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特開2022-164786複数の流体ラインを使用する医療システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164786
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】複数の流体ラインを使用する医療システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20221020BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61M1/28 110
A61M1/28 120
A61M1/16 111
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137169
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2020188394の分割
【原出願日】2011-07-07
(31)【優先権主張番号】61/362,259
(32)【優先日】2010-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594010009
【氏名又は名称】デカ・プロダクツ・リミテッド・パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】スカーパシ、ジェイコブ ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘルモア、サイモン シー.
(72)【発明者】
【氏名】バンウィック、エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フィンチ、マシュー ジェイ.
(57)【要約】
【課題】複数の流体ラインを使用する医療システムおよび方法を提供する。
【解決手段】腹膜透析システムなどの医療システムは、患者の心地良さおよび使用し易さを向上させるための制御および他の特徴を備えることが可能である。例えば、腹膜透析システムは、患者ラインが患者に接続される前に準備されているか否かを検出する患者ライン状態検出器を備えることが可能である。さらに、患者ライン状態検出器は、患者ラインが準備のために適切に取り付けられたか否かを検出することができる。患者ラインの存在/不在および充填状態の両方は、光学系(例えば、単一の光学センサを利用するもの)を使用して判断することができる。
【選択図】 図9-2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体運搬用カセットを駆動するポンプ制御ユニットと可逆的に結合するように形成された前記流体運搬用カセットにおいて、
係合側部を有する本体であって、前記本体の前記係合側部内の凹部として形成されたポンプ室と、流体流入端及び流体流出端とを含み、前記流体流入端及び前記流体流出端は、前記本体内の1つ以上の流体通路を通して前記ポンプ室と流体連通している前記本体上の1つ以上のポートを含んでいる、前記本体と、
前記流体流入端にあり、かつスパイクを有するポートであって、前記スパイクは、使用時には流体ラインコネクタと嵌合し、又は使用しない時にはスパイク・キャップと嵌合すべく形成されている、前記ポートと、を備え、
前記スパイクは、前記カセットの前記流体流入端に隣接している近位のベース部と、前記流体ラインコネクタに貫通すべく形成された先端とを含み、
前記スパイクの前記ベース部は、前記カセットの前記本体の前記流体流入端から前記スパイクの前記ベース部に沿って長手方向に離間する方向に延伸している1つ以上の長尺状のポストを含み、前記ポストは、前記スパイク上に装着される前記スパイク・キャップの内面と摩擦接触するように配置されており、
前記スパイク・キャップの前記内面は、前記スパイク上の前記1つ以上の長尺状のポストの遠位端よりも遠位側で前記スパイクと接触する周方向突起リブを含み、前記周方向突起リブは、前記スパイクの周りに密閉を形成するように構成されており、
装着される前記スパイク・キャップの前記周方向突起リブよりも遠位側にある前記スパイクの一部は、前記カセットの前記本体内の前記1つ以上の流体通路と流体連通しており、装着される前記スパイク・キャップの前記周方向突起リブに対して近位側にある前記スパイクの一部は、前記カセットの前記本体の外面と流体連通している、液体運搬用カセット。
【請求項2】
装着される前記スパイク・キャップは、前記スパイクの前記近位のベース部よりも遠位側の前記スパイクと嵌合する位置で前記スパイク・キャップの前記内面の周りに形成された1つ以上の部分周方向突起リブを含む、請求項1に記載の液体運搬用カセット。
【請求項3】
流体運搬用カセットを駆動するポンプ制御ユニットと可逆的に結合するように形成された前記流体運搬用カセットにおいて、
係合側部を有する本体であって、前記本体の前記係合側部内の凹部として形成されたポンプ室と、流体流入端及び流体流出端とを含み、前記流体流入端及び前記流体流出端は、前記本体内の1つ以上の流体通路を通して前記ポンプ室と流体連通している前記本体上の1つ以上のポートを含んでいる、前記本体と、
前記流体流入端にあり、かつスパイクを有するポートであって、前記スパイクは、使用時には流体ラインコネクタと嵌合し、又は使用しない時にはスパイク・キャップと嵌合すべく形成されている、前記ポートと、を備え、
前記スパイクは、前記カセットの前記流体流入端に隣接している近位のベース部と、前記流体ラインコネクタに貫通すべく形成された先端とを含み、
前記スパイクの前記ベース部は、前記スパイクの周りに形成された1つ以上の部分周方向リブを含み、各部分周方向リブは、前記スパイクの外面が、装着される前記スパイク・キャップの内面に接触しない間隙を有しており、
前記スパイク・キャップの前記内面は、前記1つ以上の部分周方向リブの遠位端よりも遠位側で前記スパイクと接触する周方向突起リブを含み、前記周方向突起リブは、前記スパイクの周りに密閉を形成するように構成されており、
装着される前記スパイク・キャップの前記周方向突起リブよりも遠位側にある前記スパイクの一部は、前記カセットの前記本体内の前記1つ以上の流体通路と流体連通しており、装着される前記スパイク・キャップの前記周方向突起リブに対して近位側にある前記スパイクの一部は、前記カセットの前記本体の外面と流体連通している、液体運搬用カセット。
【請求項4】
装着される前記スパイク・キャップは、前記スパイクの前記近位のベース部よりも遠位側の前記スパイクと嵌合する位置で前記スパイク・キャップの前記内面の周りに形成された1つ以上の部分周方向突起リブを含む、請求項3に記載の液体運搬用カセット。
【請求項5】
流体運搬用カセットを駆動するポンプ制御ユニットと可逆的に結合するように形成された前記流体運搬用カセットにおいて、
係合側部を有する本体であって、前記本体の係合側部内の凹部として形成されたポンプ室と、流体流入端及び流体流出端とを備え、前記流体流入端及び前記流体流出端は、前記本体内の1つ以上の流体通路を通して前記ポンプ室と流体連通している前記本体上の1つ以上のポートを含んでいる、前記本体と、
前記流体流入端にあり、かつスパイクを有するポートであって、前記スパイクは、使用時には流体ラインコネクタと嵌合し、又は使用しない時にはスパイク・キャップと嵌合すべく形成されている、前記ポートと、
前記スパイクは、前記カセットの前記流体流入端に隣接している近位のベース部と、前記流体ラインコネクタに貫通すべく形成された先端とを含み、
前記スパイクの前記近位のベース部は、前記スパイクの外面と前記スパイク・キャップの内面との間の摩擦接触によって前記スパイク・キャップと嵌合することによって、摩擦接触時に1つ以上の間隙が存在して、前記スパイク・キャップが前記スパイクに装着されたときに、前記スパイクの前記外面の一部が、前記カセットの前記本体の外面が曝されているあらゆる気体又は液体に曝露されるように構成されており、
前記スパイク・キャップの前記内面は、摩擦接触時の前記1つ以上の間隙よりも遠位側で前記スパイクと接触する周方向突起リブを含み、前記周方向突起リブは、前記スパイクの周りに密閉を形成するように構成されており、
装着される前記スパイク・キャップの前記周方向突起リブよりも遠位側にある前記スパイクの一部は、前記カセットの前記本体内の前記1つ以上の流体通路と流体連通しており、装着される前記スパイク・キャップの前記周方向突起リブに対して近位側にある前記スパイクの一部は、前記カセットの前記本体の外面と流体連通している、液体運搬用カセット。
【請求項6】
装着される前記スパイク・キャップは、前記スパイクの前記近位のベース部よりも遠位側の前記スパイクと嵌合する位置で前記スパイク・キャップの前記内面の周りに形成された1つ以上の部分周方向突起リブを含む、請求項5に記載の液体運搬用カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の流体ラインを使用する医療システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析(PD)は、患者の腹膜腔に減菌水透析液(腹膜透析液または透析液と称される)の定期的な注入を含んでいる。拡散および浸透の交換が自然な身体膜を通して透析液と血流との間に生じる。これらの交換は、腎臓が通常排泄する透析液に排泄物を移す。排泄物は、典型的には、ナトリウムおよび塩化物イオンなどの溶質と、尿素、クレアチニン、および水などの腎臓を通じて通常排泄される他の合成物とからなる。透析中の腹膜に亘る水の拡散は、限外ろ過と称される。
【0003】
従来の腹膜透析液は、限外ろ過を通じて患者から水を取り除くために必要な浸透圧を生成するのに十分な濃度のブドウ糖を含有している。
持続的携行式腹膜透析(CAPD)は、PDの一般的な形態である。患者は、CAPDを手動で1日当たり約4回行なう。CAPDのための導出/導入処置中に、患者は、まず使用した腹膜透析液をその人の腹膜腔から導出し、次に、新しい腹膜透析液をその人の腹膜腔に注入する。この導出および導入処置は、通常約1時間掛かる。
【0004】
自動腹膜透析(APD)は、PDの別の一般的な形態である。APDは、サイクラと称される透析機を使用して、患者の腹膜腔との間で腹膜透析液を自動的に導入、滞留、および導出する。APDは、患者が眠っている間に夜間に行なうことができるので、PD患者には特に魅力的である。これは、その人が起きている時間および就業時間中の、CAPDの日々の要求から患者を解放する。
【0005】
APDシーケンスは、典型的には数時間続く。それは、多くの場合、最初の導出段階で、使用後の透析液を腹膜腔から空にすることから始まる。次に、APDシーケンスは、一連の導入、滞留、および導出段階を通じて進行し、これらの段階は、繰り返し続く。それぞれの導入/滞留/導出のシーケンスは、サイクルと称される。
【0006】
導入段階中に、サイクラは、患者の腹膜腔に所定体積の暖められた新しい透析液を移送する。透析液は、一定時間、腹膜腔内に残る(または「滞留する」)。これは、滞留段階と称される。導出段階中に、サイクラは、腹膜腔から使用後の透析液を取り除く。
【0007】
与えられたAPDセッション中に必要な導入/滞留/導出サイクルの数は、患者のAPD療法に対して規定された透析液の全体積に依存し、治療処方箋の一部として入力されるかまたはサイクラによって演算される。
【0008】
APDは、様々な方法で実施されることができ、また、様々な方法で実施される。
持続的周期性腹膜透析(CCPD)は、1つの一般に使用されるAPDの手段である。CCPDのそれぞれの導入/滞留/導出段階中に、サイクラは、規定体積の透析液を導入する。規定された滞留期間後、サイクラは、患者からこの液体体積を完全に導出し、腹膜腔を空にするかまたは「ドライな状態にする」。典型的には、CCPDは、規定された治療体積を達成するために4~8回の導入/滞留/導出サイクルを採用する。
【0009】
CCPD中の最後の規定された導入/滞留/導出サイクルの後、サイクラは、最終の導入体積を導入する。最終の導入体積は、長時間、患者内に滞留する。それは、夜間の次のCCPDセッションの始めにまたは日半ばの交換中に導出される。最終の導入体積は、サイクラが提供する連続したCCPD導入/滞留/導出導入サイクルの導入体積とは異なるブドウ糖濃度を含むことができる。
【0010】
間欠的腹膜透析(IPD)は、別のAPD手段である。IPDは、典型的には、患者が急に透析治療に入る際の緊急時に使用される。IPDは、CAPDの役割を担うことができないか、または、家で行なうことができないものであるが、患者がPDを必要とする場合に使用されることもできる。
【0011】
CCPDのように、IPDは、一連の導入/滞留/導出サイクルを備えている。CCPDとは異なり、IPDは、最終の導入段階を備えていない。IPDでは、患者の腹膜腔は、APD治療セッション間で透析液がない状態(または「ドライな状態」)である。
【0012】
タイダル腹膜透析(TPD:Tidal Peritoneal Dialysis)は、別のAPD手段である。CCPDのように、TPDは、一連の導入/滞留/導出サイクルを備えている。CCPDとは異なり、TPDは、それぞれの導出段階中に腹膜腔から透析液を完全には導出しない。これに代えて、TPDは、最初の導入段階中に基本体積を確立し、最初の導出段階中にこの体積の一部だけを導出する。続く導入/滞留/導出サイクルは、基本体積の上に交換体積を導入し、次に導出する。最後の導出段階は、腹膜腔から透析液をすべて取り除く。
【0013】
患者から完全に導出され、透析の新しい完全な基本体積を導入されるサイクルを備えたTPDには変動がある。
TPDは、CCPDのように、最終の導入サイクルを備えることができる。これに代えて、TPDは、IPDのように、最終の導入サイクルを回避することができる。
【0014】
APDは、透析を必要とする人に柔軟性およびクオリティ・オブ・ライフの向上を提供する。APDは、CAPDの日々の実施が何人かの個人に提示する疲労および不便から患者を解放することができる。APDは、透析交換を行なう必要がない就業時間を患者に返すことができる。
【0015】
しかし、様々なAPD手段のための過去の透析機および付随した消耗品の複雑さおよびサイズが、手動の腹膜透析方法の代替物としてのAPDの広範囲な患者の容認を鈍らせてきた。
【発明の概要】
【0016】
本発明の態様は、腹膜透析などの医療注入操作を含む医療用途で使用される様々な構成要素、システム、および方法に関する。幾つかの場合には、本発明の態様は、腹膜透析の用途に限定されるが、他の態様は、より一般的な透析用途(例えば、血液透析)または導入用途に限定され、他の態様は、より一般的な方法または処理に限定される。このように、記述される例示の実施形態の多くがAPDに関するものであるが、本発明の態様は、必ずしもAPDシステムおよび方法に限定されるものではない。
【0017】
本発明の一態様では、透析システムは、腹膜腔に透析液を供給するために患者アクセス部に接続される患者ラインの一部などのチューブ区画の存在または不在を検出するチューブ状態検出器を備えることが可能である。チューブ状態検出器は、チューブ区画が配置される空間に向けられた第1光軸を有する第1発光体と、該第1発光体に隣接し、空間に向けられた第2光軸を有する第2発光体とを備えることが可能である。光学センサは、第1および第2発光体の反対の空間の側に配置され、第1および第2発光体によって放射された光を受けるように配置され、空間内のチューブ区画の存在または不在を判断する。
【0018】
一実施形態では、第1光軸は、光学センサのセンサ光軸と略同一直線上にあり、空間内にチューブ区画が配置されるときに、チューブ区画の略中心を通過することが可能である。対照的に、第2光軸は、第1光軸と略平行であることが可能であり、このように、第2光軸は、チューブ区画およびセンサ光軸の中心からオフセットされることが可能である。
【0019】
光学センサは、空間内にチューブ区画があるときに、光源レベルの範囲を検出するように配置されることが可能である(例えば、チューブ区画が空間内にないときに検出される光源レベルよりも高いおよび/または低い光源レベル)。しかし、光学センサは、空間内にチューブ区画がないときに検出されるよりも低い光源レベルを第2発光体から、空間内にチューブ区画があるときに検出することが可能である。例えば、空間内にチューブ区画がある場合、第1および第2発光体の両方に対して検出された光源レベルは、第1および第2発光体に対する較正光源レベルの約15~20%の範囲内にあること可能であり、較正光源レベルは、空間内にチューブ区画がないことが知られているときに検出されるレベルである。しかし、空間内にチューブ区画がない場合、第2発光体に対して検出された光源レベルは、第2発光体に対する較正光源レベルの約15~20%以下であることが可能である。この低光源レベル検出は、空間内にチューブ区画があると判断するために使用されることが可能である。
【0020】
別の実施形態では、チューブ状態検出器は、チューブ区画中に液体があるか否か、例えば、患者ラインが適切に使用の準備ができているか否かを検出するように配置されることが可能である。例えば、検出器は、センサ光軸に対して斜角に配置された第3光軸を有する第3発光体を備えることが可能である。斜角は、90~180°(例えば、約110~120°)であることが可能である。光学センサおよび第3発光体は、チューブ区画が空間内にあり、液体を含まない場合には、光学センサによって検出される光源レベルが、空間内にチューブ区画がない場合に検出される較正光源レベルの約150%以上であるように配置されることが可能である。加えて、チューブ区画が空間内にあり、液体を含む場合、光学センサは、較正光源レベルの約125%以下である光源レベルを第3発光体から検出することが可能である。このように、光学センサおよび第3発光体は、チューブ区画が空間内にあり、液体を含まない場合には、光学センサによって検出される光源レベルは、閾値以上であり、チューブ区画が空間内にあり、液体を含む場合には、光学センサによって検出される光源レベルは、閾値レベル以下であるように配置されることが可能である。この構成は、液体が患者ラインに含まれるか否か、例えば、患者ラインが適切に準備されているか否かを検出器が判断することを可能にすることがある。一実施形態では、第3発光体および光学センサは、空間内のチューブ区画が液体で充填される場合と、空間内のチューブ区画中の液体が空である場合との両方の場合に、光学センサが第3発光体から光を受けるように配置されることが可能である。このように、チューブ区画中の液体の存在または不在は、光の存在または不在ではなく検出光強度に基づいて判断されることが可能である。これは、検出器がチューブ区画中の液体の存在などの状態を示すために検出光の不在を使用した場合に生じることがある誤状態検出をシステムが回避することを補助することが可能である。つまり、液体の存在に拘わらず光学センサが第3発光体からの光を検出するので、光学センサは、第3発光体が適切に作動しているか否か(またはまったく作動していないか)を判断することが可能である。チューブ区画が保持される空間は、チューブ区画を実質的に変形させることなく、筒状外面を有することがあるチューブ区画を受容および保持するように配置されることが可能である。このように、検出器は、チューブ区画を変形させることなく動作することが可能であり、それによって、チューブ区画における圧迫、流れの減少などの潜在的な問題を回避する。
【0021】
本発明の別の態様では、液体がチューブ区画に含まれるか否かを検出するチューブ状態検出器は、チューブ区画が配置される空間を通過するように配置された光軸を有する充填状態発光体を備えることが可能である。空間は、筒状外面を有したチューブ区画を受容し、該チューブ区画を実質的に変形させることなくチューブ区画を保持するように配置されることが可能である。このように、検出器は、透析システムで頻繁に使用される共通のチューブで、特殊目的の接続具または他の構成要素を必要とせずに使用可能である場合がある。光学センサは、充填状態発光体の反対の空間の側に配置されることが可能であり、充填状態発光体によって放射された光を受けるように配置され、チューブ区画中の液体の存在または不在を判断する。一実施形態では、光学センサは、充填状態発光体の光軸に対して斜角に配置され、液体がチューブ区画中にあるか否かを検出するように配置されることが可能なセンサ光軸を有することが可能である。斜角は、90~180°(例えば、約110~120°)であることが可能であり、光学センサは、チューブ区画に液体が存在しても存在しなくても、充填状態発光体から光を受けるように配置されることも可能である。
【0022】
光学センサおよび充填状態発光体は、チューブ区画が空間内にあり、液体を含まない場合には、光学センサによって検出される光源レベルは、閾値レベル以上であり、チューブ区画が空間内にあり、液体を含む場合には、光学センサによって検出される光源レベルは、閾値レベル以下であるように配置されることが可能である。このように、光学センサが閾値以下の光源レベルを検出した場合(例えば、空間内にチューブ区画がない場合に検出される光源レベルの約125~150%以下)、チューブ区画が液体で充填されているという判断がなされることが可能である。(他の発光体などを持った)充填状態発光体は、発光ダイオード、あるいは、赤外線、紫外線、可視光線、または可視および/もしくは不可視スペクトルの他の光を放射する装置などの他の電磁波放射構成要素であることが可能である。
【0023】
一実施形態では、チューブ状態検出器は、空間に向けられた第1光軸を有する第1発光体と、空間に向けられた第2光軸を有する第2発光体とを備えることが可能である。第2発光体は、第1発光体に隣接することが可能であり、第2光軸は、第1光軸と平行であることが可能である。光学センサは、第1および第2発光体の反対の空間の側に配置され、第1および第2発光体によって放射された光を受けるように配置され、空間内のチューブ区画の存在または不在を判断することが可能である。例えば、第1および第2発光体は、互いにおよび上述したような光学センサに対して配置されることが可能である(例えば、第1光軸は、空間内のチューブ区画の中心を通過することが可能であり、第2光軸は、チューブ区画の中心からオフセットされることが可能である等)。
【0024】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムは、患者の腹膜腔に送るために透析液を圧送するように配置された少なくとも1つのポンプと、ポンプから送られた透析液が患者ラインに導かれるように少なくとも1つのポンプに流体結合された患者ラインとを備えることが可能である。患者ラインは、患者への接続のために(例えば、患者の腹膜腔に透析液を供給する患者アクセス部への接続のために)配置された先端を有することが可能である。患者ライン状態検出器は、患者ラインに関連づけられ、患者ラインの存在と患者ラインの準備済み状態との両方を検出するように配置されることが可能である。例えば、患者ライン状態検出器は、患者ラインの先端を受容するように配置されることが可能であり、先端の存在と患者ラインの先端が流体で充填されているか否かを検出する。この構成は、患者ラインを患者アクセス接続部に接続する前に患者ラインが透析液で十分に充填されていることをシステムおよび患者が確認することを可能にするために有用である場合がある。
【0025】
患者ライン状態検出器は、患者ラインの先端を受容するキャビティと、該キャビティに光を導くように配置され、キャビティに関連づけられた一又は複数の発光体と、該一又は複数の発光体によって放射された光を検出するように配置された一又は複数の光検出器とを備えることが可能である。一実施形態では、単一の光検出器は、液体が患者ライン中にあるか否かと、患者ラインの存在または不在との両方を判断するために使用されることが可能である。患者ライン状態検出器は、上述したチューブ状態検出器が配置されることが可能である何れかの方法で配置されることが可能である。例えば、第1および第2発光体は、互いに隣接して、また、光学センサの反対側である患者ラインを受容するキャビティの側に配置されることが可能である。第3発光体は、光学センサのセンサ軸に対して斜角で配置されたその光軸を有するように配置されることが可能であり、それによって、患者ライン中の液体の検出を可能にする。上述したチューブ状態検出器の他の特徴部は、患者ラインの存在および/または患者ライン中の液体の存在などを示すための相対的な光源レベルの検出および使用を含み、患者ライン状態検出器に組み込まれることが可能である。
【0026】
本発明の別の態様では、チューブ区画の存在を検出する方法は、チューブ区画が随意に配置される空間に向かって第1光軸に沿って第1光を放射すること、および、空間に向かって第2光軸に沿って第2光を放射することを含み、第1および第2光は、空間の第1側から放射される。第1および第2光の少なくとも部分は、第1側の反対側である空間の第2側で検出されることが可能であり、空間内のチューブ区画の存在または不在は、第1および第2光の検出された部分に基づいて判断されることが可能である。第2光軸は、第1光軸と略平行であることが可能であり、第1光軸は、チューブ区画の中心を通過することが可能である。一実施形態では、第1光の第1較正レベルは、空間内にチューブ区画がない場合に検出されることが可能であり、空間内にチューブ区画があるときには、第1光源レベルは、第1光に検出されることが可能である。第1光源レベルは、第1較正レベルよりも高いかまたは低いことがある。しかし、第2光の第2較正レベルは、空間内にチューブ区画がない場合に検出されることが可能であり、空間内にチューブ区画があるときには、第2光源レベルは、第2光について検出されることがあり、第2光源レベルは、第2較正レベルよりも低い。このように、第2較正レベルよりも低い第2光源レベルの検出は、空間内のチューブ区画の存在を示すことが可能である。一実施形態では、第2光に対して検出された第2光源レベルは、空間内にチューブ区画がある場合、第2較正レベルの約15~20%以下であることが可能である。
【0027】
本発明の別の態様では、チューブ区画中の液体の存在を検出する方法は、チューブ区画が配置される空間に向かって光軸に沿って光を放射することであって、チューブ区画が筒状外面を有すること、および、空間内に延びるセンサ光軸に沿った光を検出することであって、センサ光軸が光軸に対して斜角(例えば、約110~120°)で配置されることを含むことが可能である。空間内のチューブ区画中の液体の存在または不在は、センサ光軸に沿って検出された検出光源レベルに基づいて判断されることが可能である。例えば、センサ光軸に沿って検出された光源レベルが閾値以上である場合、流体がチューブ区画中にないとの判断がなされることが可能であり、センサ光軸に沿って検出された光源レベルが閾値レベル以下である場合、流体がチューブ区画中にあるとの判断がなされることが可能である。閾値レベルは、空間内にチューブ区画がない場合、センサ光軸に沿って検出された光源レベルの約125~150%と略等しいことが可能である。
【0028】
本発明の一態様では、APDサイクラ装置または他の注入装置で使用可能な使い捨て式の流体運搬用カセットは、概して平面の本体を備え、該本体は、その第1側に凹部として形成された少なくとも1つのポンプ室と、チャネルを備えた流体用の複数の流路とを有する。患者ライン・ポートは、患者ラインへの接続のために配置され、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通することが可能であり、膜が、少なくとも1つのポンプ室に亘って本体の第1側に取り付けられることが可能である。一実施形態では、膜は、本体におけるポンプ室凹部に概して倣う無負荷形状を持ったポンプ室部分を有することが可能であり、ポンプ室の使用可能な空間内での流体の移動のために動作可能に配置される。カセット本体が2つ以上のポンプ室凹部を備える場合、膜は、同様に2つ以上の予め形成されたポンプ部分を備えることが可能である。他の実施形態では、膜は、カセットを備える必要がなく、例えば、サイクラの制御面がカセットと相互作用し、圧送および/またはバルブ機能を制御する。
【0029】
別の実施形態では、ポンプ室は、凹部の内壁から延びた一又は複数のスペーサ要素を備えることが可能であり、例えば、膜が内壁と接触するのを防止するのを助け、それによって、ポンプ室の入口/出口のブロッキングを防止する、ポンプ室内での空気の除去またはトラップを助ける、および/または、内壁への膜の付着を防止する。スペーサ要素は、膜がスペーサ要素に対して押し付けられる際に、スペーサ要素の縁部での膜の変形を最小限にするように配置されることが可能である。
【0030】
別の実施形態では、患者ライン・ポートおよび導出ライン・ポートは、本体の第1端に配置され、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通することが可能である。一方、複数の透析液ライン・スパイクは、第1端の反対の本体の第2端に配置されることが可能であり、透析液ライン・スパイクのそれぞれは、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通する。この構成は、カセットへの透析液ラインの自動接続、ならびに/または、透析液ラインに対する患者ラインおよび/もしくは導出ラインの個別の閉塞を可能にすることがある。一実施形態では、ヒータバッグ・ライン・ポートもまた、本体の第1端に配置され、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通することが可能である。柔軟性のある患者、導出、およびヒータバッグ・ラインは、患者ライン・ポート、導出ライン・ポート、およびヒータバッグ・ライン・ポートにそれぞれ接続されることが可能である。
【0031】
別の実施形態では、本体は、少なくとも1つのポンプ室に隣接して形成された真空通気間隙凹部を備えることが可能である。この凹部は、膜とサイクラの対応する制御面との間で、例えば、制御面における真空ポートによって、流体(気体および/または液体)の除去を補助することが可能である。つまり、凹部は、膜が真空ポートに対して押し付けられないことを確実にするのを助け、必要なときに収集室に流体を引き込むためにポートを開いたままにすることが可能である。
【0032】
一実施形態では、導出ライン・ポートおよびヒータバッグ・ライン・ポートなどの一又は複数のポート、ならびに/または、一又は複数の透析液ライン・スパイクは、カセット・ベースの共通の流体経路チャネルと連通することが可能である。必要に応じて、複数のバルブはそれぞれ、少なくとも1つのポンプ室と、患者ライン・ポートと、導出ライン・ポートと、複数の透析液ライン・スパイクとの間のそれぞれの流体経路における流れを制御するように配置されることが可能である。一実施形態では、膜の部分は、それぞれのバルブに亘って配置されることが可能であり、それぞれのバルブを開閉するように動作可能である。同様に、ポンプ室への開口を通じた流れは、膜の一又は複数の部分の動作によって開閉される対応したバルブによって制御されることが可能である。
【0033】
幾つかの実施形態では、膜は、本体の流体経路のうちの少なくとも幾つかを閉じることが可能である。つまり、本体には、膜によって少なくとも一側で閉じられるオープン・フロー・チャネルが形成されることが可能である。一実施形態では、本体は、反対の平面側に形成された流体経路を備えることが可能であり、第1側の流体経路のうちの少なくとも幾つかは、第2側の流体経路と連通することが可能である。
【0034】
一実施形態では、カセット(例えば、透析液を受容する)上の一又は複数のスパイクは、該スパイクを密閉する取外し可能なスパイク・キャップによって覆われることが可能である。
【0035】
本発明の別の態様では、再使用可能な自動腹膜透析サイクラ装置との使用のための使い捨て式の流体運搬用カセットは、本体の第1側に凹部として形成された少なくとも1つのポンプ室を有した概して平面の本体を備え、流体用の複数の流路は、チャネルを備え、患者ライン・ポートは、患者ラインへの接続のために配置され、患者ライン・ポートは、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通し、柔軟性のある膜は、少なくとも1つのポンプ室に亘って本体の第1側に取り付けられる。少なくとも1つのポンプ室に亘る膜のポンプ室部分は、本体におけるポンプ室凹部の使用可能領域に概して倣う無負荷形状を有することが可能であり、ポンプ室内の流体の移動のために動作可能に配置されることが可能である。一実施形態では、カセットは、再使用可能な自動腹膜透析サイクラ装置と動作可能に係合するように構成される。
【0036】
カセットは、導出ラインへの接続のために配置された、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通する導出ライン・ポート、および/または、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通する複数の透析液ライン・スパイクを備えることが可能である。膜のポンプ室部分は、概してドームに形成されることが可能であり、対応するポンプ室凹部の使用可能領域に概して倣う形状を有した2つのポンプ室部分を備えることが可能である。一実施形態では、ポンプ室部分の容積は、ポンプ室凹部の使用可能な容積の85~110%の範囲にあることがある。別の実施形態では、ポンプ室部分は、ポンプ室凹部の使用可能な領域の深さの85~110%であるように配置されることが可能である。別の実施形態では、ポンプ室部分は、ポンプ室凹部の使用可能な領域の外周の85~100%の範囲にあるサイズを有するように配置されることが可能である。ポンプ室の使用可能な領域は、凹部の内壁から延びる一又は複数のスペーサ要素によって少なくとも部分的に規定されることが可能である。一実施形態では、複数のスペーサ要素は、概してドーム形の領域または他の形状を規定する累進的長さまたは変動する高さを持つものであることが可能である。スペーサ要素は、平面で見られる際に、同心の楕円パターンまたは他の形状で配置されることが可能である。パターンの一又は複数の切れ目は、例えば、空隙間の連通を許容するために設けられることが可能である。一実施形態では、スペーサ要素は、膜がスペーサ要素に対して押し付けられる際に、スペーサ要素の縁部での膜の変形を最小限にするように配置されることが可能である。別の実施形態では、一又は複数のスペーサは、膜がポンプ室内の流体入口および/または出口を覆うことを禁じるように構成されることが可能である。
【0037】
本発明の別の態様では、医療用輸液用器具の流体運搬システムとの使用のための流体運搬用カセットは、本体の第1側の凹部として形成された少なくとも1つのポンプ室とチャネルを持つ流体用の複数の流路とを有した概して平面の本体であって、少なくとも1つのポンプ室が、凹部の内壁から延びる一又は複数のスペーサ要素を具備することと、患者ラインへの接続のために配置された患者ライン・ポートであって、該患者ライン・ポートが、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通することと、導出ラインへの接続のために配置された導出ライン・ポートであって、該導出ライン・ポートが、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通することと、および、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通する複数の透析液ライン・スパイクとを備える。
【0038】
本発明の一態様では、腹膜透析システムの流体ライン接続システムとの使用のための使い捨て式構成要素システムは、本体の第1側の凹部として形成された少なくとも1つのポンプ室と流体用の複数の流路とを具備した概して平面の本体を有する流体運搬用カセットと、本体の第1端に配置され、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通する透析液ライン・スパイクと、透析液ライン・スパイクを取り外し可能に覆うように構成されたスパイク・キャップとを備え、該キャップは、少なくとも1つの隆起特徴部(例えば、非対称または対称なフランジ)を備え、腹膜透析治療の開始に先立って透析液ラインへの接続のためにキャップの取外しを補助する。
【0039】
一実施形態では、カセットは、スパイク・キャップの端部を受容するためにスパイクの周囲に配置されたスカートを備え、スパイク・キャップとスカートとの間にシールを形成することを補助するように配置された凹部が、スカートとスパイクとの間にあることが可能である。
【0040】
別の実施形態では、透析液ライン・キャップは、透析液ラインに取外し可能に接続されることが可能であり、透析液ライン・キャップは、凹状特徴部(対称または非対称の溝など)を備えることが可能である。透析液ライン・キャップの少なくとも一部は、シリコンゴムなどの可撓性材料を備えることが可能である。凹状特徴部は、カセットからのスパイク・キャップの取外しを補助することが可能である。
【0041】
別の実施形態では、スパイク・キャップは、透析液ライン・キャップ用のストッパとして機能することがある第2隆起特徴部を備えている。
別の実施形態では、一又は複数のスパイクの主軸は、流体運搬用カセットの概して平面の本体と実質的に同じ平面にある。
【0042】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムとの使用のための流体運搬用カセットは、本体の第1側の凹部として形成された少なくとも1つのポンプ室と流体用の複数の流路とを持った概して平面の本体と、透析液ラインとの係合用の本体の第1端に配置されたスパイクとを備えている。スパイクは、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通し、遠位先端部と、スパイクの遠位先端部がスパイクの長手方向軸の実質的に近傍に配置されるように配置された管腔とを備えることが可能である。一実施形態では、管腔は、長手方向軸から実質的に外れて配置されることが可能である。
【0043】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムの流体ライン接続システムとの使用のための使い捨て式構成要素システムは、流体運搬用カセットのスパイクを取外し可能に覆うように構成されたスパイク・キャップを備えている。キャップは、腹膜透析治療の開始に先立って透析液ラインへの接続のためのキャップの取外しを補助する少なくとも1つの特徴部を備えることが可能である。特徴部は、隆起特徴部または凹状特徴部であることが可能であり、透析液ライン・キャップとの係合のために構成されることが可能である。
【0044】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムの流体ライン接続システムとの使用のための使い捨て式構成要素システムは、透析液ラインへの取外し可能な取付けのために透析液ライン・キャップを備え、該透析液ライン・キャップは、腹膜透析治療の開始に先立って透析液ラインとスパイクとの間の接続を可能にするためのスパイク・キャップの取外しを補助する少なくとも1つの特徴部を備える。該特徴部は、隆起特徴部または凹状特徴部であることが可能であり、スパイク・キャップとの係合のために構成されることが可能である。印は、透析液ラインに関連づけられ、その結果、例えば、ラインに関連づけられた透析液が特定され、腹膜透析システムの少なくとも1つの機能に影響することがある。
【0045】
本発明の別の態様では、APDシステムなどの医療用点滴流体運搬システムは、流体運搬用カセット上の一又は複数のスパイクまたは他の接続ポートを持った一又は複数のライン(透析液ラインなど)のキャップを取り外し、これらのラインを接続するように配置されることが可能である。この特徴部は、人間の相互作用がキャップの取外しおよびラインとスパイクとの接続に必要ではないので、汚染の可能性が減少されるなどの利点を提供することが可能である。例えば、APDシステムは、コネクタ端部とキャップとをそれぞれ有した複数の透析液ラインを受容するように配置されたキャリッジを備えることが可能である。キャリッジは、第1方向に沿って透析液ラインのコネクタ端部を移動させるように第1方向に沿って移動するように配置されることが可能であり、キャップ・ストリッパは、キャリッジの透析液ライン上のキャップに係合するように配置されることが可能である。キャップ・ストリッパは、第1方向に沿ってキャリッジと共に移動するのに加え、第1方向に交わる第2方向に移動するように配置されることが可能である。例えば、キャリッジは、透析液ライン上のキャップをカセットのスパイク上のキャップと係合させるように第1方向にAPDサイクラのカセットに向かって移動することが可能である。キャップ・ストリッパは、キャップと係合し(例えば、キャリッジの動作に交わる方向に移動することによって)、次に、キャリッジがスパイクからキャップを取り外すためにカセットから離れる際にキャリッジと共に移動することが可能である。次に、キャリッジは、キャップ・ストリッパ上のキャップから透析液ラインのコネクタ端部を引っ張ることが可能であり、それは、この時点で露出している透析液ラインのコネクタ端部を、カセット上の露出したスパイクに係合させることを可能にするように、キャリッジを後退させることが可能である。
【0046】
一実施形態では、キャリッジは、それぞれ対応する透析液ラインを受容する複数の溝を備えることが可能である。透析液ラインを対応する溝に位置決めすることによって、各ラインは、例えば、ライン上のバーコードまたは他の識別子を読み取り、それに応じてシステムを制御することによって、より容易に個々に特定されることが可能である。キャリッジは、サイクラ・ハウジングのドアに取り付けられることが可能であり、キャリッジ駆動部は、第1方向に沿ってキャリッジを移動させることが可能である。一実施形態では、キャリッジ駆動部は、ドアが閉位置に移動されるときにキャリッジに係合し、ドアが開位置に移動されるときにキャリッジから係合解除されることが可能である。
【0047】
一実施形態では、キャップ・ストリッパは、キャリッジによって担持される透析液ライン上の対応するキャップに係合するように配置された複数のフォーク形状の要素を備えることが可能である。フォーク形状要素は、透析液ラインから取り外されるときにキャップを保持し、各透析液ライン・キャップはそれ自体、スパイク・キャップを保持することが可能である。別の実施形態では、キャップ・ストリッパは、それぞれがフォーク形状要素に関連づけられた複数のロッカ・アームを備えることが可能である。各ロッカ・アームは、例えば、対応するスパイクからスパイク・キャップを取り外すのを補助するために、スパイク・キャップに係合すべく移動するように配置されることが可能である。各ロッカ・アームは、関連づけられたフォーク形状要素が透析液ライン上のキャップに係合するときにだけ、対応するスパイク・キャップに係合するように配置されることが可能である。このように、キャップ・ストリッパは、スパイクに接続すべき対応した透析液ラインがない位置でカセットにスパイク・キャップを係合しないか、または、カセットからスパイク・キャップから取り外さないことが可能である。
【0048】
本発明の別の態様では、APDサイクラなどの医療用点滴流体運搬システムで流体ラインを接続する方法は、人間による接触から遠ざけた密閉空間に透析液ラインおよびカセットのスパイクを配置することを含むことが可能である。透析液ラインおよび/またはスパイクは、密閉空間にある間、取り外されたキャップと、スパイクに接続されたラインとを有することが可能であり、従って、接続を提供すると共に、例えば、病原体または他の潜在的に有害な物質を運ぶ指による、接続部の潜在的な汚染を最小限にする。例えば、本発明のこの態様にかかる1つの方法は、それぞれコネクタ端部とキャップとを有した複数の透析液ラインを設けること、それぞれスパイク・キャップによって覆われた複数のスパイクを有した流体運搬用カセットを設けること、複数の透析液ラインのコネクタ端部を、コネクタ端部を覆うキャップで包囲し、複数のスパイクを、キャップまたはスパイクのキャップの人間による接触を防止する空間内のスパイクを覆うスパイク・キャップで包囲すること、空間からキャップまたはコネクタ端部を取り外すことなく複数の透析液ラインのコネクタ端部からキャップを取り外すこと、空間からスパイク・キャップまたはスパイクを取り外すことなくスパイクからスパイク・キャップを取り外すこと、キャップをスパイク・キャップのそれぞれ1つに係合させること、および、空間内にコネクタ端部およびスパイクを維持して人間による接触から保護しつつ、複数のコネクタ端部を対応するスパイクに流体接続すること含んでいる。
【0049】
一実施形態では、透析液ラインのキャップおよびスパイク・キャップは、ラインまたはスパイクからのそれらの取り外しの前に互いに係合されることが可能であり、次に、互いに係合されたまま、ラインおよびスパイクの両方から取り外されることが可能である。この技術は、キャップ取外し/キャップ取付けを単純化することが可能であり、キャップのより容易な格納を可能にする。
【0050】
別の実施形態では、透析液ラインは、スパイクから接続解除されることが可能であり、ラインのコネクタ端部およびスパイクは、例えば、処置が完了した後で、再びキャップに取り付けられることが可能である。
【0051】
本発明の別の態様では、透析機は、複数のスパイクとそれぞれのスパイクを覆う複数のスパイク・キャップとを有した流体運搬用カセットと、それぞれのラインのコネクタ端部を覆うキャップをそれぞれ有した複数の透析液ラインと、透析液ラインのコネクタ端部から一又は複数のキャップを取り外し、一又は複数のキャップがスパイク・キャップの対応する1つに固定されつつ、カセット上のスパイクから一又は複数のスパイク・キャップを取り外すように配置されたキャップ・ストリッパとを備えることが可能である。上で議論したように、透析機は、キャップが取り外された後で、透析液ラインのコネクタ端部を対応するスパイクに自動的に流体接続するように配置されることが可能である。
【0052】
本発明の別の態様では、APDシステムなどの透析機は、複数の流体スパイクとそれぞれのスパイクを覆う複数のスパイク・キャップを有したカセットと、それぞれのラインのコネクタ端部を覆うキャップをそれぞれ有した複数の透析液ラインを受容するように配置されたキャリッジと、ラインのコネクタ端部を覆う一又は複数のキャップに係合するように配置されたキャップ・ストリッパとを備えることが可能である。キャリッジおよびキャップ・ストリッパは、ラインのコネクタ端部上の一又は複数のキャップに係合する一方で、一又は複数のキャップは、カセット上のスパイクを覆う対応するスパイク・キャップに係合し、スパイクからスパイク・キャップを取り外し、透析液ラインのコネクタ端部からキャップを取り外し、該キャップが取り外された後で、スパイクと透析液ラインのコネクタ端部とを流体接続するように構成されることが可能である。
【0053】
本発明の別の態様では、透析機は、透析液ラインのコネクタ端部上の一又は複数のキャップを取り外し、流体運搬用カセット上のスパイクから一又は複数のスパイク・キャップを取り外し、透析液ラインにキャップを、および、カセット上のスパイクにスパイク・キャップを保持し、再び取り付けるように配置されたキャップ・ストリッパを備えることが可能である。
