(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164714
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】プログラム、方法、およびシステム
(51)【国際特許分類】
G09B 5/12 20060101AFI20221020BHJP
G09B 7/02 20060101ALI20221020BHJP
G09B 5/10 20060101ALI20221020BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20221020BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20221020BHJP
【FI】
G09B5/12
G09B7/02
G09B5/10
G09B19/00 H
G06Q50/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129918
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2020138998の分割
【原出願日】2020-08-19
(71)【出願人】
【識別番号】514286033
【氏名又は名称】株式会社COMPASS
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮田 芳郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 多喜
(72)【発明者】
【氏名】平野 隆昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
(72)【発明者】
【氏名】鶴野 聖
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 庄平
(72)【発明者】
【氏名】木川 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】小川 正幹
(57)【要約】
【課題】学習者の学習効率を向上することができるプログラムを提供する。
【解決手段】本発明のプログラムは、コンピュータのプロセッサに、複数の演習問題が記憶されたデータベースから、出題者が複数指定した演習問題を選択し、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートを作成する第1ステップと、解答者の学習履歴を参照して、演習問題から共通問題の復習となる復習問題を選択し、復習問題を含む復習パートを解答者それぞれに対して個別に作成する第2ステップと、を実行させる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータのプロセッサに、
複数の演習問題が記憶されたデータベースから、出題者が複数指定した前記演習問題を選択し、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートを作成する第1ステップと、
前記解答者の学習履歴を参照して、前記演習問題から前記共通問題の復習となる復習問題を選択し、前記復習問題を含む復習パートを前記解答者それぞれに対して個別に作成する第2ステップと、を実行させるプログラム。
【請求項2】
前記演習問題は、その難易度に関する情報、およびその解答に要する学習要素に関する情報とともに前記データベースに記憶され、
前記復習パートは、第1サブパートを含む1以上のサブパートにより構成され、
前記第2ステップでは、
前記学習履歴に含まれる前記演習問題の難易度に関する情報、前記学習履歴から得られる前記解答者の習熟度に関する情報、および前記共通問題の解答に要する前記学習要素に関する情報を参照し、前記演習問題を前記復習問題として選択して前記第1サブパートを作成する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記復習パートは、第2サブパートを含む1以上のサブパートにより構成され、
前記第2ステップでは、
前記共通問題のうち、前記解答者が誤答した演習問題を、前記復習問題として選択して前記第2サブパートを作成する、請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記復習パートは、第2サブパートを含む1以上のサブパートにより構成され、
前記第2ステップでは、
前記誤答した演習問題の難易度に関する情報、前記学習履歴から得られる前記解答者の習熟度に関する情報、および前記誤答した問題の解答に要する前記学習要素に関する情報を参照し、前記第2サブパートを作成する、請求項2に記載のプログラム。
【請求項5】
前記復習パートは、前記第1サブパート、前記第2サブパート、および第3サブパートを含む3以上のサブパートにより構成され、
前記第2ステップでは、
前記共通問題のうち、前記解答者が誤答した演習問題を、前記復習問題として選択して前記第2サブパートを作成し、
前記演習問題の難易度に関する情報、前記解答結果から得られる前記解答者の習熟度に関する情報、および前記学習要素に関する情報を参照し、前記演習問題を前記復習問題として選択して前記第3サブパートを作成し、
前記第2サブパートが、前記第1サブパートの後に組み込まれて構成され、
前記第3サブパートが、前記第2サブパートの後に組み込まれて構成されている、請求項3又は4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記第2ステップでは、
前記学習要素に対する理解の定着の度合いを示す定着度を参照して、前記定着度の低い前記学習要素を優先して、前記演習問題から前記復習問題を選択する、請求項2から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
コンピュータのプロセッサに、
前記データベースに記憶された前記演習問題から前記共通問題を解答するのに必要な基礎知識が問われる基礎問題を選択し、前記基礎問題を含む基礎パートを、前記解答者それぞれに対して個別に作成する第3ステップを実行させる請求項1から6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
前記演習問題は、その難易度に関する情報、およびその解答に要する学習要素に関する情報とともに前記データベースに記憶され、
前記第3ステップでは、
前記共通問題の難易度、前記学習履歴から得られる前記解答者の習熟度に関する情報、および前記学習要素に対する理解の定着の度合いを示す定着度を参照して、前記演習問題から前記基礎問題を選択する請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
コンピュータのプロセッサに、
前記第1ステップにおいて、前記解答者に配信されるワークブックの構造を、前記出題者に対して表示する第4ステップを実行させ、
前記第4ステップでは、前記ワークブックの構造が、前記基礎パートと、前記基礎パートの後に位置する前記共通パートと、前記共通パートの後に位置する前記復習パートとを含むことを示す情報と、前記共通パートに含まれる前記出題者が指定した演習問題を示す情報とを表示する請求項7又は8に記載のプログラム。
【請求項10】
コンピュータのプロセッサに、
前記復習パートにおいて解答された問題数に対応する情報を、前記解答者に対して表示する第5ステップを実行させる、請求項1から9のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
コンピュータのプロセッサに、
前記共通パートが終了したことを示す情報の表示、および前記復習パートが開始することを示す情報のうち、少なくとも一方の表示を、前記共通パートの終了後に、前記解答者に対して示す第6ステップを実行させる、請求項1から10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
コンピュータのプロセッサに、
複数の前記解答者それぞれの解答の進捗状況を、前記出題者に対して一覧表示する第7ステップを実行させる、請求項1から11のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項13】
前記第7ステップでは、
各解答者が、前記共通パートおよび前記復習パートを含む複数のパートのうちどのパートのどの問題まで到達したかを、前記出題者に対して一覧表示する、請求項12に記載のプログラム。
【請求項14】
コンピュータのプロセッサが、
複数の演習問題が記憶されたデータベースから、出題者が複数指定した前記演習問題を選択し、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートを作成する第1ステップと、
前記解答者の学習履歴を参照して、前記演習問題から前記共通問題の復習となる復習問題を選択し、前記復習問題を含む復習パートを前記解答者それぞれに対して個別に作成する第2ステップと、を実行する方法。
【請求項15】
複数の演習問題が記憶されたデータベースから、出題者が複数指定した前記演習問題を選択し、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートを作成する第1手段と、
