IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 出光興産株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164805
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】油圧作動油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20221020BHJP
   C10M 133/12 20060101ALN20221020BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20221020BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20221020BHJP
   C10M 133/56 20060101ALN20221020BHJP
   C10M 137/04 20060101ALN20221020BHJP
   C10M 137/08 20060101ALN20221020BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20221020BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20221020BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20221020BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20221020BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M133/12
C10M129/10
C10M133/16
C10M133/56
C10M137/04
C10M137/08
C10N40:08
C10N30:04
C10N30:06
C10N30:00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137564
(22)【出願日】2022-08-31
(62)【分割の表示】P 2017200656の分割
【原出願日】2017-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 慎治
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
(57)【要約】
【課題】高圧の条件下で使用しても、耐摩耗性及びスラッジ発生の抑制効果に優れると共に、ブレーキ性能やクラッチ性能にも優れる油圧作動油組成物を提供する。
【解決手段】基油(A)と、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と、コハク酸イミド系化合物(C)とを含み、下記要件(I)を満たし、湿式ブレーキ及び湿式クラッチの少なくとも一方を備え、建設機械、一般産業機械、及び発電機から選ばれる、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用される、油圧作動油組成物。
・要件(I):JCMAS P 047:2004に記載のSAENo.2試験に準拠して測定した、1000サイクル後の静止摩擦係数(μ)が、0.100~0.162である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)と、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と、コハク酸イミド系化合物(C)とを含み、
下記要件(I)を満たし、
湿式ブレーキ及び湿式クラッチの少なくとも一方を備え、建設機械、一般産業機械、及び発電機から選ばれる、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用される、油圧作動油組成物。
・要件(I):JCMAS P 047:2004に記載のSAENo.2試験に準拠して測定した、1000サイクル後の静止摩擦係数(μ)が、0.100~0.162である。
【請求項2】
亜鉛原子の含有量が、前記油圧作動油組成物の全量基準で、100質量ppm未満である、請求項1に記載の油圧作動油組成物。
【請求項3】
成分(B1)及び(B2)の合計量100質量部に対する、成分(C)の含有割合が、1.0~20.0質量部である、請求項1又は2に記載の油圧作動油組成物。
【請求項4】
成分(B1)と成分(B2)との含有量比〔(B1)/(B2)〕が、質量比で、1/6以上1/2未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。
【請求項5】
成分(B1)の含有量が、前記油圧作動油組成物の全量基準で、0.01~1.0質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。
【請求項6】
成分(B2)の含有量が、前記油圧作動油組成物の全量基準で、0.025~6.0質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。
【請求項7】
成分(C)の含有量が、前記油圧作動油組成物の全量基準で、0.01~1.0質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。
【請求項8】
さらにリン系摩耗防止剤(D)を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。
【請求項9】
成分(D)が、酸性リン酸エステル(D11)及び酸性リン酸エステルのアミン塩(D12)から選ばれる化合物(D1)を含有する、請求項8に記載の油圧作動油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作動油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル、クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ等の建設機械に搭載されている油圧機器は、高圧、高温、高速、高荷重での稼動が要求される。
そのため、建設機械用の油圧機器で使用されている油圧作動油組成物は、高圧、高温、高速、高荷重下で長時間に渡って使用しても油圧機器の性能を損なわないような、耐摩耗性や酸化安定性が求められている。
