化合物との反応物を含み、前記ジアミン化合物の総モル数に対して第1のジアミン化合物のモル数は20mol%以上であり、式(I)及び(II)の繰り返し単位を含み、R2及びR4は各々、第1及び第2のジアミン化合物による2価のジアミン残基である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二無水物とジアミン化合物との反応物を含み、
前記ジアミン化合物は、第1のジアミン化合物と第2のジアミン化合物とを含み、前記ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、前記ジアミン化合物の総モル数に対して前記第1のジアミン化合物のモル数は、20mol%以上であり、また、
式(I)及び式(II)の繰り返し単位を含み、
【化1】
式中、R1及びR3は、4価のテトラカルボン酸残基であり、
R2は、前記第1のジアミン化合物による2価のジアミン残基であり、
R4は、前記第2のジアミン化合物による2価のジアミン残基であり、
前記第1のジアミン化合物は、式(III)の構造を有し、
【化2】
前記第2のジアミン化合物は、式(IV)の構造を有し、
【化3】
式中、X
1は、少なくとも1つのアミド基を含む2価の基であり、
R
5及びR
6は、ベンゼン環において水素以外の置換基であり、
n1及びn2は、置換基の数であって、それぞれが0~4の範囲にあり、
R
5及びR
6のそれぞれは、独立してハロゲン、C
1~C
3アルキル基、C
1~C
3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものであり、
X
2は、単結合以外の2価の基であり、
R
7及びR
8は、ベンゼン環において水素以外の置換基であり、
m1及びm2は、置換基の数であって、それぞれが0~4の範囲にあり、m1とm2との合計が少なくとも1であり、
R
7及びR
8のそれぞれは、独立してヒドロキシ基、ハロゲン、C
1~C
3アルキル基、C
1~C
3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものであり、且つR
7及びR
8には、合わせて少なくとも1つのヒドロキシ基を有することを特徴とするポリイミド前駆体。
【請求項2】
前記第1のジアミン化合物は、式(III-1)または式(III-2)の構造を有し、
【化4】
式中、R
9は、ベンゼン環において水素以外の置換基であり、
n3は、置換基の数であって、0~4の範囲にあり、
R
9のそれぞれは、独立してハロゲン、C
1~C
3アルキル基、C
1~C
3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものであり、
a1は、0~3の範囲にあり、
a2は、1~3の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体。
【請求項3】
X2は、二置換メチレン基または二置換スルホニル基を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体。
【請求項4】
前記ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、前記ジアミン化合物の総モル数に対して前記第1のジアミン化合物のモル数は、20mol%~80mol%にあることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体。
【請求項5】
前記ジアミン化合物は、ソフトセグメントを有するジアミン化合物である第3のジアミン化合物を更に含み、
前記ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、前記ジアミン化合物の総モル数に対して前記第3のジアミン化合物のモル数は、30mol%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体。
【請求項6】
前記ソフトセグメントは、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのシロキサン基、少なくとも1つの脂環式基からなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項5に記載のポリイミド前駆体。
【請求項7】
前記二無水物は、1~4つの芳香環を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物を含み、
前記二無水物の総モル数を100mol%として、前記二無水物の総モル数に対して前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のモル数は、30mol%を超えることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド前駆体。
【請求項8】
前記二無水物は、脂環式テトラカルボン酸二無水物を更に含むことを特徴とする請求項7に記載のポリイミド前駆体。
【請求項9】
請求項1に記載のポリイミド前駆体と、前記ポリイミド前駆体を溶解できる溶剤と、を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
前記溶剤は、アミド系溶剤、環状アミド系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるものであることを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のポリイミド前駆体の脱水環化物であり、
式(X)及び式(Y)の繰り返し単位を含む
【化5】
ことを特徴とするポリイミド。
【請求項12】
半導体チップと封止材層との間の犠牲保護層として使用されることを特徴とする請求項11に記載のポリイミド。
【請求項13】
配線を有する半導体チップと、
少なくとも前記配線の側周面を覆っている犠牲保護層と、
少なくとも前記犠牲保護層の側周面を環状で覆っている封止材層と、を含み、
前記犠牲保護層は、請求項11に記載のポリイミドにより構成されたことを特徴とする犠牲保護層含有半導体デバイス。