前記解答者の学習履歴を参照して、前記演習問題から前記共通問題の復習となる復習問題を選択し、前記復習問題を含む復習パートを前記解答者それぞれに対して個別に作成する第2手段と、を備えたシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、学習者が学習に用いるツールとして、学習者に向けて自動で問題を出題する学習システムが知られている。
特許文献1には、このような学習システムとして、個々に難易度が設定された問題データを用いて、学習者が解答した問題の正誤により学習者の習熟度を評価して、次に出題する問題を決定する学習システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、学習において、一定期間の経過後に再度同じ内容を学習すると、記憶が定着しやすくなり、学習効率が上がることが知られている。
一方、従来のシステムでは、このような学習効率を考慮して出題問題を決定する機能について改善の余地があった。
【0005】
本発明は、学習者の学習効率を向上することができるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のプログラムは、コンピュータのプロセッサに、複数の演習問題が記憶されたデータベースから、出題者が複数指定した演習問題を選択し、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートを作成する第1ステップと、解答者の学習履歴を参照して、演習問題から共通問題の復習となる復習問題を選択し、復習問題を含む復習パートを解答者それぞれに対して個別に作成する第2ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、学習者の学習効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】データベースシステムが記憶するデータを説明する図である。
【
図12】本発明が提供するワークブックの構成を示す図である。
【
図13】分散学習における復習間隔の設定手法を説明する図である。
【
図14】基礎問題に含まれる学習要素の選択方法を説明する図である。
【
図16】様々なワークブックの類型を示す図である。
【
図23】本発明が提供するワークブックにおける画面レイアウトの第1例である。
【
図24】本発明が提供するワークブックにおける画面レイアウトの第2例である。
【
図25】本発明が提供するワークブックにおける画面レイアウトの第3例である。
【
図26】本発明が提供するワークブックにおける画面レイアウトの第4例である。
【
図27】本発明が提供するワークブックにおける画面レイアウトの第5例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
<全体概要>
本発明のプログラムは、例えば教育機関において用いられる学習システム(以下、単にシステムという)1を提供する。システム1は、生徒である解答者に対して演習問題により構成された学習帳(ワークブック)を提供し、各演習問題に解答者が問題に解答することで、学習内容の習熟度を深めるために用いられる。
システム1のユーザとしては、出題者と解答者が含まれる。
【0011】
出題者は、例えば学校の教師等であり、システム1を用いて解答者に出題を行う指導者である。解答者は、例えば学校の生徒等であり、システム1から出題された問題を解答する学習者である。
なお、本発明に係るシステム1は、知識の習得を目的とした活動全般に適用することができ、初等、中等、高等教育等の各種の教育機関の他、例えば民間の塾、予備校、文化教室、又は企業内で行われる社員教育等に用いられてもよい。
【0012】
<システム構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステム1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、システム1は、複数の解答者端末10と、1台の出題者端末15と、サーバ60と、データベースシステム100と、データ管理装置110と、を備える。なお、出題者端末15は複数設けられてもよい。
【0013】
解答者端末10および出題者端末15は、広域ネットワークNTを介してサーバ60と通信可能に構成されている。
サーバ60は、バックエンド側のデータベースシステム100と通信可能に構成される。データ管理装置110は、データベースシステム100と通信可能に構成される。
【0014】
解答者端末10は、解答者が使用する端末である。
解答者端末10は、サーバ60と協働して学習用の問題を、ユーザに向けて出題するように構成される。解答者端末10の例には、パーソナルコンピュータ、タブレット、及び、スマートフォン等の電子機器が含まれる。代表的な解答者端末10は、制御デバイス20と、記憶デバイス30と、通信デバイス40と、表示デバイス50と、入力デバイス55と、を備える。
【0015】
制御デバイス20は、CPU21及びRAM23を備え、解答者端末10を統括制御する。CPU21は、記憶デバイス30が記憶するコンピュータプログラムに従う処理を実行する。RAM23は、CPU21による処理実行時に作業用メモリとして使用される。以下では、CPU21により実行される処理を、制御デバイス20が実行する処理として説明する。
【0016】
記憶デバイス30は、各種コンピュータプログラム及びデータを記憶する。記憶デバイス30は、例えばフラッシュメモリ又はハードディスク装置で構成される。解答者端末10には、学習用の問題をサーバ60との協働により出題するための本発明に係るアプリケーションプログラムがインストールされ、記憶デバイス30に記憶される。
【0017】
制御デバイス20は、このアプリケーションプログラムに従う処理を実行することにより、サーバ60から指定された問題を、表示デバイス50を通じて出題し、それに対するユーザからの解答操作を、入力デバイス55を通じて受け付けるように構成される。
制御デバイス20は、この操作内容を、通信デバイス40を通じて、サーバ60に伝達するように構成される。
【0018】
通信デバイス40は、サーバ60を含む広域ネットワーク内の装置と通信可能に構成される。表示デバイス50は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイで構成される。表示デバイス50は、制御デバイス20に制御されて、各種画面をユーザに向けて表示する。各種画面には、問題文及び解答欄を含む問題画面、及び、問題解説文を含む解説画面が含まれる。
【0019】
入力デバイス55は、ユーザからの入力操作を受け付けて、対応する操作信号を制御デバイス20に入力するように構成される。入力デバイス55は、表示デバイス50と一体に構成されるタッチパネルであってもよい。入力デバイス55は、表示デバイス50に表示される画面に対するタッチ操作及び書込操作を受け付けて、その操作信号を制御デバイス20に入力する。
【0020】
出題者端末15は、出題者が使用する端末である。
出題者端末15は、出題者が選択した問題を、サーバ60と協働して、解答者端末10に向けて出題するように構成される。出題者端末15は、解答者端末10と同様の構成を備えている。すなわち、出題者端末15は、制御デバイス20と、記憶デバイス30と、通信デバイス40と、表示デバイス50と、入力デバイス55と、を備える。これらの各構成部材については、前述した解答者端末10の内容と同様であり、その説明を省略する。
【0021】
サーバ60は、処理デバイス70と、記憶デバイス80と、通信デバイス90とを備える。処理デバイス70は、CPU71及びRAM73を備える。CPU71は、記憶デバイス80が記憶するコンピュータプログラムに従う処理を実行する。
RAM73は、CPU71による処理実行時に作業用メモリとして使用される。以下では、CPU71により実行される処理を、処理デバイス70が実行する処理として説明する。通信デバイス90は、広域ネットワークを通じて解答者端末10および出題者端末15と通信可能に、さらには、バックエンド側のデータベースシステム100と通信可能に構成される。
【0022】
処理デバイス70は、解答者端末10又は出題者端末15において、上記アプリケーションプログラムが起動されると、解答者端末10又は出題者端末15から送信されてくるユーザの識別情報に基づき、解答者端末10又は出題者端末15に対応するユーザを識別し、解答者端末10又は出題者端末15との接続を確立する。
【0023】
その後、処理デバイス70は、データベースシステム100を参照して、演習問題のうち、出題者から指定された問題を含む、解答者に出題する問題を決定し、決定した問題を、解答者端末10に出題する。
その後、処理デバイス70は、解答者端末10から、その解答操作の内容を取得して、問題の正否を判定する。
【0024】
処理デバイス70はまた、解答結果を集計し、解答の進捗状況および学習履歴を、解答者端末10および出題者端末15に送信する。この際、解答者端末10には、当該解答者に関する情報のみを送信し、出題者端末15には、出題者が学習の習熟を管理する解答者全員に関する情報を送信する。
解答の進捗状況とは、複数の問題パートで構成されるワークブックにおいて、解答者がどの問題まで解答が済んでいるかを示す情報である。
【0025】
学習履歴とは、複数の解答者それぞれが過去に演習を行ったワークブックの分野、解答した演習問題の問題数、解答結果、問題に対する正誤に関する情報、問題に関する各種の情報を少なくとも含む。