特に、作動圧力が30MPa以上となる油圧機器に用いられる油圧作動油組成物は、酸化安定性や潤滑性能の劣化を早期に引き起こし易く、スラッジ発生や作動不良といった弊害が生じ易い。
【0003】
例えば、特許文献1には、建設機械等の作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用される油圧作動油組成物として、所定の動粘度を有するポリオレフィンに、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、及びリン酸エステルを所定の割合で含有する油圧作動油組成物が開示されている。
特許文献1によれば、当該油圧作動油組成物は、高圧下での酸化安定性及び潤滑性能に優れ、高圧下に伴う早期劣化やスラッジ発生等を効果的に防止し、長期間にわたって使用できる旨の開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5503066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、建設機械に搭載される油圧機器は、走行用油圧モータや旋回用油圧モータ等に使用される湿式ブレーキや湿式クラッチを備える場合がある。これらの潤滑には、油圧機器に使用される油圧作動油が兼用されることが一般的である。
そのため、湿式ブレーキや湿式クラッチを備える油圧機器に使用される油圧作動油には、上述の油圧作動油としての性能だけでなく、湿式ブレーキや湿式クラッチの潤滑性能も要求される。
つまり、湿式ブレーキや湿式クラッチを備える建設機械に用いられる油圧作動油には、油圧シリンダー等の始動時や停止直前のスムーズな動きを確保するために摩擦係数の低減が求められる。
その一方で、当該油圧作動油には、湿式ブレーキ及び湿式クラッチによるブレーキ性能やクラッチ性能を阻害しないように、摩擦係数が適度に高いことも要求される。
なお、特許文献1においては、このようなブレーキ性能やクラッチ性能の観点からの検討は行われていない。
【0006】
本発明は、高圧の条件下で使用しても、耐摩耗性及びスラッジ発生の抑制効果に優れると共に、ブレーキ性能やクラッチ性能にも優れる油圧作動油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、基油に、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤を含む酸化防止剤と、コハク酸イミド系化合物とを、静止摩擦係数(μ)が所定の範囲となるように調製した油圧作動油組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、下記[1]を提供する。
[1]基油(A)と、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と、コハク酸イミド系化合物(C)とを含み、
下記要件(I)を満たし、
湿式ブレーキ及び湿式クラッチの少なくとも一方を備え、建設機械、一般産業機械、及び発電機から選ばれる、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用される、油圧作動油組成物。
・要件(I):JCMAS P 047:2004に記載のSAENo.2試験に準拠して測定した、1000サイクル後の静止摩擦係数(μ)が、0.100~0.162である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油圧作動油組成物は、高圧の条件下で使用しても、耐摩耗性及びスラッジ発生の抑制効果に優れると共に、ブレーキ性能やクラッチ性能にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔油圧作動油組成物〕
本発明の油圧作動油組成物は、基油(A)と、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と、コハク酸イミド系化合物(C)とを含む。
なお、本発明の一態様の油圧作動油組成物は、リン系摩耗防止剤(D)を含有することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲にて、成分(B)~(D)には該当しない、他の添加剤を含有してもよい。
【0011】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計含有量は、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、また、通常100質量%以下、好ましくは99.0質量%以下、より好ましくは98.0質量%以下である。
【0012】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)の合計含有量は、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上であり、また、通常100質量%以下、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99.0質量%以下である。
【0013】
ところで、本発明の油圧作動油組成物は、湿式ブレーキ及び湿式クラッチの少なくとも一方を備え、建設機械、一般産業機械、及び発電機から選ばれる、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用されるものであり、下記要件(I)を満たすものである。
・要件(I):JCMAS P 047:2004に記載のSAENo.2試験に準拠して測定した、1000サイクル後の静止摩擦係数(μ)が、0.100~0.162である。
【0014】
上述のとおり、湿式ブレーキや湿式クラッチを備える油圧機器で用いられる油圧作動油組成物には、油圧作動油としての性能と共に、建設機械等における湿式ブレーキや湿式クラッチの潤滑性能も要求される。
つまり、要件(I)は、油圧作動油として要求される性能と共に、建設機械等における湿式ブレーキ及び湿式クラッチによるブレーキ性能やクラッチ性能に優れた油圧作動油組成物とするための規定である。
要件(I)で規定する静止摩擦係数(μ)が0.100未満であると、特に建設機械におけるブレーキ性能やクラッチ性能が劣り、停止時における応答性の悪化が懸念される。
一方、静止摩擦係数(μ)が0.162超であると、建設機械等の制動性の悪化が懸念され、湿式クラッチの早期摩耗に繋がる可能性がある。
