(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164626
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】熱可塑性動的架橋型材料、それによって形成される物品及びそれを形成する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/24 20060101AFI20221020BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20221020BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221020BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20221020BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CFD
C08L67/00
C08L21/00
C08L67/02
C08G63/672
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022067312
(22)【出願日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】63/175,576
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515119088
【氏名又は名称】李長榮化學工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, ウォン・ティング
(72)【発明者】
【氏名】シュー, チャン・ジー
(72)【発明者】
【氏名】リュー, レン・ハウ
(72)【発明者】
【氏名】シャウ, ユー・チェング
(72)【発明者】
【氏名】イー, ハーン・リーウー
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4F070AA08
4F070AA13
4F070AA18
4F070AA29
4F070AA47
4F070AA63
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4F070AC56
4F070AC62
4F070AC66
4F070AE01
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4F070GA05
4F070GA08
4F070GB02
4F070GB03
4F070GB07
4F070GB08
4J002AC012
4J002AC032
4J002AC062
4J002AC072
4J002AC082
4J002AC112
4J002AE053
4J002BB062
4J002CF101
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4J002GM01
4J002GN01
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4J029AC02
4J029AE01
4J029BF26
4J029CB06A
4J029JE182
(57)【要約】 (修正有)
【課題】再使用されずカーボンフットプリントが高いという熱硬化性ゴムの問題点を解決することができる新規な材料を提供する。
【解決手段】熱可塑性動的架橋型材料は、ポリエステルを含む連続相であってポリエステルの融点が180℃以下である連続相と、架橋されたゴムを含む分散相であって架橋されたゴムの平均粒径が100μm以下である分散相とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性動的架橋型材料であって、
ポリエステルを含む連続相であって前記ポリエステルの融点が180℃以下である連続相と、
架橋されたゴムを含む分散相であって前記架橋されたゴムの平均粒径が100μm以下である分散相と、
を備える熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項2】
前記ポリエステルは、以下の式(I):
【化4】
(I)
によって表される反復単位を有し、
R
1は-(C
2H
4O)
z-、-(C
4H
8O)
z-、-(C
6H
12O)
z-、
【化5】
又は
【化6】
であり、zは1~25の整数であり、R
2はH又は置換基である、請求項1に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項3】
前記ポリエステルは、コポリエステルエラストマー(COPE)である、請求項1に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項4】
前記ポリエステルは、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)及びポリエチレンテレフタレートグリコール-コエチレンビニルアセテート(PETG-co-EVA)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項3に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項5】
前記架橋されたゴムがビニル基、スチレン基又はこれらの組合せを含み、前記架橋されたゴムが前記ビニル基を含む場合、前記ビニル基の含有量は前記架橋されたゴムの総重量を基準として10重量%~90重量%の範囲にあり、前記架橋されたゴムが前記スチレン基を含む場合、前記スチレン基の含有量は前記架橋されたゴムの総重量を基準として0.1重量%~70重量%の範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項6】
