(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164699
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】低反射部材、並びにそれを用いた表示装置及び物品
(51)【国際特許分類】
G02B 1/113 20150101AFI20221020BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20221020BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221020BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G02B1/113
G02B1/18
B32B7/023
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022126323
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2018039789の分割
【原出願日】2018-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 智之
(72)【発明者】
【氏名】松井 清隆
(72)【発明者】
【氏名】三上 豪一
(57)【要約】
【課題】反射防止性に優れ、ペンでの筆記適性を有し、簡易的な手法での汚れ除去性を長期に渡って持続し得る低反射部材を提供する。
【解決手段】透明プラスチックフィルム上に、無機化合物を含む低屈折率層を有する低反射部材であって、前記低屈折率層の前記光透過性基材とは反対側の面に離型層を有し、前記離型層は前記低反射部材の最表面に位置し、前記低反射部材の前記離型層側の表面の反射率が2.0%以下であり、かつ、下記条件等を満たす、低反射部材。
<条件>
サンプルの離型層側の表面を油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、サンプルの離型層側の表面のうち、少なくとも油性マーキングペンで筆記した領域の全てが水で覆われるように、スポイトで水を滴下する。水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックフィルム上に、無機化合物を含む低屈折率層を有する低反射部材であって、前記低屈折率層の前記光透過性基材とは反対側の面に離型層を有し、前記離型層は前記低反射部材の最表面に位置し、前記低反射部材の前記離型層側の表面の反射率が2.0%以下であり、かつ、下記条件1~3を満たす、低反射部材。
<条件1>
低反射部材を5.0cm×5.0cmの大きさにカットしたサンプルAを作製する。サンプルAの離型層側の表面の中央部1.0cm×1.0cmの領域を、JIS S6037:2006の「3.b)インキの区分による種類」が油性であり、「4.品質」及び「5.材料及び構造」の条件を満たす油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、離型層表面の油性マーキングペンで筆記した領域を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で5往復摩擦した際に、インクが離型層の表面に残存する。
<条件2>
条件1と同様に、サンプルAの離型層側の表面を油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、サンプルAの離型層側の表面のうち、少なくとも油性マーキングペンで筆記した領域の全てが水で覆われるように、スポイトで水を滴下する。水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルAを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
<条件3>
サンプルAの離型層の表面を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で1000往復摩擦したものをサンプルBとする。サンプルAをサンプルBに変更した以外は条件2と同様の作業を行った際に、水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルBを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低反射部材、並びにそれを用いた表示装置及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置等の表示装置、ショーケース等では、視覚対象物(例えば、表示装置では画像;ショーケースでは各種の物品)の視認性を良好にするために、表面に反射防止処理がされる場合がある。
このような反射防止処理としては、シリカ等の反射率の低い材料を含む低屈折率層を表示装置等の表面に形成する手段が挙げられる(特許文献1)。
【0003】
一方、表示装置、ショーケース等では、表面に防汚処理が施される場合もある。防汚処理としては、フッ素系樹脂等の撥水性及び撥油性を有する材料を含む防汚層を表示装置等の表面に形成する手段が挙げられる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-161893号公報
【特許文献2】特開2011-225499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の低屈折率層は、反射防止性には優れるものの、汚れが付着した際の汚れの除去性に劣るという問題があった。また、低屈折率無機粒子及びバインダー樹脂からなる低屈折率層は、屈折率を低くするために多量の低屈折率無機粒子を含むことから、耐擦傷性が十分ではないという問題があった。
【0006】
特許文献2の防汚層は、水及び油をはじき、所定の防汚性を有するものである。しかし、特許文献2のように撥水性及び撥油性に優れる防汚層は、水及び油を拭取ろうとする際に、はじいた水及び油が防汚層の表面を転がるように動くため、汚れを簡単に除去できるとはいえないものであった。また、特許文献2のようなフッ素系樹脂からなる防汚層は、耐擦傷性に劣り、防汚性の持続性が十分ではない傾向がある。
さらに、特許文献2のように撥水性及び撥油性に優れる防汚層は、水性インク及び油性インクをはじいてしまうため、ペンで情報を筆記できないという問題がある。近年、ホワイトボードや投射スクリーン上に筆記した情報をパソコン画面に取り込むアプリケーション、及び、タブレット端末の表面に筆記した情報を会議の参加者で共有するアプリケーションが提案されている。これらのアプリケーションに対応するためには、ペンでの筆記性と、ペンの除去性との両立が求められるが、特許文献2の防汚層では対応することができない。
【0007】
なお、汚れを簡易的に除去する技術として、酸化チタン光触媒のセルフクリーニング機能が挙げられる。しかし、酸化チタンは屈折率が高いため、反射防止性、光透過及び低ヘイズという点では不向きな材料である。また、酸化チタンは光触媒活性によりプラスチックフィルム及びバインダー樹脂を経時的に劣化させてしまう問題がある。さらに、酸化チタン光触媒によるセルフクリーニング機能は、該機能を発現させるために酸化チタン光触媒に紫外線を照射して活性化する必要があり、かつ紫外線の照射時間も10分程度は必要なため、屋内環境で短時間かつ簡易に汚れを除去できるとはいえないものであった。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、反射防止性に優れ、ペンでの筆記適性を有し、簡易的な手法での汚れ除去性を長期に渡って持続し得る低反射部材、並びに該低反射部材を用いた表示装置及び物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明は、以下の[1]~[3]を提供する。
[1]透明プラスチックフィルム上に、無機化合物を含む低屈折率層を有する低反射部材であって、前記低屈折率層の前記光透過性基材とは反対側の面に離型層を有し、前記離型層は前記低反射部材の最表面に位置し、前記低反射部材の前記離型層側の表面の反射率が2.0%以下であり、かつ、下記条件1~3を満たす、低反射部材。
<条件1>
低反射部材を5.0cm×5.0cmの大きさにカットしたサンプルAを作製する。サンプルAの離型層側の表面の中央部1.0cm×1.0cmの領域を、JIS S6037:2006の「3.b)インキの区分による種類」が油性であり、「4.品質」及び「5.材料及び構造」の条件を満たす油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、離型層表面の油性マーキングペンで筆記した領域を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で5往復摩擦した際に、インクが離型層の表面に残存する。
<条件2>
条件1と同様に、サンプルAの離型層側の表面を油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、サンプルAの離型層側の表面のうち、少なくとも油性マーキングペンで筆記した領域の全てが水で覆われるように、スポイトで水を滴下する。水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルAを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
<条件3>
