(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164701
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】多孔性シリカ粒子組成物
(51)【国際特許分類】
C01B 33/193 20060101AFI20221020BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221020BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20221020BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221020BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221020BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20221020BHJP
A61Q 90/00 20090101ALI20221020BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20221020BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20221020BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20221020BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C01B33/193
A61K9/14
A61K9/00
A61K47/04
A61K45/00
A61K8/25
A61Q90/00
A61K31/496
A61P31/10
A61K9/10
A61K9/28
【審査請求】有
【請求項の数】34
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022127998
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2020551113の分割
【原出願日】2019-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018189842
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019057003
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390011877
【氏名又は名称】富士化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寶田 光仁
(72)【発明者】
【氏名】川口 博志
(72)【発明者】
【氏名】柴田 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】深美 忠司
(72)【発明者】
【氏名】吉海 直志
(72)【発明者】
【氏名】上野 樹
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 陽
(72)【発明者】
【氏名】大貫 哲也
(72)【発明者】
【氏名】坂井 仁
(57)【要約】
【課題】医薬添加物として使用されている従来のシリカよりも、流動性、吸油能、圧縮成形性に優れ、医薬等の製剤の添加物として好適なシリカを提供する。
【解決手段】以下の性質を有する多孔性シリカ粒子組成物を提供する。
(1)BET比表面積 250~1000m
2/g
(2)平均粒子径 1~150μm
(3)細孔容積 0.1~8.0cm
3/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の性質を有する多孔性シリカ粒子組成物。
(1)BET比表面積 250~1000m2/g
(2)平均粒子径 1~150μm
(3)細孔容積 0.1~8.0cm3/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
【請求項2】
(1)BET比表面積 250~1000m2/g
(2)平均粒子径 10~150μm
(3)細孔容積 0.1~8.0cm3/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
である請求項1記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項3】
(1)BET比表面積 250~700m2/g
(2)平均粒子径 1~40μm
(3)静的比容積 8~40mL/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
(5)吸水能 2.2~5.0mL/g
である請求項1記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項4】
平均粒子径が1~30μmで、形状が実質的に非球状である請求項1または3記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項5】
平均粒子径が1~10μmで、形状が実質的に非球状である請求項1、3および4のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項6】
(1)BET比表面積 250~700m2/g
(2)平均粒子径 20~150μm
(3)静的比容積 4~10mL/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
(5)吸水能 2.2~5.0mL/g
である請求項1または2記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項7】
静的比容積が20~40mL/gである請求項1~5のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項8】
非晶質である請求項1~7のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項9】
組成物が粉末である請求項1~8のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項10】
細孔容積が1.0~2.5cm3/gである請求項1~9のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項11】
細孔モード径が20~150nmである請求項1~10のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項12】
細孔分布の相対幅が20~120nmである請求項1~11のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項13】
多孔性シリカ粒子組成物中に粒径20~500nmの板様シリカ粒子および粒径5~50nmの粒状シリカ粒子を含有する請求項1~12のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項14】
多孔性シリカ粒子組成物単体で打錠したときに打錠障害なく打錠が可能である請求項1~13のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項15】
吸油能が2.4~4.5mL/gである請求項1~14のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項16】
静的比容積が4.5~8mL/gである請求項1~6、8~15のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項17】
BET比表面積が280~650m2/gである請求項1~16のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項18】
細孔容積が1.5~2.5cm3/gである請求項1~17のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項19】
細孔モード径が35~130nmである請求項1~18のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項20】
細孔分布の相対幅が20~70nmである請求項1~19のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項21】
平均粒子径が30~120μmである請求項1、2、6~20のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項22】
平均粒子径の下限値が30μmである請求項1~3、6~21のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項23】
平均粒子径の下限値が45μmである請求項1、2、6~22のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項24】
粒子の球形度が0.8~1.0である請求項1~23のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項25】
医薬品用賦形剤である請求項1~24のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項26】
薬効成分を吸着する請求項1~25のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項27】
サプリメント用、健康食品用または化粧品用の賦形剤である請求項1~24のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物。
【請求項28】
請求項1~24のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物を含有する医薬品用、サプリメント用、健康食品用または化粧品用の添加剤。
【請求項29】
請求項1~24のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物を含有する医薬製剤、サプリメント、健康食品または化粧品。
【請求項30】
請求項1~24のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物、ポリマー及び苦味薬物を含有する医薬組成物。
【請求項31】
苦味薬物を含有する請求項1~24のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子をポリマーで被覆してなる請求項29記載の医薬組成物。
【請求項32】
苦味薬物が分散したポリマーを含有する請求項1~24のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子を含有する医薬組成物。
【請求項33】
請求項1~24のいずれか1項記載の多孔性シリカ粒子組成物に薬効成分が分散してなる固体分散体。
【請求項34】
(1)形状が実質的に非球状である請求項4または5記載の多孔性シリカ粒子組成物、または(2)平均粒子径が10~150μmで、形状が実質的に球状である請求項1~3、6~24のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物と薬効成分が分散してなる固体分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な多孔性シリカ粒子組成物、より具体的には、多孔性二酸化ケイ素の粒子粉末、その用途及び同組成物を含有する医薬製剤、化粧品、健康食品またはサプリメントに関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ、即ち、二酸化ケイ素(SiO2)は、無水ケイ酸、ケイ酸、酸化シリコンと呼ばれることもある。純粋なシリカは無色透明であり、自然界にも広く分布して存在する。
その合成品は、さまざまな産業分野で使用されている。例えば、乾燥剤として食品や 半導体の精密機器の保存の目的で使用され、また、消臭剤、農業用肥料、建築用調湿剤としても使われる。或いは、電子材料基板やシリコンウェハーなどの研磨剤などにも使用され、耐熱器具、実験器具や光ファイバー、エナメル、シリカセメント、陶磁器、タイヤといった製品の原料、液体クロマトグラフィー担体として、或いは電球やCRTディスプレイの表面などの表面処理剤、新聞紙の印刷インクの浸透防止剤として等、様々な分野において利用されている。
【0003】
中でも医薬品分野では、シリカは、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、含水コロイダルシルカまたは無水コロイダルシルカと呼ばれることもあり、吸着剤、流動化剤、凝集防止剤、滑沢剤、崩壊剤、熱安定剤、懸濁化剤、乳化安定剤および増粘剤などの多くの用途で使用されている。
特に近年は、水に難溶性の固形状薬物や油状薬物の製剤用担体として細孔を有する多孔性シリカ粒子組成物が注目されており、これらは薬物の溶解性や薬物の溶出に効果がある事例も報告されている(特許文献1及び2、並びに非特許文献1及び2)。
