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特開2022-164696地図生成装置、地図生成方法、プログラム及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164696
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】地図生成装置、地図生成方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20221020BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20221020BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20221020BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20221020BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G08G1/00 A
G01C21/26 A
G16Y10/40
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125601
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2018058759の分割
【原出願日】2018-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】浜田 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】下野 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】堀川 邦彦
(57)【要約】
【課題】車道にはみ出して存在する歩行者に起因する危険性がある区間を好適に特定することが可能な地図データを生成する地図データ生成装置を提供する。
【解決手段】サーバ装置2は、配信地図DB5を記憶する。配信地図DB5に含まれるリンクごとの道路データは、対象となるリンクに関する情報を指定する各項目を含む基本情報部と、道路区間ごとに車道にはみ出した歩行者等に起因した危険度などを規定する危険度範囲情報に関する各項目を含む特有情報部とを有する。サーバ装置2は、各端末装置2から受信するアップロード情報Iuに基づき、危険度範囲情報を生成し、生成した危険度範囲情報に基づき配信地図DB5を更新する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された検出装置が検出した、車道と歩行者又は自転車運転者である対象物の専用道との境界に対する前記対象物の位置を示す位置情報を含む対象物情報を取得する取得手段と、
前記対象物情報と前記移動体の位置情報を含む移動体情報と、に基づき生成された、前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在する道路区間を示す区間情報と、前記道路区間において前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在することに起因する前記車両の走行上の危険度を示す危険度情報と、を関連付けた地図データを生成する生成手段と、有し、
前記生成手段は、前記対象物のうち前記車道に存在する当該対象物の割合に基づき、前記危険度を算出する、地図データ生成装置。
【請求項2】
前記生成手段は、複数の前記道路区間及び各々の道路区間に対応する危険度情報と、前記道路区間を含む道路と、を関連付けて地図データを生成する請求項1に記載の地図データ生成装置。
【請求項3】
前記対象物情報は、前記車道と専用道との境界と前記対象物との距離を前記位置情報として含み、
前記危険度は、前記車道と専用道との境界と前記対象物との距離の大きさに基づいて決定されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の地図データ生成装置。
【請求項4】
コンピュータが実行する地図データ生成方法であって、
車両に搭載された検出装置が検出した、車道と歩行者又は自転車運転者である対象物の専用道との境界に対する前記対象物の位置を示す位置情報を含む対象物情報を取得する取得工程と、
前記対象物情報と前記移動体の位置情報を含む移動体情報と、に基づき生成された、前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在する道路区間を示す区間情報と、前記道路区間において前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在することに起因する前記車両の走行上の危険度を示す危険度情報と、を関連付けた地図データを生成する生成工程と、有し、
前記生成工程は、前記対象物のうち前記車道に存在する当該対象物の割合に基づき、前記危険度を算出する、地図データ生成方法。
【請求項5】
車両に搭載された検出装置が検出した、車道と歩行者又は自転車運転者である対象物の専用道との境界に対する前記対象物の位置を示す位置情報を含む対象物情報を取得する取得手段と、
前記対象物情報と前記移動体の位置情報を含む移動体情報と、に基づき生成された、前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在する道路区間を示す区間情報と、前記道路区間において前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在することに起因する前記車両の走行上の危険度を示す危険度情報と、を関連付けた地図データを生成する生成手段
としてコンピュータを機能させ、
前記生成手段は、前記対象物のうち前記車道に存在する当該対象物の割合に基づき、前記危険度を算出する、プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体において利用される地図データに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設置されたセンサの出力に基づき地図データを更新する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両等の移動体に設置されたセンサの出力に基づいて部分地図の変化点を検出した場合に、当該変化点に関する変化点情報をサーバ装置に送信する運転支援装置が開示されている。また、非特許文献1には、車両側のセンサが検出したデータをクラウドサーバで収集するためのデータフォーマットに関する仕様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-156973号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】here社ホームページ、Vehicle Sensor Data Cloud Ingestion Interface Specification(v2.0.2),[平成30年2月5日検索]、インターネット<URL:https://lts.cms.here.com/static-cloud-content/Company_Site/2015_06/Vehicle_Sensor_Data_Cloud_Ingestion_Interface_Specification.