サンプルAの離型層の表面を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で1000往復摩擦したものをサンプルBとする。サンプルAをサンプルBに変更した以外は条件2と同様の作業を行った際に、水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルBを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
[2]上記[1]に記載の低反射部材を有する表示装置。
[3]上記[1]に記載の低反射部材の離型層が表面を向くように配置されてなる物品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反射防止性に優れ、ペンでの筆記適性を有し、簡易的な手法での汚れ除去性を長期に渡って持続し得る低反射部材、表示装置及び物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の低反射部材の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の低反射部材の他の実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明の表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】離型層の表面に筆記したインクが水の滴下後に離型層から浮かび上がった状態、並びに、筆記したインクが水とともに流動した状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[低反射部材]
本発明の低反射部材は、透明プラスチックフィルム上に、無機化合物を含む低屈折率層を有する低反射部材であって、前記低屈折率層の前記光透過性基材とは反対側の面に離型層を有し、前記離型層は前記低反射部材の最表面に位置し、前記低反射部材の前記離型層側の表面の反射率が2.0%以下であり、かつ、下記条件1~3を満たすものである。
<条件1>
低反射部材を5.0cm×5.0cmの大きさにカットしたサンプルAを作製する。サンプルAの離型層側の表面の中央部1.0cm×1.0cmの領域を、JIS S6037:2006の「3.b)インキの区分による種類」が油性であり、「4.品質」及び「5.材料及び構造」の条件を満たす油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、離型層表面の油性マーキングペンで筆記した領域を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で5往復摩擦した際に、インクが離型層の表面に残存する。
<条件2>
条件1と同様に、サンプルAの離型層側の表面を油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、サンプルAの離型層側の表面のうち、少なくとも油性マーキングペンで筆記した領域の全てが水で覆われるように、スポイトで水を滴下する。水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルAを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
<条件3>
サンプルAの離型層の表面を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で1000往復摩擦したものをサンプルBとする。サンプルAをサンプルBに変更した以外は条件2と同様の作業を行った際に、水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルBを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
【0013】
図1及び
図2は、本発明の低反射部材の一実施形態を示す断面図である。
図1及び
図2の低反射部材100は、透明プラスチックフィルム10上に、ハードコート層20、低屈折率層30及び離型層40をこの順に有している。また、
図2の低反射部材100は、透明プラスチックフィルム10の両面に、ハードコート層20、低屈折率層30及び離型層40を有している。
なお、本発明の低反射部材は、
図1及び
図2の実施形態に限定されない。例えば、透明プラスチックフィルム10と低屈折率層30との間にはハードコート層20を有さなくてもよい。また、低屈折率層30及び離型層40は、透明プラスチックフィルム10の全面に形成する必要はなく、透明プラスチックフィルム10の少なくとも一部にこれらの層を有していてもよい。また、低反射部材は、後述する高屈折率層等の他の層を有していてもよい。
【0014】
<反射率>
本発明の低反射部材は、離型層側の表面の反射率が2.0%以下であることを要する。
反射率が2.0%を超える場合、反射防止性能が不十分となり、視覚対象物(例えば、表示装置では画像、ショーケースでは各種の物品)の視認性を良好にすることができない。
低反射部材の離型層側の表面の反射率は1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。
なお、低反射部材の反射率を低くすることは、低反射部材の光透過率を高くできる点でも好ましい。
【0015】
本明細書において、反射率とは、CIE1931標準表色系の視感反射率Y値のことをいい、10箇所測定の平均値をいうものとする。
また、本明細書において、低反射部材の離型層側の表面の反射率は、低反射部材の反射率測定面とは反対側に、透明粘着剤層を介して黒色板を貼り合わせたサンプルを作製し、該サンプルの離型層側から入射角5°で光を入射させて測定するものとする。反射率を測定する際の光源はD65とすることが好ましい。
サンプルの透明粘着剤層と接する部材(例えば透明プラスチックフィルム)と、透明粘着剤層との屈折率差は0.15以内とすることが好ましく、0.10以内とすることがより好ましい。また、黒色板は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が1%以下のものが好ましく、0%のものがより好ましい。また、黒色板を構成する樹脂の屈折率と、透明粘着剤層との屈折率差は0.15以内とすることが好ましく、0.10以内とすることがより好ましい。
【0016】
離型層側の表面の反射率を2.0%以下としやすくするためには、離型層の厚み及び屈折率を後述する範囲とすることが好ましい。
【0017】
本発明の低反射部材は、下記の条件1を満たすことを要する。
<条件1>
低反射部材を5.0cm×5.0cmの大きさにカットしたサンプルAを作製する。サンプルAの離型層側の表面の中央部1.0cm×1.0cmの領域を、JIS S6037:2006の「3.b)インキの区分による種類」が油性であり、「4.品質」及び「5.材料及び構造」の条件を満たす油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、離型層表面の油性マーキングペンで筆記した領域を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で5往復摩擦した際に、インクが離型層の表面に残存する。
【0018】
条件1を満たすことは、低反射部材の離型層側の表面に対して油性マーキングペンで筆記することができ、かつインクが十分に密着していることを示している。
また、条件1を満たし、かつ後述する条件2を満たすことは、油性マーキングペンのインクが十分に密着しつつ、水の滴下という簡易な作業によりインクを除去できることを示している。
【0019】
条件1において、「離型層表面の油性マーキングペンで筆記した領域を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で5往復摩擦した際に、インクが離型層の表面に残存する。」とは、インクが100%残存することを意味するものではない。例えば、離型層に筆記されたインク成分の総量を100質量部とした場合、筆記した領域をネル布で5往復摩擦した後に、ネル布側に移ったインク量が1質量部以下であれば、条件1を満たすものとする。
条件1~3で使用する“JIS S6037:2006の「3.b)インキの区分による種類」が油性であり、「4.品質」及び「5.材料及び構造」の条件を満たす油性マーキングペン”としては、例えば、ゼブラ社製の商品名「マッキー極細」のインク色「黒」が挙げられる。
【0020】
条件1、3及び4において、ネル布は、12.0cm×12.0cmのものを縦横1回ずつ折り畳み、3.0cm×3.0cmの大きさとしたものを用いることが好ましい。
【0021】
条件1を満たしやすくするためには、離型層を後述する材料から形成すること、離型層の厚みを後述する範囲とすること、低屈折率層と離型層との密着性を良好にすることが好ましい。
【0022】
本発明の低反射部材は、下記の条件2を満たすことを要する。
<条件2>
条件1と同様に、サンプルAの離型層側の表面を油性マーキングペンで筆記して塗りつぶす。筆記後60秒経過した後、サンプルAの離型層側の表面のうち、少なくとも油性マーキングペンで筆記した領域の全てが水で覆われるように、スポイトで水を滴下する。水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルAを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
【0023】
図4(a)は、油性マーキングペンで筆記した領域に水を滴下してから10秒経過後の状態を示す写真である。
