(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164775
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターを使用して神経上皮腫瘍を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20221020BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20221020BHJP
A61K 50/00 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/567 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/513 20060101ALI20221020BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20221020BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221020BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221020BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K45/06
A61K50/00 100
A61K31/567
A61K31/513
A61K31/4745
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022136739
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2019570000の分割
【原出願日】2018-06-18
(31)【優先権主張番号】62/522,489
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503345477
【氏名又は名称】コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ジー. モライティス
(57)【要約】
【課題】選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーターを使用して神経上皮腫瘍を処置する方法の提供。
【解決手段】出願人は、選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)を被験体の腫瘍負荷を減少させるために有効な量で投与することを含む、被験体のグルココルチコイドレセプター陽性(GR+)神経上皮腫瘍を処置するための方法を開示する。GR+神経上皮腫瘍は、神経線維腫症2型(NF2)腫瘍であってよく;GR+神経上皮腫瘍は、シュワン細胞腫、髄膜腫、または上衣腫であってよい。実施形態においてGR+神経上皮腫瘍は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌腫瘍ではない。実施形態においてSGRMはステロイド骨格を含む。実施形態においてSGRMはミフェプリストンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
髄膜腫、シュワン細胞腫および上衣腫は、神経線維腫症2型(「NF2」)の患者において頻繁に見られる神経上皮腫瘍である。髄膜腫はすべての原発性脳腫瘍の約36.1%を占める。髄膜腫は、脳および脊髄を覆っている薄い3層の組織である髄膜から生じ、脳の上部と外側の曲線付近、および頭蓋底によく見られる。シュワン細胞腫は、すべての原発性脳腫瘍の約8%を占める。シュワン細胞腫は、シュワン細胞からなる神経鞘腫瘍である。腫瘍細胞は常に神経の外側にとどまるが、腫瘍自体が神経を脇へ押しのける、かつ/または骨構造に向かって押し上げることがある。髄膜腫とシュワン細胞腫の発生率は両方とも年齢とともに増加し、女性では男性の約2倍の頻度で発生する。上衣腫は、成人の頭蓋内神経膠腫の約5%、そして中枢神経系(CNS)の小児腫瘍の最大10%を占める。上衣腫は、脳の空洞と、脊髄を含有する管との両方を覆う細胞から発生するが、それらは通常、脳の後下部に位置する第4脳室の床から生じる。
【0002】
髄膜腫、シュワン細胞腫、および上衣腫などの神経上皮腫瘍の従来の処置選択肢としては、外科手術、放射線療法、および化学療法が挙げられる。外科手術は現在、髄膜腫、シュワン細胞腫、または上衣腫を有する患者の主な処置選択肢である。しかしながら、外科手術は腫瘍を完全に除去することができないことが多く、腫瘍が広がっている場合、または脳に損傷を与えずに腫瘍を除去することができない場合には、不可能な場合がある。放射線療法および化学療法は、がん細胞が一般に高い増殖能力を有し、DNA損傷に対する感受性がより高いという事実を利用して、DNAに全般的な損傷を与え、染色体構造を不安定化させることによって腫瘍細胞を死滅させ、最終的にはがん細胞の破壊を引き起こす。放射線療法の非限定的な例としては、γ線およびX線が挙げられ、化学療法剤の非限定的な例としては、ブレオマイシン、シスプラチン、ビンブラスチン、シクロホスファミド、5’-フルオロウラシル、およびメトトレキサートが挙げられる。これらの処置は、これらの細胞が細胞分裂を受ける前に損傷したDNAを修復する能力を制限する、細胞周期チェックポイントに欠陥がある種類のがんに特に効果的である。しかしながら、これらの処置の非選択的性質は、多くの場合、重度かつ消耗性の副作用をもたらす。これらの薬物の全身使用は、通常、健常器官および組織の損傷をもたらし得、患者の長期的な健康を損ない得る。したがって、神経上皮腫瘍、例えば髄膜腫、シュワン細胞腫および上衣腫などを処置するための新規な治療選択肢が必要とされており、下に開示される本発明の方法は、これらおよびその他のニーズを満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
本明細書では、被験体のGR+神経上皮腫瘍(ここで、「GR+」とは、腫瘍がグルココルチコイドレセプター(GR)を発現していることを意味する)を処置するための方法が開示される。この方法は、被験体にグルココルチコイドレセプターモジュレーター(GRM)、例えば選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)を、被験体のGR+神経上皮腫瘍の腫瘍負荷を減少させるために有効な量で投与することを含む。ただし、被験体はその他にはSGRMで処置可能な障害に罹患していないことを条件とする。SGRMを投与することを含む処置が有益であると示されている障害の非限定的な例としては、クッシング症状群、精神障害、例えば精神病性大うつ病、コカイン添加(cocaine addition)、ストレス障害、産後精神病、およびタキサンとSGRMの併用で処置可能ながん(例えば、乳がんおよび前立腺がん)が挙げられる。本明細書に開示される方法の実施形態において、GR+神経上皮腫瘍は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)分泌腫瘍ではない。いくつかの実施形態において、GR+神経上皮腫瘍は神経線維腫症2型(NF2)である。いくつかの実施形態において、GR+神経上皮腫瘍は、シュワン細胞腫、髄膜腫、および上衣腫から選択される腫瘍である。
【0004】
いくつかの場合において、SGRMは経口投与される。いくつかの場合において、SGRMは、経皮適用によって、霧状化懸濁物(nebulized suspension)によって、または
エアロゾルスプレーによって投与される。いくつかの場合において、SGRMは、非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターである。いくつかの場合において、非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターは、経口投与される。いくつかの場合において、非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターは、経皮適用によって、霧状化懸濁物によって、またはエアロゾルスプレーによって投与される。いくつかの場合において、SGRMは、被験体に少なくとも2週間投与される。いくつかの場合において、SGRMは、少なくとも3週間、または4週間、または2カ月、または3カ月、またはそれよりも長く被験体に投与される。
【0005】
いくつかの場合において、有効量のSGRMは、1~100mg/kg/日の1日用量であり、SGRMは単独で投与されるか、あるいは少なくとも1つの非SGRM療法、例えば、化学療法、放射線療法、またはその他の治療剤とともに投与される。いくつかの実施形態において、1日用量は、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90または100mg/kg/日である。いくつかの場合において、非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80週間投与される。
【0006】
いくつかの実施形態において、グルココルチコイドレセプターモジュレーター、例えばSGRMは、少なくとも1つのフェニル含有部分をステロイド骨格の11-β位に持つステロイド骨格を含む。いくつかの場合において、ステロイド骨格の11-β位のフェニル含有部分はジメチルアミノフェニル部分である。いくつかの場合において、グルココルチコイドレセプターモジュレーターはミフェプリストンである。いくつかの実施形態において、グルココルチコイドレセプターモジュレーターは、11β-(4-ジメチルアミノエトキシフェニル)-17α-プロピニル-17β-ヒドロキシ-4,9エストラジエン-3-オンおよび(17α)-17-ヒドロキシ-19-(4-メチルフェニル)アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オンからなる群より選択される。いくつかの実施形態において、グルココルチコイドレセプターモジュレーターは、(11β,17β)-11-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-17-ヒドロキシ-17-(1-プロピニル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンである。
【0007】
いくつかの実施形態において、グルココルチコイドレセプターモジュレーター、例えばSGRMは、非ステロイド骨格を有する。いくつかの場合において、グルココルチコイドレセプターモジュレーター骨格は、シクロヘキシルピリミジンである。いくつかの場合において、シクロヘキシルピリミジンは、以下の式:
【化1】
(式中、破線は存在しないか、または結合であり;Xは、OおよびSからなる群より選択され;R
1は、1~3個のR
1a基で必要に応じて置換されているシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され;各R
1aは、H、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6アルコキシ、C
1-6アルキルOR
1b、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6ハロアロキシ(haloaloxy)、OR
1b、NR
1bR
1c、C(O)R
1b、C(O)OR
1b、OC(O)R
1b、C(O)NR
1bR
1c、NR
1bC(O)R
1c、SO
2R
1b、SO
2NR
1bR
1c、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;R
1bおよびR
1cは、HおよびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;R
2は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-OR
1b、C
1-6アルキルNR
1bR
1cおよびC
1-6アルキレンヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;R
3は、HおよびC
1-6アルキルからなる群より選択され;Arは、1~4個のR
4基で場合により置換されているアリールであり;各R
4は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、ハロゲン、C
1-6ハロアルキルおよびC
1-6ハロアルコキシからなる群より独立して選択され;L
1は結合またはC
1-6アルキレンであり;かつ、下付文字のnは、0~3の整数である)を有するか、またはその塩および異性体である。
【0008】
いくつかの場合において、グルココルチコイドレセプターモジュレーター骨格は、縮合アザデカリンである。いくつかの場合において、縮合アザデカリンは、以下の式:
【化2】
(式中、L
1およびL
2は、結合および非置換アルキレンから独立して選択されるメンバーであり;R
1は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR
1A、NR
1CR
1D、-C(O)NR
1CR
1Dおよび-C(O)OR
1Aから選択されるメンバーであり、ここで、R
1Aは、水素、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、R
1CおよびR
1Dは、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、ここで、R
1CおよびR
1Dは場合により接合して、それらが結合している窒素とともに非置換環を形成し、ここで、前記環は、場合により、さらなる環窒素を含み;R
2は、式:
【化3】
(式中、R
2Gは、水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CNおよび-CF
3から選択されるメンバーであり;Jは、フェニルであり;tは、0~5の整数であり;Xは、-S(O
2)-である)を有し;およびR
5は、1~5個のR
5A基で場合により置換されているフェニルであり、ここで、R
5Aは、水素、ハロゲン、-OR
5A1、S(O
2)NR
5A2R
5A3、-CNおよび非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ここで、R
5A1は、水素および非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ならびにR
5A2およびR
5A3は、水素および非置換アルキルから独立して選択されるメンバーである)を有する化合物またはその塩および異性体である。
【0009】
いくつかの場合において、グルココルチコイドレセプターモジュレーター骨格は、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリンまたはオクタヒドロ縮合アザデカリンである。いくつかの場合において、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリンは、式:
【化4】
(式中、R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有し;各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1 6ハロアルキル、C
1 6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、CN、OH、NR
2aR
2b、C(O)R
2a、C(O)OR
2a、C(O)NR
2aR
2b、SR
2a、S(O)R
2a、S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~4個のR
2c基で場合により置換されており;あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR
2基は一緒になって、オキソ基(=O)を形成し;あるいは、2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2d基で場合により置換されており;R
2aおよびR
2bは、水素およびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;各R
2cは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、CNおよびNR
2aR
2bからなる群より独立して選択され;各R
2dは、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、または同じ環原子に結合している2個のR
2d基は一緒になって、(=O)を形成し;R
3は、1~4個のR
3a基でそれぞれ場合により置換されているフェニルおよびピリジルからなる群より選択され;各R
3aは、水素、ハロゲンおよびC
1-6ハロアルキルからなる群より独立して選択され;ならびに下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する。
【0010】
いくつかの場合において、オクタヒドロ縮合アザデカリンは、式:
【化5】
(式中、R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシドおよびC
3-8シクロアルキルからなる群より独立して選択され;環Jは、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され;各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、CN、OH、NR
2aR
2b、C(O)R
2a、C(O)OR
2a、C(O)NR
2aR
2b、SR
2a、S(O)R
2a、S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、ならびにN、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;あるいは、隣接環原子上の2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2c基で場合により置換されており;R
2a、R
2bおよびR
2cはそれぞれ、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択され;各R
3aは独立して、ハロゲンであり;ならびに下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する。
【0011】
いくつかの場合において、SGRMは、以下の構造:
【化6】
を有するCORT125134、すなわち(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
【0012】
いくつかの場合において、SGRMは、以下の構造:
【化7】
を有するCORT125281、すなわち((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
被験体のGR
+神経上皮腫瘍を処置する方法であって、前記被験体がその他には選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)で処置可能な障害に罹患しておらず、前記腫瘍が副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を分泌していないという条件で、SGRMを、前記患者の前記神経上皮腫瘍の腫瘍負荷を減少させるために有効な量で前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目2)
前記GR
+神経上皮腫瘍が神経線維腫症2型である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記GR
