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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164612
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20221020BHJP
   H04N 1/12 20060101ALI20221020BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H04N1/04 101
H04N1/12
G06T1/00 430G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066651
(22)【出願日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021069087
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北西 貴大
【テーマコード(参考)】
5B047
5C072
【Fターム(参考)】
5B047AA01
5B047AB04
5B047BA01
5B047BB02
5B047BC11
5B047CA19
5B047CB05
5B047CB06
5B047CB17
5B047DB01
5C072AA01
5C072BA11
5C072BA15
5C072CA05
5C072CA07
5C072CA12
5C072DA04
5C072DA25
5C072EA06
5C072EA07
5C072NA01
5C072NA04
5C072QA12
5C072RA02
5C072UA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の光源を同時に点灯させることによって発生するノイズを低減する画像読取装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置は、読取対象に光を照射する複数の光源73r、73g、73bと、複数の光源により光を照射された読取対象である原稿を搬送媒体Sからの光を受光し、且つ、受光した光から画像信号を生成する画像読取手段70a(70b)と、複数の光源の点灯区間を制御することで画像読取手段70aの受光量を調整する光量調整手段と、を備える。光量調整手段は、複数の光源のうちの第一の光源73rが消灯する時に、複数の光源のうちの第二の光源73gを点灯する順次点灯制御を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象に光を照射する複数の光源と、
前記複数の光源により光を照射された前記読取対象からの光を受光し、且つ、前記受光した光から画像信号を生成する画像読取手段と、
前記複数の光源の点灯区間を制御することで前記画像読取手段の受光量を調整する光量調整手段と
を備え、
前記光量調整手段は、前記複数の光源のうちの第一の光源が消灯する時に前記複数の光源のうちの第二の光源を点灯する順次点灯制御を実行することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記画像読取手段は、相対的に移動する前記読取対象の画像を読取ラインごとに読み取るラインセンサであり、
前記光量調整手段は、前記読取ライン単位での読み取り区間を複数の周期に分割し、分割された各周期内において前記順次点灯制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記周期内における前記複数の光源の点灯区間の総和である周期内総点灯時間が前記周期の長さと一致しない場合に、前記複数の光源それぞれの点灯区間の比率を保持しつつ、前記周期内総点灯時間が前記周期の長さと一致するように前記複数の光源の点灯区間を変更する変更手段を有することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画像読取手段が受光した受光量に所定の補正係数を乗算するゲイン制御部を有し、
前記変更手段による前記複数の光源の点灯区間の変更により、前記画像読取手段の受光量が目標光量を下回る場合に、前記ゲイン制御部における補正係数を増加させることを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記変更手段による前記複数の光源の点灯区間の変更により、前記画像読取手段の受光量が目標光量を下回る場合に、
ユーザーの設定に基づいて所定の補正係数を乗算するゲイン調整、或いは、光源に対し出力する電流値を制御する受光量再調整処理を選択する選択手段を有し、
選択された前記受光量再調整処理を切り替えて制御することを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記受光量調整手段に、前記受光量に対し補正係数を乗算する制御を行うゲイン制御部を含むことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記受光量調整手段に、前記複数の光源に対し出力する電流値を制御する電流制御部を含むことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記順次点灯制御を実行する際に、前記複数の光源の点灯区間の合計が前記複数の光源の点灯可能区間を超過した場合、2番目以降に点灯する光源の点灯開始タイミングを前記順次点灯制御によって決定されたタイミングから前倒しし、最後に点灯する光源の消灯開始タイミングと前記点灯可能区間の終了位置とが一致するように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置(イメージスキャナや複写機、ファクシミリ装置等)は、自動紙送り機構(ADF:Auto Document Feeder)により搬送される原稿をCIS(Contact Image Sensor)により読み取る。原稿の読取品質のうち階調性を十分に確保するためには、受光素子の出力が飽和しないように一ラインあたりの光源の点灯区間が調整される。
【0003】
ここでいう光源としては、一般的にR(赤色)G(緑色)B(青色)各色の発光ダイオード(以降LED)が使用される。