図4(a)のようにインクが離型層の表面から完全に剥離した状態となれば、低反射部材を傾けることによって、インクは水とともに流動する。
図4(b)は、低反射部材を傾けて、筆記したインクが水とともに流動した状態を示す写真である。
図4(a)及び(b)の赤枠は、1.0cm×1.0cmの目印として、低反射部材の下方に設置した紙に筆記したものである。また、
図4(a)及び(b)において、紙の下方には表面が平滑な樹脂板(2mm×100mm×100mm)が配置され、低反射部材は該樹脂板(2mm×100mm×100mm)の四辺で固定されている。また、
図4(a)及び(b)において目盛り代わりに設置している定規は、低反射部材上に固定している。
図4(b)において低反射部材を傾ける際は樹脂板を掴んで傾けた。
なお、低反射部材を傾ける速度によっては、インクは元の箇所から流動するものの、サンプル内の元の箇所から少し移動した箇所に残る場合がある。しかし、この場合、水洗したり、濡れた布で軽く拭取ったりすることにより、移動したインクを簡単に除去できる。
このように、条件2を満たすことは、水の滴下、短時間の待機、筆記性部材の傾斜という極めて簡易な作業によって、低反射部材表面に付着した汚れを除去し得ることを意味している。
なお、条件2及び後述する条件3及び4においては、滴下する水はイオン交換水とすることが好ましい。また、1.0cm×1.0cmの筆記領域上には、1ml以上の水を滴下することが好ましい。
【0024】
近年、ホワイトボードや投射スクリーン上に筆記した情報をパソコン画面に取り込むアプリケーション、及び、タブレット型の表示装置の表面に筆記した情報を会議の参加者で共有するアプリケーションが提案されている。これらのアプリケーションに対応するためには、ペンでの筆記性と、ペンの除去性との両立が求められる。条件1及び条件2を満たすことは、これらのアプリケーションに対応し得る点で好ましい。
また、ショーケース及びショーウィンドウにおいては、商品等の情報を顧客等に示すために、ペンで筆記でき、消去できる性能も求められる。特に、インクの定着性に優れ、濃度が高く目立つ筆記をしやすい、油性マーキングペンでの筆記性及び消去性を有することが好ましい。条件1及び条件2を満たすことは当該性能を満たす上でも好ましい。
また、条件2を満たすことは、様々な油系の汚れ(指紋成分、化粧品成分、ペンキ、排気ガス成分、動物の糞尿)を、水で簡易に除去し得ることを意味している。よって、人が手で触れることが多い携帯型情報端末(特に、タッチパネル機能付きの携帯型情報端末)、ショーケース、ショーウィンドウ及び窓の表面、並びに、屋外に面して使用されるショーウィンドウ及び窓の表面において、本発明の低反射部材を適用することが有用である。
【0025】
条件2は、水の滴下が完了してから5秒経過した後、サンプルAを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動することが好ましい。
条件2を満たしやすくするためには、離型層を後述する材料から形成すること、離型層の厚みを後述する範囲とすることが好ましい。
【0026】
なお、汚れを簡易的に除去する技術として、酸化チタン光触媒のセルフクリーニング機能が挙げられる。しかし、酸化チタンは屈折率が高いため、反射防止性、光透過及び低ヘイズという点では不向きな材料である。また、酸化チタンは光触媒活性によりプラスチックフィルムやバインダー樹脂を経時的に劣化させてしまう問題がある。さらに、酸化チタン光触媒によるセルフクリーニング機能は、該機能を発現させるために酸化チタン光触媒に紫外線を照射して活性化する必要があり、かつ紫外線の照射時間も10分程度は必要なため、屋内環境で短時間かつ簡易に汚れを除去できるとはいえないものである。
また、低屈折率層上に水溶性を有する材料からなる塗膜を形成し、該塗膜を水で溶解させることによって、最表層に付着した汚れを除去する手段も考えられる。しかし、該手段では、1度しか汚れを除去できない。また、該手段では1回汚れを除去した後に低屈折率層が露出し、低屈折率層が傷つきやすくなるため、徐々に反射防止性が低下してしまう。
【0027】
本発明の低反射部材は、下記の条件3を満たすことを要する。
<条件3>
サンプルAの離型層の表面を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で1000往復摩擦したものをサンプルBとする。サンプルAをサンプルBに変更した以外は条件2と同様の作業を行った際に、水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルBを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
【0028】
条件3は、離型層の表面をネル布で多くの回数擦っても、条件2の特性を維持することを示している。言い換えると、条件3を満たすことは、簡易的な手法での汚れ除去性を長期に渡って持続し得ることを意味している。
【0029】
近年の表示装置はタッチパネル機能が標準的に搭載されているものが多い。そして、タッチパネル機能を搭載した表示装置は、表面に皮脂が付着して汚れやすいため、毎日のように多数回拭取られる。また、ショーケース、ショーウィンドウ及び窓では、視認性を良好にするために、表面の清掃は毎日のように行われる。
したがって、条件3を満たすことは、タッチパネル機能を搭載した表示装置、ショーケース、ショーウィンドウ及び窓に適する点で好ましい。
なお、本明細書において「ショーケース」とは、通常の状態で内部が視認可能な箱体を意味し、冷蔵庫や冷凍庫を含む概念である。
【0030】
条件3は、水の滴下が完了してから5秒経過した後、サンプルAを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動することが好ましい。
条件3を満たしやすくするためには、低反射部材表面(離型層表面)の耐擦傷性を高くすることが好ましい。
透明プラスチックフィルムは親油性であるため、通常は、透明プラスチックフィルムと離型層とは密着性が十分ではなく、透明プラスチックフィルム上に離型層を形成しても、離型層は耐擦傷性も劣る場合が多い。本発明では、透明プラスチックフィルムと離型層との間に低屈折率層を介在させ、かつ、低屈折率層の表面に後述する処理を行うことにより、低屈折率層と離型層との密着性を良好なものとして、ひいては、低反射部材表面(離型層表面)の耐擦傷性を高くして、条件3を満たしやすくしている。
【0031】
本発明の低反射部材は、さらに下記条件4を満たすことが好ましい。
<条件4>
サンプルAの離型層の表面を綿300番のネル布を用いて荷重500g/cm2で5000往復摩擦したものをサンプルCとする。サンプルAをサンプルCに変更した以外は条件2と同様の作業を行った際に、水の滴下が完了してから10秒経過した後、サンプルCを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動する。
【0032】
条件4は、水の滴下が完了してから5秒経過した後、サンプルAを水平面から45°傾けた際に、筆記したインクが水とともに流動することが好ましい。
【0033】
<透明プラスチックフィルム>
透明プラスチックフィルムは、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等の樹脂から形成することができる。
これら透明プラスチックフィルムの中でも、機械的強度及び寸法安定性の観点からは、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
【0034】
透明プラスチックフィルムの厚みは、5~500μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましい。
また、透明プラスチックフィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0035】
透明プラスチックフィルムは、該フィルム上に形成する層との密着性を向上させる観点から、片面又は両面に、酸化法や凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理等の易接着処理が施されていてもよい。また、同様の観点から、透明プラスチックフィルム上には易接着層を形成することも好ましい。
【0036】
<低屈折率層>
低屈折率層は、ウェット法で形成したものと、ドライ法で形成したものとに大別できる。
ウェット法としては、金属アルコキシド等を用いてゾルゲル法により形成する手法、フッ素樹脂のような低屈折率の樹脂を塗布して形成する手法、バインダー樹脂組成物に低屈折率無機粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液を塗布して形成する手法が挙げられる。
ドライ法としては、後述する低屈折率無機粒子の中から所望の屈折率を有する材料を選び、該材料を用いて、物理気相成長法又は化学気相成長法により形成する手法が挙げられる。
ウェット法は生産効率の点で優れている。また、ウェット法により形成した低屈折率層は、離型層の塗工適性に優れる点で好適である。さらに、ウェット法により形成した低屈折率層は、直下の層(例えば、透明プラスチックフィルム、ハードコート層、高屈折率層)との密着性を良好にしやすい点で好適である。
また、ウェット法の中でも、無機化合物としての低屈折率無機粒子と、バインダー樹脂組成物を含有させた低屈折率層形成用塗布液を用いて形成する手法が好ましい。すなわち、低屈折率層は、無機化合物としての低屈折率無機粒子と、バインダー樹脂とを含むことが好ましい。
