(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164654
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】移動式前室の配置構造及び移動式前室
(51)【国際特許分類】
A61G 10/02 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
A61G10/02 M
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068181
(22)【出願日】2022-04-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2021070034
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518070618
【氏名又は名称】株式会社レブセル
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(72)【発明者】
【氏名】山本 健二
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341JJ01
4C341KK05
4C341KL04
(57)【要約】
【課題】陰圧室又は居室からの汚染された空気の漏出を防止すると共に、陰圧室又は居室に出入りする者が防護服を着脱するためのスペースを確保することを可能にする移動式前室を提供する。
【解決手段】移動式前室100は、陰圧室101の出入り口101aに配置される。移動式前室100は、内部空間Rを形成するフレーム体10と、フレーム体10を覆い可撓性を有するシート材20と、フレーム体10に取り付けられた車輪40と、陰圧室101の出入り口101a近傍の外壁部101bの少なくとも一部に、シート材20を固定する固定部材31と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症患者又は感染症の疑いがある者が居る居室の出入り口に配置される移動式前室であって、
複数の柱部材を含むフレーム体であって、前記移動式前室の内部空間を形成するフレーム体と、
前記フレーム体を覆い、可撓性を有するシート材と、
前記フレーム体に取り付けられた車輪と、
前記居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に、前記シート材を固定する固定部材と、
前記複数の柱部材の高さ方向の寸法を変更する伸縮機構部と、を備える、移動式前室。
【請求項2】
前記シート材は、前記寸法が最大の寸法未満である状態で、前記シート材のうちの前記フレーム体を覆う部分以外の少なくとも一部である第1余剰部分を含む、請求項1に記載の移動式前室。
【請求項3】
前記第1余剰部分は、前記シート材のうちの前記フレーム体を覆う部分の外側面に着脱可能に固定されている、請求項2に記載の移動式前室。
【請求項4】
前記フレーム体の内部への出入り口に吊り下げされた1つ又は複数の出入り口シート材をさらに備え、
前記出入り口シート材は、前記寸法が前記最大の寸法未満である状態で、前記出入り口シート材のうちの前記出入り口を覆う部分以外の少なくとも一部である第2余剰部分を含み、
前記第2余剰部分は、前記出入り口シート材のうちの外側面に着脱可能に固定されている、請求項3に記載の移動式前室。
【請求項5】
前記第1余剰部分を巻回して保持するローラ部を、さらに備える、請求項2に記載の移動式前室。
【請求項6】
前記シート材は、前記寸法が所定の寸法以下である状態で、前記フレーム体のうちの前記居室の出入り口側に配置される面を覆い、前記寸法が前記所定の寸法よりも大きい状態で、前記フレーム体のうちの前記居室の出入り口側に配置される面を開放する、請求項1~5のいずれか1項に記載の移動式前室。
【請求項7】
前記フレーム体は、前記フレーム体の内部にユーザの手及び腕部が挿入される第1腕部挿入部を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の移動式前室。
【請求項8】
前記第1腕部挿入部は、前記フレーム体の第1側面に形成されており、
前記フレーム体は、前記フレーム体の前記第1側面に対向する第2側面に形成された第2腕部挿入部を、さらに有する、請求項7に記載の移動式前室。
【請求項9】
前記第1腕部挿入部は、一対の開口部と、前記一対の開口部の各々に配置されたグローブを含む、請求項7に記載の移動式前室。
【請求項10】
前記第1腕部挿入部は、前記一対の開口部を共に囲む腕部フレームを含む、請求項9に記載の移動式前室。
【請求項11】
前記第1腕部挿入部は、前記伸縮機構部よりも下方の位置に配置されている、請求項7に記載の移動式前室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式前室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内が陰圧に保たれた陰圧室が知られている。例えば、特許文献1には、室内を陰圧に保つとともに、室内の空気を浄化させる空気浄化装置が設けられた感染症用治療室が開示されている。流行性の高い感染病の患者をこの感染症用治療室において治療することにより、外部にウイルス等を含む空気(汚染された空気)が広がるのが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近のCOVID-19等の新型ウイルスの急激な流行に伴い、多くの医療機関では、突貫工事によって既存の病室等を陰圧室(感染症用治療室)化させている一方、前室は設けられていない場合が多い。前室が無いと、陰圧室の扉を開けた際に陰圧室内部の汚染された空気が漏れ出ることを完全に防ぐことは難しい。また、陰圧室ではない病室や居室にも、感染症患者を入院させる場合があり、このような場合、汚染された空気が漏れ出ることを防ぐ必要がある。また、陰圧室又は居室に出入りする場合、医療スタッフなど陰圧室又は居室に出入りする者は、防護服を着脱する必要があるが、防護服を着脱するためのスペースが無いという問題もある。
【0005】
この開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、陰圧室又は居室からの汚染された空気の漏出を防止すると共に、陰圧室又は居室に出入りする者が防護服を着脱するためのスペースを確保することを可能にする移動式前室を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、以下に開示する、本開示の一の態様に係る移動式前室は、陰圧室又は居室の出入り口に配置される移動式前室であって、複数の柱部材を含むフレーム体であって、移動式前室の内部空間を形成するフレーム体と、フレーム体を覆い、可撓性を有するシート材と、フレーム体に取り付けられた車輪と、陰圧室又は居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に、シート材を固定する固定部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記の移動式前室によれば、陰圧室又は居室からの汚染された空気の漏出を防止すると共に、陰圧室又は居室に出入りする者が防護服を着脱するためのスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態における移動式前室の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、フレーム体の構成を説明するための斜視図である。