【0054】
本発明の別の態様では、腹膜透析システム用の流体ライン接続システムは、本体の第1側の凹部として形成された少なくとも1つのポンプ室と流体用の複数の流路とを持った概して平面の本体を有する流体運搬用カセットと、本体の第1端に配置された複数の透析液ライン・スパイクであって、該透析液ライン・スパイクが、少なくとも1つの流体経路を介して少なくとも1つのポンプ室と流体連通し、スパイクが、流体運搬用カセットの概して平面の本体と概して同一平面にあるように配置されることと、複数の透析液ラインを受容するように配置されたキャリッジであって、各透析液ラインがコネクタ端部を有することとを備えている。キャリッジは、透析液ラインのコネクタ端部を対応するスパイクに自動的に流体接続するように配置されることが可能である。
【0055】
一実施形態では、キャリッジは、流体運搬用カセットの概して平面の本体と実質的に平行な第1方向に沿って透析液ラインおよびそれぞれのキャップを移動させるように配置される。第1方向だけにキャリッジを移動させるキャリッジ駆動部は、駆動要素と、第1方向に沿って駆動要素を移動させる空気圧式の空気袋またはネジ駆動部を備えることが可能である。キャップ・ストリッパは、透析液ラインのコネクタ端部から一又は複数のキャップを取り外し、一又は複数のキャップがスパイク・キャップの対応する1つに固定されつつ、カセット上のスパイクから一又は複数のスパイク・キャップを取り外すように配置されるように設けられることが可能である。一実施形態では、キャップ・ストリッパは、透析液ラインにキャップを、および、カセット上のスパイクにスパイク・キャップを保持し、再び取り付けるように配置されることが可能である。
【0056】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムは、患者の腹膜腔に透析液の供給を制御するのに適した構成要素を持ったサイクラ装置を備えることが可能である。サイクラ装置は、構成要素のうちの少なくとも幾つかを包囲するハウジングを有し、ヒータバッグ受容部を有することが可能である(ここでは、用語「ヒータバッグ」は、重合体、金属、または他の適切な材料から作られる柔軟性または剛性のある容器などの透析液を加熱するための任意の適切な容器を参照するために使用される)。キャップは、ハウジングに取り付けられ、ヒータバッグがヒータバッグ受容部において配置可能な開位置と、キャップがヒータバッグ受容部を覆う閉位置との間で移動可能なことがある。そのような構成は、例えば、熱がキャップによって保持されることが可能であるので、ヒータバッグ中の透析液のより速いかまたはより効率的な加熱を可能にすることがある。さらに、キャップは、潜在的に熱い表面の人間による接触を防止することを補助することが可能である。
【0057】
一実施形態では、透析システムは、ヒータバッグ・ラインに取り付けられたヒータバッグ・ポートと、患者ラインに取り付けられた患者ポートと、患者ラインおよびヒータバッグ・ライン中の流体を移動させる少なくとも1つのポンプ室とを備えた流体運搬用カセットを備えることが可能である。ヒータバッグは、ヒータバッグ・ラインに取り付けられ、ヒータバッグ受容部における配置のために構成されることが可能である。
【0058】
別の実施形態では、システムは、ハウジングに移動可能に取り付けられたインタフェース(タッチスクリーン構成要素を備えた視覚的な表示部など)を備えることが可能であり、インタフェースは、該インタフェースがヒータバッグ受容部内に受容される第1位置と、インタフェースがヒータバッグ受容部の外に位置する第2位置(例えば、ユーザがインタフェースによって相互作用することがある位置)と間で移動可能である。このように、インタフェースは、システムがアイドル状態であるときにビューから隠されることが可能であり、インタフェースを保護することを可能にする。また、ヒータバッグ受容部にインタフェースを格納することは、システムを少なくとも「格納された」状態に、よりコンパクトにすることが可能である。
【0059】
本発明の別の態様では、透析システムは、該システムの空気圧動作構成要素を制御するのに適した、空気圧および/または真空の供給源と、空気圧および/または真空の供給源に流体接続された空気圧動作構成要素と、空気圧動作構成要素に空気圧または真空を提供し、続いて、再び空気圧または真空を空気圧動作構成要素に供給する前に、空気圧動作構成要素を空気圧または真空の供給源から実質的な時間分離する制御システムとを備えている。そのような構成は、ここで記述される閉塞部構成などの比較的希に作動する構成要素に有用であることが可能である。幾つかの構成要素の小さな動作は、その構成要素に、患者によって厄介に感じられることがあるノイズを発生させる場合がある。空気圧/真空から構成要素を分離することによって、その構成要素は、圧力/真空供給源の変動によって生じる僅かな動作を回避することが可能であり、例えば、他のシステム構成要素によって圧力/真空の引き込みをもたらす。一実施形態では、実質的な時間は、5分以上、1時間以上、患者の腹膜腔に対する人為的な透析に適した体積の透析液を供給するかまたは取り除くのに必要な時間の50%以上、または他の適切な時間であることが可能である。
【0060】
本発明の別の態様では、透析システムは、システムの空気圧動作構成要素を制御するのに適した空気圧および/または真空の供給源と、空気圧および/または真空の供給源に流体接続された空気圧動作構成要素と、空気圧動作構成要素に空気圧または真空を供給し、空気圧動作構成要素によって生じたノイズを低減するように空気圧または真空を制御する制御システムとを備えている。例えば、空気圧動作構成要素は、少なくとも1つの可動部(ポンプ隔膜など)を備えることが可能であり、制御システムは、空気圧動作構成要素に供給される空気圧または真空を低下させ、可動部が停止するまたは方向を変更する際に可動部の動作を遅くする(例えば、圧力/真空は、隔膜が方向を変更する前に、隔膜の移動を遅くするように制御されることが可能である)。別の実施形態では、圧力/真空供給バルブのパルス幅変調制御は、例えば、バルブの可動部によって発生されるノイズを低減させるために使用されることが可能である。
【0061】
本発明の別の態様では、透析システムは、該システムの空気圧動作構成要素を制御するのに適した空気圧および真空の供給源を備えている。第1空気圧動作構成要素は、空気圧および/または真空の供給源に流体接続され、空気圧を解放するために第1出力ラインを有することが可能である。第2空気圧動作構成要素は、空気圧および/または真空の供給源に流体接続され、空気圧真空を解放するために第2出力ラインを有することが可能である。アキュムレータ、マニホールド、または遮音室によって規定されるような空間は、第1および第2両方出力ラインに流体接続されることが可能である。制御システムは、空気圧または真空を空気圧動作構成要素に供給することが可能であり、その結果、第1および第2構成要素が動作中に圧力/真空を解放したときに、開放された圧力/真空は、共通空間(例えば、マニホールド)に受容されることがある。幾つかの状況では、構成要素によって解放された正圧下の気体は、他の構成要素によって解放される負圧によって平衡を保たれることが可能であり、従って、生じたノイズを低減させる。
【0062】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムは、患者の腹膜腔に流体接続され、該腹膜腔から導かれる患者ラインを有した流体運搬用カセットを備え、該カセットは、患者ライン中で透析液を移動させる少なくとも1つのポンプ室を備えることが可能である。サイクラ装置は、流体運搬用カセットを受容し、該カセットと相互作用し、また、少なくとも1つのポンプ室に患者ライン中で透析液を移動させるように配置されることが可能である。サイクラは、患者ライン中の如何なる空気も取り除くように患者ラインに透析液を押し込む準備動作で動作させるべく少なくとも1つのポンプ室を制御するように配置された制御システムを備えることが可能であり、カセット本体に接続された患者ラインの容積に対して異なる2種類の流体運搬カセットと相互作用するように構成されることが可能である。第1種類のカセットは、(例えば、小児科用途の)比較的小さい容積の患者ラインを有することが可能であり、第2種類のカセットは、(例えば、成人用途の)比較的大きい容積の患者ラインを有することが可能であり、制御システムは、サイクラによって受容されたカセットが第1種類であるかまたは第2種類であるかを検出し、従って、サイクラ動作を調整することが可能である。
【0063】
一実施形態では、制御システムは、サイクラによって受容されたカセットが準備中に患者ラインの容積を判断することによって第1種類であるかまたは第2種類であるかを検出し、システムの動作中にカセットを通じて移動する流体の体積を調整することが可能である。別の実施形態では、カセット上のバーコードなどの印は、サイクラによって検出され、サイクラにカセットの種類に基づいてポンプ動作を調整させることが可能である。
【0064】
本発明の別の態様では、透析機は、複数のスパイクとスパイク中の流体を移動させる少なくとも1つのポンプ室とを有した流体運搬用カセットと、カセット上のそれぞれのスパイクにそれぞれ係合する複数の透析液ラインと、透析液ラインのそれぞれの印を読み取り、透析液ラインのそれぞれの種類を判断する制御システムとを備えている。制御システムは、透析液ラインのうちの一又は複数の固有性(アイデンティティ)に基づいてポンプ動作または他のサイクラ動作を調整することが可能である。例えば、透析液ラインは、導出サンプリング・ラインとして特定されることがあり、ポンプ動作は、導出サイクル中に、使用済み透析液を患者から導出サンプリング・ラインに導くように調整されることが可能である。
【0065】
本発明の別の態様では、透析システムの傾斜状態から自動的に回復する方法は、(A)透析システムの少なくとも一部の傾斜角度を検出し、透析システムの一部が透析治療を行なう機構を備えること、(B)傾斜角度が所定閾値を超える傾斜状態が存在することを判断すること、(C)透析治療を(B)に呼応して休止すること、(D)透析治療が休止されている間、傾斜角度を監視すること、(E)傾斜状態がもはや存在しないことを判断すること、および(F)透析治療を(E)に呼応して自動的に再開することを含むことが可能である。
【0066】
本発明の別の態様では、透析システム用の患者データ・インタフェースは、透析システムの少なくとも一部のシャーシにおける凹部と、該凹部内に配置された第1コネクタを具備した装置ポートを備えている。患者データ記憶装置は、ハウジングと、該ハウジングに結合された第2コネクタとを備えることが可能であり、該第2コネクタは、第1コネクタに選択的に結合されるように構成される。凹部は、第1形状を有することが可能であり、ハウジングは、第1形状に対応する第2形状を有することが可能であり、その結果、第1および第2コネクタが結合されるときに、患者データ記憶装置のハウジングは、凹部内に少なくとも部分的に受容される。第1および第2形状は、不規則であることが可能であり、患者データ記憶装置は、患者データ記憶装置が期待される種類および/または製造元のものであることを確認するために透析システムによって判読可能な確認コードを有することが可能である。
【0067】
本発明の別の態様では、腹膜透析を提供する方法は、第1圧力で患者の腹膜腔に対して透析液を供給するかまたは引き戻すこと、および、透析液移動の患者感覚を最小限にするために、透析液が供給するかまたは引き戻される圧力を調整することを含む。一実施形態では、圧力は、腹膜透析治療の同じ導入または空のサイクル中に、および/または、腹膜透析治療の異なる導入または空のサイクル内に調整されることが可能である。例えば、患者から透析液を引き戻す際に、透析液が引き戻される圧力は、腹膜腔内に残った透析液の体積が閾値体積以下に低下するときに下げられることが可能である。導出サイクルの終端部近傍に圧力(負圧または真空)を低下させることは、患者が透析液の引き戻しの際に持つことがある感覚を減少させることが可能である。
【0068】
本発明の別の態様では、腹膜透析を提供する方法は、腹膜透析の第1治療中に再使用可能なサイクラ装置を使用して患者の腹膜腔に第1透析液を供給すること、第1治療の直後の腹膜透析の第2治療中に再使用可能なサイクラ装置を使用して患者の腹膜腔に第2透析液を供給することを含み、第2透析液は、第1透析液に対して異なる化学組成を有する。異なる透析液は、サイクラに接続された(例えば、サイクラに取り付けられたカセットを介して)2つ以上の透析液容器からの液体材料を混合することによって生成されることが可能である。透析液容器は、サイクラによって、例えば、バーコード、RFIDタグ、または他の印を読み取ることによって、自動的に特定されることが可能である。
【0069】
本発明の別の態様では、医療用点滴システムは、該システムの構成要素のうちの少なくとも幾つかを包囲するハウジングと、該ハウジングに取り付けられ、ハウジングに取外し可能に取り付けられることが可能な流体運搬用カセットの動作を制御するように構築および配置された制御面とを備える。制御面は、流体の圧送およびカセットのバルブ動作を制御するように配置された複数の移動可能な部分を有することが可能であり、移動可能な部分のうちの少なくとも1つは、移動可能な部分近傍の領域から流体を取り出すように配置された付随する真空ポートを有することが可能である。
【0070】
一実施形態では、制御面は、1枚の弾性を持った高分子材料を備え、移動可能な部分のそれぞれは、付随する真空ポートを有することが可能である。別の実施形態では、カセットは、制御面に隣接して位置することが可能な膜を備え、真空ポートは、膜と制御面との間の空間から流体を取り除くように配置される。液体センサは、例えば、膜が断裂した場合に、真空ポートに引き込まれる液体を検出するように配置されることが可能であり、流体がカセットから漏れることを可能にする。
【0071】
本発明の別の態様では、APDシステムにおけるポンプなどのポンプによって移動される流体の体積は、圧力測定値および或る既知の室内体積および/またはライン内体積に基づいて判断されることが可能であるが、流量計、重量などによる流体の直接的な測定値には基づかない。一実施形態では、ポンプ室の容積を変化させる可動要素を有したポンプ室の容積は、ポンプ室および参照室の両方が互いから分離されている間、ポンプ室内の圧力を測定することおよび参照室内の圧力によって判断されることが可能であり、2室が流体接続された後で、それらの室内圧力は、等しくなることが可能である。一実施形態では、圧力均一化は、断熱で生じると想定されることがあり、例えば、断熱の圧力均一化処理に基づくシステムの数学的モデルが、ポンプ室容積を判断するために使用されることが可能である。別の実施形態では、2室が流体接続された後で測定された圧力は、完全な均一化が生じる前に一度に測定されることが可能であり、従って、2室が流体接続された後で測定されたポンプ室および参照室に対する圧力は、等しくないことがあるが、依然としてポンプ室容積を判断するために使用されることが可能である。このアプローチは、最初および最終の圧力の測定間の時間を減少させることが可能であり、それによって、熱伝導が生じている時間を減少させ、ポンプ室容積を判断するために使用される断熱モデルを与えられた場合に導入されることがある誤差を減少する。
【0072】
本発明の一態様では、ポンプによって移動される流体の体積を判断する方法は、ポンプ制御室が参照室から分離されるときに、ポンプ制御室の第1圧力を測定することを含む。ポンプ制御室は、ポンプ膜または隔膜などのポンプの一部の動作に基づいて少なくとも部分的に変化する容積を有することが可能である。第2圧力は、参照室がポンプ制御室から分離されるときに、参照室に対して測定されることが可能である。参照室は、既知の容積を有することが可能である。参照室およびポンプ制御室を流体接続した後のポンプ制御室に関連づけられた第3圧力を測定することが可能であるが、その測定は、ポンプ制御室および参照室との間の実質的な圧力均一化が生じる前に生じることがある。同様に、参照室およびポンプ制御室を流体接続した後の参照室に関連づけられた第4圧力を測定することが可能であるが、それはポンプ制御室および参照室との間の実質的な圧力均一化が生じる前である。ポンプ制御室の容積は、第1、第2、第3、おとび第4測定圧力に基づいて判断されることが可能である。
【0073】
一実施形態では、第3および第4圧力は、略同じ時点で測定され、第3および第4圧力は、互いに実質的に等しくない。例えば、一旦ポンプ制御室および参照室が流体接続されると、ポンプ制御室および参照室内の圧力均一化が均一化期間後に生じることが可能であるが、第3および第4圧力は、均一化期間の約10%~50%である、ポンプ制御室および参照室が流体接続された後で、一度に測定されることが可能である。このように、第3および第4圧力は、2室内の圧力が完全に等しくなるずっと前に(時間的に)測定されることが可能である。別の実施形態では、第3および第4圧力は、2室内の圧力が約50~70%の均一化に達したとき、例えば、2室内の圧力が均一化圧力値の約50~70%の範囲内にある初期値から変化したときに、一度に測定されることが可能である。このように、第1および第2圧力の測定値と第3および第4圧力の測定値との間の時間を最小限することが可能である。
【0074】
別の実施形態では、ポンプ制御室の容積を判断するためのモデルは、第1および第2圧力が、分離されたポンプ制御室および参照室に対して測定される時点から、第3および第4圧力が測定される時点まで、断熱系が存在するという想定を組み込むことが可能である。
【0075】
ポンプによって移動される流体の体積を判断することは、第1、第2、第3、および第4圧力を測定するステップと、判断するステップとは、ポンプ制御室用の2つの異なる容積を判断するためのポンプ膜の2つの異なる位置に対して行なわれることが可能である。2つの異なる容積間の差は、ポンプによって供給される流体の体積を表わすことが可能である。
【0076】
上述したように、本発明のこの態様は、ポンプが使い捨て式のカセットの一部であり、ポンプ制御室が透析処置で使用される透析機の一部であるシステムなどの任意の適切なシステムで使用されることが可能である。
【0077】
一実施形態では、第1および/または第2圧力は、ポンプ制御室または参照室内の圧力が(適切なように)以前安定していた値から最初に変化し始める時点と一致するように複数の圧力測定値から選択されることが可能である。例えば、この時点は、測定された圧力の複数の連続するセットに対して最近似線がいつ最初に一定の傾斜から逸れるかの判断に基づいて特定されることが可能である。このアプローチは、ポンプ容積判断における誤差を減少しつつ、可及的に遅い時点のポンプ制御室および参照室の初期圧力を特定するのを補助することが可能である。
【0078】
別の実施形態では、或る技術が、第3および第4圧力が測定される最適な時点を特定するために使用されることが可能である。例えば、ポンプ制御室の複数の圧力値が、ポンプ制御室および参照室が流体接続された後で測定されることが可能であり、容積値の複数の変化が、ポンプ制御室の複数の圧力値に基づいてポンプ制御室に対して判断されることが可能である。容積値の複数の変化のそれぞれは、特有の時点とポンプ室に対して測定された圧力値に対応することが可能である。この場合、容積値の変化は、ポンプ制御室および参照室を当初分離していたバルブまたは他の構成要素に存在する仮想ピストンの移動によるものであるが、バルブまたは他の構成要素の開口を移動する。このように、ポンプ室は、実際にはサイズまたは容積を変化させないが、むしろ、容積の変化は、互いに当初異なっていたポンプ室および参照室内の圧力による仮想条件である。同様に、参照室の複数の圧力値は、ポンプ制御室および参照室が流体接続された後で測定されることが可能であり、参照室に対する容積値の複数の変化は、参照室に対する複数の圧力値に基づいて判断されることが可能である。容積値の複数の変化のそれぞれは、特有の時点および参照室に対して測定された圧力値に対応することが可能であり、ポンプ室の容積値の変化のように、仮想ピストンの移動の結果である。ポンプ制御室および参照室の体積値の変化間の複数の差の値が判断されることが可能であり、それぞれの差の値は、ポンプ制御室の容積値の変化および参照室の容積値の変化に対応して判断される。つまり、差の値が判断される容積値の変化の対は、同じまたは実質的に同じ時点に対応する。差の値は、解析されることが可能であり、最小の差の値(または所望の閾値以下である差の値)は、第3および第4圧力が測定されるべき時点を示すことが可能である。このように、第3および第4圧力値は、ポンプ制御室内圧力値および参照室内圧力値とそれぞれ等しいと特定されることが可能であり、それらは最小または閾値以下の差の値に対応する。
【0079】
別の実施形態では、測定された圧力は、ポンプ制御室および参照室内の気体の圧力であり、ポンプ制御室および参照室内の圧力の均一化は、断熱的に生じると想定され、ポンプ制御室と参照室との間の圧力均一化は、ポンプ制御室および参照室内の気体の体積の変化は等しいが反対方向であることを含むと想定され、第4圧力測定値のときの参照室内の気体の体積は、参照室の既知の容積ならびに第2および第4圧力から演算される。参照室内の気体の体積の変化は、参照室の既知の容積と、第4圧力測定値のときの参照室内の気体の体積の演算値との間の差であると想定されることが可能である。また、ポンプ制御室内の気体の体積の変化は、ポンプ制御室の初期容積と、第3圧力測定値のときのポンプ制御室内の気体の体積との間の差であると想定されることが可能であり、ポンプ制御室内の気体の体積の変化は、参照室内の気体の体積の変化と等しいが反対である。
【0080】
本発明の別の態様では、ポンプによって移動される流体の体積を判断する方法は、可動膜によってポンプ制御室から分離されたポンプ室と、ポンプ制御室に流体接続可能な参照室とを有する流体ポンプ装置を設けること、ポンプ制御室の第1圧力を調整して膜を動作させ、それによってポンプ室内の流体を移動させること、ポンプ制御室から参照室を分離して、ポンプ制御室内の圧力とは異なる参照室の第2圧力を確立すること、参照室およびポンプ制御室を流体接続して、ポンプ制御室および参照室内の圧力均一化を開始させること、および、第1および第2圧力と、ポンプ制御室および参照室内の圧力が断熱で均一化を開始するという想定に基づいてポンプ制御室の容積を判断することを含む。
【0081】
一実施形態では、ポンプ制御室および参照室のそれぞれの第3および第4圧力は、参照室およびポンプ制御室を流体接続した後で測定されることが可能であり、第3および第4圧力は、ポンプ制御室の容積を判断するために使用されることが可能である。第3および第4圧力は、互いに実質的に等しくないことがある。上述と同様に、調整するステップ、分離するステップ、流体接続するステップ、および判断するステップは、繰り返されることが可能であり、ポンプ制御室に対して判断された2つの容積間の差が判断されることが可能であり、その差は、ポンプによって供給される流体の体積を表わす。
【0082】
別の実施形態では、ポンプは使い捨て式のカセットの一部であり、ポンプ制御室は、透析処置で使用される透析機の一部である。
本発明の別の態様では、医療用点滴システムは、ポンプ制御室と、該ポンプ制御室に関連づけられた制御面であって、該制御面の少なくとも一部が、ポンプ制御室内の圧力変化に応じて移動可能であることと、制御面に隣接して配置された少なくとも1つのポンプ室を有し、少なくとも1つのポンプ室内の流体が制御面の一部の動作に応じて移動するように配置された流体運搬用カセットと、ポンプ制御室に流体接続可能な参照室と、ポンプ制御室内の圧力を調整するように配置され、従って流体運搬用カセットのポンプ室内の流体の移動を制御する制御システムとを備える。制御システムは、ポンプ制御室が参照室から分離されるときに、ポンプ制御室の第1圧力を測定し、参照室がポンプ制御室から分離されるときに、参照室の第2圧力を測定し、ポンプ制御室および参照室を流体接続し、参照室およびポンプ制御室を流体接続した後で、ポンプ制御室および参照室にそれぞれ関連づけられた第3および第4圧力を測定し、第1、第2、第3、および第4の測定された圧力と、ポンプ制御室および参照室が流体接続されるときに断熱的に生じるようなポンプ制御室および参照室内の圧力均一化を規定する数学的モデルとに基づいて、ポンプ制御室の容積を判断するように配置されることが可能である。
【0083】
一実施形態では、第3および第4圧力は、互いに実質的に等しくない。例えば、第3および第4圧力は、ポンプ制御室および参照室の実質的な圧力均一化に先立って測定されることが可能である。
【0084】
本発明の別の態様では、ポンプによって移動される流体の体積を判断する方法は、ポンプ制御室が参照室から分離されるときに、ポンプ制御室の第1圧力を測定することであって、ポンプ制御室が、ポンプの一部の動作に基づいて少なくとも部分的に変化する容積を有すること、参照室がポンプ制御室から分離されるときに、参照室の第2圧力を測定すること、参照室およびポンプ制御室を流体接続した後で、ポンプ制御室および参照室の両方に関連づけられた第3圧力を測定すること、および、第1、第2、および第3の測定された圧力に基づいてポンプ制御室の容積を判断すること含む。
【0085】
一実施形態では、第3圧力は、ポンプ制御室および参照室の完全な圧力均一化が完了した後で測定されることが可能である。一実施形態では、ポンプ室容積を判断するために使用されるモデルは、ポンプ室と参照室との間の圧力均一化における断熱系を想定することが可能である。
【0086】
本発明の一態様では、ポンプ室内の空気の存在を判断する方法は、ポンプ制御室は参照室から分離されるときに、ポンプ制御室内の圧力を測定することであって、ポンプ制御室が、既知の容積を有し、少なくとも液体で部分的に充填されるポンプ室から膜によって分離されること、参照室がポンプ制御室から分離されるときに、参照室内の圧力を測定することであって、参照室が、既知の容積を有すること、参照室およびポンプ制御室を流体接続した後で、2室内の圧力が均一化される時点に先立って圧力を測定すること、および、測定された圧力および既知の容積に基づいてポンプ室の気泡の存在または不在を判断することを含む。
【0087】
一実施形態では、気泡の存在または不在を判断するために使用されるモデルは、分離されたポンプ制御室および参照室に対して圧力が測定される時点から、2室が流体接続された後の時点までの断熱系を想定する。別の実施形態では、ポンプ制御室内の圧力は、ポンプ制御室の壁に向かって引っ張られる膜によって測定される。
【0088】
本発明の別の態様では、自動腹膜透析システムは、少なくとも1つのポンプ室を具備した使い捨て式の流体運搬用カセットに結合されるように構築および配置された再使用可能なサイクラを備えている。使い捨て式の流体運搬用カセットは、第1押し出しチューブを介して患者の腹膜と、第2押し出しチューブを介して第2ソースおよび/または送り先(透析液容器ラインなど)と流体連通して接続されるように構成されることが可能である。閉塞部が、第2押し出しチューブを閉塞しないまま、第1押し出しチューブを選択的に閉塞するようにサイクラ内に構成および配置されることが可能である。一実施形態では、閉塞部は、患者ライン、導出ライン、および/またはヒータバッグ・ラインなどの複数の押し出しチューブを閉塞することができる。カセットは、本体の第1側の凹部として形成された少なくとも1つのポンプ室と流体用の複数の流体経路とを持った概して平面の本体と、第1押し出しチューブへの接続のために配置された本体の第1端に配置された患者ライン・ポートと、第1端の反対の本体の第2端に配置され、第2押し出しチューブへの接続のために配置された透析液ライン・ポートとを有することが可能である。閉塞部は、第2押し出しチューブを閉塞しないまま、第1チューブおよび第3押し出しチューブ(例えば、導出用の)を選択的に閉塞するようにサイクラ内に構成および配置されることが可能である。
【0089】
別の実施形態では、閉塞部は、互いに枢動可能に接続された第1および第2の対向する閉塞部材と、第1および第2閉塞部材の少なくとも一方に接続されるか、または、第1および第2閉塞部材の少なくとも一方の少なくとも一部を具備したチューブ接触部材と、第1および第2閉塞部材の少なくとも一方に力を加えるように構築および配置された力アクチュエータとを備えている。力アクチュエータによる力の付与は、チューブの閉塞と開位置との間でチューブ接触部材を移動させることが可能である。閉塞部は、力アクチュエータによって閉塞部材に力が加えられない場合であっても、オペレータがチューブ接触部材をチューブ閉塞位置から開位置に手動で移動させることを可能にするように構成および配置された解放部材を備えることが可能である。力アクチュエータは、第1および第2閉塞部材の両方を曲げるのに十分な力を加えることが可能であり、その結果、第1および第2閉塞部材を曲げるための力アクチュエータによる力の付与に際して、チューブ接触部材は、チューブの閉塞と開位置との間で動作することが可能である。閉塞部材は、対向する第1および第2端に共に枢動可能に接続された板バネであること可能であり、チューブ接触部材は、第1端で板バネに接続されたピンチヘッドであることが可能である一方、板バネの第2端は、閉塞部が接続されるハウジングに直接的または間接的に取り付けられることが可能である。一実施形態では、力アクチュエータは、第1および第2閉塞部材間に配置された膨張式の空気袋を備える。力アクチュエータは、第1および第2閉塞部材が対向する領域における第1および第2閉塞部材間の距離を増大させることが可能であり、その結果、チューブ閉塞と開位置との間でチューブ接触部材を移動させる。一実施形態では、力アクチュエータは、チューブ接触部材をチューブ閉塞位置から開位置に移動させるために閉塞部材の一方または両方を曲げることが可能である。
【0090】
本発明の様々な態様が上述され、例示の実施形態を参照して以下に記述される。本発明の様々な態様は、単独でおよび/または本発明の他の態様との任意の適切な組合せで使用されることが可能であると理解されるべきである。例えば、ここで記述されるポンプ容積判断の特徴部は、記述される特定の特徴部または任意の他の適切なポンプ構成を持った液体運搬用カセットで使用されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
本発明の態様は、同様の符号が同様の要素を参照する次の図において少なくとも部分的に示される例示の実施形態を参照して下に記述される。
図1】本発明の一又は複数の態様を組み込んだ自動腹膜透析(APD)システムの模式図。
図1A図1に示された透析液供給セットに対する代替構成を示している。
図2図1のAPDシステムとの使用のための例示のセットの模式図。
図3】第1実施形態におけるカセットの分解斜視図。
図4図3における線4-4に沿ったカセットの断面図。
図5】例示の実施形態における予め形成されたポンプ室部分を有した、膜を形成するために使用されることがある真空型の斜視図。
図6図3のカセット本体の正面図。
図7】例示の実施形態における2つの異なるスペーサ配置を含むカセット本体の正面図。
図8図3のカセット本体の後方斜視図。
図9図3のカセット本体の背面図。
図9-1A】患者ライン状態検出器または液位検出器の典型的な構成の前方斜視図。
図9-1B】患者ライン状態検出器または液位検出器の後方斜視図。
図9-2】プリント基板に表面実装された3つのLEDおよび光学検出器のレイアウト斜視図。
図9-3】検出器回路基板に取り付けられた3つのLEDおよび光学検出器の平面図。
図9-4】プリント基板および透明または半透明のプラスチック製インサートを示す図9-1の検出器の分解斜視図。
図9-5】液位検出器の代替構成の斜視図。
図9-6】未搭載のオーガナイザ(如何なる透析液ラインも不在)の前方斜視図。
図9-7】図9-6のオーガナイザの背面図。
図9-8】複数の透析液ラインと、患者ラインと、導出ラインとを備えたオーガナイザの斜視図。
図9-9】オーガナイザ・クリップの斜視図。
図9-10】オーガナイザ・クリップ・レシーバの斜視図。
図9-11】サイクラに付随するドアラッチ・センサ・アセンブリの斜視図。
図9-11a】図9-11のドアラッチ・センサ・アセンブリの断面図。
図9-12】準備済みおよび未準備の患者ラインを特定するための、図9-1の液位検出器の能力を示すグラフ。
図9-13】直交配置LEDに対する、角度付きLEDを使用して液体検出を比較する光学センサによって収集された測定値を示すグラフ。
図9-14】検出器内のチューブ区画の存在および不在を特定する図9-1の液位検出器の能力を示すグラフ。
図10図1のAPDシステムの斜視図(サイクラのドアが開位置にある)。
図11図10におけるサイクラのドアの内側の斜視図。
図11-1】第1実施形態におけるキャリッジの斜視図。
図11-2】図11-1のキャリッジに搭載された透析液ラインの拡大斜視図。
図11-3】オープン特定タグの斜視図。
図11-4】自動IDカメラ基板に取り付けられた自動IDカメラを備えるキャリッジ駆動部アセンブリの斜視図。
図11-5】キャップ・ストリッパのストリッパ要素に対する実施形態の斜視図。
図11-6】キャリッジ駆動部アセンブリ内の図11-5のストリッパ要素の位置を示す、図11-4のキャリッジ駆動部アセンブリの前方斜視図。
図11-7a】図11-5のストリッパ要素の一部の斜視図(スパイク・キャップが配置されている)。
図11-7b】図11-5のストリッパ要素の一部の斜視図(透析液ライン・キャップがスパイク・キャップ上に配置されている)。
図11-7c】図11-5のストリッパ要素の一部の斜視図(スパイク・キャップがない状態のセンサ素子およびロッカ・アームを示している)。
図12】第1実施形態におけるキャリッジ駆動部アセンブリおよびキャップ・ストリッパの右前方斜視図。
図13図12のキャリッジ駆動部アセンブリおよびキャップ・ストリッパの左前方斜視図。
図14図12のキャリッジ駆動部アセンブリの部分的な背面図。
図15】第2の例示の実施形態におけるキャリッジ駆動部アセンブリの後方斜視図。
図16図15のキャリッジ駆動部アセンブリおよびキャップ・ストリッパの左後方斜視図。
図17】例示の実施形態におけるキャップ・ストリッパ要素の左前方斜視図。
図18図17のキャップ・ストリッパ要素の右前方斜視図。
図19図17のキャップ・ストリッパ要素の正面図。
図20図19における線20-20に沿った断面図。
図21図19における線21-21に沿った断面図。
図22図19における線22-22に沿った断面図。
図23】例示の実施形態における透析液ラインのコネクタ端部の拡大分解図。
図24図10のサイクラに搭載されているカセットおよび透析液ラインの模式図。
図25図10のサイクラのドアのそれぞれの位置への配置後のカセットおよび透析液ラインの模式図。
図26】サイクラのドアが閉じられた後のカセットおよび透析液ラインの模式図。
図27】スパイク・キャップに係合している透析液ラインの模式図。
図28】スパイク・キャップおよび透析液ライン・キャップに係合するキャップ・ストリッパの模式図。
図29】カセットから遠ざかる移動の後の、キャップおよびスパイク・キャップが取り付けられた透析液ラインの模式図。
図30】透析液ライン・キャップおよびスパイク・キャップから遠ざかる移動の後の透析液ラインの模式図。
図31】透析液ライン・キャップおよびスパイク・キャップと共に後退するキャップ・ストリッパの模式図。
図32】カセットのスパイクに係合している透析液ラインの模式図。
図33】カセットの対応するスパイクに対して示された、5段階の透析液ライン接続動作を持ったカセットの断面図。
図34】ポンプ室に隣接したカセットの後ろ側のための異なる配置を含む別の例示の実施形態におけるカセットの背面図。
図35】例示の実施形態におけるカセットのスパイクの端面図。
図35A】カセットのスパイクの他の実施形態の斜視図。
図35B図35Aに示されたスパイク上に嵌合するように構成されたスパイク・キャップの実施形態を示している。
図35C図35Bに示されたスパイク・キャップの断面図。
図36図10の実施形態におけるカセットとの相互作用のためのサイクラの制御面の正面図。
図36A】サイクラの制御面の実施形態の正面図および選択された断面図。
図37図36のインタフェース用のアセンブリの分解図。
図38】例示の実施形態における閉塞部の分解斜視図。
図39図38の閉塞部の部分的な分解斜視図。
図40】空気を抜かれた状態の空気袋を備えた図38の閉塞部の平面図。
図41】膨張した状態の空気袋を備えた図38の閉塞部の平面図。
図42】例示の実施形態における、カセットのポンプ室と、付随する制御構成要素と、流入経路/流出経路との模式図。
図43図42の実施形態に対して、バルブX2が開かれる前の時点から、バルブX2が開かれて暫く後の時間までの、制御室および参照室に対する例示の圧力値のプロット。
図44図10のサイクラの内部区画の斜視図(ハウジングの上部が取り外されている)。
図45】APDシステム用の制御システムの典型的な実施を図示する模式的ブロック図。
図46図45の制御システム用のユーザ・インタフェース・コンピュータおよび自動化コンピュータの例示のソフトウェア・サブシステムの模式的ブロック図。
図47】例示の実施形態におけるAPDシステムの様々なサブシステムと処理との間の情報のフロー。
図48図46の治療サブシステムの動作を図示している。
図49】治療の初期導入および透析部分中の治療モジュール処理の典型的な相互作用を図示するシーケンス図。
図50】APDシステム用のタッチスクリーン・ユーザ・インタフェース上に表示されることが可能な警告および警報に関する典型的なスクリーン・ビュー。
図51】APDシステム用のタッチスクリーン・ユーザ・インタフェース上に表示されることが可能な警告および警報に関する典型的なスクリーン・ビュー。
図52】APDシステム用のタッチスクリーン・ユーザ・インタフェース上に表示されることが可能な警告および警報に関する典型的なスクリーン・ビュー。
図53】APDシステム用のタッチスクリーン・ユーザ・インタフェース上に表示されることが可能な警告および警報に関する典型的なスクリーン・ビュー。
図54】APDシステム用のタッチスクリーン・ユーザ・インタフェース上に表示されることが可能な警告および警報に関する典型的なスクリーン・ビュー。
図55】APDシステム用のタッチスクリーン・ユーザ・インタフェース上に表示されることが可能な警告および警報に関する典型的なスクリーン・ビュー。
図56】例示の実施形態における誤差状態検出および回復のための構成要素の状態および動作を図示している。
図57】APDシステム用のUIビュー・サブシステムの典型的なモジュールを示している。
図58】システム・セットアップ、治療ステータス、表示設定、遠隔・アシスタンス、およびパラメータ設定に関する、例示の実施形態においてユーザ情報を提供し、ユーザ入力を受け入れる例示のユーザ・インタフェース・スクリーン。
図59】システム・セットアップ、治療ステータス、表示設定、遠隔・アシスタンス、およびパラメータ設定に関する、例示の実施形態においてユーザ情報を提供し、ユーザ入力を受け入れる例示のユーザ・インタフェース・スクリーン。
図60】システム・セットアップ、治療ステータス、表示設定、遠隔・アシスタンス、およびパラメータ設定に関する、例示の実施形態においてユーザ情報を提供し、ユーザ入力を受け入れる例示のユーザ・インタフェース・スクリーン。
図61】システム・セットアップ、治療ステータス、表示設定、遠隔・アシスタンス、およびパラメータ設定に関する、例示の実施形態においてユーザ情報を提供し、ユーザ入力を受け入れる例示のユーザ・インタフェース・スクリーン。
図62】システム・セットアップ、治療ステータス、表示設定、遠隔・アシスタンス、およびパラメータ設定に関する、例示の実施形態においてユーザ情報を提供し、ユーザ入力を受け入れる例示のユーザ・インタフェース・スクリーン。
図63】システム・セットアップ、治療ステータス、表示設定、遠隔・アシスタンス、およびパラメータ設定に関する、例示の実施形態においてユーザ情報を提供し、ユーザ入力を受け入れる例示のユーザ・インタフェース・スクリーン。
図64】システム・セットアップ、治療ステータス、表示設定、遠隔・アシスタンス、およびパラメータ設定に関する、例示の実施形態においてユーザ情報を提供し、ユーザ入力を受け入れる例示のユーザ・インタフェース・スクリーン。
図65】APDシステムとの間で患者データを転送する典型的な患者データ・キーおよび関連するポートを示している。
図65A】代替のハウジング構成を備えた患者データ・キーを示している。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本発明の態様は、腹膜透析システムに関して記述されるが、本発明の或る態様は、静脈内点滴システムまたは体外血流システムなどの導入システム、胃、腸管、膀胱、胸膜腔、または他の身体もしくは臓器腔用の洗浄および/または流体交換システムを含む他の医療用途で使用されることができる。このように、本発明の態様は、特に腹膜透析または一般に透析での使用に限定されるものではない。
[APDシステム]
図1は、本発明の一又は複数の態様を組み込むことが可能な自動腹膜透析(APD)システム10を示している。図1に示されるように、例えば、この例示の実施形態におけるシステム10は、透析液供給セット12(或る実施形態では、使い捨て式であることができる)と、透析液容器20(例えば、バッグ)によって供給される液体を圧送するために供給セット12と相互作用するサイクラ14と、APD処置を行なうための処理を管理する制御システム16(例えば、プログラムされたコンピュータまたは他のデータプロセッサ、コンピュータ・メモリ、ユーザまたは他の装置に情報を提供し、ユーザまたは他の装置から入力を受信するインタフェース、一又は複数のセンサ、アクチュエータ、リレー、空気圧ポンプ、タンク、電源、および/または他の適切な構成要素であり、ユーザ制御入力を受けるための幾つかのボタンだけが図1に示されているが、制御システムの構成要素に関するさらなる詳細が以下に提供される)とを備える。この例示の実施形態では、サイクラ14および制御システム16は、共通のハウジング82に付随されているが、2つ以上のハウジングに関連づけられることが可能である、および/または、互いから分離されることが可能である。サイクラ14は、テーブル面または家庭で通常見受けられる他の比較的小さな面での操作に適した、コンパクトな設置面積を有することが可能である。サイクラ14は、例えば、ハウジング82の対向面のハンドルを介して手によって担持される、軽量且つポータブルであることが可能である。
【0093】
この実施形態におけるセット12は、一回使用の使い捨て式のアイテムであるように意図されるが、これに代えて、一又は複数の再使用可能な構成要素を有することが可能であるか、または、その全体が再使用可能であることがある。ユーザは、各APD治療セッションを開始する前に、例えば、サイクラ14の前方ドア141内にカセット24を取り付けることによって、セット12の様々なライン中の流体の流れを圧送および制御するためにカセット24と相互作用するサイクラ14にセット12を関連づける。例えば、透析液は、APDを達成するために患者との間で圧送されることが可能である。治療後に、ユーザは、サイクラ14からセット12の構成要素のすべてまたは一部を取り外すことが可能である。
【0094】
本技術分野では公知なように、使用に先立ち、ユーザは、接続部36でその人の留置腹膜カテーテル(図示せず)にセット12の患者ライン34を接続することが可能である。一実施形態では、サイクラ14は、様々なサイズの患者ライン34を有するもののような、一又は複数の様々な種類のカセット24と共に動作するように構成されることが可能である。例えば、サイクラ14は、成人患者での使用のためのサイズとされた患者ライン34を備えた第1種類のカセットと、幼児または小児の使用のためのサイズとされた患者ライン34を備えた第2種類のカセットと共に動作するように配置されることが可能である。小児患者ライン34は、より短く、ラインの容積を最小限にするように成人ラインよりも小さな内径を有することが可能であり、透析液のより制御された供給を可能にし、セット12が連続する導出および導入サイクルに使用されるときに、小児患者に比較的大きな体積の使用済み透析液を戻さないように補助する。ライン26によってカセット24に接続されるヒータバッグ22は、サイクラ14のヒータ容器受容部分(この場合、トレイ)142上に配置されることが可能である。サイクラ14は、ヒータバッグ22に新しい透析液を(カセット24を介して)圧送することが可能であり、その結果、透析液は、ヒータ・トレイ142によって、例えば、約37℃の温度にトレイ142に関連づけられた電気抵抗加熱要素によって加熱される。加熱された透析液は、カセット24および患者ライン34を介してヒータバッグ22から患者に提供されることが可能である。代替の実施形態では、透析液は、カセット24を出入りする際に、ヒータ・トレイ142に接触するチューブまたは直列流体ヒータ(カセット24内に設けられることが可能である)を透析液が通過することによって、患者への通り道で加熱されることができる。使用済み透析液は、患者ライン34を介して患者からカセット24に、そして、導出ライン28に圧送されることが可能であり、それは、導出ライン28の一又は複数の枝別れ部を通じた流れを調整する一又は複数のクランプを備えることが可能である。この例示の実施形態では、導出ライン28は、専用の導出レセプタクルに導出ライン28を接続するコネクタ39と、試験または他の解析のために使用済み透析液のサンプルを取る導出サンプル・ポート282とを備えることが可能である。ユーザは、ドア141内の一又は複数の容器20のライン30をさらに取り付けることが可能である。ライン30は、連続またはリアルタイムの透析液準備システムに接続されることも可能である(ライン26,28,30,34は、可撓性チューブおよび/または適切なコネクタおよび望まれるように他の構成要素(ピンチバルブなど)を備えることが可能である)。容器20は、導入用の減菌腹膜透析液または他の材料(例えば、水と混合するかまたは様々な種類の透析液を混合することによって透析液を作製するためにサイクラ14によって使用される材料)を収容することが可能である。ライン30は、カセット24のスパイク160に接続されることが可能であり、それは取外し可能なキャップによって覆われて図1に示されている。より詳細に下に記述される本発明の一態様では、サイクラ14は、カセット24の一又は複数のスパイク160からキャップを自動的に取り外し、それぞれのスパイク160に透析液容器20のライン30を接続することが可能である。この特徴部は、スパイク160との非減菌アイテムの接触の機会を減らすことによって、感染または汚染の可能性を減少することを補助することが可能である。
【0095】
別の態様では、透析液供給セット12aは、カセット・スパイク160を有さないことがある。これに代えて、図1Aに示されるように、一又は複数の透析液ライン30は、カセット24の入口ポートに恒久的に取り付けられることが可能である。この場合、透析液ライン30はそれぞれ、透析液容器または透析液バッグ20への手動接続用の(キャップ付きの)スパイク・コネクタ35を有することが可能である。
