(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164697
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】封入容器の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
A61J 3/07 20060101AFI20221020BHJP
B65D 65/46 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61J3/07 F
B65D65/46
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125631
(22)【出願日】2022-08-05
(62)【分割の表示】P 2018546252の分割
【原出願日】2017-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2016203908
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】長池 剛
(57)【要約】
【課題】内容物を収めたカップの開口部を蓋により封止して製品を製造するに際し、カップと蓋とを確実に接合できる好適な方法または製造装置を提供すること。
【解決手段】内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップの周壁の外面に密接する内面となる側に予め接着層が設けられているシートから、カップを覆う蓋を成形するとともに、前記蓋の周壁の内面を前記カップの周壁の外面に対して接着する封入容器の製造方法であって、シートは、熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルムと、接着層とを有し、蓋の成形に先んじて、コポリビドン、メタクリル酸コポリマーLD、またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを、エタノールまたは水に溶解した上で水溶性フィルムに塗布し乾燥させることで接着層を構成する、方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップの周壁の外面に密接する内面となる側に予め接着層が設けられているシートから、カップを覆う蓋を成形するとともに、前記蓋の周壁の内面を前記カップの周壁の外面に対して接着する封入容器の製造方法であって、
前記シートは、熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルムと、接着層とを有し、
前記蓋の成形に先んじて、コポリビドン、メタクリル酸コポリマーLD、またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを、エタノールまたは水に溶解した上で前記水溶性フィルムに塗布し乾燥させることで前記接着層を構成する、方法。
【請求項2】
前記カップを雄型とし、その開口部を前記シート側に向けた状態でシートをカップに対して相対的に移動させ、シートをカップに押し当てることで前記蓋を成形する請求項1記載の封入容器の製造方法。
【請求項3】
前記蓋の成形後、蓋の周壁の内面を前記カップの周壁の外面に対して圧着する請求項1または2記載の封入容器の製造方法。
【請求項4】
内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップの周壁の外面に密接する内面となる側に予め接着層が設けられているシートから、カップを覆う蓋を成形する蓋成形ユニットを具備する封入容器の製造装置であって、
前記シートは、熱可塑性高分子材料を素材とする水溶性フィルムと、接着層とを有し、
前記蓋の成形に先んじて、コポリビドン、メタクリル酸コポリマーLD、またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを、エタノールまたは水に溶解した上で前記水溶性フィルムに塗布し乾燥させることで前記接着層が構成された、装置。
【請求項5】
前記蓋成形ユニットは、前記カップを雄型とし、その開口部を前記シート側に向けた状態でシートをカップに対して相対的に移動させ、シートをカップに押し当てることで前記蓋を成形する請求項4記載の封入容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を封入する封入容器の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
経口投与する医薬の製剤を製造するにあたり、用いられる方法のひとつとして、有効成分に賦形剤や結合剤、崩壊剤等の添加剤を加えて均質化した粉体を圧縮成形した後、光による品質の劣化あるいは患者の使用を考慮してフィルムコーティングを施して錠剤化するものがある。しかしながら、有効成分の種類によっては、市場において流通しまたは処方、投薬するのに必要十分な硬度を有した錠剤を打錠することが困難であることもある他、フィルムコーティングの際の物理的な衝撃によって成形体の一部が破損するために錠剤の品質が損なわれることがある。また、フィルムコーティングの際に使用する溶媒により、有効成分の安定性に影響を及ぼすこともある。
【0003】
錠剤以外の態様の製剤としては、カプセル剤が挙げられる。カプセル剤は、例えば、予め成形したカプセルに有効成分の粉体を充填して封止し製造される(下記特許文献1を参照)。だが、カプセル剤には、原則として定型の画一的な形状及び規格化されたサイズのものしか存在せず、錠剤のように特徴のある外観を得ることが困難である。さらに、カプセルによっては開封が容易なものがあり、カプセルの内容物を入れ替えることができる。
【0004】
一方で、熱可塑性フィルムで成形したカップに充填した粉体を、杵で圧縮してから封止することで製造される態様のものがある(下記特許文献2を参照)。
【0005】
あるいは、二枚のゼラチンシートの間に有効成分を含む錠剤を挿入後、二枚のシートを接着した上で金型を以て製剤の形状に打ち抜くことで製造される態様のものもある(下記特許文献3を参照)。この製剤を製造するためには、別の装置を用いて予め錠剤を製造しておく必要がある。ゼラチンは、カプセル剤に汎用されてはいるものの動物性タンパクであり、近年ではBSE感染の観点よりヒプロメロースが代替として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-192370号公報
【特許文献2】特許第4417246号公報
【特許文献3】特開2009-196958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有効成分その他の内容物をカップに収めた後、そのカップの開口部を蓋により封止して製品を製造するとき、それらカップと蓋とを確実に接合するためには、溶媒に溶解または分散させた接着剤を、カップと蓋とを接合する直前に接合面に塗布することが考えられる。