【請求項14】
前記犠牲保護層は、前記配線を完全に覆っており、
前記封止材層は、前記犠牲保護層の表面を覆っていることを特徴とする請求項13に記載の犠牲保護層含有半導体デバイス。
【請求項15】
前記犠牲保護層は、前記配線の頂面が露出するように前記配線の側周面を覆っており、
前記封止材層は、前記犠牲保護層の側周面を覆っており、
前記封止材層の頂面は、前記犠牲保護層の頂面より低くまたは同一の平面に揃っていることを特徴とする請求項13に記載の犠牲保護層含有半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド及びそのポリイミドを形成するためのポリイミド前駆体に関し、特に半導体チップと封止材層との間の犠牲保護層として使用されるポリイミド及びそのポリイミドを形成するためのポリイミド前駆体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の機能に対する要求が高まると共にそのサイズに対しても更なる小型化、薄型化が要求されている。このような市場傾向に対応するために、2次元(2D)でパッケージされたチップでは集積密度(integration density)が足りず、3次元(3D)のパッケージ技術へと段々に発展している。
【0003】
2次元または3次元のパッケージング工程(Packaging Process)において、一般的に、液体の成形コンパウンド(molding compound、例えばエポキシ樹脂)でチップの表面を覆い、該液体の成形コンパウンドを硬化した後チップの表面が露出されるように削り、次の段階のパッケージを行う。
【0004】
しかしながら、硬化前の成形コンパウンドが液体のものであるので、硬化前の成形コンパウンドは、工程中にチップの配線に沿ってチップに滲入しやすく、モールドフラッシュバリ(Mold flash)が生じてチップが汚染される問題点がある。
【0005】
該問題点を解消するために、一部のパッケージング工程において、成形コンパウンドでパッケージする前に、先ず保護層でチップを保護してから、成形コンパウンドでパッケージし、チップの汚染を防止するという方法が採られている。
【0006】
該保護層に使用する材料は、殆ど非常に除去しにくい永久材料であって、光、熱硬化性を有する樹脂組成物が多く、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂(例えば特許文献1に開示された耐溶剤性があるポリイミド)が挙げられる。しかし、これらの樹脂は硬化後、溶剤などの湿式工程で除去しにくい。従って、保護層は下方の配線を保護できるが、その体積により一定の空間を占めるので、パッケージサイズに影響がある。また、ポリイミド樹脂は、一般的に耐高温、高強度の特性があるので、電気設備のパッケージング工程に使用することが多いが、成形コンパウンドの硬化工程での高温に耐えられ且つそれによる影響を受けないポリイミド樹脂は、一般的に永久材料であり、またはパッケージング工程の後に湿式工程で除去しにくいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許出願公開第201623373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、半導体デバイスのパッケージング工程に使用でき且つ溶剤で除去できるポリイミド、そのポリイミドを製造するためのポリイミド前駆体及び樹脂組成物、そのポリイミドを半導体チップと封止材層との間の犠牲保護層に使用すること、その犠牲保護層を含有する半導体デバイス、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を実現するために、本発明は、
二無水物とジアミン化合物との反応物を含み、
前記ジアミン化合物は、第1のジアミン化合物と第2のジアミン化合物とを含み、前記ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、前記ジアミン化合物の総モル数に対して前記第1のジアミン化合物のモル数は、20mol%以上であり、また、
式(I)及び式(II)の繰り返し単位を含み、
【0010】
【0011】
式中、R1及びR3は、4価のテトラカルボン酸残基であり、
R2は、前記第1のジアミン化合物による2価のジアミン残基であり、
R4は、前記第2のジアミン化合物による2価のジアミン残基であり、
前記第1のジアミン化合物は、式(III)の構造を有し、
【0012】
【0013】
前記第2のジアミン化合物は、式(IV)の構造を有し、
【0014】
【0015】
式中、X1は、少なくとも1つのアミド基を含む2価の基であり、
R5及びR6は、ベンゼン環において水素以外の置換基であり、
n1及びn2は、置換基の数であって、それぞれが0~4の範囲にあり、
R5及びR6のそれぞれは、独立してハロゲン、C1~C3アルキル基、C1~C3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものであり、
X2は、単結合以外の2価の基であり、
R7及びR8は、ベンゼン環において水素以外の置換基であり、
m1及びm2は、置換基の数であって、それぞれが0~4の範囲にあり、m1とm2との合計が少なくとも1であり、
R7及びR8のそれぞれは、独立してヒドロキシ基、ハロゲン、C1~C3アルキル基、C1~C3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものであり、且つR7及びR8には、合わせて少なくとも1つのヒドロキシ基を有することを特徴とするポリイミド前駆体を提供する。
【0016】
また、本発明は、
上記のポリイミド前駆体と、前記ポリイミド前駆体を溶解できる溶剤と、を含むことを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、
請求項1に記載のポリイミド前駆体の脱水環化物であり、
式(X)及び式(Y)の繰り返し単位を含む
【0018】
【0019】
ことを特徴とするポリイミドを提供する。
【0020】