【0096】
様々な接続がなされた状態で、制御システム16は、APD処置に典型的な一連の導入、滞留、および/または、導出サイクルを通じてサイクラ14を調整することが可能である。例えば、導入段階中に、サイクラ14は、加熱のために一又は複数の容器20(または他の透析液供給源)からヒータバッグ22に透析液を(カセット24によって)圧送することが可能である。その後、サイクラ14は、カセット24を通じてヒータバッグ22から、患者ライン34を介して患者の腹膜腔に加熱した透析液を導入することが可能である。滞留段階に続いて、サイクラ14は、サイクラ14がライン34を介して(再びカセット24によって)患者から使用済み透析液を圧送し、導出ライン28を介して近傍のドレイン(図示せず)に使用済み透析液を排出する、導出段階を始めることが可能である。
【0097】
サイクラ14は、例えば、サイクラ14が必ずしも重力流システムではないので、必ずしも透析液容器20および/またはヒータバッグ22をサイクラ14の上方の規定された頭高に配置されることを必要としない。これに代えて、サイクラ14は、患者がサイクラ14よりも上方または下方にいる場合、透析液源容器20がサイクラ14よりも上方、下方、または同じ高さであっても、透析液の重力流を真似ることが可能であるか、または、重力流を適切に制御することが可能である。例えば、サイクラ14は、与えられた処置中に固定された頭高を真似ることができるか、または、サイクラ14は、有効頭高を変更して、処置中に透析液に加えられる圧力を増加または減少させることができる。サイクラ14は、透析液の流量を調整することも可能である。本発明の一態様では、サイクラ14は、患者に供給されるかまたは患者から引き出されるときに、導入または導出動作についての患者の感覚を減少するように、透析液の圧力および/または流量を調整することが可能である。そのような調整は、単一の導入および/または導出サイクル中に生じることがあるか、または、異なる導入および/または導出サイクルに亘って調整されることがある。一実施形態では、サイクラ14は、導出動作の終了間近に患者から使用済み透析液を引き出すために使用される圧力を徐々に低下させることが可能である。サイクラ14が人為的な頭高を確立することが可能であるので、それは特定の生理学と相互作用し、その生理学に嵌合する柔軟性を有するか、または、患者の相対的な高さを変更させることが可能である。
[カセット]
本発明の一態様では、カセット24は、透析液供給ラインに対して別々に閉塞することができる患者および導出ラインを備えることが可能である。つまり、患者ラインとの間の安全な臨界流れは、一又は複数の透析液供給ラインを通じた流れを閉塞する必要なしに、例えば、流れを止めるためにラインを挟むことによって制御されることが可能である。この特徴部は、閉塞が、患者の安全性に殆ど効果がないかまたはまったく効果がない他のラインの閉塞とは反対に、2本のラインだけに対して行なわれることが可能であるので、単純化された閉塞装置を可能にすることがある。例えば、患者または導出ラインの接続部が非接続の場合には、患者および導出ラインを閉塞することが可能ある。しかし、透析液供給源および/またはヒータバッグ・ラインは、流れに対して開いたままであることが可能であり、それによって、サイクラ14に次の透析サイクルの準備をさせる。例えば、患者および導出ラインの個別の閉塞は、一又は複数の容器20からヒータバッグ22または他の透析液容器20にサイクラ14が透析液を圧送し続けることを許容しつつ、患者の安全性を確実にするのを補助することが可能である。
【0098】
本発明の別の態様では、カセットは、カセット一側または一部分に患者、導出、およびヒータバッグ・ラインを、カセットの別の側または部分に(例えば、カセットの反対側に)一又は複数の透析液供給ラインを有することが可能である。そのような構成は、上で議論したような透析液ラインに対する患者、導出、またはヒータバッグ・ラインの個別の閉塞を可能にすることがある。種類または機能によってカセットに取り付けられたラインを物理的に分離することは、或る種類または機能のラインとの相互作用のより効率的な制御を可能にする。例えば、そのような構成は、カセットに先行するまたはカセットから遠ざかるすべてのラインよりも、これらのラインのうちの1本、2本、または3本を閉塞するのに、より少ない力が必要とされるので、単純化された閉塞部設計を可能にすることがある。これに代えて、この構成は、より詳細に下で議論されるように、カセットへの透析液供給ラインのより効果的な自動接続を可能にすることがある。つまり、透析液供給ラインおよびそれぞれの接続部が患者、導出、またはヒータバッグ・ラインから離れて配置される場合、自動化されたキャップ取外しおよび接続装置は、カセット上のスパイクからキャップを取り外し、透析液供給ライン上のキャップを取り外し、患者、導出、またはヒータバッグ・ラインによる干渉なしに、それぞれのスパイクにラインを接続することが可能である。
【0099】
図2は、上述した本発明の態様を組み込むカセット24の例示の実施形態を示している。この実施形態では、カセット24は、概して平面の本体を有し、ヒータバッグ・ライン26、導出ライン28、および患者ライン34は、カセット本体の左端のそれぞれのポートに接続され、カセット本体の右端は、透析液供給ライン30が接続されることがある5つのスパイク160を備えることが可能である。図2に示される構成では、スパイク160のそれぞれは、スパイク・キャップ63によって覆われ、それは、取り外されて、それぞれのスパイクを露出させ、それぞれのライン30への接続を可能にすることが可能である。上述したように、ライン30は、例えば、透析での使用および/または透析液の製剤のために、一又は複数の透析液容器または他の材料源に取り付けられるか、または、サンプリング目的または腹膜平衡試験(PET試験)のために一又は複数の収集バッグに接続されることが可能である。
【0100】
図3および図4は、この例示の実施形態におけるカセット24の分解図(それぞれ斜視図および平面図)を示している。カセット24は、概して平面の形状を有した比較的薄く平坦部材として形成され、例えば、適切なプラスチックから成型されるか、押し出されるか、または形成された構成要素を備えることが可能である。この実施形態では、カセット24は、カセット24用のフレームまたは構造部材として機能し、少なくとも部分的に、様々なフロー・チャネル、ポート、バルブ部分などを形成するベース部材18を備えている。ベース部材18は、適切なプラスチック、またはポリメチル・メタクリレート樹脂(PMMA)アクリルまたは環状オレフィン共重合体/超低密度ポリエチレン(COC/ULDPE)などの他の材料から成型または構成されることが可能であり、比較的剛性があることが可能である。一実施形態では、COC/ULDPEの比は、約85%/15%であることができる。さらに、図3は、ベース部材18に形成された、ヒータバッグ(ポート150)、導出(ポート152)および患者(ポート154)用のポートを示している。これらのポートのそれぞれは、例えば、外側リングまたはスカート158から延びた中央チューブ156または単独の中央チューブなどに、任意の適切な方法で配置されることが可能である。ヒータバッグ、導出および患者ライン26,28,34のそれぞれに対する可撓性チューブは、中央チューブ156に接続され、外側リング158(存在すれば)によって係合されることが可能である。
【0101】
ベース部材18の両側は、少なくとも部分的に、成型、押出し成形、または形成された膜15,16(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)から作られる柔軟性のある重合体フィルム)によって、覆われることが可能である。これに代えて、シートは、例えば、共押出用接着樹脂(CXA)によって共に保持されるポリシクロヘキシレンジメチレンシクロヘキサンジカルボキシレート(PCCE)および/または低密度ポリエチレン(ULDPE)の2層以上の積層体として形成されることが可能である。幾つかの実施形態では、膜厚は、約0.002~0.020インチの厚さの範囲にあることが可能である。好ましい実施形態では、PVCベースの膜の厚さは、約0.012~0.016インチの厚さの範囲にあることが可能であり、より好ましくは約0.014の厚さである。例えば、積層シートなどについての別の好ましい一実施形態では、積層体の厚さは、約0.006~0.010インチの厚さの範囲にあることが可能であり、より好ましくは約0.008インチの厚さである。
【0102】
両方の膜15および16は、カセット24の流体経路の一部を閉じるかまたはこの一部を形成するように機能するだけでなく、動作または操作されて、バルブ・ポートを開/閉する、および/または、カセット24内の流体を移動させるポンプ隔膜、隔壁、または壁の一部として機能することが可能である。例えば、膜15および16は、ベース部材18上に配置され、流体がカセット24から漏れるのを防止するためにベース部材18の周囲のリムを密閉することが可能である(例えば、熱、接着剤、超音波溶接、または他の手段によって)。膜15は、例えば、様々なチャネルを形成する、他の、ベース部材18の内壁に接合されることが可能あるか、または、カセット24がサイクラ14内に適切に取り付けられる際に、壁およびベース部材18の他の特徴部と密着するように押し付けられることが可能である。このように、膜15および16の両方は、ベース部材18の周辺リムを密閉することが可能であり、例えば、使用後にサイクラ14から取り外される際に、カセット24からの流体の漏れ防止を補助するが、ベース部材18の他の部分には、接触せずに位置するように配置されることが可能である。一旦サイクラ14に配置されると、カセット24は、対向するガスケットまたは他の部材間で絞られることが可能であり、その結果、膜15および16は、その周囲の内側の領域でベース部材18との密着するように押し付けられ、それによってチャネル、バルブ・ポートなどを互いから適切に密閉する。
【0103】
膜15および16に対する他の構成も可能である。例えば、膜16は、本体18に接合されるかまたは一体に作られた材料からなる剛性があるシートによって形成されることが可能である。このように、膜16は、必ずしも可撓性部材である必要がないか、または、必ずしも可撓性部材を備える必要はない。同様に、膜15は、その表面全体に亘って柔軟である必要はないが、これに代えて、一又は複数の柔軟性のある部分を備えて圧送および/またはバルブ動作を許容し、一又は複数の剛性のがある部分を備えて、例えば、カセット24の流体経路を閉じることが可能である。カセット24は、膜16または膜15を備えず、例えば、サイクラ14が、適切な部材を備えてカセット、制御バルブ、およびポンプ機能などの経路を密閉することも可能である。
【0104】
本発明の別の態様によれば、膜15は、ベース18の対応するポンプ室181の凹部の形状に緊密に倣う形状を有するように形成されたポンプ室部分151(ポンプ膜)を備えることが可能である。例えば、膜15は、ベース部材18のポンプ室凹部に倣う、熱成形された(または形成された)ドーム状の形状151を持った平坦部材として概して形成されることが可能である。予め形成されたポンプ室部分151のドーム状の形状は、例えば、図5に示される種類の真空成形型に亘って膜を加熱および形成することによって構築されることが可能である。図5に示されるように、真空は、金型の壁に沿った多数の孔を通じて適用されることが可能である。これに代えて、金型の壁は、多孔性の気体浸透材料から構築されることができ、それは成型された膜のより均一に滑らかな表面をもたらすことが可能である。このように、膜15がポンプ室181に最大限に移動され、(潜在的に)スペーサ要素50と接触するように移動されるとき(例えば、ポンプ室181から流体を圧送する場合を図4において実線で示すように)、および、膜15がポンプ室181から最大に引き戻されるとき(例えば、ポンプ室181に流体を引き込む場合を図4における破線で示すように)の両方の場合に、膜15の伸張を必要とせずに(または膜15の少なくとも最小限の伸張)、膜15は、ポンプ作用を達成すべくポンプ室181に対して移動することが可能である。膜15の伸張の回避は、圧力サージ、またはシートの伸張による流体供給圧力の他の変化を防止するのを補助する、および/または、ポンプ動作中の圧力変動を最小限にしようとする際のポンプの制御を単純化するのを補助することが可能である。より詳細に下に記述されるように、膜15の故障の可能性の減少(例えば、伸張中の膜15に付与される応力がもたらす膜15の裂けによる)、および/または、ポンプ供給量測定値の正確さの改善、を含む他の利点も見受けられる。一実施形態では、ポンプ室部分151は、ポンプ室181の約85~110%であるサイズを有するように形成される(例えば、容積を規定する)ことが可能であり、例えば、ポンプ室部分151がポンプ室容積の約100%である容積を規定する場合、ポンプ室部分151は、ポンプ室181内に位置し、停止して応力のないまま、スペーサ50に接することが可能である。
【0105】
ポンプ室との間での液体の充填および供給行程を生じさせるために使用される圧力のより優れた制御の提供は、幾つかの利点を有することがある。例えば、導出サイクル中にポンプ室が患者の腹膜腔から流体を取り出すときには、可能な限り最小の負圧を加えることが望ましい場合がある。患者は、充填行程中にポンプによって加えられる負圧のために、部分的に治療の導出サイクル中に不快感を受けることがある。予め形成された膜が充填行程中に加えられる負圧に提供することができる付加的な制御は、患者の不快感を軽減するのを補助することが可能である。
【0106】
多数の他の利点が、カセット・ポンプ室の輪郭に予め形成されたポンプ膜の使用によって実現されることが可能である。例えば、ポンプ室を通じた液体の流量は、一定の圧力または真空を圧送行程の全体に亘って加えることができるので、より均一になることができ、それは、ひいては液体の加熱を制限する処理を単純化することが可能である。さらに、カセット・ポンプ内の温度変化は、膜の変位の動力学、および、ポンプ室内の測定圧の正確さに対して、より小さな影響を与えることがある。加えて、流体ライン内の圧力スパイクを最小限にすることができ、膜の制御(例えば、空気圧)側の圧力変換器によって測定された圧力を、膜のポンプ室側の液体の実際の圧力と相関させることが、より単純になる場合がある。これは、ひいては、治療に先立って患者および流体源バッグのより正確な頭高測定を可能にし、ポンプ室内の空気を検出する感度を改善し、容積測定の正確さを改善することが可能である。さらに、膜を伸張させる必要性の排除は、より大きな容積を有したポンプ室の構築および使用を可能にすることがある。
【0107】
この実施形態では、カセット24は、ベース部材18に形成される一対のポンプ室181を備えている(1つのポンプ室または2つを超えるポンプ室も可能である)。本発明の態様によれば、ポンプ室181の内壁は、互いから離隔され、ポンプ室18の内壁から延びたスペーサ要素50を備えており、膜15の部分がポンプ室181の内壁と接触するのを防止するのを補助する(図4において右側ポンプ室181に示されるように、内壁は、側部181aおよび底部181bによって規定される。スペーサ50は、この実施形態では底部181bから上方に延びるが、側部181aから延びることができるかまたは他の方法で形成されることができる)。ポンプ室の内壁との膜15の接触を防止することによって、スペーサ要素50は、デッドスペース(またはトラップ容積)を提供することが可能であり、それは、ポンプ室181内の空気または他の気体をトラップして、幾つかの状況でポンプ室181から気体が圧送されるのを禁じるのを補助することが可能である。他の場合では、スペーサ50は、ポンプ室181の出口への気体の移動を補助することが可能であり、その結果、気体は、例えば準備中に、ポンプ室181から除去される。また、スペーサ50は、膜15がスペーサ要素50と接触するように押し付けられても、膜15がポンプ室内壁に付着するのを防止する、および/または、流れがポンプ室181を通じて継続することを可能にするのを補助することがある。加えて、もしシートが非均一にポンプ室内壁に接触した場合には、スペーサ50は、ポンプ室の出口ポート(開口187および/または191)の早期遮蔽を防止するのを補助する。スペーサ50の構成および/または機能に関するさらなる詳細は、米国特許第6,302,653号明細書および第6,382,923号明細書において提供されており、それらの両方は参照によってここに援用される。
【0108】
この実施形態では、スペーサ要素50は、或る種の「競技場座席」配置で配置され、その結果、スペーサ要素50は、同心楕円形パターンで配置され、スペーサ要素50の端部は、ポンプ室181内心から距離が離れるほど内壁の底部181bからの高さを増加させ、それによって、半楕円のドーム形状領域を形成する(図4において破線によって示される)。膜15のポンプ室部分151によってスイープされるように意図したドーム状領域を規定する半楕円形領域をスペーサ要素50の端部が形成するようにスペーサ要素50を配置することは、ポンプ室181の意図した行程容積の如何なる減少も最小限にする所望の容積のデッドスペースを可能にすることがある。図3(および図6)で見ることができるように、スペーサ要素50が配置される「競技場座席」配置は、楕円パターンの「通路」または破断部50aを備えることが可能である。破断部(または通路)50aは、流体がポンプ室181から送られる際に、スペーサ要素50間の列(空隙またはデッドスペース)50bの全体に亘って等しい気体レベルを維持するように補助する。例えば、スペーサ要素50が、破断部(または通路)50a、または、液体および空気がスペーサ要素50間を流れることを可能にする他の手段なしに、図6に示される競技場座席配置で配置された場合、膜15は、ポンプ室181の最も外側の周囲に位置したスペーサ要素50上で底に達することが可能であり、この最も外側のスペーサ要素50とポンプ室壁の側部181aとの間の空隙に存在する気体または液体をすべてトラップする。同様に、膜15が任意の2つの隣接したスペーサ要素50上で底に達した場合、要素50間の空隙の如何なる気体および液体もトラップされるようになることが可能である。そのような構成では、圧送行程の終端で、ポンプ室181内心にある空気または他の気体を送ることができる一方で、液体は、外側の列に残る。スペーサ要素50間の空隙の間に流体連通の破断部(または通路)50aまたは他の手段を提供することは、圧送行程中に空隙全体に亘る等しい気体レベルを維持するのを補助し、その結果、空気または他の気体は、液体の体積が実質的に伝えられていなければ、ポンプ室181から出ることを禁じられることが可能である。
【0109】
或る実施形態では、スペーサ要素50および/または膜15は、膜15がスペーサ50に接触するように押し付けられたときに、一般には個々のスペーサ50を包まないかまたはその周囲で変形しないか、または、スペーサ50間の空隙に著しく延びるように配置されることが可能である。そのような構成は、一又は複数の個々のスペーサ要素50を包むかまたはその周囲で変形することによって生じる膜15の如何なる伸張または損傷も減少させることが可能である。例えば、この実施形態では、スペーサ50間の空隙のサイズをその幅がスペーサ50の幅と略等しく作ることが有利であることも分かった。この特徴部は、膜15がポンプ動作中にスペーサ50と接触するように押し付けられる際に、膜15の変形(例えば、スペーサ50間の空隙への膜のたるみ)を防止するのを補助するように示されている。
【0110】
本発明の別の態様によれば、ポンプ室181の内壁は、膜15のポンプ室部分151によってスイープされるように意図された空間(例えば、半楕円形またはドーム状の空間)よりも大きい凹部を規定することが可能である。そのような実例では、一又は複数のスペーサ要素50は、ドーム状領域に延びるのではなく、膜部分151によってスイープされるように意図したそのドーム状領域よりも下に配置されることが可能である。ある実例では、スペーサ要素50の端部は、膜15によってスイープされるように意図したドーム状領域の周囲を規定することが可能である。膜部分151によってスイープされるように意図されたドーム状領域の周囲の外側にまたはこの周囲に隣接してスペーサ要素50を配置することは、多数の利点を有することがある。例えば、一又は複数のスペーサ要素50を、柔軟性のある膜によってスイープされるように意図されたドーム状領域の外側にまたは隣接してスペーサ要素があるように配置することは、上述したように、スペーサと膜との間のデッドスペースを提供しつつ、ポンプ室181の意図した行程容積の如何なる減少も最小限にする。
【0111】
ポンプ室内のスペーサ要素50(もしあれば)は、例えば図7に示される任意の他の適切な方法で配置されることが可能であると理解されるべきである。図7における左側ポンプ室181は、図6のものと同様に配置されたスペーサ50を備えているが、ポンプ室181の略中心を垂直に走る破断部または通路50aは1つだけである。スペーサ50は、図6のもの(つまり、スペーサ50の上部が、図3および図4に示される半楕円形を形成することがある)と同様である凹状形状を規定するように配置されることが可能であるか、または、球形、箱状形状などを形成するように他の適切な方法で配置されることが可能である。図7における右側ポンプ室181は、スペーサ50が空隙50bを伴って垂直に配置され、空隙がスペーサ50間で垂直に配置された実施形態を示している。左側ポンプ室では、右側ポンプ室181のスペーサ50は、半楕円形、球形、箱形、または任意の他の適切に形成された凹部を規定することが可能である。しかし、スペーサ要素50が、固定の高さ、示されるようなものとは異なる空間パターンなどを有することが可能であると理解されるべきである。
【0112】
また、膜15はそれ自体、スペーサ要素、または、スペーサ要素50の代わりにもしくはこれに加えて、リブ、突起、タブ、溝、チャネルなどのような他の特徴を有することが可能である。膜15上のそのような特徴部は、膜15などの付着を防止する、および/または、ポンプ作用中に移動する際に、シートがどのように畳まれるかもしくは変形するかを制御するのを補助するなど、他の特徴を提供するのを補助することが可能である。例えば、膜15上の突起または他の特徴部は、シートが一貫して変形するのを補助して、繰り返されるサイクル中に同じ領域で折り重ならないようにすることが可能である。繰り返されるサイクルで膜15の同じ領域を折り重ねることは、膜15がその折り目領域で早期に故障することを招くことがあり、従って、膜15上の特徴部は、折り目が生じる方法および場所を調整するのを補助することが可能である。
【0113】
この例示の実施形態では、カセット24のベース部材18は、複数の制御可能なバルブ特徴部、流体経路、およびカセット24内の流体の移動を案内する他の構造を規定する。図6は、ベース部材18のポンプ室側の平面図を示しており、それは図3における斜視図でも見られる。図8は、ベース部材18の後ろ側の斜視図を示しており、図9は、ベース部材18の後ろ側の平面図を示している。ポート150,152,および154のそれぞれに対するチューブ156は、ベース部材18に形成されるそれぞれのバルブ・ウェル183と流体連通する。バルブ・ウェル183は、各バルブ・ウェル183を包囲する壁によって、および、ウェル183の周囲の壁との膜15の密閉係合によって、互いから流体的に分離されている。上述したように、膜15は、例えば、サイクラ14に搭載される際に、壁と接触するように押し付けられることによって、各バルブ・ウェル183の周囲の壁(およびベース部材18の他の壁)に密閉係合することが可能である。膜15がバルブ・ポート184と密閉係合するように押し付けられない場合には、バルブ・ウェル183中の流体は、それぞれのバルブ・ポート184に流入することが可能である。このように、各バルブ・ポート184は、バルブ・ポート184に関連づけられた膜15の部分を選択的に動作させることによって開閉されることができるバルブ(例えば、「ボルケーノバルブ」)を規定する。より詳細に下に記述されるように、サイクラ14は、膜15の部分の位置を選択的に制御することが可能であり、その結果、バルブ・ポート(ポート184など)は、様々な流体チャネルおよびカセット24内の他の経路を通じて流れを制御するように開閉されることが可能である。バルブ・ポート184を通じた流れは、ベース部材18の後ろ側に導かれる。ヒータバッグおよび導出(ポート150および152)に関連づけられたバルブ・ポート184については、バルブ・ポート184は、ベース部材18の後ろ側に形成された共通チャネル200に導く。バルブ・ウェル183におけるように、チャネル200は、シート16によって他のチャネルおよびカセット24の経路から分離され、チャネル200を形成するベース部材18の壁と密着する。患者ライン・ポート154に関連づけられたバルブ・ポート184については、ポート184を通じた流れは、ベース部材18の後ろ側の共通チャネル202に導かれる。
【0114】
図6に戻って、スパイク160のそれぞれは(図6ではキャップを外して示されている)、それぞれのバルブ・ウェル185と流体連通し、それらは、壁と、ウェル185を形成する壁との膜15の密閉係合とによって互いから分離される。膜15がポート186との密閉係合にない場合には、バルブ・ウェル185中の流体は、それぞれのバルブ・ポート186に流入することが可能である(繰り返しになるが、各バルブ・ポート186上の膜15の部分の位置は、バルブ・ポート186を開閉するサイクラ14によって制御されることができる)。バルブ・ポート186を通じた流れは、ベース部材18の後ろ側に、そして共通チャネル202に導かれる。このように、本発明の一態様によれば、カセットは、共通のマニホールドまたはカセットのチャネルに接続される複数の透析液供給ライン(または透析液を提供するための材料を供給する他のライン)を有することが可能であり、各ラインは、共通のマニホールドまたはチャネルに対するラインとの間の流れを制御するための対応するバルブを有することが可能である。チャネル202中の流体は、下側ポンプバルブ・ウェル189(図6を参照)に導く開口188を通じてポンプ室181の下側開口187に流入することが可能である。膜15のそれぞれの部分がポート190と密閉係合するように押し付けられない場合には、下側ポンプバルブ・ウェル189からの流れは、それぞれの下側ポンプバルブ・ポート190を通過することが可能である。図9で見ることができるように、下側ポンプバルブ・ポート190は、ポンプ室181の下側開口187と連通するチャネルに導く。ポンプ室181から出る流れは、上側開口191を通過し、上側バルブ・ポート192と連通するチャネルに入ることが可能である。上側バルブ・ポート192からの流れは(膜15がポート192との密閉係合にない場合)、それぞれの上側バルブ・ウェル194に入り、そしてベース部材18の後ろ側の共通チャネル200と連通する開口193に入る。
【0115】
当然のことながら、カセット24は、ポンプ室181がポート150,152,および154のうちのいずれかとの間、および/または、スパイク160のうちのいずれかとの間で、流体を圧送することができるように制御されることが可能である。例えば、スパイク160のうちの1つにライン30によって接続される容器20のうちの1つによって供給される新しい透析液は、適切なスパイク160用の適切なバルブ・ポート186を開くことによって(および他のスパイク用の他のバルブ・ポート186を場合によって閉じることによって)、共通チャネル202に引き込まれることが可能である。また、下側ポンプバルブ・ポート190が開き、上側ポンプバルブ・ポート192が閉じられることが可能である。次に、ポンプ室181に関連づけられた膜15の部分(つまり、ポンプ膜151)を移動することが可能であり(例えば、ベース部材18およびポンプ室内壁から遠ざける)、その結果、ポンプ室181の圧力を低下させ、それによって、流体を、選択されたスパイク160を通じて、対応するバルブ・ポート186を通じて共通チャネル202に、開口188を通じて下側ポンプバルブ・ウェル189に、(開いた)下側ポンプバルブ・ポート190を通じて、下側開口187を通じてポンプ室181に引き込む。バルブ・ポート186は、独立して動作可能であり、任意の所望のシーケンスでまたは同時に、随意に、スパイク160および関連づけられた透析液源容器20のうちのいずれか1つまたはそれらの組合せを通じて流体を引き込むことを可能にする(勿論、1つのポンプ室181だけがそれ自体に流体を引き込むように動作可能である必要がある。他のポンプ室は、動作不可能とされ、適切な下側ポンプバルブ・ポート190を閉じることによって流れに対して遮蔽したままとされることが可能である)。
【0116】
ポンプ室181の流体では、下側ポンプバルブ・ポート190は閉じられ、上側ポンプバルブバルブ・ポート192は開かれることが可能である。膜15がベース部材18に向かって移動される際に、ポンプ室181の圧力が上昇することがあり、それによって、ポンプ室181内の流体を、上側開口191を通り、(開いた)上側ポンプバルブ・ポート192を通じて上側ポンプバルブ・ウェル194に、開口193を通じて共通チャネル200に送る。チャネル200中の流体は、適切なバルブ・ポート184を開くことによって、ヒータバッグ・ポート150および/または導出ポート152(および対応するヒータバッグ・ラインまたは導出ライン)に送られることが可能である。このように、例えば、容器20のうちの一又は複数における流体は、カセット24に引き込まれ、ヒータバッグ22および/またはドレインに吐出されることが可能である。
【0117】
ヒータバッグ22中の流体は(例えば、患者への導入用にヒータ・トレイ上で適切に加熱された後で)、ヒータバッグ・ポート150用のバルブ・ポート184を開き、下側ポンプバルブ・ポート190を閉じ、上側ポンプバルブ・ポート192を開くことによって、カセット24に引き込まれることが可能である。ポンプ室181に関連づけられた膜15の部分をベース部材18から遠ざけるように移動させることによって、ポンプ室181の圧力は低下し、それによって流体をヒータバッグ22からポンプ室181に流入させることが可能である。ヒータバッグ22からの加熱流体でポンプ室181を充填した状態では、上側ポンプバルブ・ポート192は閉じ、下側ポンプバルブ・ポート190は開かれることが可能である。加熱した透析液を患者に送るために、患者ポート154用のバルブ・ポート184は開かれ、スパイク160用のバルブ・ポート186は閉じられることが可能である。ポンプ室181内の膜15のベース部材18に向かう移動は、ポンプ室181の圧力を上昇させることが可能であり、流体を、下側ポンプバルブ・ポート190を通じて、開口188を通じて共通チャネル202に、患者ポート154用の(開いた)バルブ・ポート184に且つ該ポートに流す。この動作は、所望の体積の加熱した透析液を患者に送るために適切な回数繰り返されることが可能である。
【0118】
患者から導出する際には、患者ポート154用のバルブ・ポート184は開かれ、上側ポンプバルブ・ポート192は閉じられ、下側ポンプバルブ・ポート190は開かれることが可能である(スパイクバルブ・ポート186は閉じられる)。膜15は、患者ポート154からポンプ室181に流体を引き込むために動作することが可能である。次に、下側ポンプバルブ・ポート190は閉じられ、上側バルブ・ポート192は開かれ、導出ポート152用のバルブ・ポート184は開かれることが可能である。次に、ポンプ室181からの流体は、処分のために、または、導出または回収容器へのサンプリングのために導出ラインに圧送されることが可能である(これに代えて、流体は、サンプリングまたは導出の目的で一又は複数のスパイク160/ライン30にも送られることがある)。この動作は、十分な透析液が患者から取り除かれてドレインに圧送されるまで繰り返されることが可能である。
【0119】
ヒータバッグ22は、混合容器としても作用することが可能である。個々の患者に対する特定の治療要求に依存して、透析液または異なる組成を有した他の溶液は、適切な透析液ライン30およびスパイク160を介してカセット24に接続されることが可能である。計測された量の各透析液が、カセット24を使用してヒータバッグ22に加えられ、また、マイクロプロセッサ・メモリに格納され、制御システム16によってアクセス可能な一又は複数の所定の組成に応じて混合される。これに代えて、特定の治療パラメータは、ユーザ・インタフェース144を介してユーザによって入力されることができる。制御システム16は、透析液またはスパイク160に接続された透析液容器の種類に基づいて適切な混合要求を演算するようにプログラムされることができ、次に、混合および患者への規定された混合物の供給を制御することができる。
【0120】
本発明の態様によれば、患者に導入されるかまたは患者から取り除かれる透析液にポンプによって加えられた圧力は、導出および導入動作中の圧力変動がもたらす「引っ張る」または「引く」という患者の感覚が最小限にされることが可能であるように制御される。例えば、透析液を導出する際に、吸引圧(または真空/負圧)は、導出処理の終端近傍で低下されることが可能であり、それによって透析液除去の患者感覚を最小限にする。導入動作の終端に近づく際にも同様のアプローチを使用することが可能であり、つまり、供給圧力(または正圧)が、導入の終端近傍で低下されることが可能である。患者が治療の様々なサイクル中の流体移動に多かれ少なかれ敏感なことが見つかった場合には、様々な圧力プロファイルを様々な導入および/または導出サイクルに対して使用することが可能である。例えば、患者が目覚めているときと比較して、患者が眠っているときには、比較的高い(または低い)圧力を導入および/または導出サイクル中に使用することが可能である。サイクラ14は、例えば、赤外線動作探知機を使用して患者の睡眠/覚醒状態を検出することが可能であり、患者の動作が減少した場合には眠っていると推論するか、または、血圧、脳波、または睡眠を示す他のパラメータなどの検出した変化を使用する。これに代えて、サイクラ14は、単純に患者に「眠っているか?」と「尋ねる」ことが可能であり、患者の応答(または応答なし)に基づいてシステム動作を制御することが可能である。
[患者ライン状態検出装置]
一態様では、患者ライン状態検出器は、患者への流体ライン(患者ライン34など)が患者に接続される前にいつ適切に流体を準備されたかを検出する(患者ライン状態検出器は患者ラインに関して記述されているが、本発明の態様が任意の適切なチューブ区画もしくは他の導管の存在、および/または、チューブ区画もしくは他の導管の充填状態の検出を含むと理解されるべきである。このように、本発明の態様は、チューブ状態検出器が任意の適切な導管と共に使用されることが可能であるので、患者ラインとの使用に限定されるものではない)。幾つかの実施形態では、患者ライン状態検出器は、流体ラインの患者接続端部のチューブ区画の適切な準備を検出するために使用されることができる。患者ライン34は、患者の血管、体腔、皮下、または別の器官中の留置カテーテルに接続されることが可能である。一実施形態では、患者ライン34は、腹膜透析システム10の構成要素であることが可能であり、患者の腹膜腔に透析液を送り、腹膜腔から流体を受け取る。ラインの先端部近傍のチューブ区画は、検出器のセンサ素子が位置する受け台に直立姿勢で配置されることが可能である。図9-1Aは、患者ライン状態検出器1000の典型的な構成の前方斜視図であり、それはハウジング82の左側外部(例えば、前方ドア141の左側)に取り付けられるかまたは露出されることが可能である。患者ライン34は、好ましくは、患者に接続される前に準備されるべきである。なぜならば、そうでなければ患者に空気が送られ、合併症の危険性を高めるからである。幾つかの設定条件では、患者の腹膜透析カテーテルに接続される前に患者ライン34に1mLまでの空気が存在することを許容可能である。下に述べられる患者ライン状態検出器1000の典型的な構成は、一般にはこの基準を満たすかまたは超過する。なぜならば、それらの検出器が、ライン34の適切に位置したチューブ区画中の液位を検出することができ、その結果、最大でも約0.2mLの空気が準備後にライン34の先端に残存することができるからである。
【0121】
一態様では、第1構成の患者ライン状態検出器1000は、ベース部材1002を備えることが可能である。ベース部材1002に貼付けられた(または一体成型された)患者ライン状態検出器ハウジング1006もあり、その結果、検出器ハウジング1006は、ベース部材1002から外方に延びることが可能である。検出器ハウジング1006は、患者ライン34の先端部近傍のチューブ区画34aまたはそれに付随するコネクタ36が配置されることが可能であるチューブまたはコネクタ保持チャネル1012を規定する。ベース部材1002に臨む検出器ハウジング1006の部分は、実質的に空洞であり、その結果、開放キャビティ1008(図9-3に示される)を検出器ハウジング1006の後方に生成することが可能である。開放キャビティ1008は、チューブ区画34aが配置されることが可能であるチャネル1012の隣へのセンサ素子(図9-3に示される1026,1028,1030,および1032)の配置および位置決めを提供することが可能である。他の実施形態では、随意に、ベース部材1002から外方に延びる安定化タブ1010が存在することが可能である。安定化タブ1010は、凹状の外側形状を有することが可能であり、その結果、それは、患者ライン34が患者ライン状態検出器ハウジング1006に配置される際に、患者ライン・コネクタ36の曲率に実質的に一致することが可能である。安定化タブ1010は、コネクタ36が患者ライン34の準備中に移動するのを防止することを補助することが可能であり、それによって、準備処理の正確さおよび効率を向上させる。検出器ハウジング1006は、チューブまたはコネクタ保持チャネル1012を規定するのを一般に補助する形状を有することが可能であり、それは、同様に、チューブ区画34aからチューブ・コネクタ36への移行を許容するように変化する寸法を有することも可能である。
【0122】
この例示の実施形態では、チャネル1012は、患者ライン・コネクタ36の形状に実質的に倣うことが可能である。その結果、チャネル1012は、それがチャネル1012中に配置されるときに、コネクタ36の一部を包含するように「U字形」であることが可能である。チャネル1012は、2つの個別の特徴部から構成されることが可能である(チューブ部分1014および受け台1016)。別の態様では、チューブ部分1014は、受け台1016よりも下に配置されることが可能である。加えて、受け台1016は、一対の側壁1018および後壁1020によって形成されることが可能である。側壁1018は両方とも、形状が僅かに凸状であることが可能であるが、後壁1020は、概して水平であるか、または、コネクタ36の隣接部分の形状と概して一致する輪郭を有することが可能である。側壁1018の概して凸状の形状は、受け台1016に位置したときに患者ライン・コネクタ36を所定位置にロックするのを補助する。
【0123】
患者ライン状態検出器1000の第1構成に対する例示の実施形態では、患者ライン・コネクタ36の領域36aは、チャネル1012の対向する後壁1020に対して固定して配置することができる概して平面の表面を有することが可能である。加えて、コネクタ36のこの領域36aは、反対側の凹部37を有することが可能であり、それは、コネクタ36が検出器ハウジング1006内に配置されるときに、チャネル1012の対向する側壁1018に隣接して配置されることができる。凹部37は、コネクタ36の側面に位置する隆起要素37aによって規定されることができる。これらの凹部37の一方が、図9-1において部分的に見える。2つの側壁1018は、凹部37に係合するような概して噛み合う形状(例えば、凸状の形状など)を有することが可能であり、受け台1016内の所定位置にコネクタ36をロックするのを補助する。これは、患者ライン34の準備中に検出器ハウジング1006からコネクタ36およびチューブ区画34aが不注意に取り外されるのを防止するのを補助する。コネクタ36の隆起要素37aが十分に可撓性のある材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、または他の同様の高分子ベースの材料など)で作られていれば、コネクタ36に対する引張力の閾値は、コネクタ36およびチューブ区画34aを検出器ハウジング1006から係合解除することができるであろう。
【0124】
別の態様では、キャビティ1012のチューブ部分1014は、チューブ区画34aがコネクタ36に取り付けられる直前の時点でチューブ区画34aの大部分を包囲することが可能である。チューブ部分1014は、3つの構造(2つの側壁1018および後壁1020)を使用して、チューブ区画34aの大部分を収容することが可能である。一実施形態では、2つの側壁1018および後壁1020は、透明または十分な半透明(例えば、プレキシガラスから構築される)であることが可能あり、それによって、複数のLED(例えば、図9-3におけるLED1028,1030,および1032など)からの光が著しく遮蔽または拡散されずに壁を通じて導かれることを可能にする。また、光学センサ1026(図9-2に示される)は、壁1018のうちの1つに沿って配置されることが可能であり、LEDによって放射される光を検出することができる。例示の実施形態では、透明または半透明のプラスチック製インサート1019は、LEDがハウジング内に配置された領域で主検出器ハウジング1006内にパチン止めされるように構築されることが可能である。
【0125】
図9-2は、患者ライン状態検出器プリント基板1022に表面実装されたLED1028,1030,および1032、ならびに光学センサ1026を備えたレイアウト斜視図を示している。図9-3は、検出器回路基板1022に取り付けられたLED1028,1030,および1032、ならびに光学センサ1026の平面図を示し、検出器回路基板1022は、検出器ハウジング1006の後壁1020および側壁1018に隣接して配置されることができる。図9-4は、検出アセンブリ1000の分解斜視図であり、ハウジング1006に対するプリント基板1022および半透明または透明プラスチック製インサート1019の相対位置を示している。
【0126】
さらに図9-1Bの例示の実施形態を参照して、検出器回路基板1022は、支持構造1004および内側開放キャビティ1008に配置されることが可能であり、それは、ベース部材1002から外方に延びる検出器ハウジング1006から形成される。ベース部材1002および支持構造1004は、互いに取り付けられることが可能であるか、または、一体成型されることが可能であり、その結果、ベース部材1002は、支持構造1004に概して垂直である。この配向は、一般に、チャネル1012内に固定されたときに、検出器回路基板1022の平面がチューブ区画34aの長軸に概して垂直となることを許容する。検出器回路基板1022は、開放キャビティ1008の断面形状に概して倣うことが可能であり、それは、後壁1020および側壁1018(図9-1A)によって形成されたチャネル1012の断面形状に概して一致する切出し部1024(図9-2および図9-3)を備えることも可能である。次に、検出器回路基板1022は、開放キャビティ1008内に配置されることが可能であり、切出し部1024は、検出器回路基板1022のチューブ区画34aまたはコネクタ36との適切な位置決めを確実にするために、検出器ハウジング1006の後壁1020および側壁1018に略隣接している。
【0127】
検出器回路基板1022は、該回路基板1022に取り付けられることが可能である複数のLEDおよび少なくとも1つの光学センサを備えることが可能であり、一実施形態では、LEDおよび光学センサは、回路基板1022に表面実装されることが可能である。一態様では、検出器回路基板1022は、第1LED1028、第2LED1030、第3LED1032、および光学センサ1026を備えることが可能である。第1LED1028および第2LED1030は、チャネル1012の同じ側壁1018aを通じて光を導くように配置されることが可能である。第1LED1028および第2LED1030によって放射された光は、概して平行な方向に、それらの光が最も近い側壁1018aに概して垂直に導かれることが可能である。光学センサ1026は、チャネル1012の反対の側壁1018bに沿って配置されることが可能である。さらに、第3LED1032は、チャネル1012の後壁1020に沿って配置されることが可能である。この例示の実施形態では、LEDおよび光学センサ1026のそのような構成は、患者ライン34の準備中に、患者ライン状態検出器1000が3つの異なる状態を検出することを可能にする(チューブ区画34aまたはコネクタ36が略完全に流体で充填されている(準備済み状態)、チューブ区画34aまたはコネクタ36が不完全に充填されている(未準備状態)、またはチューブ区画34aおよび/またはコネクタ36がチャネル1012から不在である(ライン不在状態))。
【0128】
例えば腹膜透析システム10などの腹膜透析システムで使用される際には、この方法で検出器回路基板1022を構成することは、適切な制御信号がPDサイクラ・コントローラ・システム16に送られることを可能にする。次に、コントローラ・システム16は、ユーザ・インタフェース144を介して、腹膜透析カテーテルに接続する前に、患者ライン状態検出器1000中のライン34の先端を配置するようにユーザに報知することが可能である。次に、コントローラは、患者ライン状態検出器1000内のチューブ区画34aの配置を監視することが可能である。次に、コントローラは、ライン34の準備を指図し、一旦ライン34が準備されると、準備の終了を指図し、次に、ユーザに、患者ライン状態検出器1000からライン34の先端を係合解除させ、それをユーザの腹膜透析カテーテルに接続するように指示することに進むことが可能である。
【0129】
LED1028,1030,および1032ならびに光学センサ1026を回路基板1022に表面実装することは、本装置の製造工程を単純化することができ、患者ライン状態検出器1000および回路基板1022が比較的小さい空間を占有することを可能にすることができ、LEDまたは光学センサの互いに対するまたはチャネル1012に対する移動から生じることがある誤差を排除するのを補助することができる。センサ構成要素の表面実装なしでは、構成要素の位置ずれが、本装置の組立中またはその使用中に生じることがある。
【0130】
一態様では、LED1032の光軸(または中央光軸)は、光学センサ1026の光軸に対する斜角を形成することが可能である。例示の実施形態では、第1LED1028、第2LED1030、および光学センサ1026の光軸はそれぞれ、互いにおよびチャネル1012の後壁1020に概して平行である。このように、LEDから光学センサ1026に向かって導かれた光の量は、(a)チャネル1012内の半透明または透明の導管の存在または不在、および/または、(b)導管(例えば、チューブ区画34aであることが可能である)内の液体の存在に依存して変化することがある。好ましくは、LED1032は、チャネル1012内の半透明または透明のチューブ区画34aの存在によって屈折されるLED1032によって放射された光のうちの幾つかのために光学センサ1026から最も遠い側壁(例えば、1018a)の近傍に配置されることが可能である。光学センサ1026から離れるまたはこのセンサに向かう屈折の程度は、チューブ区画34aにおける流体の存在または不在に依存することがある。