また、薬物の苦味マスキング方法としては、甘味剤や矯味剤などにより舌での味覚を調味する方法、薬物含有粒子をポリマーや糖類などでコーティングする方法などが知られている。コーティング方法としては、例えば、苦味を有する有効成分のミチグリニドカルシウム水和物と結晶セルロースの混合物を、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー又はエチルセルロースなどのマスキング剤の溶液を噴霧しながら高速撹拌造粒法により造粒する方法(特許文献3)、結晶セルロースの核剤の外層に薬物を含む層を形成しさらにその外層にポリマーなどのコーティング層を形成させた苦味薬物コーティング粒子(特許文献4)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-14117
【特許文献2】特表2017-512811
【特許文献3】国際公開第2008/018371号
【特許文献4】国際公開第2010/001574号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】British Journal of Pharmaceutical Research.2017:16(6),1-19
【非特許文献2】Mesoporous Biomater.2014:1,61-74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの細孔を有するシリカ粒子組成物は、製剤全般への適用性といった観点でシリカを使用して錠剤とした場合での圧縮成形性の改善といった視点はなく、製剤全般への適用性という点では未だ不十分といわざるを得ない。
また、一般に錠剤用に薬物などの吸着担体としてシリカ粒子組成物を用いる場合、中性であるため、薬物安定性は高いが、比容積は高過ぎるので圧縮成形性を低下させることから配合量に制限があるという問題があった。
実際、医薬品添加物として多孔性シリカ粒子組成物が多数市販されているものの、それらは、流動性、吸油能といった点や錠剤等に添加した場合の圧縮成形性といった点では未だ満足できるものではなく、より優れるものが強く望まれている。
このような医薬品添加物としてのシリカ粒子組成物の問題点は、化粧品、健康食品、サプリメント用の添加物としても同様であり、成形性等により優れたものが望まれている。
さらに、苦味薬物の苦味マスキングの観点では、核剤を使用する方法では薬剤含有粒子のサイズが大きくなるため口腔内でざらつき感を生じること、薬物含有粒子を形成させる方法では強度が十分な粒子の形成が難しいこと、コーティング層などの各層形成、薬物担持・含浸のために多くの製造時間を要すること、薬物量やコーティング成分量を多くするとそれら成分の溶解、分散に多量の水が必要なため造粒時に加温、水分除去が必要になるなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記に示したような医薬品や食品の添加物領域におけるシリカ粒子組成物の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、吸油能、圧縮成形性、流動性に優れ、崩壊性等の種々の問題点を改善し、更には、優れた苦味薬物のマスキングや薬物の溶出でも優れた多孔性シリカ粒子組成物を見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下の発明〔1〕~〔34〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕以下の性質を有する多孔性シリカ粒子組成物。
(1)BET比表面積 250~1000m2/g
(2)平均粒子径 1~150μm
(3)細孔容積 0.1~8.0cm3/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
〔2〕
(1)BET比表面積 250~1000m2/g
(2)平均粒子径 10~150μm
(3)細孔容積 0.1~8.0cm3/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
である上記〔1〕記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔3〕
(1)BET比表面積 250~700m2/g
(2)平均粒子径 1~40μm
(3)静的比容積 8~40mL/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
(5)吸水能 2.2~5.0mL/g
である上記〔1〕記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔4〕平均粒子径が1~30μmで、形状が実質的に非球状である上記〔1〕または〔3〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔5〕平均粒子径が1~10μmで、形状が実質的に非球状である上記〔1〕、〔3〕および〔4〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔6〕
(1)BET比表面積 250~700m2/g
(2)平均粒子径 20~150μm
(3)静的比容積 4~10mL/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
(5)吸水能 2.2~5.0mL/g
である上記〔1〕または〔2〕記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔7〕静的比容積が20~40mL/gである上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔8〕非晶質である上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔9〕組成物が粉末である上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔10〕細孔容積が1.0~2.5cm3/gである上記〔1〕~〔9〕のいずれに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔11〕細孔モード径が20~150nmである上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔12〕細孔分布の相対幅が20~120nmである上記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔13〕多孔性シリカ粒子組成物中に粒径20~500nmの板様シリカ粒子および粒径5~50nmの粒状シリカ粒子を含有する上記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔14〕多孔性シリカ粒子組成物単体で打錠したときに打錠障害なく打錠が可能である上記〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔15〕吸油能が2.4~4.5mL/gである上記〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔16〕静的比容積が4.5~8mL/gである上記〔1〕~〔6〕、〔8〕~〔15〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔17〕BET比表面積が280~650m2/gである上記〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔18〕細孔容積が1.5~2.5cm3/gである上記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔19〕細孔モード径が35~130nmである上記〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔20〕細孔分布の相対幅が20~70nmである上記〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔21〕平均粒子径が30~120μmである上記〔1〕、〔2〕、〔6〕~〔20〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔22〕平均粒子径の下限値が30μmである上記〔1〕~〔3〕、〔6〕~〔21〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔23〕平均粒子径の下限値が45μmである上記〔1〕、〔2〕、〔6〕~〔22〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔24〕粒子の球形度が0.8~1.0である上記〔1〕~〔23〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔25〕医薬品用賦形剤である上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔26〕薬効成分を吸着する上記〔1〕~〔25〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔27〕サプリメント用、健康食品用または化粧品用の賦形剤である上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物。
〔28〕上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物を含有する医薬品用、サプリメント用、健康食品用または化粧品用の添加剤。
〔29〕上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物を含有する医薬製剤、サプリメント、健康食品または化粧品。
〔30〕上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物、ポリマー及び苦味薬物を含有する医薬組成物。
〔31〕苦味薬物を含有する上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子をポリマーで被覆してなる〔29〕記載の医薬組成物。
〔32〕苦味薬物が分散したポリマーを含有する上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子を含有する医薬組成物。
〔33〕上記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物に薬効成分が分散してなる固体分散体。
〔34〕(1)形状が実質的に非球状である上記〔4〕または〔5〕に記載の多孔性シリカ粒子組成物、または(2)平均粒子径が10~150μmで、形状が実質的に球状である上記〔1〕~〔3〕、〔6〕~〔24〕のいずれかに記載の多孔性シリカ粒子組成物と薬効成分が分散してなる固体分散体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、吸油能、圧縮成形性、流動性等に優れ、更に圧縮成形後の錠剤の崩壊性も改善し得る多孔性シリカ粒子組成物および同シリカ粒子粉末並びに同シリカ粒子組成物からなる賦形剤および同シリカ粒子組成物を含有する医薬製剤、サプリメント、健康食品、化粧品、固体分散体および医薬有効成分を吸着した多孔性シリカ粒子組成物、更には苦味薬物の苦味をマスキングした同シリカ粒子組成物を含有する医薬製剤が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】細孔分布の相対幅の算出方法を示した図である。
【
図2】実施例6の多孔性非晶質シリカのXRDチャートである。
【
図3】実施例6の多孔性非晶質シリカのBJH法による細孔分布チャートである。
【
図4】実施例6の多孔性非晶質シリカのSEM写真(500倍)である。
【
図5】実施例6の多孔性非晶質シリカのFE-SEM写真(50000倍)である。
【
図6】実施例11と比較例7の打錠時の成形圧の経時変化を示した図である。
【
図7】実施例16の苦味マスキング粒子のSEM写真(500倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、後記する製造方法によって製造液中に形成されるシリカ粒子を一次粒子としたときに、当該製造液の乾燥後に形成されるものであって板様状シリカ一次粒子及び/または粒状シリカ一次粒子の凝集・接合等により構成される粒子組成物、更にはその粒子組成物を粉砕することにより得られる粒子組成物もその範疇に含むものであり、組成物全体としてブロードなマクロポア(多孔性)を有し、高いBET比表面積、高い細孔容積、高い吸油能、優れた圧縮成形性を有する。