【0037】
低屈折率無機粒子の平均一次粒子径は、5~200nmが好ましく、10~150nmがより好ましい。また、低屈折率無機粒子が中空粒子の場合、平均一次粒子径は、5~200nmが好ましく、30~150nmがより好ましく、40~110nmであることがさらに好ましい。平均一次粒子径が前記範囲であれば、低屈折率層の厚みを均一にしやすくできる。
【0038】
低屈折率無機粒子及び後述する高屈折率粒子の平均一次粒子径は、以下の(1)~(3)の作業により算出できる。
(1)低反射部材の断面をTEM又はSTEMで撮像する。TEM又はSTEMの加速電圧は10kv~30kV、倍率は5万~30万倍とすることが好ましい。
(2)観察画像から任意の10個の一次粒子を抽出し、個々の一次粒子の粒子径を算出する。粒子径は、一次粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の数平均から得られる値を一次粒子の平均粒子径とする。
【0039】
低屈折率無機粒子としては、シリカ及びフッ化マグネシウム等が挙げられる。
低屈折率無機粒子は、反射率を低下させる観点から、空隙を有するものが好ましい。空隙を有する無機粒子は、微細な空隙を内部に有し、空隙の中に空気を含むため、屈折率が低いものとなっている。空隙を有する無機粒子としては、多孔質無機粒子及び中空無機粒子が挙げられ、なかでも中空無機粒子が好ましい。また、中空無機粒子の中でも中空シリカが好ましい。
【0040】
中空無機粒子とは、無機化合物からなる外殻層を有し、当該外殻層に囲まれた粒子内部が空洞であり、粒子内部に空気を含む粒子をいう。
中空無機粒子の形状は、真球状、回転楕円体状及び球体に近似できる多面体形状等の略球状、鎖状、針状、板状、片状、棒状、繊維状等のいずれであってもよい。なかでも、真球状及び略球状であることが好ましく、回転楕円体状又は真球状であることがより好ましい。
【0041】
中空無機粒子は、屈折率を低くできる一方で、その他の低屈折率無機粒子に比べて、耐水性及び耐擦傷性に劣る傾向がある。特に、空気の比率を高めた粒子径の大きい中空粒子を用いた場合、低屈折率層の耐水性及び耐擦傷性を低下させやすい。
しかしながら、本発明の低反射部材は、低屈折率層が中空無機粒子を含む場合においても、低屈折率層上に位置する離型層によって、中空無機粒子の弱点(耐水性及び耐擦傷性の低下)を補うことができる。さらに、低屈折率層が中空無機粒子を含む場合において、低屈折率層の表面に後述する処理を行うことにより、低屈折率層と離型層との密着性が良好となり、中空無機粒子の弱点(耐水性及び耐擦傷性の低下)をより補うことができる点で好ましい。
【0042】
低屈折率無機粒子は表面処理されたものであってもよいが、低屈折率層と離型層との密着性を高める観点からは、表面未処理のものが好ましい。
【0043】
低屈折率無機粒子の含有量は、低屈折率層のバインダー樹脂100質量部に対して20~250質量部が好ましく、30~230質量部がより好ましく、40~200質量部がさらに好ましい。
低屈折率無機粒子の含有量を20質量部以上とすることにより、反射防止性を良好にするとともに、低屈折率層と離型層との密着性を良好にしやすくできる。また、低屈折率無機粒子の含有量を250質量部以下とすることにより、低屈折率層の塗膜強度の低下を抑制し、ひいては低反射部材の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
また、低屈折率無機粒子は、中空無機粒子とその他の低屈折率無機粒子とを併用することも可能である。この場合、低屈折率層に含まれる低屈折率無機粒子の全量に対する中空無機粒子の割合は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましく、70質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
低屈折率層のバインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、耐擦傷性をより良くする観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
【0045】
低屈折率層のバインダー樹脂は、離型層との密着性、離型層塗工液の塗布適性の観点から、フッ素成分を実質的に含有しないことが好ましい。
実質的に含有しないとは、低屈折率層のバインダー樹脂の全量に対するフッ素成分のフッ素原子換算の含有量が1質量%以下を意味し、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0046】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0047】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0048】
多官能性(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリレート系モノマーは、分子骨格の一部を変性しているものでもよく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。
【0049】
また、多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
上記電離放射線硬化性化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
電離放射線硬化性化合物が紫外線硬化性化合物である場合には、電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサントン類等から選ばれる1種以上が挙げられる。
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合阻害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0051】
低屈折率層が無機化合物としての低屈折率無機粒子とバインダー樹脂とを含む場合、低屈折率層の表面(低屈折率層の離型層側の面)の少なくとも一部において、低屈折率無機粒子が露出していることが好ましい。低屈折率層の表面から低屈折無機粒子が露出していることにより、低屈折率層と離型層との密着性を良好にしやすくできる。
低屈折率層の表面から低屈折無機粒子を露出させるためには、低屈折率層の形成後に、低屈折率層の表面をコロナ放電処理すること、あるいは、低屈折率層の表面をケン化処理することが好ましい。低屈折率無機粒子とバインダー樹脂とを含む低屈折率層を形成した際には、低屈折率無機粒子の表面はバインダー樹脂によって覆われている。ここで、低屈折率無機粒子の表面を覆っているバインダー樹脂の厚みは、場所によって厚い箇所もあれば薄い箇所もある。そして、低屈折率無機粒子の表面のうちバインダー樹脂で薄く覆われた箇所は、前述したコロナ放電処理やケン化処理によって、薄皮のバインダー樹脂が除去され、低屈折無機粒子が露出するようになる。
【0052】
低屈折率層は、離型層との密着性をより向上し、汚れ除去性をより長期に渡って持続させる観点から、シランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤は、テトラエトキシシラン及びメチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-メタクリロキシプロピルトリエメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤;エポキシ系シランカップリング剤;アミノ系シランカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、耐擦傷性の観点から(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤が好ましい。
【0053】
シランカップリング剤の含有量は、低屈折率層の全固形分の5~60質量%が好ましく、7~45質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。
【0054】
低屈折率層の厚みは、70~120nmであることが好ましく、80~110nmであることがより好ましく、85~105nmであることがさらに好ましい。
低屈折率層の厚みは、例えば、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した断面の画像から20箇所の厚みを測定し、20箇所の値の平均値から算出できる。後述する離型層、ハードコート層及び高屈折率層の厚みも同様にして算出できる。
【0055】
低屈折率層の屈折率は、1.26~1.37であることが好ましく、1.28~1.35であることがより好ましく、1.30~1.33であることがさらに好ましい。
本明細書において、屈折率は、例えば、反射光度計により測定した反射スペクトルと、フレネル係数を用いた多層薄膜の光学モデルから算出した反射スペクトルとのフィッティングにより算出することができる。
【0056】
<離型層>
離型層は、低屈折率層の透明プラスチックフィルムとは反対側に形成される。
離型層は、条件2~4で水を滴下した際に、膨潤又は溶解しないことを要する。
【0057】
離型層は、有機溶媒分散シリカゾルを含む離型層形成組成物の硬化物であることが好ましい。