また、学習履歴には、閲覧時以前の学習の履歴が含まれており、閲覧当日の情報も適宜更新される。解答した演習問題には、後述する基礎問題、共通問題、復習問題が全て含まれる。
【0026】
データベースシステム100は、
図2に示すように、複数の問題データ、複数の問題関連データ、複数の学習要素データ、複数の学習者データ、カリキュラムデータ、サンプルデータ群、を備える。
複数の問題データは、問題毎に一つの問題データを含む。問題データのそれぞれは、
図3に示すように、問題の識別コード(ID)である問題IDに関連付けて、対応する問題についての問題文データ、正答データ、解説文データ、及び、ヒントデータを備える。
【0027】
問題文データは、表示デバイス50に表示させる問題文を表す。正答データは、対応する問題の正答を表す。正答データは、ユーザの解答の正否を判断するのに用いられる。
解説文データは、対応する問題についての解き方や重要なポイント等を解説する解説文であって、ユーザによる問題解答後に表示デバイス50に表示される解説文を表す。
ヒントデータは、問題を解く過程で、ユーザの要求に応じて表示デバイス50に表示される問題を解き方に関するヒントを表す。
【0028】
複数の問題関連データ(
図2参照)は、問題毎に一つの問題関連データを含む。このようにデータベースシステム100は、問題毎に、問題データと問題関連データとのペアを記憶する。問題関連データのそれぞれは、
図4に示すように、問題データと共通の問題IDに関連付けて、対応する問題についてのスコア定義データ、スコア比率データ、及び、問題要素データを備える。
【0029】
データベースシステム100が記憶するサンプルデータ群は、複数の協力者による複数の問題の解答結果をサンプルとして記憶するデータ群である。このサンプルデータ群には、解答結果として、協力者及び問題の組合せ毎に、協力者に対応する解答者の問題に対する解答の正否、及び、解答者が解答に要した時間である解答時間TAの情報が格納され得る。
【0030】
スコア定義データは、問題に対するユーザの解答を、解答時間TAに基づいて点数化するための第一基準時間THS及び第二基準時間THLを定義する。第一基準時間THS及び第二基準時間THLは、解答時間TAの標準的な範囲を定義する。第一基準時間THSは、第二基準時間THLより短く、標準的な範囲は、第一基準時間THS以上、且つ、第二基準時間THL以下の時間範囲である。
【0031】
本実施形態では、
図5に示すように、ユーザの解答を、解答の正否及び解答時間TA、および「やり直し」の有無に基づき、5段階の値で評価する。この評価値を、この説明ではスコアと表現する。スコアには、変数zを割り当てる。変数zは、値1から値5までの自然数をとる。
本実施形態の学習支援システム1は、ユーザが問題を間違えたとき、所定回(例えば1回)、同一問題に対する解答をユーザにやり直させる。
図5に示す「正答(やり直し有)」は、ユーザが問題に一度間違えたが「やり直し」によって正解した事象を意味する。「正答(やり直し無)」は、ユーザが「やり直し」によらず、即ち問題に間違えることなく正解した事象を意味する。「誤答」は、「やり直し」によってもユーザが問題に正解することなく最終解答が誤答であった事象を意味する。
【0032】
本実施形態では、解答時間TAが第二基準時間THLより長い場合、その解答時間TAを「長い」と取り扱う。解答時間TAが第一基準時間THSより短い場合、その解答時間TAを「短い」と取り扱う。
【0033】
図5に示す規則によれば、ユーザの解答が「誤答」であるときには、解答時間TAに依らず、その解答に対してスコアz=1が付与される。
ユーザの解答が「正答(やり直し有)」であるときには、解答時間TAが長いとき、スコアz=2が付与され、解答時間TAが標準であるとき、スコアz=3が付与され、解答時間TAが短いとき、スコアz=4が付与される。
ユーザの解答が「正答」であるときには、解答時間TAが長いとき、スコアz=3が付与され、解答時間TAが標準であるとき、スコアz=4が付与され、解答時間TAが短いとき、スコアz=5が付与される。
【0034】
スコア比率データ(
図4参照)は、対応する問題におけるスコアz=1,2,…,5の比率を表す。以下では、このスコアz=1,2,…,5の比率Rzを、スコア比率Rzとも表現する。スコア比率Rzは、サンプルデータ群から算出される。
【0035】
具体的に、スコア比率データは、スコアz=1のスコア比率R1、スコアz=2のスコア比率R2、スコアz=3のスコア比率R3、スコアz=4のスコア比率R4、及び、スコアz=5のスコア比率R5を表す。R1+R2+R3+R4+R5=1である。
【0036】
スコア比率R1は、スコアzの全サンプル数ZNに対する、z=1であるサンプル数ZN1の比率(ZN1/ZN)に対応する。「/」は除算記号である。同様に、スコア比率Rk(k=2,3,4,5)は、全サンプル数ZNに対するz=kのサンプル数ZNkの比率(ZNk/ZN)に対応する。このようにスコア比率データは、対応する問題に関するスコアzの統計的な分布を、比率で表す。
【0037】
問題要素データ(
図4参照)は、対応する問題に含まれる一以上の学習要素を表す。ここで
図6に示す例に基づき学習要素を説明する。
図6に示される問題は、小数と分数との引き算である。この引き算を解くためには、帯分数を仮分数に直すスキルと、小数を分数に直すスキルと、分母の違う分数を引き算するスキルと、が必要とされる。さらに、分母の違う分数の引き算には、通分するスキルと、分数を引き算するスキルと、が必要とされる。
【0038】
本実施形態では、この問題には、上記スキルに対応する学習要素が含まれると解釈し、問題に含まれる学習要素を表す問題要素データを、システム1の設計者が用意する。
【0039】
具体的には、
図6に例示した問題では、
図7に示すように、学習要素E1と、学習要素E2と、学習要素E3と、学習要素E4と、学習要素E5と、学習要素EGと、が含まれると解釈して、問題要素データを用意する。
【0040】
学習要素E1は、帯分数を仮分数に直すスキルを習得するための学習要素である。
学習要素E2は、小数を数に直すスキルを習得するための学習要素である。
学習要素E3は、分母の違う分数を引き算するスキルを習得するための学習要素である。
学習要素E4は、通分するスキルを習得するため学習要素である。
学習要素E5は、分数を引き算するスキルを習得するための学習要素である。
学習要素EGは、この問題に対する主目的の学習要素であり、小数と分数とを引き算するスキルを習得するための学習要素である。
【0041】
図7は、この問題に含まれる学習要素E1,E2,E3,E4,E5,EGを、問題を正答に導く思考の流れに沿って配置したグラフを示す。
図7に示されるグラフは、思考の流れに沿う上から下に向きを有する有向グラフであると理解されてもよい。
【0042】
以下では、一つの問題に含まれる主目的の学習要素EGを、ゴール要素と表現し、この問題において、ゴール要素の学習に必要とされるスキルに対応する学習要素E1,E2,E3,E4,E5を、利用要素と表現する。ゴール要素EGは、上述のように、対応する問題で新たにユーザに習得させたい学習要素に対応する。
【0043】
問題要素データは、このように問題に含まれる一以上の学習要素を特定可能な情報と共に、問題に含まれる一以上の学習要素を、
図7に示すようにグラフ化可能な情報を含む。
具体的には、問題要素データは、
図8に示すように、問題に含まれる利用要素に対応する学習要素のIDを示す利用要素データ、及び、問題に含まれる一つのゴール要素に対応する学習要素のIDを示すゴール要素データを有する。
【0044】
以下では、学習要素のIDのことを要素IDとも表現する。データベースシステム100が記憶する複数の問題データに対応する複数の問題のそれぞれは、学習要素として、一つのゴール要素を含むが、利用要素を含むとは限らないことに留意されたい。以下では、データベースシステム100が記憶する複数の問題データに対応する複数の問題を、登録問題群(演習問題)と表現する。
【0045】
問題要素データが有する利用要素データ及びゴール要素データのそれぞれはさらに、対応する問題の、対応する学習要素に関する難易度パラメータb_1,b_2,b_3,b_4の値を、対応する学習要素の要素IDに関連付けて有する。この難易度パラメータb_1,b_2,b_3,b_4のそれぞれは、項目応答理論における所定の確率モデルの変数として定義される。
【0046】
公知の理論である項目応答理論では、解答者の正答確率は、解答者の能力値と問題の難易度を同次元の値として扱い、これらの差分を変数とするロジスティック関数により記述されることが知られている。
そして、難易度パラメータは、対応する学習要素に関して能力値を有するユーザが対応する問題を解いたときに、スコア2~5それぞれに対して、確率が0.5以上となる変数として設定される値である。ここで、能力値とは、一般的な当該理論においては、解答者(学習者)と一対一対応の値として設定されている。一方、本システム1では、解答者(学習者)が学習要素ごとに別々の能力値を持つ。この値をこの説明では「習熟度」と表現する。
【0047】
この他、データベースシステム100が記憶する複数の学習要素データ(
図2参照)は、登録問題群に含まれる学習要素毎に、一つの学習要素データを含む。複数の学習要素データに対応する複数の学習要素の少なくとも一部は、複数の問題のうちの二以上に重複して含まれる。