【0013】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、上記シリカ粒子もしくはその組成物或いは各種シリカ粒子組成物の集合体を意味するものであり、同集合体として以下の(1)~(4)の性質、更にはそれに加えて後述の特質を有するものである。本集合体は、実質的には粉末形状をとり、総称としてシリカ粒子と表すこともある。本発明の多孔性シリカ粒子組成物の粒子形状は、球状、或いは凝集塊状、板様状又は不定形状などの非球状である。本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、非晶質シリカである。XRDにより、結晶性シリカ特有のピークがなく、ハローパターンであることから非晶質であることが確認できる。
【0014】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、具体的には以下の粉体物性を有する。
(1)BET比表面積 250~1000m2/g
(2)平均粒子径 10~150μm
(3)細孔容積 0.1~8.0cm3/g
(4)吸油能 2.2~5.0mL/g
【0015】
BET比表面積はシリカの多孔性の性質を特定する一指標であり、一般的に繁用されるものである。本発明の多孔性シリカ粒子組成物のBET比表面積は、通常250~1000m2/gの範囲、好ましくは250~700m2/gの範囲、より好ましくは280~650m2/gの範囲、さらに好ましくは280~500m2/gの範囲のものである。
【0016】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の平均粒子径は、メジアン径(D50)であり、具体的には、1~150μmの範囲、好ましくは10~150μmの範囲、より好ましくは20~150μmの範囲、更に好ましくは30~150μmの範囲、より更に好ましくは30~120μmの範囲のものである。中でも、苦味マスキングの観点からすると、使用する多孔性シリカ粒子の平均粒子径は好ましくは45~150μm、より好ましくは45~120μmの範囲のものである。また、本発明の非球形或いは実質的に非球形の多孔性シリカ粒子組成物における平均粒子径は、好ましくは1~10μmの範囲、より好ましくは1.5~8μmの範囲のものである。
【0017】
細孔容積もシリカの多孔性の性質を特定する指標の一つであり、一般的に繁用されるものである。本発明の多孔性シリカ粒子組成物の細孔容積は、好ましくは0.1~8.0cm3/gの範囲、より好ましくは1.0~3.0cm3/gの範囲、さらに好ましくは1.0~2.5cm3/gの範囲、特に好ましくは1.5~2.5cm3/gの範囲のものである。細孔容積はBJH法により求めることができる。
【0018】
また、吸油能も、シリカの多孔性の性質を特定する指標の一つであり、一般的に繁用されるものである。本発明の多孔性シリカ粒子組成物の吸油能は、好ましくは2.2~5.0mL/gの範囲、より好ましくは2.4~4.5mL/gの範囲、さらに好ましくは3.0~4.5mL/gの範囲のものである。本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、油を高含量で吸収させた場合でも、流動性の低下を起こしにくく、圧縮成形した場合も油の染み出しを生じにくい性質を有するものである。
【0019】
上記に加えて、本発明の多孔性シリカ粒子組成物をさらに特定する性質としては、吸水能、静的比容積及び動的比容積を挙げることができる。
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の吸水能は、好ましくは2.2~5.0mL/gの範囲、より好ましくは2.4~4.5mL/gの範囲、さらに好ましくは3.0~4.5mL/gの範囲のものである。
【0020】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の静的比容積は、好ましくは4~40mL/gの範囲、より好ましくは4~10mL/gの範囲、さらに好ましくは4.5~8mL/gの範囲、特に好ましくは4.5~7mL/gの範囲のものを挙げることができる。また、本発明の非球形の多孔性シリカ粒子組成物における静的比容積は、好ましくは9~40mL/gの範囲、より好ましくは10~35mL/gの範囲のものである。
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の動的比容積は、好ましくは3~30mL/gの範囲、より好ましくは3~9mL/gの範囲、さらに好ましくは3.5~6.5mL/gの範囲、特に好ましくは4~6mL/gの範囲のものを挙げることができる。また、本発明の非球形の多孔性シリカ粒子組成物における動的比容積は、好ましくは6~30mL/gの範囲、より好ましくは7~25mL/gの範囲のものである。
【0021】
上記の性質にさらに加えて、本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、通常中性域であり、水に懸濁させたときのpHとして測定でき、具体的には、5%(W/V)の懸濁液とした場合、pHは通常6~8の範囲のものである。
【0022】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、板様状や粒状の異なる形状の一次粒子を含むものであり、同一次粒子同士が凝集・接合した二次粒子が、さらに凝集して形成されるものが好ましい。このような二次粒子の凝集・接合構造は、FE-SEMやSEMの写真観察や窒素吸着法などによる細孔分布の測定結果から確認し得る。一次粒子の形状は10,000倍以上のSEMの写真から観察でき、基本的には、板様状および粒状に大別し得る。ここで板様状とは、板状、短冊状、鱗片状などの部分的に平面の形状を意味するものである。また、粒状とは、全体的に粒の形状を有するものを意味する。このような、一次粒子同士は不規則に凝集・接合、重なり合った状態で観察できる。FE-SEMやSEMの写真観察からは、上記板様状粒子の大きさは、板面の平均直径が20~500nmの範囲、厚さが10~50nmの範囲である。一方、上記粒状粒子の大きさは、粒子径が5~50nmの範囲である。
上記の二次粒子の凝集・接合物を粉砕、微粉化することにより実質的に上記のような非球形の多孔性シリカ粒子組成物を得ることができる。
本発明においては、このような二次粒子の凝集・接合物や粉砕粒子は、使用目的に応じて別々に或いは適宜混合して使用することも可能である。
【0023】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の細孔分布は、好ましくは、細孔直径が1~200nmの範囲において、2つまたは3つの細孔ピークを有し、複数ピークの最下端と最上端の細孔直径が20~200nmにわたるブロードなピーク形状である。細孔ピークが2つの場合は、それぞれのピークの頂点が好ましくは10~40nmおよび35~70nmの範囲にあり、より好ましくは15~35nmの範囲および40~60nmの範囲のそれぞれに各ピークの頂点を有する。細孔ピークが3つの場合は、それぞれのピークの頂点が好ましくは10~40nm、35~70nmおよび70~150nmの範囲に、より好ましくは15~35nm、40~60nmおよび80~130nmの範囲である。これら2つ以上の細孔ピークのうち最高の頂点の細孔直径が細孔分布のモード径であり、好ましくは20~150nmの範囲、より好ましくは35~130nm、さらに好ましくは35~65nmの範囲である。細孔分布の詳細な測定方法および測定条件は後述の実施例に記載のものを挙げることができる。
【0024】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、細孔直径について複数の細孔ピークを有するため、細孔分布の幅が広く、後述のように定義される細孔分布の相対幅は、好ましくは20~120nmの範囲のものであり、より好ましくは20~70nmの範囲のものである。細孔分布の相対幅は、細孔分布モード径のピークの高さの1/2の値を求め、その値を取る最も大きな細孔径(Dl)と最も小さな細孔径(Ds)を求め、その差(Dl-Ds)を求める。次いで、その差幅を細孔分布モード径のピークの高さで除して値を求める。詳細な計算式は後述の実施例で示す。本発明において、細孔分布の形状については、BJH法によって測定した細孔分布チャートを横軸が細孔直径、縦軸が体積分布として求める。
本発明の多孔性シリカ粒子組成物が2つ又は3つの細孔ピークを有するのは、板様状一次粒子と粒状一次粒子を基本的構成単位とするため、板様状一次粒子同士間の細孔、粒状一次粒子同士間の細孔および板様状一次粒子と粒状一次粒子間の細孔など、複数の細孔ピークを有しているためと考えられる。
【0025】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、噴霧乾燥などの造粒や乾燥方法、粉砕工程などにより、球状や非球状の形状のものを含むことができる。
具体的には、噴霧乾燥による造粒物を更に乾燥することにより、実質的に球状のシリカ粒子組成物を製造することができる。
同球状造粒物の球形度は、好ましくは0.8~1.0の範囲、より好ましくは0.85~1.0の範囲、さらに好ましくは0.9~1.0の範囲である。球形度はSEM写真により短径/長径を求めて算出することができる。
一方、非球状のシリカ粒子組成物の製造法については、上記の方法に従えばよい。
【0026】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の平均粒子径は、好ましくは1~150μmの範囲であり、造粒、粉化、粉砕によって、粒径を適宜選択することができる。本発明の多孔性シリカ粒子組成物の球状造粒物の平均粒子径は、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~150μm、よりさらに好ましくは30~120μmの範囲のものである。その中で本発明の多孔性シリカ粒子組成物が実質的に非球形のシリカ粒子組成物のときの平均粒子径は、好ましくは1~40μm、より好ましくは1~10μm、さらに好ましくは1~8μmである。
本発明において、平均粒子径は、体積基準によるメジアン径(D50)であり、乾式または湿式のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。詳細な測定条件は後述の実施例に記載のものを挙げることができる。
【0027】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の造粒物は流動性が高く、USP<1174>POWDER FLOWの項目に記載のflow rate through an orificeの測定法に基づいて測定を行った場合、流動性の指標であるオリフィス径は、好ましくは4~12mmの範囲、より好ましくは4~9mmの範囲内のものである。
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の水分含量の値は、測定方法によって異なり得る。具体的には乾燥減量によるものと強熱減量によるものがある。本発明の多孔性シリカ粒子組成物の乾燥減量による水分含量は、好ましくは0.1~21%の範囲、より好ましくは0.1~15%の範囲、さらに好ましくは0.1~7%の範囲内にある。また、本発明の多孔性シリカ粒子組成物の強熱減量による水分含量は、好ましくは0.1~8.5%の範囲、より好ましくは0.1~7%の範囲内である。乾燥減量、強熱減量のいずれも米国薬局方に測定方法が記載されており、その方法によって求めることができる。
【0028】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物の二酸化ケイ素(SiO2)含量は、好ましくは95~100%の範囲であり、より好ましくは99~100%の範囲である。二酸化ケイ素含量は、米国薬局方・国民医薬品集(USP-NF)の二酸化ケイ酸の定量方法から求めることができる。
【0029】
次に、本発明の多孔性シリカ粒子組成物の製造方法について説明する。
同製造方法は次の工程(1)~工程(5)からなる。
(1)水溶媒中でカルシウム源とケイ酸源(a)を混合、反応する工程(1)
(2)工程(1)で得られた反応液とケイ酸源(b)を混合、反応する工程(2)
(3)工程(2)で得られた反応液と鉱酸を混合、反応する工程(3)
(4)工程(3)で得られた反応液をろ過・洗浄する工程(4)
(5)工程(4)で得られた洗浄物を乾燥する工程。
【0030】
工程(1)では、ケイ酸源(a)の水溶液にカルシウム源の水溶液の添加、カルシウム源の水溶液にケイ酸源(a)の水溶液の添加、またはケイ酸源(a)の水溶液とカルシウム源の水溶液の同時添加のいずれかで行うことができる。好ましくは、カルシウム源の水溶液にケイ酸源(a)の水溶液の添加する方法である。
カルシウム源としては、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機酸カルシウム塩や水酸化カルシウムを挙げることができる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸および炭酸が挙げられる。これらの無機酸カルシウム塩に水酸化ナトリウムを混合した溶液を用いることができる。または、消石灰などの水酸化カルシウムと前述無機酸を任意の割合で反応させたものを用いることができる。カルシウム塩水溶液のカルシウム濃度は、カルシウム換算で0.1~10%の範囲である。