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駅前などの歩行者の多い道路や、歩道のない道路では、歩行者が車道にはみ出して通行する場合があり、このような道路区間では、車両は車道にはみ出した歩行者を避けて走行する必要がある。従って、このような道路区間を車両側で予め特定し、当該道路区間を避けて走行したり、事前に運転者に警告したりできるように、車両側で参照可能な情報として用意できると好ましい。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、車道にはみ出して存在する歩行者に起因する危険性がある区間を好適に特定することが可能な地図データを生成する地図データ生成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に記載の発明は、地図データ生成装置であって、車両に搭載された検出装置が検出した、車道と歩行者又は自転車運転者である対象物の専用道との境界に対する前記対象物の位置を示す位置情報を含む対象物情報を取得する取得手段と、前記対象物情報と前記移動体の位置情報を含む移動体情報と、に基づき生成された、前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在する道路区間を示す区間情報と、前記道路区間において前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在することに起因する前記車両の走行上の危険度を示す危険度情報と、を関連付けた地図データを生成する生成手段と、有し、前記生成手段は、前記対象物のうち前記車道に存在する当該対象物の割合に基づき、前記危険度を算出する。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、コンピュータが実行する地図データ生成方法であって、車両に搭載された検出装置が検出した、車道と歩行者又は自転車運転者である対象物の専用道との境界に対する前記対象物の位置を示す位置情報を含む対象物情報を取得する取得工程と、前記対象物情報と前記移動体の位置情報を含む移動体情報と、に基づき生成された、前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在する道路区間を示す区間情報と、前記道路区間において前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在することに起因する前記車両の走行上の危険度を示す危険度情報と、を関連付けた地図データを生成する生成工程と、有し、前記生成工程は、前記対象物のうち前記車道に存在する当該対象物の割合に基づき、前記危険度を算出する。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、車両に搭載された検出装置が検出した、車道と歩行者又は自転車運転者である対象物の専用道との境界に対する前記対象物の位置を示す位置情報を含む対象物情報を取得する取得手段と、前記対象物情報と前記移動体の位置情報を含む移動体情報と、に基づき生成された、前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在する道路区間を示す区間情報と、前記道路区間において前記対象物が前記専用道を越えて車道に存在することに起因する前記車両の走行上の危険度を示す危険度情報と、を関連付けた地図データを生成する生成手段としてコンピュータを機能させ、前記生成手段は、前記対象物のうち前記車道に存在する当該対象物の割合に基づき、前記危険度を算出する、プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】データ収集システムの概略構成である。
図2】端末装置及びサーバ装置のブロック構成を示す。
図3】端末装置が実行する処理概要を示したブロック図である。
図4】アップロード情報の第1データ構造例を示す。
図5】歩行者を検出した際の車両周辺の俯瞰図を示す。
図6】歩行者及び自転車運転者を検出した際の車両周辺の俯瞰図を示す。
図7】アップロード情報の第2データ構造例を示す。
図8】配信地図DBに含まれるリンクごとの道路データのデータ構造の一例を示す。
図9】リンク1及びリンク2に対応する道路区間での危険度の算出方法の第1具体例を概略的に示した図である。
図10】リンク1及びリンク2に対応する道路区間での危険度の算出方法の第2具体例を概略的に示した図である。
図11】ダウンロード情報のデータ構造の一例である。
図12】実施例における処理の概要を示すフローチャートの一例である。
図13】変形例に係るデータ収集システムの概略構成である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、移動体が走行する際に用いる地図データのデータ構造であって、道路を所定の長さで区切った道路区間を示す区間情報と、前記道路区間において歩行者が歩道を越えて存在することに起因する前記移動体の走行上の危険度を示す危険度情報と、を含み、前記移動体が走行する際の危険度を認識するのに用いられるデータのデータ構造である。このようなデータ構造を有する地図データによれば、移動体(移動体と共に移動する端末も含む)は、地図データに基づき道路区間ごとの危険度を事前に認識し、経路探索、注意喚起、及び自動運転制御などに好適に活用することができる。
【0012】
上記データ構造の一態様では、地図データのデータ構造は、複数の前記道路区間が重複する場合の前記危険度情報の優先度を示す優先度情報をさらに含む。この態様によれば、地図データを参照した際に、異なる危険度が指定された複数の区間情報が示す道路区間が重複した場合であっても、当該重複区間での危険度を好適に認識することができる。
【0013】
上記データ構造の他の一態様では、地図データのデータ構造は、前記危険度情報が有効である時間帯又は曜日を前記道路区間ごとに指定する時間指定情報をさらに含む。この態様によれば、移動体の走行上の危険度を時間帯又は曜日ごとに的確に地図データに登録することができる。
【0014】
上記データ構造の他の一態様では、前記危険度情報が有効である期限を前記道路区間ごとに示す有効期限情報をさらに含む。この態様によれば、有効でない古い区間情報が参照及び利用されるのを好適に抑制することができる。
【0015】
上記データ構造の他の一態様では、前記区間情報により特定される道路区間に存在した歩行者に関する歩行者情報をさらに含む。この態様によれば、地図データを参照した際に、各道路区間において存在する歩行者の傾向を好適に把握することができる。
【0016】
上記データ構造の他の一態様では、前記危険度情報は、前記道路区間において、歩道を越えて車道に存在した歩行者の人数に基づき生成される。この態様により、車道に存在する歩行者に起因した危険度を的確に反映した危険度情報を地図データに含めることができる。
【0017】