【0048】
学習要素データのそれぞれは、
図9に示すように、対応する一つの学習要素(以下、注目要素と表現する。)の要素IDに関連付けて、その注目要素に関係する一以上の学習要素を規定するデータ、具体的には、親要素データ、派生元要素データ、及び、依存要素データを備える。
【0049】
親要素データは、注目要素より概念的に上位にある学習要素のIDを表す。以下では、第一の学習要素より上位にある第二の学習要素のことを、第一の学習要素の親要素と表現する。
図10によれば、学習要素C11,C12の親要素は、学習要素C1である。この場合、学習要素C1から見て、学習要素C11,C12は、子要素である。
【0050】
例を挙げて説明すれば、「数の大小」に関する学習要素C1は、「PよりQ大きい数」に関する学習要素C11及び「PよりQ小さい数」に関する学習要素C12を、子要素として含む。ここでいう「PよりQ小さい数」におけるP及びQは、任意の自然数である。
【0051】
このように「数の大小」に関する学習要素C1は、それより小さな分類の学習要素又はそれより下位概念の学習要素として、学習要素C11,C12を含み、学習要素C1は、それより小さな分類又はそれより下位概念の学習要素C11,C12に分解できる。
【0052】
派生元要素データは、注目要素に対する派生元の学習要素のIDを表す。
図10によれば、学習要素C21,C22,C23に対する派生元の学習要素は、学習要素C1である。一例によれば、「数の大小」に関する学習要素C1に対し、派生先の学習要素C21は、「正の整数と正の整数の大小」に関する学習要素であり、学習要素C22は、「正の整数と負の整数の大小」に関する学習要素であり、学習要素C23は、「正の整数と負の小数の大小」に関する学習要素である。
このように派生元の学習要素C1に対する派生先の学習要素C21,C22,C23は、パラメータの違い等で派生する学習要素に対応する。
【0053】
依存要素データは、注目要素と依存関係にある学習要素のIDを表す。
図10によれば、学習要素C1と依存関係のある学習要素が、学習要素C3である。「数の大小」に関する学習要素C1に対し、依存関係にある学習要素C3は、「数直線」に関する学習要素である。
ここで学習要素C1は、学習要素C1を学習するためには学習者が学習要素C3を十分にできている必要があるという意味で、学習要素C3に依存している。依存関係にある第一の学習要素及び第二の学習要素は、第二の学習要素を学習するためには、第一の学習要素を学習者が十分に理解できている必要がある学習要素に対応する。
【0054】
この他、データベースシステム100が記憶する複数の学習者データ(
図2参照)は、学習者に対応するユーザ毎に一つの学習者データを含む。学習者データは、
図2に示すように、対応するユーザの解答ログ(学習履歴)を有するように構成される。解答ログは、ユーザの問題に対する解答毎のレコードを有し、各レコードは、解答した問題の問題ID、その問題の解答に対するスコア、解答の正否、解答時間TA、及び、解答日時の情報を含む。
【0055】
図11に示すように、学習者データは、学習要素ごとに習熟度、記憶度、定着度に関する情報を含む。記憶度および定着度については後述する。
学習者データは、演習履歴として、演習数および正解数等の情報も含む。
【0056】
続いて、
図1に示すデータ管理装置110の構成及び動作を説明する。データ管理装置110は、上述した学習支援処理で参照されるデータを管理するために設けられる。
図1に示すように、データ管理装置110は、処理デバイス120と、記憶デバイス130と、通信デバイス140と、入出力デバイス150と、を備える。
【0057】
処理デバイス120は、CPU121及びRAM123を備える。CPU121は、記憶デバイス130が記憶するコンピュータプログラムに従う処理を実行する。RAM123は、CPU121による処理実行時に作業用メモリとして使用される。以下では、CPU121により実行される処理を、処理デバイス120が実行する処理として説明する。
【0058】
通信デバイス140は、データベースシステム100と通信可能に構成される。入出力デバイス150は、バックエンド側で、外部装置(例えば外部記憶デバイス)との間のデータ入出力可能に構成される。さらに、入出力デバイス150は、管理者からの操作を受け付けるための操作デバイス及び管理者へ各種情報を表示するための表示デバイスを備える。
【0059】
処理デバイス120は、入出力デバイス150を通じた管理者からの指令に基づき、データベースシステム100内への前述した各種のデータの追加、並びに、データベースシステム100内に記憶された既存の前述した各種データの更新及び削除を実行するように構成される。
【0060】
次に、本システム1が提供するワークブックの構造について説明する。ワークブックとは、演習問題のうち、選択された複数の問題により構成される練習帳である。
図12は、本システム1が提供するワークブックの構成例を示す図である。
図12に示すように、ワークブックは、演習順序に沿って、基礎パート、共通パート、復習パートという異なる問題パートにより構成されている。
【0061】
共通パートは、共通問題により構成される問題パートである。
共通問題とは、所定のワークブックの解答を行う複数の解答者全員に対して共通する問題である。共通パートは、出題者がデータベースシステム100に記憶された演習問題から、複数の演習問題を指定することで選択される。出題者は、学習分野、単元に応じて予め区分けされた問題群を選択することで、共通問題を選択することができる。
【0062】
復習パートは、復習問題により構成される問題パートである。
復習問題は、共通問題の復習となる問題である。復習問題は、解答者それぞれに対して異なった問題となっている。復習問題は、解答者の学習履歴を参照して、演習問題から本システム1により自動で選択される。
本システム1は、解答者毎に個別に復習問題を選択する。ここで、復習問題を選択するために参照される学習履歴は、過去の解答結果に関する情報であり、異なるワークブックにおける解答結果に関する情報、同一ワークブックにおける解答結果に関する情報、またはそれらの組み合わせを含む。
【0063】
復習パートは、第1サブパートを含む1以上のサブパートにより構成されている。本実施形態では、復習パートは、第1サブパート、第2サブパート、第3サブパートを含む3つのサブパートにより構成されている。このうち、第1サブパートおよび第3サブパートは、分散学習パートであり、第2サブパートは、個別復習パートである。
【0064】
分散学習パートとは、復習パートのうち、記憶の定着を目的とし、解答者毎の習熟度、および復習のタイミング(復習間隔)を考慮して出題される問題を含むサブパートである。
個別復習パートとは、過去に誤答した問題を復習するために出題される問題を含むサブパートである。
図12の例では、復習パートは、第1サブパートである分散学習パートの後に、第2サブパートである個別復習パートが組み込まれて構成されている。また、復習パートは、第2サブパートの後に、第3サブパートである分散学習パートが組み込まれて構成されている。
【0065】
第1サブパートの問題は、解答者の学習履歴を参照して選択される。具体的には、第1サブパートの問題は、学習履歴に含まれる演習問題の難易度に関する情報、学習履歴から得られる解答者の習熟度に関する情報、および共通問題の解答に要する学習要素に関する情報を参照して選択される。
【0066】
第2サブパートの問題は、過去に解答した問題のうち、解答者が誤答した演習問題を特定することで選択される。
また、第2サブパートの問題として、誤答した問題そのものを出題してもよいし、誤答した問題を参照して、他の問題を選択してもよい。
すなわち、第2サブパートの問題は、誤答した演習問題の難易度に関する情報、学習履歴から得られる解答者の習熟度に関する情報、および誤答した問題の解答に要する学習要素に関する情報を参照し、第2サブパートの問題を選択することで、第2サブパートを作成してもよい。
【0067】
第3サブパートは、第1サブパートと同様に分散学習パートの問題が選択される。すなわち、第3サブパートの問題は演習問題の難易度に関する情報、解答結果から得られる解答者の習熟度に関する情報、および学習要素に関する情報を参照し、演習問題を復習問題として選択される。
【0068】
また、分散学習パートでは、定着度の低い学習要素を優先して、演習問題から復習問題を選択する。ここで、定着度とは、学習要素に対する理解の定着の度合いを示す指標である。定着度の評価方法について、以下に説明する。
【0069】
定着度は、生徒が解答した際の解答に対するスコアを変数とする関数である。定着度は、解答に対するすスコアを変数とする関数が、所定の閾値を超えた際に、当該閾値のレベルとして設定された0~5までの離散的な値となる。
スコアは、前述の通り解答者の解答時間、および誤答の有無により設定される。そして、定着度は、短い時間で正答すると高い値を取り、長い時間で解答した場合や、誤答をした場合には、低い値を取る。
【0070】
また、定着度には、その値に対応して、最大復習間隔が予め設定されている。最大復習間隔とは、定着度の程度に応じて推奨される復習間隔である。すなわち、定着度が低い場合には、早い時期に復習することが求められ、定着度が高い場合には、遅い時期に復習することが許容される。
【0071】
次に、分散学習における復習間隔の設定方法について説明する。