ケイ酸源(a)としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムおよびケイ酸リチウムの水溶液を挙げることができる。ケイ酸ナトリウムとしては、1号ケイ酸ナトリウム、2号ケイ酸ナトリウム、3号ケイ酸ナトリウムまたは天然のケイ酸鉱物を苛性ソーダで溶解したものを用いることができ、工業性の観点から3号ケイ酸ナトリウムを用いるのが好ましい。ケイ酸源(a)の濃度は、二酸化ケイ素換算で1~32%の範囲である。
上記のカルシウム源とケイ酸源の使用量については、カルシウム源に対するケイ酸源の配合比で規定し、カルシウムと二酸化ケイ素のモル比換算でカルシウム:二酸化ケイ素=1:0.5~1:2の範囲である。当該工程での反応温度は、通常15~80℃の範囲である。
【0031】
工程(2)では、工程(1)で得られた反応液にケイ酸源(b)の水溶液を添加、ケイ酸源(b)の水溶液に工程(1)で得られた反応液を添加、または工程(1)で得られた反応液とケイ酸源(b)の水溶液の同時添加によって行うことができる。
ケイ酸源(b)としては、上記ケイ酸源(a)で記載したものを用いることができる。そのケイ酸塩濃度は上記ケイ酸源(a)と同じ範囲のものを用いることができる。添加するケイ酸源(b)の量は、工程(1)のカルシウム源に対するケイ酸源(b)の配合比で規定し、カルシウムと二酸化ケイ素のモル比換算でカルシウム:二酸化ケイ素=1:2~1:6であり、好ましくは1:3~1:5の範囲である。当該工程での反応温度は、通常30℃~100℃の範囲である。
【0032】
工程(3)では、工程(2)で得られた反応液を鉱酸と反応させればよい。
鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸を挙げることができ、好ましくは硝酸を挙げることができる。使用する鉱酸の濃度は5~50%である。反応は、通常工程(2)で得られた反応液に鉱酸を添加することにより行うことができる。鉱酸の添加速度は製造する設備や製造量によって、適宜設定すればよい。当該工程での反応温度は、通常30℃~100℃である。
【0033】
工程(4)では、工程(3)で得られた反応液を水でろ過・洗浄する。カルシウムなどの不純物を除去するための洗浄方法としては、デカンテーション、フィルタープレス、ろ過など通常工業的に行われている方法を使用することができる。洗浄の終点は洗浄液のpHや電導度によって決めればよい。洗浄は、0~40℃の範囲で行うことができる。
【0034】
工程(5)では、工程(4)でろ過・洗浄した生成物を乾燥し、水分を除去する。
乾燥方法としては、噴霧乾燥、流動造粒、流動層造粒乾燥、攪拌造粒乾燥、連続瞬間気流乾燥、ドラム乾燥、湿式押出造粒乾燥、棚乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。乾燥と造粒工程を同時に連続して行うことができることから、好ましくは噴霧乾燥である。加温による乾燥方法の乾燥温度は、80~500℃の範囲で行う。
噴霧乾燥の条件は特に限定されないが、噴霧乾燥機としては、ディスク式、ケスナー式またはノズル式の噴霧乾燥機を用いればよい。噴霧乾燥の温度としては、入口温度が約150~400℃の範囲であり、出口温度は約90~200℃の範囲で行うことが好ましい。
また、他の乾燥方法としては、有機溶媒の添加・溶媒置換により水分を除去した後、減圧乾燥などで乾燥を行うこともできる。前記加熱乾燥法によって得られる多孔性シリカ組成物よりも、吸油能、比表面積、比容積を高くすることも可能である。
【0035】
上記の乾燥工程の後、必要に応じて粉砕を行い、篩過・分級等により目的の粒径を有する本発明の多孔性シリカ粒子組成物を得ることができる。粉砕方法としては、乾式粉砕が好ましく、ジェットミル、ボールミル、ロールミル、ハンマーミル又はピンミル等を用いることができる。1~10μmの粒径の物を得る場合は、ジェットミルの使用が好ましい。
【0036】
工程(4)のろ過・洗浄後に得られる生成物を微粉化・粉砕することにより、比容積や流動性などの物性の調節、工程(5)で乾燥・造粒を行う場合での作業を効率化することができる。粉砕方法としては、湿式粉砕が好ましく、例えばスターバースト(製品名、株式会社スギノマシン製)、ナノマイザー(製品名、エス・ジーエンジニアリング株式会社製)、アルティマイザー(製品名、株式会社スギノマシン製、株式会社カワサワファイン)、マイクロフルイダイザー(製品名、みづほ工業株式会社製)、ゴーリンホモジナイザーなどの高圧ホモジナイザー、ビーズミル、ディスクミル、ホモミキサーなどの粉砕機を使用して行うことができる。
【0037】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、従来のシリカがこれまで使用されている用途と同様に使用することができる。例えば、医薬品添加物として、具体的には、賦形剤、吸着剤、流動化剤、凝集防止剤、滑沢剤、崩壊剤、熱安定剤、乳化安定剤、懸濁化剤または増粘剤として使用することができる。賦形剤、流動化剤、凝集防止剤、滑沢剤、崩壊剤、熱安定剤として用いる場合は、必要に応じて他の賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等の医薬剤添加剤並びに医薬活性成分と混合・圧縮成形し錠剤とすることができる。また、同様に混合、造粒し、散剤或いは粒状医薬品としてもよい。更に、本発明の多孔性シリカ粒子組成物を医薬活性成分と造粒して打錠用粒状物とし液剤、懸濁剤、軟膏、クリーム等の製剤の基剤に混和、練合し、目的の液剤、懸濁剤、軟膏、クリーム製剤とすることができる。或いは、本発明の多孔性シリカ粒子組成物を医薬活性成分及び必要に応じて他の添加剤と共に前記の基剤に混和、練合し、目的の液剤、懸濁剤、軟膏、クリーム製剤とすることも可能である。
【0038】
それぞれの配合割合は、多孔性シリカ粒子組成物100重量部に対して、賦形剤、崩壊助剤、結合助剤、界面活性剤、滑沢剤、酸味料、甘味料、矯味剤、香料、着色剤、安定化剤、発泡剤から選ばれるその他の医薬品添加物の1種以上の成分を0.01~10000重量部、医薬活性成分を0.1~1000重量部配合すればよい。
【0039】
本発明においては、医薬活性成分は、投与経路に応じて本発明の多孔性シリカ粒子組成物と組み合わせて使用すればよく、具体的に使用可能な例としては、末梢神経用剤、解熱鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神神経用剤などの中枢神経用薬剤;骨格筋弛緩剤、末梢神経用薬剤;不整脈用剤、利尿剤、血管拡張剤などの循環器用薬剤;気管支拡張剤、鎮咳剤などの呼吸器官用薬剤;消化剤、整腸剤、制酸剤などの消化管用薬剤;ホルモン剤、抗ヒスタミン剤、ビタミン剤などの代謝性薬剤;抗潰瘍剤;抗生物質;;生薬エキス剤;などが挙げられる。以下に代表的医薬活性成分名を例示する。
【0040】
解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、プランルカスト水和物等のアニリン誘導体、アスピリン、等のサリチル酸誘導体が挙げられる。
気管支拡張剤としては、例えば、塩酸エフェドリン等が挙げられる。
鎮咳剤としては、例えば、リン酸コデイン等のコデイン類等が挙げられる。
去淡剤としては、例えば、グアヤコールスルホン酸カリウム等が挙げられる。
鎮咳 去淡剤としては、例えば、グアイフェネシン等を挙げることができる。
向精神薬としては、例えばクロルプロマジン、レセルピン等が挙げられる。
抗うつ剤としては、例えば塩酸マプロチリン等が挙げられる。
鎮痙剤としては、例えば臭化水素酸スコポラミン等が挙げられる。
中枢神経作用薬としては、例えばシチコリン等が挙げられる。
抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン等が挙げられる。
血圧降下剤としては、例えば、カルベジロール、オルメサルタンメドキソミル等が挙げられる。
高脂血症用剤としては、例えば、プラバスタチンナトリウム等が挙げられる。
抗生物質、抗菌剤としては、例えば、クラリスロマイシン、レボフロキサシン等が挙げられる。
糖尿病用剤としては、例えば、塩酸ピオグリタゾン等が挙げられる。
抗リウマチ薬としては、メソトレキセート、ブシラミン等が挙げられる。
ホルモン剤としては、例えばリン酸デキメタゾンナトリウム等が挙げられる。
アルカロイド系麻薬としては、塩酸コカイン等が挙げられる。
痛風治療薬としては、例えばコルヒチン等が挙げられる。
抗悪性腫瘍剤としては、例えば5-フルオロウラシル、等が挙げられる。
栄養成分としては、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル等が挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、アスタキサンチン、ビタミンA、リボフラビン、アスコルビン酸、酢酸トコフェロール等が挙げられる。
【0041】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物と組み合わせて使用可能な賦形剤としては、特に限定はなく、例えば、前述のスターチ類、アジピン酸、アルファー化デンプン、エリスリトール、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カンテン、キシリトール、グァーガム、アクリル酸デンプン、L-アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、あめ(粉)、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、イノシトール、エチルセルロース、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エリスリトール、塩化ナトリウム、オリーブ油、カオリン、カカオ脂、カゼイン、果糖、軽石粒、カルメロース、カルメロースナトリウム、乾燥酵母、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥硫酸ナトリウム、乾燥硫酸マグネシウム、カンテン、カンテン末、キシリトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸ニナトリウム、グリセリン、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、L-グルタミン、クレー、クレー粒、クロスカルメロースナトリウム、ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム・ヒドロキシプロピルスターチ・結晶セルロース、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質流動パラフィン、ケイヒ末、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、微粒子結晶セルロース、ゲンマイコウジ、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、ゴマ油、小麦粉、コムギデンプン、小麦胚芽粉、コメコ(米粉)、コメデンプン、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸フタル酸セルロース、サフラワー油、サラシミツロウ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、β-シクロデキストリン、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、ジメチルポリシロキサン、酒石酸、酒石酸水素カリウム、焼セッコウ、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化マグネシウム、スクワラン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、精製ゼラチン、精製セラック、精製白糖、精製白糖球状顆粒、精製モンタンワックス、ゼイン、セスキオレイン酸ソルビタン、セタノール、セッコウ、セトステアリルアルコール、セラック、ゼラチン、ソルビタン脂肪酸エステル、D-ソルビトール、第三リン酸カルシウム、ダイズ油、大豆油不けん化物、大豆レシチン、脱脂粉乳、タルク、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、中性無水硫酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、デキストリン、天然ケイ酸アルミニウム、トウモロコシシロップ、トウモロコシデンプン、トレハロース、トラガント、乳酸カルシウム、乳糖、ハイドロタルサイト、麦芽糖、白色セラック、白色ワセリン、ハクド、白糖、白糖デンプン球状顆粒、ハダカムギ緑葉エキス末、ハダカムギ緑葉青汁乾燥粉末、ハチミツ、パラチニット、パラチノース、パラフィン、バレイショデンプン、半消化体デンプン、人血清アルブミン、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、フィチン酸、ブドウ糖、ブドウ糖水和物、部分アルファー化デンプン、プルラン、プロピレングリコール、粉末還元麦芽糖水アメ、粉末セルロース、ペクチン、ベントナイト、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・グリコール、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、マルチトール、マルトース、D-マンニトール、水アメ、ミリスチン酸イソプロピル、無水乳糖、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム造粒物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、綿実粉、綿実油、モクロウ、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、無水ケイ酸、薬用炭、ラッカセイ油、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、粒状石灰石、粒状トウモロコシデンプン、流動パラフィン、dl-リンゴ酸、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム等の1種以上であり、これらのいずれかを単独で用いてもよいが、2種以上を配合することができる。