【0131】
様々な実施形態では、光学センサ1026に対するLED1032の斜角は、チャネル1012に半透明または透明の導管を備えた、液体の存在または不在を判断するのためのよりロバストなシステムを生成する。LED1032は、その光軸が光学センサ1026の光軸に対して91°~179°の範囲の任意の角度を形成することができるように配置されることが可能である。好ましくは、その角度は、光学センサの光軸に対して約95°~約135°の範囲内に設定されることが可能である。より好ましくは、LED1032は、光学センサ1026の光軸に対して約115°±5°の光軸を有するように設定されることが可能である。図9-3に示される例示の実施形態では、光学センサ1026の光軸に対するLED1032の光軸の角度θは、約115°±5°に設定された(この特定の実施形態における光学センサ1026の光軸は、後壁1020に概ね平行であり、側壁1018bに概ね垂直である)。光学センサ1026の光軸に対してLED1032の角度付けをすることの利点は、約115°の角度に配向されたLED1032と、これに対する、光学センサ1026の光軸に垂直または平行に向けられた光軸を持ったLEDとを使用して、流体充填チューブ区画(ウェット・チューブ)を空気充填チューブ区画(ドライ・チューブ)から識別する際の光学センサ1026の性能を比較する一連の試験で確認された。その結果は、角度付きLEDベースのシステムがチューブ区画34a中の液体の存在または不在を特定際によりロバストであったことを示した。角度付きLED1032を使用して光学センサの信号強度閾値を選択することが可能であり、この閾値よりも上で、空のチューブ区画34aが安定して検出されることが可能である。また、それよりも下で、液体で充填されたチューブ区画34aを安定して検出することが可能である、光学センサ信号強度閾値を選択することも可能である。
【0132】
図9図12は、液体が充填されたチューブ区画34a(準備済み状態)および空のチューブ区画34a(未準備状態)を特定する患者ライン状態検出器1000の能力を実証する試験結果のグラフを示している。その結果は、光学センサ1026の光軸に対して約115°の角度で配向されたLED1032(第3LED)と、光学センサ1026の光軸に概ね平行に配向されたLED1030(第2LED)とに対して記録された。図9図12でプロットされた結果は、患者ライン状態検出器1000が準備済み状態と未準備状態とを安定して区別することができることを実証している。LED1030から受けた光に関連づけられた相対信号強度が約0.4以上であった場合には、LED1032から受けた光信号だけを使用して、準備済み状態対未準備状態に対して上側信号検出閾値1027および下側信号検出閾値1029を決定することが可能である。上側閾値1027は、未準備状態を特定するために使用されることができ、下側閾値1029は、準備済み状態を特定するために使用されることができる。上側閾値1027より上に位置したデータ点は、空のチューブ区画34a(未準備状態)に関連づけられ、下側閾値1029より下に位置したデータ点は、液体で充填されたチューブ区画34a(準備済み状態)に関連づけられている。これら2つの閾値間の比較的狭い領域1031は、チューブ区画34aの準備状態の評価が不確定であることがある、LED1032から受けた光に関連づけられた相対信号強度の範囲を規定する。コントローラ(例えば、制御システム16など)は、LED1032から受けた光に関連づけられた信号強度がこの不確定範囲内にある場合は常にユーザに適切なメッセージを送るようにプログラムされることが可能である。例えば、ユーザは、チューブ区画34aおよび/またはコネクタ36が患者ライン状態検出器1000に適切に取り付けられているか否かを評価するように指示されることが可能である。腹膜透析システムとの関連では、光学センサ1026が空のチューブ区画34aに対応した信号を生成する場合、コントローラは、透析液で患者ライン34を準備し続けるようにサイクラに命令することができる。液体で充填されたチューブ区画34aに対応した信号は、コントローラによって使用され、さらなる準備を止めさせ、流体ライン34が透析カテーテルに接続される準備ができていることをユーザに指示することができる。
【0133】
図9-13は、その光軸が光学センサ1026の光軸に略垂直なLED(LEDd)と比較したときの、角度付きLED1032(LEDc)の優位性を実証する試験結果のグラフを示している。この場合、LEDcからの光に呼応して光学センサ1026によって生成された相対信号強度が、LEDdからの光に関連づけられた信号強度に対してプロットされた。液体で充填された(準備済み)および空の(未準備)チューブ区画34a間の或る分離は、約0.015のLEDdの相対信号強度で明白であったが、この閾値に基づいた「準備済み」データ点から特定することができない「未準備」データ点1035が実質的な個数残った。一方、0.028~0.03のLEDcからの光に関連づけられた相対信号強度1033は、「準備済み」チューブ区画34a(準備済み状態)および「未準備」チューブ区画34a(未準備状態)を有効に特定することができる。このように、角度付きLED(1032)は、直角に配向されたLEDよりも信頼できるデータを生成することができる。
【0134】
別の実施形態では、患者ライン状態検出器1000は、チューブ区画34aがチャネル1012中にあるか否かをさらに判断することができる。一態様では、第1LED1028および第2LED1030は、互いの隣に配置されることが可能である。1つのLED(例えば、LED1028)は、その光軸がチャネル1012中の適切に位置した半透明または透明の導管またはチューブ区画34aの略中心を通過するように配置されることが可能である。第2LED(例えば、LED1030)は、その光軸がチャネル1012中の導管またはチューブ区画34aに対して僅かに中心から外れるように配置されることが可能である。チャネル1012の一側の中心の/中心から逸れたそのようなLED対は、光学センサ1026がチャネル1012の反対側にある状態で、液体導管またはチューブ区画34aがチャネル1012内に存在するかまたは不在であるか否かを判断する信頼性を増加させることが示されている。チューブ区画34aが交互に不在、存在するが不適切に位置した、または、存在してチャネル1012内に適切に位置した一連の試験では、信号測定値は、第1LEDおよび第2LED1030から光学センサ1026によって得られた。各LEDから受けた信号は、互いに対してプロットされ、その結果が図9-14に示されている。
【0135】
図9-14に示されるように、チューブ区画34aがチャネル1012(領域1039)に不在であった大部分の場合で、LEDaに起因する光学センサ1026によって受信した信号強度(LEDa受信強度)は、LEDaがチャネル1012中の任意のチューブが既知の不在状態で点灯された較正ステップ中にLEDaから受信した信号強度とは著しく異ならないと分かった。同様に、LEDbに関連づけられた信号強度(LEDb受信強度)は、LEDbがチャネル1012中の任意のチューブが既知の不在状態で点灯された較正ステップ中のLEDbとは著しく異ならないと分かった。患者ライン状態検出器1000は、LEDaのその較正値に対する比率およびLEDbのその較正値に対する比率がそれぞれ約1±20%である場合、チャネル1012中にチューブが存在しないことを安定して判断することができる。好ましい実施形態では、閾値比率は、1±15%に設定されることができる。患者ライン状態検出器1000が腹膜透析サイクラと共に使用される実施形態では、図9-14の領域1039内のLEDaおよびLEDbの値は、例えば、チャネル1012からのチューブ区画34aの不在を示すために使用されることができる。サイクラ・コントローラは、さらなるポンプ作用を休止し、患者ライン状態検出器1000内の患者ライン34の先端を適切に位置決めする必要性についてユーザ・インタフェース144を介してユーザに報知するようにプログラムされることができる。
【0136】
上述した3つのLEDおよび光学センサ1026の構成および位置決めは、広範囲の半透明性を有した半透明または透明の流体導管(例えば、チューブ区画34a)を使用して必要なデータを生成することができる。補足試験では、患者ライン状態検出器1000は、著しく異なる半透明性の程度を有したチューブのサンプルを使用して、流体導管中の空気から液体を区別し、流体導管の存在または不在を区別するための信頼できるデータを提供することができることが分かった。それは、使用されるPVCチューブが未滅菌または減菌済み(例えば、EtOx(エチレンオキサイド)で減菌された)か否かに拘わらず信頼できるデータを提供することもできた。
【0137】
LEDから光学センサ1026によって得られた測定値は、チューブ区画34aの状態を検出するために患者ライン状態検出器アルゴリズムへの入力として使用されることができる。充填された、空の、または不在のチューブ区画34aの検出以外に、アルゴリズムの結果は不確定であり、患者ライン状態検出器1000内のチューブ区画34aの移動または不適切な位置決め、または、場合によって患者ライン状態検出器1000のチャネル1012中の異物の存在を場合によっては示すことがある。変化物の製造は、LEDからの出力および光学センサ1026の感度を様々なアセンブリで変化させることがある。従って、患者ライン状態検出器1000の初期較正を行なうことが有利な場合がある。例えば、次の手順は、LEDおよびセンサの較正値を得るために使用されることが可能である。
【0138】
(1)チューブ区画34aが患者ライン状態検出器1000に装填されていないことを確認する。
(2)光学センサ1026の4つの異なる状態について問い合わせる。
【0139】
(a)点灯されたLEDがない
(b)第1LED1028(LEDa)が点灯されている
(c)第2LED1030(LEDb)が点灯されている
(d)第3LED1032(LEDc)が点灯されている
(3)「点灯されたLEDがない」信号値を他の信号値のそれぞれから減算して、それらの環境補正値を判断し、「チューブなし」較正値としてこれらの3つの測定値を格納する。
【0140】
一旦LEDおよびセンサに対する較正値が得られると、チューブ区画34aの状態を検出することが可能である。この例示の実施形態では、患者ライン状態検出器アルゴリズムは、以下のように試験での状態検出を行なう。
【0141】
(1)光学センサ1026の4つの異なる状態について問い合わせる。
(a)点灯されたLEDがない
(b)第1LED1028(LEDa)が点灯されている
(c)第2LED1030(LEDb)が点灯されている
(d)第3LED1032(LEDc)が点灯されている
(2)「点灯されたLEDがない」値を他の値のそれぞれから減算して、それらの環境補正値を判断する。
【0142】
(3)各LEDに関連づけられた試験値をそれらの対応する較正(チューブなし)値で除算することによって相対LED値を演算する。
[結果]
環境補正LEDa値が0.10未満である場合、検出器に異物がある場合があるか、または、不確定であるとの結果がユーザに報告されることがある。
【0143】
環境補正LEDaおよびLEDb値がそれらのそれぞれの格納された較正(チューブなし)値の±15%の範囲内にある場合、チューブ区画が検出器内にないとユーザに報告する。
【0144】
環境補正LEDb値がその格納された較正(チューブなし)値の約40%以上である場合には、
(a)LEDcに関連づけられた信号を確認し、
(i)LEDcに関連づけられた環境補正信号がその較正(チューブなし)値の約150%以上である場合、チューブ区画が空であるとユーザに報告する。
【0145】
(ii)LEDcに関連づけられた環境補正信号がその較正(チューブなし)値の約125%以下である場合、チューブ区画が液体で充填されているとユーザに報告する。
(iii)そうでなければ、結果は不確定であり、その測定(例えば、チューブ区画が移動中であるか、凹凸があるか、または不明瞭である場合がある)を繰り返すか、または、チューブ区画が検出器に適切に挿入されることを確実にするために確認されるべきであるとユーザに報告する。
【0146】
環境補正LEDb値がその格納された較正(チューブなし)値の約40%以下である場合、ドライ・チューブの存在を判断するためのLEDc閾値は、より大きくなることがある。一実施形態では、例えば、LEDcの空のチューブ閾値は、次の関係に従うことが経験的に見つかった([LEDcの空のチューブ閾値]=-3.75×[LEDb値]+3)。
【0147】
一旦チューブ区画34aが患者ライン状態検出器1000に搭載されたと判断されると、患者ライン状態検出器アルゴリズムは、次のことを行なうことができる。
a)光学センサ1026が点灯されたLEDを持たないかを問い合わせ、これをLEDなし値として格納する。
【0148】
b)LEDcを点灯する。
c)光学センサ1026について問い合わせ、LEDなし値をLEDc値から減算し、これを初期値として格納する。
【0149】
d)圧送を開始する
e)光学センサ1026について問い合わせ、LEDなし値を次のLEDc値から減算する。
【0150】
f)この値が初期値の75%未満である場合、チューブ区画34aが液体で充填されると断定し、圧送を止め、上記の手順を使用して検出器状態を確認し、示された際にユーザに準備が完全したことを報告する。そうでなければ、問合せ、演算、および比較を繰り返し続ける。一実施形態では、システム・コントローラは、例えば0.005~0.01秒毎などの望まれるような頻繁で問合せ・プロトコルを行なうようにプログラムされることができる。一実施形態では、問合せ・サイクル全体は、都合良く0.5秒毎に行なうことができる。
【0151】
図9-5は、患者ライン状態検出器1000の第2構成の斜視図を示している。2つ以上の異なる患者ライン状態検出器構成が、様々な種類の患者ライン・コネクタを提供するのに必要なことがある。この例示の実施形態では、第2構成の患者ライン状態検出器1000は、第1構成の患者ライン状態検出器1000と殆ど同じ構成要素を備えることが可能である。しかし、異なる種類のコネクタを提供するために、第2構成は、第1構成の患者ライン状態検出器1000で見受けられる安定化タブ1010ではなく、ハウジング1006の上方に隆起要素1036を備えることが可能である。隆起要素1036は、一般に、標準的な患者ライン・コネクタ・キャップまたはコネクタ・フランジの形状に倣うことが可能である。
【0152】
本開示の態様によれば、検出器ハウジング1006は、チューブ部分1014を備えないことがある。従って、開放キャビティ1008は、LEDおよび光学センサがチューブの区画ではなく半透明または透明の患者ライン・コネクタ36の隣に配置されるような検出器回路基板1022の配置を可能にするように、配置されることが可能である。従って、チャネル1012は、コネクタ36を通じたLED光の透過を提供するために異なった形状とされることが可能である。
[透析液ラインオーガナイザ]
図9-6、図9-7、および図9-8は、それぞれ、未搭載のオーガナイザ1038の前方斜視図、未搭載のオーガナイザ1038の後方斜視図、および搭載済みのオーガナイザ1038の斜視図を示している。この実施形態では、オーガナイザ1038は、適度に可撓性のある材料(例えばPAXON AL55-003 HDPE樹脂など)から実質的に形成されることが可能である。オーガナイザ1038をこの材料または別の比較的柔軟性のある高分子材料から形成することは、透析液ラインまたは透析液ライン・コネクタを着脱する際のオーガナイザの1038の耐久性を向上させる。
【0153】
オーガナイザ1038は、サイクラ・ハウジング82の外壁に都合良く設置されるかまたは取り付けられることが可能である。オーガナイザ1038は、チューブ・ホルダ区画1040、ベース1042、およびタブ1044を備えることが可能である。チューブ・ホルダ区画1040、ベース1042、およびタブ1044はすべて、柔軟性をもって接続されることが可能であり、同じHDPEベースの材料から実質的に形成されることが可能である。チューブ・ホルダ区画1040は、概して長方形の形状を有することが可能であり、概して水平な上縁部と、外方に僅かに湾曲されることがある下縁部とを備えることが可能である。チューブ・ホルダ区画1040は、チューブ・ホルダ区画1040の下縁部に沿って水平に延びた一連の凹状区画1046を備えることが可能である。凹状区画1046のそれぞれは、一連の支持柱1048によって分離されることが可能であり、それは区画1046の形状およびサイズを規定することもある。チューブ・ホルダ区画1040は、チューブ・ホルダ区画1040の上縁部に沿って水平に延びた隆起領域をさらに備えることが可能である。隆起領域は、複数のスロット1050を備えることが可能である。スロット1050は、垂直配向に規定されることがあり、チューブ・ホルダ区画1040の上縁部から凹状区画1046の上部に延びることが可能である。スロット1050は、導出ライン28、透析液ライン30、または患者ライン34の形状に倣うように、概して筒状の形状を有することが可能である。スロット1050の深さは、スロット1050の開口がスロット1050の内部領域よりも狭くなるようになっている。従って、一旦ラインがスロット1050に入れられると、それは所定位置にロックまたはスナップ嵌合される。次に、ラインは、スロット1050から取り外されるように所定の最小力を必要とすることがある。これは、ラインがオーガナイザ1050から不注意に取り外されないことを保証する。
【0154】
一態様では、タブ1044は、チューブ・ホルダ区画1040の上縁部に柔軟性をもって接続されることが可能である。タブ1044は、概して長方形の形状を有することが可能である。別の実施形態では、タブ1044は、2つの僅かに大きい半径のコーナ部をさらに備えることが可能である。タブ1044は、2つの垂直に延びた支持柱1048をさらに備えることが可能である。支持柱1048は、チューブ・ホルダ区画1040の上縁部に接続されることが可能であり、タブ1044内に上方に延びることが可能である。代替の実施形態では、支持柱1048の長さおよび個数は、タブ1044の所望の柔軟性の程度に依存して変化することがある。別の態様では、タブ1044は、リブ付き領域1052を備えることが可能である。タブ1044およびリブ付き領域1052の目的は、ユーザがオーガナイザ1038を容易に理解することを可能にすることであり、その結果、ユーザは、容易に透析液ライン30を設置するか、輸送するか、オーガナイザ1038から取り外すことができる。また、タブ1044は、ラインを取外し、オーガナイザ1038に装填する際の付加的な支持領域を提供する。
【0155】
別の態様では、ベース1042は、チューブ・ホルダ区画1040の下縁部に柔軟性をもって接続されることが可能である。ベース1042は、概して長方形の形状を有することが可能である。別の実施形態では、ベース1042は、2つの僅かに大きい半径のコーナ部をさらに備えることが可能である。ベース1042は、細長い凹状区画1046を備えることが可能であり、それは、凹状区画1046を包囲する支持リング1054によって規定されることが可能である。支持柱1050、支持リング1054、および隆起領域はすべて、オーガナイザ1038の後部に沿った一連の空隙1056を生成することが可能である(例えば、図9-7に示されている)。
【0156】
図9-9および図9-10は、それぞれ、オーガナイザ・クリップ1058の斜視図およびオーガナイザ・クリップ・レシーバ1060の斜視図を示す。これらの例示の実施形態では、クリップ1058は、例えば、80ショアAデュロメータのウレタンなどの比較的高いデュロメータのポリウレタン・エラストマから作られることが可能である。代替の実施形態では、クリップ1058は、クリップ1058内に配置されたときにオーガナイザ1038がベース1042に沿って屈曲して回転することを可能にする、任意の種類の柔軟で耐久性がある材料から作られることが可能である。クリップ1058は「U字形」であることが可能であり、前部よりも僅かに高く延びた後方部分を備えることが可能である。加えて、クリップ1058の前部分の上縁部に沿って延びたリップ部1062が存在することが可能である。リップ部1062は、クリップ1058のキャビティ内に僅かに延びている。クリップ1058の後方部分は、クリップ1058の後方部分に接続され(または後方部分から形成され)、後方部分から遠ざかるように延びた複数のエラストマ製ペグ1064をさらに備えることが可能である。ペグ1064は、筒状部1066および円錐部1068の両方を備えることが可能である。筒状部1066は、クリップ1058の後方部分に接続することがあり、円錐部1068は、筒状部1066の開放端に取り付けられることが可能である。ペグ1064は、クリップ1058がオーガナイザ・クリップ・レシーバ1060に恒久的に接続されることを、オーガナイザ・クリップ・レシーバ1060の複数の孔1070にペグ1064を係合させることによって可能にする。
【0157】
オーガナイザ・クリップ・レシーバ1060は、複数の面取りされたタブ1072を備えることが可能である。面取りされたタブ1072は、ペグ1064がオーガナイザ・クリップ・レシーバ1060に係合する際に、クリップ1058の後方部分の対応するスロットと噛み合うことが可能である。一旦面取りされたタブ1072がスロットに係合すると、それらはクリップ1058の後方部分を通じて延び、クリップ1058に配置されたときにオーガナイザ1038を所定位置に保持するためにロック機構として作用することができる。オーガナイザ1038がクリップ1058内に配置されるときに、面取り部1072は、隆起支持リング1054によって生成された、ベース1042の後部の空隙1056に嵌合する。図9-7を再び参照して、また、本開示の別の態様によれば、複数のランプ1074が、オーガナイザ1038の後部から外方に延びること可能である。ランプ1074は、斜面として概して形成されることが可能である。これは、クリップ1058に入れられる際にオーガナイザ1038がサイクラ14から遠ざかるような角度となることを可能にし、それは、以前の設計に対する多数の利点を提供する。例えば、この例示の実施形態では、オーガナイザ1038の角度は、タブ1044も、オーガナイザ1038に接続されたライン(またはライン・キャップ)のうちのいずれも、蓋143が開閉される際にヒータ蓋143と干渉しないことを保証する。加えて、オーガナイザ1038の柔軟性と結び付けて、サイクラ14に対するオーガナイザ1038の角度は、両方とも、ユーザに、透析液ラインのコネクタ端部30aからに代えて、その底部から透析液ライン30を取り外させる。好ましくは、ユーザは、コネクタ端部30aを把持することによって透析液ライン30を取り外すべきでなく、なぜならば、そうする際に、ユーザが一又は複数のキャップ31を不注意に取り外すことがあり、汚染および流出を生じさせることがあるからである。オーガナイザ1038の別の利点は、色分けされたライン30を分離するのを補助することによって、ユーザが色分けされた透析液ライン30を正しい容器20に接続するのを補助することである。
[ドアラッチ・センサ]
図9-11は、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076の斜視図を示している。この例示の実施形態では、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、ドアラッチ1080に取り付けられるかまたは接続された磁石1078を備えることが可能であり、それが噛合するベースユニット・キャッチ1082を備えたラッチ位置を行き来するように枢動する際に、ドアラッチ1080と共に枢動することができる。センサ(図9-11には示されていない)は、ベースユニット・キャッチ1082近傍の、サイクラ14の前面パネル1084の後方に配置されることが可能であり、それによって、ドアラッチ1080がベースユニット・キャッチ1082に係合する際に、磁石1078の存在を検出する。一実施形態では、センサは、アナログのホール効果センサであることが可能である。ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076の目的は、ドア141が閉じられることと、ドアラッチ1080がキャッチ1082と十分に係合して構造上正常な接続を確実にすることとの両方を確認することである。図9-11aは、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076の断面図を示している。センサ1079は、前面パネル1084の後ろの回路基板1077上に配置される。センサ1079は、磁石1078の動線から好ましくは軸をオフセットして配向される。なぜならば、この配向では、センサ1079が、ドア141が閉じられる際に前面パネル1084に近づくほど、磁石1078の様々な位置をより良好に判断することが可能だからである。
【0158】
一例では、ドア141は、ドアラッチ1080がキャッチ1082と少なくとも50%係合している場合に、十分に係合していると考えられることが可能である。一実施形態では、ドアラッチ1080は、公称で約0.120インチ程度係合することが可能である。加えて、センサ1079は、ドアラッチ1080がキャッチ1082と十分に係合した場合にのみ、ドア141の閉鎖を検出することが可能である。従って、センサ1082は、ドアラッチ1080が約0.060インチ程度係合した場合にのみ、ドア141の閉鎖を検出することが可能である。ドアラッチ1080用のこれらの係合閾値は、ドアラッチ1080とキャッチ1082との間の容認可能な係合に対する略中間範囲に設定されることが可能である。これは、時間、温度、および他の変動によってセンサのドリフトを考慮することによってロバストな設計を保証するのを補助することができる。試験が、室温(約24℃)および異常に寒い温度(約-2℃~9℃)の両方で多数の測定値を収集することによって、センサ1082のロバスト性を判断するべく行なわれた。室温測定値は、低温測定値よりも繰り返し高かったが、0インチ~0.060インチの範囲の数パーセントの違いだけであった。
【0159】
一態様では、センサ1079の出力は、供給される電圧に出力特性が比例することがある。従って、供給電圧およびセンサ1079の出力の両方を測定することが可能である(供給電圧およびセンサ1079の出力がそれぞれDoor_LatchおよびMonitor_5V0で表わされる下記の式を参照)。次に、センサ1079の出力および供給電圧の両方は、1/4抵抗分割回路を通過することが可能である。センサ1079の出力および供給電圧の分割は、安定した出力の生成を可能にすることがある。この手順は、供給電圧が変動しても出力が安定したままでいることを確実にすることが可能である。
【0160】
別の態様では、センサ1079は、正および負の磁界に応答することが可能である。従って、磁界がない場合には、センサ1079は、供給電圧の半分を出力することが可能である。加えて、正の磁界は、センサ1079の出力を増加させる一方で、負の磁界は、センサ1079の出力を減少させることがある。センサ1079から出力の正確な測定値を得るために、磁石の極性を無視することができ、同時に供給電圧を補償することができる。次式は、ラッチ・センサ比を演算するために使用されることが可能である。
【0161】
ラッチ・センサ比=絶対値(VDoor_Latch/VMonitor_5V0)-noFieldRatio) …(1)
noFieldRatio(シムなし比)は、ドア141が完全に開いた状態で(VDoor_Latch/VMonitor_5V0)によって演算される。
【0162】
この式を使用して、
比=0.0は、磁界がないことを示し、
比>0.0は、幾らかの磁界を示しており、方向は特定しない。
【0163】
ドアラッチ・アセンブリ1076の係合の様々な位置と共にセンサ1079によって検出される磁界強度を較正するために、様々な厚さのシムが、ドア141の内側と前面パネル1084との間で使用されることが可能であり、それによって、ラッチ1080とキャッチ1082との間の係合の程度を変更する。一実施形態では、このデータは、シムありおよびシムなしで磁界強度比を明らかにするために使用されることができ、他の実施形態では、様々な厚さの幾つかのシムで使用されることができる。一例では、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、次のことを行なうことによって、ドアラッチ1080がキャッチ1082に十分に係合しているか否かを判断する手順を完了させることが可能である。
【0164】
nearRatioおよびfarRatioを演算する。
nearRatio=noShimRatio-(0.025/0.060)×(noShimRatio-withShimRatio) …(2)
farRatio=noShimRatio-(0.035/0.060)×(noShimRatio-withShimRatio) …(3)
実施形態では、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、較正ファイルにnoFieldRatio、nearRatio、およびfarRatioを保存することが可能である。次に、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、較正ファイルからnoFieldRatio、nearRatio、およびfarRatioをロードすることが可能であり、次に、センサ・アセンブリ1076は、センサ1079用のヒステリシス範囲としてnearRatioおよびfarRatioを使用することが可能である。次に、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、ドア141が開いている初期条件から開始し、次に、ラッチ・センサ比を繰り返し演算することが可能である。ラッチ・センサ比がnearRatio以上である場合には、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、ラッチ状態を閉に変更し、ラッチ・センサ比がfarRatio以下である場合には、ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076は、ラッチ状態を開に変更する。ドアラッチ・センサ・アセンブリ1076に対する他の実施形態では、middleRatioが、noShimRatioおよびwithShimRatioの平均を取ることによって較正データから演算されることができる。この場合には、middleRatio以上の測定値は、ドアラッチ1080が係合していることを示し、middleRatio以下の測定値は、ドアラッチ1080が係合していないことを示している。
[設定ローディングおよび動作]
図10は、図1のAPDシステム10の斜視図を示しており、サイクラ14のドア141が開位置まで下げられ、カセット24用の取付位置145および透析液ライン30のキャリッジ146を露出している(この実施形態では、ドア141は、ドア141の下部でヒンジによってサイクラ・ハウジング82に取り付けられている)。セット12をロードする際に、カセット24は、膜15およびカセット24のポンプ室側が上方に臨んだ状態で取付位置145に配置され、ポンプ室とバルブ・ポートに関連づけられた膜15の部分は、ドア141が閉じられたときに、サイクラ14の制御面148と相互作用する。取付位置145は、ベース部材18の形状と一致するように形成されることが可能であり、それによって、カセット24の取付位置145における適切な配向を確実にする。この例示の実施形態では、カセット24および取付位置145は、カセット24を取付位置145に適切な配向で配置することをユーザに要求するか、または、ドア141が閉じないように、大きい半径の単一のコーナを持った概して長方形の形状有している。しかし、カセット24および/または取付位置145に対する他の形状または配向の特徴も可能であると理解されるべきである。
【0165】
本発明の態様によれば、カセット24が取付位置145に配置される際に、患者、導出、およびヒータバッグ・ライン34,28,および26は、図10に示されるようにドア141のチャネル40を通じて左方に通される。ガイド41または他の特徴部を備えることが可能であるチャネル40は、患者、導出、およびヒータバッグ・ライン34,28,および26を保持することが可能であり、その結果、閉塞部147は、流れのためにラインを選択的に開閉する。ドア141の閉鎖に際して、閉塞部147は、患者、導出、およびヒータバッグ・ライン34,28,および26のうちの一又は複数を閉塞部ストッパ29に対して押し付けることができる。一般に、サイクラ14が動作している(且つ適切に動作している)ときには、閉塞部147は、ライン34,28,および26を通じた流れを許容することが可能であるが、サイクラ14の電源が落とされた(および/または適切に動作していない)ときには、ラインを閉塞する(ラインの閉塞は、ラインを圧迫するか、または、ライン中の流体経路を閉じるべくラインを挟むことによって、行なわれることが可能である)。好ましくは、閉塞部147は、少なくとも患者および導出ラインの34および28を選択的に閉塞することがある。
【0166】
カセット24が取り付けられ、ドア141が閉じられたときに、カセット24のポンプ室側および膜15は、例えば、空気袋、バネ、または取付位置145と制御面148との間でカセット24を圧迫する、取付位置145の後ろのドア141の他の適切な構成によって、制御面148と接触するように押し付けられることが可能である。カセット24のこの封じ込めは、膜15および16を壁およびベース部材18の他の特徴部と接触するように押し付けることが可能であり、それによって、望まれるようにチャネルおよびカセット24の他の流体経路を分離する。制御面148は、柔軟性のあるガスケット(例えば、1枚のシリコンゴムまたは他の材料)を備えることが可能であり、それは、膜15に関連づけられ、膜15の部分を選択的に移動させて、ポンプ室181のポンプ作用とカセット24のバルブ・ポートの開閉をもたらすることができる。制御面148は、膜15の様々な部分に関連づけられることが可能であり、例えば、互いと密着されることが可能であり、その結果、膜15の部分は、制御面148の対応する部分の動作に応じて移動する。例えば、膜15および制御面148は、互いに接近して配置されることが可能であり、適切な真空(または周囲よりも低い圧力)は、制御面148に適切に配置された真空ポートを通じて導入され、膜15と制御面148との間で維持されることが可能であり、その結果、膜15および制御面148は、バルブ・ポートを開閉させる、および/または、ポンプ作用をもたらすための動作を必要とする少なくとも膜15の領域において、本質的に互いに貼り付く。別の実施形態では、膜15および制御面148は、互いに付着するか、または、適切に関連づけられることが可能である。
【0167】
カセット24が搭載された状態でドア141を閉じる前に、一又は複数の透析液ライン30が、キャリッジ146に搭載されることがある。各透析液ライン30の端部は、キャップ31と、ラベルを付けるかまたはインジケータまたは識別子を取り付ける領域33とを備えることが可能である。例えば、インジケータは、インジケータ領域33でチューブにパチン止めする特定タグであることができる。本発明の態様によれば、また、より詳細に下で議論されるように、キャリッジ146およびサイクラ14の他の構成要素は、ライン30からキャップ31を取り外し、各ライン30用のインジケータ(ラインに関連づけられた透析液の種類、透析液の量などに関する表示を提供することが可能である)を認識し、ライン30をカセット24のそれぞれのスパイク160に流体係合させるように操作されることが可能である。この処理は、自動で行われることが可能である(例えば、ドア141が閉じられた後で、キャップ31およびスパイク160が、人間による接触から保護された空間で囲まれ、それによって、ライン30および/またはスパイク160の汚染の危険を、それら2つを互いに接続する際に、潜在的に減少する。例えば、ドア141の閉鎖に際して、インジケータ領域33は、何の透析液がどのライン30に関連づけられるかを特定するために(例えば、適切な画像化装置およびソフトウェア・ベースの画像認識によって視覚的に、RFID技術などによって)評価されることがある。インジケータ領域33のインジケータによってライン30の特徴を検出する能力に関する本発明の態様は、ユーザがシステム動作に影響することなくキャリッジ146の任意の位置にライン30を配置することを可能にするような利点を提供することが可能である。つまり、サイクラ14が透析液ラインの特徴を自動的に検出することができるので、システムが適切に機能するためにキャリッジ146の特定の位置に特定のラインを配置することを保証する必要はない。これに代えて、サイクラ14は、どのライン30がどこにあるかを特定し、カセット24および他のシステム特徴部を適切に制御する。例えば、或るライン30および接続された容器は、例えば、後の試験のために、使用済み透析液を受けるように意図されることがある。サイクラ14がサンプル供給ライン30の存在を特定することができるので、サイクラ14は、適切なスパイク160およびライン30に使用済み透析液を送ることができる。上で議論したように、カセット24のスパイク160がすべて共通チャネルに供給するので、任意の特定のスパイク160からの入力は、バルブおよび他のカセット特徴部を制御することによって、任意の望ましい方法でカセット24に送られることができる。
【0168】
ライン30が取り付けられた状態で、キャリッジ146は、図10に示されるように左方に移動されることが可能であり(再び、ドア141が閉じられたまま)、カセット24のスパイク160上のそれぞれのスパイク・キャップ63上に、且つ、キャップ・ストリッパ149に隣接して、キャップ31を配置する。キャップ・ストリッパ149は、キャップ31に係合するために外方に(サイクラ14のハウジング内の凹部の内部からドア141に向かって)延びることが可能である(例えば、キャップ・ストリッパ149は、キャップ31の対応する溝に係合する5つのフォーク形状要素を備えることが可能であり、それによって、キャップ・ストリッパ149がキャップ・ストリッパ149に対するキャップ31の左右移動に抗することを可能にする)。キャップ31をキャップ・ストリッパ149に係合させることによって、キャップ31は、対応するスパイク・キャップ63を把持することも可能である。その後、キャップ31が対応するスパイク・キャップ63に係合した状態で、キャリッジ146およびキャップ・ストリッパ149は、右方に移動することが可能であり、それによって、スパイク・キャップ63を、対応するキャップ31に係合するスパイク160から取り外す(この構成の1つの考え得る利点は、透析液ライン30が装填されない位置ではスパイク・キャップ63が取り外されないことである。なぜならば、透析液ライン30からのキャップ31の係合がスパイク・キャップ63を取り外すことを要求されるからである。従って、透析液ラインがスパイク160に接続されない場合には、スパイク160上のキャップは、所定位置に残される)。次に、キャップ・ストリッパ149は、キャリッジ146が右方への移動を継続する間、右方への移動を停止することが可能である(例えば、ストッパと接触することによって)。その結果、キャリッジ146は、キャップ・ストリッパ149に取り付けられたままのライン30の端子端部をキャップ31から引っ張ることが可能である。キャップ31をライン30から取り外した状態で(且つ、スパイク・キャップ63が依然としてキャップ31に取り付けられている)、キャップ・ストリッパ149は、再びサイクラ14のハウジングの凹部にキャップ31と共に後退することが可能であり、それによって、キャリッジ146の移動経路およびスパイク160に向かうライン30のキャップが外された端部を何もない状態にする。次に、キャリッジ146、再び左方に移動し、ライン30の端子端部をカセット24のそれぞれのスパイク160に取り付ける。この接続は、スパイク160によって、ライン30の端部を貫通して(そうでなければ端部は閉じている)なされることが可能であり、それぞれの容器20からカセット24への流体の流れを可能にする(例えば、スパイクは、端子端部の閉じた隔壁または壁を貫通することがある)。一実施形態では、壁または隔壁は、例えば、PVC、ポリプロピレン、またはシリコンゴムなどの柔軟性および/または自己シール性のある材料から構築されることが可能である。
【0169】
本発明の態様によれば、ヒータバッグ22は、ヒータバッグ受容部(例えば、トレイ)142に配置されることが可能であり、それは、蓋143を持ち上げることによって露出される(この実施形態では、下で議論されるように、サイクラ14は、ハウジング82に枢動可能に取り付けられたユーザまたはオペレータ・インタフェース144を備えている。ヒータバッグ22がトレイ142内に配置されることを可能にするために、インタフェース144は、トレイ142から上方に枢動して出されることが可能である)。本技術分野では公知なように、ヒータ・トレイ142は、ヒータバッグ22内の透析液を適温(例えば、患者への導入に適切な温度)に加熱することが可能である。本発明の態様によれば、蓋143は、例えば、トレイ142内のヒータバッグ22を配置した後で閉じられることが可能であり、それによって、熱をトラップして加熱処理を促進するのを補助する、および/または、その加熱面などのヒータ・トレイ142の比較的暖かい部分を触ることまたは他の接触を防止するのを補助する。一実施形態では、蓋143は、閉位置にロックされることが可能であり、それによって、例えば、トレイ142の部分が皮膚の火傷をもたらすことがある温度に加熱される状況で、トレイ142の加熱部分に触れることを防止する。蓋143の開放は、例えばロックによって、蓋143の下側の温度が適切に低い温度になるまで防止されることが可能である。
【0170】
本発明の別の態様によれば、サイクラ14は、サイクラ14のハウジングに枢動可能に取り付けられ、ヒータ・トレイ142に下方に折り畳まれることが可能である、ユーザまたはオペレータ・インタフェース144を備えている。インタフェース144を下方に折り畳んだ状態で、蓋143が閉じられ、それによって、インタフェース144を隠す、および/または、インタフェース144との接触を防止することが可能である。インタフェース144は、ユーザに例えばグラフィカルな形態で情報を表示し、ユーザから例えばタッチスクリーンおよびGUIを使用することによって入力を受け付けるように構成されることが可能である。インタフェース144は、ボタン、ダイヤル、ノブ、ポインティング・デバイス装置などのような他の入力装置を備えることが可能である。セット12が接続された状態で、容器20が適切に配置され、ユーザは、インタフェース144と相互作用して、サイクラ14に処置を開始させる、および/または、他の機能を行なわせることが可能である。
【0171】
しかし、透析サイクルを開始する前に、セット12が予め準備済みの状態(例えば、製造設備でのまたはサイクラ14で使用される前の)で提供されない限り、サイクラ14は、カセット24、患者ライン34、ヒータバッグ22などを少なくとも準備されなければならない。準備は、カセット24(つまり、ポンプおよびバルブ)を制御するなどの様々な方法で行なわれることが可能であり、それによって、ライン30を介して一又は複数の透析液容器20から液体を引き出し、カセット24の様々な経路を通じて液体を圧送し、その結果、カセット24から空気を取り除く。透析液は、ヒータバッグ22に圧送されることが可能である(例えば、患者への供給に先立って加熱するために)。一旦カセット24およびヒータバッグ・ライン26が準備されると、次に、サイクラ14は、患者ライン34を準備することが可能である。一実施形態では、患者ライン34は、ライン34を適切なポートまたはサイクラ14上の他の接続箇所に接続し(例えば、コネクタ36によって)、カセット24が液体を患者ライン34に圧送するようにさせることによって、準備されることが可能である。サイクラ14上のポートまたは接続箇所は、患者ラインの端部への液体の到達を検出するように構成され(例えば、光学的に、伝導性センサによって、または他のものによって)、それによって、患者ラインが準備されたことを検出することが可能である。上で議論したように、様々な種類のセット12が、異なるサイズの患者ライン34(例えば、成人または小児サイズ)を有することが可能である。本発明の態様によれば、サイクラ14は、カセット24の種類(または少なくとも患者ライン34の種類)を検出し、それによってサイクラ14およびカセット24を制御することが可能である。例えば、サイクラ14は、患者ライン34を準備するために必要とされる、カセット内のポンプによって供給される液体の体積を判断し、この体積に基づいて患者ライン34のサイズを判断することが可能である。患者ラインの種類を示す、カセット24、患者ライン34、または他の構成要素上のバーコードまたは他のインジケータを認識するなどの、他の技術を使用することも可能である。
【0172】
図11は、サイクラ14のハウジング82から接続解除されたドア141の内側の斜視図を示している。この図は、ドア141およびキャリッジ146の対応する溝内にライン30がどのように受容されるかをより明白に示し、その結果、インジケータ領域33は、キャリッジ146の特定のスロットに捕らえられる。チューブがキャリッジ146に取り付けられたときにインジケータ領域33のインジケータが適切に配置された状態で、リーダまたは他の装置は、インジケータの印(例えば、ライン30に接続された容器20中の透析液の種類、透析液の量、製作年月日、メーカの固有性などを表わす)を特定することができる。キャリッジ146は、キャリッジ146の上端部および下端部で一対のガイド130に取り付けられる(下側ガイド130だけが図11に示されている)。このように、キャリッジ146は、ガイド130に沿ってドア141上を左から右へと移動することができる。カセット取付位置145に向かって移動する際(図11における右方)、キャリッジ146は、ストッパ131と接触するまで移動することができる。
【0173】