【0015】
本発明の一態様の油圧作動油組成物での要件(I)で規定する静止摩擦係数(μ)としては、ブレーキ性能やクラッチ性能の向上の観点から、好ましくは0.105以上、より好ましくは0.110以上、更に好ましくは0.115以上であり、制動性を良好とし、早期摩耗の防止の観点から、好ましくは0.158以下、より好ましくは0.156以下、更に好ましくは0.153以下である。
【0016】
本発明の油圧作動油組成物は、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と共に、コハク酸イミド系化合物(C)を含有すると共に、さらに、成分(C)の種類、並びに、成分(C)の含有量を調整することで、静止摩擦係数(μ)を上記要件(I)を満たすように調整している。
また、本発明の油圧作動油組成物の静止摩擦係数(μ)の値は、基油(A)や、他の添加剤の種類や含有量によっても変化する。
つまり、本発明の油圧作動油組成物が満たす上記要件(I)は、油圧作動油組成物に含まれる各成分の種類や含有量等に対する規定ともいえる。
なお、上記要件(I)を満たす油圧作動油組成物とするための具体的な調整方法については、以下の各成分に関する記載のとおりである。
【0017】
<基油(A)>
本発明の油圧作動油組成物に含まれる基油(A)としては、鉱油であってもよく、合成油であってもよく、また、鉱油及び合成油から選ばれる2種以上の混合油であってもよい。
【0018】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる鉱油;フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる鉱油等が挙げられる。
これらの鉱油は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0019】
これらの中でも、本発明の一態様で用いる鉱油としては、米国石油協会(API:American Petroleum institute)基油カテゴリーのグループ2又はグループ3に分類される鉱油、及びGTLワックスを異性化することで得られる鉱油を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の一態様で用いる鉱油のパラフィン分(%C)としては、好ましくは60以上、より好ましくは65以上、更に好ましくは70以上であり、また、通常95以下である。
当該鉱油のナフテン分(%C)としては、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、更に好ましくは30以下、更に好ましくは20以下、より更に好ましくは10以下であり、また、通常5以上である。
当該鉱油の芳香族分(%C)としては、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.5未満、更に好ましくは0.1未満、より更に好ましくは0.01未満である。
なお、鉱油のパラフィン分(%C)、ナフテン分(%C)、及び芳香族分(%C)の値は、ASTM D-3238環分析(n-d-M法)により測定した、パラフィン分、ナフテン分、及び芳香族分の割合(百分率)を意味する。
【0021】
合成油としては、例えば、α-オレフィン単独重合体、又はα-オレフィン共重合体(例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体等の炭素数8~14のα-オレフィン共重合体)等のポリα-オレフィン;イソパラフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル;ポリアルキレングリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン等の合成油等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の一態様で用いる合成油としては、ポリα-オレフィン、各種エステル、及びポリアルキレングリコールから選ばれる1種以上の合成油を含むことが好ましい。
【0022】
基油(A)の40℃における動粘度としては、好ましくは10~150mm/s、より好ましくは12~120mm/s、更に好ましくは15~100mm/s、より更に好ましくは20~80mm/sである。
【0023】
基油(A)の粘度指数としては、好ましくは80以上、より好ましくは90、更に好ましくは100以上、より更に好ましくは110以上である。
【0024】
本明細書において、「動粘度」及び「粘度指数」は、JIS K 2283に準拠して測定された値を意味する。
また、基油(A)が、2種以上の鉱油からなる混合油である場合、当該混合油の動粘度及び粘度指数が上記範囲であることが好ましい。さらに、混合油を構成する各鉱油の動粘度又は粘度指数と、各鉱油の含有割合とから算出した加重平均の値を、上述の「混合油の動粘度及び粘度指数の値」とみなすこともできる。
【0025】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、基油(A)の含有量は、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、また、好ましくは99.0質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、更に好ましくは98.0質量%以下である。
【0026】
<酸化防止剤(B)>
本発明の油圧作動油組成物に含まれる酸化防止剤(B)は、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む。
酸化防止剤(B)として、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を併用することで、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用した際の、スラッジ発生の抑制効果が高い油圧作動油組成物とすることができる。また、成分(C)と組み合わせによって、静止摩擦係数(μ)を上記要件(I)で規定の範囲に調整し易くなる。
【0027】
アミン系酸化防止剤(B1)としては、芳香族アミン化合物であることが好ましく、ジフェニルアミン化合物及びナフチルアミン系化合物から選ばれる1種以上であることがより好ましい。
【0028】