【0004】
通常、カラー画像を取得する際は、RGB各LEDの点灯区間を単色ずつ調整し、調整された点灯区間で各LEDを順次点灯させて、RGB各色の出力をカラー画像として読み取る。
【0005】
また、グレー画像を取得する際は、一般的にカラー同様各LEDの点灯区間を単色ずつ調整し、その後調整された点灯区間で各LEDを同時に点灯させてその際の出力をグレー出力画像として読み取る。
【0006】
しかし、グレー画像取得時は複数のLEDを同時に点灯させるため、急激な電圧の変位が発生する。この電圧の変位がADC(Analog Digital Converter)へ転送中の画像データ(アナログ信号)にノイズとして影響を及ぼし、最終的に出力する画像にスジとなって現れる可能性がある。
【0007】
それに対し特許文献1では、RGBのLEDを順次点灯させてグレー画像を取得する制御について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6133199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1によればRGBの各LEDを順次点灯させて各LEDの点灯区間が重ならないように制御し、かつ各LEDの点灯間隔として「待機区間」を設けることにより、動作の安定を図ることについて記載されている。しかしながら、一ライン内での各光源の点灯時に少なからず電圧の変化が発生し、画像中にノイズが発生する可能性が残っているため、電圧の変化を抑える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それに対し、本発明に係る画像読取装置は、
読取対象に光を照射する複数の光源と、
前記複数の光源により光を照射された前記読取対象からの光を受光し、且つ、前記受光した光から画像信号を生成する画像読取手段と、
前記複数の光源の点灯区間を制御することで前記画像読取手段の受光量を調整する光量調整手段と
を備え、
前記光量調整手段は、前記複数の光源のうちの第一の光源が消灯する時に前記複数の光源のうちの第二の光源を点灯する順次点灯制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各光源の点灯に伴うノイズの発生を抑え、ユーザーの所望する画像データを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像読取装置の構造を説明する断面図。
図2】画像読取ユニットを説明する図。
図3】画像読取ユニットを説明する他の図。
図4】順次点灯制御を説明する図。
図5】光源点灯時の電源電圧の変位を説明する図。
図6】光源の駆動回路を説明する図。
図7】飽和点灯区間制御1を説明する図。
図8】飽和点灯区間制御2を説明する図
図9】コントローラを説明する図。
図10】光源の点灯区間を調整する処理を示すフローチャート。
図11】光源の点灯区間を調整する処理を示すフローチャート。
図12】飽和点灯区間制御、及び受光量調整手段の切り替え処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
<画像読取装置の構造>
図1が示すように、画像読取装置100は、ADFにより搬送される読取対象である原稿をCISにより読み取って画像データを生成する。載置台1は一つまたは複数の搬送媒体Sを積載する。搬送媒体Sは、たとえば、OA紙、小切手、カード類等のシートであり、厚手のシートであっても、薄手のシートであってもよい。カード類は、たとえば、保険証、免許証、クレジットカード等である。また、搬送媒体Sにはパスポートなどの冊子も含まれる。
【0015】
第一搬送部10は経路RTへ搬送媒体Sを給送する給送機構である。第一搬送部10は、送りローラ11と、送りローラ11に対向配置される分離ローラ12とを有している。送りローラ11と分離ローラ12は、載置台1に載置されている複数の搬送媒体Sのうち一つの搬送媒体Sのみを搬送方向D1へ搬送する。駆動部3はモータ等である。駆動部3は伝達部4を介して駆動力を送りローラ11に伝達し、送りローラ11を回転させる。送りローラ11の回転方向は、反時計回り(経路RTに沿って搬送媒体Sを搬送させる方向)である。伝達部4は、たとえば、電磁クラッチであり、制御部8からの指示に従って駆動部3からの送りローラ11への駆動力を断続(遮断/接続)する。伝達部4は、通常時において駆動力を伝達する状態にあり、搬送媒体Sを逆送する場合に駆動力を遮断する。送りローラ11は伝達部4により駆動力の伝達が遮断されると、自由回転可能な状態となる。送りローラ11を一方向のみに駆動させる場合、伝達部4は省略されてもよい。
【0016】
分離ローラ12は、複数の搬送媒体Sを1枚ずつに分離するためのローラであり、送りローラ11に対して一定圧で圧接されている。この圧接状態を確保するため、分離ローラ12は揺動可能に設けられるとともに、バネ等により送りローラ11へ付勢されている。分離ローラ12は、トルクリミッタ12aを介して駆動部3から駆動力が伝達され、反時計回り方向に回転する。分離ローラ12はトルクリミッタ12aにより駆動力が規制される。そのため、分離ローラ12が送りローラ11と当接している際は、分離ローラ12は送りローラ11に連れ回りする。これにより、複数の搬送媒体Sが送りローラ11と分離
ローラ12との圧接部に搬送されてきた際には、一つの搬送媒体Sのみが下流に搬送され、残りの搬送媒体Sは下流に搬送されないようにせき止められる。本実施形態では分離ローラ12と送りローラ11とで分離機構が構成されているが、これは一例にすぎない。分離機構は省略されてもよいし、搬送媒体Sに摩擦力を付与する分離パッドと送りローラ11とにより構成される分離機構が採用されてもよい。
【0017】
第一搬送部10の搬送方向で下流側には第二搬送部20が設けられている。第二搬送部20は、駆動ローラ21と、駆動ローラ21に従動する従動ローラ22とを有する。第二搬送部20は、第一搬送部10から搬送されてきた搬送媒体Sをさらに下流側へ搬送する。駆動ローラ21には駆動部3から駆動力が伝達され、反時計回りに回転する。従動ローラ22は、駆動ローラ21に対して一定圧で圧接されているため、駆動ローラ21に連れ回る。従動ローラ22は、バネ等の付勢ユニット(不図示)によって駆動ローラ21に対して付勢されていてもよい。