前記ビニル基の含有量は、前記架橋されたゴムの総重量を基準として25重量%~60重量%の範囲にある、請求項5に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項7】
前記架橋されたゴムは、架橋されたスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、架橋された天然ゴム(NR)、架橋されたブタジエンゴム(BR)、架橋されたニトリルブタジエンゴム(NBR)及び架橋されたエチレンビニルアセテートゴム(EVM)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項8】
前記ポリエステル対前記架橋されたゴムの重量比は3:7~9:1の範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項9】
前記ポリエステル対前記架橋されたゴムの重量比は4:6~6:4の範囲にある、請求項8に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項10】
プロセスオイルをさらに含み、該プロセスオイルの含有量は、前記架橋されたゴムの総重量を基準として1重量%~100重量%の範囲にある、請求項1に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項11】
水素化スチレンブロックコポリマー(HSBC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリオレフィンエラストマー(POE)からなる群から選択されるエラストマーをさらに含む請求項1に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項12】
前記架橋されたゴムの平均粒径が30μm以下である、請求項1に記載の熱可塑性動的架橋型材料。
【請求項13】
熱可塑性動的架橋型材料によって形成される物品であって、前記熱可塑性動的架橋型材料は、
ポリエステルを含む連続相であって前記ポリエステルの融点が180℃以下である連続相と、
架橋されたゴムを含む分散相であって前記架橋されたゴムの平均粒径が100μm以下である分散相と、
を備える、物品。
【請求項14】
熱可塑性動的架橋型材料を形成する方法であって、以下の:
ポリエステル及び架橋性ゴムを提供するステップであって、前記ポリエステルの融点が180℃以下である、ステップと、
架橋剤とともに前記ポリエステル及び前記架橋性ゴムを含む混合物に動的架橋処理を実行して熱可塑性動的架橋型材料を得るステップであって、前記熱可塑性動的架橋型材料は、前記ポリエステルを含む連続相であって前記ポリエステルの融点が180℃以下である連続相、及び架橋されたゴムを含む分散相であって前記架橋されたゴムの平均粒径が100μm以下である分散相を備える、ステップと、
を備える方法。
【請求項15】
前記動的架橋処理の前に、前記ポリエステル及び前記架橋性ゴムを含む前記混合物に溶融混合処理を実行するステップをさらに備える請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物は架橋助剤をさらに含み、該架橋助剤の含有量及び前記架橋剤の含有量の合計が、前記混合物及び前記架橋剤の総重量を基準として0.1重量%~6重量%の範囲にある、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物は架橋助剤をさらに含み、該架橋助剤の含有量及び前記架橋剤の含有量の合計が、前記混合物及び前記架橋剤の総重量を基準として0.1重量%~5重量%の範囲にある、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物は架橋助剤をさらに含み、該架橋助剤の含有量及び前記架橋剤の含有量の合計が、前記混合物及び前記架橋剤の総重量を基準として0.1重量%~3.6重量%の範囲にある、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)(1)の下で2021年4月16日に出願された米国仮特許出願第63/175576号、発明の名称「New type of thermoplastic vulcanizate」の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、熱可塑性材料、それによって形成される物品及びそれを形成する方法に関する。より具体的には、本開示は、熱可塑性動的架橋型材料、それによって形成される物品及びそれを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の戦略の下、種々の産業が、どのようにして製品の持続可能性を向上して環境への影響を軽減するかの要件に直面している。持続可能な開発目標を達成する1つの解決策は、製造過程で生成される廃棄物の再使用性を高めることである。
【0004】
熱硬化性ゴムは、タイヤ、ホース、ベルト、ガスケット、モールド、靴底及び成形部品などの種々の物品に適用されている。しかし、熱硬化性ゴムは、再使用されずカーボンフットプリントが高いという問題を有する。
【0005】
したがって、熱硬化性ゴムを代替して上記問題を解決することができる新規な材料を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、融点が180℃以下のポリエステル、架橋性ゴム及び架橋剤を含む熱可塑性ゴム組成物を提供する。
【0007】
本開示は、ポリエステルを含む連続相であってポリエステルの融点が180℃以下である連続相と、架橋されたゴムを含む分散相であって架橋されたゴムの平均粒径が100μm以下である分散相とを備える熱可塑性動的架橋型材料をさらに提供する。熱可塑性動的架橋型材料は、上記熱可塑性ゴム組成物からなる。