ジフェニルアミン系化合物としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン等の炭素数1~30(好ましくは4~30、より好ましくは8~30)のアルキル基を1つ有するモノアルキルジフェニルアミン系化合物;4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン等の炭素数1~30(好ましくは4~30、より好ましくは8~30)のアルキル基を2つ有するジアルキルジフェニルアミン化合物;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等の炭素数1~30(好ましくは4~30、より好ましくは8~30)のアルキル基を3つ以上有するポリアルキルジフェニルアミン系化合物;4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0029】
ナフチルアミン系化合物としては、例えば、フェニル-1-ナフチルアミン、ブチルフェニル-1-ナフチルアミン、ペンチルフェニル-1-ナフチルアミン、ヘキシルフェニル-1-ナフチルアミン、ヘプチルフェニル-1-ナフチルアミン、オクチルフェニル-1-ナフチルアミン、ノニルフェニル-1-ナフチルアミン、デシルフェニル-1-ナフチルアミン、ドデシルフェニル-1-ナフチルアミン等が挙げられる。
【0030】
フェノール系酸化防止剤(B2)としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)等のジフェノール系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;等を挙げられる。
【0031】
本発明の一態様において、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用した際の、スラッジ発生の抑制効果が高く、且つ、上記要件(I)を満たす油圧作動油組成物とするから、成分(B1)と成分(B2)との含有量比〔(B1)/(B2)〕は、質量比で、好ましくは1/6以上1/2未満、より好ましくは1/5以上1/2.3以下、更に好ましくは1/4以上1/2.5以下である。
【0032】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、上記観点から、成分(B1)の含有量は、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.05~0.85質量%、更に好ましくは0.10~0.60質量%、より更に好ましくは0.19~0.45質量%である。
【0033】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、上記観点から、成分(B2)の含有量は、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.025~6.0質量%、より好ましくは0.10~5.0質量%、更に好ましくは0.20~4.0質量%、より更に好ましくは0.40~2.0質量%である。
【0034】
なお、本発明の一態様で用いる酸化防止剤(B)は、成分(B1)及び(B2)以外の酸化防止剤を含有してもよいが、上記観点から、その含有量は極力少ない方が好ましい。
具体的には、成分(B1)及び(B2)の合計含有量は、当該油圧作動油組成物中に含まれる成分(B)の全量(100質量%)に対して、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%である。
【0035】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、上記観点から、成分(B)の含有量としては、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.035~7.0質量%、より好ましくは0.15~6.0質量%、更に好ましくは0.30~5.0質量%、より更に好ましくは0.59~3.0質量%である。
【0036】
<コハク酸イミド系化合物(C)>
本発明の油圧作動油組成物は、コハク酸イミド系化合物(C)を含有する。
本発明の油圧作動油組成物は、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と共に、コハク酸イミド系化合物(C)を含有することで、上記要件(I)を満たすように調整している。
【0037】
本発明の一態様で用いるコハク酸イミド系化合物(C)としては、アルケニルコハク酸イミド(C1)及びホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C2)から選ばれる1種以上であることが好ましく、少なくともアルケニルコハク酸イミド(C1)を含有することがより好ましい。
【0038】
アルケニルコハク酸イミド(C1)としては、下記一般式(c-1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド、もしくは下記一般式(c-2)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミドが挙げられる。
【0039】
【化1】
【0040】
上記一般式(c-1)、(c-2)中、R、RA1及びRA2は、それぞれ独立に、重量平均分子量(Mw)が500~3000(好ましくは700~3000、より好ましくは1000~2500)のアルケニル基である。
、RB1及びRB2は、それぞれ独立に、炭素数2~5のアルキレン基である。
は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、又は-(AO)-Hで表される基(但し、Aは炭素数2~4のアルキレン基、nは1~10の整数を示す。)である。
x1は1~10の整数であり、好ましくは2~5の整数、より好ましくは3又は4である。
x2は0~10の整数であり、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2又は3である。
【0041】
、RA1及びRA2として選択し得るアルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
【0042】
ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C2)としては、前記一般式(c-1)又は(c-2)で表されるアルケニルコハク酸イミドのホウ素変性体が挙げられる。