好適には、前記区間情報及び前記危険度情報は、前記道路区間に対応する道路の道路情報に含まれる、又は、前記道路の識別情報と関連付けられるとよい。
【0018】
本発明の他の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、道路を所定の長さで区切った道路区間を示す区間情報と、歩行者が歩道を越えて前記道路区間に存在することに起因する前記移動体の走行上の危険度を示す危険度情報と、を含む地図データを記憶する記憶手段を有する。情報処理装置は、例えば、このような地図データを配信用地図として用いたり、経路探索などに用いたりすることができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態によれば、地図データ生成装置は、移動体に搭載された検出装置が検出した、車道と歩道との境界に対する前記歩行者の位置を示す位置情報を含む歩行者情報を取得する取得手段と、前記歩行者情報と前記移動体の位置情報を含む移動体情報と、に基づき生成された、歩行者が歩道を越えて車道に存在する道路区間を示す区間情報と、前記道路区間において歩行者が歩道を越えて車道に存在することに起因する前記移動体の走行上の危険度を示す危険度情報と、を関連付けた地図データを生成する生成手段を有する。この態様によれば、地図データ生成装置は、歩行者が歩道を越えて車道に存在する道路区間を示す区間情報及び当該道路区間における危険度情報が関連付けられた地図データを好適に生成することができる。
【0020】
上記地図データ生成装置の他の一態様では、前記生成手段は、複数の前記道路区間及び各々の道路区間に対応する危険度情報と、前記道路区間を含む道路と、を関連付けて地図データを生成する。この態様により、地図データ生成装置は、歩行者が歩道を越えて車道に存在することに起因して危険な道路区間の情報及び対応する危険度情報を、当該道路区間を含む道路と関連付けた地図データを好適に生成することができる。
【0021】
上記地図データ生成装置の他の一態様では、前記歩行者情報は、前記車道と歩道との境界と前記歩行者との距離を前記位置情報として含み、前記危険度は、前記車道と歩道との境界と前記歩行者との距離の大きさに基づいて決定されたものである。この態様により、地図データ生成装置は、車道と歩道との境界と歩行者との距離の大きさに基づいて決定した危険度を示す危険度情報を含む地図データを好適に生成することができる。
【実施例0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0023】
[データ収集システムの概要]
図1は、本実施例に係るデータ収集システムの概略構成である。データ収集システムは、移動体である各車両に搭載され車両と共に移動する端末装置1と、各端末装置1とネットワークを介して通信を行うサーバ装置2とを備える。そして、データ収集システムは、各端末装置1から送信された情報に基づき、サーバ装置2若しくはサーバ装置と通信回線を介して接続された図示しない地図サーバ装置が保有する地図を更新する。なお、以後において、「地図」とは、従来の経路案内用の車載機が参照するデータに加えて、ADAS(Advanced Driver Assistance System)や自動運転に用いられるデータも含むものとする。
【0024】
端末装置1は、カメラやライダ(LIDAR:Laser Illuminated Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging または LiDAR:Light Detection and Ranging)などから構成されるセンサ部7の出力に基づき、所定の物体を検出する。本実施例では、端末装置1は、センサ部7の出力に基づき、歩行者と自転車運転者(もしくは走行する自転車)を検出し、検出した歩行者及び自転車運転者に関する情報を、端末装置1が搭載された車両の属性情報と共にアップロード情報Iuとしてサーバ装置2へ送信する。また、端末装置1は、地図データを更新するためのダウンロード情報「Id」をサーバ装置2から受信する。
【0025】
なお、端末装置1は、車両に取り付けられた車載機又は車載機の一部であってもよく、車両の一部であってもよい。あるいは、センサ部7を接続することができれば、ノート型PC等の可搬性のある端末機器であってもよい。端末装置1は、情報送信装置の一例である。また、カメラやライダなどの外界センサは、検出装置の一例である。
【0026】
サーバ装置2は、各端末装置1からアップロード情報Iuを受信して記憶する。サーバ装置2は、例えば、収集したアップロード情報Iuに基づき、自動車が走行すべき車道に歩行者や自転車運転者が進入する傾向がある道路区間(「危険度区間」とも呼ぶ。)を特定し、当該道路区間を車両が走行する際の歩行者や自転車運転者に起因した危険の度合い(「危険度」とも呼ぶ。)を設定する。そして、サーバ装置2は、特定した危険度区間に関する情報(「危険度区間情報」とも呼ぶ。)を地図データの一部として記憶したり、ダウンロード情報Iuとして端末装置1に配信したりする。サーバ装置2は、情報処理装置及び地図データ生成装置の一例である。
【0027】
[端末装置の構成]
図2(A)は、端末装置1の機能的構成を表すブロック図を示す。図2(A)に示すように、端末装置1は、主に、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、制御部14と、インターフェース15と、出力部16とを有する。端末装置1内の各要素は、バスライン98を介して相互に接続されている。
【0028】
通信部11は、制御部14の制御に基づき、アップロード情報Iuをサーバ装置2へ送信したり、地図DB4を更新するための地図データをサーバ装置2から受信したりする。また、通信部11は、車両を制御するための信号を車両に送信する処理、車両の状態に関する信号を車両から受信する処理を行ってもよい。
【0029】
記憶部12は、制御部14が実行するプログラムや、制御部14が所定の処理を実行する為に必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部12は、地図DB4と、センサデータキャッシュ6と、車両属性情報「IV」とを記憶する。
【0030】
図DB4には、自動運転やADASなどで使用される種々のデータが記録されている。地図DB4は、例えば、道路網をノードとリンクの組合せにより表した道路データ、施設データ、及び道路周辺の地物情報などを含むデータベースである。地物情報は、道路標識等の看板や停止線等の道路標示、センターライン等の道路区画線や道路沿いの構造物等の情報を含む。また、地物情報は、自車位置推定に用いるための地物の高精度な点群情報などを含んでもよい。その他、地図DB4には、位置推定に必要な種々のデータが記憶されてもよい。
【0031】
センサデータキャッシュ6は、センサ部7の出力データ(所謂生データ)を一時的に保持するキャッシュメモリである。車両属性情報IVは、車両の種別、車両ID、車両長さ、車幅、車高、車両の燃料タイプなどの端末装置1を搭載する車両の属性に関する情報を示す。
【0032】