【
図3】
図3は、陰圧室と移動式前室との配置関係を説明するための平面模式図である。
【
図4】
図4は、陰圧室の出入り口及び出入り口の近傍の正面図である。
【
図5】
図5は、スカート部、及び固定部材の構成を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態における移動式前室の断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態におけるフレーム体の斜視図である。
【
図8】
図8は、移動式前室と陰圧室との配置関係を示す平面模式図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態における移動式前室の断面図である。
【
図10】
図10は、第1~第6実施形態の第1変形例による移動式前室を示す図である。
【
図11】
図11は、第1~第6実施形態の第2変形例による移動式前室を示す図である。
【
図12】
図12は、第4実施形態における移動式前室のうちのシート材が配置された位置の断面図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態における移動式前室のうちの出入り口シート材が配置された位置の断面図である。
【
図14】
図14は、第4実施形態における移動式前室が移動される状態の断面図である。
【
図15】
図15は、第5実施形態における移動式前室の構成を示す断面図である。
【
図16】
図16は、第5実施形態における移動式前室の構成を示す平面図である。
【
図17】
図17は、第4及び第5実施形態の第3変形例による移動式前室を示す図である。
【
図18】
図18は、第6実施形態における移動式前室の構成を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第6実施形態における移動式前室の構成を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、第6実施形態における腕部挿入部の構成を示す断面図である。
【
図21】
図21は、第6実施形態の第4変形例による移動式前室を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。また、以下の説明において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、実施形態および変形例に記載された各構成は、適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。また、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態における移動式前室100の構成を示す断面図である。移動式前室100は、陰圧室101の出入り口101aに配置される。陰圧室101は、これに限られないが、病院、学校、ホテル又は介護施設等における室内の気圧が陰圧化された治療室、病室及び居室である。また、陰圧室101は、感染症患者又は感染症の疑いがある者が居る部屋である。移動式前室100には、複数の車輪40が設けられている。これにより、移動式前室100が移動されることによって、前室が備え付けられていない様々な陰圧室101に取り付けることが可能となる。例えば、陰圧室101の出入り口101aに面した廊下102に、移動式前室100が配置される。なお、以下の説明では、X1方向及びX2方向を廊下102が延びる方向として、Y1方向及びY2方向を廊下102の幅方向として、Z1方向及びZ2方向を高さ方向として説明する。また、Y1方向は陰圧室101から離れる方向を、Y2方向は陰圧室101に近付く方向を、Z1方向は上方向を、Z2方向は下方向を示す。なお、本開示の移動式前室100は、陰圧室101の前室として利用することに限られず、陰圧化されていない居室や病室の出入り口に配置されてもよい。この場合でも、移動式前室100によって居室から汚染された空気が漏れだすのを防止することが可能となる。
【0011】
図1に示すように、移動式前室100は、フレーム体10と、シート材20と、固定部材31及び32(
図5参照)とを備える。フレーム体10は、移動式前室100の内部空間Rを形成する。内部空間Rにおいて、陰圧室101に出入りする者(医療スタッフ等)Pは、陰圧室101に出入りする際の作業(例えば、防護服の着脱)を行うことができる。
【0012】
図2は、フレーム体10の構成を説明するための斜視図である。
図3は、陰圧室101と移動式前室100との配置関係を説明するための平面模式図である。
図2に示すように、フレーム体10は、複数の柱部材11と、複数の長手梁部材12と、複数の短手梁部材13とを含む。複数の柱部材11と、複数の長手梁部材12と、複数の短手梁部材13とが組み合わされ、複数の枠(6つの面)が形成されることにより、フレーム体10は、直方体状に形成されている。これにより、
図3に示すように、フレーム体10には、短手方向の一方の側面10a及び他方の側面10bと、長手方向の一方の側面10c及び他方の側面10dが形成されている。
【0013】
図3に示すように、フレーム体10は、平面視で長方形形状を有する。すなわち、フレーム体10(移動式前室100)の長手方向の長さL1は、短手方向の長さ(幅)W1よりも大きい。なお、幅W1は、廊下の幅W2よりも小さい。そして、移動式前室100は、フレーム体10の長手方向と廊下102が延びる方向とが平行になるとともに、フレーム体10の短手方向と廊下102の幅方向とが平行になるように配置される。そして、移動式前室100側の側面10aには、出入り口51が設けられている。また、廊下102側の側面10bには、出入り口52が設けられている。ここで、病院や介護施設の廊下の幅は、所定の大きさを確保しなければならない(医療法施行規則第16条第1項11号)。また、病院や介護施設以外の施設(学校等)であっても、廊下の幅の下限が建築基準法により規定されている。そこで、上記のように移動式前室100の短手方向を廊下102の幅方向に一致させた状態で、移動式前室100を配置することにより、廊下102における移動式前室100の幅方向の占める割合を小さくしながら、廊下102が延びる方向に沿って移動式前室100の内部空間Rを大きく確保することができる。
【0014】