図11-1および図11-2は、キャリッジ146の斜視図およびキャリッジ146に搭載された透析液ライン30の拡大斜視図を示している。これらの例示の実施形態では、キャリッジ146は、ガイド130に沿ってドア141上を移動する能力を有することがある。キャリッジ146は、5つのスロット1086を備えることが可能であり、従って、5つまでの透析液ライン30を支持する能力を有することが可能である。各スロット1086は、3つの異なる部分を備えることが可能である(透析液ライン部1088、ID部1090、およびクリップ部1092)。透析液ライン部1088は、透析液ライン30がキャリッジ146に搭載されたときに整理されて絡まらないままであることを可能にする、概して筒状の形状のキャビティを有することが可能である。クリップ部1092は、透析液ライン部1088に対して、スロット1086のそれぞれの反対の端部に配置されることが可能である。クリップ部1092の目的は、透析液ライン30のコネクタ端部30aに配置された膜ポート1094用の安全なハウジングを提供し、透析液ライン30が処置中に移動することを防止することにある。
【0174】
本開示の一実施形態では、クリップ部1092は、半円形の形状を有することが可能であり、2つの周囲縁部領域よりも僅かに深く延びた中間領域を備えることが可能である。より深い中間領域を備える目的は、膜ポート・フランジ1096を収容することにある。フランジ1096は、膜ポートの残りの部分よりも実質的に大きい半径を有することが可能である。従って、より深い中間領域は、より広いフランジ1096に嵌合するように設計され、2つの縁領域は、膜ポート1094が動かないように支持を提供する。加えて、深い中間領域は、半円形の反対側に配置された2つの切出し部1098を有することが可能である。切出し部1098は、概して長方形の形状を有することが可能であり、その結果、フランジ1096の小さい部分が、クリップ部1092に配置されたときに、切出し部1098のそれぞれに延びることを可能にする。切出し部1098は、各切出し部1098の上縁部間の距離がフランジ1096の半径よりも僅かに小さくなるように形成されることが可能である。従って、十分な大きさの力が、フランジ1096をクリップ部1092にスナップ止めするのに必要である。また、2つの切出し部1098の上縁部間の距離がフランジ1096の半径よりも小さくなることを可能にすることは、処理中に透析液ライン30が不注意に取り外されないように補助する。
【0175】
この例示の実施形態では、キャリッジ146は、膜ポート1094の如何なる変形に対抗するその能力のために、以前の設計に対してより優れた性能を提供することが可能である。キャリッジ146は、フランジ1096の前部とスリーブの後部との間で膜ポート1094を延設するように設計されている。膜ポート1094が処置中に任意の箇所にさらに延ばされる場合には、キャリッジ146の壁は、フランジ1096を支持することが可能である。
【0176】
本開示の別の態様によれば、ID部1090は、透析液ライン部1088とクリップ部1092との間に配置されることが可能である。ID部1090は、概して長方形の形状を有することが可能であり、従って、インジケータ領域33で透析液ライン30上にスナップ止めされることが可能である特定タグ1100を収容する能力を有している。インジケータ領域33は、キャリッジ146に取り付けられるときに、ID部1090内に嵌合するような大きさとされ、構成された環状の形状を有することが可能である。特定タグ1100は、各ライン30に関連づけられた透析液の種類、透析液の量、製作年月日、およびメーカの固有性に関する表示を提供することが可能である。図11-1に示されるように、ID部1090は、2次元(2-D)バーコード1102を備えることが可能であり、それはID部1090の底に印刷されることが可能である。バーコード1102は、1辺当たり10個のブロックを持ったデータ行列シンボルであることが可能であり、「空」のデータ行列コードを含むことがある。バーコード1102は、透析液ライン30がキャリッジ146に搭載されたときに特定タグ1100の真下にあるキャリッジ146に配置されることが可能である。しかし、代替の実施形態では、バーコード1102は、ステッカまたはレーザ彫刻によってキャリッジ146のID部1090に付与されることが可能である。また、別の実施形態では、バーコード1102は、長さおよび幅の寸法が変化し、1辺当たりのブロックの個数が変化するデータ行列を含むことが可能である。
【0177】
しかし、この例示の実施形態では、1辺当たりの特定の個数のブロックと、各バーコード1102の特定の長さおよび幅とが、様々な条件下での最もロバストな設計を提供すべく特に選択された。1辺当たり10個のブロックだけを使用することは、より大きいブロックを有したバーコード1102をもたらすことがあり、従って、それは、サイクラ・ハウジング82の内部に存在する暗い条件下であっても、バーコード1102を容易に判読可能であることを保証する。
【0178】
図11-3および図11-4は、それぞれ、折り畳まれた特定タグ1100の斜視図、および、自動IDカメラ基板1106に取り付けた自動IDカメラ1104を備えるキャリッジ駆動部アセンブリ132の斜視図を示している。本開示の態様によれば、特定タグ1100は、射出成形型から形成されることが可能であり、それは次にインジケータ領域33の近傍でスナップ止めするために折り畳まれることが可能である。特定タグ1100は、丸められた縁部を備えることが可能であり、それは輸送中の透析液容器20への損傷を防止することが可能である。特定タグ1100は、1辺当たり18個のブロックと静穏帯(ステッカによって付与されることが可能である)とを持った、8x8mmの2次元(2-D)データ行列シンボル1103をさらに備えることが可能である。これらのデータ行列シンボル1103に含まれる情報は、カメラ1104から制御システム16に提供されることが可能であり、次に、画像解析などによって様々な処理を通じて印を取得することが可能である。従って、自動IDカメラ1104は、正確に設置された透析液ライン30、不正確に設置されたライン30、または不在のライン30を含む、スロット1086を検出する能力を有するであろう。正確に設置された透析液ライン30は、カメラ1104が特定タグ1100に配置されたデータ行列シンボル1103を検出することを可能にし、透析液ライン30の不在は、カメラ1104が膜ポート1094の真下にあるキャリッジ146に配置された「空」のデータ行列バーコード1102を検出することを可能にし、そして、不正確に搭載された透析液ライン30は、「空」のデータ行列バーコード1102を閉塞して、そのスロットに対する、カメラ1104によって符号化されるデータ行列はないことになる。このように、カメラ1104は、キャリッジ146上のすべてのスロット1086におけるデータ行列を常に符号化すべきであり、不正確に搭載された透析液ライン30を露にする。
【0179】
この例示の実施形態では、インジケータ領域33に配置された特定タグ1100によって透析液ライン30の特徴を検出する能力は、ユーザがシステム動作上の影響を有さずにキャリッジ146の任意の位置にライン30を配置することを可能にするような利点を提供することが可能である。加えて、サイクラ14が透析液ラインの特徴を自動的に検出することができるので、システムが適切に機能するためにキャリッジ146上の特定の位置に特定のライン30が配置されることを確実にする必要はない。これに代えて、サイクラ14は、どのライン30がどこにあるかを特定し、カセット24および他のシステムの特徴を適切に制御することが可能である。
【0180】
本開示の別の態様によれば、特定タグ1100は、カメラ1104によって符号化されるためにキャリッジ駆動部アセンブリ132に臨んでいなければならない。これを確実にするために、キャリッジ146および特定タグ1100は、補足的な位置決めの特徴を有することがある。さらに、特定タグ1100を持った透析液ライン30は、クリーンフラッシュ透析機にも適合すべきであり、従って、特定タグ1100を持った透析液ライン30は、直径0.53インチのシリンダ内に嵌合するように構築されることが可能である。一実施形態では、位置決め特徴部は、特定タグ1100上の単純に平坦な底のビル(bill)と、キャリッジ146のマッチングリブ(matching rib)であることが可能である。本開示の一実施形態では、ビルおよびリブは、僅かに干渉して、特定タグ1100の後部を上方に押すことが可能である。この配置は、少量の位置ずれを生じさせることがあるが、別の軸の位置ずれを減少させる。最後に、特定タグ1100が適切に据え付けられることを確実にするために、キャリッジ駆動部アセンブリ132の前部は、現在の状態のキャリッジ146および特定タグ1100の位置決めに対して約0.02インチのみのクリアランスで設計されることができる。
【0181】
本開示の別の態様によれば、自動IDカメラ基板1106は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の後部に取り付けられることが可能である。加えて、自動IDカメラ1104は、カメラ基板1106に取り付けられることが可能である。カメラ基板1106は、特定タグ1100から約4.19インチの箇所に配置されることが可能である。しかし、他の実施形態では、カメラ基板1106は、如何なる重大な結果もなしに、後方に移動されることがある。プラスチック窓1108は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の前部に取り付けられることも可能であり、それは、流体および指の進入も防止しつつ、特定タグ1100が画像化されることを可能にする。自動IDカメラ1104は、セキュリティ用途に使用されるような任意の種類のレンズであることが可能であるカメラ・レンズ、または、IRフィルタを取り外したカメラ付き電話機用に意図されたレンズを備えることが可能である。本開示の態様によれば、カメラ・レンズは、小型、軽量、低価格、および高画像品質を備えることが可能である。
【0182】
加えて、単一のSMD赤外線LED1110は、カメラ基板1106に取り付けられることが可能である。次に、LED1110は、カメラ1104がデータ行列を容易に符号化するように特定タグ1100を照らすことが可能である。サイクラ・ハウジング82の内部環境は殆ど光が不在であるので、特定タグ1100が照らされることは重要である。従って、LED1110が特定タグ1100を照らすことなしには、カメラ1104は、データ行列を符号化することができないであろう。さらに、特定タグ1100の前に閃光を生成しないようにするために、LED1110は、カメラ1104から0.75インチ離れるように取り付けられることがある。FPGAがカメラ基板1106に取り付けられることも可能であり、OV3640画像センサとVoyagerのUIプロセッサとの間の中継として作用することが可能である。プロセッサの仕事をより簡単にすることに加えて、このアーキテクチャは、任意の他のVoyagerハードウェアまたはソフトウェアへの変更なしに、異なる画像センサを使用することを可能にすることがある。最後に、画像符号化は、オープンソース・パッケージのlibdmtxによって扱われ、それは多数のプログラミング言語からアドレス可能であり、試験用の命令ラインから実行することができる。
【0183】
図12は、第1実施形態におけるキャリッジ駆動部アセンブリ132の斜視図を示しており、それは、キャリッジ146を移動させて、カセット上のスパイク160からキャップを取り外し、透析液ライン30上のキャップ31を取り外し、スパイク160にライン30を接続するように機能する。駆動要素133は、ロッド134に沿って左から右に移動するように構成される。この例示の実施形態では、空気袋は、ロッド134に沿って駆動要素133の動作に動力を供給するが、任意の適切な駆動機構が、モータ、油圧系などを含み、使用されることが可能である。駆動要素133は、キャリッジ146上の対応するスロット146aに係合する前方に延びたタブ135を有している(キャリッジ146上の上部スロット146aを示す図11を参照)。スロット146aとのタブ135の係合は、駆動要素133がガイド130に沿ってキャリッジ146を移動することを可能にする。駆動要素133は、窓136をさらに備えており、それを通じて、CCDまたはCMOSイメージャなどの画像化装置が、キャリッジ146に取り付けたライン30上のインジケータ領域33のインジケータの画像情報をキャプチャすることが可能である。インジケータ領域33のインジケータに関する画像情報は、例えば画像解析によって、画像化装置から、印を取得することが可能である制御システム16に提供されることが可能である。駆動要素133は、ロッド134に沿って左右の両方にキャップ・ストリッパ149を選択的に移動させることができる。キャップ・ストリッパ149は、空気圧式の空気袋などの別個の駆動機構を使用して前後に延びている。
【0184】
図13は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の左側斜視図を示しており、それは、キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素が、キャップ・ストリッパ149のハウジング内の溝149aに沿って出入りする(ロッド134に概して垂直な方向)ように、どのように配置されるかをより明白に示している。ストリッパ要素の半円形の切出し部のそれぞれは、キャップ31が駆動要素133およびキャリッジ146によってストリッパ149の前に適切に配置される際に、前方に延びることによって、ライン30上のキャップ31の対応する溝に係合することが可能である。ストリッパ要素がキャップ31に係合した状態で、キャップ・ストリッパ149は、駆動要素133が移動する際にキャリッジ146と共に移動することが可能である。図14は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の部分的な背面図を示している。この実施形態では、駆動要素133は、第1空気袋137によってカセット24の取付位置145に向かって移動され、第1空気袋137は、駆動要素133を図14における右方に移動させるべく拡張する。駆動要素は、第2空気袋138によって左に移動することができる。これに代えて、駆動要素133は、例えば、ボールねじアセンブリ(キャリッジ駆動部アセンブリがボール・ナットに取り付けられている)またはラック・ピニオン・アセンブリなどの直線駆動機構のギヤ・アセンブリに結合された一又は複数のモータによって前後に移動されることができる。キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素1491は、第3空気袋によって、または、これに代えて、先に記述したように、直線駆動機構アセンブリに結合されたモータによって、キャップ・ストリッパ・ハウジングを出入りすることができる。
【0185】
図15図18は、キャリッジ駆動部アセンブリ132およびキャップ・ストリッパ149の別の実施形態を示している。図15におけるキャリッジ駆動部アセンブリ132の背面図で見ることができるように、この実施形態では、駆動要素133は、ネジ駆動部機構1321によって左右に移動される。図16におけるキャリッジ駆動部アセンブリ132の右後方斜視図で見ることができるように、ストリッパ要素は、空気袋139によって外方および内方に移動されるが、上述したように他の構成も可能である。
【0186】
図17および図18は、キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素1491に対する別の実施形態の左および右からの前方斜視図を示している。図13に示される実施形態におけるストリッパ要素1491は、透析液ライン30のキャップ31に係合するように構成されたフォーク形状要素のみを備えていた。図17および図18の実施形態では、ストリッパ要素1491は、フォーク形状要素60だけではなく、ストリッパ要素1491に枢動可能に取り付けられたロッカ・アーム61も備えている。より詳細に下に説明されるように、ロッカ・アーム61は、カセット24からのスパイク・キャップ63の取外しを支持する。ロッカ・アーム61のそれぞれは、透析液ライン・キャップ係合部分61aおよびスパイク・キャップ係合部分61bを備えている。ロッカ・アーム61は、通常は動作するように付勢されており、その結果、スパイク・キャップ係合部分61bは、図18におけるロッカ・アーム61に示されるように、ストリッパ要素1491の近傍に配置される。しかし、キャップ31が対応するフォーク形状要素60によって受けられるときに、透析液ライン・キャップ係合部分61aは、キャップ31と接触し、それはロッカ・アーム61を枢動させ、その結果、スパイク・キャップ係合部分61bは、図17に示されるようにストリッパ要素1491から離れるように移動する。この位置によって、スパイク・キャップ係合部分61bは、スパイク・キャップ63(特に、スパイク・キャップ63上のフランジ)に接触することができる。
【0187】
図19は、ストリッパ要素1491の正面図と、図20図22に示される幾つかの断面図の位置とを示している。図20は、ストリッパ要素1491の近傍に配置されたスパイク・キャップ63または透析液ライン・キャップ31がない状態のロッカ・アーム61を示している。ロッカ・アーム61は、スパイク・キャップ係合部分61bと透析液キャップ係合部分61aとの間の略中間の箇所で、ストリッパ要素1491に枢動可能に取り付けられる。上述したように、ロッカ・アーム61は、通常、図20に示されるように反クロック回りに回転するように付勢され、その結果、スパイク・キャップ係合部分61bは、ストリッパ要素1491の近傍に配置される。図21は、ストリッパ要素1491が、フォーク形状要素60に係合する透析液ライン・キャップ31がない状態で、スパイク・キャップ63に向かって前進した場合であっても、ロッカ・アーム61がこの位置を維持することを示している(つまり、スパイク・キャップ係合部分61bがストリッパ要素1491の近傍にある状態)。その結果、ロッカ・アーム61は、透析液ライン・キャップ31が存在しない限り、クロック回りに回転しないかまたはスパイク・キャップ63に係合しない。このように、透析液ライン・キャップ31に係合しないスパイク・キャップ63は、カセット24から取り外されない。
【0188】
図22は、透析液ライン・キャップ31がフォーク形状要素60に係合し、ロッカ・アーム61の透析液ライン・キャップ係合部分61aと接触する例を示している。これは、ロッカ・アーム61をクロック回り方向に(図に示されるように)回転させ、スパイク・キャップ係合部分61bをスパイク・キャップ63に係合させる。この実施形態では、部分61bの係合は、スパイク・キャップ63上の第2フランジ63aに隣接して部分61bを配置することを含み、その結果、ストリッパ要素1491が右(図22に示されるように)に移動されるときに、スパイク・キャップ係合部分61bは、第2フランジ63aと接触し、対応するスパイク160からスパイク・キャップ63を引っ張るのを補助する。なお、透析液ライン・キャップ31は、シリコンゴムなどの可撓性材料で作られており、それによって、スパイク・キャップ63の返し部63cがキャップ31(図23を参照)の孔31bを拡張し、キャップ31内の周囲内部溝または凹部によって捕らえられることを可能にする。スパイク・キャップ63上の第1フランジ63bは、透析液ライン・キャップ31の端部のストッパとして作用する。キャップ31の孔31bにおける溝または凹部を規定する壁は、対称であるか、または、好ましくは非対称的に構成されて返し部63cの形状に倣うことが可能である(キャップ31および溝または凹部の断面図については図33を参照)。スパイク・キャップ63上の第2フランジ63aは、ロッカ・アーム61のスパイク・キャップ係合部分61bが、必要ならば、スパイク160からスパイク・キャップ63を係合解除すべく付加的な引っ張り力を提供するために係合する、歯として作用する。
【0189】
図11-5および図11-6は、キャップ・ストリッパ149のストリッパ要素1491に対する別の実施形態の2つの異なる斜視図を示している。図13に示される実施形態におけるストリッパ要素1491は、透析液ライン30のキャップ31に係合するように構成されたフォーク形状要素60を使用する。図11-5に示される実施形態では、ストリッパ要素1491は、フォーク形状要素60を備えるだけでなく、複数の検出要素1112および複数のロッカ・アーム1114をさらに備えることが可能である。検出要素1112およびロッカ・アーム1114は、ストリッパ要素1491に沿って垂直に走る2本の平行な列に配置されることが可能である。一実施形態では、各縦列は、5つの個々の検出要素1112およびロッカ・アーム1114を備えることが可能であり、それらのそれぞれが、フォーク形状要素60のそれぞれに対応した列に概して整列されるように配置される。各検出要素1112は、対応するロッカ・アーム1114のうちの1つに機械的に接続またはリンクされることが可能である。加えて、各検出要素1112およびロッカ・アーム1114を備えたアセンブリは、非係合位置に向かって各ロッカ・アーム1114を付勢し続ける付勢バネ(図示せず)と、フォーク形状要素60における透析液ライン・キャップ31の存在によって接触および移動される位置にある検出要素1112とを備えることが可能である。各検出要素1112は、フォーク形状要素60の対応する透析液ライン・キャップ31との接触によってストリッパ要素1491の後部に向かって変位および傾斜されることができる。検出要素1112とロッカ・アーム1114との間の機械的な接続を通じて、ロッカ・アーム1114は、透析液ライン・キャップ31と検出要素1112との間の接触に際してスパイク・キャップ63に向かって横方向に枢動または傾動することができる。ロッカ・アーム1114がスパイク・キャップ63に向かって回転または傾斜すると、それは、スパイク・キャップ63上の第2フランジ63aに係合することができ、ストリッパ・アセンブリがその対応するスパイクからスパイク・キャップ63を取り外すことを可能にする。
【0190】
図11-7a~図11-7cは、検出要素1112と透析液ライン・キャップ31との間およびロッカ・アーム1114とスパイク・キャップ63との間の関係を図示している。図11-7cは、スパイク・キャップ63および透析液ライン・キャップ31がない状態での、検出要素1112およびロッカ・アーム1114を示している。図11-7bに示されるように、透析液ライン・キャップ31の外側フランジ31cは、検出要素1112と接触すべく十分に大きな直径を有している。図11-7aに示されるように、透析液ライン・キャップ31がない状態で、スパイク・キャップ63は、検出要素1112に、それを変位させ、スパイク・キャップ63から遠ざかるように回転させるほど十分には、キャップ63の単独の存在だけでは、接触しない。図11-7bに示されるように、検出要素1112の変位は、スパイク・キャップ63に向かってロッカ・アーム1114を回転または傾斜させ、最終的には、スパイク・キャップ63のフランジ63aに隣接して位置する箇所まで回転または傾斜させる。図11-7aに示されるように、ロッカ・アーム1114が非展開位置にあるときには、それは、スパイク・キャップ63の第2フランジ63aの外側周囲を所定量(例えば、0.040インチ)だけ何もない状態にすることができる。ロッカ・アーム1114の展開位置への移動に際して、その移動範囲は、確実な係合を保証すべくその対応するスパイク・キャップ63に対した僅かな圧縮力を与えるように構成されることが可能である。
【0191】
一旦ロッカ・アーム1114がスパイク・キャップ63のフランジ63aに隣接して位置すると、右方へのストリッパ要素1491の移動は、フランジ63aを介してスパイク・キャップ63に係合し、スパイク・キャップ63をその対応するスパイク160から引っ張るのを補助する。透析液ラインおよびそれに付随した透析液ライン・キャップ31がない状態では、ストリッパ要素1491は、対応するスパイク・キャップ63を取り外さず、その関連するスパイク160を密閉したままにする。このように、カセット・スパイク161は、使用する必要がある透析液ラインの最大数よりも少ないときに、その最大数よりも少ない個数のカセット・スパイク161にアクセスすることが可能である。
【0192】
図23は、キャップ31を取り外した状態の、透析液ライン30のコネクタ端部30aの拡大分解図を示している(図23では、キャップ31は、明瞭さのための図24に示されるような指引きリングなしに示されている。引きリングは、サイクラ14を伴うキャップ31の操作には存在する必要がない。しかし、それは、必要ならば、オペレータが透析液ライン30の端子端部からキャップ31を手動で取り外すことを可能にする際に有用である場合がある)。この例示の実施形態では、インジケータ領域33のインジケータは、図10および図11に示されるように取り付けられたときにキャリッジ146の対応するスロット内に嵌合するような大きさとされ構成された環状形状を有している。勿論、インジケータは、任意の適切な形態であることが可能である。キャップ31は、コネクタ端部30aの最先端に嵌合するように構成され、それは、内部孔、シール、または、カセット24上のスパイク160との漏れのない接続を可能にする他の特徴を有する。コネクタ端部30aは、キャップ31が取り外されても、コネクタ端部30aからのライン30中の透析液の漏れを防止する貫通可能な壁または隔壁(図示せず。図33のアイテム30bを参照)を備えることが可能である。壁または隔壁は、コネクタ端部30aがカセット24に取り付けられたときに、スパイク160によって貫通されることが可能であり、ライン30からカセット24への流れを可能にする。上で議論したように、キャップ31は、キャップ・ストリッパ149のフォーク形状要素60によって係合される溝31aを備えることが可能である。キャップ31は、スパイク・キャップ63を受容するように構成された孔31bをさらに備えることが可能である。孔31bおよびキャップ31は、キャップ・ストリッパ149が溝31aに係合し、スパイク160のスパイク・キャップ63が孔31bに受容された状態で、キャップ31がスパイク・キャップ63を適切に把持することが可能であるように構成されることが可能であり、その結果、キャリッジ146/キャップ・ストリッパ149がカセット24からキャップ31を引き離すときに、スパイク・キャップ63が、スパイク160から取り外され、キャップ31によって担持される。この取外しは、上述したように、第2フランジ63aに係合する、または、スパイク・キャップ63上の他の特徴部に係合する、ロッカ・アーム61によって補助されることが可能である。その後、キャップ31およびスパイク・キャップ63は、キャリッジ146によってスパイク160に取り付けられたコネクタ端部30aおよびライン30から取り外されることが可能である。
【0193】
一旦処置が完了すると、あるいは、ライン30および/またはカセット24がサイクラ14から取り外す準備ができると、ドア141が開かれることを許容され、カセット24およびライン30がサイクラ14から取り外される前に、キャップ31および取り付けられたスパイク・キャップ63は、スパイク160およびライン30に再び取り付けられることが可能である。これに代えて、カセット24とライン30を備えた透析液容器とは、キャップ31および取り付けられたスパイク・キャップ63を再び取り付けることなく、サイクラ14から一括して取り外されことができる。このアプローチの利点は、単純化された取外し処理と、不適切にキャップを再取付けするかまたは不適切にキャップを密閉することによる、サイクラ上へのまたは周辺領域への如何なる流体の漏れの可能性を回避することとを含んでいる。
【0194】
図24図32は、ライン取付けおよび自動接続動作中のキャリッジ146、キャップ・ストリッパ149、およびカセット24の斜視図を示している。ドア141および他のサイクラ構成要素は、明瞭さのために示されていない。図24では、キャリッジ146は、あたかもドア141が図8に示された位置で開いているかのように、下方に折り畳まれた位置で示されている。ライン30およびカセット24は、ドア141上に下げられるように配置される。図25では、ライン30は、キャリッジ146に搭載され、カセット24は、取付位置145に搭載される。この時点では、ドア141は、サイクラの動作準備をするために閉じらることができる。図26では、ドア141は閉じられている。ライン30上のインジケータ領域33にある識別子またはインジケータは、様々なライン特性を特定するために読み取られることが可能であり、その結果、サイクラ14は、どの透析液がどのくらい搭載されるかなどを判断することができる。図27では、キャリッジ146は、左方に移動し、カセット24上の対応するスパイク・キャップ63と共にライン30上のキャップ31に係合している。動作中に、駆動要素133は、キャップ・トリッパ149に係合し、同様にキャップ・ストリッパ149を左方に移動させる。しかし、キャップ・ストリッパ149は、後退位置に残る。図28では、キャップ・ストリッパ149は、前方に移動して、フォーク形状要素60をキャップ31に係合させ、それによって、スパイク・キャップ63に結合されているキャップ31に係合する。もしあれば、ロッカ・アーム61は、スパイク・キャップ63に対する係合位置に移動することが可能である。次に、図29に示されるように、キャリッジ146およびキャップ・ストリッパ149は、カセット24から離れるように右方に移動し、その結果、カセット24上の対応するスパイク160からキャップ31およびスパイク・キャップ63を引っ張る。それは、この動作中に、ロッカ・アーム61(もしあれば)は、カセット24からスパイク・キャップ63を引っ張るのを支援することが可能である。図30では、キャップ・ストリッパ149は、右方へのその移動を止め、キャリッジ146は、カセット24から離れるように移動し続ける。これは、ライン30のコネクタ端部30aをキャップ31から引かせ、フォーク形状要素60によってキャップ・ストリッパ149上にキャップ31およびスパイク・キャップ63を取り付けたままにする。図31では、キャップ・ストリッパ149は、後退し、再びカセット24に向かって移動するためにキャリッジ146用の経路に何もない状態にする。図32では、キャリッジ146は、カセット24に向かって移動し、ライン30のコネクタ端部30aをカセット24の対応するスパイク160に係合させる。キャリッジ146は、サイクラ動作中にこの位置に残ることがある。一旦処置が完了すると、図24図32に示される動作は、逆にされ、スパイク160および透析液ライン30に再びキャップを嵌め、サイクラ14からカセット24および/またはライン30を取り外すことが可能である。
【0195】
キャップ31およびスパイク・キャップ63の取外しをさらに図示するために、図33は、ライン30の接続部の5つの異なる段階でのカセット24の断面図を示している。上部スパイク160では、図26におけるように、スパイク・キャップ63はスパイク160上の所定位置に依然としてあり、透析液ライン30は、カセット24から離れて位置している。第2スパイク160では、上から下まで、図27および図28におけるように、透析液ライン30およびキャップ31は、スパイク・キャップ63に亘って係合する。この時点では、キャップ・ストリッパ149は、キャップ31およびスパイク・キャップ63に係合することが可能である。第3スパイク160では、上から、透析液ライン30、キャップ31、およびスパイク・キャップ63は、図29におけるように、カセット24から離れるように移動している。この時点では、キャップ・ストリッパ149は、右方への移動を止めることが可能である。第4スパイク160では、上から、透析液ライン30は、図30におけるように、右方への移動を継続し、ライン30からキャップ31を取り外す。一旦キャップ31および63が後退されると、透析液ライン30は、図32におけるように、左方に移動し、ライン30のコネクタ端部30aをスパイク160に流体接続する。
【0196】
様々なセンサは、キャリッジ146およびキャップ・ストリッパ149がそれらの期待される位置に完全に移動することを確認するのを補助するために使用されることができる。一実施形態では、キャリッジ駆動部アセンブリ132は、6つのホール効果センサ(図示せず)を装備することができる(そのうちの4つはキャリッジ146用であり、2つはキャップ・ストリッパ149用である)。第1キャップ・ストリッパ・センサは、キャップ・ストリッパ149が完全に後退されたときを検出するように配置されることが可能である。第2キャップ・ストリッパ・センサは、キャップ・ストリッパ149が完全に拡張されたときを検出するように配置されることが可能である。第1キャリッジ・センサは、キャリッジ146が「ホーム」位置にあるとき、つまり、カセット24およびライン30を搭載することを可能にする位置にあるときを検出するように配置されることがある。第2キャリッジ・センサは、キャリッジ146がスパイク・キャップ63に係合する位置にあるときを検出するように配置されることが可能である。第3キャリッジ・センサは、ライン30からキャップ31を取り外す位置にキャリッジ146が到達したときを検出するように配置されることが可能である。第4キャリッジ・センサは、ライン30のコネクタ端部30aをカセット24の対応するスパイク160に係合する位置にキャリッジ146が移動したときを検出するように配置されることが可能である。他の実施形態では、単一のセンサが、上述したキャリッジ位置の2つ以上を検出するために使用されることができる。キャップ・ストリッパおよびキャリッジ・センサは、電子制御基板(自動接続基板)に入力信号を供給することができ、それは、ひいてはユーザ・インタフェース144を介してユーザに特定の確認またはエラー・コードを伝えることができる。
【0197】
図11-6は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の他の実施形態の斜視図を示している。図12に示される実施形態におけるキャリッジ駆動部アセンブリ132は、駆動要素133、ロッド134、タブ135、および窓136だけを備えていた。図11-6の実施形態では、キャリッジ駆動部アセンブリ132は、駆動要素133、ロッド134、タブ135、および窓136を備えるだけでなく、縦列の自動IDビュー・ボックス1116をさらに備えることが可能である。ビュー・ボックス1116は、窓136に隣接して直接的に配置されることが可能である。また、ビュー・ボックス1116は、キャリッジ146がガイド130に沿って右方または左方のいずれかに移動するときに、キャリッジ146上に配置された5つのスロット1086のそれぞれの水平軸が、対応するビュー・ボックス1116の中心を通るように配置および形成されることが可能である。ビュー・ボックス1116は、カメラ基板1106に取り付けられた自動IDカメラ1104に、透析液ラインがスパイク・キャップ63に係合する前に、透析液ライン・キャップ31がライン30上に配置されているか否かを検出させることを可能にすることがある。これは、ユーザがキャップ31を早期に取り外していないという確認を可能にすることがある。一旦キャップ31の存在または不在が判断されると、カメラ1104は、電子制御基板(本明細書中では自動接続基板と称される)に、対応する入力信号を提供することができ、それは、ひいては、ユーザ・インタフェース144を介してユーザに、ライン30上のキャップ31の存在に関する特定の確認またはエラー・コードを通信することができる。
【0198】
本開示の別の態様によれば、キャリッジ駆動部アセンブリ132は、自動接続基板1118を備えることが可能である。自動接続基板1118は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の上部に取り付けられることが可能であり、アセンブリ132の全長を延長させることが可能である。この例示の実施形態では、LED1120が自動接続基板1118にさらに取り付けられることが可能である。LED1120は、フォーク形状要素60の直上の固定位置に配置されることが可能である。また、LED1120は、LED1120から放射される光がストリッパ要素1491に亘って下方に移動するように向けられることが可能である。本開示の別の態様によれば、キャリッジ駆動部アセンブリ132は、流体基板1122をさらに備えることが可能である。流体基板1122は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の底部に取り付けられることが可能であり、アセンブリ132の長さを延長することも可能である。この例示の実施形態では、レシーバ1124(図示せず)がLED1120の直下の位置で流体基板1122に取り付けられることが可能であり、それは、自動接続基板1118に取り付けられる。従って、LED1120は、フォーク形状要素60に亘って光を放射することができ、光がレシーバ1124によって検出された場合、ストリッパ要素1491には透析液ライン・キャップ31は残されていないが、光がレシーバ1124に向かう途中で遮蔽された場合、ストリッパ要素1491にはキャップ31が残されていることがある。このLED1120およびレシーバ1124の組合せは、ユーザまたはサイクラ14によってストリッパ要素1491に不注意に残されることがあるキャップ31の検出を可能にする。本開示の態様によれば、流体基板1122は、キャリッジ駆動部アセンブリ132の内部に存在することがあり、サイクラ14を潜在的に故障させることがある、湿度、水分、または他の液体を検出する能力をさらに有することが可能である。
【0199】
キャリッジ146がスパイク・キャップ63に係合する力を、幾つのライン30が設置されているかに応じて調整する際に、利点がある場合がある。カセット24への接続を完了するのに必要な力は、スパイク・キャップ63に結合されなければならないキャップ31の個数に応じて増大する。インジケータ領域33でライン・インジケータからの情報を検出し読み取る検出装置は、駆動要素133に加えられる力を調整するのに必要なデータを提供するために使用されることもできる。力は、例えば、第1空気袋137、またはモータ/ボールねじなどの線形アクチュエータを含む、多数の装置によって生成されることができる。電子制御基板(例えば、自動接続基板など)は、ライン検出センサから入力を受信し、適切な制御信号を、線形アクチュエータのモータ、または空気袋137の膨張を制御する空気圧バルブのいずれかに送るようにプログラムされることができる。コントローラ16は、駆動要素133の移動の程度または速度を、例えば、線形アクチュエータのモータに印加される電圧を調整することによって、または、空気袋137の膨張を制御する空気圧バルブを調整することによって制御することができる。
【0200】
本開示の態様によれば、キャリッジ駆動部アセンブリ132が、膜ポートをスパイク160に係合させるために、キャリッジ146上に少なくとも550N(124lbf)の力を生じさせることができることが必要な場合がある。この力は、キャリッジ方向の、カセット24上への膜ポートの打撃(spiking)について測定されるものである。スパイク160上に滅菌PVC膜ポートを打ち付けるのに必要な最大力は、110Nであることがある。加えて、スパイク160上に滅菌JPOC膜ポートを打ち付けるのに必要な最大力は、110Nであることがある。これらの力要求は、キャリッジ駆動部アセンブリ132が5つのJPOCポートを打ち付けることができることを確実にする。他の実施形態では、PVCポートの力要求は、さらに現在の挿入力に基づいて減少されることが可能である。
【0201】
ライン30上のキャップ31がカセット24のスパイク160上のキャップ63と共に取り外される本発明の態様は、動作の単純さに加えて、他の利点を持つことがある。例えば、スパイク・キャップ63がライン30上のキャップ31とのそれらの係合によって取り外されるので、キャリッジ146上に特定のスロットに取り付けられたライン30がない場合には、その位置ではスパイク・キャップ63は取り外されない。例えば、カセット24は5つのスパイク160および対応するスパイク・キャップ63を備えているが、サイクラ14は、該サイクラ14に関連づけられた4本以下のライン30(0本でも可)で動作することができる。ライン30が存在しないキャリッジ146上のそれらのスロットには、キャップ31がなく、従って、その位置でスパイク・キャップ63が取り外すことができる機構もない。このように、特定のスパイク160に接続されるライン30がない場合には、そのスパイク160上のキャップ63は、カセット24の使用中に所定位置に残ることが可能である。これは、スパイク160での漏れおよび/またはスパイク160での汚染を防止するのを補助することが可能である。
【0202】
図33におけるカセット24は、例えば、図3図4、および図6に示される実施形態に示されたものとは異なる少数の特徴部を備えている。図3図4、および図6の実施形態では、ヒータバッグ・ポート150、導出ライン・ポート152、および患者ライン・ポート154は、中央チューブ156およびスカート158を有するように構成される。しかし、上述され、図33に示されるように、ポート150,152,154は、中央チューブ156だけを備え、スカート158は備えないことが可能である。これも図34に示されている。図34に図示された実施形態は、左側ポンプ室181の外面に形成された隆起リブを備えている。隆起リブは、右側ポンプ室181にも設けられ、カセット取付位置145でのドア141内の機構を、ポンプ室181の外壁の追加接触箇所に提供することが可能であり、この機構は、ドア141が閉じらたときに、制御面148に対してカセットを押し付ける。隆起リブは必要ではなく、これに代えて、ポンプ室181は、図34の右側ポンプ室181に対して示されるように、リブまたは他の特徴部を持たないことがある。同様に、図3図4、および図6の実施形態におけるスパイク160は、スパイク160のベース部にスカートまたは同様の特徴部を備えないが、図33における実施形態は、スカート160aを備えている。これも図34に示されている。スカート160aは、スカート160aとスパイク160との間の凹部のスパイク・キャップ63の端部を受容するように配置されることが可能であり、スパイク160とスパイク・キャップ63との間のシールを形成するのを補助する。
【0203】
図33に示される別の発明にかかる特徴部は、スパイク160を通じたスパイク163の遠位先端部と管腔159との配置に関する。この態様では、スパイク160の遠位先端部は、スパイク160の幾何学的な中心に概して沿って通るスパイク160の長手方向軸にまたはその近傍に配置される。長手方向軸にまたはその近傍にスパイク160の遠位先端部を配置することは、スパイク160を対応する透析液ライン30に係合するときの位置決め許容差を緩和することを補助することが可能であり、ライン30のコネクタ端部30aにおける隔壁または膜30bをスパイク160が刺すのを助ける。その結果、スパイク160の管腔159は、例えば、図33に示され、図35のスパイク160の端面図に示されるような、スパイク160の底部近傍で、スパイク160の長手方向軸から概してオフセットして配置される。また、スパイク160の先端は、スパイク160のより近い部分と比較して、幾らか減少した直径を有している(この実施形態では、スパイク160は、本体18からスパイク160の長さの約2/3だけ実際には直径の段階的変化を有している)。先端でのスパイク160の減少した直径は、スパイク160とライン30の内壁との間のクリアランスを提供することが可能であり、従って、隔壁30bに対して、スパイク160によって貫通されるときに、折り返されて、スパイク160とライン30との間に位置するための空間を与える。スパイク160(例えば、図35Aに示される)上の段付き特徴部160bは、隔壁30bがライン30の内壁に接続され、それによって、ライン30とスパイク160との間に形成されるシールを向上させる位置に、ライン30に係合するように配置されることも可能である。
【0204】
別の一実施形態では、図35Aに示されるように、スパイク160のベース部160cの長さは、短くされることが可能であり、それによって、スパイク160からスパイク・キャップ63を取り外すのに必要な力を減少するか、または、透析液ライン30のコネクタ端部30aに打ち付けるのに必要な力を減少させる。ベース部160cを短くすることは、スパイク160とそのキャップ63との間またはスパイク160とコネクタ端部30aの内周面との間の摩擦接触の面積を減少させる。加えて、スパイク160のベース部でのスカート160aは、個々のポスト160dと交換されることが可能である。ポスト160dは、スパイク160上にスパイク・キャップ63が適切に着座することを可能にすると共に、透析液供給セット12のパッケージングの前後の滅菌処理中にスパイク160の周囲の滅菌流体または気体のより完全な循環を可能にする。
【0205】
図35Aに示される実施形態をより完全に利用するために、図35Bに示されるようなスパイク・キャップ64を使用することが可能である。スパイク・キャップ64のベース部上のスカート65は、図35Aに示されるスパイク160のベース部のポスト160dに亘ってぴったりと嵌合するように構築される。加えて、スパイク160のベース部の内部周囲の間欠リブ66および67は、スパイク・キャップ64とスパイク160のベース部160cとの間の滑り嵌めを提供することが可能であると共に、減菌気体または流体がキャップ付きのスパイク160のベース部に亘ってより遠くに浸透することを許容する。図35Cに示されるように、スパイク・キャップ64の断面図では、3個1セットの内側リブ66,67,68は、スパイク・キャップ64とスパイク160のベース部160cとの間の滑り嵌めを提供するように使用されることが可能である。一実施形態では、リブ66およびリブ67は、それらの周面に沿って中断または間隙66aおよび67aを有し、スパイク160のベース部160cに亘って、カセットの外部の気体または流体が流れることを許容する。第3リブ68は、スパイク・キャップ64とスパイク160のベース部160cとの間の密閉係合をなすために周囲に不完全な箇所がなく、スパイク160の外表面の残りの部分からベース部160c密閉する。他の実施形態では、スパイク・キャップ64内のリブは、周方向にではなく縦方向に配向されるか、または、スパイク・キャップ64とスパイク160との間の滑り嵌めを提供する他の配向とされることが可能であると共に、外部気体または流体がスパイク160のベース部160cの外側に接触することを許容する。示された実施形態では、例えば、カセット、スパイク・キャップ、およびスパイク160のベース部160cの殆どの外面が、カセットの外部をエチレン・オキサイド・ガスに露出させることによって減菌することができる。段付き特徴部160bの直径およびスパイク160の先端は、スパイク・キャップ64の重複部分の内径より小さいので、カセットの内部からスパイク管腔に入る如何なる気体または流体も、スパイク160の外面に密閉リブ68まで達することができる。このように、カセットの流体通路に入るエチレンオキシドなどの如何なる減菌気体も、スパイク160の外表面の残りの部分に到達することが可能である。一実施形態では、気体は、例えば、患者ライン34または導出ライン28の端部の通気キャップを通じてカセットに入ることが可能である。
【0206】