【0008】
しかしながら、このような手法を採る場合、接着剤に使用されるエタノールや水等の溶媒がカップに収めた内容物の安定性を損ねたり菌の繁殖を招いたりする懸念を生じる。
【0009】
本発明は、内容物を収めたカップの開口部を蓋により封止して製品を製造するに際し、カップと蓋とを確実に接合できる好適な方法または製造装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る封入容器の製造方法は、内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップの周壁の外面に密接する内面となる側に予め接着層が設けられているシートから、カップを覆う蓋を成形するとともに、前記蓋の周壁の内面を前記カップの周壁の外面に対して接着するというものである。
【0011】
本発明によれば、内容物を収めたカップに蓋を確実に接合することが可能となる。のみならず、カップに蓋を接合する時点で接着剤の塗布を行う必要がなく、接着剤に使用される溶媒がカップに収めた内容物を変質させたり菌の繁殖を招いたりする問題を回避できる。
【0012】
蓋を成形するにあたっては、例えば、前記カップを雄型とし、その開口部を前記シート側に向けた状態でシートをカップに対して相対的に移動させ、シートをカップに押し当てる。これにより、蓋を成形できると同時に、カップと蓋との接合も行われる。
【0013】
カップに蓋を一層強固に接着するためには、前記蓋の成形後、蓋の周壁の内面を前記カップの周壁の外面に対して圧着する工程を実施することが好ましい。
【0014】
前記接着層は、例えば、コポリビドン、メタクリル酸コポリマーLD、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルピロリドン、またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを用いて構成する。
【0015】
前記シートは、例えば、熱可塑性高分子材料を素材とするフィルムである。この場合、前記蓋の成形に先んじて、コポリビドン、メタクリル酸コポリマーLD、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEをエタノールまたは水に溶解した上で前記フィルムに塗布し乾燥させることにより、前記接着層を構成することができる。
【0016】
本発明に係る製剤の製造装置は、内容物が収められたカップの開口部を封止するための蓋の材料であってカップの周壁の外面に密接する内面となる側に予め接着層が設けられているシートから、カップを覆う蓋を成形する蓋成形ユニットを具備する。
【0017】
前記蓋成形ユニットは、例えば、前記カップを雄型とし、その開口部を前記シート側に向けた状態でシートをカップに対して相対的に移動させ、シートをカップに押し当てることで前記蓋を成形する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、内容物を収めたカップの開口部を蓋により封止して製品を製造するに際し、カップと蓋とを確実に接合できる好適な方法または製造装置を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態の封入容器及び製剤の製造方法の概要を示す模式図。
【
図3】同実施形態の封入容器及び製造装置の全景を示す斜視図。
【
図4】同実施形態の製造装置のカップ成形ユニットを示す斜視図。
【
図5】同実施形態の製造装置のカップ成形ユニットを示す側断面図。
【
図6】同実施形態の製造装置のカップ成形ユニットを示す側断面図。
【
図7】同実施形態の製造装置のカップ成形ユニットを示す側断面図。
【
図8】同実施形態の製造装置のカップ成形ユニットを示す側断面図。
【
図9】同実施形態の製造装置のカップ成形ユニットを示す側断面図。
【
図10】同実施形態の製造装置の粉体圧縮ユニット及び挿入ユニットを示す斜視図。
【
図11】同実施形態の製造装置の粉体圧縮ユニットを示す側断面図。
【
図12】同実施形態の製造装置の粉体圧縮ユニットを示す側断面図。
【
図13】同実施形態の製造装置の挿入ユニットを示す側断面図。
【
図14】同実施形態の製造装置の挿入ユニットを示す側断面図。
【
図15】同実施形態の製造装置のカップ加工ユニットを示す斜視図。
【
図16】同実施形態の製造装置のカップ加工ユニットを示す側断面図。
【
図17】同実施形態の製造装置のカップ加工ユニットを示す側断面図。
【
図18】同実施形態の製造装置の蓋成形ユニットを示す斜視図。
【
図19】同実施形態の製造装置の蓋成形ユニットを示す側断面図。
【
図20】同実施形態の製造装置の蓋成形ユニットを示す側断面図。
【
図21】同実施形態の製造装置の蓋成形ユニットを示す側断面図。
【
図22】同実施形態の製造装置の蓋成形ユニットを示す側断面図。
【
図23】同実施形態の製造装置の蓋加工ユニットを示す側断面図。
【
図24】同実施形態の製造装置の蓋加工ユニットを示す側断面図。
【
図25】同実施形態の製造装置の圧着ユニットを示す斜視図。
【
図26】同実施形態の製造装置の圧着ユニットを示す側断面図。
【
図27】同実施形態の製造装置の圧着ユニットを示す側断面図。
【
図28】同実施形態の製造装置の第二の挿入ユニットを示す斜視図。
【
図29】同実施形態の製造装置の第二の挿入ユニットを示す側断面図。
【
図30】同実施形態の製造装置の第二の挿入ユニットを示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
<概要>はじめに、本実施形態における封入容器1、2及び製剤の製造方法のあらましを述べる。本実施形態では、粉体30を圧縮した成形品3を封入容器1、2たるラッピングの基剤シート10、20により包んでラッピング錠を製造する。ラッピング錠は、シート10から成形した容積を持つカップ1に内容物、例えば粉体30を圧縮して得た成形品3を挿入した後、当該カップ1の開口部をシート20から成形した蓋2で封止してなる製剤である。粉体とは、微小個体の集合体をいい、いわゆる顆粒などの粒体の集合体と、粒体より小なる形状の粉末の集合体とを包括した概念である。
図1及び
図2に示しているように、本実施形態の封入容器1、2及び製剤の製造方法は、シート10から成形品3を収容するためのカップ1を成形するカップ成形工程と、粉体30を圧縮してラッピング錠の内容物となる成形品3を成形する粉体圧縮工程と、カップ1に成形品3を挿入する挿入工程と、成形品3を挿入したカップ1からシート10の残部13を切り取るカップ加工工程と、成形品3を挿入したカップ1の開口部をシート20により封止する封止工程とを具備している。
【0022】
カップ成形工程では、
図1(I)に示すように、カップ1の材料となるシート10を雄型507に対して相対的に移動させ、シート10を雄型507に押し当てることで、当該シート10から容積を持つカップ1を突出させる。これにより、底壁12と、底壁12の外周縁に沿って起立した周壁11とを備えた形状のカップ1が成形される。