【0042】
本発明において滑沢剤としては、例えば、アラビアゴム末、カカオ脂、カルナウバロウ、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カロペプタイド、含水二酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウムゲル、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質流動パラフィン、結晶セルロース、硬化油、合成ケイ酸アルミニウム、ゴマ油、コムギデンプン、サラシミツロウ、酸化マグネシウム、ジメチルポリシロキサン、酒石酸カリウムナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、シリコーン樹脂、水酸化アルミニウムゲル、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、セタノール、ゼラチン、タルク、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、乳糖、ハードファット、白糖、バレイショテンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、フマル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ミツロウ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、モクロウ、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、流動パラフィン、リン酸等が挙げられる。
【0043】
本発明において崩壊剤とは、通常医薬品において崩壊剤として使用されるものを用いることができ、例えば、アジピン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、エリスリトール、果糖、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カンテン、キシリトール、グァーガム、クエン酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、酢酸フタル酸セルロース、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミナマグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、セスキオレイン酸ソルビタン、ゼラチン、セラック、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、タルク、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、デキストリン、デヒドロ酢酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、トラガント、トレハロース、乳糖、麦芽糖、白糖、ハイドロタルサイト、ハチミツ、パラチニット、パラチノース、バレイショデンプン、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ブドウ糖、ベントナイト、部分アルファー化デンプン、フマル酸一ナトリウム、ポリエチレングルコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・グリコール、ポリソルベート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、マルチトール、D-マンニトール、無水クエン酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、カルメロース等の1種以上であり、これらのいずれかを単独で用いてもよいが、2種以上を配合することができる。
【0044】
本発明において結合剤とは、例えば、アルギン酸、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体乳濁液、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アミノエチルスルホン酸、あめ(粉)、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルファー化デンプン、エステルガムH、エチルセルロース、オウバク末、加水分解ゼラチン末、カゼインナトリウム、果糖、カラメル、カラヤガム末、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロース、カルメロースナトリウム、カンテン、寒梅粉、キサンタンガム、牛脂硬化油、グァーガム、グリセリン、合成ケイ酸アルミニウム、軽質無水ケイ酸含有ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、硬化油、コポリビドン、ゴマ油、小麦粉、コムギデンプン、コメコ(米粉)、コメデンプン、酢酸ビニル樹脂、酢酸フタル酸セルロース、サラシミツロウ、酸化デンプン、ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、酒石酸ナトリウムカリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、セスキオレイン酸ソルビタン、セタノール、ゼラチン、セラック、ソルビタン脂肪酸エステル、D-ソルビトール、大豆レシチン、炭酸カルシウム、単シロップ、デキストリン、デンプン(溶性)、トウモロコシデンプン、トラガント、パラフィン、バレイショデンプン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ピペロニルブトキシド、ブチルフタリルブナルグリコレート、ブドウ糖、部分アルファー化デンプン、フマル酸、プルラン、プロピレングリコール、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・グリコール、ポリソルベート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール(完全けん化物)、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルピロリドン、ポリブテン、ポリリン酸ナトリウム、D-マンニトール、水アメ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の1種以上であり、これらのいずれかを単独で用いてもよいが、2種以上を配合することができる。
【0045】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、医薬活性成分を吸着させた後、または医薬活性成分を液体成分に溶解・吸着させた後、同シリカ粒子組成物と混和、粉末化することにより、医薬活性成分が吸着した多孔性シリカ粒子組成物とすることができる。吸着方法としては、固体の活性成分については、加温により溶融して吸着、または溶媒に溶解させたのち吸着させて溶媒を除去、或いは摂取可能な油脂等に溶解して吸着させる等の方法を挙げることができる。なお、医薬活性成分自体が液状のものについては、特に溶媒に溶解することなく、必要に応じて溶媒で希釈し、本発明の多孔性シリカ粒子組成物に吸着させて粉末とすればよい。このようにして得られる粉末におけるシリカ粒子組成物と医薬活性成分との配合比(重量比)は、本発明の多孔性シリカ粒子組成物:医薬活性成分=1:0.0001~1:10程度である。吸着させる医薬活性成分は、室温で液体のものが好適であり、例えば、バルプロ酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、漢方の各種エキス、セレギリン、ニトログリセリン、ニコチン、シクロピロックス・オラミン、トルブテロール、プロパノロール、ブプラノロール、アレコリン、メタアンフェタミン、エトサキシミド、メルプロン酸、プリロカイン、ジクロニンおよびアンフェタミニル等である。
【0046】
次に、固体分散体について詳述する。固体分散体は、固体状態で不活性な担体及び/又はそのマトリックス中に、1種類またはそれ以上の活性成分が分散したもの(W.L.Chiou, S.Riegelman:J.Pharm.Sci.,60,1281,1971)である。特に難溶性薬物を非晶質固体分散体とすることにより、溶解性やバイオアベイラビリティの飛躍的な向上や、空腹時と満腹時の血中濃度に差がなくなること等が知られている。固体分散体は、本発明の多孔性シリカ粒子組成物に、医薬活性成分を、または同活性成分とマトリックス成分を、(1)溶液で溶解したのち溶媒を除去する方法、(2)加熱により溶融したのち冷却する方法または(3)混合したのち機械的な衝撃を与える方法等、通常の固体分散体の製造方法によって製造することができる。医薬活性成分とマトリックス成分の配合比(重量比)は、医薬活性成分が非晶質化可能な比率やその医薬活性成分の非晶質が安定な範囲で適宜選べばよく、通常5:1~1:10の範囲である。同固体分散体におけるシリカ粒子組成物と医薬活性成分との配合比(重量比)は、本発明の多孔性シリカ粒子組成物:医薬活性成分=1:0.0001~1:10の範囲である。また、同固体分散体における本発明の多孔性シリカ粒子組成物と医薬活性成分及びマトリックス成分との配合比(重量比)は、通常、本発明の多孔性シリカ:「医薬活性成分+マトリック成分」=1:0.0001~1:100の範囲が好ましい。
【0047】
ここで固体分散体に適用可能な医薬活性成分としては、通常、難溶性のものであり、例えば、インドメタシン、イトラコナゾール、ニフェジピン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、ケトロラック、フェルビナク、ジフェロナク、サリチル酸、サリチル酸グリコール、アセチルサリチル酸、フルフェナム酸、メフェナム酸、アセメタシン、アルクロフェナク、イブプロフェン、スリンダク、トルメチン、ロベンザリット、ペニシラミン、オキサプロジン、ジフルニサル、フェンブフェン、フェンチアザク、ナプロキセン、プラノプロフェン、チアプロフェン、スプロフェン、オキサプロジン、エトドラク、ザルトフェン、テルミサルタン、ウルソデオキシコール酸、塩酸マプロチリン、塩酸パパベリン、ノルエピネフリン、塩化ベルベリン、塩酸セトラキサート、スルファメトキサゾール、メトロニダゾール、ジアゼパム、シメチジン、ファモチジン、塩酸ブロムヘキシン、塩酸ジフェニドール、カフェイン、ジゴキシン、塩酸ペラパミル、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、ロキシスロマイシン、ミデカマイシン等が挙げられる。
【0048】
また、固体分散体に適用可能なマトリックス成分としては、例えば、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンコポリマーおよびメタクリル酸コポリマー等が挙げられる。これらのマトリックス成分は2種以上を組み合わせて使用することも可能であり、医薬活性成分の種類、使用方法等に応じて適宜組み合わせて使用すればよい。
【0049】
固体分散体に用いる本発明の多孔性シリカ粒子組成物の形状は、平均粒子径10~150μmの球状または平均粒子径1~40μmの非球状のものを用いることができ、薬物の性質、固体分散体の所望の物性によって適宜選択することができる。例えば、医薬活性成分を本発明の多孔性シリカ粒子組成物の空隙に保持させたい場合は球状のものを用いるのが好ましい。また、薬物と本発明の多孔性シリカ粒子組成物の微粉体の固体分散体としたい場合は、非球状のものを用いるのが好ましい。
【0050】
固体分散体には、本発明の多孔性シリカ粒子組成物、活性成分及びマトリックス成分以外に、界面活性、結合剤、流動化剤など、医薬品の造粒時に添加可能な成分を配合することができる。固体分散体の濡れ性改善、製造工程のためなど、通常の造粒工程と同じ目的である。
【0051】
次に、苦味マスキング粒子組成物について詳述する。当該マスキング粒子組成物は、本発明の多孔性シリカ粒子組成物、苦味薬物、必要に応じてポリマーから構成され得るものである。苦味マスキング粒子組成物の粒子構造としては、(1)薬物を吸着させた本発明の多孔性シリカ粒子組成物をポリマーで被覆した構造、(2)薬物を内包したポリマーを吸着させた本発明の多孔性シリカ粒子組成物の構造、又は(3)それらの両方を有した構造をあげることができる。また、これら(1)~(3)の構造の粒子の凝集物や造粒物もあげることができる。