また、本発明は、
半導体チップと封止材層との間の犠牲保護層として使用される上記のポリイミドを提供する。
【0021】
また、本発明は、
配線を有する半導体チップと、
少なくとも前記配線の側周面を覆っている犠牲保護層と、
少なくとも前記犠牲保護層の側周面を環状で覆っている封止材層と、を含み、
前記犠牲保護層は、上記のポリイミドにより構成された
ことを特徴とする犠牲保護層含有半導体デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0022】
上記のように、本発明のポリイミド前駆体の構造設計により、該ポリイミド前駆体の脱水環化物であるポリイミドは、耐液体成形コンパウンドの性質を有する上、予定の条件において少なくとも一部を除去できるので、チップのパッケージング工程において、配線を保護する保護層として使用でき、且つ、パッケージ完了後に湿式工程で除去できて、汎用性がより高い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】半導体デバイスのパッケージング工程において、本発明のポリイミドを犠牲保護層として使用する流れを示す図である。
【
図2】半導体デバイスのパッケージング工程において、本発明のポリイミドを使用する犠牲保護層の他の除去態様の流れを示す図である。
【
図3】半導体デバイスのパッケージング工程の後に、犠牲保護層の一部が除去された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的は、半導体デバイスのパッケージング工程において、チップと成形コンパウンドとの間の犠牲保護層に使用することができるポリイミドを提供する。
【0025】
該ポリイミドは、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸polyamic acid)を脱水環化することにより得られた脱水環化物であり、式(X)及び式(Y)の繰り返し単位を含むものである。
【0026】
【0027】
前記ポリイミド前駆体は、二無水物とジアミン化合物とを反応することにより得られた反応物を含み、ポリアミック酸または部分イミド化ポリアミック酸であり得る。
【0028】
前記ジアミン化合物は、第1のジアミン化合物と第2のジアミン化合物とを含み、前記ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、前記ジアミン化合物の総モル数に対して前記第1のジアミン化合物のモル数は、20mol%以上である。
【0029】
一部の実施形態において、前記ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、前記ジアミン化合物の総モル数に対して前記第1のジアミン化合物のモル数は、20mol%~80mol%にあり、他のジアミン化合物と混合して使用する際には、ポリマー鎖(polymer chain)の排列を適宜調整することができ、ポリイミドに液体成形コンパウンドに耐え得る優れた性質(以下、耐液体成形コンパウンド性と略称する)と湿式工程で除去できるという優れた性質(以下、湿式除去性と略称する)とを備えさせることが達成しやすい。
【0030】
また、前記第1のジアミン化合物と前記第2のジアミン化合物とのモル数比の値は、0.25~5.00の範囲内にあることが好ましく、1.6~3.0の範囲内にあることが更に好ましい。上記の範囲内にすることにより、優れた耐液体成形コンパウンド性を維持しながら湿式除去性を更に向上させることができる。
【0031】
前記ポリイミド前駆体は、式(I)及び式(II)の繰り返し単位を含む。
【0032】
【0033】
式中、R1及びR3は、4価のテトラカルボン酸残基である。
【0034】
R2は、前記第1のジアミン化合物による2価のジアミン残基である。
【0035】
R4は、前記第2のジアミン化合物による2価のジアミン残基である。
【0036】
前記テトラカルボン酸二無水物は、少なくとも芳香族テトラカルボン酸二無水物を含む。
【0037】
前記二無水物の総モル数を100mol%として、前記二無水物の総モル数に対して前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のモル数は、30mol%以上である。それにより、ポリイミドにおいて、配線を有するチップに対する密着性が向上できる。
【0038】
一部の実施形態において、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、1~4つの芳香環を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれるものであるが、それに限らない。
【0039】
具体的に、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物は、
1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(1,2,4,5-Benzenetetracarboxylic dianhydride、PMDA)、
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)などのハードセグメント(hard segment)含有のテトラカルボン酸二無水物、
4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4-Oxydiphthalic anhydride、OPDA)、
ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(Benzophenone-3,3’,4,4’-tetracarboxylic dianhydride、BTDA)、
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、