なお、ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C2)を構成するホウ素原子と窒素原子の比率〔B/N〕としては、好ましくは0.01~0.6、より好ましくは0.05~0.5、更に好ましくは0.1~0.4である。
【0043】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、上記要件(I)を満たす油圧作動油組成物とする観点から、成分(B1)及び(B2)の合計量100質量部に対する、成分(C)の含有割合としては、好ましくは1.0~20.0質量部、より好ましくは5.0~18.0質量部、更に好ましくは12.0~17.0質量部である。
【0044】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、上記要件(I)を満たす油圧作動油組成物とする観点から、成分(C)の含有量としては、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.07~0.90質量%、更に好ましくは0.09~0.80質量%、より更に好ましくは0.10~0.60質量%である。
【0045】
また、上記観点から、成分(C)の窒素原子換算での含有量としては、油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは1~120質量ppm、より好ましくは5~100質量ppm、更に好ましくは7~90質量ppm、より更に好ましくは10~70質量ppmである。
なお、本明細書において、窒素原子の含有量は、JIS K2609に準拠して測定した値を意味する。
【0046】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、成分(C)としてホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C2)を含む場合、成分(C)のホウ素原子換算での含有量は、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは1~300質量ppm、より好ましくは3~200質量ppm、更に好ましくは5~100質量ppmである。
なお、本明細書において、ホウ素原子の含有量は、JPI-5S-38-03に準拠して測定した値を意味する。
【0047】
なお、本発明の一態様の油圧作動油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、成分(C)には該当しない他の無灰系分散剤を含有してもよい。
このような他の無灰系分散剤としては、例えば、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類、コハク酸エステル類、脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価又は二価カルボン酸アミド類等が挙げられる。
【0048】
ただし、本発明の一態様の油圧作動油組成物において、上記要件(I)を満たす油圧作動油組成物とする観点から、成分(C)には該当しない他の無灰系分散剤の含有量は極力少ない方が好ましい。
具体的には、当該他の無灰系分散剤の含有量は、油圧作動油組成物中に含まれる成分(C)の全量100質量部に対して、好ましくは10質量部未満、より好ましくは5質量部未満、更に好ましくは1質量部未満、より更に好ましくは0.01質量部未満である。
【0049】
<リン系摩耗防止剤(D)>
本発明の一態様の油圧作動油組成物は、耐摩耗性をより向上させる観点から、さらにリン系摩耗防止剤(D)を含有することが好ましい。
リン系摩耗防止剤(D)としては、リン酸エステル及びリン酸エステルのアミン塩から選ばれる1種以上が好ましい。
当該リン酸エステルとしては、例えば、アリールホスフェート、アルキルホスフェート、アルケニルホスフェート、アルキルアリールホスフェート等の中性リン酸エステル;モノアリールアシッドホスフェート、ジアリールアシッドホスフェート、モノアルキルアシッドホスフェート、ジアルキルアシッドホスフェート、モノアルケニルアシッドホスフェート、ジアルケニルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル;アリールハイドロゲンホスファイト、アルキルハイドロゲンホスファイト、アリールホスファイト、アルキルホスファイト、アルケニルホスファイト、アリールアルキルホスファイト等の亜リン酸エステル;モノアルキルアシッドホスファイト、ジアルキルアシッドホスファイト、モノアルケニルアシッドホスファイト、ジアルケニルアシッドホスファイト等の酸性亜リン酸エステル;等が挙げられる。
これらのリン酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
また、リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンとしては、下記一般式(d-i)で表される化合物であることが好ましい。なお、当該アミンは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化2】
【0051】
前記一般式(d-i)中、qは、1~3の整数を示し、1であることが好ましい。
は、それぞれ独立に、炭素数6~18のアルキル基、炭素数6~18のアルケニル基、環形成炭素数6~18のアリール基、炭素数7~18のアリールアルキル基、又は炭素数6~18のヒドロキシアルキル基であり、炭素数6~18のアルキル基が好ましい。
なお、Rが複数存在する場合、複数のRは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0052】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、耐摩耗性、耐荷重性、及び耐スコーリング性をより向上させる観点から、成分(D)が、酸性リン酸エステル(D11)及び酸性リン酸エステルのアミン塩(D12)から選ばれる化合物(D1)を含むことが好ましく、化合物(D1)と共に、中性リン酸エステル(D2)を含むことがより好ましい。
【0053】
酸性リン酸エステル(D11)としては、下記一般式(d1-1)で表される化合物、又は、下記一般式(d1-2)で表される化合物が好ましい。
【化3】
【0054】
前記一般式(d1-1)、(d1-2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~12(3~10、より好ましくは3~8、更に好ましくは3~6)のアルキル基である。