図13は、復習間隔の算出フローを示す図である。
図13に示すように、直近のワークブックにおける解答者の解答に対するスコアから、習熟度の更新(C1)が行われる。
次に、直近のスコアを変数とするスコアの関数、直近のスコアから更新された習熟度を変数とする習熟度の関数、および演習した問題の難易度を変数とする難易度の変数を積算することにより、記憶度の増加分が算出される(C2)。
ここで、記憶度の増加分とは、直近の学習により増加した記憶度を指す。
【0072】
次に、記憶度の増加分と、過去の記憶度とを和算することで、直近の記憶度が算出される(C3)。
記憶度とは、学習要素の理解に対するシナプス強度を示す指標である。記憶度は、時間を変数として指数関数的に減少する値である。
そして、復習間隔目安は、記憶度が所定の割合(例えば90%)となるような時間として算出することができる(C4)。
【0073】
一方、直近のスコアを変数とするスコアの関数から、定着度を更新する。(C5)。この更新された定着度により、予め設定された最大復習間隔が決定する(C6)。
そして、次に、復習間隔目安と、最大復習間隔と、を比較して、値の低い方の数値が復習間隔として設定される(C4)
【0074】
図12に示す基礎パートは、基礎問題により構成される問題パートである。
基礎問題とは、共通問題を解答するのに必要となる基礎知識が問われる問題である。共通問題は、解答者それぞれに対して異なった問題となっている。共通問題は、データベースシステム100に記憶された演習問題から、本システム1により自動で選択される。本システム1は、解答者毎に個別に共通問題を選択する。
【0075】
基礎パートの問題は、共通問題の難易度、学習履歴から得られる解答者の習熟度に関する情報、および学習要素に対する理解の定着の度合いを示す定着度を参照して、演習問題から選択される。この処理について、以下に詳述する。
図14は、基礎問題に含まれる学習要素の選択方法を説明する図である。この図において、1から9の数字が付された丸印は、学習要素のサンプル番号を示している。
【0076】
図14に示すように、ある解答者の学習要素への理解は、定着度を横軸、習熟度を縦軸として表現することができる。この図において、定着度は0から5までの離散的な値を取り、数値が大きいほど当該学習要素に対する理解が定着していることとなる。
一方、習熟度は、-6から+6までの連続的な値を取り、数値が大きいほど、当該学習要素を学習者が理解していることを指す。習熟度は問題の難易度と同次元で扱われる。このため、難易度が高い学習要素を含む問題を正答すると、解答者の当該学習要素に対する習熟度が高く評価される。
【0077】
そして、基礎問題は、定着度と習熟度を考慮して、学習要素が選択される。この際、定着度および習熟度それぞれに対して閾値を設定することで、学習要素を選択することができる。図示の例では、定着度が1以下、習熟度が0以下の領域(
図14において破線で囲まれる領域)に該当する学習要素を、基礎問題が含むべき学習要素として選定する。
なお、閾値は任意に設定することができる。閾値の設定は、出題者が任意に行うことができる。
【0078】
次に、学習要素に基づいて問題の選択について
図15を用いて説明する。
図15は、基礎問題の選択方法を説明する図である。この図において、P1~P8は問題番号を示している。すなわち、P1~P4は、学習要素8を含む問題であり、P2からP8は、学習要素9を含む問題である。この図において、各問題に付されているb2の値は、各問題の難易度を示している。
【0079】
図15に示すように、学習要素が選択されると、当該学習要素の習熟度と、当該学習要素を含む問題の難易度と、を比較する。例えば、学習要素9においては、習熟度がNULLである。習熟度がNULLとは、未だ一度も学習されていない範囲であることを意味する。この場合には、問題の難易度が最も低い問題P8が選択される。
【0080】
また、学習要素8においては、解答者の学習要素8の習熟度が-1.2であるため、この値よりも少し上の値の難易度を持つ問題P3が選択される。このように、一度も学習されていない範囲(学習要素)については、最も優しい問題が選択され、一度学習された範囲(学習要素)については、学習要素の習熟度よりも難易度が高い問題のうち、最も難易度が低い問題が選択される。ここで、仮に学習要素の習熟度よりも難易度が高い問題がない場合には、学習要素の習熟度よりも少し難易度の低い問題を選択してもよい。
【0081】
次に、本システム1により提供されるワークブックの類型について説明する。
図16は、様々なワークブックの類型を説明する図である。
図16に示すように、ワークブックには各種の類型がある。ワークブックでは、全体の演習時間、および各問題パートの演習時間(問題数)を任意に設定することができる。
【0082】
本システム1が提供するワークブックにおいて、基礎パートは必須の構成ではない。基礎パートは、出題者が任意に要否を指定することができる。出題者が、例えば授業の進み具合を考慮して、一律に基礎パートを設けてもよい。また、学習が遅れている解答者に対して、出題者が個別に基礎パートを設けることもできる。
【0083】
また、本システム1では、出題者の指定によらずに、基礎パートの設定の要否を判断することができる。本システム1は、解答者の習熟度および定着度を考慮して、基礎パートが必要と判断される解答者には、基礎パートを設定し、基礎パートが必要ではないと判断される解答者には、基礎パートを設定しない。
【0084】
例えば、
図16(a)に示す前述したワークブック(類型1)の構造に対して、
図16(b)に示すワークブック(類型2)では、分散学習パート2が省略されている。このように、分散学習パートは、繰り返し行ってもよいし、類型1のように1回だけ行ってもよい。
【0085】
次に、
図16(c)に示すワークブック(類型3)では、基礎パートおよび共通パートの演習時間が、類型1と比較して、短くなっている。また、類型3のワークブックでは、個別復習パートは行われていない。これは、共通問題において誤答がなかったことを意味している。
【0086】
次に、
図16(d)に示すワークブック(類型4)では、基礎パートが設けられておらず、その分、復習パートの時間が長くなっている。また、分散学習のサブパート(2)は、時間調整の役割も兼ねている。すなわち、習熟度が高い生徒には、基礎パートを設ける必要がないとともに、共通パートを比較的短時間で終わらせたこととなる。このため、分散学習のサブパート(1)で出題しきれなった問題を、個別復習サブパートの後に分散学習のサブパート(2)において出題することで、予め設定された演習時間が終わるまで、ワークブックに取り組ませて、時間調整を行うことができる。
【0087】
次に、
図16(e)に示すワークブック(類型5)では、個別復習パートが設けられていない。これは、共通問題において誤答がなかったために、個別復習パートを設ける必要がなかったことを意味している。
この場合には、その後の演習時間の全ておいて、分散学習のサブパートが設けられる。そして分散学習パートでは、問題数が設定されているわけではなく、演習時間のうち、制限時間の許す限り、無制限となっている。すなわち、分散学習のサブパートにおいて出題される問題数は、生徒により大きく異なることがある。問題に解答する時間に個人差があるためである。分散学習を無制限に行うことで、学習者の演習時間が余ることなく、時間調整を行うことができる。
【0088】
次に、本システム1を用いて、ワークブックを提供する際の処理の具体的手順について説明する。まず、処理の序盤について説明する。
図17は、本システム1の処理の序盤を示す図である。
この説明では、出題者が、授業中に設けられた演習時間に、複数の解答者に解答させるためのワークブックとして、
図12に示す類型1のワークブックを提供する場合を例に挙げて説明する。
【0089】
最初に、
図17に示すように、出題者がワークブックの設計を行う(ステップS101)。ワークブックの設計は、出題者端末15を用いて行われる。
ここで、ワークブックの設計とは、基礎パートの要否、総演習時間の設定、基礎パートおよび共通パートの問題数を設定することで、前述したワークブックの類型のアウトラインを決定することである。基礎パートおよび共通パートについては、問題数に代えて、それぞれの演習時間を設定してもよい。この場合には、各演習問題に設定された想定解答時間に基づいて、問題数が設定される。また、復習パートについては、総演習時間のうち、基礎パートと共通パートの解答後に残った時間が割り当てられる。すなわち、復習パートの演習時間は、生徒によって異なることとなる。共通パートの有無や、各問題を解くのに要する時間が生徒によって差があるからである。
【0090】
次に、サーバ60は、ステップS101の後に、ワークブックの類型のアウトラインを決定する(ステップS201)。
次に、出題者端末15において、出題者により共通問題を指定する処理が実行される(ステップS102)。この処理では、出題者が、共通パートを構成する共通問題を複数選択する。この際、共通問題は、該当するクラスの属性(学年、教科、学習単元、問題数、解答時間等)を指定することで、予めデータベースシステム100に登録された演習問題のうち、所定の問題群を選択することができる。また、共通問題として予め登録された所定の問題群に対して、他の問題を追加してもよい。
【0091】
次に、ステップS102の後に、サーバ60が共通パートの作成を行う(ステップS202)。作成された共通パートは、当該ワークブックを提供される全ての解答者において共通の問題構成となっている。