【0008】
本開示は、上記熱可塑性動的架橋型材料を形成する方法であって、ポリエステル及び架橋性ゴム(より具体的には、生ゴム)を提供するステップであって、ポリエステルの融点が180℃以下である、ステップと、架橋剤とともにポリエステル及び架橋性ゴムを含む混合物に動的架橋処理を実行して上記の熱可塑性動的架橋型材料を得るステップと、を備える方法をさらに提供する。架橋剤は、動的架橋処理中に架橋性ゴム(より具体的には、架橋部位を有する生ゴム)を、架橋されたゴムに変換するのに使用される。
【0009】
本開示では、ポリエステル、架橋性ゴム及び架橋剤を含む熱可塑性ゴム組成物に対して動的架橋処理が実行されて、ポリエステル及び架橋されたゴムの複合材料である熱可塑性動的架橋型材料を形成する。架橋性ゴムの架橋は、動的架橋によって実現される。動的架橋処理の温度は、約160℃~250℃の範囲にあり得る。動的架橋処理の温度の値についての用語「約」は、所与の値の±20%以内を意味する。さらに、動的架橋処理の時間は、約1分~40分の範囲にあり得る。本開示の一実施形態では、動的架橋処理の時間は、約2分~30分の範囲にあってもよい。ただし、本開示はそれに限定されず、動的架橋処理の温度又は時間は、ポリエステルの融点の原料及びその架橋剤のタイプ、又は架橋されたゴムの所望の架橋度に応じて調整され得る。本開示の一実施形態では、動的架橋は、ゴムを架橋しながら熱可塑性の(例えば、ポリエステルの)架橋性ゴム及び架橋剤の混合物が素練りされる処理である。用語「動的」は、架橋型組成物が架橋ステップ中に(固定の相対空間において)不動となる「静的」架橋と対比して、混合物が架橋ステップ中に剪断力を受けることを示す。動的架橋の例は、米国特許第3037954号、3806558号、4104210号、4116914号、4130535号、4141863号、4141878号、4173556号、4207404号、4271049号、4287324号、4288570号、4299931号、4311628号及び4338413号に記載されている。
【0010】
本開示では、方法は、動的架橋処理の前に、ポリエステル及び架橋性ゴムの混合物に溶融混合処理を実行するステップをさらに備え得る。ここで、溶融混合処理及び動的架橋処理は、異なる機械によって実行されてもよいし、必要に応じて同じ機械によって実行されてもよい。溶融混合処理の温度は、約120℃~200℃の範囲となり、ポリエステルの融点に応じて調整され得る。さらに、溶融混合処理の時間は、ポリエステルが完全に溶融される限り特に限定されない。本開示の一実施形態では、溶融混合処理は、完全に溶融される熱可塑性物、すなわち、ポリエステルが熱可塑性物を溶融するのに充分な温度において、架橋性ゴムと実質的に均質に混合されることを意味する。
【0011】
本開示では、本開示の方法を実行する機器は特に限定されず、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー又はブラベンダーミキサーなどの当技術で周知の任意の処理機器であればよいが、本開示はそれに限定されない。
【0012】
本開示の熱可塑性動的架橋型材料は、ポリエステルを含む連続相及び架橋されたゴムを含む分散相を備え、ポリエステルを含む連続相は摩耗抵抗を与え、架橋されたゴムを含む分散相は滑動抵抗を与え得る。
【0013】
本開示では、ポリエステルは、そのポリエステルが180℃以下の融点を有する限り、当技術で周知の任意のポリエステルであり得る。ポリエステルの融点が180℃よりも高い場合、高い初期温度の架橋剤が使用されなければならず、ポリエステルを完全に溶融するのに処理温度が上昇されなければならず、それによりポリエステル及び生ゴムが均一に混合され得る。しかし、処理温度が高すぎると、生ゴムは酸化及び劣化する可能性があり、又は酸化架橋が誘発されてゲルを生成する可能性があり、そのためにゴムは均一に分散されないことがあり、これは得られる熱可塑性動的架橋型材料の物理的特性(例えば、引張り強度又は伸び)に影響を与え得る。
【0014】
本開示において使用されるポリエステルの融点は、例えば、約75℃~180℃、80℃~180℃、85℃~180℃、90℃~180℃、95℃~180℃、100℃~180℃、105℃~180℃、110℃~180℃、115℃~180℃、115℃~175℃又は115℃~170℃の範囲にあり得るが、本開示はこれに限定されない。
【0015】
本開示の一実施形態では、ポリエステルは、以下の式(I):
【化1】
(I)
によって表される反復単位を有し得る。
R
1は-(C
2H
4O)
z-、-(C
4H
8O)
z-、-(C
6H
12O)
z-、
【化2】
又は
【化3】
であり、zは1~25の整数であり、R
2はH又は置換基である。
【0016】
本開示の一実施形態では、式(I)によって表される1つの反復単位が、ポリエステルに含まれ得る。本開示の他の実施形態では、式(I)によって表される複数の異なる反復単位が、ポリエステルに含まれ得る。さらに、ポリエステルは、そのポリエステルが式(I)によって表される反復単位を有する限り、他の反復単位を有していてもよい。
【0017】
本開示の一実施形態では、zは、1~25、1~24、1~23、1~22、1~21、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11又は1~10の整数であり得る。
【0018】
本開示の一実施形態では、置換基は、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり得る。
【0019】