入力部13は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、例えば、経路探索のための目的地を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付け、生成した入力信号を制御部14へ供給する。出力部16は、例えば、制御部14の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。
【0033】
インターフェース15は、センサ部7の出力データを制御部14やセンサデータキャッシュに供給するためのインターフェース動作を行う。センサ部7は、ライダ31やカメラ32などの車両の周辺環境を認識するための複数の外界センサと、GPS受信機33、ジャイロセンサ34、ポジションセンサ35、3軸センサ36などの内界センサを含む。ライダ31は、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の表面を3次元の点群として認識し、点群データを生成する。カメラ32は、車両から撮影した画像データを生成する。ポジションセンサ35は、各外界センサの取り付け位置を検出するために設けられ、3軸センサ36は、各外界センサの姿勢を検出するために設けられている。なお、センサ部7は、図2(A)に示した外界センサ及び内界センサ以外の任意の外界センサ及び内界センサを有してもよい。例えば、センサ部7は、外界センサとして、超音波センサ、赤外線センサ、マイクなどを含んでもよい。センサ部7に含まれる任意の外界センサは、検出装置として機能する。
【0034】
制御部14は、1または複数のプラットフォーム上で所定のプログラムを実行するCPUなどを含み、端末装置1の全体を制御する。制御部14は、機能的には、位置推定部17と、対象物検出部18と、アップロードデータ生成部19と、地図更新部20とを含む。制御部14は、生成手段、位置推定手段、制御手段、送信手段、プログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0035】
図3は、端末装置1の位置推定部17、対象物検出部18、アップロードデータ生成部19及び地図更新部20の処理概要を示したブロック図である。
【0036】
位置推定部17は、センサデータキャッシュ6に保持されているセンサ部7の出力データ及び地図DB4に基づき、自車位置(車両の姿勢も含む)を推定する。位置推定部17は、種々の位置推定方法を実行可能となっている。位置推定部17は、例えば、GPS受信機33及びジャイロセンサ34等の自立測位センサの出力に基づくデッドレコニング(自律航法)による自車位置推定方法、自律航法に地図DB4の道路データなどをさらに照合する処理(マップマッチング)を行う自車位置推定方法、周囲に存在する所定のオブジェクト(ランドマーク)を基準としてライダ31やカメラ32などの外界センサの出力データと地図DB4の地物情報が示すランドマークの位置情報とに基づく自車位置推定方法などを実行する。そして、位置推定部17は、例えば、現在実行可能な位置推定方法の中から最も高い推定精度となる位置推定方法を実行し、実行した位置推定方法に基づき得られた自車位置等を示した自車位置情報を、アップロードデータ生成部19へ供給する。
【0037】
対象物検出部18は、センサ部7が出力する点群情報、画像データ、音声データ等に基づき、所定の対象物を検出する。本実施例では、対象物検出部18は、センサ部7が出力するデータに基づき、歩行者と自転車運転者を所定の対象物として検出し、検出した対象物に関するデータ(「対象物データ」とも呼ぶ。)をアップロードデータ生成部19へ供給する。ここで、対象物データには、種々のパターン認識技術等を用いることで認識された対象物の位置、進行方向、年齢、性別、種別などの種々の属性情報が含まれている。
【0038】
アップロードデータ生成部19は、位置推定部17から供給される自車位置情報と、対象物検出部18から供給される対象物データと、車両属性情報IVとに基づき、アップロード情報Iuを生成する。そして、アップロードデータ生成部19は、生成したアップロード情報Iuを、通信部11によりサーバ装置2へ送信する。アップロードデータ生成部19が送信するアップロード情報Iuのデータ構造については、[データ構造]のセクションで詳しく説明する。
【0039】
地図更新部20は、通信部11によりサーバ装置2から受信したダウンロード情報Idに基づき、地図DB4を更新する。ダウンロード情報Idのデータ構造については、[データ構造]のセクションで詳しく説明する。
【0040】
[サーバ装置の構成]
図2(B)は、サーバ装置2の機能的構成を示すブロック図を示す。図2(B)に示すように、サーバ装置2は、主に、通信部21と、記憶部22と、制御部23とを有する。サーバ装置2内の各要素は、バスライン99を介して相互に接続されている。
【0041】
通信部21は、制御部23の制御に基づき、各端末装置1からアップロード情報Iuを受信したり、地図DB4を更新するためのダウンロード情報Idを各端末装置1へ送信したりする。
【0042】
記憶部22は、制御部23が実行するプログラムや、制御部23が所定の処理を実行する為に必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部22は、配信地図DB5と、歩行者情報DB8と、自転車情報DB9とを記憶する。
【0043】
配信地図DB5は、各端末装置1に配信するための地図データであり、地図DB4と同様のデータ構造を有する。本実施例では、地図DB4及び配信地図DB5には、後述する歩行者情報DB8及び自転車情報DB9を参照することでサーバ装置2が生成した危険度区間情報が記録されている。
【0044】
歩行者情報DB8は、歩行者に関するアップロード情報Iuを蓄積したデータベースであり、自転車情報DB9は、自転車運転者に関するアップロード情報Iuを蓄積したデータベースである。歩行者情報DB8及び自転車情報DB9に記録されたデータは、配信地図DB5の更新に用いられ、所定の統計処理、検証処理等が行われた後に配信地図DB5に反映される。
【0045】
制御部23は、所定のプログラムを実行するCPUなどを含み、サーバ装置2の全体を制御する。本実施例では、制御部23は、通信部21によりアップロード情報Iuを端末装置1から受信した場合に、当該アップロード情報Iuが歩行者の情報を示す場合にはアップロード情報Iuを歩行者情報DB8に蓄積し、アップロード情報Iuが自転車運転者の情報を示す場合にはアップロード情報Iuを自転車情報DB9に蓄積する。また、制御部23は、所定のタイミングにおいて、歩行者情報DB8及び自転車情報DB9を参照することで危険度区間情報を生成し、当該危険度区間情報に基づき配信地図DB5を更新する。さらに、制御部23は、生成した危険度区間情報を含むダウンロード情報Idを、通信部21により端末装置1へ送信する。制御部23は、生成手段として機能する。
【0046】
[データ構造]
次に、アップロード情報Iu、配信地図DB5、及びダウンロード情報Idのデータ構造についてそれぞれ説明する。以後において、「対象物」は、端末装置1がセンサ部7により検出した歩行者又は自転車運転者を示すものとする。
【0047】
(1)アップロード情報