+神経上皮腫瘍がシュワン細胞腫、髄膜腫、および上衣腫からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記SGRMを少なくとも2週間投与することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記有効量が、1~100mg/kg/日の1日用量であり、前記SGRMが単独で投与されるか、あるいは少なくとも1つの非SGRM療法とともに投与され、前記少なくとも1つの非SGRM療法が、化学療法、放射線療法またはその他の治療剤である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記1日用量が、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90または100mg/kg/日である、項目1に記載の方法。
(項目7)
非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80週間投与される、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、少なくとも1つのフェニル含有部分をステロイド骨格の11-β位に持つ前記ステロイド骨格を含む、項目1~7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記ステロイド骨格の前記11-β位の前記フェニル含有部分が、ジメチルアミノフェニル部分である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記グルココルチコイドレセプターモジュレーターがミフェプリストンである、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、11β-(4-ジメチルアミノエトキシフェニル)-17α-プロピニル-17β-ヒドロキシ-4,9エストラジエン-3-オンおよび(17α)-17-ヒドロキシ-19-(4-メチルフェニル)アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オンからなる群より選択される、項目1~7のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、(11β,17β)-11-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-17-ヒドロキシ-17-(1-プロピニル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンである、項目1~7のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、非ステロイド骨格を有する、項目1~7のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記グルココルチコイドレセプターモジュレーター骨格が、シクロヘキシルピリミジンである、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記シクロヘキシルピリミジンが以下の式:
【化18】
(式中、破線は存在しないか、または結合であり;
Xは、OおよびSからなる群より選択され;
R
1は、1~3個のR
1a基で場合により置換されているシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され;
各R
1aは、H、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6アルコキシ、C
1-6アルキルOR
1b、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6ハロアロキシ、OR
1b、NR
1bR
1c、C(O)R
1b、C(O)OR
1b、OC(O)R
1b、C(O)NR
1bR
1c、NR
1bC(O)R
1c、SO
2R
1b、SO
2NR
1bR
1c、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;
R
1bおよびR
1cは、HおよびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
R
2は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-OR
1b、C
1-6アルキルNR
1bR
1cおよびC
1-6アルキレンヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
R
3は、HおよびC
1-6アルキルからなる群より選択され;
Arは、1~4個のR
4基で場合により置換されているアリールであり;
各R
4は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、ハロゲン、C
1-6ハロアルキルおよびC
1-6ハロアルコキシからなる群より独立して選択され;
L
1は結合またはC
1-6アルキレンであり;かつ、
下付文字のnは、0~3の整数である)を有するか、またはその塩および異性体である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記シクロヘキシルピリミジンが、以下の式:
【化19】
を有する、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記グルココルチコイドレセプターモジュレーター骨格が、縮合アザデカリンである、項目13に記載の方法。
(項目18)
縮合アザデカリンが、以下の式:
【化20】
(式中、
L
1およびL
2は、結合および非置換アルキレンから独立して選択されるメンバーであり;
R
1は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR
1A、NR
1CR
1D、-C(O)NR
1CR
1Dおよび-C(O)OR
1Aから選択されるメンバーであり、ここで、
R
1Aは、水素、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、
R
1CおよびR
1Dは、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、
ここで、R
1CおよびR
1Dは場合により接合して、それらが結合している窒素とともに非置換環を形成し、ここで、前記環は、場合により、さらなる環窒素を含み;
R
2は、式:
【化21】
(式中、
R
2Gは、水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CNおよび-CF
3から選択されるメンバーであり;
Jは、フェニルであり;
tは、0~5の整数であり;
Xは、-S(O
2)-である)を有し;および
R
5は、1~5個のR
5A基で場合により置換されているフェニルであり、ここで、
R
5Aは、水素、ハロゲン、-OR
5A1、S(O
2)NR
5A2R
5A3、-CNおよび非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ここで、
R
5A1は、水素および非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ならびに
R
5A2およびR
5A3は、水素および非置換アルキルから独立して選択されるメンバーである)を有する化合物またはその塩および異性体である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記縮合アザデカリンが、
【化22】
である、項目17に記載の方法。
(項目20)
前記グルココルチコイドレセプターモジュレーター骨格が、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリンまたはオクタヒドロ縮合アザデカリンである、項目13に記載の方法。
(項目21)
前記ヘテロアリールケトン縮合アザデカリンが、式:
【化23】
(式中、
R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有し;
各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1 6ハロアルキル、C
1 6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、CN、OH、NR
2aR
2b、C(O)R
2a、C(O)OR
2a、C(O)NR
2aR
2b、SR
2a、S(O)R
2a、S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~4個のR
2c基で場合により置換されており;
あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR
2基は一緒になって、オキソ基(=O)を形成し;
あるいは、2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2d基で場合により置換されており;
R
2aおよびR
2bは、水素およびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
各R
2cは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、CNおよびNR
2aR
2bからなる群より独立して選択され;
各R
2dは、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、または同じ環原子に結合している2個のR
2d基は一緒になって、(=O)を形成し;
R
3は、1~4個のR
3a基でそれぞれ場合により置換されているフェニルおよびピリジルからなる群より選択され;
各R
3aは、水素、ハロゲンおよびC
1-6ハロアルキルからなる群より独立して選択され;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)を有するまたはその塩および異性体である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンが、
【化24】
からなる群より選択される、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記オクタヒドロ縮合アザデカリンが、式:
【化25】
(式中、
R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシドおよびC
3-8シクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され;
各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、CN、OH、NR
2aR
2b、C(O)R
2a、C(O)OR
2a、C(O)NR
2aR
2b、SR
2a、S(O)R
2a、S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、ならびにN、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
あるいは、隣接環原子上の2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2c基で場合により置換されており;
R
2a、R
2bおよびR
2cはそれぞれ、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択され;
各R
3aは独立して、ハロゲンであり;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)を有するか、またはその塩および異性体である、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記オクタヒドロ縮合アザデカリンが、式:
【化26】
を有する、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記腫瘍がシュワン細胞腫である、項目10に記載の方法。
(項目26)
前記SGRMが、CORT125134またはCORT125281である、項目1~7のいずれかに記載の方法。
(項目27)
患者のシュワン細胞腫または髄膜腫を処置する方法であって、選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRA)を前記患者のシュワン細胞腫または髄膜腫の腫瘍負荷を減少させるために有効な量で前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目28)
前記SGRMを少なくとも2週間投与することを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記有効量が、1~100mg/kg/日の1日用量である、項目27に記載の方法。(項目30)
前記1日用量が、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90または100mg/kg/日である、項目27に記載の方法。
(項目31)
非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーターが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または80週間投与される、項目27に記載の方法。
(項目32)
グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、少なくとも1つのフェニル含有部分をステロイド骨格の11-β位に持つ前記ステロイド骨格を含む、項目27に記載の方法。
(項目33)
前記ステロイド骨格の前記11-β位の前記フェニル含有部分が、ジメチルアミノフェニル部分である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストがミフェプリストンである、項目32に記載の方法。
(項目35)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、11β-(4-ジメチルアミノエトキシフェニル)-17α-プロピニル-17β-ヒドロキシ-4,9エストラジエン-3-オンおよび(17α)-17-ヒドロキシ-19-(4-メチルフェニル)アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オンからなる群より選択される、項目27に記載の方法。
(項目36)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが、(11β,17β)-11-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-17-ヒドロキシ-17-(1-プロピニル)エストラ-4,9-ジエン-3-オンである、項目27に記載の方法。
(項目37)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニストが非ステロイド骨格を有する、項目27に記載の方法。
(項目38)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト骨格が、シクロヘキシルピリミジンである、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記シクロヘキシルピリミジンが以下の式:
【化27】
(式中、破線は存在しないか、または結合であり;
Xは、OおよびSからなる群より選択され;
R
1は、1~3個のR
1a基で場合により置換されているシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され;
各R
1aは、H、C
1-6アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6アルコキシ、C
1-6アルキルOR
1b、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6ハロアロキシ、OR
1b、NR
1bR
1c、C(O)R
1b、C(O)OR
1b、OC(O)R
1b、C(O)NR
1bR
1c、NR
1bC(O)R
1c、SO
2R
1b、SO
2NR
1bR
1c、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より独立して選択され;
R
1bおよびR
1cは、HおよびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
R
2は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルキル-OR
1b、C
1-6アルキルNR
1bR
1cおよびC
1-6アルキレンヘテロシクロアルキルからなる群より選択され;
R
3は、HおよびC
1-6アルキルからなる群より選択され;
Arは、1~4個のR
4基で場合により置換されているアリールであり;
各R
4は、H、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、ハロゲン、C
1-6ハロアルキルおよびC
1-6ハロアルコキシからなる群より独立して選択され;
L
1は結合またはC
1-6アルキレンであり;かつ、
下付文字のnは、0~3の整数である)を有するか、またはその塩および異性体である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記シクロヘキシルピリミジンが、以下の式:
【化28】
を有する、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト骨格が、縮合アザデカリンである、項目37に記載の方法。
(項目42)
前記縮合アザデカリンが、以下の式:
【化29】
(式中、
L
1およびL
2は、結合および非置換アルキレンから独立して選択されるメンバーであり;
R
1は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR
1A、NR
1CR
1D、-C(O)NR
1CR
1Dおよび-C(O)OR
1Aから選択されるメンバーであり、ここで、
R
1Aは、水素、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、
R
1CおよびR
1Dは、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、
ここで、R
1CおよびR
1Dは場合により接合して、それらが結合している窒素とともに非置換環を形成し、ここで、前記環は、場合により、さらなる環窒素を含み;
R
2は、式:
【化30】
(式中、
R
2Gは、水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CNおよび-CF
3から選択されるメンバーであり;
Jは、フェニルであり;
tは、0~5の整数であり;
Xは、-S(O
2)-である)を有し;および
R
5は、1~5個のR
5A基で場合により置換されているフェニルであり、ここで、
R
5Aは、水素、ハロゲン、-OR
5A1、S(O
2)NR
5A2R
5A3、-CNおよび非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ここで、
R
5A1は、水素および非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ならびに
R
5A2およびR
5A3は、水素および非置換アルキルから独立して選択されるメンバーである)を有する化合物またはその塩および異性体である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記縮合アザデカリンが、
【化31】
である、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト骨格が、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリンまたはオクタヒドロ縮合アザデカリンである、項目37に記載の方法。
(項目45)
前記ヘテロアリールケトン縮合アザデカリンが、式:
【化32】
(式中、
R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有し;