【0018】
第二搬送部20よりも搬送方向で下流側には第三搬送部30が設けられている。第三搬送部30は、駆動ローラ31と、駆動ローラ31に従動する従動ローラ32とを有している。第三搬送部30は、第二搬送部20から搬送されてきた搬送媒体Sを排出トレイ2へ搬送および排出する。駆動ローラ31には駆動部3から駆動力が伝達され、反時計回りに回転する。従動ローラ32は駆動ローラ31に対して一定圧で圧接されており、駆動ローラ31に連れまわる。従動ローラ32は、バネ等の付勢ユニットによって駆動ローラ31に対して付勢されていてもよい。
【0019】
経路RTにおいて第二搬送部20と第三搬送部30との間には画像読取ユニット70a、70bが配置されている。画像読取ユニット70aは搬送媒体Sの第一面を読み取る。画像読取ユニット70bは搬送媒体Sの第二面を読み取る。画像の読み取りのために、第二搬送部20および第三搬送部30は搬送媒体Sを一定の搬送速度で搬送する。この搬送速度は、常に、第一搬送部10の搬送速度以上に設定されてもよい。これにより、先行する搬送媒体Sに対して後続の搬送媒体Sが追突しないようになる。
【0020】
重送センサ40は第一搬送部10と第二搬送部20との間に配置される。重送センサ40は、搬送媒体Sの重送を検知する。重送とは、複数の搬送媒体Sが静電気等で密着し、第一搬送部10を通過してしまう現象である。重送センサ40としては、種々のものが利用可能である。たとえば、重送センサ40は超音波センサであってもよい。この場合、重送センサ40は、超音波の発信部41とその受信部42とを有する。複数の搬送媒体Sが重送されている場合と一つの搬送媒体Sが搬送されている場合とで、搬送媒体Sを通過する超音波の減衰量が異なる。この原理に基づき重送が検知される。
【0021】
経路RTにおいて重送センサ40よりも搬送方向で下流側には媒体センサ50が配置されている。媒体センサ50は、第二搬送部20よりも上流側で、かつ、第一搬送部10よりも下流側に配置されている。媒体センサ50は、第一搬送部10により搬送される搬送媒体Sの位置を検知する。より詳細には、媒体センサ50は、媒体センサ50の検知位置に搬送媒体Sの端部が到達または通過したか否かを検知する。媒体センサ50としては、種々のものが利用可能である。媒体センサ50は、たとえば、光学センサであってもよい。この場合、媒体センサ50は、照射部51とその受光部52とを有する。搬送媒体Sの到達又は通過により受光部52の受光強度が変化する。この原理に基づき搬送媒体Sが検知される。搬送媒体Sの先端が媒体センサ50により検知されると、搬送媒体Sが重送センサ40により重送を検知可能な位置に到達しているように、媒体センサ50は重送センサ40の近傍で下流側に設けられている。媒体センサ50は、搬送媒体Sの端部を検知可能なセンサ(例:イメージセンサ等)であってもよいし、経路RTに突出したレバー型のセンサであってもよい。
【0022】
媒体センサ60は、画像読取ユニット70a、70bよりも上流側で、第二搬送部20よりも下流側に配置されている。媒体センサ60は、第二搬送部20により搬送される搬送媒体Sの位置を検知する。媒体センサ60としては、媒体センサ50同様に、種々のものが利用可能である。ここでは、一例として、媒体センサ60は発光部61と受光部62とを備える光センサである。図1では、第二搬送部20の搬送方向で上流側と下流側とのそれぞれに媒体センサ50、60が配置されているが、何れか一方だけが配置されてもよい。
【0023】
画像読取ユニット70a、70bは、たとえば、光学的に搬送媒体Sを読取ラインごとに主走査方向に沿って走査し、搬送媒体Sからの光を電気信号に変換して画像信号を生成するラインセンサである。画像読取ユニット70a、70bは、LED等の光源、導光体、受光センサアレー等を含む。画像読取ユニット70a、70bのうち一方のみが経路RTの片側に配置されてもよい。図1では、画像読取ユニット70a、70bが経路RTを挟んで対向配置されているが、これは一例にすぎない。画像読取ユニット70a、70bが経路RTの方向に間隔をあけて配置されてもよい。
【0024】
制御部8は、画像読取の開始指示を受信すると、駆動部3により第一搬送部10、第二搬送部20、第三搬送部30の駆動を開始する。載置台1に積載された搬送媒体Sはその最も下に位置する搬送媒体Sから一つずつ搬送される。搬送の途中で搬送媒体Sは重送センサ40により重送の有無が判定される。重送が無いと判定されると搬送媒体Sの搬送が継続される。重送があると判定された場合、制御部8は、駆動部3を停止させ、搬送媒体Sの搬送を停止する。
制御部8は、媒体センサ60の検知結果に応じたタイミングで、画像読取ユニット70a、70bによる搬送媒体Sの画像読取を開始させる。制御部8は、画像読取ユニット70a、70bから出力される画像信号を画像データに変換する。搬送媒体Sは最終的に排出トレイ2へ排紙される。
【0025】
<画像読取部の構造についての説明>
図2は画像読取ユニット70a、70bを経路RT側から見た斜視図である。画像読取ユニット70a、70bは原稿に光を照射する光源73を有している。画像読取ユニット70a、70bの構造は共通しているため、ここでは画像読取ユニット70aの構造を詳細に説明する。
【0026】
光源73は発光素子(例:LED)を有する。光源73は、導光体71の両端部のうち少なくとも一方の端部に設置されている。図2では光源73が導光体71の片側端部に設置されているが、導光体71のもう一方の端部に設置されてもよい。これにより、発光量が補われる。導光体71は、たとえば、透光性を有するモールド樹脂やガラス等、光を通す素材を主要部材として採用している。光源73から出力された光は導光体71の内部を伝搬する。導光体71の内部には経路RTに向けて光を反射する不図示の反射板が設けられている。反射板が、光源73からの光を経路RTへ向けて反射する。光源73から遠い
程、狭い間隔で複数の反射板が設置されてもよい。これにより、経路RTに対し主走査方向において均等に光を照射してもよい。また、複数の導光体71が設けられてもよい。
【0027】