及びRは、同一であってもよく、互いに異なるものであってもよい。
【0055】
また、酸性リン酸エステルのアミン塩(D12)としては、上述の前記一般式(d1-1)で表される化合物のアミン塩、又は、前記一般式(d1-2)で表される化合物のアミン塩が好ましい。
また、成分(D12)を構成するアミンとしては、前記一般式(d-i)で表される化合物であることが好ましい。
【0056】
中性リン酸エステル(D2)としては、下記一般式(d2-1)で表される化合物が好ましく、下記一般式(d2-2)で表される化合物がより好ましい。
【化4】
【0057】
前記一般式(d2-1)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、又は、炭素数1~12のアルキル基で置換された環形成炭素数6~18のアリール基である。
【0058】
また、前記一般式(d2-2)中、R11~R13は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基である。p1~p3は、それぞれ独立に、1~5の整数であり、1~2の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0059】
なお、耐摩耗性、耐荷重性、及び耐スコーリング性をより向上させる観点から、化合物(D1)としては、酸性リン酸エステルのアミン塩(D12)が好ましい。
そのため、成分(D12)と共に、中性リン酸エステル(D2)を含むことがより好ましい。
【0060】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、成分(D)が、成分(D1)及び成分(D2)を共に含む場合、成分(D1)と成分(D2)との含有量比〔(D1)/(D2)〕としては、耐摩耗性、耐荷重性、及び耐スコーリング性をより向上させる観点から、質量比で、0.001~2.000、より好ましくは0.005~1.000、更に好ましくは0.007~0.500、より更に好ましくは0.010~0.100である。
【0061】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、成分(D1)及び(D2)の合計含有量は、当該油圧作動油組成物中に含まれる成分(D)の全量(100質量%)に対して、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、更に好ましくは90~100質量%、より更に好ましくは95~100質量%である。
【0062】
本発明の一態様の油圧作動油組成物において、成分(D)の含有量は、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~2.0質量%、より好ましくは0.2~1.2質量%、更に好ましくは0.3~1.0質量%、より更に好ましくは0.5~0.9質量%である。
【0063】
<他の添加剤>
本発明の一態様の油圧作動油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(B)~(D)には該当しない、他の油圧作動油用添加剤を含有してもよい。
他の油圧作動油用添加剤としては、例えば、粘度指数向上剤、流動点降下剤、極圧剤、防錆剤、金属不活性化剤、抗乳化剤、消泡剤等が挙げられる。
これらの油圧作動油用添加剤は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0064】
これらの油圧作動油用添加剤の各含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、通常0.001~15質量%、好ましくは0.005~10質量%、より好ましくは0.01~8質量%である。
【0065】
なお、本明細書において、粘度指数向上剤や消泡剤等の添加剤は、ハンドリング性や基油(A)への溶解性を考慮し、上述の基油(A)の一部に希釈し溶解させた溶液の形態で、他の成分と配合してもよい。
このような場合、本明細書においては、消泡剤や粘度指数向上剤等の添加剤の上述の含有量は、希釈油を除いた有効成分換算(樹脂分換算)での含有量を意味する。
【0066】
なお、本発明の一態様の油圧作動油組成物において、リン原子の含有量としては、当該油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは100~1000質量ppm、より好ましくは250~900質量ppm、更に好ましくは350~800質量ppm、より更に好ましくは450~750質量ppmである。
なお、本明細書において、リン原子の含有量は、JPI-5S-38-03に準拠して測定された値を意味する。
【0067】
また、本発明の一態様の油圧作動油組成物において、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用した際の、スラッジ発生の抑制効果が高い油圧作動油組成物とする観点から、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)の含有量は極力少ないほど好ましく、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を実質的に含有しないことがより好ましい。
具体的には、本発明の一態様の油圧作動油組成物において、亜鉛原子の含有量が、前記油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは100質量ppm未満、より好ましくは10質量ppm未満、更に好ましくは5質量ppm未満、より更に好ましくは1質量ppm未満である。
なお、本明細書において、亜鉛原子の含有量は、JPI-5S-38-03に準拠して測定された値を意味する。
【0068】
また、上記と同様の観点から、硫黄原子含有化合物の含有量も極力少ないほど好ましく、硫黄原子含有化合物を実質的に含有しないことがより好ましい。
具体的には、本発明の一態様の油圧作動油組成物において、硫黄原子の含有量が、前記油圧作動油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは200質量ppm未満、より好ましくは150質量ppm未満、更に好ましくは100質量ppm未満である。
なお、本明細書において、硫黄原子の含有量は、JIS K2541-6:2013に準拠して測定された値を意味する。