各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1 6ハロアルキル、C
1 6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、CN、OH、NR
2aR
2b、C(O)R
2a、C(O)OR
2a、C(O)NR
2aR
2b、SR
2a、S(O)R
2a、S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~4個のR
2c基で場合により置換されており;
あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR
2基は一緒になって、オキソ基(=O)を形成し;
あるいは、2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2d基で場合により置換されており;
R
2aおよびR
2bは、水素およびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
各R
2cは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、CNおよびNR
2aR
2bからなる群より独立して選択され;
各R
2dは、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、または同じ環原子に結合している2個のR
2d基は一緒になって、(=O)を形成し;
R
3は、1~4個のR
3a基でそれぞれ場合により置換されているフェニルおよびピリジルからなる群より選択され;
各R
3aは、水素、ハロゲンおよびC
1-6ハロアルキルからなる群より独立して選択され;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)を有するまたはその塩および異性体である、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンが、
【化33】
からなる群より選択される、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記オクタヒドロ縮合アザデカリンが、式:
【化34】
(式中、
R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシドおよびC
3-8シクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され;
各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、CN、OH、NR
2aR
2b、C(O)R
2a、C(O)OR
2a、C(O)NR
2aR
2b、SR
2a、S(O)R
2a、S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、ならびにN、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
あるいは、隣接環原子上の2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2c基で場合により置換されており;
R
2a、R
2bおよびR
2cはそれぞれ、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択され;
各R
3aは独立して、ハロゲンであり;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)を有するまたはその塩および異性体である、項目44に記載の方法。
(項目48)
前記オクタヒドロ縮合アザデカリンが、式:
【化35】
を有する、項目44に記載の方法。
(項目49)
前記腫瘍がシュワン細胞腫である、項目34に記載の方法。
(項目50)
前記SGRMが、CORT125134またはCORT125281である、項目27~33のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
A.緒言
本明細書に開示されるこの方法は、有効量のSGRMを単独でまたはその他の療法と組み合わせて投与することにより、例えば、髄膜腫、シュワン細胞腫、または上衣腫などの神経上皮腫瘍を持つ患者を処置するために使用することができる。
【0014】
B.定義
本明細書中で使用されるとき、用語「被験体」または「患者」とは、ヒトまたは非ヒト生物のことを指す。したがって、本明細書中に記載される方法および組成物は、ヒト疾患および獣医学的疾患の両方に適用可能である。特定の実施形態において、被験体は、「患者」(すなわち、疾患または状態に対する医療を受けている生きたヒト)である。これは、規定の病気を有しない者であって、病理の徴候について調査されている者を含む。本明細書に開示される組成物および方法によって標的化される特定のがんが存在すると診断された被験体が好ましい。いくつかの場合において、被験体は、1つまたはそれを超える種類のがんを同時に患っていてもよく、そのうちの少なくとも1つは本明細書に開示される組成物および方法によって標的化される。本明細書に記載される組成物による処置に好ましいがんとしては、髄膜腫、シュワン細胞腫、および上衣腫などの神経上皮腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書中で使用されるとき、用語「腫瘍負荷」または「腫瘍量」とは、一般に、任意の所定時点における被験体の体内の癌細胞の数、腫瘍のサイズまたは癌の量のことを指す。腫瘍負荷は、例えば、腫瘍特異的遺伝子マーカーの発現を計測し、本明細書の以下に開示されるいくつかの周知の生化学的方法またはイメージング方法によって腫瘍サイズを計測することによって検出され得る。
【0016】
本明細書中で使用されるとき、用語「有効量」または「治療量」とは、処置される疾患の少なくとも1つの症状を処置、排除または緩和するために有効な薬理学的薬剤の量のことを指す。いくつかの場合において、「治療有効量」または「有効量」とは、検出可能な治療効果または阻害効果を示すために有用な機能的薬剤または薬学的組成物の量のことを指し得る。この効果は、当該分野で公知の任意のアッセイ方法によって検出され得る。有効量は、抗腫瘍応答を引き起こすために有効な量であり得る。有効量は、標的細胞の成長阻害または死をもたらすレシピエント被験体の体液性および/または細胞性免疫応答を誘発するのに有効な量であり得る。本開示の目的のために、SGRMの治療量は、単独でまたは他の療法とともに使用した場合に、腫瘍負荷を減少させるか、またはがん改善に関連する他の所望の有益な臨床転帰をもたらすと思われる量である。
【0017】
本明細書中で使用されるとき、用語「投与する」、「投与すること」、「投与される」または「投与」とは、化合物または組成物(例えば、本明細書中に記載されるもの)を被験体または患者に提供することを指す。
【0018】
本明細書中で使用されるとき、用語「化合物」とは、ユニークで特定可能な化学構造の分子部分を表すために使用される。分子部分(「化合物」)は、他の分子と会合していない遊離種形態で存在し得る。化合物はまた、それが他の分子と会合しているより大きな凝集体の一部として存在し得るが、それにもかかわらず、その化学的同一性を保持する。規定の化学構造(「化合物」)の分子部分が溶媒の分子と会合している溶媒和物は、そのような会合形態の例である。水和物は、会合溶媒が水である溶媒和物である。「化合物」の記述は、それが遊離形態または会合形態で存在するかにかかわらず、(記述されている構造の)分子部分それ自体のことを指す。
【0019】
本明細書中で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得るキャリア」とは、薬学的投与に適合する任意のすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用が企図される。補助活性化合物も組成物に組み込まれ得る。
【0020】
本明細書において使用される、用語「ミネラルコルチコイドレセプター」(MR)とは、ミネラルコルチコイドに結合するI型グルココルチコイドレセプターを指す。MRはアルドステロンに結合するので、「アルドステロンレセプター」とも呼ばれる。
【0021】
本明細書において使用される、用語「グルココルチコイドレセプター」(「GR」)は、II型グルココルチコイドレセプターを指す(コルチゾールおよび/またはデキサメタゾンなどのコルチゾール類似体に特異的に結合する細胞内レセプターのファミリーの「II型」(例えば、Turner&Muller,J.Mol.Endocrinol.October 1,2005 35 283-292を参照のこと))。GRは、コルチゾールレセプターとも呼ばれる。GRという用語は、GRのアイソフォーム、組換えGRおよび変異型GRを含む。GRを発現する細胞、組織、器官、腫瘍、または他の動物の部分もしくは材料は、GR「陽性」(GR+)と称される。
【0022】
用語「グルココルチコイドレセプターモジュレーター」およびその頭字語「GRM」は、科学文献および特許文献にも、例えば、グルココルチコイドレセプターアゴニストかまたはグルココルチコイドレセプターアンタゴニストのいずれかとして知られ、記載されており、GRとアゴニストとの結合に関連する任意の生物学的応答を変更する、例えば阻害する任意の化合物を指す。例えば、デキサメタゾンなどのGRアゴニストは、HepG2細胞(ヒト肝臓肝細胞癌細胞株;ECACC,UK)におけるチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を増加させる。したがって、本明細書中で議論されるGRMは、デキサメタゾンの効果を阻害する化合物の能力を計測することによって同定され得る。TAT活性は、文献A.Aliら、J.Med.Chem.,2004,47,2441-2452に概説されているように計測され得る。モジュレーターは、10マイクロモル濃度未満のIC50(半最大阻害濃度(half maximal inhibition concentration))を有する化合物である。以下の実施例1を参照のこと。
【0023】
本明細書中で使用されるとき、用語「選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーター」およびその頭字語「SGRM」とは、アゴニストへのGRの結合に関連する任意の生物学的応答を変更(例えば阻害)する任意の組成物または化合物のことを指す。「選択的な」とは、他の核レセプター(例えば、プロゲステロンレセプター(PR)、鉱質コルチコイドレセプター(MR)またはアンドロゲンレセプター(AR))ではなくGRに優先的に結合する薬物である。選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーターは、MR、ARもしくはPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方またはMR、ARおよびPRに対する親和性より10倍高い親和性(1/10のKd値)でGRに結合することが好ましい。より好ましい実施形態では、選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)は、MR、ARもしくはPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方またはMR、ARおよびPRに対する親和性よりも100倍高い親和性(1/100のKd値)でGRに結合する。別の実施形態において、選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーターは、MR、ARもしくはPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方またはMR、ARおよびPRに対する親和性よりも1000倍高い親和性(1/1000のKd値)でGRに結合する。
【0024】
本明細書において使用される、用語「抗グルココルチコイド」および「抗グルココルチコイド活性」は、グルココルチコイドレセプターリガンドとGRの結合、GRの活性化、GRの発現、グルココルチコイドリガンドのレベルの1つまたは複数に対抗するか、それを減少させるかまたは防ぐか、あるいは他の方法でGRの作用または活性を減少または消失させるようにGRをモジュレートする化合物、およびそのような化合物の作用を指す。
【0025】
本明細書中で使用されるとき、用語「組成物」とは、指定量の指定成分、例えば前記化合物、それらの互変異性形態、それらの誘導体、それらのアナログ、それらの立体異性体、それらの多形体、それらの薬学的に許容され得る塩、エステル、エーテル、代謝産物、異性体の混合物、それらの薬学的に許容され得る溶媒和物および薬学的に許容され得る組成物、を含む生成物、ならびに指定量の指定成分の組み合わせから直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含することを意図する。薬学的組成物に関するそのような用語は、活性な成分と、キャリアを構成する不活性な成分とを含む生成物、ならびに直接的または間接的に、前記成分のいずれか2つもしくはそれよりも多くの組み合わせ、錯体形成もしくは凝集をもたらすか、または前記成分の1つもしくはそれよりも多くの解離から、もしくは前記成分の1つもしくはそれよりも多くの他の種類の反応もしくは相互作用から生じる任意の生成物を包含することを意図する。したがって、本明細書に開示される薬学的組成物は、本明細書で議論した化合物とそれらの薬学的に許容され得るキャリアとを混合することによって作製される任意の組成物を包含することを意味する。
【0026】
いくつかの実施形態において、用語「から本質的になる」とは、その唯一の活性な成分が、示されている活性な成分であるが、しかしながら、安定化、貯蔵などのためのものである他の化合物が含まれ得る製剤の組成物のことを指すが、前記製剤は、示されている活性な成分の治療効果に直接関与しない。いくつかの実施形態において、用語「から本質的になる」とは、活性な成分と、活性な成分の放出を容易にする成分とを含む組成物のことを指し得る。例えば、組成物は、被験体への活性な成分の経時的な持続放出を提供する1つまたはそれを超える成分を含み得る。いくつかの実施形態において、用語「からなる」とは、活性な成分と、薬学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤とを含む組成物のことを指す。
【0027】
用語「ステロイド骨格」は、そのようなものを含むグルココルチコイドレセプターアンタゴニストの文脈において、内因性ステロイドグルココルチコイドレセプターリガンドであるコルチゾールの基本構造の修飾を含むグルココルチコイドレセプターアンタゴニストを指す。ステロイド骨格の基本構造は、式Iとして提供される。
【化8】
グルココルチコイドアンタゴニストを作製するためのコルチゾールステロイド骨格の構造修飾の2つの最も一般的に公知のクラスには、11-βヒドロキシ基の修飾および17-β側鎖の修飾が含まれる(例えば、Lefebvre(1989)J.Steroid
Biochem.33:557-563を参照のこと)。
【0028】
本明細書中で使用されるとき、SGRMの文脈における語句「非ステロイド骨格」は、4つの縮合環に結合した17個の炭素原子を含むステロイド骨格を有するコルチゾールと構造的相同性を共有せず、または前記コルチゾールの改変ではないSGRMのことを指す。そのような化合物には、部分的にペプチド性、偽ペプチド性および非ペプチド性の分子実体を含む、タンパク質の合成模倣物およびアナログが含まれる。
【0029】
非ステロイドGRM、例えばSGRM化合物には、縮合アザデカリン骨格、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン骨格、およびオクタヒドロ縮合アザデカリン骨格を有するGRMが挙げられる。縮合アザデカリン骨格を有する例示的なGRMとしては、米国特許第7,928,237号;および同第8,461,172号に記載されているものが挙げられる。ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン骨格を有する例示的なSGRMとしては、米国特許出願公開第2014/0038926号、現在は米国特許第8,859,774号に記載されているものが挙げられる。オクタヒドロ(octohydro)縮合アザデカリン骨格を有する例示的なGRMとしては、Octahydro Fused Azadecalin Glucocorticoid Receptor Modulatorsという表題の米国特許出願公開第2015/0148341号に記載されているGRMが挙げられる。
【0030】
置換基が、左から右に向かって記述されるそれらの従来の化学式によって明記される場合、それらは、右から左に向かって構造を記述することによってもたらされ得る化学的に同一の置換基を等しく包含し、例えば、-CH2O-は、-OCH2-と等価である。
【0031】
「アルキル」とは、示される数の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の飽和脂肪族ラジカルのことを指す。アルキルは、任意の数の炭素(例えば、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6およびC5-6)を含み得る。例えば、C1-6アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「アルコキシ」とは、アルキル基を結合点に連結する酸素原子を有するアルキル基:アルキル-O-のことを指す。アルキル基と同様に、アルコキシ基は、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得る。アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、iso-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、iso-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどを含む。
【0033】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素のことを指す。
【0034】
「ハロアルキル」とは、水素原子のいくつかまたはすべてが、ハロゲン原子で置き換えられている、上で定義されたようなアルキルのことを指す。アルキル基と同様に、ハロアルキル基は、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得、ハロアルキル基としては、トリフルオロメチル、フルオロメチルなどが挙げられる。
【0035】
用語「ペルフルオロ」は、すべての水素がフッ素で置き換えられている化合物またはラジカルを定義するために使用され得る。例えば、ペルフルオロメタンとしては、1,1,1-トリフルオロメチルが挙げられる。
【0036】
「ハロアルコキシ」とは、水素原子のいくつかまたはすべてがハロゲン原子で置換されているアルコキシ基のことを指す。アルキル基と同様に、ハロアルコキシ基は、C1-6などの任意の好適な数の炭素原子を有し得る。アルコキシ基は、1、2、3個またはそれを超えるハロゲンで置換され得る。すべての水素が、ハロゲン、例えば、フッ素で置き換えられるとき、その化合物は、全置換(per-substituted)、例えば、全フッ素置換(perfluorinated)される。ハロアルコキシとしては、トリフルオロメトキシ、2,2,2,-トリフルオロエトキシおよびペルフルオロエトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「シクロアルキル」とは、3~12個の環原子または示されている数の原子を含む、飽和または部分不飽和の、単環式、縮合二環式または架橋多環式の環アセンブリ(ring