一旦カセット24およびライン30がサイクラ14に搭載されると、サイクラ14は、流体を透析液ライン30からヒータバッグ22および患者に移動させるようにカセット24の動作を制御しなければならない。図36は、カセット24内の流体圧送および流体経路を制御すべくカセット24のポンプ室側(例えば、図6に示される)と相互作用するサイクラ14の制御面148の平面図を示している。停止しているときには、一種のガスケットとして記述されることがあり、1枚のシリコンゴム製シートを備えることがある制御面148は、概して平坦であることが可能である。バルブ制御領域1481は、例えば、シート表面のまたは表面上のスコーリング(scoring)、溝、リブ、または他の特徴部によって制御面148に定義される(または定義されない)ことがあり、シートの平面に概して交わる方向に移動可能なように配置されることが可能である。内方/外方に移動することによって、バルブ制御領域1481は、カセット24上の膜15の関連する部分を移動させることができ、その結果、カセット24のそれぞれのバルブ・ポート184,186,190,および192を開閉し、従って、カセット24内の流れを制御する。2つのより大きな領域(ポンプ制御領域1482)は、同様に移動可能であり、その結果、ポンプ室181と協働する膜15の関連する形状部分151を移動させる。膜15の形状部分151のように、ポンプ制御領域1482は、制御領域1482がポンプ室181内に拡張される際にポンプ室181の形状に対応するように形成されることが可能である。このように、ポンプ制御領域1482での制御シート148の部分は、ポンプ動作中に必ずしも伸ばされる必要がないかまたは弾性変形される必要がない。
【0207】
領域1481および1482のそれぞれは、例えば、カセット24がサイクラ14に搭載され、ドア141が閉じられた後で、カセット24の膜15とサイクラ14の制御面148との間に存在することがある如何なる空気または他の流体のすべてまたは実質的にすべてをも取り除くために使用されることがある関連する真空または導出ポート1483を有することが可能である。これは、制御領域1481および1482との膜15の緊密な接触を確実にするのを補助し、ポンプ動作および/または様々なバルブ・ポートの開/閉止状態によって所望の体積の供給を制御するのを補助することが可能である。なお、真空ポート1482は、制御面148がカセット24の壁または他の比較的剛性のある特徴部と接触するように押し付けられない位置に形成される。例えば、本発明の一態様によれば、カセットのポンプ室の一方または両方は、ポンプ室に隣接して形成された真空通気クリアランス領域を備えることが可能である。図3および図6に示されるようなこの例示の実施形態では、ベース部材18は、ポンプ室181を形成する楕円形状の凹部に隣接し且つその外側の真空通気ポート・クリアランスまたは拡張特徴部182(例えば、ポンプ室に流体接続された凹状領域)を備えることが可能であり、それによって、ポンプ制御領域1482用の真空通気ポート1483が、干渉なしに、膜15と制御面148との間から(例えば、膜15の断裂によって)如何なる空気または流体も取り除くことを可能する。拡張特徴部は、ポンプ室181の境界内に配置されることも可能である。しかし、ポンプ室181の周囲の外側に通気ポート特徴部182を配置することは、液体を圧送するためのより大きなポンプ室容積を確保することが可能であり、例えば、ポンプ室181の最大設置面積が、透析液を圧送するために使用されることを可能にする。好ましくは、拡張特徴部182は、ポンプ室181に対して垂直方向により低い位置に配置され、その結果、膜15と制御面148との間で漏れる如何なる液体も、可及的に早い段階で真空ポート1483を通じて引き出される。同様に、バルブ1481に関連づけられた真空ポート1483は、好ましくは、バルブ1481に対して垂直方向に低い位置に配置される。
【0208】
図36Aは、制御面148のベース要素1480とそのバルブおよびポンプ制御領域1481,1482との間の丸められた移行部分を有するように制御面148が構築または成型されることがあることを示している。接合部1491および1492は、それぞれ、ベース要素1480からバルブ制御領域1481およびポンプ制御領域1482に移行するように小さな半径に成型されることが可能である。丸められたまたは滑らかな移行部分は、制御面148を含む材料の早期の疲労および破損を防止するのを補助し、その寿命を延長させることが可能である。この実施形態では、真空ポート1483からポンプ制御領域1482およびバルブ制御領域1481に導くチャネル1484は、移行部分特徴部を収容するために幾らか長くされる必要がある場合がある。
【0209】
制御領域1481および1482は、カセット24の反対の制御面148の側(例えば、制御面148を形成するゴム製シートの後ろ側)の空気圧および/または体積を制御することによって移動されることがある。例えば、図37に示されるように、制御面148は、制御領域1481,1482のそれぞれに関連づけて配置された制御室171を有し、互いから離隔された(または、もし望まれれば、少なくとも互いから独立して制御されることができる)嵌め合いブロック170が背面に接することが可能である。嵌め合いブロック170の表面は、カセット24が押し付けられて嵌め合いブロック170が背面に接した制御面148に関連して動作する際の、カセット24とのインタフェースを形成する。従って、嵌め合いブロック170の制御室は、カセット24の補足的なバルブまたはポンプ室に結合され、嵌め合いブロック170に隣接した制御面148の制御領域1481および1482、ならびにカセット24に隣接した膜15の関連する領域(形状部分151など)を間に挟む。空気または他の制御流体は、領域1481,1482用の嵌め合いブロック170の制御室171を出入りすることが可能であり、それによって、望まれるように制御領域1481および1482を移動させて、カセット24のバルブ・ポートを開閉する、および/または、ポンプ室181でのポンプ作用を達成する。図37に示される1つの例示の実施形態では、制御室171は、バルブ制御領域1481のそれぞれの背面に接する筒状形状領域、および、ポンプ制御領域1482の背面に接する一対の楕円状空隙として配置されることが可能である。流体制御ポートは、各制御室171に設けられることが可能であり、その結果、サイクラ14は、制御室のそれぞれにおける流体の体積および/または流体の圧力を制御することができる。例えば、嵌め合いブロック170は、様々なポート、チャネル、開口、空隙、および/または制御室171と連通し、適切な空気圧/真空が制御室171に与えられることを可能にする他の特徴部を含む、マニホールド172に嵌ることが可能である。示されないが、空気圧/真空の制御は、制御可能なバルブ、ポンプ、圧力センサ、アキュムレータなどの使用を通じて、任意の適切な方法で行なわれることが可能である。勿論、制御領域1481,1482は、重力系、流体圧系、および/または機械系によって(リニアモータなどによって)、あるいは、空気圧系、流体圧系、重力系、および機械系を含む系の組合せによって、他の方法で移動されることがあると理解されるべきである。
【0210】
本発明の態様によれば、真空ポート1483は、膜15における漏れを検出するために使用されることが可能であり、例えば、真空ポート1483に接続された導管または室の液体センサは、膜15に穴が開くか、または、液体が膜15と制御面148との間に導入される場合に、液体を検出することが可能である。例えば、真空ポート1483は、嵌め合いブロック170の補足的な真空ポート173に位置決めされ、密閉的に関連づけられ、嵌め合いブロック170は、同様に、マニホールド172の共通の流体収集室1722に導く流体通路1721に密閉的に関連づけられることが可能である。流体収集室1722は、入口を備えることが可能であり、それを通じて、真空が制御面148のすべての真空ポート1483に加えられ、分配されることができる。流体収集室1722に真空を与えることによって、流体は、真空ポート173および1483のそれぞれから引き出されることが可能であり、従って、様々な制御領域で膜15と制御面148との間の如何なる空間からも流体を取り除く。しかし、領域の一又は複数に液体が存在する場合、関連づけられた真空ポート1483は、真空ポート173に、および流体収集室1722に導くライン1721に液体を引き込むことが可能である。如何なるそのような液体も、流体収集室1722に収集されることが可能であり、一又は複数の適切なセンサ(例えば、液体の存在を示す、室1722内の導電率の変化を検出する一対の導電率センサ)によって検出されることが可能である。この実施形態では、センサは、流体収集室1722の底側に配置されることが可能であり、真空源は、室1722の上端で室1722に接続する。従って、液体が流体収集室1722に引き込まれる場合、その液体は、液位が真空源に達する前に検出されることが可能である。随意に、疎水性フィルタ、バルブ、または他の構成要素が、室1722への真空源接続箇所に配置されることが可能であり、真空源への流体の進入にさらに抵抗するのを補助する。このように、液体の漏れは、真空源バルブが液体によって汚染される危険に晒される前に、コントローラ16によって検出および作用されることが可能である(例えば、警告を発する、液体入口バルブを閉じる、およびポンプ動作を止める)。
【0211】
一実施形態では、制御室171の内壁は、例えば、ポンプ制御領域1482に関連づけられた制御室171に対して図37に示されるように、ポンプ室のスペーサ要素50と幾らか類似した隆起要素を備えることができる。これらの隆起要素は、プラトー(高台)形状の特徴部、リブ、または完全に後退された制御領域1482から離れるように制御ポートを凹ませておく他の突起の形態であることができる。この構成は、制御室171の圧力または真空のより均一な分布を可能にし、制御面148による任意の制御ポートの早期閉鎖を防止することが可能である。予め形成された制御面148(少なくともポンプ制御領域中の)は、供給行程中のカセット24のポンプ室の内壁または充填行程中の制御室171の内壁のいずれかに対して完全に拡張されたときも顕著な伸張力に晒されないことが可能である。従って、制御領域1482が制御室171内に非対称的に延びて、制御領域1482が制御室の一又は複数のポートを、その室が完全に空にされる前に、早期に閉じさせることが可能である。制御領域1482と制御ポートとの間の接触を防止する制御室171の内面に特徴部を有することは、制御領域1482が充填行程中に制御室内壁との均一な接触をなすことができることを確実にするのを補助することが可能である。
【0212】
上で示唆されるように、サイクラ14は、システムの様々なバルブ、圧力センサ、モータなどと電気連通するデータプロセッサを持った制御システム16を備えることが可能であり、好ましくは、所望の動作シーケンスまたはプロトコルに応じてそのような構成要素を制御するように構成される。制御システム16は、適切な回路類、プログラム、コンピュータ・メモリ、電気接続部、および/または指定されたタスクを行なう他の構成要素を備えることが可能である。システムは、ポンプ、タンク、マニホールド、バルブ、または所望の空気圧または他の流体圧(大気圧または他の或る参照圧よりも高い正圧、あるいは、大気圧または他の或る参照圧よりも低い負圧または真空)を生じさせる他の構成要素を備えることが可能であり、それによって、制御面148の領域および他の空気圧動作構成要素の動作を制御する。制御システム16(または少なくともその部分)に関するさらなる詳細が下に提供される。
【0213】
1つの例示の実施形態では、ポンプ制御室171の圧力は、バイナリ・バルブによって制御されることが可能であり、例えば、それは、開いて制御室171を適切な圧力/真空に露出し、閉じて圧力/真空源を遮断する。バイナリ・バルブは、鋸歯形状の制御信号を使用して制御されることが可能であり、それはポンプ制御室171の制御圧力に変調されることが可能である。例えば、ポンプ供給行程中(つまり、正圧がポンプ制御室171に導入され、膜15/制御面148を移動させ、ポンプ室181から液体を押し出す)、バイナリ・バルブは、鋸歯信号によって比較的速い速度で開閉するように駆動され、制御室171内の適切な圧力を確立する(例えば、約70~90mmHgの圧力)。制御室171の圧力が約90mmHg以上に上昇される場合、鋸歯信号は、より長い時間バイナリ・バルブを閉じるように調整されることが可能である。制御室171の圧力が約70mmHg以下に低下した場合、鋸歯制御信号は、制御室171の圧力を上昇させるために再びバイナリ・バルブに適用されることが可能である。このように、典型的なポンプ動作中に、バイナリ・バルブは、複数回開閉され、一又は複数の長い期間の間、閉じられることが可能であり、その結果、液体がポンプ室181から押し出される圧力は、所望のレベルまたは範囲(例えば、約70~90mmHg)に維持される。
【0214】
幾つかの実施形態では、また、本発明の態様によれば、例えば、膜15がポンプ室181内のスペーサ50と接触するか、または、ポンプ制御領域1482がポンプ制御室171の壁と接触するときに、膜15/ポンプ制御領域1482の「行程の終端」を検出することは有用である場合がある。例えば、ポンプ動作中に、「行程の終端」の検出は、新しいポンプ・サイクル(ポンプ室181を満たすか、または、ポンプ室181から流体を駆動すること)を開始するために、膜15/ポンプ制御領域1482移動が逆にされるべきであることを示すことがある。ポンプ用の制御室171の圧力が鋸歯制御信号によって駆動されるバイナリ・バルブによって制御される1つの例示の実施形態では、ポンプ室181の圧力は、比較的高い周波数で変動する(例えば、バイナリ・バルブが開閉される周波数またはそ近傍の周波数)。制御室171内の圧力センサは、この変動を検出することが可能であり、それは、膜15/ポンプ制御領域1482がポンプ室181の内壁またはポンプ制御室171の壁に接触していないときに、一般により高い振幅を有する。しかし、一旦膜15/ポンプ制御領域1482がポンプ室181の内壁またはポンプ制御室171の壁に接触すると(つまり、「行程の終端」)、圧力変動は、一般に減衰されるか、または、ポンプ制御室171内の圧力センサによって検出可能な方法で変化する。この圧力変動の変化は、行程の終端を特定するために使用されることができ、これに応じて、ポンプならびにカセット24および/またはサイクラ14の他の構成要素を制御することが可能である。
[閉塞部]
本発明の一態様では、一又は複数の柔軟性のあるラインを開閉する閉塞部は、一対の対向する閉塞部材を備えることが可能であり、それらは、バネ鋼から作られた平板(例えば、板バネ)などの可撓性要素として形成されることが可能であり、閉塞部を動作させるべく閉塞部材の一方または両方に力を加えるように構成された力アクチュエータを有する。或る実施形態では、力アクチュエータは、可撓性要素間に配置された拡張可能または拡大可能な部材を備えることが可能である。拡張可能部材のサイズを減少させた状態で、可撓性要素は、平坦または略平坦な状態であり、ピンチヘッドを付勢して、ラインを閉じるべく挟むように一又は複数のラインに係合する。しかし、拡張可能部材が可撓性要素を離すように付勢するときには、可撓性要素は、ピンチヘッドを曲げて引き戻し、ラインを解放して、ラインを通じた流れを可能にする。他の実施形態では、閉塞部材は、力アクチュエータによって加えられる力のレベルに対して本質的に剛性があることができる。或る実施形態では、力アクチュエータは、一方または両方の対向する閉塞部材に力を加えることが可能であり、それによって、閉塞部材間の距離を、それらが対向する領域の少なくとも一部で増加させ、可撓性チューブの開閉を達成する。
【0215】
図38は、分解図を示し、図39は、患者ライン34および導出ライン28、ならびに/または、サイクラ14もしくはセット12の他のライン(例えば、ヒータバッグ・ライン26など)を閉じるかまたは閉塞するために使用されることが可能である閉塞部147の例示の実施形態についての部分的な組立図を示している。閉塞部147は、随意のピンチヘッド161(例えば、ドア141に対して押し付けるようにチューブと接触し、チューブを閉じるように挟む概して平坦な刃状要素を備えている。他の実施形態では、ピンチヘッドの機能は、閉塞部材165の一方または両方の延びた縁部と交換することができる。ピンチヘッド161は、Oリングまたは他の部材などのガスケット162を備え、それは、ピンチヘッド161と協働して、例えば、閉塞されたラインのうちの1つに漏れがある場合に、サイクラ14ハウジングへの流体(例えば、空気または液体)の進入に抵抗するのを補助する。蛇腹形ガスケット162は、サイクラ・ハウジングの前面パネルに取り付けられたピンチヘッド・ガイド163に取り付けられ、ピンチヘッド161がピンチヘッド・ガイド163を通過する(つまり、パネルは、ドア141を開けることによって露出する)。ピンチヘッド・ガイド163は、ピンチヘッド161の摺動に対する拘束および/または実質的な抵抗なしに、ピンチヘッド161がピンチヘッド・ガイド163を出入りすることを可能にする。枢動軸164は、それぞれフック形の枢動軸軸受(例えば、標準的なドア・ヒンジで見受けられるような)を具備した例示の実施形態の板バネ165を備える一対の対向した閉塞部材をピンチヘッド161に取り付ける。
。つまり、ピンチヘッド161上の軸ガイドの開口と板バネ165上のフック形軸受によって形成された開口とは、互いに整列され、枢動軸164は、開口に挿入され、その結果、ピンチヘッド161および板バネ165は、互いに枢動可能に接続される。板バネ165は、鋼などの任意の適切な材料から作られることが可能であり、無負荷のときに概して水平となるように配置されることが可能である。板バネ165の反対の端部は、同様のフック形軸受を備えており、それは、第2枢動軸164によって線形調整器167に枢動可能に接続される。この実施形態では、力アクチュエータは、板バネ165間に配置された空気袋166を備え、その結果、流体(例えば、圧力下の空気)が空気袋に導入されたときに、空気袋は、枢動軸164間の領域で拡張して板バネ165を互いから離すように押すことが可能ある。線形調整器167は、サイクラ・ハウジング82に固定されている一方で、ピンチヘッド161は、浮遊可能とされるが、その移動は、ピンチヘッド・ガイド163によって案内される。線形調整器167は、その下端にスロット孔を備え、アセンブリ全体が所定位置に調整されることを可能にし、従って、閉塞部147がサイクラ14に設置されたときに、ピンチヘッドを適切に配置することを可能にする。ターンバックル168または他の構成が、ハウジング82に対する線形調整器167の位置を調整するのを補助するために使用されることが可能である。つまり、ピンチヘッド161は、一般に適切に配置される必要があり、その結果、板バネ165が互いの近傍に配置され、空気袋166が実質的に空にされるかまたは大気圧にされた状態で、ピンチヘッド161は、患者および導出ラインを適切に圧迫して、チューブの切断、撚れ、または破損なしに、チューブの流れを閉じるように挟む。線形調整器167のスロット開口は、この閉塞部147の所定位置への高精度な位置決めおよび固定を可能にする。解放刃169によって提供されるようなオーバーライド解放装置は、随意に板バネ165間に配置され、より詳細に下で議論されるように、板バネ165を押し離すように回転されることが可能であり、それによって、ピンチヘッド161をピンチヘッド・ガイド163内に後退させる。解放刃169は、手動で動作されることが可能であり、例えば、電源喪失、空気袋166の故障、または他の状況の場合に、閉塞部147を無効化する。
【0216】
閉塞部の或る実施形態の構築において有益なことがある或る構成要素の付加的な構成および記述が、米国特許第6,302,653号明細書に提供されている。板バネ165は、曲げ力に弾性的に抗し、所望の本数の押し出しチューブを閉塞すべく、曲げ変位に応じて、十分な復元力を提供するのに十分な長手方向剛性(曲げに対する抵抗)を有する、任意の材料から構築されることが可能である。例示の実施形態では、各板バネは、無負荷であり、シートまたはプレートの形状であるときに、本質的に平坦である。一又は複数の可撓性閉塞部材(バネ部材)を利用した代替の実施形態では、曲げ力に弾性的に抗し、所望の本数の押し出しチューブを閉塞すべく、曲げ変位に応じて、十分な復元力を提供するのに十分な長手方向剛性(曲げに対する抵抗)を有する、任意の閉塞部材が利用されることが可能である。潜在的に適切なバネ部材は、当業者に明白なように、筒状、プリズム形、台形、正方形、または長方形の棒またはビーム、I形ビーム、楕円形ビーム、椀状面などの、多種多様な形状を有することができるが、これらに限定されるものではない。当業者は、本教示および特定の用途の要件に基づいて板バネ165の適切な材料および寸法を容易に選択することができる。
【0217】
図40は、閉塞部147の平面図を示しており、空気袋166からは空気が抜かれ、板バネ165は、互いに近傍に配置され、平坦または略平坦な状態である。この位置では、ピンチヘッド161は、ピンチヘッド・ガイドとサイクラ14の前面パネル(つまり、ドア141内部のパネル)から完全に拡張され、患者および導出ラインを閉塞することを可能にする。一方、図41は、膨張した状態の空気袋166を示しており、板バネ165は、互いから離れるように押され、それによって、ピンチヘッド161をピンチヘッド・ガイド163内に後退させる(なお、線形調整器167は、サイクラ・ハウジング82に対する所定位置に固定され、従って、ハウジング82の前面パネルに対して固定される。板バネ165は、互いから押し離されるように移動され、ピンチヘッド161がピンチヘッド・ガイド163を自由に出入りして移動するように配置されるので、ピンチヘッド161は、前面パネルに対して後方に移動する)。この条件は、ピンチヘッド161が患者および導出ラインを閉塞するのを防止し、閉塞部147がサイクラ14の通常動作中のままの状態であるという条件である。つまり、上で議論したように、サイクラ14の様々な構成要素は、空気圧/真空を使用して動作することが可能であり、例えば、制御面148は、適切な空気圧/真空駆動下で動作することがあり、カセット24に対する流体圧送およびバルブ動作をもたらす。このように、サイクラ14が通常動作しているときには、サイクラ14は、十分な空気圧を生じさせることが可能であり、システム動作を制御するだけでなく、空気袋166を膨張させて、ピンチヘッド161を後退させ、患者および導出ラインの閉塞を防止する。しかし、システム・シャットダウン、故障、誤り、または他の条件の場合には、空気袋166への空気圧を止めることが可能であり、それによって、空気袋166の空気を抜き、板バネ165を真っすぐにし、ピンチヘッド161を拡張してラインを閉塞する。示された構成の1つの考え得る利点は、板バネ165の復元力が平衡を保たれるということであり、その結果、ピンチヘッド161は、ピンチヘッド・ガイド163に対して移動するときに、一般にはピンチヘッド・ガイド163に拘束されない。加えて、板バネ165の対向する力は、アセンブリの枢動軸およびブッシングの非対称な磨耗量を減少させる傾向がある。また、一旦板バネ165が略直線位置になると、板バネ165は、ピンチヘッド161の長さに概して沿った方向に力を与えることができ、その力は、板バネ165上に空気袋166によって与えられる力よりも数倍大きく、それによって、板バネ165を互いに分離し、ピンチヘッド161を後退させる。さらに、板バネ165が平坦または略平坦な状態では、ピンチヘッド161によって与えられる圧迫力を克服するために、押し潰されたチューブ中の流体によって与えられる必要がある力は、それらの端部で板バネに加えられ、平坦にされた板バネの平面に本質的に平行なときに必要とされる比較的大きな力に達し、それによって、平坦にされた板バネのカラム安定性を壊すことによって板バネを座屈させる。その結果、閉塞部147は、ラインを閉塞するのに非常に効果的であり、故障の機会を少なくすることができる一方で、ピンチヘッド161を後退させるために空気袋166によって加えられる比較的小さな力を要求する。例示の実施形態の2重の板バネ配置は、板バネを曲げるのに必要な任意の所定の力に対して、および/または、板バネの任意の所定のサイズおよび厚さに対して、ピンチヘッドによって提供される圧迫力を著しく増大させるという付加的な利点を有することがある。
【0218】
幾つかの状況では、ライン上の閉塞部147の力が比較的大きく、ドア141を開くことを困難にすることがある。つまり、ピンチヘッド161がラインに接触して閉塞するときに、ドア141は、閉塞部147の力に対向しなければならず、幾つかの場合には、これは、ドア141を閉じ状態に維持するラッチを手で動作させることが困難になるかまたは不可能になることがある。勿論、サイクラ14が始動され、動作するための空気圧を発生している場合には、閉塞部空気袋166は、膨張することができ、閉塞部ピンチヘッド161が後退される。しかし、サイクラ14でのポンプ故障のような幾つかの場合には、空気袋166の膨張は、不可能または困難であることがある。ドアの開放を可能にするために、閉塞部147は、手動解放を備えることが可能である。この例示の実施形態では、閉塞部147は、図38および図39に示されるような解放刃169を備えることが可能であり、それは、板バネ165間の回転動作のために枢動可能に取り付けられた一対の羽根を備えている。停止の際には、解放刃羽根は、図39に示されるようにバネと整列することが可能であり、閉塞部が通常動作することを可能にする。しかし、板バネ165が平坦な状態であり、ピンチヘッド161が手動で後退される必要がある場合には、解放刃169は、例えば、六角レンチまたは他のツールを解放刃169に係合させ、解放刃169を回すことによって回転されることが可能であり、その結果、羽根は、板バネ165を離すように押す。六角レンチまたは他のツールは、サイクラ14のハウジング82の開口(例えば、サイクラ・ハウジング82の左側ハンドル凹部近傍の開口)に挿入され、閉塞部147を係合解除すべく動作され、ドア141の開放を可能にすることが可能である。
[ポンプ供給体積測定]
本発明の別の態様では、サイクラ14は、流量計、重量計、または流体体積もしくは重量の他の直接的な測定手段の使用なしに、システム10の様々なラインに供給される流体の体積を判断することが可能である。例えば、一実施形態では、カセット24内のポンプなどのポンプによって移動される流体の体積は、ポンプを駆動するために使用される気体の圧力測定値に基づいて判断されることが可能である。一実施形態では、体積判断は、2室を互いから分離し、分離した2室のそれぞれの圧力を測定し、2室内の圧力が部分的にまたは実質的に等しくなることを可能にし(2室を流体接続することによって)、圧力を測定することによってなされることができる。測定した圧力と、2室のうちの一方の既知の容積と、均一化が断熱で生じるという仮定とを使用して、他方の室(例えば、ポンプ室)の体積を演算されることができる。一実施形態では、2室を流体接続した後で測定された圧力は、実質的には互いに等しくないことがある(つまり、2室内の圧力は、完全には均一化していないことがある)。しかし、下に説明されるように、これらの実質的に等しくない圧力は、ポンプ制御室の体積を判断するために使用されることが可能である。
【0219】
例えば、図42は、カセット24のポンプ室181、付随する制御構成要素、および流入経路/流出経路の模式図を示している。この図示の例では、ヒータバッグ22と、ヒータバッグ・ライン26と、カセット24を通じた流体経路とを備えることが可能である液体供給源は、ポンプ室の上側開口191に液体入力を設けるように示されている。液体出口は、この例では、ポンプ室181の下側開口187から液体を受けるように示され、例えば、カセット24の流体経路および患者ライン34を備えることが可能である。液体供給源は、バルブ(例えば、バルブ・ポート192を備える)を備えることが可能であり、それは、開閉してポンプ室181との間の流れを許容/妨害することができる。同様に、液体出口は、バルブ(例えば、バルブ・ポート190を備える)を備えることが可能であり、それは、開閉してポンプ室181との間の流れを許容/妨害することができる。勿論、液体供給源は、一又は複数の透析液容器、患者ライン、カセット24内の一又は複数の流路、または他の液体源などの任意の適切な構成を備えることができ、同様に、液体出口は、導出ライン、ヒータバッグおよびヒータバッグ・ライン、カセット24内の一又は複数の流路、または他の液体出口などの任意の適切な構成を備えることができる。一般的に言えば、ポンプ室181(つまり、図42における膜14の左側)は、動作中に水または透析液などの非圧縮液体で充填される。しかし、空気または他の気体は、初期運転中、準備中、または下で議論されるような他の状況などの幾つかの状況でポンプ室181内に存在することがある。また、ポンプの容積および/または圧力検出に関する本発明の態様は、カセット24のポンプ構成に関して記述されるが、本発明の態様は、任意の適切なポンプまたは流体移動システムと共に使用されることが可能であると理解されるべきである。
【0220】
さらに、図42は、膜15および制御面148(それらは互いに隣接する)の右方に、上で議論したように、ポンプ室181に対する制御面148のポンプ制御領域1482に関連づけられた嵌め合いブロック170における空隙または他の空間として形成されることがある制御室171を模式的に示している。制御室171には、適切な空気圧が導入され、それによって、膜15/制御領域1482を移動させて、ポンプ室181内の液体の圧送を達成する。制御室171は、ラインL0と連通することが可能であり、このラインは、別のラインL1と、圧力源(例えば、空気圧源または真空源)と連通する第1バルブX1とに分岐する。圧力源は、ピストン・ポンプを備え、それによって、室内をピストンが移動して制御室171に供給される圧力を制御することが可能であるか、または、異なる種類の圧力ポンプおよび/またはタンクを備え、それによって、適切な気体圧力を供給して膜15/制御領域1482を移動させ、ポンプ作用を行なうことが可能である。さらに、ラインL0は、別のラインL2および参照室(例えば、下に述べられる測定を行なうように適切に構成された空間)と連通する第2バルブX2に導く。さらに、参照室は、通気口または他の参照圧力(例えば、大気圧源または他の参照圧力源)に導くバルブX3を有したラインL3と連通する。バルブX1,X2,およびX3のそれぞれは、独立して制御されることが可能である。圧力センサは、制御室および参照室に関連する圧力を測定するように配置されることが可能であり、例えば、1つのセンサを制御室171に、別のセンサを参照室に配置する。これらの圧力センサは、任意の適切な方法で圧力を検出するように配置および動作されることが可能である。圧力センサは、サイクラ14用の制御システム16、または、ポンプもしくは他の特徴部によって供給される体積を判断する他の適切なプロセッサと連通することが可能である。
【0221】
上述したように、図42に示されるポンプ機構のバルブおよび他の構成要素は、ポンプ室181、液体供給源、および/または液体出口の圧力を測定する、および/または、ポンプ室181から液体供給源または液体出口に供給される液体の体積を測定するように制御されることができる。体積測定に関して、ポンプ室181から供給される流体の体積を判断するために使用される1つの技術は、2つの異なるポンプ状態の参照室内の圧力に対して制御室171の相対圧力を比較することである。相対圧力を比較することによって、制御室171の容積の変化を判断することができ、それは、ポンプ室181の容積の変化に対応し、ポンプ室181から供給され、該ポンプ室に受ける体積に反映される。例えば、制御室171内の圧力がポンプ室導入サイクル中に低下され(例えば、開いたバルブX1を通じて圧力源から負圧を加えることによって)、その結果、膜15およびポンプ制御領域1482を制御室壁の少なくとも一部と接触するように(または膜15/領域1482の別の適した位置に)引き込んだ後で、圧力源から制御室を分離するようにバルブX1を閉じ、バルブX2を閉じ、それによって、制御室171から参照室を分離する。バルブX3は、開いて参照室を大気圧に通気することが可能であり、次に、閉じて参照室を分離する。バルブX1が閉じ、制御室および参照室内の圧力が測定された状態で、次に、バルブX2を開き、制御室および参照室内の圧力均一化を開始させる。参照室および制御室の初期圧力は、参照室の既知の容積と、均一化が開始された後(必ずしも完了している必要はない)で測定された圧力と共に、制御室の容積を判断するために使用されることがある。この処理は、シート15/制御領域1482がポンプ室181のスペーサ要素50と接触するように押し込まれるときに、ポンプ供給サイクルの終端で繰り返されることが可能である。供給サイクルの終端での制御室容積を導入サイクルの終端での体積と比較することによって、ポンプから供給された液体の体積を判断することができる。
【0222】
概念的には、圧力均一化処理(例えば、バルブX2を開く際の)は、断熱で、つまり、制御室および参照室の空気とその周囲環境との間に生じる熱伝導なしに生じるものとして見られる。その概念的な考えは、バルブX2が閉じるときにバルブX2に仮想ピストンが初期的に位置し、バルブX2が開くときに仮想ピストンがラインL0またはL2中で移動して制御室および参照室内の圧力を均一化させるということである。(a)圧力均一化処理が比較的速く起こるので、(b)制御室および参照室内の空気は、元素の濃度が略同じであり、(c)温度が同様であり、圧力均一化が断熱で起こるという想定は、体積測定に小さな誤差のみを導入することがある。また、一実施形態では、均一化が開始された後で得られた圧力は、実質的な均一化が生じる前に測定されることが可能であり、さらに、ポンプ室容積を判断するために使用される初期圧力測定と最終圧力測定との間の時間を短くする。さらに、誤差は、例えば、膜15/制御面148、カセット24、制御室171、ライン、参照室などに対して低い熱伝導率の材料を使用することによって減少させることができ、その結果、熱伝導を低減する。
【0223】
断熱系が、バルブX2が閉じた状態と、バルブX2が開き、圧力が均一化する状態との間に存在するという想定で、次のことが成り立つ。
PVγ=定数 …(1)
ここで、Pは圧力であり、Vは体積であり、γは定数に等しい(例えば、気体が空気などの二原子の場合には約1.4)。このように、次式は、バルブX2を開き圧力均一化が生じる前後の制御室および参照室内の圧力および容積を関連づけるように書かれることができる。
【0224】
PrVrγ+PdVdγ=定数=PfVfγ …(2)
ここで、Prは、バルブX2を開く前の参照室ならびにラインL2およびL3の圧力であり、Vrは、バルブX2を開く前の参照室ならびにラインL2およびL3の容積であり、Pdは、バルブX2を開く前の制御室ならびにラインL0およびL1の圧力であり、Vdは、バルブX2を開く前の制御室ならびにラインL0およびL1の容積であり、Pfは、バルブX2を開いた後の参照室および制御室の均一化した圧力であり、Vfは、制御室、参照室、ならびにラインL0、L1、L2、およびL3を備えたシステム全体の容積である(つまり、Vf=Vd+Vr)。Pr,Vr,Pd,Pf,およびγは既知であり、Vf=Vr+Vdであるので、この数式は、Vdについて解くために使用されることができる(ここでは、特許請求の範囲を含めて、容積値などを判断する際の「測定された圧力」に使用するように言及されるが、そのような測定された圧力値は、必ずしもpsi単位などの任意の特定の形態である必要がないと理解されるべきである)。これに代えて、「測定された圧力」または「判断された圧力」は、電位、抵抗値、マルチビットのデジタル値などのような圧力を代表する任意の値を含むことが可能である。例えば、ポンプ制御室内の圧力を測定するために使用される圧力変換器は、ポンプ制御室内の圧力を代表するアナログの電位、抵抗、または他の表示を出力することが可能である。トランスデューサからの生の出力は、測定された圧力、および/またはトランスデューサからのアナログ出力を使用して生成されたデジタル値、トランスデューサ出力に基づいて生成されるpsiまたは他の値などのような出力の或る修正された形態として使用されることも可能である。同じことが、判断された容積などの他の値にも言えるが、必ずしも立方センチメートルなどの特定の形態である必要はない。これに代えて、判断された容積は、容積の代表である任意の値を含むことが可能であり、例えば、立方センチメートルで実際の容積を生成するために使用されることができる。
【0225】
ポンプによって供給される体積を判断するための流体管理システム(FMS)技術の実施形態では、バルブX2を開く際の圧力均一化が断熱系で生じると想定される。このように、下の式(3)は、圧力均一化前後の参照室系の容積の関係を与える。
【0226】
Vrf=Vri(Pf/Patm)-(1/γ) …(3)
ここで、Vrfは、参照室の容積、ラインL2およびL3の容積、ならびに開いた後でバルブX2の左または右に移動することが可能である「ピストン」の移動がもたらす容積調整を含む参照室系の最終(均一化後)容積であり、Vriは、参照室ならびに「ピストン」がバルブX2に位置する状態でのラインL2およびL3の初期(均一化前)容積であり、Pfは、バルブX2が開いた後の最終均一化圧力であり、Patmは、バルブX2が開く前の(この例では大気圧)参照室の初期圧力である。同様に、式(4)は、圧力均一化前後の制御室系の容積の関係を与える。
【0227】
Vdf=Vdi(Pf/Pdi)-(1/γ) …(4)
ここで、Vdfは、制御室の容積、ラインL0およびL1の容積、ならびに開いた後でバルブX2の左または右に移動することが可能である「ピストン」の移動がもたらす容積調整を含む制御室系の最終容積であり、Vdiは、制御室ならびに「ピストン」がバルブX2にある位置する状態でのラインL0およびL1の初期容積であり、Pfは、バルブX2が開いた後の最終圧力であり、Pdiは、バルブX2が開く前の制御室の初期圧力である。
【0228】
参照室系および制御室系の容積は、バルブX2が開き、圧力を均一化させた後で、同じ絶対量だけ変化するが、式(5)に示されるように、符号が異なる(例えば、バルブX2が開いたときに容積変化が「ピストン」の左または右への移動によってもたらされるからである)。
【0229】
ΔVr=(-l)ΔVd …(5)
(なお、この参照室および制御室の容積変化は、仮想ピストンの移動のみによるものである。参照室および制御室は、通常状態下の均一化処理中に実際には容積が変化しない)。また、式(3)からの関係を使用して、参照室系の容積変化は、次式から与えられる。
【0230】
ΔVr=Vrf-Vri=Vri(-1+(Pf/Patm)-(1/γ)) …(6)
同様に、式(4)を使用して、制御室系の容積変化は、次式から与えられる。
【0231】
ΔVd=Vdf-Vdi=Vdi(-1+(Pf/Pdi)-(1/γ)) …(7)
Vriが既知であり、PfおよびPatmが測定されるかまたは既知であるので、ΔVrを演算することができ、それは式(5)によれば(-)ΔVdと等しいと想定される。従って、Vdi(参照室との圧力均一化前の制御室系の容積)は、式(7)を使用して演算されることができる。この実施形態では、Vdiは、L0およびL1が固定および既知の量である、制御室ならびにラインL0およびL1の容積を表わしている。VdiからL0およびL1を減算して、制御室の容積を単独で得る。上の式(7)を使用することによって、例えば、(例えば、導入サイクルの終端および導出サイクルの終端の)ポンプ動作の前(Vdi1)および後(Vdi2)の両方で、制御室の容積変化を判断することができ、従って、ポンプによって供給される(またはポンプに取り込まれる)流体の体積の測定値を提供する。例えば、Vdi1が充填行程の終端での制御室の容積であり、Vdi2がそれに続く供給行程の終端での制御室の容積である場合には、ポンプによって供給される流体の体積は、Vdi2からVdi1を減算することによって推定されることが可能である。この測定は圧力に基づいてなるので、体積判断は、圧送行程が完全か部分的であるかに拘わらず、ポンプ室181内の膜15/ポンプ制御領域1482の殆ど如何なる位置に対してもなされることができる。しかし、充填および供給行程の終端になされた測定は、ポンプ動作および/または流量への影響が殆どないか影響がまったくなしに達成されることができる。
【0232】
本発明の一態様は、制御室の容積判断および/または他の目的に使用される圧力測定値を特定する技術に関与している。例えば、圧力センサは、制御室内の圧力および参照室内の圧力を検出するために使用されることが可能であるが、検出された圧力値は、バルブの開閉、制御室への圧力導入、参照室の大気圧または他の参照圧力への通気などに応じて変化することがある。また、一実施形態では、制御室と参照室との間の圧力均一化前の時点から均一化後まで断熱系が存在すると想定されるので、時間的に近いタイミングで測定された適切な圧力値を特定することは、誤差を低減するのを補助することが可能である(例えば、圧力測定値間での短い経過時間は、システムで交換される熱量を減少させることが可能である)。このように、測定された圧力値は、注意深く選択される必要がある場合があり、それによって、適切な圧力が、ポンプなどによって供給される体積を判断するために使用されることを確実にするのを補助する。
【0233】
説明の目的のために、図43は、バルブX2を開く前の時点から、バルブX2を開いて2室内の圧力を均一化させて暫くするまでの、制御室および参照室に対する例示の圧力値のプロットを示している。この例示の実施形態では、制御室内の圧力は、均一化前の参照室内の圧力よりも高いが、制御室内圧力は、充填行程中および/またはその終端などの幾つかの構成における均一化前の参照室内圧力よりも低いことがあると理解されるべきである。また、図43におけるプロットは、均一化圧力に印を付けた水平線を示すが、この線が明瞭さのためにのみ示されていると理解されるべきである。均一化圧力は、一般にバルブX2を開く前には知られることはない。この実施形態では、圧力センサは、制御室および参照室の両方に対して約2000Hzの頻度で圧力を検出するが、他の適切なサンプリング・レートを使用するもことができる。バルブX2を開く前に、制御室および参照室内の圧力は略一定であり、2室には空気または他の流体はまったく導入されていない。このように、バルブX1およびX3は、一般にはバルブX2を開く前に閉じる。また、バルブ・ポート190および192などのポンプ室に導くバルブは、ポンプ室、液体供給源、または液体出口における圧力変化の影響を防ぐために閉じることが可能である。
【0234】
初めに、測定された圧力データは、制御室および参照室に対する初期圧力(つまり、PdおよびPr)を特定するために処理される。1つの例示の実施形態では、初期圧力は、測定された圧力データで使用される10点のスライド・ウィンドウの解析に基づいて特定される。この解析は、各ウィンドウ内のデータ(またはデータセット)に対する最近似線を、例えば最小二乗法を使用して生成し、最近似線の傾きを判断することを含む。例えば、新しい圧力が制御室または参照室に対して測定される都度、最小二乗近似線が、最新の測定値および9個の先の圧力測定値を含むデータセットに対して判断されることが可能である。この処理は、圧力データの幾つかのセットに対して繰り返されることが可能であり、判断は、最小二乗近似線の傾斜が最初に負(または非零値)になったときになされることが可能であり、後続のデータセットに対してさらに負の方へ(または零傾斜から逸れるように)成長させ続ける。最小二乗近似線が適切な増加する非零傾斜を有する点は、2室の初期圧力を特定するために使用されることが可能である(つまり、バルブX2が開く前の時点で)。
【0235】
一実施形態では、参照室および制御室に対する初期圧力値は、連続した5個のデータセットの最後にあると判断されることが可能であり、ここでは、それらのデータセットに対する最近似線の傾斜が、第1データセットから第5データセットまで増加し、第1データセットに対する最近似線の傾斜が、最初に非零になる(つまり、第1データセットに先行するデータセットに対する最近似線の傾斜が、零であるかまたは十分に非零ではない)。例えば、圧力センサは、1/2ミリ秒毎にサンプリングすることが可能であり(または他のサンプリング・レート)、バルブX2を開く前の時点にサンプリングを開始する。圧力測定値がなされる都度、サイクラ14は、先の9個の測定値と共に最新の測定値を取り、セット中の10個のデータ点に対する最近似線を生成することが可能である。次の圧力測定値を取る際に(例えば、1/2ミリ秒後)、サイクラ14は、9個の先の測定値と共に測定値を取り、再びセット中の10点に対する最近似線を生成することが可能である。この処理は、繰り返されることが可能であり、サイクラ14は、1セット10個のデータ点に対する最近似線の傾斜が最初に非零になったとき(または適切に傾斜したとき)を判断することが可能であり、例えば、10個のデータ点の5個の後続のセットに対する最近似線の傾斜が個々の後のデータセットに応じて増加することを判断することが可能である。使用すべき特定の圧力測定値を特定するために、1つの技術は、制御室または参照室に対する初期圧力(つまり、PdまたはPr)として使用される測定値として、第5データセット(つまり、最近似線が一貫した傾斜で増加していることが分かり、第1測定値が時間的に最も早く得られた圧力測定値である第5データセット)中の第3測定値を選択することである。この選択は、経験的方法を使用して選択された(例えば、圧力測定値をプロットし、次に、圧力が均一化処理を開始したときを最良に表わす点を選択する)。勿論、適切な初期圧力を選択するために他の技術を使用することも可能である。
【0236】
1つの例示の実施形態では、選択されたPdおよびPrの測定値が生じたときが、所望の時間閾値内(例えば、互いに1~2ミリ秒以内)にあったことの確認がなされることが可能である。例えば、上述した技術が、制御室内圧力および参照室内圧力を解析し、圧力均一化が開始される直前に圧力測定値(従って、時点)を特定するために使用される場合には、圧力が測定されるタイミングは、互いに比較的接近しているべきである。そうでなければ、圧力測定値の一方または両方を無効化する誤差または他の誤り条件があったことになる。生じたPdおよびPrが適切に互いに接近するタイミングを確認することによって、サイクラ14は、初期圧力が適切に特定されたと確認することが可能である。
【0237】
制御室および参照室内の圧力が均一化し、その結果、測定された室内圧力がポンプ室容積を安定して判断するために使用されることができるタイミングを特定するために、サイクラ14は、制御室および参照室の両方に対する圧力測定値からの一連のデータ点を含むデータセットを解析し、データセットのそれぞれに対する最近似線を判断し(例えば、最小二乗法を使用して)、制御室用のデータセットおよび参照室用のデータセットに対する最近似線の傾斜が、最初に適切に互いに類似する(例えば、傾斜は両方とも零近傍であるかまたは互いに閾値内にある値を有する)タイミングを特定することが可能である。最近似線の傾斜が同様であるかまたは零に近いときに、圧力は、均一化したと判断されることが可能である。いずれかのデータセット用の第1圧力測定値は、最終均一化圧力(つまり、Pf)として使用されることも可能である。1つの例示の実施形態では、圧力均一化が、バルブX2を開いた後、一般に約200~400ミリ秒以内に生じ、均一化の大部分が、約50ミリ秒以内に生じたことが分かった。従って、制御室および参照室内の圧力は、バルブX2を開く前の時点から均一化が達成される時点まで、均一化処理全体の間に約400~800回、またはそれ以上の回数、サンプリングされることが可能である。