図4は、アップロード情報Iuのデータ構造の第1の具体例である第1データ構造例を示す。図4に示す第1データ構造例は、端末装置1が検出した対象物(歩行者又は自転車運転者)の単体の情報(即ち1人単位の情報)を送信するためのアップロード情報Iuのデータ構造を示す。図4に示すように、アップロード情報Iuは、基本情報部と、特有情報部とを含む。
【0048】
基本情報部は、対象物を検出した端末装置1の車両に関する各項目を含む。具体的には、基本情報部は、「ヘッダ」、「車両メタデータ」、「車両位置」、「車両速度」の各項目を含む。
【0049】
ここで、「ヘッダ」は、アップロード情報Iuのヘッダ情報を指定する項目であり、端末装置1は、アップロード情報Iuのデータフォーマットのバージョン情報、対象物を検出した時刻を示すタイムスタンプなどの情報を「ヘッダ」に指定する。タイムスタンプは、本発明における「日時情報」の一例である。
【0050】
また、「車両メタデータ」は、車両のメタデータを指定する項目であり、端末装置1は、車両属性情報IVなどを参照することで、車種、車両ID、車両長、車幅、車高などの端末装置1を搭載した車両の種々の属性情報を「車両メタデータ」に指定する。また、「車両位置」は、車両の位置情報を指定する項目であり、端末装置1は、対象物を検出したときの車両の位置情報を「車両位置」に指定する。また、「車両速度」は、車両の速度情報を指定する項目であり、端末装置1は、対象物を検出したときに計測された車両の速度情報を「車両速度」に指定する。なお、「車両速度」に指定される車両の速度が速い場合、対象物の検出時での車両速度が速くとも、検出地点の周辺位置は車両が安全に走行できる(即ち危険が少ない)走行環境であると推定できるため、「車両速度」に指定された情報は、サーバ装置2が行う危険度区間情報の生成に好適に用いられる。
【0051】
特有情報部は、端末装置1が検出した対象物に関する各項目を含む。具体的には、特有情報部は、「情報ID」、「対象物種別」、「対象物位置」、「対象物進行方向」、「対象物プロフィール」、「逸脱距離基準」、「逸脱距離」、「進行方向位置」を含む。
【0052】
「情報ID」は、特有情報部のデータ構造を特定するための識別番号等を指定する項目であり、本実施例では、端末装置1は、歩行者又は自転車運転者に関する情報を指定するためのデータ構造を特有情報部が有することを示す識別番号等を「情報ID」に指定する。「対象物種別」は、対象物の種別情報を指定する項目であり、端末装置1は、検出した対象物が歩行者であるか又は自転車であるかを示す情報を「対象物種別」に指定する。「対象物位置」は、対象物が自車線側(即ち車両の走行車線に隣接した歩道又は自転車道付近)に存在したか又は反対車線側(即ち反対車線に隣接した歩道又は自転車道付近)に存在したかを示す情報を指定する項目であり、端末装置1は、例えば検出した対象物の車両に対する相対位置と車両が走行中の道路との位置関係に基づき上述の自車線側又は反対車線側のいずれに対象物が存在するか判定し、その判定結果を示す情報を「対象物位置」に指定する。「対象物進行方向」は、対象物の進行方向を示す情報を指定する項目であり、端末装置1は、例えば複数時刻で検出した対象物の位置の遷移に基づき対象物の進行方向を特定し、特定した進行方向の情報を「対象物進行方向」に指定する。「対象物プロフィール」は、対象物である歩行者又は自転車運転者の年齢や性別などのプロフィールを指定する項目であり、端末装置1は、例えばカメラ32やライダ31などの外界センサの出力に基づき公知のパターンマッチング技術等を適用することで対象物の特定のプロフィールを認識し、その認識結果を示す情報を「対象物プロフィール」に指定する。
【0053】
「逸脱距離基準」は、後述する逸脱距離を計測するための基準位置である逸脱距離基準が指定される項目である。逸脱距離基準は、対象物が車両の走行上危険な位置に存在するか否かの基準となる道路の幅方向の位置であって、例えば、車道と歩道との間の境界となる縁石や車道外側線、車道と路側帯との境界線、自転車道と車道との境界線などが該当する。境界は実際に線によって表されている場合もあれば、そうでない場合もありえる。なお、「逸脱距離基準」には、上述の境界線等の道路幅方向の位置を示す位置情報が指定されてもよく、上述の境界線等が地図に登録されている場合には、地図上で当該境界線等を識別するための識別情報が指定されてもよい。
【0054】
「逸脱距離」は、逸脱距離基準から対象物が車道側へはみ出した道路幅方向における距離である逸脱距離を示す情報が指定される項目であり、端末装置1は、「逸脱距離基準」で指定した位置と対象物との距離を示す情報を「逸脱距離」に指定する。「進行方向位置」は、道路幅方向と垂直な方向である道路に沿った方向(即ち車両の進行方向)における対象物の位置を特定する情報を指定する項目である。例えば、端末装置1は、走行中の道路に対応するリンクのリンクID(道路識別情報)、及び当該リンクの始点位置からのリンクに沿った対象物の距離などを示す情報を「進行方向位置」に指定する。
【0055】
ここで、逸脱距離基準の選定及び逸脱距離の算出について、図5及び図6を参照して説明する。
【0056】
図5は、歩行者70~72を端末装置1が検出した際の車両周辺の俯瞰図を示す。この場合、端末装置1は、車道と歩道との境界である車道外側線60を逸脱距離基準として定め、検出した歩行者70~72の各々の車道外側線60を基準とした道路幅方向における距離を逸脱距離として算出する。この場合、端末装置1は、車道外側線60を、ライダ31やカメラ32等の外界センサの出力に基づき認識してもよく、自車位置情報に基づき地図DB4を参照することで認識してもよい。
【0057】
そして、端末装置1は、歩行者70の検出結果を示すアップロード情報Iuの「逸脱距離基準」には、車道外側線60を特定する情報を指定し、「逸脱距離」には、矢印A0の幅(すなわち車道外側線60と歩行者70との距離)に相当する逸脱距離(ここでは負値)を指定する。同様に、歩行者71の検出結果を示すアップロード情報Iuの「逸脱距離基準」には、車道外側線60を特定する情報を指定し、「逸脱距離」には、矢印A1の幅に相当する逸脱距離(ここでは正値)を指定する。また、歩行者72の検出結果を示すアップロード情報Iuの「逸脱距離基準」には、車道外側線60を特定する情報を指定し、「逸脱距離」には、矢印A2の幅に相当する逸脱距離(ここでは正値)を指定する。これにより、端末装置1は、歩道から車道にはみ出している歩行者71、72の存在及び逸脱距離を、それぞれの検出結果を示すアップロード情報Iuにより好適にサーバ装置2に通知することができる。
【0058】
図6は、歩行者73及び自転車運転者74、75を端末装置1が検出した際の車両周辺の俯瞰図を示す。この場合、端末装置1は、歩道と自転車道(自転車専用レーン)との境界62を、歩行者73に対する逸脱距離基準として定め、境界62に対して車道側を正値とする歩行者73の距離を、歩行者73の逸脱距離として算出する。従って、端末装置1は、歩行者73の検出結果を示すアップロード情報Iuの「逸脱距離基準」には境界62を特定する情報を指定し、「逸脱距離」には矢印A3の幅に相当する逸脱距離(ここでは負値)を指定する。
【0059】