【0023】
カップ1の材料となるシート10は、熱可塑性高分子材料を用いた薄いフィルムである。製造対象の製剤が経口投与する医薬である場合には、医薬に使用可能な素材、例えばピプロメロースまたはポリビニルアルコール等を素材とするフィルムをシート10として採用する。なお、薄いフィルム状のシート10を製造するにあたり、当該シート10の材料に可塑剤を配合してもよい。また、シート10の材料に、ラッピング錠の内容物が光に曝されることを抑制するための遮光剤として、例えば酸化チタンを配合しても構わない。
【0024】
しかる後、
図1(II)に示すように、カップ1に連なる不要なシート10の余剰部位を、例えば当該シートにレーザ光Lを照射するレーザ加工によって大まかに切り落とす。この段階では、カップ1の開口部、換言すれば周壁11の縁端から、外側方に延出した鍔状のシート10の残部13が存留し、カップ1がちょうど帽子のような形状をなす。シート10の切断に使用するレーザ光Lの波長は、シート10がそのレーザ光Lのエネルギを吸収できるような波長である必要がある。シート10の透明性が高い場合には、比較的長波長のレーザ、例えば波長10.6μmまたは9.4μmの炭酸ガスレーザを用いる。
【0025】
粉体圧縮工程では、臼テーブル602に設けた上下に貫通する臼孔601に下方から下杵603の先端部(上端部)を挿入し、その臼孔601に有効成分(製剤が医薬である場合には、主薬)を含む粉体30を充填した後、臼孔601に上方から上杵604の先端部(下端部)を挿入して、上杵604及び下杵603により臼孔601内の粉体30を圧縮して成形品3を得る(
図10ないし
図12を参照)。圧縮成形される粉体30は、有効成分と、有効成分以外の成分(錠剤が医薬である場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、保存剤等)との混合物であることがある。また、粉体圧縮工程において製造する成形品3は、必ずしも市場に流通可能な錠剤として必要十分な硬度を有している必要はなく、カップ1に収容されるまでの間、粉体30の分量や形状を維持できる程度の保形性が担保されていればよい。つまり、粉体圧縮工程では、成形品3が錠剤として十分な硬度を有するほどに強力に粉体30を圧縮してもよく、成形品3が容易に欠損または崩壊しない程度の圧力で粉体30を圧縮してもよい。
【0026】
挿入工程では、
図1(III)に示すように、カップ1の開口部を上方に向けた状態で、粉体圧縮工程を通じて得た成形品3を上方からカップ1内に挿入する。
【0027】
カップ加工工程では、
図1(IV)に示すように、カップ1の開口部から外側方に延出する鍔状の残部13を切り落とす。その際には、カップ1を含むシート10を軸α回りに回転させつつ、その回転軸αの伸びる方向に対して交差(特に、直交)する方向に光軸を向けたレーザ光Lを、シート10の残部13から突出しているカップ1の周壁11の縁端近傍の部位に外側方から照射するレーザ加工を行う。このような加工により、カップ1の開口縁に不要なシート10の小片を残すことなく、カップ1からシート10の残部13を確実に切り取り、底壁12及び周壁11のみを有したカップ1を完成させることができる。シート10の残部13の切断に使用するレーザLは、例えば波長10.6μmまたは9.4μmの炭酸ガスレーザとする。
【0028】
封止工程は、シート20からカップ1の開口部を封止するための蓋2を成形する蓋成形工程と、成形した蓋2からシート20の残部23を切り取る蓋加工工程と、蓋2の周壁21に圧力を加えてこれをカップ1の周壁11に圧着する圧着工程とを含む。蓋成形工程では、
図2(V)に示すように、成形品3を挿入したカップ1を雄型とし、蓋2の材料となるシート20をカップ1に対して相対的に移動させ、シート20をカップ1に押し当てることで、当該シート20からカップ1を包み込むような形状をなす蓋2を突出させる。これにより、頂壁22と、頂壁22の外周縁に沿って垂下した周壁21とを備えた形状の蓋2が成形される。同時に、蓋2の周壁21の内面がカップ1の周壁11の外面に密接し、蓋2の頂壁22がカップ1の開口を閉塞する。
【0029】
蓋2の材料となるシート20もまた、カップ1の材料となるシートと同様、熱可塑性高分子材料を用いた薄いフィルムである。製造対象の製剤が経口投与する医薬である場合には、服用した人の体内で溶解する素材、例えばピプロメロースまたはポリビニルアルコール等を素材とするフィルムをシート20として採用する。なお、薄いフィルム状のシート20を製造するにあたり、当該シート20の材料に可塑剤を配合してもよい。また、シート20の材料に、ラッピング錠の内容物が光に曝されることを抑制するための遮光剤として、例えば酸化チタンを配合しても構わない。
【0030】
蓋2の材料となるシート20には、カップ1の周壁11の外面に密接する内面となる側に、予め接着層24を設けていることがある(
図19、
図20を参照)。接着層24は、例えばコポリビドン、メタクリル酸コポリマーLD、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルピロリドン、またはアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを用いて構成する。より具体的には、接着剤となるコポリビドン等を可塑剤とともにエタノールまたは水に溶解し、これをシート20であるピプロメロースフィルムまたはポリビニルアルコールフィルム等に塗布して乾燥させることにより、接着層24を構成する。シート20に接着剤を塗布する際、パンチングメタル等により構成した版を用い、接着剤を無数の点状に塗布するようにしてもよい。あるいは、接着剤を溶媒に分散させて塗布するのではなく、接着剤を素材とする薄いフィルムを作製し、そのフィルムをシート20であるピプロメロースフィルム等に対して熱及び圧力を加えながら接着することで、接着層24を構成することも考えられる。接着層24は、必ずしもシート20の全面に設ける必要はなく、少なくともシート20における周壁21(その内面がカップ1の周壁11の外面に接着する)及び頂壁22(その下面が成形品3の上面に接着する)となる部位に設けてあればよい。
【0031】
蓋成形工程にて蓋2を成形する過程では、蓋2の周壁21の内面がカップ1の周壁11の外面に接合する。蓋2の材料のシート20に接着層24を設けている場合には、このときにシート20に加わる熱により、当該接着層24が蓋2の周壁21の内面とカップ1の周壁11の外面とを接着する。
【0032】
しかる後、
図2(VI)に示すように、蓋2に連なる不要なシート20の余剰部位を、例えば当該シート20にレーザ光Lを照射するレーザ加工によって大まかに切り落とす。この段階では、蓋2の開口部、換言すれば周壁21の縁端から外側方に延出した鍔状のシート20の残部23が存留し、蓋2がちょうど帽子のような形状をなす。既に述べた通り、シート20の切断に使用するレーザLは、例えば波長10.6μmまたは9.4μmの炭酸ガスレーザとする。
【0033】
次いで、蓋加工工程では、