導光体71から出射した光は搬送媒体Sの表面で再び反射して、受光センサアレー72に入射する。受光センサアレー72は、たとえば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の複数の光電変換素子を有している。複数の光電変換素子は主走査方向に沿って並んでおり、主走査方向の一ラインを形成している。受光センサアレー72に到達した光はライン単位で電気信号に変換される。一般的にCMOSイメージセンサの出力値はライン単位で取得された光の量に応じて変化する。たとえば、光源73の発光量が多い場合、出力値が大きくなる。ただし、同一の発光量であっても、一ラインあたりの走査区間が長ければ、出力値が大きくなる。最終的にライン単位で取得された電気信号は後述されるA/D変換器(ADC)によりデジタル信号に変換される。複数ラインのデジタル信号を合成することで、搬送媒体Sの画像データが作成される。
【0028】
図3は画像読取ユニット70a、70bを主走査方向から見た断面図である。光源73は、図3が示すように、赤色の光源73r(例:赤色LED)、緑色の光源73g(例:緑色LED)、青色の光源73b(例:青色LED)により構成されている。光源73r、73g、73bはそれぞれ異なる波長の光を出力する。光源73r、73g、73bの点灯区間は、ライン単位で制御されてもよい。光源73r、73g、73bの点灯区間は、たとえば、受光センサアレー72の出力値がオーバーフローしないように決定される。
【0029】
光源73に供給される電流(電流値)を制御することで、光源73の発光量と、受光センサアレー72の受光量とが調整されてもよい。この場合、光源73の点灯区間を一定に維持しつつ、発光量および受光量が制御可能となる。光源73r、73g、73bの各電流値は、個別に設定されてもよい。受光センサアレー72は分光フィルタ等を利用し、対応した波長域の光を選択的に受光する。ここでは受光センサアレー72は単一であるが、担当波長域を受光するセンサアレーを複数有する構成を取ってもよい。
【0030】
さらに、点灯区間や電流値の調整に加えて、受光量に対し所定の補正係数を乗算するゲイン調整が組み合わされてもよい。これは画像データに対して所定の補正係数を乗算することにより達成可能である。ゲイン調整は、一ラインあたりの走査区間が短く、受光量を充分に確保することが難しい状況であっても、出力値を大きくすることができる。ゲイン調整には複数の方式が存在する。具体的には、受光量をデジタル変換する前に所定の補正係数を乗算するアナログゲイン調整と、受光量をデジタル変換した後に所定の補正係数を
乗算するデジタルゲイン調整とがある。
【0031】
<受光量の調整処理と光源の点灯制御についての説明>
以下に、グレー画像取得時における受光センサアレー72の受光量調整方法と各光源73r、73g、73bを消灯開始タイミングと点灯開始タイミングを合わせながら順次点灯する順次点灯制御について説明する。また、順次点灯制御時の光源73r、73g、73bの点灯区間が飽和した場合などの制御の一例として飽和点灯区間制御を説明する。
【0032】
●順次点灯制御
図4は、順次点灯制御における、一ラインの画像を読み取った際の、光源73r、73g、73b各色の点灯区間を制御したときのシーケンスチャートの例を示している。
【0033】
ラベル「SP」で示したパルスの間隔に対応するSP(Start Pulse)区間80は1つの読取ライン単位での画像データの走査区間(読み取り区間)を表している。なお、SP区間80は、厳密に「SP」のパルス間隔に対応していなくとも良く、図4に示すように、パルス発生直後に所定の点灯禁止区間が設けられていれば、それ以外の区間に対応する。
【0034】
ラベル「R」、「G」、「B」はそれぞれ光源73r、73g、73bを表している。光源73rは、SP区間80のうち点灯区間81rにおいて点灯し、消灯区間82rにおいて消灯する。光源73gは、SP区間80のうち点灯区間81gにおいて点灯し、消灯区間82gにおいて消灯する。光源73bは、SP区間80のうち点灯区間81bにおいて点灯し、消灯区間82bにおいて消灯する。
【0035】
受光センサアレー72の受光量が目標光量となるように、点灯区間81r、81g、81bが調整される。目標光量は、たとえば、原稿画像のS/N比を最大限確保できる受光量に設定される。たとえば、目標光量は、一般的に想定される最も明るい(最も光源73の光を反射する)原稿の読取結果が飽和しないように微調整が可能である。そのため、受光量が飽和せず、かつ、S/N比が最大となるように、点灯区間が微調整される。
【0036】
また、SP区間80において消灯区間82r、82g、82bが連続して長ければ長くなるほど、原稿画像のサンプリング区間が局所的になり、画像にエイリアシングが発生し、モアレが発生しうる。そこで本実施形態ではSP区間80にSP区間分割位置83を設けて、光源73r、73g、73bをSP区間分割位置83間を一単位として1ライン内における点灯区間を複数の周期(点灯可能区間)に分割して点灯する。点灯区間を分割することにより、光源73r、73g、73bが連続して消灯する区間を減らすことになる。これにより原稿画像のサンプリング周波数が上がり、モアレの発生を防ぐことが出来る。図4では光源73r、73g、73bを6つに分割して点灯している。ここで、SP区間80に設けられるSP区間分割位置83の位置とその数は、特に指定されるものではない。
【0037】
順次点灯制御では、SP区間分割位置83のタイミングで、光源73rだけを点灯させ、81r区間経過後に消灯させる。次に、光源73rを消灯させる消灯開始タイミングと同タイミングで、光源73gを点灯させ、81g区間経過後に光源73gを消灯させる。さらに、光源73gを消灯させる消灯開始タイミングと同タイミングで、光源73bを点灯させ、81b区間経過後に光源73bを消灯させる。これを、SP区間分割位置83に到達するたびに繰り返す。本制御に関するメリットを図5、及び図6にて説明する。
【0038】