本開示の一実施形態では、ポリエステルは、コポリエステルエラストマー(COPE)であり得る。例えば、イソフタル酸(IPA)などの他の二酸類又はシクロヘキサンジメタノール(CHDM)などのジオール類をポリエステルポリエチレンテレフタレート(PET)に導入することによって、材料は、そのコモノマー含有量に起因してコポリエステルとなるが、本開示はこれに限定されない。本開示の一実施形態では、COPEは、熱可塑性ポリエステルエラストマー(TPEE)及びポリエチレンテレフタレートグリコール-コエチレンビニルアセテート(PETG-co-EVA)からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。ただし、本開示はこれに限定されず、本開示では融点が180℃以下の他の任意のポリエステルが使用され得る。
【0020】
本開示の一実施形態では、架橋性ゴム又は架橋されたゴムがビニル基、スチレン基又はこれらの組合せを含み得る。架橋性ゴム又は架橋されたゴムがビニル基を含む場合、ビニル基の含有量は架橋性ゴム又は架橋されたゴムの総重量を基準として10重量%~90重量%の範囲にあり、架橋性ゴム又は架橋されたゴムがスチレン基を含む場合、スチレン基の含有量は架橋性ゴム又は架橋されたゴムの総重量を基準として0.1重量%~70重量%の範囲にある。
【0021】
本開示の一実施形態では、架橋性ゴム又は架橋されたゴムはビニル基を含んでいてもよく、ビニル基の含有量は架橋性ゴム又は架橋されたゴムの総重量を基準として10重量%~90重量%の範囲にあり得る。本開示の他の実施形態では、ビニル基の含有量は架橋性ゴム又は架橋されたゴムの総重量を基準として25重量%~60重量%の範囲として本開示の熱可塑性動的架橋型材料の滑動抵抗をさらに増加させてもよい。
【0022】
本開示の一実施形態では、架橋性ゴム又は架橋されたゴムはスチレン基を含んでいてもよく、スチレン基の含有量は架橋性ゴム又は架橋されたゴムの総重量を基準として0.1重量%~70重量%の範囲にあり得る。
【0023】
本開示の一実施形態では、架橋性ゴム又は架橋されたゴムはビニル基及びスチレン基の双方を含んでいてもよく、架橋性ゴム又は架橋されたゴムの総重量を基準として、ビニル基の含有量は10重量%~90重量%の範囲にあり、スチレン基の含有量は0.1重量%~70重量%にあり得る。本開示の他の実施形態では、架橋性ゴム又は架橋されたゴムは、ビニル基及びスチレン基の双方を含んでいてもよく、架橋性ゴム又は架橋されたゴムの総重量を基準として、ビニル基の含有量は25重量%~60重量%の範囲にあり、スチレン基の含有量は0.1重量%~70重量%にあり得る。
【0024】
本開示の一実施形態では、架橋性/架橋されたゴムは、架橋性/架橋されたスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、架橋性/架橋された天然ゴム(NR)、架橋性/架橋されたブタジエンゴム(BR)、架橋性/架橋されたニトリルブタジエンゴム(NBR、これはスチレン基を含まない)及び架橋性/架橋されたエチレンビニルアセテートゴム(EVM、これはスチレン基を含まない)からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。ただし、本開示はこれに限定されず、本開示では上記ビニル基の含有量又はスチレン基の含有量を有する他の任意の架橋性ゴム又は架橋されたゴムが使用されてもよい。
【0025】
本開示の一実施形態では、架橋されたゴムの平均粒径は、100μm以下であり得る。本開示の他の実施形態では、架橋されたゴムの平均粒径は、30μm以下であってもよい。例えば、架橋されたゴムの平均粒径は、約0.1μm~100μm、0.1μm~95μm、0.1μm~90μm、0.1μm~85μm、0.1μm~80μm、0.1μm~75μm、0.1μm~70μm、0.1μm~65μm、0.1μm~60μm、0.1μm~55μm、0.1μm~50μm、0.1μm~45μm、0.1μm~40μm、0.1μm~35μm、0.1μm~30μm、0.1μm~25μm、0.1μm~20μm、0.1μm~15μm、又は0.1μm~10μmの範囲にあり得るが、本開示はこれに限定されない。
【0026】
本開示の一実施形態では、ポリエステル対架橋性ゴム又は架橋されたゴムの重量比は、約3:7~9:1の範囲にあり得る。本開示の他の実施形態では、ポリエステル対架橋性ゴム又は架橋されたゴムの重量比は、約4:6~6:4の範囲にあり得る。ポリエステル対架橋性ゴムの重量比が上記の範囲にある場合、ポリエステルを含む連続相及び架橋されたゴムを含む分散相を備える熱可塑性動的架橋型材料が動的架橋処理後に取得可能となる。
【0027】
本開示の一実施形態では、熱可塑性動的架橋型材料を形成する方法においてプロセスオイルが使用される場合、熱可塑性ゴム組成物又は熱可塑性動的架橋型材料はプロセスオイルをさらに含んでいてもよく、プロセスオイルの含有量は架橋性ゴム又は架橋されたゴムの総重量を基準として約1重量%~100重量%の範囲にある。本開示の他の実施形態では、熱可塑性ゴム組成物又は熱可塑性動的架橋型材料は、プロセスオイルを含まなくてもよい。ここで、プロセスオイルは、架橋されたゴム又は熱可塑性動的架橋型材料の硬度を低下させ、又は架橋性ゴム又は熱可塑性ゴム組成物の処理性を増加させることができる。
【0028】
本開示の一実施形態では、架橋剤は、過酸化物、レゾール型フェノール樹脂、硫黄、水素化ケイ素、又は当技術で知られているゴムを架橋するのに適した他の架橋剤であり得る。本開示の一実施形態では、架橋剤は、過酸化物であり得る。本開示の一実施形態では、架橋剤は2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンであり得るが、本開示はこれに限定されない。
【0029】
本開示の一実施形態では、架橋助剤(co-agent)は、熱可塑性動的架橋型材料を生成する処理中に添加されなくてもよい。
【0030】
本開示の一実施形態では、架橋助剤が、動的架橋処理中に架橋剤とともに使用されてもよい。したがって、得られる熱可塑性ゴム組成物は、架橋助剤をさらに含み得る。
【0031】