図2(VII)に示すように、蓋2の開口部から外側方に延出する鍔状の残部23を切り落とす。その際には、蓋2を含むシート20をカップ1諸共軸α回りに回転させつつ、その回転軸αの伸びる方向に対して交差(特に、直交)する方向に光軸を向けたレーザ光Lを、シート20の残部23から突出している蓋2の周壁21の縁端近傍の部位に外側方から照射するレーザ加工を行う。その際、レーザ光Lの焦点を蓋2の周壁21に合わせることで、及び/または、レーザ光Lの出力を調整することで、カップ1の周壁11がレーザ光Lによる切断その他の損傷を受けないようにする。このような加工により、蓋2の開口縁に不要なシート20の小片を残すことなく、蓋2からシート20の残部23を確実に切り取り、頂壁22及び周壁21のみを有した蓋2を完成させることができる。カップ1の周壁11及び蓋の周壁21が重なり合ってラッピング錠の周壁が完成することから、ラッピングされた成形品3の側面が剥き出しになることはない。既に述べた通り、シート20の切断に使用するレーザLは、例えば波長10.6μmまたは9.4μmの炭酸ガスレーザとする。
【0034】
さらに、圧着工程では、蓋2の周壁21を外側方から内側方に向けて押圧し、蓋2の周壁21の内面をカップ1の周壁11の外面に対して圧着する。但し、圧着工程の実施は必須ではない。蓋成形工程にてシートから蓋2を成形するときに、蓋2の周壁21の内面がカップ1の周壁11の外面に十分に強固に付着するのであれば、このような圧着を行わなくともよい。
【0035】
以上の工程を経て、
図2(VIII)に示すようなラッピング錠、即ち粉体30を圧縮した成形品3をカップ1及び蓋2からなるラッピングカプセルで包んだ製剤が完成する。
【0036】
図3に示すように、本実施形態の製剤の製造方法を実施するために使用する製造装置は、シートからカップ1及び蓋2を成形するラッピングカプセル成形機500と、粉体30から成形品3を成形する粉体圧縮成形機600との組である。以降、本実施形態の製造装置に関して詳述する。
【0037】
<カップ成形ユニット>カップ成形ユニットAは、ラッピングカプセル成形機500内にあって、シート10から容積を持つカップ1を成形するカップ成形工程を営む。
図4ないし
図9に示すように、カップ成形ユニットAにおいては、まず、シート切り出し位置501において、カップ1の材料となるシート10のテープ502から所定寸法の円形状のシート10を切り出す。シート10の切り出しは、例えば切り出されるシート10の輪郭に沿ってレーザ光Lを照射することで行う。そして、その切り出したシート10を、成形位置503において保定機構504により保定する。保定機構504は、上下に対をなす環状の中空の部材505、506によりシート10を上下から挟持するものである。保定機構504の下側の部材506は、シート切り出し位置501と成形位置503との間を移動することが可能であり、シート切り出し位置501において切り出したシート10を受け取り、成形位置503まで運搬する。
【0038】
成形位置503では、上方に向けて突出した略円柱状をなす雄型507が、保定機構504の下方に待機している。その上で、シート10から見て雄型507とは反対側、即ちシート10の上方に存在する、ファンを内蔵したダクト508より、シート10に向けて温風を吹き付けて熱可塑性のシート10を加温する。そして、シート10を挟持して保定した保定機構504が、雄型507に向けて降下し、シート10を雄型507の先端面(上端面)に押し当てる(
図5)。それとともに、シート10から見て雄型507側をダクト508側よりも減圧する、具体的にはシート10の下方の雰囲気を吸引することで、シート10を雄型507の先端部(上端部)に吸着させる(
図6)。結果、雄型507の先端部の外形に対応した形状の容積を持つカップ1が、シート10から上方に突出するように成形される。このカップ1は、雄型507の先端部の外周面の形状に沿った円筒状をなす周壁11と、雄型507の先端面の形状に沿った底壁12とを有するものとなる。
【0039】
カップ1をシート10から突出させて成形した後、保定機構504がそのシート10を挟持したまま雄型507から離反するように上昇する。次いで、雄型507が下方に大きく退避し、保定機構504の直下にカップ反転機509がX軸方向に沿った側方より進入する。カップ反転機509は、水平軸回りに回動可能な水平支軸510から、これに直交する方向に沿って吸着アーム511を突出させたものであり、下方を向いているカップ1の開口部を上方に向けるようにカップ1を反転させる役割を担っている。吸着アーム511の先端部は、雄型507の先端部と同等の外形をなす。カップ反転機509の内部には、雰囲気を吸引するための吸引通路512を形成してあり、その吸引通路512は吸着アーム511の先端面に開口している。カップ反転機509は、その吸着アーム511を上に向けた姿勢でカップ1の直下に位置づける。しかる後、シート10を挟持した保定機構504が再度降下して、カップ1内に吸着アーム511の先端部を挿入する。その状態で吸引通路512を吸引して負圧化すると、カップ1を含むシート10が吸着アーム511の先端面に吸着される。
【0040】
続いて、カップ1の開口部に連なる不要なシート10の余剰部位にレーザ光Lを照射して、当該余剰部位を切り落とす(
図7)。このとき、シート10の余剰部位と直交するZ軸方向即ち上下方向に沿って(図示例では、上方から)、カップ1の開口縁よりもやや外側方に偏倚した位置にレーザ光Lを照射するとともに、そのレーザ光Lの照射位置をカップ1の開口縁よりも径の大きな円形状の輪郭βに沿って弧を描くように移動させる走査を行う。これにより、レーザ光Lの照射位置の軌跡に沿ってシート10が切断される。シート10の余剰部位を切り落としたカップ1の開口部には、カップ1の周壁11から屈曲して外側方に張り出した鍔状のシート10の残部13が存留することとなる。カップ1から切り離されたシート10の余剰部位は、後に吸引して除去される。
【0041】
シートの余剰部位を切り落とした後、カップ1を吸着している吸着アーム511及び水平支軸510を半回転させて吸着アーム511を下に向けることでカップ1を反転させるとともに、吸着アーム511及び水平支軸510をX軸方向に沿って側方に変位させて、開口部を上に向けたカップ1を移送機構513の直上の位置まで運搬する。そして、移送機構513の移送体514を吸着アーム511に向けて上昇させる。移送体514には、その上面に開口する軸孔515を形成してある。軸孔515の内径は、移送体514の上面からカップ1の周壁11の高さ寸法に略等しい深さまで(例えば、移送体514の上面から約5mmの深さまで)の部分ではカップ1の周壁11の外径に略等しいが、それよりも下方の部分ではカップ1の周壁の外径よりも狭くなっている。移送体514が上昇すると、下を向く吸着アーム511の先端部及びこれに吸着しているカップ1が移送体514の軸孔515内に収まる(