有機溶媒分散シリカゾルとは、粒子径がナノオーダーのコロイダルシリカを有機溶媒に分散させたコロイド溶液である。有機溶媒分散シリカゾルを含む離型層形成組成物を塗布し、加熱等してシリカゾルを脱水縮合することで、有機溶媒分散シリカゾルを含む離型層形成組成物の硬化物を得ることができる。有機溶媒分散シリカゾルの有機溶媒としては、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、エーテル、飽和炭化水素、不飽和炭化水素等が挙げられる。
シリカゾルの粒子径は離型層の厚みを後述する範囲とする観点から、1~20nmであることが好ましい。
【0058】
有機溶媒分散シリカゾルの具体例としては、日産化学工業社社製の商品名IPA-ST(粒子径約12nm)、IPA-ST-UP(粒子径約9~15nm)、MIBK-ST(粒子径約12nm)、PMA-ST(粒子径約12nm)及びPGM-ST(粒子径約12nm)、MIBK-SD(粒子径約12nm);扶桑化学工業社製の商品名PL-1-IPA(10~15nm)、PL-1-TOL(10~15nm)、PL-1-PGME(10~15nm)、PL-1-MEK(10~15nm);日揮触媒化成社製の商品名スルーリア等が挙げられる。
【0059】
また、離型層は、有機溶媒分散シリカゾルの変性物を含む離型層形成組成物の硬化物であることが好ましい。有機溶媒分散シリカゾルの変性物としては、シリカゾルのシラノールと、下記式(I)で表されるシランカップリング剤とを反応させてなるものが挙げられる。
該変性物(シリカゾルのシラノールと、下記式(I)で表されるシランカップリング剤とを反応させてなるもの)を含む組成物の硬化物は、高レベルの親水性を有する一方で、有機基の存在により油性マーキングペンでの筆記適性を有するため、条件1を満たしやすくできる。また、該変性物を含む組成物の硬化物は、高レベルの親水性を有し、離型層に付着した汚れと離型層の表面との間に水が入り込み、離型層の表面に付着した物を浮かび上がらせることができ、条件2を満たしやすくできる。また、該変性物を含む組成物の硬化物は、低屈折率層との密着性に優れ、低反射部材の耐擦傷性を良好にすることができるため、条件3を満たしやすくできる。さらに、該変性物を含む組成物の硬化物は、屈折率が1.4程度と低いため、反射率を低くしやすくできる。
なお、該変性物を含む組成物の硬化物は、親水性のため水性マーキングペンでの筆記適性も有し、かつ、水を滴下することにより、付着した水性マーキングペンのインクを浮かび上がらせることができるものである。
上述した作用は、「該変性物を含む組成物の硬化物の表面に微小な親水ドメイン及び疎水ドメインを有すること」及び「親水ドメインへの水の配位エネルギー>疎水ドメインとペンの成分との結合力、という関係が成立していること」により生じていると考えられる。また、水を滴下した際に離型層が剥離しない理由は、該変性物と低屈折率層中の無機化合物とが化学的に結合しているためと考えられる。
【0060】
(W)3-k(R)kSi-R1-(X-R2)m-N+(R3)(R4)-R5-Y (I)
[式(I)中、Wは炭素数1~3のアルコキシ基を表し、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、kは0又は1を表し、R1は炭素数1~5のアルキレン基を表し、Xは-NHCOO-、-NHCONH-又は-S-を表し、mは0又は1を表し、R2はエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を含んでも良い炭素数1~10のアルキレン基又は-CH2CH2N+(CH3){(CH2)nY)}CH2CH2OCH2CH2-を表し、R3及びR4は同一又は異なっても良い炭素数1~3のアルキル基を表し、R5はメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はメチレンフェニレン基を表し、Yは-COO-又は-SO3
-を表す。]
【0061】
上記式(I)のR(炭素数1~3のアルキル基)としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。
上記式(I)のR1(炭素数1~5のアルキレン基)としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基が挙げられ、これらの中でもトリメチレン基が好ましい。
上記式(I)のR2としては、エチレン基、トリメチレン基、エチレンオキシエチレン基及び-CH2CH2N+(CH3){(CH2)nY)}CH2CH2OCH2CH2-が好ましい。
上記式(I)のR3及びR4の炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基が好ましい。
【0062】
上記式(I)のシランカップリング剤の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
(CH3O)3SiCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2CH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2OCH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2N+(CH3)(CH2COO-)CH2CH2OCH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCONHCH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCONHCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(CH3O)3SiCH2CH2CH2SCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(CH3O)3SiCH2CH2CH2SCH2CH2COOCH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(CH3O)3SiCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2CH2COO-
(CH3O)3SiCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2C6H4COO-
(C2H5O)2Si(CH3)CH2CH2CH2N+(CH3)2CH2COO-
(CH3O)3SiCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2CH2CH2N+(CH3)2CCH2CH2CH2SO3
-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2OCH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCOOCH2CH2N+(CH3)(SO3
-)CH2CH2OCH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCONHCH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2NHCONHCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(CH3O)3SiCH2CH2CH2SCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(CH3O)3SiCH2CH2CH2SCH2CH2COOCH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
(C2H5O)2Si(CH3)CH2CH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3
-
【0063】
式(I)のシランカップリング剤は、ジアルキルアミノ基含有ケイ素化合物(例えばジメチルアミノ基含有ケイ素化合物)にハロ酢酸化合物、スルトン環化合物又はラクトン環化合物を反応させることにより得ることができる。
【0064】
式(I)のシランカップリング剤を添加する際の温度は限定されないが、約20℃から溶媒の沸点の間とすることが好ましい。
反応温度も限定されないが、約20℃から溶媒の沸点の間とすることが好ましい。
反応時間も限定されないが、10分から48時間が好ましく、6時間から24時間がより好ましい。
【0065】
式(I)のシランカップリング剤を得る際の反応において用いる溶媒としては、エステル系溶媒:酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等、アルコール系溶媒:メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び1,4-ブタンジオール等、エーテル系溶媒:ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン及びジオキサン等、ケトン系溶媒:アセトン及びメチルエチルケトン等、非プロトン溶媒:ジメチルスルホキサイド、N,N-ジメチルホルムアミド等、芳香族系炭化水素溶媒:トルエン及びキシレン等、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0066】
式(I)のシランカップリング剤を得る際の反応温度は、用いる溶媒の沸点あるいはそれ以上が好ましく、沸点以上の温度にするため加圧下で反応を行っても良い。