assembly)のことを指す。シクロアルキルは、任意の数の炭素(例えば、C3-6、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11およびC3-12)を含み得る。飽和単環式シクロアルキル環としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルが挙げられる。飽和二環式および多環式シクロアルキル環としては、例えば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレンおよびアダマンタンが挙げられる。シクロアルキル基は、その環内に1つまたはそれを超える二重結合または三重結合を有する部分不飽和でもあり得る。部分不飽和である代表的なシクロアルキル基としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-および1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-および1,5-異性体)、ノルボルネンおよびノルボルナジエンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが、飽和単環式C3-8シクロアルキルであるとき、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが、飽和単環式C3-6シクロアルキルであるとき、例示的な基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「ヘテロシクロアルキル」とは、3~12個の環員、ならびにN、OおよびSのうちの1~4個のヘテロ原子を有する飽和環系のことを指す。B、Al、SiおよびPを含むがこれらに限定されないさらなるヘテロ原子もまた有用であり得る。それらのヘテロ原子はまた、酸化され得、例えば、-S(O)-および-S(O)2-であるがこれらに限定されない。ヘテロシクロアルキル基は、任意の数の環原子(例えば、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11または3~12個の環員)を含み得る。任意の好適な数(例えば、1、2、3もしくは4、または1~2、1~3、1~4、2~3、2~4もしくは3~4)のヘテロ原子が、ヘテロシクロアルキル基に含まれ得る。そのヘテロシクロアルキル基には、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-および1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサリジン(isoxalidine)、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサンまたはジチアンなどの基が含まれ得る。ヘテロシクロアルキル基はまた、芳香環系または非芳香環系と縮合して、インドリンを含むがこれに限定されないメンバーを形成し得る。
【0039】
ヘテロシクロアルキルが、3~8個の環員および1~3個のヘテロ原子を含むとき、代表的なメンバーとしては、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、オキサン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサンおよびジチアンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルは、5~6個の環員および1~2個のヘテロ原子を有する環も形成し得、代表的なメンバーとしては、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジンおよびモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「アリール」とは、任意の好適な数の環原子および任意の好適な数の環を有する芳香環系のことを指す。アリール基は、任意の好適な数の環原子(例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16個の環原子)ならびに6~10、6~12または6~14個の環員を含み得る。アリール基は、単環式であり得るか、縮合して二環式基もしくは三環式基を形成し得るか、または結合によって連結されてビアリール基を形成し得る。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチルおよびビフェニルが挙げられる。他のアリール基としては、メチレン連結基を有するベンジルが挙げられる。いくつかのアリール基は、6~12個の環員を有する(例えば、フェニル、ナフチルまたはビフェニル)。他のアリール基は、6~10個の環員を有する(例えば、フェニルまたはナフチル)。いくつかの他のアリール基は、6個の環員を有する(例えば、フェニル)。アリール基は、置換され得るか、または非置換であり得る。
【0041】
「ヘテロアリール」とは、5~16個の環原子(ここで、それらの環原子の1~5個は、N、OまたはSなどのヘテロ原子である)を含む、単環式または縮合二環式もしくは三環式の芳香環アセンブリのことを指す。B、Al、SiおよびPを含むがこれらに限定されないさらなるヘテロ原子もまた有用であり得る。それらのヘテロ原子はまた、酸化され得、例えば、N-オキシド、-S(O)-および-S(O)2-であるがこれらに限定されない。ヘテロアリール基は、任意の数の環原子(例えば、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11または3~12個の環員)を含み得る。任意の好適な数(例えば、1、2、3、4もしくは5;または1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4もしくは3~5)のヘテロ原子が、ヘテロアリール基に含まれ得る。ヘテロアリール基は、5~8個の環員および1~4個のヘテロ原子、または5~8個の環員および1~3個のヘテロ原子、または5~6個の環員および1~4個のヘテロ原子、または5~6個の環員および1~3個のヘテロ原子を有し得る。ヘテロアリール基には、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾールおよびイソオキサゾールなどの基が含まれ得る。ヘテロアリール基はまた、フェニル環などの芳香環系に縮合されて、ベンゾピロール(例えば、インドールおよびイソインドール)、ベンゾピリジン(例えば、キノリンおよびイソキノリン)、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、ベンゾピリダジン(例えば、フタラジンおよびシンノリン)、ベンゾチオフェンおよびベンゾフランを含むがこれらに限定されないメンバーを形成し得る。他のヘテロアリール基としては、結合によって連結されたヘテロアリール環、例えば、ビピリジンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換され得るか、または非置換であり得る。
【0042】
ヘテロアリール基は、環上の任意の位置を介して連結され得る。例えば、ピロールには、1-、2-および3-ピロールが含まれ;ピリジンには、2-、3-および4-ピリジンが含まれ;イミダゾールには、1-、2-、4-および5-イミダゾールが含まれ;ピラゾールには、1-、3-、4-および5-ピラゾールが含まれ;トリアゾールには、1-、4-および5-トリアゾールが含まれ;テトラゾールには、1-および5-テトラゾールが含まれ;ピリミジンには、2-、4-、5-および6-ピリミジンが含まれ;ピリダジンには、3-および4-ピリダジンが含まれ;1,2,3-トリアジンには、4-および5-トリアジンが含まれ;1,2,4-トリアジンには、3-、5-および6-トリアジンが含まれ;1,3,5-トリアジンには、2-トリアジンが含まれ;チオフェンには、2-および3-チオフェンが含まれ;フランには、2-および3-フランが含まれ;チアゾールには、2-、4-および5-チアゾールが含まれ;イソチアゾールには、3-、4-および5-イソチアゾールが含まれ;オキサゾールには、2-、4-および5-オキサゾールが含まれ;イソオキサゾールには、3-、4-および5-イソオキサゾールが含まれ;インドールには、1-、2-および3-インドールが含まれ;イソインドールには、1-および2-イソインドールが含まれ;キノリンには、2-、3-および4-キノリンが含まれ;イソキノリンには、1-、3-および4-イソキノリンが含まれ;キナゾリンには、2-および4-キノアゾリンが含まれ;シンノリンには、3-および4-シンノリンが含まれ;ベンゾチオフェンには、2-および3-ベンゾチオフェンが含まれ;ベンゾフランには、2-および3-ベンゾフランが含まれる。
【0043】
いくつかのヘテロアリール基は、5~10個の環員、およびN、OまたはSを含む1~3個の環原子を有するヘテロアリール基(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェンおよびベンゾフラン)を含む。他のヘテロアリール基は、5~8個の環員および1~3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール基(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾールおよびイソオキサゾール)を含む。いくつかの他のヘテロアリール基は、9~12個の環員および1~3個のヘテロ原子を有するヘテロアリール基(例えば、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフランおよびビピリジン)を含む。なおも他のヘテロアリール基は、5~6個の環員、およびN、OまたはSを含む1~2個の環ヘテロ原子を有するヘテロアリール基(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾールおよびイソオキサゾール)を含む。
【0044】
いくつかのヘテロアリール基は、5~10個の環員および窒素だけのヘテロ原子を含む(例えば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジンおよびシンノリン)。他のヘテロアリール基は、5~10個の環員および酸素だけのヘテロ原子を含む(例えば、フランおよびベンゾフラン)。いくつかの他のヘテロアリール基は、5~10個の環員および硫黄だけのヘテロ原子を含む(例えば、チオフェンおよびベンゾチオフェン)。なおも他のヘテロアリール基は、5~10個の環員および少なくとも2個のヘテロ原子を含む(例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-および1,3,5-異性体)、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、キノキサリン、キナゾリン、フタラジンおよびシンノリン)。
【0045】
「ヘテロ原子」とは、O、SまたはNのことを指す。
【0046】
「塩」とは、本明細書に開示の方法において使用される化合物の酸塩または塩基塩のことを指す。薬学的に許容され得る塩の例証的な例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)の塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)の塩、四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)の塩である。薬学的に許容され得る塩は無毒性であると理解される。好適な薬学的に許容され得る塩に関するさらなる情報は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985(参照により本明細書中に援用される)に見られ得る。
【0047】
「異性体」とは、同じ化学式を有するが構造的に識別可能な化合物のことを指す。
【0048】
「互変異性体」とは、平衡状態で存在し、一方の形態からもう一方の形態に容易に変換される、2つまたはそれを超える構造異性体のうちの1つのことを指す。
【0049】
本明細書に開示の化合物の説明は、当業者に公知の化学結合の原理によって限定される。したがって、ある基が、いくつかの置換基のうちの1つまたはそれを超える置換基によって置換され得る場合、そのような置換は、化学結合の原理に適合するように、ならびに本質的に不安定でない化合物および/または周囲条件(例えば、水性、中性または生理学的条件)下で不安定である可能性があると当業者に公知であり得る化合物を生成するように、選択される。
【0050】
「薬学的に許容され得る賦形剤」および「薬学的に許容され得るキャリア」とは、活性な作用物質を被験体に投与することおよびその活性な作用物質が被験体によって吸収されることを助ける物質のことを指し、患者に毒物学的な有意な悪影響を及ぼさずに本明細書で議論した組成物中に含められ得る。薬学的に許容され得る賦形剤の非限定的な例としては、水、NaCl、通常の食塩水溶液、乳酸加リンガー液、通常のスクロース、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味料、香料および着色料などが挙げられる。当業者は、他の薬学的賦形剤が本明細書に開示される方法において使用するための組成物において有用であることを認識するだろう。
【0051】
C.GR陽性(GR+)神経上皮腫瘍
本明細書に開示される方法は、有効量のSGRMを投与することによるGR+神経上皮腫瘍の処置に有用である。神経上皮腫瘍は、原始神経上皮から発生的に生じ、頭蓋内新生物の最大のグループを表す細胞から発生する。例えば、「Histology of Intracranial Tumors」という表題のoncolex.orgウェブサイトのリンク「CNS-tumors/Diagnoses/Intracranial-tumors/Background/Histology」の「Oncology Encyclopedia」の記事を参照のこと。それぞれの種類の腫瘍が特定の細胞種の異常な成長に起因するという前提に基づいて、神経上皮腫瘍は、世界保健機関(WHO)に従って次のクラス:星状細胞腫瘍、乏突起膠細胞系腫瘍、上衣細胞腫瘍、混合膠腫、起源不明の神経上皮腫瘍、脈絡叢の腫瘍、神経細胞および混合神経細胞-神経膠腫瘍、松果体実質腫瘍、および神経芽細胞または神経膠芽細胞の要素を有する腫瘍(胚芽腫瘍)に分類することができる。
【0052】
これらのさまざまな神経上皮腫瘍のGR発現状態は、1つまたはそれを超える日常的な生化学的分析を使用することによって調べられる。いくつかの実施形態では、GR発現は、マイクロアレイおよびRT-PCRなどの方法を使用してGR転写物の発現を検出することによって決定される。他の実施形態では、GR発現は、ウエスタンブロット解析および免疫組織化学染色などの方法を使用して、タンパク質発現を検出することによって決定される。さらに他の実施形態では、GR発現は、これらの方法の組合せを使用して決定される。
【0053】
好ましい実施形態では、免疫組織化学染色が行われ、腫瘍組織におけるGRの発現を定量するためにHスコア法が使用される。1つの典型アッセイでは、ホルマリン固定、パラフィン包埋腫瘍組織切片を脱パラフィンし、抗原回復液で処理してグルココルチコイドレセプターが抗GR抗体に容易にアクセスできるようにする。次いで、抗GR抗体を組織切片とともにインキュベートし、組織切片上のGRに結合した抗体を、抗GR抗体を認識する西洋ワサビペルオキシダーゼ(horse peroxidase)(HRP)結合二次抗体の添加に
よって検出する。二次抗体コンジュゲート上のHRPは、比色反応を触媒し、適切な基質と接触すると、GRが存在している場所に染色を生成する。1つのアプローチでは、GR染色の強度レベルは、ネガティブ染色の場合は0、弱い染色の場合は1+、中程度の染色の場合は2+、そして強い染色の場合は3+で表される。(www.ihcworld.comで入手可能な「ihcスコアリング」というタイトルの記事を参照のこと)。各強度レベルのGR+細胞の割合に強度レベルを乗算し、すべての強度レベルの結果を合計して、0から300の間のHスコアが生成される。一実施形態では、所定の閾値に等しいかまたはそれよりも高いHスコアを有する腫瘍型はGR+腫瘍とみなされる。好ましい実施形態では、閾値は150である。もう一つの実施形態では、GR+腫瘍は、少なくとも10%の腫瘍細胞が任意の強度でGR染色を示す腫瘍である。
【0054】
D.髄膜腫、シュワン細胞腫、および上衣腫の診断
シュワン細胞腫、髄膜腫、および上衣腫は、神経上皮腫瘍であり、一般にGR+である。これらの腫瘍は、神経線維腫症2型(「NF2」、別名「MISME症状群」「多発性遺伝性シュワン細胞腫、髄膜腫、および上衣腫」について)を有する患者において頻繁に観察される。NF2は、NF2遺伝子の変異によって引き起こされ、これは個人ががん性腫瘍および良性腫瘍およびNF2のその他の症状を発症するリスクを高くする。NF2遺伝子は、マーリンと呼ばれるタンパク質(シュワノミンとしても公知)をコードする。このタンパク質は、神経系、特にシュワン細胞において産生され、脳および脊髄で神経細胞(ニューロン)を取り囲み、遮蔽する。マーリンタンパク質は腫瘍抑制物質として作用し、NF2遺伝子の変異は、細胞の成長と分裂を調節できない、マーリンタンパク質の非機能的なバージョンの産生をもたらす。
【0055】
NF2の徴候は、通常、10代後半または20代前半に現れる。NF2患者は、眼における白内障および良性の皮膚腫瘍を発症するリスクが高く、皮膚に薄茶色の色素沈着を有する場合がある。NF2の症状には、しばしば、難聴、耳鳴り、平衡障害(dysequilibrum)、頭痛、顔のしびれおよび脱力が含まれる。NF2患者はまた、臨床検査で異常な角膜反射、眼振、顔面の知覚減退を示すこともあり、CTスキャンで内耳孔の拡大を、ガドリニウム造影MRIスキャンで小脳橋角の領域の腫瘍の増強を、聴力検査で難聴を、そしておそらく電気眼振検査で病理学的所見を示す。NF2と診断された患者が診断を確認するために、NF2遺伝子の変異の遺伝子検査を利用できる。
【0056】
髄膜腫を有する患者は、次の1つまたはそれを超える症状を含む症状を示すことがある:複視またはぼやけなどの視覚の変化;難聴;記憶喪失;嗅覚喪失;顔面痛;時間とともに悪化する頭痛;人格変化;腕または脚の脱力;および発作。1つまたはそれを超えるイメージングベースの方法、例えば磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、X線、脳血管造影、およびポジトロン放射断層撮影(PET)スキャン、または超音波検査法(US)が、多くの場合、例えば関連臨床症状の提示に基づいて髄膜腫を有すると疑われる被験体に対して実施される。正確な診断ならびに髄膜腫の起源および髄膜腫が広がるかどうかまたは広がる場所に関する情報を提供するために、これらのイメージング検査の結果は、多くの場合、患者の病歴、身体検査および神経学的検査と組み合わされる。
【0057】
シュワン細胞腫の一般的な症状としては、限定されるものではないが、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる:片側性難聴および耳鳴り(buzzing or ringing in the
ear)、めまい、顔面麻痺、嚥下困難、眼球運動障害、味覚障害、およびふらつき、顔
面および角膜感覚の変化、眼振、運動失調。イメージングベースの方法、例えば上に開示のような方法を、シュワン細胞腫の存在を確認するために実行することもできる。
【0058】
上衣腫の一般的な症状としては、限定されるものではないが、以下のうちの1つまたは複数が挙げられる:重度の頭痛、視力喪失、嘔吐、両側性バビンスキー徴候、嗜眠状態(上記症状の数時間後)、歩行変化(歩行しているときの足の回転)、および便秘。イメージングベースの方法、例えば上記のような方法を、上衣腫の存在を確認するために使用することもできる。
【0059】
いくつかの場合において、腫瘍が外科的に切除される時点にしばしば得られる生検材料を分析して、NF2、例えば、髄膜腫、シュワン細胞腫、または上衣腫の存在をさらに確認する。
【0060】
E.グルココルチコイドレセプターモジュレーター(GRM)
一般に、GR+神経上皮腫瘍、例えば、シュワン細胞腫、髄膜腫、または上衣腫の処置は、任意の化学構造または作用機序の有効量のSGRMを投与することによって提供され得る。例示的なGRMのクラスおよびそのようなクラスの特定のメンバーが本明細書中に提供される。しかしながら、当業者は、本明細書中に記載される処置方法において用いられ得る他の関連または非関連SGRMを容易に認識するであろう。
【0061】
1.ステロイド骨格を有するGRM