本開示の一実施形態では、架橋助剤の含有量及び架橋剤の含有量の合計は、熱可塑性ゴム組成物の総重量を基準として、又は動的架橋処理で処理されるポリエステル及び架橋性ゴム並びに架橋剤の混合物の総重量を基準として約0.1重量%~6重量%の範囲にあり得る。本開示の他の実施形態では、架橋助剤の含有量及び架橋剤の含有量の合計は、熱可塑性ゴム組成物の総重量を基準として、又は動的架橋処理で処理されるポリエステル及び架橋性ゴム並びに架橋剤の混合物の総重量を基準として、例えば、約0.1重量%~5.8重量%、0.1重量%~5.6重量%、0.1重量%~5.4重量%、0.1重量%~5.2重量%、0.1重量%~5.0重量%、0.1重量%~4.8重量%、0.1重量%~4.6重量%、0.1重量%~4.5重量%、0.1重量%~4.4重量%、0.1重量%~4.2重量%、0.1重量%~4.0重量%、0.1重量%~3.8重量%、0.1重量%~3.6重量%、0.1重量%~3.5重量%、0.1重量%~3.3重量%、0.1重量%~3.0重量%、0.1重量%~2.8重量%、0.1重量%~2.6重量%、0.1重量%~2.4重量%、0.1重量%~2.2重量%、0.1重量%~2.0重量%、0.1重量%~1.8重量%、0.1重量%~1.6重量%、0.1重量%~1.4重量%、0.1重量%~1.2重量%、0.1重量%~1.0重量%、又は0.1重量%~0.8重量%の範囲にあり得る。
【0032】
さらに、架橋助剤及び架橋剤の含有量の合計の範囲は、熱可塑性ゴム組成物に含有される動的架橋処理で処理されるプロセスオイル又はポリエステル及び架橋性ゴム並びに架橋剤を含む混合物の量に応じて異なり得る。架橋助剤及び架橋剤の含有量の合計は、プロセスオイルの量が増加するにつれて減少し得る。本開示の一実施形態では、架橋助剤及び架橋剤の含有量の合計は、プロセスオイル不使用時の、熱可塑性ゴム組成物の総重量を基準として、又は動的架橋処理で処理されるポリエステル及び架橋性ゴム並びに架橋剤を含む混合物の総重量を基準として、約0.1重量%~6重量%の範囲にあり得る。本開示の他の実施形態では、架橋助剤及び架橋剤の含有量の合計は、プロセスオイルの量が架橋性ゴムの総重量を基準として50重量%の場合の、熱可塑性ゴム組成物の総重量を基準として、又は動的架橋処理で処理されるポリエステル及び架橋性ゴム並びに架橋剤を含む混合物の総重量を基準として、約0.1重量%~5重量%の範囲にあり得る。本開示の他の実施形態では、架橋助剤及び架橋剤の含有量の合計は、プロセスオイルの量が架橋性ゴムの総重量を基準として100重量%の場合の、熱可塑性ゴム組成物の総重量を基準として、又は動的架橋処理で処理されるポリエステル、架橋性ゴム及び架橋剤を含む混合物の総重量を基準として、約0.1重量%~3.6重量%の範囲にあり得る。ただし、本開示はこれに限定されず、架橋助剤及び架橋剤の含有量の合計は、架橋助剤又は架橋剤の種類が変更されると異なり得る。
【0033】
本開示の一実施形態では、架橋助剤は、架橋速度又は架橋度を向上し得る共架橋剤であってもよく、適量の共架橋剤を添加することによってより良好な架橋構造体が取得され得る。本開示の他の実施形態では、取得された熱可塑性動的架橋型材料の特性を向上するように、架橋助剤がポリエステル及び架橋性ゴムの中間生成物として使用されてもよい。架橋助剤は、分子における少なくとも2つの官能基との化合物であり得る。本開示では、架橋助剤の例は、これに限定されないが、多官能性(メタ)アクリレート(例えば、2官能性又は3官能性型多官能性(メタ)アクリレート)、長鎖ビニル化合物(例えば、長鎖ビニル1,2-ポリブタジエン)、マレイミド(例えば、N,N’-m-フェニレンジマレイミドなどのビスマレイミド類)又は多官能性チオール化合物を含み得る。本開示の一実施形態では、架橋助剤の例は、これに限定されないが、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリヒドロキシメチルプロピルトリメチルアクリレート(TMPTMA)、N,N’-m-フェニレンジマレイミド(例:ウエスタンリザーブケミカル社製WESTCO(商標)PDM、又はデュポン社製HVA-2)又は1,2-ポリブタジエン(例:JSR社製RB830)を含み得る。
【0034】
本開示の一実施形態では、熱可塑性ゴム組成物又は熱可塑性動的架橋型材料は、必要に応じて水素化スチレンブロックコポリマー(HSBC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)及びポリオレフィンエラストマー(POE)からなる群から選択されるエラストマーをさらに含んでいてもよい。種々のタイプのHSBCがあり、それらは主にスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー(SEEPS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンコポリマー(SEPS)又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンコポリマー(SEBS)を含む。種々のタイプのPOEがあり、それらは主にポリエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマー(PBE)又はオレフィンブロックコポリマー(OBC)を含む。
【0035】
本開示の一実施形態では、熱可塑性ゴム組成物又はポリエステル及び架橋性ゴムの混合物は、必要な場合には、相溶化剤、摩耗防止剤、スコーチ防止剤、充填剤、酸化防止剤、ワックス、触媒又は可塑剤などの他の補助添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0036】
本開示はまた、上記の熱可塑性ゴム組成物又は熱可塑性動的架橋型材料からなる物品を提供する。上記の熱可塑性動的架橋型材料によって構成される物品が使用又は再使用されなくなった場合、再使用物品は粉体又は小片に粉砕可能であり、適量の粉体又は小片が新たな熱可塑性動的架橋型材料に添加されて新たな物品を製造することができる。