【0238】
幾つかの場合には、代替のFMS技術を使用して、制御室容積測定の正確さを向上させることが望ましいことがある。圧送されている液体と制御室気体と参照室気体との間の温度の実質的な差は、圧力均一化が断熱で生じるという想定に基づいた演算に著しい誤差を導入することがある。制御室と参照室との間の十分な圧力均一化まで圧力測定を行なうのを待機することは、過剰な量の熱伝導を生じさせることがある。本発明の一態様では、互いに実質的に不等である、つまり、完全な均一化が生じる前に測定される、ポンプ室および参照室の圧力値は、ポンプ室容積を判断するために使用されることが可能である。
【0239】
一実施形態では、熱伝導は最小限となることがあり、断熱演算誤差は、バルブX2の開放から完全な圧力均一化を通じた均一化期間全体に亘って室内圧力を測定し、断熱演算に対する均一化期間にサンプリング点を選択することによって低減される。APDシステムの一実施形態では、制御室と参照室との間の完全な圧力均一化に先立って得られる測定室内圧力は、ポンプ室容積を判断するために使用されることができる。一実施形態では、これらの圧力値は、2室が最初に流体接続され、均一化が開始されてから約50ミリ秒後に測定されることが可能である。上述したように、一実施形態では、完全な均一化は、バルブX2が開いてから約200~400ミリ秒後に生じることがある。このように、測定圧力は、バルブX2を開いた(または、均一化が開始された)後の時点で得られることが可能であり、それは、均一化期間全体の約10%~50%またはそれ以下である。別の方法では、測定圧力は、圧力均一化の50~70%が生じた時点で得られることが可能である(つまり、参照室およびポンプ室内圧力は、初期室内圧力と最終均一化圧力との間の差の約50~70%変化した。コンピュータ対応のコントローラを使用して、制御室および参照室内の実質的な回数の圧力測定が、均一化期間中になされ、格納され、および解析されることができる(例えば、40~100回の個々の圧力測定)。均一化期間の最初の50ミリ秒におけるサンプリングされた時点のうち、断熱演算を行なうための理論上最適化されたサンプリング点が存在する(例えば、最適化されたサンプリング点が、バルブX2を開いた後、約50ミリ秒で生じる、図43を参照)。最適化されたサンプリング点は、バルブX2の開放の後の十分に早い時点で生じることが可能であり、それによって、2室の気体体積間の熱伝達を最小限にするが、圧力センサの特性とバルブ作動の遅れとによる圧力測定の著しい誤差を導入するほど早い時点では生じない。しかし、図43で見ることができるように、ポンプ室および参照室内の圧力は、この時点では互いに実質的に等しくないことがあり、従って、均一化は完了していない場合がある(なお、幾つかの場合では、バルブX2を開いた直後に信頼できる圧力測定値を得ることが技術的に困難である場合がある。例えば、圧力センサの固有の不正確さ、バルブX2を完全に開くのに必要な時間、および、バルブX2を開いた直後の制御室または参照室の一方の圧力の急激な初期変化などの理由がある)。
【0240】
圧力均一化中に、制御室および参照室内の最終圧力が同じでないときには、式(2)は次のようになる。
PriVriγ+PdiVdiγ=定数=PrfVrfγ+PdfVdfγ

…(8)
ここで、Pri=バルブX2を開く前の参照室内の圧力、Pdi=バルブX2を開く前の制御室の圧力、Prf=最終参照室内圧力、Pdf=最終制御室内圧力である。
【0241】
最適化アルゴリズムは、ΔVdおよびΔVrの絶対値間の差が均一化期間に亘って最小化(または所望の閾値以下に)される圧力均一化期間中の時点を選択するために使用されることができる(断熱処理では、この差は、式(5)によって示されるように、理想的にはゼロであるべきである。図43では、ΔVdおよびΔVrの絶対値間の差が最小化される時点は、50ミリ秒の線で生じ、「最終圧力が特定された時点」とマークされている)。まず、圧力データは、制御室および参照室から、バルブX2の開放と最終圧力均一化との間の複数点j=1~nで収集されることができる。Vri、つまり、圧力均一化前の参照室系の固定容積は公知であるので、Vrj(バルブX2を開いた後のサンプリング点jでの参照室系容積)の後続の値は、均一化曲線に沿った各サンプリング点Prjで式(3)を使用して演算されることができる。Vrjの個々のそのような値については、ΔVdに対する値は、式(5)および式(7)、つまり、Vrjの各値を使用して演算されることができ、従って、Vdij、Vdiに対する推定値、圧力均一化前の制御室系の容積を得る。Vrjの各値およびVdijのその対応する値を使用して、また、式(3)および式(4)を使用して、ΔVdおよびΔVrの絶対値の差は、均一化曲線に沿った各圧力測定点で演算されることができる。2乗した差の合計は、Vrjの各値およびその対応するVdijに対する圧力均一化中のVdiの演算値における誤差の測定値を提供する。|ΔVd|および|ΔVr|の2乗した差の最小の合計を得るための参照室内圧力をPrf、その関連する参照室容積をVrfとして示せば、Vrfに対応するデータ点PrfおよびVdfは、Vdiの最適化された推定値、制御室系初期容積を演算するために使用されることができる。
【0242】
PdfおよびPrfに対する最適化された値を、均一化曲線上の何処でキャプチャするかを判断する1つの方法は、次の通りである。
1)制御室および参照室から、バルブX2を開く直前に開始し、PrおよびPdが等しく近づく状態で終了する一連の圧力データセットを得る。Priがキャプチャされた最初の参照室内圧力である場合には、図32における後続のサンプリング点は、Prj=Pr1,Pr2,...Prnと称される。
【0243】
2)式(6)を使用して、Priの後の各Prjについて、対応するΔVrjを演算する(ここで、jは、Priの後のj番目の圧力データ点を表わす)。
ΔVrj=Vrj-Vri=Vri(-1+(Prj/Pri)-(1/γ)
3)個々のそのようなΔVrjについて、式(7)を使用して、対応するVdijを演算する。
例えば、
ΔVr1=Vri*(-1+(Pr1/Pri)-(1/γ)
ΔVd1=-ΔVr1
従って、
Vdi1=ΔVd1/(-1+(Pd1/Pdi)-(1/γ)
Vdin=ΔVdn/(-1+(Pdn/Pdi)-(1/γ)
1セットn個の制御室系初期容積(Vdi1~Vdin)を、圧力均一化中のそのセットの参照室内圧力データ点Pr1~Prnに基づいて演算して、今度は、圧力均一化期間全体に亘る制御室系初期容積(Vdi)の最適化された測定値を得る時点(f)を選択することができる。
【0244】
4)式(7)を使用して、Vdi1~Vdinの各々について、時点k=1~nに対する制御室内圧力測定値Pdを使用してΔVdj,kをすべて演算する。
Pr1に対応するVdiについて、
ΔVd1,1=Vdi1*(-1+(Pd1/Pdi)-(1/γ)
ΔVd1,2=Vdi1*(-1+(Pd2/Pdi)-(1/γ)



ΔVd1,n=Vdi1*(-1+(Pdn/Pdi)-(1/γ)



Prnに対応するVdiについて、
ΔVdn,l=Vdin*(-1+(Pd1/Pdi)-(1/γ)
ΔVdn,2=Vdin*(-1+(Pd2/Pdi)-(1/γ)



ΔVdn,n=Vdin*(-1+(Pdn/Pdi)-(1/γ)
5)ΔVrおよびΔVdj,kの絶対値間の2乗誤差の合計を取る。
【0245】
【数1】
[S1は、Vr1およびΔVrからの、Vdi、つまり、制御室系初期容積を判断するために第1データ点Pr1を使用したときの、均一化期間中のすべてのデータ点に亘って|ΔVd|から|ΔVr|を減算した2乗誤差の合計を表わしている]。
【0246】
【数2】
[S2は、Vr2およびΔVrからの、Vdi、つまり、制御室系初期容積を判断するために第2データ点Pr2を使用したときの、均一化期間中のすべてのデータ点に亘って|ΔVr|から|ΔVd|を減算した2乗誤差の合計を表わしている。]


【0247】
【数3】
6)次に、ステップ5から最小の2乗誤差合計S(または所望の閾値以下の値)を生成するPr1とPrnとの間のPrデータ点は、選択されたPrfとなり、そこから、Pdf、およびVdiの最適化された推定値、つまり、制御室初期容積を判断することができる。この例では、Pdfが、Prfと同時にまたは略同時に生じる。
【0248】
7)上記の手順は、制御室容積の推定値が望まれるときにはいつでも適用されることができるが、好ましくは各充填行程および各供給行程の終端に適用されることができる。充填行程の終端での最適化されたVdiと、対応する供給行程の終端での最適化されたVdiとの間の差は、ポンプによって供給される液体の体積を推定するために使用されることができる。
[空気検出]
本発明の別の態様は、ポンプ室181内の空気の存在と、存在する空気の体積(もしあれば)との判断を含んでいる。そのような判断は、例えば、準備シーケンスが適切に行なわれて、カセット24から空気を除去することを確実にするのを補助するのに、および/または、空気が患者に供給されないことを確実にするのを補助するのに重要である場合がある。或る実施形態では、例えば、ポンプ室181の底の下側開口187を通じて患者に流体を供給するときに、ポンプ室に捕集された空気または他の気体は、ポンプ室181内に残る傾向があることがあり、その気体の体積がポンプ室181の有効デッドスペースの容積よりも大きくない限り、患者に圧送されることを禁じられる。下で議論されるように、ポンプ室181に含まれる空気または他の気体の体積は、本発明の態様に従って判断されることができ、その気体は、気体の体積がポンプ室181の有効デッドスペースの容積よりも大きくなる前に、ポンプ室181から除去されることができる。
【0249】
ポンプ室181内の空気の量の判断は、充填行程の終端になされることが可能であり、従って、圧送処理を中断せずに行なうことが可能である。例えば、膜15およびポンプ制御領域1482がカセット24から引き離され、その結果、膜15/領域1482が制御室171の壁と接触させられる充填行程の終端では、バルブX2を閉じることが可能であり、参照室は、例えば、バルブX3を開くことによって、大気圧に通気される。その後、バルブX1およびX3を閉じることが可能であり、それによって、仮想「ピストン」をバルブX2に固定する。次に、バルブX2を開くことが可能であり、それによって、制御室の容積を判断すべく圧力測定を行なうときに上述したように、制御室および参照室内の圧力均一化を可能にする。
【0250】
ポンプ室181内に気泡がない場合には、参照室系の既知の初期容積と参照室の初期圧力とを使用して判断された、参照室の容積の変化(つまり、仮想「ピストン」の移動による)は、制御室系の既知の初期容積と制御室の初期圧力とを使用して判断された制御室の容積の変化と等しくなる(制御室の初期容積は、膜15/制御領域1482が制御室の壁と接触しているか、または、ポンプ室181のスペーサ要素50に接触している条件で既知であることがある)。しかし、ポンプ室181内に空気がある場合には、制御室の容積の変化は、制御室容積とポンプ室181内の気泡との間で実際には分散される。その結果、制御室系の既知の初期容積を使用して演算された制御室に対する容積の変化は、演算された参照室に対する容積の変化と等しくはならず、従って、ポンプ室内の空気の存在を示す旨の信号を出力する。
【0251】
ポンプ室181内に空気がある場合には、制御室系の初期容積Vdiは、式(9)に示されるように、制御室とラインL0およびL1との容積の合計(Vdfixと称される)と、ポンプ室181内の気泡の初期体積(Vbiと称される)とに実際には等しい。
【0252】
Vdi=Vbi+Vdfix …(9)
膜15/制御領域1482を充填行程の終端に制御室の壁に対して押し付けた状態で、制御室内の任意の空気空間の容積(例えば、制御室壁の溝または他の特徴部の存在、および、ラインL0およびL1の容積(合わせてVdfix)による)は、かなり正確に知られることができる(同様に、膜15/制御領域1482をポンプ室181のスペーサ要素50に対して押し付けた状態で、制御室ならびにラインL0およびL1の容積を正確に知ることができる)。充填行程の後、制御室系の容積は、正圧の制御室プレチャージを使用して試験される。この試験した容積と充填行程の終端で試験した容積との間の如何なる相違も、ポンプ室内の空気の体積を示すことが可能である。式(9)を式(7)に代入して、制御室の体積変化ΔVdが、次式で与えられる。
【0253】
ΔVd=(Vbi+Vdfix)(-1+(Pdf/Pdi)-(1/γ)
…(10)
ΔVrは式(6)から演算されることができ、式(5)から、ΔVr=(-1)ΔVdであることが分かるので、式(10)は、次のように書き換えられる。
【0254】
(-l)ΔVr=(Vbi+Vdfix)(-1+(Pdf/Pdi)-(1/γ)
…(11)
そして、再び、
Vbi=(-1)ΔVr/(-l+(Pdf/Pdi)-(1/γ))-Vdfix
…(12)
従って、サイクラ14は、式(12)を使用して、ポンプ室181内に空気があるか否か、および泡の凡その体積を判断することができる。この気泡体積の演算は、例えば、ΔVr(式(6)から判断されるような)およびΔVd(Vdi=Vdfixを使用して式(7)から判断されるような)の絶対値が、互いに等しくないことが分かった場合に行なわれることが可能である。つまり、Vdiは、ポンプ室181内に存在する空気がない場合に、Vdfixと等しくなるべきであり、従って、Vdiの代わりのVdfixを使用して式(7)から与えられるΔVdの絶対値は、ΔVrと等しくなる。
【0255】
充填行程が完了した後で、また、上述した方法によって空気が検出された場合には、ポンプ室側または膜15の制御側に空気が位置しているか否かを判断するのは難しいことがある。不完全な圧送行程および不完全なポンプ室の充填をもたらす圧送中の条件(例えば、閉塞など)によって、圧送される液体中に気泡が存在することがあるか、または、ポンプ膜15の制御(空気圧)側に残った空気がある場合がある。この時点では、負圧のポンプ室プレチャージを使用した断熱FMS測定を行うことができる。このFMS体積が正圧のプリチャージを伴うFMS体積と一致する場合には、膜は、両方向に自由に移動することができ、それは、ポンプ室が単に部分的に充填されたこと(例えば、場合によっては閉塞により)を示唆している。膜15/領域1482が制御室の内壁に接触したときに、負圧のポンプ室プレチャージFMS体積の値が公称の制御室空気体積と等しい場合には、柔軟性のある膜のポンプ室側の流体中に気泡があると断定することが可能である。
[頭高検出]
幾つかの状況では、カセット24またはシステムの他の部分に関する患者の高さ位置を判断することが有用である場合がある。例えば、幾つかの状況での透析患者は、導入または導出動作中に患者の腹膜腔を流入出する流体による「引っ張り」または他の動きを感じることがある。この感覚を低減すべく、サイクラ14は、導入および/または導出動作中に患者ライン34に加えられる圧力を低下させることが可能である。しかし、患者ライン34に対する圧力を適切に設定すべく、サイクラ14は、サイクラ14、ヒータバッグ22、ドレイン、またはシステムの他の部分に対する患者の高さを判断することが可能である。例えば、導入動作を行なうときに、患者の腹膜腔がヒータバッグ22またはカセット24の5フィート上に配置される場合には、サイクラ14は、患者の腹膜腔がサイクラ14の5フィート下に配置される場合によりも高い圧力を、透析液を送るために患者ライン34に使用する必要がある場合がある。この圧力は、例えば、所望の目標ポンプ室内圧力を達成すべく、可変時間間隔でバイナリ空気圧ソースバルブを交互に開閉することによって、調整されることが可能である。平均の所望の目標圧力は、例えば、ポンプ室内圧力が所定量だけ目標圧力を下回るときにバルブを開いたままにし、また、ポンプ室内圧力が所定量だけ目標圧力を上回るときにバルブを閉じたままにするように時間間隔を調整することによって維持されることができる。完全な行程体積の供給を維持するような如何なる調整も、ポンプ室の充填および/または供給時間を調整することによってなされることができる。可変オリフィス・ソースバルブが使用される場合には、目標ポンプ室内圧力は、バルブが開閉される間隔のタイミングを調整するのに加えて、ソースバルブのオリフィスを変化させることによって達することができる。患者位置の調整のために、サイクラ14は、流体の圧送を一瞬止めることが可能であり、それによって、患者ライン34をカセット中の一又は複数のポンプ室181と開放された流体連通状態のままにする(例えば、カセット24内の適切なバルブ・ポートを開くことによって)。しかし、ポンプ室181用の上側バルブ・ポート192などの他の流体ラインは閉じることが可能である。この条件では、ポンプのうちの1つに対する制御室内の圧力を測定することが可能である。本技術分野において周知であるように、この圧力は、患者の「頭」の高さに相関し、患者への流体の供給圧力を制御するためにサイクラ14によって使用されることができる。同様のアプローチは、ヒータバッグ22の「頭」の高さ(一般に知られる)および/または透析液容器20の頭高を判断するために使用されることができる。なぜならば、これらの構成要素の頭高は、適切な方法で流体を圧送するのに必要な圧力に影響がある場合があるからである。
[サイクラのノイズ低減特徴]
本発明の態様によれば、サイクラ14は、動作中にまたはアイドル状態で、サイクラ14によって生じたノイズを低減する一又は複数の特徴部を備えることが可能である。本発明の一態様では、サイクラ14は、該サイクラ14の様々な空気圧式装置を制御するために使用される圧力および真空の両方を生成する単一のポンプを備えることが可能である。一実施形態では、ポンプは、圧力および真空の両方を同時に生成することができ、それによって、全体的な実行時間を減少させ、ポンプをもっとゆっくりと(従って、より静かに)動作させることを可能にする。別の実施形態では、空気ポンプの始動および/または停止は、漸増または漸減する(例えば、始動時のポンプ速度または出力を増加させる、および/または、ポンプ速度または出力を減少させる)。この構成は、空気ポンプの始動および停止に関連する「オン/オフ」ノイズを低減するのを補助することが可能であり、従って、ポンプ・ノイズは、それほど気にならなくなる。別の実施形態では、空気ポンプは、目標出力圧力または体積流量に近づいた際に、低いデューティ・サイクルで動作されることが可能であり、その結果、空気ポンプは、停止されてその短時間後に作動されるのに対して、動作し続けることができる。その結果、空気ポンプのオン・オフのサイクルを繰り返すことによって生じる途絶を回避することが可能である。
【0256】
図44は、サイクラ14の内部区画の斜視図に示しており、ハウジング82の上部が取り外されている。この例示の実施形態では、サイクラ14は、単一の空気ポンプ83を備えており、それは、遮音筺体内に含まれた実際のポンプおよびモータ駆動部を備えている。遮音筺体は、金属製またはプラスチック製のフレームなどの外側シールドと、該外側シールド内の、モータおよびポンプを少なくとも部分的に包囲する遮音材料とを備えている。この空気ポンプ83は、空気圧および真空を同時に、例えば、一対のアキュムレータ・タンク84に提供することが可能である。タンク84のうちの1つは、正圧の空気を格納し、他のタンクは、真空を格納することが可能である。適切なマニホールドおよびバルブの構成は、タンク84に結合されることが可能であり、その結果、サイクラ14の構成要素に供給される空気圧/真空を提供および制御する。
【0257】
本発明の別の態様によれば、閉塞部などのサイクラ動作中の比較的一定の圧力または真空の供給を必要とする構成要素は、少なくとも比較的長い時間、空気圧/真空源から分離されることが可能である。例えば、サイクラ14中の閉塞部147は、一般に閉塞部の空気袋166内に一定の空気圧を必要とし、その結果、患者および導出ラインは、流れに対して開いたままである。サイクラ14が電源故障などなく適切に動作し続ける場合には、空気袋166は、システム動作の初めに一度膨張することがあり、シャットダウンされるまで膨張し続けることが可能である。発明者らは、幾つかの状況では、空気袋166などの比較的静的な空気動作式装置は、「きしみ」音を発生するか、または、供給された空気圧の僅かな変化に呼応してノイズを発生することを認識した。そのような変化は、空気袋166のサイズを僅かに変化させることがあり、それは、付随した機械部品を動かし、潜在的にノイズを発生させる。空気袋166および同様の空気圧式動力の要求がある他の構成要素の態様によれば、例えば、バルブを閉じることによって、空気ポンプ83および/またはタンク84から分離されることが可能であり、その結果、空気袋または他の空気圧式構成要素内の圧力変化を減少させ、従って、圧力変化の結果として生成されることがあるノイズを低減する。空気圧供給源から分離されることがある別の構成要素は、カセット取付位置145のドア141内の空気袋であり、それは、ドア141を閉じたときに、制御面148に対してカセット24を押し付けるように膨張する。他の適切な構成要素もまた、望まれるように分離されることがある。
【0258】
本発明の別の態様によれば、空気圧式構成要素が作動される速度および/または力は、構成要素の動作によって生成されるノイズを低減するように制御されることが可能である。例えば、カセット24上のバルブ・ポートを開閉するようにカセット膜15の対応する部分を動作させるバルブ制御領域1481の動作は、膜15がカセット24をピシャっと打つおよび/またはカセットからから離れる際の「ポップ」音を発生させることがある。そのようなノイズは、例えば、制御領域1481を移動させるために使用される空気の流量を制限することによって、バルブ制御領域1481の動作速度を制御して低減されることが可能である。空気の流れは、例えば、関連づけられた制御室に導くライン中に適切な小さいサイズのオリフィスを提供することによって、または、他の方法で制限されることが可能である。
【0259】
コントローラは、サイクラ14のマニホールドでの一又は複数の空気圧ソースバルブの作動にパルス幅変調(PWM)を適用するようにプログラムされることが可能である。カセット24の様々なバルブおよびポンプに供給される空気圧は、カセット24内のバルブまたはポンプの作動の期間中に、関連づけられたマニホールド・ソースバルブを繰り返し開閉させることによって制御されることができる。次に、膜15/制御面148に対する圧力の上昇率または下降率は、作動期間中の特定のマニホールド・バルブの「オン」部分の持続時間を調整することによって制御されることができる。マニホールド・ソースバルブにPWMを適用することの付加的な利点は、より高価で潜在的にそれほど信頼できない可変オリフィス・ソースバルブではなく、バイナリ(オン/オフ)ソースバルブだけを使用してカセット24の構成要素に可変空気圧を供給することができるということである。
【0260】
本発明の別の態様によれば、一又は複数のバルブ要素の移動は、バルブ繰返し運動によって生じたノイズを低減するように適切に減衰されることが可能である。例えば、流体(磁性流体など)に対して、高周波電磁バルブのバルブ要素を設けることが可能であり、それによって、要素の動作を減衰する、および/または、開位置と閉位置との間のバルブ要素の移動によって生じたノイズを低減させる。
【0261】
別の実施形態によれば、空気圧制御ライン通気口は、互いに接続される、および/または、共通の遮音空間に導かれることが可能であり、その結果、空気圧または真空の解放に関連するノイズが低減される。例えば、閉塞部空気袋166が通気されて、板バネ165が互いに向かって近づき、一又は複数のラインを閉塞することを可能にしたときには、解放された空気圧は、解放に関連するノイズがより容易に聞き取れることがある空間に解放されるのに対して、遮音筺体に解放されることが可能である。別の実施形態では、空気圧を解放するように構成されたラインは共に、空気真空を解放するように構成されたラインと接続されることが可能である。この接続(周囲環境、アキュムレータ、または他のものへの通気を含むことがある)によって、圧力/真空解放によって生じるノイズをさらに低減することが可能である。
[制御システム]
図1に関して記述された制御システム16は、透析治療を制御し、透析治療に関する情報を通信するなど、多数の機能を有している。これらの機能は、単一のコンピュータまたはプロセッサによって扱われることが可能であるが、それらの機能の実施が物理的および概念的に分離された状態が維持されるように、異なる機能に対して異なるコンピュータを使用することが望ましい場合がある。例えば、1台のコンピュータが透析機類を制御し、別のコンピュータがユーザ・インタフェースを制御するために使用されることが望ましい場合がある。
【0262】
図45は、制御システム16の典型的な実施を図示するブロック図を示しており、制御システムは、透析機類を制御するコンピュータ(「自動化コンピュータ」300)と、ユーザ・インタフェースを制御する個別のコンピュータ(「ユーザ・インタフェース・コンピュータ」302)とを備える。記述されるように、セーフティクリティカル・システム機能は、専ら自動化コンピュータ300上で実行されることが可能であり、その結果、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、セーフティクリティカル機能の実行から分離される。
【0263】
自動化コンピュータ300は、透析治療を実施するバルブ、ヒータ、およびポンプなどのハードウェアを制御する。加えて、自動化コンピュータ300は、ここでさらに記述されるように、治療の順序付けをし、ユーザ・インタフェースの「モデル」を維持する。示されるように、自動化コンピュータ300は、コンピュータ処理ユニット(CPU)/メモリ304と、フラッシュディスク・ファイル・システム306と、ネットワーク・インタフェース308と、ハードウェア・インタフェース310を備える。ハードウェア・インタフェース310は、センサ/アクチュエータ312に結合される。この結合は、自動化コンピュータ300がセンサを読み、APDシステムのハードウェア・アクチュエータを制御して治療動作を監視し、治療動作を行なうことを可能にする。ネットワーク・インタフェース308は、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302に自動化コンピュータ300を結合するインタフェースを提供する。
【0264】
ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、ユーザおよび外部装置および実体を含む外部世界とのデータ交換を可能にする構成要素を制御する。ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、コンピュータ処理ユニット(CPU)/メモリ314と、フラッシュディスク・ファイル・システム316と、ネットワーク・インタフェース318とを備え、それらはそれぞれ、自動化コンピュータ300上のそれらの相当物と同一または同様であることが可能である。Linux(登録商標)オペレーティング・システムは、自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302のそれぞれで実行されることが可能である。自動化コンピュータ300のCPUとしての使用、および/または、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302のCPUとしての使用に適していることがある典型的なプロセッサは、Freescale社のPowerPC5200B(登録商標)である。
【0265】
ネットワーク・インタフェース318を介して、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、自動化コンピュータ300に接続されることが可能である。自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302の両方は、APDシステムの同一のシャーシ内に含まれることが可能である。これに代えて、一方もしくは両方のコンピュータまたは前述のコンピュータの一部(例えば、表示部324)は、シャーシの外部に配置されることが可能である。自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、広域ネットワーク(WAN)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)、バス構造、無線接続、および/または或る他のデータ転送媒体によって結合されることが可能である。
【0266】
ネットワーク・インタフェース318は、インターネット320および/または他のネットワークにユーザ・インタフェース・コンピュータ302を結合するために使用されることも可能である。そのようなネットワーク接続は、例えば、クリニックまたは臨床医への接続を開始する、遠隔・データベース・サーバに治療データをアップロードする、臨床医から新しい処方箋を得る、アプリケーション・ソフトウェアをアップグレードする、サービス・サポートを得る、仕入れを要求する、および/または、メンテナンス利用のためにデータをエクスポートするために使用されることが可能である。一例によれば、コールセンタの専門家は、ネットワーク・インタフェース318を通じてインターネット320上の警報ログおよび透析機構成情報に遠隔にアクセスすることが可能である。もし望まれれば、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、接続が遠隔の開始プログラムによってではなくユーザまたはシステムによって単にローカルに開始されることがあるように構成されることが可能である。
【0267】
ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、図10に関して記述されるユーザ・インタフェース144などのユーザ・インタフェースに結合されたグラフィックス・インタフェース322をさらに備える。1つの典型的な実施によれば、ユーザ・インタフェースは、液晶表示部(LCD)を備え、タッチスクリーンに関連づけられた表示部324を備える。例えば、タッチスクリーンは、LCD上に被せられることが可能であり、その結果、ユーザは、指またはスタイラスなどで表示部に触れることによって、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302に入力を与えることができる。表示部は、特に、音声プロンプトおよび録音されたスピーチを再生することができる音声システムに関連づけられることも可能である。ユーザは、それらの環境および好みに基づいて表示部324の明るさを調整することが可能である。随意に、APDシステムは、光センサを備えることが可能であり、表示部の明るさは、光センサによって検出された周辺光量に応じて自動的に調整されることが可能である。
【0268】
加えて、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、USBインタフェース326を備える。USBフラッシュ・ドライブなどのデータ記憶装置328は、USBインタフェース326を介してユーザ・インタフェース・コンピュータ302に選択的に結合されることが可能である。データ記憶装置328は、患者固有のデータを格納するために使用される「患者データ・キー」を含むことがある。透析治療および/または調査質問(例えば、重量、血圧)からのデータは、患者データ・キーに記録されることが可能である。このように、患者データは、USBインタフェース326に結合されたときにユーザ・インタフェース・コンピュータ302にアクセス可能であり、インタフェースから取り外されたときに携帯可能になることがある。患者データ・キーは、サイクラ交換中に1つのシステムまたはサイクラから別のものにデータを転送することが可能であり、それによって、臨床ソフトウェアからシステムに新しい治療およびサイクラ構成データを転送し、システムから臨床ソフトウェアに治療履歴および装置履歴情報を転送するために使用される。典型的な患者データ・キー325が図65に示されている。
【0269】
示されるように、患者データ・キー325は、コネクタ327と、該コネクタに結合されたハウジング329とを備える。患者データ・キー325は、随意に専用のUSBポート331に関連づけられることが可能である。ポート331は、凹部333(例えば、APDシステムのシャーシ中の)と、該凹部内に配置されるコネクタ335とを備える。凹部は、ポート331に関連づけられたハウジング337によって少なくとも部分的に規定されることが可能である。患者データ・キー・コネクタ327およびポート・コネクタ335は、選択的に互いに電気的および機械的に結合されるように構成される。図65から分かることがあるように、患者データ・キー・コネクタ327およびポート・コネクタ335が結合されるときには、患者データ記憶装置325のハウジング329は、凹部333内に少なくとも部分的に受容される。
【0270】
患者データ・キー325のハウジング329は、それが関連づけられたポートを示す視覚的手掛かりを備える、および/または、正しくない挿入を防止するように形成されることが可能である。例えば、ポート331の凹部333および/またはハウジング337は、患者データ・キー325のハウジング329の形状に対応した形状を有することが可能である。例えば、それぞれが、非長方形状を有するか、または、図65に示されるような上部の刻み付けを持った楕円形などの不規則な形状を有することが可能である。ポート331の凹部333および/またはハウジング337ならびに患者データ・キー325のハウジング329は、それらの関連づけを示すための付加的な視覚的手掛かりを備えることが可能である。例えば、それぞれが、同一材料から作られる、ならびに/または、同一または同様の色および/もしくはパターンを有することが可能である。
【0271】
さらなる実施形態では、図65Aに示されるように、患者データ・キー325のハウジング329は、コネクタ327から離れるように傾斜して構築されることが可能であり、それによって、キー325上に跳ねることがある如何なる液体もコネクタ327から離れるように且つハウジング329の反対の端部に向かって運び、ハウジング329の孔339は、患者データ・キー325およびそのポート・コネクタ335との結合部から流体を除去するのを補助することが可能である。
【0272】
これに代えてまたはこれに加えて、患者データ・キー325は、患者データ・キーが期待される種類および/または製造元のものであることを確認するAPDシステムによって判読可能な確認コードを含むことがある。そのような確認コードは、患者データ・キー325のメモリに格納され、患者データ・キーから読み取られ、APDシステムのプロセッサによって処理されることが可能である。これに代えてまたはこれに加えて、そのような確認コードは、例えば、バーコードまたは数字コードとして、患者データ・キー325の外部に含まれることがある。この場合、コードは、カメラおよび付随するプロセッサ、バーコード・スキャナ、または別のコード読取装置によって読み取られることが可能である。
【0273】
システムの電源が入れられたときに患者データ・キーが差し込まれなければ、警告は、キーの挿入を要求するものとして生成されることがある。しかし、システムは、それが前もって構成されている限り、患者データ・キーなしで実行されることが可能である。このように、自分の患者データ・キーをなくした患者は、代替キーを取得することができるようになるまで治療を受けることが可能である。データは、患者データ・キーに直接的に格納されるか、または、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上への格納後に患者データ・キーに転送されることが可能である。データは、患者データ・キーからユーザ・インタフェース・コンピュータ302に転送されることも可能である。
【0274】
加えて、USBブルートゥース(登録商標)・アダプタ330は、例えば、データが近傍のブルートゥース対応装置と交換されることを可能にすべく、USBインタフェース326を介してユーザ・インタフェース・コンピュータ302に結合されることが可能である。例えば、APDシステム近傍のブルートゥース対応体重計は、USBブルートゥース・アダプタ330を使用してUSBインタフェース326を介してシステムに患者の体重に関する情報を無線転送することが可能である。同様に、ブルートゥース対応血圧計カフは、USBブルートゥース・アダプタ330を使用してシステムに患者の血圧に関する情報を無線で転送することが可能である。ブルートゥース・アダプタは、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302に内蔵されることが可能であるか、または、外部にあることが可能である(例えば、ブルートゥース・ドングル)。
【0275】
USBインタフェース326は、幾つかのポートを備えることが可能であり、また、これらのポートは、異なる物理位置を有し、異なるUSB装置に使用されることが可能である。例えば、患者データ・キー用のUSBポートを透析機の前面からアクセス可能にすることが望ましいことがあり、別のUSBポートを透析機の後面に設けて該後面からアクセス可能とすることも可能である。ブルートゥース接続用のUSBポートは、シャーシの外側に備えられることが可能であるか、または、これに代えて、例えば、透析機の内部もしくはバッテリ・ドアの内側に配置されることが可能である。
【0276】
上で注記したように、セーフティクリティカルな意味合いを持つことがある機能は、自動化コンピュータ上で分離されることが可能である。セーフティクリティカル情報は、APDシステムの動作に関係する。例えば、セーフティクリティカル情報は、治療を実施または監視するためのAPD処置および/またはアルゴリズムの状態を含むことが可能である。非セーフティクリティカル情報は、APDシステムの動作に必要ではないスクリーン表示の視覚的表現に関する情報を含むことがある。
【0277】
自動化コンピュータ300上でセーフティクリティカルな意味合いを持つことがある機能を分離することによって、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、セーフティクリティカル動作の扱いから解放されることが可能である。このように、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上で実行されるソフトウェアの問題またはそのソフトウェアへの変更は、患者への治療の提供には影響しない。ユーザ・インタフェース・ビューを開発するのに必要な時間を縮小するためにユーザ・インタフェース・コンピュータ302によって使用されることがあるグラフィカル・ライブラリ(例えば、Trolltech社のQt(登録商標)ツールキット)の例を考える。これらのライブラリは、自動化コンピュータ300のものから分離された処理およびプロセッサによって扱われるので、自動化コンピュータは、システムの残りの部分(セーフティクリティカル機能を含む)に影響することがあるライブラリの任意の潜在的な欠陥から保護される(同一のプロセッサまたは処理によって扱われる)。
【0278】
勿論、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、ユーザに対するインタフェースの表示を担当するが、データは、例えば、表示部324を介して、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302を使用してユーザによって入力されることも可能である。自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302の機能間の分離を維持すべく、表示部324を介して受信したデータは、解釈用に自動化コンピュータに送られ、表示用にユーザ・インタフェース・コンピュータに返されることが可能である。
【0279】
図45は、2つの別個のコンピュータを示すが、セーフティクリティカル機能の格納および/または実行の、非セーフティクリティカル機能の格納および/または実行からの分離は、CPU/メモリ構成要素304および314などの別個のプロセッサを備えた単一のコンピュータを有することによって提供されることが可能である。このように、別個のプロセッサまたは「コンピュータ」の提供は必要ではないと認識されるべきである。さらに、これに代えて、単一のプロセッサが、上述した機能を行なうために使用されることも可能である。この場合、透析機類を制御するソフトウェア構成要素の実行および/または格納を、ユーザ・インタフェースを制御するものから機能的に分離することが望ましいことがあるが、本発明はこの観点に限定されるものではない。
【0280】
システム・アーキテクチャの他の態様は、安全上の注意事項に対処するように設計されることも可能である。例えば、自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、各コンピュータ上のCPUによって有効化または無効化することができる「安全線」を備えることが可能である。安全線は、APDシステムのセンサ/アクチュエータ312のうちの少なくとも幾つかを有効にするのに十分な電圧(例えば、12V)を生じる電圧供給源に結合されることが可能である。自動化コンピュータ300のCPUおよびユーザ・インタフェース・コンピュータ302のCPUの両方が安全線にイネーブル信号を送るときに、電圧供給源によって生じた電圧は、センサ/アクチュエータに送られ、或る構成要素を作動および無効化する。その電圧は、例えば、空気圧バルブおよびポンプを作動させ、閉塞部を無効化し、ヒータを作動することが可能である。一方のCPUが安全線にイネーブル信号を送ることを止めたときには、電圧経路は遮断され(例えば、機械的リレーによって)、空気圧バルブおよびポンプを非作動にし、閉塞部を有効化し、ヒータを非作動にすることが可能である。このように、自動化コンピュータ300またはユーザ・インタフェース・コンピュータ302の一方がそれを必要とみなしたときには、患者は、流体経路から急速に分離されることが可能であり、加熱および圧送などの他の活動を停止することが可能である。各CPUは、セーフティクリティカル誤差を検出したとき、または、ソフトウェア監視機構が誤差を検出したときなどに、いつでも安全線を無効化することができる。システムは、一旦無効化されると、安全線は、自動化コンピュータ300およびユーザ・インタフェース・コンピュータ302の両方がセルフテストを完了するまで再び有効化されないように構成されることが可能である。
【0281】
図46は、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302および自動化コンピュータ300のソフトウェア・サブシステムのブロック図を示している。この例では、「サブシステム」は、関連する特定のセットのシステム機能に割り当てられた一群のソフトウェア(場合によっては、ハードウェア)である。「処理」は、独立して実行可能である場合があり、それは、自身の仮想アドレス空間中で実行され、処理間通信機器を使用して他の処理にデータを渡す。
【0282】
エグゼクティブ・サブシステム332は、自動化コンピュータ300のCPUおよびユーザ・インタフェース・コンピュータ302のCPU上で実行されるソフトウェアの実行のインベントリを作成し、確認し、開始し、および監視するために使用されるソフトウェアおよびスクリプトを備える。カスタム・エグゼクティブ処理は、前述のCPUのそれぞれで実行される。各エグゼクティブ処理は、自身のプロセッサ上のソフトウェアをロードおよび監視し、他のプロセッサ上のエグゼクティブを監視する。
【0283】
ユーザ・インタフェース(UI)サブシステム334は、ユーザおよびクリニックとのシステム相互作用を扱う。UIサブシステム334は、「モデル・ビュー・コントローラ」設計パターンに応じて実施され、データの表示(ビュー)をそのデータ自体(モデル)から分離する。特に、システム状態およびデータ修正機能(モデル)およびサイクラ制御機能(コントローラ)は、自動化コンピュータ300上のUIモデルおよびサイクラ・コントローラ336によって扱われ、サブシステムの「ビュー」部分は、UIコンピュータ302上でUIスクリーン・ビュー338によって扱われる。ログ閲覧または遠隔アクセスなどのデータ表示およびエクスポート機能は、全体的にUIスクリーン・ビュー338によって扱われることがある。UIスクリーン・ビュー338は、ログ閲覧および臨床医インタフェースを提供するものなどの、付加的な用途を監視および制御する。これらの用途は、UIスクリーン・ビュー338によって制御されるウィンドウ中で生成され、その結果、制御は、警告、警報、またはエラーの場合にUIスクリーン・ビュー338に返されることができる。
【0284】
治療サブシステム340は、透析治療の供給を指図し、時間を計る。さらに、処方箋を確認すること、処方箋、時間、および利用可能な流体に基づいて治療サイクルの回数および継続時間を演算すること、治療サイクルを制御すること、供給バッグ内の流体を追跡すること、ヒータバッグ内の流体を追跡すること、患者中の流体の量を追跡すること、患者から取り除かれた限外ろ過の量を追跡すること、および、警告または警報状態を検出することを担当することがある。
【0285】
透析機制御サブシステム342は、透析治療を実施するために使用される透析機類を制御し、治療サブシステム340によって呼び出されたときに、高レベル圧送および制御機能を統合する。特に、次の制御機能が、透析機制御サブシステム342によって行なわれることが可能である:エアコンプレッサ制御、ヒータ制御、流体供給制御(圧送)、および流体体積測定。透析機制御サブシステム342は、下に述べられる、I/Oサブシステム344によってセンサの示度についての信号をさらに送る。
【0286】
自動化コンピュータ300上のI/Oサブシステム344は、治療を制御するために使用されるセンサおよびアクチュエータへのアクセスを制御する。この実施では、I/Oサブシステム344は、ハードウェアへの直接アクセスを持つ唯一のアプリケーション処理である。このように、I/Oサブシステム344は、インタフェースを発行して、他の処理が、ハードウェア入力の状態を取得し、ハードウェア出力の状態を設定することを可能にする。
【0287】
同じくユーザ・インタフェース・コンピュータ302上のデータベース・サブシステム346は、透析機、患者、処方箋、ユーザ・エントリ、および治療履歴の情報のオンボード格納に使用されるデータベースにすべてのデータを格納し、データベースからすべてのデータを取り出す。これは、そのような情報がシステムによって必要であるときに共通のアクセス・ポイントを提供する。データベース・サブシステム346によって提供されるインタフェースは、幾つかの処理によってそれらのデータ格納要求に対して使用される。データベース・サブシステム346は、データベースのファイル・メンテナンスおよびバックアップも管理する。