反応時間は通常6時間から36時間であり、好ましくは8時間から36時間であり、さらに好ましくは8時間から24時間である。
【0067】
式(I)のシランカップリング剤の原料であるジメチルアミノ基含有ケイ素化合物は、市販の物をそのまま使用することができる。
あるいは、市販のジメチルアミノ基含有アルコール(例えば:2-ジメチルアミノエタノール、3-ジメチルアミノプロパノール、4-ジメチルアミノブタノール、2-ジメチルアミノエトキシエタノール及びN,N,N’-トリメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-ビス(2-アミノエチルエーテル等)にイソシアネート基を有するシランカップリング剤(例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)を反応させて-NHCOO-基を有する化合物や市販のジメチルアミノ基含有アミン(例えば、N,N-ジメチルエチレンジアミンやN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン等)にイソシアネート基を有するシランカップリング剤(例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)を反応させて-NHCONH-基を有する化合物を得て使用することができる。
また、ジメチルアリルアミン、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドやN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド等にチオール基含有ケイ素化合物(例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシや3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等)を反応させてチオエーテル基含有ケイ素化合物を得て使用することもできる。
【0068】
シリカゾルのシラノールと、式(I)のシランカップリング剤とを反応させる際の溶媒としては、アルコール系溶媒:メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及び1,4-ブタンジオール等、エーテル系溶媒:ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン及びジオキサン等、ケトン系溶媒:アセトン及びメチルエチルケトン等、非プロトン溶媒:ジメチルスルホキサイド、N,N-ジメチルホルムアミド等、水及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、アルコール系溶媒及び水であり、これらの溶媒は1種又は2種以上で使用できる。
【0069】
溶媒100質量部に対する原料のシリカゾルの量は、好ましくは1~50重量部であり、より好ましくは1~30重量部である。
【0070】
シリカゾルに対する式(I)のシランカップリング剤の量は、シリカゾル1gに対して好ましくは0.1~10.0mmolであり、より好ましくは0.5~5.5mmolである。
0.1mmol以上とすることにより、硬化物の親水性を良好にしやすきでき、10.0mmol以下とすることにより、シランカップリング剤同士の自己縮合を抑制するとともに、シリカゾルのシラノール基の不足に伴って硬化物の硬度が不足し、離型層の耐擦傷性が低下することを抑制できる。
【0071】
上述した有機溶媒分散シリカゾルの変性物(シリカゾルのシラノールと、式(I)のシランカップリング剤とを反応させてなるもの)は、下記式(II)に示す官能基で修飾されたものである。
(-O-)3-k(R)kSi-R1-(X-R2)m-N+(R3)(R4)-R5-Y (II)
式(II)の各符号(k、R、Y等)の実施形態は、上記式(I)の各符号の実施形態と同様である。
【0072】
また、有機溶媒分散シリカゾルの変性物としては、シリカゾルのシラノールと、(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤とを反応させてなるものも挙げられる。
このような(メタ)アクリロイル基を含有するシランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルトリエメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
有機溶媒分散シリカゾルの変性物を含む離型層形成組成物は、さらに、通常の有機溶媒分散シリカゾル及び硬化性樹脂組成物等のその他の硬化成分を含有していてもよい。
離型層形成組成物中に含有する硬化性樹脂組成物は、低屈折率層で例示した硬化性樹脂組成物と同様のものを用いることができる。離型層形成組成物中に硬化性樹脂組成物を含むことにより、低屈折率層との密着性をより高めることができる。
硬化性樹脂組成物の含有量は、離型層の親水性と、低屈折率層との密着性のバランスの観点から、シリカゾルの有効成分100質量部に対して5~30質量部であることが好ましい。
【0074】
離型層形成組成物は、例えば、低屈折率層上に塗布、乾燥した後、シリカゾルを脱水縮合して硬化することができる。シリカゾルの脱水縮合は、熱処理でも進行するが、脱水縮合を促進するためには、塩基及び酸等の触媒を用いることが好ましい。触媒は、離型層形成組成物中に添加してもよいし、離型層の形成後に離型層を触媒雰囲気に晒してもよい。
シリカゾルの脱水縮合の温度条件は特に制限されず、20~250℃の範囲で適宜決定すればよい。
また、離型層形成組成物が硬化性樹脂組成物を含む場合は、シリカゾルの硬化と硬化性樹脂組成物の硬化とを同時に行ってもよいし、何れか一方を先に行ってもよい。
【0075】
離型層の厚みは1~25nmであることが好ましく、3~20nmであることがより好ましく、5~15nmであることがさらに好ましい。
離型層の厚みを1nm以上とすることにより、離型層の耐擦傷性を良好にしやすくできる。また、離型層の厚みを25nm以下とすることにより、反射防止性能の低下を抑制することができる。さらに、離型層の厚みを25nm以下とすることにより、離型層を構成する分子が整然と配列され、高度な親水性を有することになり、条件2を満たしやすくなると考えられる。
【0076】
離型層の屈折率は、1.49以下であることが好ましく、1.46以下であることがより好ましい。上述したように、離型層の厚みを薄くすれば、低屈折率層等に基づく反射防止性能の低下を抑制することができるが、離型層の屈折率を1.49以下とすることにより、反射防止性能の低下をより抑制することができる。
なお、離型層の屈折率の下限は1.30程度である。
【0077】
<ハードコート層>
透明プラスチックフィルムと低屈折率層との間には、耐擦傷性を高めるためにハードコート層を有していてもよい。なお、低屈折率層の透明プラスチックフィルム側に後述する高屈折率層を有する場合、ハードコート層は、透明プラスチックフィルムと高屈折率層との間に形成することが好ましい。
【0078】
ハードコート層は、熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、耐擦傷性をより良くする観点から、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
ハードコート層の熱硬化性樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物は、上述した低屈折率層の熱硬化性樹脂組成物及び電離放射線硬化性樹脂組成物と同様のものを使用することができる。
【0079】
ハードコート層の厚みは、0.1~100μmであることが好ましく、0.5~20μmであることがより好ましく、1~10μmであることがさらに好ましい。ハードコート層の厚みを上記範囲とすることにより、耐擦傷性を良好にしつつ、カールの発生を抑制しやすくできる。
【0080】
ハードコート層の屈折率は、1.45~1.70の範囲で調整することが好ましい。
また、低屈折率層の透明プラスチックフィルム側に接して高屈折率層を有する場合、ハードコート層の屈折率は高屈折率層の屈折率より低くすることが好ましく、1.50~1.65とすることがより好ましく、1.55~1.60とすることがさらに好ましい。ハードコート層の屈折率がこのような範囲にあれば、ハードコート層が中屈折率層としての役割を有し、ハードコート層(中屈折率層)、高屈折率層及び低屈折率層の3層による干渉作用が可能となることから、反射率をより低くすることができる。
【0081】
ハードコート層に中屈折率層としての役割を付与する手段としては、ハードコート層塗布液に屈折率の高い樹脂を配合する手段と、屈折率の高い粒子を配合する手段が挙げられる。
屈折率の高い樹脂としては、上述した熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性化合物に硫黄、リン、臭素を含有する基や芳香環等を導入したものが挙げられる。屈折率の高い粒子としては、後述する高屈折率層に用いる高屈折率粒子と同様のものが挙げられる。
【0082】
<高屈折率層>
本発明の低反射部材は、反射率をより低くする観点から、低屈折率層の透明プラスチックフィルム側に接して高屈折率層を有することが好ましい。
高屈折率層は、例えば、高屈折率粒子及びバインダー樹脂組成物を含む高屈折率層塗布液から形成することができる。
【0083】