【0037】
本開示では、用語「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードラジカルのことをいう。
【0038】
ここでの用語「アルキル」とは、1~12個の炭素原子(例えば、C1~C10、C1~C8及びC1~C6)を含有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基のことをいう。例として、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル及びt-ブチルを含む。
【0039】
ここでの用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素基のことをいい、例えば、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖若しくは分岐鎖C2-12炭化水素基、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖若しくは分岐鎖C2-8炭化水素基、又は少なくとも1つの二重結合を有する直鎖若しくは分岐鎖のC2-6炭化水素基を含む。アルケニルの例は、これに限定されないが、ビニル、プロぺニル又はブテニルを含む。
【0040】
ここでの用語「アルキニル」とは、2~20個の炭素原子(例えば、C2~C16、C2~C12、C2~C8、C2~C6及びC2~C4)及び1以上の三重結合を含有する直鎖又は分岐鎖の一価又は二価炭化水素のことをいう。アルキニルの例は、これに限定されないが、エチニル、エチニレン、1-プロピニル、1-及び2-ブチニル並びに1-メチル-2-ブチニルを含む。
【0041】
用語「アルコキシ」とは、-O-アルキル基のことをいう。例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びイソプロポキシを含む。
【0042】
用語「シクロアルキル」とは、3~12(例えば、3~10及び3~7)個の炭素原子を有する飽和又は部分不飽和の単環式、二環式、三環式又は四環式炭化水素基のことをいう。例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル及びシクロオクチルを含む。
【0043】
用語「ヘテロシクロアルキル」とは、1以上のヘテロ原子(例えば、O、N、P及びS)を有する非芳香族5~8員単環式、8~12員二環式又は11~14員三環式環系のことをいう。例として、ピペラジニル、イミダゾリジニル、アゼパニル、ピロリジニル、ジヒドロチアジアゾリル、ジオキサニル、モルホリニル及びテトラヒドロフラニルを含む。
【0044】
用語「アリール」とは、6炭素単環式、10炭素二環式、14炭素三環式芳香環系のことをいう。アリール基の例は、フェニル、ナフチル及びアントラセニルを含む。
【0045】
用語「ヘテロアリール」とは、1以上のヘテロ原子(例えば、O、N、P及びS)を有する芳香族5~8員単環式、8~12員二環式又は11~14員三環式環系のことをいう。例として、チオフェニル、トリアゾリル、オキサゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、フリル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリル及びベンゾチアゾリルを含む。
【0046】
さらに、化合物に存在するアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、特に断りがない限り、置換部位及び未置換部位の双方を含む。可能な置換基は、これに限定されないが、アルキル、シクロアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、エステル、アミノ又はカルボキシルを含み得る。ただし、アルキルはアルキルで置換されることはない。
【0047】
本開示の他の新規な構成が、添付図面との関係で解釈される場合に以下の詳細な説明からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、本開示の実施例1-7において調製された熱可塑性動的架橋型材料のTEM写真である。
【
図2】
図2は、本開示の実施例1-7において調製された熱可塑性動的架橋型材料のSEM写真である。
【
図3】
図3は、本開示の実施例1-10において調製された熱可塑性動的架橋型材料のTEM写真である。
【
図4】
図4は、本開示の実施例1-10において調製された熱可塑性動的架橋型材料のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示の様々な実施形態が、以下の説明において与えられる。これらの実施形態は、本開示の技術的内容を説明することを意図し、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。ある実施形態に記載される構成は、適宜の変形、置換、合成又は分離によって他の実施形態に適用され得る。
【0050】
なお、本明細書では、ある成分がある要素を有するものとして説明される場合、それは当該成分が1以上の当該要素を有し得ることを意味し、特に断りがある場合を除き、当該成分が1つのみの当該要素を有することを意味するものではない。
【0051】
本明細書では、特に断りがある場合を除き、構成A「又は(若しくは)」又は「及び(並びに)/又は(若しくは)」構成Bは、構成Aの存在、構成Bの存在、又は両構成A及びBの存在を意味する。構成A「及び(並びに)」構成Bは、両構成A及びBの存在を意味する。用語「備える(含む)」、「備えている(含んでいる)」、「含む」、「含んでいる」、「有する(複数主語)」、「有する(単数主語)」及び「有している」は、「備える/備えているがそれに限定されない」を意味する。
【0052】