出入り口51は、例えば、陰圧室101の出入り口101aに通じる開口として構成されている。すなわち、出入り口51は、陰圧室101の出入り口101aに扉が設けられている場合、当該扉を移動式前室100と陰圧室101とで共用する。これにより、陰圧室101の出入り口101aに複数の扉が配置されないので、出入りする者Pが複数の扉を開け閉めする必要がなくなる。また、移動式前室100の構成を簡素化及び軽量化することができる。また、本開示では、共用するのは扉に限られず、側面10aをフレーム体10に設けないで、移動式前室100の陰圧室101側の側面と外壁部101bとが共用されてもよい。すなわち、移動式前室100の陰圧室101に接する面は底辺の無いコの字(U字)のフレームとして形成してもよい。
【0015】
図3に示すように、出入り口52は、出入り口51とX1方向(長手方向)にずれた位置に形成されている。具体的には、出入り口52の長手方向の中心C2は、出入り口51の長手方向の中心C1よりも、X1方向に設けられている。この構成によれば、出入り口52と陰圧室の出入り口101aとが長手方向にずれるので、陰圧室101の出入り口101aと出入り口52との間の空気Aが流れる経路を複雑化することができる。この結果、陰圧室101から汚染された空気が移動式前室100を通じて出入り口52から出るのを抑制することができる。
【0016】
また、
図2に示すように、移動式前室100は、出入り口52に吊り下げされた出入り口シート材60を含む。出入り口シート材60は、X1方向に並んで配置された複数のシート材61を含む。シート材61は、可撓性を有する。すなわち、出入り口シート材60は、いわゆる暖簾状に形成されている。これにより、出入り口52に、扉が設けられている場合と異なり、出入り口シート材60は手を使用せずに、フレーム体10の内部空間Rへ容易に出入りすることが可能となる。そして、手が出入り口シート材60に触れないことにより、出入り口シート材60の衛生状態を良い状態を維持させることができる。
【0017】
また、
図1に示すように、シート材20は、フレーム体10の少なくとも一部を覆うように配置されている。具体的には、シート材20は、フレーム体10の側面10b、10c、10d(
図3参照)、及び天面10e(
図2参照)を覆う。なお、
図2では、シート材20の図示を省略している。シート材20は、可撓性を有する。シート材20は、これに限られないが、例えば、軟質塩化ビニールから構成されている。また、シート材20は、スカート部21を含む。スカート部21は、固定部材31及び32(
図5参照)により、陰圧室101の出入り口101aの近傍の外壁部101bに固定されている(貼り付けられている)。これにより、移動式前室100と陰圧室101との隙間を介して、陰圧室101からの汚染された空気が漏れ出るのを抑制することができる。なお、側面10b、10c、10d、及び天面10eには、アクリル板が設けられていてもよいし、シート材20のみで面が構成されていてもよい。
【0018】
図4は、陰圧室101の出入り口101a及び出入り口101aの近傍の正面図である。なお、「近傍」とは、出入り口101aから陰圧室101の天井まで、出入り口101aから隣の居室の出入り口までの範囲を意味するものとする。
図4に示すように、出入り口101aの外縁部101c及び101dに沿って、磁性部材50が配置されている。磁性部材50は、Y2方向に見て、下方に開口するU字(コの字)状に配置されている。磁性部材50は、これに限られないが、鉄板から構成されている。
【0019】
図5は、スカート部21、固定部材31及び32の構成を説明するための図である。
図5に示すように、スカート部21は、フレーム体10から上方向(Z1方向)及び左右方向(X1方向及びX2方向)に広がるように配置されている。スカート部21のフレーム体10よりも上方向の部分に固定部材31が固定されている。スカート部21のフレーム体10よりも左右方向の部分のそれぞれに、固定部材32が固定されている。そして、固定部材31及び32は、例えば、永久磁石である。シート材20のスカート部21は、永久磁石である固定部材31及び32が磁性部材50(鉄板)に磁性により吸着することにより、外壁部101bの少なくとも一部に固定されている。
【0020】
図4及び
図5に示すように、外縁部101cからさらに外方に向かう方向(Z1方向)において、磁性部材50の長さ(幅)W11は、固定部材31の幅W21よりも大きい。また、外縁部101dからさらに外方に向かう方向(X1方向又はX2方向)において、磁性部材50の長さ(幅)W12は、固定部材32の幅W22よりも大きい。この構成によれば、陰圧室101の出入り口101aに対して移動式前室100の位置がずれていた場合、又は陰圧室101の出入り口101aの寸法と移動式前室100の寸法とが異なる場合でも、磁性部材50の幅W11及びW12が大きい分、ずれや寸法の違いを吸収させて、固定部材31及び32を磁性部材50に吸着させることができる。
【0021】
上記の構成によれば、陰圧室101からの汚染された空気の漏出を防止すると共に、陰圧室101に出入りする者Pが防護服を着脱するためのスペースを確保することができる。
【0022】
[第2実施形態]
図6~
図8を参照して、第2実施形態における移動式前室200の構成について説明する。
図6は、第2実施形態における移動式前室200の断面図である。
図7は、第2実施形態におけるフレーム体210の斜視図である。
図8は、移動式前室200と陰圧室101との配置関係を示す平面模式図である。第2実施形態では、ストレッチャーSが移動式前室200を通じて、陰圧室101に出入り可能に、移動式前室200が構成されている。なお、第1実施形態と同様の構成には、第1実施形態と同じ符号を用い説明を省略する。
【0023】
図6に示すように、移動式前室200には、ストレッチャーSが配置可能な寸法を有する。例えば、
図8に示すように、移動式前室200のフレーム体210の長手方向の長さL31は、ストレッチャーSの長手方向の長さL32よりも大きく、移動式前室200のフレーム体210の短手方向の長さW31は、ストレッチャーSの短手方向の長さW32よりも大きい。また、第2実施形態では、フレーム体210の長手方向の側面10dに、出入り口252が設けられている。これにより、ストレッチャーSは、長手方向に沿って移動式前室200内に出入りすることができる。また、
図7及び
図8に示すように、ストレッチャーSの進行経路E上には、長手梁部材12及び短手梁部材13は設けられていない。これにより、ストレッチャーSは、長手梁部材12及び短手梁部材13を乗り越えることなく、移動式前室200内にスムーズに出入りすることができる。また、出入り口252には出入り口シート材260が設けられており、出入り口シート材260の複数のシート材61は、Y1方向に並んで配置されている。
【0024】
第2実施形態の構成によれば、陰圧室101に対してストレッチャーSを出入りさせる際にも、移動式前室200を用いることができる。また、出入り口252と出入り口51とが対向していないので、陰圧室101の出入り口101aと出入り口252との間の空気が流れる経路を複雑化することができる。この結果、第2実施形態においても、陰圧室101から汚染された空気が漏出するのを防止することができる。その他の構成及び効果は、第1実施形態の構成及び効果と同様である。
【0025】
[第3実施形態]
図9を参照して、第3実施形態における移動式前室300の構成について説明する。
図9は、第3実施形態における移動式前室300の断面図である。