いくつかの実施形態では、有効量の、ステロイド骨格を持つSGRMが、がんの処置のために被験体に投与される。ステロイドGRMは、グルココルチコイドアゴニストの基本構造、すなわち種々の形態のステロイド骨格の修飾によって得ることができる。コルチゾールの構造は、多様な方法で修飾され得る。GRMを作製するためのコルチゾールステロイド骨格の構造修飾の2つの最も一般的に公知のクラスには、11-βヒドロキシ基の修飾および17-β側鎖の修飾が含まれる(例えば、Lefebvre,J.Steroid Biochem.33:557-563,1989を参照のこと)。
【0062】
ステロイドSGRMを含む、ステロイドGRMの例としては、米国特許第5,929,058号に記載されるアンドロゲン型ステロイド化合物、および米国特許第4,296,206号;同第4,386,085号;同第4,447,424号;同第4,477,445号;同第4,519,946号;同第4,540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,060号;同第4,861,763号;同第4,912,097号;同第4,921,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,488号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,095,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,729号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;同第5,616,458号、同第5,696,127号、および同第6,303,591号に開示される化合物が挙げられる。そのようなステロイドGRアンタゴニストとしては、コルテキソロン、デキサメタゾン-オキセタノン、19-ノルデオキシコルチコステロン、19-ノルプロゲステロン、コルチゾール-21-メシレート;デキサメタゾン-21-メシレート、11β-(4-ジメチルアミノエトキシフェニル)-17α-プロピニル-17β-ヒドロキシ-4,9-エストラジエン-3-オン(RU009)、および(17α)-17-ヒドロキシ-19-(4-メチルフェニル)アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン(RU044)が挙げられる。
【0063】
ステロイド抗グルココルチコイドのその他の例は、Van Kampenら(2002)Eur.J.Pharmacol.457(2-3):207、国際公開第03/043640号、EP0683172B1号、およびEP0763541B1号に開示されており、そのそれぞれは参照により本明細書に援用される。EP0763541B1号およびHoybergら、Int’l J.of Neuro-psychopharmacology,5:Supp.1,S148(2002)は、化合物(11β,17β)-11-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-17-ヒドロキシ-17-(1-プロピニル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン(ORG34517)を開示している、これは一実施形態では、被験体のACTH分泌腫瘍を処置するために有効な量で投与される。
【0064】
2. 11-βヒドロキシ基の除去または置換
11-βヒドロキシ基の除去または置換を含む、改変されたステロイド骨格を有するSGRMを含むGRMが、本明細書に開示される方法の一実施形態において投与される。このクラスには、コルテキソロン、プロゲステロンおよびテストステロン誘導体をはじめとする天然のGRM、および合成組成物、例えばミフェプリストンが含まれる(Lefebvreら、前掲)。本明細書に開示される方法の好ましい実施形態としては、すべての11-βアリールステロイド骨格誘導体が挙げられる。なぜなら、いくつかの場合において、これらの化合物はプロゲステロンレセプター(PR)結合活性を欠き得るためである(Agarwal、FEBS 217:221-226、1987)。もう一つの実施形態では、有効な抗グルココルチコイド剤であり抗プロゲステロン剤である、11-βフェニル-アミノジメチルステロイド骨格誘導体が投与される。これらの組成物は、可逆的に結合するステロイドレセプターアンタゴニストとして作用し得る。例えば、11-βフェニル-アミノジメチルステロイドに結合する場合、ステロイドレセプターは、その天然リガンド、例えばGRの場合にはコルチゾールに結合することができない立体構造で維持され得る(Cadepond、1997、前掲)。
【0065】
合成11-βフェニル-アミノジメチルステロイドには、ミフェプリストン(RU486としても公知)、または17-β-ヒドロキシ(hydrox)-11-β-(4-ジメチル-アミノフェニル)17-α-(1-プロピニル)エストラ-4,9-ジエン-3-オン)が含まれる。ミフェプリストンは、プロゲステロンレセプターとグルココルチコイド(GR)レセプターの両方の強力なアンタゴニストであることが示されている。したがって、いくつかの実施形態では、GR+神経上皮腫瘍またはACTH分泌腫瘍を処置するために投与されるGRMは、ミフェプリストン、あるいはその塩、互変異性体、または誘導体である。しかしながら、他の実施形態では、ミフェプリストンの投与は、GR+神経上皮腫瘍の処置のためのGRMとして特に除外されている。しかしながら、他の実施形態では、ミフェプリストンの投与は、ACTH分泌腫瘍処置のためのGRMとして特に除外されている。
【0066】
GRアンタゴニスト効果を有することが示されている別の11-βフェニル-アミノジメチルステロイドとしては、ジメチルアミノエトキシフェニル誘導体RU009(RU39.009)、11-β-(4-ジメチル-アミノエトキシフェニル)-17-α-(プロピニル-17-β-ヒドロキシ-4,9-エストラジエン-3-オン)が挙げられる(Bocquel,J.Steroid Biochem.Mol.Biol.45:205-215、1993を参照のこと)。RU486に関連する別のGRアンタゴニストはRU044(RU43.044)17-β-ヒドロキシ(hydrox)-17-α-19-(4-メチル-フェニル)-アンドロスタ-4,9(11)-ジエン-3-オン)である(Bocquel、1993、前掲)。Teutsch、Steroids 38:651-665、1981;米国特許第4,386,085号および同第4,912,097号も参照のこと。
【0067】
一実施形態には、不可逆的抗グルココルチコイドである組成物が含まれる。そのような化合物には、コルチゾール-21-メシレート(4-プレグネン-11-β、17-α、21-トリオール-3、20-ジオン-21-メタン-スルホン酸塩およびデキサメタゾン-21-メシレート(16-メチル-9-α-フルオロ-1,4-プレグナジエン-11 β、17-α、21-トリオール-3、20-ジオン-21-メタン-スルホン酸塩)を含む、コルチゾールのα-ケト-メタンスルホン酸塩誘導体が含まれる。Simons,J.Steroid Biochem.24:25-32,1986;Mercier,J.Steroid Biochem.25:11-20,1986;米国特許第 4,296,206号を参照のこと。
【0068】
3. 17-β側鎖基の改変
17-β側鎖の種々の構造改変によって得ることができるステロイド抗グルココルチコイドも、本明細書に開示される方法において使用される。このクラスには、合成抗グルココルチコイド、例えばデキサメタゾン-オキセタノン、デキサメタゾンの種々の17,21-アセトニド誘導体および17-β-カルボキサミド誘導体が含まれる(Lefebvre,1989、前掲;Rousseau,Nature 279:158-160,1979)。
【0069】
4.その他のステロイド骨格の改変
本明細書に開示される方法の種々の実施形態で使用される、SGRMを含むGRMには、GR-アゴニスト相互作用に起因する生物学的応答に影響を及ぼす任意のステロイド骨格の改変が含まれる。ステロイド骨格アンタゴニストは、コルチゾールの任意の天然または合成バリエーション、例えばC-19メチル基を欠損している副腎ステロイド、例えば、19-ノルデオキシコルチコステロンおよび19-ノルプロゲステロンであり得る(Wynne,Endocrinology 107:1278-1280,1980)。
【0070】
一般に、11-β側鎖置換基、および特にその置換基のサイズは、ステロイドの抗グルココルチコイド活性の程度の決定において重要な役割を果たし得る。ステロイド骨格のA環の置換も重要であり得る。例えば、17-ヒドロキシプロペニル側鎖は、いくつかの場合において、17-プロピニル側鎖含有化合物と比較して、抗グルココルチコイド活性を減少させ得る。
【0071】
当技術分野で公知であり、本明細書に開示される方法の実践に好適なさらなるグルココルチコイドレセプターアンタゴニストとしては、21-ヒドロキシ-6,19-オキシドプロゲステロン(Vicent,Mol.Pharm.52:749-753、1997を参照のこと)、ORg31710(Mizutani,J Steroid Biochem Mol Biol 42(7):695-704,1992を参照のこと)、RU43044、RU40555(Kim,J Steroid Biochem Mol
Biol.67(3):213-22,1998を参照のこと)、およびRU28362が挙げられる。
【0072】
5.非ステロイド性抗グルココルチコイドレセプターモジュレーター
本明細書中に開示される方法に使用され得る例示的な非ステロイド性グルココルチコイドレセプターモジュレーター(GRM)のクラスおよびそのようなクラスの特定のメンバーが本明細書中に提供される。このような非ステロイド性GRMは、非ステロイド性SGRMであり得る。しかしながら、当業者は、本明細書中に記載される処置方法において使用され得る他の関連するまたは無関係のグルココルチコイドレセプターモジュレーターを容易に認識するだろう。これらには、部分的にペプチド性、偽ペプチド性および非ペプチド性の分子実体を含む、タンパク質の合成模倣物およびアナログが含まれる。例えば、本明細書に開示の方法において有用なオリゴマーペプチド模倣物としては、(α-β-不飽和)ペプチドスルホンアミド、N置換グリシン誘導体、オリゴカルバメート、オリゴ尿素ペプチド模倣物、ヒドラジノペプチド、オリゴスルホンなどが挙げられる(例えば、Amour,Int.J.Pept.Protein Res.43:297-304,1994;de Bont,Bioorganic&Medicinal Chem.4:667-672,1996を参照のこと)。
【0073】
非ステロイド性GRモジュレーターの例には、米国特許第5,696,127号;同第6,570,020号;および同第6,051,573号に開示されているGRアンタゴニスト化合物;米国特許出願20020077356に開示されているGRアンタゴニスト化合物、Bradleyら、J.Med.Chem.45,2417-2424(2002)に開示されているグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト、例えば、4α(S)-ベンジル-2(R)-クロロエチニル-1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)-オクタヒドロ-フェナントレン-2,7-ジオール(「CP394531」)および4α(S)-ベンジル-2(R)-プロプ-1-イニル-1,2,3,4,4α,9,10,10α(R)-オクタヒドロ-フェナントレン-2,7-ジオール(「CP409069」);ならびにステロイドレセプターに対して高親和性で高度に選択的なアンタゴニストである非ステロイド性化合物を記載しているPCT国際出願番号WO 96/19458に開示されている化合物(例えば、6置換-1,2-ジヒドロ-N-保護-キノリン)が挙げられる。
【0074】
本明細書に開示の方法において利用され得るさらなる化合物、ならびにこれらの方法を実施する際に有用な化合物を同定および作製する方法において利用され得るさらなる化合物については、米国特許第4,296,206号(上記を参照のこと);同第4,386,085号(上記を参照のこと);同第4,447,424号;同第4,477,445号;同第4,519,946号;同第4,540,686号;同第4,547,493号;同第4,634,695号;同第4,634,696号;同第4,753,932号;同第4,774,236号;同第4,808,710号;同第4,814,327号;同第4,829,060号;同第4,861,763号;同第4,912,097号;同第4,921,638号;同第4,943,566号;同第4,954,490号;同第4,978,657号;同第5,006,518号;同第5,043,332号;同第5,064,822号;同第5,073,548号;同第5,089,488号;同第5,089,635号;同第5,093,507号;同第5,095,010号;同第5,095,129号;同第5,132,299号;同第5,166,146号;同第5,166,199号;同第5,173,405号;同第5,276,023号;同第5,380,839号;同第5,348,729号;同第5,426,102号;同第5,439,913号;および同第5,616,458号;ならびに国際公開第96/19458号(ステロイドレセプターの高親和性高選択的モジュレーター(アンタゴニスト)である非ステロイド性化合物、例えば6置換-1,2-ジヒドロN-1保護キノリンが記載されている)を参照のこと。
【0075】
いくつかの実施形態において、がんを処置するための併用療法は、縮合アザデカリン骨格、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン骨格、またはオクタヒドロ縮合アザデカリン骨格を有する非ステロイド性GRMを伴う。
【0076】
縮合アザデカリン骨格を有する例示的なGRMとしては、米国特許第7,928,237号;米国特許第8,461,172号;および米国特許第8,557,839号に記載のものが挙げられ、これら3つの特許はすべて参照によりその全文が本明細書に援用される。いくつかの場合において、縮合アザデカリン骨格を有するGRMは、以下の構造:
【化9】
(式中、
L
1およびL
2は、結合および非置換アルキレンから独立して選択されるメンバーであり;
R
1は、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-OR
1A、-NR
1CR
1D、-C(O)NR
1CR
1Dおよび-C(O)OR
1Aから選択されるメンバーであり、ここで、
R
1Aは、水素、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、
R
1CおよびR
1Dは、非置換アルキルおよび非置換ヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、
ここで、R
1CおよびR
1Dは場合により接合して、それらが結合している窒素とともに非置換環を形成し、ここで、前記環は、場合により、さらなる環窒素を含み;
R
2は、式:
【化10】
(式中、
R
2Gは、水素、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、-CNおよび-CF
3から選択されるメンバーであり;
Jは、フェニルであり;
tは、0~5の整数であり;
Xは、-S(O
2)-である)を有し;および
R
5は、1~5個のR
5A基で場合により置換されているフェニルであり、ここで、
R
5Aは、水素、ハロゲン、-OR
5A1、-S(O
2)NR
5A2R
5A3、-CNおよび非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ここで、
R
5A1は、水素および非置換アルキルから選択されるメンバーであり、ならびに
R
5A2およびR
5A3は、水素および非置換アルキルから独立して選択されるメンバーである)またはその塩および異性体を有する。
【0077】
縮合アザデカリン骨格を含有する化合物は、米国特許第7,928,237号に記載されるように調製され得る。例えば、縮合アザデカリン骨格は、スキーム1に記載されるように調製され得、ここで、R
5、R
1A、R
1C、R
1D、L
2およびR
2は、本明細書に開示される方法の実践において有用な化合物において上記で定義された通りである。スキーム1では、L
2-R
2を好適な保護基、例えばBOCまたはベンジルによって置き換えて合成を促進することができる。ケト-エステル1は、アルコール溶媒(例えばメタノール、エタノール、またはtert-ブタノール)中での塩基(例えばカリウムまたはナトリウムアルコキシド)による1の処置とそれに続くメチルビニルケトン(MVK)の添加を伴うロビンソン環化(Robinson annelation)反応によって、エノン3に直接変換される。この反応は一般に0~250℃で実施される。
スキーム1
【化11】
【0078】
ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン骨格を有する例示的なGRMとしては、参照によりその全体が本明細書に援用される、米国特許出願公開第2014/0038926号、現在は米国特許第8,859,774号に記載されているものが挙げられる。いくつかの場合において、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン骨格を有するGRMは、以下の構造:
【化12】
(式中、
R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、-CN、N-オキシド、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール環は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有し;
各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、-CN、-OH、-NR
2aR
2b、-C(O)R
2a、-C(O)OR
2a、-C(O)NR
2aR
2b、-SR
2a、-S(O)R
2a、-S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキルおよびC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は、1~4個のR
2c基で場合により置換されており;
あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR
2基は一緒になって、オキソ基(=O)を形成し;
あるいは、2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2d基で場合により置換されており;
R
2aおよびR
2bは、水素およびC
1-6アルキルからなる群よりそれぞれ独立して選択され;
各R
2cは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、-CNおよび-NR
2aR
2bからなる群より独立して選択され;
各R
2dは、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択されるか、または同じ環原子に結合している2個のR
2d基は一緒になって、(=O)を形成し;
R
3は、1~4個のR
3a基でそれぞれ場合により置換されているフェニルおよびピリジルからなる群より選択され;
各R
3aは、水素、ハロゲンおよびC
1-6ハロアルキルからなる群より独立して選択され;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する。
【0079】
縮合アザデカリン骨格を含有する化合物は、スキーム2に記載されるように調製され得る。
スキーム2
【化13】
【0080】
オクタヒドロ縮合アザデカリン骨格を有する例示的なGRMとしては、Octahydro Fused Azadecalin Glucocorticoid Receptor Modulatorsという表題で、米国特許出願公開第2015-0148341号として公開されている米国特許出願第14/549,885号に記載のGRMが挙げられ、その全内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。いくつかの場合において、オクタヒドロ縮合アザデカリン骨格を有するGRMは、以下の構造:
【化14】
(式中、
R
1は、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するヘテロアリール環であって、R
1aからそれぞれ独立して選択される1~4個の基で場合により置換されているヘテロアリール環であり;
各R
1aは、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、N-オキシドおよびC
3-8シクロアルキルからなる群より独立して選択され;
環Jは、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~4個のヘテロ原子とを有するアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択され;
各R
2は、水素、C
1-6アルキル、ハロゲン、C
1-6ハロアルキル、C
1-6アルコキシ、C
1-6ハロアルコキシ、C
1-6アルキル-C
1-6アルコキシ、-CN、-OH、-NR
2aR
2b、-C(O)R
2a、-C(O)OR
2a、-C(O)NR
2aR
2b、-SR
2a、-S(O)R
2a、-S(O)
2R
2a、C
3-8シクロアルキル、ならびにN、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するC
3-8ヘテロシクロアルキルからなる群より独立して選択され;
あるいは、隣接環原子上の2個のR
2基は一緒になって、5~6個の環員と、N、OおよびSからなる群よりそれぞれ独立して選択される1~3個のヘテロ原子とを有するヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は、1~3個のR
2c基で場合により置換されており;
R
2a、R
2bおよびR
2cはそれぞれ、水素およびC
1-6アルキルからなる群より独立して選択され;
各R
3aは独立して、ハロゲンであり;ならびに
下付き文字nは、0~3の整数である)またはその塩および異性体を有する。
【0081】
オクタヒドロ縮合アザデカリン骨格を含有する化合物は、スキーム3に記載されるように調製され得る。
スキーム3
【化15】
【0082】
F.選択的なグルココルチコイドレセプターモジュレーター(SGRM)の同定
検査化合物がSGRMであるかを決定するために、最初に、化合物をアッセイに供して、GRに結合してGR媒介性活性を阻害するその能力を計測し、それにより、化合物がグルココルチコイドレセプターモジュレーターであるかを決定する。化合物がグルココルチコイドレセプターモジュレーターであることが確認された場合、化合物を選択性検査に供して、化合物が、非GRタンパク質、例えばエストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、アンドロゲンレセプターまたは鉱質コルチコイドレセプターと比較してGRに特異的に結合し得るかを決定する。1つの実施形態において、SGRMは、非GRタンパク質よりも実質的に高い親和性、例えば少なくとも10倍高い親和性でGRに結合する。SGRMは、非GRタンパク質への結合と比べて、GRへの結合について100倍、1000倍またはそれを超える選択性を示し得る。
【0083】
i.結合
グルココルチコイドレセプターに結合する検査化合物の能力は、様々なアッセイを使用して、例えば、グルココルチコイドレセプターへの結合についてデキサメタゾンなどのグルココルチコイドレセプターリガンドと競合する検査化合物の能力についてスクリーニングすることによって計測され得る。当業者は、そのような競合結合アッセイを実施するための多くの方法があることを認識するであろう。いくつかの実施形態において、グルココルチコイドレセプターを標識グルココルチコイドレセプターリガンドとともにプレインキュベートし、次いで、検査化合物と接触させる。この種類の競合結合アッセイはまた、本明細書中では結合置換アッセイとも称され得る。グルココルチコイドレセプターに結合した標識リガンドの量の減少は、検査化合物がグルココルチコイドレセプターに結合することを示す。いくつかの場合において、標識リガンドは、蛍光標識化合物(例えば、蛍光標識ステロイドまたはステロイドアナログ)である。あるいは、グルココルチコイドレセプターへの検査化合物の結合は、標識検査化合物を用いて直接計測され得る。この後者の種類のアッセイは、直接結合アッセイと称される。
【0084】
直接結合アッセイおよび競合結合アッセイは両方とも、様々な異なるフォーマットで使用され得る。フォーマットは、イムノアッセイおよびレセプター結合アッセイにおいて使用されるフォーマットと同様のものであり得る。競合結合アッセイおよび直接結合アッセイを含む結合アッセイのための様々なフォーマットの説明については、Basic and Clinical Immunology 7th Edition(D.Stites and A.Terr ed.)1991;Enzyme Immunoassay,E.T.Maggio,ed.,CRC Press,Boca Raton,Florida(1980);および“Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,”P.Tijssen,Laboratory
Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Elsevier Science Publishers B.V.Amsterdam(1985)(これらの各々が、参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。
【0085】
固相競合結合アッセイでは、例えば、サンプル化合物は、固体表面に結合した結合剤上の特定の結合部位について、標識分析物と競合し得る。このタイプのフォーマットでは、標識分析物は、グルココルチコイドレセプターリガンドであり得、結合剤は、固相に結合したグルココルチコイドレセプターであり得る。あるいは、標識分析物は、標識グルココルチコイドレセプターであり得、結合剤は、固相グルココルチコイドレセプターリガンドであり得る。結合アッセイでは、捕捉剤に結合した標識分析物の濃度は、検査化合物の競合能力に反比例する。
【0086】
あるいは、競合結合アッセイは、液相において行われ得、未結合標識タンパク質から結合標識タンパク質を分離するために、当該分野で公知の様々な手法のいずれかが使用され得る。例えば、結合リガンドと過剰な結合リガンドとを、または結合検査化合物と過剰な未結合検査化合物とを区別するために、いくつかの手順が開発されている。これらは、スクロース勾配における沈降、ゲル電気泳動またはゲル等電点電気泳動による結合複合体の同定;硫酸プロタミンを用いたレセプター-リガンド複合体の沈殿またはヒドロキシルアパタイト上への吸着;およびデキストランコーティング木炭(DCC)上への吸着または固定化抗体への結合による未結合化合物またはリガンドの除去を含む。分離後、結合リガンドまたは検査化合物の量が決定される。
【0087】
あるいは、分離工程が不要な均一結合アッセイが実施され得る。例えば、グルココルチコイドレセプター上の標識は、そのリガンドまたは検査化合物へのグルココルチコイドレセプターの結合によって変化され得る。結合アッセイの終了時における標識の計測が、結合状態のグルココルチコイドレセプターの検出または定量を可能にするように、標識グルココルチコイドレセプターにおけるこの変化は、標識によって放出されるシグナルの減少または増加をもたらす。多種多様の標識が使用され得る。構成要素は、いくつかの方法のうちのいずれか1つによって標識され得る。有用な放射性標識としては、3H、125I、35S、14Cまたは32Pが組み込まれたものが挙げられる。有用な非放射性標識としては、フルオロフォア、化学発光剤、リン光性剤、電気化学発光剤などが組み込まれたものが挙げられる。蛍光剤は、タンパク質構造のシフトを検出するために使用される解析手法、例えば蛍光異方性および/または蛍光偏光において特に有用である。標識の選択は、必要な感度、化合物とのコンジュゲーションの容易性、安定性要件および利用可能な計測に依存する。使用され得る様々な標識またはシグナル生成システムの総説については、米国特許第4,391,904号(これは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書中に援用される)を参照のこと。標識は、当該分野で周知の方法にしたがって、アッセイの所望の成分に直接的または間接的にカップリングされ得る。いくつかの場合において、GRに対する既知の親和性を有する蛍光標識リガンド(例えば、ステロイドまたはステロイドアナログ)の存在下で、検査化合物とGRとを接触させ、標識リガンドの蛍光偏光を計測することによって、結合および遊離標識リガンドの量を推定する。
【0088】
ii.活性
1)HepG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ
GRに対する所望の結合親和性を示した化合物は、GR媒介性活性の阻害におけるそれらの活性について検査される。代表的には、化合物をチロシンアミノトランスフェラーゼアッセイ(TAT)に供し、デキサメタゾンによるチロシンアミノトランスフェラーゼ活性の誘導を阻害する検査化合物の能力を評価する。実施例1を参照のこと。本明細書中に開示される方法に好適なGRモジュレーターは、10マイクロモル濃度未満のIC50(半最大阻害濃度)を有する。限定されないが、下記のものを含む他のアッセイもまた、化合物のGRモジュレーション活性を確認するために用いられ得る。
【0089】
2)細胞ベースのアッセイ
グルココルチコイドレセプターを含む全細胞または細胞画分を伴う細胞ベースのアッセイもまた、検査化合物の結合またはグルココルチコイドレセプターの活性のモジュレーションについてアッセイするために使用され得る。本明細書に開示の方法にしたがって使用され得る例示的な細胞型としては、例えば、任意の哺乳動物細胞、例えば白血球、例えば好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、肥満細胞およびリンパ球、例えばT細胞およびB細胞、白血病細胞、バーキットリンパ腫細胞、腫瘍細胞(マウス乳房腫瘍ウイルス細胞を含む)、内皮細胞、線維芽細胞、心臓細胞、筋肉細胞、乳房腫瘍細胞、卵巣癌腫、子宮頸癌腫、神経膠芽細胞腫、肝臓細胞、腎臓細胞、神経細胞ならびに真菌細胞(酵母を含む)が挙げられる。細胞は、初代細胞または腫瘍細胞または他の種類の不死細胞株であり得る。当然のことながら、グルココルチコイドレセプターは、内因性型のグルココルチコイドレセプターを発現しない細胞において発現され得る。
【0090】
いくつかの場合において、グルココルチコイドレセプターの断片およびタンパク質融合物がスクリーニングに使用され得る。グルココルチコイドレセプターリガンドとの結合について競合する分子が望まれる場合、使用されるGR断片は、リガンド(例えば、デキサメタゾン)に結合することができる断片である。あるいは、GRの任意の断片を標的として使用して、グルココルチコイドレセプターに結合する分子を同定し得る。グルココルチコイドレセプター断片は、例えば、グルココルチコイドレセプターの少なくとも20個、30個、40個、50個のアミノ酸から、1個を除くすべてのアミノ酸を含むタンパク質までの任意の断片を含み得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、グルココルチコイドレセプター活性化によってトリガーされるシグナル伝達の減少は、グルココルチコイドレセプターモジュレーターを同定するために使用される。グルココルチコイドレセプターのシグナル伝達活性は、多くの方法で決定され得る。例えば、下流分子事象は、シグナル伝達活性を決定するためにモニタリングされ得る。下流事象は、グルココルチコイドレセプターの刺激の結果として生じる活性または発現を含む。非変化細胞における転写活性化および拮抗作用の機能評価において有用な例示的な下流事象としては、いくつかのグルココルチコイド応答エレメント(GRE)依存性遺伝子(PEPCK、チロシンアミノトランスフェラーゼ、アロマターゼ)のアップレギュレーションが挙げられる。さらに、GR活性化に対して感受性の特定の細胞型が使用され得、例えば骨芽細胞におけるオステオカルシン発現(これは、グルココルチコイドによってダウンレギュレートされる);PEPCKおよびグルコース-6-リン酸(G-6-Pase)のグルココルチコイド媒介性アップレギュレーションを示す初代肝細胞である。GRE媒介性遺伝子発現はまた、周知のGRE制御性配列(例えば、レポーター遺伝子構築物の上流にトランスフェクトされたマウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター(MMTV))を使用して、トランスフェクト細胞株において実証されている。有用なレポーター遺伝子構築物の例としては、ルシフェラーゼ(luc)、アルカリホスファターゼ(ALP)およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が挙げられる。転写抑制の機能評価は、単球またはヒト皮膚線維芽細胞などの細胞株において行われ得る。有用な機能的アッセイとしては、IL-1ベータ刺激性IL-6発現;コラゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2および様々なケモカイン(MCP-1、RANTES)のダウンレギュレーション;LPS刺激性サイトカイン放出、例えばTNFα;またはトランスフェクト細胞株においてNFkBもしくはAP-1転写因子によって制御される遺伝子の発現を計測するものが挙げられる。
【0092】
全細胞アッセイにおいて検査された化合物はまた、細胞傷害アッセイにおいて検査され得る。細胞傷害アッセイは、感知効果が、非グルココルチコイドレセプター結合細胞効果に起因する程度を決定するために使用される。例示的な実施形態において、細胞傷害アッセイは、構成的に活性な細胞と検査化合物とを接触させることを含む。細胞活性の任意の減少は、細胞傷害効果を示す。
【0093】
3)さらなるアッセイ
本明細書に開示の方法において利用される組成物を同定するために使用され得る多くのアッセイのさらなる例示は、インビボにおけるグルココルチコイド活性に基づくアッセイである。例えば、グルココルチコイドによって刺激された細胞におけるDNAへの3H-チミジンの取り込みを阻害する推定GRモジュレーターの能力を評価するアッセイが使用され得る。あるいは、推定GRモジュレーターは、肝癌組織培養GRへの結合について3H-デキサメタゾンと競合(complete)し得る(例えば、Choiら、Steroids 57:313-318,1992を参照のこと)。別の例として、3H-デキサメタゾン-GR複合体の核結合を遮断する推定GRモジュレーターの能力が使用され得る(Alexandrovaら、J.Steroid Biochem.Mol.Biol.41:723-725,1992)。(Jones,Biochem J.204:721-729,1982に記載されているように)推定GRモジュレーターをさらに同定するために、レセプター結合動態によってグルココルチコイドアゴニストとモジュレーターとを区別することができる動態アッセイも使用され得る。
【0094】
別の実例では、抗グルココルチコイド活性を同定するために、Daune,Molec.Pharm.13:948-955,1977;および米国特許第4,386,085号に記載されているアッセイが使用され得る。簡潔に言えば、デキサメタゾンを含む栄養培地中で、副腎切除ラットの胸腺細胞を様々な濃度の検査化合物(推定GRモジュレーター)とともにインキュベートする。3H-ウリジンを細胞培養物に添加し、これをさらにインキュベートし、ポリヌクレオチドへの放射性標識の組み込みの程度を計測する。グルココルチコイドアゴニストは、組み込まれる3H-ウリジンの量を減少させる。したがって、GRモジュレーターは、この効果に拮抗するであろう。
【0095】
iii.選択性
次いで、上記で選択されたGRモジュレーターを選択性アッセイに供して、それらがSGRMであるかを決定する。代表的には、選択性アッセイは、非グルココルチコイドレセプタータンパク質への結合の程度について、インビトロでグルココルチコイドレセプターに結合する化合物を検査することを含む。選択性アッセイは、上記のように、インビトロでまたは細胞ベースのシステムで実施され得る。結合は、抗体、レセプター、酵素などを含む任意の好適な非グルココルチコイドレセプタータンパク質に対して検査され得る。例示的な実施形態において、非グルココルチコイドレセプター結合タンパク質は、細胞表面レセプターまたは核内レセプターである。別の例示的な実施形態において、非グルココルチコイドレセプタータンパク質は、ステロイドレセプター、例えばエストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、アンドロゲンレセプターまたはミネラロコルチコイドレセプターである。
【0096】
MRと比べたGRに対するアンタゴニストの選択性は、当業者に公知の様々なアッセイを使用して計測され得る。例えば、特定のアンタゴニストは、MRと比較してGRに結合するアンタゴニストの能力を計測することによって同定され得る(例えば、米国特許第5,606,021号;同5,696,127号;同第5,215,916号;および同第5,071,773号を参照のこと)。そのような解析は、直接結合アッセイを使用して、または公知のリガンドの存在下における精製GRもしくはMRへの競合結合を評価することによって実施され得る。例示的なアッセイでは、高レベルでグルココルチコイドレセプターまたはミネラコルチコイドレセプターを安定発現する細胞(例えば、米国特許第5,606,021号を参照のこと)を精製レセプターの供給源として使用する。次いで、レセプターに対するリガンドの親和性を直接計測する。次いで、本明細書に開示の方法において使用するために、MRと比べてGRに対して少なくとも10倍、100倍高い親和性、しばしば1000倍高い親和性を示すGRモジュレーターを選択する。
【0097】
選択性アッセイはまた、GR媒介性活性を阻害するがMR媒介性活性を阻害しない能力をアッセイすることを含み得る。そのようなGR特異的モジュレーターを同定する1つの方法は、トランスフェクションアッセイを使用して、レポーター構築物の活性化を防止するアンタゴニストの能力を評価することである(例えば、Bocquelら、J.Steroid Biochem Molec.Biol.45:205-215,1993;米国特許第5,606,021号、同第5,929,058号を参照のこと)。例示的なトランスフェクションアッセイでは、レセプターをコードする発現プラスミドと、レセプター特異的制御エレメントに連結されたレポーター遺伝子を含むレポータープラスミドとを、好適なレセプター陰性宿主細胞にコトランスフェクトする。次いで、レポータープラスミドのホルモン応答性プロモーター/エンハンサーエレメントを活性化することができるホルモン(例えば、コルチゾールまたはそのアナログ)の存在下および非存在下で、トランスフェクト宿主細胞を培養する。次に、レポーター遺伝子配列の産物の誘導(すなわち、存在)について、トランスフェクトされ培養された宿主細胞をモニタリングする。最後に、アンタゴニストの存在下および非存在下でレポーター遺伝子の活性を決定することによって、(発現プラスミド上のレセプターDNA配列によってコードされ、トランスフェクトされ培養された宿主細胞において産生される)ホルモンレセプタータンパク質の発現および/またはステロイド結合能力を計測する。GRおよびMRレセプターの公知のアンタゴニストと比較して、化合物のアンタゴニスト活性を決定し得る(例えば、米国特許第5,696,127号を参照のこと)。次いで、参照アンタゴニスト化合物と比べた各化合物について観察された最大応答率として、有効性を報告する。次いで、本明細書中に開示される方法において使用するために、MR、PRまたはARと比べてGRに対して少なくとも100倍、多くの場合には1000倍またはそれを超える活性を示すGRモジュレーターを選択する。
【0098】
本明細書中に開示される方法において使用され得る例示的なSGRMは、CORT125134、すなわち以下の構造:
【化16】
を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
【0099】