図5は光源を点灯させた際の画像読取ユニット70a(70b)に印加される電源電圧の変位イメージを示した図である。通常、光源点灯開始位置84にて光源73r、光源73g、光源73bを同時に点灯させた場合、図5(a)の様に電源電圧に乱れが現れる。これは、図9にて後述する本実施形態に係る光源の駆動回路633r、633g、633bが図6に示すように構成されていることによる。すなわち、図6において各光源73r、73g、73bは同一の電源から電流が供給されており、各光源73r、73g、73bの点灯区間を、制御部8からの制御信号Sr、Sg、Sbによってスイッチング素子の一例であるトランジスタTr1、Tr2、Tr3のONとOFFを切り替えることにより制御している。このとき、光源73r、光源73g、光源73bを同時に点灯させると、電源から急激に電流が流れることとなり、その結果として、電源電圧に乱れが生じる。この電源電圧の乱れが、アナログ信号に対するノイズとなりうる。そこで、光源を順次点灯制御し、緑色LED点灯開始位置85にて光源rの消灯開始タイミングと光源gの点灯開始タイミングを合わせた場合、図5(b)の様に電源電圧の乱れは発生しにくくなる。以上のように、順次点灯制御を行うことにより、画像読取ユニット70a(70b)へ流す電流値に大きな変化が生じないようにすることが可能となり、図5(a)のような画像読取ユニット70a(70b)に印加される電源電圧の変位を概ね少なくすることができ、アナログ信号に対するノイズを抑えることが出来る。
【0039】
なお、順次点灯制御において、図4では光源73r、73g、73bの順に点灯しているが、各光源73r、73g、73bを点灯させる順序はその限りではない。
【0040】
●飽和点灯区間制御
図7及び図8を用いて順次点灯制御する際の点灯区間81r、81g、81bが、光源が点灯可能な最大区間Tmax(点灯可能区間)を超過した際の制御として、飽和点灯区間制御1及び飽和点灯区間制御2の二種類の制御について説明する。
【0041】
ここで、飽和点灯区間制御を行う際の最大区間Tmaxと点灯区間81r、81g、81bの関係は以下の式で表されるものとする。(なお、ここでの最大区間Tmaxは、上述したSP区間分割位置83間の間隔に等しい)
【数1】
【0042】
図7(a)及び図8(a)は式(1)の状態を表した図である。ここで、図7(a)及び図8(a)では点灯区間81rの終了位置と点灯区間81gの開始位置、点灯区間81gの終了位置と点灯区間81bの開始位置を合わせている。そのため、点灯区間81r、81g、81bの合計点灯区間を加算した値が最大区間Tmaxを超えないように制御する必要がある。
【0043】
<飽和点灯区間制御1>
光源が点灯可能な最大区間Tmaxを超過した際の制御として、図7を用いて飽和点灯区間制御1を説明する。飽和点灯区間制御1では、まず点灯区間81r、81g、81bのそれぞれを点灯区間81r、81g、81bの合計区間で除算し、点灯区間81r、81g、81bそれぞれの比率を算出する。算出した各点灯区間の比率に対し、最大区間Tmaxを掛け合わせた値を飽和点灯区間制御1後の点灯区間(以降、それぞれ点灯区間81r_new、81g_new、81b_new)とする。以下に81r_new、81g_new、81b_newを求める式を式2に示す。
【数2】
【0044】
図7(b)は、各光源73r、73g、73bの点灯区間を飽和点灯区間制御1後の点灯区間81r_new、81g_new、81b_newに変更した図である。ここで、点灯区間を81r_new、81g_new、81b_newへ変更したことにより、受光量が目標光量を下回る場合、<画像読取装置の構造>にて前述したゲイン調整における補正係数や、光源73に供給される電流を上昇させるなど、これらの受光量調整手段を用いて受光量の再調整処理を行うことが好ましい。
【0045】
なお、本実施形態では各光源73r、73g、73bの点灯区間を調整した後に受光量調整手段を用いて受光量の再調整を行ったが、これらの調整処理は受光量の再調整処理により変化する出力の値が増加する電流値の値やゲイン調整の補正係数等から計算できる場合、必ずしも受光量の取得を複数回に分けて調整する必要はない。
【0046】
また、本実施形態では最大区間Tmaxは光源が点灯可能な最大区間であり、SP区間分割位置83間の間隔に等しいとしたが、それよりも短い時間として設定されていても良い。更に、順次点灯制御する際の点灯区間81r、81g、81bが、最大区間Tmaxを超過した際の制御について説明したが、順次点灯制御する際の点灯区間81r、81g、81bが、最大区間Tmaxよりも小さい場合にも同様に点灯区間を変更しても良い。すなわち、各光源73r、73g、73bの点灯区間の総和が最大区間Tmaxに等しくなるように、式2に基づいて各光源の点灯区間81r、81g、81bを算出すれば良い。このとき、受光量が大きくなり過ぎる場合、ゲイン調整における補正係数や光源73に供給される電流を下げることで、受光量の調整処理をやり直すことが好ましい。
【0047】
いずれにしても、順次点灯制御する際の点灯区間81r、81g、81bが、SP区間80を複数の点灯可能区間に分割した際の1つの周期の長さに相当する最大区間Tmaxと一致しない場合に、複数の光源それぞれの点灯区間の比率を保持しつつ、各光源73r、73g、73bの点灯区間の総和である周期内総点灯時間(81r+81g+81b)が最大区間Tmaxと一致するように点灯区間81r、81g、81bを変更する変更する変更手段として制御部8が機能する。
【0048】
これによって、各周期内において各光源に供給される電圧の変化を抑えることができるとともに、各周期間の切り替わりのタイミングにおいても電圧の変化を抑えることができ、好適である。
【0049】
<飽和点灯区間制御2>
光源が点灯可能な最大区間Tmaxを超過した際の制御として、次に図8及び式3を用いて飽和点灯区間制御2を説明する。
【数3】
飽和点灯区間制御2では、まずTmaxを超過した光量の値Toverを算出する。次に点灯区間の終了位置と開始位置が重なっている箇所の個数を調べる。図8(a)の場合、点灯区間81rの終了位置と点灯区間81gの開始位置、点灯区間81gの終了位置と点灯区間81bの開始位置の2箇所において点灯区間の終了位置と開始位置が重なっている。この場合、Toverを終了位置と開始位置とが重なっている箇所の個数(この場合、2)で除算し、除算した値を前倒し区間86とする。ここで光源73g、及び光源73bの点灯区間の開始位置を、図8(b)に示すように1つ前に点灯した光源の消灯タイミングから前倒し区間86だけ早めることにより点灯区間の超過を防ぐことが出来る。この際、光源73gと光源73bの点灯区間の開始位置を均等に早めるためにToverを2で除算したが、光源73gと光源73bの点灯区間の開始位置を均等に早め無くていい。例えば、いずれかの光源の点灯区間の終了位置と開始位置が重なるように点灯区間の開始位置を早められる場合は均等に早めない方が良い。