図9に示すように、移動式前室300では、移動式前室300のフレーム体310の上面に、フィルタを介してフレーム体310内の空気を排気する排気ファン370が設けられている。このフィルタは、例えば、HEPAフィルタである。これにより、移動式前室300内に汚染された空気が存在する場合でも、外部に汚染された空気が漏出するのを防止することができる。なお、その他の構成及び効果は、第1実施形態の構成及び効果と同様である。
【0026】
[第4実施形態]
図12~
図14を参照して、第4実施形態における移動式前室600の構成について説明する。
図12は、第4実施形態における移動式前室600のうちのシート材620が配置された位置の断面図である。
図13は、第4実施形態における移動式前室600のうちの出入り口シート材660が配置された位置の断面図である。
図14は、第4実施形態における移動式前室600が移動される状態の断面図である。なお、第1~第3実施形態と同様の構成には、第1~第3実施形態と同じ符号を用い説明を省略する。
【0027】
図12に示すように、移動式前室600は、フレーム体610と、シート材620とを含む。フレーム体610の各柱部材611には、柱部材611の高さ方向の寸法を変更する伸縮機構部611aを含む。例えば、柱部材611は、矩形状の筒形状を有する。そして、柱部材611は、1辺の長さが異なる上部柱611b及び下部柱611cを含む。例えば、伸縮機構部611aは、上部柱611bの一部が下部柱611c内に配置された状態で、上部柱611bと下部柱611cとを固定する。伸縮機構部611aは、ユーザの操作により、上部柱611bと下部柱611cとの相対位置を固定(ロック)した状態と、上部柱611bと下部柱611cとを相対移動可能な状態(ロックが解除された状態)とを切り替える。これにより、上部柱611bが下部柱611cから最も引き出された状態で、柱部材611の高さ方向の寸法が最大の寸法となる。例えば、フレーム体610の上面の高さがh1となる。ここで、陰圧室601の出入り口601aの高さがh3の場合、
図12に示すように、高さh1がh3以上であれば、出入り口601aを移動式前室600により覆うことができる。
【0028】
そして、シート材620は、柱部材611の高さ方向の寸法が最大の寸法未満である状態で、シート材620のうちのフレーム体610を覆う部分622以外の少なくとも一部である余剰部分623を含む。なお、第4実施形態では、シート材620は、柱部材611の高さ方向の寸法が最大の寸法であっても、余剰部分623を有する。余剰部分623は、柱部材611の高さ方向の寸法が小さくなる程、柱部材611に沿った長さが大きくなり、柱部材611の高さ方向の寸法が大きくなる程、柱部材611に沿った長さが小さくなる。余剰部分623は、例えば、面ファスナー623aにより部分622の外側面に着脱可能に固定されている。部分622は、部分622の外側面上の任意の位置で、面ファスナー623aを固定可能に形成されている。これにより、余剰部分623は、部分622に対して折り返された状態で配置される。なお、図示を省略するが、フレーム体610のY1方向の側面のみに限られず、X1方向の側面及びX2方向の側面においても、シート材620の余剰部分623が、部分622に対して折り返された状態で配置されている。
【0029】
図13に示すように、出入り口シート材660は、柱部材611の高さ方向の寸法が最大の寸法未満である状態で、出入り口シート材660のうちの出入り口52を覆う部分662以外の少なくとも一部である余剰部分663を含む。なお、第4実施形態では、出入り口シート材660は、柱部材611の高さ方向の寸法が最大の寸法であっても、余剰部分663を有する。余剰部分663は、柱部材611の高さ方向の寸法が小さくなる程、柱部材611に沿った長さが大きくなり、柱部材611の高さ方向の寸法が大きくなる程、柱部材611に沿った長さが小さくなる。余剰部分663は、例えば、面ファスナー663aにより部分662の外側面に着脱可能に固定されている。部分662は、部分662の外側面上の任意の位置で、面ファスナー663aを固定可能に形成されている。これにより、余剰部分663は、部分662に対して折り返された状態で配置される。
【0030】
ここで、
図14に示すように、移動式前室600が移動される際に、施設内で高さがh1未満の高さh4の出入り口602を通過させる必要がある場合がある。この時、第4実施形態による移動式前室600によれば、フレーム体610の高さをh4よりも小さなh2にすることにより、移動式前室600を解体することなく、出入り口602に対して移動式前室600を通過させることができる。ここで、フレーム体610の高さがh4よりも小さなh2になることにより、陰圧室601の出入り口601a(
図12参照)側に配置される側面610aがシート材620の部分624により覆われる。例えば、フレーム体610の高さが所定の高さ(例えば、最小の高さ)の場合に、側面610aの全体が部分624により覆われる。すなわち、柱部材611の高さ方向の寸法が所定の寸法(例えば、最小の寸法)の場合に、側面610aの全体が部分624により覆われる。なお、
図12に示すように、柱部材611の高さ方向の寸法が所定の寸法(例えば、最小の寸法)よりも大きい場合は、側面610aは、開放される。すなわち、側面610aは、移動式前室600が移動される際は、塞がれ、陰圧室601に取り付けられた状態では、開放される。また、部分624は、固定部材31によりフレーム体610の梁部材612に着脱可能に固定される。また、移動式前室600は、出入り口601aを通過することができるので、廊下102ではなく陰圧室601の内側の出入り口601aに移動式前室600を配置することができる。この結果、移動式前室600によって廊下102での通行が妨げられるのを防止することができる。なお、第4実施形態によるその他の構成及び効果は、第1~第3実施形態のいずれかの構成及び効果と同様である。
【0031】
[第5実施形態]
図15及び
図16を参照して、第5実施形態における移動式前室700の構成について説明する。
図15は、第5実施形態における移動式前室700の構成を示す断面図である。
図16は、第5実施形態における移動式前室700の構成を示す平面図である。なお、第1~第4実施形態と同様の構成には、第1~第4実施形態と同じ符号を用い説明を省略する。
【0032】
図15に示すように、移動式前室700は、フレーム体710とシート材720とローラ部724とを含む。フレーム体710は、第4実施形態と同様に伸縮機構部611aを有する。第5実施形態では、シート材720の余剰部分723は、ローラ部724に巻回されている。
図16に示すように、ローラ部724は、フレーム体710のY1方向の側面710b、X1方向の側面710d、及びX2方向の側面710cの各々の外側に配置されている。3つのローラ部724は、それぞれ、支持部材724aを介して柱部材711に固定されている。3つのローラ部724は、それぞれ、シート材720の一部を巻き付けた状態でユーザにより回転される。例えば、フレーム体710の高さを大きくする場合は、ローラ部724からシート材720の一部が引き出され、フレーム体710の高さを小さくする場合は、ローラ部724にシート材720の一部(余剰部分723)を巻き付ける。また、