図8)。しかして、カップ反転機509の吸引通路512の吸引を停止することにより、吸着アーム511から移送体514にカップ1を受け渡すことができる。このとき、カップ1の開口縁から外側方に延出する鍔部13が、移送体514の上面における軸孔515の開口の周縁に係合する。その後、移送体514が下降して吸着アーム511から離間し、カップ反転機509は原位置に帰還する(
図9)。また、雄型507が原位置に向けて上昇する。移送体514の軸孔515にカップ1を収容した移送機構513は、向後、このカップ1を各所のユニットB、C、E、F、G、Hを巡回するように移送する働きをする。
【0042】
<粉体圧縮ユニット>粉体圧縮ユニットBは、粉体圧縮成形機600内にあって、粉体30を圧縮してカップ1に装填するべき成形品3を得る粉体圧縮工程を営む。
図10ないし
図12に示すように、粉体圧縮ユニットBにおいては、まず、上下に貫通した臼孔601を有している臼テーブル602の臼孔601に下方から下杵603の先端部(上端部)を挿入し、かつその下杵603の高さを調整して、臼孔601内に所要量の粉体30を充填するための容積を確保する。このとき、臼孔601に上方から臨む上杵604は上昇させて、臼テーブル602上の臼孔601の周囲の領域を開放しておく。そして、臼テーブル602の臼孔601に上方から覆い被さるように充填装置(フィードシュ)605を臼テーブル602の上面に沿って移動させ、臼孔601内に粉体30を充填する(
図11)。粉体30の充填を終えた充填装置605は、臼テーブル602上の臼孔601の周囲の領域から退避する。
【0043】
次に、上杵604を下降させてその先端部(下端部)を臼孔601に上方から挿入し、上杵604の先端部と下杵603の先端部とで臼孔601内の粉体30を押圧、圧縮して、成形品3を成形する(
図12)。
【0044】
<挿入ユニット>挿入ユニットCは、粉体圧縮成形機600内にあって、粉体圧縮ユニットBと同じ構成要素を共用し、粉体30を圧縮して得た成形品3をカップ1に挿入する挿入工程を営む。
図10、
図13及び
図14に示すように、挿入ユニットCにおいては、粉体圧縮工程による粉体30の圧縮の完了後、下杵603を下降させて、その先端面(上端面)を成形品3の下面から引き離す。このとき、粉体30を圧縮してなる成形品3は臼孔601内に留まる。さらに、上杵604及び臼テーブル602を上昇させて、臼孔601の下方にY軸方向に沿って側方に開放した空間を確保する。しかる後、その空間に、軸孔515にカップ1を収容して当該カップ1を支持している移送機構513の移送体514が、Y軸方向に沿って下方より進入する(
図13)。当該空間に進入した移送体514の軸孔515及びカップ1の中心軸αは、臼テーブル602の臼孔601の中心軸と同軸となる、即ち双方の中心軸が上下方向であるZ軸方向から見て一致する。
【0045】
次いで、移送体514を若干ながら持ち上げつつ、上杵604を下降させて、臼孔601内に滞留している成形品3をカップ1内に上方から突き込む(
図14)。結果、カップ1内に成形品3が挿入される。そして、上杵604を再び上昇させるとともに、移送体514を若干降下させて、移送体514を臼テーブル602の下方の空間から退避させる。移送体514が退避したら、臼テーブル602が原位置まで下降し、上杵604の先端部が臼孔601から抜け出る。また、下杵603も上昇して、その先端部が再び臼孔601内に進入する。
【0046】
<カップ加工ユニット>カップ加工ユニットEは、ラッピングカプセル成形機500内にあって、成形品3が挿入されたカップ1の開口部から外側方に張り出している鍔状のシート10の残部13を切り落とすカップ加工工程を営む。
図15ないし
図17に示すように、カップ加工ユニットEにおいては、まず、加工対象であるカップ1をその中心軸α回りに回転させるための回転台522を加工位置523に向けて進出させる(
図16)。回転台522は、上下方向に伸長しその中心軸即ち鉛直軸回りに回転可能な軸体524及びピストン525と、軸体524を回転駆動する駆動源となるモータ526とを備えている。軸体524の内部には、上下方向に沿って延伸する負圧通路527と、負圧通路527の下方に位置して負圧通路527に連通する負圧発生空間528とを形成してある。負圧通路527は、軸体524の先端面(上端面)に開口する。ピストン525は、負圧発生空間528に下方から挿入している。軸体524とピストン525とは、例えばスプライン結合しており、軸体524に対してピストン525が相対的に上下方向に沿って変位可能である一方、軸体524が中心軸回りに回転するときにはピストン525と軸体524とが一体となって回転する。負圧発生空間528の容積は、ピストン525が軸体524に対して相対的に上下動することで拡縮する。また、ピストン525は、モータ526の出力軸と直結している。
【0047】
成形品3が挿入されたカップ1を支持する移送機構513の移送体514は、回転台522の上方に移動する。このとき、軸体524の中心軸と、移送体514の軸孔515及びカップ1の中心軸αとが同軸となる。しかる後、移送体514を下降させると、軸体524の先端部(上端部)が移送体514の軸孔515内に収まり、その先端面がカップ1の底壁12に当接または極近接する。その状態で、軸体524を上昇させると、軸体524の先端部が移送体514の上面よりも上方に突出し、カップ1の底壁12を突き上げるようにしてカップ1及びシート10の残部13を移送体514の上面から浮上させる。同時に、モータ526に連結しているピストン525が軸体524に対して相対的に下方に変位することとなり、負圧発生空間528の容積が拡大して負圧を生じ、その負圧が負圧通路527を介してカップ1の底壁12を軸体524の先端面に吸着させる。
【0048】
カップ加工工程では、カップ1の開口部に連なる鍔状の残部13を切り落とすべく、カップ1の周壁11の縁端(上端)近傍の部位に、X軸方向に沿った側方からレーザ光Lを照射する。そのために、レーザ光Lを反射してその光軸をX軸方向に向けるミラー(または、45°直角プリズム)529を、移送体514の上面から浮上したカップ1の周壁11にX軸方向から臨む高さに配置する。そして、モータ526を起動してピストン525、軸体524及びこれに吸着しているカップ1をその中心軸α回りに回転させながら、レーザ光Lをミラー529を介してカップ1の周壁11の縁端近傍の部位に照射する(
図17)。レーザ光Lの照射は、その照射位置がカップ1の周壁11に沿って複数周回(例えば、二周)巡回するまで続行する。この結果、鍔状をなすシート10の残部13をカップ1の開口部から切り落とすことができる。カップ1から切り離されたシート10の残部13は、後に吸引して除去される。
【0049】
カップ1からシート10の残部13を切り取った後、軸体524は下降し、かつ移送体514は上昇する。このとき、ピストン525が軸体524に対して相対的に上方に変位することから、カップ1の底壁12を軸体524の先端面に吸着していた負圧が消失する。なお、移送体514の上面における軸孔515の開口の周縁に係合していたシート10の残部13が既にカップ1から切り離されているが、既に述べた通り、移送体514の軸孔515の下方の部分においてその内径がカップ1の周壁11の外形よりも狭くなっている。このため、カップ1は、軸孔515内に深く落ち込むことなく、移送体514に支持されながら移送体514とともに上昇することになる。軸体524が移送体514の軸孔515から下方に脱出した後、回転台522は加工位置523から退避する。