4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)[4,4’-(4,4’-isopropylidenediphenoxy)bis-(phthalic anhydride)、BPADA] などのソフトセグメント(soft segment)含有のテトラカルボン酸二無水物及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるものである。ソフトセグメント含有のテトラカルボン酸二無水物を多く使用すると、得られたポリイミドは、配線を有するチップに対する密着性がより優れるので、ソフトセグメント含有のテトラカルボン酸二無水物を多く使用することが好ましい。
【0040】
一部の実施形態において、前記二無水物は、脂環式テトラカルボン酸二無水物を更に含む。
【0041】
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物は、例えば、
1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(Cyclobutane-1,2,3,4-tetracarboxylic dianhydride、CBDA)、
1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(1,2,4,5-Cyclohexanetetracarboxylic dianhydride、HPMDA)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるものであるが、それに限らない。
【0042】
前記ポリイミド前駆体を合成するための二無水物が、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物と前記脂環式テトラカルボン酸二無水物とを同時に含む時には、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物と前記脂環式テトラカルボン酸二無水物とのモル数比の値を3/7より大きくすれば、それにより得られたポリイミドは、配線を有するチップに対する密着性がより優れるようになるので、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物と前記脂環式テトラカルボン酸二無水物とのモル数比の値を3/7より大きくすることが好ましい。
【0043】
前記第1のジアミン化合物は、式(III)の構造を有する。
【0044】
【0045】
式中、X1は、少なくとも1つのアミド基を含む2価の基であり、R5及びR6は、ベンゼン環において水素以外の置換基であり、n1及びn2は、置換基の数であって、それぞれが0~4の範囲にあり、R5及びR6のそれぞれは、独立してハロゲン、C1~C3アルキル基、C1~C3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものである。
【0046】
好ましくは、前記第1のジアミン化合物は、式(III-1)や式(III-2)の構造を有する。
【0047】
【0048】
式中、R9は、ベンゼン環において水素以外の置換基であり、n3は、置換基の数であって、0~4の範囲にあり、R9のそれぞれは、独立してハロゲン、C1~C3アルキル基、C1~C3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものであり、a1は、0~3の範囲にあり、a2は、1~3の範囲にある。
【0049】
一部の実施形態において、R9は、C1~C3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものである。
【0050】
具体的に、前記第1のジアミン化合物は、例えば、
4,4’-ジアミノベンズアニリド(4,4’-Diamino Benzanilide、DABA)、
N、N’-(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(4-アミノベンズアミド)(N,N’-(2,2’-bis(trifluoromethyl)-[1,1’-biphenyl]-4,4’-diyl)bis(4-aminobenzamide)、AB-TFMB)、
N、N’-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン-1,4-ジカルボキサミド(N,N’-bis(4-aminophenyl)benzene-1,4-dicarboxamide、DATA)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるものであるが、それに限らない。
【0051】
一部の実施形態において、前記第1のジアミン化合物は好ましくは、X1がモノアミド基(monoamide)の2価の基から選べる。特に、第1のジアミン化合物におけるベンゼン環においては全て水素であり、他の置換基がない場合(即ち、n1、n2及びa1が全て0)、X1がモノアミド基の2価の基であることが更に好ましく、例えばDABAである。このタイプのジアミン化合物は、立体障害(steric hindrance)がより小さいので、第2のジアミン化合物と合わせて使用する時に、分子間の距離を適切にさせることができ、整った堆積構造に形成できて、アミド基の間またはアミド基とヒドロキシ基との間の水素結合でより相互作用しやすくなる。従って、パッケージング工程において、高低温の温度変化を経る時に、液体成形コンパウンド(例えばエポキシ樹脂組成物)が滲入しにくく、同時に湿式除去性を有するので、優れた耐液体成形コンパウンド性及び優れた湿式除去性を呈する。
【0052】
前記第2のジアミン化合物は、式(IV)の構造を有する。
【0053】
【0054】
式中、X2は、単結合以外の2価の基であり、R7及びR8は、ベンゼン環において水素以外の置換基であり、m1及びm2は、置換基の数であって、それぞれが0~4の範囲にあり、且つm1とm2との合計が少なくとも1であり、R7及びR8のそれぞれは、独立してヒドロキシ基、ハロゲン、C1~C3アルキル基、C1~C3ハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれるものであり、且つR7及びR8には、合わせて少なくとも1つのヒドロキシ基を有する。