本開示では、特に断りがある場合を除き、用語「ほぼ」、「約」及び「おおよそ」は当業者によって特定される具体的値における許容可能な誤差を意味し、その誤差はその値がどのように測定又は特定されるかによる。ある実施形態では、用語「ほぼ」、「約」及び「おおよそ」は、1、2、3又は4標準偏差内を意味する。ある実施形態では、用語「ほぼ」、「約」及び「おおよそ」は、所与の値又は範囲の±20%以内、±15%以内、±10%以内、±9%以内、±8%以内、±7%以内、±6%以内、±5%以内、±4%以内、±3%以内、±2%以内、±1%以内、±0.5%以内、±0.05%以下又はそれ未満を意味する。ここに与えられる量はおおよその量であり、すなわち、「ほぼ」、「約」及び「おおよそ」と断らなくても、「ほぼ」、「約」及び「おおよそ」を示唆し得るものである。さらに、文言「第1の値から第2の値の範囲」及び「第1の値と第2の値の間の範囲」は、上記範囲が第1の値、第2の値、及び第1の値と第2の値の間の他の値を含むことを意味する。
【0053】
さらに、本開示の様々な実施形態の構成が混合されて他の実施形態を構成することもある。
【0054】
材料
A:ゴム
A-1:ESBR(乳化重合スチレン-ブタジエンゴム)、Zeon Corp.、NIPOL(登録商標)1502
A-2:SSBR(溶液重合スチレン-ブタジエンゴム)、JSR Corp.、SL563R
A-3:IIR(ポリ(イソブチレン-イソプレン)、HB Fuller KALAR(登録商標)5246
A-4:BR(ブタジエンゴム)、Kumho Petrochemical Co.,Ltd、KBR-01
A-5:NR(天然ゴム)、Hoang Dung Co.Ltd、SVR 3L
A-6:NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、Arlanxeo Corp.、PERBUNAN(登録商標)1846F
A-7:EVM(エチレンビニルアセテートゴム)、Arlanxeo Corp.、Levapren(登録商標)800
【0055】
B:プラスチック
B-1:TPEE(熱可塑性ポリエステルエラストマー)、Tm:145℃、Shinkong Synthetic Fibers Co.、4000-DL
B-2:PBS(ポリブチレンサクシネート)、Tm:115℃
B-3:COPE(コポリエステルエラストマー)、Tm:120℃
B-4:COPE、Tm:149℃
B-5:COPE、Tm:151℃
B-6:COPE、Tm:140℃
B-7:COPE、Tm:140℃
B-8:TPEE、ショアA:45、Tm:150℃、三菱化学株式会社、TEFABLOC A1400N
B-9:TPEE、ショアA:61、Tm:150℃、三菱化学株式会社、TEFABLOC A1500N
B-10:TPEE、ショアA:67、Tm:160℃、三菱化学株式会社、TEFABLOC A1606C
B-11:PETG(ポリ(エチレンテレフタレート-co-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート))、Tm:260℃、SK Chemicals Co.、SKYGREEN(登録商標)K2012
B-12:EVA(エチレン-ビニルアセテートコポリマー)、Tm:84℃、USI Corp.、POLYMER-E(登録商標)EV-103
【0056】
C:プロセスオイル
C-1:ナフテンオイル及びパラフィンオイル、Ergon Inc.、HyPrene L2000
C-2:ナフテンオイル、ENEOS株式会社、BUENO GR 500
C-3:パラフィンオイル、Michang Oil Ind.Co.、Fomi 550
【0057】
D:相溶化剤
D-1:エチレン-グリシジルメタクリレートポリスチレンコポリマー、NOF Corp.、MODIPER(登録商標)A4100
D-2:芳香族系水性樹脂、三井化学株式会社、FTR(登録商標)6100
D-3:EAA(エチレンアクリル酸コポリマー)、Dow Chemicals Co.、PRIMACOR(登録商標)5980I
【0058】
E:過酸化物
E-1:80%のポリプロピレン及び20%の2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、MannTek Co.,Ltd、CR PP-20X
【0059】
F:架橋助剤
F-1:75%のN,N’-m-フェニレンビスマレイミド及び25%のエチレンプロピレンターポリマー、Atman Co.,Ltd、Atnen PDM-75
F-2:シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、JSR Corp.、RB-830
【0060】
G:スコーチ防止剤
G-1:2,2,6,6-テトラメチルピペリジノオキシ、Merck Chemical Co.、TEMPO
【0061】
H:充填剤
H-1:シリカ、Sibelco Group、Silverbond 925
【0062】
I:添加剤
I-1:可塑剤、UPC Group、UN640
I-2:チタン酸テトライソプロピル、触媒、Borica Co.,Ltd.、TYTAN-TIPT
I-3:ネオデカン酸リチウム、触媒、EGE KIMYA Sanayi ve Ticaret A.S.、EGECat(登録商標)1D6121
【0063】
J:酸化防止剤
J-1:ベンゼンプロパノール酸、3-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-5-メチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2,2-ジメチル-2,1-エタンジイル)エステル)、JAK Chemicals、AO20
J-2:ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフェート、Dover Chemical Corporation、S9228