【0288】
UIスクリーン・ビュー338は、治療履歴データベースをブラウズするために治療ログ・クエリ・アプリケーションを起動することが可能である。このアプリケーションを使用して(これに代えて複数のアプリケーションとして実施されることがある)、ユーザは、彼らの治療履歴、彼らの処方箋、および/または履歴上の透析機ステータス情報をグラフィカルに再閲覧することができる。アプリケーションは、データベース・サブシステム346にデータベース・クエリを送信する。アプリケーションは、透析機の安全な動作に干渉することなく、患者が透析されている間、実行されることができる。
【0289】
遠隔アクセス・アプリケーション(単一のアプリケーションまたは複数のアプリケーションとして実施されることがある)は、遠隔システム上の解析および/または表示用の治療および透析機診断データをエクスポートするための機能を提供する。治療ログ・クエリ・アプリケーションは、要求された情報を取り出すために使用されることが可能であり、データは、転送用のXMLなどの透析機の中立的なフォーマットに再フォーマットされることがある。フォーマットされたデータは、メモリ記憶装置、直接ネットワーク接続、または他の外部インタフェース348によってオフボードで転送されることが可能である。ネットワーク接続は、ユーザによって要求されるように、APDシステムによって開始されることが可能である。
【0290】
サービス・インタフェース356は、治療中でないときに、ユーザによって選択されることが可能である。サービス・インタフェース356は、一又は複数の専門のアプリケーションを備えることが可能であり、それらは、試験結果を記録し、例えば、診断センタにアップロードされることができる試験レポートを随意に生成する。メディア・プレーヤ358は、例えば、ユーザに提示される音声および/または動画を再生することが可能である。
【0291】
1つの典型的な実施によれば、上述したデータベースは、SQLite、つまり、自己内蔵型の、サーバが不要な、ゼロ・コンフィギュレーションの、トランザクションのSQLデータベース・エンジンを実施するソフトウェア・ライブラリを使用して実施される。
【0292】
エグゼクティブ・サブシステム332は、2つのエグゼクティブ・モジュールを実施する(ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上のユーザ・インタフェース・コンピュータ(UIC)エグゼクティブ352および自動化コンピュータ300上の自動化コンピュータ(AC)エグゼクティブ354)。各エグゼクティブは、オペレーティング・システムがブートされた後で実行されるスタートアップ・スクリプトによって開始され、それが開始する処理のリストを備えている。エグゼクティブがそれらのそれぞれの処理リストを調べるので、各処理画像は、処理が開始される前にファイル・システムのその完全性を保証するために確認される。エグゼクティブは、子処理をそれぞれ監視して、それぞれが期待通りに開始されることを確実にし、例えば、Linux(登録商標)親子処理報知を使用して、子処理が実行されている間、それらを監視し続ける。子処理が終了または故障したときには、エグゼクティブは、それを再び開始するか(UIビューの場合のように)、または、システムをフェール・セーフ・モードに配置して透析機が安全な方法で動作することを確実にする。エグゼクティブ処理は、透析機が電源を切られているときに、オペレーティング・システムを綺麗にシャットダウンすることも担う。
【0293】
エグゼクティブ処理は、互いに通信して、それらが様々なアプリケーション構成要素のスタートアップおよびシャットダウンを調整することを可能にする。ステータス情報は、2つのエグゼクティブ間で定期的に共有され、プロセッサ間の監視機能をサポートする。エグゼクティブ・サブシステム332は、安全線の有効化または無効化を担当する。UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354の両方が安全線を有効化したときに、ポンプ、ヒータ、およびバルブを動作させることができる。安全線の有効化の前に、エグゼクティブは、適切な動作を確実にするために各線を独立して試験する。加えて、各エグゼクティブは、他の安全線の状態を監視する。
【0294】
UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354は、協働して、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302と自動化コンピュータ300との間の時間を同期させる。時間基準は、スタートアップ時にアクセスされるユーザ・インタフェース・コンピュータ302上のバッテリ駆動の実時間クロックを介して構成される。ユーザ・インタフェース・コンピュータ302は、実時間クロックに対して自動化コンピュータ300のCPUを初期化する。その後、各コンピュータ上のオペレーティング・システムは、自身の内部時間を維持する。エグゼクティブは、協働して、パワー・オン・セルフテストを定期的に行なうことによって計時を十分に保証する。自動化コンピュータの時間とユーザ・インタフェース・コンピュータの時間との間の差が、与えられた閾値を超えた場合には、警告を生成することが可能である。
【0295】
図47は、APDシステムの様々なサブシステムと処理との間の情報のフローを示している。先に議論したように、UIモデル360およびサイクラ・コントローラ362は、自動化コンピュータ上で実行される。ユーザ・インタフェースの設計は、UIビュー338によって制御されるスクリーン表示を、サイクラ・コントローラ362によって制御されるスクリーン間フローと、UIモデル360によって制御される表示可能なデータ項目から分離する。これは、スクリーン表示の視覚的な表現が、下層の治療ソフトウェアに影響することなく変更されることを可能にする。治療値およびコンテキストはすべて、UIモデル360に格納され、セーフティクリティカル治療機能からUIビュー338を分離する。
【0296】
UIモデル360は、システムおよび患者の現在の状態について記述する情報を統合し、ユーザ・インタフェースを介して表示されることができる情報を維持する。UIモデル360は、オペレータに現在は見えないかまたは認識可能でない状態を更新することが可能である。ユーザが新しいスクリーンに案内されるときに、UIモデル360は、新しいスクリーンおよびそのコンテンツに関する情報をUIビュー338に提供する。UIモデル360は、インタフェースを露出させて、UIビュー338または或る他の処理が現在のユーザ・インタフェース・スクリーンおよび表示すべきコンテンツのクエリを可能にする。このように、UIモデル360は、遠隔のユーザ・インタフェースおよびオンライン・アシスタンスなどのインタフェースがシステムの現在の動作状態を取得することができるという共通点を提供する。
【0297】
サイクラ・コントローラ362は、オペレータ入力、時間、および治療層状態に基づいてシステムの状態に対する変更を扱う。容認可能な変更は、UIモデル360に反映される。サイクラ・コントローラ362は、治療層命令、治療ステータス、ユーザ要求、および時間イベントを調整する階層状態機械として実施され、UIモデル360の更新を介してビュースクリーン制御を提供する。さらに、サイクラ・コントローラ362は、ユーザ入力を有効にする。ユーザ入力が許容された場合には、ユーザ入力に関する新しい値が、UIモデル360を介してUIビュー338に反映される。治療処理368は、サイクラ・コントローラ362に対するサーバとして作用する。サイクラ・コントローラ362からの治療命令は、治療処理368によって受信される。
【0298】
UIコンピュータ302上で実行されるUIビュー338は、ユーザ・インタフェース・スクリーン表示を制御し、タッチスクリーンからのユーザ入力に応答する。UIビュー338は、ローカル・スクリーン状態の追跡を継続するが、透析機の状態情報を維持しない。透析機状態および表示されるデータ値は、それらがユーザによって変更されている途中でない限り、UIモデル360から供給される。UIビュー338が終了し再開された場合には、それは現在のデータを持った現在の状態のためのベース・スクリーンを表示する。UIビュー338は、スクリーンのどのクラスをUIモデル360から表示すべきかを判断し、それは、UIビューにスクリーン表示を残す。ユーザ・インタフェースのセーフティクリティカル態様はすべて、UIモデル360およびサイクラ・コントローラ362によって扱われる。
【0299】
UIビュー338は、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上の他のアプリケーション364をロードし実行することが可能である。これらのアプリケーションは、非治療制御タスクを行なうことがある。典型的なアプリケーションは、ログ・ビューア、サービス・インタフェース、および遠隔アクセス・アプリケーションを備えている。UIビュー338は、該UIビューによって制御されるウィンドウ内のこれらのアプリケーションを配置し、それは、適切なようにUIビューがステータス、エラー、および警告スクリーンを表示することを可能にする。或るアプリケーションは、積極活動療法中に実行されることがある。例えば、ログ・ビューアは、積極活動療法中に実行されることがあるが、サービス・インタフェースおよび遠隔アクセス・アプリケーションは、一般に実行されない場合がある。UIビュー338に従属するアプリケーションが実行されており、進行中の治療がユーザの注意を必要とするときには、UIビュー338は、アプリケーションを停止し、スクリーンおよび入力の機能の制御を回復することが可能である。停止されたアプリケーションは、UIビュー338によって再開または中断されることができる。
【0300】
図48は、図46に関して記述された治療サブシステム340の動作を図示している。治療サブシステム340の機能は、3つの処理に分割される(治療制御、治療演算、および透析液管理)。これには、機能分割、試験のし易さ、および更新のし易さという効果がある。
【0301】
治療制御モジュール370は、そのタスクを達成すべく、治療演算モジュール372、透析液管理モジュール374、および透析機制御サブシステム342(図46)のサービスを使用する。治療制御モジュール370の担当は、ヒータバッグの流体体積を追跡すること、患者の流体体積を追跡すること、患者導出体積および超ろ過を追跡すること、サイクル体積を追跡および記録すること、治療体積を追跡および記録すること、透析治療(導出・導入・滞留)の実行を指示すること、治療セットアップ動作を制御することを含む。治療制御モジュール370は、治療演算モジュール370によって指図されるような治療の各段階を行なう。
【0302】
治療演算モジュール370は、腹膜透析治療からなる導出・導入・滞留サイクルを追跡および再演算する。患者の処方箋を使用して、治療演算モジュール372は、サイクル数、滞留時間、および必要な透析液の量(合計治療体積)を演算する。治療が進むと、これらの値の部分集合が、実際の経過時間を考慮して再演算される。治療演算モジュール372は、治療シーケンスを追跡し、要求されたときに、治療段階およびパラメータを治療制御モジュール370に渡す。
【0303】
透析液管理モジュール374は、透析液供給バッグの配置をマッピングし、各供給バッグの容積を追跡し、透析液データベース中のレシピに基づいて透析液の混合を命令し、混合または非混合の透析液の要求された体積のヒータバッグへの移送を命令し、透析液レシピおよび利用可能なバッグ容積を使用して利用可能な混合透析液の体積を追跡する。
【0304】
図49は、治療の初期の補充および透析部分中の、上述した治療モジュール処理の典型的な相互作用を図示するシーケンス図を示している。典型的な初期の補充処理376中に、治療制御モジュール370は、治療演算モジュール372から最初の導入用の透析液IDおよび体積をフェッチする。透析液IDは、患者ラインおよび最初の患者導入の準備に備えて、ヒータバッグを透析液で充填する要求と共に、透析液管理モジュール374に渡される。透析液管理モジュール374は、ヒータバッグへの透析液の圧送を開始するために要求を透析機制御サブシステム342に渡す。
【0305】
典型的な透析処理378中に、治療制御モジュール370は、一度に1サイクル(初期の導出、導入、滞留・補充、および導出)を実行し、治療演算モジュール372の制御下でこれらのサイクルを順番に行なう。治療中に、治療演算モジュール372は、実際のサイクル・タイミングで更新され、その結果、必要に応じて治療の残りの部分を再演算することができる。
【0306】
この例では、治療演算モジュール372は「初期導出」として段階を指定し、治療制御モジュールは、その要求を透析機制御サブシステム342にする。治療演算モジュール372によって指定される次の段階は「導入」である。その指示は、透析機制御サブシステム342に送られる。治療演算モジュール372は、治療制御モジュール370によって再び呼び出され、それは、流体が「滞留」段階中にヒータバッグに補充されることを要求する。透析液管理モジュール374は、治療制御モジュール370によって呼び出され、それによって、透析機制御サブシステム342を呼び出すことによってヒータバッグ中の流体を補充する。次の段階を得るべく治療演算モジュール372を呼び出す治療制御モジュール370によって、処理が継続する。これは、段階がそれ以上なくなるまで繰り返され、そして治療が完了する。
[警告/警報機能]
APDシステムの条件またはイベントは、記録されたおよび/またはユーザに表示される警告および/または警報をトリガすることがある。これらの警告および警報は、ユーザ・インタフェース・サブシステムに存在するユーザ・インタフェース構成体であり、システムの任意の部分に生じる条件によってトリガされることがある。これらの条件は3つのカテゴリにグループ化されることがある((1)システム・エラー条件、(2)治療条件、および(3)システム動作条件)。
【0307】
「システム・エラー条件」は、ソフトウェア、メモリ、またはAPDシステムのプロセッサの他の態様において検出されるエラーに関する。これらのエラーは、システムの信頼性に疑問を呈し、「復帰不可能」と考えられることがある。システム・エラー条件は、表示されるかまたはユーザに知らせる警報を発する。警報は、記録されることも可能である。システムの完全性をシステム・エラー条件の事例では保証することができないので、システムは、フェール・セーフ・モードに入り、ここで記述される安全線を無効化することが可能である。
【0308】
図46に関して記述される各サブシステムは、自身のシステム・エラーのセットを検出することを担当する。サブシステム間のシステム・エラーは、ユーザ・インタフェース・コンピュータ・エグゼクティブ352および自動化コンピュータ・エグゼクティブ354によって監視される。システム・エラーが、ユーザ・インタフェース・コンピュータ302上で実行される処理に起因するときには、システム・エラーを報告している処理を終了する。UIスクリーン・ビュー・サブシステム338を終了する場合には、ユーザ・インタフェース・コンピュータ・エグゼクティブ352は、例えば、最大3回までそれを再起動することを試みる。UIスクリーン・ビュー338の再起動に失敗し、治療が進行中である場合には、ユーザ・インタフェース・コンピュータ・エグゼクティブ352は、フェール・セーフ・モードに透析機を移行させる。
【0309】
システム・エラーが自動化コンピュータ300上で実行される処理に起因する場合には、その処理を終了する。自動化コンピュータ・エグゼクティブ354は、処理が終了したことを検出し、治療が進行中である場合には安全な状態に移行させる。
【0310】
システム・エラーが報告されたときには、例えば、視覚的および/または音声のフィードバックでユーザに報知する試みがなされると共に、そのエラーをデータベースに記録する。システム・エラーの取り扱いは、エグゼクティブ・サブシステム332でカプセル化され、復帰不可能イベントの一様な取り扱いを確実にする。UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354のエグゼクティブ処理は、互いに監視し合い、その結果、一方のエグゼクティブ処理が治療中に故障した場合に、他方のエグゼクティブが透析機を安全な状態に移行させる。
【0311】
「治療条件」は、許容可能な境界を超えた治療に関連づけられたステータスまたは変数によってもたらされる。例えば、治療条件は、境界外センサ示度によってもたらされることが可能である。これらの条件は、警告または警報に関連づけられ、そして、記録されることが可能である。警報は、重大なイベントであり、一般に即時の行為を必要とする。警報は、条件の重大度に基づいて、例えば、低、中、または高として優先順位づけされることが可能である。警告は、警報ほど重大ではなく、一般には、治療の喪失または不快以外の、任意に関連づけられた危険を有していない。警告は、3つのカテゴリ(メッセージ警告、エスカレート警告、およびユーザ警告)のうちの1つに該当することがある。
【0312】
警報または警告条件をもたらすことがある治療条件の検出に対する担当は、UIモデルと治療サブシステムとの間で共有される。UIモデル・サブシステム360(図47)は、治療前および治療後の警報および警告条件の検出を担当する。治療サブシステム340(図46)は、治療中の警報および警告条件を検出を担当する。
【0313】
治療条件に関連づけられた警告または警報の扱いに対する担当は、UIモデルと治療サブシステムとの間でも共有される。治療前および治療後に、UIモデル・サブシステム360は、警報または警告条件の扱いを担当する。治療セッション中に、治療サブシステム340は、警報または警告条件を扱うこと、および、警報または警告条件が存在することをUIモデル・サブシステムに報知することを担当する。UIモデル・サブシステム360は、エスカレート警告を担い、また、警報または警告条件が検出されたときに、ユーザに視覚的および/または音声のフィードバックを提供するように、UIビュー・サブシステム338と共に調整する。
【0314】
「システム動作条件」は、それらに関連づけられた警告または警報を有していない。これらの条件は、システム動作の記録を提供すべく単に記録される。聴覚的または視覚的なフィードバックを提供する必要はない。
【0315】
上述したシステム・エラー条件、治療条件、またはシステム動作条件に呼応して講じられることがある処置は、その条件を検出したサブシステム(または層)によって実施され、それは、そのステータスをより高位のサブシステムに送る。この条件を検出したサブシステムは、条件を記録し、条件に関連づけられた任意の安全的考慮を処理することが可能である。これらの安全的考慮は、次のもののうちのいずれか1つまたはそれらの組合せを含むことがある(治療を中断して閉塞部に係合すること、必要なときに状態およびタイマをクリアすること、ヒータを無効化すること、治療全体を終了すること、閉塞部を閉じるべく安全線を非作動にし、ヒータを止め、バルブから動力を除去すること、および、システムがサービスに戻ることを要求するパワー・サイクルの後であっても、サイクラの治療実行を防止すること)。UIサブシステム334は、自動的にクリアされることができる条件(つまり、非ラッチ条件)と、ラッチされ、単にユーザ相互作用によってクリアされることができるユーザ復帰可能条件とを担当することが可能である。
【0316】
各条件は、ソフトウェアが条件の重大度に応じて作用することを可能にする或る情報を含むように規定されることが可能である。この情報は、数値の識別子を含むことがあり、それは、優先順位、エラーの記述的な名称(つまり、条件名)、条件を検出したサブシステム、どのステータスまたはエラーがその条件をトリガするかの記述、および、その条件が上述した一又は複数の行為を実施するか否かのためのフラグを規定するルックアップ・テーブルと組み合わせて使用されることが可能である。
【0317】
条件は、優先順位でランク付けされることが可能であり、その結果、複数の条件が生じたときには、より高い優先順位条件を最初に扱うことが可能である。この優先順位ランキングは、条件が治療の管理を止めるか否かに基づくことが可能である。治療を止める条件が生じたときには、この条件は、ステータスを次のより高位のサブシステムに中継する際に条件を優位にする。上で議論したように、条件を検出するサブシステムは、条件を扱い、上記のサブシステムにステータス情報を送る。受信したステータス情報に基づいて、上位サブシステムは、異なる行為およびそれに関連づけられた異なる警告/警報を有することがある異なる条件をトリガすることが可能である。各サブシステムは、新しい条件に関連づけられた任意の付加的な行為を実施し、上記のサブシステムにステータス情報を渡す。1つの典型的な実施によれば、UIサブシステムは、所定時間で1つの警告/警報だけを表示する。この場合、UIモデルは、それらの優先順位によってアクティブなイベントをすべてソートし、最優先イベントに関連づけられた警告/警報を表示する。
【0318】
優先順位は、重大度、潜在的な被害、およびその被害の兆候に基づいた警報に割り当てられることが可能である。下の表1は、どのように優先順位がこの方法で割り当てられることがあるかの一例を示している。
【0319】
【表1】
表1のコンテキストでは、潜在的な被害の兆候は、いつ怪我が生じるかを指すものであるが、いつそれが明示されるかを参照するものではない。「即時」として指定された兆候を有する潜在的な被害は、手動の修正処置では通常十分でない時間内に発展する可能性がある被害を表示する。「迅速」として指定された兆候を有する潜在的な被害は、手動の修正処置に通常十分な時間内に発展する可能性がある被害を表示する。「遅延」として指定された兆候を有する潜在的な被害は、「迅速」の下で与えられるよりも長い無指定の時間内に発展する可能性がある被害を表示する。
【0320】
図F図Kは、タッチスクリーン・ユーザ・インタフェースに表示されることがある警告および警報に関する典型的なスクリーン・ビューである。図50は、警報の第1スクリーンを示しており、それは、ダイアグラム380と、ユーザに彼らの移送セットを閉じるように指示するテキスト382とを備えている。このスクリーンは、視覚的な警告384を備えており、音声警告にも関連づけられている。音声警告は、タッチスクリーンの「音声オフ」オプション386を選択することによってオフにされることが可能である。ユーザが移送セットを閉じたときに、ユーザは、タッチスクリーン上の「確認」オプション388を選択する。図51は、ユーザに彼らの移送セットを閉じるように指示する同様の警報スクリーンを示している。この場合には、導出が休止されたことの表示390と、「端部処理」を選択する指示とが提供されている392。
【0321】
先に議論したように、警告は、一般には、治療の喪失または不快以外の危険性には関連づけられていない。このように、警告は、治療を中断させたりさせなかったりすることがある。警告は、イベントがクリアされた場合に警告を自動的にクリアするような「自動復帰可能」、または、ユーザ・インタフェースとのユーザ相互作用が警告をクリアするために必要であるような「ユーザ復帰可能」のいずれかであることができる。或る範囲内で変動することが可能なボリュームを有することがある可聴警告プロンプトは、ユーザの注意を引くために使用されることが可能である。加えて、情報または指示をユーザに対して表示することがある。その結果、情報または指示は、ユーザによって見られることが可能であり、ユーザ・インタフェースの自動調光特徴は、警告中に無効化されることがある。
【0322】
ユーザの混乱の程度を減少させるために、警告は、どれくらい警告が重要か、および、どれくらい迅速にユーザが応答する必要があるかに基づいて様々な種類にカテゴリ分けされることが可能である。3つの典型的な種類の警告は、「メッセージ警告」、「エスカレート警告」、および「ユーザ警告」である。これらの警告は、どのように情報がユーザに視覚的に提示されるか、および、どのように可聴プロンプトが使用されるかに基づいて異なる特性を有している。
【0323】
「メッセージ警告」は、ステータス・スクリーンの一番上に現われることがあり、ユーザ相互作用が必要でないときには情報目的に使用される。警告をクリアするために何もする必要がないので、可聴プロンプトは、一般には、患者の邪魔をしたり、場合によっては眠っている患者を起こしたりすることを回避する。しかし、可聴警告は、随意に提示されることがある。図52は、典型的なメッセージ警告を示している。特に、図52は、透析液が所望の温度または範囲よりも下であるときにユーザに報知するために使用されることがある低温メッセージ警告394を示している。この場合、ユーザは、如何なる処置も講ずる必要はないが、透析液が熱されている間、治療が遅れると報知される。患者がさらなる情報を望む場合には、「ビュー」オプション396がタッチスクリーン上で選択されることがある。これは、図53に示されるように、スクリーン上に現われる警告に関する付加的な情報398をもたらす。メッセージ警告は、ユーザが修正しようとしている低流量イベントがあるときに使用されることが可能である。この場合、メッセージ警告は、ユーザがその問題を解決したか否かについてユーザにフィードバックを提供すべく低流量イベントがクリアされるまで、表示されることが可能である。
【0324】
「エスカレート警告」は、耳障りでない方法で処置を講ずるようにユーザに促すように意図されている。エスカレート警告中に、視覚的なプロンプトがタッチスクリーン上に表示されることが可能であり、可聴プロンプトが提示されることも可能である(例えば、一度)。与えられた時間の後、警告をもたらしたイベントがクリアされない場合には、より強調した可聴プロンプトが提示されることも可能である。追加の時間の後で、警告をもたらすイベントがクリアされなかった場合には、警告は、「ユーザ警告」にエスカレートされる。ユーザ警告の1つの典型的な実施によれば、視覚的なプロンプトは、警告がクリアされ、無音であることができる可聴プロンプトが提示されるまで表示される。UIサブシステムは、エスカレート警告からユーザ警告への移行を扱わない。むしろ、元々のイベントをトリガさせたサブシステムは、ユーザ警告に関連づけられた新しいイベントをトリガする。図54は、エスカレート警告に関する情報を表示するスクリーン・ビューを示している。この典型的な警告は、スクリーン上の警告メッセージ400と、導出ラインの折れ曲がりおよびクランプの閉鎖、ならびに可聴プロンプトを確認するようにユーザに指示するプロンプト402とを含む。可聴プロンプトは、それがユーザによって消音されるまで継続することが可能である。図55は、可聴プロンプトを消音するために選択されることがある「音声オフ」オプション404を備えたスクリーン・ビューを示している。この警告は、直接的に、または、エスカレート警告スキームの一部として使用されることができる。
【0325】
各々の警告/警報は、次のものによって指定される:警告/警報用の固有識別子である警告/警報コード、警告/警報の記述的な名称である警告/警報名、警告の種類または警報のレベルを含む警告/警報タイプ、可聴プロンプトが警告/警報に関連づけられているか否かの表示、警告および関連するイベントがユーザによって回避(または無視)されることができるか否かの表示、および警告/警報をトリガするイベント(複数可)のイベント・コード。
【0326】
警報、エスカレート警告、およびユーザ警告中に、イベント・コード(上述したように、警報または警報コードとは異なる場合がある)は、必要な場合にユーザがサービスマンに対してコードを読むことができるようにスクリーン上に表示されることが可能である。これに代えてまたはこれに加えて、音声ガイダンス・システムは、遠隔のコールセンタに接続されている場合、システム構成、状態、およびエラー・コードについての関連情報を発声することができるように使用されることが可能である。システムは、ネットワーク、電話接続、または或る他の手段を介して遠隔のコールセンタに接続されることが可能である。
【0327】
治療サブシステムによって検出される条件の一例は、図56に関連して下に述べられている。この条件は、APDシステムが水平な面に配置されていないときに生じ、それは空気管理に対して重要である。特に、この条件は、APDシステムが水平面に対して35°などの所定閾値を超えて傾けられたことを傾斜センサが検出したときに生じる。下に述べられるように、復帰可能なユーザ警告は、傾斜センサが所定閾値よりも大きな絶対値を持った角度を検出した場合に、治療サブシステムによって生成されることが可能である。迷惑な警報を回避すべく、ユーザは、治療が始まる前に、APDシステムを水平にするように指示されることがある。傾斜閾値は、この治療前時間中には低いことがある(例えば、35°)。ユーザは、その問題が修正されたか否かに関するフィードバックを与えられることも可能である。
【0328】
治療中に傾斜角度が閾値を超えたことを傾斜センサが検出したときには、透析機サブシステム342は、あたかもそれがポンプ室内の空気を検出したかのように、同様の方法でポンプを停止することによって応答する。治療サブシステム340は、ステータスを尋ね、透析機層342が傾斜によって圧送を休止したと判断する。さらに、それは透析機の角度に関するステータス情報を受信する。この時点では、治療サブシステム340は、傾斜状態を生成し、治療を休止し、圧送を休止すべく透析機サブシステム342に命令を送る。この命令は、流体測定システム(FMS)の測定をし、患者バルブを閉じるなどの、クリーンアップをトリガする。さらに、治療サブシステム340は、タイマをスタートさせ、UIモデル360までの自動復帰可能傾斜状態を送り、その条件は、UIビュー338に送られる。UIビュー338は、エスカレート警告に対する条件をマッピングする。治療サブシステム340は、傾斜センサ測定値を監視し続け、それが閾値以下に落ちた場合に、条件をクリアして治療を再開させる。タイマが終了する前に条件がクリアされない場合には、治療サブシステム340は、自動復帰可能傾斜状態に取って代わるユーザ復帰可能「傾斜タイムアウト」条件をトリガする。それは、この条件をUIモデル360に送り、その条件は、UIビュー338に送られる。UIビュー338は、ユーザ警告に対する条件をマッピングする。この条件は、治療再開命令がUIサブシステムから受信される(例えば、ユーザが復旧ボタンを押す)まで、クリアされることができない。傾斜センサ示度が閾値レベル以下である場合には、治療が再開される。それが閾値以下でない場合には、治療層は、自動復帰可能傾斜状態をトリガし、タイマをスタートさせる。
[スクリーン表示]
先に議論したように、UIビュー・サブシステム338(図47)は、ユーザへのインタフェースの表示を担当する。UIビュー・サブシステムは、自動化コンピュータ上で実行されるUIモデル・サブシステム360(図47)のクライアントであり、UIモデル・サブシステム360と接続する。例えば、UIビュー・サブシステムは、どのスクリーンがユーザに所定時間に表示されるべきかを判断すべくUIモデル・サブシステムと通信する。UIビューは、スクリーン・ビュー用のテンプレートを備えることが可能であり、表示言語、スキン、音声言語、および文化的な配慮がなされたアニメーションなど場所特有の設定を扱うことが可能である。
【0329】
UIビュー・サブシステムに生じる基本的な種類のイベントには3つある。これらは、個々のスクリーンによって扱われるローカル・スクリーン・イベント、スクリーン・イベントがUIモデル・サブシステムにまで伝播されなければならないモデル・イベント、およびタイマ上に生じ、ステータスについてUIモデル・サブシステムに尋ねる問合せ・イベントである。ローカル・スクリーン・イベントは、単にUIビュー・レベルに影響する。これらのイベントは、ローカル・スクリーン移行であり(例えば、単一のモデル状態に対する複数のスクリーンの場合)、設定を見るために更新し(例えば、地域および言語オプション)、与えられたスクリーンからメディア・クリップの再生を要求する(例えば、指示アニメーションまたは音声プロンプト)。モデル・イベントは、どのようにイベントを扱うかを判断すべくUIビュー・サブシステムがUIモデル・サブシステムと協議しなければならないときに生じる。このカテゴリに該当する例は、治療パラメータの確認または「治療開始」ボタンを押すことである。これらのイベントは、UIビュー・サブシステムによって開始されるが、UIモデル・サブシステム中で扱われる。UIモデル・サブシステムは、このイベントを処理し、UIビュー・サブシステムに結果を返す。この結果は、UIビュー・サブシステムの内部状態を決定する。問合せ・イベントは、タイマが時間信号を生成し、UIモデル・サブシステムが問い合わせられるときに生じる。問合せ・イベントの場合、UIビュー・サブシステムの現在の状態は、評価用にUIモデル・サブシステムに送られる。UIモデル・サブシステムは、状態情報を評価し、UIビュー・サブシステムの所望の状態で応答する。これは、次のものを構成することが可能である:(1)状態変化(例えば、UIモデル・サブシステムおよびUIビュー・サブシステムの主な状態が異なる場合)、(2)スクリーン更新(例えば、UIモデル・サブシステムからの値がスクリーン上に表示された値を変更する場合)、または、(3)状態変化なし(例えば、UIモデル・サブシステムおよびUIビュー・サブシステムの状態が同一である場合)。図57は、上述した機能を行なうUIビュー・サブシステム338の典型的なモジュールを示している。
【0330】
図57に示されるように、UIモデル・クライアント・モジュール406は、UIモデルにイベントを通信するために使用される。このモジュール406は、現在のステータス用のUIモデルを問い合わせるためにも使用される。応答ステータス・メッセージ内では、UIモデル・サブシステムは、自動化コンピュータおよびユーザ・インタフェース・コンピュータのクロックを同期するために使用される時間を埋め込むことが可能である。
【0331】
グローバル・スロット・モジュール408は、与えられたイベント(信号)が生じたときに報知されるように複数のコールバック・ルーチン(スロット)が予約することができる機構を提供する。これは、スロットを多数の信号に結び付けることができるので、「多対多」関係であり、同様に、信号はその作動の際に呼び出される多数のスロットに結び付けられることができる。グローバル・スロット・モジュール408は、UIモデル・問合せまたはスクリーンの外側で生じるボタンを押すこと(例えば、音声プロンプト・ボタン)用のアプリケーション・レベルのタイマなどの非スクリーン特有のスロットを扱う。
【0332】
スクリーン・リスト・クラス410は、すべてのスクリーンのリストをテンプレートおよびデータ・テーブルの形態で含んでいる。スクリーンは、テンプレートと、そのスクリーンに配置すべく使用される関連するデータ・テーブルとからなる。テンプレートは、包括的な方法でそれに配置されたウィジェットを備えたウィンドウであり、ウィジェットに割り当てられたコンテンツはない。データ・テーブルは、ウィジェットを配置すべく使用されるコンテンツと、ウィジェットの状態とを記述するレコードを備えている。ウィジェット状態は、確認されても確認されなくてもよく(チェックボックス型のウィジェットの場合)、見えていても隠されていてもよく、あるいは、有効でも無効でもよい。データ・テーブルは、ボタンを押す結果として生じる行為についても記述することができる。例えば、テンプレート「l」に由来するウィンドウ「A」上のボタンは、UIモデルにイベントを送ることができるが、さらにテンプレート「l」に由来するウィンドウ「B」上の同じボタンは、UIモデルにイベントを伝播させることなくローカル・スクリーン移行を単にもたらすことが可能である。データ・テーブルは、コンテキストに応じたヘルプ・システムへのインデックスを備えることが可能である。
【0333】
スクリーン・リスト・クラス410は、UIモデルから意図したスクリーンにデータを転送し、UIモデルから適切なスクリーンに基づいたデータを選択し、スクリーンを表示させる。スクリーン・リスト・クラス410は、2つの要因に基づいてどのスクリーンを表示させるかを選択する(UIモデルによって報告された状態およびUIビューの内部状態)。幾つかの場合では、UIモデルは、UIビューに、それがカテゴリ内の任意のスクリーンを表示することを許容されたことを単に報知することが可能である。例えば、そのモデルは、透析機がアイドル状態である(例えば、治療が始められていない、または、セットアップ段階がまだ生じていない)と報告することが可能である。この場合には、ユーザがメニューからそのサブメニューに進むときに、UIモデルに尋ねることは必要ではない。変更を追跡すべく、UIビューは、現在のスクリーンをローカルに格納する。このスクリーンのローカル・シーケンスは、上述したテーブル・エントリによって扱われる。テーブル・エントリは、それぞれのボタンが押されたときに開始する行為を列挙している。
【0334】
言語マネージャ・クラス412は、翻訳上のインベントリの作成および翻訳の管理を担当する。チェックサムは、翻訳のいずれかが破損および/または欠落している場合に、UIビューに警告を発するために、インストールされた言語のリスト上で行なわれることが可能である。ストリングを翻訳することを望む如何なるクラスも、それを行なうように言語マネージャ・クラス412に指示する。翻訳は、ライブラリ(例えば、Qt(登録商標))によって扱われることがある。好ましくは、翻訳は、レンダリングの時間に可及的に接近していることを要求される。この目的のために、殆どのスクリーン・テンプレート部アクセス方法は、レンダリング用のウィジェットにそれを渡す直前に翻訳を要求する。
【0335】
スキンは、ユーザ・インタフェースの「外観および操作感」を決定するスタイル・シートおよび画像を含んでいる。スタイル・シートは、フォント、色、およびどの画像をウィジェットがその様々な状態(正常、押された、無効化されたなど)を表示するために使用するかなどの事項を制御する。如何なる表示されたウィジェットも、スキン変化によってその外観を変更することができる。スキン・マネージャ・モジュール414は、スクリーン・リスト(拡張によって、スクリーンウィジェット、どのスタイル・シートおよびスキン・グラフィックスを表示すべきか)に対する報知を担当する。スキン・マネージャ・モジュール414は、アプリケーションが表示したい任意のアニメーション化したファイルをさらに備えている。スキン変更イベントでは、スキン・マネージャは、現在使用中のセットのディレクトリ内の画像およびスタイル・シートを、アーカイブから取り出された適切なセットで更新する。
【0336】
動画マネージャ・モジュール416は、特定の動画を表示する要求を与えられたときの地域に配慮した動画の再生を担当する。地域変更イベントでは、動画マネージャは、現在使用中のセットのディレクトリ内の動画およびアニメーションをアーカイブからの適切なセットで更新する。動画マネージャは、音声マネージャ・モジュール418における音声を伴う動画も再生する。これらの動画のプレイバックに際して、動画マネージャ・モジュール416は、音声マネージャ・モジュール418に適切な要求をし、元々要求されていた動画クリップに属する録画を再生する。
【0337】
同様に、音声マネージャ・モジュール418は、特定の音声クリップを再生する要求を与えられたときの地域に配慮した音声の再生を担当する。地域変更イベントでは、音声マネージャは、現在使用中のセットのディレクトリ内の音声クリップをアーカイブからの適切なセットで更新する。音声マネージャ・モジュール418は、UIビューによって開始された音声をすべて扱う。これは、音声プロンプト用のアニメーションおよび音声クリップのダビングも含んでいる。
【0338】
データベース・クライアント・モジュール420は、データベース・マネージャ処理と通信するために使用され、それは、UIビュー・サブシステムとデータベース・サーバ366(図47)との間のインタフェースを扱う。UIビューは、このインタフェースを使用して、設定を格納および抽出し、変数(例えば、重量および血圧)に関する質問に対するユーザ提供の回答によって治療ログを補足する。
【0339】
ヘルプ・マネージャ・モジュール422は、コンテキストに応じたヘルプ・システムを管理するために使用される。ヘルプ・ボタンを提示するスクリーン・リスト中のページはそれぞれ、コンテキストに応じたヘルプ・システムへのインデックスを含むことが可能である。このインデックスは、ヘルプ・マネージャがページに関連づけられたヘルプ画面を表示することができるように使用される。ヘルプ画面は、テキスト、画像、音声、および動画を含むことが可能である。
【0340】
自動IDマネージャ424は、治療前セットアップ中に呼び出される。このモジュールは、透析液バッグ・コード(例えば、データ行列コード)の画像(例えば、写真画像)のキャプチャを担当する。次に、画像から抽出されたデータは、透析機制御サブシステムに送られ、透析液バッグの内容と共に、コードに含まれた他の情報(例えば、製造元)を特定するために治療サブシステムによって使用される。
【0341】
上述したモジュールを使用して、UIビュー・サブシステム338は、ユーザ・インタフェース(例えば、図45の表示部324)を介してユーザに表示されるスクリーン・ビューをレンダリングする。図N図Tは、UIビュー・サブシステムによってレンダリングされることがある典型的なスクリーン・ビューを示している。これらのスクリーン・ビューは、例えば、典型的な入力機構、表示フォーマット、スクリーン移行、アイコン、およびレイアウトを図示している。示されたスクリーンは、一般には治療中または治療前に表示されるが、スクリーン・ビューの態様は、示されたものとは異なる入出力機能に使用されることがある。
【0342】
図58に示されるスクリーンは、指定された治療428を開始するための「治療開始」426と、設定を変更するための「設定」430との間で選択するオプションをユーザに提供する初期画面である。アイコン432および434はそれぞれ、明るさおよび音声レベルを調整するために提供され、情報アイコン436は、ユーザがより情報を求めることを可能にするために提供される。これらのアイコンは、他のスクリーンにも同様の方法で表示されることが可能である。
【0343】
図59は、治療のステータスについての情報を提供するステータス・スクリーンを示している。特に、スクリーンは、行なわれている治療の種類438、完了予定時刻440、ならびに、現在の導入サイクル数および導入サイクル442の総数を示す。現在の導入サイクルの完了パーセンテージ444および治療全体の完了パーセンテージ446は、両方とも数値的且つグラフィカルに表示される。ユーザは、治療を休止すべく「休止」オプション448を選択することが可能である。
【0344】
図60は、様々な快適さ設定を備えたメニュー・スクリーンを示している。メニューは、明るさ矢印450、音量矢印452、および温度矢印454を備えている。それぞれの対の上向きまたは下向きの矢印のいずれかを選択することによって、ユーザは、スクリーンの明るさ、音量、および流体温度を増減させることができる。現在の明るさのパーセンテージ、音量のパーセンテージ、および温度も表示される。設定が望まれた通りであるときに、ユーザは、「OK」ボタン456を選択することが可能である。
【0345】
図61は、ヘルプ・メニューを示しており、それは、例えば、前のスクリーン上でヘルプまたは情報ボタンを押すことによって到達されることが可能である。ヘルプ・メニューは、ユーザを支援するためのテキスト458および/またはイラスト460を備えることが可能である。テキストおよび/またはイラストは「操作状況に合わせた」ものであるか、または、前のスクリーンのコンテキストに基づいたものであることが可能である。ユーザに提供される情報を1つのスクリーン中で都合良く提供することができない場合、例えば、マルチステップ処理の場合には、矢印462は、ユーザが一連のスクリーン間で前後に案内されることを可能にするように提供されることがある。ユーザが所望の情報を得たときに、ユーザは、「戻る」ボタン464を選択することが可能である。追加の支援が必要な場合には、ユーザは、「コール・サービス・センタ」オプション466を選択して、システムにコール・サービス・センタに連絡を取らせることが可能である。
【0346】
図62は、ユーザが1セットのパラメータを設定することを可能にするスクリーンを図示している。例えば、スクリーンは、現在の治療モード468および最小導出体積470を表示し、ユーザがこれらのパラメータを変更するために選択することを可能にする。パラメータは、現在のスクリーン上のラウンドロビン(ダイヤル)式メニューから所望のオプションを選択することなどによって、多数の方法で変更されることが可能である。これに代えて、ユーザが変更するパラメータを選択したときに、新しいスクリーンが図63に示されるように表示されることが可能である。図63のスクリーンは、キーパッド474を使用して数値472を入力することによって、ユーザが最小導出体積を調整することを可能にする。一旦入力されると、ユーザは、ボタン476および478を使用して値を確認または取り消すことが可能である。次に、図62を再び参照して、ユーザは、「戻る」および「次へ」の矢印480および482を使用して、それぞれ異なるセットのパラメータを備えた一連のパラメータ・スクリーンを通じて案内される。
【0347】
一旦所望のパラメータがすべて設定されるかまたは変更されると(例えば、ユーザが一連のパラメータ・スクリーンを通じて案内されたときに)、図64に示されるようなスクリーンが提示され、ユーザが設定を吟味および確認することを可能にすることが可能である。変更したパラメータは、ユーザの注意を引くために、或る方法で随意に強調されることがある。設定が望まれた通りであるときに、ユーザは、「確認」ボタン486を選択することが可能である。
【0348】
本発明の態様は、その特定の実施形態と共に記述されているが、多くの代替物、修正物、および変形物が当業者に明白になることは明らかである。従って、ここで述べられるような本発明の実施形態は、限定なしに例示であるように意図されている。様々な変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、なされることが可能である。
図1
図1A
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9-1A】
図9-1B】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図9-5】
図9-6】
図9-7】
図9-8】
図9-9】
図9-10】
図9-11】
図9-11a】
図9-12】
図9-13】
図9-14】
図10
図11
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図11-4】
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図11-7c】
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図35C
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