【0055】
一部の実施形態において、R7及びR8のそれぞれには、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する。
【0056】
一部の実施形態において、X2は、単結合以外且つベンゼン環を有しない2価の基である。
【0057】
一部の実施形態において、X2は、二置換メチレン基(disubstituted methylene group)または二置換スルホニル基(disubstituted sulfonyl group)より選ばれるものである。前記二置換メチレン基の置換基は、具体的にハロゲン化アルキル基またはアルキル基であることができ、-CH3または-CF3であることが好ましい。
【0058】
具体的に、前記第2のジアミン化合物は、例えば、
2,2―ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-amino-4-hydroxyphenyl)hexafluoropropane、BisAPAF)、
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(2,2-Bis(3-amino-4-hydroxylphenyl)propane、BAP)、
4,4’-スルホニルビス(2-アミノフェノール)(4,4’-sulphonylbis(2-aminophenol)、BAS)及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるものであるが、それに限らない。
【0059】
本発明の効果に影響しない限り、前記ジアミン化合物は、他のジアミン化合物を更に含むことができ、その中で、第3のジアミン化合物を含むことができる。
【0060】
前記第3のジアミン化合物は、ソフトセグメントを有するジアミン化合物であり、且つ、前記ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、前記ジアミン化合物の総モル数に対して前記第3のジアミン化合物のモル数は、30mol%以下である。
【0061】
前記ソフトセグメントは、構造中に分子内回転(intramolecular rotation)が生じやすい基により形成された1つまたは複数のセグメントを有し、式(V)で示される。
【0062】
【0063】
式中、Y1~Y3は、エーテル基、シロキサン基、アルキレン基、脂環式基からなる群より選ばれるものであり、且つ、b1+b2+b3>0である。
【0064】
一部の実施形態において、前記第3のジアミン化合物のソフトセグメントは、シロキサン含有の2価の基またはエーテル含有の2価の基であり、例えば、ジメチルシロキサン(dimethylsiloxane)の繰り返し単位、エチレンオキシド(ethylene oxide)の繰り返し単位またはプロピレンオキシド(Propylene Oxide)の繰り返し単位が挙げられる。
【0065】
また、優れた耐液体成形コンパウンド性、優れた湿式除去性及び優れた密着性を維持するために、前記第3のジアミン化合物の分子量は2000以下であることが好ましい。
【0066】
具体的に、前記第3のジアミン化合物は、例えば
ポリ(プロピレングリコール)ジアミン(O,O’-Bis(2-aminopropyl)polypropyleneglycol)、
1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(3,3’-(1,1,3,3-tetramethyldisiloxane-1,3-diyl)bispropylamine)、
直鎖である脂肪族側鎖を含む脂肪二量体ジアミン(Fatty dimer diamine、FDD)からなる群より少なくとも1種が選ばれるものであるが、それに限らない。
【0067】
前記FDDは、式(VI)の構造を有する。
【0068】
【0069】
式中、Y4は、2価の炭化水素基、ベンゼン環、脂環式化合物、シクロアルケン(Cycloalkene)などであることができ、M1、M2は、2価の炭化水素基、エーテル基、シロキサン基などであることができ、b4~b5は、繰り返し単位の数であって、0を超え且つ100以下であり、M3、M4は、水素、2価の炭化水素基、エーテル基、シロキサン基などであることができ、b6~b7は、M3、M4の2価の炭化水素基、エーテル基、シロキサン基などからなる群より選ばれる繰り返し単位の数であって、0を超え且つ100以下である。
【0070】
また、一部の実施形態において、前記ジアミン化合物は、他種類のジアミン化合物を更に含むことができる。
【0071】
前記ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、前記ジアミン化合物の総モル数に対して前記他種類のジアミン化合物のモル数は、10mol%以下である。
【0072】
具体的に、前記他種類のジアミン化合物は、第1のジアミン化合物、第2のジアミン化合物及び第3のジアミン化合物以外の芳香族ジアミン化合物であり、例えば、
4,4’- ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-diaminodiphenyl ether、ODA)、
4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-Diaminodiphenyl sulfone、DDS)、
2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(Bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl] hexafluoropropane、HFBAPP)、
9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(9,9-Bis(4-aminophenyl)fluorene、FDA)、
2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール-5-アミン(2-(4-Amino-Phenyl)-Benzooxazol-5-Ylamine、APABO)、