J-3:テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニルジホスホニト、Clariant International Ltd、AddWorks LXR 568
J-4:テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ビフェニルジホスホニト、Clariant International Ltd、VN 125949
【0064】
K:ワックス
K-1:極性変性ワックス、Clariant International Ltd、RBW 102
K-2:ワックス状アミド、Kao Chemicals Global、KAO WAX EB-FF
K-3:12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、堺化学工業株式会社、SZ-120H
【0065】
L:エラストマー
L-1:SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)、LCY、SEBS 7533
L-2:HSBC(水素化スチレンブロックコポリマー)、Kraton、MD6951
L-3:TPU(熱可塑性ポリウレタン)、岡田エンジニアリング株式会社、Gumthane ARX-550
L-4:PBE(プロピレン系エラストマー)、ExxonMobil Corp.、Vistamaxx 6202
【0066】
M:摩耗防止剤
M-1:ポリエステル変性ポリシロキサン、Evonik Industries AG.、TEGOMER H-Si 6441P
【0067】
処理方法
二軸押出機
二軸押出機を用いる処理方法は当技術において周知である。簡単に説明すると、ポリエステル、架橋性ゴム及び添加剤を添加し、180℃で溶融し、プロセスオイルを選択的に添加し、180℃で混合し、架橋剤を(任意選択的に架橋助剤とともに)添加し、180℃で混合した。その後、動的架橋処理を190℃で実行し、続いて190℃で搬出して熱可塑性動的架橋型材料を得た。
【0068】
バンバリーミキサー
バンバリーミキサーを用いる処理方法は当技術において周知である。簡単に説明すると、架橋性ゴムを必要な場合にプロセスオイルと180℃で混合し、続いて添加物を添加した。その後、ポリエステル及び架橋剤を(任意選択的に架橋助剤とともに)180℃で順次添加した。動的架橋処理を180℃で20~30分間実行して熱可塑性動的架橋型材料を得た。
【0069】
試験方法
得られた熱可塑性動的架橋型材料のショアA硬度をASTM D2240に従って測定した。得られた熱可塑性動的架橋型材料の乾燥及び湿潤滑動抵抗をSATRA TM144-2011に従って測定した。得られた熱可塑性動的架橋型材料の微細構造体を透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。
【実施例0070】
熱可塑性ゴム組成物の成分、処理方法及び熱可塑性動的架橋型材料の試験結果を以下の表1-1及び1-2に示す。
【表1-1】
【0071】
図1は本開示の実施例1-7において調製された熱可塑性動的架橋型材料のTEM写真であり、黒色部分は架橋されたゴムであり、白色部分はポリエステルである。
図2は本開示の実施例1-7において調製された熱可塑性動的架橋型材料のSEM写真であり、黒色部分はポリエステルであり、白色部分は架橋されたゴムである。
【0072】
図1及び
図2に示すように、得られた熱可塑性動的架橋型材料は、ポリエステルによって連続相が構成され、架橋されたゴムによって分散相が構成され、かつ架橋されたゴムの平均粒径が100μm以下である構成を有することが分かる。
【0073】
不図示であるが、実施例1-1~1-6において調製された熱可塑性動的架橋型材料のTEM又はSEM写真も、得られた熱可塑性動的架橋型材料が
図1又は
図2に示すのと同様の構造体を有することを示す。
【表1-2】
【0074】
図3は本開示の実施例1-10において調製された熱可塑性動的架橋型材料のTEM写真であり、黒色部分は架橋されたゴムであり、白色部分はポリエステルである。
図4は本開示の実施例1-10において調製された熱可塑性動的架橋型材料のSEM写真であり、黒色部分はポリエステルであり、白色部分は架橋されたゴムである。
【0075】
図3及び
図4に示すように、得られた熱可塑性動的架橋型材料は、ポリエステルによって連続相が構成され、架橋されたゴムによって分散相が構成され、かつ架橋されたゴムの平均粒径が約0.3μm~4.0μmである構成を有することが分かる。
【0076】
不図示であるが、実施例1-8、1-9、1-11~1-14において調製された熱可塑性動的架橋型材料のTEM又はSEM写真も、得られた熱可塑性動的架橋型材料が
図3又は
図4に示すのと同様の構造体を有することを示す。
【0077】
実施例1-1~1-14の結果は、所望の構造の熱可塑性動的架橋型材料は、ポリエステル対架橋性ゴムの重量比が3:7~9:1の範囲にある場合に取得可能となることを示す。
不図示であるが、実施例2-1~2-16において調製された熱可塑性動的架橋型材料のTEM又はSEM写真は、得られた熱可塑性動的架橋型材料は、ポリエステルによって連続相が構成され、架橋されたゴムによって分散相が構成され、かつ架橋されたゴムの平均粒径が100μm以下である構成を有することを示す。
さらに、実施例2-15~2-16では、融点81℃のPETG-co-EVAが形成され、得られた熱可塑性動的架橋型材料は、ポリエステルによって連続相が構成され、かつ架橋されたゴムによって分散相が構成された構成を有する。一方、比較例2-1では、融点260℃のPETGが用いられ、得られた熱可塑性材料は、ポリエステルによって分散相が構成され、かつ架橋されたゴムによって連続相が構成された構造を有する。したがって、実施例2-15~2-16で得られた構造を比較例2-1で得ることはできない。