図15は、柱部材711の高さ方向の寸法が最大の寸法未満(高さh12)の状態の移動式前室700の断面を示している。なお、第5実施形態によるその他の構成及び効果は、第1~第4実施形態のいずれかの構成及び効果と同様である。
【0033】
[第6実施形態]
図18~
図20を参照して、第6実施形態における移動式前室900の構成について説明する。
図18は、第6実施形態における移動式前室900の構成を示す断面図である。
図19は、第6実施形態における移動式前室900の構成を示す斜視図である。
図20は、第6実施形態における腕部挿入部970の構成を示す断面図である。なお、第1~第5実施形態と同様の構成には、第1~第5実施形態と同じ符号を用い説明を省略する。
【0034】
図18に示すように、移動式前室900は、フレーム体910を含む。第6実施形態では、フレーム体910は、フレーム体910の内部にユーザの手及び腕部が挿入される腕部挿入部970を有する。また、
図19に示すように、移動式前室900では、フレーム体910のX1方向の側面910d、及び側面910dに対向するX2方向の側面910cの各々に、腕部挿入部970が設けられている。また、腕部挿入部970は、ユーザ(例えば、医療スタッフ)が移動式前室900(フレーム体910)の外部から移動式前室900(フレーム体910)の内部に手及び腕部を挿入するための一対の開口部971を含む。これにより、
図18に示すように、感染症患者又は感染症が疑われる患者がストレッチャーSに横たわった状態で移動式前室900内に居る場合に、側面910c及び910dの各々(移動方向の前後方向の各々)からユーザが手及び腕部を挿入して、ストレッチャーSを把持し、移動式前室900とストレッチャーSとを同時に移動させることが可能となる。
【0035】
図18に示すように、腕部挿入部970は、例えば、伸縮機構部611aよりも下方に配置されている。これにより、腕部挿入部970よりも上方の位置で、柱部材911(フレーム体910)の高さ方向の寸法が変更されるので、腕部挿入部970の位置を変化させずに、柱部材911の高さ方向の寸法を変化させることができる。
【0036】
また、
図18に示すように、腕部挿入部970は、一対の開口部971を共に囲む腕部フレーム972と、腕部フレーム972内に配置された板部973とを含む。腕部フレーム972は、柱部材911の一部と、隣り合う柱部材911を接続する2つの梁状の部材と、により構成される。この構成によれば、開口部971が形成される部分(腕部挿入部970)の機械的強度を大きくすること(補強すること)ができる。板部973は、例えば、透明な樹脂又はガラスのパネルである。
図18に示すように、開口部971は、例えば、円形状を有する。
図18の例に限られず、開口部971は、多角形形状、又は楕円形状を有してもよい。
【0037】
図20に示すように、腕部挿入部970は、板部973に貫通して配置された筒状部材971aを含む。開口部971は、筒状部材971aの内側に形成されている。また、筒状部材971aには、グローブ固定部材971bにより固定されたグローブ974が配置されている。グローブ974は、ゴム又は樹脂製の液体を通過させない材料から構成されている。グローブ固定部材971bは、例えば、筒状部材971aの外周にグローブ974の一部を固定するバンドである。グローブ固定部材971bは、グローブ974の一部を筒状部材971aの外周との間に挟んでいる。これにより、開口部971に挿入したユーザの手にグローブ974が装着されるので、ユーザの手に、ストレッチャーS上の患者の飛沫が付着するのを防止することができる。そして、開口部971にグローブ974が配置されているので、開口部971から腕部を挿入する際に、都度グローブを準備することなく、グローブ974を装着することができる。
【0038】
また、側面910c及び910dの各々において、
図20に示すように、腕部挿入部970よりも上方にはシート材620が配置され、腕部挿入部970よりも下方にはシート材620とは別個のシート材920が配置されている。
【0039】
第6実施形態の構成によれば、ユーザ(例えば、医療スタッフ)が移動式前室900内に入ることなく、移動式前室900とストレッチャーSとを同時に移動させることが可能になる。この結果、ユーザが感染する可能性を低減しながら、移動式前室900とストレッチャーSとを同時に移動させることができる。なお、第6実施形態によるその他の構成及び効果は、第1~第5実施形態のいずれかの構成及び効果と同様である。
【0040】
[変形例]
以上、上述した実施形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。よって、本開示は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記第1~第6実施形態を互いに組み合わせて構成することが可能である。
【0041】
(1)上記第1~第6実施形態では、移動式前室の出入り口に暖簾状の出入り口シート材を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、
図10に示す第1変形例による移動式前室400のように、フレーム体410に扉452が設けられていてもよい。
【0042】
(2)上記第1~第6実施形態では、陰圧室又は居室に通じる移動式前室の出入り口を開口として構成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、
図11に第2変形例による移動式前室500のように、フレーム体510の陰圧室又は居室に通じる位置に扉551が設けられていてもよい。
【0043】
(3)上記第1~第6実施形態では、固定部材を、永久磁石として構成する例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、陰圧室又は居室の外壁部に面ファスナーを配置して、固定部材を当該面ファスナーに着脱可能な面ファスナーとして構成してもよい。
【0044】
(4)上記第1実施形態では、移動式前室への出入り口と陰圧室又は居室に通じる出入り口とを長手方向にずらす例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、移動式前室への出入り口と陰圧室又は居室に通じる出入り口とを長手方向に一致する位置に設けてもよい。
【0045】
(5)上記第1~第6実施形態では、フレーム体を直方体に形成する例を示したが、本開示はこれに限られない。すなわち、フレーム体は、立方体であってもよいし、円柱状であってもよいし、ドーム状であってもよい。
【0046】
(6)上記第4実施形態では、余剰部分を保持するための面ファスナーを設ける例を、上記第5実施形態では、余剰部分を保持するためのローラ部を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、
図17に示す第3変形例による移動式前室800のように、余剰部分822に床面(
図17では廊下102)に配置してもよい。
【0047】