テレフタル酸ビス(4-アミノフェニル)(Bis(4-aminophenyl) terephthalate、ABHQ)、
2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2‘-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)、
1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-Bis(4-aminophenoxy)benzene、TPE-R)、
3,3’-ジヒドロキシベンジジン(3,3’-Dihydroxybenzidine、HAB)、からなる群より少なくとも1種が選ばれるものであるが、それに限らない。
【0073】
詳しく説明すると、前記ポリイミドの合成は、先ず選ばれた二無水物及びジアミン化合物を溶剤に溶解し、該ジアミン化合物及び該二無水物のモル数比を約0.97:1~1.03:1の範囲に制御し、該二無水物及び該ジアミン化合物を予定の反応温度で反応させてポリイミド前駆体に形成して、該溶剤及び該溶剤に溶解できるポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を得る。該樹脂組成物を得た後、該樹脂組成物中のポリイミド前駆体を高温加熱または化学触媒の方法で脱水し、脱水環化反応を行うことにより前記ポリイミドが得られる。
【0074】
前記溶剤は、反応物及び重合物を溶解できる有機溶剤であればよく、特定の溶剤または組み合わせを限定しない。
【0075】
一部の実施形態において、前記溶剤は、アミド系溶剤、環状アミド系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれるものである。
【0076】
具体的に、前記溶剤は、例えば
N,N-ジエチルホルムアミド(N,N-Diethylformamide、DEF)、
N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-Dimethylformamide、DMF)、
N,N-ジメチルアセトアミド(N,N-Dimethylacetamide、DMAC)、
N-メチル―ε-カプロラクタム(N-Methylcaprolactam)、
ジメチルスルホキシド(Dimethyl Sulfoxide、DMSO)、
N-メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone、NMP)、
γ―ブチロラクトン(gamma-butyrolactone、GBL)、
プロピレングリコールメチルエーテルアセタート(Propylene glycol methyl ether acetate、PGMEA)、
テトラメチル尿素(Tetramethylurea)、
ヘキサメチルリン酸トリアミド(hexamethylphosphoric triamide、HMPA)、
ピリジン、
1-メトキシ-2-プロパノール(1-methoxy-2-propanol)、
酢酸n-ブチル(butyl acetate)等の溶剤からなる群より選ばれるものである。反応物及び重合体が析出されない限り、上記の有機溶剤を1種を選んで使用しまたは2種以上を混合して同時に使用することができる。
【0077】
本発明のポリイミドは、優れた耐液体成形コンパウンド性と除去できる特性を有するので、パッケージング工程において該ポリイミドを使用してチップを保護して、高温パッケージの工程中にチップが液体の成形コンパウンドに滲入されて汚染されることを防止できる。且つ、パッケージング工程後、該ポリイミドが安定に存在してチップを保護できる以外、例えばO2プラズマまたはCF4プラズマなどの乾式エッジングで、或いは、例えば無機塩基(例えば水酸化ナトリウム)または有機塩基(例えば、
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Tetramethylammonium hydroxide、TMAH)、
モノエタノールアミン(Monoethanolamine、MEA)などの洗浄液を使用する湿式工程で、予定の条件で部分的にまたは完全に除去して、保護されたチップの配線を露出させて、チップの後の配線における電気的接続の設計がより柔軟になり汎用性がより高くなる。
【0078】
また、本発明のポリイミドは、半導体チップと封止材層との間の犠牲保護層として使用されることができる。
【0079】
それにより、本発明の犠牲保護層含有半導体デバイスは、配線を有する半導体チップと、少なくとも前記配線の側周面を覆っている犠牲保護層と、少なくとも前記犠牲保護層の側周面を環状で覆っている封止材層と、を含み、前記犠牲保護層は、本発明のポリイミドにより構成されたものである。
【0080】
図1は半導体デバイスのパッケージング工程において、本発明のポリイミドを犠牲保護層として使用する流れを示す図である。
【0081】
図2は半導体デバイスのパッケージング工程において、本発明のポリイミドを使用する犠牲保護層の他の除去態様の流れを示す図である。
【0082】
図3は半導体デバイスのパッケージング工程の後に、犠牲保護層の一部が除去された状態を示す断面図である。
【0083】
具体的には、
図1を参照すると、本発明のポリイミドは、半導体デバイスのパッケージング工程において、半導体チップ100の配線101と液体成形コンパウンドとの間の犠牲保護層200として使用されている。
【0084】
本発明のポリイミドを半導体チップ100と液体成形コンパウンドとの間の犠牲保護層200として使用する際、周知の液体成形コンパウンドでパッケージを行う前、先ず本発明のポリイミド前駆体を含む樹脂組成物を、配線101を含有する半導体チップ100の表面に塗布し、そして、高温反応を行うことにより該樹脂組成物中のポリイミド前駆体を高温で脱水環化反応させ且つ溶剤を除去した後、半導体チップ100の表面に、ポリイミド樹脂により構成され且つ配線101を完全に覆っている、耐液体成形コンパウンドの犠牲保護層200が形成される。
【0085】