【0092】
次に、サーバ60は、基礎パート作成処理を実行する(ステップS203)。この内容については、
図20を用いて詳述する。
図20は、基礎パート作成処理を示す図である。
まず、基礎パート作成処理では、これまでの学習履歴から、各学習要素についての定着度、習熟度の確認が行われる。この処理は、各解答者それぞれについて行われる(ステップS2031)。
【0093】
次に、サーバ60は、ステップS2031の後に、解答者毎にフィルター処理を実行する。(ステップS2032)。フィルター処理とは、
図14に示すように、定着度および習熟度を指標として、基礎パートを行う必要がある学習要素を特定する処理である。
具体的には、今回提供するワークブックの単元に相当する学習要素それぞれの定着度および習熟度について、予め設定された閾値以下の学習要素がある場合には、基礎パートが必要であると判断し、そのような学習要素がない場合には、基礎パートが不要であると判断される。
【0094】
次に、サーバ60は、ステップS2032の後に、ソート処理を実行する。(ステップS2033)。ソート処理とは、フィルター処理において特定された学習要素について、定着度の低い順、習熟度の低い順に学習要素を並び替える処理である。
そして、並び替えられた学習要素の順に、前述の
図15において説明した問題選定を行い、出題問題とその順序が決定される。
【0095】
次に、サーバ60は、ステップS2032の後に、問題確定の処理を実行する(ステップS2034)。問題確定の処理は、ソート処理で並び替えられた基礎問題を基礎パートとして確定する処理である。このように確定された演習問題が、解答者に出題されていく。基礎パートの内容、問題数は、解答者毎に個別の内容となっている。
【0096】
次に、
図17に示すように、サーバ60は、基礎パートとして、基礎パートの問題を解答者に順次出題する(ステップS204~ステップS206)。そして、解答者は、出題される問題ごとに、解答結果を解答者端末10に入力することで解答する(ステップS301~ステップS303)。基礎パートが不要と判断された場合には、基礎パートの問題は出題されない。
なお、
図17では、基礎問題の出題を3回としているが、これはあくまで例示である。基礎問題の出題回数は、予め設定された基礎パートの問題数(演習時間)、又は基礎パート作成処理において選択された学習要素の量により変更される。
【0097】
各基礎問題に対して解答があると、サーバ60は当該解答の正誤を判定する処理を実行する。この正誤に関する情報は、解答者からの解答があるたびに、解答者に対して通知される。正誤情報は、解答結果に関する情報として記憶される。
また、解答者が誤答した場合には、即座に模範解答を示すことなく、誤答である旨のみを通知し、再解答(やり直し)の機会を与える。やり直しの機会は1回でもよいし、2回以上許容するような設定であってもよい。この場合には、やり直しを規定回数行っても誤答である場合に、解答者に対して誤答である旨とともに、模範解答を併せて通知する。また、やり直しの際には、ヒントデータを解答者に通知してもよい。
基礎問題の解答が全て終了すると、基礎パートが終了する(ステップS207)。
【0098】
次に、本システム1の処理の中盤について説明する。
図18は本システム1の処理の中盤を示す図である。
図16に示すように、出題者が出題者端末15から進捗確認を行う(ステップS103)と、サーバ60は進捗状況を確認し、出題者端末15に対して進捗報告を行う処理を実行する(ステップS208)。進捗報告における表示内容については後述する。
進捗確認は、図示の例では、前述の他、共通パートの終了(ステップS213)の後に、再度行われている(ステップS104)が、これはあくまで一例であり、出題者の任意のタイミングで、出題者端末15を用いて行うことできる。
【0099】
次に、基礎パートが終了すると、サーバ60は、問題パートの変更の処理を実行する(ステップS209)。具体的には、基礎パートが終了した旨、および共通パートが開始する旨を解答者端末10に表示する。
【0100】
ステップS209の後に、共通パートの問題の出題が行われる(ステップS210~ステップS212)。この際、それぞれの問題に対して、解答者が解答を行う(ステップS304~ステップS306)。
なお、
図18では、共通問題の出題を3回としているが、これはあくまで例示である。共通問題の出題回数は、最初に出題者が設定した問題数、又は設定した演習時間に基づいて選択される問題数となる。
【0101】
各共通問題に対して解答があると、サーバ60は当該解答の正誤を判定する処理を実行する。この正誤に関する情報は、解答者からの解答があるたびに、解答者に対して通知される。正誤情報は、解答結果に関する情報として記憶される。
また、共通問題においても、前述したやり直しに関する機能を採用する。
共通パートの問題が全て出題され、出題者からの解答が済むと、共通パートが終了する(ステップS213)。
【0102】
ステップS213の後に、サーバ60は、問題パートの変更の処理を実行する(ステップS215)。具体的には、基礎パートが終了した旨、および共通パートが開始する旨を解答者端末10に表示する。この際の表示態様については後述する。
【0103】
次に、本システム1の処理の終盤について説明する。
図19は、本システム1の処理の終盤を示す図である。
図19に示すように、サーバ60は、ステップS215の後に、復習パート作成処理1を実行する(ステップS216)。
復習パート作成処理1は、分散学習パートを作成する処理である。この処理の内容は、
図20を用いて詳述する。
図21は、復習パート作成処理1における処理を説明する図である。
【0104】
図21に示すように、復習パート作成処理1では、サーバ60は、復習問題が含む学習要素の選定を行う(ステップS2161)。ここで選定される学習要素は、
図13により算出された復習間隔を過ぎている学習要素、出題者が指定した演習問題が含む学習要素と同じ学習要素、定着度と習熟度の低い学習要素の順に、出題の優先度がつけられる。
【0105】
次に、サーバ60は、ステップS2161の後に、選定された学習要素から、当該学習要素を含む問題を選択する(ステップS2162)。
この際、演習問題のうち、選定された学習要素の習熟度よりも少し低い難易度を持つ演習問題を、復習問題として選択する。
【0106】
次に、サーバ60は、ステップS2162の後に、分散学習パートとしての復習問題を確定する(ステップS2163)。
復習問題の順番は、ステップS2161において決められた優先度に従って配置される。これにより、復習パートのうち、分散学習パートにおいて出題される問題およびその出題順序が確定する。
【0107】
次に、
図19に示すように、サーバ60は、ステップS216の後に、復習パート作成処理2を実行する(ステップS217)。
復習パート作成処理2は、個別復習パートを作成する処理である。この処理の内容は、
図22を用いて詳述する。
図22は、復習パート作成処理2における処理を説明する図である。
【0108】
図22に示すように、復習パート作成処理2では、ステップS210~S212において出題した共通問題のうち、解答者が誤答した演習問題を、復習問題として選択する。具体的にはまず、サーバ60は、誤答の確認を行う(ステップS2171)。この際、サーバ60は、まず、最初の共通問題P1についての正誤に関する情報を確認する。
【0109】
そして、共通問題P1が誤答である場合(ステップS2172のYes)には、サーバ60は、共通問題P1を復習問題として選定する処理を実行する(ステップS2173)。
次に、ステップS2173の後に、正誤の確認をした共通問題の問題番号が、最終問題の番号であるかどうかを確認する処理を実行する(ステップS2174)。
【0110】
一方、共通問題P1が正答である場合には(ステップS2172のNo)、サーバ60は、正誤の確認をした共通問題の問題番号が、最終問題の番号であるかどうかを確認する処理を実行する(ステップS2174)。
【0111】
ステップS2174において、正誤の確認をした共通問題の問題番号が、最終問題の番号でない場合(ステップS2174のNo)には、次の問題番号について、正誤の確認を行う(ステップS2172)。
一方、ステップS2174において、正誤の確認をした共通問題の問題番号が、最終番号まで到達した場合には、サーバ60は問題確定の処理を実行する(ステップS2175)。
【0112】
問題確定の処理では、これまでに選定された復習問題について、個別復習パートとして、サブパートを作成する。個別復習パートの出題順序は、誤答した問題が含む学習要素に対する解答者の習熟度の低い順、あるいはマスタデータとして学習分野ごとに問題の順序が設定されており、誤答した問題について、その順序に従って設定される。これにより、復習パート作成処理2が終了する。
なお、ステップS216およびステップS217は、同時に行われてもよい。
【0113】
次に、
図19に示すように、サーバ60は、ステップS217の後に、復習パートとして選定された復習問題を解答者に対して出題する(ステップS218~ステップS220)。この際、それぞれの問題に対して、解答者が解答を行う(ステップS307~ステップS309)。
なお、
図19では、復習問題の出題を3回としているが、これはあくまで例示である。復習問題の出題回数は、残りの演習時間により調整される。