(7)上記第4実施形態では、余剰部分をシート材の外側面に着脱可能に固定するために面ファスナーを用いる例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、余剰部分をシート材の外側面に、スナップボタンにより着脱可能に固定してもよいし、磁石により着脱可能に固定してもよい。
【0048】
(8)上記第6実施形態では、フレーム体に伸縮機構部を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、
図21に示す第4変形例による移動式前室1000のように、上記第1~第3実施形態のいずれか1つの構成に、腕部挿入部970を設けたフレーム体1010を有する移動式前室1000として構成してもよい。この場合、柱部材1011に伸縮機構部は設けられていない。
【0049】
(9)上記第6実施形態では、側面910c及び910dの両方に腕部挿入部970を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、
図7に示す第2実施形態の構成に腕部挿入部を設ける場合は、X2方向の側面のみに腕部挿入部を配置してもよい。
【0050】
(10)上記第6実施形態では、腕部挿入部に一対の開口部を設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、腕部挿入部に単一の開口部が設けられていてもよい。
【0051】
(11)上記第6実施形態では、伸縮機構部を腕部挿入部よりも上方に設ける例を示したが、本開示はこれに限られない。例えば、伸縮機構部を腕部挿入部よりも下方に設けてもよい。
【0052】
また、上述した移動式前室は、以下のように説明することができる。
【0053】
第1の構成に係る移動式前室は、陰圧室又は居室の出入り口に配置される移動式前室であって、複数の柱部材を含むフレーム体であって、移動式前室の内部空間を形成するフレーム体と、フレーム体を覆い、可撓性を有するシート材と、フレーム体に取り付けられた車輪と、陰圧室又は居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に、シート材を固定する固定部材と、を備える(第1の構成)。
【0054】
上記第1の構成によれば、前室が備え付けられていない陰圧室又は居室であっても、陰圧室又は居室からの汚染された空気の漏出を防止すると共に、陰圧室又は居室に出入りする者が防護服を着脱するためのスペースを確保することができる。また、固定部材によりシート材が陰圧室又は居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に固定されるので、陰圧室又は居室からの汚染された空気が陰圧室又は居室の出入り口と移動式前室との隙間から漏出するのを防止することができる。
【0055】
第1の構成において、フレーム体は、平面視で長方形形状を有するように構成されてもよく、フレーム体は、短手方向の一方側面に形成された開口部又は扉であって、陰圧室又は居室の出入り口に通じる開口部又は扉を有するように構成されてもよい(第2の構成)。
【0056】
ここで、移動式前室は、主に病院や介護施設で陰圧化された病室や居室の出入り口の廊下側に配置されるが、病院や介護施設の廊下の幅は、所定の大きさを確保しなければならない(医療法施行規則第16条第1項11号)。そこで、上記第2の構成によれば、移動式前室の短手方向を廊下の幅方向に一致させた状態で、移動式前室を配置することができる。この結果、廊下における移動式前室の幅方向の占める割合を小さくしながら、廊下が延びる方向に沿って移動式前室の内部空間を大きく確保することができる。
【0057】
第2の構成において、フレーム体は、短手方向の他方側面に配置された、フレーム体の内部への出入り口を有するように構成されてもよく、フレーム体の内部への出入り口は、開口部又は扉と長手方向にずれた位置に形成されている(第3の構成)。第2の構成において、フレーム体は、長手方向の一方側面に配置された、フレーム体の内部への出入り口を有するように構成されてもよい(第4の構成)。
【0058】
上記第3の構成によれば、フレーム体の内部への出入り口と陰圧室又は居室の出入り口とが長手方向にずれるので、フレーム体の内部への出入り口と陰圧室又は居室の出入り口との空気が流れる経路を複雑化することができる。この結果、陰圧室又は居室から汚染された空気が移動式前室を通過して外部に漏出するのを防止することができる。また、上記第4の構成によっても、フレーム体の内部への出入り口と陰圧室又は居室の出入り口との空気が流れる経路を複雑化することができるので、陰圧室又は居室から汚染された空気が移動式前室を通過して外部に漏出するのを防止することができる。
【0059】
第2~第4の構成のいずれか1つにおいて、フレーム体の内部への出入り口に吊り下げされた1つ又は複数の出入り口シート材をさらに備えてもよい(第5の構成)。
【0060】
上記第5の構成によれば、出入り口に扉が設けられている場合と異なり、出入り口シート材は手を使用せずに、フレーム体の内部へ容易に出入りすることが可能となる。そして、手が出入り口シート材に触れないことにより、出入り口シート材の衛生状態を良い状態を維持させることができる。
【0061】
第2~第5の構成のいずれか1つにおいて、フレーム体の長手方向の長さは、陰圧室又は居室に出入りするストレッチャーの長手方向の長さよりも大きく構成されてもよい(第6の構成)。
【0062】
上記第6の構成によれば、陰圧室又は居室に対してストレッチャーを出入りさせる際にも、本開示の移動式前室を用いることができる。
【0063】
第1~第6の構成のいずれか1つにおいて、陰圧室又は居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部には、磁性体を含む磁性部材が配置されていてもよく、固定部材は、シート材に固定された磁石を含んでもよく、シート材は、磁石が磁性部材に磁性により吸着することにより、外壁部の少なくとも一部に固定されていてもよい(第7の構成)。
【0064】
上記第7の構成によれば、シート材に固定された磁石を、外壁部に設けられた磁性体に吸着させることにより、容易にシート材を外壁部の少なくとも一部に固定することができる。
【0065】
第2の構成において、磁性部材は、陰圧室又は居室の出入り口の外縁部に沿って外壁部に配置されていてもよく、外縁部からさらに外方に向かう方向において、磁性部材の長さは、固定部材の長さより大きく構成されてもよい(第8の構成)。
【0066】
上記第8の構成によれば、陰圧室又は居室の出入り口に対して移動式前室の位置がずれていた場合、又は陰圧室又は居室の出入り口の寸法と移動式前室の寸法とが異なる場合でも、磁性部材の長さが大きい分、ずれや寸法の違いを吸収させて、磁石を磁性部材に吸着させることができる。
【0067】