【0052】
ここで苦味マスキングとは、有効成分を含有した苦味マスキング粒子組成物又は医薬組成物が口腔投与又は口腔内で崩壊した後、飲み込むまで苦味成分の苦味を感じないことであり、少なくとも30秒間、好ましくは60秒間苦味を感じないことである。
なお、本発明で苦味薬物は苦味を有する有効成分と同じ意味で用いる。
【0053】
本発明の苦味マスキングで使用するポリマーは、薬理学的に許容し得るポリマーであれば、特に限定されるものではなく、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマー等が挙げられる。本発明において、「水不溶性ポリマー」は、20℃の水に対する溶解度が、10g/L未満であるポリマーを意味する。
水溶性ポリマーとしては、水溶性セルロース誘導体、水溶性ビニルポリマー誘導体、水溶性アクリル酸コポリマー、多価アルコールポリマー等が挙げられる。水不溶性ポリマーとしては、水不溶性セルロースエーテル、水不溶性アクリル酸コポリマー等が挙げられる。
【0054】
ポリマーとしては、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、メチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、アミノアクリルメタアクリレートコポリマーE、アミノアクリルメタアクリレートコポリマーRS、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アセチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等を挙げることができる。
それらの中で、好ましくは、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、メチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、アミノアクリルメタアクリレートコポリマーE、アミノアクリルメタアクリレートコポリマーRS、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、メチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを、より好ましくは、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アミノアクリルメタアクリレートコポリマーE及びエチルセルロースを挙げることができる。
【0055】
本発明の苦味マスキング粒子組成物においては、使用するポリマーの皮膜形性をより良いものとするため、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール400~6000及びポリソルベート80などの可塑剤やタルク、モノステアリン酸グリセリン及びステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を配合してもよい。
【0056】
薬物とポリマーを本発明の多孔性シリカ粒子組成物に含有させた本発明の苦味マスキング粒子組成物の配合割合を以下に示す。
薬物とポリマーの配合割合は、好ましくは薬物:ポリマー=10:1~1:10であり、より好ましくは薬物:ポリマー=3:1~1:4であり、さらに好ましくは薬物:ポリマー=2:1~1:3、よりさらに好ましくは薬物:ポリマー=2:1~1:2である。
薬物とポリマーの合計量に対するシリカの配合割合は、好ましくは(薬物+ポリマー):シリカ=4:1~1:100であり、より好ましくは(薬物+ポリマー):シリカ=3:1~1:10であり、さらに好ましくは(薬物+ポリマー):シリカ=2:1~1:4である。
【0057】
薬物をシリカに含有させ、ポリマーでコーティングした本発明の粒子組成物の配合割合を以下に示す。
薬物とシリカの配合割合は、好ましくは薬物:シリカ=2:1~1:4であり、より好ましくは薬物:シリカ=1:1~1:3、さらに好ましくは薬物:シリカ=1:1~1:2である。
シリカとポリマーの配合割合は、好ましくはシリカ:ポリマー=5:1~1:5であり、より好ましくはシリカ:ポリマー=3:1~1:3であり、さらに好ましくはシリカ:ポリマー=2:1~1:2である。
【0058】
薬物、ポリマー、シリカの配合割合は、薬物の苦味の強さ、薬物の粒子径、本発明の粒子組成物の製造方法、本発明の粒子組成物の所望のサイズにより、適宜配合割合を選択できる。
【0059】
本発明で用いる苦味薬物は、苦味や酸味など不快な味を有する薬物の総称であり、水溶性、難溶性のどちらでもよい。具体的には、アセトアミノフェン、無水カフェイン、フマル酸クレマスチン、塩酸プロメタジン、メキタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、エピナスチン塩酸塩、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸エフェドリン、デキストロメトルファン、塩酸ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸ブロムヘキシン、サリチルアミド、イブプロフェン、フェナセチン、ジクロフェナクナトリウム、クエン酸モサプリド、キニーネ、ジギタリス、塩化ベルベリン、塩酸メクロフェノキサート、塩酸エチレフリン、塩酸トリヘキシフェニジル、エノキサシン等があげられる。
【0060】
本発明の苦味マスキング粒子組成物には、製造工程を容易にするため、均一化用、流動化用、凝集防止用などの成分を配合することができる。均一化用、流動化用、凝集防止用などの成分としては、例えば、タルク、結晶セルロース、スターチ、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化チタン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム等をあげることができる。
本発明の苦味マスキング粒子組成物の表面状態を所望の物性に改質するため、表面改質素材を粒子表面にコーティング又は付着させることができる。表面改質素材としては、例えばマンニトール、キシリトール、エリスリトールなどの一般的な糖アルコールに加えて、乳糖水和物、白糖等も挙げることができる。
【0061】
以下、薬物をシリカに含有させ、その表面をポリマーで被覆する苦味マスキング粒子組成物の製造方法について説明する。
【0062】
粒子の造粒方法としては、通常の薬物コーティング層を形成する造粒工程で用いられている方法で行うことができ、例えば、撹拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、噴霧乾燥式流動層造粒法及び押し出し造粒法などである。撹拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法が好ましい。
【0063】
撹拌造粒法で本発明の粒子組成物を製造する場合、あらかじめ薬物の溶解・懸濁液及びポリマーの溶液・懸濁液を調製し、撹拌造粒機の槽内で二酸化ケイ素を撹拌させながら、前述の薬物の溶解・懸濁液を添加し撹拌し、ついで前述のポリマーの溶液・懸濁液を添加し造粒する。また、薬物の溶解・懸濁液を添加とポリマーの溶液・懸濁液を添加の間に乾燥を行うことにより、より苦味マスキング効果を高めることができる。必要に応じて、均一化用、流動化用、凝集防止用などの成分を添加することができる。造粒後は、常法に従い二次乾燥を行ったのち整粒することができる。薬物溶液量や溶液の粘度のため、一度に薬物溶液やポリマー溶液を添加して造粒できない場合は、造粒-乾燥を薬物溶液量又はポリマー溶液量に応じて複数回繰り返すことができる。溶液の添加方法は、滴下または噴霧で行ってもよい。撹拌造粒時の温度は、室温下、例えば10~40℃で行うことができ、撹拌造粒中に水分を一部除去したい場合は、40~90℃程度に加温してもよい。
【0064】
薬物溶液の添加量は、シリカに対して、好ましくはシリカ(g):薬物溶液(g)=100:1~1:8の範囲であり、より好ましくはシリカ:薬物溶液=50:1~1:5の範囲であり、さらに好ましくはシリカ:薬物溶液=10:1~1:5の範囲である。
ポリマー溶液の添加量は、シリカに対して、好ましくはシリカ(g):ポリマー溶液(g)=2:1~1:8の範囲であり、より好ましくはシリカ:ポリマー溶液=1:2~1:5の範囲であり、さらに好ましくはシリカ:ポリマー溶液=1:3~1:4の範囲である。
薬物溶液とポリマー溶液の合計液量は、シリカに対して、好ましくは合計液量(g)/シリカ(g)が9以下の範囲、より好ましくは合計液量/シリカが6以下の範囲、さらに好ましくは合計液量/シリカが6以下の範囲である。
このときの薬物溶液及びポリマー溶液の合計添加液量は、1回の撹拌造粒工程で添加可能な量である。乾燥して溶媒を除去した後、再度撹拌造粒を行う場合は同量の溶液を添加することができ、複数回繰り返しても同様である。
【0065】
流動層造粒法で本発明の粒子組成物を製造する場合、流動層内でシリカを流動させながら、薬物の溶液を噴霧したのち、ポリマーの溶液を噴霧し、造粒すればよい。必要に応じて均一化用、流動化用、凝集防止用などの成分を前述溶液に配合又は別途その溶液を噴霧することができる。温度、送風量、溶液濃度、溶液添加速度は、所望の成分により設定し、流動層造粒の常法に従って行えばよい。
【0066】
転動造粒法で本発明の粒子組成物を製造する場合、シリカを転動させながら、薬物の溶液を噴霧したのち、ポリマーの溶液を噴霧し、造粒すればよい。必要に応じて均一化用、流動化用、凝集防止用などの成分を前述の溶液に配合又は別途その溶液を噴霧することができる。温度、送風量、溶液濃度、溶液添加速度は、所望の成分により設定し、流動層造粒の常法に従って行えばよい。
【0067】
造粒後、さらに乾燥が必要な場合は、棚式乾燥、流動層乾燥など通常の乾燥方法により、所望の水分含量になるように乾燥することができる。乾燥後、整粒や解砕を行い、粒径を調節することができる。
【0068】
以下、薬物及びポリマーをシリカに含有する本発明の苦味マスキング粒子組成物の製造方法について説明する。
粒子の造粒方法としては、通常薬物を含有する造粒工程で用いられる方法で行うことができ、例えば、撹拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、噴霧乾燥式流動層造粒法及び押し出し造粒法などである。流動層造粒法、転動造粒法、撹拌造粒法が好ましい。
【0069】
流動層造粒法で本発明の苦味マスキング粒子組成物を製造する場合、流動層内でシリカを流動させながら、薬物及びポリマーの溶解液及び/又は懸濁液を噴霧し、造粒すればよい。必要に応じて均一化用、流動化用、凝集防止用などの成分を配合又は別途噴霧することができる。温度、送風量、溶液添加速度は、所望の成分により設定し、流動層造粒の常法に従って行えばよい。
【0070】
転動層造粒法で本発明の苦味マスキング粒子組成物を製造する場合、シリカを転動させながら、薬物およびポリマーの溶液を噴霧し、造粒すればよい。必要に応じて均一化用、流動化用、凝集防止用などの成分を添加することができる。温度、噴霧速度は、所望の成分により設定し、転動層造粒の常法に従って行えばよい。
【0071】
噴霧乾燥法で本発明の苦味マスキング粒子組成物を製造する場合、シリカ、薬物及びポリマーの溶液を調製したのち、噴霧・造粒すればよい。必要に応じて均一化用、流動化用などの成分を添加することができる。溶液濃度、温度、噴霧速度は、所望の成分により設定し、噴霧乾燥の常法に従って行えばよい。
【0072】
撹拌造粒法で本発明の粒子組成物を製造する場合、撹拌造粒機の槽内でシリカを撹拌させながら、薬物及びポリマーの溶液・懸濁液を添加し造粒すればよい。造粒後に乾燥を行い、所望の粒径に整粒することができる。薬物及びポリマーの溶液量が多く造粒できない場合又は溶液の粘度のため造粒できない場合は、造粒-乾燥を含有薬物量に応じて複数回繰り返すことができる。溶液の添加方法は、滴下または噴霧で行ってもよい。撹拌造粒時の温度は、室温下、10~40℃で行うことができ、撹拌造粒中に水分を除去したい場合は、40~80℃程度に加温してよい。
【0073】
造粒後、さらに乾燥が必要な場合は、棚式乾燥、流動層乾燥など通常の乾燥方法により、所望の水分含量になるように乾燥することができる。乾燥後、整粒や解砕を行い、粒径を調節することができる。
【0074】
本発明の粒子組成物の製造法において、薬物溶液、ポリマー溶液又は薬物とポリマーの混合溶液は、薬物又はポリマーが溶解状態または分散・懸濁状態のどちらであっても構わない。
【0075】