従って、その後、犠牲保護層200が形成された半導体チップ100を異なるサイズにカット且つ他のパッケージ基板102に移した後、液体成形コンパウンドで犠牲保護層200の表面を覆うようにパッケージすることで封止材層300を形成して、パッケージされた部品を形成した。或いは、犠牲保護層200が形成された後、先ず犠牲保護層200の表面を覆うように封止材層300を形成してからカット及び他のパッケージ基板102に移してパッケージされた部品を形成した。
図1は、犠牲保護層200が形成された後、鎖線で示されるカット線に沿ってカットし且つ他のパッケージ基板102に移した後、封止材層300を形成する方法を例として説明する。
【0086】
半導体チップ100は犠牲保護層200に保護されているので、従来の液体成形コンパウンドが配線101に沿って滲入して半導体チップ100を汚染することを防止できる。
【0087】
また、複数のチップの積層パッケージを更に行う際、カットして移した半導体チップ100の表面を覆っている封止材層300及び犠牲保護層200を、配線101の頂面にある一部の犠牲保護層200が残るように削り(
図1に示されるように、封止材層300が犠牲保護層200の側周面を環状に覆っている)、そして、湿式(または乾式)工程で配線101の頂面にある一部の犠牲保護層200を除去し(その時に封止材層300の頂面は、犠牲保護層200の頂面と実質同一の平面に揃っている)、或いは、半導体チップ100の表面を覆っている封止材層300及び犠牲保護層200を、配線101の頂面が露出されるように削り(
図2に示されるように、その時に封止材層300の頂面は、犠牲保護層200の頂面と実質同一の平面に揃っている)、それにより、外部に電気的に接続する際、配線101の側周面1011を覆っている残りの犠牲保護層200は安定に存在して配線101を保護する以外、本発明のポリイミドは湿式または乾式で更に除去できるので、必要に応じて配線101の側周面1011を覆っている残りの犠牲保護層200を除去して、配線101の側周面1011を更に露出させて、配線101の電気的接続の設計の柔軟性をより向上させることができる。
【0088】
図1及び
図2は、パッケージ後に犠牲保護層200を完全に除去して配線101の側周面1011を露出させることを例として説明している。しかし、実際に実施する際、
図3を参照して、必要に応じて犠牲保護層200の一部のみを除去することもできる。犠牲保護層200は、一部が除去される時に、残りの犠牲保護層200aの頂面は封止材層300の頂面より低い。
【0089】
以下、実施例(E1~E23)及び比較例(CE1~CE8)を用いて、異なるポリイミドに使用する二無水物及びジアミン化合物の種類、比例を説明し、且つそれらのポリイミドの評価結果により、本発明のポリイミドに関わる特性を更に説明する。
【0090】
これらの実施例(E1~E23)及び比較例(CE1~CE8)に使用する二無水物及びジアミン化合物の構造式、化学名称(略称)、CAS登録番号は、表1及び表2に示される。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
ポリイミドの製造条件:
実施例E1~E23及び比較例CE1~CE8において、使用したジアミン化合物と使用した二無水物とのモル数比は、全部0.98:1に制御し、且つ同じ反応条件で行った。
反応条件:
1Lの反応釜に温度計、窒素進入孔及び攪拌棒装置を設置した。先ず、155gのN,N-ジエチルホルムアミド(以下、「DEF」と略称する)を反応釜に添加して200rpmで攪拌し、そして、モル数比が異なるジアミン化合物を155gのDEFと混合した後反応釜に添加し、ジアミン化合物が全部溶けた後、二無水物と80gのDEFとを反応釜に添加した。
【0095】
そして室温で16時間攪拌して、ジアミン化合物と二無水物とを反応させてポリイミド前駆体(ポリアミック酸)に形成して、該ポリイミド前駆体とDEFとを含む樹脂組成物を形成した。そして、樹脂組成物を粘度(25℃)が4000cP~6000cPになるまで希釈するために、DEFを樹脂組成物に更に添加して、固形分(solid content)が18wt%~23wt%である500gの樹脂組成物を得た。
【0096】
回転塗布の方法で該樹脂組成物をガラス基板に塗布して、該ガラス基板の表面に塗布膜を形成した。回転塗布は、厚さが約20μmである膜を形成できる回転速度に設定した。
【0097】
最後に、該塗布膜を50℃で5分間、90℃で5分間の予備加熱を行い、そして、230℃で60分間の硬化加熱を行って、ポリイミド前駆体を脱水環化反応させて、該ガラス基板にポリイミドにより構成されたポリイミド膜(
図1の犠牲保護層200に相当する)が形成された。
【0098】
実施例E1~E23及び比較例CE1~CE8で得られたポリイミド膜に対して、パッケージング工程を模擬する耐液体成形コンパウンド性のテスト、湿式除去性のテスト及び密着性(クロスカット)テストを行った。
耐液体成形コンパウンド性のテスト:
封止材層は液体成形コンパウンドを塗布してから高温(約120℃~180℃)条件で硬化することにより得るものであるので、耐液体成形コンパウンド性のテストによりポリイミドの高温における液体成形コンパウンド(LMC)に対する耐性を模擬する。
耐液体成形コンパウンド性のテスト方法:
液体成形コンパウンド(LMC)を各実施例及び比較例で得られたガラス基板に形成されたポリイミド膜に滴下し、出力圧力が10kgw/cm2の機械で該液体成形コンパウンドを加圧しながら、該液体成形コンパウンドを120℃に加熱した後10分間維持してから、230℃に加熱した後1時間維持して、液体成形コンパウンド(LMC)を硬化させて封止材層に形成することで、120℃耐液体成形コンパウンド性のテストを完了した。
【0099】
該液体成形コンパウンドは、エポキシ樹脂系封止材(NAGASE CHEMTEX社、商品名:EPOXY RESIN T693/R4000)を使用した。
耐液体成形コンパウンド性の評価:
耐液体成形コンパウンド性のテストが完了した後、ガラス基板のポリイミド膜側の反対側から悪化の状況を観察する。ポリイミド膜は、液体成形コンパウンドと混合しまたはヒビが生じた場合に失敗(×)と判定し、異状が発見されなかった場合に合格(〇)と判定する。