第9の構成に係る移動式前室は、感染症患者又は感染症の疑いがある者が居る居室の出入り口に配置される移動式前室であって、複数の柱部材を含むフレーム体であって、移動式前室の内部空間を形成するフレーム体と、フレーム体を覆い、可撓性を有するシート材と、フレーム体に取り付けられた車輪と、居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に、シート材を固定する固定部材と、複数の柱部材の高さ方向の寸法を変更する伸縮機構部と、を備える(第9の構成)。また、第9の構成は、上記第1~第8の構成のいずれか1つと組み合わせられてもよい。
【0068】
上記第9の構成によれば、複数の柱部材の高さ方向の寸法を変更して、移動式前室の高さを変更することができる。これにより、施設内で移動式前室を移動させる際に、出入り口を通過させる必要がある場合には、移動式前室の高さを低くすることにより、当該出入り口を通過させることができる。そして、居室の出入り口に移動式前室を配置する際には、移動式前室の高さを高くすることにより、居室の出入り口を移動式前室により覆うことができる。この結果、施設内で移動させる際に、移動式前室を解体する必要がなくなるので、居室の出入り口に迅速に移動式前室を配置することができるとともに、居室の出入り口を覆う移動式前室によって、居室から汚染された空気が外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0069】
第9の構成において、シート材は、上記寸法が最大の寸法未満である状態で、シート材のうちのフレーム体を覆う部分以外の少なくとも一部である第1余剰部分を含んでもよい(第10の構成)。
【0070】
上記第10の構成によれば、第1余剰部分を設けることにより、柱部材の高さ方向の寸法が最大の寸法未満から最大の寸法に変更する場合でも、当該第1余剰部分を、フレーム体を覆う部分として用いることができるので、柱部材の高さ方向の寸法の変更に応じて、新たにシート材を準備する必要がなくなる。
【0071】
第10の構成において、第1余剰部分は、シート材のうちのフレーム体を覆う部分の外側面に着脱可能に固定されていてもよい(第11の構成)。
【0072】
上記第11の構成によれば、第1余剰部分をシート材のうちのフレーム体を覆う部分の外側面に固定することができるので、第1余剰部分を引きずった状態で、移動式前室が移動するのを防止することができる。
【0073】
第10又は第11の構成において、移動式前室は、フレーム体の内部への出入り口に吊り下げされた1つ又は複数の出入り口シート材をさらに備えてもよく、出入り口シート材は、上記寸法が最大の寸法未満である状態で、出入り口シート材のうちの出入り口を覆う部分以外の少なくとも一部である第2余剰部分を含んでもよく、第2余剰部分は、出入り口シート材のうちの外側面に着脱可能に固定されていてもよい(第12の構成)。
【0074】
上記第12の構成によれば、第2余剰部分を引きずった状態で、移動式前室が移動するのを防止することができる。
【0075】
第10~第12の構成のいずれか1つにおいて、移動式前室は、第1余剰部分を巻回して保持するローラ部を、さらに備えてもよい(第13の構成)。
【0076】
上記第13の構成によれば、第1余剰部分の長さが変化しても、ローラ部に第1余剰部分を容易に保持させることができる。
【0077】
第9~第13の構成のいずれか1つにおいて、シート材は、上記寸法が所定の寸法以下である状態で、フレーム体のうちの居室の出入り口側に配置される面を覆い、寸法が所定の寸法よりも大きい状態で、フレーム体のうちの居室の出入り口側に配置される面を開放するように構成されてもよい(第14の構成)。
【0078】
上記第14の構成によれば、移動式前室を移動させる際には、フレーム体のうちの居室の出入り口側に配置される面を覆い、居室の出入り口に移動式前室を配置する際には、フレーム体のうちの居室の出入り口側に配置される面を開放することができる。この結果、移動式前室を移動する際に、移動式前室内に汚染された空気が侵入するのを防止することができる。
【0079】
第9~第14の構成のいずれか1つにおいて、フレーム体には、フレーム体の内部にユーザの手及び腕部が挿入される第1腕部挿入部が設けられてもよい(第15の構成)。
【0080】
ここで、患者が移動式前室に居る状態で、移動式前室を移動させる場合がある。この場合、患者がストレッチャー等に横たわっている場合、移動式前室内にスタッフ(例えば、医療スタッフ)が入った状態でスタッフがストレッチャーを把持し、移動式前室とストレッチャーとを同時に移動させる必要がある。この結果、スタッフが汚染された空気に晒されてしまう。これに対して、上記15の構成によれば、第1腕部挿入部を介して挿入された手及び腕部により、ストレッチャーを移動式前室の外部から把持することができる。この結果、スタッフが移動式前室内に入ることなく、移動式前室とストレッチャーとを同時に移動させることが可能になる。この結果、スタッフが感染する可能性を低減しながら、移動式前室とストレッチャーとを同時に移動させることができる。
【0081】
第15の構成において、第1腕部挿入部は、フレーム体の第1側面に形成されていてもよく、フレーム体は、フレーム体の第1側面に対向する第2側面に形成された第2腕部挿入部をさらに有してもよい(第16の構成)。
【0082】
上記第16の構成によれば、第1側面及び第2側面をそれぞれ移動式前室の前後方向の側面とすれば、移動式前室の前後方向の側面の各々から腕部を挿入することができる。移動式前室の前後方向の両方からストレッチャーを把持することができる。
【0083】
第15または第16の構成において、第1腕部挿入部は、一対の開口部と、一対の開口部の各々に配置されたグローブを含んでもよい(第17の構成)。
【0084】
上記第17の構成によれば、開口部にグローブが配置されているので、開口部から腕部を挿入する際に、都度グローブを準備することなく、グローブを装着することができる。
【0085】
第15~第17の構成のいずれか1つにおいて、第1腕部挿入部は、一対の開口部と、一対の開口部を共に囲む腕部フレームと、を含んでもよい(第18の構成)。
【0086】
上記第18の構成によれば、腕部フレームにより、一対の開口部が形成される部分の機械的強度を大きくすること(補強すること)ができる。
【0087】
第15~第18の構成のいずれか1つにおいて、第1腕部挿入部は、伸縮機構部よりも下方の位置に配置されていてもよい(第19の構成)。
【0088】
上記第19の構成によれば、第1腕部挿入部よりも上方の位置で、柱部材(フレーム体)の高さ方向の寸法が変更されるので、第1腕部挿入部の位置を変化させずに、柱部材の寸法(フレーム体の寸法)を変化させることができる。
【符号の説明】
【0089】
10,210,310,410,510,610,710,810,910,1010…フレーム体、10a,10b,10c,10d,610a,710b,710c,710d,910c,910d…側面、11,611,711,911,1011…柱部材、20,620,720,920…シート材、31,32…固定部材、40…車輪、50…磁性部材、51,52,252…出入り口、60,260,660…出入り口シート材、100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000…移動式前室、101…陰圧室、101a…出入り口、101b…外壁部、101c,101d…外縁部、452,551…扉、611a…伸縮機構部、623,723…余剰部分、663…余剰部分、724…ローラ部、R…内部空間、S…ストレッチャー