医薬活性成分を本発明の多孔性シリカ粒子組成物に吸着させた後、コーティングを行い、苦味マスキング以外に腸溶性などの溶出制御を行うことができる。コーティング方法は、製造装置は限定されず、流動層造粒機、転動流動層造粒機および遠心転送流動層機などを用いて行うことができる。コーティング成分としては、通常の皮膜剤、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアクリルメタアクリレートコポリマー-E、アミノアクリルメタアクリレートコポリマー-RS、メタアクリル酸コポリマー-L、メタアクリル酸コポリマー-LD、メタアクリル酸コポリマー-Sを挙げることができ、また、これらの皮膜剤は2種以上を組み合わせて使用することも可能である。さらに、コーティング剤の使用量は、溶出時間の調整など目的に応じて決定すればよい。例えば、使用量の調節によって膜厚を調製し、溶出時間を調整することができる。
【0076】
本発明の多孔性シリカ粒子組成物は、上記のように錠剤に成形した場合、錠剤硬度の低下抑制や錠剤強度の維持、さらには錠剤の崩壊時間を短縮させることができる。錠剤への配合量(重量比)としては、錠剤強度の維持には0.1~10%程度、崩壊時間の短縮には0.1~10%程度の割合で配合すればよい。
【0077】
また、健康食品やサプリメントの領域では、ビタミン、アミノ酸、糖類、タンパク質、脂肪等の主成分や通常の健康食品、サプリメント用添加剤を本発明の多孔性シリカ粒子組成物と前述の医薬品の錠剤、粉末、顆粒またはカプセルなどと同様に混合、製剤化することにより目的の健康食品やサプリメントの通常製剤を製造することができる。また、化粧品領域でも、通常使用し得る化粧品用有効成分や通常使用し得る化粧品用添加剤を本発明の多孔性シリカ粒子組成物と通常の化粧品の製造方法を用いて混合、製剤化することにより、ローション、ジェル、パウダー等の化粧品を目的に応じて製造することができる。
【0078】
本発明の多孔性シリカ粒子の特徴の一つは、通常の賦形剤用のシリカよりも圧縮成形性に優れていることである。通常のシリカは他の賦形剤よりも圧縮成型性が低く、シリカ単体では打錠することができず、他の医薬添加物と混合して打錠する場合も、圧縮成形性を低下させやすい性質を有している。このような性質は、具体的には次の2つの評価方法で測定、確認することができる。一つは多孔性シリカ粒子組成物単体で打錠した時に打錠障害なく打錠が可能であるかどうかということである(後述の成形性Aの試験方法)。もう一つは乳糖と混合したのち打錠した時に打錠障害なく打錠可能かどうかということである(後述の成形性B/Cの試験方法)。具体的な条件は後述の実施例で示す。
【実施例0079】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例で得られた試料についての評価は、次の方法により行った。
【0080】
[平均粒子径]
平均粒子径はマイクロトラック・ベル(株)製のレーザー解析・散乱式粒度分布測定装置MT3300EXIIを用いて測定し、マイクロトラック・ベル(株)製のDMS2 Ver11.1.0-257F2を用いて解析した。測定条件は、粒子透過性を透過、粒子屈折率を1.50、粒子形状を非球形、溶媒を窒素、溶媒屈折率を1.00とした。
【0081】
[BET比表面積・細孔容積・細孔分布の相対幅]
BET比表面積・細孔容積はマイクロトラック・ベル株式会社製のBELSORP-miniIIにて窒素吸着等温線を測定し、BELMaster Ver6.3.2.1により解析し、算出した。具体的には、比表面積は直線性のよい連続した5点以上を選択して窒素吸着量よりBET多点法を用いて算出した。細孔分布は相対圧P/P
0=0.385~0.990の時の値を採用し、BJH法で細孔分布曲線、モード径および細孔容積を求めた。細孔分布の相対幅(γ)は、その細孔分布曲線の縦軸を体積分布としてモード径(D
m)を求め、モード径の体積分布値の半値に相当する最小細孔直径(D
s)と最大細孔径(D
l)を求め、最大細孔径と最小細孔径の差をモード径の体積分布値(V
max)で除して求めた。式(1)に計算式を、
図1に算出方法を図示した。
【0082】
【0083】
[吸油能]
吸油能は、JIS K 5101-13-2 第13部:吸油量―第1節:煮あまに油法を用いて測定した。
【0084】
[吸水能]
吸水能は、上記吸油能の試験に基づいて、煮あまに油を水に変えて測定した。
【0085】
[成形性]
岡田精工株式会社製の圧縮成形性測定評価装置TAB FLEXで、標準杵φ11.3平を用いて打錠し、岡田精工株式会社製のロードセル式錠剤硬度計PC-30型を用いて、得られた錠剤の硬度を測定して比較した。
成形性A:上下杵臼表面にステアリン酸マグネシウムを薄く塗り、対象となる試料を200mg秤量して臼内に投入し、設定成形圧5kNで1Cycle運転モードにて圧縮成形して錠剤を得、硬度を測定した。
成形性B:製剤化を考慮して、100M乳糖(DMV-Fronterra Excipients K.K製)90wt%に対象となる試料10wt%を混合して打錠末を調製し、上下杵臼表面にステアリン酸マグネシウムを薄く塗り、打錠末を500mg秤量して臼内に投入し、設定成形圧10kNで1Cycle運転モードにて圧縮成形して錠剤を得、硬度を測定した。
成形性C:100M乳糖をFlowLac 100(メグレジャパン株式会社製)に代えた以外は、成形性Bの製剤方法と同様に圧縮成形して錠剤を得、硬度を測定した。
【0086】
[粒子形状]
粒子形状は、日立ハイテクノロジーズ株式会社製の走査型電子顕微鏡S-3000N型を用いて2次電子像の粒子の観察を行った。SEM写真より、画像解析ソフトImageJ(Wayne Rasband作)を使用して本発明の多孔性シリカ粒子の長径と短径を測定した。短径を長径で除し球形度を求めた。
粒子の表面状態は、日本電子株式会社製の強励磁コニカルレンズFE SEM JSM-6700F型を用いて2次電子像の表面観察を行った。板様状粒子の平面直径、厚さ、粒状粒子の直径は本発明の多孔性シリカ粒子の表面のSEM写真より長さを測定した。
【0087】
[結晶性]
結晶性は、ブルカー・エイエックスエス株式会社製のX線回折装置D8 ADVANCEを用いて測定し、そのチャートより結晶に由来するピークがないことより非晶質であることを確認した。測定条件は、2θ範囲5°~40°、X線源としてCuを使用、BraggBrebtano集中光学系で使用出力40kV-40mA、検出器としてLYNXEYE XEを使用して回転試料ステージで測定した。
【0088】
[実施例1]
塩化カルシウム(和光純薬(株)製)44.84gを水800mLに溶かし、苛性ソーダ(和光純薬(株)製)22.72gを水3Lに溶かした溶液に加えた。この溶液に、3号ケイ酸ソーダ((株)北陸化成工業所製)82.72gを水200mLに溶かして加えたのち、40℃に昇温した。3号ケイ酸ソーダ330.9gを水800mLに溶かして加えた。濃硝酸350.94gを水280.8mLで希釈した溶液を加えた後、70℃に昇温し、1時間保持したのち、室温まで冷却し、白色の懸濁液を得た。この懸濁液をろ過・水洗し、白色のケーキを得た。このケーキを水に懸濁し、入熱180℃、排熱120℃、アトマイザー回転数25,000rpmの条件で噴霧乾燥(大川原化工機(株)製スプレードライヤL-8型)して、シリカの白色粉末を得た。
【0089】
[実施例2]
塩化カルシウム16.82gを水240mLに溶かし、苛性ソーダ8.52gを水900mLに溶かした溶液に加えた。この溶液に、3号ケイ酸ソーダ41.11gを水60mLに溶かして加えたのち、40℃に昇温した。3号ケイ酸ソーダ124.43gを水240mLに溶かして加えた。濃硝酸105.02gを水90mLで希釈した溶液を加えた後、70℃に昇温し、1時間保持したのち、室温まで冷却し、白色の懸濁液を得た。この懸濁をろ過・水洗し、白色のケーキを得た。このケーキに水を加えて懸濁液を調製し、入熱180℃、排熱120℃、アトマイザー回転数25,000rpmの条件で噴霧乾燥(大川原化工機製スプレードライヤL-8型)して、シリカの白色粉末を得た。
【0090】
[実施例3]
塩化カルシウム23.54gを水280mLに溶かし、苛性ソーダ11.92gを水1050mLに溶かした溶液に加えた。この溶液に、3号ケイ酸ソーダ43.55gを水70mLに溶かして加えたのち、40℃に昇温した。3号ケイ酸ソーダ174.21gを水280mLに溶かして加えた。濃硝酸147.02gを水120mLで希釈した溶液を加えた後、70℃に昇温し、1時間保持したのち、室温まで冷却し、白色の懸濁液を得た。この懸濁をろ過・水洗し、白色のケーキを得た。このケーキに水を加えて懸濁液を調製し、入熱180℃、排熱120℃、アトマイザー回転数25,000rpmの条件で噴霧乾燥(大川原化工機製スプレードライヤL-8型)して、シリカの白色粉末を得た。
【0091】
[実施例4]
硝酸カルシウム(米山化学工業(株)製)479.0gを水に溶かして3000mLの溶液に調製し、苛性ソーダ113.7gを水に溶かして16000mLに調製した溶液に加えた。この溶液に3号ケイ酸ソーダ408.6gを水600mLで希釈した溶液を調製して加えたのち、70℃に昇温した。次に3号ケイ酸ソーダ1634.3gを水2400Lで希釈した溶液を調製して加えた。この溶液に、濃硝酸933.5gを水760mLで希釈した溶液を加え、白色の懸濁液を得た。この懸濁液を冷却後、ろ過して、ろ過・水洗し、白色のケーキを得た。このケーキに水を加えて固形分濃度7.5%の懸濁液を調製し、指数1.0の条件で湿式粉砕機(特殊機化工業(株)製、T.K.マイコロイダーM型)で粉砕した。この懸濁液を入熱180℃、排熱120℃の条件でアトマイザーより噴霧乾燥(大川原化工機製スプレードライヤL-8型)して、シリカの白色粉末を得た。
【0092】
[実施例5]
水酸化カルシウム(岡山県共同石灰(株)製)146.3gを水21Lに懸濁させて消化し、濃硝酸189.5gに水を加えて153mLに調製した溶液に加えた。この溶液に3号ケイ酸ソーダ415.9gを水に溶かして1.5Lの溶液を調製して加えたのち、70℃に昇温した。次に3号ケイ酸ソーダ1663.7gを水に溶かして2Lの溶液を調製して加えたのち80℃に昇温した。この溶液に、濃硝酸1705.5gに水を加えて1.38Lに調製した溶液を加えたのち1時間保持し、白色の懸濁液を得た。この懸濁液を冷却後、ろ過して、ろ過・水洗し、白色のケーキを得た。このケーキに水を加えて懸濁液を調製し、噴射圧200MPaの条件で湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバーストミニ)で処理した。入熱180℃、排熱120℃、アトマイザー回転数25,000rpmの条件で噴霧乾燥(大川原化工機製スプレードライヤL-8型)して、シリカの白色粉末を得た。
【0093】
[実施例6]
カルシウム濃度0.38%の生石灰溶液20000Lに、39.5%の硝酸188kgを水152Lで希釈した溶液を加えた。この液に3号ケイ酸ソーダ410kgに水1500Lで希釈した溶液を調製して加えた。60℃に昇温したのち、3号ケイ酸ソーダ1640kgを水2000Lで希釈した溶液を加えた。続いて、39.5%の硝酸1700kgを水1400Lで希釈した溶液を加えたのち、室温に冷却し懸濁液を得た。この懸濁液をデカンテーションにより、中性になるまで水洗したのち、この懸濁液を噴射圧100MPaの条件で湿式微粒化装置((株)スギノマシン製、スターバースト100 HJP-25080)で処理した。入熱310℃、排熱150℃の条件でアトマイザーにより噴霧乾燥(アシザワニロアトマイザー(株)製S-160N/R型)して、流動性の良い非晶質シリカの白色粉末を得た。得られたシリカ粉末の水分含量、即ち、乾燥減量は2.3%、また強熱減量は5.0%であった。また、同シリカ粉末の二酸化ケイ素含量は99.3%、球形度は0.93であり、XRDチャート(
図2)はハローパターンを示した。
【0094】
[実施例7]
実施例6で得られた非晶質シリカ粉末10gをP圧0.7MPa、G圧0.4MPaの条件でジェットミル((株)セイシン製、シングルトラックジェットミルSTJ-200)を用いて粉砕し、非晶質シリカの白色粉末9.8kgを得た。
【0095】
[実施例8]
実施例6の湿式微粒化装置で処理した懸濁液208.8gを6本の遠沈管に分けて約20gのアセトンを加えてよく撹拌したのち、遠心分離し上澄みを除いた。次いで各遠沈管の内容物全量が約35gとなるようにアセトンに加えてよく振蕩し、遠心分離し上澄みを除き、この操作を3回繰り返した。スラリー固形分濃度が約10%になるようにアセトンを加えてトレーに広げ10日間風乾したのち、17時間真空乾燥し、20meshの篩で篩過して、非晶質シリカの白色粉末約6gを得た。
【0096】
[比較例1~6]
比較例1はアドソリダー101(製品名、フロイント産業(株)製)、
比較例2はSyloid 244FP(製品名、W.R.Grace and Company社製)、
比較例3はSyloid XDP 3050(製品名、W.R.Grace and Company社製)、
比較例4はPartech SLC(製品名、Merck KGaA製)、
比較例5はAeroperl 300(製品名、Evonik Industries AG製)、
比較例6はアエロジル200(製品名、日本アエロジル(株)製)を用いた。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
成形性の評価で「不可」は、全く圧縮成形されず、或いは臼から出してから極めて短時間内に崩壊したことを示す。数値の記載されたものは、打錠障害なく圧縮成形でき、測定した硬度を示す。
【0101】
[実施例9]