また、端末装置1は、自転車道と車道との境界線63を、自転車運転者74、75に対する逸脱距離基準として定め、境界線63に対して車道側を正値とする自転車走行者74、75の距離をこれらの逸脱距離として算出する。従って、端末装置1は、自転車運転者74の検出結果を示すアップロード情報Iuの「逸脱距離基準」には、境界線63を特定する情報を指定し、「逸脱距離」には、矢印A4の幅に相当する逸脱距離(ここでは負値)を指定する。また、端末装置1は、自転車運転者75の検出結果を示すアップロード情報Iuの「逸脱距離基準」には、境界線63を特定する情報を指定し、「逸脱距離」には、矢印A5の幅に相当する逸脱距離(ここでは正値)を指定する。このように、「逸脱距離基準」は、検出した対象物が歩行者か自転車運転者かによって異なる位置に指定されてもよい。
【0060】
図7は、アップロード情報Iuのデータ構造の第2の具体例である第2データ構造例を示す。図7に示すデータ構造は、端末装置1が複数の対象物を同一場所で検出した場合に、検出した複数の対象物の統計情報を送信するためのアップロード情報Iuのデータ構造を示す。図7に示すアップロード情報Iuは、図4に示すアップロード情報Iuと同一のデータ構造を有する基本情報部と、図4に示すアップロード情報Iuと異なるデータ構造を有する特有情報部とを含む。なお、端末装置1は、歩行者と自転車運転者とを同一場所で検出した場合には、検出した歩行者に関するアップロード情報Iuと検出した自転車運転者に関するアップロード情報Iuとに分けて送信するものとする。また、端末装置1は、自車線側の対象物と反対車線側の対象物とを同時検出した場合にも同様に、自車線側の対象物に関するアップロード情報Iuと反対車線側の対象物に関するアップロード情報Iuとに分けて送信するものとする。
【0061】
図7に示す特有情報部は、「情報ID」、「対象物種別」、「対象物位置」、「対象物数」、「逸脱距離基準」、「逸脱距離分布」、「距離別年齢分布」、「距離別性別分布」等の各項目を含む。
【0062】
「情報ID」には、端末装置1は、図7に示す特有情報部のデータ構造を特定するための識別番号等を指定する。「対象物種別」には、端末装置1は、端末装置1が検出した対象物の種別情報を指定する。「対象物位置」には、端末装置1は、対象物が自車線側又は反対車線側のいずれに存在したかを示す情報を指定する。
【0063】
「対象物数」には、端末装置1は、本アップロード情報Iuにおいて対象とする対象物の数を指定する。具体的には、端末装置1は、「対象物種別」が示す種別に該当し、「対象物位置」が示す位置に存在する対象物として端末装置1が検出した対象物の総数を「対象物数」に指定する。「逸脱距離基準」には、端末装置1は、図4に示すアップロード情報Iuと同様に、逸脱距離基準となる境界線等の識別情報又は位置情報等を指定する。「逸脱距離分布」は、逸脱距離の分布に関する情報を指定する項目であり、端末装置1は、例えば各対象物の逸脱距離を所定長ごとに区分けした場合の区分けごとの対象物の数又は割合を示す情報を「逸脱距離分布」に指定する。他の例では、端末装置1は、「対象物数」が示す数に対して逸脱距離が正値となる(即ち車道に存在する)対象物の数又は割合を示す情報を「逸脱距離分布」に指定してもよい。さらに別の例では、端末装置1は、対象物の逸脱距離の分布が正規分布に従うとみなし、各対象物の逸脱距離の平均及び分散のパラメータを「逸脱距離分布」に指定してもよい。
【0064】
「距離別年齢分布」は、逸脱距離ごとの対象物の年齢の分布を示す情報を指定する項目であり、端末装置1は、例えば各対象物の逸脱距離を所定長ごとに区分けした場合の区分けごとの対象物の年齢の分布に関する情報を「距離別年齢分布」に指定する。「距離別性別分布」は、逸脱距離ごとの対象物の性別の分布を示す情報を指定する項目であり、端末装置1は、例えば各対象物の逸脱距離を所定長ごとに区分けした場合の区分けごとの対象物の性別の男女比に関する情報を「距離別年齢分布」に指定する。
【0065】
なお、図4及び図7に示されるアップロード情報Iuの基本情報部に指定される情報は、移動体情報の一例であり、図4及び図7に示されるアップロード情報Iuの特有情報部に指定される情報は、歩行者情報及び自転車情報の一例である。
【0066】
(2)図DB及び配信地図DB
図8は、配信地図DB5に含まれるリンクごとの道路データ(リンクデータ)のデータ構造の一例を示す。図8には、リンクデータに危険度範囲情報を付加するデータ構造例が示されている。図8に示すデータ構造は、対象となるリンクに関する情報を指定する各項目(例えばリンクIDやリンク長など)を含む基本情報部と、危険度範囲情報に関する各項目を含む特有情報部とを有する。なお、端末装置1が保有する地図DB4についても、図8と同様のデータ構造を有する道路データが含まれている。
【0067】
特有情報部は、「情報ID」、「基本危険度」、「危険度範囲数」、「危険度範囲n」(n=1、2、…)の各項目を含む。「情報ID」は、特有情報部のデータ構造を特定するための識別番号等を指定する項目であり、本実施例では、特有情報部のデータ構造が危険度範囲情報を指定するデータ構造であることを示す識別番号等が「情報ID」として指定される。「基本危険度」は、対象のリンクのうち、後述する項目で指定される危険度範囲に含まれない範囲に対する危険度を指定する項目である。なお、危険度は、端末装置1から送信されるアップロード情報Iuに基づきサーバ装置2が決定した危険度の度合いである。「危険度範囲数」は、対象のリンクに対して設定される危険度範囲の数を指定する項目である。
【0068】
「危険度範囲n」(n=1、2、…)の各項目は、個別の危険度範囲に関する情報を指定する項目であり、「危険度範囲数」にて指定された数だけ設けられている。「危険度範囲n」は、それぞれ複数のサブ項目を含んでおり、「危険度範囲ID」、「位置」、「長さ」、「優先度」、「曜日・時間帯」、「有効期限」、「危険度」の各サブ項目を含む。
【0069】
「危険度範囲ID」には、配信地図DB5に設定される各危険度範囲に対して割り当てられる固有のIDが指定される。「位置」には、対象の危険度範囲の位置を示す情報が指定される。例えば、「位置」には、対象のリンクの始点からの危険度範囲の始点又は終点までの距離を示す情報等が指定されてもよい。「長さ」には、対象の危険度範囲の長さを示す情報等が指定される。「危険度範囲ID」、「位置」、「長さ」に指定される情報は、区間情報の一例である。
【0070】
「優先度」には、対象の危険度範囲の優先度を示す情報が指定される。この優先度は、危険度範囲が重複する区間において、いずれの危険度範囲に対する危険度等を優先して参照すべきかを判定するために用いられる。「曜日・時間帯」には、対象の危険度範囲が有効となる曜日又は/及び時間帯が指定される。「有効期限」には、対象の危険度範囲が有効なものとして使用できる期限である有効期限が指定される。「危険度」には、対象の危険度範囲に対する危険度が指定される。危険度は、車両が危険度範囲を走行する際の歩行者や自転車運転者に起因する危険度を示し、後述するように、端末装置1から送信されるアップロード情報Iuに基づき決定される。「危険度」に指定される情報は、危険度情報の一例である。
【0071】
また、「危険度範囲n」には、対象の危険度範囲に存在する歩行者等に関する情報がさらに含まれてもよい。例えば、「危険度範囲n」には、対象の危険度範囲に存在する歩行者の年齢層、男女比などの歩行者の属性に関する統計情報が含まれてもよい。