【0050】
<封止ユニット>封止ユニットは、ラッピングカプセル成形機500内にあって、成形品3が挿入されたカップ1の開口部をシート20により封止する封止工程を営む。本実施形態にあって、封止ユニットは、以下に述べる蓋成形ユニットF、蓋加工ユニットG及び圧着ユニットHを含む。
【0051】
蓋成形ユニットFは、カップ成形ユニットAと同じ構成要素を共用し、シート20からカップ1の開口部を封止するための蓋2を成形する蓋成形工程を営む。
図18ないし
図22に示すように、蓋成形ユニットFにおいては、シート10の残部13を切り落としたカップ1を支持する移送機構513の移送体514を降下させ、かつ成形位置503に所在する保定機構504の下方の位置まで移動させる。一方で、シート切り出し位置501において、蓋2の材料となるシート20のテープ530から所定寸法の円形状のシート20を切り出し、切り出したシート20を成形位置503において保定機構504により保定する(
図19)。その際には、保定機構504の下側の部材506が、シート切り出し位置501において切り出したシート20を受け取り、成形位置503まで運搬する。蓋2の材料となるシート20の切り出しは、カップ1の材料となるシート10の切り出しと同様のレーザ処理により行う。なお、蓋2の材料となるシート20の下向面に、予め接着層24を設けている。
【0052】
次に、移送体514の下方から、当該移送体514の軸孔515に支持軸531を挿入する。支持軸531は、シートから蓋2を成形する際に雄型となる、成形品3が挿入されたカップ1を下方より支持する役割を担う。支持軸531の内部には、雰囲気を吸引するための吸引通路532を形成してあり、その吸引通路532は支持軸531の先端面(上端面)に開口している。支持軸531は、その先端面を移送体514の上面に略等しい高さまで上昇させることで、カップ1の底壁12を移送体514の上面に略等しい高さまで持ち上げ、カップ1を移送体514の軸孔515から上方に露出させる。そして、その状態で吸引通路532を吸引して負圧化し、カップ1の底壁12を支持軸531の先端面に吸着して固定する。
【0053】
しかして、シート20から見てカップ1とは反対側、即ちシート20の上方に存在する、ファンを内蔵したダクト508より、シート20に向けて温風を吹き付けて熱可塑性のシート20を加温する。その後、シート20を挟持して保定した保定機構504が、雄型となるカップ1に向けて降下し、シート20をカップ1の開口縁(上縁)及びカップ1に挿入された成形品3の上面に押し当てる(
図20)。それとともに、シート20から見てカップ1側をダクト508側よりも減圧する、具体的にはシート20の下方の雰囲気を吸引することで、シート20をカップ1(及び、移送体514の上面)に吸着させる(
図21)。結果、カップ1の周壁11の外面及び成形品3の上面の外形に対応した形状の容積を持つ蓋2が、シート20から上方に突出するように成形される。この蓋2は、カップ1の周壁11の外周の形状に沿った円筒状をなす周壁21と、成形品3の上面の形状に沿った頂壁22とを有するものとなる。そして、蓋2の成形時、蓋2の周壁21の内面がカップ1の周壁11の外面に接合し、かつ頂壁22の下面がカップ1に挿入されている成形品3の上面に接合する。特に、蓋2となるシート20の下向面、即ちカップ1及び成形品3に臨む側の面に予め接着層24を設けている場合には、蓋2の成形時にその周壁21の内面がカップ1の周壁11の外面に接着されるとともに、当該接着層24を有する頂壁22の下面がカップ1に挿入されている成形品3の上面に接着される。
【0054】
蓋2をシート20から突出させて成形した後、支持軸531の吸引通路532の吸引を停止し、カップ1の底壁12の支持軸531の先端面への吸着を解除する。そして、保定機構504が蓋2を成形したシート20を挟持したまま上昇し、移送体514も保定機構504に追従して上昇する。このとき、カップ1と蓋2とが接合し、その蓋2と一体となっているシート20が保定機構504に挟持されており、しかもシート20の余剰部位が移送体514の上面に載置されていることから、カップ1及び蓋2もまた移送体514の上面から上方に露出した状態で保定機構504及び移送体514とともに上昇することとなる。
【0055】
続いて、蓋2の開口部に連なる不要なシート20の余剰部位にレーザ光Lを照射して、当該余剰部位を切り落とす(
図22)。このとき、シート20の余剰部位と直交する上下方向に沿って、蓋2の開口縁よりもやや外側方に偏倚した位置にレーザ光Lを照射するとともに、そのレーザ光Lの照射位置も蓋2の開口縁よりも径の大きな円形状の輪郭βに沿って弧を描くように移動させる走査を行う。これにより、レーザ光Lの照射位置の軌跡に沿ってシート20が切断される。シート20の余剰部位を切り落とした蓋2の開口部には、蓋2の周壁21から屈曲して外側方に張り出した鍔状のシート20の残部23が存留する。このシート20の残部23は、移送体514の上面における軸孔515の開口の周縁に係合し、カップ1及び蓋2を移送体514の上面から上方に突出した状態に保つ。蓋2から切り離されたシート20の余剰部位は、後に吸引して除去される。
【0056】
シート20の余剰部位を切り落とした後、カップ1及び蓋2を支持する移送体514がやや降下するとともに、支持軸531が下方に大きく退避する。
【0057】
蓋加工ユニットGは、カップ加工ユニットEと同じ構成要素を共用し、カップ1を封止した蓋2の開口部から外側方に張り出している鍔状のシート20の残部23を切り落とす蓋加工工程を営む。
図23及び
図24に示すように、蓋加工ユニットGにおいては、まず、カップ1及び蓋2を支持する移送機構513の移送体514を加工位置523に向けて移動させる(
図23)。この移送体514は、回転台522の上方の位置で待機する。並びに、回転台522を加工位置523に向けて進出させる。加工位置523にあって、回転台522の軸体524の中心軸と、移送体514の軸孔515、カップ1及び蓋2の中心軸αとは同軸となる。しかる後、移送体514を下降させると、軸体524の先端部が移送体514の軸孔515内に収まり、その先端面がカップ1の底壁12に当接または極近接する。その状態で、軸体524を上昇させると、軸体524の先端部が移送体514の上面よりも上方に突出し、カップ1の底壁12を突き上げるようにしてカップ1、蓋2及びシートの残部を移送体514の上面から浮上させる。同時に、モータ526に連結しているピストン525が軸体524に対して相対的に下方に変位することとなり、負圧発生空間528の容積が拡大して負圧を生じ、その負圧が負圧通路527を介してカップ1の底壁12を軸体524の先端面に吸着させる。
【0058】