200M乳糖とコーンスターチの7:3混合物74%、微結晶セルロース(ゼオラスPH-101、旭化成製)20%、実施例6の非晶質シリカ粉末5%、ステアリン酸マグネシウム1%の割合で混合し、株式会社菊水製作所製ロータリー打錠機VIRGOでφ8平スミ角の杵を用いて200mg/錠で回転数30rpmとして設定硬度70Nとして打錠した。得られた錠剤につき日本薬局方の錠剤摩損度試験を行った。同様の操作で、比較例1、2、6のシリカも錠剤を作成し摩損度を測定した。
【0102】
【0103】
本発明の多孔性シリカ粉末は、比較例で示す市販のシリカ粉末よりも、錠剤に配合した場合、錠剤の摩損度を低減させた。
【0104】
[実施例10]
実施例9で作製した錠剤を40℃75%RHの恒温槽に開放して保存し、1、2,4週間後の日本薬局方の崩壊試験を行った。硬度測定は岡田精工株式会社製ロードセル式錠剤硬度計PC-30を用いた。崩壊試験は富山産業株式会社製崩壊試験器NT-400を用いた。
【0105】
【0106】
本発明の多孔性シリカ粉末は、比較例で示す市販のシリカ粉末よりも、錠剤に配合した場合、40℃75%RHの加湿条件で保存した場合でも崩壊時間の遅延は起こさなかった。
【0107】
実施例11
[製剤例:オイル含有OD剤]
下記の表の割合でヘンプシードオイル(製品名 Biotuscany s.r.l製)を実施例6の多孔性シリカ粒子組成物を吸着させて粉末化し、エフメルト Type C(製品名、富士化学工業(株)製、口腔内速崩壊錠用賦形剤)、微結晶セルロース(旭化成(株)製、セオラスPH-101)、無水リン酸水素カルシウム(富士化学工業(株)製、フジカリンSG)、コーンスターチ( 製)、クロスポビドン(BASF社製、コリドンCL-F)、実施例6の多孔性シリカ粒子組成物とストロベリーフレーバーの2:1粉末、をアスパルテーム(味の素製)、ステアリン酸マグネシウム(日本油脂(株)製)、実施例6の多孔性シリカ粒子組成物を混合したのち、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製、VIRGO)を用でφ10平スミ角の杵を用い、350mg/錠、設定硬度55N、回転数40rpmの条件で打錠した。
【0108】
【0109】
【0110】
本発明のシリカ粒子組成物を後添加した実施例11のOD錠は後添加なしの比較例7のOD錠より、崩壊時間が短かった。更に、一般的にオイルを吸着させた打錠末は成形性が悪く、
図6の比較例7の様に成形圧がばらつくため表7の様に重量にばらつきが発生する。本発明のシリカ粒子組成物を後添加することで
図6の実施例11の様に、打錠時の成形圧を下げることが出来、成形圧のばらつきも小さくすることも出来、表7の様に重量ばらつきも小さくなった。
【0111】
[実施例12]
製剤例:固体分散体
イトラコナゾールと実施例6の多孔性非晶質シリカ粉末を7:3の割合でジクロロメタン/エタノール混合溶媒(8/2=v/v)に混合し、日本ビュッヒ株式会社製ミニスプレードライヤーB-290を用い、入熱70℃、排熱50℃で乾燥を行い、イトラコナゾールの固体分散体の白色粉末を得た。比較例3、4についても同様の操作を行い、イトラコナゾール固体分散体の白色粉末を得た。また、イトラコナゾールのみの噴霧乾燥品も調製した。これらの試料の安定性を見るため、40℃75%RH開放下で1ヶ月保存した。イトラコナゾール含有量が30mgとなるように各試料を採取し、日本薬局方の溶出試験に従い、37℃の日本薬局方1液500mLに加えイトラコナゾールの溶出量を特定の経過時間(30、60、120分)にて測定した。製造直後の測定値をA欄に、40℃75%RH開放下で1ヶ月保存した試料の測定値をB欄に記入した。
【0112】
【0113】
本発明の多孔性粉末は、イトラコナゾールの固体分散体を形成でき、また、多孔性粉末とイトラコナゾールの固体分散体の安定性は比較例のシリカよりもイトラコナゾールの溶出性が高くすなわち安定性が高いことを示した。
【0114】
[実施例13]
製剤例:固体分散体
ニフェジピンとコポビドン(BASF製コリドンVA64)と実施例6の多孔性非晶質シリカ粉末を9:1:3の割合でジクロロメタン/エタノール混合溶媒(8/2=v/v)に混合し、日本ビュッヒ株式会社製ミニスプレードライヤーB-290を用い、入熱70℃、排熱50℃で乾燥を行い、ニフェジピンの固体分散体の粉末を得た。比較例3、4についても同様の操作を行い、ニフェジピン固体分散体の粉末を得た。また、ニフェジピンとコポビドンのみも噴霧乾燥を行い、粉末を得た。これらの試料の安定性を見るため、40℃75%RH開放下で1週間保存した。ニフェジピン含有量が7mgとなるように各試料を採取し、日本薬局方の溶出試験に従い、37℃の日本薬局方2液500mLに加えニフェジピンの溶出量を特定の経過時間(30、60、120分)にて測定した。製造直後の測定値をA欄に、40℃75%RH開放下で1週間保存した試料の測定値をB欄に記入した。
【0115】
【0116】
本発明の多孔性粉末は、ニフェジピンの固体分散体を形成でき、また、多孔性粉末を用いた固体分散体の安定性は比較例のシリカよりもニフェジピンの溶出性が高く、安定性が高いことを示した。
【0117】
[実施例14]
製剤例:固体分散体
実施例7及び8の多孔性非晶質シリカ粉末について、実施例12と同様の方法で、イトラコナゾールの固体分散体を製造し、溶出試験を行った。
【0118】
【0119】
[実施例15]
製剤例:苦味マスキングOD錠
ジフェンヒドラミン塩酸塩を適量の水に溶かし実施例6の多孔性非晶質シリカ粉末に吸着させたのち、乾燥した。その粉末を流動層造粒装置に入れ、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの水溶液を噴霧し、白色粉末を得た。その粉末、F-MELTおよびステアリン酸マグネシウムを混合したのち、圧縮成形してジフェンヒドラミン塩酸塩の口腔内速崩壊錠を得た。圧縮成形は株式会社畑鐵工所ロータリー打錠機HT-AP18SS-IIを用いφ9平スミ角の杵を使用し回転数20rpm、設定硬度70Nで行った。各成分は以下の錠剤配合量となるように配合した。
ジフェンヒドラミン塩酸塩 4mg
多孔性非晶質シリカ粉末 8mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 6mg
F-MELT 50mg
スターチ 80.5mg
ステアリン酸マグネシウム 1.5mg
(合計150mg/錠)
【0120】
<官能試験>
成人5人に錠剤を口に含み、苦味の有無を確認したところ、5人全員から「苦味はない」との回答を得た。
【0121】
<溶出試験>
得られた錠剤につき、日本薬局方の溶出試験に従い、37℃で溶出液を水として試験液量900mLに錠剤を入れてジフェンヒドラミン塩酸塩の溶出量を測定した。
【0122】
【0123】
十分に苦味マスキングができ、マスキングによる溶出阻害も起こらない口腔内崩壊錠を作製可能であった。
【0124】
[実施例16]
実施例6の多孔性シリカ粉末100gを、流動層造粒機((株)パウレック製、マルチプレックスMP-01)に入れ、ジフェンヒドラミン塩酸塩40gを水160gに溶解した溶液を、給気温度55~60℃、排気温度26~29℃、風量0.3~0.5m3/h、液速7~8g/minの条件で噴霧した。次いで、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー分散液(エボニック社製、オイドラギットNE30D)95.6g、メチルセルロース(信越化学工業(株)製、メトローズSM-4)18.8g、タルク(日本タルク社製)23.9gを水840gに溶解・懸濁させた溶液を、同条件で噴霧したのち、マンニトール(三菱商事フードテック(株)製、マンニットP)4.4gを水39.6gに溶かした溶液を、同条件で噴霧し、薬物の苦味マスキング粒子を得た(平均粒子径136.8μm)。
【0125】
[実施例17]
実施例6の多孔性シリカ粉末20gを撹拌機(新東科学(株)製、HEIDON1200G)で撹拌し、ジフェンヒドラミン塩酸塩10gを水6gに溶解した溶液を徐々に添加し、1分間撹拌したのち、棚式乾燥機で70℃、1晩乾燥させ粉末を得た。次いでその粉末の全量および微結晶セルロース(旭化成(株)製、セオラスPH-101)3gを撹拌造粒機に入れ、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー分散液66gを徐々に添加し、2分間撹拌し湿末を得た。この湿末を70℃で1晩乾燥し、15メッシュの篩で篩過し、顆粒状の薬物苦味マスキング粒子を得た。
【0126】
[実施例18]
実施例6の多孔性シリカ粉末100gを、流動層造粒機に入れ、ジフェンヒドラミン塩酸塩20gとエチルセルロース(Colorcon社製、エトセル)20gをエタノール760gに溶解した溶液を、給気温度60℃、排気温度28~30℃、風量0.3~0.4m3/h、液速度12~13g/mLの条件で噴霧し、薬物の苦味マスキング粒子を得た。
【0127】
[実施例19]
実施例6の多孔性シリカ粉末20gを撹拌機(新東科学(株)製、HEIDON1200G)で撹拌し、ジフェンヒドラミン塩酸塩10gを水6gに溶解した溶液を添加し1分間撹拌した。次いで、微結晶セルロース(旭化成(株)製、セオラスPH-101)3gを加えた後、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー分散液66gを添加し、1分間撹拌し粉末を得た。この粉末を70℃で1晩乾燥し、15メッシュの篩で篩過し、顆粒状の薬物苦味マスキング粒子を得た。
【0128】
[実施例20]
実施例6の多孔性シリカ粉末200gを高速撹拌造粒機((株)奈良機械製作所製、NMG-5L)に入れ、ジフェンヒドラミン塩酸塩100gを水60gに溶解した溶液を徐々に添加し、1分間撹拌したのち、棚式乾燥機で70℃、1晩乾燥させ粉末を得た。次いでその粉末の全量および結晶セルロース45gを撹拌造粒機に入れ、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー分散液990gを徐々に添加し、1分間撹拌し湿末を得た。この湿末を70℃で1晩乾燥し、コーミルで整粒し、顆粒状の薬物苦味マスキング粒子を得た。
【0129】
[比較例8]
実施例6の多孔性シリカ粉末を二酸化ケイ素(フロイント産業(株)製、アドソリダー101)に変え、実施例16と同様の方法で薬物含有粒子を得た。
【0130】
[比較例9]
実施例6の多孔性シリカ粉末を二酸化ケイ素(エボニック社製、Aeroperl300、球形度0.93)に変え、実施例16と同様の方法で薬物含有粒子を得た。ただし、装置に負荷がかかったため、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー分散液の添加量33gとした。
【0131】
[比較例10]
実施例6の多孔性シリカ粉末を二酸化ケイ素(グレース社製、Syloid XDP3150、球形度0.68)に変え、実施例16と同様の方法で薬物含有粒子を得た。ただし、装置に負荷がかかったため、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー分散液の添加量33gとした。
【0132】
[注射筒正倒立試験]
ジフェンヒドラミン塩酸塩量10mgに相当する試料粉末を水10mLに加え、約2~3秒に1回の回転速度で10秒間軽く混ぜ、フィルターでろ過し、ろ液を吸光度計で測定波長258nmで測定し、ジフェンヒドラミン塩酸塩の濃度を求めた。
ジフェンヒドラミン塩酸塩は溶出量が約0.4mg/mL以下の場合ほぼ苦みを感じず、約0.4~0.6mg/mLの場合は矯味剤・甘味剤・香料などの添加で苦みをマスキングできる目安である。
【0133】
【0134】
比較例8~10の薬物溶解量は0.7mg/mL以上であり苦味マスキングがなされていないのに対し、実施例15~19の薬物溶解量は0.4mg/mL以下であり苦味をマスキングしていた。また比較例9は吸光パターンが変化したため、分解物の発生が確認された。
【0135】
[口腔内速崩壊錠]
実施例16~20の苦味マスキング粒子それぞれ薬物20g相当量、エフメルト タイプC(富士化学工業(株)製)446.4g、クロスポビドン(BASF社製、コリドンCL-F)30.0g、アセスルファムカリウム(MCフードスペシャリティーズ社製、サネット)、アスパルテーム(AJINOMOTO社製)およびステアリン酸マグネシウム(日油社製)それぞれ6.0gを混合し、φ9平スミ角を用い、回転20rpm、打圧600-700、錠剤重量300mg、設定硬度70-80Nの設定で錠剤を得た。
【0136】
[苦味官能試験]
比較例8~9及び実施例16~20の粒子、並びに実施例21~25の錠剤を口に30秒間含み、薬物の苦み5人で評価した。以下の基準で苦みを評価し、平均を求めた。
3:苦味を強く感じる
2:苦味を感じる
1:苦みを感じない
【0137】
【0138】
【0139】
比較例8~9の粒子は3以上と苦味が強く感じられるのに対し、実施例15~19の苦味マスキング粒子は1.6以下であり、苦味はわずかしか感じられず苦味がマスキングされていた。甘味剤などを配合した口腔内速崩壊錠では、実施例16~19の苦味マスキング粒子は1.2以下であり、苦味はほとんど感じられなかった。
【0140】
[溶出試験]
実施例16の錠剤を日本薬局方の溶出試験方法に従い、ジフェンヒドラミン溶出率を測定した。
【0141】
【0142】
実施例16の錠剤は薬物が苦味マスキングされているにもかかわらず、マスキングを行っていない比較例1と同等の溶出挙動を示し、溶出性に優れていた。