【0072】
なお、危険度範囲情報は、特有情報部として道路データ(リンクデータ)に付加される態様に限られず、道路データとは別のデータとして管理されてもよい。例えば、この場合、サーバ装置2は、危険度範囲ごと又は図8の特有情報部ごとにリンクIDを関連付けた危険度範囲情報のデータベースを、配信地図DB5の一部として記憶してもよい。同様に、端末装置1は、上述の危険度範囲情報のデータベースを、地図DB4の一部として記憶してもよい。
【0073】
ここで、特有情報部に指定する危険度範囲情報の生成方法について補足説明する。
【0074】
図9は、リンク1及びリンク2に対応する道路区間での危険度の算出方法の第1具体例を概略的に示した図である。図9では、リンク1及びリンク2に対応する道路で検出された各対象物の位置が楕円により示されており、逸脱距離基準の位置が破線により示されている。なお、図9では、逸脱距離基準より下側の領域が車道の領域となっている。
【0075】
この場合、まず、サーバ装置2は、リンク1又はリンク2に対応するリンクIDが図4の「進行方向位置」等の項目において指定されたアップロード情報Iuを歩行者情報DB8又は/及び自転車情報DB9から抽出し、抽出したアップロード情報Iuに基づき、リンク1及びリンク2の道路周辺に存在する各対象物の位置を特定する。
【0076】
次に、サーバ装置2は、対象のリンク1及びリンク2をそれぞれ所定長の区間に区切り、区切った区間ごとに、逸脱距離が正値(即ち逸脱距離基準よりも車道側)となる対象物が存在した割合を算出する。そして、サーバ装置2は、区間ごとに算出した割合を、対応する区間における危険度として決定する。図9に示される各数値は、対応する区間に対して設定される危険度を示している。
【0077】
図10は、リンク1及びリンク2に対応する道路区間での危険度の算出方法の第2具体例を概略的に示した図である。図10の例では、サーバ装置2は、対象のリンク1及びリンク2をそれぞれ所定長の区間に区切り、区切った区間ごとに対象物の人数を数え、1人あたり例えば1点として点数を計算する。そして、サーバ装置2は、区間ごとに算出した点数を対応する区間における危険度として決定する。図10に示される各数値は、対応する区間に対して設定される危険度を示している。なお、この際、逸脱距離に応じて点数を調整してもよい。具体的には、逸脱距離基準から所定の距離離れた基準位置よりも、逸脱距離が大きい対象物については点数を大きくし、逸脱距離が小さい対象物については点数を小さくするといった計算をしてもよい。これによって、車道に大きく逸脱する対象物が多い道路については、高い危険度を決定することができる。
【0078】
このように、サーバ装置2は、複数の車両の端末装置1から送信されるアップロード情報Iuを蓄積した歩行者情報DB8又は/及び自転車情報DB9を参照することで、各リンクの区間ごとの危険度を好適に決定することができる。例えば、サーバ装置2は、図8のデータ構造に示される「基本危険度」を0とし、危険度が0より大きい区間に対して危険度範囲IDを割り振り、当該区間のそれぞれに対して項目「危険度範囲n」を設けるとよい。
【0079】
また、サーバ装置2は、アップロード情報Iuの項目「ヘッダ」に含まれるタイムスタンプを参照することで、曜日又は/及び時間帯ごとに危険度を算出し、当該危険度に基づき曜日又は/及び時間帯ごとに危険度範囲を決定してもよい。この場合、サーバ装置2は、決定した危険度範囲が対応する曜日又は/及び時間帯に関する情報を、サブ項目「曜日・時間帯」において指定する。また、サーバ装置2は、決定した危険度範囲に対して有効期限を設定してもよい。この場合、サーバ装置2は、決定した危険度範囲に対して有効期限(例えば決定時点から所定日数)を定め、定めた有効期限の情報をサブ項目「有効期限」に指定する。また、サーバ装置2は、アップロード情報Iuの項目「対象物プロフィール」に含まれる対象物の年齢や性別等を参照することで、対象の危険度範囲に存在する歩行者の年齢層、男女比などの統計情報を算出し、算出した統計情報を項目「危険度範囲n」のサブ項目に含めてもよい。歩行者の年齢層や性別に関する情報は、年齢や性別に起因する行動様式を参照して危険度の値を調整するのに用いてもよい。
【0080】
なお、危険度は、歩行者の情報を示すアップロード情報Iuに基づいて決定されてもよく、自転車運転者の情報を示すアップロード情報Iuに基づいて決定されてもよい。例えば、サーバ装置2は、自転車道(自転車専用レーン)が存在する区間では、自転車走行者の情報を示すアップロード情報Iuに基づいて危険度を算出し、自転車道が存在しない区間では、歩行者の情報を示すアップロード情報Iuに基づいて危険度を算出してもよい。他の例では、サーバ装置2は、歩行者と自転車運転者とを区別することなく、危険度を算出してもよい。また、逸脱距離の大きさに応じて危険度を大きく算出するようにしてもよい。
【0081】
(3)ダウンロード情報
図11は、サーバ装置2が各端末装置1に送信するダウンロード情報Idのデータ構造の一例である。図11に示すダウンロード情報Idは、サーバ装置2により設定された危険度範囲ごとに送信されるデータであって、基本情報部と、対象の危険度範囲に関する各項目を含む特有情報部とを有する。
【0082】
基本情報部は、アップロード情報Iuと同様のヘッダ情報が指定される「ヘッダ」、及び、対象の危険度範囲が設けられたリンクを特定するリンクIDが指定される「リンクID」の各項目が設けられる。
【0083】
特有情報部は、「情報ID」、「危険度範囲ID」、「位置」、「長さ」、「優先度」、「曜日・時間帯」、「有効期限」、「危険度」の各項目を含む。「情報ID」は、ダウンロード情報Idのデータ構造が危険度範囲に関する情報を指定するデータ構造であることを特定するための識別番号等を指定する項目であり、「危険度範囲ID」は、対象の危険度範囲に対して割り当てられた固有のIDを指定する項目である。また、「位置」は、対象の危険度範囲の位置を示す情報が指定される項目であり、「長さ」は、対象の危険度範囲の長さを示す情報等が指定される項目である。「優先度」は、対象の危険度範囲の優先度を示す情報が指定される項目であり、「曜日・時間帯」は、対象の危険度範囲が有効となる曜日又は/及び時間帯が指定される項目である。「有効期限」は、対象の危険度範囲が有効となる有効期限が指定される項目であり、「危険度」は、対象の危険度範囲に対する危険度が指定される項目である。
【0084】
例えば、サーバ装置2は、歩行者情報DB8又は/及び自転車情報DB9を参照して危険度区間情報を生成した場合に、当該危険度区間情報を図11に示すデータ構造に従い表したダウンロード情報Idを、各端末装置1に一斉送信する。他の例では、サーバ装置2は、端末装置1から所定の要求信号を受信した場合に、当該要求信号で指定された日時以降に生成した危険度区間情報を表したダウンロード情報Idを、要求元の端末装置1へ送信する。
【0085】