【手続補正書】
【提出日】2022-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症患者又は感染症の疑いがある者が居る居室の出入り口に配置される移動式前室であって、
複数の柱部材を含むフレーム体であって、前記移動式前室の内部空間を形成するフレーム体と、
前記フレーム体を覆い、可撓性を有するシート材と、
前記フレーム体に取り付けられた車輪と、
前記居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に、前記シート材を固定する固定部材と、
前記複数の柱部材の高さ方向の寸法を変更する伸縮機構部と、を備え、
前記フレーム体は、
前記フレーム体の内部にユーザの手及び腕部が挿入される第1腕部挿入部であって、前記フレーム体の第1側面に形成された第1腕部挿入部と、
前記フレーム体の前記第1側面に対向する第2側面に形成された第2腕部挿入部と、を有し、
前記第1腕部挿入部及び前記第2腕部挿入部からユーザの手及び腕部が前記フレーム体に挿入された状態で、かつ、当該ユーザの手により前記フレーム体の内部に配置されたストレッチャーが把持された状態で、前記フレーム体と前記ストレッチャーとが共に移動する、移動式前室。
【請求項2】
前記シート材は、前記寸法が最大の寸法未満である状態で、前記シート材のうちの前記フレーム体を覆う部分以外の少なくとも一部である第1余剰部分を含む、請求項1に記載の移動式前室。
【請求項3】
前記第1余剰部分は、前記シート材のうちの前記フレーム体を覆う部分の外側面に着脱可能に固定されている、請求項2に記載の移動式前室。
【請求項4】
前記フレーム体の内部への出入り口に吊り下げされた1つ又は複数の出入り口シート材をさらに備え、
前記出入り口シート材は、前記寸法が前記最大の寸法未満である状態で、前記出入り口シート材のうちの前記出入り口を覆う部分以外の少なくとも一部である第2余剰部分を含み、
前記第2余剰部分は、前記出入り口シート材のうちの外側面に着脱可能に固定されている、請求項3に記載の移動式前室。
【請求項5】
前記第1余剰部分を巻回して保持するローラ部を、さらに備える、請求項2に記載の移動式前室。
【請求項6】
前記第1腕部挿入部は、一対の開口部と、前記一対の開口部の各々に配置されたグローブを含む、請求項1に記載の移動式前室。
【請求項7】
前記第1腕部挿入部は、前記一対の開口部を共に囲む腕部フレームを含む、請求項6に記載の移動式前室。
【請求項8】
前記第1腕部挿入部は、前記伸縮機構部よりも下方の位置に配置されている、請求項1に記載の移動式前室。
【請求項9】
感染症患者又は感染症の疑いがある者が居る居室の出入り口に配置される移動式前室であって、
複数の柱部材を含むフレーム体であって、前記移動式前室の内部空間を形成するフレーム体と、
前記フレーム体を覆い、可撓性を有するシート材と、
前記フレーム体に取り付けられた車輪と、
前記居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に、前記シート材を固定する固定部材と、
前記複数の柱部材の高さ方向の寸法を変更する伸縮機構部と、を備え、
前記シート材は、前記寸法が所定の寸法以下である状態で、前記フレーム体のうちの前記居室の出入り口側に配置される面を覆い、前記寸法が前記所定の寸法よりも大きい状態で、前記フレーム体のうちの前記居室の出入り口側に配置される面を開放する、移動式前室。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症患者又は感染症の疑いがある者が居る居室の出入り口に移動式前室を配置する移動式前室の配置構造であって、
前記移動式前室は、
複数の柱部材を含むフレーム体であって、前記移動式前室の内部空間を形成するフレーム体と、
前記フレーム体を覆い、可撓性を有するシート材と、
前記フレーム体に取り付けられた車輪と、
前記居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に、前記シート材を固定する固定部材と、
前記複数の柱部材の高さ方向の寸法を変更する伸縮機構部と、を備え、
前記フレーム体は、
前記フレーム体の内部にユーザの手及び腕部が挿入される第1腕部挿入部であって、前記フレーム体の第1側面に形成された第1腕部挿入部と、
前記フレーム体の前記第1側面に対向する第2側面に形成された第2腕部挿入部と、を有し、
前記第1腕部挿入部及び前記第2腕部挿入部からユーザの手及び腕部が前記フレーム体に挿入された状態で、かつ、当該ユーザの手により前記フレーム体の内部に配置されて感染症患者又は感染症の疑いがある者が横たわったストレッチャーが把持された状態で、前記フレーム体と前記ストレッチャーとが共に移動するようにして、前記移動式前室が前記居室の出入り口に配置される、移動式前室の配置構造。
【請求項2】
前記シート材は、前記寸法が最大の寸法未満である状態で、前記シート材のうちの前記フレーム体を覆う部分以外の少なくとも一部である第1余剰部分を含む、請求項1に記載の移動式前室の配置構造。
【請求項3】
前記第1余剰部分は、前記シート材のうちの前記フレーム体を覆う部分の外側面に着脱可能に固定されている、請求項2に記載の移動式前室の配置構造。
【請求項4】
前記フレーム体の内部への出入り口に吊り下げされた1つ又は複数の出入り口シート材をさらに備え、
前記出入り口シート材は、前記寸法が前記最大の寸法未満である状態で、前記出入り口シート材のうちの前記出入り口を覆う部分以外の少なくとも一部である第2余剰部分を含み、
前記第2余剰部分は、前記出入り口シート材のうちの外側面に着脱可能に固定されている、請求項3に記載の移動式前室の配置構造。
【請求項5】
前記第1余剰部分を巻回して保持するローラ部を、さらに備える、請求項2に記載の移動式前室の配置構造。
【請求項6】
前記第1腕部挿入部は、一対の開口部と、前記一対の開口部の各々に配置されたグローブを含む、請求項1に記載の移動式前室の配置構造。
【請求項7】
前記第1腕部挿入部は、前記一対の開口部を共に囲む腕部フレームを含む、請求項6に記載の移動式前室の配置構造。
【請求項8】
前記第1腕部挿入部は、前記伸縮機構部よりも下方の位置に配置されている、請求項1に記載の移動式前室の配置構造。
【請求項9】
感染症患者又は感染症の疑いがある者が居る居室の出入り口に配置される移動式前室であって、
複数の柱部材を含むフレーム体であって、前記移動式前室の内部空間を形成するフレーム体と、
前記フレーム体を覆い、可撓性を有するシート材と、
前記フレーム体に取り付けられた車輪と、
前記居室の出入り口近傍の外壁部の少なくとも一部に、前記シート材を固定する固定部材と、
前記複数の柱部材の高さ方向の寸法を変更する伸縮機構部と、を備え、
前記シート材は、前記寸法が所定の寸法以下である状態で、前記フレーム体のうちの前記居室の出入り口側に配置される面を覆い、前記寸法が前記所定の寸法よりも大きい状態で、前記フレーム体のうちの前記居室の出入り口側に配置される面を開放する、移動式前室。