【0069】
〔油圧作動油組成物の各種性状〕
本発明の一態様の油圧作動油組成物の40℃における動粘度は、好ましくは10~100mm/s、より好ましくは13~75mm/s、更に好ましくは25~55mm/sである。
【0070】
本発明の一態様の油圧作動油組成物の粘度指数は、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上である。
【0071】
本発明の一態様の油圧作動油組成物について、JCMAS P045に準拠し、後述の実施例に記載の条件下で測定された、高圧ピストンポンプ試験を500時間行った際に発生したスラッジ量としては、好ましくは5.0mg/100ml未満、より好ましくは3.0mg/100ml未満、更に好ましくは2.0mg/100ml未満、より更に好ましくは1.0mg/100ml未満、特に好ましくは0.5mg/100ml未満である。
なお、本明細書において、高圧ピストンポンプ試験の詳細、及び、スラッジ量の測定方法は、後述の実施例に記載のとおりである。
【0072】
本発明の一態様の油圧作動油組成物について、ASTM D2882に準拠し、後述の実施例に記載の条件下で測定された、ベースポンプ(ビッカース社製、製品名「V-104C」)を100時間運転した際の、ベーンとカムリングの摩耗量としては、好ましくは30mg未満、より好ましくは25mg未満、更に好ましくは22mg未満、より更に好ましくは10mg未満である。
【0073】
本発明の一態様の油圧作動油組成物について、JASO-M314-88に準拠して測定された摩擦係数としては、好ましくは0.160以下、より好ましくは0.150以下、更に好ましくは0.140以下、より更に好ましくは0.120以下である。
なお、当該摩擦係数は、実施例に記載の方法に基づき測定された値を意味する。
【0074】
本発明の一態様の油圧作動油組成物について、ASTM D2783に準拠して測定された、融着荷重(WL)としては、好ましくは1300N以上、より好ましくは1500N以上、更に好ましくは1800N以上である。
なお、融着荷重(WL)は、実施例に記載の方法に基づき測定された値を意味する。
【0075】
〔油圧作動油組成物の用途〕
本発明の油圧作動油組成物は、高圧の条件下で使用しても、耐摩耗性及びスラッジ発生の抑制効果に優れると共に、建設機械等におけるブレーキ性能やクラッチ性能にも優れる。
そのため、本発明の油圧作動油組成物は、湿式ブレーキ及び湿式クラッチの少なくとも一方を備え、建設機械、一般産業機械、及び発電機から選ばれる、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に好適に使用し得る。
【0076】
なお、上記の建設機械としては、例えば、移動式クレーン、定置式クレーン、デリック等のクレーン;油圧ショベル、ミニショベル、ホイール式油圧ショベル等の掘削機械;ブルドーザ等の整地機械;、ホイールローダ等の積込機械;不整地運搬車等の運搬機械;振動ローラ等の締固め機械;ブレーカ等の解体用機械;バイルドライバ、アースオーガ等の基礎工事用機械;コンクリートポンプ車等のコンクリート・アスファルト機械;高所作業車、舗装機械、シールド、掘進機、除雪機等が挙げられる。
また、上記の一般産業機械としては、例えば、車両、工作機械、歯車装置、搬送装置、空調設備、鉱山設備等が挙げられる。
【0077】
すなわち、本発明は、下記(1)に示す油圧機器、及び、下記(2)に示す油圧作動油組成物の使用方法も提供し得る。
(1)基油(A)と、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と、コハク酸イミド系化合物(C)とを含み、前記要件(I)を満たす、油圧作動油組成物を用いた油圧機器であって、
湿式ブレーキ及び湿式クラッチの少なくとも一方を備え、建設機械、一般産業機械、及び発電機から選ばれる、作動圧力が30MPa以上である、油圧機器。
(2)基油(A)と、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と、湿式ブレーキ及び湿式クラッチの少なくとも一方を備え、建設機械、一般産業機械、及び発電機から選ばれる、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に用いる、油圧作動油組成物の使用方法。
なお、上記(1)及び(2)で規定する油圧作動油組成物の好適な態様は、上述のとおりである。
【実施例0078】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた各成分及び得られた油圧作動油組成物の各種性状は、下記に方法に準拠して測定した。
【0079】
<動粘度、粘度指数>
JIS K 2283:2000に準拠して測定及び算出した。
<リン原子及び亜鉛原子の含有量>
JPI-5S-38-03に準拠して測定した。
<硫黄原子の含有量>
JIS K2541-6:2013に準拠して測定した。
<窒素原子の含有量>
JIS K2609に準拠して測定した。
【0080】
実施例1~2、比較例1~2
以下に示す基油及び各種添加剤を、表1に示す配合量にて添加し、十分に混合して、油圧作動油組成物をそれぞれ調製した。
実施例及び比較例で用いた鉱油及び各種添加剤の詳細は、以下に示すとおりである。
【0081】
<基油>
・「100N鉱油」:APIカテゴリーでグループIIIに分類される鉱油、40℃動粘度=20.44mm/s、粘度指数=122、%C=73.5、%C=26.5、%C=0.0。
・「150N鉱油」:APIカテゴリーでグループIIに分類される鉱油、40℃動粘度=30.60mm/s、粘度指数=104、%C=67.1、%C=32.9、%C=0.0。
・「500N鉱油」:APIカテゴリーでグループIIに分類される鉱油、40℃動粘度=90.51mm/s、粘度指数=107、%C=72.0、%C=28.0、%C=0.0
【0082】
<酸化防止剤>
・「アミン系酸化防止剤」:アルキル化ジフェニルアミン。
・「フェノール系酸化防止剤」:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール。
<無灰系摩擦調整剤>
・「コハク酸イミド」:数平均分子量(Mn)1000のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸ビスイミド、窒素原子の含有量=1.15質量%。
<摩耗防止剤>
・「酸性リン酸エステルアミン塩」