端末装置1は、サーバ装置2から受信したダウンロード情報Idに基づき地図DB4を更新する。そして、端末装置1は、例えば、地図DB4を参照した目的地への経路探索において、道路区間ごとの危険度を参照して推奨経路を決定する。例えば、端末装置1は、危険度が高い区間を渋滞区間等と同様にコストが高い(即ち推奨経路として選択されにくい)区間とみなし、危険度が小さい区間を含む経路ほど推奨経路として選定されやすくする。このようにすることで、端末装置1は、歩行者や自転車運転者が車道にはみ出て走行する区間を走行経路に含みにくくし、安全性が高い走行経路を好適に設定することができる。その他、端末装置1は、危険度が高い区間を通過する際に注意喚起の警告を出力してもよく、危険度範囲情報を自動運転制御に利用してもよい。
【0086】
[処理フロー]
図12は、本実施例における処理の概要を示すフローチャートの一例である。
【0087】
まず、端末装置1は、対象物(歩行者又は自転車運転者)を検知したか否か判定する(ステップS101)。この場合、端末装置1は、例えばライダ31やカメラ32などの外界センサの出力に基づき物体検出を行い、検出した物体に対して公知のパターンマッチング技術を適用することで当該物体が所定の対象物(即ち歩行者又は自転車運転者)に該当するか否か判定する。
【0088】
そして、端末装置1は、対象物を検知したと判断した場合(ステップS101;Yes)、検知した対象物に対する外界センサの出力に基づき、当該対象物の位置、性別、進行方向などの対象物の属性を認識する(ステップS102)。この場合、端末装置1は、走行中の道路に対する車両外側線等を特定することで逸脱距離基準を定め、当該逸脱距離基準に対する対象物の位置を示した逸脱距離についても算出する。なお、逸脱距離基準となる車両外側線等は、外界センサによって検出することができる。そして、端末装置1は、ステップS102での認識結果に基づき、検知した対象物に関するアップロード情報Iuを生成し、当該アップロード情報Iuをサーバ装置2へ送信する(ステップS103)。この場合、端末装置1は、図4又は図7のいずれかに示されるデータ構造を有するアップロード情報Iuを生成する。一方、端末装置1は、対象物(歩行者又は自転車運転者)を検知していない場合(ステップS101;No)、ステップS104へ処理を進める。これらの処理は制御部14で実行されるプログラムによって行われる。
【0089】
サーバ装置2は、ステップS103で送信されたアップロード情報Iuを受信し、歩行者情報DB8又は自転車情報DB9にアップロード情報Iuを蓄積する(ステップS201)。この場合、サーバ装置2は、アップロード情報Iuに含まれる対象物の種別情報に基づいて、アップロード情報Iuが歩行者又は自転車運転者のいずれに対する情報であるかを判定し、当該判定結果に基づき歩行者情報DB8又は自転車情報DB9のいずれかにアップロード情報Iuを蓄積する。そして、サーバ装置2は、危険度範囲情報の生成タイミングであるか否か判定する(ステップS202)。上述の生成タイミングは、危険度範囲情報の前回生成時からの時間長に基づいて判定されてもよく、危険度範囲情報の前回生成時から受信したアップロード情報Iuの累積受信数に基づいて判定されてもよい。
【0090】
そして、サーバ装置2は、危険度範囲情報の生成タイミングである場合(ステップS202;Yes)、歩行者情報DB8又は/自転車情報DB9を参照し、図9又は図10において説明した方法などに基づき危険度範囲情報を生成し、生成した危険度範囲情報を用いて配信地図DB5を更新する(ステップS203)。そして、サーバ装置2は、ステップS203において生成した危険度範囲情報を示すダウンロード情報Idを各端末装置1に対して送信する(ステップS204)。なお、サーバ装置2は、ダウンロード情報Idの送信要求があった端末装置1に対してのみダウンロード情報Idを送信してもよい。一方、サーバ装置2は、危険度範囲情報の生成タイミングではない場合(ステップS202;No)、引き続きステップS201を実行する。これらの処理は制御部23によって実行される。
【0091】
一方、端末装置1は、ステップS103の実行後、又は、ステップS101において対象物を検知しなかった場合、ダウンロード情報Idをサーバ装置2から受信したか否か判定する(ステップS104)。そして、端末装置1は、ダウンロード情報Idを受信した場合(ステップS104;Yes)、当該ダウンロード情報Idを用いて地図DB4を更新する(ステップS105)。これにより、地図DB4には、危険度範囲に関する最新情報が記録され、危険度が高い区間を回避する経路探索などに好適に用いられる。一方、端末装置1は、サーバ装置2からダウンロード情報Idを受信していない場合(ステップS104;No)、ステップS101へ処理を戻す。
【0092】
[変形例]
次に、上述の実施例に好適な変形例について説明する。
【0093】
(変形例1)
実施例で説明したサーバ装置2の処理を、複数のサーバ装置からなるサーバシステム(所謂クラウドサーバ)が実行してもよい。
【0094】
例えば、サーバシステムは、配信地図DB5を記憶するサーバと、歩行者情報DB8を記憶するサーバと、自転車情報DB9を記憶するサーバと、危険度範囲情報の生成処理を行うサーバとから構成されていてもよい。この場合、各サーバは、予め割り当てられた処理を実行するのに必要な情報を他のサーバから適宜受信して所定の処理を実行する。
【0095】
また、危険度範囲情報等は、端末装置1とサーバ装置2との間で授受が行われてもよく、サーバ間で授受が行われてもよい。図13は、変形例に係るデータ収集システムの概略構成である。図13に示すデータ収集システムは、複数の端末装置1と、車両クラウド2Aと、地図クラウド2Bとを有する。車両クラウド2Aは、主に車ベンダーが管理するサーバ群であり、地図クラウド2Bは、主に地図ベンダーが管理するサーバ群である。
【0096】
この場合、車両クラウド2A及び地図クラウド2Bは、実施例のサーバ装置2と同様に、アップロード情報Iuを各車両の端末装置1から受信してもよい。これにより、車両クラウド2A及び地図クラウド2Bは、それぞれ危険度範囲情報の生成に必要な歩行者及び自転車走行者に関する情報を収集することが可能である。また、車両クラウド2Aは、アップロード情報Iuに基づき生成した危険度範囲情報を、図11に示すダウンロード情報Idと同様のデータ構造に従い地図クラウド2Bへ送信してもよい。
【0097】
(変形例2)
サーバ装置2は、端末装置1からの経路探索要求に基づき配信地図DB5を参照して経路端末処理を行ってもよい。
【0098】
この例では、サーバ装置2は、目的地、現在位置、及びその他の検索条件などを含む経路探索要求を端末装置1から受信した場合、配信地図DB5に含まれる危険度範囲情報が示す道路区間ごとの危険度を参照して推奨経路を決定する。この場合、例えば、サーバ装置2は、危険度が高い区間ほど通行しにくい(即ちコストが高い)区間とみなし、危険度が小さい区間を含む経路ほど推奨経路として選定されやすくする。そして、サーバ装置2は、経路探索結果を示す応答情報を、経路探索の要求元の端末装置1に送信する。この態様によっても、危険度範囲情報を含む配信地図DB5を好適に活用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 端末装置
2 サーバ装置
4 地図DB
5 配信地図DB
6 センサデータキャッシュ
7 センサ部
8 歩行者情報DB
9 自転車情報DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13