高屈折率粒子としては、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウム等が挙げられる。
高屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、3~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、7~50nmがさらに好ましい。
【0084】
高屈折率粒子の含有量は、塗膜の高屈折率化及び塗膜強度のバランスの観点から、バインダー樹脂100質量部に対して、50~1000質量部であることが好ましく、100~750質量部であることがより好ましく、200~500質量部であることがさらに好ましい。
【0085】
高屈折率層のバインダー樹脂としては硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、低屈折率層で例示したものと同様のものを用いることができ、電離放射線硬化性樹脂組成物が好適である。
【0086】
高屈折率層の屈折率は1.55~1.85であることが好ましく、1.56~1.75であることがより好ましい。
また、高屈折率層の厚みは、200nm以下であることが好ましく、50~180nmであることがより好ましい。
【0087】
<その他の層>
本発明の低反射部材は、その他の層を有していてもよい。
例えば、透明プラスチックフィルムの低屈折率層及び離型層を有する側と反対側の面に、接着剤層、帯電防止層及び印刷層等を有していてもよい。
【0088】
<その他の物性>
低反射部材の光透過性を有する箇所は、視覚対象物の視認性を良好にする観点から、JIS K7136:2000のヘイズが2.0%未満であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。
なお、光透過性を有する箇所とは、例えば、透明プラスチックフィルムの低屈折率層及び離型層を有する側と反対側の面に印刷層が形成されるなどして、光透過性が低下した箇所(全光線透過率が50%以下の箇所)を除く意図である。
【0089】
低反射部材の離型層側の表面は、カットオフ値0.08mmの算術平均粗さRa(JIS B0601:1994)が0.02μm以下であることが好ましく、0.01μm以下であることがより好ましい。
【0090】
<大きさ、形状等>
低反射部材は枚葉状であってもよいしロール状であってもよい。
また、枚葉の大きさは特に限定されないが、一般的には、大きさは対角で2~500インチ程度である。ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500~3000mm、長さは500~5000m程度である。
また、枚葉の形状も特に限定されず、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形等)や円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。
【0091】
<用途>
上述した本発明の低反射部材は、例えば、表示装置、インストルメントパネル、時計、ショーケース、ショーウィンドウ等の表面に配置することにより、視覚対象物(例えば、表示装置では表示素子;インストルメントパネルでは、スピードメーター、タコメーター、燃料計、水温計及び距離計等の計器;アナログ時計では文字盤、長針、短針及び秒針等;ショーケース及びショーウィンドウでは各種の物品)、反射を抑制して視覚対象物の視認性を良好にすることができるとともに、ペンでの筆記適性を有し、簡易的な手法での汚れ除去性を長期に渡って持続し得ることができる。
【0092】
[表示装置]
本発明の表示装置は、上述した本発明の低反射部材を有するものである。
より具体的には、本発明の表示装置は、表示素子と、表示素子の光出射面側の最表面に配置された低反射部材とを有する表示装置であって、低反射部材として、上述した本発明の低反射部材を、離型層を有する側の面が表示素子と反対側を向くように配置してなるものである。なお、透明プラスチックフィルムの両面に低屈折率層及び離型層を有し、何れの側も条件1~3を満たす場合には、表示素子上の低反射部材はどちら向きであってもよい。
【0093】
表示素子としては、液晶表示素子、EL表示素子、プラズマ表示素子、マイクロLED表示素子等が挙げられる。
液晶表示素子としては、TN方式、STN方式、TSTN方式、IPS方式、VA方式、マルチドメイン方式、OCB方式等が挙げられる。また、これらの何れかの方式にタッチパネル機能を組み込んでなる、インセルタッチパネル液晶素子も挙げられる。
【0094】
また、本発明の表示装置は、タッチパネル機能を搭載したものであってもよい。
タッチパネルとしては、抵抗膜式、静電容量式、電磁誘導式、赤外線式、超音波式等の方式が挙げられる。
低反射部材は、例えば、以下の順で表示素子の前面に設置することができる。
(a)表示素子/表面保護板/低反射部材
(b)表示素子/低反射部材
(c)表示素子/低反射部材を表面に有するタッチパネル
【0095】
[物品]
本発明の物品は、上述した本発明の低反射部材の離型層が表面を向くように配置されてなるものである。
【0096】
物品としては、インストルメントパネル、時計、ショーケース、ショーウィンドウ及び窓が挙げられる。すなわち、本発明の物品は、低反射部材の離型層が表面を向くように配置されてなる、インストルメントパネル、時計、ショーケース、ショーウィンドウ及び窓が挙げられる。
【実施例0097】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、実施例に記載の形態に限定されるものではない。
【0098】
1.評価、測定
実施例及び比較例で得られた低反射部材について以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
1-1.反射率(視感反射率Y値)
実施例及び比較例の低反射部材の透明プラスチックフィルム側に、厚み25μmの透明粘着剤層(パナック社製、商品名:パナクリーンPD-S1、屈折率1.49)を介して黒色板(クラレ社製、商品名:コモグラス DFA2CG 502K(黒)系、全光線透過率0%、厚み2mm、屈折率1.49)を貼り合わせたサンプル(5cm×5cm)を作製した。
低反射部材の表面に対して垂直方向を0度とした際に、5度の方向からサンプルに光を入射し、該入射光の正反射光に基づいてサンプルの反射率(視感反射率Y値)を測定した。
反射率は、分光反射率測定器(島津製作所社製、商品名:MPC3100)を用いて、5°正反射率を380~780nmまでの波長範囲で測定し、その後、人間が目で感じる明度として換算するソフト(MPC3100内蔵)で算出される、視感反射率を示す値を反射率として求めた。各サンプルについて10箇所の反射率を測定し、平均値を各サンプルの反射率とした。
【0099】
1-2.条件1~3の確認
実施例及び比較例の低反射部材を5.0cm×5.0cmの大きさにカットした後、透明プラスチックフィルム側に、厚み25μmの透明粘着剤層(パナック社製、商品名:パナクリーンPD-S1)及び厚み2mmの透明ガラス板を貼り合わせたサンプル(5.0cm×5.0cm)を作製した。作製したサンプルを用いて、条件1~3を満たすか否かを確認した。各条件を満たすものを「A」、各条件を満たさないものを「C」とした。なお、条件1を満たさない場合、条件2及び3は評価しなかった。
なお、条件1~3の行う際の雰囲気は、温度23℃±5℃、湿度40~65%とした。また、条件1~3を実施する前に、各サンプルを前記雰囲気に10分以上放置した。
また、条件1~3で用いる“JIS S6037:2006の「3.b)インキの区分による種類」が油性であり、「4.品質」及び「5.材料及び構造」の条件を満たす油性マーキングペン”は、ゼブラ社製の商品名「マッキー極細」のインク色「黒」として、細書側(線の太さが太い側)で筆記した。
また、条件1及び3において、往復摩擦は、JIS L0849:2013に準拠した学振型の摩擦試験機を用い、片道30mm、1往復あたり1秒の速度で行った。
また、条件2及び3において、水はイオン交換水を用い、筆記領域に滴下した水の滴下量は1mlとした。
【0100】
1-3.耐スチールウール性(耐SW)
上記1-2で作製したサンプルの離型層側の表面に#0000のスチールウールを押し当て、荷重500g/cm2で10往復擦った後、サンプルの裏面に黒色板を配置し、蛍光灯の照明下で、離型層側から傷が視認できるか否かを目視で評価した。傷が視認できないものを「A」、傷が視認できたものを「C」とした。さらに、荷重500g/cm2で評価Aのものに関して、荷重700g/cm2で同様の評価を行った際に、傷が視認できないものを「AA」とした。
【0101】
2.塗布液の調製
下記の塗布液を調製した。
<ハードコート層用塗布液>
・ウレタンアクリレート(商品名「UX5005」、日本化薬社製、9官能) 50質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 25質量部
・アクリレートモノマー(商品名「R684」、日本化薬社製、2官能) 25質量部
・光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製) 4質量部
・レベリング剤(商品名「メガファック F477」、DIC社製) 0.2質量部
・メチルエチルケトン 125質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 25質量部
【0102】
<低屈折率層用塗布液>
・プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(商品名「ATM-4P」、新中村化学工業社製、固形分100%) 75質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 25質量部
・中空状シリカ微粒子含有分散液(固形分20%、平均一次粒子径60nm) 800質量部
・反応性シリカ微粒子含有分散液(商品名「MIBK-SD」、日産化学工業社製、固形分30%、平均一次粒子径12nm) 83質量部
・光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」、BASF社製) 7質量部
・メチルイソブチルケトン 9300質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1100質量部
【0103】
<離型層用塗布液1>
・下記の有機溶媒分散シリカゾルの変性物を含む溶液 5質量部(固形分約0.08質量%)
・イオン交換水 45質量部
・イソプロピルアルコール 5質量部
【0104】
<有機溶媒分散シリカゾルの変性物を含む溶液>
1,2-オキサチオラン2,2-ジオキシド(東京化成工業社製)4.39gと、N,N-ジメチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)7.26gを脱水酢酸エチル40mlに溶解させて、室温で24時間撹拌した。生成した白色沈殿をろ過することにより、N-プロピルトリメトキシシラン-N,N-ジメチル-N-(3-スルホプロピル)アンンモニウムベタイン8.5gを得た。
次いで、N-プロピルトリメトキシシラン-N,N-ジメチル-N-(3-スルホプロピル)アンンモニウムベタイン4.0g、及び有機溶媒分散シリカゾル(日産化学工業社製、IPA-ST(固形分30%))13.2gを、溶媒(エタノール80mlと水140mlとの混合溶媒)に溶解させて一晩加熱還流した。冷却後、水酸化リチウム一水和物(ナカライテスク社製)520mgを少量の水に溶解させて反応溶液に加えて中和した。得られた反応溶液に水を加えて500gに調整することにより(-O-)3SiCH2CH2CH2N+(CH3)2CH2CH2CH2SO3-基で修飾された、有機溶媒分散シリカゾルの変性物を含む溶液500gを得た(固形分約1.6質量%)。
【0105】
<離型層用塗布液2>
・上記の有機溶媒分散シリカゾルの変性物を含む溶液 4質量部(固形分約0.064質量部)
・Si5O4(OC2H5)12(商品名「エチルシリケート40」、コルコート社製) 0.02質量部(固形分換算)
・3-メタクリロキシプロピルトリエメトキシシラン 0.002質量部
・イオン交換水 45質量部
・イソプロピルアルコール 5質量部
【0106】
<防汚層用塗布液>
・ウレタンアクリレート(商品名「UV1700B」、日本合成化学工業社製) 98重量部
・フッ素系防汚染剤(商品名「メガファックRS75」、DIC社製) 2重量部
・重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製) 4重量部
・メチルイソブチルケトン 2000重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 200重量部
【0107】
3.低反射部材の作製
[実施例1]
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.65)上に、上記処方のハードコート層用塗布液を塗布、乾燥(70℃、1分)及び紫外線照射(100mJ/cm2)し、厚み10μmのハードコート層を形成した。次いで、ハードコート層上に、上記処方の低屈折率層用塗布液を塗布、乾燥(90℃、1分)及び紫外線照射(200mJ/cm2)し、厚み90nm、屈折率1.35の低屈折率層を形成した。
次いで、低屈折率層の表面をコロナ放電処理した後、上記処方の離型層用塗布液1を塗布、乾燥(100℃、1分)、さらに110℃で15分熱処理してシリカゾルを硬化(脱水縮合)させ、離型層を形成し、実施例1の低反射部材を得た。塗布量に基づく離型層の理論厚みは10nmである。
なお、離型層用塗布液1を屈折率が測定可能な厚みで形成し、屈折率を測定したところ、1.43であった。
【0108】
[実施例2]
離型層の厚みを15nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の低反射部材を得た。
【0109】
[実施例3]
離型層の厚みを7nmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の低反射部材を得た。
【0110】
[実施例4]
低屈折率層用塗布液の「中空状シリカ微粒子含有分散液(固形分20%、平均一次粒子径60nm)」を「中空状シリカ微粒子含有分散液(固形分20%、平均一次粒子径75nm)」に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の低反射部材を得た。
【0111】
[実施例5]
低屈折率層用塗布液の「中空状シリカ微粒子含有分散液(固形分20%、平均一次粒子径60nm)」を「中空状シリカ微粒子含有分散液(固形分20%、平均一次粒子径50nm)」に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の低反射部材を得た。
【0112】
[実施例6]
低屈折率層用塗布液の「中空状シリカ微粒子含有分散液(固形分20%、平均一次粒子径60nm)」を「中空状シリカ微粒子含有分散液(固形分20%、平均一次粒子径100nm)」に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の低反射部材を得た。
【0113】
[実施例7]
ハードコート層と低屈折率層との間に高屈折率層(屈折率1.65、厚み165nm)を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の低反射部材を得た。
なお、高屈折率層は、下記の高屈折率層用塗布液を塗布、乾燥(90℃、1分)及び紫外線照射(200mJ/cm2)して形成した。
<高屈折率層用塗布液>
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(商品名PET30、日本化薬社製、固形分100%) 100質量部
・五酸化アンチモン含有分散液(商品名「V-4564」、日揮触媒化成社製、固形分40%、平均一次粒子径20nm) 1100質量部
・フッ素系レベリング剤(商品名「メガファックF568」、DIC社製、固形分5%) 300質量部
・光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」、BASF社製) 8質量部
【0114】
[実施例8]
低屈折率層用塗布液を下記の実施例8の低屈折率層塗布液に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の低反射部材を得た。
<実施例8の低屈折率層用塗布液>
・シランカップリング剤1(テトラエトキシシラン) 25質量部
・シランカップリング剤2(3-メタクリロキシプロピルトリエメトキシシラン) 25質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50質量部
・中空状シリカ微粒子含有分散液(固形分20%、平均一次粒子径60nm) 800質量部
・光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」、BASF社製) 7質量部
・メチルイソブチルケトン 9300質量部
・IPA 1100質量部
【0115】
[実施例9]
実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.65)上に、ハードコート層及び低屈折率層を形成した。
次いで、低屈折率層の表面をコロナ放電処理した後、上記処方の離型層用塗布液2を塗布、乾燥(100℃、1分)し、110℃で15分熱処理してシリカゾルを硬化(脱水縮合)した後、紫外線照射(200mJ/cm2)し、実施例9の低反射部材を得た。塗布量に基づく離型層の理論厚みは10nmである。
なお、離型層用塗布液2を屈折率が測定可能な厚みで形成し、屈折率を測定したところ、1.43であった。
【0116】
[比較例1]
低屈折率層上に離型層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1の低反射部材を得た。
【0117】
[比較例2]
低屈折率層上に離型層を形成せず、低屈折率層上に、上記処方の防汚層用塗布液を塗布、乾燥及び紫外線照射し、厚み10nm、屈折率1.50の防汚層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の低反射部材を得た。
【0118】
[比較例3]
ハードコート層上に低屈折率層を形成せず、ハードコート層上に直接離型層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の低反射部材を得た。
【0119】
【0120】
表1から明らかなように、実施例1~9の低反射部材は、反射を抑制して視覚対象物の視認性を良好にすることができるとともに、ペンでの筆記適性を有し、簡易的な手法での汚れ除去性を長期に渡って持続し得ることが確認できる。
なお、表中では評価していないが、実施例8の低反射部材は、明細書の条件4を満たし、汚れ除去性を極めて長期に渡って持続し得るものであった。