本明細書中に開示される方法において使用され得る別の例示的なSGRMは、CORT125281、すなわち以下の構造:
【化17】
を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
【0100】
G.薬学的組成物および投与
いくつかの実施形態において、薬学的に許容され得る賦形剤および非ステロイド性GRMを含む薬学的組成物は、本明細書に開示される方法の実践において有用である。
【0101】
非ステロイド性GRMは、幅広い種類の経口、非経口および局所剤形で調製され、投与され得る。経口調製物としては、患者による摂取に好適な錠剤、丸剤、粉剤・散剤(powder)、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ロゼンジ剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などが挙げられる。非ステロイド性GRMはまた、注射によって、すなわち、静脈内に、筋肉内に、皮内に、皮下に、十二指腸内に、または腹腔内に、投与され得る。また、非ステロイド性GRMは、吸入によって、例えば、鼻腔内に投与され得る。さらに、非ステロイド性GRMは、経皮的に投与され得る。したがって、薬学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤と非ステロイド性GRMを含む薬学的組成物は、本明細書に開示される方法の実践において有用である。
【0102】
非ステロイド性GRMから薬学的組成物を調製する場合、薬学的に許容され得るキャリアは、固体または液体であり得る。固体の形態の調製物としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散性顆粒剤が挙げられる。固体のキャリアは、希釈剤、矯味矯臭剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤または封入材料としても作用し得る1つまたはそれを超える物質であり得る。製剤化および投与のための手法に関する詳細は、科学文献および特許文献に十分に記載されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Maack Publishing Co,Easton PA(「Remington’s」)の最新版を参照のこと。
【0103】
散剤において、キャリアは、微粉化された固体であり、それは、微粉化された活性な成分、非ステロイド性GRMとともに混合物中に存在する。錠剤において、活性な成分は、必要な結合特性を有するキャリアと好適な比率で混合され、所望の形状およびサイズに圧縮される。
【0104】
散剤および錠剤は、好ましくは5%または10%~70%の活性化合物を含む。好適なキャリアは、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ろう、カカオバターなどである。用語「調製物」は、他のキャリアの有無にかかわらず活性な成分がキャリアに取り囲まれてそれに結合しているカプセルを提供するキャリアとして封入材料を用いた活性化合物の製剤化を含むことを意図する。同様に、カシェ剤およびロゼンジも含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤およびロゼンジは、経口投与に好適な固体剤形として使用され得る。
【0105】
好適な固体賦形剤は、炭水化物またはタンパク質充填剤であり、糖(ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む);トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモまたは他の植物由来のデンプン;セルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム);およびゴム(アラビアおよびトラガントを含む);ならびにタンパク質(例えば、ゼラチンおよびコラーゲン)が挙げられるが、これらに限定されない。所望であれば、崩壊剤または可溶化剤(例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム))を加えてもよい。
【0106】
糖衣錠コアには、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/もしくは二酸化チタン、ラッカー溶液ならびに好適な有機溶媒または溶媒混合物も含み得る好適なコーティング剤(例えば、濃縮された糖の溶液)が提供される。生成物の識別のため、または活性な化合物の量(すなわち、投与量)を特徴付けるために、染料または色素が、錠剤または糖衣錠コーティングに加えられてもよい。薬学的に許容され得るキャリアまたは賦形剤と非ステロイド性GRMを含む薬学的組成物の方法の実践に有用な薬学的調製物はまた、ゼラチン製の押し込み型カプセル、ならびにゼラチン製の軟質密封カプセルおよびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングを使用して経口的にも使用され得る。押し込み型カプセルは、充填剤または結合剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)、潤滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)および場合により安定剤と混合されたGRモジュレーターを含み得る。軟カプセルでは、GRモジュレーター化合物は、安定剤を含むまたは含まない好適な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコール)に溶解または懸濁され得る。
【0107】
液体形態調製物としては、溶液、懸濁物およびエマルジョン、例えば水または水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射では、液体調製物は、ポリエチレングリコール水溶液の溶液で製剤化され得る。
【0108】
経口使用に好適な水溶液は、活性な成分を水に溶解し、所望により好適な着色料、矯味矯臭剤、安定剤および増粘剤を添加することによって調製され得る。経口使用に適した水性懸濁物は、微粉化された活性な成分を、粘稠性材料(例えば、天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴムおよびアラビアゴム)および分散剤または湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノ-オレエート)またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来する部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノ-オレエート)とともに水に分散させることによって、生成され得る。その水性懸濁物は、1つまたはそれを超える保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピル)、1つまたはそれを超える着色剤、1つまたはそれを超える矯味矯臭剤および1つまたはそれを超える甘味剤(例えば、スクロース、アスパルテームまたはサッカリン)も含み得る。製剤は、オスモル濃度について調整され得る。
【0109】
使用する直前に経口投与用の液体の形態の調製物に変換されることが意図された固体の形態の調製物も含められる。そのような液体の形態としては、溶液、懸濁物およびエマルジョンが挙げられる。これらの調製物は、活性な成分に加えて、着色剤、香料、安定剤、緩衝剤、人工および天然の甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含み得る。
【0110】
非ステロイド性GRMを植物油(例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油またはやし油)または鉱油(例えば、流動パラフィン);またはこれらの混合物に懸濁することによって、油性懸濁物が製剤化され得る。その油性懸濁物は、増粘剤(例えば、蜜ろう、固形パラフィンまたはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤(例えば、グリセロール、ソルビトールまたはスクロース)は、美味な経口調製物を提供するために加えられ得る。これらの製剤は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を加えることによって、保存することができる。注射可能な油性ビヒクルの例として、Minto,J.Pharmacol.Exp.Ther.281:93-102,1997を参照のこと。本明細書に開示の方法の実施において有用な薬学的製剤は、水中油型エマルジョンの形態でもあり得る。油相は、上に記載された植物油もしくは鉱油またはこれらの混合物であり得る。好適な乳化剤としては、天然に存在するゴム(例えば、アラビアゴムおよびトラガントゴム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、脂肪酸およびヘキシトール無水物に由来するエステルまたは部分エステル(例えば、ソルビタンモノ-オレエート)およびこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノ-オレエート)が挙げられる。エマルジョンは、シロップ剤およびエリキシル剤の製剤におけるように、甘味剤および矯味矯臭剤も含み得る。そのような製剤は、粘滑剤、保存剤または着色剤も含み得る。
【0111】
非ステロイド性GRMは、アプリケータスティック、溶液、懸濁物、エマルジョン、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、散剤およびエアロゾルとして製剤化され、局所経路によって経皮的に送達され得る。
【0112】
非ステロイド性GRAはまた、身体内での緩徐な放出のためにミクロスフェアとしても送達され得る。例えば、ミクロスフェアは、皮下にゆっくり放出する薬物含有ミクロスフェアの皮内注射を介して投与され得る(Rao,J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623-645,1995を参照のこと;生分解性で注射可能なゲル製剤として(例えば、Gao,Pharm.Res.12:857-863,1995を参照のこと);または経口投与用のミクロスフェアとして(例えば、Eyles,J.Pharm.Pharmacol.49:669-674,1997を参照のこと)。経皮的経路と皮内経路の両方が、数週間または数ヶ月間にわたって一定の送達をもたらす。
【0113】
本明細書に開示の方法の実施において有用な薬学的製剤は塩として提供され得、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むがこれらに限定されない多くの酸で形成され得る。塩は、水性溶媒または他のプロトン性溶媒中で、対応する遊離塩基形態よりも可溶性である傾向がある。他の場合では、調製物は、4.5~5.5のpH範囲の1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトール中の凍結乾燥散剤であり得、使用前に緩衝液と混ぜ合わされる。
【0114】
別の実施形態において、本明細書に開示の方法の実施において有用な薬学的製剤は、リポソームを使用することによって送達され得、そのリポソームは、細胞膜と融合するか、またはエンドサイトーシスされ、すなわち、そのリポソームに付着されたリガンド、または細胞の表面膜タンパク質レセプターに結合するオリゴヌクレオチドに直接付着されたリガンドを使用することによってエンドサイトーシスがもたらされる。特に、リポソーム表面が、標的細胞に特異的なリガンドを有するか、または別途、特定の器官に優先的に方向づけられている場合に、リポソームを使用することによって、インビボにおいてGRモジュレーターを標的細胞に送達することに焦点を合わせることができる(例えば、Al-Muhammed,J.Microencapsul.13:293-306,1996;Chonn,Curr.Opin.Biotechnol.6:698-708,1995;Ostro,Am.J.Hosp.Pharm.46:1576-1587,1989を参照のこと)。
【0115】
薬学的調製物は、好ましくは単位剤形である。そのような形態では、調製物は、好適な量の活性な成分、非ステロイド性GRAを含む単位用量に細分される。単位剤形は、別個の量の調製物を含む包装された調製物、例えばバイアルまたはアンプル中の小包に入った錠剤、カプセル剤および散剤であり得る。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤もしくはロゼンジそれ自体であり得るか、またはそれは、包装形態のこれらのいずれかの好適な数であり得る。
【0116】
単位用量調製物中の活性な成分の量は、0.1mg~10000mg、より代表的には1.0mg~6000mg、最も代表的には600mg~1200mgで変更または調整され得る。好適な投与量としては、特定の適用および活性な成分の効力に応じて、約1mg、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000mgも挙げられる。組成物はまた、所望により、他の適合性治療剤を含み得る。
【0117】
患者によって要求および耐容される投与量および頻度に応じて、製剤の単回投与または複数回投与が施され得る。製剤は、疾患状態を有効に処置するために十分な量の活性剤を提供するべきである。したがって、1つの実施形態において、非ステロイド性GRMの経口投与のための薬学的製剤は、約0.01~約150mg/キログラム体重/日(mg/kg/日)の1日量である。いくつかの実施形態において、1日量は、約1.0~100mg/kg/日、5~50mg/kg/日、10~30mg/kg/日および10~20mg/kg/日である。特に、解剖学的に離れた部位、例えば脳脊髄液(CSF)空間に薬物を投与する場合、経口投与、血流、体腔または器官の内腔への投与とは対照的に、より低投与量が使用され得る。局所投与では、実質的により高投与量が使用され得る。非経口的に投与可能な製剤を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであり、前掲のRemington’sなどの刊行物により詳細に記載されている。Nieman,In“Receptor Mediated Antisteroid Action”,Agarwalら、eds.,De Gruyter,New York(1987)も参照のこと。
【0118】
NF2(例えば、髄膜腫またはシュワン細胞腫)の腫瘍負荷を減少させるか、またはこれらの腫瘍の症状を別様に改善するための非ステロイド性GRMによる処置の継続期間は、被験体における状態の重症度および非ステロイド性GRMに対する被験体の反応に応じて変動し得る。いくつかの実施形態において、非ステロイド性GRMは、約1週間~104週間(2年間)、より代表的には約6週間~80週間、最も代表的には約9~60週間投与され得る。好適な投与期間としては、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間および96~104週間も挙げられる。好適な投与期間としては、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、35、40、45、48、50、52、55、60、64、65、68、70、72、75、80、85、88、90、95、96、100および104週間も挙げられる。一般に、非ステロイド性GRMの投与は、臨床的に有意な減少または改善が観察されるまで継続されるべきである。本明細書に開示の方法に従った非ステロイド性GRMによる処置は、2年間またはそれを超える間継続し得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、非ステロイド性GRMの投与は連続的ではなく、1つまたはそれを超える期間にわたって中断され得、続いて、1つまたはそれを超える期間で投与が再開される。投与が中断する好適な期間としては、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間および96~100週間が挙げられる。投与が中断する好適な期間としては、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、25、30、32、35、40、45、48、50、52、55、60、64、65、68、70、72、75、80、85、88、90、95、96および100週間も挙げられる。
【0120】
投与レジメンはまた、当技術分野で周知の薬物動態パラメータ、すなわち吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、クリアランスなどを考慮する(例えば、Hidalgo-Aragones(1996)J.Steroid Biochem.Mol.Biol.58:611-617;Groning(1996)Pharmazie 51:337-341;Fotherby(1996)Contraception 54:59-69;Johnson(1995)J.Pharm.Sci.84:1144-1146;Rohatagi(1995)Pharmazie 50:610-613;Brophy(1983)Eur.J.Clin.Pharmacol.24:103-108;the latest Remington’s、前掲を参照のこと)。最新技術は、臨床医が、個々の各患者、GRモジュレーターおよび処置される疾患または状態のための投与レジメンを決定することを可能にする。
【0121】
非ステロイド性GRMは、グルココルチコイドレセプターのモジュレートにおいて有用であることが公知の他の活性剤と、または単独では有効であり得ないが活性剤の有効性に寄与し得る補助剤と組み合わせて使用され得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、共投与は、1つの活性剤である非ステロイド性GRMを、第2の活性剤の0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20または24時間以内に投与することを含む。共投与は、2つの活性剤を同時に、ほぼ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20または30分以内に)または任意の順序で逐次に投与することを含む。いくつかの実施形態において、共投与は、共製剤化(すなわち、両活性剤を含む単一の薬学的組成物を調製すること)によって達成され得る。他の実施形態において、活性剤は、別々に製剤化され得る。別の実施形態において、活性剤および/または補助剤は、互いに連結またはコンジュゲートされ得る。
【0123】
本発明のGRMを含む薬学的組成物を許容され得るキャリア中に製剤化した後、それを好適な容器に入れ、示された状態の処置のためにラベルを付し得る。非ステロイド性GRMの投与のために、そのようなラベルは、例えば、投与の量、頻度および方法に関する指示を含むであろう。
【0124】
本明細書に開示の方法の実施において有用な薬学的組成物は塩として提供され得、限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含む多くの酸で形成され得る。塩は、水性溶媒中で、または対応する遊離塩基形態である他のプロトン性溶媒中でより可溶性である傾向がある。他の場合において、調製物は、4.5~5.5のpH範囲で1mM~50mMヒスチジン、0.1%~2%スクロース、2%~7%マンニトールの凍結乾燥散剤であり得、使用前に緩衝液と組み合わされる。
【0125】