湿式除去性のテスト:
湿式除去性のテストにより、パッケージ後のポリイミドの除去特性を確認する。
湿式除去性のテスト方法:
120℃耐液体成形コンパウンド性のテストを行ったサンプルを用いて、ポリイミド膜が露出するまで該サンプルの表面に形成された封止材層を削って除去し、そして該サンプルを50℃の現像液(台湾Jayray Hi-Tech社、商品名:920)に浸入して、該ポリイミド膜の湿式除去性を評価する。
湿式除去性の評価:
目視確認方法で該ポリイミド膜が全部除去されたことを確認した後取り出して、全部除去にかかった時間を記録する。
【0100】
×:溶解しない
△:全部除去にかかった時間が10分を超えた
〇:全部除去にかかった時間が6分~10分内
◎:全部除去にかかった時間が6分未満
クロスカットテスト(碁盤目試験):
クロスカットテストによりポリイミド膜の膜面の靱性及び基材に対する密着性を確認して、ポリイミド膜のカット工程における操作性を評価する。
クロスカットテスト方法:
ASTM D3359テープ試験による接着性を測定するための標準試験法に基づいて各実施例及び比較例で得られたポリイミド膜に対して膜面の靱性及び基材に対する密着性を測定した。
【0101】
使用したテープ:3M社製の610クロスカットテストテープ
クロスカットテスト評価:
【0102】
【0103】
実施例E1~E23及び比較例CE1~CE8において、使用したジアミン化合物と使用した二無水物の種類、比例、得られたポリイミド膜の評価結果は、表3~表6に示される。
【0104】
なお、使用したジアミン化合物と二無水物のモル数の比は0.98:1であるため、わかりやすくするために、表3~表6におけるジアミン化合物の使用量は、ジアミン化合物98モル当たりのモル数で表され、表3~表6における二無水物の使用量は、二無水物100モル当たりのモル数で表される。例えば、ジアミン化合物の使用量の総量が0.98モルの場合、E1の第1のジアミン化合物の使用量は0.20モルであり、二無水物の使用量の総量が1.00モルの場合、E1のODPAの使用量は0.80モルである。
【0105】
【0106】
【0107】
表3及び表4に示される結果によれば、ポリイミドの構造中に第1のジアミン化合物及び第2のジアミン化合物による構造を同時には有しない場合(表4、CE2~CE8)、ポリイミドが電子デバイスの犠牲保護層として使用される時に必要とされる耐液体成形コンパウンド性及び湿式除去性を同時に満足できない。
【0108】
CE1によれば、ポリイミドの構造中に第1のジアミン化合物及び第2のジアミン化合物による構造を同時に有しても、第1のジアミン化合物の使用量が足りない場合、湿式除去性が上がったが、耐液体成形コンパウンド性が悪い。
【0109】
また、表3に示される結果によれば、ポリイミドの構造中に第1のジアミン化合物及び第2のジアミン化合物による構造を同時に有し、且つ、ジアミン化合物の総モル数を100mol%として、該ジアミン化合物の総モル数に対して使用した該第1のジアミン化合物のモル数が20mol%以上である場合、優れた耐液体成形コンパウンド性及び優れた湿式除去性を同時に有するので、電子デバイスの犠牲保護層に好適であって、パッケージング工程中に液体成形コンパウンドに影響されないようにチップを保護することを達成できる。
【0110】
【0111】
表5に示される結果によれば、脂環式酸二無水物の添加により適度にポリイミド膜の靱性、密着性及び湿式除去性を調整できるが、二無水物の総モル数を100mol%として、該二無水物の総モル数に対して添加した脂環式酸二無水物のモル数が30mol%を超えると、得られたポリイミドの基材との密着性が下がる。
【0112】
また、表5に示される結果によれば、第1のジアミン化合物のモル数比が高い(70~80)場合、他種類のジアミン化合物や脂環式酸二無水物を添加することにより、ポリイミドの靱性及び密着性を調整できる
【0113】
【0114】
表6に示される結果によれば、本発明のポリイミドは、ソフトセグメントを有する第3のジアミン化合物の添加により湿式除去性を上げることができ、第3のジアミン化合物のソフトセグメントが複数のエーテル基(ポリエーテル基)または脂環式基(E-19~E-23)である場合、湿式除去性以外にも、ポリイミド膜の靱性及び密着性をも調整できて、パッケージング工程及びパッケージ後のカット工程に更に好適である。
【0115】
上記の説明によれば、本発明のポリイミド前駆体の構造設計により、本発明のポリイミドは、アミド基を有する第1のジアミン化合物による構造及びヒドロキシ基を有する第2のジアミン化合物による構造を有して、立体障害がより小さいので、分子間の距離を適切にさせることができ、整った堆積構造に形成できて、アミド基の間またはアミド基とヒドロキシ基との間の水素結合の相互作用がしやすくなり、優れた堆積緻密度を達成する。従って、本発明のポリイミドは、優れた耐液体成形コンパウンド性を有し、同時にポリマーのアミド基とヒドロキシ基との比率の組み合わせにより、優れた耐液体成形コンパウンド性を維持しながら、ポリイミドの湿式除去性を上げることができる。
【0116】
また、芳香族酸二無水物と脂環式酸二無水物との組み合わせにより、ポリイミドは、より優れた湿式除去性以外にも、適切な膜靱性及び密着性を有して、パッケージング工程において、チップ(基材)との密着性が向上し、耐液体成形コンパウンド性を更に上げられ、その後のカット工程にも適応できる。
【0117】
更に、本発明のポリイミドは、湿式除去性を有するので、パッケージ完了後に除去できて、後の工程における調整可能性(adjustable)が高く、汎用性がより高い。
【0118】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のポリイミド前駆体は、本発明のポリイミドに形成でき、該ポリイミドは、パッケージング工程に犠牲保護層として使用されることに好適である。
【符号の説明】
【0120】
100 半導体チップ
101 配線
102 パッケージ基板
200、200a 犠牲保護層
300 封止材層