蓋加工工程では、蓋2の開口部に連なる鍔状の残部23を切り落とすべく、蓋2の周壁21の縁端(下端)近傍の部位に、X軸方向に沿った側方からレーザ光Lを照射する。そのために、レーザ光Lを反射してその光軸をX軸方向に向けるミラー529を、移送体514の上面から浮上した蓋2の周壁21にX軸方向から臨む高さに配置する。そして、モータ526を起動してピストン525、軸体524、並びに軸体524に吸着しているカップ1及び蓋2をその中心軸α回りに回転させながら、レーザ光Lをミラー529を介して蓋2の周壁21の縁端近傍の部位に照射する(
図24)。レーザ光Lの照射は、その照射位置が蓋2の周壁21に沿って複数周回(例えば、二周)巡回するまで続行する。この結果、鍔状をなすシート20の残部23を蓋2の開口部から切り落とすことができる。蓋2から切り離されたシート20の残部23は、後に吸引して除去される。
【0059】
圧着ユニットHは、上記の蓋加工工程に引き続き、蓋2の周壁21を外側方から内側方に向けて押圧し、蓋2の周壁21の内面をカップ1の周壁11の外面に対して圧着する圧着工程を営む。
図25ないし
図27に示すように、圧着ユニットHにおいては、蓋2の周壁21を押圧するための圧着機構533が、Y軸方向に沿って側方から、回転台522の軸体524に吸着したカップ1及び蓋2の近傍に移動する(
図26)。圧着機構533は、カップ1及び蓋2を取り巻くように配置している複数個(図示例では、三個)の圧着ローラ534と、各圧着ローラ534に内蔵したヒータ535と、それら圧着ローラ534及びヒータ535を支持するローラ支持体536とを有している。圧着ローラ534はそれぞれ、鉛直軸回りに回動することが可能である。ヒータ535は、圧着ローラ534の外周面の温度を高める働きをする。ローラ支持体536は、支持している各圧着ローラ534を当該ローラ支持体536の中央に向かって水平移動させ、また中央から離反するように水平移動させることのできるエアチャックを要素とする。
【0060】
圧着工程では、ローラ支持体536の中央の直下にカップ1及び蓋2が所在するように圧着機構533を位置づけ、ローラ支持体536が支持する各圧着ローラ534の外周面を蓋2の周壁の外面に臨ませる。そして、ローラ支持体536が備えるエアチャックにより各圧着ローラ534をローラ支持体536の中央に向かって変位させる(
図27)。即ち、各圧着ローラ534の外周面を蓋2の周壁21の外面に接触させ、かつそれら圧着ローラ534により蓋2の周壁21を外側方から挟み付ける。しかる後、カップ1及び蓋2を吸着している回転台522の軸体524を回転駆動し、圧着ローラ534に挟み付けられている蓋2及びカップ1をその中心軸α回りに回転させる。これにより、圧着ローラ534を介して蓋2の周壁21を加温しながらカップ1の周壁11に向けて押圧することができる。
【0061】
蓋2の周壁21のカップ1の周壁11に対する圧着が終了し、成形品3、4をカップ1及び蓋2で包んだラッピング錠が完成したら、エアチャックを駆動して各圧着ローラ534をローラ支持体536の中央から離反する方向に変位させて、各圧着ローラ534による挟圧からカップ1及び蓋2を解放する。その後、圧着機構533は原位置に退避する。また、回転台522の軸体524は下降し、かつ移送体514は上昇する。このとき、ピストン525が軸体524に対して相対的に上方に変位することから、カップ1の底壁12を軸体524の先端面に吸着していた負圧が消失する。なお、移送体514の上面における軸孔515の開口の周縁に係合していたシート20の残部23が既に蓋2から切り離されているが、蓋2の周壁21の外径即ち完成したラッピング錠の外径は移送体514の軸孔515の内径よりも若干大きいため、完成したラッピング錠は軸孔515内に落ち込むことなく、移送体514の上面よりも上方に露出した状態に支持されながら移送体514とともに上昇することとなる。
【0062】
なお、圧着ユニットHにおいて、圧着ローラ534を加温するヒータ535は必須ではない。圧着ローラ534を加温せずとも、蓋2の周壁21をカップ1の周壁11に十分に強固に接着できるのであれば、ヒータ535を圧着ローラ534に内蔵することは不要となる。
【0063】
さらには、圧着ユニットH及び圧着工程自体も必須ではない。蓋成形工程にて、成形品3、4が挿入されたカップ1を雄型としてシートから蓋2を成形するときに、蓋2の周壁21の内面がカップ1の周壁11の外面に十分に強固に接着されるならば、圧着工程を実施せずともよく、圧着機構533を含む圧着ユニットHを廃することができる。
【0064】
最後に、移送機構513の移送体514が、完成したラッピング錠を、本製造装置(のラッピングカプセル成形機500)における製品回収位置まで移送する。そして、完成したラッピング錠を、当該製品回収位置に設置している排出口(シュート)に落とし込む。
【0065】
カップ1の成形工程では、シート10を雄型507に対して相対的に移動させ、シート10を雄型507に押し当てることで、シート10から容積を持つカップ1を突出させる。上記実施形態では、雄型507を固定した上でシート10を雄型507に向けて移動(下降)させるようにしていたが、シート10を固定した上で雄型507をシート10に向けて移動させてもよいし、シート10及び雄型507の双方を互いに相寄る方向に移動させてもよい。
【0066】
また、蓋2の成形工程では、シート20を成形品3を挿入したカップ1に対して相対的に移動させ、当該カップ1を雄型としてシート20を押し当てることで、シート20から容積を持つカップたる蓋2を突出させる。上記実施形態では、雄型となる成形品3を挿入したカップ1を固定した上でシート20を当該カップ1に向けて移動(下降)させるようにしていたが、シート20を固定した上で成形品3を挿入したカップ1をシート20に向けて移動させてもよいし、シート20及びカップ1の双方を互いに相寄る方向に移動させてもよい。
【0067】
本実施形態の封入容器1、2の製造方法では、内容物3が収められたカップ1の開口部を封止するための蓋2の材料であってカップ1の周壁11の外面に密接する内面となる側に予め接着層24が設けられているシート20から、カップ1を覆う蓋2を成形するとともに、前記蓋2の周壁21の内面を前記カップ1の周壁11の外面に対して接着する。本実施形態における封入容器1、2の製造装置は、内容物3が収められたカップ1の開口部を封止するための蓋2の材料であってカップ1の周壁11の外面に密接する内面となる側に予め接着層24が設けられているシート20から、カップ1を覆う蓋2を成形する蓋成形ユニットFを具備する。
【0068】
本実施形態によれば、蓋成形工程及び/または圧着工程で生じる熱で、カップ1と蓋2とがシート20に予め設けている接着層24を介して確実に接着される。カップ1と蓋2とを接合する時点で改めて接着剤を塗布する必要がないため、接着剤の溶媒として使用されるエタノールや水がカップ1に収めた内容物30を変質させたり菌の繁殖を招いたりすることもない。接着剤の塗布に伴って水溶性のカップ1や蓋2が溶損する問題も回避できる。
【0069】