別の実施形態において、本明細書に開示の方法の実施において有用な組成物は、非経口投与、例えば静脈内(IV)投与または体腔もしくは器官の内腔への投与に有用である。投与用の製剤は、一般に、薬学的に許容され得るキャリアに溶解された本明細書に開示の方法の実施において有用な組成物の溶液を含む。用いられ得る許容され得るビヒクルおよび溶媒のうちに、水およびリンガー溶液、等張性塩化ナトリウムがある。さらに、滅菌された固定油が、慣習的に溶媒または懸濁媒として使用され得る。この目的のために、合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の無刺激の固定油が使用され得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製において同様に使用され得る。これらの溶液は、滅菌されており、一般に、望ましくない物質を含まない。これらの製剤は、従来の周知の滅菌手法によって滅菌され得る。製剤は、生理学的条件に近づけるために必要とされるような薬学的に許容され得る補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)を含み得る。これらの製剤における本明細書に開示の方法の実施において有用な組成物の濃度は、大きく変動し得、選択される特定の投与様式および患者のニーズに従って、主に、流体体積、粘度、体重などに基づいて選択され得る。静脈内(IV)投与の場合、製剤は、滅菌された注射可能な調製物(例えば、滅菌された注射可能な水性または油性の懸濁物)であり得る。この懸濁物は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用する公知の技術にしたがって製剤化され得る。滅菌された注射可能な調製物はまた、無毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒中の滅菌された注射可能な溶液または懸濁物(例えば、1,3-ブタンジオールの溶液)であり得る。
【0126】
H.併用療法
また、SGRMと、もう一つの従来のがん療法、例えば、米国特許出願公開第2011269728号に開示されているような、化学もしくは放射線に基づく処置、他の治療剤、および外科手術を含む、NF2、例えば髄膜腫またはシュワン細胞腫を処置するための併用療法も本明細書に開示される方法に含まれる。関連する開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。化学療法の非限定的な例としては、テモゾラミド(temozolamide)、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロスウレア(nitrosurea)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲンレセプター結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質、トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、または上記の任意の類似体または誘導体バリアントが挙げられる。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、チオコルヒチン誘導体とキャリアタンパク質(例えばアルブミン)を含むナノ粒子を含む組成物である。さらなる実施形態では、化学療法剤の組合せが腫瘍細胞に投与される。化学療法剤は、連続的に(互いに数分以内、数時間以内、または数日以内に)投与されてもよいし、平行して投与されてもよい;それらは、事前に混合された単一の組成物で患者に投与されてもよい。放射線療法の非限定的な例としては、γ線およびX線が挙げられる。
【0127】
好適な治療剤としては、例えば、ビンカアルカロイド、微小管形成を妨げる薬剤(例えばコルヒチンおよびその誘導体)、抗血管新生剤、例えば抗VEGF抗体(例えばベバシズマブ)、治療用抗体、EGFR標的化剤、チロシンキナーゼ標的化剤(例えばチロシンキナーゼインヒビター)、セリンキナーゼ標的化剤、遷移金属錯体、プロテアソームインヒビター、代謝拮抗剤(例えばヌクレオシド類似体)、アルキル化剤、白金系薬剤、アントラサイクリン系抗生物質、トポイソメラーゼインヒビター、マクロライド、治療用抗体、レチノイド(例えばオールトランスレチノイン酸またはそれらの誘導体);ゲルダナマイシンまたはその誘導体(例えば17-AAG)、および当技術分野でよく認識されている他の標準的な化学療法剤が挙げられる。一実施形態として、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される方法からSGRMとソマトスタチンまたはその誘導体との組み合わせを明示的に規定する。
【0128】
SGRMと抗がん剤または化合物との種々の組合せ(またはそのような薬剤と化合物との組合せ)は、患者の腫瘍負荷を減少させるために用いられてよい。SGRMと抗がん剤または化合物は、同じまたは異なる投薬処方計画に従って投与され得る。いくつかの実施形態において、SGRMと抗がん剤または化合物は、処置期間の全体または一部の間に任意の順序で逐次に投与される。いくつかの実施形態において、SGRMおよび抗がん剤は、同時にまたはほぼ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20または30分以内に)投与される。併用療法の非限定的な例は以下の通りであり、SGRMと抗がん剤の投与に関して、例えば、SGRMは「A」であり、抗がん療法処方計画の一部として与えられる抗がん剤または化合物は「B」である:
【0129】
A/B/AB/A/BB/B/AA/A/BA/B/BB/A/AA/B/B/B B/A/B/B
【0130】
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A
B/B/A/A
【0131】
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A
A/A/B/A
【0132】
患者への治療用化合物または薬剤の投与は、もしあれば治療の毒性を考慮して、そのような化合物を投与するための一般的なプロトコルに従うであろう。外科的介入もまた、記載されている治療と組み合わせて適用され得る。
【0133】
I.腫瘍負荷の減少における改善の評価
本明細書中に開示されるSGRM療法は、腫瘍負荷を減少させ、NF2、例えば、髄膜腫またはシュワン細胞腫を有する患者に有益な臨床転帰を付与することができる。これらの反応を測定するための方法は、例えば、ctep.cancer.govで入手可能な「protocolDevelopment/docs/recist_guideline.pdf」という名前のPDFに記載されているように、固形腫瘍の応答評価判定基準(「RECIST」)ガイドラインに、さらにwww.cancerguide.orgで入手可能な「Endpoints:How the Results of Clinical Trials are Measured」というhtml記事に記載されているように、がん療法の分野の当業者に周知である。
【0134】
1つのアプローチでは、腫瘍負荷は、腫瘍特異的遺伝子マーカーの発現をアッセイすることによって測定される。このアプローチは、転移性腫瘍に特に有用である。腫瘍特異的遺伝子マーカーは、がん細胞にユニークであるかまたは非がん細胞と比較してはるかに豊富であるタンパク質または他の分子である。シュワン細胞腫に有用な腫瘍バイオマーカーは、公知であり、例えば、VEGFおよびTorenら、Human Genomics
2014(8):10に記載されているバイオマーカーである。髄膜炎に有用な腫瘍バイオマーカーも公知であり、例えば、Stuartら、J.Neurol.70(1):10(2011)に記載されているバイオマーカーである。
【0135】
腫瘍特異的遺伝子マーカーの発現レベルを計測する方法は、周知である。いくつかの実施形態において、血液サンプルまたは腫瘍組織から遺伝子マーカーのmRNAを単離し、リアルタイム逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を実施して、遺伝子マーカーの発現を定量する。いくつかの実施形態において、ウエスタンブロットまたは免疫組織化学解析を実施して、腫瘍特異的遺伝子マーカーのタンパク質発現を評価する。代表的には、本明細書に開示の併用療法の経時的に採取された複数のサンプルにおいて、腫瘍特異的遺伝子マーカーのレベルを計測し、レベルの減少は、腫瘍負荷の減少と相関する。
【0136】
別のアプローチでは、本明細書中に開示される併用療法による腫瘍負荷の減少は、腫瘍サイズの減少または体内の癌の量の減少によって示される。腫瘍サイズの計測は、代表的には、イメージングベースの手法によって達成される。例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、既存の病変の成長または新たな病変もしくは腫瘍転移の発生のいずれかを特定することによって、腫瘍の縮小または成長だけではなく疾患の進行についての正確な信頼できる解剖学的情報を提供し得る。
【0137】
さらに別のアプローチでは、腫瘍負荷の減少は、機能的および代謝的イメージング手法によって評価され得る。これらの手法は、灌流、酸素化および代謝の変化を観察することによって、治療応答の早期評価を提供し得る。例えば、18F-FDG PETは、放射性標識グルコースアナログ分子を使用して、組織代謝を評価する。腫瘍は、代表的には、グルコースの取り込みの上昇を有し、腫瘍組織代謝の減少に対応する値の変化は、腫瘍負荷の減少を示す。同様のイメージング手法は、Kangら、Korean J.Radiol.(2012)13(4)371-390に開示されている。
【0138】
本明細書中に開示される治療を受けている患者は、様々な程度の腫瘍負荷減少を示し得る。いくつかの場合において、患者は、「疾患の証拠がない(NED)」とも称される完全奏効(Complete Response)(CR)を示し得る。CRは、検査、身体検査およびスキャンによって示されるように、すべての検出可能な腫瘍が消失したことを意味する。いくつかの場合において、本明細書中に開示される併用療法を受けている患者は、総腫瘍体積の少なくとも50%の減少にほぼ対応する部分応答(Partial Response)(PR)を経験し得るが、一部の残存疾患が依然として残っている証拠がある。いくつかの場合において、PRを有すると分類された少数の患者が、実際にはCRを有し得るように、深部の部分応答における残存疾患は、実際には、死腫瘍または瘢痕であり得る。また、処置中に縮小を示す多くの患者は、継続的な処置によってさらなる縮小を示し、CRを達成し得る。いくつかの場合において、併用療法を受けている患者は、軽度応答(Minor Response)(MR)(これは、総腫瘍体積の25%超かつ50%未満(50%はPRになる)の少量の縮小を概ね意味する)を経験し得る。いくつかの場合において、併用療法を受けている患者は、安定病態(SD)(これは、腫瘍がほぼ同じサイズであり続けることを意味するが、少量の成長(代表的には、20または25%未満)または少量の縮小(軽度応答が起らない限り、PR未満のあらゆるもの。そうなれば、SDは、代表的には25%未満と定義される)を含み得る)を示し得る。
【0139】
併用療法からの所望の有益な結果または所望の臨床結果としては、例えば、末梢器官への癌細胞浸潤の減少(すなわち、ある程度の減速および/または停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速および/または停止);奏効率(RR)の増加;応答期間の増加;癌に関連する症状のうちの1つもしくはそれより多くのある程度の軽減;疾患の処置に必要な他の医薬の用量の減少;疾患の進行の遅延;ならびに/または患者の生存の延長および/もしくは生活の質の改善も挙げられ得る。これらの効果を評価するための方法は周知であり、ならびに/または例えばcancerguide.org/endpoints.htmlおよび前掲のRECISTガイドラインに開示されている。
【実施例0140】
実施例1.HepG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ
以下のプロトコルでは、HepG2細胞(ヒト肝臓肝細胞癌細胞株;ECACC,UK)におけるデキサメタゾンによるTATの誘導を計測するためのアッセイが記載されている。10%(v/v)ウシ胎仔血清;2mM L-グルタミンおよび1%(v/v)NEAAを補充したMEME培地を使用して、HepG2細胞を37℃、5%/95%(v/v)CO2/空気で培養する。次いで、HepG2細胞を計数し、フェノールレッド、10%(v/v)炭ストリップFBS、2mM L-グルタミンを含まないRPMI1640中で細胞0.125×106個/mlの密度が得られるように調整し、細胞25,000個/ウェルで200μlを96ウェル滅菌組織培養マイクロタイタープレートに播種し、37℃、5%CO2で24時間インキュベートする。
【0141】
次いで、成長培地を除去し、アッセイ培地{フェノールレッド、2mM L-グルタミン+10μMフォルスコリンを含まないRPMI1640}と交換する。次いで、100nMデキサメタゾンのチャレンジに対して、検査化合物をスクリーニングする。次いで、10mMストックから100%(v/v)ジメチルスルホキシドで化合物を連続半対数希釈する。次いで、8点半対数希釈曲線を作成し、続いて、アッセイ培地を1:100希釈して10×最終アッセイの化合物濃度を求め、この結果、最終アッセイの化合物濃度は、0.1%(v/v)ジメチルスルホキシド中10~0.003μMの範囲となった。
【0142】
マイクロタイタープレート中で、検査化合物を細胞とともに37℃、5/95(v/v)CO2/空気で30分間プレインキュベートした後、100nMデキサメタゾンを添加し、続いて20時間経過させて最適なTAT誘導を可能にした。
【0143】
次いで、プロテアーゼインヒビターカクテルを含む30μlの細胞溶解緩衝液で、HepG2細胞を4℃で15分間溶解する。次いで、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中の5.4mMチロシンナトリウム塩、10.8mM α-ケトグルタル酸塩および0.06mMピリドキサール5’リン酸塩を含む155μlの基質混合物を添加し得る。37℃で2時間インキュベートした後、15μlの10M水酸化カリウム水溶液の添加によって反応を停止させ、プレートを37℃でさらに30分間インキュベートし得る。λ340nmの吸光度によって、TAT活性生成物を計測し得る。
【0144】
化合物濃度に対する(100nMデキサメタゾンTAT刺激に対して正規化した)%阻害をプロットし、データを4パラメータロジスティック方程式にフィッティングすることによって、半数阻害濃度(Half-maximal inhibition concentration;IC50)値を
算出し得る。アンタゴニストが、デキサメタゾンに関する競合インヒビターであると仮定し、ChengおよびPrusoff方程式を使用して、IC50値をKi(平衡解離定数)に変換し得る。
【0145】
実施例2.SGRMによる神経膠芽腫細胞成長の阻害
ヒトおよびマウスの神経膠芽腫細胞の培養における成長へのGRMの効果を調べた。GRMのミフェプリストンおよびCORT125134は、5つの異なる神経膠芽腫細胞株のそれぞれの培養において成長を阻害した。試験した最大薬物濃度は50μMであった。使用した細胞株は、標準血清ヒト神経膠芽腫(GBM)細胞株:U251、GL261、U87、および患者由来ニューロスフェア細胞株GBM8およびGBM4であった。細胞は、2000細胞/ウェルの細胞数で、96ウェルフォーマットに播種した;実験は3通り実施した。適用した薬物による細胞成長阻害をアッセイした。細胞成長阻害は、市販のアッセイキットを使用して、アラマーブルー法によって定量した。細胞成長阻害は、処置の72時間後に決定された(「読み取られた」)。ミフェプリストンについて決定された最大半量の阻害濃度(IC50)値は、約16マイクロモル濃度(μM)から約24μMの範囲であった。CORT125134について決定されたIC50値は、約5μMから約29μMの範囲であった。
【0146】
細胞培養:試験したヒト神経膠芽腫細胞株(米国バージニア州マナッサスのAmerican Type Cell Collection(ATCC)より入手)は、U251およびU87(ヒト)、およびGL261(マウス)であった。これらを、10%ウシ胎仔血清(FBS)(米国ペンシルベニア州ラドナーのSeradigm、VWRの子会社)および1%グルタミン ペニシリン-ストレプトマイシン(pen-strep)(米国カリフォルニア州ターザーナ、Omega Scientific)を補充したDMEMで培養された接着単層として成長させた。GBM8(第12継代)およびGBM4は、Galliら、「Isolation and characterization of tumorigenic,stem-like neural precursors from human glioblastoma」Cancer Res 2004,64(19),7011-21およびLeeら、「Tumor stem cells derived from glioblastomas cultured in bFGF and EGF more closely mirror the phenotype and genotype of primary tumors than do serum-cultured cell lines」Cancer
Cell 2006,9(5),391-403に記載されるように、ニューロスフェア(スフェロイド)として入手し培養した、患者由来の神経膠腫幹細胞株である。最初のGBMの手術試料を、ヒト組換えEGF(20ng/μl)、ヒトbFGF(10ng/μl)およびヘパリン(2μg/ml)を含有する幹細胞分離培地で解離させ、洗浄し、30μmメッシュに通して濾過し、超低接着性フラスコに5×105~1.5×106生細胞/mlの濃度で播種した。スフィア培養物は、製造業者の指示に従って、神経幹細胞培養培地での解離、洗浄および再懸濁により継代した(NeuroCult(商標)NS-A増殖キット#05751、Stemcell Technologies、カナダ、ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)。
【0147】
細胞生存率アッセイ:細胞をウェルあたり2000細胞の密度で96ウェルプレートに播種した。細胞の播種の24時間後に化合物を添加した。すべての化合物を1% FBS/DMEMで希釈した。対照は培地のみで処置した。インキュベーション(37℃/5%
CO2)の3日後、アラマーブルー(#BUF012B、AbDSerotec、Kidlington、UK)を製造業者のプロトコールに従って培地に直接添加し、組織培養インキュベーターに戻した(37℃ 5%CO2)。3~18時間後、蛍光シグナルを544ex/590em(SpectraMax i3xプレートリーダー、Molecular Devices、米国カリフォルニア州サンノゼ)で読み取って生細胞の数を決定した。IC50値は、市販のソフトウェアを用いて計算した(Prism 5 ソフトウェア、GraphPad、米国カリフォルニア州ラホヤ)。
【0148】
インキュベーション後の24時間後、細胞を種々の濃度の薬物で72時間処置した。細胞生存率は、72時間後にアラマーブルーによって測定され、結果は3通りの実験として報告された。下の表は、これらの実験で決定したIC
50値を表す。
【表1】
【0149】
実施例3.SGRMによる髄膜腫患者の処置
52歳の女性患者は、6ヶ月間耳鳴りと右側の難聴を訴えている。後頭蓋窩の増強軸方向T1強調MRI(enhanced axial T1-weighted MRI)は、16×11×18mmの
大きさの不均一な固着病変を示し、それは患者の内耳道に広がっている。患者を200mgの用量のCORT125134で1日1回8週間処置する。患者の腫瘍負荷を、増強MRIを使用して処置前、処置中および処置後にモニタリングする。イメージング結果は、腫瘍のサイズが処置前ベースラインの腫瘍サイズと比較して減少し、処置期間の終了時に減少が50%を超えていることを示す。
【0150】
実施例4.SGRMによる髄膜腫患者の処置
52歳の女性患者は、6ヶ月間耳鳴りと右側の難聴を訴えている。後頭蓋窩の増強軸方向T1強調MRIは、16×11×18mmの大きさの不均一な固着病変を示し、それは患者の内耳道に広がっている。患者を200mgの用量のCORT125281で1日1回8週間処置する。患者の腫瘍負荷を、増強MRIを使用して処置前、処置中および処置後にモニタリングする。イメージング結果は、腫瘍のサイズがベースラインと比較して減少し、処置期間の終了時に減少が50%を超えていることを示す。
【0151】
本明細書において引用されるすべての特許、特許公報、およびすべてのその他の刊行物は、あらゆる目的において参照によりその全部が本明細書に援用される。