【0050】
飽和点灯区間制御2は、言い換えると、2番目以降に点灯する光源の点灯開始タイミングを順次点灯制御によって決定されたタイミングから前倒しし、最後に点灯する光源の消灯開始タイミングと点灯可能区間の終了位置が一致するように制御する。
【0051】
飽和点灯区間制御2の場合、各光源の点灯区間の開始位置のみを変更することになる。その為、各光源に対する受光量に変化が無く、光量の再調整を行う必要が無いため、光量調整処理に掛かる時間を短縮することが出来る。しかし、点灯区間の開始位置と別の光源の点灯区間の終了位置がずれることになるため、順次点灯制御にて前述したノイズの低減効果は飽和点灯区間制御1と比較して少なくなる可能性がある。但し、従来技術のように、電流がいずれの光源にも流れていない状態から電流を流す状況に比べて、電源に対する電流の変化比率を抑えることによるノイズ低減効果自体は発揮される。
【0052】
●飽和点灯区間制御の切り替え
<飽和点灯区間制御1と飽和点灯区間制御2の切り替え>
前述したように飽和点灯区間制御1と飽和点灯区間制御2にはそれぞれメリットがあり、ユーザーの要望により必要光量が飽和した場合の処理を切り替える制御を行うことが望ましい。
【0053】
飽和点灯区間制御1では出力画像がノイズの影響を受けにくい特徴があり、飽和点灯区間制御2では光量調整処理にかかる時間を短縮できる特徴があることから、ユーザーによりノイズの低減が優先される設定が入力されているか否かにより、飽和点灯制御1と飽和点灯制御2を切り替える構成が有効であると考えられる。
【0054】
ここで言うノイズの低減が優先される設定とは、例えば画像処理によるモアレの除去機能が有効になっている場合等がこれに該当する。ここでモアレの除去機能は一例に過ぎない。例えば画像の平滑化を行う処理が有効になっている場合等でもユーザーによりノイズの低減が優先されていると判断してもよい。また、画像を後段のシステムで既存の技術であるOCR(Oprical Character Reader)に掛けて自動で処理する必要があり、システムの誤動作を避けるために画像中のノイズの発生を優先して回避したい場合等も、ノイズの低減が優先されている場合として考えられる。本実施形態においてこれらのノイズの低減が優先される設定(特定のモードの選択)は、画像読取装置100に取り付けられた不図示の制御パネルや、画像読取装置100の画像読取設定に関する情報を不図示の情報処理装置からソフトウェア経由で設定するダイアログ画面等から入力されるものとするが、設定情報を画像読取装置100へ通知することが出来るのであれば、手段はこの限りではない。これらのノイズの低減が優先される設定がユーザーにより選択されている場合は、飽和点灯区間制御1を採用し、選択されていない場合は飽和点灯区間制御2を採用する。この構成により、画質や画像出力までの速度等、ユーザーが優先する内容に応じて画像読取装置100を制御することが出来る。
【0055】
<飽和点灯区間制御1における受光量調整手段の切り替え及び実行順序>
飽和点灯区間制御1後に受光量が目標光量を下回る場合、<画像読取装置の構造>にて前述したゲイン調整における補正係数や、光源73に供給される電流を上昇させるなど、受光量調整手段を用いて受光量の再調整処理を行うことが好ましい。
【0056】
この際、電流を上昇させて受光量を再調整する場合は出力画像のS/N比が低下せず、階調性を最大限確保できるというメリットがあり、またゲイン調整により再調整する場合は電流を上昇させる制御に比べて出力画像がノイズの影響を受けにくいというメリットがある。そこで本実施形態においては、ユーザーによりS/N比の確保が優先される設定が入力されているか否かにより、これらの受光量調整手段の切り替え判定を行う。
【0057】
S/N比の確保が優先される設定とは、例えば画像処理によるガンマカーブの設定がデフォルト値から変更されている場合等がこれに該当する。ここでガンマカーブの変更は一例に過ぎない。例えば原稿が写真等の階調性が重要なものの場合等もS/N比の確保が優先されると判断できる。S/N比の確保が優先される設定が選択されている場合は飽和点灯区間制御1後の受光量調整手段として光源73に供給される電流を上昇させる制御を行い、選択されていない場合は受光量調整手段としてゲインを増やす(補正係数を大きくする)制御を行う。これにより、前述した飽和点灯区間制御1と飽和点灯区間制御2の切り替えと同様にユーザーが優先したいとして選択した内容に応じて画像読取装置100を制御することが出来る。なお、受光量調整手段の選択は、CPUが選択手段として機能することで行われている。
【0058】
また、本実施形態では飽和点灯区間制御1と飽和点灯区間制御2、及び飽和点灯区間制御1における受光量調整手段の切り替えについて記載したが、ユーザーの設定に従い、これらの処理の実行順序を切り替える制御を行っても良い。
【0059】
これらの飽和点灯区間制御1と飽和点灯区間制御2の切り替えや、飽和点灯区間制御1における受光量調整手段の切り替えに関する制御フローについては、図12にてその詳細を後述する。
【0060】
<コントローラ>
図9は画像読取装置100を制御する制御部8の詳細を示している。制御部8は、たとえば、記憶装置620のROMまたはRAM領域に記憶されている制御プログラムを実行することで各種の機能を実現するCPU(中央演算処理装置)等である。モード制御部601は、操作部621の入力装置から入力されるユーザー指示にしたがって画像取得方式を切り替える。ここでは画像読み取り時のグレー、カラー等のモード設定値や、解像度等が指示され、それに基づき光源73の点灯制御等を切り替えるものとする。指示される内容についてはモード設定値や解像度に限るものではない。
【0061】
点灯時間制御部602は受光センサアレー72の受光量が目標光量となるように光源73r、73g、73bの各点灯区間を調整し、点灯区間制御手段として機能している。電流制御部603は、受光量が目標光量に到達可能となるように光源73r、73g、73bの電流値を調整する。電流値は、駆動回路633r、633g、633bに対してそれぞれ個別に設定されてもよい。駆動回路633r、633g、633bはそれぞれ対応する光源73r、73g、73bに対して、制御部8により設定された点灯区間の間、設定された電流値の電流を供給する。ゲイン制御部604は、乗算部641の補正係数(ゲイン)を調整する。乗算部641は受光センサアレー72r、72g、72bからの出力に対し補正係数を乗算することで出力を調整する。ADC642は入力されたアナログの画像信号をデジタルデータに変換して画像データ生成部610にライン単位で出力する。乗算部641はADC642の前段、後段またはその両方に設けられてもよい。