【0114】
例えば、
図12に示す類型1のワークブックの場合には、残りの演習時間において、2回の分散学習パートと、個別復習パートと、が行われることとなる。このため、個別復習パートの問題数を考慮して、分散学習パートの問題を2回に分けて出題することとなる。
【0115】
各復習問題に対して解答があると、サーバ60は当該解答の正誤を判定する処理を実行する。この正誤に関する情報は、解答者からの解答があるたびに、解答者に対して通知される。正誤情報は、解答結果に関する情報として記憶される。
また、復習問題においても、前述したやり直しに関する機能を採用する。
【0116】
図19に示すように、復習パートの問題が順次出題され、設定された演習時間が経過すると、演習が全て終了する(ステップS221)。演習時間が経過するまで、分散学習パートの復習問題は無制限に選択され、出題される。
演習により新たに蓄積された学習履歴については、次回以降のワークブックにおいて活用される。具体的には、解答者毎に、各学習要素の定着度、習熟度、記憶度が更新される。
【0117】
次に、サーバ60は、ステップS221の後に、演習結果を報告する処理を実行する(ステップS222)。これにより、今回のワークブックの学習の成果を出題者および解答者が確認することができる。演習結果の報告における表示態様については後述する。
以上により、本システム1によりワークブックを解答者に対して提供する処理が全て終了する。
【0118】
次に、本システム1が提供するワークブックの画面レイアウトについて代表的なものを説明する。
図23は、ワークブックにおける画面レイアウトの第1例である。
この画面レイアウトは、
図17に示すステップS102において、共通問題を出題者が指定する際のおける画面である。
【0119】
図23に示すように、ステップS102において、サーバ60は、解答者に配信されるワークブックの構造を、出題者が使用する出題者端末15に対して表示する処理(本発明の第4ステップ)を実行する。
この際、サーバ60は、ワークブックの構造が、基礎パートと、基礎パートの後に位置する共通パートと、共通パートの後に位置する復習パートと、を含むことを示す情報を出題者端末15に対して表示する。
【0120】
図23では、基本情報として、ワークブックの類型とワークブックの名称が表示されている。また、基本情報の下側には、基礎パートを示す表示A、共通パートを示す表示B、復習パートを示す表示Cが記載されている。
表示Bには、共通パートに含まれる出題者が指定した演習問題を示す情報がさらに表示されている。
【0121】
次に、
図24は、ワークブックにおける画面レイアウトの第2例である。この画面レイアウトは、
図18に示すステップS213において、共通パートの終了、および復習パートの開始を示す画面を示している。
【0122】
図24Aに示すように、ステップS213において、サーバ60は、共通パートが終了したことを示す情報の表示を、共通パートの終了後に解答者に対して示す処理(本発明の第6ステップ)を実行する。この表示により、出題者が予め選択した共通問題の解答が全て終わったことを、出題者が明確に把握することができる。
【0123】
またその後、
図24Bに示すように、ステップS213において、サーバ60は、復習パートが開始することを示す情報を、解答者に対して示す処理(本発明の第6ステップ)を実行する。この表示では、これから復習パートが開示されることを、出題者が明確に把握することができる。
これらの表示では、共通パートの終了、および復習パートの開始のうち、いずれか一方のみを表示するような態様であってもよい。
【0124】
次に、
図25は、ワークブックにおける画面レイアウトの第3例である。この画面レイアウトは、
図18に示すステップS208およびS214において、解答者の解答の進捗状況を表示する画面である。
【0125】
図25に示すように、サーバ60は、進捗報告を行う際には、複数の解答者それぞれの解答の進捗状況を、出題者に対して一覧表示する処理を実行する(本発明の第7ステップ)。
図25では、解答者毎に、氏名、ワークブックの単元、問題数、正答率、解答数、進捗率等の情報が表示されている。また、進捗状況は、演習時間中の同一時点における評価結果を確認することができる。この表示では、解答した問題数に応じて、データバーが増えていく表示態様となっており、進捗状況を視覚的に把握することができる。また、データバー上の×印の表示は、全体の問題構成の中で、誤答した問題の個所を示している。
このように、この画面では、各解答者が、共通パートおよび復習パートを含む複数のパートのうち、どのパートのどの問題まで到達したかが、出題者に対して一覧表示される。
【0126】
次に、
図26は、ワークブックにおける画面レイアウトの第4例である。この画面レイアウトは、
図19に示すステップS223において、解答者および出題者に対して、解答者の演習結果の報告を行う際の画面である。
【0127】
図26に示すように、ステップS223では、サーバ60は、復習パートにおいて解答された問題数に対応する情報を、解答者に対して表示する処理(本発明の第5ステップ)を実行する。
図26では、これまでに出題されたワークブックの名称(ワークブック01~ワークブック04)がそれぞれ記載されている。
【0128】
図26のワークブック01における表示Dの62%という表示は、共通問題のち、既に解答を行った問題の割合である着手率を示している。
図26のワークブック02における表示Eのチェックは、共通問題の解答が全て終了していることを示している。
【0129】
図26のワークブック03における表示Fの+25という表示は、共通問題の解答が全て終了した後に、復習問題として、25問の解答を行ったことを意味している。
図26のワークブック04における表示Gの0%という表示は、共通問題の解答が全くされていないことを意味している。
【0130】
次に、
図27は、ワークブックにおける画面レイアウトの第5例である。この画面レイアウトは、
図26に表示されたいずれかのワークブックを選択した状態で、表示Hの問題一覧をクリックした際に表示される画面である。
【0131】
図27では、各ワークブックに含まれる各問題について、その問題種別、解答日時、正誤、解答内容、解答時間が表示される。これらを確認することで、どの問題を間違えたのかについて具体的に確認することができる。
【0132】
以上説明したように、本発明のシステム1によれば、ワークブックが、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートと、解答者の学習履歴を参照して、選定される復習問題により構成される復習パートと、により構成される。
このため、単に出題者の指定した全解答者共通の演習問題を解答させるだけでなく、解答者毎に、過去の学習履歴の結果を参照した復習問題を演習させることで、復習させるべき演習問題をしっかりと演習させることができる。また、共通問題と類似する復習問題を、共通問題に取り組んだ後の一定時間が経過後に再度演習させることで、分散学習を行うことが可能になり、記憶の効率的な定着を図ることができる。これにより、学習者の学習効率を向上することができる。
また、解答者の学力に合わせて適切な復習問題を個別に設定する作業には、出題者の労力が必要となるが、本システム1では、自動的に復習問題が選択されるため、このような出題者の労力を軽減することができる。
【0133】
また、復習パートが、演習問題の難易度に関する情報、解答者の習熟度に関する情報、および共通問題の解答に要する学習要素に関する情報を参照して選択されている。このため、解答者に復習させるべき演習問題、すなわち学習効果の高い演習問題を、復習問題として出題することができる。
【0134】
また、復習パートの復習問題が、共通問題のうち、解答者が誤答した演習問題であるため、過去に間違えた問題を再度演習させることで、効率的に学習することができる。
【0135】
また、誤答した演習問題の難易度に関する情報、解答者の習熟度に関する情報、および誤答した問題の解答に要する学習要素に関する情報を参照し、復習パートを作成した場合には、誤答した問題と類似する問題を演習することで、同様の間違いをなくすことができる。
【0136】
また、分散学習のために選択された復習問題の間に、誤答した問題から選択された復習問題の演習を行う。これにより、過去に誤答した演習問題を、繰り返して解答することで間違いに気づくことができ、高い学習効果を発揮することができる。
【0137】
また、分散学習において、定着度を参照して、定着度の低い学習要素を優先して、演習問題から復習問題を選択する。このため、解答者の理解が定着していない問題を重点的に行うことで、全体的な学力の向上を図ることができる。
【0138】
また、基礎問題を含む基礎パートを、解答者それぞれに対して個別に作成するので、解答者の理解が著しく乏しい分野についても、段階的な学習を行うことができ、より一層効果的な学習効果を得ることができる。
また、解答者の学力に合わせて適切な基礎問題を個別に設定する作業には、出題者の労力が必要となるが、本システム1では、自動的に基礎問題が選択されるため、このような出題者の労力を軽減することができる。
【0139】
また、基礎問題を、解答者の習熟度に関する情報、定着度を参照して、演習問題から基選択するので、確実に理解が乏しい分野に関連する演習問題を選択することができる。
【0140】