蓋成形工程では、内容物3が収められたカップ1を雄型とし、そのカップ1の開口部を前記シート20側に向けた状態でシート20をカップ1に対して相対的に移動させ、シート20を当該カップ1に押し当てることで、シート20から容積を持つ蓋2を突出させる。これにより、蓋2の成形と同時に蓋2をカップ1に対して接合することができる。しかも、蓋2を成形する際に生じる熱を利用して、カップ1と蓋2との接合を促進することが可能である。
【0070】
さらに、前記蓋2の成形後の圧着工程にて、蓋2の周壁21の内面を前記カップ1の周壁11の外面に対して圧着する圧着工程を営むようにすれば、カップ1に対して蓋2をより一層強固に接着することができる。
【0071】
カップ1及び蓋2の材料となるシート10、20はそれぞれ、熱可塑性高分子材料を素材とするフィルム、例えば、ピプロメロースまたはポリビニルアルコールを素材とするフィルムである。医薬の製剤を製造する場合には、服用した人の体内で溶解する素材のフィルムである。
【0072】
なお、上記実施形態では、粉体圧縮工程を営む粉体圧縮成形機600において、内容物たる成形品3をカップ1に挿入する挿入工程をも実施していた。だが、粉体圧縮成形機600内ではなく、粉体圧縮成形機600外で挿入工程を実施することも考えられる。
【0073】
その場合には、挿入工程を営む挿入ユニットDを、例えばラッピングカプセル成形機500内に設けておく。
図28ないし
図30に示すように、当該挿入ユニットDにおいては、複数個の成形品3を上下方向に沿って直列させて保持できるマガジン516に、予め成形した成形品3を貯留しておく。この成形品3は、粉体圧縮成形機600を使用して粉体30を圧縮したものであってもよいし、成形機600とは異なる粉体圧縮成形機を使用して粉体30を圧縮したものであってもよい。何れにせよ、当該成形品3を成形するべく粉体30を圧縮する工程は粉体圧縮工程に該当し、当該粉体圧縮工程を実施するために使用する粉体圧縮成形機は粉体圧縮ユニットに該当する。
【0074】
カップ成形ユニットAにおけるカップ成形工程を経た後、軸孔515にカップ1を収容して支持している移送機構513の移送体514は、当該カップ1を粉体圧縮成形機600内の挿入ユニットCではなくラッピングカプセル成形機500内の挿入ユニットDまで移送する。このとき、移送体514は、マガジン516を載置している基台517の下方に進入する(
図29)。基台517における、マガジン516の傍らの位置には、上下方向に貫通した投入口518を穿ってある。投入口518の内径は、カップ1を支持する基台517の上端部の外径に略等しい。基台517の下方に進入した移送体514の軸孔515及びカップ1の中心軸αは、基台517の投入口518と同軸となる。その後、移送体514を上昇させ、その上端部を基台517の投入口518に下方から挿入する。このとき、移送体514の上面の高さが基台517の上面の高さと略面一となる。
【0075】
次に、マガジン516の最下部に位置する駆動体519が、X軸方向に沿った側方から投入口518及び移送体514の直上の位置まで進出する。駆動体519は、カップ1に挿入するべき成形品3一個分またはそれよりも若干小さな厚みを有した平板な部材であり、その端部に上下方向に貫通した捕捉孔520を穿ってある。捕捉孔520の内径は、成形品3の外径に略等しい。駆動体519の捕捉孔520が、マガジン516に保持された複数個の成形品3の直下に位置しているとき、それら複数個の成形品3のうちの最下位の一個が捕捉孔520内に落下して捕捉孔520に捕捉される。その上で、この駆動体519が投入口518及び移送体514の直上の位置に進出すると、捕捉孔520及びこれに捉えている成形品3の中心軸と、移送体514の軸孔515及びカップ1の中心軸αとが同軸となる。
【0076】
その状態で、投入口518の上方に控えている棒状のプッシャー521を降下させ、その先端部(下端部)で捕捉孔520内の成形品3をカップ1内に上方から突き込む(
図30)。結果、カップ1内に成形品3が挿入される。
【0077】
成形品4をカップ1に押し入れたプッシャー521が上昇した後、駆動体519が原位置に退避する。このとき、駆動体519の捕捉孔520が、マガジン516に保持された複数個の成形品3の直下の位置に復帰して、新たな一個の成形品3を迎え入れる。成形品3が挿入されたカップ1を支持している移送体514は降下し、その上端部が投入口518から脱出する。しかる後、移送体514は、カップ加工ユニットEにおける回転台522の上方に移動することとなる。
【0078】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。本発明に係る製剤の製造方法及び製造方法は、複数種類の粉体を配合する配合剤や、複数種類の粉体を積層する積層剤の製造にも有用である。例えば、一個のカップ1に複数個の成形品を挿入することで、二種以上の有効成分をカップ1内に封入した配合剤または積層剤を簡便に製造することができる。また、カップ1内に、一個または複数個の成形品とともに、圧縮成形していない粉体やフィルム等を封入することも考えられる。
【0079】
カップ1に、粉体を圧縮してなる成形品を挿入するのではなく、圧縮成形していない粉体、液体、ゾル、ゲル等を充填し、そのカップ1を蓋2で封止して製剤を製造することも許される。要するに、カップ1及び蓋2を要素とするラッピングカプセルの内容物は、粉体を圧縮した成形品に限定されない。
【0080】
上記実施形態における粉体圧縮ユニットBを構成する成形機は竪型式粉体圧縮成形機600であったが、粉体圧縮ユニットを構成する成形機として回転式粉体圧縮成形機を採用してもよい。
【0081】
上記実施形態では、テープ502からカップ1の材料となるシート10を切り出す加工を行うためのレーザ装置、シート10の余剰部分を切り落とす加工を行うためのレーザ装置、カップ1の開口縁から残部13を切り落とす加工を行うためのレーザ装置、テープ530から蓋2の材料となるシート20を切り出す加工を行うためのレーザ装置、シート20の余剰部分を切断する加工を行うためのレーザ装置、及び蓋2の開口縁から残部23を切り落とす加工を行うためのレーザ装置が共通であり、残部13、23を切り落とす加工の際にレーザ光Lの光軸の向きを変えるべくミラー(または、プリズム)529を用いていた。だが、これらの加工を必ずしも同一のレーザ装置を使用して実行する必要はなく、複数のレーザ装置を実装することで生産能力の向上を目論んでもよいことは言うまでもない。
【0082】
また、本発明に係る製造方法または製造装置により製造する対象は、医薬には限定されない。本発明を、医薬以外の製剤の製造に利用しても構わない。
【0083】
その他、各部の具体的構成や具体的な処理の手順は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…カップ
10…シート
11…周壁
13…シートの残部
2…蓋
20…シート
21…周壁
23…シートの残部
24…接着層
3…内容物(成形品)
F…蓋成形ユニット
H…圧着ユニット