【0062】
画像読取ユニット70aには乗算部641やADC642の他に受光センサアレー72r、72g、72bからの出力に補正値を加算する不図示のオフセット加算部等を設けてもよい。
【0063】
<フローチャート>
図10、11は順次点灯制御を行う際に、光源73r、73g、73bの各受光量が目標光量となるように点灯区間を調整する処理(以下、調光処理とする)について説明したフローチャートである。ここではグレー画像読み取り時の調光処理について説明する。
【0064】
図10のステップS1000にて制御部8による調光処理を開始すると、ステップS1001にて制御部8は、乗算部641のゲインを初期値に設定する。ここで、ゲインは全光源の受光量に対して共通してかかる。ただしこれは一例にすぎない。例えば各色の出力に対し個別にゲインの値を設定できる構成や、受光センサアレーの出力を分割し、それぞれに対し設定できる構成を取ってもよい。また、ゲインはできる限り小さいほうが、読取結果の階調性が良好になる。そのため、初期値は約1倍に設定される。ただし、これは一例にすぎない。たとえば、事前に受光量が少ないことが分っている場合、ゲインの初期値として1倍よりも大きな値が設定されてもよい。これにより、調整区間(調整時間)が短縮される。
【0065】
ステップS1002にて制御部8は、光源73の点灯区間を初期値(例:点灯区間として設定可能な最大値)に設定する。ここでは単色ずつ光源73の点灯区間を調整するため、例えば光源73rの点灯区間の調整を行う場合、そのほかの光源73g及び光源73bの点灯区間は0に設定(消灯)する。調整初期値を設定可能な最大区間に設定することは一例にすぎない。点灯区間を設定可能な最大値に設定しなくとも、受光量が目標光量に達することがすでに分かっている場合、点灯区間の調整初期値は、最大値よりも小さい値に設定される。
【0066】
ステップS1003にて制御部8は、画像読取ユニット70aを制御して受光量を取得する。光源73は単色ずつ点灯区間を調整するため、本ステップにて取得される受光量は光源73のうち、ステップS1002で点灯区間が初期値(最大値)に設定されたものの出力値である。ここで、受光量とは、輝度値であってもよい。ここで、受光量にはゲインが適用されている。
【0067】
ステップS1004にて制御部8は、受光量が目標光量以上かどうかを判定する。受光量が目標光量以上である場合、現在調整している光源73が目標光量に到達するために必要なゲイン設定値が確定する。その後制御部8は処理をステップS1008へ進める。受光量が光量を超えていない場合、制御部8は処理をステップS1005へ進める。
【0068】
ステップS1005にて制御部8は、現在のゲインが設定可能な最大値未満であるかどうかを判定する。ゲインが最大値である場合、制御部8は、処理を図11のステップS1007へ進める。ゲインが最大値未満であると判定されると、制御部8は、処理をステップS1006へ進める。
【0069】
ステップS1006にて制御部8は、ゲインを所定値だけ増加させる。ここで、所定値は一定である必要はなく、受光量と目標光量との差が大きければ、ゲインが大きく増加されるように、大きな所定値が使用されてもよい。これは調整区間(調整時間)の短縮をもたらす。その後、制御部8は、処理をステップS1002へ戻す。
【0070】
図11のステップS1007にて制御部8は、操作部621の表示装置などにエラーを意味する通知を出力する。その後制御部8は処理を図11のステップS1017へ進め、処理を終了する。
【0071】
一方、ステップS1008にて制御部8は、ステップS1004の判定が全色の光源73に対し行われたか確認する。全色の光源73の判定が完了していない場合、処理をステップS1009へ進める。完了している場合、すべての光源73の出力に対するゲインの設定値が確定したことになるため、処理を図11のステップS1010へ進める。
【0072】
ステップS1009にて制御部8は、点灯区間に初期値(最大値)を設定する光源73の色を変更し、処理をステップS1002へ戻す。
【0073】
以降の処理について図11を用いて説明する。
【0074】
ステップS1010にて制御部8は、<受光量の調整処理と光源の点灯制御についての説明>にて前述した順次点灯制御を行い、光源73について単色ずつ点灯区間を調整する。この際、図8のステップS1008にて確定したゲインの設定値が適応される。その後、処理をステップS1011へ進める。
【0075】
ステップS1011にて制御部8は、画像読取ユニット70aを制御して受光量を取得する。その後、処理をステップS1012へ進める。
【0076】
ステップS1012にて制御部8は、受光量が目標光量に達したかどうかを判定する。受光量が目標光量に達していなければ、制御部8は処理をステップS1010へ戻す。受光量が目標光量に達していれば、制御部8は処理をステップS1013へ進める。
【0077】
ステップS1013にて制御部8は、ステップS1012の判定が全色の光源73の受光量に対し行われているか確認する。全色の光源73の受光量に対し判定が完了している場合、全色の光源73の点灯区間が確定したことになるため、処理をステップS1015へ進める。全色の光源73の受光量に対し判定が完了していない場合、制御部8は、まずステップS1014にて点灯させる光源73の色を変更し、処理をステップS1010へ戻す。
【0078】
ステップS1015にて制御部8は、ステップS1013にて確定した全色の光源の点灯区間の合計が、光源73の点灯可能区間以下であるか否かを判定する。点灯可能区間を超える場合、処理をステップS1016に進める。点灯可能区間以下の場合、処理をステップS1017へ進めて処理を終了する。
【0079】