また、本システム1は、ワークブックの構造が、基礎パートと、基礎パートの後に位置する共通パートと、共通パートの後に位置する復習パートと、を含むことを示す情報とともに、共通パートに含まれる出題者が指定した演習問題を出題者に表示する。このため、出題者が、解答者に対して出題するワークブックの構造を正確に把握することができる。
【0141】
また、本システム1は、復習パートにおいて解答された問題数に対応する情報を、解答者に対して表示する。このため、解答者が自身の復習問題の解答数を定量的に把握することで、取り組んだワークブックの分野に対する学習意欲を鼓舞し、更なる学習の動機付けとすることができる。
【0142】
また、本システム1は、共通パートが終了したことを示す情報の表示、および復習パートが開始することを示す情報のうち、少なくとも一方の表示を、共通パートの終了後に、解答者に対して表示する。このため、取り組んだワークブックの復習を行うことを解答者に明確に意識させることで、学習意欲を鼓舞することができる。
【0143】
また、本システム1は、複数の解答者それぞれの解答の進捗状況を、出題者に対して一覧表示する。このため、出題者が複数の解答者それぞれの進捗状況を把握することで、例えば生徒全体の学力のひらきや、学習の進み具合を容易に把握することができる。
【0144】
また、本システム1は、各解答者が、共通パートおよび復習パートを含む複数のパートのうちどのパートのどの問題まで到達したかを、出題者に対して一覧表示する。このため、各解答者の学力を正確に出題者が把握することができる。
【0145】
<変形例>
本システム1の変形例について説明する。
基礎パートは一つのまとまった配置構成でなくてもよい。すなわち、基礎パートは、定着度および習熟度の低い学習要素を含む共通問題の直前に基礎問題を演習させるように、共通パートの内部に分散するように配置されるような構成であってもよい。
【0146】
復習問題は、ワークブックの演習時間の終了後に、出題者の指示により、又は解答者の発意により、さらに自習学習として出題されてもよい。この場合には、復習問題の解答数の表示は、演習時間の後に取り組んだ問題数も累積されていくことが望ましい。取り組んだ復習問題の解答数を確認することで、解答者の学習意欲を鼓舞するからである。
個別復習パートでは、そのワークブックにおいて誤答した問題に限られず、過去に誤答した演習問題を復習問題として選択してもよい。
【0147】
ワークブックの総演習時間は必ずしも設定されなくてもよい。この場合には、最初に選択された共通問題の終了後は、出題者又は解答者が停止の指示を入力するまで、復習問題が無制限に出題されてもよい。
本システム1は、復習パートが含まれずに、基礎パートおよび共通パートのみから構成されたワークブックを提供してもよい。この場合には、解答者の学習要素に対する習熟度および定着度に合わせて、当該学習要素に対する基礎理解が乏しい場合であってもワークブックに取り組むことが可能になる。また、基礎問題があることで、段階的に難易度が上がる問題に取り組むことで、学習効率を向上することができる。
【0148】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。また、上記実施形態及び変形例で説明した装置の構成および処理の手順は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせ可能である。
【0149】
<付記>
本発明の実施形態について、以下に付記を示す。
【0150】
(付記1)
コンピュータのプロセッサに、
複数の演習問題が記憶されたデータベースから、出題者が複数指定した演習問題を選択し、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートを作成する第1ステップと、
解答者の学習履歴を参照して、演習問題から共通問題の復習となる復習問題を選択し、復習問題を含む復習パートを解答者それぞれに対して個別に作成する第2ステップと、を実行させるプログラム。
【0151】
(付記2)
演習問題は、その難易度に関する情報、およびその解答に要する学習要素に関する情報とともにデータベースに記憶され、
復習パートは、第1サブパートを含む1以上のサブパートにより構成され、
第2ステップでは、
学習履歴に含まれる演習問題の難易度に関する情報、学習履歴から得られる解答者の習熟度に関する情報、および共通問題の解答に要する学習要素に関する情報を参照し、演習問題を復習問題として選択して第1サブパートを作成する、(付記1)に記載のプログラム。
【0152】
(付記3)
復習パートは、第2サブパートを含む1以上のサブパートにより構成され、
第2ステップでは、
共通問題のうち、解答者が誤答した演習問題を、復習問題として選択して第2サブパートを作成する、(付記2)に記載のプログラム。
【0153】
(付記4)
復習パートは、第2サブパートを含む1以上のサブパートにより構成され、
第2ステップでは、
誤答した演習問題の難易度に関する情報、学習履歴から得られる解答者の習熟度に関する情報、および誤答した問題の解答に要する学習要素に関する情報を参照し、第2サブパートを作成する、(付記2)に記載のプログラム。
【0154】
(付記5)
復習パートは、第1サブパート、第2サブパート、および第3サブパートを含む3以上のサブパートにより構成され、
第2ステップでは、
共通問題のうち、解答者が誤答した演習問題を、復習問題として選択して第2サブパートを作成し、
演習問題の難易度に関する情報、解答結果から得られる解答者の習熟度に関する情報、および学習要素に関する情報を参照し、演習問題を復習問題として選択して第3サブパートを作成し、
第2サブパートが、第1サブパートの後に組み込まれて構成され、
第3サブパートが、第2サブパートの後に組み込まれて構成されている、(付記3)又は(付記4)に記載のプログラム。
【0155】
(付記6)
第2ステップでは、
学習要素に対する理解の定着の度合いを示す定着度を参照して、定着度の低い学習要素を優先して、演習問題から復習問題を選択する、(付記2)から(付記5)のいずれかに記載のプログラム。
【0156】
(付記7)
コンピュータのプロセッサに、
データベースに記憶された演習問題から共通問題を解答するのに必要な基礎知識が問われる基礎問題を選択し、基礎問題を含む基礎パートを、解答者それぞれに対して個別に作成する第3ステップを実行させる(付記1)から(付記6)のいずれかに記載のプログラム。
【0157】
(付記8)
演習問題は、その難易度に関する情報、およびその解答に要する学習要素に関する情報とともにデータベースに記憶され、
第3ステップでは、
共通問題の難易度、学習履歴から得られる解答者の習熟度に関する情報、および学習要素に対する理解の定着の度合いを示す定着度を参照して、演習問題から基礎問題を選択する(付記7)に記載のプログラム。
【0158】
(付記9)
コンピュータのプロセッサに、
第1ステップにおいて、解答者に配信されるワークブックの構造を、出題者に対して表示する第4ステップを実行させ、
第4ステップでは、ワークブックの構造が、基礎パートと、基礎パートの後に位置する共通パートと、共通パートの後に位置する復習パートとを含むことを示す情報と、共通パートに含まれる出題者が指定した演習問題を示す情報とを表示する(付記7)又は(付記8)に記載のプログラム。
【0159】
(付記10)
コンピュータのプロセッサに、
復習パートにおいて解答された問題数に対応する情報を、解答者に対して表示する第5ステップを実行させる、(付記1)から(付記9)のいずれかに記載のプログラム。
【0160】
(付記11)
コンピュータのプロセッサに、
共通パートが終了したことを示す情報の表示、および復習パートが開始することを示す情報のうち、少なくとも一方の表示を、共通パートの終了後に、解答者に対して示す第6ステップを実行させる、(付記1)から(付記10)のいずれかに記載のプログラム。
【0161】
(付記12)
コンピュータのプロセッサに、
複数の解答者それぞれの解答の進捗状況を、出題者に対して一覧表示する第7ステップを実行させる、(付記1)から(付記11)のいずれかに記載のプログラム。
【0162】
(付記13)
第7ステップでは、
各解答者が、共通パートおよび復習パートを含む複数のパートのうちどのパートのどの問題まで到達したかを、出題者に対して一覧表示する、(付記12)に記載のプログラム。
【0163】
(付記14)
コンピュータのプロセッサが、
複数の演習問題が記憶されたデータベースから、出題者が複数指定した演習問題を選択し、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートを作成する第1ステップと、
解答者の学習履歴を参照して、演習問題から共通問題の復習となる復習問題を選択し、復習問題を含む復習パートを解答者それぞれに対して個別に作成する第2ステップと、を実行する方法。
【0164】
(付記15)
複数の演習問題が記憶されたデータベースから、出題者が複数指定した演習問題を選択し、複数の解答者に対して共通となる共通問題により構成される共通パートを作成する第1手段と、
解答者の学習履歴を参照して、演習問題から共通問題の復習となる復習問題を選択し、復習問題を含む復習パートを解答者それぞれに対して個別に作成する第2手段と、を備えたシステム。
【符号の説明】
【0165】
1 学習システム
10 解答者端末
15 出題者端末
60 サーバ
110 データ管理装置
100 データベースシステム