・「中性リン酸エステル」:トリクレジルホスフェート。
・「ZnDTP」:ジチオリン酸亜鉛
<他の添加剤>
・「防錆剤」:ソルビタンモノオレート。
・「金属不活性化剤」:ベンゾトリアゾール。
・「粘度指数向上剤」:重量平均分子量3.7万のポリメタクリレート。
・「流動点降下剤」:重量平均分子量6.9万のポリメタクリレート。
・「消泡剤」:シリコーン系消泡剤。
【0083】
実施例及び比較例で調製した油圧作動油組成物について、40℃動粘度及び粘度指数、並びに、リン原子、硫黄原子、及び亜鉛原子の含有量を測定したところ、表1のとおりであった。
また、実施例及び比較例で調製した油圧作動油組成物を試料油として、以下の測定を行った。これらの測定結果も表1に示す。
【0084】
(1)静止摩擦係数(μ
JCMAS P 047:2004に記載のSAENo.2試験に準拠し、1000サイクル後の静止摩擦係数(μ)を測定した。
【0085】
(2)高圧ピストンポンプ試験
JCMAS P045に準拠し、高圧ピストンポンプ試験装置(ポンプ:BOSCH-REXROTH A2F10)の油圧回路に試料油を導入し、ポンプ圧力35.0MPa、試料油温度80℃、空気吹込量1.0L/hの条件下で、高圧ピストンポンプ試験を500時間行った。
そして、JIS B 9931に準拠して、試験後に試料油に発生したスラッジ量(単位:mg/100ml)を測定した。
【0086】
(3)ポンプの摩耗試験
ベーンポンプ(ビッカース社製、製品名「V-104C」)を用いて、ASTM D2882に準拠し、ポンプ圧力13.8MPa、油温66℃、回転数1200rpm、試料油量60L、流量25L/分の条件下で、100時間運転した際の、ベーンとカムリングの摩耗量(単位:mg)を測定した。
【0087】
(4)曾田式振り子試験
JASO-M314-88に規定される「曾田式振り子試験」に準拠し、曾田式振り子試験機(II型)を用いて、油温60℃にて、摩擦係数を測定した。
【0088】
(5)シェル四球EP試験
ASTM D2783に準拠して、四球試験機により、回転数1,800rpm、温度25℃の条件下にて、融着荷重(WL)を測定した。当該融着荷重(WL)の値が大きい程、耐荷重性に優れているといえる。
【0089】
(6)FZGスコーリング試験
ASTM D5182-97に準拠し、Aタイプ歯車を用い、試料油温度90℃、回転数1450rpm、運転時間15分間の条件下で、規定に沿って段階的に荷重を上げ、スコーリングが発生した際の荷重のステージを求めた。当該ステージの値が高いほど、耐スコーリングに優れているといえる。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1~2で調製した油圧作動油組成物は、静止摩擦係数(μ)が適度な範囲に属しているため、ブレーキ性能やクラッチ性能にも優れると考えられる。また、30MPaもの高圧の条件下で使用してもスラッジ発生の抑制効果に優れ、耐摩耗性も良好である結果となった。
一方で、比較例1~2で調製した油圧作動油組成物は、静止摩擦係数(μ)が高いため、制動性の悪化が懸念され、湿式クラッチの早期摩耗劣化に繋がる恐れがある結果となった。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)と、アミン系酸化防止剤(B1)及びフェノール系酸化防止剤(B2)を含む酸化防止剤(B)と、コハク酸イミド系化合物(C)と、リン系摩耗防止剤(D)と、粘度指数向上剤とを含み、
該リン系摩耗防止剤(D)が、酸性リン酸エステルのアミン塩(D12)から選ばれる化合物(D1)と、中性リン酸エステル(D2)とを含み、
該基油(A)の40℃における動粘度が10~150mm /sであり、
該アミン系酸化防止剤(B1)の含有量が、油圧作動油組成物の全量基準で0.01~1.0質量%であり、
該フェノール系酸化防止剤(B2)の含有量が、油圧作動油組成物の全量基準で0.025~6.0質量%であり、
該コハク酸イミド系化合物(C)は、アルケニルコハク酸イミド(C1)及びホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C2)から選ばれる1種以上であり、
該コハク酸イミド系化合物(C)の含有量が、油圧作動油組成物の全量基準で0.01~1.0質量%であり、
該リン系摩耗防止剤(D)の含有量が、油圧作動油組成物の全量基準で0.1~2.0質量%であり、
該粘度指数向上剤の含有量が、油圧作動油組成物の全量基準で0.01~8質量%であり、
JCMAS P045に準拠し、ポンプ圧力35.0MPa、試料油温度80℃、空気吹込量1.0L/hの条件下で、高圧ピストンポンプ試験を500時間行った際に発生するスラッジ量が1.0mg/100ml未満であり、
下記要件(I)を満たし、
湿式ブレーキ及び湿式クラッチの少なくとも一方を備え、建設機械、一般産業機械、及び発電機から選ばれる、作動圧力が30MPa以上である油圧機器に使用される、油圧作動油組成物。
・要件(I):JCMAS P 047:2004に記載のSAENo.2試験に準拠して測定した、1000サイクル後の静止摩擦係数(μ)が、0.100~0.162である。
【請求項2】
亜鉛原子の含有量が、前記油圧作動油組成物の全量基準で、100質量ppm未満である、請求項1に記載の油圧作動油組成物。
【請求項3】
成分(B1)及び(B2)の合計量100質量部に対する、成分(C)の含有割合が、1.0~20.0質量部である、請求項1又は2に記載の油圧作動油組成物。
【請求項4】
成分(B1)と成分(B2)との含有量比〔(B1)/(B2)〕が、質量比で、1/6以上1/2未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。
【請求項5】
さらに、流動点降下剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。
【請求項6】
前記流動点降下剤の含有量が、油圧作動油組成物の全量基準で0.01~8質量%である、請求項5に記載の油圧作動油組成物。
【請求項7】
さらに、極圧剤、防錆剤、金属不活性化剤、抗乳化剤及び消泡剤から選択される他の油圧作動油用添加剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。
【請求項8】
前記基油(A)、酸化防止剤(B)、コハク酸イミド系化合物(C)、リン系摩耗防止剤(D)、粘度指数向上剤、流動点降下剤及び他の油圧作動油用添加剤のみからなる請求項1~7のいずれか一項に記載の油圧作動油組成物。