ステップS1016にて制御部8は、<受光量の調整処理と光源の点灯制御ついての説明>にて前述した飽和点灯区間制御を実行し、光源73の点灯区間を点灯可能区間以内に変更する。この際、点灯区間を点灯可能区間以内に変更したことにより、目標光量に対し著しく光量が不足する可能性がある場合、処理を図10のステップS1004へ戻してもよい。その後処理をステップS1017へ進めて処理を終了する。
【0080】
図12は飽和点灯区間制御1と飽和点灯区間制御2、及び受光量調整手段を切り替える処理について説明したフローチャートである。
【0081】
図12のステップS2000にて制御部8による飽和点灯区間制御を開始すると、ステップS2001にて制御部8は、飽和点灯区間制御の切り替えにて前述した方法で、ユーザーによりノイズの低減が優先される設定が入力されているか判定する。ノイズの低減が優先される設定が入力されている場合、処理をステップS2002へ進める。ノイズの低減が優先される設定が入力されていない場合、制御部8は処理をステップS2003へ進める。
【0082】
ステップS2002にて制御部8は飽和点灯区間制御にて前述した方法により飽和点灯区間制御1を行い、処理をステップS2004へ進める。
【0083】
ステップS2003にて制御部8は飽和点灯区間制御にて前述した方法により飽和点灯区間制御2を行い、処理をステップS2007へ進める。
【0084】
ステップS2004にて制御部8は、飽和点灯区間制御の切り替えにて前述した方法で、ユーザーによりS/N比の確保が優先される設定が入力されているか判定する。S/N比の確保が優先される設定が入力されている場合、制御部8は処理をステップS2005へ進める。S/N比の確保が優先される設定が入力されていない場合、制御部8は処理をステップS2006へ進める。
【0085】
ステップS2005にて制御部8は<画像読取装置の構造>にて前述した方法により電流値による受光量再調整処理を行い、処理をステップS2007へ進める。
【0086】
ステップS2006にて制御部8は<画像読取装置の構造>にて前述した方法によりゲインによる受光量再調整処理を行い、処理をステップS2007へ進める。
【0087】
上述した実施形態では、電流値かゲインのどちらかによる調整処理について説明したが、両方によって処理を行っても良い。その場合、ユーザーが優先したいとして設定したものを優先して先に処理を行う。
【0088】
本発明は、以上説明した実施形態に限られるものではなく、上述した本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0089】
例えば、上述した実施形態において、画像読取ユニット70a、70bに対して読取対象である原稿を搬送媒体Sとして搬送する態様について説明したが、原稿台に載置された原稿に対し、画像読取ユニットが移動しながら光を照射して画像を読み取る態様であっても良い。すなわち、画像読取ユニットに対して相対的に移動する読取対象を読取ラインごとに読み取るものであれば本発明を適用できる。
【0090】
また、上記実施形態の内、<受光量の調整処理と光源の点灯制御ついての説明>の飽和点灯区間制御2以外においては、各光源の点灯時の立上り時間と消灯時の立下り時間は、概ね0であるとして説明したが、実際には、若干の時間がある。それに対し、本発明の一態様においては、複数の光源のうちの第一の光源の消灯時に、複数の光源のうちの第二の光源を点灯する順次点灯制御を実行することを特徴としている。本発明の課題を鑑みれば、程度の差はあるものの、第一の光源の立下り時間の間に第二の光源の立上りが開始されれば、本発明の効果の一つである電圧の変化を抑えることができるため、「第一の光源の消灯時」には第一の光源の消灯制御を開始してから立下り時間を経て光源に流れる電流が0になるまでの過渡状態の間に第二の光源の点灯が開始されるものが含まれるものである。より好ましくは、消灯時の立下り時間と点灯時の立ち上がり時間を考慮して、全体の電流がより平滑化されるように点灯制御される。但し、消灯時の立下り時間と点灯時の立ち上がり時間とが0であるかどうかに限らず、消灯開始タイミングと点灯開始タイミングを合わせるように制御しても良く、その場合には、素子や構成毎に固有の時間となりやすい立下り時間や立ち上がり時間に依らずに、簡易に構成することが可能となる。
【0091】
上述した実施形態においては、光源73r、73g、73bの点灯区間を制御する順次点灯制御を行った上で、総点灯区間が点灯可能区間を上回る場合に飽和点灯区間制御を実行し、不足する受光量を調整するために、光源73r、73g、73bに通電する電流値やゲインの調整を行うことについて説明した。ここで、点灯区間の制御については点灯時間を連続的に調整可能なのに対し、電流値を制御する電流制御部603(ドライバー)やゲイン制御部604(ゲイン調整回路)は、離散的に調整することになる。従って、本発明においては、基本的に順次点灯制御によって点灯区間を調整した結果に応じて飽和点灯区間制御を実行し、受光量が不足する場合に電流値やゲイン調整を実行した結果に対し、さらに点灯区間調整を実行することによって、必要な受光量を確保しつつ、各光源の点灯開始タイミングと消灯開始タイミングを合わせることも可能となる。
【符号の説明】
【0092】
100 画像読取装置
S 搬送媒体
70a 画像読取ユニット
70b 画像読取ユニット
71 導光体
72 受光センサアレー
73 光源
73r (赤色の)光源
73g (緑色の)光源
73b (青色の)光源
80 SP区間
81r 赤色LED点灯区間
81g 緑色LED点灯区間
81b 青色LED点灯区間
82r 赤色LED消灯区間
82g 緑色LED消灯区間
82b 青色LED消灯区間
81r_new (飽和点灯区間制御1後の)赤色LED点灯区間
81g_new (飽和点灯区間制御1後の)緑色LED点灯区間
81b_new (飽和点灯区間制御1後の)青色LED点灯区間
Tmax 点灯可能な最大区間
Tover Tmaxを超過した光量の値
83 SP区間分割位置
84 緑色LED点灯開始位置
85 緑色LED点灯開始位置(緑色LED点灯開始位置)
86 Toverの除算値
601 モード制御部
602 点灯区間制御部
603 電流制御部
604 ゲイン制御部
633r 駆動回路
633g 駆動回路
633b 駆動回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12